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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240822BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20240822BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240822BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240822BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240822BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20240822BHJP
   C08K 5/01 20060101ALI20240822BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240822BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L33/04
C08L75/04
C08L83/04
C08L63/00 C
C08K5/09
C08K5/01
C08K3/013
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510373
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 KR2022015189
(87)【国際公開番号】W WO2023059153
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0134138
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0128215
(32)【優先日】2022-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン・ミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ホン・チャン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ミ・ジュン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AE042
4J002BG021
4J002CD001
4J002CH022
4J002CK021
4J002CP031
4J002CP191
4J002DE077
4J002DE087
4J002DE097
4J002DE107
4J002DE147
4J002DF017
4J002DJ007
4J002EA016
4J002EC056
4J002EE036
4J002EF036
4J002EF056
4J002FD017
4J002FD202
4J002FD206
4J002GQ00
(57)【要約】
本出願は、硬化性組成物およびその用途に関する。本出願の硬化性組成物は、駆動または維持過程で熱を発生させる製品に適用され、前記熱を処理できる材料として使用できる硬化性組成物を提供することができる。本出願の硬化性組成物は、熱を発生させる素子が複数集積されている製品に適用され、前記製品の温度を均一に維持しつつ、前記素子から発生する熱を効率的に処理することができる。また、本出願の硬化性組成物は、上記のような製品に適用され、前記複数の素子のうちいずれか1つの素子に異常発熱、爆発または発火が発生する場合にもそのような発熱、爆発または発火の隣接する他の素子への影響を防止または最小化することができる。本出願の硬化性組成物は、また、上記のような機能を長期間にわたって安定して行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂成分および相転移物質を含み、
20J/g~200J/gの範囲内の潜熱を示す硬化体を形成し、
前記潜熱のオンセット温度が10℃~60℃の範囲内であり、
下記式1の△Wの絶対値が10%以下である硬化性組成物:
[式1]
△W=100×(W-W)/W
式1中、Wは、前記硬化体を80℃で24時間維持した後に測定した前記硬化体の重さであり、Wは、前記80℃で24時間維持する前の前記硬化体の重さである。
【請求項2】
潜熱区間が15℃~40℃の範囲内にある、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
硬化体は、密度が0.5g/cm~2g/cmの範囲内にある、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
硬化体は、40以上のショアOO硬度を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
硬化性樹脂成分は、重量平均分子量が9000g/mol以上である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
硬化性樹脂成分は、アクリル樹脂成分、ポリウレタン成分、シリコーン樹脂成分またはエポキシ樹脂成分である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
相転移物質として、非カプセル化した相転移物質を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
相転移物質として、融点が30℃~60℃の範囲内にある相転移物質のみを含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
相転移物質は、脂肪酸およびパラフィンからなる群から選ばれた1つ以上である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
相転移物質として、融点が30℃~60℃の範囲内であり、炭素数が10~30の範囲内であるパラフィンまたは脂肪酸を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
相転移物質として、n-ノナデカン(n-nonadecane)、n-ドコサン(n-docosane)、n-エイコサン(n-eicosane)、n-ヘネイコサン(n-heneicosane)、n-トリコサン(n-tricosane)、n-テトラコサン(n-tetracosane)、n-ペンタコサン(n-pentacosane)、n-ヘキサコサン(n-hexacosane)、n-ヘプタコサン(n-heptacosane)、ラウリン酸(lauric acid)およびミリスチン酸(myristic acid)からなる群から選ばれた1つ以上を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
硬化性樹脂成分100重量部に対して20~75重量部の相転移物質を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、ベーマイト(AlOOH)、ハイドロマグネサイト、マグネシア、アルミナ、窒化アルミニウム(AlN,aluminum nitride)、窒化ホウ素(BN,boron nitride)、窒化ケイ素(Si,silicon nitride)、炭化ケイ素(SiC)、酸化亜鉛(ZnO)および酸化ベリリウム(BeO)からなる群から選ばれた1つ以上をさらに含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
溶融した相転移物質と硬化性樹脂成分を混合する段階を含む請求項1から13のいずれか一項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化体。
【請求項16】
発熱部品と、前記発熱部品と隣接して存在する、請求項1から13のいずれか一項に記載の硬化性組成物と、を含む製品。
【請求項17】
発熱部品と、前記発熱部品と隣接して存在する、請求項14に記載の硬化体と、を含む製品。
【請求項18】
40℃~80℃の範囲内の温度で請求項1から13のいずれか一項に記載の硬化性組成物を維持して溶融させる段階と、前記溶融した硬化性組成物を発熱部品に適用する段階と、を含む発熱部品を備えた製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2021年10月8日付けの韓国特許出願第10-2021-0134138号および2022年10月6日付けの韓国特許出願第10-2022-0128215号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
a
技術分野
本出願は、硬化性組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0003】
製品から発生する熱を処理する技術の重要性はますます大きくなっている。熱を処理する代表的な方法の1つは、熱伝導性に優れた素材を用いて製品から発生した熱を外部に排出したり、冷却媒体などを用いて発生した熱を消滅させる方法がある。
【0004】
ところが、複数の発熱素子(熱を発生させる素子)が集まって構成された製品で熱を処理することは難しい問題である。
【0005】
例えば、バッテリーモジュールやバッテリーパックは、複数のバッテリーセルまたは複数のバッテリーモジュールを含み、これらは、相対的に互いに隣接して位置する。したがって、いずれか1つのバッテリーセルやバッテリーモジュールから発生した熱は、隣接する他の素子に影響を及ぼし、場合によっては、連鎖発火や連鎖爆発などの問題を誘発することができる。
【0006】
このような製品では、いずれか1つの素子から発生した熱や爆発または火災などが隣接する他の素子に影響を及ぼさないようにすることが必要である。
【0007】
製品によっては、駆動や維持過程で全体的に均一な温度を維持しなければならない必要がある。したがって、上記のように複数の発熱素子が集まって構成された製品では、駆動または維持過程で全体的な製品の温度を均一に維持することができ、いずれか1つの発熱素子から発生する異常発熱や、爆発または火災を他の素子にできるだけ伝搬させることなく処理できる技術が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、硬化性組成物およびその用途に関する。本出願の硬化性組成物は、駆動または維持過程で熱を発生させる製品に適用され、前記熱を処理できる材料として使用できる硬化性組成物を提供することができる。本出願の硬化性組成物は、熱を発生させる素子が複数集積されている製品に適用され、前記製品の温度を均一に維持しつつ、前記素子から発生する熱を効率的に処理することができる。また、本出願の硬化性組成物は、上記のような製品に適用され、前記複数の素子のうちいずれか1つの素子に異常発熱、爆発または発火が発生する場合にも、そのような発熱、爆発または発火の隣接する他の素子への影響を防止または最小化することができる。本出願の硬化性組成物は、また、上記のような機能を長期間にわたって安定して行うことができる。本出願は、また、上記のような硬化性組成物により形成された硬化体または前記硬化性組成物または前記硬化体の用途を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書において言及する物性のうち温度が当該物性に影響を与える物性は、特段の定めがない限り、常温で測定した物性である。
【0010】
本明細書において用語常温は、加温および減温しない自然そのままの温度であり、例えば、約10℃~30℃の範囲内のいずれか1つの温度、例えば、約15℃、約18℃、約20℃、約23℃または約25℃程度の温度を意味する。また、本明細書において特段の定めがない限り、温度の単位は、℃である。
【0011】
本明細書において言及する物性のうち圧力が当該結果に影響を及ぼす場合には、特段の定めがない限り、当該物性は、常圧で測定した物性である。用語常圧は、加圧および減圧しない自然そのままの圧力であり、通常約1気圧(約700~800mmHg程度)程度を常圧と称する。
【0012】
本明細書において言及する物性のうち湿度が当該結果に影響を及ぼす場合には、特段の定めがない限り、当該物性は、前記常温および常圧状態で特に調節されない湿度で測定した物性である。
【0013】
本出願は、硬化性組成物に関する。用語硬化性組成物は、硬化することができる組成物である。硬化は、物理的および/または化学的反応によって組成物が固まる現象である。
【0014】
前記硬化性組成物は、エネルギー線硬化型、湿気硬化型、熱硬化型または常温硬化型であるか、前記硬化方式のうち2種以上の方式が適用される混成硬化型であってもよい。
【0015】
エネルギー線硬化型は、組成物に紫外線などのエネルギー線を照射する方式、湿気硬化型である場合、適切な湿気下に組成物を維持する方式、熱硬化型である場合、適切な熱を組成物に印加する方式または常温硬化型である場合、常温で硬化性組成物を維持する方式で硬化性組成物を硬化させることができ、混成硬化型である場合、上記に記述された方式のうち2種以上の方式が同時に適用されたり、あるいは段階的に適用され、硬化性組成物が硬化することができる。一例示において、本出願の硬化性組成物は、少なくとも常温硬化型であってもよい。例えば、本出願の硬化性組成物は、常温で維持した状態で別途のエネルギー線の照射および熱の印加なしに硬化することができる。
【0016】
本出願の硬化性組成物は、1液型硬化性組成物または2液型硬化性組成物であってもよい。1液型硬化性組成物は、硬化に必要な成分が混合された状態で保管される組成物であり、2液型硬化性組成物は、硬化に必要な成分が物理的に分離した状態で保管される組成物である。2液型硬化性組成物は、通常、いわゆる主剤パーツと硬化剤パーツを含み、硬化のためには、前記主剤および硬化剤パーツが混合される。本出願の硬化性組成物が2液型硬化性組成物である場合に、前記硬化性組成物は、前記2液型硬化性組成物の主剤パーツまたは硬化剤パーツであるか、前記主剤および硬化剤パーツの混合物であってもよい。
【0017】
前記硬化性組成物は、所定の温度範囲で潜熱(latent heat)を示す硬化体を形成することができる。潜熱は、通常、任意の物質が温度変化なしに相転移(Phase transition)を起こすのに必要な熱量と定義される。ところが、本出願の前記硬化体が前記潜熱を示すときに、必ず全体的に相転移を起こさなければならないわけではない。本出願の硬化体の潜熱は、前記硬化体の少なくとも一部あるいは前記硬化体が含む成分の相転移過程で発生することがある。
【0018】
本出願において硬化体が所定の温度範囲で潜熱を示すというのは、後述する実施例に記載された方式で進行されたDSC(Differential Scanning Calorimeter)分析で硬化体が所定の温度範囲で吸熱ピークを示すことを意味する。本出願の硬化体が前記潜熱を示す過程は、等温過程(isothermal process)である。したがって、前記硬化体は、発熱する製品に適用され、前記製品の温度を均一に維持しつつ、前記熱を制御することができ、1つの製品から発生した異常発熱、爆発および/または発火が隣接する他の製品に及ぼす影響を最小化または防止することができる。
【0019】
前記硬化体が示す潜熱の下限は、20J/g、25J/g、30J/g、35J/g、40J/g、45J/g、50J/g、55J/g、60J/g、65J/g、70J/g、75J/g、80J/g、85J/gまたは90J/g程度であってもよく、その上限は、200J/g、195J/g、190J/g、185J/g、180J/g、175J/g、170J/g、165J/g、160J/g、155J/g、150J/g、145J/g、140J/g、135J/g、130J/g、125J/g、120J/g、115J/g、110J/g、105J/g、100J/g、95J/g、90J/g、85J/g、80J/g、75J/g、70J/g、65J/g、60J/g、55J/g、50J/g、45J/gまたは40J/g程度であってもよい。前記硬化体が示す潜熱は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であるか、上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下であるか、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下である範囲内にありえる。このような潜熱を示す硬化体は、様々な用途で優れた熱制御機能を行うことができ、特にバッテリーモジュールやバッテリーパックにおいて安定して熱を制御することができる。
【0020】
前記硬化体が前記潜熱を示す温度区間を制御することができる。
【0021】
本明細書において潜熱区間は、前記潜熱を示す温度区間であり、後述する実施例のDSC(Differential Scanning Calorimeter)分析の吸熱ピークが確認される吸熱区間で吸熱ピークのleft on-setの変曲点での温度から前記吸熱ピークのright on-setの変曲点での温度までの範囲である。本明細書において前記吸熱ピークのleft on-setの変曲点での温度は、オンセット(on-set)温度とも呼ばれ、前記吸熱ピークのright on-setの変曲点での温度は、オフセット(off-set)温度とも呼ばれる。
【0022】
DSC分析の吸熱区間では、吸熱ピークを1個または2個以上確認することができるが、複数の吸熱ピークが観察される場合にも、最初の吸熱ピークが始まる地点での前記吸熱ピークの変曲点の温度(潜熱区間開始温度またはオンセット温度)から最後の吸熱ピークが終了する地点での前記吸熱ピークの変曲点の温度(潜熱区間終了温度またはオフセット)までの範囲が前記潜熱区間と定義される。
【0023】
上記のような潜熱、潜熱区間、オンセット温度およびオフセット温度の概念は、相転移物質についても同一に適用される。
【0024】
前記潜熱区間の温度の下限は、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、27℃または30℃程度であってもよく、その上限は、80℃、78℃、76℃、74℃、72℃、70℃、68℃、66℃、64℃、62℃、60℃、58℃、56℃、54℃、52℃、50℃、48℃、46℃、44℃、42℃または40℃程度であってもよい。前記潜熱区間は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下である範囲内にありえる。
【0025】
前記硬化体は、前記潜熱を示す温度区間の広さ、すなわち潜熱区間の広さを調節することができる。前記潜熱区間の広さは、前記潜熱区間終了温度(前記オフセット温度)から前記潜熱区間開始温度(前記オンセット温度)を抜いた値である。前記潜熱区間の広さの下限は、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃または35℃程度であってもよく、その上限は、70℃、65℃、60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、35℃、30℃または25℃程度であってもよい。前記硬化体が示す潜熱の潜熱区間の広さは、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であるか、上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下であるか、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下である範囲内にありえる。
【0026】
1つの例示において、前記硬化体が前記潜熱を示す潜熱区間のオンセット温度を調節することができる。この際、前記オンセット温度の定義は、前述した通りである。前記オンセット温度が存在する区間範囲の下限は、10℃、12℃、14℃、16℃、18℃、20℃、22℃、24℃、26℃または28℃程度であってもよく、その上限は、60℃、58℃、56℃、54℃、52℃、50℃、48℃、46℃、44℃、42℃、40℃、38℃、36℃、34℃、32℃、30℃、28℃または26℃程度であってもよい。前記オンセット温度は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下である範囲内にありえる。
【0027】
1つの例示において、前記硬化体が前記潜熱を示す潜熱区間のオフセット温度を調節することができる。この際、前記オフセット温度の定義は、前述した通りである。前記オフセット温度が存在する区間範囲の下限は、30℃、32℃、34℃、36℃、38℃、40℃、42℃、44℃、46℃、48℃または50℃程度であってもよく、その上限は、80℃、78℃、56℃、74℃、72℃、70℃、68℃、66℃、64℃、62℃、60℃、58℃、56℃、54℃、52℃または50℃程度であってもよい。前記オフセット温度は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下である範囲内にありえる。
【0028】
前記温度範囲および区間で前記潜熱を有する硬化体は、様々な発熱製品(特にバッテリーモジュールまたはバッテリーパックなど)に適用され、当該製品を安定的かつ均一な温度範囲で作動させることができる。また、前記硬化体は、相対的に隣接して配置されている複数の発熱する素子を含む製品に適用され、全体的な製品の温度を均一に維持することができ、いずれか1つの素子における異常発熱、発火および/または爆発が他の素子に及ぼす影響を最小化または防止することができる。特に前記潜熱特性を示す硬化体は、駆動温度を略15℃~60℃の範囲内で維持しなければならない製品(例えば、二次バッテリーセルあるいはそれを複数個含むバッテリーモジュール~バッテリーパックなど)に適用され、効率的に熱を制御することができる。
【0029】
前記本出願の硬化体は、上記のような潜熱特性を長期間安定して維持することができる。一例示において、前記硬化性組成物は、硬化体が前記潜熱特性を示すようにするために、いわゆる相転移物質(PCM:Phase Change Material)を含んでもよい。相転移物質としては、固体(solid)から液体(liquid)に相転移することにより吸熱をする物質が使用でき、このような物質は、潜熱を示すようにしつつ、液相に転移するので、硬化体から消失することができる。したがって、このような場合に、前記潜熱特性が経時的に消失することができる。本出願では、硬化体を形成する硬化性樹脂成分の選択、架橋度の調節、前記相転移物質の種類および割合の調節および/または硬化性組成物の製造方法の調節を通じて硬化体内の相転移物質が液相に転移した後にも、硬化体内で消失せず、したがって、上記のような潜熱特性を長期間安定して維持することができる。
【0030】
例えば、本出願の前記硬化体は、下記式1の△Wを所定の範囲内に制御することができる。
【0031】
[式1]
△W=100×(W-W)/W
【0032】
式1中、△Wは、硬化体の重さ変化率(単位%)であり、Wは、前記硬化体を80℃で24時間維持した後に測定した前記硬化体の重さであり、Wは、前記80℃で24時間維持する前の前記硬化体の重さである。式1の△Wを測定するための具体的な方式は、実施例の項目で記載する。また、上記式1中の重さ(WおよびW)の単位は、互いに同じ単位が適用される限り、制限されない。
【0033】
前記重さ変化率△Wの上限は、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1.5%、1%または0.5%程度であってもよい。前記重さ変化率は、上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下であってもよい。前記重さ変化率△Wは、当該値が小さいほど硬化体内に相転移物質が安定して維持されることを意味するので、その下限は、特に制限されない。前記重さ変化率△Wの下限は、例えば、0%または0.5%程度であってもよい。前記重さ変化率△Wは、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下である範囲内にあり得る。
【0034】
本出願では、上記のような潜熱特性や重さ変化特性を相転移物質としていわゆる複合物質(composite material)を適用することなく達成することができる。相転移物質は、熱を制御できる吸熱特性を示すが、通常熱伝導度が劣る。したがって、処理すべき熱を前記相転移物質まで伝達することが容易ではない。このために、グラファイト(graphite)や炭素繊維などのように熱伝導度の高い物質と相転移物質を複合化した複合物質が知られている。このような物質は、相転移物質の短所である低い熱伝導度の問題をある程度解決できるが、素材の密度や比重を増加させるので、軽量化の観点から不利である。しかしながら、本出願では、硬化体を形成する硬化性樹脂成分の選択、架橋度の調節、前記相転移物質の種類および比率の調節および/または硬化性組成物の製造方法の調節を通じて前記複合化した相転移物質を使用することなく、相転移物質の短所である低い熱伝導度による熱制御効率の低下問題を解決することができ、これによって、軽量化した素材の提供が可能である。
【0035】
本出願では、上記のような潜熱特性や重さ変化特性を相転移物質として、いわゆるカプセル化しない相転移物質、すなわち非カプセル化した相転移物質を使用しながらも達成することができる。すなわち、相転移物質は、相転移過程で液体に転移する場合が多く、液体に転移した相転移物質は、硬化体から容易に漏れ出ることができる。したがって、通常、相転移物質の漏出を防止するために、相転移物質を液相にならない素材でカプセル化した相転移物質を使用する。ところが、このような場合に、相転移物質を相転移物質でない素材でカプセル化したので、相転移物質の性能を安定して確保することが容易ではない。本出願では、後述するように、硬化体のマトリックスの制御を通じて相転移物質として、非カプセル化した相転移物質を使用する場合にも、前記重さ変化特性を示すことができる。
【0036】
1つの例示において、前記硬化性組成物は、前記相転移物質として、非カプセル化した相転移物質を含んでもよいし、前記硬化性組成物または硬化体に存在する全体相転移物質の重量を基準とする前記非カプセル化した相転移物質の含有量の下限は、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%または95重量%程度であってもよく、その上限は、100重量%、99重量%、98重量%、97重量%、96重量%または95重量%程度であってもよい。前記非カプセル化した相転移物質の含有量は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であるか、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下である範囲内にありえる。
【0037】
一例示において、前記硬化体は、密度が所定の範囲内にありえる。上記のような密度は、軽量化した素材の提供可能性を考慮して制御することができる。例えば、前記密度の下限は、0.5g/cm、0.55g/cm、0.6g/cm、0.65g/cm、0.7g/cm、0.75g/cm、0.8g/cm、0.85g/cm、0.9g/cm、0.95g/cm、1g/cm、1.05g/cm、1.1 g/cmまたは1.15g/cm程度であってもよく、その上限は、2g/cm、1.8g/cm、1.6g/cm、1.5g/cm、1.45g/cm、1.4g/cm、1.35g/cm3、1.3g/cm、1.25g/cm、1.2g/cm、1.15g/cm、1.1g/cm、1.05g/cm、1g/cmまたは0.95g/cm程度であってもよい。前記硬化体の密度は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であるか、上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下であるか、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下である範囲内にありえる。
【0038】
本出願の前記硬化体の硬度を調節することができる。硬化体の硬度は、当該硬化体の架橋度によって影響を受ける。一般的に架橋の程度が緻密である場合、硬度が上昇し、反対に架橋の程度が低いほど硬度が低く測定される。本出願では、硬化体内に維持される相転移物質の維持効率を考慮して、適切な硬度を示すように硬化体の架橋度を調節することができる。架橋度が低すぎて、硬度が低すぎると、相転移物質が硬化体の内部に適切に維持しないおそれがあり、反対に架橋度が高すぎて、硬度が高すぎると、相転移物質の性能が適切に発現しないことがある。
【0039】
例えば、前記硬化体の硬度の下限は、ショア(shore)OO硬度で20、25、30、35、40、45、50、55、60、70または80程度であるか、ショア(shore)A硬度で10、15、20、25、30、35、40または50程度であってもよく、その上限は、ショア(shore)OO硬度で90、85、80、75、70、65または60程度であるか、ショア(shore)A硬度で80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25または20程度であってもよい。前記硬化体の硬度は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であるか、上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下であるか、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下である範囲内にありえる。
【0040】
前述したように、硬化体の硬度は、主に架橋度などを制御して調節することができ、このような方式は公知となっている。本出願では、前記硬化体を形成する硬化性樹脂成分の分子量と該樹脂成分の架橋度を前記範囲内の硬度を示すことができるように制御して、相転移物質を安定して維持できるネットワークを提供することができる。また、前記範囲内の硬度は、硬化体が複雑な形状の空間を安定して充填することができるようにし、また、耐振動性や、耐衝撃性をも向上させることができる。
【0041】
本出願の硬化性組成物は、硬化性樹脂成分を含んでもよい。用語硬化性樹脂成分の範疇には、それ自体がいわゆる樹脂成分である場合はもちろん、硬化反応後に樹脂成分を形成できる成分も含まれる。したがって、前記硬化性樹脂成分は、単分子性、オリゴマー性または高分子性化合物であってもよい。
【0042】
本出願では、前記硬化性樹脂成分として、重量平均分子量(Mw,Weight Average Molecular Weight)が所定の範囲内である成分を使用することができる。硬化性樹脂成分の重量平均分子量は、架橋構造とともに相転移物質の維持に影響を与える。すなわち、同一または同様の架橋度下でも、前記架橋構造を連結する硬化性樹脂成分の重量平均分子量が低すぎると、相転移物質の漏出が発生することがあるので、適切なレベルの重量平均分子量を確保することが必要である。例えば、前記硬化性樹脂成分の重量平均分子量の下限は、9,000g/mol、10,000g/mol、15,000g/mol、20,000g/molまたは25,000g/mol程度であってもよく、その上限は、1,000,000g/mol、900,000g/mol、800,000g/mol、700,000g/mol、600,000g/mol、500,000g/mol、400,000g/mol、300,000g/mol、200,000g/mol、100,000g/mol、90,000g/mol、80,000g/mol、70,000g/mol、60,000g/mol、50,000g/mol、40,000g/molまたは30,000g/mol程度であってもよい。このような分子量特性を有する硬化性樹脂成分は、相転移物質が内部に安定して維持され得る硬化体のネットワークを形成することができる。特に前記分子量特性を有する樹脂成分として、シリコーン樹脂成分を効果的に適用することができ。前記重量平均分子量は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であるか、上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下であるか、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下である範囲内にありえる。
【0043】
硬化性樹脂成分の種類には、特別な制限はない。一例示において、前記硬化性樹脂成分は、ポリウレタン成分、シリコーン樹脂成分、アクリル樹脂成分またはエポキシ樹脂成分を含んでもよい。前記ポリウレタン成分、シリコーン樹脂成分、アクリル樹脂成分またはエポキシ樹脂成分は、ポリウレタン、シリコーン樹脂、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂であるか、硬化反応を経て前記ポリウレタン、シリコーン樹脂、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂を形成する成分であってもよい。適用可能な硬化性樹脂成分の具体的な種類には、特別な制限はなく、公知のポリウレタン成分、シリコーン樹脂成分、アクリル樹脂成分またはエポキシ樹脂成分のうち前述したような分子量特性および/または硬度特性を示すものを選択して使用することができ、このような樹脂成分の架橋度を制御することによって、最終硬化体の硬度などを制御することもできる。
【0044】
例えば、前記硬化性樹脂成分がシリコーン樹脂成分である場合、前記成分は、付加硬化性シリコーン樹脂成分として、(1)分子中に2個以上のアルケニル基を含有するポリオルガノシロキサンおよび(2)分子中に2個以上のケイ素結合水素原子を含有するポリオルガノシロキサンを含んでもよい。前記化合物は、例えば、白金触媒などの触媒の存在下で、付加反応によって硬化物を形成することができる。
【0045】
前記(1)ポリオルガノシロキサンは、少なくとも2個のアルケニル基を含む。この際、アルケニル基の具体的な例には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基またはヘプテニル基などが含まれ、これらのうち、ビニル基が通常適用されるが、これに制限されるものではない。前記(1)ポリオルガノシロキサンにおいて、前述したアルケニル基の結合位置は、特に限定されない。例えば、前記アルケニル基は、分子鎖の末端および/または分子鎖の側鎖に結合していてもよい。また、前記(1)ポリオルガノシロキサンにおいて、前述したアルケニルの他に含まれ得る置換基の種類としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基;ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、このうち、メチル基またはフェニル基が通常適用されるが、これに制限されるものではない。
【0046】
前記(1)ポリオルガノシロキサンの分子構造は、特に限定されず、例えば、直鎖状、分岐状、環状、網状または一部が分岐状を成す直鎖状などのように、いずれの形状でも有することができる。通常、上記のような分子構造のうち特に直鎖状の分子構造を有するものが適用されるが、これに限らない。
【0047】
前記(1)ポリオルガノシロキサンのより具体的な例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、R SiO2/2で表されるシロキサン単位とR SiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン共重合体、R SiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン共重合体、RSiO2/2で表されるシロキサン単位とRSiO3/2で表されるシロキサン単位またはRSiO3/2で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン共重合体および上記のうち2以上の混合物が挙げられるが、これらに制限されるものではない。上記で、Rは、アルケニル基以外の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基;ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などであってもよい。また、上記で、Rは、アルケニル基であり、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基またはヘプテニル基などであってもよい。
【0048】
前記付加硬化性シリコーン組成物において、(2)ポリオルガノシロキサンは、前記(1)ポリオルガノシロキサンを架橋させる役割を行うことができる。前記(2)ポリオルガノシロキサンにおいて、水素原子の結合位置は、特に限定されず、例えば、分子鎖の末端および/または側鎖に結合していてもよい。また、前記(2)ポリオルガノシロキサンにおいて、前記ケイ素結合水素原子の他に含まれ得る置換基の種類は、特に限定されず、例えば、(1)ポリオルガノシロキサンにおいて言及したような、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、このうち、通常、メチル基またはフェニル基が適用されるが、これに制限されるものではない。
【0049】
前記(2)ポリオルガノシロキサンの分子構造は、特に限定されず、例えば、直鎖状、分岐状、環状、網状または一部が分岐状を成す直鎖状などのように、いずれの形状でも有することができる。上記のような分子構造のうち通常直鎖状の分子構造を有するものが適用されるが、これに制限されるものではない。
【0050】
前記(2)ポリオルガノシロキサンのより具体的な例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、R SiO1/2で表されるシロキサン単位とR HSiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン共重合体、R HSiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン共重合体、RHSiO2/2で表されるシロキサン単位とRSiO3/2で表されるシロキサン単位またはHSiO3/2で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン共重合体および上記のうち2以上の混合物が挙げられるが、これらに制限されるものではない。上記で、Rは、アルケニル基以外の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基;ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などであってもよい。
【0051】
前記(2)ポリオルガノシロキサンの含有量は、適切な硬化が行われ得る程度に含まれると、特に限定されない。例えば、前記(2)ポリオルガノシロキサンは、前述した(1)ポリオルガノシロキサンに含まれるアルケニル基1個に対して、ケイ素結合水素原子が0.5~10個となる量で含まれ得る。このような範囲で硬化を十分に進行させ、耐熱性を確保することができる。
【0052】
前記付加硬化性シリコーン樹脂成分は、硬化のための触媒として、白金または白金化合物をさらに含んでもよい。このような白金または白金化合物の具体的な種類は、特別な制限はない。触媒の割合も、適切な硬化が行われ得るレベルに調節されれば良い。
【0053】
他の例示において、前記シリコーン樹脂成分は、縮合硬化性シリコーン樹脂成分として、例えば(a)アルコキシ基含有シロキサンポリマーと、(b)水酸基含有シロキサンポリマーと、を含んでもよい。
【0054】
前記(a)シロキサンポリマーは、例えば、下記化学式1で表される化合物であってもよい。
【0055】
[化学式1]
SiO(OR
【0056】
化学式1中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換または非置換の1価の炭化水素基を示し、Rは、アルキル基を示し、R、RおよびRがそれぞれ複数個存在する場合には、互いに同じでも異なっていてもよく、aおよびbは、それぞれ独立して、0以上、1未満の数を示し、a+bは、0超過かつ2未満の数を示し、cは、0超過かつ2未満の数を示し、dは、0超過かつ4未満の数を示し、a+b+c×2+dは、4である。
【0057】
化学式1の定義において、1価の炭化水素基は、例えば、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基またはトリル基などであってもよく、この際、炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基またはオクチル基などであってもよい。また、化学式1の定義において、1価の炭化水素基は、例えば、ハロゲン、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、グリシジル基、グリシドキシ基またはウレイド基などの公知の置換基で置換されていてもよい。
【0058】
化学式1の定義において、Rのアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基またはブチル基などが挙げられる。アルキル基のうち、メチル基またはエチル基などが通常適用されるが、これらに制限されるものではない。
【0059】
化学式1のポリマー中、分岐状または3次架橋されたシロキサンポリマーを使用することができる。また、この(a)シロキサンポリマーには、目的を損傷させない範囲内で、具体的には、脱アルコール反応を阻害しない範囲内で水酸基が残存していてもよい。
【0060】
前記(a)シロキサンポリマーは、例えば、多官能アルコキシシランまたは多官能クロロシランなどを加水分解および縮合させることによって製造することができる。この分野における平均的技術者は、目的とする(a)シロキサンポリマーによって適切な多官能アルコキシシランまたはクロロシランを容易に選択することができ、それを使用した加水分解および縮合反応の条件も容易に制御することができる。なお、前記(a)シロキサンポリマーの製造時には、目的に応じて、適切な一官能性アルコキシシランを併用使用することもできる。
【0061】
前記(a)シロキサンポリマーとしては、例えば、信越シリコーン社のX40-9220またはX40-9225、GE東レ・シリコーン社のXR31-B1410、XR31-B0270またはXR31-B2733などのような、市販のオルガノシロキサンポリマーを使用することができる。
【0062】
前記縮合硬化性シリコーン組成物に含まれる、(b)水酸基含有シロキサンポリマーとしては、例えば、下記化学式2で示される化合物を使用することができる。
【0063】
【化1】
【0064】
化学式2中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換または非置換の1価の炭化水素基を示し、RおよびRがそれぞれ複数存在する場合には、上記は、互い同じでも異なっていてもよく、nは、5~2,000の整数を示す。
【0065】
化学式2の定義において、1価の炭化水素基の具体的な種類としては、例えば、前記化学式1の場合と同じ炭化水素基が挙げられる。
【0066】
前記(b)シロキサンポリマーは、例えば、ジアルコキシシランおよび/またはジクロロシランなどを加水分解および縮合させることによって製造することができる。この分野における平均的技術者は、目的とする(b)シロキサンポリマーによって適切なジアルコキシシランまたはジクロロシランを容易に選択することができ、それを使用した加水分解および縮合反応の条件も容易に制御することができる。上記のような(b)シロキサンポリマーとしては、例えば、GE東レ・シリコーン社のXC96-723、YF-3800、YF-3804などのような、市販の二官能性オルガノシロキサンポリマーを使用することができる。
【0067】
上記に記述した付加硬化型あるいは縮合硬化型シリコーン組成物は、本出願において適用されるシリコーン樹脂成分の1つの例示である。
【0068】
他の例示において、硬化性樹脂成分がポリウレタン成分であれば、前記成分は、少なくともポリオールとポリイソシアネートを含んでもよい。上記で、ポリオールは、少なくとも2個のヒドロキシ基を含む化合物であり、ポリイソシアネートは、少なくとも2個のイソシアネート基を含む化合物である。このような化合物は、それぞれ、単分子性、オリゴマー性または高分子性化合物であってもよい。
【0069】
適用可能なポリオールの種類には、大きな制限はなく、例えば、公知のポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールを適用することができる。上記で、ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールのようなアルキレングリコール部分の炭素数が1~20、1~16、1~12、1~8または1~4のポリアルキレングリコールや、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体系ポリオール、PTME(poly(tetramethylene glycol))、PHMG(poly(hexamethylene ether glycol))などが知られている。また、前記ポリエステルポリオールとしては、二塩基酸とグリコールから合成されるポリオールであり、前記二塩基酸単位およびグリコール単位を含むポリエステルポリオールまたはポリカプロラクトンポリオール(環状ラクトンの開環重合から得られる)などが知られている。また、上記のようなポリオールの他にも、カーボネート系ポリオール、植物性ポリオールひまし油、HTPB(Hydroxyl-terminated polybutadiene)やHTPIB(Hydroxyl-terminated polyisobutylene)などの炭化水素系のポリオールも知られている。
【0070】
本出願では、上記のような公知のポリオールのうち適切な種類を選択して使用することができる。
【0071】
また、前記ポリイソシアネートとして、公知の芳香族または脂肪族ポリイソシアネート化合物のうち適切な種類を選択して使用することができる。
【0072】
硬化性組成物内で前記硬化性樹脂成分の含有量の下限は、前記硬化性組成物の全重量を基準として30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%または80重量%程度であってもよく、その上限は、100重量%未満95重量%、90重量%、85重量%、80重量%、75重量%、70重量%、65重量%、60重量%または55重量%程度であってもよい。前記含有量は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であるか、上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下であるか、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下である範囲内にありえる。前記含有量は、硬化性組成物の全重量を基準とするものであり、ただし、硬化性組成物がフィラーおよび/または溶媒を含む場合に、前記フィラーおよび溶媒を除いた硬化性組成物の全重量を基準とする割合である。
【0073】
硬化性組成物は、前述した潜熱特性を確保するために、いわゆる相転移物質(PCM:Phase Change Material)を含んでもよい。相転移物質は、一般的に知られているように、相転移(phse transition)過程で吸熱または発熱する物質である。前記相転移過程は、等温過程(isothermal process)である。
【0074】
前記相転移物質が吸熱または発熱する相転移は、固体から固体への相転移、固体から液体への相転移、固体から気体への相転移または液体から気体への相転移であってもよい。上記に記述された相転移反応(固体→固体、固体→液体、固体→気体、液体→気体)は、吸熱反応であってもよい。効率の観点から、固体から液体に相転移する物質が有利であるが、このような物質は、相転移後に液相となるので、硬化体内で維持しにくい。しかしながら、本出願の硬化体は、前述した重さ変化率を示し、したがって、固体から液体に相転移する物質を適用することができる。これによって、本出願において適用する相転移物質は、固相および液相の間で相転移が起こる物質であってもよく、前記固相から液相への相転移反応が吸熱反応である物質であってもよい。
【0075】
本出願において適用される前記相転移物質は、所定範囲の融点(melting point)を有していてもよい。例えば、前記融点の下限は、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃または50℃程度であってもよく、その上限は、100℃、95℃、90℃、85℃、80℃、75℃、70℃、65℃、60℃、55℃、50℃、45℃または40℃程度であってもよい。前記融点は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であるか、上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下であるか、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下である範囲内にありえる。
【0076】
適切な温度制御特性の確保のために、本出願の硬化性組成物が含む全体相転移物質のうち上記に記述された融点を有する相転移物質の含有量の下限は、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%または95重量%程度であってもよく、その上限は、100重量%、99重量%、98重量%、97重量%、96重量%または95重量%程度であってもよい。前記含有量は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であるか、上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下であるか、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下である範囲内にありえる。
【0077】
他の例示において、前記硬化性組成物は、前記相転移物質として、前記範囲の融点を有する相転移物質のみを含むこともできる。
【0078】
相転移物質としては、所定の温度区間で所定範囲の潜熱を示すものを使用することができる。
【0079】
例えば、前記相転移物質が示す潜熱の下限は、100J/g、110J/g、120J/g、130J/g、140J/g、150J/g、160J/g、170J/gまたは180J/g程度であってもよく、その上限は、400J/g、380J/g、360J/g、340J/g、320J/g、300J/g、280J/g、260J/g、240J/g、220J/g、200J/g、180J/gまたは160J/g程度であってもよい。前記潜熱は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であるか、上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下であるか、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下である範囲内にありえる。
【0080】
相転移物質が前記潜熱を示す温度区間(温度区間)の下限は、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃または50℃程度であってもよく、その上限は、100℃、95℃、90℃、85℃、80℃、75℃、70℃、65℃、60℃、55℃、50℃、45℃または40℃程度であってもよい。前記潜熱を示す温度区間は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であるか、上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下であるか、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下である範囲内にありえる。
【0081】
適切な温度制御特性の確保のために、本出願の硬化性組成物が含む全体相転移物質のうち上記に記述された潜熱特性を有する相転移物質の含有量の下限は、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%または95重量%程度であってもよく、その上限は、100重量%、99重量%、98重量%、97重量%、96重量%または95重量%程度であってもよい。前記含有量は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であるか、上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下であるか、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下である範囲内にありえる。
【0082】
他の例示において、前記硬化性組成物は、前記相転移物質として、上記に記述された潜熱特性を有する相転移物質のみを含むこともできる。
【0083】
上記のような相転移物質の適用を通じて目的とする硬化体を形成することができる。
【0084】
相転移物質としては、前述した特性を示すものであれば、公知の物質を適用することができる。相転移物質としては、無機系物質、有機系物質または共融混合物(eutectic)系物質が知られている。このような物質のうち前述した潜熱特性を有する物質として、有機系相転移物質が使用できる。
【0085】
有機系相転移物質としては、脂肪酸(Fatty acid)またはパラフィン(paraffin)系物質が知られており、本出願では、前記物質のうち1種または2種以上の混合が使用できる。
【0086】
前記脂肪酸(Fattic acid)としては、ギ酸(formic acid)、n-オクタン酸(n-octanoic acid)、ラウリン酸(lauric acid)、ミリスチン酸(myristic acid)、パルミチン酸(palmitic acid)またはステアリン酸(stearic acid)などが例示できる。
【0087】
適切な例示では、相転移物質として、パラフィン系物質を使用することができる。パラフィン系相転移物質としては、n-ヘプタデカン(n-heptadecane)、n-オクタデカン(n-octadecane)、n-ノナデカン(n-Nonadecane)、n-エイコサン(n-Eicosane)、n-ヘニコサン(n-henicosane)、n-ドコサン(n-docosane)、n-トリコサン(n-tricosane)、n-ペンタコサン(n-pentacosane)、n-ヘキサコサン(n-hexacosane)、n-ヘプタコサン(n-heptacosane)、n-オクタコサン(n-octacosane)、n-ノナコサン(n-nonacosane)、n-トリアコンタン(n-triacontane)、n-ヘントリアコンタン(n-hentriacontane)、n-ドトリアコンタン(n-dotriacontane)、n-トリアトリアコンタン(n-triatriacontane)またはその他高次パラフィン(Paraffin C16~C18、Paraffin C13~C24、RT 35 HC、Paraffin C16~C28、Paraffin C20~C33、Paraffin C22~C45、Paraffin C22~C50、Paraffin natural wax 811、Paraffin natural wax 106など)などが知られている。
【0088】
本出願では、前記公知のパラフィン系物質のうち適正種類を選択して使用することができる。
【0089】
適切な効果の達成のために、本出願では、前記相転移物質として、前述した範囲の融点を有し、炭素数が10~30の範囲内のパラフィンを使用することができる。このようなパラフィンは、前記炭素数を有するアルカン(alkane)であってもよい。
【0090】
一例示では、前記パラフィン系物質として、n-ノナデカン(n-nonadecane)、n-ドコサン(n-docosane)、n-エイコサン(n-eicosane)、n-ヘネイコサン(n-heneicosane)、n-トリコサン(n-tricosane)、n-テトラコサン(n-tetracosane)、n-ペンタコサン(n-pentacosane)、n-ヘキサコサン(n-hexacosane)、n-ヘプタコサン(n-heptacosane)、ラウリン酸(lauric acid)およびミリスチン酸(myristic acid)からなる群から選ばれた1つ以上が使用できる。
【0091】
相転移物質の前記硬化性組成物内での割合、例えば、前記硬化性樹脂成分100重量部に対して重量比の下限は、20重量部、21重量部、22重量部、23重量部、24重量部または25重量部程度であってもよく、その上限は、75重量部、74重量部、73重量部、72重量部、71重量部、70重量部、69重量部、68重量部、67重量部、66重量部、65重量部、64重量部、63重量部、62重量部、61重量部または60重量部程度であってもよい。前記割合は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であるか、上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下であるか、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下である範囲内にありえる。
【0092】
このような割合下で目的とする温度制御性能が確保され、そのような性能を長期的に安定して維持することができる。
【0093】
硬化性組成物は、任意のさらなる成分として、フィラー、例えば、熱伝導性フィラーを含んでもよい。このようなフィラーは、相転移物質の低い熱伝導度を補完することができる。
【0094】
適用可能な熱伝導性フィラーは、特に制限されず、例えば、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、ベーマイト(AlOOH)、ハイドロマグネサイト、マグネシア、アルミナ、窒化アルミニウム(AlN,aluminum nitride)、窒化ホウ素(BN,boron nitride)、窒化ケイ素(Si,silicon nitride)、炭化ケイ素(SiC)、酸化亜鉛(ZnO)または酸化ベリリウム(BeO)などのような無機フィラーが例示できるが、これらに制限されるものではない。前記フィラーのうち1種または2種以上を選択することができる。低密度の硬化体を形成しようとする場合には、前記フィラー成分のうち比重の小さいフィラー(例えば、水酸化アルミニウムなど)を選択することができる。
【0095】
上記で、フィラーの形態は、特別な制限はなく、例えば、球状、針状、板状その他無定形フィラーが使用できる。
【0096】
1つの例示において、前記フィラーとしては、平均粒径が10μm~200μmの範囲内にあるフィラーを使用することができる。前記平均粒径は、後述する実施例に記載された方式で測定したD50粒径である。このような粒径のフィラーの適用を通じて、目的とする効果をさらに効率的に確保することができる。
【0097】
前記フィラーの粒径は、他の例示において、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上または40μm以上であるか、180μm以下、160μm以下、140μm以下、120μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下または50μm以下程度であってもよい。
【0098】
硬化性組成物内で前記熱伝導性フィラーの含有量は、目的によって調節される。例えば、硬化性組成物において前記熱伝導性フィラーは、前記硬化性樹脂成分100重量部に対して約100重量部以下で含まれ得る。前記割合は、他の例示において、95重量部以下、90重量部以下、85重量部以下、80重量部以下、75重量部以下、70重量部以下、65重量部以下、60重量部以下、55重量部以下、50重量部以下、45重量部以下または40重量部以下であるか、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、25重量部以上、30重量部以上、35重量部以上または40重量部以上程度であってもよい。
【0099】
前記硬化性組成物は、また、任意のさらなる成分として、軽量化の観点から、中空フィラー(hollow filler)をさらに含んでもよい。
【0100】
前記中空フィラーの適用を通じて軽量化に寄与することができる。
【0101】
例えば、前記フィラーは、D50粒径(平均粒径)が10μm~100μmの範囲内にありえる。前記D50粒径は、他の例示において、12μm以上、14μm以上、16μm以上、18μm以上、20μm以上、22μm以上、24μm以上、26μm以上、28μm以上、30μm以上、32μm以上、34μm以上、36μm以上、38μm以上、40μm以上、42μm以上、44μm以上、46μm以上、48μm以上、50μm以上、52μm以上、54μm以上、56μm以上または58μm以上であるか、98μm以下、96μm以下、94μm以下、92μm以下、90μm以下、88μm以下、86μm以下、84μm以下、82μm以下、80μm以下、78μm以下、76μm以下、74μm以下、72μm以下、70μm以下、68μm以下、66μm以下、64μm以下、62μm以下または60μm以下程度であってもよい。
【0102】
前記中空フィラーは、密度が約0.05~1g/mlの範囲内にありえる。前記密度は、他の例示において、0.01g/ml以上、0.15g/ml以上、0.2g/ml以上、0.25g/ml以上、0.3g/ml以上、0.35g/ml以上、0.4g/ml以上、0.45g/ml以上、0.5g/ml以上、0.55g/ml以上または0.6g/ml以上であるか、0.95g/ml以下、0.9g/ml以下、0.85g/ml以下、0.8g/ml以下、0.75g/ml以下、0.7g/ml以下、0.65g/ml以下、0.6g/ml以下、0.55g/ml以下、0.5g/ml以下、0.45g/ml以下、0.4g/ml以下、0.35g/ml以下、0.3g/ml以下、0.25g/ml以下、0.2g/ml以下または0.15g/ml以下程度であってもよい。
【0103】
中空フィラーとしては、前記粒径および/または密度を有し、前記硬化性ポリオルガノシロキサン成分と均一に混合され得るものであれば、特別な制限なしに様々な種類を適用することができる。
【0104】
例えば、中空フィラーとしては、公知の有機フィラー、無機フィラーまたは有・無機混合フィラーを使用することができる。中空フィラーが適用される場合にも、シェル(shell)部位が有機物からなる有機粒子、無機物からなる無機粒子および/または有・無機物質からなる有・無機粒子などを使用することができる。このような粒子としては、PMMA(poly(methyl methacrylate))などのアクリル粒子、エポキシ粒子、ナイロン粒子、スチレン粒子および/またはスチレン/ビニル単量体の共重合体粒子などや、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化インジウム粒子、酸化スズ粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化亜鉛粒子および/またはチタニア粒子などの無機粒子などが例示できるが、これらに制限されるものではない。
【0105】
一例示において、前記中空フィラーとしては、シェル(shell)部位がソーダライム(soda-lime)材料からなる粒子(ソーダライムフィラー)、セル部位がソーダライムボロシリケート(soda-lime borosilicate)材料からなる粒子(ソダライムボロシリケートフィラー)、セノスフェア(cenosphere)フィラーまたはその他シリカ粒子を適用することができる。
【0106】
前記中空フィラーが含まれる場合に、その割合には特別な制限がなく、硬化体の物性を害することなく、目的とする軽量化が可能な範囲で適正割合にて選択することができる。
【0107】
硬化性組成物は、前記成分にさらに必要な他の成分を含んでもよい。例えば、硬化性組成物は、前記成分の他に必要な場合にさらなる添加剤、例えば、触媒、顔料や染料、分散剤、揺変性付与剤、難燃剤などをさらに含んでもよい。
【0108】
このような硬化性組成物は、溶剤型組成物、水系組成物または無溶剤型組成物であってもよく、好適には、無溶剤型組成物であってもよい。
【0109】
硬化性組成物は、前述したように、1液型組成物であるか、2液型組成物であってもよく、場合によっては、2液型組成物の主剤または硬化剤パーツであるか、あるいは前記主剤および硬化剤パーツの混合物であってもよい。
【0110】
また、硬化性組成物が2液型組成物である場合に硬化性樹脂成分の他に他の成分の主剤および硬化剤パーツ内での割合には特別な制限はない。例えば、前記相転移物質および/またはフィラーは、主剤または硬化剤パーツに全部含まれたり、主剤および硬化剤パーツに分けられて含まれることもできる。
【0111】
本出願の硬化性組成物は、様々な用途に好適に使用され、特に発熱製品に適用され、前記製品の熱を制御する素材に使用できる。
【0112】
1つの例示において、前述した潜熱特性、重さ変化率、密度および/または硬度特性を満たすために、前記硬化性組成物の製造方法を選択することができる。
【0113】
例えば、前記硬化性組成物は、前記相転移物質が溶融している状態で前記相転移物質と硬化性樹脂成分を混合して製造することができる。このような段階を通じて、目的とする硬化性組成物をより効果的に提供することができる。
【0114】
したがって、前記硬化性組成物の製造方法は、溶融した前記相転移物質と前記硬化性樹脂成分を混合する段階を含んでもよいし、具体的には、前記相転移物質を溶融させる段階と、溶融した前記相転移物質と前記硬化性樹脂成分を混合する段階と、を含んでもよい。
【0115】
上記で、相転移物質を溶融させる方法は、特に制限されず、例えば、前記相転移物質の融点以上の温度で前記相転移物質を維持して溶融させることができる。
【0116】
一例示において、前記相転移物質の維持温度は、前記相転移物質の融点に対して10℃~100℃以上高い温度であってもよい。前記温度は、他の例示において、前記相転移物質の融点に対して15℃以上、20℃以上、25℃以上または30℃以上高い温度であるか、および/または前記相転移物質の融点に対して95℃以下、90℃以下、85℃以下、80℃以下、75℃以下、70℃以下、65℃以下、60℃以下、55℃以下、50℃以下、45℃以下、40℃以下、35℃以下または30℃以下低い温度であってもよい。
【0117】
このような温度範囲で溶融させた相転移物質と硬化性樹脂成分を混合し、硬化性組成物を製造することによって、目的とする特性の硬化性組成物を効率的に製造することができる。前記溶融した相転移物質と硬化性樹脂成分の混合時の温度は、前記相転移物質を溶融させた温度と同じ範囲内の温度であるか、あるいはそれより低い温度であってもよい。
【0118】
1つの例示において、前記混合は、前記相転移物質の融点に対して10℃~100℃以上高い温度で行うことができる。前記温度は、他の例示において、前記相転移物質の融点に対して15℃以上、20℃以上、25℃以上または30℃以上高い温度であるか、前記相転移物質の融点に対して95℃以下、90℃以下、85℃以下、80℃以下、75℃以下、70℃以下、65℃以下、60℃以下、55℃以下、50℃以下、45℃以下、40℃以下、35℃以下または30℃以下低い温度であってもよい。
【0119】
本出願は、また、上記に記述された硬化性組成物の硬化体に関する。前記硬化性組成物を硬化させて硬化体を得る方法には制限がなく、前記硬化性組成物の類型によって適切な硬化方式を適用すれば良い。例えば、エネルギー線硬化型である場合、組成物に紫外線などのエネルギー線を照射する方式、湿気硬化型である場合、適切な湿気下に組成物を維持する方式、熱硬化型である場合、適切な熱を組成物に印加する方式、常温硬化型である場合、常温で組成物を維持する方式、混成硬化型である場合に2種以上の硬化方式を適用する方式などを使用することができる。前述したように、適切な例示において、前記硬化性組成物は、常温硬化型であってもよい。
【0120】
本出願は、また、前記組成物またはその硬化体を含む製品に関する。本出願の硬化性組成物またはその硬化体は、発熱部品、発熱素子または発熱製品の熱を制御する素材として有用に適用することができる。したがって、前記製品は、発熱部品または発熱素子または発熱製品を含んでもよい。用語発熱部品、素子または製品は、使用過程で熱を発生させる部品、素子または製品を意味し、その種類は特に制限されない。代表的な発熱部品、素子または製品では、バッテリーセル、バッテリーモジュールまたはバッテリーパックなどを含む様々な電気/電子製品がある。
【0121】
本出願の製品は、例えば、前記発熱部品、素子または製品と、前記発熱部品などと隣接して存在する前記硬化性組成物(または前記2液型組成物)またはその硬化体を含んでもよい。このような場合に、前述したように、前記発熱部品、素子または製品は、適正の駆動温度が略15℃~60℃の範囲内である部品、素子または製品であってもよい。すなわち、本出願の硬化性組成物は、発熱部品、素子または製品と隣接して配置され、製品の駆動温度を前記範囲内で均一に維持するのに有用である。
【0122】
本出願の製品を構成する具体的な方法は、特に制限されず、本出願の硬化性組成物または2液型組成物またはその硬化体が放熱素材に適用される場合、公知の様々な方式で前記製品を構成することができる。
【0123】
1つの例示において、前記硬化性組成物は、バッテリーモジュールまたはバッテリーパックの構成時にポッティング材(potting material)に使用できる。ポッティング材は、バッテリーモジュールやバッテリーパック内の複数の単位バッテリーセルの少なくとも一部または全部と接触しつつ、これを覆っている素材であってもよい。本出願の前記硬化性組成物またはその硬化体は、前記ポッティング材に適用されたときに、バッテリーモジュールやパックのバッテリーセルから発生する熱を制御することができ、連鎖発火または爆発などを防止することができ、前記モジュール、パックまたはバッテリーセルの駆動温度を均一に維持することができる。本出願では、また、硬化前は、粘度や揺変性が適正レベルに制御され、ポッティング効率に優れており、硬化後に不要な気泡の発生なしに安定したポッティング構造を形成する硬化性組成物を提供することができる。本出願では、硬化後に低密度を示し、体積に比べて軽量ながらも高出力のバッテリーモジュールやパックを提供できる硬化性組成物を提供することができる。本出願では、また、絶縁性などを含む要求物性にも優れた硬化性組成物を提供することができる。
【0124】
このような場合、バッテリー関連技術として、前記硬化性組成物は、バッテリーモジュールまたはバッテリーパックなどの放熱素材や車両用OBC(On Board Charger)の放熱素材として適用することができる。したがって、本出願は、また、前記硬化性組成物またはその硬化体を放熱素材として含むバッテリーモジュール、バッテリーパックまたはオンボード充電器(OBC)に関するものであってもよい。前記バッテリーモジュール、バッテリーパックまたはオンボード充電器において前記硬化性組成物または硬化体の適用位置や適用方法は、特に制限されず、公知の方式を適用することができる。また、本出願の硬化性組成物は、前記用途に制限されず、優れた放熱特性、保管安定性および接着力が要求される様々な用途に効果的に適用することができる。
【0125】
本出願に関する他の一例において、本出願は、前記硬化性組成物の硬化体を有する電子装備または装置に関するものであってもよい。
【0126】
電子装備または装置の種類は、特に制限されず、例えば、車両用AVN(audio video navigation)や電気自動車用OBC(On Board Charger)モジュール、LEDモジュールまたはICチップとこれを含むコンピュータやモバイル機器を例にあげることができる。
【0127】
前記硬化性組成物の硬化体は、前記装備または装置内で熱を発散し、衝撃に対する耐久性、および絶縁性などを付与することができる。
【0128】
前記硬化性組成物は、一例示において、バッテリーポッティング材に使用できる。
【0129】
本出願は、また、前記ポッティング材を適用したバッテリーモジュールに関する。このようなバッテリーモジュールは、同一体積に比べて軽量でありかつ高出力を示すことができ、バッテリーセルなどから発生した熱が適切に制御され、連鎖発火などの問題点も発生しない。
【0130】
前記バッテリーモジュールは、一例示において、基板と、前記基板上に配置された複数のバッテリーセルと、前記複数のバッテリーセルの少なくとも一部または全体を覆っている前記硬化性組成物またはその硬化物と、を含んでもよい。
【0131】
前記構造において前記硬化性組成物またはその硬化物(ポッティング材)は、一例示において、前記複数のバッテリーセルの前面(基板側と接触するバッテリーセルの表面は除外)と接触しつつ、前記バッテリーセルを覆っているか(図1の構造)、あるいは複数のバッテリーセルの上部のみと接触していてもよい(図2の構造)。
【0132】
図1および図2は、上記のようなバッテリーモジュールの構造の模式図であり、基板10と、バッテリーセル20と、前記ポッティング材30(前記硬化性組成物またはその硬化物)と、を含む構造を示す図である。バッテリーモジュールは、前記バッテリーセル20を前記基板10に固定する接着素材40をさらに含んでもよいし、一例示において、前記接着素材40は、熱伝導性を有するように構成することができる。
【0133】
前記硬化性組成物またはその硬化物がポッティング材に適用される限り、バッテリーモジュールの具体的な構成、例えば、前記バッテリーセル、基板および/または接着素材の種類は、特に制限されず、公知の素材を適用することができる。
【0134】
例えば、前記バッテリーセルとしては、公知のポーチ型、角形または円筒形バッテリーセルを適用することができ、基板や接着素材としても、公知の素材を適用することができる。
【0135】
前記バッテリーモジュールの製造方法は、特に制限されず、例えば、基板上に形成された複数のバッテリーセルの上部に前記硬化性組成物を注いで、必要な場合に硬化させる段階を経て形成することができる。
【0136】
本出願の硬化性組成物は、適切な粘度および揺変性を有するので、非常に隣接して配置されたバッテリーセルの間を効率的に充填することができ、ポッティング材を形成した後に目的とする断熱性と遮熱性などを示すことができる。
【0137】
例えば、前記バッテリーモジュールやバッテリーパックのような製品は、前記硬化性組成物を適正な温度で維持して溶融させる段階と、前記段階で溶融した硬化性組成物を発熱部品に適用する段階と、を含む方法で製造することができる。
【0138】
上記で、硬化性組成物を溶融させる段階での温度は、具体的な適用態様によって定められることができる。例えば、前記発熱製品が前述したバッテリーセル、バッテリーモジュールまたはバッテリーパックである場合に、前記溶融させる段階での温度の下限は、40℃または50℃程度であってもよく、その上限は、80℃または70℃程度であってもよい。前記温度は、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であるか、上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下であるか、上記に記述された下限のうち任意のいずれか1つの下限超過またはそれ以上であり、かつ上記に記述された上限のうち任意のいずれか1つの上限未満または以下である範囲内にありえる。前記温度が低すぎれば、硬化性組成物の流動性が劣り、溶融後に硬化性組成物の硬化速度が速すぎるので、適用が容易ではなく、高すぎれば、発熱製品に損傷が発生したり、硬化性組成物内で密度の相対的に低い相転移物質が表面に移行し、不均一な硬化体が生成されることもある。
【0139】
前記溶融した硬化性組成物を発熱部品に適用する方法には、特別な制限はなく、公知のポッティング工程やその他工程を通じて硬化性組成物を適用することができる。
【0140】
また、必要な場合に、前記適用後に前記硬化性組成物を硬化させる段階が行われ得るが、この際、硬化方法は、硬化性組成物の類型によって適切な方法を選択することができる。
【発明の効果】
【0141】
本出願は、硬化性組成物およびその用途を提供することができる。本出願の硬化性組成物は、駆動または維持過程で熱を発生させる製品に適用され、前記熱を処理できる材料として使用できる硬化性組成物を提供することができる。本出願の硬化性組成物は、熱を発生させる素子が複数集積している製品に適用され、前記製品の温度を均一に維持しつつ、前記素子から発生する熱を効率的に処理することができる。また、本出願の硬化性組成物は、上記のような製品に適用され、前記複数の素子のうちいずれか1つの素子に異常発熱、爆発または発火が発生する場合にも、そのような発熱、爆発または発火の隣接する他の素子への影響を防止または最小化することができる。本出願の硬化性組成物は、また、上記のような機能を長期間にわたって安定して行うことができる。本出願は、また、上記のような硬化性組成物により形成された硬化体または前記硬化性組成物または前記硬化体の用途を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
図1図1は、本出願の例示的なバッテリーモジュールの模式図である。
図2図2は、本出願の例示的なバッテリーモジュールの模式図である。
図3図3は、それぞれ実施例1~3の硬化体に対するDSC分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0143】
以下、実施例に基づいて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲が下記実施例によって制限されるものではない。
【0144】
1.潜熱の測定
潜熱は、次の方式で評価した。約3~5mg程度の試料をDSC(Differential Scanning Calorimeter)装備(TA instrument社、Q200モデル)にロードした。前記装備の潜熱評価のための温度区間を-20℃から200℃にセットした後、約10℃/分の速度で昇温しつつ、吸熱区間を測定し、前記吸熱区間で確認された吸熱ピークを積分して、潜熱(単位:J/g)を計算した。前記吸熱ピークのleft onsetの変曲点での温度を潜熱区間開始温度(オンセット温度)とし、right onset地点の変曲点での温度を潜熱区間終了温度(オフセット温度)とし、潜熱区間の広さは、前記オフセット温度からオンセット温度を抜いた値である。
相転移物質の潜熱の測定時には、前記試料として当該相転移物質を使用した。
硬化体の潜熱の測定時に、試料は、硬化性組成物を硬化させて製造した。具体的には、前記硬化性組成物の主剤および硬化剤パーツを1:1の体積比で混合して混合物を製造し、前記混合物を80℃のチャンバー(chamber)内で1時間程度放置した後に、注入器でアルミ皿(dish)に約10mm程度の厚さとなるように塗布し、常温(約25℃)で24時間維持し、硬化体を製造した。
【0145】
2.融点の評価
相転移物質の融点は、次の方式で評価した。相転移物質約3mg~5mg程度をDSC(Differential Scanning Calorimeter)装備(TA instrument社、Q200モデル)にロードした。装備の温度区間を-20℃から200℃にセットし、約10℃/分の速度で昇温しつつ、吸熱ピークを確認した。前記吸熱ピークの頂点での温度を相転移物質の融点に指定した。
【0146】
3.重さ変化△W
硬化性組成物の主剤パーツと硬化剤パーツを1:1の体積比で混合して混合物を製造した。前記混合物を80℃のチャンバー(chamber)に1時間程度維持し、注入器でアルミ皿(dish)に約10mm程度の厚さとなるように塗布した。塗布した混合物を常温(約25℃)で24時間維持して硬化させて、硬化体を製造した。硬化体を横および縦の長さがそれぞれ1cmの四角形にカットし、試験片(重さ:W、単位g)を製造した。試験片をfilter paper上に載置した状態で約80℃のチャンバー内で約24時間維持した後に取り出して、さらに試験片の重さ(重さ:W、単位g)を測定した。前記過程で測定された重さを下記式Aに代入して重さ変化率△Wを測定した。同じ硬化性組成物で形成された4個の試験片に対してそれぞれ重さ変化率を測定し、その平均値を下記表1および表2に記載した。
[式A]
△W=100×(W-W)/W
【0147】
4.温度制御性能試験
硬化性組成物の主剤パーツと硬化剤パーツを1:1の体積比で混合して混合物を製造した。前記混合物を80℃のチャンバー(chamber)に1時間程度維持し、注入器でアルミ皿(dish)に約10mm程度の厚さとなるように塗布した。塗布した混合物を常温(約25℃)で24時間維持しつつ、硬化させて、硬化体を製造した。次に、硬化体を横および縦の長さがそれぞれ3cmである四角形にカットして、試験片を製造した。ホットプレート上にKタイプthermocoupleを付着し、その上に前記試験片を密着させ、テープで固定した。次に、ホットプレートの温度を常温から約35℃まで約2分間にわたって同じ昇温速度で昇温し、35℃の温度を約10分間維持した後に、温度を73℃まで約10分にわたって同じ昇温速度で昇温した。前記73℃の温度を約22分間維持した後に、前記Kタイプthermocoupleで温度を測定した。
【0148】
5.硬度の測定
硬化性組成物の主剤パーツと硬化剤パーツを1:1の体積比で混合して混合物を製造した。前記混合物を80℃のチャンバー(chamber)に1時間程度維持し、注入器でアルミ皿(dish)に約10mm程度の厚さとなるように塗布した。塗布した混合物を常温(約25℃)で24時間維持して硬化させて、硬化体を製造した。前記硬化体に対してASTM D2240規格によって硬度を測定した。硬度の測定時には、ASKER Durometer機器を使用した。平たい状態のサンプルの表面に約1.5kg程度の荷重を加えて初期硬度を測定し、15秒後に安定化した測定値で確認して硬度を評価した。ショア(Shore)AまたはショアOO硬度を測定した。
【0149】
6.密度の測定
硬化体の密度は、ASTM D792規格によってgas pycnometer装備(モデル名:BELPYCNO、製造社:MicrotracBEL社)を使用して確認した。前記装備を使用してヘリウムガスの注入による常温での密度測定値を確認することができる。前記硬化体は、実施例または比較例で製造された主剤および硬化剤パーツを1:1の体積比で混合した状態で80℃のチャンバー(chamber)内で1時間程度維持し、次に、前記混合物を注入器でアルミ皿(dish)に約10mm程度の厚さとなるように塗布した後に、常温(約25℃)で約24時間維持して硬化させて製造した。
【0150】
7.GPC(Gel Permeation Chromatograph)
分子量特性は、GPC(Gel permeation chromatography)を使用して測定した。5mLバイアル(vial)に分析対象材料を入れ、約5mg/mL程度の濃度となるようにトルエンに希釈する。その後、Calibration用標準試料と分析しようとする材料をsyringe filter(pore size:0.45μm)を介してろ過させた後に測定した。分析プログラムは、Agilent technologies社のChemStationを使用し、試料のelution timeをcalibration curveと比較して重量平均分子量(Mw)または数平均分子量(Mn)をそれぞれ求めた。GPCの測定条件は、下記の通りである。
<GPC測定条件>
機器:Agilent technologies社の1200series
カラム:Polymer laboratories社のPLgel mixed B 2個使用
溶媒:トルエン
カラム温度:40℃
サンプル濃度:5mg/mL、10μL注入
標準試料:ポリスチレン(Mp:3900000、723000、316500、52200、31400、7200、3940、485)
【0151】
8.フィラーの粒径分析
フィラーの粒径は、ISO-13320に準拠してMarven社のMASTERSIZER 3000装備を利用して測定し、測定時に溶媒としては、Ethanolを使用した。フィラーの粒径としては、D50粒径を測定し、これを平均粒径とした。前記D50粒径は、粒度分布の体積基準累積50%での粒子直径(メディアン直径)であり、体積基準として粒度分布を求め、全体積を100%とする累積曲線で累積分が50%となる地点での粒子直径である。
【0152】
実施例1.
主剤パーツの製造
硬化性組成物の主剤パーツは、硬化性樹脂成分として、シリコーン樹脂成分(KCC社製、SL3000)を使用して製造した。前記シリコーン樹脂成分の主剤(SL3000A)と相転移物質として、融点が約44℃程度であるn-ドコサン(n-docosane,sigma Aldrich)を混合し、主剤パーツを製造した。前記主剤(SL3000A)の重量平均分子量(Mw)は、約28,000g/mol程度であった。また、前記相転移物質は、DSC分析で20℃~60℃の温度範囲で約180J/g程度の潜熱を示した。前記混合時には、前記主剤(SL3000A)100重量部に対して約25重量部の相転移物質を混合した。主剤パーツの製造時に、まず相転移物質を約60℃の温度で1時間均一に撹拌(300rpm)して溶融させ、溶融した相転移物質に主剤パーツの他の成分を混合し、500rpmで2時間さらに撹拌した。前記相転移物質と主剤パーツの他の成分の混合は、約60℃程度の温度で行った。その後、真空雰囲気で50rpmの条件で20分間撹拌して脱泡することによって、主剤パーツを製造した。
【0153】
硬化剤パーツの製造
前記主剤パーツのシリコーン樹脂成分(KCC社製、SL3000)の硬化剤(SL3000B)と相転移物質を混合し、硬化剤パーツを製造した。相転移物質としては、主剤パーツの製造時と同じものを使用した。前記硬化剤(SL3000B)の重量平均分子量(Mw)は、約28,000g/mol程度であった。前記混合時には、前記硬化剤(SL3000B)100重量部に対して約25重量部の相転移物質を混合した。硬化剤パーツの製造時に、まず相転移物質を約60℃の温度で1時間均一に撹拌(300rpm)して溶融させ、溶融した相転移物質に硬化剤パーツの他の成分を混合し、500rpmで2時間さらに撹拌した。前記相転移物質と硬化剤パーツの他の成分の混合は、約60℃程度の温度で行った。その後、真空雰囲気で50rpmの条件で20分間撹拌して脱泡することによって、主剤パーツを製造した。
【0154】
硬化性組成物
前記主剤および硬化剤パーツを体積比が1:1となるように準備し、硬化性組成物を製造した。前記硬化性組成物は、常温硬化型であり、前記硬化性組成物を常温で約12時間以上維持して硬化させることができる。図3は、前記硬化体に対して行ったDSC分析結果を示す図である。
【0155】
実施例2.
主剤パーツの製造
硬化性樹脂成分として、ポリウレタン成分(Lord社製、Circalok 6410)を使用した。前記ポリウレタン成分の主剤(Lord社製、Circalok 6410 A)と相転移物質を混合し、主剤パーツを製造した。相転移物質としては、実施例1で使用したn-ドコサン(n-docosane,sigma Aldrich)と融点が約53℃のn-ペンタコサン(n-pentacosane(C25)、Sigma Aldrich)を使用した。前記融点が約53℃のパラフィン(n-pentacosane(C25))は、DSC分析で30℃~70℃の温度範囲で約175J/g程度の潜熱を示した。前記混合時には、前記主剤とパラフィンの混合比は、100:35:15(Circalok 6410A:n-docosane:n-pentacosane)とした。
【0156】
硬化剤パーツの製造
ポリウレタン成分(Lord社製、Circalok 6410)の硬化剤(Circalok 6410 B)と相転移物質を混合し、硬化剤パーツを製造した。相転移物質としては、主剤パーツの製造時と同じものを使用した。前記混合時には、前記混合比は、100:35:15(Circalok 6410 B:n-docosane:n-pentacosane)とした。
【0157】
硬化性組成物
前記主剤および硬化剤パーツを体積比が1:1となるように準備し、硬化性組成物を製造した。前記硬化性組成物は、常温硬化型であり、前記硬化性組成物を常温で約12時間以上維持して硬化させることができる。図3は、前記硬化体に対して行ったDSC分析結果を示す図である。
【0158】
実施例3.
主剤パーツと硬化剤パーツの製造時に、水酸化アルミニウム(ATH)(D50粒径:約50μm、Sigma Aldrich社製)をさらに配合したことを除いて、実施例1と同一に硬化性組成物を製造した。主剤パーツの製造時に、主剤(SL3000A)、n-ドコサン(n-docosane,sigma Aldrich)および前記水酸化アルミニウムの配合重量比は、100:60:40(主剤:n-docosane:ATH)とし、硬化剤パーツの製造時には、硬化剤、相転移物質および前記水酸化アルミニウムの配合重量比は、100:60:40(硬化剤:n-docosane:水酸化アルミニウム)とした。図3は、前記硬化体に対して行ったDSC分析結果を示す図である。
【0159】
比較例1.
相転移物質を配合しないことを除いて、実施例1と同一に主剤および硬化剤パーツと硬化性組成物を製造した。
【0160】
比較例2.
主剤パーツの製造時に、主剤(SL3000A)および相転移物質の配合重量比を100:80(主剤:n-docosane)とし、硬化剤パーツの製造時には、硬化剤と相転移物質の配合重量比を100:80(硬化剤:n-docosane)としたことを除いて、実施例1と同一に主剤および硬化剤パーツと硬化性組成物を製造した。
【0161】
比較例3.
主剤パーツの製造時に、主剤(SL3000A)および相転移物質の配合重量比を100:17(主剤:n-docosane)とし、硬化剤パーツの製造時には、硬化剤と相転移物質の配合重量比を100:17(硬化剤:n-docosane)としたことを除いて、実施例1と同一に主剤および硬化剤パーツと硬化性組成物を製造した。
【0162】
比較例4.
主剤パーツの製造
硬化性組成物の主剤パーツをシリコーン樹脂成分(DAMI POLYCHEM社製、VP100)、実施例1で使用したものと同じ相転移物質(n-docosane)および触媒(DAMI POLYCHEM社製、CP101)を混合して製造した。前記樹脂成分(VP100)の重量平均分子量(Mw)は、約6,000g/mol程度であった。前記混合は、100:0.5:25の重量比(VP100:CP101:n-docosane)とした。混合方式は、実施例1と同一である。
【0163】
硬化剤パーツの製造
シリコーン樹脂成分(DAMI POLYCHEM社製、VP100)、硬化剤(DAMI POLYCHEM社製、FD5020)および実施例1と同じ相転移物質を使用して硬化剤パーツを製造した。前記シリコーン樹脂成分(VP100)の重量平均分子量(Mw)は、約6,000g/mol程度であった。前記混合は、100:3:25の重量比(VP100:FD5020:n-docosane)とした。混合方式は、実施例1と同一である。
【0164】
硬化性組成物
前記主剤および硬化剤パーツを体積比が1:1となるように準備し、硬化性組成物を製造した。前記硬化性組成物は、常温硬化型であり、前記硬化性組成物を常温で約24時間以上維持して硬化させることができる。
【0165】
比較例5.
主剤パーツの製造
硬化性組成物の主剤パーツをシリコーン樹脂成分(DAMI POLYCHEM社製、VP1000)、実施例1で使用したものと同じ相転移物質(n-docosane)および触媒(DAMI POLYCHEM社製、CP101)を混合して製造した。前記樹脂成分(VP1000)の重量平均分子量(Mw)は、約28,000g/mol程度であった。前記混合は、100:0.5:25の重量比(VP1000:CP101:n-docosane)とした。混合方式は、実施例1と同一である。
【0166】
硬化剤パーツの製造
シリコーン樹脂成分(DAMI POLYCHEM社製、VP1000)、硬化剤(DAMI POLYCHEM社製、FD5020)および実施例1と同じ相転移物質を使用して硬化剤パーツを製造した。前記シリコーン樹脂成分(VP1000)の重量平均分子量(Mw)は、約28,000g/mol程度であった。前記混合は、100:0.5:25の重量比(VP100:FD5020:n-docosane)とした。混合方式は、実施例1と同一である。
【0167】
硬化性組成物
前記主剤および硬化剤パーツを体積比が1:1となるように準備し、硬化性組成物を製造した。前記硬化性組成物は、常温硬化型であり、前記硬化性組成物を常温で約24時間以上維持して硬化させることができる。
【0168】
比較例6.
主剤パーツと硬化剤パーツの製造時に、相転移物質として、n-ドコサンの代わりに、ドコサン-1-オール(docosan-1-ol、融点約72.5℃)を使用したことを除いて、実施例1と同一に主剤パーツと硬化剤パーツおよび硬化性組成物を製造した。
【0169】
比較例7.
主剤パーツと硬化剤パーツの製造時に、相転移物質として、n-ドコサンの代わりに、ヘキサデカン(hexadecane、融点約18℃)を使用したことを除いて、実施例1と同一に、主剤パーツと硬化剤パーツおよび硬化性組成物を製造した。
前記実施例および比較例に対する評価結果を整理すれば、下記表1~表3の通りである。比較例7の場合、硬化性組成物の硬化が効率的に進行されないので、硬化体が形成されず、その結果、硬度、重さ変化および温度制御性能を確認できなかった。
【0170】
【表1】
【0171】
【表2】
【0172】
【表3】


図1
図2
図3
【国際調査報告】