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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】シアノアクリレート組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/04 20060101AFI20240822BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C09J4/04
C09J11/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509044
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 US2022040499
(87)【国際公開番号】W WO2023023082
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/260,282
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、 シンユ
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040FA121
4J040FA282
4J040HB15
4J040HB22
4J040HB35
4J040HD32
4J040JB04
4J040KA14
4J040KA19
4J040KA25
4J040KA29
4J040KA30
4J040KA35
4J040KA43
4J040LA06
4J040MA02
(57)【要約】
【解決手段】
本発明は、硬化すると、アルミニウム基材上での接着性能が改善されるシアノアクリレート含有組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シアノアクリレート成分、及び
(b)芳香族多官能性無水物成分
を含む、シアノアクリレート接着剤組成物。
【請求項2】
前記芳香族多官能性無水物成分が、以下の構造内の芳香族二無水物成分である、請求項1に記載の組成物:
【化1】
(式中、Xは、O、S、C=O、S=O、O=S=O、--、CRR(ここで、R及びRは互いに独立しており、H、C-Cアルキル及びハロゲンから成る群から選択される)、Y-Ar-Y[ここで、Y及びYはO、S、--、及びCRR(ここで、R及びRは上記の通りである)から独立して選択され、Arは芳香環又は少なくとも1つの芳香環を含む縮合環系である]、Y-Ar-Y-Ar-Y(ここで、Y、Ar、及びYは上記の通りであり、ArはArから選択され、YはY又はYから選択され、Arは上記の通りである)、並びに(O=CO)-Z(ここで、ZはC-Cアルキレンである)から選択される)。
【請求項3】
前記芳香族多官能性無水物成分が、以下の構造内の芳香族二無水物成分である、請求項2に記載の組成物:
【化2】
(式中、Xは上で定義した通りである)。
【請求項4】
前記芳香族多官能性無水物成分が、以下から成る群から選択される芳香族二無水物成分である、請求項1に記載の組成物。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【請求項5】
前記シアノアクリレート成分が、メチルシアノアクリレート、エチル-2-シアノアクリレート、プロピルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、オクチルシアノアクリレート、アリルシアノアクリレート及びβ-メトキシエチルシアノアクリレートから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
多官能性シアノアクリレート成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記多官能性シアノアクリレート成分が構造Iに包含される、請求項6に記載の組成物:
【化12】
(構造I中のRは、(CHから選択される結合であり、nは2、3、4、5、6、8、9、10、又は12である)。
【請求項8】
前記多官能性シアノアクリレート成分が、1,10-デカンジオールビス-シアノアクリレート、1,8-オクタンジオールビス-シアノアクリレート、及び1,6-ヘキサンジオールビス-シアノアクリレートから成る群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
安定量の酸性安定剤及びフリーラジカル阻害剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
促進剤成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記促進剤成分が、カリックスアレーン、オキサカリックスアレーン、シラクラウン、シクロデキストリン、クラウンエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、エトキシル化水素化合物、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記クラウンエーテルが、15-クラウン-5,18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6、ベンゾ-15-クラウン-5-ジベンゾ-24-クラウン-8、ジベンゾ-30-クラウン-10、トリベンゾ-18-クラウン-6、非対称-ジベンゾ-22-クラウン-6、ジベンゾ-14-クラウン-4、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6、ジシクロヘキシル-24-クラウン-8、シクロヘキシル-12-クラウン-4、1,2-デカリル-15-クラウン-5、1,2-ナフト-15-クラウン-5、3,4,5-ナフチル-16-クラウン-5、1,2-メチル-ベンゾ-18-クラウン-6、1,2-メチルベンゾ-5、6-メチルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-18-クラウン-6、1,2-ビニルベンゾ-15-クラウン-5、1,2-ビニルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-シクロヘキシル-18-クラウン-6、非対称-ジベンゾ-22-クラウン-6、1,2-ベンゾ-1,4-ベンゾ-5-酸素-20-クラウン-7及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
強化剤、耐衝撃性添加剤、チキソトロピー付与剤、増粘剤、染料、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される添加剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の組成物の反応生成物。
【請求項15】
少なくとも一方がアルミニウムから構成される2つの基材を接着する方法であって、
請求項1に記載のシアノアクリレート含有組成物を基材の少なくとも1つに塗布する工程、及び
前記接着剤が定着するのに十分な時間、基材を接合する工程、
を含む方法。
【請求項16】
請求項1に記載のシアノアクリレート含有組成物を調製する方法であって:
シアノアクリレート成分を提供する工程、及び
芳香族多官能性無水物成分を混合することにより、シアノアクリレート成分と組み合わせる工程、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化すると、アルミニウム基材上での接着性能が改善されるシアノアクリレート含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シアノアクリレート接着剤組成物は公知であり、急速硬化性の瞬間接着剤として幅広い用途で広く使用されている。H.V.クーバー、D.W.ドレイフィス及びJ.T.オコナー、接着剤ハンドブック中の「シアノアクリレート接着剤」、27、463-77、I.スカイスト編、ヴァン・ノストランド・ラインホルト、ニューヨーク、第3版(1990)を参照。G.H.ミレット、構造用接着剤中の「シアノアクリレート接着剤」:化学と科学技術、S.R.ハーツホルン編、プレナムプレス、ニューヨーク、249-307頁(1986)も参照。
【0003】
シアノアクリレート接着剤組成物のアルミニウム基材への接着を改善する取り組みの報告例はほとんどない。
【0004】
さらに、シアノアクリレート組成物に特定の無水物を添加する例が多数報告されている。
【0005】
例えば、米国特許第3,832,334号は、無水マレイン酸の添加に関するものであり、速い硬化速度を維持しながら(硬化時の)耐熱性が向上したシアノアクリレート接着剤が得られると報告されている。
【0006】
米国特許第4,196,271号は、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、及びそれ以上のカルボン酸又はそれらの無水物に関するものであり、硬化したシアノアクリレート接着剤の耐熱性を改善するのに有用であると報告されている。
【0007】
米国特許第4,450,265号は、シアノアクリレート接着剤の耐熱性を改善するための無水フタル酸の使用に関するものである。より具体的には、米国特許第4,450,265号は、主要部分が2-シアノアクリル酸の少なくとも1つのエステルを含む重合性構成成分を含む接着剤組成物であって、湿気又は高温への曝露下で組成物から形成される接着結合の強度及び/又は耐久性に有利な影響を与えるのに有効な割合の無水フタル酸をさらに含むことを特徴とする組成物に関するものであり、クレームしている。有効量は、組成物の0.1重量%~5.0重量%、例えば0.3重量%~0.7重量%として報告されている。米国特許第4,450,265号は、添加剤が使用されなかった組成物や無水マレイン酸が使用された組成物よりも、無水フタル酸が優れていることを報告している(ただし、ステンレス鋼重ねせん断の場合はアルミニウムの場合よりも顕著ではない)。
【0008】
米国特許第4,532,293号は、シアノアクリレート接着剤に優れた耐熱性を与えるためのベンゾフェノンテトラカルボン酸又はその無水物の使用に関するものである。
【0009】
より最近では、米国特許出願公開第2014/0326407号(リ)は、(a)シアノアクリレート成分、(b)無水物、及び(c)マレイミド、イタコンイミド、又はナジイミド含有化合物を含み、無水物は無水フタル酸又はジメチル無水マレイン酸であってよい、シアノアクリレート接着剤組成物に関するものである。
【0010】
また、米国特許出願公開第2014/0124137号(ヘダーマン)は、(a)シアノアクリレート成分、及び(b)テトラヒドロフタル酸無水物のような水素化無水フタル酸等の水素化無水物を含むシアノアクリレート接着剤組成物に関する。また組成物は、ベンゾニトリルを含んでもよい。
【0011】
これらの努力にもかかわらず、アルミニウム基材上でシアノアクリレート組成物からより強固な接着性能を達成したいという長年の要望が満たされていない。したがって、その要望に対する解決策を提供することは非常に有利であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第3,832,334号
【特許文献2】米国特許第4,196,271号
【特許文献3】米国特許第4,450,265号
【特許文献4】米国特許第4,532,293号
【特許文献5】米国特許出願公開第2014/0326407号
【特許文献6】米国特許出願公開第2014/0124137号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】H.V.クーバー、D.W.ドレイフィス及びJ.T.オコナー、接着剤ハンドブック中の「シアノアクリレート接着剤」、27、463-77、I.スカイスト編、ヴァン・ノストランド・ラインホルト、ニューヨーク、第3版(1990)
【非特許文献2】G.H.ミレット、構造用接着剤中の「シアノアクリレート接着剤」:化学と科学技術、S.R.ハーツホルン編、プレナムプレス、ニューヨーク、249-307頁(1986)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、大まかに言えば(a)シアノアクリレート成分と(b)芳香族二無水物成分等の芳香族多官能性無水物成分との組み合わせにより、硬化時に少なくとも引張強度が改善されるシアノアクリレート組成物を提供することによって、シアノアクリレート組成物のアルミニウム接着性能の欠点を改善する。
【0015】
また本発明は、少なくとも一方がアルミニウムから構成される2つの基材を接合する方法にも関しており、この方法は、少なくとも一方の基材に上述の組成物を塗布した後、基材を接合することを含む。
【0016】
さらに本発明は、本発明の組成物の反応生成物に関する。
【0017】
また本発明は、本発明の組成物を調製する方法に関する。
【0018】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」と題する節を読むことによってより完全に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上述したように、本発明は、硬化すると、アルミニウム接着性能が改善されるシアノアクリレート組成物に関する。
【0020】
シアノアクリレート成分としては、HC=C(CN)-COORで表されるもののような、多数の置換基を備えて選択できる少なくとも1つのシアノアクリレートモノマーが挙げられ、式中、Rは、C1-15アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール、アリル、及びハロアルキル基から選択される。望ましくは、シアノアクリレートモノマーは、メチルシアノアクリレート、エチル-2-シアノアクリレート、プロピルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート(例えば、n-ブチル-2-シアノアクリレート)、オクチルシアノアクリレート、アリルシアノアクリレート、β-メトキシエチルシアノアクリレート、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0021】
シアノアクリレート成分は、全組成物の約50重量%~約99.98重量%の範囲内の量で組成物中に包含されるべきであり、約70重量%~約95重量%の範囲が望ましい。
【0022】
シアノアクリレート成分に加えて、多官能性シアノアクリレート成分も同様に包含されてよい。多官能性シアノアクリレート成分は、通常ビス-シアノアクリレートであるが、三官能性、四官能性、又は五官能性であってもよい。
【0023】
ビス-シアノアクリレートは、構造Iに包含される。
【0024】
【化1】
【0025】
式中、構造I中のRは、(CHから選択される結合であり、nは2、3、4、5、6、8、9、10、又は12であり、例えば、直鎖又は分枝鎖アルキレンである。この種のビス-シアノアクリレートは、適切なジオールを使用したエステル交換反応によって調製されてよく、「R」のアルキレン中心セグメントを生成する。これらのビス-シアノアクリレートの好ましい例としては、1,10-デカンジオールビス-シアノアクリレート、1,8-オクタンジオールビス-シアノアクリレート、1,6-ヘキサンビス-シアノアクリレートが挙げられる。このようなビス-シアノアクリレートを得る適切な合成方法は、一般に、米国特許第3,975,422号(バック)、同第4,012,402号(バック)、及び同第6,096,848号(ゴロボブ)、並びに国際特許公開第WO2010/091975号に見出すことができる。
【0026】
使用する場合、多官能性シアノアクリレート成分は、約5重量%~約30重量%の範囲内の量で組成物中に包含されるべきであり、全組成物の約10重量%~約20重量%の範囲の量であることが望ましい。
【0027】
芳香族多官能性無水物成分は、芳香族二無水物成分等の多くの材料から選択されてよい。例えば、芳香族二無水物成分は、以下の構造II内の化合物に包含されてよい。
【0028】
【化2】
【0029】
式中、Xは、O、S、C=O、S=O、O=S=O、--、CRR(ここで、R及びRは互いに独立しており、H、C-Cアルキル及びハロゲンから成る群から選択される)、Y-Ar-Y[ここで、Y及びYはO、S、--、及びCRR(ここで、R及びRは上記の通りである)から独立して選択され、Arは芳香環又は少なくとも1つの芳香環を含む縮合環系である]、Y-Ar-Y-Ar-Y(ここで、Y、Ar、及びYは上記の通りであり、ArはArから選択され、YはY又はYから選択され、Arは上記の通りである)、並びに(O=CO)-Z(ここで、ZはC-Cアルキレンである)から選択される。
【0030】
より具体的には、以下の構造内の芳香族二無水物成分である。
【0031】
【化3】
【0032】
式中、Xは上で定義した通りである。
【0033】
芳香族二無水物成分の例示的な種としては、以下が挙げられる(それぞれの構造の下に頭字語を有するものもある)。
【0034】
【化4】
【0035】
【化5】
【0036】
【化6】
【0037】
【化7】
【0038】
【化8】
【0039】
【化9】
【0040】
【化10】
【0041】
【化11】
【0042】
【化12】
【0043】
芳香族多官能性無水物成分は、組成物中に約0.05重量%~約5重量%、例えば約0.1重量%~約1重量%の量で存在すべきである。
【0044】
カリックスアレーン及びオキサカリックスアレーン、シラクラウン、クラウンエーテル、シクロデキストリン、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、エトキシル化水素化合物、及びそれらの組み合わせから選択されるいずれか1つ以上のような促進剤も、本発明のシアノアクリレート組成物に包含させてよい。
【0045】
カリックスアレーン及びオキサカリックスアレーンのうち、多くは知られており、特許文献で報告されている。例えば、米国特許第4,556,700号、同第4,622,414号、同第4,636,539号、同第4,695,615号、同第4,718,966号、及び同第4,855,461号を参照、これらのそれぞれの開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0046】
例えば、カリックスアレーンに関しては、以下の構造内のものが有用である。
【0047】
【化13】
【0048】
式中、Rはアルキル、アルコキシ、置換アルキル又は置換アルコキシであり、RはH又はアルキルであり、nは4、6、又は8である。
【0049】
1つの特に望ましいカリックスアレーンは、テトラブチルテトラ[2-エトキシ-2-オキソエトキシ]カリックス-4-アレーンである。
【0050】
多数のクラウンエーテルが知られている。例えば、本明細書で個別に又は組み合わせて使用できる例としては、15-クラウン-5、18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6、ベンゾ-15-クラウン-5-ジベンゾ-24-クラウン-8、ジベンゾ-30-クラウン-10、トリベンゾ-18-クラウン-6、非対称-ジベンゾ-22-クラウン-6、ジベンゾ-14-クラウン-4、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6、ジシクロヘキシル-24-クラウン-8、シクロヘキシル-12-クラウン-4、1,2-デカリル-15-クラウン-5、1,2-ナフト-15-クラウン-5、3,4,5-ナフチル-16-クラウン-5、1,2-メチル-ベンゾ-18-クラウン-6、1,2-メチルベンゾ-5,6-メチルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-18-クラウン-6、1,2-ビニルベンゾ-15-クラウン-5、1,2-ビニルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-シクロヘキシル-18-クラウン-6、非対称-ジベンゾ-22-クラウン-6及び1,2-ベンゾ-1,4-ベンゾ-5-酸素-20-クラウン-7が挙げられる。米国特許第4,837,260(サトウ)を参照、その開示内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0051】
シラクラウンのうち、やはり多くが知られており、文献で報告されている。
【0052】
本発明の組成物において有用なシラクラウン化合物の具体例としては、以下が挙げられる。
【0053】
【化14】
【0054】
【化15】
【0055】
【化16】
【0056】
例えば、米国特許第4,906,317号(リュー)を参照、その開示内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0057】
多くのシクロデキストリンが本発明に関連して使用されてよい。例えば、その開示が参照により本明細書に明示的に組み込まれる米国特許第5,312,864号(ウェンズ)に、シアノアクリレートに少なくとも部分的に可溶性であるα、β、又はγ-シクロデキストリンのヒドロキシル基誘導体として記載され特許請求されているものは、促進剤成分として本明細書で使用するのに適切な選択である。
【0058】
例えば、本明細書での使用に適したポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートとしては、以下の構造内のものが挙げられる:
【0059】
【化17】
【0060】
式中、nは3超過であり、例えば3~12の範囲内であり、特に望ましいのnは9である。より具体的な例としては、PEG200DMA(nは約4)、PEG400DMA(nは約9)、PEG600DMA(nは約14)、及びPEG800DMA(nは約19)が挙げられる。数字(例えば、400)は、2つのメタクリレート基を除いた分子のグリコール部分の平均分子量を表し、グラム/モル(つまり、400g/mol)で表される。特に望ましいPEG DMAはPEG400DMAである。
【0061】
そして、エトキシル化水素化合物(又は使用されてよいエトキシル化脂肪族アルコール)のうち適切なものは、以下の構造内のものから選択されてよい:
【0062】
【化18】
【0063】
式中、Cは直鎖状又は分枝状のアルキル鎖又はアルケニル鎖であり得、mは1~30の整数、例えば5~20であり、nは2~30の整数、例えば5~15であり、Rは、H又はC1~6アルキル等のアルキルであってよい。
【0064】
使用する場合、上記の構造に包含される促進剤は、組成物中に約0.01重量%~約10重量%の範囲内の量で包含されるべきであり、約0.1重量%~約0.5重量%の範囲が望ましく、全組成物の約0.4重量%が特に望ましい。
【0065】
安定剤パッケージも通常、シアノアクリレート組成物中に見られる。安定剤パッケージは、1つ又は複数のフリーラジカル安定剤及びアニオン安定剤を包含してよく、それらのそれぞれの識別及び量は当業者に公知である。例えば、米国特許第5,530,037号及び同第6,607,632号を参照、それぞれの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
他の添加剤、例えば、特定の酸性物質(クエン酸等)、チキソトロピー剤又はゲル化剤、増粘剤、染料、及びそれらの組み合わせ等を、本発明のシアノアクリレート組成物に包含させてよい。
【0067】
本発明の別の態様では、少なくとも一方がアルミニウムから構成される2つの基材を接着する方法であって、上記の組成物を基材の少なくとも1つに塗布する工程、及び前記接着剤が定着するのに十分な時間、基材を接合する工程を含む方法が提供される。
【0068】
本発明のさらに別の態様では、そのように記載された組成物の硬化生成物が提供される。
【0069】
本発明のさらに別の態様では、そのように記載された組成物を調製する方法が提供される。この方法は、シアノアクリレート成分を提供する工程、及びそれと芳香族多官能性無水物成分を組み合わせる工程を包含する。
【0070】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。
【実施例
【0071】
エチル-2-シアノアクリレート及び一連の芳香族二無水物からシアノアクリレート組成物を調製した。1つの試料では、エチル-2-シアノアクリレート及び無水フタル酸が対照(試料A)として選択される。
【0072】
以下の表1では、特定された構成成分を記載の量で用いて4つの追加の試料(B~E)を調製した。
【0073】
【表1】
【0074】
試料A~Eのそれぞれをアルミニウム重ねせん断に適用し、性能評価のために接着アセンブリを準備した。
【0075】
以下の表2に示すように、アルミニウム基材に塗布した試料は、室温で24時間硬化後の引張強度[N/mm]に関して次の性能を示す。
【0076】
【表2】
【0077】
試料B~Eのそれぞれは、試料Aと対照的に、アルミニウム基材上での引張強度性能が向上した。試料B~Eは、芳香族多官能性無水物の属の種を0.1重量%のレベルで含有するのに対し、試料Aは対照として無水フタル酸をそのレベルで含有する。試料B~Eは、対照と比較して少なくとも50%の改善を示し、試料Bに関しては250%以上の改善を示す。
【0078】
以下の表3では、3つの試料(試料F~H)を調製した。
【0079】
【表3】
【0080】
試料F~Hのそれぞれをアルミニウム重ねせん断に適用し、性能評価のために接着アセンブリを準備した。
【0081】
以下の表4に示すように、アルミニウム基材に適用した試料は、室温で24時間硬化後の引張強度[N/mm]に関して次の性能を示す。
【0082】
【表4】
【0083】
試料G~Hのそれぞれは、試料Fと対照的に、アルミニウム基材上での引張強度性能が向上した。試料G~Hは、芳香族多官能性無水物の属の種としてODPAを0.1重量%及び0.5重量%のレベルで含有するのに対し、試料Fは対照として無水フタル酸を0.1重量%のレベルで含有する。試料Gは対照と比較して100%以上の改善を示し、試料Hはより高い重量にもかかわらず、対照より250%の改善を示す。
【国際調査報告】