IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェンの特許一覧

特表2024-531360EMIシールド性接着剤組成物及びその使用
<>
  • 特表-EMIシールド性接着剤組成物及びその使用 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】EMIシールド性接着剤組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/00 20060101AFI20240822BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20240822BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240822BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20240822BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20240822BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20240822BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J9/02
C09J11/06
C09J4/00
G03B17/02
G03B30/00
H05K9/00 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509486
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2022070114
(87)【国際公開番号】W WO2023020763
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】21191943.6
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】菊池 由加利
【テーマコード(参考)】
4J040
5E321
【Fターム(参考)】
4J040BA202
4J040FA102
4J040FA131
4J040FA132
4J040FA182
4J040FA291
4J040FA292
4J040HA066
4J040HD41
4J040JB10
4J040KA12
4J040KA26
4J040KA32
4J040LA09
4J040MA02
4J040NA19
5E321AA17
5E321BB21
5E321BB32
5E321BB57
5E321GG05
(57)【要約】
本発明の目的は、高い耐衝撃性を有し、低温で十分に硬化するEMIシールド硬化物を与え、金属表面に貼り付けると接着面の引張強度が高くなる、高いEMIシールド性能を有するアクリル樹脂含有接着剤組成物を提供することにある。本発明は、(a)導電性フィラー、(b)(メタ)アクリル樹脂、(c)粘着付与剤、(d)ビスマレイミドおよび(e)ラジカル開始剤を含むEMIシールド性接着剤組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)導電性フィラー;
(b)(メタ)アクリル樹脂;
(c)粘着付与剤;
(d)ビスマレイミド;および
(e)ラジカル開始剤
を含むEMIシールド性接着剤組成物。
【請求項2】
前記導電性フィラー(a)の含有量は、接着剤組成物全体の60~95重量%である、請求項1に記載のEMIシールド性接着剤組成物。
【請求項3】
粘着付与剤(c)の軟化点は150℃以下である、請求項1または2に記載のEMIシールド性接着剤組成物。
【請求項4】
前記ビスマレイミドは式(I)
[式中、nは1~40の整数を表し、Rは炭素数1~12の直鎖状または少なくとも部分的に環状の2価の炭化水素基を表す]
で表される、請求項1~3のいずれか1項に記載のEMIシールド性接着剤組成物。
【請求項5】
カメラモジュールまたはセンサーの組み立てに使用される、請求項1~4のいずれか1項に記載のEMIシールド性接着剤組成物。
【請求項6】
カメラモジュールまたはセンサーを組み立てるための、請求項1~4のいずれか1項に記載のEMIシールド性接着剤組成物の使用。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載のEMIシールド性接着剤組成物を硬化することによって得られる、硬化物。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載のEMIシールド性接着剤組成物基材に電子部品を接着することを含む、カメラモジュールまたはセンサーの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明はEMIシールド性接着剤組成物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
今日のコンパクトなカメラモジュールとセンサーには、電磁波を発生する多くのデバイスが含まれている。これらの電子部品には、機器からの電磁波の放射を防ぎ、外部の電磁波から機器を守るために、電磁波を遮断する接着剤が使用されている。このような電磁シールド性接着剤は、フィラーを高度に充填すると、高いEMIシールド性能を発揮することが一般に知られている。しかしながら、フィラーが多すぎると、接着剤が硬くなりすぎて脆くなり、耐衝撃性能が低下する傾向がある。
【0003】
特許文献1には高EMIシールド性化合物が開示されているが、銀の含有量が多いため耐衝撃性に劣る。特許文献2では、耐衝撃性を向上させるために、アクリル樹脂を含む調製物を使用して弾性率を下げることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-294254号公報
【特許文献2】国際公開第2021/075265号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
技術的課題
従来の高いEMIシールド性能を備えたアクリル樹脂を配合した接着剤組成物では、金属表面で十分な引張強度(pull strength)を発揮することが困難であった。さらに、組成物を低温で硬化させる場合、顕著な酸素阻害が起こり、組成物を完全に硬化させることが困難になる。
【0006】
本発明の目的は、高い耐衝撃性を有し、低温で十分に硬化するEMIシールド硬化物を与え、金属面に貼り付けると、接着面の引張強度(pull strength)が高くなるEMIシールド硬化物を提供する、高いEMIシールド性能を有するアクリル樹脂含有接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題の解決策
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、(a)導電性フィラー、(b)(メタ)アクリル樹脂、(c)粘着付与剤、(d)ビスマレイミド、及び(e)ラジカル開始剤を含む接着剤組成物により解決できることを見出した。本発明は、上記知見に基づいてさらに検討を加えて完成されたものであり、以下の実施形態を包含する。
【0008】
項1 (a)導電性フィラー;(b)(メタ)アクリル樹脂;(c)粘着付与剤;(d)ビスマレイミド;および(e)ラジカル開始剤を含むEMIシールド性接着剤組成物。
項2 導電性フィラー(a)は接着剤組成物全体に基づき60~95重量%の量で存在する、項1に記載のEMIシールド性接着剤組成物。
項3 粘着付与剤(c)の軟化点は150℃以下である、項1または2に記載のEMIシールド性接着剤組成物。
項4 前記ビスマレイミドは式(I)
[式中、nは1~40の整数を表し、Rは炭素数1~12の直鎖状または少なくとも部分的に環状の2価の炭化水素基を表す]
で表される、項1~3のいずれか1項に記載のEMIシールド性接着剤組成物。
項5 カメラモジュールまたはセンサーの組み立てに使用される、項1~4のいずれか1項に記載のEMIシールド性接着剤組成物。
項6 項1~4のいずれか1項に記載のEMIシールド性接着剤組成物のカメラモジュールまたはセンサーの組み立てのための使用。
項7 項目1~4のいずれか1項に記載のEMIシールド性接着剤組成物を硬化させることにより得られる硬化物。
項8 項1~4のいずれか1項に記載のEMIシールド性接着剤組成物を用いて基材に電子部品を接合することを含む、カメラモジュールまたはセンサーの組立方法。
【発明の効果】
【0009】
発明の有利な効果
本発明のEMIシールド性接着剤組成物を用いることにより、従来技術に比べて耐衝撃性が高く、低温で十分に硬化したEMIシールド硬化物を提供できる。さらに、前記EMIシールド性硬化物を金属表面に貼り付けると、接着面は高い引張強度(pull strength)を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例における引張強度試験の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態の説明
本明細書において、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルとは、それぞれアクリレートまたはメタクリレート、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0012】
本発明のEMIシールド性接着剤組成物は、(a)導電性フィラー;(b)(メタ)アクリル樹脂;(c)粘着付与剤;(d)ビスマレイミド;および(e)ラジカル開始剤を含む。
【0013】
(a)導電性フィラー
本発明のEMIシールド性接着剤組成物は、導電性フィラーを含有しているため、EMIシールド性を有している。
【0014】
導電性フィラーとしては、EMI遮蔽特性を付与するものであればよく、既知の導電性フィラーの中から適宜選択できる。
【0015】
導電性フィラーは、銀、銅、及びニッケルからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。導電性フィラーは、これらの金属のうちの1つから構成されてもよく、またはこれらの金属のうちの2つ以上の合金または複合物から実質的に構成されてもよい。
【0016】
導電性フィラーは、コア部とシェル部を含むコアシェル構造を有してよく、コア部は樹脂等の有機材料や上記金属以外の無機材料を含み、シェル部は上述の金属群から選択される少なくとも1種の金属を含むものであってよい。
【0017】
導電性フィラーとしては、球状、楕円体、針状、フレーク状、非晶質などが挙げられる。導電性フィラーは、これらの形状の2つ以上を混合したものであってもよい。
【0018】
導電性フィラーが球状である場合、その平均粒径は、良好な分散性を維持し、分注時の目詰まりを抑制する観点から、0.01~50μmが好ましく、0.05~40μmがより好ましく、0.1~20μmがさらに好ましい。
【0019】
導電性フィラーが楕円状、針状、鱗片状、又は非晶質の場合、その平均粒子径は、良好な分散性を維持し、分注時の目詰まりを抑制する観点から、0.01~50μmが好ましく、0.05~40μmがより好ましく、0.1~20μmがさらに好ましい。
【0020】
本発明のEMIシールド性接着剤組成物は、優れたEMI特性を実現する観点から、導電性フィラーを接着剤組成物全体に対して60~95重量%の量で含有することが好ましく、より好ましくは65~90重量%、さらに好ましくは70~85重量%である。
【0021】
導電性フィラーとしては、例えば、EA-0101(Metalor Technologies USA製)、SF15(Ames社製)、TC-506 (徳力本店社製)、FA-DAB-283(DOWAホールディングス社製)が挙げられる。
【0022】
本発明のEMIシールド性接着剤組成物は、導電性フィラーを1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
【0023】
(b)(メタ)アクリル樹脂
本発明のEMIシールド性接着剤組成物は(メタ)アクリル樹脂を含有しているため、この組成物を硬化して得られる硬化物は、導電性フィラーを含有していても耐衝撃性に優れる。
【0024】
(メタ)アクリル樹脂は、炭化水素部分が置換されていてもよい炭化水素(メタ)アクリレートモノマーを少なくとも1種含むモノマーを重合して得られるポリマーである。炭化水素(メタ)アクリレートモノマーは、多官能性アクリレートであってもよい。(メタ)アクリル樹脂が2種以上の炭化水素(メタ)アクリレートモノマーの共重合体である場合、それは典型的にはランダム共重合体である。炭化水素部位が有していてもよい置換構造としては、特に限定されないが、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基等が挙げられる。炭化水素部分は、上記置換構造群から選ばれる少なくとも2つで置換されていてもよい。炭化水素部分は飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素部分は、直鎖状、分枝鎖状、環状、またはこれらのうちの少なくとも2つの組み合わせであってよい。
【0025】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(多官能アクリレートを含む)などが挙げられる。この場合、ガラス転移温度(Tg)が高すぎると弾性率が高くなり、十分な耐衝撃性が得られなくなる。ガラス転移温度(Tg)は50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましい。
【0026】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、n-プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシメチルジエトキシシラン、4-メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、4-メタクリロキシブチルトリエトキシシラン、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
アルキル多官能(メタ)アクリレートの例としては、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1、6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0028】
(メタ)アクリレートモノマーの他の例には、ウレタン(メタ)アクリレート、(ポリ)エステル(メタ)アクリレート、および(ポリ)エーテル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0029】
(メタ)アクリル樹脂は多くのメーカーから市販されている。(メタ)アクリル樹脂は、典型的に知られている方法に従って製造できる。
【0030】
(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、日立化成工業(株)製の製品FA-512M、日立化成工業(株)製の製品FA-711MM、日立化成工業(株)製の製品FA-712HM、日立化成工業(株)製の製品FA-400M、共栄社化学工業(株)製の製品ライトエステルG-201P、新中村化学工業(株)製の製品PHE-1G、新中村化学工業(株)製の製品S社、新中村化学工業(株)製の製品SAなどが挙げられる。
【0031】
本発明のEMIシールド性接着剤組成物は、優れた電磁波シールド特性を維持する観点から、(メタ)アクリル樹脂を5~40重量%の量で含有することが好ましく、10~35重量%がより好ましく、15~30重量%がさらに好ましい。
【0032】
本発明のEMIシールド性接着剤組成物は、(メタ)アクリル樹脂を1種のみ含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
【0033】
(c)粘着付与剤
本発明のEMIシールド性接着剤組成物は、粘着付与剤と後述するビスマレイミドを含有するため、低温で硬化させても組成物の硬化性が向上し、金属面に塗布した際の接着面の引張強度(pull strength)が高い。
【0034】
粘着付与剤の例としては、ロジン及びそれから誘導されるエステル樹脂が挙げられる。
【0035】
硬化温度およびその後の熱履歴において接着性を示す温度範囲を有する粘着付与剤を選択できる。本願において、軟化点は150℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましく、110℃であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、軟化点とは、環球法により測定された値をいう。
【0036】
粘着付与剤の例としては、KE-311(軟化点90~100)、D-125 (軟化点120~130)(いずれも荒川化学工業社製)等のロジン誘導体が挙げられる。
【0037】
本発明のEMIシールド性接着剤組成物は、大幅な粘度上昇を抑え、優れた密着性を発揮する観点から、フィラーを除く樹脂成分に対して、粘着付与剤を1~15重量%の量で含有することが好ましく、3~13重量%がより好ましく、5~11重量%がさらに好ましい。
【0038】
本発明のEMIシールド性接着剤組成物は、粘着付与剤を1つだけ含んでいてもよいし、2つ以上含んでいてもよい。
【0039】
(d)ビスマレイミド
本発明のEMIシールド性接着剤組成物は、上記粘着付与剤とビスマレイミドを含有しているため、低温で硬化させても組成物の硬化性が向上し、金属表面に塗布した際の接着面の引張強度(pull strength)が高い。
【0040】
ビスマレイミドは、好ましくは式(I)
[式中、nは1~40の整数を表し、Rは炭素数1~12の直鎖状または少なくとも部分的に環状の二価の炭化水素を表す]
で表される。
【0041】
上記式(I)中、nは好ましくは20~40、より好ましくは30~40であり、Rは好ましくは炭素数2~8の直鎖状または少なくとも一部が環状の二価炭化水素を表す。
【0042】
本発明のEMIシールド性接着剤組成物では、金属表面への接着性を高め、粘度の大幅な上昇を抑制する観点から、ビスマレイミドの含有量を、フィラーを除く樹脂成分に対して、1~30重量%とすることが好ましく、より好ましくは5~25重量%、さらに好ましくは10~20重量%である。
【0043】
本発明のEMIシールド性接着剤組成物は、ビスマレイミドを1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
【0044】
(e)ラジカル開始剤
本発明のEMIシールド性接着剤組成物にはラジカル開始剤が含まれるため、(メタ)アクリル樹脂とビスマレイミドとの重合反応が起こり、組成物を低温硬化させた場合でも硬化性が高くなる。さらに、この組成物を金属表面に塗布した場合、接着面は高い引張強度(pull strength)を有する。
【0045】
ラジカル開始剤は、公知のラジカル開始剤の中から適宜選択できる。
【0046】
ラジカル開始剤の具体例としては、パーブチルO(ペルオキシ-2-エチルヘキサン酸tert-ブチル)、パーヘキシルO(ペルオキシ-2-エチルヘキサン酸tert-ヘキシル)、パーオクタO(1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート)、パーブチルND(ペルオキシネオデカン酸tert-ブチル)、パーオイルTCP(ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート)(いずれも日油株式会社製である)。
【0047】
本発明のEMIシールド性接着剤組成物は、使用時の安定性を保つ観点から、ラジカル開始剤を、フィラーを除いた樹脂成分に対して、好ましくは3~20重量%、より好ましくは5~17重量%、さらに好ましくは7~14重量%含む。
【0048】
本発明のEMIシールド性接着剤組成物は、ラジカル開始剤を1つだけ含んでいてもよいし、2つ以上含んでいてもよい。
【0049】
その他の成分
本発明のEMIシールド性接着剤組成物は、必要に応じて、さらに他の成分を含有してもよいし、2種以上の他の成分を含有してもよい。
【0050】
他の成分の例としては、接着助剤(例えば、シラン)、カップリング剤(例えば、チタネート)、およびレオロジー調整剤(例えば、ヒュームドシリカ)が挙げられる。
【0051】
用途
本発明のEMIシールド性接着剤組成物は、カメラモジュールとセンサーの組み立てに好ましく用いられる。ここで、カメラモジュールとしては、特に限定されないが、例えば、スマートフォン等に用いられる小型のカメラモジュールが挙げられる。
【実施例
【0052】
実施例
実施例1~4、比較例1、2の接着剤組成物は、表1に示す組成比(表1中の各数値の単位は重量比)で各成分を混合して調製した。具体的には、各成分を任意の割合で添加し、プラネタリーミキサーを用いて混練分散し、真空脱泡して接着剤組成物を得た。
【0053】
以下の成分を使用した。
(a)導電性フィラー
AgフレークフィラーAG1 SA-0201(Metalor Technologies USA製)
AgフレークフィラーAG2 DNS-0351P(ダイセル株式会社製)
AgフレークフィラーAG3 SF78(Ames製)
【0054】
(b)(メタ)アクリル樹脂
M-5700((2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート)東亜合成株式会社製)
UN-7600(ウレタンアクリレートオリゴマー、根上化学工業株式会社製)
【0055】
(c)粘着付与剤
KE-311(無色ロジンエステル、軟化点(環球法):90~100℃、荒川化学工業(株)製)
D-125(ロジンエステル、軟化点(環球法):120~130℃、荒川化学工業(株)製)
【0056】
(d)ビスマレイミド
24-468A(C36分岐アルカンジイルビス-[6-(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサン酸];Henkel AG & Co. KGaA製)
【0057】
(e)ラジカル開始剤
パーカドックス16(Nouryon社製)
【0058】
各評価試験は以下のように行った。評価結果を表1に示す。

弾性率
配合した接着剤ペーストを80℃、60分の条件で厚さ0.3mmまで硬化させてシート状に成形した。その後、このシートを幅10mmの短冊状に切り出し、引張モードで動的粘弾性測定(DMA)を行い、-40℃~250℃における貯蔵弾性率E’を測定した。
【0059】
ボール落下耐性
配合した接着剤ペーストをサイズ10cm×5cmのNi板に塗布し、その上にサイズ7mm×7mmのSUS板を載せた。この際、膜厚を一定に保つために、両者の間に0.1mmのスペーサーを挿入した。圧着後の直径が3mmとなるようにペーストの塗布量を調整した。80℃のオーブンで1時間硬化させた後、重さ30gのボールをNi板に垂直方向から自然落下させた。高さ10cmからスタートし、10cm刻みで高さを上げていった。SUS板が剥がれるまでの距離をボール落下耐性(cm)と定義した。
【0060】
EMI性能
配合された接着剤ペーストを使用して、250mm×20mmのサイズおよび100μmの厚さを有する硬化フィルムを形成した。フィルムを80℃のオーブンで1時間硬化させた後、デュアルフォーカスフラットキャビティ(DFFC)法を用いて測定した。1GHz~8.5GHzの周波数でのシールド効果(db)を測定した。
【0061】
引張強度(Pull Strength)
引張強度は図1のように求めた。具体的には、引張強度は以下のようにして求めた。サイズ10cm×5cmのNi板にペーストを塗布し、その上にサイズ5mm×5mmの別のNi板を置いた。この際、膜厚を一定に保つために0.1mmのスペーサーを挟む。圧着後の直径が3mmとなるようにペーストの塗布量を調整した。上側のNi板を80℃のオーブンで1時間硬化した後、株式会社今田製作所製の引張圧縮試験機を用いて、これを室温にて垂直方向に10mm/minで引っ張った。引っ張った際の応力を接着強度と定義した。
【0062】
【表1】
【0063】
このことから、エポキシ樹脂の代わりに(メタ)アクリル樹脂を含有する比較例2の接着剤組成物を硬化させた場合、エポキシ樹脂を含有する比較例1の接着剤組成物を硬化させた場合と比較して、高い柔軟性を有する硬化物が得られることが明らかとなった。
【0064】
さらに、(メタ)アクリル樹脂と粘着付与剤を含む実施例1~4の接着剤組成物を硬化させると、柔軟性の高い硬化物が得られるだけでなく、金属面に対する接着面の引張耐性はいずれも向上することが判明した。
図1
【国際調査報告】