(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用電極、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/46 20210101AFI20240822BHJP
H01M 50/491 20210101ALI20240822BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20240822BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240822BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240822BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240822BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20240822BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240822BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240822BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240822BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240822BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240822BHJP
【FI】
H01M50/46
H01M50/491
H01M50/449
H01M50/443 B
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/414
H01M50/426
H01M50/42
H01M50/489
H01M50/403 D
H01M4/13
H01M4/139
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510374
(86)(22)【出願日】2023-05-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 KR2023006833
(87)【国際公開番号】W WO2023229299
(87)【国際公開日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】10-2022-0063562
(32)【優先日】2022-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0062527
(32)【優先日】2023-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キョンス・イ
(72)【発明者】
【氏名】インヨン・ユ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ミ・ジン
【テーマコード(参考)】
5H021
5H050
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021CC04
5H021EE22
5H021EE32
5H021HH01
5H021HH02
5H021HH03
5H021HH10
5H050AA12
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA09
5H050DA19
5H050FA13
5H050GA02
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA09
5H050HA12
(57)【要約】
本発明は、電極基材;前記電極基材上に形成され、空隙率が10%以下の第1多孔性層;および前記第1多孔性層上に形成され、バインダー樹脂および無機微細粒子を含み、空隙率が30%以上の第2多孔性層;を含む、リチウム二次電池用電極、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極基材;
前記電極基材上に形成され、空隙率が10%以下の第1多孔性層;および
前記第1多孔性層上に形成され、バインダー樹脂および無機微細粒子を含み、空隙率が30%以上の第2多孔性層;を含む、リチウム二次電池用電極。
【請求項2】
前記第1多孔性層の空隙率と前記第2多孔性層の空隙率の差が20%以上である、請求項1に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項3】
前記第1多孔性層は、空隙率が0.1%以上10%以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項4】
前記第2多孔性層は、空隙率が30%以上90%以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項5】
前記無機微細粒子は、10nm以上10μm以下の粒径を有する無機微細粒子を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項6】
前記無機微細粒子は、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、シリカ、チタニア、ジルコニア、ジルコニウムチタネート、La
2O
3、Y
2O
3、SrTiO
3、BaTiO
3、マグネシア、水酸化マグネシウム、アルミノシリケート、ゼオライト、LLZO、LATP、PZTからなる群より選択された1種以上の無機微細粒子を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項7】
前記第2多孔性層は、前記バインダー樹脂100重量部に対して、前記無機微細粒子を50重量部以上3000重量部以下で含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項8】
前記第1多孔性層は、イオン伝導性高分子を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項9】
前記イオン伝導性高分子は、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリエチルメタ(アクリレート)、ポリカプロラクトンからなる群より選択された1種以上のイオン伝導性高分子を含む、請求項8に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項10】
前記第1多孔性層は、リチウム塩を含む、請求項8に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項11】
前記第1多孔性層は、前記イオン伝導性高分子100重量部に対して、前記リチウム塩を5重量部以上200重量部以下で含む、請求項10に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項12】
前記第1多孔性層は、ニトリル系化合物およびエーテル系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物を含む、請求項10に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項13】
前記第1多孔性層は、前記イオン伝導性高分子100重量部に対して、前記ニトリル系化合物およびエーテル系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物およびリチウム塩を50重量部以上1000重量部以下で含む、請求項12に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項14】
前記第1多孔性層は、第1多孔性層全体重量に対して、無機微細粒子を0.0001重量部未満で含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項15】
前記バインダー樹脂は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン-トリクロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキシド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルフルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、フルラン、カルボキシルメチルセルロース、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリイミド、およびスチレンブタジエンゴムからなる群より選択された1種以上のバインダー樹脂を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項16】
前記第1多孔性層の厚さおよび前記第2多孔性層の厚さの比率が1:1.1~1:20である、請求項1に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項17】
前記第1多孔性層は、0.1μm以上10μm以下であり、
前記第2多孔性層は、5μm以上30μm以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項18】
電極基材上に第1多孔性層形成用組成物を塗布して乾燥させることにより、前記電極基材の少なくとも一面に第1多孔性層を形成させるステップ;および
前記第1多孔性層上にバインダー樹脂および無機微細粒子を含む第2多孔性層形成用組成物を塗布して乾燥させることにより、第2多孔性層を形成させるステップ;を含み、
前記第1多孔性層は、空隙率が10%以下であり、
前記第2多孔性層は、空隙率が30%以上である、リチウム二次電池用電極の製造方法。
【請求項19】
請求項1から17のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用電極を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2022年5月24日付の韓国特許出願第10-2022-0063562号および2023年5月15日付韓国特許出願第10-2023-0062527号に基づいた優先権の利益を主張して、当該韓国特許出願らの文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、電極上に形成された多孔性層を含み、高い絶縁特性と低い抵抗特性を実現することができるリチウム二次電池用電極、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するにつれ、エネルギー源としての充放電が可能な二次電池の需要が急増し、それに伴い様々な要求に対応できる二次電池に対する多くの研究が行われている。また、二次電池は、化石燃料を使用する従来のガソリン車、ディーゼル車などの大気汚染などを解決するための方案として提示されている電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in HEV)などの動力源としても注目されている。
【0004】
リチウム二次電池は、正極と負極の接触によって短絡が発生すると、深刻な発熱と共に爆発が起きる。二次電池の多孔性分離膜は、材料的特性と延伸を含む製造工程上の特性により、約100℃以上の温度で深刻な熱収縮挙動を示すことにより、正極と負極との間の短絡を起こす問題がある。このような電池の安全性問題を解決するために、多孔性基材上に絶縁性充填材(filler)粒子とバインダー高分子の混合物で形成された多孔性コーティング層を設けると共に、多孔性コーティング層にシャットダウン(shut-down)機能を有する物質を添加した分離膜が提示された。
【0005】
しかし、多孔性基材上に無機物粒子を有する多孔性コーティング層が形成された形態の従来の分離膜の場合、別途の接着層がないため、相対電極との界面接着力が弱く電池組み立て工程性が低下し、電極の膨張および収縮に伴い接着力不足で界面剥離が起きて電池の寿命特性が低下する問題があった。
【0006】
そこで、優れた接着力と電池寿命特性を実現する分離膜を含むリチウム二次電池に対する研究が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高い絶縁特性と低い抵抗特性を実現するリチウム二次電池用電極を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、前記リチウム二次電池用電極の製造方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記リチウム二次電池用電極を含むリチウム二次電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電極基材;前記電極基材上に形成され、空隙率が10%以下の第1多孔性層;および前記第1多孔性層上に形成され、バインダー樹脂および無機微細粒子を含み、空隙率が30%以上の第2多孔性層;を含む、リチウム二次電池用電極を提供する。
【0011】
本発明はまた、電極基材上に第1多孔性層形成用組成物を塗布して乾燥させることにより、前記電極基材の少なくとも一面に第1多孔性層を形成させるステップ;および前記第1多孔性層上にバインダー樹脂および無機微細粒子を含む第2多孔性層形成用組成物を塗布して乾燥させることにより、第2多孔性層を形成させるステップ;を含み、前記第1多孔性層は、空隙率が10%以下であり、前記第2多孔性層は、空隙率が30%以上である、リチウム二次電池用電極の製造方法を提供する。
【0012】
本発明はまた、前記リチウム二次電池用電極を含むリチウム二次電池を提供する。
【0013】
以下、発明の実施形態によるリチウム二次電池用電極、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池などについて具体的に説明する。
【0014】
本明細書および特許請求の範囲で使用された用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈されるべきではなく、発明者は、自身の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるは原則に基づいて、発明の技術的な思想に合致する意味と概念で解釈されるべきである。
【0015】
本明細書で特に定義されない限り、すべての技術用語および科学用語は、本発明の属する通常の技術者らによって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本発明で説明に使用される用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであり、本発明を制限することを意図するものではない。
【0016】
本明細書で使用される単数形態は、文言が明らかに反対の意味を示さない限り複数形態も含む。
【0017】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、ステップ、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、ステップ、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を排除するものではない。
【0018】
本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示し以下で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定しようとするものではなくて、前記思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものと理解されるべきである。
【0019】
本明細書において、例えば「~上に」、「~上部に」、「~下部に」、「~横に」などで二つの部分の位置関係が説明される場合、「すぐ」または「直接」という表現が使用されない限り、二つの部分の間に一つ以上の他の部分が位置することができる。
【0020】
本明細書において、例えば「~後に」、「~に続いて」、「~次に」、「~前に」などで時間的な前後関係が説明される場合、「すぐ」または「直接」という表現が使用されない限り、連続的でない場合も含むことができる。
【0021】
本明細書で「少なくとも一つ」の用語は、一つ以上の関連項目から提示可能なすべての組み合わせを含むと理解されるべきである。
【0022】
発明の一実施形態によれば、電極基材;前記電極基材上に形成され、空隙率が10%以下の第1多孔性層;および前記第1多孔性層上に形成され、バインダー樹脂および無機微細粒子を含み、空隙率が30%以上の第2多孔性層;を含む、リチウム二次電池用電極が提供される。
【0023】
従来のリチウム二次電池は、正極と負極との間に介される分離膜が多孔性基材と多孔性基材上に形成された第1多孔性層を含むため、別途の接着層がなく、相対電極との界面接着力が弱く、電池の組み立て工程性が低下し、電極の膨張および収縮により接着力不足で界面剥離が起きて電池の寿命特性が低下される問題があった。
【0024】
そこで、本発明者らは、従来分離膜として使用された多孔性基材と多孔性基材上に形成されたコーティング層を含む多孔性高分子分離膜の代わりに、前記空隙率が10%以下の第1多孔性層;および第1バインダー樹脂および無機微細粒子を含み、空隙率が30%以上の第2多孔性層;を含むことにより、前記問題を解決する可能性があることを確認した。
【0025】
具体的に、本発明者らは、リチウム二次電池に使用される分離膜が多孔性基材なしで電極基材上に直接形成されるため、空隙率が低い第1多孔性層を電極と当接する界面にコーティングすることにより、界面接触面積を増加させて電極が膨張および収縮しても接着力が維持されて優れた電池寿命特性を実現することができることを実験を通じて確認し、発明を完成した。
【0026】
また、本発明者らは、本願発明のリチウム二次電池用電極が電極基材上に形成され、空隙率が10%以下の第1多孔性層;および前記第1多孔性層上に形成され、バインダー樹脂および無機微細粒子を含み、空隙率が30%以上の第2多孔性層;を含むことにより、空隙率が低い第1多孔性層の緻密な構造によって乾燥過程で発生する第2多孔性層の無機微細粒子およびバインダー樹脂の下部電極界面への移動を防いで電極界面での抵抗増加を抑制し、第1多孔性層内にイオン伝導性バインダー樹脂によって低い抵抗特性を同時に実現できることを実験を通じて確認して発明を完成した。
【0027】
前記リチウム二次電池用電極は、リチウム二次電池用正極であってもよく、またはリチウム二次電池用負極であってもよい。
【0028】
前記実施形態のリチウム二次電池用電極において、前記第1多孔性層の空隙率と前記第2多孔性層の空隙率の差が20%以上であってもよい。
【0029】
前記第1多孔性層の空隙率と前記第2多孔性層の空隙率の差は、下記数式1によって計算することができる。
【0030】
[数式1]
前記第1多孔性層の空隙率と前記第2多孔性層の空隙率の差(%)=前記第2多孔性層の空隙率(%)-前記第1多孔性層の空隙率(%)
【0031】
前記第1多孔性層の空隙率と前記第2多孔性層の空隙率の差は、具体的に20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、99%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、55%以下であってもよく、20%以上99%以下、20%以上90%以下、20%以上80%以下、20%以上70%以下、20%以上60%以下、20%以上55%以下、30%以上99%以下、30%以上90%以下、30%以上80%以下、30%以上70%以下、30%以上60%以下、30%以上55%以下、40%以上99%以下、40%以上90%以下、40%以上80%以下、40%以上70%以下、40%以上60%以下、40%以上55%以下、50%以上99%以下、50%以上90%以下、50%以上80%以下、50%以上70%以下、50%以上60%以下、50%以上55%以下であってもよい。
【0032】
前記第1多孔性層の空隙率と前記第2多孔性層の空隙率の差が20%以上を満たすことより、優れた電池特性と絶縁特性を実現することができる。
【0033】
前記第1多孔性層の空隙率と前記第2多孔性層の空隙率の差が20%未満の場合、前記第1多孔性層の空隙率が大きすぎて、イオン伝導が起こりにくくなったり、前記第2多孔性層の空隙率が小さすぎて、イオン伝導時抵抗が大きくなり得る。
【0034】
また、前記第1多孔性層の空隙率と前記第2多孔性層の空隙率の差が大きすぎると、誘電率が低い空の空間の増加に絶縁特性が低くなるという技術的問題が発生し得る。
【0035】
具体的に、前記一実施形態のリチウム二次電池用電極において、前記第2多孔性層は空隙率が30%以上、30%以上90%以下、40%以上90%以下、40%以上80%以下であってもよく、または40%以上70%以下、40%以上60%以下、50%以上60%以下であってもよい。
【0036】
前記第2多孔性層の空隙率は、後述する第2多孔性層の組成に応じて実現することができる。前記第2多孔性層の空隙率が、30%以上90%以下であることにより、空隙を通したイオン伝導が可能な効果を実現することができる。
【0037】
前記第2多孔性層の空隙率が30%未満の場合、イオン伝導時抵抗が大きくなる可能性があり、前記第2多孔性層の空隙率が90%超の場合、誘電率が低い空の空間の増加で絶縁特性が低くなる技術的問題が発生し得る。
【0038】
前記空隙率は、スラリー内に無機微細粒子の密度/比率、バインダーの密度/比率と測定された試料の重量(ローディング量)と厚さの値から計算して得ることができる。
【0039】
または、前記空隙率は、一定の面積の電極に前記組成でコーティングされた試料に対して第2多孔性層の体積と質量を測定して得られた密度とコーティング組成の固形分の理論密度の比率を利用して下記数式2によって計算することができる。
【0040】
[数式2]
空隙率(%)={1-(実際の密度)/(理論密度)}×100
【0041】
具体的に、前記一実施形態のリチウム二次電池用電極において、前記第1多孔性層は、空隙率が10%以下、0.01%以上、0.1%以上、1%以上、5%以上、7%以上であってもよく、または0.01%以上10%以下、0.1%以上10%以下、1%以上10%以下、5%以上10%以下、7%以上10%以下であってもよい。
【0042】
前記第1多孔性層の空隙率は、後述する第1多孔性層の組成に応じて実現することができる。前記第1多孔性層の空隙率が10%以下であることにより、イオン伝導性高分子間に緻密な構造が形成されるため、イオン伝導が起こりやすく優れた電池特性を実現することができる。
【0043】
前記第1多孔性層の空隙率が10%超の場合、イオン伝導が起こりにくいわりと緻密でない構造が形成され、空隙率が大きくなるほど多孔性層の無機微細粒子およびバインダー樹脂の電極浸透抑制力も減少し得る。
【0044】
前記空隙率は、スラリー内に無機微細粒子の密度/比率、バインダーの密度/比率と測定された試料の重量(ローディング量)と厚さの値から計算して得ることができる。
【0045】
または、前記空隙率は、一定の面積の電極に前記組成でコーティングされた試料に対して第1多孔性層の体積と質量を測定して得られた密度とコーティング組成の固形分の理論密度の比率を利用して下記の数式2によって計算することができる。
【0046】
[数式2]
空隙率(%)={1-(実際の密度)/(理論密度)}×100
【0047】
前記一実施形態のリチウム二次電池用電極において、前記第1多孔性層はイオン伝導性高分子を含むことができる。前記第1多孔性層がイオン伝導性高分子を含むことにより、前記第2多孔性層に伝導性が与えられて前記一実施形態のリチウム二次電池の性能低下を最少化することができる。
【0048】
前記第1多孔性層がイオン伝導性高分子を含まない場合、前記電極基材と前記第1多孔性層との間にイオン伝導性が確保されない問題が発生し得る。
【0049】
前記イオン伝導性高分子は、ヘテロ環芳香族化合物を単量体とする高分子であってもよい。前記ヘテロ環芳香族化合物とは、異種原子としてO、N、SiおよびSのうち1個以上を含み、環構造を有している芳香族化合物を意味する。
【0050】
本明細書において、芳香族(aromatic)は、ヒュッケル則(Huckels Rule)を満たす特性として、前記ヒュッケル則に従って次の三つの条件を全て満たす場合を芳香族と定義することができる。
【0051】
1)空のp-軌道(オービタル)、不飽和結合、ホール電子対などによって完全にコンジュゲーションをなしている4n+2個の電子が存在すべきである。
2)4n+2個の電子は平面形態異性体を構成すべきであり、環構造をなすべきである。
3)環のすべての原子がコンジュゲーションに参加すべきである。
【0052】
前記ヘテロ環芳香族化合物の例としては、チオフェン、フラン、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、ピリジル基、ビピリジン、ピリミジン、トリアジン、アクリジンピリダジン、ピラジン、キノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、ピリドピリミジン、ピリドピラジン、ピラジノピラジン、イソキノリン、インドール、カルバゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾカルバゾール、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾフラニル基、フェナントロリン(phenanthroline)、イソオキサゾール、チアジアゾール、フェノチアジンおよびジベンゾフランなどがあるが、これらにのみ限定されるものではない。前記ヘテロ環芳香族化合物は置換または非置換されてもよい。
【0053】
より具体的に、前記ヘテロ環芳香族化合物は、チオフェン、ピロール、アニリン、またはその誘導体からなる群より選択された1種以上のヘテロ環芳香族化合物を含むことができる。即ち、前記イオン伝導性高分子は、チオフェン、ピロール、アニリン、またはその誘導体からなる群より選択された1種以上のヘテロ環芳香族化合物を単量体で含む高分子であってもよい。
【0054】
例えば、前記イオン伝導性高分子は、3,4-エチレン-ジオキシチオフェン(3,4-ethylene-dioxythiophene)(EDOT)、ピロール、アニリンまたはチオフェンからなる群より選択された1種以上の化合物を単量体で含む高分子であってもよい。
【0055】
前記イオン伝導性高分子は、ポリエチレンオキシド、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸、ポリエチルメタ(アクリレート)、ポリカプロラクトンからなる群より選択された1種以上のイオン伝導性高分子を含むことができる。
【0056】
前記イオン伝導性高分子は、50,000g/mol以上5,000,000g/mol以下の重量平均分子量を有することができる。
【0057】
具体的に、前記イオン伝導性高分子は、50,000g/mol以上、100,000g/mol以上、200,000g/mol以上、300,000g/mol以上、500,000g/mol以上、5,000,000g/mol以下、4,000,000g/mol以下、3,000,000g/mol以下、2,000,000g/mol以下、1,000,000g/mol以下、50,000g/mol以上5,000,000g/mol以下、50,000g/mol以上4,000,000g/mol以下、50,000g/mol以上3,000,000g/mol以下、50,000g/mol以上2,000,000g/mol以下、50,000g/mol以上1,000,000g/mol以下、100,000g/mol以上5,000,000g/mol以下、100,000g/mol以上4,000,000g/mol以下、100,000g/mol以上3,000,000g/mol以下、100,000g/mol以上2,000,000g/mol以下、100,000g/mol以上1,000,000g/mol以下、200,000g/mol以上5,000,000g/mol以下、200,000g/mol以上4,000,000g/mol以下、200,000g/mol以上3,000,000g/mol以下、200,000g/mol以上2,000,000g/mol以下、200,000g/mol以上1,000,000g/mol以下、300,000g/mol以上5,000,000g/mol以下、300,000g/mol以上4,000,000g/mol以下、300,000g/mol以上3,000,000g/mol以下、300,000g/mol以上2,000,000g/mol以下、300,000g/mol以上1,000,000g/mol以下、500,000g/mol以上5,000,000g/mol以下、500,000g/mol以上4,000,000g/mol以下、500,000g/mol以上3,000,000g/mol以下、500,000g/mol以上2,000,000g/mol以下、500,000g/mol以上1,000,000g/mol以下の重量平均分子量を有することができる。
【0058】
前記イオン伝導性高分子の重量平均分子量が小さすぎる場合、粘度が減少して多孔性電極表面にバインダー浸透が増加して界面抵抗が大きくなることがある。また、前記イオン伝導性高分子の重量平均分子量が大きすぎる場合、イオン伝導性高分子マトリックスの鎖長さが長くなり、非晶質/結晶質領域の両方で電解液含浸性が低く、イオン伝導度が減少し得る。
【0059】
また、前記イオン伝導性高分子は、2以上12以下の誘電率を有することができる。
【0060】
具体的に、前記イオン伝導性高分子は、2以上、4以上、12以下、10以下、8以下、2以上12以下、2以上10以下、2以上8以下、4以上12以下、4以上10以下、4以上8以下の誘電率を有することができる。
【0061】
前記イオン伝導性高分子の誘電率が低すぎる場合、リチウム塩の溶解特性が低くなり、イオンの伝導度が低くなることがあり、前記イオン伝導性高分子の誘電率が大きすぎる場合、高誘電率に絶縁特性が低下される技術的問題が発生する。
【0062】
また、前記一実施形態のリチウム二次電池用電極において、前記第1多孔性層は、リチウム塩を含むことができる。前記第1多孔性層がリチウム塩を含むことにより、イオン伝導性高分子内の非晶質領域を拡大させてイオンの拡散速度が増加して、電解液含浸性が向上してイオンの伝導度が増加することができる。
【0063】
前記リチウム塩は、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して、基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす。
【0064】
具体的に、前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(SO2F)2(LiFSI、lithiumbis(fluorosulfonyl)imide)、LiCl、LiI、LiTFSiおよびLiB(C2O4)2からなる群より選択された1種以上のリチウム塩であってもよい。好ましくは、前記リチウム塩は、LiPF6、LiFSI、およびLiTFSiからなる群より選択された1種以上のリチウム塩であってもよい。
【0065】
前記一実施形態において、前記第1多孔性層は、前記イオン伝導性高分子100重量部に対して、前記リチウム塩を5重量部以上200重量部以下で含むことができる。
【0066】
具体的に、前記第1多孔性層は、前記イオン伝導性高分子100重量部に対して、前記リチウム塩を5重量部以上、10重量部以上、20重量部以上、200重量部以下、100重量部以下、70重量部以下、50重量部以下、30重量部以下、25重量部以下、5重量部以上200重量部以下、5重量部以上100重量部以下、5重量部以上70重量部以下、5重量部以上50重量部以下、5重量部以上30重量部以下、5重量部以上25重量部以下、10重量部以上200重量部以下、10重量部以上100重量部以下、10重量部以上70重量部以下、10重量部以上50重量部以下、10重量部以上30重量部以下、10重量部以上25重量部以下、20重量部以上200重量部以下、20重量部以上100重量部以下、20重量部以上70重量部以下、20重量部以上50重量部以下、20重量部以上30重量部以下、20重量部以上25重量部以下で含むことができる。
【0067】
前記第1多孔性層は、前記イオン伝導性高分子100重量部に対して、前記リチウム塩を5重量部未満で含む場合、絶対的なリチウムイオン濃度が減少して抵抗が増加する技術的問題が発生する。
【0068】
また、前記第1多孔性層は、前記イオン伝導性高分子100重量部に対して、前記リチウム塩を200重量部超含む場合、リチウム塩の濃度がイオン伝導性高分子マトリックスの解離度以上に増加して、イオン伝導性高分子内イオン移動が邪魔になって抵抗が増加する技術的問題が発生する。
【0069】
また、前記第1多孔性層は、前記リチウム塩以外にニトリル系化合物およびエーテル系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物をさらに含むことができる。
【0070】
前記第1多孔性層が、ニトリル系化合物およびエーテル系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物を含むことにより、ニトリル系化合物およびエーテル系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物の高い誘電率によってイオンの伝導度が向上することができる。
【0071】
前記第1多孔性層が、前記リチウム塩以外にニトリル系化合物およびエーテル系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物を含む場合、上述のリチウム塩が、前記ニトリル系化合物およびエーテル系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物に溶解した形態で含まれる。具体的に、前記リチウム塩は、前記ニトリル系化合物およびエーテル系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物に0.1M~2.0Mの濃度で含まれる。前記濃度範囲で含まれるリチウム塩は、適切な伝導度と粘度を付与することにより、優れた電解質性能を示すことができる。
【0072】
具体的に、前記ニトリル系化合物は、スクシノニトリル(Succinonitrile)、アジポニトリル(Adiponitrile)、セバコニトリル(Sebaconitrile)、アセトニトリル(Acetonitrile)、およびプロピオニトリル(Propionitrile)からなる群より選択される1種以上のニトリル系化合物を含むことができる。
【0073】
前記エーテル系化合物は、ジブチルエーテル(Dibutyl Ether)、テトラグライム(Tetra Glyme)、ジグライム(Diglyme)、ジメトキシエタン(Dimethoxyethane)、2-メチルテトラヒドロフラン(2-methylhydrofuran)、およびテトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran)からなる群より選択される1種以上のエーテル系化合物を含むことができる。
【0074】
前記一実施形態において、前記第1多孔性層が、前記ニトリル系化合物およびエーテル系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物およびリチウム塩を全て含む場合、前記第1多孔性層は、前記イオン伝導性高分子100重量部に対して、前記ニトリル系化合物およびエーテル系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物およびリチウム塩を50重量部以上1000重量部以下で含むことができる。
【0075】
具体的に、前記第1多孔性層は、前記イオン伝導性高分子100重量部に対して、前記ニトリル系化合物およびエーテル系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物およびリチウム塩を50重量部以上、100重量部以上、101重量部以上、200重量部以上、300重量部以上、1000重量部以下、800重量部以下、500重量部以下、400重量部以下、50重量部以上1000重量部以下、100重量部以上1000重量部以下、101重量部以上1000重量部以下、200重量部以上1000重量部以下、300重量部以上1000重量部以下、50重量部以上800重量部以下、100重量部以上800重量部以下、101重量部以上800重量部以下、200重量部以上800重量部以下、300重量部以上800重量部以下、50重量部以上500重量部以下、100重量部以上500重量部以下、101重量部以上500重量部以下、200重量部以上500重量部以下、300重量部以上500重量部以下、50重量部以上400重量部以下、100重量部以上400重量部以下、101重量部以上400重量部以下、200重量部以上400重量部以下、300重量部以上400重量部以下で含むことができる。
【0076】
前記第1多孔性層が、前記イオン伝導性高分子100重量部に対して、前記ニトリル系化合物およびエーテル系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物およびリチウム塩を50重量部未満で含む場合、前記ニトリル系化合物およびエーテル系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物およびリチウム塩の可塑性によるイオン伝導性高分子非晶質領域増加効果が減少し、前記ニトリル系化合物およびエーテル系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物およびリチウム塩の高い誘電率によるリチウム塩の溶媒和効果が減少して抵抗が大きくなる問題が発生する。
【0077】
また、前記第1多孔性層が、前記イオン伝導性高分子100重量部に対して、前記ニトリル系化合物およびエーテル系化合物からなる群より選択された1種以上の化合物およびリチウム塩を1000重量部超で含む場合、イオン伝導性高分子マトリックスの構造的特性を低下するようになり、機械的特性が不良になる。
【0078】
前記一実施形態において、前記第1多孔性層は、第1多孔性層全体重量に対して無機微細粒子を0.0001重量部未満で含むことができる。第1多孔性層全体重量に対して無機微細粒子を0.0001重量部未満で含むことは、前記第1多孔性層が無機微細粒子を含まないことを意味する。
【0079】
前述のように、前記第1多孔性層は、10%以下の空隙率を有することができる。多孔性層形成時、無機微細粒子が過量に含まれる場合、他の成分との結合力や膨張程度の差により、気孔が多数形成され、または多孔性層に含まれる成分に応じて、気孔形成程度が変わる。これに反して、前記第1多孔性層は、相対的に低い含有量の無機微細粒子を含むか、第1多孔性層に含まれる他の追加的な成分、例えば後述するイオン伝導性高分子などの使用により、前述のような低い数値の空隙率を有することができる。
【0080】
前記一実施形態のリチウム二次電池用電極において、前記第1多孔性層は、選択的にイオン伝導性高分子以外にバインダー樹脂をさらに含むことができる。前記第1多孔性層がバインダー樹脂を含むことにより、前記第1多孔性層の接着力が向上することができる。
【0081】
前記一実施形態において、前記第1多孔性層がバインダー樹脂を含む場合、前記第1多孔性層は、前記イオン伝導性高分子100重量部に対して、前記バインダー樹脂を1重量部以上50重量部以下で含むことができる。前記第1多孔性層は、前記イオン伝導性高分子100重量部に対して、前記バインダー樹脂を1重量部以上50重量部以下で含むことにより、前記第1多孔性層の空隙率が10%以下を満たすことができる。
【0082】
具体的に、前記第1多孔性層は、前記イオン伝導性高分子100重量部に対して、前記バインダー樹脂を1重量部以上、5重量部以上、50重量部以下、30重量部以下、25重量部以下、20重量部以下で含むことができ、1重量部以上50重量部以下、1重量部以上30重量部以下、1重量部以上25重量部以下、1重量部以上20重量部以下、5重量部以上50重量部以下、5重量部以上30重量部以下、5重量部以上25重量部以下、5重量部以上20重量部以下で含むことができる。
【0083】
前記第1多孔性層が、前記イオン伝導性高分子100重量部に対して、前記バインダー樹脂を1重量部未満で含む場合、表面バインダー露出程度減少による接着特性低下により、多孔性層/電極界面接着力減少によるセル特性低下が発生し、前記第1多孔性層が、前記イオン伝導性高分子100重量部に対して、前記バインダー樹脂を50重量部超で含む場合、第1多孔性層イオン伝導性低下により、セル内部抵抗増加が発生する。
【0084】
前記第1多孔性層のバインダー樹脂は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン-トリクロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキシド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルフルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、フルラン、カルボキシルメチルセルロース、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリイミド、およびスチレンブタジエンゴムからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物であってもよい。
【0085】
一方、前記第2多孔性層は、バインダー樹脂および無機微細粒子を含むことができる。
【0086】
前記第2多孔性層は、無機微細粒子の大きさ、無機微細粒子の含有量およびバインダー樹脂の含有量を調節することにより、マイクロ単位の気孔を形成することができ、また、気孔の大きさおよび気孔度を調節することができる。即ち、前記第2多孔性層は、バインダー樹脂および無機微細粒子を含むことにより、前記第2多孔性層の空隙率が30%以上を満たすことができる。
【0087】
前記無機微細粒子は第2多孔性層を形成する主成分であって、無機微細粒子の間に空の空間が存在し、微細気孔を形成する役割を果たし、第2多孔性層の物理的形態を維持することができる一種のスペーサ(spacer)の役割を兼ねることになる。
【0088】
前記無機微細粒子は、10nm以上10μm以下の粒径を有する無機微細粒子を含むことができる。前記無機微細粒子の粒径は、前記第2多孔性層の断面に対して撮影した走査電子顕微鏡イメージ(SEM)または透過電子顕微鏡イメージ(TEM)を介して確認することができる。
【0089】
具体的に、前記無機微細粒子は、粒径が10nm以上、100nm以上、10μm以下、1μm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、500nm以下であってもよく、10nm以上10μm以下、10nm以上1μm以下、10nm以上900nm以下、10nm以上800nm以下、10nm以上700nm以下、10nm以上500nm以下、100nm以上10μm以下、100nm以上1μm以下、100nm以上900nm以下、100nm以上800nm以下、100nm以上700nm以下または100nm以上500nm以下の無機微細粒子を含むことができる。
【0090】
前記無機微細粒子の粒径が、10nm未満の場合、分散性が低下して多孔性層の物性を調節するのが容易ではなく、1μmを超える場合、多孔性層の厚さが増加して機械的物性が低下し、また、大きすぎる気孔の大きさにより、電池充放電時に内部短絡が起こる確率が高くなる。
【0091】
また、前記無機微細粒子は、D50が10nm以上1μm以下であってもよい。前記D50とは、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置を利用して測定した粒径のうち、小さい方から質量基準に累積50%粒径を意味する。
【0092】
具体的に、前記無機微細粒子は、D50が10nm以上、100nm以上、1μm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、500nm以下であってもよく、10nm以上1μm以下、10nm以上900nm以下、10nm以上800nm以下、10nm以上700nm以下、10nm以上500nm以下、100nm以上1μm以下、100nm以上900nm以下、100nm以上800nm以下、100nm以上700nm以下、または100nm以上500nm以下であってもよい。
【0093】
前記無機微細粒子の平均粒径(D50)が、10nm未満の場合、分散性が低下して多孔性層の物性を調節するのが容易ではなく、1μmを超える場合、多孔性層の厚さが増加して機械的物性が低下し、また、大きすぎる気孔の大きさにより、電池充放電時に内部短絡が起こる確率が高くなる。
【0094】
前記一実施形態において、前記無機微細粒子は、電気化学的に安定であれば、特に制限されない。具体的に、前記無機微細粒子は、適用される電池の作動電圧範囲で酸化および/または還元反応が起きないものであれば特に制限されない。特に、イオン伝達能力がある無機微細粒子を使用する場合、リチウム二次電池内のイオンの伝導度を高めて性能向上を図ることができる。また、無機微細粒子として誘電率の高い無機物粒子を使用する場合、液体電解質内電解質塩、例えばリチウム塩の解離度増加に寄与して電解液のイオンの伝導度を向上させることができる。
【0095】
例えば、前記無機微細粒子は、アルミナ(Al2O3)、ベーマイト(AlOOH)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、ジルコニウムチタネート(ZrTiO4)、La2O3、Y2O3、SrTiO3、BaTiO3、マグネシア(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、アルミノシリケート(Al2O5Si)、ゼオライト(zeolite)、LLZO(Li7La3Zr2O12)、LATP(Li1+xAlxTi2-x(PO4)3、0<x<2)、PZT(Pb[ZrxTi1-x]O3、0≦x≦1)からなる群より選択された1種以上の無機微細粒子を含むことができる。
【0096】
また、前記第2多孔性層は、前記バインダー樹脂100重量部に対して、前記無機微細粒子を50重量部以上3000重量部以下で含むことができる。
【0097】
具体的に、前記第2多孔性層は、前記バインダー樹脂100重量部に対して、前記無機微細粒子を50重量部以上、100重量部以上、110重量部以上、300重量部以上、500重量部以上、900重量部以上、3000重量部以下、2500重量部以下、2000重量部以下、1500重量部以下、1000重量部以下、50重量部以上3000重量部以下、100重量部以上3000重量部以下、110重量部以上3000重量部以下、300重量部以上3000重量部以下、500重量部以上3000重量部以下、900重量部以上3000重量部以下、50重量部以上2500重量部以下、100重量部以上2500重量部以下、110重量部以上2500重量部以下、300重量部以上2500重量部以下、500重量部以上2500重量部以下、900重量部以上2500重量部以下、50重量部以上2000重量部以下、100重量部以上2000重量部以下、110重量部以上2000重量部以下、300重量部以上2000重量部以下、500重量部以上2000重量部以下、900重量部以上2000重量部以下、50重量部以上1500重量部以下、100重量部以上1500重量部以下、110重量部以上1500重量部以下、300重量部以上1500重量部以下、500重量部以上1500重量部以下、900重量部以上1500重量部以下、50重量部以上1000重量部以下、100重量部以上1000重量部以下、110重量部以上1000重量部以下、300重量部以上1000重量部以下、500重量部以上1000重量部以下、900重量部以上1000重量部以下で含むことができる。
【0098】
前記第2多孔性層は、無機微細粒子の大きさ、無機微細粒子の含有量およびバインダー樹脂の含有量を調節することにより、マイクロ単位の気孔を形成することができ、また、気孔の大きさおよび気孔度を調節することができる。即ち、前記第2多孔性層は、前記バインダー樹脂100重量部に対して、前記無機微細粒子を50重量部以上3000重量部以下で含むことにより、前記第2多孔性層の空隙率が30%以上を満たすことができる。
【0099】
前記第2多孔性層が、前記バインダー樹脂100重量部に対して、前記無機微細粒子を50重量部未満で含む場合、バインダー樹脂の含有量が多すぎて無機微細粒子の間に形成される空の空間の減少により気孔の大きさおよび気孔度が減少して最終電池性能が低下する。また、前記第2多孔性層が、前記バインダー樹脂100重量部に対して、前記無機微細粒子を3000重量部超で含む場合、バインダー樹脂の含有量が少なすぎて無機微細粒子の間の接着力弱化により、耐剥離性が弱くなり、第2多孔性層の機械的物性が低下する。
【0100】
前記一実施形態において、前記第2多孔性層はバインダー樹脂を含むことができる。
【0101】
前記第2多孔性層のバインダー樹脂は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン-トリクロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキシド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルフルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、フルラン、カルボキシルメチルセルロース、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリイミド、およびスチレンブタジエンゴムからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物であってもよい。
【0102】
前記一実施形態において、前記第1多孔性層の厚さおよび前記第2多孔性層の厚さの比率は、1:1.1~1:20であってもよい。
【0103】
具体的に、前記一実施形態において、前記第1多孔性層の厚さおよび前記第2多孔性層の厚さの比率は、1:1.1以上、1:1.5以上、1:1.8以上、1:2以上、1:20以下、1:10以下、1:8以下、1:5以下、または1:1.1以上1:20以下、1:1.1以上1:10以下、1:1.1以上1:8以下、1:1.1以上1:5以下、1:1.5以上1:20以下、1:1.5以上1:10以下、1:1.5以上1:8以下、1:1.5以上1:5以下、1:1.8以上1:20以下、1:1.8以上1:10以下、1:1.8以上1:8以下、1:1.8以上1:5以下、1:2以上1:20以下、1:2以上1:10以下、1:2以上1:8以下、1:2以上1:5以下であってもよい。
【0104】
前記第1多孔性層の厚さおよび前記第2多孔性層の厚さの比率が1:1.1未満の場合、前記第2多孔性層の厚さが薄くなりすぎると、無機微細粒子による耐熱性およびバインダー樹脂による接着性などを確保するのが難しく、前記第2多孔性層の厚さが厚すぎる場合、相対的に多孔性層の気孔によるイオン伝導よりも同じ厚さでイオン伝導性高分子を使用する場合、イオン伝導が難しいため、抵抗が大きくなる問題が発生する。
【0105】
また、前記第1多孔性層の厚さおよび前記第2多孔性層の厚さの比率が1:20を超える場合、前記第1多孔性層の厚さが薄くなりすぎたり前記第2多孔性層の厚さが厚くなりすぎて、電池の絶縁特性および/または抵抗特性が低下する。
【0106】
前記一実施形態において、前記第1多孔性層の厚さおよび前記第2多孔性層の厚さは特別な制限がなく、電池の性能を考慮して例えば0.01~100μmに調節することができる。
【0107】
例えば前記第1多孔性層は、0.1μm以上10μm以下であり、前記第2多孔性層は5μm以上30μm以下であってもよい。
【0108】
より具体的に、前記第1多孔性層は、0.1μm以上、0.5μm以上、1μm以上、10μm以下、7μm以下、5μm以下であってもよく、0.1μm以上10μm以下、0.5μm以上10μm以下、1μm以上10μm以下、0.1μm以上7μm以下、0.1μm以上7μm以下、0.5μm以上7μm以下、1μm以上7μm以下、0.1μm以上5μm以下、0.5μm以上5μm以下、1μm以上5μm以下であってもよい。
【0109】
前記第1多孔性層の厚さが、0.1μm未満の場合、電極の保護役割を行うことができず、10μmを超える場合、イオン伝導性が低下し、全体的な大きさが大きくなり、出力特性、エネルギー密度などを低下させる。
【0110】
また、前記第2多孔性層は、5μm以上、8μm以上、10μm以上、11μm以上、30μm以下、25μm以下、20μm以下であってもよく、5μm以上30μm以下、5μm以上25μm以下、5μm以上20μm以下、8μm以上30μm以下、8μm以上25μm以下、8μm以上20μm以下、10μm以上30μm以下、10μm以上25μm以下、10μm以上20μm以下、11μm以上30μm以下、11μm以上25μm以下、11μm以上20μm以下であってもよい。
【0111】
前記第2多孔性層の厚さが、5μm未満の場合、コーティング過程において均一なコーティングの厚さを確保するのが難しい技術的問題が発生し、30μmを超える場合、コーティング後乾燥過程においてクラックなどの発生要因が増加する技術的問題が発生する。
【0112】
発明の他の一実施形態によると、電極基材上に第1多孔性層形成用組成物を塗布して乾燥させることにより、前記電極基材の少なくとも一面に第1多孔性層を形成させるステップ;および前記第1多孔性層上にバインダー樹脂および無機微細粒子を含む第2多孔性層形成用組成物を塗布して乾燥させることにより、第2多孔性層を形成させるステップ;を含み、前記第1多孔性層は、空隙率が10%以下であり、前記第2多孔性層は、空隙率が30%以上である、リチウム二次電池用電極の製造方法が提供される。
【0113】
前記リチウム二次電池用電極の製造方法により、上述の実施形態のリチウム二次電池用電極が提供される。前記電極基材、第1多孔性層、第2多孔性層に対する内容は上述の全ての内容を含む。
【0114】
前記電極基材上に第1多孔性層形成用組成物を塗布して乾燥させることにより、前記電極基材の少なくとも一面に第1多孔性層を形成させるステップにおいて、第1多孔性層形成用組成物を電極基材の少なくとも一面に塗布する。次いで、前記第1多孔性層形成用組成物が塗布された電極基材を乾燥させて第1多孔性層形成用組成物に含まれた第1溶媒を除去する。
【0115】
また、前記第1多孔性層上に前記第2多孔性層形成用組成物を塗布して乾燥させることにより、第2多孔性層を形成させるステップにおいて、第2多孔性層形成用組成物を前記第1多孔性層の一面に塗布する。次いで、これを乾燥させて第2多孔性層形成用組成物に含まれている第2溶媒を除去する。
【0116】
前記電極基材上に第1多孔性層形成用組成物を塗布して乾燥させることにより、前記電極基材の少なくとも一面に第1多孔性層を形成させるステップ;および前記第1多孔性層上にバインダー樹脂および無機微細粒子を含む第2多孔性層形成用組成物を塗布して乾燥させることにより、第2多孔性層を形成させるステップにおいて、当業界に周知の通常のコーティング方法を使用することができ、例えばスピンコーティング、ディップ(Dip)コーティング、ダイ(Die)コーティング、ロール(roll)コーティング、コンマ(comma)コーティング、グラビアコーティング、バーコーティング、カーテンコーティング、押出、キャスティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、ドクターブレード、またはこれらの混合方式など様々な方式を利用することができる。
【0117】
また、前記リチウム二次電池用電極の製造方法において、乾燥方法は特に限定されず公知の方法を使用することができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。
【0118】
前記第1多孔性層形成用組成物および第2多孔性層形成用組成物に使用される溶媒は、均一な混合と以降の溶媒除去の容易のために、使用しようとするバインダー樹脂と溶解度指数が類似し、沸点が低いことが好ましい。前記第1溶媒は、大きく制限されないが、例えばアセトン(acetone)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、メチレンクロリド(methylene chloride)、クロロホルム(chloroform)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone,NMP)およびシクロヘキサン(cyclohexane)からなる群より選択した1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0119】
一方、本発明の他の一実施形態によれば、前記リチウム二次電池用電極を含むリチウム二次電池を提供することができる。
【0120】
具体的に、発明の他の一実施形態によれば、前記リチウム二次電池用電極、相対電極およびこれらの間に介した電解質を含むリチウム二次電池を提供することができる。
【0121】
前記リチウム二次電池用電極については上述の内容を全て含む。
【0122】
具体的に、前記実施形態は、リチウム二次電池は、正極と負極との間に分離膜を介在して巻取られた電極アセンブリと、前記電極アセンブリが内蔵されるケースを含むことができる。そして、前記正極、前記負極および前記分離膜は、電解質に含浸されてもよい。
【0123】
前述のように前記実施形態のリチウム二次電池は、多孔性基材と多孔性基材上に形成されたコーティング層を含む多孔性高分子分離膜に代えて、前記電極基材上に形成され、空隙率が10%以下の第1多孔性層;および前記第1多孔性層上に形成され、バインダー樹脂および無機微細粒子を含み、空隙率が30%以上の第2多孔性層;を分離膜として含むリチウム二次電池用電極を含むことにより、電極が膨張および収縮しても接着力が維持されて優れた電池寿命特性を実現することができる。
【0124】
前記実施形態のリチウム二次電池は、多孔性基材と多孔性基材上に形成されたコーティング層を含む多孔性高分子分離膜を含まない代わりに、前記他の実施形態のリチウム二次電池用電極に含まれる第1多孔性層と正極または負極の相対電極との間の結合のために選択的に接着層をさらに含むことができる。
【0125】
前記負極は、負極活物質、導電材およびバインダーを含む負極材;そして前記負極材を支持する電流集電体を含むことができる。
【0126】
前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション(intercalation)およびデインターカレーション(deintercalation)することができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質、および遷移金属酸化物を含むことができる。
【0127】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーションおよびデインターカレーションすることができる物質としては、炭素質物質として結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらの混合物が挙げられる。具体的に、前記炭素質物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソフェーズピッチ(mesophase pitches)、メソフェーズピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、石油または石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)、軟化炭素(soft carbon)、および硬化炭素(hard carbon)などであってもよい。
【0128】
前記リチウム金属の合金は、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、Sn、Bi、Ga、およびCdからなる群より選択された1種以上を含む金属とリチウムの合金であってもよい。
【0129】
前記リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質は、Si、Si-C複合体、SiOx(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1種以上を含む元素である;但し、Siは除く)、Sn、SnO2、Sn-R合金(前記Rは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1種以上を含む元素だ;但し、Snは除く。)などであってもよい。そして、前記リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質としては、前記例のうち少なくとも一つとSiO2を混合して使用することができる。前記QおよびRは、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Poなどであってもよい。
【0130】
そして、前記遷移金属酸化物は、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物、リチウムチタニウム酸化物などであってもよい。
【0131】
前記負極集電体は、一般に3~500μmの厚さに作られる。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、導電性を有するものなら特に制限されることなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを使用することができる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させてもよく、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態で使用することができる。
【0132】
好ましくは、前記負極は、炭素質物質およびケイ素化合物からなる群より選択された1種以上を含む負極活物質を含むことができる。
【0133】
ここで、前記炭素質物質は、先に例示した、天然黒鉛、人造黒鉛、キッシュ黒鉛、熱分解炭素、メソフェーズピッチ、メソフェーズピッチ系炭素繊維、炭素微小球体、石油または石炭系コークス、軟化炭素、および硬化炭素からなる群より選択された1種以上を含む物質である。そして、前記ケイ素化合物は、先に例示したSiを含む化合物、即ち、Si、Si-C複合体、SiOx(0<x<2)、前記Si-Q合金、これらの混合物、またはこれらのうちの少なくとも一つとSiO2の混合物であってもよい。
【0134】
また、前記負極は、マイクロシリコンを含むことができる。前記負極は、マイクロシリコンを含む場合、炭素質物質を負極活物質に使用する場合に比べて優れた容量を実現することができる。具体的に、前記ケイ素化合物において、特定マイクロシリコンを使用する場合、500回以上の充電と放電後にも80%以上の残存容量が維持でき、従来のリチウム二次電池と比較して顕著に優れたエネルギー密度を実現することができる。また、前記負極がマイクロシリコンを含む場合、固体電解質を使用する固体バッテリーの充放電寿命を大きく高めることができ、常温での充電速度も大きく向上させることができる。
【0135】
前記マイクロシリコンの大きさが限定されないが、例えば前記マイクロシリコンは100μm以下の直径、または1~100μmの直径、または1~20μmの直径を有することができる。
【0136】
一実施例によれば、前記負極活物質は、前記負極材の総重量対比85重量%~98重量%で含まれる。
【0137】
具体的に、前記負極活物質の含有量は、前記負極材の総重量に対して85重量%以上、あるいは87重量%以上、あるいは90重量%以上;そして、98重量%以下、あるいは97重量%以下、あるいは96重量%以下であってもよい。
【0138】
好ましくは、前記負極活物質の含有量は、前記負極材の総重量に対して85重量%~98重量%、87重量%~98重量%、90重量%~98重量%、85重量%~97重量%、87重量%~97重量%、90重量%~97重量%、85重量%~96重量%、87重量%~96重量%、90重量%~96重量%であってもよい。
【0139】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものである。
【0140】
前記導電材としては、電池の化学変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば特別な制限なしに使用することができる。非制限的な例として、前記導電材は、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファネースブラック、ランプブラック、サマールブラック、炭素繊維などの炭素系物質;天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカ;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などであってもよい。前記導電材としては、上述の例のうち1種あるいは2種以上の混合物を使用することができる。
【0141】
前記導電材の含有量は、適切な水準の導電性を発現しながらもバッテリーの容量減少を誘発しない範囲で調節することができる。好ましくは、前記導電材の含有量は、前記負極材の総重量に対して0.5重量%~10重量%、あるいは1重量%~10重量%、あるいは1重量%~5重量%であってもよい。
【0142】
前記バインダーは、前記負極材を前記電流集電体によく付着させるために使用されるものである。
【0143】
非制限的な例として、前記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴムなどであってもよい。前記バインダーとしては、上述の例のうち1種あるいは2種以上の混合物を使用することができる。
【0144】
前記バインダーの含有量は、適切な水準の接着性を発現しながらもバッテリーの容量減少を誘発しない範囲で調節される。好ましくは、前記バインダーの含有量は、前記負極材の総重量に対して0.5重量%~10重量%、あるいは1重量%~10重量%、あるいは1重量%~5重量%であってもよい。
【0145】
前記分離膜は、正極と負極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するもので、前記一実施形態において、第1多孔性層および第2多孔性層が分離膜で作用することができる。前記一実施形態において、第1多孔性層および第2多孔性層が負極上に直接形成されることにより、前記一実施形態のリチウム二次電池は、多孔性高分子基材を含まない分離膜を含むことができる。
【0146】
前記実施形態のリチウム二次電池には、選択的に多孔性高分子基材を含むことができる。前記多孔性高分子基材の種類は大きく制限されないが、例えばポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)、ポリエステル(polyester)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリアミド(polyamide)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリアリールエーテルケトン(polyaryletherketone)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、ポリアミドイミド(polyamideimide)、ポリベンゾイミダゾール(polybenzimidazole)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、サイクリックオレフィンコポリマー(cyclicolefincopolymer)、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylenesulfide)およびポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalene)からなる群より選択された一つ以上の高分子またはこれらのうち2種以上の混合物で形成された高分子基材またはこれらの多重膜、織布および不織布などを使用することができる。
【0147】
前記多孔性高分子基材は、溶融温度、製造の便宜性、気孔度、イオンの移動、絶縁性などを考慮して、基材の種類と厚さ、気孔の大きさと個数、特に不織布の場合、極細糸の太さなどを調整することができる。
【0148】
前記一実施形態において、前記多孔性高分子基材の厚さは特別な制限がなく、電池の性能を考慮して、例えば0.01~100μmに調節することができる。
【0149】
前記リチウム二次電池用正極は、正極活物質、バインダー、導電材、および正極添加剤を含む正極材;そして前記正極材を支持する電流集電体を含むことができる。
【0150】
前記リチウム二次電池用正極添加剤は、リチウム二次電池の充放電時に非可逆的にリチウムを出す特性を有する。したがって、前記リチウム二次電池用正極添加剤は、リチウム二次電池用正極に含まれて予備リチウム化(prelithiation)のための犠牲正極材(sacrificial positive electrode materials)の役割を果たすことができる。
【0151】
具体的に、前記正極は正極集電体上に正極合剤を塗布した後乾燥して製造することができ、必要に応じては、前記混合物に充填剤をさらに添加することができる。
【0152】
好ましくは、前記リチウム二次電池用正極は、正極活物質、導電材、前記犠牲正極材、およびバインダーを含む正極材;そして、前記正極材を支持する電流集電体を含む。
【0153】
高容量電池になるほど電池の容量を増やすために負極内負極活物質の比率をより高くしなければならず、これによりSEI層に消耗するリチウムの量も従って増加する。このため、負極のSEI層に消耗するリチウムの量を計算した後、正極側に適用されるべき犠牲正極材の量を逆算して電池の設計容量を定めることができる。
【0154】
一実施例によれば、前記犠牲正極材は、前記正極材の総重量に対して0重量%超15重量%以下で含まれる。
【0155】
前記SEI層の形成に消耗する不可逆リチウムを補償するために、前記犠牲正極材の含有量は、前記正極材の総重量に対して0重量%超であることが好ましい。
【0156】
ただし、前記犠牲正極材が過量で含まれる場合、可逆的な充放電容量を示す前記正極活物質の含有量が減って、バッテリーの容量が減少し、電池内に残余リチウムが負極にプレ-ティングされて電池の短絡を誘発したり安全性を阻害する。したがって、前記犠牲正極材の含有量は、前記正極材の総重量に対して15重量%以下であることが好ましい。
【0157】
具体的に、前記犠牲正極材の含有量は、前記正極材の総重量に対して0重量%超、あるいは0.5重量%以上、あるいは1重量%以上、あるいは2重量%以上、あるいは3重量%以上;そして、15重量%以下、あるいは12重量%以下、あるいは10重量%以下であってもよい。
【0158】
好ましくは、前記犠牲正極材の含有量は、前記正極材の総重量に対して0.5重量%~15重量%、あるいは1重量%~15重量%、あるいは1重量%~12重量%、あるいは2重量%~12重量%、あるいは2重量%~10重量%、あるいは3重量%~10重量%であってもよい。
【0159】
前記正極活物質としては、本発明が属する技術分野においてリチウム二次電池に適用可能であると知られている化合物が特別な制限なしに用いることができる。
【0160】
非制限的な例として、前記正極活物質は、NCM(Li[Ni、Co、Mn]O2)、NCMA(Li[Ni、Co、Mn、Al]O2)、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O2、LiNi1-dCodO2、LiCo1-dMndO2、LiNi1-dMndO2(以上、0≦d<1)、Li(NiaCobMnc)O4(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2-eNieO4、LiMn2-eCoeO4(以上、0<e<2)、LiCoPO4、およびLiFePO4などであってもよい。前記正極活物質としては、上述の例のうち1種あるいは2種以上の混合物を使用することができる。
【0161】
一実施例によれば、前記正極活物質は、前記正極材の総重量に対して80重量%~98重量%で含まれる。
【0162】
具体的に、前記正極活物質の含有量は、前記正極材の総重量に対して80重量%以上、あるいは85重量%以上、あるいは90重量%以上、あるいは95重量%以上;そして、98重量%以下であってもよい。
【0163】
好ましくは、前記正極活物質の含有量は、前記正極材の総重量に対して80重量%以上98重量%以下、あるいは85重量%以上98重量%以下、あるいは90重量%以上98重量%以下であってもよい。
【0164】
前記リチウム二次電池用正極は、前記正極活物質、前記導電材、前記犠牲正極材、およびバインダーを含む正極材を前記電流集電体上に積層して形成することができる。
【0165】
前記充填剤は、正極の膨張を抑制する成分として選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発しないと共に、繊維状材料なら特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使用される。
【0166】
前記正極材に含まれる前記導電材と前記バインダー、そして前記電流集電体に対しては上述の内容を全て含む。
【0167】
一方、前記電解質としては、本発明が属する技術分野においてリチウム二次電池に適用可能であると知られているものなら特別な制限なしに使用することができる。例えば、前記電解質は、有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質、水系電解質などであってもよい。
【0168】
前記水系電解質は、水やアルコールなどの水系溶媒に塩を溶解したもので、このような水系電解質を使用するリチウム二次電池の場合、水系電解質の高いイオン伝導性と安全性側面から有利で、工程と製造コストも安価である。また、非水系有機電解質よりも水系電解液を使用する電池が環境的な側面からも有利な長所がある。
【0169】
具体的に、前記電解質は、前記水系電解質は水系溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0170】
前記水系溶媒は、水を含む溶媒で、特に限定しないが、電解質をなす水系溶媒全体重量に対して1重量%以上の水を含むことができる。前記水系溶媒で水を単独で使用してもよいが、水と混和可能な溶媒を併用してもよい。
【0171】
前記水と混和可能な溶媒は、極性溶媒であってもよく、例えば、炭素数1~5のアルコールおよび炭素数1~10のグリコールエーテルからなる群より選択される1種以上を含むことができる。
【0172】
例えば、前記炭素数1~5のアルコールは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、グリセロールおよび1,2,4-ブタントリオールからなる群より選択される1種以上であるが、これに限定されない。
【0173】
また、前記炭素数1~10のグリコールエーテルは、エチレングリコールモノメチルエーテル(MG)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(MDG)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(MTG)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPG)、エチレングリコールモノエチルエーテル(EG)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(EDG)、エチレングリコールモノブチルエーテル(BG)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(BTG)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)およびジプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFDG)からなる群より選択される1種以上であるが、これらに限定されない。
【0174】
前記電解質に含まれる前記リチウム塩は、前記水系溶媒に溶解して電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす。
【0175】
具体的に、前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(SO2F)2(LiFSI、lithiumbis(fluorosulfonyl)imide)、LiCl、LiI、およびLiB(C2O4)2などであってもよい。
【0176】
好ましくは、前記リチウム塩は、LiPF6、LiFSI、およびこれらの混合物であってもよい。
【0177】
前記リチウム塩は、前記電解質に0.1M~2.0Mの濃度で含まれる。
【0178】
前記濃度範囲で含まれるリチウム塩は、前記電解質に適切な伝導度と粘度を付与することにより、優れた電解質性能を示すようにする。
【0179】
または、前記電解質は、非水性有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0180】
前記非水性有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質役割をするものであれば特別な制限なく使用することができる。
【0181】
具体的に、前記非水性有機溶媒は、メチルアセテート(methylacetate)、エチルアセテート(ethylacetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、およびε-カフロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutylether)およびテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、およびフルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate,DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate,MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate,EMC)、エチレンカーボネート(ethylenecarbonate,EC)、およびプロピレンカーボネート(propylenecarbonate,PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコールおよびイソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;およびスルホラン(sulfolane)などであってもよい。
【0182】
前記例の中でも、前記非水性有機溶媒にカーボネート系溶媒が好ましく使用することができる。
【0183】
特に、電池の充放電性能および前記犠牲正極材との相溶性を考慮して、前記非水性有機溶媒としては、高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート)および低粘度の線状カーボネート(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート)の混合物を好ましく使用することができる。この場合、前記環状カーボネートと前記線状カーボネートを1:1~1:9の体積比で混合して使用することが上述の性能の発現に有利である。
【0184】
また、前記非水性有機溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)を1:2~1:10の体積比で混合したもの;またはエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジメチルカーボネート(DMC)を1~3:1~9:1の体積比で混合したものを好ましく使用することができる。
【0185】
前記電解質に含まれる前記リチウム塩は、前記非水性有機溶媒に溶解して電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす。
【0186】
具体的に、前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(SO2F)2(LiFSI、lithiumbis(fluorosulfonyl)imide)、LiCl、LiI、およびLiB(C2O4)2などであってもよい。好ましくは、前記リチウム塩はLiPF6、LiFSI、およびこれらの混合物であってもよい。
【0187】
前記リチウム塩は、前記電解質に0.1M~2.0Mの濃度で含まれる。前記濃度範囲で含まれるリチウム塩は、前記電解質に適切な伝導度と粘度を付与することにより、優れた電解質性能を示すようにする。
【0188】
選択的に、前記電解質には、電池の寿命特性向上、電池容量減少抑制、電池の放電容量向上などを目的とした添加剤が含まれてもよい。
【0189】
例えば、前記添加剤は、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(n-glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどであってもよい。前記添加剤は、前記電解質の総重量に対して0.1重量%~5重量%で含まれる。
【0190】
前記一実施形態のリチウム二次電池は、電解質の種類および/またはセパレータの種類に応じて、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、またはリチウムポリマー電池であってもよい。
【0191】
液体電解質は、リチウム塩含有非水電解質であってもよい。前記リチウム塩含有非水電解質は、非水電解質とリチウムからなり、非水電解質としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用されるが、これらだけに限定されない。
【0192】
有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合剤などを使用することができる。
【0193】
無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li2S-SiS2などのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などを使用することができる。
【0194】
また、前記リチウム塩含有非水電解質には、充放電特性、難燃性などの改善を目的で、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加される。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含んでもよく、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含んでもよく、FEC(Fluoro-Ethylene Carbonate)、PRS(Propene sultone)などをさらに含んでもよい。
【0195】
一つの具体的な例において、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiN(SO2CF3)2などのリチウム塩を、高誘電性溶媒であるECまたはPCの環状カーボネートと底粘度溶媒であるDEC、DMCまたはEMCの線状カーボネートの混合溶媒に添加してリチウム塩含有非水系電解質を製造することができる。
【0196】
前記リチウム二次電池は、携帯電話、ノートパソコン、タブレットコンピュータ、モバイルバッテリー、デジタルカメラなどの携帯用電子機器分野;および電気自動車、電気バイク、パーソナルモビリティーデバイスなどの移動手段分野において向上した性能と安全性を有するエネルギー供給源として使用される。
【0197】
前記リチウム二次電池は、角型、円筒形、パウチ型など様々な形態を有することができる。
【0198】
上述の他の実施形態のリチウム二次電池は、これを単位電池として含む電池モジュール、前記電池モジュールを含む電池パック、および前記電池パックを電源として含むデバイスで実現することができる。
【0199】
この時、前記デバイスの具体的な例としては、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、または電力貯蔵用システムであってもよいが、これに限定されない。
【0200】
前記実施形態において、前記第1多孔性層上に前記第2多孔性層形成用組成物を塗布して乾燥させることにより、第2多孔性層を形成させるステップ;以降第1多孔性層および第2多孔性層がコーティングされた後巻取り(winding)または積層(stacking、lamination)などの工程を介して組立てた後、電解液を注入することにより、リチウム二次電池を製造することができる。
【発明の効果】
【0201】
本発明によれば、高い絶縁特性と低い抵抗特性を実現することができるリチウム二次電池用電極、リチウム二次電池用電極の製造方法およびリチウム二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0202】
以下、発明の具体的な実施例により、発明の作用、効果をより具体的に説明する。ただし、これは発明の例示として提示されたものであり、これによって発明の権利範囲がいかなる意味でも限定されるものではない。
【0203】
実施例1
(1)負極の製造
1)負極基材の製造
負極活物質で炭素系およびシリコン系粉末、導電材でカーボンブラック(carbonblack)、結合剤でスチレン-ブタジエンゴム(styrene-butadienerubber,SBR)およびカルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose,CMC)をそれぞれ95.5重量%、1重量%、2.5重量%、1重量%にして、溶剤のN-メチル-2ピロリドン(NMP)に添加して負極スラリーを製造した。前記負極スラリーを厚さ10μmの負極集電体の銅(Cu)薄膜に塗布および乾燥して、ロールプレス(roll press)を実施して負極基材を製造した。
【0204】
2)第1多孔性層の形成
イオン伝導性高分子のポリエチレンオキシド(重量平均分子量100,000g/mol~1,000,000g/mol、誘電率:5~810g、LiTFSi 2gおよびスクシノニトリル(Succinonitrile)30gをアセトニトリルに添加して50℃で約12時間以上溶解して第1多孔性層形成用組成物を製造した。
【0205】
前記製造された負極上に前記第1多孔性層形成用組成物を30%の湿度下でバー(bar)コーティング法でコーティングして70℃で乾燥して厚さ2μmの第1多孔性層(空隙率:8%)を形成した。
【0206】
3)第2多孔性層の形成
ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)3gおよびポリエーテルイミド(PEI)7gをN-メチル-2ピロリドン(NMP)170gに添加して50℃で約12時間以上溶解してバインダー高分子溶液を製造した。製造された高分子溶液にアルミナ粉末(D50:500nm)90g(固形分30重量%)を添加して12時間以上ボールミル法(ballmill)を利用してアルミナ粉末を300nmに破砕および分散して第2多孔性層形成用組成物を製造した。
【0207】
前記第1多孔性層上に前記第2多孔性層形成用組成物を30%の湿度下でバーコーティング法でコーティングして100℃で乾燥して厚さ20μmの第2多孔性層(空隙率:60%)を形成した。
【0208】
(2)正極の製造
正極活物質でリチウムニッケルコバルトマンガンアルミニウム系化合物97.5重量%、導電材にカーボンブラック(carbon black)1重量%、結合剤でPVDF 1.5重量%を溶剤のN-メチル-2ピロリドン(NMP)に添加して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを厚さ10μmの正極集電体のアルミニウム(Al)薄膜に塗布および乾燥して正極を製造した後、ロールプレス(roll press)を実施して正極を製造した。
【0209】
(3)電池製造
前記第1多孔性層および第2多孔性層が形成された負極と前記正極をスタッキング(stacking)方式を利用して組み立て、組み立てられた電池に電解液(エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:7(体積比)、リチウムヘキサクロロホスフェート(LiPF61モル)を注入してリチウム二次電池を製造した。
【0210】
実施例2
第1多孔性層形成用組成物製造時、スクシノニトリル(Succinonitrile)を添加しないことを除いて、前記実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0211】
実施例3
第1多孔性層形成用組成物製造時、ポリエチレンオキシドの代わりにポリビニリデンフッ素(重量平均分子量500,000g/mol~1,000,000g/mol、誘電率:4~8)10gを添加したことを除いて、前記実施例2と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0212】
実施例4
第1多孔性層形成用組成物製造時、リチウム塩(LiTFSi)を添加しないことを除いて、前記実施例3と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0213】
比較例1
第1多孔性層を形成せず、第2多孔性層が形成された負極と前記正極をスタッキング(stacking)方式を利用して組み立てたことを除いて、実施例1と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0214】
<実験例>
実験例1:多孔性層分析
前記実施例および比較例でそれぞれ製造されたリチウム二次電池の第1多孔性層および第2多孔性層の厚さ、空隙率を分析して下記表1に示した。
【0215】
多孔性層の実際の密度とコーティング組成の固形分の理論密度の比率を利用して下記の数式2により、多孔性層の空隙率を計算した。
【0216】
[数式2]
空隙率(%)={1-(実際の密度)/(理論密度)}×100.
【0217】
【0218】
前記表1に示されているように、実施例のリチウム二次電池に形成された第1多孔性層は厚さが1μm以上3μm以下であり、空隙率が1%以下で示された。また、実施例のリチウム二次電池に形成された第2多孔性層は、厚さが13μm~15μmであり、空隙率が30%以上50%以下で示された。
【0219】
実験例2:絶縁破壊強度
前記実施例および比較例でそれぞれ製造されたリチウム二次電池の負極に対して、Hi-pot測定器を利用して、昇圧速度100V/秒の条件で絶縁破壊が起こる前に許容される最大電圧を測定し、測定された最大電圧をコーティング膜の厚さで割って単位厚さ当たり許容される最大電圧を計算して下記表2に示した。
【0220】
実験例3:EIS抵抗(リチウムイオン抵抗)
前記実施例および比較例でそれぞれ製造されたリチウム二次電池に対して、AC電圧を振幅10mVで周波数104~105Hz条件で電気化学インピーダンス分光法(Electrochemical impedance spectroscopy,EIS)を利用してNyquist plot方法でリチウムイオン抵抗を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0221】
実験例4:剥離強度
実施例および比較例のリチウム二次電池に対して第1多孔性層上部に接着性のテープを付けて180度に折り曲げて第1多孔性層と負極基材との間の剥離強度を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0222】
実験例5:電池特性
実施例、比較例および参考例のリチウム二次電池に対して室温で0.1C-rateで2.5~4.2Vでサイクリングさせた。追加的に、5サイクル間の材料の容量維持率により繰り返されたサイクル時の充電容量、放電容量および平均放電電圧を測定し、下記表3に表示した。
【0223】
【0224】
【0225】
前記表2および表3に示されているように、実施例1のリチウム二次電池は、ニトリル系化合物を含み、空隙率が1%以下の第1多孔性層を含むことにより、イオン性物質のリチウム塩の均一な分布が誘導され、絶縁破壊強度が0.45kV/milと示されて優れた絶縁性を実現することが確認された。それだけでなく、実施例1~4のリチウム二次電池は、第1多孔性層および第2多孔性層を含むことにより、優れた絶縁性を実現して、1サイクル充電時電圧増加による充電容量遅延が発生せずクーロン効率が76.6%以上80.1%以下と高く測定されて、絶縁改善効果を有することを確認することができた。
【0226】
また、実施例のリチウム二次電池は、第1多孔性層および第2多孔性層を含むことにより、優れた電極基材接着力と絶縁性を実現し、クーロン効率および充電維持率が改善されるだけでなく、抵抗増加幅は、大きくなく示されて優れた充放電容量維持率が確保されることが確認された。
【0227】
一方、比較例の場合、5サイクル以降の充電容量維持率が80.5%に過ぎず長期寿命特性が十分でないことが確認された。
【国際調査報告】