(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-29
(54)【発明の名称】ケイ素前駆体
(51)【国際特許分類】
C07F 7/10 20060101AFI20240822BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20240822BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
C07F7/10 F CSP
C23C16/42
H01L21/316 X
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510668
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 US2022036438
(87)【国際公開番号】W WO2023027816
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リー, サンジン
(72)【発明者】
【氏名】リュ, ミンソク
(72)【発明者】
【氏名】ハン, サンボム
(72)【発明者】
【氏名】キム, ソンチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヨンヘ
(72)【発明者】
【氏名】パク, キジン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン, イェリム
(72)【発明者】
【氏名】チョ, スンシル
(72)【発明者】
【氏名】キム, ハンスー
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ジュンギ
【テーマコード(参考)】
4H049
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP02
4H049VP03
4H049VP04
4H049VQ35
4H049VR23
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4K030AA09
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4K030FA01
4K030FA10
4K030HA01
4K030LA15
5F058BC02
5F058BC08
5F058BC11
5F058BF02
5F058BF07
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF30
5F058BF37
(57)【要約】
マイクロ電子デバイスの表面上へのケイ素含有材料の蒸着における前駆体として有用な、特定のシリルアミン化合物が提供される。そのような前駆体は、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸炭窒化ケイ素(SiOCN)、炭窒化ケイ素(SiCN)および炭化ケイ素などのケイ素含有膜を堆積させるための任意選択の共反応物と共に利用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
の化合物であって、
式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素、C
1~C
10アルキル、C
3~C
8シクロアルキル、アリールおよびベンジルから選択され、nは、0、1または2であり、ただし、nが1である場合、式(I)の化合物は、トリメチルシリルエチレントリアミン以外である、化合物。
【請求項2】
nが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R
1、R
2およびR
3の各々がメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R
1、R
2およびR
3の各々がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
R
1、R
2およびR
3の各々が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
式
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
マイクロ電子デバイス基板上にケイ素含有膜を堆積させるための方法であって、基板を式(I):
の化合物と接触させることを含み、
式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素、C
1~C
10アルキル、C
3~C
8シクロアルキル、アリールおよびベンジルから選択され、nは、蒸着条件下、反応ゾーンにおいて、0、1または2である、方法。
【請求項9】
nが0である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
nが1である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
R
1、R
2およびR
3の各々がメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
R
1、R
2およびR
3の各々がメチルである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
R
1、R
2およびR
3の各々が水素である、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
式(I)の化合物が
である、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
式(I)の化合物が
である、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
式(I):
の化合物を調製するための方法であって、
式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素、C
1~C
10アルキル、C
3~C
8シクロアルキル、アリールおよびベンジルから選択され、nは、0、1または2であり;
式(A):
(式中、Xはハロである)
の化合物を、
式(B):
の化合物と塩基の存在下で接触させることを含む、方法。
【請求項17】
nが0である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
nが1である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
式(I)の化合物が、式:
を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
式(I)の化合物が、式:
を有する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、マイクロ電子デバイス上へのケイ素含有膜の蒸着に有用な特定のケイ素前駆体化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ素系薄膜の低温堆積は、現在の半導体デバイス製作および方法にとって基本的に重要である。過去数十年の間、二酸化ケイ素薄膜は、マイクロプロセッサ、論理およびメモリベースのデバイスを含む集積回路(IC)の必須構造構成要素として利用されてきた。二酸化ケイ素は、半導体産業において優勢な材料であり、市販されている実質的にすべてのケイ素系デバイスの絶縁誘電体材料として使用されてきた。二酸化ケイ素は、長年にわたって相互接続誘電体、コンデンサおよびゲート誘電体材料として使用されてきた。
【0003】
高純度SiO2膜を堆積させるための従来の産業手法は、そのような膜の蒸着のための薄膜前駆体としてテトラエチルオルトシリケート(TEOS)を利用することであった。TEOSは、化学気相成長(CVD)、プラズマ強化化学気相成長(PECVD)、および原子層堆積(ALD)においてケイ素源試薬として使用され、SiO2の高純度薄膜を達成している安定な液体材料である。このケイ素源試薬を用いて、他の薄膜堆積法(例えば、集束イオンビーム、電子ビーム、および薄膜を形成するための他のエネルギー手段)も行うことができる。
【0004】
集積回路デバイス寸法が継続的に減少するにつれて、リソグラフィスケーリング方法における対応する進歩およびデバイス形状の縮小とともに、高完全性SiO2薄膜を形成するための新しい堆積材料および方法が相応に求められている。改善されたケイ素系前駆体(および共反応物)は、SiO2膜、ならびに400℃未満および200℃未満の温度などの低温で堆積することができる他のケイ素含有薄膜、例えばSi3N4、SiC、およびドープされたSiOx高k薄膜を形成することが望ましい。これらの低い堆積温度を達成するために、化学前駆体は、所望の膜を得るためにきれいに分解する必要がある。
【0005】
低温膜の達成はまた、均一なコンフォーマルケイ素含有膜の形成を確実にする堆積方法の使用および開発を必要とする。したがって、取り扱い、気化および反応器への輸送において安定であるが、低温できれいに分解して所望の薄膜を形成する能力を示す反応性前駆体化合物の継続的な探索と同時に、化学気相成長(CVD)および原子層堆積(ALD)法が改良され、実施されている。この努力における基本的な課題は、このようにして製造された膜の所望の電子的および機械的特性を維持しながら、高純度の低温膜成長方法のための前駆体熱安定性と前駆体適合性とのバランスを達成することである。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、マイクロ電子デバイス基板上へのケイ素含有膜の堆積における前駆体として有用であると考えられる特定のシリルアミン化合物を提供する。特に、本発明は、式(I):
の化合物を利用する蒸着方法を提供し、
式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素、C
1~C
10アルキル、C
3~C
8シクロアルキル、アリールおよびベンジルから選択され、nは、0、1または2である。
【0007】
この堆積方法では、式(I)の例示的な化合物は、トリメチルシリルエチレントリアミンおよびトリメチルシリルエチレンジアミンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】R
1、R
2およびR
3の各々がメチルである、トリメチルシリルジエチレントリアミン、すなわち式(I)の化合物の
1H NMRである。
【
図2】トリメチルシリルジエチレントリアミンの示差走査熱量分析(DSC)である。
【
図3】トリメチルシリルジエチレントリアミンの熱重量分析(TGA)である。このデータは、良好な熱安定性、残留物ゼロの高い揮発性を示す。このグラフにおいて、T50は50%重量減少時の温度であり、測定されたT50は156.84℃であった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「または」という用語は、一般に、内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、「および/または」を含む意味で使用される。
【0010】
「約」という用語は、一般に、列挙された値と等価である(例えば、同じ機能または結果を有する)と考えられる数の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた数字を含むことができる。
【0011】
端点を使用して表される数値範囲は、その範囲内に包含されるすべての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4および5を含む)。
【0012】
第1の態様では、本発明は、式(I):
の化合物を提供し、
式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素、C
1~C
10アルキル、C
3~C
8シクロアルキル、アリールおよびベンジルから選択され、nは、0、1または2であり、ただし、nが1である場合、式(I)の化合物は、トリメチルシリルエチレントリアミン以外である。
【0013】
n=0の場合、式(I)の化合物は、以下の通りになる。
【0014】
n=1の場合、式(I)の化合物は、以下の通りになる。
【0015】
式(I)の化合物は、式(A):
(式中、Xはハロである)
の化合物を、
式(B):
の化合物と、塩基の存在下で接触させることによって調製することができる。
【0016】
上記方法において、Xは、クロロ、ブロモ、ヨードまたはフルオロから選択することができる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「C1~C10アルキル」という用語は、1~10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基を指す。例示的な基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどが挙げられる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「C3~C8シクロアルキル」という用語は、3~10個の炭素原子を有する脂環式基を指し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルなどの基を含む。
【0019】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、炭素および水素のみで構成される芳香族環を指す。例示的な基としては、フェニル、ビフェニル、ナフチルなどが挙げられる。
【0020】
この方法において有用な塩基には、式(A)の化合物上のハロゲン原子の置換を可能にするために式(B)の化合物上のアミン基を脱プロトン化するのに十分に強い塩基、すなわち、非求核性塩基として有機合成において典型的に使用される化合物が含まれる。これに関して、例示的な塩基としては、トリエチルアミン、ピロリジン、テトラメチルグアニジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,5-ジザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(CAS番号3001-72-7、「DBN」としても知られる)、4-ジメチルアミノピリジン(CAS番号1122-58-3、「DMAP」としても知られる)、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(CAS番号5807-14-7、「TBD」としても知られる)および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(CAS番号6674-22-2、「DBU」としても知られる)が挙げられる。
【0021】
この方法は、反応に干渉しない適切な極性非プロトン性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トルエンまたはジクロロメタンを利用して行うことができる。一般に、ケイ素含有化合物(A)を本明細書に記載の塩基と合わせ、次いでアミン化合物(B)を、例えば室温で反応混合物に添加する。反応が完了したら、固体副生成物を濾過によって除去し、残りの濾液を分溜によって精製して、無色の液体生成物(I)を形成することができる。
【0022】
式(I)の化合物は、ケイ素含有膜、特にマイクロ電子デバイスの表面上の膜の蒸着における前駆体として有用であると考えられる。特定の実施形態では、膜はまた、窒素および/または酸素および/または炭素を含む。
【0023】
本明細書で使用される場合、ケイ素含有膜という用語は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸炭窒化ケイ素、低k薄ケイ素含有膜、高kゲートシリケート膜、低温ケイ素エピタキシャル膜などの膜を指す。
【0024】
したがって、上記の式(I)の化合物は、化学気相成長(CVD)、デジタル(パルス)CVD、原子層堆積(ALD)、パルスプラズマ法、プラズマ強化周期的化学気相成長(PECCVD)、流動性化学気相成長(FCVD)、またはプラズマ強化ALD様法などの任意の適切な蒸着技術によって高純度の薄いケイ素含有膜を形成するために使用することができる。特定の実施形態では、そのような蒸着方法を利用して、マイクロ電子デバイス上にケイ素含有膜を形成して、約20オングストローム~約2000オングストロームの厚さを有する膜を形成することができる。
【0025】
図1は、R
1、R
2およびR
3の各々がメチルである、トリメチルシリルジエチレントリアミン、すなわち式(I)の化合物の
1H NMRである。
【0026】
図2は、トリメチルシリルジエチレントリアミンの示差走査熱量分析(DSC)である。
【0027】
図3は、トリメチルシリルジエチレントリアミンの熱重量分析(TGA)である。このデータは、良好な熱安定性、残留物ゼロの高い揮発性を示す。このグラフにおいて、T50は50%重量減少時の温度であり、測定されたT50は156.84℃であった。
【0028】
本発明の方法では、上記化合物を、任意の適切な様式で、例えば、単一ウェハCVD、ALDおよび/もしくはPECVDもしくはPEALDチャンバ(すなわち、「反応ゾーン」)で、または複数のウェハを含む炉内で所望のマイクロ電子デバイス基板と反応させることができる。
【0029】
代替的に、本発明の方法は、ALDまたはALD様法として行うことができる。本明細書で使用される場合、「ALDまたはALD様」という用語は、(i)式(I)のケイ素前駆体化合物および酸化ガスもしくは還元ガスを含む各反応物が、単一ウェハALD反応器、半バッチALD反応器、もしくはバッチ炉ALD反応器などの反応器に順次導入される、または(ii)式(I)のケイ素前駆体化合物および酸化ガスもしくは還元ガスを含む各反応物が、反応器の異なるセクションに基板を移動もしくは回転させることによって基板もしくはマイクロ電子デバイス表面に露出され、各セクションが不活性ガスカーテン、すなわち空間的ALD反応器またはロールツーロールALD反応器によって分離される方法を指す。
【0030】
一実施形態では、蒸着条件は、約室温(例えば、約23℃)~約1000℃、または約100℃~約1000℃、または約450℃~約1000℃の温度、および約0.5~約1000トールの圧力を含む。別の実施形態では、蒸着条件は、約100℃~約800℃、または約500℃~約750℃の温度を含む。
【0031】
一般に、式(I)の前駆体化合物を使用して製造された所望の膜は、還元または酸化共反応物の利用と組み合わせて、各化合物の選択によって調整することができる。例えば、式(I)の前駆体が蒸着方法においてどのように利用され得るかを示す以下のスキーム1を参照されたい:
スキーム1
【0032】
一実施形態では、蒸着方法は、前駆体をH2、H2プラズマ、H2/O2混合物、水、N2O、N2Oプラズマ、NH3、NH3プラズマ、N2またはN2プラズマなどのガスに曝露することを含む工程をさらに含んでもよい。例えば、O2、O3、N2O、水蒸気、アルコール、酸素プラズマなどの酸化ガスを使用してもよい。一実施形態では、式(I)の前駆体は、酸化ガスとしてO3を用いるALD法において利用される。特定の実施形態では、酸化ガスは、アルゴン、ヘリウム、窒素、またはそれらの組み合わせなどの不活性ガスをさらに含む。別の実施形態では、酸化ガスは、窒素をさらに含み、これは、プラズマ条件下で式(I)の前駆体と反応して酸窒化ケイ素膜を形成することができる。
【0033】
したがって、さらなる態様では、本発明は、マイクロ電子デバイス基板上にケイ素含有膜を堆積させるための方法であって、基板を式(I):
の化合物と接触させることを含み、
式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素、C
1~C
10アルキル、C
3~C
8シクロアルキル、アリールおよびベンジルから選択され、nは、蒸着条件下、反応ゾーンにおいて、0、1または2である、方法を提供する。
【0034】
特定の実施形態では、この態様の方法は、酸化ガス、還元ガスおよび炭化水素から選択される1つまたは複数の共反応物の使用を含む。
【0035】
別の実施形態では、上記の蒸着方法は、膜を還元ガスに曝露することを含む工程をさらに含んでもよい。本発明の特定の実施形態では、還元ガスは、H2、ヒドラジン(N2H4)、メチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、1,1-ジメチルヒドラジン、1,2-ジメチルヒドラジンおよびNH3から選択されるガスで構成される。そのような窒素含有還元ガスの場合、原子層堆積などの蒸着技術を利用して、ケイ素および窒素を含む材料を形成することができる。
【0036】
式(I)の化合物は、ケイ素含有膜の低温PECVDおよび/またはPEALD形成ならびに高温ALDが可能であると考えられる。そのような化合物は、高い揮発性および化学反応性を示すが、前駆体の揮発または気化に関与する温度での熱分解に対して安定であり、得られた前駆体蒸気の堆積ゾーンまたは反応チャンバへの一貫した繰り返し可能な輸送を可能にする。
【0037】
式(I)の前駆体化合物を使用しながら、そのような膜への炭素の組み込みは、例えばメタン、エタン、エチレンまたはアセチレンの形態の炭素などの共反応物を利用して、ケイ素含有膜に炭素含有量をさらに導入し、それによって炭化ケイ素を生成することによって達成され得る。
【0038】
本明細書に開示される堆積方法は、1つまたは複数のパージガスおよび/またはキャリアガスを含むことができる。パージガスは、未消費の反応物および/または反応副生成物をパージするために使用され、前駆体と反応しない不活性ガスである。例示的なパージガスとしては、アルゴン、窒素、ヘリウム、ネオン、水素、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、Arなどのパージガスを約10~約2000sccmの範囲の流量で約0.1~1000秒間反応器に供給し、それによって未反応材料および反応器内に残留し得る任意の副生成物をパージする。
【0039】
ケイ素前駆体化合物、酸化ガス、還元ガス、および/または他の前駆体、原料ガス、および/または試薬を供給するそれぞれの工程は、それらを供給するための順序を変更すること、および/または得られる誘電体膜の化学量論組成を変更することによって実行され得る。
【0040】
式(I)のケイ素前駆体化合物および酸化ガス、還元ガス、またはそれらの組み合わせの少なくとも1つにエネルギーを加えて反応を誘導し、マイクロ電子デバイス基板上にケイ素含有膜を形成する。そのようなエネルギーは、熱、パルス熱、プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、X線、電子ビーム、光子、遠隔プラズマ法、およびそれらの組み合わせによって提供され得るが、これらに限定されない。特定の実施形態では、二次RF周波数源を使用して、基板表面のプラズマ特性を変更することができる。堆積がプラズマを伴う実施形態では、プラズマ生成方法は、プラズマが反応器内で直接生成される直接プラズマ生成方法、または代替的に、プラズマが反応ゾーンおよび基板の「遠隔」で生成され、反応器内に供給される遠隔プラズマ生成方法を含み得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「マイクロ電子デバイス」という用語は、マイクロ電子、集積回路またはコンピュータチップ用途で使用するために製造された、3D NAND構造、フラットパネルディスプレイ、および微小電気機械システム(MEMS)を含む半導体基板に対応する。「マイクロ電子デバイス」という用語は、決して限定することを意味するものではなく、n型金属酸化膜半導体(nMOS)および/またはp型金属酸化膜半導体(pMOS)トランジスタを含み、最終的にマイクロ電子デバイスまたはマイクロ電子アセンブリになる任意の基板を含むことを理解されたい。そのようなマイクロ電子デバイスは、例えば、ケイ素、SiO2、Si3N4、OSG、FSG、炭化ケイ素、水素化炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化炭窒化ケイ素、窒化ホウ素、反射防止コーティング、フォトレジスト、ゲルマニウム、ゲルマニウム含有、ホウ素含有、Ga/As、可撓性基板、多孔質無機材料、銅およびアルミニウムなどの金属、ならびにTiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、WまたはWNなどであるがこれらに限定されない拡散バリア層から選択することができる少なくとも1つの基板を含む。膜は、例えば、化学機械平坦化(CMP)および異方性エッチング法などの様々な後続の処理工程に適合する。
【0042】
原子層堆積では、連続的な処理工程は、一般に「パルス」またはサイクルと呼ばれる。したがって、ALD法は、前駆体化学物質の制御された自己制限的な表面反応に基づいている。気相反応は、基板を前駆体と交互に順次接触させることによって回避される。気相反応物は、例えば、反応パルス間で反応チャンバから過剰な反応物および/または反応物副生成物を除去することによって、時間的におよび基板表面上で互いに分離される。いくつかの実施形態では、1つ以上の基板表面を、2つ以上の気相前駆体または反応物と交互に順次接触させる。基板表面を気相反応物と接触させることは、反応物蒸気が反応ゾーン内で限られた期間基板表面と接触していることを意味する。言い換えれば、基板表面が限られた期間、各気相反応物に曝露されると理解することができる。
【0043】
特定の実施形態では、上記の前駆体化合物のパルス時間(すなわち、基板への前駆体曝露の持続時間)は、約1~30秒の範囲である。パージ工程が利用される場合、持続時間は、約1~20秒または1~30秒である。他の実施形態では、共反応物のパルス時間は、5~60秒の範囲である。
【0044】
例として、原子層堆積(ALD)の場合、式(I)の化合物は、1つの「ケイ素」前駆体として利用することができ、所望のケイ素-窒化物膜の場合、共反応物または別の前駆体として窒素含有材料を利用することができる。窒素含有材料は、有機(例えば、t-ブチルヒドラジン)または無機(例えば、NH3)であり得る。特定の実施形態では、ALDを使用して、ケイ素および窒素を含む材料を形成することができる。そのような材料は、特定の場合に選択される共反応物に応じて、窒化ケイ素を含んでもよく、本質的にそれからなってもよく、またはそれからなってもよく、および/または他の成分を有してもよい。
【0045】
簡潔には、少なくとも1つの表面を含む基板は、一般に例えば約0.5~50トールの圧力で、例えば150℃~700℃の範囲の適切な堆積温度まで加熱することができる。他の実施形態では、温度は、約200℃~300℃または500℃~650℃である。堆積温度は、一般に、反応物の熱分解温度未満であるが、反応物の凝縮を回避し、所望の「選択的」表面反応の活性化エネルギーを提供するのに十分高い温度に維持される。
【0046】
基板の表面は、気相の第1の反応物と接触する。特定の実施形態では、蒸気相の第1の反応物のパルスが、基板を含む反応ゾーンに提供される。他の実施形態では、基板は、気相の第1の反応物を含む反応空間に移動される。条件は、一般に、約1以下の単層の第1の反応物が自己制限的に基板表面に吸着されるように選択される。適切な接触時間は、特定の条件、基板および反応器構成に基づいて当業者によって容易に決定することができる。過剰な第1の反応物および反応副生成物は、存在する場合、例えば不活性ガスでパージすることによって、または第1の反応物の存在から基板を除去することによって、基板表面から除去される。パージとは、例えばチャンバを真空ポンプで排気することによって、および/または反応器内のガスをアルゴンまたは窒素などの不活性ガスで置き換えることによって、気相前駆体および/または気相副生成物が基板表面から除去されることを意味する。特定の実施形態では、パージ時間は、約0.05~20秒、約1~10秒、または約1~2秒である。しかしながら、非常に高いアスペクト比の構造または複雑な表面形態を有する他の構造に対する高度にコンフォーマルな工程被覆が必要な場合など、必要に応じて他のパージ時間を利用することができる。
【0047】
次いで、基板の表面を、気相の第2のガス状反応物、すなわち第2の前駆体または共反応物、例えば酸化ガスもしくは還元ガスと接触させることができる。特定の実施形態では、第2のガス状反応物のパルスが、基板を含む反応空間に提供される。他の実施形態では、基板は、気相の第2の反応物を含む反応空間に移動される。過剰な第2の反応物および表面反応のガス状副生成物は、存在する場合、基板表面から除去される。接触および除去の工程は、所望の厚さの薄膜が基板の第1の表面上に選択的に形成されるまで繰り返され、各サイクルは、一般に約1以下の分子単層を残す。三元材料などのより複雑な材料を形成するために、基板の表面を他の反応物と交互に順次接触させることを含む追加の段階を含めることができる。
【0048】
各サイクルの各段階は、一般に自己制限的である。過剰の反応物前駆体を各段階で供給して、影響を受けやすい構造表面を飽和させる。表面飽和は、(例えば、物理的サイズまたは「立体障害」の拘束を受ける)すべての利用可能な反応部位の反応物占有を確実にし、したがって優れた工程被覆を確実にする。典型的には、1未満の分子層の材料が各サイクルで堆積されるが、いくつかの実施形態では、サイクル中に1より多い分子層が堆積される。
【0049】
過剰な反応物を除去することは、反応ゾーンの内容物の一部を排出すること、および/または反応ゾーンをヘリウム、窒素もしくは別の不活性ガスでパージすることを含むことができる。特定の実施形態では、パージは、反応空間に不活性キャリアガスを流し続けながら、反応性ガスの流れをオフにすることを含むことができる。別の実施形態では、パージ工程は、表面から過剰な反応物を除去するために真空工程を使用することができる。
【0050】
そのような薄膜を成長させるために使用することができる反応器は、本明細書に記載の堆積に使用することができる。そのような反応器には、ALD反応器、ならびに前駆体を「パルス状」様式で提供するための適切な装置および手段を備えたCVD反応器が含まれる。特定の実施形態によれば、シャワーヘッド反応器を使用することができる。使用され得る適切な反応器の例としては、市販の装置、ならびにホームビルドの反応器が挙げられ、CVDおよび/またはALDの当業者に公知である。
【0051】
式(I)の例示的な化合物としては、以下の表に示すものが挙げられる:
【実施例】
【0052】
実施例1--トリメチルシリルエチレントリアミン
塩化トリメチルシリル(50.0g、0.41モル)および二環式アミジン塩基(DBU)(63.06g、0.41モル)を含むジエチルエーテル(500mL)の混合物を、窒素雰囲気下、室温で1時間撹拌した。この反応混合物にジエチレントリアミン(14.24g、0.14モル)を添加し、12時間撹拌した。12時間撹拌した後、反応中に得られた白色沈殿物を濾別し、濾液を収集した。濾液をシリンジフィルタ(0.45μm)でさらに濾過した。濾過後、粗生成物を分溜によって精製して、表題生成物を無色の液体として得た(収率53.5%)。短行程蒸留を使用して粗生成物を0.8トールで真空蒸留した。40℃~60℃のフォアカット(forecut)を廃棄し、92℃で沸騰する主画分を収集した。主画分(GC-FIDで99.3%)中の無色油の質量は160g(収率55%)であった。1H NMR(C6D6):δ 2.70(br,8H,CH2);0.33(br,2H,NH);0.13(s,9H,Si(CH3)3);0.11(s,18H,Si(CH3)3)ppm
【0053】
態様
第1の態様では、本発明は、式(I):
の化合物を提供し、
式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素、C
1~C
10アルキル、C
3~C
8シクロアルキル、アリールおよびベンジルから選択され、nは、0、1または2であり、ただし、nが1である場合、式(I)の化合物は、トリメチルシリルエチレントリアミン以外である。
【0054】
第2の態様では、本発明は、nが0である、第1の態様を提供する。
【0055】
第3の態様では、本発明は、nが1である、第1の態様を提供する。
【0056】
第4の態様では、本発明は、R1、R2およびR3の各々がメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルから選択される、第1、第2または第3の態様を提供する。
【0057】
第5の態様では、本発明は、R1、R2およびR3の各々がメチルである、第1から第4の態様のいずれか1つを提供する。
【0058】
第6の態様では、本発明は、R1、R2およびR3の各々が水素である、第1から第4の態様のいずれか1つを提供する。
【0059】
第7の態様では、本発明は、式
を有する、請求項1に記載の化合物を提供する。
【0060】
第8の態様では、本発明は、マイクロ電子デバイス基板上にケイ素含有膜を堆積させるための方法であって、基板を式(I):
の化合物と接触させることを含み、
式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素、C
1~C
10アルキル、C
3~C
10シクロアルキル、C
3~C
10アルケニル、C
3~C
10アルキニル、アリールおよびヘテロアリールから選択され、nは、蒸着条件下、反応ゾーンにおいて、0、1または2である、方法を提供する。
【0061】
第9の態様では、本発明は、nが0である、第8の態様の方法を提供する。
【0062】
第10の態様では、本発明は、nが1である、第8の態様の方法を提供する。
【0063】
第11の態様では、本発明は、R1、R2およびR3の各々がメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルから選択される、第8、第9または第10の態様の方法を提供する。
【0064】
第12の態様では、本発明は、R1、R2およびR3の各々がメチルである、第8から第11の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0065】
第13の態様では、本発明は、R1、R2およびR3の各々が水素である、第8から第11の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0066】
第14の態様では、本発明は、第8から第11の態様のいずれか1つの方法であって、式(I)の化合物が、
である、方法を提供する。
【0067】
第15の態様では、本発明は、第8から第11の態様のいずれか1つの方法であって、式(I)の化合物が、
である、方法を提供する。
【0068】
第16の態様では、本発明は、式(I):
の化合物を調製するための方法であって、
式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素、C
1~C
10アルキル、C
3~C
8シクロアルキル、アリールおよびベンジルから選択され、nは、0、1または2であり、
式(A):
(式中、Xはハロである)
の化合物を、
式(B):
の化合物と塩基の存在下で接触させることを含む、方法を提供する。
【0069】
第17の態様では、本発明は、nが0である、第16の態様の方法を提供する。
【0070】
第18の態様では、本発明は、nが1である、第16の態様の方法を提供する。
【0071】
第19の態様では、本発明は、式(I)の化合物が式:
を有する、第16の態様の方法を提供する。
【0072】
第20の態様では、本発明は、式(I)の化合物が式:
を有する、第16の態様の方法を提供する。
【0073】
このように本開示のいくつかの例示的な実施形態を説明してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲内でさらに他の実施形態を作成および使用することができることを容易に理解するであろう。本文書によって網羅される本開示の多くの利点は、前述の説明に記載されている。しかしながら、本開示は、多くの点で例示にすぎないことが理解されよう。本開示の範囲は、当然のことながら、添付の特許請求の範囲が表現される言語で定義される。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
の化合物であって、
式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素、C
1~C
10アルキル、C
3~C
8シクロアルキル、アリールおよびベンジルから選択され、nは、0、1または2であり、ただし、nが1である場合、式(I)の化合物は、トリメチルシリルエチレントリアミン以外である、化合物。
【請求項2】
R
1、R
2およびR
3の各々がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
1、R
2およびR
3の各々が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
マイクロ電子デバイス基板上にケイ素含有膜を堆積させるための方法であって、基板を式(I):
の化合物と接触させることを含み、
式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素、C
1~C
10アルキル、C
3~C
8シクロアルキル、アリールおよびベンジルから選択され、nは、蒸着条件下、反応ゾーンにおいて、0、1または2である、方法。
【請求項5】
式(I):
の化合物を調製するための方法であって、
式中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素、C
1~C
10アルキル、C
3~C
8シクロアルキル、アリールおよびベンジルから選択され、nは、0、1または2であり;
式(A):
(式中、Xはハロである)
の化合物を、
式(B):
の化合物と塩基の存在下で接触させることを含む、方法。
【国際調査報告】