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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】併用放射線療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20240822BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240822BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20240822BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240822BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240822BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240822BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240822BHJP
   A61K 103/00 20060101ALN20240822BHJP
   A61K 103/40 20060101ALN20240822BHJP
   A61K 103/32 20060101ALN20240822BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P35/04
A61K51/10 100
A61K31/5377
A61K39/395 T
A61K39/395 N
A61K39/395 U
C07K16/00 ZNA
C07K16/28
C12N15/13
A61K103:00
A61K103:40
A61K103:32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510331
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 AU2022050911
(87)【国際公開番号】W WO2023019308
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】2021902557
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2021902582
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522003486
【氏名又は名称】テリックス ファーマシューティカルズ (イノベーションズ) ピーティーワイ リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィートクロフト、マイケル ポール
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、エドウィン ピンピン
(72)【発明者】
【氏名】スコット、アンドリュー マーク
(72)【発明者】
【氏名】ジョンストーン、キャメロン
(72)【発明者】
【氏名】ツィマーマン、アストリッド
(72)【発明者】
【氏名】ツェンケ、フランク
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA12
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA14
4C085AA26
4C085BB01
4C085BB11
4C085BB36
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC73
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、DNA修復阻害剤と分子標的放射免疫治療剤との組み合わせを投与することを含む、異常な細胞増殖を特徴とする疾患及び状態(例えば、がん)を治療する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における異常な細胞増殖及び細胞機能を特徴とする疾患又は障害を治療するための方法であって、
i)DNA-PK阻害剤(DNA-PKi)、
ii)細胞内在化及び/又は前記対象の血液循環中に保持することが可能な分子標的放射線治療薬
を含む併用療法を、治療を必要とする対象に施すことを含み、
前記放射線治療薬が、ベータ放射体である放射性核種を含み、
それによって、前記対象における異常な細胞増殖及び細胞機能を特徴とする前記疾患又は障害を治療する、方法。
【請求項2】
対象における異常な細胞増殖及び細胞機能を特徴とする疾患又は障害を治療するための方法であって、
i)(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-メタノール(M3814)又はその薬学的に許容される塩、
ii)細胞内在化及び/又は前記対象の血液循環中に保持することが可能な分子標的放射線治療薬
を含む併用療法を、治療を必要とする対象に施すことを含み、
それによって、前記対象における異常な細胞増殖及び細胞機能を特徴とする前記疾患又は障害を治療することを含む、方法。
【請求項3】
前記分子標的放射線治療薬が、放射免疫複合体(radioimmunoconjugate)である、好ましくは、放射性核種が複合体化された、治療が必要な前記疾患又は障害に関連する抗原に結合するための抗体又はその抗原結合断片である、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記分子標的放射線治療薬が、治療が必要な前記疾患又は障害に関連する抗原に結合するための抗体であり、前記抗体が放射性核種に複合体化されており、好ましくは前記抗体がIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択される免疫グロブリン、特に主に肝クリアランスを受ける抗体である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記疾患又は障害ががんであり、前記分子標的放射線治療薬が、前記がんによって発現される腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原に結合するための抗体又はその抗原結合断片を含み、任意に(optionally)、前記がんが転移性がんである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記疾患又は障害が非がん性増殖性細胞障害であり、前記分子標的放射線治療薬が前記増殖細胞によって発現される抗原に結合するための抗体又はその抗原結合断片を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
治療される前記疾患又は障害が炭酸脱水酵素IX(CAIX)の発現を特徴とするがんであり、前記分子標的放射線治療薬がCAIXに特異的に結合可能な抗体又はその抗原結合断片を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
治療される前記疾患又は障害が前立腺特異的膜抗原(PSMA)の発現を特徴とするがんであり、前記分子標的放射線治療薬がPSMAに特異的に結合可能な抗体又はその抗原結合断片を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記放射性核種がアルファ放射体であり、好ましくは、アスタチン-211211At)、ビスマス-212212Bi)、ビスマス-213213Bi)、アクチニウム-225225Ac)、ラジウム-223223Ra)、鉛-212212Pb)、トリウム-227227Th)、及びテルビウム-149149Tb)からなる群から選択され、より好ましくは、前記放射性核種がアスタチン-211211At)又はアクチニウム-225225Ac)である、請求項2~請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記放射性核種がベータ放射体又はベータ/ガンマ放射体であり、好ましくは、ルテチウム-177177Lu)、イットリウム-9090Y)、ヨウ素-131131l)、サマリウム-153153Sm)、ホルミウム-166166Ho)、レニウム-186186Re)、又はレニウム-188188Re)からなる群から選択され、より好ましくは、前記放射性核種がルテチウム-177177Lu)又はレニウム-188188Re)である、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
CAIXの発現を特徴とするがんを治療するための方法であって、
i)(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-メタノール(M3814)又はその薬学的に許容される塩、
ii)CAIXに結合するための抗体又はその抗原結合断片、ここで、前記抗体又はその抗原結合断片は、前記がんに放射線治療用量を送達するための放射性核種に複合体化されている、
を含む併用療法を、治療を必要とする対象に施すことを含み、
それによって前記対象の前記がんを治療する、方法。
【請求項12】
CAIXに結合するための前記抗体又は抗原結合断片が、G250抗体を含むか、又は本明細書の表2で定義される抗原結合ドメインを含む抗体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗原結合ドメインが、
a)配列番号49、配列番号65、配列番号81、配列番号97、及び配列番号113のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号50、配列番号66、配列番号82、配列番号98及び配列番号114のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むCDR2、並びに配列番号51、配列番号67、配列番号83、配列番号99、及び配列番号115のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域、並びに、
b)配列番号129、配列番号145、配列番号161、配列番号177、配列番号193、及び配列番号209のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号130、配列番号146、配列番号162、配列番号178、配列番号194、及び配列番号210のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むCDR2、並びに配列番号131、配列番号147、配列番号163、配列番号179、配列番号195、及び配列番号211のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記抗原結合ドメインが、配列番号52、配列番号68、配列番号84、配列番号100、及び配列番号116のいずれか1つに定義されたアミノ酸配列と80%以上同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、並びに配列番号132、配列番号148、配列番号164、配列番号180、配列番号196、及び配列番号212のいずれか1つに定義されたアミノ酸配列と80%以上同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が、配列番号225~配列番号228のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、好ましくは配列番号229と組み合わせて含み、最も好ましくは、配列番号231及び配列番号234に示されるアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
CAIXの発現を特徴とする前記がんが、腎細胞癌(淡明細胞型腎細胞癌を含む)、結腸がん、乳がん、肺がん、子宮頸がん、及び黒色腫からなる群から選択され、好ましくは前記がんが腎臓がんである、請求項11~請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記がんが転移性がんであり、任意に、転移性腎細胞癌である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
PSMAの発現を特徴とするがんを治療するための方法であって、
i)(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-メタノール(M3814)又はその薬学的に許容される塩、
ii)PSMAに結合するための抗体又はその抗原結合断片、ここで、前記抗体又はその抗原結合断片は、前記がんに放射線治療用量を送達するための放射性核種に複合体化されている、
を含む併用療法を、治療を必要とする対象に施すことを含み、
それによって前記対象の前記がんを治療する、方法。
【請求項19】
PSMAに結合するための前記抗体又は抗原結合断片が、J591抗体又はそのバリアント若しくはヒト化形態、あるいは本明細書の表1に定義される抗原結合ドメインを含む抗体を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体又は抗原結合断片が、
a)配列番号1、配列番号17、又は配列番号244のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号2又は配列番号18のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号3又は配列番号19のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域、並びに、
b)配列番号33に示されるアミノ酸配列を含むCDR1、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含むCDR2、及び配列番号35に示されるアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記抗原結合ドメインが、配列番号4及び配列番号20のいずれか1つに定義されたアミノ酸配列と80%以上同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、並びに配列番号36に定義されたアミノ酸配列と80%以上同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体が、配列番号239~配列番号242のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、配列番号239及び配列番号243のアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
PSMAの発現を特徴とする前記がんが、前立腺がん、膀胱がん、精巣胚性がん、神経内分泌がん、腎細胞癌、及び乳がんからなる群から選択され、好ましくは、前記がんが前立腺がんである、請求項18~請求項22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記がんが転移性前立腺がんであり、任意に、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記放射性核種がアルファ放射体であり、好ましくは、アスタチン-211211At)、ビスマス-212212Bi)、ビスマス-213213Bi)、アクチニウム-225225Ac)、ラジウム-223223Ra)、鉛-212212Pb)、トリウム-227227Th)、及びテルビウム-149149Tb)からなる群から選択され、より好ましくは、前記放射性核種がアスタチン-211211At)、又はアクチニウム-225225Ac)である、請求項11~請求項24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記放射性核種がベータ又はベータ/ガンマ放射体であり、好ましくは、ルテチウム-177177Lu)、イットリウム-9090Y)、ヨウ素-131131l)、サマリウム-153153Sm)、ホルミウム-166166Ho)、レニウム-186186Re)、及びレニウム-188188Re)からなる群から選択される、請求項11~請求項24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記放射性核種が、ルテチウム-177177Lu)又はレニウム-188188Re)である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記分子標的放射線治療薬及び前記DNA-PKiが、いずれかの順序で順次投与されるか、又は同時投与される、請求項1~請求項27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記DNA-PKi、好ましくはM3814が、前記分子標的放射線治療薬の投与後に投与される、請求項1~請求項27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記DNA-PKi、好ましくはM3814が、前記分子標的放射線治療薬の投与後、1日間以上、2日間以上、3日間以上、4日間以上、5日間以上、6日間以上、7日間以上、又はそれを超える期間にわたって投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記DNA-PKi、好ましくはM3814が、前記分子標的放射線治療薬の投与後、7日間以下、6日間以下、5日間以下、4日間以下、3日間以下、2日間以下、又は1日間以下投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記DNA-PKi、好ましくはM3814が、前記分子標的放射線治療薬の投与後、24時間以内に投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記対象における異常な細胞増殖又は細胞機能を特徴とする疾患又は障害を治療するための、前記分子標的放射線治療薬の単回用量のみの投与を含む、請求項1~請求項32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記方法が1又は複数の治療サイクルを施すことを含み、各治療サイクルが、前記分子標的放射線治療薬の投与、及びそれに続く、前記DNA-PKi、好ましくはM3814の、7日間以上、14日間以上、21日間以上、又はそれを超える期間にわたる投与を含む、請求項1~請求項32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記方法が2回以上の治療サイクルを含み、治療サイクル間に治療休止があり、好ましくは、前記治療休止が7日間以上、14日間以上、21日間以上、28日間以上、35日間以上、42日間以上、49日間以上、56日間以上、63日間以上、又はそれを超える期間であり、より好ましくは、前記治療休止が100日間以下である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記放射線治療薬の用量が、前記放射線治療薬での単独療法に必要な治療用量よりも、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、又は約50%以上少ない、請求項1~請求項35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
投与される前記DNA-PKiの用量、好ましくはM3814の用量が、最大耐用量レベルを下回る用量レベルであり、任意に、前記最大耐用量レベルの90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、60%以下、65%以下、60%以下、若しくは55%以下の用量、及び/又は前記併用の最大耐用量レベルの10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、若しくは50%以上の用量である、請求項1~請求項36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
iii)免疫チェックポイント調節剤、化学療法剤、及び放射線増感剤からなる群から選択される追加の抗がん療法の投与をさらに含む、請求項1~請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記追加の抗がん療法が免疫チェックポイント調節剤を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記免疫チェックポイント調節剤が、PD-1の阻害剤、PD-L1の阻害剤、及びCTLA-4の阻害剤、又は本明細書に記載される任意の他の免疫チェックポイント阻害剤から選択される免疫チェックポイント阻害剤である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カンレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、ドスタリマブ、INCMGA00012、AMP-224、及びAMP-514から選択されるPD-1の阻害剤である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、KN035、CK-301、AUNP12、CA-170、及びBMS-986189から選択されるPD-L1の阻害剤である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ及びトレメリムマブから選択されるCTLA-4の阻害剤である、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DNAプロテインキナーゼ(DNA-PK)の阻害剤の投与及び分子標的化放射線療法を含む、がんの治療のための併用療法に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、豪国仮特許出願第2021902557号及び同第2021902582号の優先権を主張し、これらの内容全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
遺伝情報の正確な維持及び子孫への伝達を確実にするために、哺乳動物細胞は、DNA損傷を感知し、その修復を調整し、潜在的な腫瘍形成作用を防止する高度な機構を進化させており、これはまとめてDNA損傷応答(DDR)として知られている。DDRの欠陥は、ゲノムの不安定性の一因となり、がんの重要な特徴の1つである。
【0004】
DNAは、複数の内因性因子及び外因性因子によって損傷され得る。がん細胞DNAを攻撃する放射線療法及び化学療法などの多くの確立された治療法が臨床で使用されているが、がんを有する患者に提供される利益は限られている。これは、少なくとも部分的には、DNA損傷に対処する腫瘍細胞の能力に起因する。
【0005】
塩基修飾から鎖切断にまで及ぶ多様な種類の損傷がDNAに生じ、大きな欠失又はゲノム再編成をもたらす可能性がある。これらのうち、二本鎖切断(DSB)は最も有害であると考えられており、修復されないままにしておくと、細胞及び生物に致命的な結果をもたらす可能性がある。DSB修復は、2つの主要な経路である相同組換え誘導修復(HR)及び非相同末端結合(NHEJ)によって達成される。HRは、切断修復のための鋳型としてインタクトなDNA鎖を必要とし、細胞周期のS期及びG2期に限定される。したがって、HRはNHEJよりもエラーが起こりにくいと考えられる。逆に、NHEJは鋳型の非存在下でDSBを修復し、修復されたDNAの変化をもたらす。とは言え、NHEJは、細胞周期のすべての期で機能的であり、がん細胞において電離放射線(IR)によって誘導されるDSBの80%超の修復に関与すると考えられている。
【0006】
DNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)は、セリン/スレオニンキナーゼであり、他の5つの因子である、Ku70、Ku80、XRCC4、リガーゼIV、及びArtemisと協働して働くNHEJ修復の重要な促進因子である。Ku70及びKu80からなるヘテロ二量体は、DSBに特異的に結合し、触媒サブユニットDNA-PKcを動員して活性化し、次いで、切断の再封鎖に関与するXRCC4/リガーゼIVヘテロ二量体を動員する。DSB末端のトリミングは、修復媒介DNA重合に特化したArtemis及び他のDNAポリメラーゼを必要とし得る。自己リン酸化によるDNA-PKの活性化は、修復プロセスの適切な実行に不可欠である。
【0007】
DNA損傷修復を阻害することによる放射線療法及び化学療法の増強は、例えば、固形腫瘍を有する患者の転帰を改善するための治療戦略として提案されている。しかしながら、そのような併用療法の成功は、しばしば毒性の問題によって妨げられてきた。
【0008】
異常な細胞機能及び細胞増殖を特徴とするがん及び他の障害の治療の改善が依然として必要とされている。特に、そのような治療の有効性を高め、それと同時に、好ましい毒性及び副作用プロファイルを維持することが必要とされている。
【0009】
本明細書における任意の先行技術への言及は、この先行技術が任意の管轄権における共通の一般知識の一部を形成すること、又はこの先行技術が当業者によって理解され、関連性があると見なされ、及び/又は他の先行技術と組み合わされると合理的に予想され得ることを承認するものではなく、又は示唆するものではない。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様では、本発明は、対象における異常な細胞増殖及び細胞機能を特徴とする疾患又は障害を治療するための方法であって、
i)DNA-PK阻害剤(DNA-PKi)、
ii)細胞内在化及び/又は対象の血液循環中に保持することが可能な分子標的放射線治療薬
を含む併用療法を、治療を必要とする対象に施すことを含み、
前記放射線治療薬が、ベータ放射体である放射性核種を含み、
それによって、前記対象における異常な細胞増殖及び細胞機能を特徴とする前記疾患又は障害を治療する、方法を提供する。
【0011】
第2の態様では、本発明は、対象における異常な細胞増殖及び細胞機能を特徴とする疾患又は障害を治療するための方法であって、
i)(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-メタノール(M3814)又はその薬学的に許容される塩、
ii)細胞内在化及び/又は対象の血液循環中に保持することが可能な分子標的放射線治療薬
を含む併用療法を、治療を必要とする対象に施すことを含み、
それによって、前記対象における異常な細胞機能を特徴とする前記疾患又は障害を治療することを含む、方法を提供する。
【0012】
本発明の任意の態様の好ましい実施形態では、分子標的放射線治療薬は放射免疫複合体(radioimmunoconjugate)である。好ましくは、放射免疫複合体は、放射性核種に複合体化された、治療が必要な疾患又は障害に関連する抗原に結合するための抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0013】
抗体は、それ自体が特定の細胞又はタンパク質に結合し、次いでそれらの細胞を攻撃する患者の免疫系を刺激する免疫療法剤である抗体(例えば、モノクローナル抗体)であってもよい。この場合、放射線治療薬は抗体の免疫治療効果と並行して作用する。あるいは、抗体は、標的剤としてのみ作用してもよく、それ自体ではいかなる免疫治療効果も引き起こさない。この場合、抗体に複合体化された放射性核種のみが、本明細書に記載されるDNA-PKiによって本発明の併用療法方法において支持される活性な細胞破壊剤として作用する。
【0014】
本発明の任意の態様の特に好ましい実施形態では、分子標的放射線治療薬は、治療が必要な疾患又は障害に関連する抗原に結合するための抗原結合ドメインを含むモノクローナル抗体であり、ここで、前記モノクローナル抗体は、抗原を発現する細胞に放射線治療用量を提供するための放射性核種に複合体化されている。
【0015】
本発明の任意の態様では、異常な細胞増殖又は細胞機能を特徴とする疾患又は障害はがんである。ただし、本発明は、本明細書にさらに詳しく記載されるように、細胞複製が抑制されない他の疾患又は状態の治療にも適用されることが理解されるであろう。
【0016】
治療される疾患又は障害ががんである場合、分子標的放射線治療薬、好ましくは放射標識抗体は、治療されるがん細胞によって発現される腫瘍特異的抗原又は腫瘍関連抗原に結合することが理解されるであろう。
【0017】
本発明の任意の態様の好ましい実施形態では、治療される疾患又は障害が、炭酸脱水酵素IX(CAIX)の発現を特徴とするがんである。したがって、そのような実施形態では、分子標的放射線治療薬は、好ましくはCAIXに特異的に結合可能な抗体又はその抗原結合断片を含む。それにより治療され得るがんの例としては、腎細胞癌(淡明細胞型腎細胞癌を含む)、結腸がん、乳がん、肺がん、子宮頸がん、及び黒色腫が挙げられる。
【0018】
本発明の任意の態様の好ましい実施形態では、治療される疾患又は障害は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)の発現を特徴とするがんである。したがって、そのような実施形態では、分子標的放射線治療薬は、好ましくはPSMAに特異的に結合可能な抗体又はその抗原結合断片を含む。それにより治療され得るがんの例としては、前立腺がん、膀胱がん、精巣胚性がん、神経内分泌がん、腎細胞癌、及び乳がんが挙げられる。
【0019】
本発明の任意の態様によれば、放射免疫療法剤、好ましくは放射標識モノクローナル抗体は、細胞に治療線量の放射線を供給するために使用することができる任意の適切な放射性核種で標識することができる。適切な治療用放射性核種の例としては、アスタチン-211211At)、ビスマス-212212Bi)、ビスマス-213213Bi)、アクチニウム-225225Ac)、ラジウム-223223Ra)、鉛-212212Pb)、トリウム-227227Th)、及びテルビウム-149149Tb)からなる群から選択されるアルファ放射体が挙げられる。いくつかの実施形態では、放射性核種は225Acである。他の実施形態では、放射性核種は、211アスタチンである。
【0020】
本発明の好ましい態様では、放射性核種は、ルテチウム-177177Lu)、イットリウム-9090Y)、ヨウ素-131131l)、サマリウム-153153Sm)、ホルミウム-166166Ho)、レニウム-186186Re)、又はレニウム-188188Re)からなる群から選択されるベータ放射体又はベータ/ガンマ放射体である。いくつかの実施形態では、放射性核種は、177ルテチウムである。他の実施形態では、放射性核種は、188レニウムである。
【0021】
本発明の任意の態様の特に好ましい実施形態では、治療を必要とする疾患又は障害は、CAIXの発現を特徴とするがんである。したがって、CAIXの発現を特徴とするがんを治療するための方法であって、
i)(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-メタノール(M3814)又はその薬学的に許容される塩、
ii)CAIXに結合するための抗体又はその抗原結合断片、ここで、前記抗体又はその抗原結合断片は、前記がんに放射線治療用量を送達するための放射性核種に複合体化されている、
を含む併用療法を、治療を必要とする対象に施すことを含み、
それによって前記対象の前記がんを治療する、方法が提供される。好ましくは、放射性核種はベータ放射体又はベータ/ガンマ放射体であり、CAIXに結合するための抗体又は抗原結合断片は、本明細書に記載のもの、好ましくは配列番号52、配列番号68、配列番号84、配列番号100、及び配列番号116のいずれかで定義されるアミノ酸配列、並びに配列番号132、配列番号148、配列番号164、配列番号180、配列番号196、及び配列番号212のいずれかで定義されるアミノ酸配列を含む抗原結合ドメインを含むものであり、最も好ましくは、抗体は、本明細書に記載の配列番号231及び配列番号234に示されるアミノ酸配列を含む。
【0022】
特に好ましい実施形態では、治療を必要とする疾患又は障害は、PSMAの発現を特徴とするがんである。したがって、本発明はまた、PSMAの発現を特徴とするがんを治療するための方法であって、
i)(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-メタノール(M3814)又はその薬学的に許容される塩、
ii)PSMAに結合するための抗体又はその抗原結合断片、ここで、前記抗体又はその抗原結合断片は、前記がんに放射線治療用量を送達するための放射性核種に複合体化されている、
を含む併用療法を、治療を必要とする対象に施すことを含み、
それによって前記対象の前記がんを治療する、方法を提供する。好ましくは、前記放射性核種はベータ放射体又はベータ/ガンマ放射体である。好ましくは、PSMAに結合するための抗体又は抗原結合断片は、本明細書に記載のもの、好ましくは本明細書に記載の抗体J591のCDRを有する抗体である。好ましい実施形態では、抗体は、配列番号1、配列番号17、及び配列番号244のいずれかに示されるCDR1、配列番号2又は配列番号18に示されるCDR2、並びに配列番号3又は配列番号19に示されるCDR3である重鎖、並びに配列番号33に示されるCDR1、配列番号34に示されるCDR2、及び配列番号35に示されるCDR3である軽鎖を含む。さらに好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号4又は配列番号20のいずれかで定義される重鎖可変ドメインのCDR、及び配列番号36で定義される軽鎖可変ドメインのCDRを含む、抗原結合ドメインを含む。特定の実施形態では、抗体は、本明細書の配列番号239及び配列番号243に記載のアミノ酸配列を含む。
【0023】
本発明の任意の態様では、分子標的放射線治療薬及びDNA-PKiは、いずれかの順序で順次投与されてもよく、又は同時投与されてもよい。特定の実施形態では、放射線治療薬及びDNA-PKiは、いずれかの順序で順次投与される。他の実施形態では、放射線治療薬は、DNA-PKiの前に投与されてもよい。この場合、DNA-PKiは、放射線治療薬と同じ日の後の時点で投与されてもよい。好ましくは、DNA-PKiは、放射線治療薬の投与後15日間以下、例えば、放射線治療薬の投与後、1~15日間以下、好ましくは4~10日間以下、より好ましくは2~8日間以下、最も好ましくは1~5日間以下で投与される。好ましい例では、DNA-PKiは、放射線治療薬の投与の1日後に投与される。この状況におけるDNA-PKiの投与は、DNA-PKiの単回投与、又はDNA-PKiの1日若しくは複数日にわたる投与、例えば、以下に記載されるような期間にわたる投与を含み得る。
【0024】
DNA-PKi及び放射線治療薬は、同じ投与経路又は異なる投与経路を介して投与されてもよいことも理解されるであろう。例えば、好ましい実施形態では、放射線治療薬は静脈内投与されてもよく、一方でDNA-PKiは経口投与されてもよい。
【0025】
本発明の任意の態様の好ましい実施形態では、分子標的放射線治療薬は、単剤療法応答に必要なレベル未満の用量レベルで投与される。これは、分子標的放射線治療薬とDNA-PKiとの間の相乗効果を示す。好ましくは、分子標的放射線治療薬は、単剤療法応答(すなわち、分子標的放射線治療薬のみの投与を含む治療)と比較して10%超、好ましくは20%超少ない放射能、好ましくは単剤療法応答と比較して20~50%少ない放射能の用量で投与される。選択的に、又は最も好ましくは、分子標的放射線治療薬の用量に加えて、DNA-PKiは、最大耐用量レベルを下回る用量レベル、例えば、最大耐用量レベルの90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、60%以下、65%以下、60%以下、若しくは55%以下、及び/又は併用の最大耐用量レベルの10%以上、又は20%以上、30%以上、40%以上、若しくは50%以上の用量で投与される。
【0026】
DNA-PKiは、0.02mg~100mg/kg体重、好ましくは0.02mg~50mg/kg体重の用量で投与されてもよい。具体的には、1日用量は、0.02mg~100mg/kg体重、例えば、1mg/kg体重以上、2mg/kg体重以上、3mg/kg体重以上、4mg/kg体重以上、又は5mg/kg体重以上であってもよく、25mg/kg体重以下、30mg/kg体重以下、40mg/kg体重以下、45mg/kg体重以下、50mg/kg体重以下、60mg/kg体重以下、70mg/kg体重以下、80mg/kg体重以下、90mg/kg体重以下、又は100mg/kg体重以下であってもよい。DNA-PKiは、例えば、1mg~800mg、例えば、50mg~400mg、50mg~500mg、5mg~600mg、より好ましくは100mg~400mg、100mg~300mg、100mg~250mg、100mg~200mgの用量で、好ましくは1日1回投与されてもよい。あるいは、DNA-PKiは、1日2回(b.i.d)の投与によって150mg~400mgの用量で投与されてもよい。
【0027】
DNA-Pkiは、投与単位当たり0.01mg~1g、好ましくは1mg~700mg、特に好ましくは5mg~200mgの用量で投与されてもよい。
【0028】
代替的な実施形態では、DNA-PKiは、治療の過程を通して毎日投与されてもよい。他の実施形態では、DNA-PKiは、放射線治療薬の投与の翌日から開始して毎日投与されてもよい。例えば、DNA-PKiは、毎日、7日間以上、10日間以上、14日間以上、21日間以上、28日間以上、又はそれを超える期間にわたって投与されてもよい。
【0029】
特に好ましい実施形態では、DNA-PKiはM3814であり、投薬レジメンは、25mg~600mg、50mg~600mg、100mg~600mg、150mg~600mg、175mg~500mg、200mg~500mg、300mg~400mg、50mg~300mg、75mg~275mg、100mg~250mg、若しくは100~200mg、又はこれらの組み合わせのうちの1つの範囲内である。特に好ましい実施形態では、前述の用量は1日1回投与されるが、有利には1日2回(b.i.d)投与されてもよい。M3814は、例えば、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、250mg、275mg又は300mg、350mg、又は400mgの用量で、好ましくは1日1回で投与されてもよいが、好適にはまた、1日2回で投与されてもよく、1日2回投与は300mg以上の用量が最も好ましい。
【0030】
本発明の1つの利点、及び放射線療法を送達するためのEBRTアプローチとの違いは、放射線治療薬を治療プロトコルで毎日欠かさずに投与する必要がないことである。したがって、本発明の任意の実施形態では、放射線治療薬は、約1週間に1回、約2週間に1回、約3週間に1回、約4週間に1回の間隔、又はより長い投与間隔で投与されてもよい。好ましい実施形態では、放射線治療薬は、7日間以上、10日間以上、14日間以上、21日間以上、若しくは28日間以上、35日間以上、42日間以上、49日間以上、56日間以上、若しくはそれを超える期間を空けて2回投与され、又は、7日間以上、10日間以上、14日間以上、21日間以上、28日間以上、35日間以上、42日間以上、49日間以上、56日間以上、若しくはそれを超える期間を空けて3回投与される。放射線治療薬の追加の投与が必要とされる場合があることが理解されるであろう。特定の実施形態では、治療の成功のためには、放射線治療薬の単回投与だけで済む場合があり、したがって、本発明は、本明細書に記載のDNA-PKiの投与と共に、放射線治療薬を1回のみ投与する治療レジメンを企図している。
【0031】
いくつかの実施形態では、治療は、1又は複数の治療サイクルを含み、ここで、治療サイクルは、そのサイクルの初日における放射線治療薬の投与、及びそれに続いて、そのサイクルの2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、又は7日目に開始し、7日間以上、例えば、14日間のDNA-PKiの投与を含み、例えば、14日間又は15日間のサイクルになる。いくつかの実施形態では、治療サイクルは、そのサイクルの初日における放射線治療薬の投与、及びそれに続いて、そのサイクルの2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、又は7日目に開始し、20日間以上のDNA-PKiの投与を含み、例えば、21日間又は22日間のサイクルになる。サイクルの2日目にDNA-PKi治療を開始することが好ましい。治療は、例えば、1回、2回、3回、又はそれを超える回数のそのような治療サイクルを、所望により治療の中断を伴って含み得る。
【0032】
治療が2回以上の治療サイクルを含む実施形態では、後続の治療サイクルは、最初の治療サイクルの完了直後(例えば、最初の治療サイクルの完了の数日後)に開始してもよく、又は最初の治療サイクルの完了の数日後若しくは数週間後であって、放射線治療薬又はDNA-PKiが投与されない期間(すなわち治療休止)の経過後に開始してもよい。治療休止期間は、1日以上であってもよく、又は1週間以上、2週間以上、3週間以上であってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、治療は、2回以上の治療サイクル又は3回以上の治療サイクルを含むことができ、ここで、各治療サイクルは、サイクルの初日の放射線治療薬の投与、及びそれに続いて、治療サイクルの後続の日における(例えば、2日目、3日目、又は4日目に開始する)DNA-PKiの投与を含み、また、治療サイクルの少なくとも7日目、少なくとも14日目、又は少なくとも21日目までのDNA-PKiの投与を含むか、又は7日間以上、14日間以上、若しくは21日間以上の期間にわたるDNA-PKiの投与を含む。第1の治療サイクルの終了と第2の治療サイクルの開始との間の期間(すなわち、DNA-PKi及び放射線治療薬が投与されない期間)は、7日間以上、14日間以上、21日間以上、28日間以上、35日間以上、42日間以上、49日間以上、56日間以上、又はそれを超える期間であってもよい。
【0034】
例えば、治療サイクルは、そのサイクルの初日における放射線治療薬の投与、及びそれに続いて、そのサイクルの2日目に開始し、7日間以上、14日間以上、又は20日間以上の期間にわたるDNA-PKiの投与を含んでいてもよく、例えば、21日間のサイクルになる。第2の治療サイクルの開始は、2日間以上、5日間以上、7日間、14日間以上、21日間以上、28日間以上、35日間以上、42日間以上、49日間以上、56日間以上、又はそれを超える期間にわたって遅延させることができ、その結果、第2の治療サイクルの開始が、例えば、放射線治療薬の最初の投与の56日間後以降になる。そのような実施形態では、第2の治療サイクルは、第1の治療サイクルを実質的に繰り返すことができ、例えば、第2の治療サイクルの初日に放射線治療薬の投与を開始し、続いて、第2のサイクルの2日目にDNA-PKiを投与を開始し、7日間以上、14日間以上、又は21日間以上投与し、その結果、全体的な処置期間は、例えば、77日間以上になる。
【0035】
別の例では、治療サイクルは、そのサイクルの初日における放射線治療薬の投与、及びそれに続いて、そのサイクルの4日目に開始し、7日間以上、14日間以上、17日間以上、又は20日間以上の期間にわたるDNA-PKiの投与を含み得、例えば、21日間のサイクルになる。第2の治療サイクルの開始は、2日間以上、5日間、7日間以上、14日間以上、21日間以上、28日間以上、35日間以上、42日間以上、49日間以上、56日間以上、63日間以上、又はそれを超える期間にわたって遅延させることができ、その結果、第2の治療サイクルの開始が、例えば、放射線治療薬の最初の投与の少なくとも85日間後になる(例えば、最初の投薬が1日目である場合、DNA-PKi治療は4日目から21日目までであり、任意に、治療休止は22日目から84日目までである)。そのような実施形態では、第2の治療サイクルは、第1の治療サイクルを実質的に繰り返すことができ、例えば、第2の治療サイクルの初日に放射線治療薬の投与を開始し、続いて、第2のサイクルの4日目にDNA-PKiを投与を開始し、7日間以上、14日間以上、17日間以上、又は20日間以上投与し、その結果、全体的な処置期間は、例えば、84日間以上になる。
【0036】
他の実施形態では、治療は、3回以上の治療サイクルを含み得、例えば、各治療サイクルは、サイクルの初日における放射線治療薬の投与、及びそれに続くいて、後続の日における、7日間以上又は14日間以上にわたるDNA-PKiの投与を含む。治療休止は、第1の治療サイクルの終了と第2の治療サイクルの開始との間、また同様に、第2の治療サイクルの終了と第3の治療サイクルの開始との間に含まれてもよく、任意に、各治療休止は、2日間以上、5日間以上、7日間以上、10日間以上、14日間以上又は21日間以上、28日間以上、35日間以上、42日間以上、49日間以上、56日間以上、63日間以上、又はそれを超える期間であり、最も好ましくは、治療休止は、7日間以上である。
【0037】
治療又は治療サイクルに適したタイムスケジュールも実施例に記載されている。これらのタイムスケジュールは、一般に、他のDNA-PKiと放射線治療薬の組み合わせ、及び他の種類のがん又は腫瘍にも適している。
【0038】
本発明の併用療法は、単独で、又は他の治療様式、例えば、外科手術、外部ビーム放射線療法、化学療法、他の放射性核種、若しくは組織温度調整などと組み合わせて使用することができる。これは、本発明の方法の他の好ましい実施形態を形成し、製剤/薬剤は、それに対応して、別の放射性薬剤又は化学療法剤などの少なくとも1つの追加の治療活性剤を含み得る。
【0039】
本発明の任意の態様では、任意に、前記療法は、iii)免疫チェックポイント調節剤、化学療法剤、放射線増感剤、及びEBRTからなる群から選択される追加の抗がん療法をさらに含み得る。
【0040】
任意の実施形態では、追加の抗がん療法は、免疫チェックポイント調節剤を含み得る。免疫チェックポイント調節剤は、PD-1、PD-L1、及びCTLA-4の阻害剤から選択される免疫チェックポイント阻害剤、又は本明細書に記載の任意の他の免疫チェックポイント阻害剤であり得る。
【0041】
任意に、免疫チェックポイント阻害剤は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カンレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、ドスタリマブ、INCMGA00012、AMP-224、及びAMP-514から選択されるPD-1の阻害剤である。
【0042】
任意に、免疫チェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、KN035、CK-301、AUNP12、CA-170、及びBMS-986189から選択されるPD-L1の阻害剤である。
【0043】
免疫チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ及びトレメリムマブから選択されるCTLA-4の阻害剤であり得る。
【0044】
任意の実施形態では、他の抗がん療法は、本明細書にさらに詳しく記載されるように、化学療法剤である。
【0045】
本発明の第1の態様のいずれかの実施形態では、DNA-PKiは、M3814、N-メチル-8-[(2S)-1-{[2’-メチル(4’,6’-H2)-[4,5’-ビピリミジン]-6-イル]アミノ}プロパン-2-イル]キノリン-4-カルボキサミド、7,9-ジヒドロ-7-メチル-2-[(7-メチル[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル)アミノ]-9-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-8H-プリン-8-オン(AZD7648)、4-エチル-N-[4-[2-(4-モルホリニル)-4-オキソ-4H-1-ベンゾピラン-8-イル]-1-ジベンゾチエニル]-1-ピペラジンアセトアミド(KU-0060648)、2-(4-モルホリニル)-4H-ナフト[1,2-b]ピラン-4-オン(NU7026)、8-(4-ジベンゾチエニル)-2-(4-モルホリニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オン(NU7441、KU-57788)、3-[4-(4-モルホリニル)ピリド[3’,2’:4,5]フロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル]-フェノール(PI-103)、2-メチル-5-ニトロ-2-[(6-ブロモイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)メチレン]-1-メチルヒドラジド-ベンゼンスルホン酸、一塩酸塩(PIK-75HCl)、1-シクロペンチル-3-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(PP121)、SF2523、及びこれらの類似体から選択される。
【0046】
好ましくは、DNA-PKiは、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-メタノール(M3814)又はその薬学的に許容される塩である。
【0047】
本発明の任意の態様によれば、本明細書に記載の治療方法で使用するための、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-メタノール(M3814)又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0048】
本発明の任意の態様によれば、本明細書に記載の治療方法に使用するための
i)CAIXに結合するための抗体又はその抗原結合断片、好ましくは本明細書に記載のもの、ここで、前記抗体は抗体放射性核種に複合体化されている、又は
ii)PSMAに結合するための抗体又はその抗原結合断片、好ましくは本明細書に記載のもの、ここで、前記抗体は放射性核種に複合体化されている、
が提供される。
【0049】
さらにまた、本発明の第2の態様によれば、CAIXに結合するための抗体又はその抗原結合断片、好ましくは本明細書に記載のものと組み合わせて治療において投与される場合の、本明細書に記載の治療方法における使用のための(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-メタノール(M3814)又はその薬学的に許容される塩が提供され、ここで、前記抗体は放射性核種に複合体化されている。
【0050】
さらにまた、本発明の第2の態様によれば、PSMAに結合するための抗体又はその抗原結合断片、好ましくは本明細書に記載のものと組み合わせて治療において投与される場合の、本明細書に記載の治療方法で使用するための(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-メタノール(M3814)又はその薬学的に許容される塩が提供され、ここで、前記抗体は放射性核種に複合体化されている。
【0051】
本発明の任意の態様によれば、本明細書に記載の治療方法で使用するための医薬品の製造における、
i)CAIXに結合するための抗体又はその抗原結合断片、好ましくは本明細書に記載のもの、ここで、前記抗体は放射性核種に複合体化されている、又は
ii)PSMAに結合するための抗体又はその抗原結合断片、好ましくは本明細書に記載のもの、ここで、前記抗体は放射性核種に複合体化されている、
の使用が提供される。
【0052】
本発明の第2の態様によれば、本明細書に記載の疾患又は状態の治療に使用するための医薬品又はパーツのキット(kit of parts)の製造における、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-メタノール(M3814)又はその薬学的に許容される塩の使用も提供され、ここで、前記治療は、CAIXに結合するための抗体又はその抗原結合断片、好ましくは本明細書に記載のものの投与を含み、前記抗体は放射性核種に複合体化されている。
【0053】
さらにまた、本発明の第2の態様によれば、本明細書に記載の疾患又は状態の治療に使用するための医薬品又はパーツのキットの製造における、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-メタノール(M3814)又はその薬学的に許容される塩の使用が提供され、ここで、前記治療は、PSMAに結合するための抗体又はその抗原結合断片、好ましくは本明細書に記載のものの投与を含み、前記抗体は放射性核種に複合体化されている。
【0054】
本発明はまた、第1の医薬の製造における、
i)CAIXに結合するための抗体又はその抗原結合断片、好ましくは本明細書に記載のもの、ここで、前記は放射性核種に複合体化されている、又は
ii)PSMAに結合するための抗体又はその抗原結合断片、好ましくは本明細書に記載のもの、ここで、前記抗体又はその抗原結合断片は、抗体が放射性核種に複合体化されている、
の使用、及び、
第2の医薬の製造における、DNA-PKi、好ましくは(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-メタノール(M3814)の使用
を提供し、前記第1の医薬及び第2の医薬が、本明細書に記載の任意の治療方法に従って投与される。
【0055】
本発明はまた、本明細書に記載される本発明の任意の方法で使用するためのキットを提供する。好ましくは、キットは、DNA-PKi、好ましくは(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-メタノール(M3814)又はその薬学的に許容される塩と共に、本明細書に記載される抗体を含み、任意に、本発明の方法に従って使用するための説明書を含む。
【0056】
本明細書で使用される場合、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む」という用語、及びこの用語の変形、例えば、「含んでいる」、「含む」、及び「含まれる」は、追加の添加剤、成分、整数、又は工程を排除することを意図しない。
【0057】
本発明の他の態様及び先の段落に記載された態様の他の実施形態は、例示目的である以下の説明から、及び添付の図面を参照して、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】転移性腎細胞癌SK-RC-52異種移植モデルにおける177Lu-抗CAIX抗体SPECTイメージング。
図2177Lu-抗CAIX抗体+M3814による併用治療。14日間の治療後の100日超にわたる平均腫瘍体積(mm)を示す。腫瘍体積の変化率も併せて示す。試験の100日目に示された6MBq投与についてのカプランマイヤー生存曲線。
図3】LNCaP(PSMAhigh)異種移植モデルにおける177Lu-抗PSMA抗体SPECTイメージング。
図4177Lu-抗PSMA抗体+M3814による併用治療。14日間の治療後の100日超にわたる平均腫瘍体積(mm)を示す。腫瘍体積の変化率も併せて示す。120日目までのカプランマイヤー生存曲線。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本明細書で開示及び定義される本発明は、本文又は図面から言及され又は明らかな個々の特徴の2つ以上のすべての代替的な組み合わせに及ぶことが理解されるであろう。これらの異なる組み合わせはすべて、本発明の様々な代替態様を構成する。
【0060】
ここで、本発明の特定の実施形態を詳細に参照する。本発明を実施形態と併せて説明するが、本発明をこれらの実施形態に限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。それどころか、本発明は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれ得るすべての代替物、改変物、及び均等物を網羅することを意図している。
【0061】
本発明は、DNA-PKの阻害剤と、細胞内移行及び/又は対象の血液循環中での保持が可能な分子標的放射線治療薬との組み合わせを含む新しい治療法に関する。
【0062】
DNA損傷修復阻害剤(DDRi)を使用するがんの従来の治療は、DDRiの投与と外部ビーム放射線(EBRT)療法を同時に行うことを含んでいた。そのような治療法は、有効であるが、投与されたDDRiの毒性の増加をもたらす。さらに、この治療方法は複雑であり、EBRTを受けるために頻繁な外来診療を必要とする。例えば、一連のEBRT過程は、通常、数日から数週間にわたって数回の毎日の治療(分割)を含み、その間、患者は放射線治療を受ける。放射線ビームは腫瘍を含む身体の特定の領域を標的とするが、放射線は非特異的であり、健康な組織も治療の過程で放射線にさらされる。
【0063】
本発明者らは、EBRTを分子標的化放射線療法で代用する利点、例えば、高分子(例えば、抗体)放射線治療薬の場合のように、特に、放射線治療薬が、内在化及び患者の血液循環中で保持することが可能な場合の利点に気付いた。
【0064】
本発明者らは、放射線療法とDNA-PKiとの併用治療の成功が、放射免疫複合体のわずか一回の投与を用いて達成され得ることを実証した。このことは、臨床現場において、患者がEBRTを受けるために長期間にわたって頻繁に受診するのではなく、注射による単回用量の放射線療法を施すだけで済むという大きな利点を提供する。さらに、分子標的化放射線の使用は、外部放射線ビームが健康な組織を通過することを必要とするのではなく、治療を必要とする組織に放射線治療線量を直接送達する。したがって、分子標的放射線により、健康な組織の放射線への不必要な曝露が低減される。
【0065】
さらにまた、巨大分子放射免疫複合体の使用は、同じ分子標的に結合して放射線治療薬の用量を送達するために使用することができる小分子又はペプチドの使用と比較して、有意な利点を提供する。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、抗体などの大きな分子のより遅い肝臓による分解と比較して、放射標識小分子又はペプチドが迅速に尿中排泄されることは、患者に投与される放射線量をより少なくすることができることを意味すると考える。これは、腎臓を介して排泄される放射複合体の使用によって起こり得る腎毒性のリスクを低減する利点を有する。
【0066】
さらに、放射免疫複合体は、EBRTと比較してより著しく標的化された態様で放射線療法を送達し、腫瘍発現抗原に機能的に特異的であるように設計することができる。例えば、同じ抗原(例えば、PSMA)を標的とするために使用される小分子及びペプチドは、通常、同じ抗原を発現する非がん性組織(PSMAの場合、涙腺/唾液腺、神経節、及び小腸)も標的化し、不快な副作用をもたらす。したがって、放射線療法の送達のための抗体ベースの方式の使用は、オンターゲットの腫瘍外結合から生じる望ましくない副作用を有意に減少させる。
【0067】
さらに、抗体及びその断片は、(例えば、FcRnに対する結合部位を修飾し、血清半減期を減少させることによって)血液循環における持続性を増加又は減少させるように改変することができる。
【0068】
したがって、本発明者らは、抗体送達放射線療法とDNA-PKiとの特定の組み合わせが、放射線線量の低減及び放射線療法の送達のための臨床設定の改善に関して顕著な利点を提供し、場合によっては分子標的化放射線の単一投与のみを要すると考える。
【0069】
本発明者らはまた、DNA-PKiを長距離放射性同位体(ベータ放出放射性核種など)に複合体化された放射免疫療法剤と組み合わせて使用することが、例えば、より短距離の粒子(アルファ放出放射性核種など)を使用することよりも、追加の利点を提供すると考えている。理論に束縛されることを望むものではないが、ベータ放射体から生じるクロスファイア効果は、特に大きな腫瘍塊を有する患者において、改善された治療転帰をもたらし得ると考えられる。
【0070】
概略及び定義
本明細書を通して、特に明記しない限り、又は文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単一の工程、物質の組成物、工程群又は物質の組成物群への言及は、これらの工程、物質の組成物、工程群、又は物質の組成物群の1つ及び複数(すなわち、1又は複数)を包含すると解釈するものとする。したがって、本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の態様を含み、その逆も同様である。例えば、「a」への言及は、単一及び2つ以上を含み、「an」への言及は、単一及び2つ以上を含み、「the」への言及は、単一及び2つ以上を含むなどである。
【0071】
当業者は、本発明が具体的に記載されたもの以外の変形及び改変を受けやすいことを理解するであろう。本発明は、すべてのそのような変形及び改変を含むことを理解されたい。本発明はまた、本明細書で言及又は指示される工程、機能、組成物、及び化合物のすべてを個別に又は集合的に含み、工程又は機能のありとあらゆる組み合わせ又は任意の2つ以上を含む。
【0072】
当業者は、本発明の実施に使用することができる、本明細書に記載されたものと類似又は同等の多くの方法及び材料を理解するであろう。本発明は、記載された方法及び材料に決して限定されない。
【0073】
本明細書で言及されるすべての特許及び刊行物は、その全体が参照により取り込まれる。
【0074】
本発明は、例示のみを目的とする本明細書に記載の具体例によって範囲が限定されるものではない。機能的に等価な生成物、組成物及び方法は、明らかに本発明の範囲内である。
【0075】
本明細書における本発明の任意の例又は実施形態は、特に明記しない限り、本発明の任意の他の例又は実施形態に準用されると解釈するものとする。
【0076】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、(例えば、診断技術、ラジオイメージング、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学における)当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有すると解釈するものとする
【0077】
「及び/又は」という用語、例えば、「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味すると理解されるものとし、両方の意味又はいずれかの意味を明示的に支持すると解釈するものとする。
【0078】
本明細書で使用される場合、「由来する」という用語は、特定の整数が、特定の供給源から、必ずしもその供給源から直接的とは限らないが、得られる可能性があることを示すと解釈するものとする。
【0079】
本明細書で使用される場合、「抗原結合ドメイン」という用語は、抗原に特異的に結合することができる抗体の領域、すなわち、V若しくはV、又はVHとVLの両方を含むFvを意味すると解釈するものとする。抗原結合ドメインは、抗体全体である必要はなく、例えば、それは分離した状態のもの(例えば、ドメイン抗体)であってもよく、又は別の形態、例えば、本明細書に記載されるような形態、例えば、scFvであってもよい。
【0080】
本開示において、「抗体」という用語は、Fv内に含まれる抗原結合ドメインによって、1つ又は少数の密接に関連する抗原に特異的に結合可能なタンパク質を含む。この用語には、4本鎖抗体(例えば、2本の軽鎖及び2本の重鎖)、組換え抗体又は改変抗体(例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、CDR移植抗体、霊長類化抗体、脱免疫化抗体、合成ヒト化抗体、半抗体、二重特異性抗体)が含まれる。
【0081】
抗体は、一般に、定常領域又は定常断片若しくは結晶化可能断片(Fc)に配置することができる定常ドメインを含む。例示的な形態の抗体は、それらの基本単位として4本鎖構造を含む。全長抗体は、共有結合した2本の重鎖(約50kD~約70kD)、及び2本の軽鎖(それぞれ約23kDa)を含む。軽鎖は、通常、可変領域(存在する場合)及び定常ドメインを含み、哺乳動物ではκ軽鎖又はλ軽鎖のいずれかである。重鎖は、通常、可変領域、及びヒンジ領域によって他の定常ドメインに連結された1つ又は2つの定常ドメインを含む。哺乳動物の重鎖は、α型、δ型、ε型、γ型、又はμ型のうちの1つである。各軽鎖はまた、重鎖のうちの1つに共有結合している。例えば、2本の重鎖、及び重鎖と軽鎖とは、鎖間ジスルフィド結合及び非共有結合相互作用によって結合している。鎖間ジスルフィド結合の数は、異なる種類の抗体間で異なり得る。各鎖は、N末端の可変領域(V又はV、それぞれ約110アミノ酸長)を有し、C末端に1又は複数の定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメイン(約110アミノ酸長であるC)は、重鎖の第1の定常ドメイン(330~440アミノ酸長であるCH1)と整列されてジスルフィド結合されている。軽鎖可変領域は、重鎖の可変領域と整列されている。抗体重鎖は、2つ以上の追加のCドメイン(例えば、CH2、CH3など)を含んでいてもよく、CH1定常ドメインとCH2定常ドメインとの間にヒンジ領域を含んでいてもよい。抗体は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、及びIgA)、又はサブクラスであり得る。ある例では、抗体は、ネズミ(マウス又はラット)抗体又は霊長類(例えば、ヒト)抗体である。ある例では、抗体重鎖は、C末端リジン残基を欠いている。ある例では、抗体は、ヒト化、合成ヒト化、キメラ、CDR移植、又は脱免疫化されている。
【0082】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、又は「全抗体」という用語は、抗体の抗原結合断片とは対照的な、実質的にインタクトな形態の抗体を指すために互換的に使用される。具体的には、全抗体には、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものが含まれる。定常ドメインは、野生型配列定常ドメイン(例えば、ヒト野生型配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列バリアントであってもよい。
【0083】
本明細書で使用される場合、「可変領域」は、抗原に特異的に結合可能であり、相補性決定領域(CDR)、すなわち、CDR、CDR、及びCDR、並びにフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む、本明細書で定義される抗体の軽鎖及び/又は重鎖の部分を指す。例えば、可変領域は、3つのCDRと共に3つ又は4つのFR(例えば、FR、FR、FR、及び任意にFR)を含む。Vは、重鎖の可変領域を指す。Vは、軽鎖の可変領域を指す。
【0084】
本明細書で使用される場合、「相補性決定領域」(別名CDR、すなわち、CDR、CDR、及びCDR)という用語は、その存在が特異的抗原結合に対する主要な寄与因子である抗体可変領域のアミノ酸残基を指す。各可変領域ドメイン(V又はV)は、通常、CDR、CDR、及びCDRとして同定される3つのCDRを有する。VのCDRは、本明細書ではそれぞれCDR H、CDR H、及びCDR Hとも呼ばれ、CDR HはVのCDR1に対応し、CDR HはVのCDR2に対応し、CDR HはVのCDR3に対応する。同様に、VのCDRは、本明細書ではそれぞれCDR L、CDR L、及びCDR Lと呼ばれ、CDR LはVのCDR1に対応し、CDR LはVのCDR2に対応し、CDR LはVのCDR3に対応する。ある例では、CDR及びFRに割り当てられるアミノ酸位置は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1987 and 1991(本明細書では「Kabatナンバリングシステム」とも呼ばれる)に従って定義される。別の例では、CDR及びFRに割り当てられるアミノ酸位置は、改良されたChothiaナンバリングスキーム(http://www.bioinfo.org.uk/mdex.html)に従って定義される。本発明は、Kabatナンバリングシステムによって定義されるFR及びCDRに限定されず、標準的なナンバリングシステム、又はChothia and Lesk J. Mol. Biol. 196: 901-917, 1987、Chothia et al., Nature 342: 877-883, 1989、及び/若しくは、Al-Lazikani et al., J. Mol. Biol. 273: 927-948, 1997のナンバリングシステム、Honnegher and Plukthun J. Mol. Biol. 309: 657-670, 2001のナンバリングシステム、あるいは、Giudicelli et al., Nucleic Acids Res. 25: 206-211 1997で論じられているIMGTシステムなどのすべてのナンバリングシステムを含む。
【0085】
ある例では、CDRはKabatナンバリングシステムに従って定義される。任意に、Kabatナンバリングシステムによる重鎖CDRは、本明細書に列挙される5つのC末端アミノ酸を含まないか、又はそれらのアミノ酸のいずれか1又は複数が別の天然に存在するアミノ酸で置換されている。これに関して、Padlan et al., FASEB J., 9: 133-139, 1995は、重鎖CDRの5つのC末端アミノ酸が通常は抗原結合に関与しないことを立証した。
【0086】
「フレームワーク領域」(FR)は、CDR残基以外の可変領域残基である。VHのFRは、本明細書ではそれぞれFR H、FR H、FR H、及びFR Hとも呼ばれ、FR HはVのFR1に対応し、FR HはVのFR2に対応し、FR HはVのFR3に対応し、FR HはVのFR4に対応する。同様に、VのFRは、本明細書ではそれぞれFR L、FR L、FR L、及びFR Lと呼ばれ、FR LはVのFR1に対応し、FR LはVのFR2に対応し、FR LはVのFR3に対応し、FR LはVのFR4に対応する。
【0087】
本明細書で使用される場合、「Fv」という用語は、複数のポリペプチド又は単一のポリペプチドから構成されるかどうかにかかわらず、V及びVが会合し、抗原結合ドメインを有する複合体を形成する、すなわち抗原に特異的に結合可能な任意のタンパク質を意味すると解釈するものとする。抗原結合ドメインを形成するV及びVは、単一のポリペプチド鎖又は異なるポリペプチド鎖であり得る。さらに、本発明のFv(並びに本発明の任意のタンパク質)は、同じ抗原に結合し得るか又は同じ抗原に結合しない場合もある複数の抗原結合ドメインを有し得る。この用語は、抗体に直接由来する断片、並びに組換え手段を使用して産生されたそのような断片に対応するタンパク質を包含すると理解されるものとする。いくつかの例では、Vは重鎖定常ドメイン(C)1に連結されておらず、及び/又はVは軽鎖定常ドメイン(C)に連結されていない。例示的なFv含有ポリペプチド又はタンパク質としては、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、若しくは高次複合体、又は定常領域若しくはそのドメイン(例えば、CHドメイン若しくはCHドメイン、例えば、ミニボディ)に連結された前述のいずれかが挙げられる。
【0088】
「Fab断片」は、免疫グロブリンの一価抗原結合断片からなり、全抗体を酵素パパインで消化して、インタクトな軽鎖及び重鎖の一部からなる断片を生成することによって作製することができ、又は組換え手段を用いて作製することができる。抗体の「Fab’断片」は、全抗体をペプシンで処理し、続いて還元して、インタクトな軽鎖、及びV及び単一の定常ドメインを含む重鎖の一部からなる分子を生成することによって得ることができる。このようにして処理された抗体1つにつき2つのFab’断片が得られる。Fab’断片はまた、組換え手段によって作製することができる。抗体の「F(ab’)断片」は、2つのジスルフィド結合によって結合された2つのFab’断片の二量体からなり、全抗体分子を酵素ペプシンで処理することによって、その後還元することなく得られる。「Fab2」断片は、例えば、ロイシンジッパー又はCHドメインを使用して連結された2つのFab断片を含む組換え断片である。「一本鎖Fv」又は「scFv」は、軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域とが適切な柔軟なポリペプチドリンカーによって共有結合している抗体の可変領域断片(Fv)を含む組換え分子である。
【0089】
本明細書で使用される場合、抗原結合タンパク質又はその抗原結合ドメインと抗原との相互作用に関する「結合する」という用語は、その相互作用が抗原上の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存することを意味する。例えば、抗体は、タンパク質全体にではなく、特定のタンパク質構造を認識して結合する。抗体がエピトープ「A」に結合する場合、標識された「A」及びタンパク質を含有する反応において、エピトープ「A」を含む分子(又は遊離の標識されていない「A」)が存在すると、抗体に結合している標識された「A」の量が減少する。
【0090】
本明細書で使用される場合、「特異的結合」又は「特異的に結合する」という用語は、本発明の抗原結合タンパク質が特定の抗原又はそれを発現する細胞と、それが別の抗原又は細胞と反応するよりも、高い頻度で、より迅速に、より長い期間で、及び/又はより高い親和性で、反応又は会合することを意味すると解釈するものとする。一般に、ただし必ずしもそうとは限らないが、結合への言及は特異的結合を意味し、各用語は他の用語の明示的なサポートを提供すると理解されるものとする。
【0091】
本明細書で使用される場合、「検出可能なほどには結合しない」という用語は、抗原結合タンパク質、例えば、抗体が、バックグラウンドを10%未満、又は8%未満、又は6%未満、又は5%未満超えるレベルで候補抗原に結合することを意味すると理解されるものとする。バックグラウンドは、タンパク質の非存在下及び/又は陰性対照タンパク質(例えば、アイソタイプ対照抗体)の存在下で検出された結合シグナルのレベル、及び/又は陰性対照抗原の存在下で検出された結合のレベルであり得る。結合のレベルは、抗原結合タンパク質を固定化して、抗原と接触させるバイオセンサ分析(例えば、Biacore)を使用して検出される。
【0092】
本明細書で使用される場合、「有意に結合しない」という用語は、本発明の抗原結合タンパク質のポリペプチドへの結合レベルが、バックグラウンド、例えば、抗原結合タンパク質の非存在下及び/又は陰性対照タンパク質(例えば、アイソタイプ対照抗体)の存在下で検出される結合シグナルのレベル、及び/又は陰性対照ポリペプチドの存在下で検出される結合レベルよりも統計的に有意に高くないことを意味すると理解されるものとする。結合のレベルは、抗原結合タンパク質を固定化して、抗原と接触させるバイオセンサ分析(例えば、Biacore又はBlitz)を使用して検出される。
【0093】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」(別名「抗原決定基」)という用語は、抗体の抗原結合ドメインを含む抗原結合タンパク質が結合する抗原の領域を意味すると理解されるものとする。別段の定めがない限り、この用語は、抗原結合タンパク質が接触する特定の残基又は構造に必ずしも限定されない。例えば、この用語は、抗原結合タンパク質によって接触されるアミノ酸にまたがる領域、及びこの領域の外側の5個~10個(又はそれ以上)のアミノ酸又は2個~5個又は1個~3個のアミノ酸を含む。いくつかの例では、エピトープは、抗原結合タンパク質が折り畳まれたときに互いに近接して配置される一連の不連続なアミノ酸、すなわち「立体構造エピトープ」を含む。当業者はまた、「エピトープ」という用語がペプチド又はポリペプチドに限定されないことを知っているであろう。例えば、「エピトープ」という用語は、糖側鎖、ホスホリル側鎖、又はスルホニル側鎖などの分子の化学的に活性な表面基を含み、特定の例では、特定の三次元構造特性及び/又は特定の電荷特性を有し得る。
【0094】
本明細書で使用される場合、「予防すること」、「予防する」又は「予防」という用語は、本発明の抗原結合タンパク質を投与し、それによってある状態の少なくとも1つの症状の発症を停止又は妨げることを含む。この用語はまた、寛解状態の対象において再発を予防するか又は妨げるための治療を包含する。
【0095】
本明細書で使用される場合、「治療すること」、「治療する」又は「治療」という用語は、本明細書に記載の抗原結合タンパク質を投与し、それによって特定の疾患又は状態の少なくとも1つの症状を軽減又は排除することを含む。
【0096】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトを含む任意の動物、例えば、哺乳動物を意味すると解釈するものとする。例示的な対象としては、ヒト及び非ヒト霊長類が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、対象はヒトである。
【0097】
細胞及びDNAの損傷修復の阻害剤
本発明の方法によれば、DNA-PK阻害剤(DNA-PKi)及び放射免疫複合体を含む併用療法が提供される。この種の併用療法は、がんの治療において予想外の改善をもたらすことがわかっている。
【0098】
DNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)は、DNAと併せて活性化されるセリン/スレオニンプロテインキナーゼである。生化学的データ及び遺伝子データは、DNA-PKが、(a)DNA-PKcsと呼ばれる触媒サブユニット、及び(b)2つの調節成分(Ku70及びKu80)からなることを示す。機能的には、DNA-PKは、一方ではDNA二本鎖切断(DSB)の修復の重要な構成要素であり、他方では体細胞組換え又はV(D)J組換えの重要な構成要素である。さらに、DNA-PK及びその構成成分は、クロマチン構造の調節及びテロメア維持などの多くの他の生理学的プロセスと関連している(Smith & Jackson (1999) Genes and Dev 13: 916; Goytisolo et al. (2001) Mol. Cell. Biol. 21: 3642; Williams et al. (2009) Cancer Res. 69: 2100)。
【0099】
本発明は、DNA-PKの活性を阻害することができる化合物の使用に関する。本明細書で使用される場合、「阻害」又は「阻害する」という用語は、本明細書に記載される特定の化合物が、認識、結合、及び遮断が可能になるように標的分子と相互作用することができるという点で、本明細書に記載される特定の化合物の作用に基づいた活性の任意の減少に関する。化合物は、少なくとも1つのセリン/スレオニンプロテインキナーゼに対する高親和性によって区別され、確実な結合及び好ましくはキナーゼ活性の完全な遮断を保証する。化合物は、選択されたキナーゼの排他的且つ直接的な認識を保証するために、特に好ましくは単一特異性である。「認識」という用語は、ここでは、化合物と標的分子との間の任意の種類の相互作用に関し、具体的には、共有結合又は非共有結合、例えば、共有結合、疎水性/親水性相互作用、ファンデルワールス力、イオン引力、水素結合、リガンド/受容体相互作用、ヌクレオチドの塩基対、又はエピトープと抗体結合部位との間の相互作用などに関する。
【0100】
本明細書で使用される場合、DNA-PKiは、DNA-PKを実質的に阻害する分子を含むと理解されるべきである。好ましくは、DNA-PKiは、Km(10μM)に近いATP濃度で、500nM未満、好ましくは250nM未満、100nM未満、50nM未満、10nM未満、又は1nM未満のIC50(半数阻害濃度)でDNA-PKを阻害する。IC50値は、例えば、以下にさらに詳しく記載される生化学的アッセイによって決定され得る。
【0101】
好ましくは、DNA-PKiは、特に、他の関連するキナーゼ、例えば、PI3Kファミリーのキナーゼよりも、5倍以上、10倍以上、15倍以上、又は20倍以上大きいDNA-PKに対する選択性(すなわち、特異性)を有する。最も好ましくは、DNA-PKiは、関連するセリン/スレオニン、チロシンキナーゼ、又は脂質キナーゼに対する特異性よりも10倍以上大きいDNA-PKに対する選択性(特異性)を有する。好ましい実施形態では、DNA-PKiは、ATR、ATM、及びmTORを実質的に阻害しない。好ましい実施形態では、PI3Kアルファ、PI3Kベータ、PI3Kガンマ、PI3Kデルタ、mTOR、ATM、及び/又はATRに対するDNA-PKiの選択性は、10倍以上、より好ましくは50倍以上又は100倍以上である。選択性は、生化学的IC50値(例えば、IC50 PI3Kアルファ/IC50 DNA-PKの比)に基づいて計算することができる。
【0102】
DNA-PKを阻害する分子の能力は、先行技術における公知の方法によって測定することができる。例えば、そのような方法は、参照により本明細書に取り込まれる国際公開第2014/183850号に記載されている。手短に言えば、阻害は、キナーゼ活性レベルの変化を介して測定することができる。キナーゼ活性の測定は、当業者に周知の技術である。基質、例えば、ヒストン(Alessi et al. (1996) FEBS Lett. 399(3): 333)又は塩基性ミエリンタンパク質を使用してキナーゼ活性を決定するための一般的な試験システムは、文献(Campos-Gonzalez & Glenney (1992) JBC 267: 14535)に記載されている。キナーゼ阻害剤の同定には様々なアッセイシステムを利用することができる。シンチレーション近接アッセイ(Sorg et al. (2002) J Biomolecular Screening 7: 11)及びフラッシュプレートアッセイでは、基質としてのタンパク質又はペプチドの放射性リン酸化がATPを使用して測定される。阻害性化合物の存在下では、検出され得る放射性シグナルが減少するか、又は全く検出されない。さらに、均一時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(HTR-FRET)及び蛍光偏光(FP)技術は、アッセイ方法として有用である(Sills et al. (2002) J Biomolecular Screening 191)。他の非放射性ELISA法は、特異的ホスホ抗体(ホスホ-AB)を使用する。ホスホ-ABは、リン酸化基質のみに結合する。この結合は、ペルオキシダーゼ結合抗ヒツジ二次抗体を用いた化学発光によって検出することができる。
【0103】
本発明に係る化合物による処理に対する特定の細胞の感受性は、インビトロ試験によって測定することができる。通常、細胞の培養物を、活性薬剤が細胞死を誘導することを可能にするか、又は細胞増殖、細胞の活力、若しくは遊走を阻害することを可能にするのに十分な期間、通常、約1時間から最大9日間の期間にわたって、種々の濃度で本発明に係る化合物と共にインキュベートする。インビトロ試験のために、生検試料由来の培養細胞を使用することができる。次いで、処理後に残っている細胞の量を決定する。インビトロでの使用は、特に、がん、腫瘍、又は腫瘍転移を有する哺乳動物種の試料に対して行われる。宿主又は患者は、任意の哺乳動物種、例えば、霊長類種、特にヒトに属する場合があるが、げっ歯類(マウス、ラット、及びハムスターを含む)、ウサギ、ウマ、ウシ、イヌ、ネコなどにも属する場合もある。動物モデルは、実験研究にとって興味深いものであり、ヒト疾患の治療のためのモデルを提供する。
【0104】
より詳細には、DNA-PK活性を評価するための生化学的方法は、Kashishian et al. (2003) Molecular Cancer Therapeutics 1257に記載されている通りであり得る。手短に言えば、このアッセイは、ストレプトアビジンコートされた348ウェルマイクロタイターフラッシュプレート中で実施することができる。この目的のために、1.5μgのDNA-PK/タンパク質複合体及び100ngのビオチン化基質、例えば、PESQEAFADLWKK-ビオチン-NH2(「ビオチン-DNA-PKペプチド」)を、1ウェル当たり500ngのウシ胸腺由来のDNA、0.1μCiの33P-ATP、及び1.8%のDMSOと共に、総体積36.5μl(34.25mMのHEPES/KOH、7.85mMのトリスHCl、68.5mMのKCl、5μMのATP、6.85mMのMgCl2、0.5mMのEDTA、0.14mMのEGTA、0.69mMのDTT、pH7.4)で、試験化合物と共に、また、試験化合物なしで、室温で90分間インキュベートすることができる。次いで、50μl/ウェルの200mMのEDTAを用いて反応を停止する。室温でさらに30分間インキュベートした後、液体を除去する。各ウェルを100μlの0.9%生理食塩水で3回洗浄する。10μMの天然キナーゼ阻害剤を用いて非特異的反応(ブランク値)を測定する。放射能測定は、TopCountを用いて実行することができる。IC50値をRS1で計算した。
【0105】
DNA-PK活性を評価するための細胞ベースのアッセイを使用することもできる。ある例では、HCT116細胞を、10%ウシ胎児血清及び2mMのグルタミンを含むMEMアルファ培地中、37℃及び10%のCOで培養する。細胞をトリプシン/EDTAを用いて培養容器の基部から分離し、遠心管で遠心分離し、新鮮な培地に取り、細胞密度を決定する。100,000個の細胞を、24ウェル細胞培養プレートの1キャビティ当たり1mlの培養培地に播種し、一晩培養する。翌日、新鮮な培養培地中の10μMのブレオマイシン(DNA二本鎖切断のDNAインターカレーター及び誘導物質)及び試験物質を細胞に添加し、これらをさらに6時間培養する。続いて、細胞溶解を行い、細胞溶解物を、DNA-PK特異的抗体(Sigma-Aldrich WH0005591M2:全DNA-PK、Abcam ab18192又はEpitomics EM09912:ホスホ-セリン2056 DNA-PK)でコーティングしたブロッキングされた96ウェルELISAプレートに添加し、4℃で一晩インキュベートする。その後、96ウェルELISAプレートを検出抗体(Abcam ab79444:全DNA-PK)及びストレプトアビジン-HRP複合体で処理する。化学発光試薬を用いて酵素反応を進行させ、化学発光をMithras LB940を用いて測定することができる。ホスホ-DNA-PK特異的抗体によるシグナルは、総タンパク質DNA-PKcに対する抗体によるシグナルに標準化される。IC50値又はパーセンテージ値の決定は、ブレオマイシン治療ビヒクル対照群のシグナルレベル(対照の100%)を参照することによって行った。DMSO対照をブランクとして使用することができる。
【0106】
DNA-PK阻害剤の非限定的な例としては、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-メタノール(M3814)、N-メチル-8-[(2S)-1-{[2’-メチル(4’,6’-H2)-[4,5’-ビピリミジン]-6-イル]アミノ}プロパン-2-イル]キノリン-4-カルボキサミド、7,9-ジヒドロ-7-メチル-2-[(7-メチル[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル)アミノ]-9-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-8H-プリン-8-オン(AZD7648)、4-エチル-N-[4-[2-(4-モルホリニル)-4-オキソ-4H-1-ベンゾピラン-8-イル]-1-ジベンゾチエニル]-1-ピペラジンアセトアミド(KU-0060648)、2-(4-モルホリニル)-4H-ナフト[1,2-b]ピラン-4-オン(NU7026)、8-(4-ジベンゾチエニル)-2-(4-モルホリニル)-4H-1-ベンゾピラン-4-オン(NU7441、KU-57788)、3-[4-(4-モルホリニル)ピリド[3’,2’:4,5]フロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル]-フェノール(PI-103)、2-メチル-5-ニトロ-2-[(6-ブロモイミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル)メチレン]-1-メチルヒドラジド-ベンゼンスルホン酸、一塩酸塩(PIK-75HCl)、1-シクロペンチル-3-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(PP121)、SF2523(CAS N1174428-47-7)、及びそれらの類似体から選択される。好ましくは、DNA-PKiは、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-メタノール(M3814)又はその薬学的に許容される塩である。
【0107】
本発明の第2の態様、及び本発明の第1の態様の好ましい実施形態によれば、DNA-PKiは、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-メタノール(M3814)又はその薬学的に許容される塩である。
【0108】
本明細書で使用される場合、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシピリダジン-3-イル)-メタノールはDNA-PK阻害剤であり、M3814及びペポセルチブという名称でも知られている。M3814は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる米国特許出願公開第2016/0083401号に詳細に記載されている。M3814は、米国特許出願公開第2016/0083401号の表4において化合物136と命名されている。M3814は、DNA-PKの阻害を実証する様々なアッセイ及び治療モデルにおいて活性である。M3814は、結晶学的試験及び酵素動態試験によって実証されるように、経口で生物学的に利用可能な強力且つ選択的なDNA-PKのATP競合阻害剤である。DNA-PKは、5つの他のタンパク質因子(Ku70、Ku80、XRCC4、リガーゼIV、及びArtemis)と共に、NHEJを介したDSBの修復において重要な役割を果たす。DNA-PKのキナーゼ活性は、適切且つ適時のDNA修復及びがん細胞の長期生存に不可欠である。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、M3814の主な効果は、DNA-PK活性及びDNA二本鎖切断(DSB)修復の抑制であり、DNAの修復の変化、及びDNA損傷剤の抗腫瘍活性の増強をもたらすと考えられる。
【0109】
放射線治療薬
放射標識された標的化部分(放射免疫複合体としても知られている)は、疾患状態で上方制御され、及び/又は疾患細胞(例えば、腫瘍細胞)に特異的なタンパク質又は受容体を標的化して、放射性ペイロードを送達し、目的の細胞を損傷及び死滅させるように設計されている。「放射免疫療法」は、標的化部分が抗体、通常、モノクローナル抗体を含む場合のこのような療法を指す。
【0110】
ペイロードの放射性崩壊は、DNAへの直接的な影響(一本鎖DNA切断若しくは二本鎖DNA切断など)又はバイスタンダー(by-stander)効果若しくはクロスファイア(crossfire)効果などの間接的な影響を引き起こし得るアルファ粒子、ベータ粒子、若しくはガンマ粒子、又はオージェ電子を生じさせる。
【0111】
放射免疫複合体は、通常、生物学的標的化部分(例えば、腫瘍上に又は腫瘍によって発現される分子、例えば、CAIX又はPSMAに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片)、キレート化部分又はキレート化部分の金属錯体(例えば、放射性同位体を含む)、及びリンカーを含有する。複合体は、標的親和性を維持しながら構造変化が最小限になるように、生物学的標的化分子に二官能性キレートを付加することによって形成され得る。放射免疫複合体は、そのような複合体を放射標識することによって形成され得る。
【0112】
二官能性キレートは、構造的に、キレート、リンカー、及び架橋基を含む。新しい二官能性キレートを開発する場合、ほとんどの努力は分子のキレート化部分に集中する。二官能性キレートのいくつかの例は、標的部分に複合体化した様々な環状及び非環状の構造を用いて記載されてきた。
【0113】
本明細書で使用される「放射複合体」という用語は、放射性同位体又は放射性核種(例えば、本明細書に記載の放射性同位体又は放射性核種)を含む任意の複合体を指す。
【0114】
本明細書で使用される「放射免疫複合体」という用語は、放射性同位体又は放射性核種(例えば、本明細書に記載の放射性同位体又は放射性核種)を含む任意の免疫複合体を指す。本明細書で使用される「免疫複合体」という用語は、標的化部分(抗体又はその抗原結合断片など)を含む複合体を指す。いくつかの実施形態では、免疫複合体は、標的化部分1個当たり、平均で0.10個以上の複合体(例えば、標的化部分1個当たり、平均で0.2個以上、0.3個以上、0.4個以上、0.5個以上、0.6個以上、0.7個以上、0.8個以上、0.9個以上、1個以上、2個以上、4個以上、5個以上、又は8個以上の複合体)を含む。
【0115】
本明細書で使用される「放射免疫療法」という用語は、治療効果をもたらすために放射免疫複合体を使用する方法を指す。いくつかの実施形態では、放射免疫療法は、治療を必要とする対象への放射免疫複合体の投与を含み得、放射免疫複合体の投与は、対象において治療効果をもたらす。いくつかの実施形態では、放射免疫療法は、細胞への放射免疫複合体の投与を含み得、放射免疫複合体の投与は細胞を死滅させる。放射免疫療法が細胞の選択的死滅を伴う場合、いくつかの実施形態では、細胞は、がんを有する対象のがん細胞である。
【0116】
本明細書で使用される場合、「放射性核種」という用語は、放射性崩壊(例えば、H、14C、15N、18F、35S、47Sc、55Co、60Cu、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、75Br、76Br、77Br、89Zr、86Y、87Y、90Y、97Ru、99Tc、99mTc、105Rh、109Pd、111ln、123I、124I、125I、131I、149Pm、149Tb、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、198Au、199Au、203Pb、211At、212Pb、212Bi、213Bi、223Ra、225Ac、227Th、229Th、66Ga、67Ga、68Ga、82Rb、117mSn、201TI)を受けることができる原子を指す。
【0117】
放射性核種、放射性同位体、又は放射性同位体という用語は、放射性核種を説明するために使用される場合もある。上記のように、放射性核種を検出剤として使用することができる。いくつかの実施形態では、放射性核種はアルファ放出放射性核種である。
【0118】
抗体
本明細書で使用される場合、「抗体」は、そのアミノ酸配列が、指定された抗原又はその断片に特異的に結合する免疫グロブリン及びその断片を含むポリペプチドを指す。抗体は、任意のタイプ(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、又はIgM)又はサブタイプ(例えば、lgA1、lgA2、lgG1、lgG2、lgG3、又はlgG4)であり得る。当業者は、抗体の特徴的な配列又は部分が、抗体の1又は複数の領域(例えば、可変領域、超可変領域、定常領域、重鎖、軽鎖、及びそれらの組み合わせ)に見出されるアミノ酸配列を含み得ることを理解するであろう。さらに、当業者は、抗体の特徴的な配列又は部分が1又は複数のポリペプチド鎖を含み得、同じポリペプチド鎖又は異なるポリペプチド鎖に見られる配列要素を含み得ることを理解するであろう。抗体は、通常、ジスルフィド結合によって互いに連結された2つの同一の軽ポリペプチド鎖及び2つの同一の重ポリペプチド鎖を含む。各鎖のアミノ末端に位置する第1のドメインは、アミノ酸配列が可変であり、個々の抗体それぞれの抗体結合特異性を提供する。これらは、可変重(VH)領域及び可変軽(VL)領域として知られている。各鎖の他のドメインは、アミノ酸配列が比較的不変であり、定常重(CH)領域及び定常軽(CL)領域として知られている。軽鎖は、通常、1つの可変領域(VL)及び1つの定常領域(CL)を含む。IgG重鎖は、可変領域(VH)、第1の定常領域(CH1)、ヒンジ領域、第2の定常領域(CH2)、及び第3の定常領域(CH3)を含む。IgE抗体及びIgM抗体では、重鎖は追加の定常領域(CH4)を含む。
【0119】
抗体を作製するための方法は、当該分野で公知であり、及び/又はHarlow and Lane (editors) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (1988)に記載されている。一般に、そのような方法では、機能不全のP2X受容体若しくはその領域(例えば、細胞外領域)又はその免疫原性断片若しくはエピトープ、又はそれを発現及び提示する細胞(すなわち、免疫原)であって、所望により、任意の適切な又は所望の担体、アジュバント、又は薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化したものを、非ヒト動物、例えば、マウス、ニワトリ、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ウマ、ウシ、ヤギ、又はブタに投与する。免疫原は、鼻腔内、筋肉内、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、又は他の公知の経路によって投与することができる。
【0120】
ポリクローナル抗体の産生は、免疫化後の様々な時点で免疫化動物の血液をサンプリングすることによってモニタリングすることができる。所望の抗体価を達成するために必要であれば、1回又は複数回の追加の免疫化を行ってもよい。追加免疫及び力価測定のプロセスは、適切な力価が達成されるまで繰り返される。所望のレベルの免疫原性が得られたら、免疫化動物から採血し、血清を単離して保存し、及び/又は動物を使用してモノクローナル抗体(mAb)を生成する。
【0121】
モノクローナル抗体は、本発明によって企図される抗体の1つの例示的な形態である。「モノクローナル抗体」又は「mAb」という用語は、(1又は複数の)同じ抗原、例えば、抗原内の同じエピトープに結合することができる均一な抗体集団を指す。この用語は、抗体の供給源又はそれが作製される方法に関して限定されることを意図しない。
【0122】
mAbの産生のために、いくつかの公知の技術のいずれか、例えば、上記の米国特許第4196265号又はHarlow and Lane (1988)に例示されている手順などを使用することができる。
【0123】
例えば、適切な動物を、抗体産生細胞を刺激するのに十分な条件下で免疫原で免疫する。ウサギ、マウス、及びラットなどの齧歯動物が例示的な動物である。例えば、マウス抗体を発現せずにヒト抗体を発現するように遺伝子操作されたマウスも、本発明の抗体を作製するために使用することができる(例えば、国際公開第2002/066630号に記載されているように)。
【0124】
免疫化後、抗体を産生する潜在能力がある体細胞、具体的にはBリンパ球(B細胞)が、mAb生成プロトコルにおける使用のために選択される。これらの細胞は、脾臓、扁桃腺、若しくはリンパ節の生検から、又は末梢血試料から得ることができる。次いで、免疫化動物由来のB細胞を、通常は免疫原で免疫化された動物と同じ種に由来する不死化骨髄腫細胞の細胞と融合させる。
【0125】
ハイブリッドは、組織培養培地中のヌクレオチドのデノボ合成を遮断する薬剤を含む選択培地中での培養によって増幅される。例示的な薬剤は、アミノプテリン、メトトレキサート、及びアザセリンである。
【0126】
増幅されたハイブリドーマは、例えば、フローサイトメトリー、及び/又は免疫組織化学、及び/又は免疫アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、細胞毒性アッセイ、プラークアッセイ、及びドットイムノアッセイなど)などによって、抗体特異性及び/又は力価の機能的選択に供される。
【0127】
あるいは、ABL-MYC技術(NeoClone、マディソン、ウィスコンシン州 53713、米国)を使用して、MAbを分泌する細胞株を作製する(例えば、Largaespada et al, J. Immunol. Methods. 197: 85-95, 1996に記載されているように)。
【0128】
抗体はまた、例えば、米国特許第6300064号及び/又は米国特許第5885793号に記載されているように、ディスプレイライブラリー(例えば、ファージディスプレイライブラリー)をスクリーニングすることによって作製又は単離することもできる。例えば、本発明者らは、ファージディスプレイライブラリーから完全ヒト抗体を単離した。
【0129】
本発明の方法で使用するための抗体は、合成抗体であってもよい。例えば、抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体合成ヒト化抗体、霊長類化抗体、又は脱免疫化抗体である。
【0130】
本明細書に記載の抗体としては、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ抗体、キメラ抗体、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体、並びに上記のいずれかのものの抗原結合断片が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片はヒト化されている。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片はキメラである。抗体は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)、又はサブクラスであってもよい。
【0131】
好ましくは、抗体は、その抗体が実質的に腎クリアランスを受けず、むしろ主に肝クリアランスを受けることを確実にするフォーマット及びサイズのものである。
【0132】
抗体の「抗原結合断片」という用語は、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1又は複数の断片を指す。抗体の「抗原結合断片」という用語に包含される結合断片の例としては、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv断片、dAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341 :544-546)、及び単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。いくつかの実施形態では、「抗原結合断片」は重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の技術を使用して得ることができ、その断片は、インタクトな抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングすることができる。
【0133】
本明細書に記載の抗体又は断片は、抗体の合成のための当技術分野で公知の任意の方法(例えば、Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988)、Brinkman et al., 1995, J. Immunol. Methods 182:41-50、国際公開第92/22324号、国際公開第98/46645号を参照されたい)によって産生することができる。キメラ抗体は、例えば、Morrison, 1985, Science 229:1202に記載されている方法を使用して作製することができ、ヒト化抗体は、例えば、米国特許第6,180,370号に記載されている方法によって作製することができる。
【0134】
本明細書に記載される他の抗体は、例えば、Segal et al., J. Immunol. Methods 248:1-6 (2001)、及びTutt et al., J. Immunol. 147: 60 (1991)に記載されているような二重特異性抗体及び多価抗体である。
【0135】
本発明は、抗体の定常領域を含む本明細書に記載の抗原結合タンパク質及び/又は抗体を包含する。これには、Fcに融合した抗体の抗原結合断片が含まれる。
【0136】
本発明のタンパク質を産生するのに有用な定常領域の配列は、いくつかの異なる供給源から得ることができる。いくつかの例では、タンパク質の定常領域又はその一部はヒト抗体に由来する。定常領域又はその一部は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含む任意の抗体クラス、並びにIgG、IgG、IgG、及びIgGなどの任意の抗体アイソタイプに由来し得る。ある例では、定常領域はヒトアイソタイプIgG又は安定化IgG定常領域である。
【0137】
ある例では、定常領域のFc領域は、例えば、天然又は野生型のヒトIgGFc領域又はヒトIgGFc領域と比較して、エフェクター機能を誘導する能力が低下している。ある例では、エフェクター機能は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、及び/又は抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)、及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)である。Fc領域含有タンパク質のエフェクター機能のレベルを評価するための方法は、当技術分野で公知であり、及び/又は本明細書に記載されている。
【0138】
ある例では、Fc領域はIgGFc領域(すなわち、IgG4定常領域から)、例えば、ヒトIgGFc領域である。適切なIgGFc領域の配列は当業者に明らかであり、及び/又は公的に利用可能なデータベース(例えば、National Center for Biotechnology Informationから入手可能)で利用可能である。
【0139】
ある例では、定常領域は、安定化されたIgG定常領域である。「安定化されたIgG定常領域」という用語は、Fabアーム交換若しくはFabアーム交換を受ける傾向、又は半抗体の形成若しくは半抗体を形成する傾向を減少させるように修飾されたIgG定常領域を意味すると理解される。「Fabアーム交換」は、IgG重鎖及び結合軽鎖(半分子)が別のIgG分子由来の重鎖軽鎖対と交換されている、ヒトIgGのタンパク質修飾のタイプを指す。したがって、IgG分子は、2つの異なる抗原を認識する2つの異なるFabアームを獲得し得る(二重特異性分子をもたらす)。Fabアーム交換はインビボで天然に起こり、精製血球又は還元型グルタチオンなどの還元剤によってインビトロで誘導することができる。「半抗体」は、IgG4抗体が解離して、各々が単一の重鎖及び単一の軽鎖を含む2つの分子を形成する場合に形成される。
【0140】
ある例では、安定化されたIgG定常領域は、Kabatのシステムによるヒンジ領域の位置241にプロリンを含む(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC United States Department of Health and Human Services, 1987 and/or 1991)。この位置は、EUナンバリングシステム(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC United States Department of Health and Human Services, 2001、及びEdelman et al., Proc. Natl. Acad. USA, 63, 78-85, 1969)によるヒンジ領域の位置228に対応する。ヒトIgGでは、この残基は通常セリンである。セリンがプロリンに置換された後、IgGヒンジ領域は配列CPPCを含む。これに関して、当業者は、「ヒンジ領域」が、抗体の2つのFabアームに可動性を付与する、Fc領域とFab領域とを連結する抗体重鎖定常領域のプロリンリッチ部分であることに気付くであろう。ヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド結合に関与するシステイン残基を含む。これは、一般に、KabatのナンバリングシステムによるヒトIgGのGlu226からPro243への伸長として定義される。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド(S-S)結合を形成する最初と最後のシステイン残基を同じ位置に配置することによってIgG配列と整列させることができる(例えば、国際公開第2010/080538号を参照されたい)。
【0141】
安定化されたIgG抗体の他の例は、ヒトIgGの重鎖定常領域の409位のアルギニン(EUナンバリングシステムによる)が、リジン、スレオニン、メチオニン、又はロイシンで置換された抗体である(例えば、国際公開第2006/033386号に記載されているように)。定常領域のFc領域は、追加的又は代替的に、(EUナンバリングシステムによる)405に対応する位置にアラニン、バリン、グリシン、イソロイシン、及びロイシンからなる群から選択される残基を含み得る。任意に、ヒンジ領域は、(上記のように)位置241(すなわち、CPPCシーケンス)にプロリンを含む。
【0142】
別の例では、Fc領域は、低下したエフェクター機能を有するように修飾された領域、すなわち「非免疫刺激性Fc領域」である。例えば、Fc領域は、268、309、330及び331からなる群より選択される1又は複数の位置に置換を含むIgGFc領域である。別の例では、Fc領域は、E233Pの変化、L234Vの変化、L235Aの変化、及びG236の欠失のうちの1又は複数、及び/又はA327Gの変化、A330Sの変化、及びP331Sの変化のうちの1又は複数を含むIgGFc領域である(Armour et al., Eur J Immunol. 29:2613-2624, 1999; Shields et al., J Biol Chem. 276(9):6591-604, 2001)。非免疫賦活性Fc領域の他の例は、例えば、Dall'Acqua et al., J Immunol. 177 : 1129-1138 2006、及び/又はHezareh J Virol ;75: 12161-12168, 2001)に記載されている。
【0143】
別の例では、Fc領域は、例えば、IgG抗体由来の少なくとも1つのCHドメイン及びIgG抗体由来の少なくとも1つのCHドメインを含むキメラFc領域であり、Fc領域は、240、262、264、266、297、299、307、309、323、399、409、及び427(EUナンバリング)からなる群より選択される1又は複数のアミノ酸位置に置換を含む(例えば、国際公開第2010/085682号に記載されているように)。例示的な置換としては、240F、262L、264T、266F、297Q、299A、299K、307P、309K、309M、309P、323F、399S、及び427Fが挙げられる。
【0144】
追加の修飾
本発明はまた、Fc領域又は定常領域を含む抗体又は抗原結合タンパク質に対する追加の修飾も企図する。
【0145】
例えば、抗体は、タンパク質の半減期を増加させる1又は複数のアミノ酸置換を含む。例えば、抗体は、新生児Fc領域(FcRn)に対するFc領域の親和性を増加させる1又は複数のアミノ酸置換を含むFc領域を含む。例えば、Fc領域は、エンドソームにおけるFc/FcRn結合を促進するために、より低いpH(例えば、約pH6.0)におけるFcRnに対する親和性が増加している。ある例では、Fc領域は、約pH6におけるFcRnに対する親和性が、約pH7.4におけるその親和性と比較して増加しており、細胞リサイクル後の血液へのFcの再放出を促進する。これらのアミノ酸置換は、血液からのクリアランスを減少させることによって、タンパク質の半減期を延長するのに有用である。
【0146】
例示的なアミノ酸置換としては、EUナンバリングシステムによるT250Q及び/又はM428L又はT252A、T254S及びT266F又はM252Y、S254T及びT256E又はH433K及びN434Fが挙げられる。追加又は代替のアミノ酸置換は、例えば、米国特許出願公開第20070135620号又は米国特許出願公開第7083784号に記載されている。
【0147】
CAIXに結合するための抗体
本明細書で使用される場合、CAIXは、二酸化炭素の炭酸への可逆的水和を触媒してpHの低下をもたらす能力を共有する炭酸脱水酵素の大きなファミリーのメンバーである、膜貫通タンパク質炭酸脱水酵素IX(CAIX)を指す。CAIX遺伝子発現の上方制御は、低酸素誘導性因子-1アルファ(HIF-1a)による直接的な転写活性化を介して低酸素に応答して起こり、低酸素細胞(特に、腫瘍の低酸素領域内の低酸素細胞)の酸性環境を感知し維持することに関与すると考えられている。
【0148】
「炭酸脱水酵素IX」及び「CAIX」、「CA9」、「MN」、及び「G250」という用語は、互換的に使用され得る。
【0149】
CAIXは様々な腫瘍型で高度に発現され、正常組織では比較的低い発現を有し、腫瘍の増悪、酸性化、及び転移において重要な役割を有し、細胞膜の細胞外表面に位置し、抗体又は小分子阻害剤による効率的な標的化を可能にする。
【0150】
免疫組織化学又は免疫イメージング技術で使用するための放射標識小分子、抗体、及び抗体断片などの、CAIXに結合するための様々な分子が知られている。
【0151】
抗CAIX抗体、そのバリアント及び断片は、例えば、欧州特許第637336号、国際公開第93/18152号、国際公開第95/34650号、国際公開第00/24913号、国際公開第02/063010号、国際公開第04/025302号、国際公開第05/037083号、国際公開第2011/139375号、国際公開第2014/096163号、国際公開第2019/122025号、及びこれらの外国の対応文献に記載されている。さらに、国際公開第02/062972号には、モノクローナル抗体G250を産生するハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2526が記載されている。モノクローナル抗体G250は、好ましくは腎細胞がん細胞(RCC)の膜上に発現されるが、正常な近位尿細管上皮では発現されない抗原を認識する。
【0152】
別の好ましい実施形態では、抗体及び/又はその抗体断片は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、F(ab’)2、Fab’、sFv、dsFvなどのその抗原結合断片並びにそれらのキメラ化バリアント、ヒト化バリアント、及び完全ヒトバリアントからなる群から選択される。さらに好ましい実施形態によれば、この抗CAIX抗体又はそのエピトープ結合断片は、アミノ酸配列LSTAFARV及び/又はALGPGREYRALに結合する。
【0153】
さらに特に好ましい実施形態によれば、CAIX標的化化合物は、(例えば、欧州特許第0637336号に記載されているような)抗体cG250及び/又はそのエピトープ結合断片である。好ましくは、CAIX標的化分子は、キメラ又はヒト化G250抗体及び/又はその断片である。本発明で使用するための抗体は、限定するものではないが、国際出願PCT/EP02/01282号及び国際出願PCT/EP02/01283号(これらは参照により本明細書に取り込まれる)に記載される方法などの当技術分野で公知の任意の適切な方法によって作製することができる。
【0154】
特に好ましい抗体はcG250、好ましくはジレンツキシマブ(INN)であり、本明細書ではGmAbとも呼ばれる。別の特に好ましい実施形態は、ハイブリドーマ細胞株DSM ACC 2526によって産生されるモノクローナル抗体G250である。抗体cG250は、元々はマウスモノクローナル抗体mG250のIgG1カッパ軽鎖キメラバージョンである。
【0155】
特に好ましい実施形態では、CAIXに結合するための抗体は、その内容が参照により本明細書に取り込まれる国際公開第2021/000017号に記載されているもの(例えば、GmAb、及び放射標識複合体形態であるDOTA-GmAb)である。CAIXに結合するための放射免疫複合体も、CAIXに結合するための放射免疫複合体と同様に国際公開第2021/000017号に記載されており、減少した血清半減期(すなわち、増加した血清クリアランスの速度)を有する。
【0156】
特に好ましい実施形態では、CAIXに結合するための抗体は、
FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4
及び
FR1a-CDR1a-FR2a-CDR2a-FR3a-CDR3a-FR4a
を含み、ここで、
FR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれフレームワーク領域であり、
CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり、
FR1a、FR2a、FR3a、及びFR4aは、それぞれフレームワーク領域であり、
CDR1a、CDR2a、及びCDR3aは、それぞれ相補性決定領域であり、
前記相補性決定領域のいずれかの配列は、下記の表2に記載されるアミノ酸配列を有する。好ましくは、フレームワーク領域は、各抗体に由来する様々なフレームワーク領域をアラインメントすることによって決定することができる特定の残基におけるアミノ酸変異を含む、以下の表2にも記載されるアミノ酸配列を有する。本発明はまた、CDR1、CDR2、及びCDR3がVH由来の配列であり、CDR1a、CDR2a、及びCDR3aがVL由来の配列である場合、又はCDR1、CDR2、及びCDR3がVL由来の配列であり、CDR1a、CDR2a、及びCDR3aはVH由来の配列である場合を含む。
【0157】
好ましくは、抗体は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4-リンカー-FR1a-CDR1a-FR2a-CDR2a-FR3a-CDR3a-FR4a、又はFR1a-CDR1a-FR2a-CDR2a-FR3a-CDR3a-FR4a-FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の形式である。
【0158】
本明細書で定義されるように、リンカーは、化学物質、1又は複数のアミノ酸、又は2つのシステイン残基間に形成されたジスルフィド結合であり得る。好ましい実施形態では、リンカーは1又は複数のアミノ酸残基からなる。
【0159】
CAIXに特異的に結合するための抗体は、好ましくは、(N末端からC末端の順又はC末端からN末端の順で)配列番号52、配列番号68、配列番号84、配列番号100、又は配列番号116のアミノ酸配列から本質的になるか又はそのようなアミノ酸配列からなる抗原結合部位を含む。
【0160】
他の実施形態では、CAIXに特異的に結合する抗体は、
(i)配列番号49、配列番号65、配列番号81、配列番号97、又は配列番号113に示される配列と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上、約95%以上、約97%以上、約99%以上同一である配列を含む相補性決定領域(CDR)1、配列番号50、配列番号66、配列番号82、配列番号98、又は配列番号114に示される配列と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上、約95%以上、約97%以上、約99%以上同一である配列を含むCDR2、及び配列番号51、配列番号67、配列番号83、配列番号99、又は配列番号115に示される配列と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上、約95%以上、約97%以上、約99%以上同一である配列を含むCDR3を含むVH、
(ii)配列番号52、配列番号68、配列番号84、配列番号100、及び配列番号116に示される配列と約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、又は約99%以上同一である配列を含むVH、
(iii)配列番号129、配列番号145、配列番号161、配列番号177、配列番号193、又は配列番号209に示される配列と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上、約95%以上、約97%以上、約99%以上同一である配列を含むCDR1、配列番号130、配列番号146、配列番号162、配列番号178、配列番号194、又は配列番号210に示される配列と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上、約95%以上、約97%以上、約99%以上同一である配列を含むCDR2、及び配列番号131、配列番号147、配列番号163、配列番号179、配列番号195、又は配列番号211に示される配列と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上、約95%以上、約97%以上、約99%以上同一である配列を含むCDR3を含むVL、
(iv)配列番号132、配列番号148、配列番号164、配列番号180、配列番号196、又は配列番号212に示される配列と約95%以上同一である配列を含むVL、
(v)配列番号49、配列番号65、配列番号81、配列番号97、又は配列番号113に示される配列を含むCDR1、配列番号50、配列番号66、配列番号82、配列番号98、又は配列番号114に示される配列を含むCDR2、及び配列番号51、配列番号67、配列番号83、配列番号99、又は配列番号115に示される配列を含むCDR3を含むVH、
(vi)配列番号52、配列番号68、配列番号84、配列番号100、及び配列番号116に示される配列を含むVH、
(vii)配列番号129、配列番号145、配列番号161、配列番号177、配列番号193、又は配列番号209に示される配列を含むCDR1、配列番号130、配列番号146、配列番号162、配列番号178、配列番号194、又は配列番号210に示される配列を含むCDR2、及び配列番号131、配列番号147、配列番号163、配列番号179、配列番号195、又は配列番号211に示される配列を含むCDR3を含むVL、
(viii)配列番号132、配列番号148、配列番号164、配列番号180、配列番号196、又は配列番号212に示される配列を含むVL、
(ix)配列番号49、配列番号65、配列番号81、配列番号97、又は配列番号113に示される配列を含むCDR1、配列番号50、配列番号66、配列番号82、配列番号98、又は配列番号114に示される配列を含むCDR2、及び配列番号51、配列番号67、配列番号83、配列番号99、又は配列番号115に示される配列を含むCDR3を含むVH、並びに配列番号129、配列番号145、配列番号161、配列番号177、配列番号193、又は配列番号209に示される配列を含むCDR1、配列番号130、配列番号146、配列番号162、配列番号178、配列番号194、又は配列番号210に示される配列を含むCDR2、及び配列番号131、配列番号147、配列番号163、配列番号179、配列番号195、又は配列番号211に示される配列を含むCDR3を含むVL、又は
(x)配列番号52、配列番号68、配列番号84、配列番号100、及び配列番号116に示される配列を含むVH、並びに配列番号132、配列番号148、配列番号164、配列番号180、配列番号196、又は配列番号212に示される配列を含むVL
のうちの少なく1つを含む。
【0161】
好ましくは、重鎖定常領域は、His310及びHis435の両方にアミノ酸置換を含む。抗体はまた、定常重鎖領域のSer228及びLeu235と同等の残基にアミノ酸置換を含み得る。
【0162】
好ましくは、抗体は、配列番号225~配列番号228のいずれか1つに示される配列、好ましくは配列番号226に示される配列を含む重鎖定常領域を含む。
【0163】
さらに他の実施形態では、抗体は、好ましくは、配列番号230~配列番号233のいずれか1つに示される配列、好ましくは配列番号231に示される配列を含む重鎖を含む。
【0164】
任意の実施形態では、抗体は、配列番号229に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。好ましくは、抗体は、配列番号234に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0165】
特定の好ましい実施形態では、抗体は、配列番号231に示される配列及び配列番号234に示される配列を含む。
【0166】
PSMAに結合するための抗体
本明細書で使用される場合、PSMAは「前立腺特異的膜抗原」を指す。
【0167】
好ましくは、PSMAに結合するための抗体は、PSMAの細胞外ドメイン、例えば、ヒトPSMAのアミノ酸44~750(アミノ酸残基は、米国特許第5,538,866号に開示されるヒトPSMA配列に対応する)におおよそ位置するヒトPSMAの細胞外ドメインと相互作用(例えば、結合)する。いくつかの実施形態では、抗体は、PSMAの二量体に結合し、例えば、薬剤は、PSMAの二量体及びPSMAのモノマーの両方において露出したPSMAの一部に結合するか、又は薬剤は、PSMAモノマーではなくPSMA二量体に露出したPSMAの一部に結合する。好ましくは、相互作用(例えば、結合)は、高い親和性及び特異性で起こる。好ましくは、PSMA結合剤は、細胞、例えば、PSMA発現細胞(例えば、がん性細胞又は血管内皮細胞)を処理し、例えば、消失又は死滅させる。PSMA結合剤が細胞を処理する、例えば、消失又は死滅させる機構は、本発明の実施にとって重要ではない。いくつかの実施形態では、PSMA結合剤は、細胞において、及び/又は細胞に近接する血管内皮細胞で発現されるPSMAに結合し、内在化され得る。それらの実施形態では、結合剤を使用して、第2の部分(例えば、細胞傷害剤)を細胞に標的化することができる。他の実施形態では、PSMA結合剤は、PSMAの細胞外ドメインに結合すると、細胞及び/又はそれに近接する血管細胞の宿主媒介性殺傷(例えば、相補性又はADCC媒介性の殺傷)を媒介し得る。細胞は、細胞(例えば、がん性細胞に対して)又はそれに近接する血管内皮細胞に直接結合するPSMA結合剤によって直接死滅させることができる。あるいは、PSMA結合剤は、それが結合する血管内皮細胞を処置する、例えば、死滅若しくは消失させることができ、又はそうでなければその特性を変化させることができ、その結果、その近傍の細胞への血流が減少し、それによって近傍の細胞を死滅又は消失させる。
【0168】
「抗PSMA抗体」は、PSMA(好ましくは、ヒトPSMA)タンパク質と相互作用する(例えば、結合する)抗体である。抗体は、任意のPSMA特異的抗体(例えば、単一特異性抗体、又は組換え若しくは修飾抗体)であり得、その抗原結合断片を含む。
【0169】
高い親和性及び特異性でPSMA、好ましくはヒトPSMAに結合する抗体を含む抗PSMA抗体及びその断片が知られている。いくつかの実施形態では、抗体は、J591抗体、J415抗体、J533抗体、若しくはE99抗体由来の、又はこれらの抗体のうちの1つと競合する抗体若しくはこれらの抗体のうちの1つと重複するエピトープを有する抗体由来の、1又は複数の相補性決定領域(CDR)を有する抗体である。抗体J591は、Liu et al., Cancer Res 1997; 57: 3629-34に記載されている。本発明の任意の実施形態では、抗PSMA結合抗体又はその抗原結合断片は、J591、J415、J533、及びE99からなる群から選択されるモノクローナル抗体由来の、又はこれらの抗体のうちの1つと競合する抗体若しくはこれらの抗体のうちの1つと重複するエピトープを有する抗体由来の、1又は複数の相補性決定領域(CDR)を含む軽鎖可変領域、及び/又はJ591、J415、J533、及びE99からなる群から選択されるモノクローナル抗体由来の、又はこれらの抗体のうちの1つと競合する抗体若しくはこれらの抗体のうちの1つと重複するエピトープを有する抗体由来の、1又は複数のCDRを含む重鎖可変領域を有し得る。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合部分は、マウスJ591由来の6つすべてのCDR、又はマウスJ415由来の6つすべてのCDRを含む。他の実施形態では、抗体は、4A3、7F12、8A11、8C12、16F9 026、若しくはPSMA4.40抗体由来の、又はこれらの抗体のうちの1つと競合する抗体若しくはこれらの抗体のうちの1つと重複するエピトープを有する抗体由来の、1又は複数の相補性決定領域(CDR)を有する抗体、例えば、4A3、7F12、8A11、8C12、16F9 026、及びPSMA 4.40からなる群から選択されるモノクローナル抗体由来の、又はこれらの抗体のうちの1つと競合する抗体若しくはこれらの抗体のうちの1つと重複するエピトープを有する抗体由来の、1又は複数の相補性決定領域(CDR)を有する軽鎖可変領域、及び/又は4A3、7F12、8A11、8C12、16F9 026、及びPSMA mAb4.40からなる群から選択されるモノクローナル抗体由来の、又はこれらの抗体のうちの1つと競合する抗体若しくはこれらの抗体のうちの1つと重複するエピトープを有する抗体由来の、1又は複数のCDRを含む重鎖可変領域を有する重鎖可変領域を有する抗体である。いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合部分は、前述の抗体のうちの1つに由来する6つすべてのCDRを含む。
【0170】
PSMAに結合するための他の抗体であって、本発明に従って使用するために企図される抗体としては、米国特許第20190022205号に開示されている抗体(「10B3」抗体)が挙げられ、その内容、その特定の抗体配列が参照により本明細書に開示されている。
【0171】
いくつかの実施形態では、抗PSMA単一特異性抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、脱免疫化抗体(例えば、脱免疫化マウス抗体)、又はヒト抗体、又はこれらの抗原結合断片である。抗PSMA抗体(例えば、組換え抗体又は修飾抗体)は、完全長(例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgA(例えば、IgAl、IgA2)、IgD及びIgEであるが、好ましくはIgG)であり得、又は抗原結合断片(例えば、Fab、F(ab’)2若しくはscFv断片、又は1又は複数のCDR)のみを含み得る。抗体又はその抗原結合断片は、2つの重鎖免疫グロブリン及び2つの軽鎖免疫グロブリンを含み得、又は単鎖抗体であり得る。抗体は、任意に、カッパ定常領域遺伝子、ラムダ定常領域遺伝子、アルファ定常領域遺伝子、ガンマ定常領域遺伝子、デルタ定常領域遺伝子、イプシロン定常領域遺伝子、又はミュー定常領域遺伝子から選択される定常領域を含み得る。好ましい抗PSMA抗体は、実質的にヒト抗体由来の重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域(例えば、ヒトIgG1定常領域)又はその一部を含む。いくつかの実施形態では、抗PSMA抗体はヒト抗体である。
【0172】
抗体(又はその断片)は、マウス抗体又はヒト抗体であり得る。使用され得るマウスモノクローナル抗体の例としては、E99、J415、J533、及びJ591抗体が挙げられ、これらはそれぞれ、ATCCアクセッション番号がHB-12101、HB-12109、HB-12127、及びHB-12126であるハイブリドーマ細胞株によって産生される。本明細書に開示される抗PSMA抗体のPSMAへの結合について重複エピトープに結合するか又は当該PSMAへの結合を競合的に阻害する抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体E99、J415、J533、J591、4A3、7F12、8A11、8C12、16F9 026、又はPSMA 4.40のうちの1又は複数のPSMAへの結合について重複エピトープに結合するか又は当該PSMAへの結合を競合的に阻害する抗体)を使用する方法及び組成物も本発明の範囲内である。抗PSMA抗体の任意の組み合わせ、例えば、PSMAの異なる領域に結合する2つ以上の抗体、例えば、PSMAの細胞外ドメイン上の2つの異なるエピトープに結合する抗体を使用することができる。
【0173】
いくつかの実施形態では、結合剤は、本明細書に記載の抗体のエピトープの全部又は一部に結合する抗PSMA抗体、例えば、J591、E99、J415、J533、4A3、7F12、8A11、8C12、16F9 026、及びPSMA 4.40抗体である。抗PSMA抗体は、本明細書に記載の抗体、例えば、J591、E99、J415、J533、4A3、7F12、8A11、8C12、16F9 026、及びPSMA 4.40抗体のヒトPSMAへの結合を阻害(例えば、競合的に阻害)し得る。抗PSMA抗体は、エピトープ(例えば、立体構造エピトープ又は直鎖状エピトープ)に結合し得、このエピトープは、結合されると、本明細書に記載の抗体、J591、E99、J415、J533、4A3、7F12、8A11、8C12、16F9 026、及びPSMA 4.40抗体の結合を妨げる。エピトープは、空間的にごく近接しているか、又は機能的に関連していてもよく、例えば、J591、E99、J415、J533、4A3、7F12、8A11、8C12、16F9 026、又はPSMA 4.40抗体によって認識されるものに対して、直鎖状配列において又は立体構造的に重複又は隣接するエピトープであってもよい。
【0174】
ある実施形態では、抗PSMA抗体は、ヒトPSMAの約アミノ酸の120~500(例えば、130~450、134~437、又は153~347)の領域内に全体的又は部分的に位置するエピトープに結合する。通常、エピトープは、少なくとも1つのグリコシル化部位、例えば、少なくとも1つのN結合型グリコシル化部位(例えば、ヒトPSMAの約アミノ酸190~200、好ましくは約アミノ酸195に位置するN結合型グリコシル化部位)を含む。
【0175】
他の実施形態では、抗体(又はその抗原結合断片)は、例えば、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、脱免疫化抗体、又はインビトロ生成抗体(又はその抗原結合断片)から選択される組換え抗PSMA抗体又は修飾抗PSMA抗体である。本明細書で論じられるように、修飾抗体は、CDR移植抗体、ヒト化抗体、脱免疫化抗体、又は、より一般的には、非ヒト抗体(例えば、マウスJ591抗体、マウスJ415抗体、マウスJ533抗体、又はマウスE99抗体)由来のCDR、及びヒトにおいてより免疫原性が低い(例えば、マウスCDRに天然に存在するマウスフレームワークよりも抗原性が低い)フレームワークとして選択されるフレームワークを有する抗体であり得る。ある実施形態では、修飾抗体は、脱免疫化抗PSMA抗体、例えば、E99、J415、J533、又はJ591の脱免疫化形態(例えば、それぞれATCCアクセッション番号HB-12101、HB-12109、HB-12127、及びHB-12126を有するハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体の脱免疫化形態)である。
【0176】
通常、抗体は、J591又はJ415の脱免疫化形態(本明細書では、それぞれ「deJ591」又は「deJ415」と呼ばれる)である。最も好ましくは、抗体はJ591の脱免疫化形態である。抗体は、ヒト抗体、例えば、非ヒト動物(例えば、マウス)で作製されたヒト抗体であり得る。
【0177】
抗体又はその抗原結合断片は、マウスJ591の重鎖可変領域(配列番号1、2、及び3に定義され、参照により本明細書に取り込まれる米国特許出願公開第20060088539号の図1Aに示される)、及びマウスJ591の軽鎖可変領域(参照により本明細書に取り込まれる米国特許出願公開第20060088539号の図1Bに示される配列番号4、5、及び6を参照されたい)からなる1つ以上、2つ以上、好ましくは3つのCDRを有する。抗体又はその抗原結合断片は、米国特許出願公開第20060088539号の図1A及び図1Bに記載されているように、J591抗体又はその任意の修飾形態の重鎖可変鎖及び軽鎖を有し得る。抗体又はその抗原結合断片は、米国特許出願公開第20060088539号の図2A及び図2Bに記載されているように、脱免疫化J591抗体又はその任意の修飾形態の重鎖可変鎖及び軽鎖を有し得る。
【0178】
本明細書で使用される場合、ANT4044及びANT4044-A2は、それぞれJ591抗体のヒト化型及び親和性成熟ヒト化型を指し、これらの配列を本明細書の表1に示す。
【0179】
特に好ましい実施形態では、PSMAに結合するための抗体は、国際公開第2021/000017号に記載されているものであり、その内容は参照により本明細書に取り込まれる。PSMAに結合するための放射免疫複合体もまた、国際公開第2021/000017号に記載されている。
【0180】
抗体が前立腺特異的膜抗原(PSMA)に特異的に結合する好ましい実施形態では、抗体は、
FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4
及び
FR1a-CDR1a-FR2a-CDR2a-FR3a-CDR3a-FR4a
を含み、ここで、
FR1、FR2、FR3、及びFR4は、それぞれフレームワーク領域であり、
CDR1、CDR2、及びCDR3は、それぞれ相補性決定領域であり、
FR1a、FR2a、FR3a、及びFR4aは、それぞれフレームワーク領域であり、
CDR1a、CDR2a、及びCDR3aは、それぞれ相補性決定領域であり、
いずれかの相補性決定領域の配列は、下記の表1に記載されるアミノ酸配列を有する。好ましくは、フレームワーク領域は、各抗体に由来する様々なフレームワーク領域をアラインメントすることによって決定することができる特定の残基におけるアミノ酸変異を含む、以下の表1にも記載されるアミノ酸配列を有する。本発明はまた、CDR1、CDR2、及びCDR3がVH由来の配列であり、CDR1a、CDR2a、及びCDR3aがVL由来の配列である場合、又はCDR1、CDR2、及びCDR3がVL由来の配列であり、CDR1a、CDR2a、及びCDR3aはVH由来の配列である場合を含む。
【0181】
好ましくは、抗体は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4-リンカー-FR1a-CDR1a-FR2a-CDR2a-FR3a-CDR3a-FR4a、又はFR1a-CDR1a-FR2a-CDR2a-FR3a-CDR3a-FR4a-FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の形式である。
【0182】
本明細書で定義されるように、リンカーは、化学物質、1又は複数のアミノ酸、又は2つのシステイン残基間に形成されたジスルフィド結合であり得る。好ましい実施形態では、リンカーは1又は複数のアミノ酸残基からなる。
【0183】
より好ましくは、PSMAを結合させるための抗体は、(N末端からC末端の順又はC末端からN末端の順で)配列番号4又は配列番号20、及び/又は配列番号36のアミノ酸配列から本質的になるか又はそのアミノ酸配列からなる抗原結合部位を含む。
【0184】
他の実施形態では、PSMAに特異的に結合する抗体は、
(i)配列番号1、配列番号17、又は配列番号244に示される配列と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上、約95%以上、約97%以上、約99%以上同一である配列を含む相補性決定領域(CDR)1、配列番号2又は配列番号18に示される配列と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上、約95%以上、約97%以上、約99%以上同一である配列を含むCDR2、及び配列番号3又は配列番号19に示される配列と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上、約95%以上、約97%以上、約99%以上同一である配列を含むCDR3を含むVH、
(ii)配列番号4、配列番号20、又は配列番号245に示される配列と約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、又は約99%以上同一である配列を含むVH、
(iii)配列番号33に示される配列と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上、約95%以上、約97%以上、約99%以上同一である配列を含むCDR1、配列番号34に示される配列と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上、約95%以上、約97%以上、約99%以上同一である配列を含むCDR2、及び配列番号35に示される配列と約80%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上、約95%以上、約97%以上、約99%以上同一である配列を含むCDR3を含むVL、
(iv)配列番号36又は配列番号246に示される配列と約95%以上同一である配列を含むVL、
(v)配列番号1、配列番号17、又は配列番号244に示される配列を含むCDR1、配列番号2又は配列番号18に示される配列を含むCDR2、及び配列番号3又は配列番号19に示される配列を含むCDR3を含むVH、
(vi)配列番号4、配列番号20、又は配列番号245に示される配列を含むVH、
(vii)配列番号33に示される配列を含むCDR1、配列番号34に示される配列を含むCDR2、及び配列番号45に示される配列を含むCDR3を含むVL、
(viii)配列番号36又は配列番号246に示される配列を含むVL、
(ix)配列番号1又は配列番号17に示される配列を含むCDR1、配列番号2又は配列番号18に示される配列を含むCDR2、及び配列番号3又は配列番号19に示される配列を含むCDR3を含むVH、並びに配列番号33に示される配列を含むCDR1、配列番号34に示される配列を含むCDR2、及び配列番号35に示される配列を含むCDR3とを含むVL、又は
(x)配列番号4、配列番号20、又は配列番号245に示される配列を含むVH、及び配列番号36又は配列番号246に示される配列を含むVL、
のうちの少なく1つを含む。
【0185】
好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号244、配列番号18、及び配列番号19に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR、及び配列番号33、配列番号34、及び配列番号35に示される軽鎖CDRを含む。
【0186】
さらに好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1、配列番号18、及び配列番号19に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR、及び配列番号33、配列番号34、及び配列番号35に示される軽鎖CDRを含む。
【0187】
特定の実施形態では、重鎖定常領域は、His310及びHis435の両方にアミノ酸置換を含む。抗体はまた、定常重鎖領域のSer228及びLeu235と同等の残基にアミノ酸置換を含み得る。
【0188】
任意の実施形態では、抗体は、配列番号235~配列番号237のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含み、好ましくは、重鎖定常領域は、配列番号236に記載の配列を含む。
【0189】
さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、配列番号239~配列番号242のいずれか1つに示される配列、好ましくは配列番号239に示される配列、より好ましくは配列番号245に示される配列を含む。
【0190】
さらに、好ましい実施形態では、抗体の軽鎖定常領域は、配列番号238に示される配列を含む。より好ましくは、抗体は、配列番号243に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。最も好ましくは、抗体は、配列番号246に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
【0191】
特に好ましい実施形態では、抗体は、配列番号239に示されるアミノ酸配列、及び配列番号243に示される配列を含む。
【0192】
他の腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原に結合するための抗体
本発明の任意の態様によれば、放射免疫複合体は、治療を必要とするがんによって発現される抗原に結合するための抗体又はその断片を含むことが理解されるであろう。任意の所与のがんの治療に使用するのに適した抗体を同定することは、十分に当業者の理解の範囲内である。
【0193】
本発明の文脈において、「腫瘍抗原」又は「過剰増殖性障害抗原」又は「過剰増殖性障害関連抗原」は、がんなどの特定の過剰増殖性障害に共通の抗原を指す。本明細書で論じられる抗原は、単なる例として含まれる。そのリストは排他的であることを意図するものではなく、他の例は当業者にはすぐにわかるであろう。
【0194】
腫瘍抗原は、免疫応答(特に、T細胞媒介性免疫応答)を誘発する腫瘍細胞によって産生されるタンパク質である。本発明の抗原結合部分の選択は、治療されるがんの特定の種類に依存し、腫瘍抗原は当技術分野で周知であり、例えば、神経膠腫関連抗原、がん胎児性抗原(CEA)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、レクチン反応性AFP、チログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGE-1a、p53、プロステイン、PSMA、Her2/neu、サバイビン及びテロメラーゼ、前立腺癌腫腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン成長因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、及びメソテリンが挙げられる。
【0195】
ある実施形態では、腫瘍抗原は、悪性腫瘍に関連する1又は複数の抗原性がんエピトープを含む。悪性腫瘍は、免疫攻撃の標的抗原として働くことができるいくつかのタンパク質を発現する。これらの分子としては、組織特異的抗原、例えば、メラノーマにおけるMART-1、チロシナーゼ及びGP 100、並びに前立腺がんにおける前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)及び前立腺特異的抗原(PSA)が挙げられるが、これらに限定されない。他の標的分子は、がん遺伝子HER-2/Neu/ErbB-2などの形質転換関連分子の群に属する。標的抗原のさらに別の群は、がん胎児性抗原(CEA)などのがん胎児性抗原である。B細胞リンパ腫では、腫瘍特異的イディオタイプ免疫グロブリンは、個々の腫瘍に固有の真に腫瘍特異的な免疫グロブリン抗原を構成する。CD19、CD20及びCD37などのB細胞分化抗原は、B細胞リンパ腫における標的抗原の他の候補である。
【0196】
本発明で言及される腫瘍抗原の種類はまた、腫瘍特異的抗原(TSA)又は腫瘍関連抗原(TAA)であり得る。TSAは腫瘍細胞に固有であり、体内の他の細胞には存在しない。TAA関連抗原は腫瘍細胞に固有のものではなく、代わりに、抗原に対する免疫寛容の状態を誘導できない条件下で正常細胞上にも発現される。腫瘍上の抗原の発現は、免疫系が抗原に応答することを可能にする条件下で起こり得る。TAAは、免疫系が未熟で応答することができない胎児生育期に正常細胞上に発現される抗原であり得、又はそれは、正常細胞上には通常極めて低レベルで存在するが、腫瘍細胞上でははるかに高レベルで発現される抗原であり得る。
【0197】
TSA又はTAA抗原の非限定的な例としては、MART-1/MelanA(MART-1)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、及び腫瘍特異的多系統抗原(例えば、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15)などの分化抗原;CEAなどの過剰発現胚性抗原;p53、Ras、HER-2/neuなどの過剰発現がん遺伝子及び変異腫瘍抑制遺伝子;BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、1GH-IGK、MYL-RARなどの染色体転座から生じる固有の腫瘍抗原、;並びに、エプスタイン・バーウイルス抗原EBVA、及びヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6及びE7などのウイルス抗原が挙げられる。他の大きなタンパク質系抗原としては、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、RAGE、NY-ESO、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72、CA19-9、CA72-4、CAM17.1、NuMa、K-ras、ベータ-カテニン、CDK4、Mum-1、p15、p16、43-9F、5T4、791Tgp72、アルファ-フェトプロテム、ベータ-HCG、BCA225、BTAA、CA125、CA15-3\CA27.29\BCAA、CA195、CA242、CA-50、CAM43、CD68\P1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90\Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP、及びTPSが挙げられる。
【0198】
他の実施形態では、放射免疫複合体に使用するための抗体は、抗体の血清半減期を減少させるように修飾されていてもよい。これは、国際公開第2021/000017号に記載されているように、FcRn結合親和性が低下するように抗体を修飾することによって達成することができる。
【0199】
特定の好ましい実施形態では、1又は複数のアミノ酸置換は、IgGの残基His310、His433、His435、His436、又はIle253のうちの1又は複数であり得る。好ましくは、アミノ酸置換は、重鎖定常領域において、His310位又はHis435位に置換を含む。より好ましくは、FcRnに対する抗体の親和性を低下させるアミノ酸置換は、His310及びHis435の両方である。
【0200】
特定の実施形態では、修飾抗体は、1又は複数のFc-ガンマ受容体に結合する能力を保持し、したがって、特定の実施形態では、修飾抗体は、エフェクター応答(ADCCを含む)を刺激する能力を保持している。
【0201】
代替的な実施形態では、FcRn受容体に対する親和性を低下させる1又は複数のアミノ酸修飾はまた、Fcガンマ受容体に対する親和性も低下させる。修飾抗体は、クラスIgGの野生型抗体と比較して1又は複数のアミノ酸置換をさらに含み得、アミノ酸置換は、1又は複数のFcガンマ受容体に対する抗体の親和性をさらに低下させる。
【0202】
他の実施形態では、修飾抗体は、クラスIgGの野生型抗体と比較して1又は複数のアミノ酸置換をさらに含み、アミノ酸置換は、クラスIgGの野生型抗体と比較して修飾抗体のCH1-CH2ヒンジ領域の安定性を増加させる。
【0203】
クラスIgGの未修飾抗体と比較してFcRn結合親和性が低下したクラスIgGの修飾抗体は、診断薬又は治療薬を生物学的部位に標的化するのに有用な任意の抗体であり得る。抗体は、IgG1(ヒト又はマウス)、IgG2、IgG4、マウスIgG2aなどの任意のIgGクラスであり得る。
【0204】
リンカー及び架橋
本発明の任意の態様では、抗体又はその断片は、放射性核種に複合体化される。放射性核種は、例えば、アミノ酸残基のハロゲン化によって、直接的又は間接的に抗体に複合体化され得る。好ましくは、放射性核種薬剤は、リンカー又はキレート剤部分を介して抗体に間接的に複合体化される。
【0205】
別の例では、抗体は、二官能性リンカー(例えば、ブロモアセチル、チオール、スクシンイミドエステル、TFPエステル、マレイミド)に複合体化されるか、又は当技術分野で公知の任意のアミン若しくはチオール修飾化学を使用して複合体化される。
【0206】
本明細書で使用される「キレート」という用語は、2箇所以上の位置で中心金属又は放射性金属原子に結合することができる有機化合物又はその一部を指す。
【0207】
本明細書で使用される「複合体」という用語は、キレート基又はその金属錯体、リンカー基を含み、任意に、治療部分、標的化部分、又は架橋基を含む分子を指す。
【0208】
適切なキレート化部分の例としては、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10四酢酸)、DOTMA(1R,4R,7R,10R)-α,α’,α’’,α’’’-テトラメチル-1.4.7.10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10四酢酸、DOTAM(1,4,7,10-テトラキス(カルバモイルメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン)、DOTPA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラプロピオン酸)、D03AM-酢酸(2-(4,7,10-トリス(2-アミノ-2-オキソエチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)酢酸)、DOTA-GA無水物(2,2’,2’’-(10-(2,6-ジオキソテトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)三酢酸、DOTP(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メチレンホスホン酸))、DOTMP(1,4,6,10-テトラアザシクロデカン-1,4,7,10-テトラメチレンホスホン酸、DOTA-4AMP(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラキス(アセトアミド-メチレンホスホン酸)、CB-TE2A(1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン-4,11-二酢酸)、NOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸)、NOTP(1、4,7-トリアザシクロノナン-1、4,7-トリ(メチレンホスホン酸)、TETPA(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-テトラプロピオン酸)、TETA(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸)、HEHA(1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロヘキサデカン-1,4,7,10,13,16-ヘキサ酢酸)、PEPA(1,4,7,10,13-ペンタアザシクロペンタデカン-N,N’,N’’,N’’’,N’’’’-五酢酸)、H4オクタパ(N,N’-ビス(6-カルボキシ-2-ピリジルメチル)-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸)、H2dedpa(1,2-[[6-(カルボキシ)-ピリジン-2-イル]-メチルアミノ]エタン)、H6ホスパ(N,N’-(メチレンホスホネート)-N,N’-[6-(メトキシカルボニル)ピリジン-2-イル]-メチル-1,2-ジアミノエタン)、TTHA(トリエチレンテトラミン-N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’-ヘキサ酢酸)、DO2P(テトラアザシクロドデカンジメタンホスホン酸)、HP-DO3A(ヒドロキシプロピルテトラアザシクロドデカン三酢酸)、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、デフェロキサミン、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、DTPA-BMA(ジエチレントリアミン五酢酸ビスメチルアミド)、HOPO(八座ヒドロキシピリジノン)、又はポルフィリンが挙げられる。
【0209】
いくつかの実施形態では、放射免疫複合体は、キレート化部分の金属錯体を含む。例えば、キレート基は、マンガン、鉄、及びガドリニウムなどの金属と、本明細書で論じられる放射性同位体及び放射性核種のいずれかなどの同位体(例えば、60keV~4,000keVの一般エネルギー範囲の同位体)との金属キレートの組み合わせで使用することができる。
【0210】
いくつかの実施形態では、放射免疫複合体は、架橋基を含む。架橋基は、共有結合によって2つ以上の分子を結合することができる反応性基である。架橋基は、リンカー及びキレート化部分を治療部分又は標的化部分に結合させるために使用され得る。架橋基はまた、リンカー及びキレート化部分をインビボで標的に結合させるために使用され得る。いくつかの実施形態では、架橋基は、アミノ反応性架橋基、メチオニン反応性架橋基、若しくはチオール反応性架橋基、又はソルターゼ媒介カップリングである。
【0211】
いくつかの実施形態では、アミノ反応性架橋基又はチオール反応性架橋基は、ヒドロキシスクシンイミドエステル、2,3,5,6-テトラフルオロフェノールエステル、4-ニトロフェノールエステル又はイミデート、無水物、チオール、ジスルフィド、マレイミド、アジド、アルキン、歪みアルキン、歪みアルケン、ハロゲン、スルホネート、ハロアセチル、アミン、ヒドラジド、ジアジリン、ホスフィン、テトラジン、イソチオシアネート又はオキサジリジンなどの活性化エステルを含む。いくつかの実施形態では、ソルターゼ認識配列は、末端グリシン-グリシン-グリシン(GGG)及び/又はLPTXGアミノ酸配列(Xは任意のアミノ酸である)を含んでいてもよい。当業者は、架橋基の使用が本明細書に開示される特定の構築物に限定されるのではなく、他の公知の架橋基を含み得ることを理解するであろう。
【0212】
他の治療薬
任意の実施形態では、本発明の方法は、抗増殖剤、放射線増感剤、又は免疫調節剤若しくは免疫調節剤を投与する追加の工程(iii)を含む。
【0213】
本明細書で使用される場合、「抗増殖剤」は、任意の抗がん化学療法剤を指す。「抗増殖剤」という用語は、「抗新生物剤」又は「細胞傷害剤」という用語と互換的に使用され得る。抗増殖剤は、アルキル化剤、白金剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、アントラサイクリン抗生物質、有糸分裂阻害剤、アロマターゼ阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤、DNAアンタゴニスト、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ポンプ阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、リボヌクレオシドレダクターゼ剤、TNFαアゴニスト/アンタゴニスト、エンドセリンA受容体アナトアゴニスト、キナーゼ阻害剤であり得る。
【0214】
そのような薬剤としては、有機白金誘導体、ナフトキノン誘導体及びベンゾキノン誘導体、クリソファン酸及びそのアントロキノン誘導体を挙げることができる。
【0215】
本明細書で使用される場合、本明細書で互換的に使用される「免疫制御剤」、「免疫調節剤」、又は「免疫調節」は、インターフェロン、オンカファージ、ニボルマブ、アバタセプト、ペンブロリズマブ、イピリムマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択されるものなどの、任意の免疫調節剤を指す。
【0216】
本明細書で使用される場合、「放射線増感剤」は、放射線療法に対するがん細胞の感受性を増加させる任意の薬剤を指す。放射線増感剤としては、5-フルオロウラシル、白金の類似体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン)、ゲムシタビン、EGFRアンタゴニスト(例えば、セツキシマブ、ゲフィチニブ)、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、COX-2阻害剤、bFGFアンタゴニスト、及びVEGFアンタゴニストを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0217】
本明細書で使用される場合、「化学療法剤」という用語は、腫瘍増殖を阻害するのに有効な化学化合物を指す。化学療法剤の例としては、チオテパ及びシクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドパ、カルボコン、メトレドパ、及びウレドパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスファアルニド、及びトリメチロメラミンなどのエチレンイミン及びメチルアメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カルンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン成類似体、カルゼレシン成類似体、及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体であるKW-2189及びCBI-TMIを含む);エレウテロビン;パンクラティスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロマファジン、クロロホスファミド、エストラルヌスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロソ尿素;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン)などの抗生物質;ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;並びに、ネオカルジノスタチンクロモフォア、及び関連する色素タンパク質エンジインアンチビオティッククロモフォア)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カンニノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトレビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリジン-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンなど)、エピルビシン、エソルビシン、イダンルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラルマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトムグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート、5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキセートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FUなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗アドレナリン;フロリン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファルニドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルホルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;メイタンシン及びアンサミトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲンナニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2「-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA、及びアンギジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロムトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N]に記載されている)及びドキセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えば、シスプラチン、及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼロダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;カペシタビン;並びに、これらのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体が挙げられる。腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲン、及び、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリンなどの抗アンドロゲン剤、;並びに、これらのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体もこの定義に含まれる。
【0218】
任意の態様において、本方法は、免疫調節剤を投与する追加の工程を含む。免疫調節剤は、免疫チェックポイント調節剤、好ましくはPD-1、PD-L1、及びCTLA-4の阻害剤、又は本明細書に記載の任意の他の免疫チェックポイント阻害剤から選択されるものであり得る。
【0219】
任意に、免疫チェックポイント阻害剤は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、スパルタリズマブ、カンレリズマブ、シンチリマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、ドスタリマブ、INCMGA00012、AMP-224、及びAMP-514から選択されるPD-1の阻害剤である。
【0220】
任意に、免疫チェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、KN035、CK-301、AUNP12、CA-170、及びBMS-986189から選択されるPD-L1の阻害剤である。
【0221】
免疫チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ及びトレメリムマブから選択されるCTLA-4の阻害剤であり得る。
【0222】
治療されるべき適応症
本発明は、異常な細胞機能を特徴とする疾患又は状態を治療する方法に関する。通常、そのような疾患及び状態にはがんが含まれるが、異常な細胞増殖を特徴とする他の増殖状態も含まれ得ることが理解されるであろう。
【0223】
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、細胞の制御されない分裂から生じる悪性増殖又は腫瘍を指す。「がん」という用語は、原発腫瘍及び転移性腫瘍を含み、通常、腫瘍、新生物、癌腫、肉腫、白血病、及びリンパ腫などの悪性新生物細胞の増殖によって引き起こされる任意の疾患を指す。「固形腫瘍がん」は、異常な組織塊を含むがん、例えば、肉腫、癌腫、及びリンパ腫である。本明細書で互換的に使用される「血液がん」又は「液体がん」は、体液中に存在するがん、例えば、リンパ腫及び白血病である。
【0224】
本明細書の任意の実施形態では、がんは転移性がんであり得る。
【0225】
本発明の方法に従って治療され得るがんの例としては、前新生物疾患及び新生物疾患が挙げられる。広範な例としては、乳房腫瘍、結腸直腸腫瘍、腺癌、中皮腫、膀胱腫瘍、前立腺腫瘍、生殖細胞腫瘍、肝癌/胆管腫瘍、癌腫、神経内分泌腫瘍、下垂体新生物、小20円形細胞腫瘍、扁平上皮がん、黒色腫、非定型線維黄色腫、セミノーマ、非セミノーマ、間質性レイディッヒ細胞腫瘍、セルトリ細胞腫瘍、皮膚腫瘍、腎腫瘍、精巣腫瘍、脳腫瘍、卵巣腫瘍、胃腫瘍、口腔腫瘍、膀胱腫瘍、骨腫瘍、子宮頸部腫瘍、食道腫瘍、喉頭腫瘍、肝臓腫瘍、肺腫瘍、膣腫瘍、及びウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0226】
さらに、がんは、これらに限定するものではないが、具体的には以下の組織型、すなわち、新生物、悪性;癌腫;癌腫、未分化;巨細胞癌及び紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭状癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛母腫性癌腫;移行細胞癌;乳頭状移行細胞癌;腺癌;ガストリノーマ、悪性;胆管癌;肝細胞癌;混合型肝細胞癌及び胆管癌;骨梁腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープにおける腺癌;腺癌、家族性大腸ポリポーシス;固形癌;カルチノイド腫瘍、悪性;分枝肺胞腺癌;乳頭状腺癌;色素嫌性癌腫;好酸球癌;好酸球腺癌;好塩基球癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞腺癌;乳頭腺癌及び濾胞腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;子宮内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;脂腺癌;耳垢腺癌;粘膜表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性乳管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌腫;パジェット病、乳房腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質腫瘍;悪性髄膜腫;悪性顆粒膜細胞腫瘍;及び悪性芽細胞腫;セルトリ細胞癌;悪性ライディッヒ細胞腫;悪性脂質細胞腫;悪性傍神経節腫;悪性乳房外傍神経節腫;褐色細胞腫;グロムス肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑における悪性黒色腫;上皮様細胞メラノーマ;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;悪性線維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児横紋筋肉腫;肺胞横紋筋肉腫;間質肉腫;悪性混合腫瘍;ミュラー管混合腫瘍;腎芽細胞腫;肝芽腫;癌肉腫;悪性間葉腫;悪性ブレンナー腫瘍;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚細胞腫;胚性癌腫;悪性奇形腫;悪性卵巣ストロマ;絨毛癌;悪性中腎腫;ヘマンギオ肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性血管周囲細胞腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍皮質性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽細胞腫;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫瘍;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル芽細胞性歯肉腫;悪性エナメル芽腫;エナメル芽細胞線維肉腫;悪性松果体腫;脊索腫;悪性神経膠腫;上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;線維性星細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起膠芽細胞腫;原始神経外胚葉性腫瘍;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅覚神経原性腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫;悪性顆粒状細胞腫瘍;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキンリンパ腫;側肉芽腫;悪性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫;びまん性大細胞悪性リンパ腫;濾胞性悪性リンパ腫;菌状息肉症;他の特定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;及び有毛細胞白血病であってもよい。
【0227】
特定の実施形態では、がんは腎臓癌である。本明細書で使用される場合、「腎臓癌」、「腎癌」、又は「腎細胞癌」という用語は、腎臓から生じた癌のことを指す。本明細書で使用される「腎細胞がん」又は「腎細胞癌」(RCC)という用語は、近位曲尿細管の内層に由来する癌を指す。より具体的には、RCCは、いくつかの比較的一般的な組織学的サブタイプ、すなわち、淡明細胞型腎細胞癌、乳頭状(色素性)、色素嫌性、集合管癌、及び髄様癌を包含する。淡明細胞型腎細胞癌(ccRCC)は、RCCの最も一般的なサブタイプである。特定の実施形態では、癌は転移性腎細胞癌である。
【0228】
好ましい実施形態では、がんは、CAIXの発現を特徴とするがんである。CAIXの発現を特徴とするがんは、淡明細胞型腎細胞がん、頭頸部がん、子宮頸がん、膵臓がん、非小細胞肺がん、胃食道がん、及び肝細胞がんであってもよいが、これらに限定されると解釈されるべきではない。特に好ましい実施形態では、CAIXの発現を特徴とするがんは、淡明細胞型腎はがん、任意に、転移性腎細胞がんである。そのような実施形態では、がんの治療に使用するための放射線治療薬は、CAIXに結合するための抗体、好ましくは本明細書に記載の抗体を含み、最も好ましくは、抗体はベータ放出放射性リガンドに複合体化されている。
【0229】
特定の実施形態では、がんは前立腺がんである。本明細書で使用される場合、「前立腺がん」という用語は、前立腺から生じたがんを指す。特定の実施形態では、がんは転移性前立腺がんである。特定の実施形態では、がんは、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)である。
【0230】
特定の実施形態では、がんは、PSMAの発現を特徴とし、前立腺がん、膀胱がん、精巣胚がん、神経内分泌がん、腎細胞癌、及び乳がんから選択されてもよい。特に好ましい実施形態では、PSMAの発現を特徴とするがんは、前立腺がん、任意に、転移性前立腺がん、例えば、転移性去勢抵抗性前立腺がんである。そのような実施形態では、がんの治療に使用するための放射線治療薬は、PSMAに結合するための抗体、好ましくは本明細書に記載の抗体を含み、最も好ましくは、抗体はベータ放出放射性リガンドに複合体化されている。
【0231】
任意の実施形態では、組み合わせによって治療されることになるがんは、最も好ましくは、そのがん細胞がDNA-PK、それぞれのDNA-PKAcsの触媒サブユニットを発現するがん、又は異なるように発現し、そのがん細胞がDNA-PK、それぞれのDNA-PKAcs活性を示すがんである。
【0232】
他の疾患及び状態には、様々な炎症状態が含まれる。例としては、増殖性成分を挙げることができる。具体的な例としては、ざ瘡、狭心症、関節炎、誤嚥性肺炎、疾患、膿胸、胃腸炎、炎症、腸インフルエンザ、膝、壊死性腸炎、骨盤内炎症性疾患、咽頭炎、PID、胸膜炎、喉の痛み、赤み、発赤、咽頭痛、胃インフルエンザ及び尿路感染症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎又は慢性炎症性脱髄性多発根神経炎が挙げられる。
【0233】
治療方法及び投与方法
いくつかの開示される方法では、治療(例えば、治療剤を含む)が対象に施される。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、ヒトである。
【0234】
いくつかの実施形態では、対象は、がんを有するか、又はがんを発症するリスクがある。例えば、対象は、がんと診断されている場合がある。がんは、原発性がん又は転移性がんであり得る。対象は、例えば、リンパ節浸潤を有しているか又は有していない、転移を有しているか又は有していない、ステージI、ステージII、ステージIII、又はステージIVの任意のステージのがんを有していてもよい。提供される組成物は、がんのさらなる増殖を予防又は低減し、及び/又はがんを改善(例えば、転移を予防又は軽減)し得る。いくつかの実施形態では、対象はがんを有さないが、例えば、環境曝露、1又は複数の遺伝子変異又は変異体の存在、家族歴などの1又は複数の危険因子の存在のために、がんを発症するリスクがあると判定されている。いくつかの実施形態では、対象はがんと診断されていない。
【0235】
いくつかの実施形態では、がんは固形腫瘍である。固形腫瘍がんは、乳がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、膵臓がん、頭頸部がん、前立腺がん、結腸直腸がん、肉腫、副腎皮質がん、神経内分泌がん、ユーイング肉腫、多発性骨髄腫、又は急性骨髄性白血病であってもよい。
【0236】
好ましい実施形態では、固形腫瘍がんは、CAIXの発現を特徴とする固形腫瘍がん、例えば、淡明細胞型腎細胞がん、頭頸部がん、子宮頸がん、膵臓がん、非小細胞肺がん、胃食道がん、及び肝細胞がんであってもよい。特に好ましい実施形態では、CAIXの発現を特徴とするがんは、淡明細胞型腎細胞がんである。
【0237】
さらに好ましい実施形態では、がんは、PSMAの発現を特徴とするがん、例えば、前立腺がん、膀胱がん、精巣胚がん、神経内分泌がん、腎細胞癌、及び乳がんであってもよい。特定の実施形態では、がんは転移性前立腺がんである。特定の実施形態では、がんは、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)である。
【0238】
いくつかの実施形態では、がんは非固形(例えば、液体(例えば、血液))がんである。
【0239】
本明細書で使用される薬剤(例えば、前述の複合体のいずれか)の「有効量」という用語は、臨床結果などの有益な又は所望の結果をもたらすのに十分な量であり、したがって「有効量」は、それが適用される状況によって異なる。
【0240】
本明細書で使用される場合、「組み合わせて投与される」、「併用投与」、又は「同時投与される」という用語は、2つ以上の薬剤が同時に、又は患者に対する各薬剤の効果が重複し得る間隔内で対象に投与されることを意味する。したがって、組み合わせて投与される2つ以上の薬剤を一緒に投与する必要はない。いくつかの実施形態では、それらは互いに、90日以内(例えば、80日以内、70日以内、60日以内、50日以内、40日以内、30日以内、20日以内、10日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内、又は1日以内)、28日以内(例えば、14日以内、7日以内、6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日、又は1日以内、24時間以内(例えば、12時間以内、6時間以内、5時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、又は1時間以内、あるいは約60分以内、約30分以内、約15分以内、約10分以内、約5分以内、又は約1分以内)に投与される。いくつかの実施形態では、薬剤の投与は、組み合わせ効果が達成されるように、互いに十分に近い間隔を空けてなされる。
【0241】
好ましい実施形態では、放射免疫療法剤は、DNA-PKiの投与前に投与される。好ましくは、DNA-PKiは、放射免疫療法剤から28日(例えば、14日、7日、6日、5日、4日、3日、2日、又は1日)以内、最も好ましくは放射免疫療法剤から1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、又は5日以内、特に放射免疫療法剤から1日以内に投与される。
【0242】
本明細書で使用される場合、対象に薬剤を「投与する」ことは、対象の細胞を薬剤と接触させることを含む。
【0243】
本開示は、各治療薬の量が、それ自体で治療上有効であってもよいか、又はそれ自体で治療上有効でなくてもよい、併用療法を提供する。例えば、第1の療法及び第2の療法を、障害(例えば、がん)を治療又は改善するために全体で有効な量で施すことを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、第1の療法及び第2の療法の少なくとも1つは、低有効用量で対象に施される。いくつかの実施形態では、第1の療法及び第2の療法の両方が低有効用量で施される。
【0244】
薬剤(例えば、治療剤)と組み合わせて用語として使用される場合の「低有効用量」という用語は、本発明の併用療法において治療的に有効であり、その薬剤が参照実験において単独療法として又は他の治療ガイダンスによって使用される場合に治療的に有効であると決定されている用量よりも低い薬剤の投与量を指す。
【0245】
いくつかの実施形態では、第1の療法は放射免疫複合体を含み、第2の療法はDNA-PK阻害剤(DNA-PKi)を含む。
【0246】
いくつかの実施形態では、第1の治療はDNA-PKiを含み、第2の治療は放射免疫複合体を含む。
【0247】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される治療的組み合わせは、障害及びその合併症の症状を治癒又は少なくとも部分的に停止させるのに十分な方式(例えば、投与量及びタイミング)で対象に投与される。単一の治療(「単剤療法」)の文脈では、この目的を達成するのに十分な量は、疾患又は病状に関連する少なくとも1つの症状を実質的に改善するのに十分な化合物の量である「治療有効量」として定義される。「治療有効量」は、通常、治療薬に応じて異なる。既知の治療薬の場合、関連する治療有効量は、当業者に知られているか、又は当業者が容易に決定することができる。
【0248】
例えば、がんの治療において、疾患又は状態の任意の症状を減少させる、予防する、遅延させる、抑制する、又は停止させる薬剤又は化合物が治療上有効であろう。薬剤又は化合物の治療有効量とは、疾患又は状態の治癒が要求されるものではなく、疾患又は状態の発症が遅延され、妨げられ、若しくは防止され、又は疾患若しくは状態の症状が改善され、又は疾患若しくは状態の期間が変更され、又は例えば、個体において重症度が低下し、若しくは回復が加速されるように、疾患又は状態の治療を提供するものである。例えば、治療は、がんを退行させるか、がんの増殖を停止させるか又は遅延させる場合、治療的に有効であり得る。
【0249】
これらの使用に有効な投薬レジメン(例えば、各治療薬の量、治療薬の相対的なタイミングなど)は、疾患又は状態の重症度並びに対象の体重及び全身状態によって異なり得る。例えば、当業者は、哺乳動物(例えば、ヒト)に適用される治療剤を含む特定の組成物の治療有効量を、哺乳動物の年齢、体重、及び状態の個体差を考慮して決定することができる。
【0250】
当業者は、治療有効量及び/又は最適量を経験的に決定することもできる。したがって、当業者は、低有効用量を決定することもできる。
【0251】
組成物(例えば、治療剤を含む医薬組成物)の単回投与又は複数回投与は、治療医によって選択される用量レベル及びパターンで行うことができる。用量及び投与スケジュールは、対象の疾患又は状態の重症度に基づいて決定及び調整することができ、一般に臨床医によって実施される方法又は本明細書に記載される方法に従って治療の過程をモニタリングすることができる。
【0252】
いくつかの実施形態では、組成物(放射免疫複合体を含む組成物など)は、放射線治療計画又は診断目的で投与される。放射線治療計画又は診断目的のために投与される場合、組成物は、診断有効用量及び/又は治療有効用量を決定するのに有効な量で対象に投与されてもよい。
【0253】
いくつかの実施形態では、開示される放射免疫複合体又はその組成物(例えば、医薬組成物)の第1の用量を、放射線治療計画に有効な量で投与し、続いて、本明細書に開示される複合体及び別の治療薬を含む併用療法を施す。
【0254】
開示された併用療法方法では、第1の療法及び第2の療法は、対象に順次投与又は同時投与されてもよい。例えば、第1の治療薬を含む第1の組成物及び第2の治療薬を含む第2の組成物は、対象に順次投与又は同時投与されてもよい。別法として又はこれに加えて、第1の治療剤と第2の治療剤との組み合わせを含む組成物を対象に投与してもよい。
【0255】
いくつかの実施形態では、放射免疫複合体は単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、放射免疫複合体は複数回投与される。放射免疫複合体が複数回投与される場合、各投与の用量は同じであっても異なっていてもよい。
【0256】
いくつかの実施形態では、DNA-PKiは単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、DNA-PKiは、1回より多く、例えば、2回以上、3回以上など投与される。いくつかの実施形態では、DNA-PKiは、規則的スケジュール又は半規則的スケジュールに従って複数回、例えば、おおよそ2週間に1回、1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回、又は1週間に3回超投与される。DNA-PKiが複数回投与される場合、各投与の用量は同じであっても異なっていてもよい。例えば、DNA-PKiは、初期用量で投与されてもよく、次いで、後続のDNA-PKiの用量は、初期用量より多くても少なくてもよい。
【0257】
いくつかの実施形態では、DNA-PKiの第1の用量は、放射免疫複合体の第1の用量と同時に投与される。いくつかの実施形態では、DNA-PKiの第1の服用量は、放射免疫複合体の第1の用量の前に投与される。いくつかの実施形態では、DNA-PKiの第1の服用量は、放射免疫複合体の第1の用量の後に投与される。いくつかの実施形態では、後続の用量のDNA-PKiが投与される。
【0258】
いくつかの実施形態では、放射免疫複合体(又はその組成物)及びDNA-PKis(又はその組成物)は、互いに28日以内(例えば、14日以内、7日以内、6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内、又は1日以内)に投与される。様々な実施形態では、DNA-PKiは、放射免疫複合体と同時に投与される。
【0259】
いくつかの実施形態では、放射免疫複合体(又はその組成物)及びDNA-PKis(又はその組成物)は、互いに90日以内(例えば、80日以内、70日以内、60日以内、50日以内、40日以内、30日以内、20日以内、10日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内、又は1日以内)に投与される。最も好ましくは、DNA-PKiは、放射免疫複合体から、1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、又は5日以内、特に、少なくとも1日以内に投与される。
【0260】
様々な実施形態では、DNA-PKiは、放射免疫複合体の最初の投与後に複数回投与される。例えば、DNA-PKiは、治療の過程を通して毎日投与されてもよい。例えば、DNA-PKiは、治療レジメンの期間にわたって、7日間以上、10日間以上、14日間以上、21日間、28日間以上、又はそれを超える期間、毎日投与されてもよい。
【0261】
例えば、特に好ましい治療プロトコルによれば、患者は、本明細書に記載されるように、治療計画の1日目に放射免疫療法剤を投与される。2日目には、DNA-PKi、好ましくはM3814による治療を開始し、ここで、DNA-PKiは、治療レジメンの過程において毎日投与される。治療レジメンは、初回用量の放射免疫療法の投与後、例えば、約7日間以上、約14日間以上、約21日間以上、約28日間以上、約35日間以上、約42日間以上、又はそれを超える期間の1回又は2回、またはそれ以上の後続の放射免疫療法剤の投与を含み得る。
【0262】
様々な実施形態では、治療は、血算値が正常値又はほぼ正常値への回復を可能にするため、治療サイクルの相互間にウォッシュアウト(「治療休止」)の期間を含む2回以上の治療サイクルを含み得る。そのような実施形態では、治療は、2回以上のサイクルの治療、任意に、第3サイクル又は第4サイクルを含んでいてもよく、ここで、各治療サイクルは、サイクルの初日に放射線治療薬を投与し、続いて、治療サイクルの後続の日(例えば、2日目、3日目、又は4日目に、好ましくは2日目に開始する)にDNA-PKiを投与することを含み、DNA-PKiを治療サイクルの少なくとも7日目、少なくとも14日目又は少なくとも21日目まで投与することを含む。第1の治療サイクルの終了と第2の治療サイクルの開始との間の期間(すなわち、DNA-PKi及び放射線治療薬が投与されない期間)は、7日間以上、14日間以上、21日間以上、28日間以上、35日間以上、42日間以上、又はそれを超える期間であり得る。第2の治療サイクルは、第1の治療サイクルと実質的に同じであっても同一であってもよい(例えば、第2の治療サイクルの1日目に放射線治療薬を投与し、続いてサイクルの後日にDNA-PKiを投与し、好ましくは2日目に開始し、7日間以上、14日間以上、21日間以上、又はそれを超える期間にわたって継続することを含む)。
【0263】
第2の治療サイクルは、第2の治療サイクルが、放射線治療薬の投与後により短い期間わたるDNA-PKiの投与を含むか又は放射線治療薬の投与後により長い期間にわたるDNA-PKiの投与を含み得る限りにおいて、第1の治療サイクルと異なっていてもよい。
【0264】
本発明の任意の態様では、分子標的放射線治療薬は、単剤療法応答に必要なレベル未満の用量レベルで投与される。これは、分子標的放射線治療薬とDNA-PKiとの間の相乗効果を示す。好ましくは、分子標的放射線治療薬は、単剤療法応答(すなわち、分子標的放射線治療薬のみの投与を含む治療)と比較して10%超、好ましくは20%超少ない放射能、好ましくは単剤療法応答と比較して20~50%少ない放射能の用量で投与される。好ましい実施形態では、放射免疫療法剤の投与量は、単剤療法として投与される場合、治療効果に必要な投与量の約50%以上である。
【0265】
例えば、放射免疫療法剤は、約500MBq/m~約3000MBq/m、好ましくは約800MBq/m~約2000MBq/m、約1000MBq/m~約1800MBq/m、より好ましくは約1000MBq/m~約1500MBq/m、最も好ましくは約1100MBq/m~約1500MBq/mのオーダーの放射線の線量を対象に供給するように投与することができ、特に放射線はベータ放出放射性核種(177ルテチウム又は188レニウムなど)の形で供給される。
【0266】
別の例では、放射免疫療法剤は、約10mCi/m~約80mCi/m、約20mCi/m~約60mCi/m、約25mCi/m~約70mCi/m、約20mCi/m~約50mCi/m、好ましくは約25mCi/m~約40mCi/mのオーダーの放射線の線量を供給するように投与することができ、特に放射線はベータ放出放射性核種(177ルテチウム又は188レニウムなど)の形で供給される。
【0267】
当業者は、標準的な1.7m成人個体について上記放射線量をMBq/mに変換する方法に精通しているであろう。例えば、いくつかの例では、放射免疫療法剤は、1887MBq(標準的な1.7m成人個体における1110MBq/m用量に相当)、又は2516MBq(標準的な1.7m成人個体における1480MBq/m用量に相当)、又は3145MBq(標準的な1.7m成人個体における1850MBq/m用量に相当)で投与されるであろう。
【0268】
そのような実施形態では、DNA-PKiは、所望により毎日、0.02mg~100mg/kg体重、好ましくは0.02mg~50mg/kg体重の用量で投与されてもよい。1日用量は、具体的には、0.02mg~100mg/kg体重であってもよい。DNA-Pkiは、50mg~400mg、より好ましくは100mg~200mgの用量で1日1回投与されてもよい。あるいは、DNA-PKiは、150mg~400mgの用量で1日2回(b.i.d)投与されてもよい。
【0269】
DNA-PKiは、1投与単位当たり0.01mg~1g、好ましくは1単位あたり1mg~700mg、特に好ましくは1単位あたり5mg~200mg、例えば、1単位あたり50mg又は100mgの用量で投与されてもよい。
【0270】
特に好ましい実施形態では、DNA-PKiはM3814であり、投薬レジメンは約150mg~600mg、好ましくは200mg~500mg、より好ましくは300mg~400mgであり、この用量は、毎日、1日2回投与される。
【0271】
代替的に又は最も好ましくは、分子標的放射線治療薬の前記用量に加えて、DNA-PKiは、最大耐用量レベルを下回る用量レベル、例えば、最大耐用量レベルの90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、60%以下、65%以下、60%以下、若しくは55%以下、及び/又は併用の最大耐用量レベルの10%以上、又は20%以上、30%以上、40%以上、若しくは50%以上の用量で投与される。
【0272】
特に好ましい実施形態では、DNA-PKiはM3814であり、投薬レジメンは、以下の範囲、すなわち、25mg~600mg、50mg~600mg、100mg~600mg、150mg~600mg、175mg~500mg、200mg~500mg、300mg~400mg、50mg~300mg、75mg~275mg、100mg~250mg、又はそれらの組み合わせのうちの1つの範囲内である。特に好ましい実施形態では、前述の用量は1日1回投与されるが、有利には1日2回(b.i.d)投与されてもよい。M3814は、例えば、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、250mg、275mg又は300mg、350mg、又は400mgの用量で、好ましくは1日1回で投与されてもよいが、好適にはまた、b.i.dで投与されてもよく、300mg以上の用量については1日2回投与が最も好ましい。
【0273】
本発明の1つの利点、及び放射線療法を送達するためのEBRTアプローチとの違いは、放射線治療薬を治療プロトコルで毎日欠かさずに投与する必要がないことである。したがって、本発明の任意の実施形態では、放射線治療薬は、約1週間に1回、約2週間に1回、約3週間に1回、約4週間に1回の間隔、又はより長い投与間隔で投与されてもよい。好ましい実施形態では、放射線治療薬は、7日間以上、10日間以上、14日間以上、21日間以上、若しくは28日間以上空けて2回投与され、又は、7日間以上、10日間以上、14日間以上、21日間以上、若しくは28日間以上空けて3回投与される。追加の投与が必要とされる場合があることが理解されるであろう。特定の実施形態では、放射線治療薬の単回投与だけで済む場合がある。
【0274】
1又は複数の薬剤(例えば、放射免疫複合体及び/又はDNA-PKi)を含む医薬組成物は、開示された方法及びシステムに従って使用するために様々な薬物送達システムに製剤化することができる。適切な製剤化のために、1又は複数の生理学的に許容される賦形剤又は担体を組成物に含めることもできる。適切な製剤の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, PA, 17th ed., 1985に見られる。薬物送達のための方法の簡単な総説については、例えば、Langer (Science 249:1527-1533, 1990)を参照されたい。
【0275】
経口投与に適したM3814を含む組成物は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2018/178134号に記載されている。
【0276】
キット
本発明はさらに、本明細書に記載の治療方法で使用するための1又は複数の成分を含むキットを提供する。
【0277】
好ましくは、キットは、本明細書に記載されるような過形成性疾患又は新生物性疾患の治療における同時使用、別個使用、又は順次使用のための分子標的化放射線治療薬及びDNA-PK阻害剤を含む。
【0278】
キットは、2つの成分の混合物が存在する容器(例えば、ボトル)を含んでいてもよく、又はキットは、各々が2つの成分のうちの1つを含む2つの別個の容器を含んでいてもよい。
【0279】
配列情報
【表1-1】


【表1-2】


【表1-3】


【表1-4】


【表1-5】


【表1-6】
【0280】
【表2-1】


【表2-2】


【表2-3】


【表2-4】


【表2-5】


【表2-6】


【表2-7】


【表2-8】


【表2-9】


【表2-10】


【表2-11】


【表2-12】


【表2-13】


【表2-14】


【表2-15】
【実施例
【0281】
実施例1:転移性腎細胞癌異種移植モデルにおける177Lu-抗CAIX抗体+DNA-PKiのインビボ有効性
確立されたSK-RC-52異種移植片(約100mm)を有する雌BALB/cヌードマウスをこの試験に使用した。マウスを以下の3つの群のうちの1つに分割した。
・ビヒクル対照(経口)n=4
177Lu-抗CAIX抗体のみ(本明細書に記載のDOTA-GmAb、162μCi/6MBq)n=4
・経口投与した50mg/kgのM3814 DNA-PKi、及び177Lu-抗CAIX抗体(162μCi/6MBq)n=4
【0282】
動物を以下のように処置した。
・-14日目:60匹の雌マウスに、マトリゲル中のRK-RC-52転移性RCC細胞を注射
・0日目:177Lu-抗CAIX抗体を静脈内投与、単回投与、1回のみ
・1~7日目:ビヒクル/M3814を50mg/kgで毎日経口投与
【0283】
3日目及び6日目にSPECT/MRIイメージングを行って体内分布を調べた。
【0284】
腫瘍成長曲線をマウスにおいて最大6ヶ月間又は倫理的限界までモニタリングした。
【0285】
図1は、前記マウスにおける177Lu-抗CAIX抗体のSPECTイメージングの結果を示す。177Lu-抗CAIX抗体の単回投与は、長期間にわたって細胞傷害性放射線を腫瘍に特異的に送達する。
【0286】
図2は、143日間超にわたる腫瘍体積(mm)及び腫瘍体積の変化率を示す。177Lu-抗CAIX抗体及びM3814で処置したマウスは、抗体単独で処置したマウスと比較して、143日後に有意に小さい腫瘍サイズを有していた。
【0287】
【表3】
【0288】
実施例2:PSMAhigh前立腺がん異種移植モデルにおける177Lu-抗PSMA抗体+DNA-PKiのインビボ有効性
確立されたLNCaP異種移植片(約200mm)を有する雄BALB/cヌードマウス(5~6週齢)をこの試験に使用した。マウスを以下の3つの群のうちの1つに分割した。
・ビヒクル対照(経口)n=3
177Lu-抗PSMA抗体のみ(本明細書に記載のDOTA-HuJ501、162μCi/6MBq)n=4
・経口投与した50mg/kgのM3814 DNA-PKi及び177Lu-抗PSMA抗体(162μCi/6MBq)n=4
【0289】
動物を以下のように処置した。
・-20日目:雄マウスに5×10個のLNCaP細胞を注射
・0日目:177Lu-抗PSMA抗体を静脈内投与、単回投与、1回のみ
・1~14日目:ビヒクル/M3814を50mg/kgで毎日経口投与
【0290】
3日目及び7日目にSPECT/MRIイメージングを行って体内分布を調べた。
【0291】
腫瘍成長曲線をマウスにおいて最大6ヶ月間又は倫理的限界までモニタリングした。
【0292】
図3は、前記マウスにおける177Lu-抗PSMA抗体のSPECTイメージングの結果を示す。177Lu-抗PSMA抗体及びM3814で処置したマウスは、抗体単独で治療したマウスと比較して、治療開始から112日後に有意に小さい腫瘍を有していた。
【0293】
図4は、110日間超にわたる腫瘍体積(mm)及び腫瘍体積の変化率を示す。
【0294】
【表4】
【0295】
実施例3:177Lu-ジレンツキシマブ及びペポセルチブ(M3814)とCAIX発現腎腫瘍との組み合わせの臨床試験
目的
主要目的:
・ペポセルチブと組み合わせた177Lu-ジレンツキシマブの最大耐用量(MTD)を求める
・治療下で発生した有害事象(TEAE):MedDRA(Medical Dictionary for Regulatory Activities)によるタイプ、頻度、NCI CTCAE V5.0による重症度、重篤度、及び試験治療の関係が評価されるであろう。臨床検査異常は、NCI CTCAE v.5.0Eventsに従って評価されるであろう。
【0296】
副次目的:
・RECISTv1.1による、併用ペポセルチブにおける177Lu-ジレンツキシマブの全奏効率
・無増悪生存期間(PFS)を推定する
・全生存期間(OS)を推定する
・応答持続時間を推定する
・併用療法の安全性及び忍容性を評価する
・EORTC QLQ-C30アンケートを使用して決定される生活の質
【0297】
探索的目的:
・PFSとCAIX発現との相関
・OSとCAIX発現との相関
・ジルコニウム-89(89Zr)-ジレンツキシマブを使用してPET/CTにより放射線応答を評価する。
・全身平面イメージング及びSPECTを使用して、投与後の177Lu標識ジレンツキシマブの分布、病変取り込み、及び線量測定評価を評価し、結果を患者転帰(例えば、応答、PFS)と相関させる。
【0298】
方法:
第I相の試験デザイン:
再発性/難治性CAIX発現腎腫瘍を有する患者においてペポセルチブと組み合わせて静脈内投与される177Lu-ジレンツキシマブの漸増放射性用量レベルを評価するために、非盲検、単一群、無作為化、並行群、多施設用量設定試験を実施する。
【0299】
このプロトコルは、3+3デザインを使用した安全性導入期から開始して、1日目から、PETイメージングによって判定される増悪まで、最大400mgの1日2回投与のペポセルチブと組み合わせた177Lu標識ジレンツキシマブの最大耐用量(MTD)を確立する。177Lu標識ジレンツキシマブの初回開始投与量は1110MBq/mであり、これは以前の研究で確立された単剤用量の50%未満であり、以下のスキーマに示すように進行する。MTDが確立されると、Simonの2段階最適デザインが開始する。
【0300】
10人の患者が第1期に登録され、応答が観察されない場合、試験は終了する。安全導入期にMTDで治療された患者は、第II相に含まれる。安全導入と第II相の合計患者数は60人である。
【表5】
【0301】
あるいは、177Lu標識ジレンツキシマブ及びペポセルチブを以下の用量に従って投与し、この場合、177Lu標識ジレンツキシマブを3週間間隔で3回投与する。
【表6】
【0302】
すべての患者は、標準的なケア撮像として、FDGPETスキャン、CT、又はMRIを受ける。これらは、疾患の程度の評価に使用される。
【0303】
すべての患者は、177Lu-ジレンツキシマブの投与の度にその前に89Zr-ジレンツキシマブPET/CTスキャンを受け、177Lu-ジレンツキシマブの各投与の後に177Lu全身(WB)平面スキャン及びSPECT/CTスキャンが行われる。試験に適格であるためには、ベースラインで89Zr-ジレンツキシマブPET/CTが陽性(少なくとも1つの転移性病変内の89Zr取り込みを示す)でなければならない。ただし、2回目及び3回目の177Lu-ジレンツキシマブの投与より前には、89Zr-ジレンツキシマブPET/CT陽性は必要とされない。MTDで処置され、追加のイメージングに同意した最初の10人の患者は、177Lu-ジレンツキシマブの最初の用量投与後、3回の全身平面スキャン(0~4時間、48~72時間±6時間、及び96~144時間±6時間)、及び48~72時間(±6時間)にSPECT/CTスキャンを受ける。
【0304】
最初の10人の患者における177Lu-ジレンツキシマブの追加の投与(2回目及び3回目)、及び残りの患者に対する177Lu-ジレンツキシマブの全ての投与について、177Lu-ジレンツキシマブの各用量投与後48~72時間(+/-6時間)に1回のWB平面スキャン及び1回のSPECT/CTを実施する。これを以下の表1にまとめる。
【表7】
【0305】
提案された投与スケジュール:
・1日目:1777Lu-ジレンツキシマブ
・2日目~15日目:ペポセルチブ
・16日目~21日目:処置休止
・22日目:177Lu-ジレンツキシマブ
・23日目~37日目:ペポセルチブ
・38日目~45日目:処置休止
・46日目:177Lu-ジレンツキシマブ
・47日目~61日目:ペポセルチブ
【0306】
試験対象患者基準:
スクリーニング時に以下の基準のすべてを満たす患者が試験に参加する資格がある。
1.既に承認されているすべての標準治療で治療された組織学的に確認された腎がん。
2.ジルコニウム-89(89Zr)-ジレンツキシマブPET/CTでRECIST1.1によって定義された腎組織における少なくとも1つの評価可能なCAIX陽性転移病変。
3.年齢18歳以上。
4.カルノフスキーパフォーマンスステータスが70以上。
5.スクリーニング時に以下の十分な臓器機能を有する。
・骨髄:白血球3,000/mL以上、絶対好中球数1500/mL以上、血小板100,000/mL以上、ヘモグロビン9g/dL以上。
・AST、ALT、及びアルカリホスファターゼが2.5×ULN以下、ただし、以下の例外を除く:
a)肝転移が実証されている患者:AST及び/又はALTが5×ULN以下
b)肝臓又は骨転移が実証されている患者:アルカリホスファターゼが5
×ULN以下
・血清ビリルビンが2×ULN以下(既知のギルバート病を患い、血清ビリルビン値が3×ULN以下である患者は登録され得る)
・INR及びaPTTが1.5×ULN以下(治療的抗凝固療法を受けていない患者にのみ適用し、治療的抗凝固療法を受けている患者は継続して服用している必要がある)
6.試験を理解する能力があり、すべてのプロトコル要件を遵守することができ、またその意思がある。
7.経口薬を受けて維持する能力。
8.患者の接触及び一般公衆を保護するために治療機関によって適用される放射線防護ガイドライン(入院及び隔離を含む)に従う。
9.胎児への放射線被曝に関連する潜在的な問題を回避するために、妊娠を防ぐための十分な予防措置を講じることに同意する(Clinical Trials Facilitation Group, 2020: Recommendations related to contraception and pregnancy testing in clinical trials Version 1.1, CTFG, 2020を参照されたい)。
【0307】
除外基準:
以下の基準のいずれかを満たす患者は、試験に参加する資格がない。177Lu-ジレンツキシマブによる過去の治療、ジレンツキシマブ又はDOTAリンカーに対する既知の過敏症;過去5年以内のマウス抗体又はキメラ抗体への曝露;CYP3A又はCYP2C19の強力な阻害剤又は誘導剤であることが知られている医薬品/薬草サプリメントの投与;10半減期が以内であるの任意の放射性核種の過去の投与;自己免疫併存症に関して過去2年間に1日当たり10mg超のプレドニゾンであるステロイドを必要とする病歴;登録前2週間以内の抗がん療法;キメラ抗体若しくはヒト化抗体又は融合タンパク質に対する重度のアレルギー反応、アナフィラキシー反応、又は他の過敏反応の病歴;HIV感染症、進行中又は慢性のB型肝炎感染症又はC型肝炎感染症の病歴;ニューヨーク心臓病学会心疾患(クラスII以上)、過去3ヶ月以内の心筋梗塞、不安定不整脈、不安定狭心症、又は50%未満のEF、既知の冠動脈疾患、上記の基準を満たさないうっ血性心不全などの重大な心血管疾患は、必要に応じて心臓専門医に相談して、治療医師の意見で最適化された安定した医療レジメンでなければならない;サイクル1の1日目の前の6ヶ月以内の脳卒中又は一過性虚血発作の病歴;サイクル1の1日目の前の6ヶ月以内の重大な血管疾患(例えば、外科的修復を必要とする大動脈瘤又は最近の末梢動脈血栓症);(治療的抗凝固療法の非存在下での)出血性素因又は重大な凝固障害の所見;胃腸閉塞の臨床徴候若しくは症状、又は日常的な非経口的水分補給、非経口的栄養、若しくは経管栄養の必要性;重篤な難治癒性又は離開性の創傷、進行中の潰瘍、又は未治療の骨折;登録前4週間以内の大手術(生検又はライン留置は登録前24時間まで行うことができる);妊娠中及び授乳中の女性。
【0308】
治験薬、投与量、及び投与様式:
DOTAリンカーを介して放射性金属ルテウム-177を放出する陽電子で放射標識された、CAIX(炭酸脱水酵素9)抗原に特異的なキメラモノクローナル抗体(INN名:ジレンツキシマブ(GTX)、別名:cG250、TLX250)である、177Lu-TLX250。
【0309】
処置期間:
およそ9週間又はおよそ36週間。
【0310】
患者の試験参加期間:
患者は、最大36週間又は最大58週間、試験に参加すると予想される。
【0311】
併用療法、投与量、及び投与様式:
該当なし。支持療法は許容される。
【0312】
実施例4:転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)を発現する前立腺特異的膜抗原(PSMA)を有する患者における177Lu-ロソパタマブとペポセルチブとの組み合わせの臨床試験
目的
主要目的
第I相:
・ペポセルチブと組み合わせた177Lu-ロソパタマブ(177Lu-J591)の最大耐用量(MTD)を求めること
・治療下緊急有害事象の発生率
第II相:
・ペポセルチブと組み合わせた177Lu-ロソパタマブの客観的奏効率
【0313】
副次的目的:
・PSAレベル、腫瘍フリー循環DNA腫瘍(ctDNA)の変化、アルカリホスファターゼ(ALP)、CD4/CD8サブセット分析、及び乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルによって示される生化学的応答
・生物学的無増悪生存期間
・X線画像による無増悪生存期間
・全生存期間
・RECIST基準によって定義される最良全奏効率(BORR)
・安全性プロファイル
【0314】
方法:
第I相の試験デザイン
これは、PSMAを発現するmCRPCを有する再発性/難治性患者においてペポセルチブと組み合わせて静脈内投与される177Lu-ロソパタマブの漸増放射性用量レベルを評価するための非盲検、単一群、無作為化、並行群、多施設用量設定試験である。177Lu-ロソパタマブは、14日間空けて2回用量として投与される。あるいは、177Lu-ロソパタマブは、6週間間隔で2回用量で投与してもよい。
【0315】
患者は、以下に定義される用量レベルで3+3試験デザインに従ってコホートで治療される。
【0316】
ペポセルチブを、1日目からPETイメージングによって判定される増悪まで最大400mgを、1日2回、毎日投与する。
【0317】
400mg、1日2回のペポセルチブの用量は、用量制限毒性がない限り同じ量に維持される。
【0318】
初回投与量での用量制限毒性の場合、177Lu-ロソパタマブ及びペポセルチブの用量の漸減を行ってもよい。
【表8】
【0319】
あるいは、投与は以下の通りであり得る。
【表9】
【0320】
次の用量レベルに移る前に、安全性審査委員会は、最初のサイクルについての現在の用量レベルから得られた安全性データを審査する。
【0321】
第2相の試験デザイン:
32人の患者を、この試験の第1相コンポーネントで決定された推奨投与量の177Lu-ロソパタマブを推奨投与量のペポセルチブと共に用いて増悪するまで治療する。
【0322】
(計画された)患者数:
第1相:用量設定:推定12~18人の患者
患者は、少なくとも4つの用量漸増コホート及び任意の用量漸減コホートを用いて、3+3試験デザインに従ってコホートで治療される。
【0323】
第2相:有効性の予備的判定:32名の患者
患者は、試験の第1相コンポーネントで決定された推奨用量で177Lu-ロソパタマブ及びペポセルチブを投与される。
【0324】
提案された投与スケジュール:
・1日目:177Lu-ロソパタマブ
・2日目~22日目:ペポセルチブ
・23日目~60日目:治療休止
・61日目:177Lu-ロソパタマブ
・62日目~82日目:ペポセルチブ
【0325】
試験対象患者基準:
スクリーニング時に以下の基準のすべてを満たす患者が試験に参加する資格がある。
1.再発した/すべての標準治療に対して難治性である、組織学的に確認されたmCRPC。
2.Ga-PSMAを用いたPETイメージングによる画像化によって定義されるPSMA陽性。
3.年齢18歳以上。
4.カルノフスキーパフォーマンスステータスが60以上。
5.スクリーニング時に以下の十分な臓器機能を有する。
・骨髄:白血球3,000/mL以上、絶対好中球数1500/mL以上、血小板100,000以上/mL、ヘモグロビン9g/dL以上。
・肝機能:総ビリルビンが1.5×正常値上限(ULN)以下。既知のギルバート症候群患者については、3×ULN以下が許容される。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)又はアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が2.5×ULN以下。
・腎機能血清/血漿クレアチニンが1.5×ULN以下、又はクレアチニンクリアランスが50mL/分以上。
6.試験を理解する能力があり、すべてのプロトコル要件を遵守することができ、またその意思がある。
7.試験を理解する能力があり、すべてのプロトコル要件を遵守することができ、またその意思がある。
8.経口薬を受けて維持する能力を有する。
9.患者の接触及び一般公衆を保護するために治療機関によって適用される放射線防護ガイドライン(入院及び隔離を含む)に従う。
10.胎児への放射線被曝に関連する潜在的な問題を回避するために、パートナーの妊娠を防ぐための十分な予防措置を講じることに同意する(Clinical Trials Facilitation Group, 2020: Recommendations related to contraception and pregnancy testing in clinical trials Version 1.1, CTFG, 2020を参照されたい)。
【0326】
除外基準:
以下の基準のいずれかを満たす患者は、試験に参加する資格がない。MRIイメージング又はPETイメージングを受けることができない;177ルテチウムベースの過去の治療(外部放射線は許容される);CYP3A又はCYP2C19の強力な阻害剤又は誘導剤であることが知られている医薬品/薬草サプリメントの投与;全身性コルチコイド治療下で悪化する可能性がある遅延型過敏症(DTH)依存性慢性感染症(例えば、結核、全身性真菌感染症、又は全身性寄生虫感染症)の病歴又は所見;試験薬中の任意の非薬効成分又は任意の他の静脈内投与されたヒトタンパク質/ペプチド/抗体に対する既知のアレルギー歴;カテーテル挿入又は侵襲的治療を妨げる止血学的状態;45mL/分未満のクレアチニンクリアランス又は1.5ULN超の血清クレアチニンによって示される慢性的な腎機能障害;試験者の意見において、患者が試験に参加することを望ましくないものとする、又はプロトコルの遵守を危うくする可能性がある任意の重大な合併症;進行中の大うつ病エピソードの医学的に記録された病歴、双極性障害(I型はII型)、強迫性障害、統合失調症、自殺未遂若しくは念慮の病歴、又は殺人念慮の病歴(例えば、自己又は他者に害を及ぼすリスク)、又は進行中の重度の人格障害を有する患者;試験治療の投与の3週間以内の大手術(腹部/心臓/胸部手術など)を含む大外傷;妊娠又は授乳;高用量コルチコステロイド又は他の免疫抑制薬の長期投与の必要性;対象は、化学放射線療法の開始前の7日間に、コルチコステロイドを休止したか、又はデキサメタゾン(又は同等物)を4mg/日以下の安定用量若しくは減量用量で服用した必要がある。急性有害反応を治療又は予防するためのコルチコステロイドの限定的又は随時使用は、除外基準とは見なされない、併用抗レトロウイルス療法中のHIV陽性参加者は、バビツキシマブとの薬物動態学的相互作用の可能性があるため不適格である。さらに、これらの参加者は、骨髄抑制療法で治療された場合、致死的な感染症のリスクが高い。指摘される場合には、併用抗レトロウイルス療法を受けている参加者において適切な試験が行われる。試験者の意見では、患者を過度のリスクにさらすか、又は研究を妨害するであろう、進行中の制御されていない感染又は他の重篤な併発疾患の存在;患者が、2年以上の間、重篤な非治癒性の創傷、潰瘍、又は骨折の介入を伴わずに疾患を発症していない場合を除く、同時性悪性腫瘍;試験薬以外の他の抗がん剤治療又は薬剤の同時使用の必要性;支持療法は許容される;治療の前4週間以内の任意の直近の生ワクチン接種、又は試験中にワクチン接種を受ける計画。
【0327】
処置期間:
約36週間。
【0328】
患者の試験参加期間:
患者は最大58週間試験に参加すると予想される。
【0329】
併用療法、投与量、及び投与様式:
該当なし。支持療法は許容される。
【0330】
評価基準:
第1相の主要エンドポイント:
・ペポセルチブと組み合わせた177Lu-ロソパタマブの最大耐用量(MTD)を求めること
・治療下緊急有害事象(TEAE):MedDRA(Medical Dictionary for Regulatory Activities)によるタイプ、頻度、NCI CTCAE V5.0による重症度、重篤度、及び試験治療の関係が評価される。臨床検査異常は、NCI CTCAE v.5.0Eventsに従って評価される。
【0331】
第1相の副次エンドポイント
・全身生体内分布及び線量測定(安全線量測定)
・識別可能な臓器での滞留時間(MBq*h)
・臓器吸収線量及び全身吸収線量(μGy/MBq)
・全身投与後の177Lu-ロソパタマブの腫瘍線量測定(治療線量測定)
・Cmax(腫瘍中の最大活性濃度、Bq/cm
・tmax(腫瘍中の最大活性濃度の時点)
・腫瘍吸収線量(μGy/MBq)
・腎臓、肝臓、肺、脾臓、骨髄/赤色骨髄、消化管への吸収放射線量(投与された177Lu-ロソパタマブのGy/MBqとして表される)、及びARPANSAによって定義される許容以下の安全限界(放射線リスク評価を参照されたい)。
【0332】
第2相の主要エンドポイント:
・RECISTによって定義される全奏効率
【0333】
第2相の副次エンドポイント:
・PSAレベル、腫瘍フリー循環DNA腫瘍(ctDNA)の変化、アルカリホスファターゼ(ALP)、CD4/CD8サブセット分析、及び乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルによって示される生化学的応答
・生物学的無増悪生存期間
・X線画像による無増悪生存期間
・全生存期間
・RECIST基準によって定義される最良全奏効率(BORR)
・安全性プロファイル
【0334】
実施例5:177Lu-ジレンツキシマブ及びペポセルチブ(M3814)とCAIX発現転移性又は切除不能なccRCCとの組み合わせの臨床試験
方法:
すべての患者は、177Lu-ジレンツキシマブの各投与の前に、89Zr-ジレンツキシマブPET/CTスキャンを受ける。この試験に適格であるためには、ベースライン89Zr-TLX250CDx PET/CTは陽性でなければならず、すなわち、全病変面積又は全病変体積の75%以上で89Zr-ジレンツキシマブの取り込みを示し、強度は正常肝臓よりも有意に大きい(すなわち、標準化取り込み値[SUV]maxが正常肝臓のSUVの1.5倍以上である)必要がある。
【0335】
177Lu-ジレンツキシマブ及びペポセルチブによる再治療(すなわち、サイクル2及びサイクル3、又は応答の場合はそれ以降)に適格な患者については、再投与前10日以内に陽性89Zr-ジレンツキシマブPET/CTスキャンも取得する必要がある。患者は、RECIST1.1基準に従って腫瘍評価及び評価を受ける。胸部、腹部、及び骨盤の造影増強CT及び/又はMRIは、スクリーニング中(サイクル1の1日目の前の4週間以内)、その後、最初の6ヶ月間は8週間ごと、その後の6ヶ月間は12週間ごとに実施される。1年目が経過した後、患者を6ヶ月ごとにスキャンする必要がある。これらの時点で、患者はさらに臨床的に必要とされるFDG-PETを受ける。
【0336】
疾患の悪化以外の理由で試験治療を中断している患者は、疾患の悪化、新しい抗がん療法の開始、又は追跡不能になるまで、この評価スケジュールに従う必要がある。
【0337】
パート1は、177Lu-ジレンツキシマブの3つの異なる活性と3つの異なる用量レベルのペポセルチブとの組み合わせを評価する。CAIX陽性腎がんを有する患者は、2~4人の患者(開始用量レベルの3人の患者)のコホートの所与の用量レベルに登録される。初期用量レベルでは、患者は、1887MBqの活性(標準的な1.7m成人個体における1110MBq/m用量に相当する)の177Lu-ジレンツキシマブを投与される。
【0338】
サイクル1~3は、150mg、1日2回(D4~D21)の用量のペポセルチブとの組み合わせである。治療サイクルは84日間の固定期間を有する。患者は、最大3回の投与にわたって、又は臨床的に有意な増悪若しくは許容できない毒性に至るまで治療される。サイクル2及びサイクル3における177Lu-ジレンツキシマブの用量は、前のサイクルの活性の75%で与えられる。奏効患者は、サイクル3以降、84日ごとに治療を受けることができる。
【0339】
第I相の試験デザイン:
177Lu-ジレンツキシマブは、以下の用量レベル/活性で投与される。
【表10】
【0340】
ペポセルチブを以下の用量レベルで投与する。
【表11】
【0341】
漸増期の開始時に、患者は用量レベルA2、すなわち、150mg、1日2回のペポセルチブと組み合わせた1887MBqを投与される。
【0342】
各用量レベルが完了した後、SRCは、PO-BLRM出力のサポートにより、試験薬物のうちのどれが次の用量レベルに対して不変であるか、漸増するか、又は漸減するかを決定する。両方の試験薬の同時漸増は許容されない。
【0343】
安全性データ及び/又は有効性データに応じて、SRCは、追加の用量スケジュールを試験すること、例えば、ペポセルチブの開始を7日目まで遅らせること、又はペポセルチブ投与期間を短縮することを推奨し得る。
【0344】
患者治療、疾患の悪化、並びに選択基準及び排除基準の評価は、実施例3と同様である。
【0345】
提案された投与スケジュール(サイクルは84日間の期間に固定される)
サイクル1、サイクル2、及びサイクル3:
・-28日目~-1日目:177Lu-ジレンツキシマブイメージング+CT/MRI+/-FDG-PET
・1日目:177Lu-ジレンツキシマブ注射
・4日目~21日目:ペポセルチブ PO、1日2回
・22日目~84日目:治療休止
【0346】
治験薬、投与量及び投与様式:
DOTAリンカーを介して放射性金属ルテウム-177を放出する陽電子で放射標識された、CAIX(炭酸脱水酵素9)抗原に特異的なキメラモノクローナル抗体(INN名:ジレンツキシマブ(GTX)、別名:cG250、TLX250)である、177Lu-TLX250(177Lu-DOTA-ジレンツキシマブ)。
【0347】
10mL中に1700~4080MBqの177Lu-TLX250を含有し、これは、177Lu-TLX250の提案された単回臨床用量を2405MBq/mまで引き上げるのに十分であり、投与時の総抗体質量用量は10mgである。
【0348】
非放射性部分は、10mgの総抗体用量を有する免疫複合体DOTA-ジレンツキシマブである(すなわち、非複合体化ジレンツキシマブは存在しないであろう)。177Lu-TLX250(177Lu-DOTA-ジレンツキシマブ)は、低速IVプッシュによるIV投与を意図している。最終的な177Lu-ジレンツキシマブ製品は、10mL中に1700~4080MBqの177Lu-ジレンツキシマブを含有し、これは、177Lu-ジレンツキシマブの患者用量を2405MBq/mまで引き上げるのに十分であり、投与時の総抗体質量用量は10mgである。注入物は、高い放射化学的純度(90%以上)を有し、10%未満の177Lu及び177Lu-DOTAの両方を含む。
【0349】
意図された投与スケジュールは、84日毎(サイクル1~3の1日目)に投与される最大3回の反復投与として計画され、その後の投与は先の投与量の75%である。この投与レジメンは、MTDが2405MBq/mであると決定された先の臨床試験に基づいており、先の投与量の75%での後続の投与は忍容性が高かった。合計で最大で3回分が投与されることが意図されているが、投与相互間の間隔が4週間を超えるので、3回分の投与のそれぞれは単回用量投与と考えることができる。
【0350】
DOTA-ジレンツキシマブに関連する化学毒性の蓄積は、12~14週間の間隔を空けた投与からは予想することができない。
【0351】
化学名(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)-メタノールを有するペポセルチブ(M3814)は、固形腫瘍及び血液悪性腫瘍における重要なDNA損傷修復機構を阻害することによって腫瘍細胞増殖及び生存を標的化する、DNA-PKの強力且つ選択的な小分子アデノシン三リン酸競合阻害剤である。この臨床試験のために、50mgの原薬を含有するペポセルティブフィルム被覆錠剤が利用可能である。ペポセルティブフィルム被覆錠剤は、経口投与のための製剤を表す。
【0352】
89Zr-ジレンツキシマブは治験薬であり、すぐに注入できる溶液として供給される。スクリーニング中、89Zr-ジレンツキシマブの診断的投与とそれに続く89Zr-ジレンツキシマブの4~7日後のPET CTスキャンを含む、非治療的評価を試験に含めることが義務付けられる。89Zr-ジレンツキシマブは、GTXのリジン残基に結合して、89Zr-DFOTFP-GTXを生じる陽電子放出放射性金属ジルコニウム-89(NSuc-DFO-TFPester(DFO-TFP)を介した89Zr)で放射標識された、CAIX(炭酸脱水酵素9)抗原に対する特異性を有するキメラモノクローナル抗体(INN名:ジレンツキシマブ(GTX)、別名:cG250、TLX250)である。
【0353】
10mgのジレンツキシマブの質量用量を含有する37MBq(±10%)89Zr-TLX250の単回投与を、最低3分間にわたって、ゆっくりとした静脈内(IV)投与によって投与する。投与前後に安全性評価を行う。89Zr-ジレンツキシマブは、単回静脈内使用のために公称投与量強度37MBq(±10%)で静脈内投与するための溶液としてガラスバイアルの形で調製される。選択された用量レベルは、第I相試験の先の安全性、生体内分布、及び線量測定の所見に基づく。
【0354】
89Zr-ジレンツキシマブ製剤は、「すぐに使用できる」形で製造される。投与前の食事制限は不要である。全身PET/CTスキャン(頭蓋底から大腿中央まで)は、89Zrジレンツキシマブの投与の4~7日後の単一時点で、6~8床位置を使用し、低用量CTを使用して、1床位置当たり5~10分の取得時間で取得する。89Zr-ジレンツキシマブ標準取り込み値(SUV)を各腫瘍病変について求める。ベースライン及び後続の177Lu-ジレンツキシマブ投与前(例えば、およそC2D1及びC3D1において)にスキャンを実施する。
【0355】
処置期間
約7ヶ月追跡調査は、投与完了後約6ヶ月となる。
【0356】
本明細書で開示及び定義される本発明は、本文又は図面から言及され又は明らかな個々の特徴の2つ以上のすべての代替的な組み合わせに及ぶことが理解されるであろう。これらの異なる組み合わせはすべて、本発明の様々な代替態様を構成する。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4-1】
図4-2】
【配列表】
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【国際調査報告】