(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】少量の菌体外多糖を産生するパエニバチルス(Paenibacillus)株
(51)【国際特許分類】
C12N 15/54 20060101AFI20240822BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240822BHJP
C07K 14/195 20060101ALI20240822BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240822BHJP
C12P 1/04 20060101ALI20240822BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20240822BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240822BHJP
A01N 63/25 20200101ALI20240822BHJP
A01G 13/00 20060101ALI20240822BHJP
A01C 1/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C12N15/54
C12N1/20 A ZNA
C12N1/20 E
C07K14/195
C12N1/21
C12P1/04 Z
C12N9/10
A01P3/00
A01N63/25
A01G13/00 A
A01C1/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509337
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2022072287
(87)【国際公開番号】W WO2023020880
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイ,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ハインリヒ,ダニエル クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヘロルト,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】スティール,ラインハルト
【テーマコード(参考)】
2B051
4B064
4B065
4H011
4H045
【Fターム(参考)】
2B051AB01
2B051BA09
4B064CA02
4B064CA19
4B064CC24
4B065AA01X
4B065CA22
4B065CA24
4B065CA27
4B065CA47
4B065CA60
4H011AA01
4H011AA03
4H011BB21
4H045AA20
4H045CA11
4H045DA89
4H045EA05
4H045EA06
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
フリッパーゼPepR、フリッパーゼPepH、マンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ、及び/又はレバンスクラーゼSacBの活性の低下を含むパエニバチルス(Paenibacillus)株を開示する。これらのパエニバチルス(Paenibacillus)株は、液体培養物並びにこれらの株を含む農業用組成物及びこれらの株を作製及び使用する方法において成長した場合に低い粘度を示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株であって、
a)PepRが存在しないか若しくは変異体PepR、又は
b)変異体PepH、又は
c)PepXが存在しないか若しくは変異体PepX、又は
d)変異体ManC、又は
e)変異体SacB、又は
f)a)、b)、c)、d)、若しくはe)の少なくとも2つの組み合わせ
を含み、
前記PepRが存在しないか若しくは前記変異体PepRにより、野生型PepRを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、前記パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
前記変異体PepHにより、野生型PepHを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、前記パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
前記PepXが存在しないか若しくは前記変異体PepXにより、野生型PepXを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、前記パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
前記変異体ManCにより、野生型ManCを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、又はManCを含まないパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、前記パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
前記変異体SacBにより、SacBを含まないパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、前記パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
それぞれの野生型PepR、PepH、PepX、ManC、又はSacBを含み、比較に使用される前記パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株は、PepR、PepH、PepX、ManC、若しくはSacB又はその変異体を含まない株と同じパエニバチルス(Paenibacillus)種のものである、
パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株。
【請求項2】
a)前記野生型PepRは、配列番号1と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有し、前記変異体PepRは、
図2に示すアラインメントで100%保存されているアミノ酸と同じ位置のアミノ酸とは異なるアミノ酸を含む、又は
b)前記野生型PepHは、配列番号8と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有し、前記変異体PepHは、
図3に示すアラインメントで100%保存されているアミノ酸と同じ位置のアミノ酸とは異なるアミノ酸を含む、又は
c)前記野生型PepXは、配列番号15と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有し、前記変異体PepXは、
図4に示すアラインメントで100%保存されているアミノ酸と同じ位置のアミノ酸とは異なるアミノ酸を含む、又は
d)前記野生型ManCは、配列番号22と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有し、前記変異体ManCは、
図5に示すアラインメントで100%保存されているアミノ酸と同じ位置のアミノ酸とは異なるアミノ酸を含む、又は
e)前記野生型SacBは、配列番号1と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有し、前記変異体SacBは、
図6に示すアラインメントで100%保存されていると同じ位置のアミノ酸とは異なるアミノ酸を含む、
請求項1に記載のパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株。
【請求項3】
a)PepRが存在しないか若しくは変異体PepRを含む、好ましくはW224
*若しくはS393F変異を有するPepRを含む、又は
b)変異したPepHを含む、好ましくはE96K若しくはE163K若しくはE96K及びE163K変異を有するPepHを含む、又は
c)PepRが存在しないか若しくは変異体PepRを含む、好ましくはトランケートしたPepRを含む、又は
d)変異したManCを含む、好ましくはP90S、E340K、若しくはG433D変異を有するManCを含む、又は
e)トランケートしたSacB若しくはG323S変異を有するSacBを含む、
請求項1又は2に記載のパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株。
【請求項4】
PepRを含まない、請求項1~3のいずれか1項に記載のパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株。
【請求項5】
PepXを含まない、請求項1~3のいずれか1項に記載のパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株。
【請求項6】
前記パエニバチルス(Paenibacillus)の種が、パエニバチルス・ポリミクサ(Paenibacillus polymyxa)、パエニバチルス・ジャミラエ(Paenibacillus jamilae)、パエニバチルス・オットウィ(Paenibacillus ottowii)、パエニバチルス・テラエ(Paenibacillus terrae)、及びパエニバチルス・クリベンシス(Paenibacillus kribensis)から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載のパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株。
【請求項7】
前記パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の親株が、P.ポリミクサ(P.polymyxa)株DSM365、P.ポリミクサ(P.polymyxa)株PKB1、P.ポリミクサ(P.polymyxa)株JB05-01-1、P.ポリミクサ(P.polymyxa)株AC-1、P.ポリミクサ(P.polymyxa)株HY96-2、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)Aloe-11、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株NRRL B-50972、NRRL B-67129、NRRL B-67304、NRRL B-67306、及びNRRL B-67615、NRRL B-50374、NRRL B-67721、NRRL B-67723、NRRL B-67724、P.ポリミクサ(P.polymyxa)株VMC10/96、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株10.6D、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株 9.4E、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株Lu16774、Lu17007、及びLu17015、パエニバチルス・ポリミクサ(Paenibacillus.polymyxa)株M1、パエニバチルス・ポリミクサ(Paenibacillus.polymyxa)株SC2、Paenibacillus.polymyxa)株Sb3-1、並びにパエニバチルス・ポリミクサ(Paenibacillus.polymyxa)株E681を含む株の群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載のパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株を含む農業用組成物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載のパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株を含むか、又は請求項8に記載の農業用組成物でコーティングされる植物繁殖材料。
【請求項10】
植物の真菌感染を抑制又は予防する方法であって、前記真菌、その生息地、又は真菌の攻撃から保護される材料若しくは植物、又は土壌若しくは植物繁殖材料が、有効量の請求項1~7のいずれか1項に記載のパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株、又は請求項8に記載の農業用組成物で処理される、方法。
【請求項11】
発酵による価値ある生成物の生成方法であって、
1)前記価値ある生成物が生成される条件下の培養培地中で、請求項1~7のいずれか1項に記載のパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株を培養する工程と、
3)前記価値ある生成物を収集する工程と、
を含む方法。
【請求項12】
前記価値ある生成物が、
a)酵素若しくはタンパク質又は
b)パエニバチルス(Paenibacillus)の代謝産物又は
c)2,3-ブタンジオール、乳酸、若しくはアセトイン又は
d)この株によって産生されるEPSである、
請求項11に記載の価値ある生成物の生成方法。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか1項に記載のパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の請求項8に記載の農業用組成物での使用、又は請求項10~12のいずれか1項に記載の方法での使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリッパーゼPepR、フリッパーゼPepH、マンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ、及び/又はレバンスクラーゼSacBの活性の低下を含むパエニバチルス(Paenibacillus)株に関する。これらのパエニバチルス(Paenibacillus)株は、液体培養物中で成長した場合に低い粘度を示す。本発明はまた、これらの株を含む組成物、及びこれらの株の作製使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パエニバチルス(Paenibacillus)は、数種類の菌体外多糖(EPS)を産生する能力で知られている(Liang and Wang,Recent Advances in Exopolysaccharides from Paenibacillus spp.:Production,Isolation,Structure,and Bioactivities,Mar.Drugs 2015,13,1847 to 1863)。これまでに記載されたパエニバチルス(Paenibacillus)種により産生されるEPSの主成分は、以下のとおりである:
1)レバン、β-(2→6)フルクトフラノシド結合により連結したフルクトースのポリマー(Bezzate et al,Disruption of the Paenibacillus polymyxa levansucrase gene impairs its ability to aggregate soil in the wheat rhizosphere,Environmental Microbiology 2000 2(3),333 to 342),
2)カードラン、(1→3)-d-グリコシド結合のみで構成され、同軸三重らせんを形成する直鎖状グルカン。(Rafigh et al.,Optimization of culture medium and modeling of curdlan production from Paenibacillus polymyxa by RSM and ANN、International Journal of Biological Macromolecules 70(2014)463-473)、並びに
3)パエナン(paenan)、グルコース、マンノース、ガラクトース、及びグルクロン酸を含むヘテロ多糖(Marius Ruetering,Exopolysaccharides by Paenibacilli:from Genetic Strain Engineering to Industrial Application,Dissertation,2019)。
【0003】
パエニバチルス(Paenibacilli)は、これらのEPSを産生するためにいくつかの経路を使用する。レバンの産生に必要なレバンスクラーゼ(SacB)の遺伝子に加えて、それらはいくつかの遺伝子クラスターを有している。1つの既知の遺伝子クラスターは、EPSを産生する29個の遺伝子で構成されている。(Marius Ruetering,Exopolysaccharides by Paenibacilli:from Genetic Strain Engineering to Industrial Application,Dissertation,2019)。EPSのビルディングブロックを産生する遺伝子と、ペプチドグリカン細胞壁を通過するEPSの輸送機能をコードする遺伝子に加えて、この遺伝子クラスターは、細胞膜を通して脂質結合オリゴ糖を輸送する機能を提供する2つのフリッパーゼ(pepH及びpepR)と輸送されたオリゴ糖を重合させて最終的なEPSを形成する2つのポリメラーゼ(pepE及びpepG)で構成されている(Marius Ruetering,Exopolysaccharides by Paenibacilli:from Genetic Strain Engineering to Industrial Application,Dissertation,2019)。パエニバチルス(Paenibacilli)でカードランを産生する正確なメカニズムはまだ知られていない。しかしながら、パエナンは膜に位置するシンテターゼを介して産生されると考えられている(Marius Ruetering,Exopolysaccharides by Paenibacilli:from Genetic Strain Engineering to Industrial Application,Dissertation,2019)。
【0004】
生成されたEPSは、バイオフィルムの形成など、自然環境においてパエニバチルス(Paenibacilli)にとって重要な機能を果たすが、工業生産プロセスにおける人工的な成長条件のように、糖が豊富に供給されている場合には、過剰に生成される傾向がある。このEPSの過剰な生成により、粘度の高い培養ブロスがもたらされ、これにより撹拌が困難になり、発酵槽の全ての領域を最適に通気し、均等に栄養を供給することが困難になる。工業プロセスの目的がEPSの生成ではない場合、その過剰生成は代謝負荷及び貴重な栄養素の吸収を意味するだけでなく、パエニバチルス(Paenibacilli)の胞子及びバイオマス、酵素、二次代謝物化合物、又は2,3-ブタンジオールなどの低重量化学物質など、経済的価値のある目的の生成物の下流処理及び単離において追加の問題を引き起こすことがよくある。
【0005】
このような問題を回避するために、パエニバチルス(Paenibacilli)のEPS産生能力を低下させるいくつかのアプローチが取られてきた。これらのアプローチでは、通常、個々の遺伝子の欠失、又はEPS産生クラスターの大部分の欠失を使用して、1つ以上のEPSを産生する能力を破壊する。例えば:Okonkwo et al。Inactivation of the Levansucrase Gene in Paenibacillus polymyxa DSM 365 Diminishes Exopolysaccharide Biosynthesis during 2,3-Butanediol Fermentation,Applied and Environmental Microbiology,Volume 86 Issue 9,2020,e00196-20は、レバンスクラーゼをコードする遺伝子を欠失していた。これらのアプローチには、レバンスクラーゼ遺伝子の欠失及びEPSポリメラーゼの両方の遺伝子(pepE及びpepG)並びに2つのフリッパーゼ遺伝子の1つの遺伝子(pepH)を含む、パエニバチルス(Paenibacillus)のEPS遺伝子クラスターの追加の16遺伝子の欠失も含まれていた。同じ遺伝子クラスターが、He et al.Effects of an EPS Biosynthesis Gene Cluster of Paenibacillus polymyxa WLY78 on Biofilm Formation and Nitrogen Fixation under Aerobic Conditions,Microorganisms 2021,9,289.https://doi.org/10.3390/microorganisms9020289.で例示されている。He et al.は、遺伝子クラスター全体を2つの別々の大きな欠失で欠失させ、pepHを含む大きな欠失により低量のEPSを産生する菌株が生じることを見出したが、pepRを含む大きな遺伝子クラスターの後半の欠失がEPSの産生に影響を及ぼさないことを見出した。
【0006】
これらのアプローチは大規模発酵中のEPS生成を低減することに成功している一方で、特に高濃度のグルコース及び/又はサッカロースが成長培地中に存在する場合、微生物の代謝に対する影響はそれほど深刻ではないが、それでも大規模発酵中のEPS生成を低減する、それほど極端ではないアプローチの必要性が依然として残っている。また、大規模発酵中にEPS生成は十分に低下するが、自然条件下で成長した場合にバイオフィルム形成及び植物との相互作用を可能にするのに十分な量のEPSを産生する能力を維持する新しい菌株も必要とされている。
【0007】
驚くべきことに、パエニバチルス(Paenibacilli)の1つのフリッパーゼの活性を低下させるだけで、総EPS生成に強い影響を与えるのに十分であるということが見出された。同様に驚くべきことに、変異体レバンスクラーゼは、レバンスクラーゼコード配列全体を欠失させるよりも総EPS生成の強力な低減につながる可能性があるということが見出された。両方の場合において、変異体株の代謝活性は、例えば、発酵プロセス中に到達した最大二酸化炭素移動速度(CTR)によって示されるように、増加した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本明細書において、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株であって、
a)PepRが存在しないか若しくは変異体PepR、又はb)変異体PepH、又はc)PepXが存在しないか若しくは変異体PepX、又は
d)変異体ManC、又はe)変異体SacB、又はf)a)、b)、c)、d)、若しくはe)の少なくとも2つの組み合わせを含み、PepRが存在しないか若しくは変異体PepRにより、野生型PepRを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、変異体PepHにより、野生型PepHを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、PepXが存在しないか若しくは変異体PepXにより、野生型PepXを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、変異体ManCにより、野生型ManCを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、又はManCを含まないパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
変異体SacBにより、SacBを含まないパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされる、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株が提供される。
【0009】
更なる態様では、本明細書において、農業用組成物であって、a)PepRが存在しないか若しくは変異体PepR、又はb)PepHが存在しないか若しくは変異体PepH、又はc)PepXが存在しないか若しくは変異体PepX、又はd)ManCが存在しないか若しくは変異体ManC、又はe)SacBが存在しないか若しくは変異体SacB、又はf)a)、b)、c)、d)、e)、若しくはf)のうちの少なくとも2つの組み合わせを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株を含み、
PepRが存在しないか若しくは変異体PepRにより、野生型PepRを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
PepHが存在しないか若しくは変異体PepHにより、野生型PepHを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
PepXが存在しないか若しくは変異体PepXにより、野生型PepXを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
ManCが存在しないか若しくは変異体ManCにより、野生型ManCを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
SacBが存在しないか若しくは変異体SacBにより、SacBを含まないパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
それぞれの野生型PepR、PepH、PepX、ManC、又はSacBを含み、比較に使用されるパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株は、PepR、PepH、PepX、ManC、若しくはSacBが存在しないか又はその変異体を含む株と同じパエニバチルス(Paenibacillus)種のものである、
農業用組成物が提供される。
【0010】
更なる態様では、本明細書において、植物繁殖材料であって、a)PepRが存在しないか若しくは変異体PepR、又はb)PepHが存在しないか若しくは変異体PepH、又はc)PepXが存在しないか若しくは変異体PepX、又はd)ManCが存在しないか若しくは変異体ManC、又はe)SacBが存在しないか若しくは変異体SacB、又はf)a)、b)、c)、d)、e)、若しくはf)のうちの少なくとも2つの組み合わせを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株を含み、
PepRが存在しないか若しくは変異体PepRにより、野生型PepRを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
PepHが存在しないか若しくは変異体PepHにより、野生型PepHを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
PepXが存在しないか若しくは変異体PepXにより、野生型PepXを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
ManCが存在しないか若しくは変異体ManCにより、野生型ManCを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
SacBが存在しないか若しくは変異体SacBにより、SacBを含まないパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
それぞれの野生型PepR、PepH、PepX、ManC、又はSacBを含み、比較に使用されるパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株は、PepR、PepH、PepX、ManC、若しくはSacBが存在しないか又はその変異体を含む株と同じパエニバチルス(Paenibacillus)種のものである、
植物繁殖材料が提供される。
【0011】
一態様では、本明細書において、植物の真菌感染を抑制又は予防する方法であって、真菌、その生息地又は真菌の攻撃から保護すべき材料若しくは植物、又は土壌若しくは植物繁殖材料が、a)PepRが存在しないか若しくは変異体PepR、又はb)PepHが存在しないか若しくは変異体PepH、又はc)PepXが存在しないか若しくは変異体PepX、又はd)ManCが存在しないか若しくは変異体ManC、又はe)SacBが存在しないか若しくは変異体SacB、又はf)a)、b)、c)、d)、e)、若しくはf)のうちの少なくとも2つの組み合わせを含む有効量のパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株で処理され、
PepRが存在しないか若しくは変異体PepRにより、野生型PepRを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
PepHが存在しないか若しくは変異体PepHにより、野生型PepHを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
PepXが存在しないか若しくは変異体PepXにより、野生型PepXを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
ManCが存在しないか若しくは変異体ManCにより、野生型ManCを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
SacBが存在しないか若しくは変異体SacBにより、SacBを含まないパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされるか、又は
真菌、その生息地又は真菌の攻撃から保護すべき材料若しくは植物、又は土壌若しくは植物繁殖材料が、a)PepRが存在しないか若しくは変異体PepR、又はb)PepHが存在しないか若しくは変異体PepH、又はc)PepXが存在しないか若しくは変異体PepX、又はd)ManCが存在しないか若しくは変異体ManC、又はe)SacBが存在しないか若しくは変異体SacB、又はf)a)、b)、c)、d)、e)、若しくはf)のうちの少なくとも2つの組み合わせを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株を含む有効量の農業用組成物で処理され、
PepRが存在しないか若しくは変異体PepRにより、野生型PepRを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
PepHが存在しないか若しくは変異体PepHにより、野生型PepHを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
PepXが存在しないか若しくは変異体PepXにより、野生型PepXを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
ManCが存在しないか若しくは変異体ManCにより、野生型ManCを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
SacBが存在しないか若しくは変異体SacBにより、SacBを含まないパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
それぞれの野生型PepR、PepH、PepX、ManC、又はSacBを含み、比較に使用されるパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株は、PepR、PepH、PepX、ManC、若しくはSacBが存在しないか又はその変異体を含む株と同じパエニバチルス(Paenibacillus)種のものである、
方法が提供される。
【0012】
また、発酵による価値ある生成物の生成方法であって、
1)価値ある生成物が生成される条件下の培養培地中で、
a)PepRが存在しないか若しくは変異体PepR、又はb)PepHが存在しないか若しくは変異体PepH、又はc)PepXが存在しないか若しくは変異体PepX、又はd)ManCが存在しないか若しくは変異体ManC、又はe)SacBが存在しないか若しくは変異体SacB、又はf)a)、b)、c)、d)、e)、若しくはf)のうちの少なくとも2つの組み合わせを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株を培養する工程であって、
PepRが存在しないか若しくは変異体PepRにより、野生型PepRを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
PepHが存在しないか若しくは変異体PepHにより、野生型PepHを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
PepXが存在しないか若しくは変異体PepXにより、野生型PepXを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
ManCが存在しないか若しくは変異体ManCにより、野生型ManCを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
SacBが存在しないか若しくは変異体SacBにより、SacBを含まないパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、それぞれの野生型PepR、PepH、PepX、ManC、又はSacBを含み、比較に使用されるパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株は、PepR、PepH、PepX、ManC、若しくはSacBが存在しないか又はその変異体を含む株と同じパエニバチルス(Paenibacillus)種のものである、
工程と、
2)価値ある生成物を収集する工程と、
を含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、PepR(本明細書ではexoTと呼ぶ)、SacBをコードする領域を欠失させることによるパエニバチルスLU17007株の異なる変異体及びパエニバチルス株LU17007に由来する株、並びにSacBのG323S変異体を含む株バリアントの培養時間にわたる粘度の変化を示す。
【
図2】
図2は、パエニバチルス(Paenibacillus)株LU17007、パエニバチルス・オットウィ(Paenibacillus ottowii)、パエニバチルス・ポリミクサ(Paenibacillus polymyxa)DSM365、パエニバチルス・テラエ(Paenibacillus terrae)、パエニバチルス・クリベンシス(Paenibacillus kripbbensis)、及びパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)Aloe-11のPepRのアミノ酸配列のアラインメントを示す。
【
図3】
図3は、パエニバチルス(Paenibacillus)株LU17007、パエニバチルス・オットウィ(Paenibacillus ottowii)、パエニバチルス・ポリミクサ(Paenibacillus polymyxa)DSM365、パエニバチルス・テラエ(Paenibacillus terrae)、パエニバチルス・クリベンシス(Paenibacillus kripbbensis)、及びパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)Aloe-11のPepHのアミノ酸配列のアラインメントを示す。
【
図4】
図4は、パエニバチルス(Paenibacillus)株LU17007、パエニバチルス・オットウィ(Paenibacillus ottowii)、パエニバチルス・ポリミクサ(Paenibacillus polymyxa)DSM365、パエニバチルス・テラエ(Paenibacillus terrae)、パエニバチルス・クリベンシス(Paenibacillus kripbbensis)、及びパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)Aloe-11のPepXのアミノ酸配列のアラインメントを示す。
【
図5】
図5は、パエニバチルス(Paenibacillus)株LU17007、パエニバチルス・オットウィ(Paenibacillus ottowii)、パエニバチルス・ポリミクサ(Paenibacillus polymyxa)DSM365、パエニバチルス・テラエ(Paenibacillus terrae)、パエニバチルス・クリベンシス(Paenibacillus kripbbensis)、及びパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)Aloe-11のManCのアミノ酸配列のアラインメントを示す。
【
図6】
図6は、パエニバチルス(Paenibacillus)株LU17007、パエニバチルス・オットウィ(Paenibacillus ottowii)、パエニバチルス・ポリミクサ(Paenibacillus polymyxa)DSM365、パエニバチルス・テラエ(Paenibacillus terrae)、パエニバチルス・クリベンシス(Paenibacillus kripbbensis)、及びパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)Aloe-11のSacBのアミノ酸配列のアラインメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、パエニバチルス(Paenibacillus)株であって、
a)PepRが存在しないか若しくは変異体PepR、又は
b)変異体PepH、又は
c)PepXが存在しないか若しくは変異体PepX、又は
d)変異体ManC、又は
e)変異体SacB、又は
f)a)、b)、c)、d)、若しくはe)の少なくとも2つの組み合わせを含み、
PepRが存在しないか若しくは変異体PepRにより、野生型PepRを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
変異体PepHにより、野生型PepHを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
PepXが存在しないか若しくは変異体PepXにより、野生型PepXを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
変異体ManCにより、野生型ManCを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、又はManCを含まないパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
変異体SacBにより、SacBを含まないパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされる、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株が記載される。
好ましくは、それぞれの野生型PepR、PepH、PepX、ManC、又はSacBを含み、比較に使用されるパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株は、PepR、PepH、PepX、ManC、若しくはSacBが存在しないか又はその変異体を含む株と同じパエニバチルス(Paenibacillus)種のものである。
更により好ましくは、比較に使用されるパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株は、PepR、PepH、PepX、ManC、若しくはSacBを欠くか、又はそれぞれの変異体を含むパエニバチルス(Paenibacillus)の親株である。
好ましくは、PepR、PepH、PepX、ManC、又はSacBを含まない株は、それぞれの遺伝子配列の欠失、又は未成熟終止コドンにつながる変異を有する。
【0015】
本明細書で使用する場合、「パエニバチルス(Paenibacillus)株」という用語は、「パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株」という用語と同じであり、パエニバチルス(Paenibacillus)属の細菌株を意味する。パエニバチルス(Paenibacillus)属は、全てのパエニバチルス種(Paenibacillus spp.)を含む。
【0016】
本明細書に開示されるこれらのパエニバチルス(Paenibacillus)株は、それぞれ、野生型PepR、PepH、又はSacBを含むパエニバチルス(Paenibacillus)株と比較した場合、液体培養物で成長させた場合に粘度の低下を示す。
【0017】
PepRが存在しないか又は変異体PepRを含むパエニバチルス(Paenibacillus)株は、通常、野生型PepRを含むパエニバチルス(Paenibacillus)株と比較される。好ましくは、PepRが存在しないか又は変異体PepRを含むパエニバチルス(Paenibacillus)株は、突然変異又はトランスジェニック又は遺伝子編集法によって生成されたパエニバチルス(Paenibacillus)株、すなわち親株と比較される。
【0018】
したがって、親株は、それぞれの変異の存在を除いて、それぞれのパエニバチルス(Paenibacillus)株と同一のゲノム配列を有する。
同じ原理を変異体PepH又は変異体SacBを含むパエニバチルス(Paenibacillus)株に適用する。
【0019】
粘度は、好ましくは本明細書の実施例2及び3に記載したのと同じ方法を使用して測定され、グルコース又はサッカロースのいずれか、好ましくはグルコースがC源として使用される。好ましくは、液体培地は、実施例2で記載されるグルコースを含む。菌株は液体培養物で成長した場合、微生物の成長開始から少なくとも12時間、少なくとも24時間、又は少なくとも40時間の培養時間後に、好ましくは少なくとも24時間の培養時間後に100/sで測定した粘度[mPa・s]が比較菌株の100/sで測定した粘度[mPa・s]より低い場合、より粘度が低くなると考えられる。菌株は、好ましくは、培養8時間~培養40時間までの1時間ごとに測定した粘度の合計が、比較に使用した菌株の培養8時間~培養40時間までの1時間ごとに測定した粘度の合計より小さい場合、より粘度が低くなると考えられる。
【0020】
本明細書で使用する場合、本明細書及び特許請求の範囲で使用される動詞「含む」、並びにその活用形は、その用語に続く項目が含まれることを意味する非限定的な意味で使用されるが、特に言及されていない項目は除外されない。加えて、不定冠詞「1つ(a)」又は「1つ(an)」による要素への言及は、文脈が明らかに1つの、及び唯一の要素があることを要求しない限り、2つ以上の要素が存在する可能性を排除しない。したがって、不定冠詞「1つ(a)」又は「1つ(an)」は、通常「少なくとも1つ」を意味する。
【0021】
用語「(菌)株」は、細胞の成長中の突然変異の自然頻度を考慮した場合に、遺伝的に均質であると考えられ得る微生物細胞を指すことを意図している。菌株は、1つの細胞から微生物コロニーの培養を介して単離されることが多い。
【0022】
1つの菌株から増殖した微生物培養物は、生物学的純粋培養物と見なされる。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「生物学的純粋培養物」は、他の種又は菌株の微生物を本質的に含まない菌株の培養物を指す。好ましい実施形態では、「生物学的純粋培養物」は、1%未満、より好ましくは0.1%未満、更により好ましくは0.01%未満の他の種の細胞を含む。
【0024】
菌株はまた、意図的に、他の菌株と混合して共培養物を作成することができる。このような共培養物は、同時に個々の菌株の1つ以上の生物学的純粋培養物を含むと考えられている。
【0025】
変異体という用語は、タンパク質に関して使用される場合、そのようなタンパク質をコードするゲノム領域が、そのようなタンパク質の野生型アミノ酸配列と比較して、コードされたタンパク質のアミノ酸配列の変化をもたらす少なくとも1つのヌクレオチドを含む状況を指す。
【0026】
変異体という用語は、タンパク質の遺伝子に関して使用される場合、プロモーターのポリヌクレオチド配列又はそのようなタンパク質のコードされたRNA配列が野生型配列とは異なり、コードされたタンパク質の発現レベルが変化する、好ましくは低下する状況を指す。
【0027】
本発明の一実施形態では、パエニバチルス(Paenibacillus)株は、このパエニバチルス(Paenibacillus)株の野生型と比較して、このようなパエニバチルス(Paenibacillus)株のPepR、PepH、PepX、ManC、及び/又はSacBの発現レベルの低下をもたらす変異体遺伝子を含む。
【0028】
本発明のパエニバチルス(Paenibacillus)株は、バッチプロセス又は供給バッチプロセス若しくは反復供給バッチプロセスにおいて連続的又は不連続的に培養することができる。公知の培養方法の概観は、Chmielによる教科書(Bioprozesstechnik 1.Einfuehrung in die Bioverfahrenstechnik(Gustav Fischer Verlag,Stuttgart,1991))又はStorhasによる教科書(Bioreaktoren und periphere Einrichtungen(Vieweg Verlag,Braunschweig/Wiesbaden,1994))に見出される。
【0029】
パエニバチルス(Paenibacillus)株の培養に使用される培地は、適切に特定の株の要件を満たさなければならない。種々の微生物のための培地の説明は、American Society for Bacteriologyのハンドブック“Manual of Methods for General Bacteriology”(Washington D.C.,USA,1981)に記載されている。更なる好適な培地は、当該技術分野で、例えば、本明細書で引用される文書に開示されている。
【0030】
好ましくは、パエニバチルス(Paenibacillus)株は、以下のパエニバチルス(Paenibacillus)種に属する:パエニバチルス・ポリミクサ(Paenibacillus polymyxa)、パエニバチルス・ジャミラエ(Paenibacillus jamilae)、パエニバチルス・オットウィ(Paenibacillus ottowii)、パエニバチルス・テラエ(Paenibacillus terrae)、又はパエニバチルス・クリベンシス(Paenibacillus kribensis)。
【0031】
本発明の株を構築するのに好適な好ましい株は、P.ポリミクサ(P.polymyxa)株DSM365、P.ポリミクサ(P.polymyxa)株PKB1、P.ポリミクサ(P.polymyxa)株JB05-01-1、P.ポリミクサ(P.polymyxa)株AC-1、P.ポリミクサ(P.polymyxa)株HY96-2、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)Aloe-11、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株NRRL B-50972、NRRL B-67129、NRRL B-67304、NRRL B-67306、及びNRRL B-67615、NRRL B-50374、NRRL B-67721、NRRL B-67723、NRRL B-67724、P.ポリミクサ(P.polymyxa)株VMC10/96、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株10.6D、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株 9.4E、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株Lu16774、Lu17007、及びLu17015、P.ポリミクサ(P.polymyxa)株M1、P.ポリミクサ(P.polymyxa)株SC2、P.ポリミクサ(P.polymyxa)株Sb3-1、並びにP.ポリミクサ(P.polymyxa)株E681である。特に好ましい株は、Lu17007及びDSM365である。
【0032】
フリッパーゼPepRが存在しないか若しくは変異体フリッパーゼPepR又は変異体フリッパーゼPepH、フリッパーゼPepXが存在しないか若しくは変異体フリッパーゼPepX、マンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼManCが存在しないか若しくは変異体マンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼManC、又は変異体レバンスクラーゼSacBを含むパエニバチルス(Paenibacillus)株は、好ましくは、野生型PepRが配列番号1と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有し、変異体PepRが、
図2で示されたアラインメントで100%保存されているアミノ酸と同じ位置のアミノ酸とは異なるアミノ酸を含む株であるか、又は
野生型PepHが、配列番号8と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有し、変異体PepHが、
図3に示すアラインメントで100%保存されているアミノ酸と同じ位置のアミノ酸とは異なるアミノ酸を含む株であるか、又は
野生型PepXが、配列番号15と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有し、変異体PepHが、
図4に示すアラインメントで100%保存されているアミノ酸と同じ位置のアミノ酸とは異なるアミノ酸を含む株であるか、又は
野生型ManCが、配列番号22と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有し、変異体ManCが、
図5に示すアラインメントで100%保存されているアミノ酸と同じ位置のアミノ酸とは異なるアミノ酸を含む株であるか、又は
野生型SacBが、配列番号29と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有し、変異体SacBが、
図6に示すアラインメントで100%保存されているアミノ酸と同じ位置のアミノ酸とは異なるアミノ酸を含む株である。
【0033】
フリッパーゼPepRが存在しないか若しくは変異体フリッパーゼPepR又は変異体フリッパーゼPepH、フリッパーゼPepXが存在しないか若しくは変異体フリッパーゼPepX、マンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼManCが存在しないか若しくは変異体マンノース-1-ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼManC、
又は変異体レバンスクラーゼSacBを含むパエニバチルス(Paenibacillus)株は、好ましくは、野生型PepRが配列番号1と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有し、変異体PepRが、配列番号1~7のいずれか1つと100%同一ではないアミノ酸配列を含むか、若しくは未成熟終止コドンを含む株であるか、又は
野生型PepHが配列番号8と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有し、変異体PepRが、配列番号8~14のいずれか1つと100%同一ではないアミノ酸配列を含むか、若しくは未成熟終止コドンを含む株であるか、又は
野生型PepXが配列番号15と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有し、変異体PepXが、配列番号15~21のいずれか1つと100%同一ではないアミノ酸配列を含むか、若しくは未成熟終止コドンを含む株であるか、又は
野生型ManCが配列番号22と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有し、変異体ManCが、配列番号22~28のいずれか1つと100%同一ではないアミノ酸配列を含むか、若しくは未成熟終止コドンを含む株であるか、又は
野生型SacBが配列番号29と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは100%同一のアミノ酸配列を有し、変異体SacBが、配列番号29~35のいずれか1つと100%同一ではないアミノ酸配列を含むか、若しくは未成熟終止コドンを含む株である。
【0034】
一実施形態では、パエニバチルス(Paenibacillus)株は、W224*又はS393F変異を含む変異体PepRを含む。
【0035】
一実施形態では、パエニバチルス(Paenibacillus)株は、E96K変異又はE163K変異又はE96K及びE163K変異を含む変異体PepHを含む。
【0036】
一実施形態では、パエニバチルス(Paenibacillus)株は、変異体PepHと、PepRが存在しないか又は変異体PepRと、を含む。
【0037】
一実施形態では、パエニバチルス(Paenibacillus)株は、E96K変異又はE163K変異又はE96K及びE163K変異を含む変異体PepHと、W224*又はS393F変異を含む変異体PepRと、を含む。
【0038】
一実施形態では、パエニバチルス(Paenibacillus)株は、P90S、E340K、又はG433D変異を含む変異体ManCを含む。
【0039】
一実施形態では、パエニバチルス(Paenibacillus)株は、G323S変異を含む変異体SacBを含む。
【0040】
パエニバチルス(Paenibacillus)株は、当業者に周知であり、例えば国際公開第16020371号パンフレット(20ページ33行目から22ページ29行目までが参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている培養ブロス及び培養条件下で増殖させることができる。
【0041】
パエニバチルス(Paenibacilli)は、植物の病原体感染を抑制又は防止するための生物農薬として使用することができる。病原体感染を抑制又は防止するために好適なパエニバチルス(Paenibacilli)の株は、例えば、国際公開第2016/154297号パンフレット、同第2019/221988号パンフレット、同第2020/181053号パンフレット、同第2019/155253号パンフレット、同第2018/195603号パンフレットに開示されている。植物の病原体感染を抑制又は防止することができる多くのパエニバチルス(Paenibacillus)株は、フザリジジン(Fusarididins)を産生する。したがって、本明細書で開示される株は、好ましくは、フザリシジン産生株から作製される。フザリシジンは、環状リポデプシペプチドの類のパエニバチルス種(Paenibacillus spp.)から単離された抗生物質群であり、これらは多くの場合、以下の構造的特徴を共有している:6個のアミノ酸残基(そのうちの3つはL-Thr、D-アロ-Thr及びD-Alaである)からなる大環式環、並びにアミド結合によりN末端のL-Thr残基に結合した15-グアニジノ-3-ヒドロキシペンタデカン酸テール(ChemMedChem 7,871-882,2012;J.Microbiol.Meth.85,175-182,2011,本明細書の表1)。これらの化合物は、N末端L-Thrヒドロキシル基とC末端D-Alaカルボニル基との間のラクトン橋によって環化される。デプシペプチド環内のアミノ酸残基の位置は、通常、それ自体、GHPD鎖を有する上記のL-Thrで出発して番号付けられ、C末端D-Alaで終わる。パエニバチルスから単離されたフザリシジンの非限定的な例は、LI-F03、LI-F04、LI-F05、LI-F07及びLI-F08(J.Antibiotics 40(11),1506-1514,1987;Heterocycles 53(7),1533-1549,2000;Peptides 32,1917-1923,2011)並びにフザリシジンA(LI-F04aとも呼ばれる)、B(LI-F04bとも呼ばれる)、C(LI-F03aとも呼ばれる)及びD(LI-F03bとも呼ばれる)(J.Antibiotics 49(2),129-135,1996;J.Antibiotics 50(3),220-228,1997)と名付けられている。フザリシジンのアミノ酸鎖は、リボソームによって作製されず、非リボソーム性ペプチドシンセターゼによって作製される。公知のフザリシジンの構造式は、表1に示されている(Biotechnol Lett.34,1327-1334,2012;その
図1)。LI-F03a、LI-F03bからLI-F08a及びLI-F08bと名付けられた化合物並びに本明細書において記載される式I及びI.1のフザリシジンも、フザリシジンファミリー内のその構造故にフザリシジンLI-F03a、LI-F03bからLI-F08a及びLI-F08bと呼ばれる(例えば、表1を参照のこと)。
【0042】
単離されたフザリシジン抗生物質の中でも、フザリシジンAは、種々の臨床上関連する真菌及び黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)(MIC値範囲:0.78~3.12μg/mL)のようなグラム陽性菌に対して最も有望な抗菌活性を示した(ChemMedChem 7,871-882,2012)。天然に存在するGHPDの代わりに12-グアニジノ-ドデカン酸(12-GDA)又は12-アミノ-ドデカン酸(12-ADA)を含有するフザリシジン類似体の合成が確立されているが、12-ADAによるGHPDの置換は、抗菌活性の完全喪失をもたらした一方で、12-GDAによるGHPDの置換は、抗菌活性を保持した(Tetrahedron Lett.47,8587-8590,2006;ChemMedChem 7,871-882,2012)。
【0043】
【0044】
[式中、矢印は、GHPDのカルボニル部分とL-Thr(L-トレオニン)のアミノ基の間、又はあるアミノ酸のカルボニル基と隣接するアミノ酸のアミノ基の間のいずれかの単(アミド)結合を規定し、ここで、矢印の先端は、前記アミノ酸L-Thrの、又は前記隣接するアミノ酸のアミノ基との結合を示し、
矢頭のない単線は、D-Ala(D-アラニン)のカルボニル基とL-Thrのヒドロキシル基との間の単(エステル)結合を規定し、GHPDは、15-グアニジノ-3-ヒドロキシペンタデカン酸である]。
【0045】
フザリシジンA、B、C及びDはまた、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、コウジカビ(Aspergillus oryzae)及びペニシリウム・トミー(Penicillum thomii)などの植物病原性真菌を阻害すると報告されている(J.Antibiotics 49(2),129-135,1996;J.Antibiotics 50(3),220-228,1997)。Li-F05、LI-F07及びLI-F08などのフザリシジンは、フザリウム・モニリフォルム(Fusarium moniliforme)、F.オキシスポルム(F.oxysporum)、F.ロゼウム(roseum)、ジベレラ・フジクロイ(Giberella fujkuroi)、ヘルミントスポリウム・セサマム(Helminthosporium sesamum)及びリンゴ青カビ病菌(Penicillium expansum)などの種々の植物病原性真菌に対して特定の抗真菌活性を有すると判明した(J.Antibiotics 40(11),1506-1514,1987)。フザリシジンはまた、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を含むグラム陽性菌に対する抗菌活性も有する(J.Antibiotics 49,129-135,1996;J.Antibiotics 50,220-228,1997)。更に、フザリシジンは、セイヨウアブラナの黒色根腐れ病を引き起こすレプトスフェリア・マクランス(Leptosphaeria maculans)に対する抗真菌活性を有する(Can.J.Microbiol.48,159-169,2002)。さらに、特定のパエニバチルス(Paenibacillus)株によって産生される、フザリシジンA及びB、並びにD-アロ-Thrがエステル橋を用いてそのヒドロキシル基を介してさらなるアラニンと結合しているその2種の関連化合物は、培養パセリ細胞において耐性反応を誘導し、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)の増殖を阻害することが判明した(国際公開第2006/016558号パンフレット;欧州特許出願公開第1788074A1号明細書)。
【0046】
国際公開第2007/086645号パンフレットは、フザリシジンシンセターゼ酵素及びパエニバチルス・ポリミクサ(Paenibacillus polymyxa)株E681から単離されたそのコード遺伝子について記載している。フザリシジンシンセターゼ及び他のパエニバチルス(Paenibacilli)種のその相同体は、フザリシジンA、B、C、D、LI-F03、LI-F04、LI-F05、LI-F07、及びLI-F08の合成に関与している。
【0047】
したがって、本発明はまた、農業用組成物であって、
a)PepRが存在しないか若しくは変異体PepR、又は
b)PepHが存在しないか若しくは変異体PepH、又は
c)PepXが存在しないか若しくは変異体PepX、又は
d)ManCが存在しないか若しくは変異体ManC、又は
e)SacBが存在しないか若しくは変異体SacB、又は
f)a)、b)、c)、d)、e)、若しくはf)の少なくとも2つの組み合わせを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株を含み、
PepRが存在しないか若しくは変異体PepRにより、野生型PepRを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
PepHが存在しないか若しくは変異体PepHにより、野生型PepHを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
PepXが存在しないか若しくは変異体PepXにより、野生型PepXを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
ManCが存在しないか若しくは変異体ManCにより、野生型ManCを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
SacBが存在しないか若しくは変異体SacBにより、SacBを含まないパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
それぞれの野生型PepR、PepH、PepX、ManC、又はSacBを含み、比較に使用されるパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株は、PepR、PepH、PepX、ManC、若しくはSacBが存在しないか又はその変異体を含む株と同じパエニバチルス(Paenibacillus)種のものである、農業用組成物を含む。
【0048】
好ましくは、農薬組成物は、W224*又はS393F変異を含む変異体PepRを含む。
【0049】
好ましくは、農薬組成物は、E96K変異又はE163K変異又はE96K及びE163K変異を含む変異体PepHを含む。
【0050】
好ましくは、農薬組成物は、変異体PepHと、PepRが存在しないか若しくは変異体PepRと、を含む。
【0051】
好ましくは、農薬組成物は、E96K変異又はE163K変異又はE96K及びE163K変異を含む変異体PepHと、W224*又はS393F変異を含む変異体PepRと、を含む。
【0052】
好ましくは、農薬組成物は、P90S、E340K、又はG433D変異を含む変異体ManCを含む。
【0053】
好ましくは、農薬組成物は、G323S変異を含む変異体SacBを含む。
【0054】
農業用組成物は、好ましくは、慣用的なタイプの農薬組成物、例えば溶液、乳剤、懸濁液、粉塵、粉末、ペースト、顆粒、プレス剤、カプセル、及びそれらの混合物である。組成物のタイプの例(“Catalogue of pesticide formulation types and international coding system”,Technical Monograph No.2,6th Ed.May 2008,CropLife Internationalも参照されたい)は、懸濁液(例えば、SC、OD、FS)、乳化性濃縮物(例えば、EC)、乳剤(例えば、EW、EO、ES、ME)、カプセル(例えば、CS、ZC)、ペースト、パスティーユ、水和剤又は粉塵(例えば、WP、SP、WS、DP、DS)、プレス剤(例えば、BR、TB、DT)、顆粒(例えば、WG、SG、GR、FG、GG、MG)、殺虫物品(例えば、LN)並びに種子などの植物繁殖材料の処理のためのゲル製剤(例えば、GF)である。組成物は、例えば、Mollet and Grubemann,Formulation technology,Wiley VCH,Weinheim,2001;又はKnowles,New developments in crop protection product formulation,Agrow Reports DS243,T&F Informa,London,2005によって記載されるような公知の方法によって調製される。本発明はまた、本発明のパエニバチルス(Paenibacillus)株と、助剤と、を含む農薬組成物に関する。
【0055】
好適な助剤は、溶剤、液体担体、固体担体又は充填剤、界面活性剤、分散剤、乳化剤、湿潤剤、アジュバント、可溶化剤、浸透促進剤、保護コロイド、付着剤、増粘剤、保湿剤、忌避剤、誘引剤、摂食刺激物質、相溶化剤、殺菌剤、不凍剤、消泡剤、着色剤、粘着付与剤及びバインダーである。
好適な溶剤及び液体担体は、水及び有機溶媒、例えば中~高沸点の鉱油留分、例えばケロシン、ディーゼル油;植物又は動物由来の油;脂肪族、環式及び芳香族炭化水素、例えばトルエン、パラフィン、テトラヒドロナフタレン及びアルキル化ナフタレン;アルコール類、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、グリコール;DMSO;ケトン類、例えばシクロヘキサノン;エステル類、例えばラクテート、カルボネート、脂肪酸エステル、γ-ブチロラクトン;脂肪酸類;ホスホネート類;アミン類;アミド、例えばN-メチルピロリドン、脂肪酸ジメチルアミド;及びこれらの混合物である。
【0056】
好適な固体担体又は充填剤は、鉱物質土、例えばシリケート、シリカゲル、タルク、カオリン、石灰石、石灰、白亜、粘土、苦灰石、珪藻土、ベントナイト、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム;多糖類、例えばセルロース、デンプン;肥料、例えば硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素;植物由来の製品、例えば穀物粕、樹皮粕、木材粕、堅果殻粕及びこれらの混合物である。
【0057】
好適な界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性及び両性界面活性剤、ブロックポリマー、高分子電解質及びこれらの混合物のような界面活性化合物である。このような界面活性剤は、乳化剤、分散剤、可溶化剤、湿潤剤、浸透促進剤、保護コロイド又はアジュバントとして使用することができる。界面活性剤の例は、McCutcheon’s,Vol.1:Emulsifiers&Detergents,McCutcheon’s Directories,Glen Rock,USA,2008(International Ed.又はNorth American Ed.)に記載されている。
【0058】
好適なアニオン性界面活性剤は、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、カルボキシレート及びそれらの混合物のアルカリ塩、アルカリ土類塩又はアンモニウム塩である。スルホネートの例としては、アルキルアリールスルホネート、ジフェニルスルホネート、α-オレフィンスルホネート、リグニンスルホネート、脂肪酸及び油のスルホネート、エトキシル化アルキルフェノールのスルホネート、アルコキシル化アリールフェノールのスルホネート、縮合ナフタレンのスルホネート、ドデシル-及びトリデシルベンゼンのスルホネート、ナフタレン及びアルキルナフタレンのスルホネート、スルホスクシネート又はスルホスクシナメートである。サルフェートの例は、脂肪酸、油、エトキシル化アルキルフェノール、アルコール、エトキシル化アルコール又は脂肪酸エステルのサルフェートである。ホスフェートの例は、ホスフェートエステルである。カルボキシレートの例は、アルキルカルボキシレート及びカルボキシル化アルコール又はアルキルフェノールエトキシレートである。
【0059】
好適な非イオン性界面活性剤は、アルコキシレート、N-置換脂肪酸アミド、アミンオキシド、エステル、糖型界面活性剤、高分子界面活性剤、及びそれらの混合物である。アルコキシレートの例は、1~50当量でアルコキシル化された、アルコール、アルキルフェノール、アミン、アミド、アリールフェノール、脂肪酸又は脂肪酸エステルなどの化合物である。アルコキシル化には、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド、好ましくはエチレンオキシドを使用することができる。N-置換脂肪酸アミドの例は、脂肪酸グルカミド又は脂肪酸アルカノールアミドである。エステルの例は、脂肪酸エステル、グリセリンエステル又はモノグリセリドである。糖型界面活性剤の例は、ソルビタン、エトキシル化ソルビタン、スクロース及びグルコースエステル又はアルキルポリグルコシドである。ポリマー系界面活性剤の例は、ビニルピロリドン、ビニルアルコール又は酢酸ビニルのホモポリマー又はコポリマーである。
【0060】
好適なカチオン性界面活性剤は、四級界面活性剤、例えば1つ又は2つの疎水基を有する四級アンモニウム化合物又は長鎖一級アミンの塩である。好適な両性界面活性剤は、アルキルベタイン及びイミダゾリンである。好適なブロックポリマーは、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドのブロックを含むA-B若しくはA-B-Aタイプ又はアルカノール、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドを含むA-B-Cタイプのブロックポリマーである。好適な高分子電解質は、ポリ酸又はポリ塩基である。ポリ酸の例は、ポリアクリル酸のアルカリ塩又はポリ酸櫛型ポリマーである。ポリ塩基の例は、ポリビニルアミン又はポリエチレンアミンである。
【0061】
好適なアジュバントは、それ自体、殺虫活性が無視できるほど低いか又は全くなく、標的に対する化合物Iの生物学的性能を向上させる化合物である。例は、界面活性剤、鉱油又は植物油及び他の助剤である。更なる例は、Knowles,Adjuvants and additives,Agrow Reports DS256,T&F Informa UK,2006,chapter 5に記載されている。
【0062】
好適な増粘剤は、多糖類(例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース)、無機粘土(有機修飾又は非修飾)、ポリカルボキシレート及びシリケートである。
【0063】
好適な殺菌剤は、ブロノポール及びイソチアゾリノン誘導体、例えばアルキルイソチアゾリノン及びベンズイソチアゾリノンである。
【0064】
好適な不凍剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、尿素及びグリセリンである。
【0065】
好適な消泡剤は、シリコーン、長鎖アルコール及び脂肪酸の塩である。
【0066】
好適な着色剤(例えば、赤、青又は緑)は、水溶性の低い顔料及び水溶性染料である。例えば、無機着色剤(例えば、酸化鉄、酸化チタン、ヘキサシアノ鉄)及び有機着色剤(例えば、アリザリン着色剤、アゾ着色剤及びフタロシアニン着色剤)である。
【0067】
好適な粘着付与剤又はバインダーは、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、生物又は合成ワックス及びセルロースエーテルである。
【0068】
農薬組成物は、一般に、パエニバチルス(Paenibacillus)株の細胞又は芽胞の重量に対して、0.01~95%、好ましくは0.1~90%、より好ましくは1~70%、特に10~60%を含む。
【0069】
これらの細胞又は芽胞の量は、好ましくは、農薬組成物の5%w/w~50%w/w、10%w/w~50%w/w、15%w/w~50%w/w、30%w/w~50%w/w、又は40%w/w~50%w/w、又は5%w/w~40%w/w、10%w/w~40%w/w、15%w/w~40%w/w、30%w/w~40%w/w、又は10%w/w~40%w/w、15%w/w~40%w/w、30%w/w~40%w/wである。
【0070】
パエニバチルス(Paenibacillus)株の細胞又は芽胞は、通常、平均粒径が1~150μm、又は好ましい昇順に1~100μm、1~75μm、1~50μm、1~25μm、1~10μm、1~8μm(CIPAC法187による分散液体中で光散乱法により決定)で固体粒子の形態で存在する。
【0071】
1mLあたりの芽胞の密度数値は、約20~約35℃の温度で数日間インキュベートした後、寒天培地、例えばポテトデキストロース寒天上のコロニー形成単位(CFU)の数を測定することにより決定できる。本発明の農薬組成物を調製するために使用されるバイオマスのCFU/gの量は、通常、1×108CFU/g~1×1011CFU/g、又は1×108CFU/g~1×1010CFU/g、又は5×108~5×1010CFU/g、好ましくは1×109CFU/g~1×1010CFU/gである。バイオマスのCFU/gは、本発明の製剤を調製するために使用されるバイオマスの量に影響を与えるであろう。比較的多い量のCFU/gを有するバイオマスは、比較的少ない量のバイオマスを有する製剤を調製するために使用することができる。
【0072】
本発明の製剤を調製するために使用されるバイオマスの量は、通常、1ヘクタールあたりのCFUの量に合うように選択され、これはそれぞれの目的のために施用されるべきである。
【0073】
植物繁殖材料、特に種子の処理を目的として、通常、種子処理用溶液(LS)、サスポエマルジョン(SE)、流動性濃縮物(FS)、乾燥処理用粉末(DS)、スラリー処理用水分散性粉末(WS)、水溶性粉末(SS)、乳剤(ES)、乳化性濃縮物(EC)及びゲル(GF)が採用されている。対象の組成物は、2~10倍に希釈した後、直ちに使用できる製剤において、0.01~60重量%、好ましくは0.1~40%の活性物質濃度を与える。施用は、播種前又は播種中に実施することができる。混合物、又は混合物を含む農薬組成物を、それぞれ、若い植物、及び苗のような繁殖材料、根付き/根なし挿し木、細胞培養由来の植物に施用する方法としては、ドレッシング、コーティング、ペレット成形、ダスティング、浸漬、並びにインファロー施用法が挙げられる。好ましくは、混合物及びその農薬組成物は、それぞれ、発芽が誘導されないような方法、例えば、種子ドレッシング、ペレット成形、コーティング、及びダスティングによって、種子に施用される。
【0074】
各種の油剤、湿潤剤、アジュバント、肥料、又は微量栄養素、及び更なる農薬(例えば、殺真菌剤、成長調節剤、除草剤、殺虫剤、緩和剤)を、プレミックスとして混合物又はその農薬組成物に添加しても、又は使用直前まで(タンクミックス)しなくてもよい。これらの薬剤は、1:100~100:1、好ましくは1:10~10:1の重量比で、本発明による混合物又は農薬組成物に混和することができる。
【0075】
パエニバチルス(Paenibacillus)株及びこれらの株を含む農薬組成物は、通常、殺真菌活性量で施用される。用語「殺菌有効量」は、有害な真菌植物を防除するのに十分であり、処理された植物、苗のような若い植物、根付き/根なし挿し木、細胞培養由来の植物、又は種子のような植物繁殖材料に実質的に損傷をもたらさない組成物又は混合物の量を意味する。そのような量は、広い範囲で変化し得、様々な要因、例えば、防除すべき真菌種、処理される植物種、気候条件及び使用される特定の混合物に依存する。
【0076】
農薬組成物を葉面処理として、又は土壌への施用、好ましくは葉面処理として施用に用いる場合。葉面処理における施用量は、通常、体積中に細胞又は芽胞を含むフザリシジンを、50g/ha~2000g/ha、100g/ha~2000g/ha、150g/ha~2000g/ha、600g/ha~2000g/ha若しくは800g/ha~2000g/ha、又は
50g/ha~1000g/ha、100g/ha~1000g/ha、150g/ha~1000g/ha、600g/ha~1000g/ha若しくは800g/ha~1000g/ha、
又は50g/ha~800g/ha、100g/ha~800g/ha、150g/ha~800g/ha、600g/ha~800g/ha、又は
150g/ha~1000g/ha、300g/ha~1000g/ha、600g/ha~1000g/haと、
水性散布液を、1000L/ha~100L/ha、600L/ha~100L/ha、400L/ha~100L/ha、200L/ha~100L/ha、又は
1000L/ha~600L/ha、1000L/ha~400L/ha、又は1000L/ha~200L/ha、又は600L/ha~200L/ha、600L/ha~400L/haである。
【0077】
農薬組成物を種子処理、例えば種子コーティングで用いる場合、植物繁殖材料に関する施用量は、通常、約1×101~1×1012(又はそれ以上)CFU/種子、好ましくは約1×103~約1×1010CFU/種子、更に好ましくは約1×103~約1×106CFU/種子の範囲である。或いは、植物繁殖材料に関する施用量は、好ましくは、種子100kgあたり約1×107~1×1016(又はそれ以上)CFU、好ましくは種子100kgあたり1×109~約1×1015CFU、更に好ましくは種子100kgあたり1×1011~約1×1015CFUの範囲である。
【0078】
パエニバチルス(Paenibacillus)株及びこれらの株を含む農薬組成物は、土壌伝染性真菌を含む幅広い植物病原性真菌、特に、ネコブカビ綱(Plasmodiophoromycetes)、卵菌綱(Peronosporomycetes)(卵菌類(Oomycetes)と同義)、ツボカビ綱(Chytridiomycetes)、接合菌類(Zygomycetes)、子嚢菌類(Ascomycetes)、担子菌類(Basidiomycetes)及び不完全菌類(Deuteromycetes)(不全菌類(Fungi imperfecti)と同義)の分類に由来するものに対して有効な殺真菌剤としてそれぞれ好適である。これらは、葉面殺真菌剤、種子粉衣用殺真菌剤及び土壌殺真菌剤として作物保護に使用することができる。
【0079】
混合物及びその農薬組成物は、好ましくは、種々の栽培植物、例えば穀類、例えばコムギ、ライムギ、オオムギ、ライコムギ、オートムギ、又はイネ;ビート、例えばテンサイ又は飼料用ビート;果物、例えばナシ状果(リンゴ、ナシなど)、石果(例:プラム、モモ、アーモンド、サクランボ)、又は液果とも呼ばれるソフトフルーツ(イチゴ、ラズベリー、ブラックベリー、スグリなど);マメ科植物(例:レンズマメ、エンドウ、アルファルファ、又はダイズ);油脂植物、例えば、ナタネ、カラシ、オリーブ、ヒマワリ、ココナッツ、カカオ豆、ヒマシ油植物、アブラヤシ、ピーナッツ、又はダイズ;ウリ科植物、例えばカボチャ、キュウリ、又はメロン;繊維植物、例えば、ワタ、アマ、大麻、又はオウマ;柑橘類、例えば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、又はミカン;野菜、例えば、ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、タマネギ、トマト、ジャガイモ、ウリ類、又はパプリカ;クスノキ科植物、例えば、アボカド、シナモン、又はカンファー;エネルギー及び原料植物、例えばトウモロコシ、ダイズ、ナタネ、サトウキビ、又はアブラヤシ;トウモロコシ;タバコ;ナッツ;コーヒー;チャノキ;バナナ;ブドウ(テーブルグレープ及びグレープジュース用ブドウ);ホップ;シバ;ハイノキ(ステビアともいう);天然ゴム植物;又は観葉植物及び森林植物、例えば、花、低木、広葉樹、又は常緑樹(針葉樹、ユーカリなど);種子などの植物繁殖材料;及びこれらの植物の作物材料における植物病原性真菌の防除に有用である。
【0080】
より好ましくは、混合物及びその農薬組成物はそれぞれ、農作物、例えばジャガイモ、テンサイ、タバコ、コムギ、ライムギ、オオムギ、オートムギ、イネ、トウモロコシ、ワタ、ダイズ、ナタネ、マメ科植物、ヒマワリ、コーヒー又はサトウキビ;果物;ブドウ;ワイン製造用ブドウ又は果物のブドウ、観葉植物;又は野菜、例えばキュウリ、トマト、コショウ、マメ又はカボチャに対する真菌を防除するために用いられる。
【0081】
「植物繁殖材料」という用語は、種子などの植物の生殖部分;並びに挿し木及び塊茎(例えば、ジャガイモ)などの植物の増殖に使用可能な生長能力のある植物材料の全てを示すものであると理解される。これには、植物の種子、根、果実、塊茎、球根、根茎、芽、新芽並びに発芽後又は土から出た後に移植される苗及び若い植物を含む他の部分が含まれる。
【0082】
したがって、本発明の一実施形態は、混合物を含む、又は混合物を含む農薬組成物のコーティングを含む植物繁殖材料である。好ましくは、植物繁殖材料は、苗、根付き/根なし挿し木、細胞培養由来の植物のような若い植物である。更により好ましくは、植物繁殖材料は、ブドウを含む果実又は野菜植物種由来のものである。
【0083】
本発明によれば、上記の全ての栽培植物は、それぞれの栽培植物に属する全ての種、亜種、変種及び/又は雑種を含むと理解される。例えば、トウモロコシ(corn)は、飼料用トウモロコシ及びスイートコーンなどのあらゆる種類を含むトウモロコシ(Indian corn)又はトウモロコシ(maize)(Zea mays)としても知られている。本発明によれば、全てのトウモロコシ(maize)又はトウモロコシの亜種及び/若しくは変種、特に、フラワーコーン(Zea mays var.amylacea)、ポップコーン(Zea mays var.everta)、デントコーン(Zea mays var.indentata)、フリントコーン(Zea mays var.indurata)、スイートコーン(Zea mays var.saccharata及びvar.rugosa)、ワキシーコーン(Zea mays var.ceratina)、アミロメイズ(高アミロースZea mays品種)、有ふ種トウモロコシ又はワイルドメイズ(Zea mays var.tunicata)及びストライプドトウモロコシ(Zea mays var.japonica)が含まれる。当業者であれば、他の植物種、例えば、アマトウガラシ、有限伸育型又は無限伸育型ダイズなどの変種を知っているであろう。
【0084】
本発明の混合物及びその農薬組成物は、それぞれ、以下の植物病害の原因物質の防除に特に好適である:
アルブゴ種(Albugo spp.)(白さび病)であって、観賞植物、野菜におけるもの(例えば、A.カンジダ(A.candida))及びヒマワリにおけるもの(例えば、A.トラゴポゴニス(A.tragopogonis));アルテルナリア種(Alternaria spp.)(黒班病)であって、野菜におけるもの(例えば、A.ダウシ(A.dauci)又はA.ポルリ(A.porri))、ナタネにおけるもの(例えば、A.ブラシシコラ(A.brassicicola)又はA.ブラシカエ(A.brassicae))、テンサイにおけるもの(A.テヌイス(A.tenuis))、果実(例えば、A.グランディス(A.grandis))、イネ、ダイズ、ジャガイモ及びトマトにおけるもの(例えば、A.ソラニ(A.solani)、A.グランディス(A.grandis)又はA.アルテルナタ(A.alternata))、トマトにおけるもの(例えば、A.ソラニ(A.solani)又はA.アルテルナタ(A.alternata))及びコムギにおけるもの(例えば、A.トリチシナ(A.triticina));アファノマイセス種(Aphanomyces spp.)であって、テンサイ及び野菜におけるもの;穀物及び野菜におけるアスコキタ種(Ascochyta)、例えばコムギにおけるA.トリチシ(A.tritici)(炭疽病)及びオオムギにおけるA.ホルデイ(A.hordei);トウモロコシにおける眼紋病(Aureobasidium zeae)(トウモロコシ褐斑病(Kapatiella zeae)と同義);ビポラリス種(Bipolaris)及びドレシュレラ種(Drechslera spp.)(テレオモルフ:コクリオボルス種(Cochliobolus spp.))であって、例えばトウモロコシにおけるごま葉枯病(D.マイディス(D.maydis))又はすす紋病(B.ゼイコラ(B.zeicola))、例えば穀物における斑点病(B.ソロキニアナ(B.sorokiniana))、例えばイネ及びシバにおけるB.オリザエ(B.oryzae);穀物(例えば、コムギ又はオオムギ)におけるブルメリア(Blumeria)(以前にはエリシフェ(Erysiphe))・グラミニス(graminis)(ウドンコ病);灰色かび病菌(Botrytis cinerea)(テレオモルフ:ボトリチニア・フッケリアナ(Botryotinia fuckeliana):灰色かび病)であって、果実及び液果(例えば、イチゴ)、野菜(例えば、レタス、ニンジン、セロリ及びキャベツ)におけるもの;タマネギ科、ナタネ、観賞植物(例えば、Bエリプチカ(B eliptica))、ブドウ、森林植物及びコムギにおける白斑葉枯病(B.squamosa)又は灰色腐敗病(B.allii);レタスにおけるブレミア・ラクツカエ(Bremia lactucae)(べと病);落葉樹及び常緑樹におけるセラトシスチス(オフィオストマ(Ophiostoma)と同義)種(Ceratocystis)(根腐れ病又は立ち枯れ病)、例えばニレにおけるC.ウルミ(C.ulmi)(オランダニレ病);セルコスポラ種(Cercospora spp.)(セルコスポラ斑点病)であって、トウモロコシ(例えば、灰斑病:C.ゼアエ-マイディス(C.zeae-maydis))、イネ、テンサイ(例えば、C.ベチコラ(C.beticola))におけるもの、サトウキビ、野菜、コーヒー、ダイズにおけるもの(例えば、C.ソジナ(C.sojina)又はC.キクチイ(C.kikuchii))及びイネにおけるもの;マッシュルームにおけるクラドボトリウム(ダクチリウム(Dactylium)と同義)種(Cladobotryum)(例えば、C.ミコフィルム(C.mycophilum)
(以前にはダクチリウム・デンドロイデス(Dactylium dendroides、テレオモルフ:ネクトリア・アルベルティニイ(Nectria albertinii)、ネクトリア・ロゼルラ(Nectria rosella)(ヒポマイセス・ロセルルス(Hypomyces rosellus)と同義));クラドスポリウム種(Cladosporium spp.)であって、トマトにおけるもの(例えば、C.フルブム(C.fulvum):葉かび病)及び穀物におけるもの、例えばコムギにおけるC.ヘルバルム(C.herbarum)(黒変病);穀物におけるクラビセプス・プルプレア(Claviceps purpurea)(バッカク);コクリオボルス(Cochliobolus)(アナモルフ:ビポラリス(Bipolaris)のヘルミントスポリウム(Helminthosporium))種(斑点病)であって、トウモロコシにおけるもの(C.カルボヌム(C.carbonum))、穀物におけるもの(例えば、C.サチブス(C.sativus)、アナモルフ:B.ソロキニアナ(B.sorokiniana))及びイネにおけるもの(例えば、C.ミヤベアヌス(C.miyabeanus)、アナモルフ:H.オリザエ(H.oryzae));コレトトリカム(Colletotrichum)(テレオモルフ:グロメレラ(Glomerella))種(炭疽病)であって、ワタにおけるもの(例えば、C.ゴシピイ(C.gossypii))、トウモロコシにおけるもの(例えば、C.グラミニコラ(C.graminicola):炭疽病根腐れ)、ソフトフルーツ、ジャガイモにおけるもの(例えば、C.ココデス(C.coccodes):黒点病))、マメ類におけるもの(例えば、C.リンデムチアヌム(C.lindemuthianum))、ダイズ(例えば、C.トルンカツム(C.truncatum)又はC.グロエオスポリオイデス(C.gloeosporioides))、野菜(例えば、C.ラゲナリウム(C.lagenarium)又はC.カプシキ(C.capsici))、果実(例えば、C.アクタツム(C.acutatum))、コーヒー(例えば、C.コフェアヌム(C.coffeanum)又はC.カハワエ(C.kahawae))におけるもの及び様々な作物におけるC.グロエオスポリオイデス(C.gloeosporioides));イネにおけるコルチキウム種(Corticium spp.)、例えばC.ササキイ(C.sasakii)(紋枯病);ダイズ、ワタ及び観賞植物におけるコリネスポラ・カッシイコラ(Corynespora cassiicola)(斑点病);シクロコニウム種(Cycloconium spp.)、例えばオリーブにおけるC.オレアギヌム(C.oleaginum);シリンドロカルポン種(Cylindrocarpon spp.)(例えば、果樹潰瘍病又は幼ブドウの衰弱、テレオモルフ:ネクトリア種(Nectria)又はネオネクトリア種(Neonectria spp.))であって、果樹におけるもの、ブドウにおけるもの(例えば、C.リリオデンドリ(C.liriodendri)、テレオモルフ:ネオネクトリア・リリオデンドリ(Neonectria liriodendri)、黒足病)及び観賞植物におけるもの;ダイズにおけるデマトフォラ(Dematophora)(テレオモルフ:ロゼリニア(Rosellinia))・ネカトリクス(necatrix)(根及び茎腐れ病);ダイズにおけるディアポルテ種(Diaporthe spp.)、例えばD.ファゼオロルム(D.phaseolorum)(苗立ち枯れ病);ドレシュレラ(Drechslera)(ヘルミントスポリウム(Helminthosporium)と同義、テレオモルフ:ピレノフォラ(Pyrenophora))種であって、トウモロコシにおけるもの、穀物、例えばオオムギにおけるもの(例えば、D.テレス(D.teres)、網斑病)及びコムギにおけるもの(例えば、D.トリチシ-レペンチス(D.tritici-repentis):黄褐色斑病))、イネ及びシバにおけるもの;ブドウにおいて、ホルミチポリア(Formitiporia)(フェリヌス(Phellinus)と同義)・プンクタタ(punctata)、F.メジテラネア(F.mediterranea)、フェオモニエラ・クラミドスポラ(Phaeomoniella chlamydospora)(以前にはフェオアクレモニウム・クラミドスポルム(Phaeoacremonium chlamydosporum))、フェオアクレモニウム・アレオフィルム(Phaeoacremonium aleophilum)及び/又はボトリオスフェリア・オブツサ(Botryosphaeria obtusa)に起因するエスカ(Esca)病(胴枯病、アポプレキシー);エルシノエ種(Elsinoe spp.)であって、ナシ状果におけるもの(E.ピリ(E.pyri))及びソフトフルーツにおけるもの(E.ベネタ(E.veneta):炭疽病)並びにブドウにおけるもの(E.アンペリナ(E.ampelina):炭疽病);イネにおけるエンチロマ・オリザエ(Entyloma oryzae)(葉すす病);コムギにおけるエピコックム種(Epicoccum spp.)(黒かび病);エリシフェ種(Erysiphe spp.)(ウドンコ病)であって、テンサイにおけるもの(E.ベタエ(E.betae))、野菜におけるもの(例えば、E.ピシ(E.pisi))、例えばウリ科植物におけるもの(例えば、E.シコラセアルム(E.cichoracearum))及びキャベツ、ナタネにおけるもの(例えば、E.クルシフェラルム(E.cruciferarum));果樹、ブドウ及び観賞樹におけるユーチパ・ラタ(Eutypa lata)(ユーチパ潰瘍病又は胴枯病、アナモルフ:シトスポリナ・ラタ(Cytosporina lata)、リベルテラ・ブレファリス(Libertella blepharis)と同義);トウモロコシにおけるエクセロヒルム(Exserohilum)(ヘルミントスポリウム(Helminthosporium)と同義)種(例えば、E.ツルシクム(E.turcicum));様々な植物におけるフザリウム(Fusarium)(テレオモルフ:ジベレラ(Gibberella))種(立ち枯れ病、根又は茎腐れ病)、例えば穀物(例えば、コムギ又はオオムギ)におけるF.グラミネアルム(F.graminearum)又はF.クルモルム(F.culmorum)(根腐れ病、黒星病又は赤かび病)、トマトにおけるF.オキシスポルム(F.oxysporum)、ダイズにおけるそれぞれが突然死症候群を引き起こすF.ソラニ(F.solani)(f.グリシネス種(sp.glycines)、現在のF.ビルグリフォルメ(F.virguliforme)と同義)及びF.ツクマニアエ(F.tucumaniae)及びF.ブラシリエンス(F.brasiliense)並びにトウモロコシにおけるF.ベルチシリオイデス(F.verticillioides);
穀物(例えば、コムギ又はオオムギ)及びトウモロコシにおけるゲウマノマイセス・グラミニス(Gaeumannomyces graminis)(立ち枯れ病);ジベレラ種(Gibberella spp.)であって、穀物におけるもの(例えば、G.ゼアエ(G.zeae))及びイネにおけるもの(例えば、G.フジクロイ(G.fujikuroi)、馬鹿苗病);ブドウ、ナシ状果及び他の植物におけるグロメレラ・シングラタ(Glomerella cingulata)及びワタにおけるG.ゴシピイ(G.gossypii);イネにおける穀粒ステイン複合病;ブドウにおけるギグナルディア・ビドウェリ(Guignardia bidwellii)(黒腐れ病);バラ科植物及び杜松におけるギムノスポランギウム種(Gymnosporangium spp.)、例えばナシにおけるG.サビネ(G.sabinae)(さび病);トウモロコシ、穀物、ジャガイモ及びイネにおけるヘルミントスポリウム種(Helminthosporium spp.)(ドレシュレラ(Drechslera)と同義、テレオモルフ:コクリオボルス(Cochliobolus));ヘミレイア種(Hemileia spp.)であって、例えばコーヒーにおけるH.バスタトリクス(H.vastatrix)(コーヒーの葉さび病);ブドウにおけるイサリオプシス・クラビスポラ(Isariopsis clavispora)(クラドスポリウム・ビチス(Cladosporium vitis)と同義);ダイズ及びワタにおけるマクロフォミナ・ファセオリナ(Macrophomina phaseolina)(ファセオリ(phaseoli)と同義)(根及び茎腐れ病);穀物(例えば、コムギ又はオオムギ)におけるミクロドキウム(Microdochium)(フザリウム(Fusarium)と同義)・ニバレ(nivale)(ピンク雪かび病);ダイズにおけるミクロスフェラ・ディフューザ(Microsphaera diffusa)(ウドンコ病);石果及び他のバラ科植物におけるモニリニア種(Monilinia spp.)、例えばM.ラクサ(M.laxa)、M.フルクチコラ(M.fructicola)及びM.フルクチゲナ(M.fructigena)(モニラ種(Monilia spp.)と同義:花枯病及び枝枯病、褐色腐れ病);穀物、バナナ、ソフトフルーツ及びラッカセイにおけるマイコスフェレラ種(Mycosphaerella spp.)、例えばコムギにおけるM.グラミニコラ(M.graminicola)(アナモルフ:コムギ葉枯病菌(Zymoseptoria tritici)、以前にはセプトリア・トリチシ(Septoria tritici):セプトリア斑点病)又は及びバナナにおけるM.フィジエンシス(M.fijiensis)(プソイドケルコスポラ・フィジエンシス(Pseudocercospora fijiensis)と同義:黒シガトカ病)及びM.ムシコラ(M.musicola)、M.アラキジコラ(M.arachidicola)(M.アラキジス(M.arachidis)又はセルコスポラ・アラキジス(Cercospora arachidis)と同義)、ラッカセイにおけるM.ベルケレイイ(M.berkeleyi)、エンドウにおけるM.ピシ(M.pisi)及びアブラナ科の植物におけるM.ブラシシオラ(M.brassiciola);ペロノスポラ種(Peronospora spp.)(べと病)であって、キャベツにおけるもの(例えば、P.ブラシカエ(P.brassicae))、ナタネにおけるもの(例えば、P.パラサイチカ(P.parasitica))、タマネギにおけるもの(例えば、P.デストラクター(P.destructor))、タバコにおけるもの(P.タバキナ(P.tabacina))及びダイズにおけるもの(P.マンシュリカ(P.manshurica));ダイズにおけるファコプソラ・パキリジ(Phakopsora pachyrhizi)及びP.メイボミエ(P.meibomiae)(ダイズさび病);フィアロフォラ種(Phialophora spp.)、例えばブドウにおけるもの(例えば、P.トラケイフィラ(P.tracheiphila)及びP.テトラスポラ(P.tetraspora))及びダイズにおけるもの(例えば、P.グレガタ(P.gregata):茎腐れ病);ナタネ及びキャベツにおけるフォマ・リンガム(Phoma lingam)(レプトスフェリア・ビグロボサ(Leptosphaeria biglobosa)及びL.マクランス(L.maculans)と同義:根及び茎腐れ病)及びテンサイにおけるP.ベタエ(P.betae)(根腐れ病、斑点病及び苗立ち枯れ病)及びトウモロコシにおけるP.ゼアエ-マイディス(P.zeae-maydis)(フィルロスチカ・ゼアエ(Phyllostica zeae)と同義);フォモプシス種(Phomopsis spp.)であって、ヒマワリ、ブドウにおけるもの(例えば、P.ビチコラ(P.viticola):茎葉斑点病)及びダイズにおけるもの(例えば、茎腐れ病:P.ファゼオリ(P.phaseoli)、テレオモルフ:ディアポルテ・ファゼオロルム(Diaporthe phaseolorum));トウモロコシにおけるフィゾデルマ・マイディス(Physoderma maydis)(褐色斑病);様々な植物におけるフィトフトラ種(Phytophthora spp.)(立ち枯れ病、根、葉、果実及び茎腐れ病)、例えばパプリカ及びウリ科植物におけるもの(例えば、P.カプシキ(P.capsici))、ダイズにおけるもの(例えば、P.メガスペルマ(P.megasperma)、P.ソヤエ(P.sojae)と同義)、ジャガイモ及びトマトにおけるもの(例えば、P.インフェスタンス(P.infestans):葉腐れ病)及び落葉樹におけるもの(例えば、P.ラモルム(P.ramorum):オークの突然死);キャベツ、ナタネ、ダイコン及び他の植物におけるプラスモディフォラ・ブラシカエ(Plasmodiophora brassicae)(クラブ根病);プラスモパラ種(Plasmopara spp.)、例えばブドウにおけるP.ビチコラ(P.viticola)(ブドウのべと病)及びヒマワリにおけるP.ハルステディイ(P.halstedii);ポドスフェラ種(Podosphaera spp.)(ウドンコ病)であって、バラ科植物、ホップ、ナシ状果類及びソフトフルーツにおけるもの(例えば、リンゴにおけるP.ロイコトリカ(P.leucotricha))及びウリ科植物におけるもの(P.キサンチイ(P.xanthii));ポリミクサ種(Polymyxa spp.)、例えば穀物、例えばオオムギ及びコムギにおけるもの(P.グラミニス(P.graminis))及びテンサイにおけるもの(P.ベタエ(P.betae))及びそれにより感染するウイルス病;穀物、例えばコムギ又はオオムギにおけるプソイドセルコスポレラ・ヘルポトリコイデス(Pseudocercosporella herpotrichoides)(オクリマクラ・ヤルンダエ(Oculimacula yallundae)と同義、O.アクフォリミス(O.acuformis):眼紋病、テレオモルフ:タペシア・ヤルンダエ(Tapesia yallundae));様々な植物におけるプソイドペルノスポラ(Pseudoperonospora)(べと病)、例えばウリ科植物におけるP.キュベンシス(P.cubensis)又はホップにおけるP.フミリ(P.humili);ブドウにおけるプソイドペツィクラ・トラケイフィラ(Pseudopezicula tracheiphila)(赤色花火病又はロットブレンナー(rotbrenner)、アナモルフ:フィアロフォラ(Phialophora));様々な植物におけるプッチニア種(Puccinia spp.)(さび病)、穀物、例えばコムギ、オオムギ又はライムギにおけるP.トリチシナ(P.triticina)(褐色さび病又は葉さび病)、P.ストリイホルミス(P.striiformis)(縞さび病又は黄さび病)、P.ホルデイ(P.hordei)(矮化さび病)、P.グラミニス(P.graminis)(茎さび病又は黒さび病)又はP.レコンジタ(P.recondita)(褐色さび病又は葉さび病)、サトウキビにおけるP.クエニイ(P.kuehnii)(オレンジ色さび病)及びアスパラガスにおけるP.アスパラギ(P.asparagi);ナタネにおけるピレノペジザ種(Pyrenopeziza spp.)、例えばP.ブラシカエ(P.brassicae);コムギにおけるピレノフォラ(Pyrenophora)(アナモルフ:ドレシュレラ(Drechslera))・トリチシ-レペンチス(tritici-repentis)(黄褐色斑病)又はオオムギにおけるP.テレス(P.teres)(網斑病);ピリクラリア種(Pyricularia spp.)、例えばイネにおけるP.オリザエ(P.oryzae)(テレオモルフ:マグナポルテ・グリセア(Magnaporthe grisea):イネイモチ病)並びにシバ及び穀物におけるP.グリセア(P.grisea);シバ、イネ、トウモロコシ、コムギ、ワタ、ナタネ、ヒマワリ、ダイズ、テンサイ、野菜及び様々な他の植物におけるピシウム種(Pythium spp.)(苗立ち枯れ病)(例えばP.ウルティムム(P.ultimum)又はP.アファニデルマツム(P.aphanidermatum))及びマッシュルームにおけるP.オリガンドルム(P.oligandrum);ラムラリア種(Ramularia spp.)、例えばオオムギにおけるR.コロ-シグニ(R.collo-cygni)(ラムラリア葉斑点病、生理的葉斑点病)、ワタにおけるR.アレオラ(R.areola)(テレオモルフ:ミコスフェレラ・アレオラ(Mycosphaerella areola))及びテンサイにおけるR.ベチコラ(R.beticola);ワタ、イネ、ジャガイモ、シバ、トウモロコシ、ナタネ、ジャガイモ、テンサイ、野菜及び様々な他の植物におけるリゾクトニア種(Rhizoctonia spp.)、例えばダイズにおけるR.ソラニ(R.solani)(根及び茎腐れ病)、イネにおけるR.ソラニ(R.Solani)(紋枯病)又はコムギ若しくはオオムギにおけるR.セレアリス(R.cerealis)(リゾクトニアの春枯れ病);
イチゴ、ニンジン、キャベツ、ブドウ及びトマトにおけるリゾプス・ストロニフェル(Rhizopus stolonifer)(黒かび病、軟腐れ病);オオムギ、ライムギ及びライコムギにおけるリンコスポリウム・セカリス(Rhynchosporium secalis)及びR.コムネ(R.commune)(火傷病);イネにおけるサロクラジウム・オリザエ(Sarocladium oryzae)及びS.アテヌアツム(S.attenuatum)(鞘腐れ病);野菜(S.ミノール(S.minor)及びS.スクレロチオルム(S.sclerotiorum))及び農作物におけるスクレロチニア種(Sclerotinia spp.)(茎腐れ病又は白かび病)、例えばナタネ、ヒマワリ(例えばS.スクレロチオルム)及びダイズにおけるもの、ダイズ、ラッカセイ、野菜、トウモロコシ、穀物及び観賞植物におけるS.ロルフシイ(S.rolfsii)(アテリア・ロルフシイ(Athelia rolfsii)と同義);様々な植物におけるセプトリア種(Septoria spp.)、例えばダイズにおけるS.グリシネス(S.glycines)(褐色斑病)、コムギにおけるS.トリチシ(S.tritici)(コムギ葉枯病菌(Zymoseptoria tritici)と同義、セプトリア斑点病)及び穀物におけるS.(スタゴノスポラ(Stagonospora)と同義)・ノドルム(nodorum)(スタゴノスポラ斑点病);ブドウにおけるウンシヌラ(Uncinula)(エリシフェ(Erysiphe)と同義)・ネカトル(necator)(ウドンコ病、アナモルフ:オイジウム・ツッケリ(Oidium tuckeri));セトスフェリア種(Setosphaeria spp.)(黒葉枯病)であって、トウモロコシにおけるもの(例えばS.ツルシクム(S.turcicum)、ヘルミントスポリウム・ツルシクム(Helminthosporium turcicum)と同義)及びシバにおけるもの;スファセロテカ種(Sphacelotheca spp.)(すす病)であって、トウモロコシにおけるもの(例えばS.レイリアナ(S.reiliana):ウスチラゴ・レイリアナ(Ustilago reiliana)と同義:黒穂病)、雑穀及びサトウキビにおけるもの;ウリ科植物におけるスフェロテカ・フリギネア(Sphaerotheca fuliginea)(ポドスファエラ・キサンチイ(Podosphaera xanthii)と同義:ウドンコ病);ジャガイモにおけるスポンゴスポラ・スブレラネア(Spongospora subterranea)(粉状瘡痂病)及びそれにより感染するウイルス病;穀物におけるスタゴノスポラ種(Stagonospora spp.)、例えばコムギにおけるS.ノドルム(S.nodorum)(スタゴノスポラ斑点病、テレオモルフ:レプトスフェリア[フェオスファエリア(Phaeosphaeria)と同義]・ノドルム(nodorum)、セプトリア・ノドルム(Septoria nodorum)と同義);ジャガイモにおけるシンキトリウム・エンドビオチクム(Synchytrium endobioticum)(ジャガイモいぼ病);タフリナ種(Taphrina spp.)、例えばモモにおけるT.デフォルマンス(T.deformans)(縮葉病)及びプラムにおけるT.プルニ(T.pruni)(ポケットプラム);タバコ、ナシ状果、野菜、ダイズ及びワタにおけるチエラビオプシス種(Thielaviopsis spp.)(黒根腐れ病)、例えばT.バシコラ(T.basicola)(カララ・エレガンス(Chalara elegans)と同義);穀物におけるチレチア種(Tilletia spp.)(一般の又はなまぐさ黒穂病)、例えばコムギにおけるT.トリチシ(T.tritici)(T.カリエス(T.caries)と同義、網なまぐさ黒穂病)及びT.コントロベルサ(T.controversa)(矮化黒穂病);マッシュルームにおけるトリコデルマ・ハルジアヌム(Trichoderma harzianum);オオムギ又はコムギにおけるチフラ・インカルナタ(Typhula incarnata)(灰色雪かび病);ウロシスチス種(Urocystis spp.)、例えばライムギにおけるU.オクルタ(U.occulta)(縞すす病);野菜におけるウロマイセス種(Uromyces spp.)(さび病)、例えばマメ類におけるもの(例えばU.アペンジクラツス(U.appendiculatus)、U.ファゼオリ(U.phaseoli)と同義)、テンサイにおけるもの(例えばU.ベタエ(U.betae)又はU.ベチコラ(U.beticola))及びマメ科植物(例えばU.ビグナエ(U.vignae)、U.ピシ(U.pisi)、U.ビシアエ-ファバエ)(U.viciae-fabae)及びU.ファバエ(U.fabae));ウスチラゴ種(Ustilago spp.)(裸黒穂病)であって、穀物におけるもの(例えばU.ヌダ(U.nuda)及びU.アバエナエ(U.avaenae))、トウモロコシにおけるもの(例えばU.マイディス(U.maydis):トウモロコシすす病)及びサトウキビにおけるもの;ベンチュリア種(Venturia spp.)(黒星病)であって、リンゴにおけるもの(例えばV.イナエクアリス(V.inaequalis))及びナシにおけるもの;及び様々な植物、例えば果物及び観賞植物、ブドウ、ソフトフルーツ、野菜及び農作物におけるバーティシリウム種(Verticillium spp.)(立ち枯れ病)、例えばナタネにおけるV.ロンギスポルム(V.longisporum)、イチゴ、ナタネ、ジャガイモ及びトマトにおけるV.ダリアエ(V.dahliae)、並びにマッシュルームにおけるV.フンギコラ(V.fungicola);穀物におけるコムギ葉枯病菌(Zymoseptoria tritici)。
【0085】
混合物及びその農薬組成物は、それぞれ、以下の植物病原性真菌属;アルテルナリア(Alternaria)属、ボトリチス(Botrytis)、ベンチュリア(Venturia)属、レプトスフェリア(Leptosphaeria)属、フザリウム(Fusarium)属、リゾクトニア(Rhizoctonia)属、フィトフトラ(Phytophthora)属、ピシウム(Pythium)属、コレトトリカム(Colletotrichum)属、ピリクラリア(Pyricularia)属、スクレロチニア(Sclerotinia)属、ジモセプトリア(Zymoseptoria)属を防除するのに特に好適である。
【0086】
混合物及びその農薬組成物は、それぞれ、アルテルナリア・ソラヌム(Alternaria solanum)、アルテルナリア・オルタナータ(Alternaria alternata)、アルテルナリア・ブラシカエ(Alternaria brassicae)、アルテルナリア・ブラシシコラ(Alternaria brassicicola)、アルテルナリア・シトリ(Alternaria citri)、アルテルナリア・マリ(Alternaria mali)、灰色かび病菌(Botrytis cinerea)、ボトリチス・アリイ(Botrytis allii)、ボトリチス・ファバエ(Botrytis fabae)、ボトリチス・スクアモサ(Botrytis squamosa)、ベンチュリア・イネクアリス(Venturia inaequalis)、ベンチュリア・エフーサ(Venturia effusa)、ベンチュリア・カルポフィラ(Venturia carpophila)、ベンチュリア・ピリナ(Venturia pyrina)、レプトスフェリア・マクランス(Leptosphaeria maculans)、レプトスフェリア・ノドルム(Leptosphaeria nodorum)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・グラミネアルム(Fusarium graminearum)、フザリウム・ベルチシリオイデス(Fusarium verticillioides)、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)、フィトフトラ・カプシシ(Phytophthora capsici)、フィトフトラ・フラガリアエ(Phytophthora fragariae)、フィトフトラ・ニコチアナエ(Phytophthora nicotianae)、フィトフトラ・ソジェ(Phytophthora sojae)、ピシウム・ウルティムム(Pythium ultimum)、ピシウム・アカンティカム(Pythium acanthicum)、ピシウム・デリエンセ(Pythium deliense)、ピシウム・グラミニコラ(Pythium graminicola)、ピシウム・ヘテロタリクム(Pythium heterothallicum)、ピシウム・ヒポジヌム(Pythium hypogynum)、ピシウム・ミドルトニイ(Pythium middletonii)、炭疽病菌(Colletotrichum orbiculare)、コレトトリカム・カプシシ(Colletotrichum capsici)、コレトトリカム・ココデス(Colletotrichum coccodes)、コレトトリカム・フラガリアエ(Colletotrichum fragariae)、コレトトリカム・リンデムチアヌム(Colletotrichum lindemuthianum)、イネいもち病菌(Pyricularia oryzae)、菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)、スクレロチニア・ミノール(Sclerotinia minor)、スクレロチニア・トリフォリオルム(Sclerotinia trifoliorum)、コムギ葉枯病菌(Zymoseptoria tritici)の植物病原性真菌の防除に特に好適である。
【0087】
混合物及びその農薬組成物は、それぞれ、アルテルナリア・ソラヌム(Alternaria solanum)、灰色かび病菌(Botrytis cinerea)、ベンチュリア・イネクアリス(Venturia inaequalis)、レプトスフェリア・マクランス(Leptosphaeria maculans)、レプトスフェリア・ノドルム(Leptosphaeria nodorum)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・グラミネアルム(Fusarium graminearum)、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)、ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)、ピシウム・ウルティムム(Pythium ultimum)、炭疽病菌(Colletotrichum orbiculare)、イネいもち病菌(Pyricularia oryzae)、菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)、及びコムギ葉枯病菌(Zymoseptoria tritici)の植物病原性真菌の防除に特に好適である。
【0088】
混合物及びその農薬組成物は、それぞれ、アルテルナリア・ソラヌム(Alternaria solanum)、灰色かび病菌(Botrytis cinerea)、レプトスフェリア・ノドルム(Leptosphaeria nodorum)、炭疽病菌(Colletotrichum orbiculare)、イネいもち病菌(Pyricularia oryzae)、菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)、及びコムギ葉枯病菌(Zymoseptoria tritici)の植物病原性真菌の防除に特に好適である。
【0089】
したがって、本発明はまた、植物の真菌感染を抑制又は予防する方法であって、真菌、その生息地、又は真菌の攻撃から保護される材料若しくは植物、又は土壌若しくは植物繁殖材料は、
a)PepRが存在しないか若しくは変異体PepR、又は
b)PepHが存在しないか若しくは変異体PepH、又は
c)PepXが存在しないか若しくは変異体PepX、又は
d)ManCが存在しないか若しくは変異体ManC、又は
e)SacBが存在しないか若しくは変異体SacB、又は
f)a)、b)、c)、d)、e)、若しくはf)の少なくとも2つの組み合わせを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株を含む有効量のパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株で処理され、
PepRが存在しないか若しくは変異体PepRにより、野生型PepRを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
PepHが存在しないか若しくは変異体PepHにより、野生型PepHを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
PepXが存在しないか若しくは変異体PepXにより、野生型PepXを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
ManCが存在しないか若しくは変異体ManCにより、野生型ManCを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
SacBが存在しないか若しくは変異体SacBにより、SacBを含まないパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
それぞれの野生型PepR、PepH、PepX、ManC、又はSacBを含み、比較に使用されるパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株は、PepR、PepH、PepX、ManC、若しくはSacBが存在しないか又はその変異体を含む株と同じパエニバチルス(Paenibacillus)種のものである、方法を含む。
【0090】
パエニバチルス(Paenibacillus)株は、インドール酢酸などの植物成長生成物質を産生する。したがって、a)PepRが存在しないか若しくは変異体PepR、又は
b)PepHが存在しないか若しくは変異体PepH、又は
c)PepXが存在しないか若しくは変異体PepX、又は
d)ManCが存在しないか若しくは変異体ManC、又は
e)SacBが存在しないか若しくは変異体SacB、又は
f)a)、b)、c)、d)、e)、若しくはf)の少なくとも2つの組み合わせを含み、
PepRが存在しないか若しくは変異体PepRにより、野生型PepRを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
PepHが存在しないか若しくは変異体PepHにより、野生型PepHを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
PepXが存在しないか若しくは変異体PepXにより、野生型PepXを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
ManCが存在しないか若しくは変異体ManCにより、野生型ManCを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
SacBが存在しないか若しくは変異体SacBにより、SacBを含まないパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物と比較して、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の液体培養物の粘度の低下がもたらされ、
それぞれの野生型PepR、PepH、PepX、ManC、又はSacBを含み、比較に使用されるパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株は、PepR、PepH、PepX、ManC、若しくはSacBが存在しないか又はその変異体を含む株と同じパエニバチルス(Paenibacillus)種のものである、菌株は、
また、これらのパエニバチルス(Paenibacillus)株で植物、苗木、種子、又は植物若しくは種子に近い土壌を処理することによって、植物の成長を促進する方法にも使用することができる。
【0091】
パエニバチルス(Paenibacillus)株はまた、植物の栄養素を可溶化することも知られている。したがって、本明細書で開示される菌株は、有機又は無機肥料によって提供される植物の栄養素を動員するために使用することもできる。
【0092】
別の態様では、本発明はまた、a)PepRが存在しないか若しくは変異体PepR、又はb)PepHが存在しないか若しくは変異体PepH、又はc)PepXが存在しないか若しくは変異体PepX、又はd)SacBが存在しないか若しくは変異体SacB、又はa)、b)、c)、若しくはd)の少なくとも2つの組み合わせを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株の発酵による価値ある生成物の生成方法を含む。
【0093】
価値ある生成物とは、パエニバチルス(Paenibacilli)の発酵により生成することができる商品価値のあるあらゆる生成物であり得る。このような生成物の非限定的な例は、食品又は飼料の加工、洗剤又は化学合成などの産業用途で使用される酵素である。このような酵素の例は、フィターゼ、キチナーゼ、プロテアーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼ、セルラーゼ、ラッカーゼ、又はリパーゼである。これらの酵素は、野生型パエニバチルス(Paenibacillus)株によっても発現される酵素、又はそれぞれのパエニバチルス(Paenibacillus)株に対して異種であり、導入遺伝子から発現される酵素であり得る。他の例としては、(酵素活性を有さない)タンパク質、例えば、牛乳又は肉の代替品などの動物性タンパク質の代替品として使用するためのものである。
【0094】
価値ある生成物の更なる例は、ビタミンなどの二次代謝産物、又は2,3-ブタンジオール、乳酸、若しくはアセトインなどの商品価値のあるその他の化学物質である。価値ある生成物が2,3-ブタンジオール、乳酸、又はアセトインである場合、パエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株は、好ましくは変異体若しくは野生型PepH及び又は変異体若しくは野生型SacBを含む。
【0095】
価値ある生成物の追加の例は、ポリミキシン、オクタペプチン、ポリペプチン、ペルギペプチン、フザリシジン、又はランチビオティック(lantibiotic)などの抗菌化合物である。
【0096】
価値ある生成物の追加の例は、a)PepRが存在しないか若しくは変異体PepR、又はb)PepHが存在しないか若しくは変異体PepH、又はc)PepXが存在しないか若しくは変異体PepX、又はd)SacBが存在しないか若しくは変異体SacB、又はa)、b)、c)、若しくはd)の少なくとも2つの組み合わせを含むパエニバチルス種(Paenibacillus sp.)の株により産生されるEPSであり、EPSの組成は、野生型PepR、PepH、PepX、及びSacBを含む野生型株とは異なる。
【0097】
本発明の技術的教示は、言語手段を使用して、特に科学用語及び技術用語を使用することにより、本明細書で表される。しかしながら、当業者は、言語手段が、それが詳細且つ正確であり得るとしても、教示を表現する複数の方法があり、その各々が全ての概念上のつながりを完全に表現することは、表現の各々が必然的に完結しなければならないことから必然的に不可能である、ということのみが理由であるとしても、技術的教示の完全な内容に近似するものに過ぎない可能性があることを理解している。これを念頭において、当業者は、本発明の主題が、本明細書で示されるか又は本明細書の本質的な制約によって必然的にパルス・プロ・トト方式で表現される個々の技術的概念の総和であることを理解する。特に、当業者は、個々の技術的概念の表明が、本明細書において、技術的に実用的である限り概念の各々の考えられる組み合わせを詳細に述べたものの略記としてなされ、その結果、例えば、3つの概念又は実施形態の開示であるA、B及びCは、概念A+B、A+C、B+C、A+B+Cの省略表記であることを理解するであろう。特に、特徴に関する代替案は、代替例又は具体例を集約するリストに関して本明細書で記載される。別途記述されない限り、本明細書に記載の本発明は、そのような代替例の任意の組み合わせを含む。そのようなリストから幾分好ましい要素を選択することは、本発明の一部であり、またそれぞれの特徴によって伝えられる利点を最小程度に現実化させるための当業者の優先性によるものである。このような複数の組み合わされた具体例は、本発明の適切に好ましい形態を表す。
【実施例】
【0098】
実施例1 変異体の生成:
P.ポリミクサ(P.polymyxa)におけるCRISPR Cas9による点変異の標的化組み込みに使用される株のリストを表1に示す。プラスミドのクローニング及び増殖は、NEB(New England Biolabs,USA)からのいずれかの大腸菌(E.coli)DH5αで実施した。P.ポリミクサ(P.polymyxa)の形質転換は、大腸菌(E.coli)S17-1(DSMZ)を介した接合によって行った。株はLB又はTSB培地で成長させた。平板培地には1.5%寒天を使用した。必要に応じて、培地に50μg/mLのネオマイシン及び/又は20μg/Lポリミキシンを補充した。P.ポリミクサ(P.polymyxa)は30℃及び250rpmで成長し、一方、大腸菌(E.coli)は37℃及び250rpmであった。
【0099】
【0100】
Lu17007はドイツの作付面積から単離され、ブダペスト条約に基づいて、2013年2月20日に受託番号DSM26970でドイツ微生物管理機構(DSMZ)に寄託された。
【0101】
Ruetering M, Cress BF,Schilling M,Ruehmann B,Koffas MAG,Sieber V,Schmid J.Tailor-made exopolysaccharides-CRISPR-Cas9 mediated genome editing in Paenibacillus polymyxa.Synth Biol(Oxf).2017 Dec 21;2(1):ysx007.doi:10.1093/synbio/ysx007に記載されているCRISPR Cas9手順に従って、P.ポリミクサ(P.polymyxa)(レシピエント株)及び目的のプラスミドを保有する大腸菌(E.coli)S17-1(ドナー株)の間で接合を実施した。正しい接合体の確認は、コロニーPCR及びDNA断片の配列決定によって実行された。プラスミドの硬化は、37CのLB液体培地中で陽性変異体を1:100継代培養することによって実施した。
【0102】
pepR及びsacB遺伝子の改変又はノックアウトは、Ruetering M,Cress BF,Schilling M,Ruehmann B,Koffas MAG,Sieber V,Schmid J.Tailor-made exopolysaccharides-CRISPR-Cas9 mediated genome editing in Paenibacillus polymyxa.Synth Biol(Oxf).2017 Dec 21;2(1):ysx007.doi:10.1093/synbio/ysx007によって確立されたCRISPR-Cas9媒介系によって達成された。選択されたgRNA配列は、pepR及びsacB遺伝子内の標的位置への最も近い位置に基づいて選択された。隣接する相同体として、それぞれpepR又はsacBに由来する1000bpの隣接遺伝子を使用した。pCasPPベクター系を使用して1000の次の突然変異を生成した(表2)。
【0103】
【0104】
実施例2 発酵条件及び変異体の特性評価:
変異体の特性評価は、Ruetering M,Cress BF,Schilling M,Ruehmann B,Koffas MAG,Sieber V,Schmid J.Tailor-made exopolysaccharides-CRISPR-Cas9 mediated genome editing in Paenibacillus polymyxa.Synth Biol(Oxf).2017 Dec 21;2(1):ysx007.doi:10.1093/Synbio/ysx007.から採用された12Lの菌体外多糖産生培地を充填した21Lのバイオリアクター(Techfors,Infors)で実施した。発酵培地の組成を表3に列挙する。
【0105】
表3:原液の保存(室温(RT)又は4℃)及び滅菌方法(滅菌濾過/オートクレーブ、s/a)仕様を備えた菌体外多糖産生培地の組成
【0106】
【0107】
30℃で40時間発酵を行い、pHを6.8に設定して、H3PO4(25%)及びNaOH(1M)で調節した。前培養として、全ての変異体は、100mLの改変TSB培地(Becton Dickenson Art.Nr.211825の30g/LのTSB、3g/Lの酵母抽出物、20.9g/LのMOPS、10g/Lのグルコース)を含むバッフル付き1L振盪フラスコ内で33℃及び150rpm/2.5cm振とう径にて24時間成長させた。
【0108】
バイオリアクターでは、スターラー-ガス流のカスケードで目標溶存酸素レベルを30%以上に設定した。産生される菌体外多糖の剥離を防ぐために、2つのプロペラ及び1つのRushtonで構成される撹拌装置セットアップを使用する間、撹拌は300~600rpmに制限され、後者は撹拌シャフトの近くに配置された。酸素供給を維持するために、0.5barの圧力で5~30L/分でエアレーションを実施した。Struktol J673(Schill+Seilacher「Struktol」GmbH,Germany)を消泡剤として使用した。培養試料はレオロジー粘度分析と更なるオフライン分析のために4時間ごとに採取した。
【0109】
実施例3 培養ブロス粘度のレオロジー分析:
ブロス粘度のレオロジー分析を、ダブルスライド形状のAnton Paar MCR302レオメーターを使用して発酵中4時間ごとに実施した(Measuring Cup:C-DG26.7/SS/Air、温度:30℃、試料体積:全培養ブロス5mL)。試料は、10s-1の一定剪断速度で、100秒間の予備剪断実験で予備調整した。10秒ごとに10個のデータポイントを記録した。予備調整の後、粘度を剪断速度の関数として測定した。したがって、合計25個のデータポイントを記録しながら、剪断速度は1s-1から100s-1まで対数的に増加した。発酵時間にわたって測定された培養ブロス粘度を
図1に図示する。
【配列表】
【国際調査報告】