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  • 特表-高吸水性樹脂およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/06 20060101AFI20240827BHJP
   C08F 220/30 20060101ALI20240827BHJP
   A01N 61/00 20060101ALI20240827BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240827BHJP
   C09K 17/18 20060101ALI20240827BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240827BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240827BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240827BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20240827BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20240827BHJP
   A01G 7/00 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
C08F220/06
C08F220/30
A01N61/00 D
A01P3/00
C09K17/18 H
A61K8/81
A61Q1/00
A61Q11/00
A61F13/15 142
A61F13/53 300
A01G7/00 602C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503475
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 KR2022012381
(87)【国際公開番号】W WO2023022550
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0109663
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0102205
(32)【優先日】2022-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スンヒ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ボムシン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】キュンロク・ハム
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンサム・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ソンジュン・ジュン
【テーマコード(参考)】
3B200
4C083
4H011
4H026
4J100
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BB17
3B200BB24
3B200CA08
3B200CA11
3B200DB02
3B200DB20
4C083AD091
4C083CC02
4C083CC41
4C083FF01
4H011AA02
4H011BB19
4H011DH02
4H026AA09
4H026AB01
4H026AB04
4J100AJ02P
4J100AL08Q
4J100AL11Q
4J100AL65R
4J100BA02Q
4J100BA03Q
4J100BA08R
4J100BA17H
4J100BC44Q
4J100BC49Q
4J100CA23
4J100CA31
4J100DA37
4J100DA71
4J100EA03
4J100FA02
4J100FA03
4J100GC25
4J100GC32
4J100HA31
4J100HB39
4J100JA44
4J100JA50
4J100JA51
4J100JA52
4J100JA60
4J100JA61
4J100JA64
4J100JA67
(57)【要約】
本発明は、高吸水性樹脂およびその製造方法に関するものであって、より具体的には、高吸水性樹脂の吸収性能の低下なしに向上したバクテリア増殖抑制特性を示すことができる高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体;下記の化学式1で表される重合性抗菌単量体;および架橋剤;の架橋重合体を含む、
高吸水性樹脂。
【化1】
前記化学式1において、
ないしRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1ないし4のアルキル、またはカルボキシル基(COOH)であり、
Lは、単結合、または炭素数6ないし60のアリーレンであり、
Aは、炭素数6ないし60の芳香族環であり、
ここで、前記アリーレンおよび芳香族環は、それぞれ独立して非置換か、またはヒドロキシ、炭素数1ないし10のアルキルおよび炭素数1ないし10のアルコキシで構成される群より選択される1個以上の置換基で置換される。
【請求項2】
ないしRは、それぞれ独立して、水素、メチル、またはカルボキシル基である、
請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項3】
Lは、単結合、フェニレン、またはナフチレンである、
請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項4】
Aは、ベンゼンまたはナフタレン環であり、
ここで、前記ベンゼンおよびナフタレン環は、それぞれ独立して非置換か、またはヒドロキシ、炭素数1ないし10のアルキルおよび炭素数1ないし10のアルコキシで構成される群より選択される1個ないし3の置換基で置換される、
請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項5】
前記重合性抗菌単量体は、下記の化学式1-1ないし1-3のいずれか一つで表される、
請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【化2】
前記化学式1-1ないし1-3において、
L’は、単結合、フェニレン、またはナフチレンであり、
Rは、ヒドロキシ、炭素数1ないし10のアルキル、または炭素数1ないし10のアルコキシであり、
aは、0ないし3の整数であり、
aが2以上の場合、2個以上のRは互いに同一であるかまたは異なっており、
ないしRは、請求項1で定義した通りである。
【請求項6】
前記重合性抗菌単量体は、下記で構成される群より選択されるいずれか一つである、
請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【請求項7】
前記架橋重合体内に前記重合性抗菌単量体は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、0.1ないし1重量部の含有量で含まれる、
請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項8】
前記高吸水性樹脂は、グラム陰性菌およびグラム陽性菌の少なくとも一つに抗菌性を示す、
請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項9】
前記グラム陰性菌は、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、または大腸菌(Escherichia coli)であり、
前記グラム陽性菌は、エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)である、
請求項8に記載の高吸水性樹脂。
【請求項10】
前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP 241.3によって測定した生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能(CRC)が、20ないし45g/gである、
請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項11】
酸性基を含むアクリル酸系単量体、下記の化学式1で表される重合性抗菌単量体、架橋剤および重合開始剤を混合して単量体組成物を準備するステップ(ステップ1);
前記単量体組成物を重合して含水ゲル重合体を形成するステップ(ステップ2);および
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級するステップ(ステップ3)を含む、
高吸水性樹脂の製造方法。
【化12】
前記化学式1において、
ないしRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1ないし4のアルキル、またはカルボキシル基(COOH)であり、
Lは、単結合;または炭素数6ないし60のアリーレンであり、
Aは、炭素数6ないし60の芳香族環であり、
ここで、前記アリーレンおよび芳香族環は、非置換か、またはヒドロキシ、炭素数1ないし10のアルキルおよび炭素数1ないし10のアルコキシで構成される群より選択される1個以上の置換基で置換される。
【請求項12】
前記重合性抗菌単量体は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、0.1ないし1重量部の含有量で用いられる、
請求項11に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂を含む、物品。
【請求項14】
前記物品は、吸水性物品、衛生用品、土壌保水剤、土木用止水材、建築用止水材、育苗用シート、鮮度保持剤、湿布用材料、電気絶縁体、口腔用物品、歯用物品、化粧品用物品および皮膚用物品で構成される群より選択される1種以上である、請求項13に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(等)との相互引用
本出願は、2021年8月19日付の韓国特許出願第10-2021-0109663号および2022年8月16日付の韓国特許出願第10-2022-0102205号に基づいた優先権の利益を主張して、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、高吸水性樹脂の吸収性能の低下なしに向上したバクテリア増殖抑制特性を示す、高吸水性樹脂およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自らの重量の5百ないし1千倍程度の水分を吸収可能な機能を有する合成高分子物質であって、開発企業ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名前で命名されている。前記のような高吸水性樹脂は、生理用品として実用化し始め、現在は子供用紙おむつなどの衛生用品以外に、園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における鮮度保持剤、および湿布用などの材料や電気絶縁分野に至るまで幅広く用いられている。
【0004】
特に、高吸水性樹脂は、子供用紙おむつや、成人用おむつなどの衛生用品または使い捨て吸収製品に最も幅広く適用されている。したがって、このような衛生用品および使い捨て吸収製品にバクテリアが増殖する場合、各種病気が誘発されるだけでなく、2次的な臭いまで起こすことがあるもので問題となる。これに対し、以前から高吸水性樹脂などに多様なバクテリア増殖抑制成分や、消臭または抗菌機能性成分を導入しようとする試みが行われている。
【0005】
しかし、このようにバクテリア増殖を抑制する抗菌剤などを高吸水性樹脂に導入するにあたり、優れたバクテリア増殖抑制特性および消臭特性を示しながらも、人体に無害で、経済性を充足しながら、高吸水性樹脂の基本的な物性を低下させない抗菌剤成分を選択して導入することは、それほど容易ではなかった。
【0006】
これにより、高吸水性樹脂の基本的物性の低下なしに優れたバクテリアの増殖を抑制できる高吸水性樹脂に関する技術の開発が継続して要請されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、高吸水性樹脂の吸収性能の低下なしに向上したバクテリア増殖抑制特性を示すことができる高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一具現例によると、
酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体;下記の化学式1で表される重合性抗菌単量体;および架橋剤;の架橋重合体を含む、高吸水性樹脂を提供する。
【0009】
【化1】
【0010】
前記化学式1において、
ないしRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1ないし4のアルキル、またはカルボキシル基(COOH)であり、
Lは、単結合;または炭素数6ないし60のアリーレンであり、
Aは、炭素数6ないし60の芳香族環であり、
ここで、前記アリーレンおよび芳香族環は、それぞれ独立して非置換か、またはヒドロキシ、炭素数1ないし10のアルキルおよび炭素数1ないし10のアルコキシで構成される群より選択される1個以上の置換基で置換される。
【0011】
本発明のまた他の具現例によると、
酸性基を含むアクリル酸系単量体、前記化学式1で表される重合性抗菌単量体、架橋剤および重合開始剤を混合して単量体組成物を準備するステップ(ステップ1);
前記単量体組成物を重合して含水ゲル重合体を形成するステップ(ステップ2);および
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級するステップ(ステップ3)を含む、高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0012】
さらに、本発明のまた他の一具現例によると、前記高吸水性樹脂を含む物品が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の高吸水性樹脂は、人体に有害で2次的悪臭を誘発する可能性があるバクテリアを増殖抑制する抗菌特性を示すことができる。
【0014】
具体的には、前記高吸水性樹脂は、架橋重合体の形成時に特定の構造の重合性抗菌単量体を用いて製造することによって、グラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)の少なくとも一つに対して抗菌特性を示しながらも、他の抗菌剤を用いる場合とは異なり、優れた保水能を維持することができる。
【0015】
また、前記重合性抗菌単量体は、アクリル酸単量体と共重合されるもので、前記重合性抗菌単量体または前記重合性抗菌単量体が重合された重合体の形態で高吸水性樹脂と単純混合される場合に対して、重合性抗菌単量体が溶出される恐れが減少することになるので、抗菌剤の溶出によって人体安定性を損なう恐れが発生しない可能性がある。
【0016】
したがって、前記高吸水性樹脂は、子供用おむつだけでなく、バクテリアに対する抗菌特性が要求される成人用おむつなど多様な衛生用品に非常に好ましく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、重合性抗菌単量体1-1のH NMRスペクトルを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために用いられたものであって、発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、ステップ、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはその以上の他の特徴やステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0019】
また、本発明において、各層または要素が各層または要素の「上に」または「の上に」形成されるものと言及される場合には、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味するか、他の層または要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成可能なことを意味する。
【0020】
本発明は、多様な変更を加えることができ、色々な形態を有することができるもので、特定の実施例を例示し、下記で詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物または代替物を含むものと理解されるべきである。
【0021】
また、本明細書で使用される専門用語は、単に特定の具現例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。そして、ここで使用される単数形態は、文面がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。
【0022】
一方、本明細書で使用する用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートをいずれも含む。
【0023】
また、本明細書において、アルキル基は、直鎖または分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1ないし20であることが好ましい。一実施形態によると、前記アルキル基の炭素数は1ないし10である。また一つの実施形態によると、前記アルキル基の炭素数は1ないし6である。前記アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチルブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチルプロピル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2,4,4-トリメチル-1-ペンチル、2,4,4-トリメチル-2-ペンチル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチルなどがあるが、これらに限定されるものではない。また、本明細書において、アルキレンは、2価基であることを除いては、前述したアルキル基に関する説明を適用することができる。
【0024】
また、本明細書において、アルコキシ基は直鎖または分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1ないし10であることが好ましい。また一つの実施形態によると、前記アルコキシ基の炭素数は1ないし6である。前記アルコキシ基の具体的な例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
また、本明細書において、アリール基は特に限定されないが、炭素数6ないし60であるものが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施形態によると、前記アリール基の炭素数は6ないし30である。一実施形態によると、前記アリール基の炭素数は6ないし20である。前記アリール基が単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本明細書において、アリーレンは、2価基であることを除いては、前述したアリール基に関する説明を適用することができる。
【0026】
また、本明細書において、芳香族環は、環形成原子として炭素だけを含み、かつ分子全体が芳香族性(aromaticity)を有する単環または縮合多環を意味する。前記芳香族環の炭素数は、6ないし60、または6ないし30、または6ないし20であるが、これに限定されるものではない。また、前記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本発明の明細書に使用される用語「重合体」または「高分子」は、アクリル酸系単量体が重合された状態であることを意味し、すべての水分含有量範囲または粒径範囲を包括することができる。前記重合体のうち、重合後乾燥前の状態のものであって含水率(水分含有量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル重合体と称することができ、このような含水ゲル重合体が粉砕および乾燥された粒子を架橋重合体と称することができる。
【0028】
また、用語「高吸水性樹脂粒子」は、酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体が重合されて内部架橋剤によって架橋された架橋重合体を含む、粒子状の物質を指す。
【0029】
また、用語「高吸水性樹脂」は、文脈により酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体が重合された架橋重合体、または、前記架橋重合体が粉砕された高吸水性樹脂粒子からなる粉末(powder)形態のベース樹脂を意味するか、または、前記架橋重合体や前記ベース樹脂に対して追加の工程、例えば表面架橋、微粉再造粒、乾燥、粉砕、分級などを経て製品化に適した状態にしたことを全て包括するものと使用される。
【0030】
従来の高吸水性樹脂での抗菌および消臭特性の確保のために、抗菌機能を有する金属化合物や、陽イオンまたはアルコール官能基を含有する有機化合物を添加剤形態で導入した。しかし、この場合、高吸水性樹脂の安全性が低下するか、吸収特性などの基本物性が低下し、また、抗菌特性の持続性および抗菌物質の流出の問題があった。
【0031】
一例として、銀、銅、亜鉛などの抗菌性金属イオンを含有する抗菌剤成分を高吸水性樹脂に導入しようと試みられている。このような抗菌性金属イオン含有成分は、バクテリアなど微生物の細胞壁を破壊して高吸水性樹脂に悪臭を誘発する可能性もある酵素を有するバクテリアを死滅させ、消臭特性を付与することができる。しかし、前記金属イオン含有成分の場合、人体に有益な微生物まで死滅可能な殺生物体(BIOCIDE)物質に分類されている。その結果、前記高吸水性樹脂を子供用または成人用おむつなどの衛生用品に適用する場合、前記金属イオン含有抗菌剤成分の導入は最大限排除されている実情である。
【0032】
そして、既存には、前記バクテリア増殖を抑制する抗菌剤などを高吸水性樹脂に導入するにあたり、前記抗菌剤を高吸水性樹脂に少量混合する方法を主に適用した。しかし、このような混合方法を適用する場合、時間の経過によってバクテリア増殖抑制特性を均一に維持しにくかったことが事実である。しかも、このような混合方法の場合、高吸水性樹脂および抗菌剤を混合する過程で抗菌剤成分の不均一な塗布性および脱離現象を招く可能性があり、前記混合のための新規設備を設ける必要があるなどのデメリットも存在した。
【0033】
また、バクテリア(細菌)は確認されているだけでも5千種を超えるほど多様な種類が存在する。具体的には、バクテリアは、球状、棒状、螺旋状などで、その細胞形状が多様で、酸素を要求する程度も菌ごとに異なっており、呼気性菌、通性菌および嫌気性細菌に分かれる。したがって、普通、一種類の抗菌剤が多様なバクテリアの細胞膜/細胞壁を損傷させるか蛋白質を変成させることができる物理/化学的メカニズムを有することは容易ではなかった。
【0034】
しかし、特定の構造を有するヒドロキシ基(OH)を含む単量体をアクリル酸系単量体とともに重合して高吸水性樹脂を製造する場合、一定の水準以上の吸収性能を示しながらもグラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)の少なくとも一つに抗菌性を示し得ることを確認し、本発明を完成した。
【0035】
具体的には、前記化学式1で表される重合性抗菌単量体がバクテリアと接触する場合、ヒドロキシ基で置換された芳香族環構造がバクテリアの代謝作用に必須の蛋白質物質に結合してバクテリアの成長を抑制することができる。より具体的には、前記ヒドロキシ基がバクテリアの蛋白質内に存在可能なチオール基(thiol group、sulfhydryl group、-SH)との反応、または他の蛋白質の部分との非結合性相互作用を通じてバクテリアの代謝作用を減少させることができ、これによりバクテリアの成長を抑制することができる。したがって、前記化学式1で表される重合性抗菌単量体によって形成された架橋重合体を含む高吸水性樹脂は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の少なくとも一つに対して抗菌性を示すことができる。
【0036】
さらに、前記高吸水性樹脂は、抗菌単量体をアクリル酸系単量体とともに架橋された架橋重合体の形態で含むので、高吸水性樹脂内に抗菌単量体が化合物の形態で残っていなくなるので、時間が経過しても抗菌剤が溶出する恐れがなく、これにより優れた安定性を示すという特徴がある。
【0037】
以下、発明の具体的な具現例により高吸水性樹脂およびその製造方法について、より詳しく説明する。
【0038】
高吸水性樹脂
具体的には、発明の一具現例に係る高吸水性樹脂は、酸性基を含み、前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体;下記の化学式1で表される重合性抗菌単量体;および架橋剤;の架橋重合体を含むことを特徴とする。
【0039】
【化2】
【0040】
前記化学式1において、
ないしRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1ないし4のアルキル、またはカルボキシル基(COOH)であり、
Lは、単結合;または炭素数6ないし60のアリーレンであり、
Aは、炭素数6ないし60の芳香族環であり、
ここで、前記アリーレンおよび芳香族環は、それぞれ独立して非置換か、またはヒドロキシ、炭素数1ないし10のアルキルおよび炭素数1ないし10のアルコキシで構成される群より選択される1個以上、例えば1個ないし5個の置換基で置換される。
【0041】
このとき、前記架橋重合体は、前記アクリル酸系単量体および前記重合性抗菌単量体が架橋剤の存在下で架橋重合されたものであって、前記単量体が重合されて形成された主鎖が、前記架橋剤によって架橋される形態の3次元網状構造を有する。したがって、前記重合性抗菌単量体は、前記高吸水性樹脂内で別個の化合物として存在せず、主鎖を構成する繰り返し単位で存在するため、時間が経過しても流出しないので、前記高吸水性樹脂の抗菌特性を持続的に維持することができる。
【0042】
また、前記高吸水性樹脂の架橋重合体が、前記アクリル酸系単量体によって誘導される繰り返し単位の他に重合性抗菌単量体によって誘導される繰り返し単位をさらに含むことによって、遠心分離保水能を向上させることができる。
【0043】
一方、前記化学式1において、RないしRは、それぞれ独立して、水素、メチル、またはカルボキシル基であってもよい。
【0044】
例えば、RないしRはいずれも水素であるか;またはRないしRの一つはメチル、またはカルボキシル基であり、残りは水素であってもよい。
【0045】
また、前記化学式1において、Lは、単結合;または非置換か、またはヒドロキシ、炭素数1ないし10のアルキルおよび炭素数1ないし10のアルコキシで構成される群より選択される1個ないし3の置換基で置換される炭素数6ないし20のアリーレンであってもよい。
【0046】
具体的には、Lは、単結合、フェニレン、またはナフチレンであってもよい。
【0047】
例えば、Lは、単結合、または下記で構成される群より選択されるいずれか一つであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0048】
【化3】
【0049】
また、前記化学式1において、Aは、非置換か、またはヒドロキシ、炭素数1ないし10のアルキルおよび炭素数1ないし10のアルコキシで構成される群より選択される1個ないし3の置換基で置換される炭素数6ないし20の芳香族環であってもよい。
【0050】
より具体的には、Aは、ベンゼンまたはナフタレン環であり、
ここで、前記ベンゼンおよびナフタレン環は、それぞれ独立して非置換か、またはヒドロキシ、炭素数1ないし10のアルキルおよび炭素数1ないし10のアルコキシで構成される群より選択される1個ないし3の置換基で置換されてもよい。
【0051】
例えば、Aは、ベンゼンまたはナフタレン環であり、
ここで、前記ベンゼンおよびナフタレン環は、それぞれ独立して非置換か、またはヒドロキシ、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2,4,4-トリメチル-1-ペンチル、2,4,4-トリメチル-2-ペンチル、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシおよびn-ブトキシで構成される群より選択される1個ないし3の置換基で置換されてもよい。
【0052】
前記重合性抗菌単量体は、下記の化学式1-1ないし1-3のいずれか一つで表されてもよい。
【0053】
【化4】
【0054】
前記化学式1-1ないし1-3において、
L’は、単結合、フェニレン、またはナフチレンであり、
Rは、ヒドロキシ、炭素数1ないし10のアルキル、または炭素数1ないし10のアルコキシであり、
aは、0ないし3の整数であり、
aが2以上の場合、2個以上のRは互いに同一であるかまたは異なっており、
ないしRは、前記化学式1で定義した通りである。
【0055】
前記化学式1-1ないし1-3において、Lは、単結合、1,4-フェニレン、1,3-フェニレン、または1,6-ナフチレンであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0056】
また、前記化学式1-1ないし1-3において、aは、0、1、2、または3であってもよい。
【0057】
一例として、前記重合性抗菌単量体は、下記で構成される群より選択されるいずれか一つであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0058】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【0059】
さらに、前記重合性抗菌単量体は、前記架橋重合体内に前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、0.1ないし1重量部の含有量で含まれる。前記重合性抗菌単量体が、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、0.1重量部未満で含まれる場合、十分な抗菌効果を示し難く、前記重合性抗菌単量体が、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、1重量部超で含まれる場合、重合性抗菌単量体内に含まれているヒドロキシ基(OH)によってラジカル重合反応が遅延する可能性があり、これによりアクリル酸系単量体の重合時に重合性が低下して重合が十分行われないか、あるいは重合時間が長くなる恐れがある。
【0060】
より具体的には、前記重合性抗菌単量体は、前記架橋重合体内に前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.4重量部以上、または0.5重量部以上、かつ1重量部以下の含有量で含まれてもよい。このとき、高吸水性樹脂の抗菌特性向上および吸収性能向上の面で、前記架橋重合体内に前記重合性抗菌単量体は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、0.2ないし1重量部の含有量で含まれることが好ましい。
【0061】
このとき、前記重合性抗菌単量体は、前記架橋重合体内に前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、0.1ないし1重量部の含有量で含まれるという意味は、架橋重合体の製造時に、前記重合性抗菌単量体を前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、0.1ないし1重量部の含有量で用いるという意味である。これは、前記高吸水性樹脂の残留単量体の確認時に抗菌単量体の検出の有無を通じて確認することができるが、前記高吸水性樹脂は、製造後抗菌単量体が検出されないため、用いられた抗菌単量体全量が全てアクリル酸系単量体との重合に用いられたものと考えられる。
【0062】
一方、前記アクリル酸系単量体は、下記の化学式2で表される化合物である。
【0063】
[化学式2]
R-COOM’
【0064】
前記化学式2において、
Rは、不飽和結合を含む炭素数2ないし5のアルケニル基であり、
M’は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0065】
好ましくは、前記単量体は、(メタ)アクリル酸、およびこれら酸の1価(アルカリ)金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群から選択した1種以上であってもよい。
【0066】
このようにアクリル酸系単量体として、(メタ)アクリル酸および/またはその塩を用いる場合、吸水性が向上した高吸水性樹脂を得ることができて有利である。
【0067】
また、本明細書で使用する用語「架橋剤」は、後述する高吸水性樹脂粒子の表面を主に架橋させるための追加架橋剤と区別するために使用する用語であって、前述したアクリル酸系単量体および重合性抗菌単量体の不飽和結合を架橋させ重合させる役割を果たす。前記ステップでの架橋は、表面または内部を区別せずに行われるが、後述する高吸水性樹脂粒子の追加架橋工程が行われる場合、最終製造された高吸水性樹脂の粒子表面は、主に追加架橋剤によって架橋された構造からなり、内部は、主に前記架橋剤によって架橋された構造からなることになる。したがって、前記追加架橋剤は、主に高吸水性樹脂の表面を架橋させる役割を果たすので、表面架橋剤の役割を果たすものと考えられ、前記架橋剤は、前記追加架橋剤と区別され、内部架橋剤の役割を果たすものと考えられる。
【0068】
前記架橋剤としては、前記アクリル酸系単量体の重合時に架橋結合の導入を可能にするものであれば、如何なる化合物も使用可能である。非制限的な例として、前記架橋剤は、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、またはエチレンカーボネートなどの多官能性架橋剤が単独使用または2以上併用されてもよく、これらに制限されるものではない。
【0069】
好ましくは、前記架橋剤としては、このうち、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、またはポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート系化合物が用いられてもよい。
【0070】
このような架橋剤の存在下での前記アクリル酸系単量体の架橋重合は、重合開始剤、必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの存在下で、熱重合、光重合または混成重合で行われてもよいが、具体的な内容は、後述することにする。
【0071】
また、前記高吸水性樹脂は、850μm以下の粒径、例えば、約150ないし850μmの粒径を有する粒子形態であってもよい。このとき、このような粒径は、ヨーロッパ不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)規格EDANA WSP 220.3方法によって測定されてもよい。ここで、前記高吸水性樹脂が150μm未満の粒径を有する微粉を多量含む場合、高吸水性樹脂の諸物性を低下させる可能性があるので、好ましくない。
【0072】
一方、前記高吸水性樹脂は、追加架橋剤を媒介として前記架橋重合体が追加架橋され、前記架橋重合体上に形成された架橋層をさらに含んでもよい。ここで、前記架橋層は、主に前記高吸水性樹脂粒子それぞれの表面上の少なくとも一部に形成されており、前記高吸水性樹脂内の架橋重合体が追加架橋剤によって架橋されている構造を有する。これは、高吸水性樹脂粒子の表面での架橋密度を高めるためのものであり、前記のように高吸水性樹脂が、前記追加架橋剤によって前記高吸水性樹脂粒子の少なくとも一部が架橋された構造をさらに含む場合、内部より外部の架橋密度が高い構造を有することになる。
【0073】
前記追加架橋剤としては、既存から高吸水性樹脂の製造に用いられていた追加架橋剤を特別な制限なしにいずれも用いることができる。例えば、前記追加架橋剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコールおよびグリセロールからなる群より選択された1種以上のポリオール;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびグリセロールカーボネートからなる群より選択された1種以上のカーボネート系化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物;オキサゾリジノンなどのオキサゾリン化合物;ポリアミン化合物;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;または環状ウレア化合物;などを含んでもよい。
【0074】
具体的には、前記追加架橋剤として、前述した追加架橋剤のうち1種以上、または2種以上、または3種以上が用いられてもよいが、例えば、エチレンカーボネート-プロピレンカーボネート(ECPC)、プロピレングリコールおよび/またはグリセロールカーボネートが用いられてもよい。
【0075】
一方、前記高吸水性樹脂は、前述のように、前記グラム陰性菌および前記グラム陽性菌の少なくとも一つに抗菌性を示すことができる。より具体的には、前記高吸水性樹脂は、グラム陽性菌に分類されるバクテリア1種以上に対して抗菌性を示すことができる。または、前記高吸水性樹脂は、グラム陰性菌に分類されるバクテリア1種以上に対して抗菌性を示すことができる。または、前記高吸水性樹脂は、グラム陰性菌に分類されるバクテリア1種以上およびグラム陽性菌に分類されるバクテリア1種以上に対して抗菌性を示すことができる。
【0076】
ここで、「特定のバクテリアに抗菌性を示す」ということの意味は、抗菌性の有無を確認しようとする高吸水性樹脂に試験バクテリアが接種された人工尿を吸収させた後、これを培養した後のバクテリアの数が、抗菌物質を含有しない高吸水性樹脂に試験バクテリアが接種された人工尿を吸収させた後、これを培養した後のReferenceバクテリア数に対して顕著に減少したことを意味するものであり、具体的には、後述する抗菌特性評価に基づいて、下記の数式1によって計算された静菌減少率(%)が50%以上であることを意味する。
【0077】
【数1】
【0078】
前記の式において、
sampleは、静菌物質を含有する高吸水性樹脂の培養液での微生物濃度(Co)であり、
Referenceは、静菌物質を含有しない比較例1の高吸水性樹脂の培養液での微生物濃度(Co)である。
【0079】
より好ましくは、前記「特定のバクテリアに抗菌性を示す」ということは、前記数式1によって計算された静菌減少率(%)が90%ないし100%であることを意味する。一具現例で、前記高吸水性樹脂の前記数式1によって計算された静菌減少率(%)は、90%以上、95%以上、99%以上、99.09%以上、99.18%以上、99.86%以上、99.91%以上、99.93%以上、または99.96%以上で、かつ100%以下であってもよい。
【0080】
一方、前記グラム陽性菌は、グラム染色法で染色すると、紫色に染色されるバクテリアを総称するものであって、グラム陽性菌の細胞壁は幾重のペプチドグリカンで構成されており、クリスタルバイオレットなどの塩基性染料で染色した後、エタノールを処理しても脱色されず、紫色を示すことになる。このようなグラム陽性菌に分類されるバクテリアとしては、エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)、ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、腸球菌(Enterococcusfaecium)または乳酸レンサ球菌(Lactobacillus lactis)などがある。
【0081】
また、前記グラム陰性菌は、グラム染色法で染色すると、赤色に染色されるバクテリアを総称するものであって、グラム陽性菌に比べて相対的に少量のペプチドグリカンを有する細胞壁を有する代わりに、脂質多糖質、脂質蛋白質、および他の複雑な重合体物質から構成された外膜を有する。これにより、クリスタルバイオレットなどの塩基性染料で染色した後にエタノールを処理すると、脱色が起きてサフラニンのように赤色の染料で対比染色をすると、赤色を示すことになる。このようなグラム陰性菌に分類されるバクテリアとしては、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、大腸菌(Escherichia coli)、チフス菌(Salmonella typhi)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)またはコレラ菌(Vibrio cholerae)などが挙げられる。
【0082】
したがって、前記グラム陽性菌およびグラム陰性菌は、接触時に多様な病気を誘発するだけでなく、免疫力が落ちた重症患者には2次感染も起こす可能性があるので、一つの抗菌剤を使用して前記グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方に対して抗菌性を示すことが好ましい。
【0083】
好ましくは、前記高吸水性樹脂は、前記グラム陰性菌および前記グラム陽性菌の両方に抗菌性を示すことができる。このとき、前記高吸水性樹脂が抗菌性を示すグラム陰性菌は、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、または大腸菌(Escherichia coli)であり、前記グラム陽性菌は、エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus faecalis)であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0084】
具体的には、前記高吸水性樹脂は、EDANA法WSP 241.3によって測定した生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保水能(CRC)が、20ないし45g/gであってもよい。前記遠心分離保水能(CRC)が、20g/g未満の場合、液体を吸収した後に保有できる性能が低下して高吸水性樹脂を衛生用品に適用するのに適していない。より具体的には、前記高吸水性樹脂は、前記遠心分離保水能(CRC)が、20g/g以上、25g/g以上、30g/g以上、33g/g以上、33.5g/g以上、34g/g以上、34.2g/g以上、34.5g/g以上、37g/g以上、37.1g/g以上、または37.6g/g以上で、かつ45g/g以下、43g/g以下、41g/g以下、39g/g以下、38g/g以下、または37.8g/g以下であってもよい。
【0085】
したがって、架橋重合体内に重合性抗菌単量体を所定の含有量で含む前述した高吸水性樹脂は、20ないし45g/g範囲の遠心分離保水能(CRC)を有するとともに、優れた抗菌性を示すことができる。
【0086】
高吸水性樹脂の製造方法
一方、前記高吸水性樹脂は、下記の製造方法を含んで製造されてもよい。
【0087】
酸性基を含むアクリル酸系単量体、前記化学式1で表される重合性抗菌単量体、架橋剤および重合開始剤を混合して単量体組成物を準備するステップ(ステップ1);
前記単量体組成物を重合して含水ゲル重合体を形成するステップ(ステップ2);および
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級するステップ(ステップ3)を含む。
【0088】
まず、一具現例の高吸水性樹脂の製造のために、酸性基を含むアクリル酸系単量体、前記化学式1で表される重合性抗菌単量体、塩基性物質、架橋剤および重合開始剤を混合して単量体組成物を準備するステップ1が行われる。
【0089】
ここで、前記アクリル酸系単量体、重合性抗菌単量体および架橋剤に対するより具体的な説明は、前述したものを参照し、前記ステップ1で、アクリル酸系単量体の酸性基の少なくとも一部が塩基性物質との混合によって中和する。これにより、前記単量体組成物は酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体を含んでもよい。
【0090】
ここで、前記アクリル酸系単量体を中和させることができる塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ物質が用いられてもよい。そして、前記塩基性物質は、水に溶解した水溶液の状態で単量体組成物に投入されてもよい。
【0091】
また、前記アクリル酸系単量体の中和度、言い換えると、架橋重合体の製造時に用いられたアクリル酸系単量体の総モルを基準にして中和したアクリル酸系単量体の含有量(モル%)は、40ないし95モル%、または40ないし80モル%、または45ないし75モル%であってもよい。前記中和度が過度に高いと、中和した単量体が析出され、重合が円滑に行われ難いことがあり、逆に中和度が過度に低いと、高分子の吸収力が大きく落ちるだけでなく取り扱うのに困難な弾性ゴムのような性質を示すことになるという問題がある。
【0092】
また、前記単量体組成物で、前記重合性抗菌単量体は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、0.1ないし1重量部の含有量で用いられてもよい。前記重合性抗菌単量体が、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、0.1重量部未満で用いられる場合、十分な抗菌効果を示し難く、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、1重量部超で含まれる場合、重合性抗菌単量体内に含まれているヒドロキシ基(OH)によってラジカル重合反応が遅延する可能性があり、これによりアクリル酸系単量体の重合性が低下して重合が十分行われないか、あるいは重合時間が長くなる恐れがある。
【0093】
より具体的には、前記重合性抗菌単量体は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.4重量部以上、または0.5重量部以上、かつ1重量部以下の含有量で用いられてもよい。
【0094】
また、前記単量体組成物で、このような架橋剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、0.01ないし1重量部で含まれ、重合された高分子を架橋させることができる。架橋剤の含有量が0.01重量部未満であると、架橋による改善効果が微々たるものになり、架橋剤の含有量が1重量部を超えると、高吸水性樹脂の吸収能が低下する可能性がある。より具体的には、前記架橋剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.4重量部以上、または0.5重量部以上、かつ1重量部以下の量で含まれてもよい。
【0095】
また、前記重合開始剤は、重合方法により適切に選択されてもよく、熱重合方法を用いる場合には熱重合開始剤を用い、光重合方法を用いる場合には光重合開始剤を用い、混成重合方法(熱および光をいずれも用いる方法)を用いる場合には熱重合開始剤と光重合開始剤とをともに用いることができる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などの光照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によってある程度の熱が発生するもので、追加的に熱重合開始剤を用いることもできる。
【0096】
前記光重合開始剤は、紫外線などの光によってラジカルを形成可能性な化合物であればその構成が限定されることなく用いられてもよい。
【0097】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(BenzylDimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびアルファ-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される一つ以上を用いてもよい。一方、アシルホスフィンの具体的な例としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートなどが挙げられる。より多様な光開始剤については、Reinhold Schwalm著書である「UV Coatings:Basics、Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」p115によく明示されており、前述した例に限定されない。
【0098】
前記光重合開始剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、0.001ないし1重量部で含まれてもよい。このような光重合開始剤の含有量が0.001重量部未満の場合、重合速度が遅くなる可能性があり、光重合開始剤の含有量が1重量部を超えると、高吸水性樹脂の分子量が小さく物性が不均一になる可能性がある。より具体的には、前記光重合開始剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、0.005重量部以上、または0.00625重量部以上で、0.5重量部以下、または0.3重量部以下の量で含まれてもよい。
【0099】
また、前記重合開始剤として熱重合開始剤をさらに含む場合、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選択される一つ以上を用いてもよい。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis-(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチラミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitrile)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤については、Odian著書である「Principle of Polymerization(Wiley、1981)」、p.203によく明示されており、前述した例に限定されない。
【0100】
前記熱重合開始剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、0.001ないし1重量部で含まれてもよい。このような熱重合開始剤の含有量が0.001重量部未満であると、追加的な熱重合がほとんど起きないため、熱重合開始剤の追加による効果が微々たるものになる可能性があり、熱重合開始剤の含有量が1重量部を超えると、高吸水性樹脂の分子量が小さく物性が不均一になる可能性がある。より具体的には、前記熱重合開始剤は、前記アクリル酸系単量体100重量部に対して、0.005重量部以上、または0.01重量部以上、0.1重量部以上、または0.125重量部以上で、0.5重量部以下、または0.3重量部以下の量で含まれてもよい。
【0101】
さらに、必要に応じて前記単量体組成物は、界面活性剤、増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤が1種以上をさらに含んでもよい。
【0102】
また、前述した単量体組成物は、溶媒に溶解した溶液の形態に準備されてもよい。
【0103】
このとき、用いられる前記溶媒は、前述した成分を溶解できるものであれば、その構成が限定されることなく用いられてもよく、例えば水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどで選択した1種以上を組み合わせて用いてもよい。前記溶媒は、単量体組成物の総含有量に対して前述した成分を除いた残量で含まれてもよい。
【0104】
次に、前記単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル重合体を形成するステップ2が行われる。
【0105】
ここで、熱重合および光重合方法としては、前記単量体組成物を重合して含水ゲル重合体を形成することができる通常用いられる方法であれば、特に構成の限定がない。
【0106】
一例として、前記光重合は、60ないし90℃、または70ないし80℃の温度で3ないし30mW、または10ないし20mWの強度を有する紫外線を照射することによって行われてもよい。前記条件で光重合時により優れた重合効率で架橋重合体の形成が可能である。
【0107】
また、前記光重合を行う場合、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器または一定の大きさのステンレス材質の容器内で行われてもよいが、前述した重合方法は一例であって、本発明は前述した重合方法に限定されない。
【0108】
また、前述のように移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で光重合を行う場合、通常得られる含水ゲル重合体の形態は、ベルトの幅を有するシート状の含水ゲル重合体であってもよい。このとき、重合体シートの厚さは、注入される単量体組成物の濃度および注入速度に応じて変わるか、約0.5ないし約5cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるように単量体組成物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度で単量体組成物を供給する場合、生産効率が低いため好ましくなく、シート状の重合体厚さが5cmを超える場合には過度に厚い厚さによって、重合反応が全厚さにかけて均等に起こらない可能性がある。
【0109】
前記ステップ2から得られた含水ゲル重合体の含水率は、含水ゲル重合体の総重量に対して約40ないし約80重量%であってもよい。一方、本明細書全体で「含水率」は、全体含水ゲル重合体重量に対して占める水分の含有量であって、含水ゲル重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を差し引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱を通じて重合体の温度を上げて乾燥する過程で、重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値と定義する。このとき、乾燥条件は常温で約180℃まで温度を上昇させた後、180℃で維持する方式で総乾燥時間は温度上昇段階5分を含めて20分に設定して含水率を測定する。
【0110】
一方、前記含水ゲル重合体の製造後、後続の乾燥および粉砕工程を行う前に、製造された含水ゲル重合体を粉砕する粗粉砕工程が選択的に行われてもよい。
【0111】
前記粗粉砕工程は、後続の乾燥工程で乾燥効率を上げ、製造される高吸水性樹脂粉末の粒子の大きさを制御するための工程であって、このとき、用いられる粉砕機は構成の限定はないが、具体的には、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、回転切断式粉砕機(Rotary cutter mill)、切断式粉砕機(Cutter mill)、円板粉砕機(Disc mill)、ジュレッド破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、ミートチョッパ(meat chopper)および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器群より選択されるいずれか一つを含んでもよいが、前述した例に限定されない。
【0112】
前記粗粉砕工程は一例として、前記含水ゲル重合体の粒径が約2ないし約10mmになるように行われてもよい。含水ゲル重合体の粒径を2mm未満に粉砕することは、前記含水ゲル重合体の高い含水率によって技術的に容易でなく、また、粉砕された粒子間に互いに凝集する現象が現れることもある。一方、粒径を10mm超に粉砕する場合、今後行われる乾燥段階の効率増大効果が微々たるものになる。
【0113】
次に、前記ステップ2で製造した含水ゲル重合体を乾燥、粉砕、および分級して架橋重合体を含む高吸収性樹脂を形成するステップ3が行われる。
【0114】
前記乾燥方法は、含水ゲル重合体の乾燥工程で通常用いられるものであれば、その構成に限定されることなく選択して用いられてもよい。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を行ってもよい。
【0115】
具体的には、前記乾燥は、約100ないし約250℃の温度で行われてもよい。乾燥温度が100℃未満の場合、乾燥時間が過度に長くなり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、乾燥温度が250℃を超える場合、過度に重合体表面だけ乾燥され、今後行われる粉砕工程で微粉が発生することもあり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。したがって、好ましくは、前記乾燥は、100℃以上、または110℃以上で、かつ200℃以下、または180℃以下の温度で行われてもよい。
【0116】
このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は、約5ないし約10重量%であってもよい。
【0117】
一方、前記の乾燥工程後には粉砕工程が行われる。前記粉砕工程は、重合体粉末、つまり、高吸水性樹脂の粒径が約150ないし約850μmとなるように行われてもよい。このような粒径に粉砕するために用いられる粉砕機は、具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを用いてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0118】
また、前記のような粉砕ステップ後、最終製品化する高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕された重合体粉末を粒径によって分級する工程をさらに経てもよい。
【0119】
前記工程の結果として得られる高吸水性樹脂は、アクリル酸系単量体と重合性抗菌単量体とが架橋剤を媒介として架橋重合された架橋重合体を含む微細粉末形態を有することができる。具体的には、前記高吸水性樹脂は、150ないし850μmの粒径を有する微細粉末形態を有することができる。
【0120】
次に、前記ステップ3で製造した高吸水性樹脂を追加架橋剤の存在下で、熱処理して表面架橋するステップをさらに含んでもよい。前記ステップを通じて、前記架橋重合体上に追加架橋剤を媒介として前記架橋重合体が追加架橋された表面架橋層をさらに含む高吸水性樹脂を製造することができる。このとき、追加架橋剤に対する説明は、前述したものを参照する。
【0121】
前記の表面架橋は、粒子内部の架橋結合密度と関連して高吸水性樹脂の表面付近の架橋結合密度を増加させるステップである。一般的に、追加架橋剤は樹脂の表面に塗布される。したがって、この反応は、樹脂粒子の表面上で起こり、これは粒子内部には実質的に影響を与えることなく粒子の表面上での架橋結合性を改善させる。したがって、表面架橋結合された高吸水性樹脂は、内部でより表面付近でより高い架橋結合度を有する。
【0122】
また、前記追加架橋剤は、前記高吸水性樹脂100重量部に対して、約0.001ないし約5重量部で用いられてもよい。例えば、前記追加架橋剤は、高吸水性樹脂100重量部に対して、0.005重量部以上、0.01重量部以上、または0.05重量部以上であり、5重量部以下、4重量部以下、または3重量部以下の含有量で用いられてもよい。追加架橋剤の含有量範囲を前述した範囲に調節し、優れた吸収諸物性を示す高吸水性樹脂を製造することができる。
【0123】
また、前記追加架橋剤を前記高吸水性樹脂と混合する方法については、その構成の限定はない。例えば、追加架橋剤と高吸水性樹脂とを反応槽に入れて混合するか、高吸水性樹脂に追加架橋剤を噴射する方法、連続的に運転されるミキサーに高吸水性樹脂と追加架橋剤とを連続的に供給して混合する方法などを用いてもよい。
【0124】
前記の表面架橋は、前述した追加架橋剤が高吸水性樹脂を約80ないし約220℃の温度で約15ないし約100分間加熱させることによって行われてもよい。架橋反応温度が80℃未満の場合、表面架橋反応が十分起きないことがあり、220℃を超過する場合、過度に表面架橋反応が進行されることもある。また、架橋反応時間が15分未満で過度に短い場合、十分な架橋反応ができず、架橋反応時間が100分を超える場合、過度な表面架橋反応により粒子表面の架橋密度が過度に高くなって物性の低下が発生することがある。より具体的には、120℃以上、または140℃以上で、かつ200℃以下、または180℃以下の温度で、20分以上、または40分以上で、かつ70分以下、または60分以下で加熱させることによって行われてもよい。
【0125】
前記表面架橋反応のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給するか、熱源を直接供給して加熱してもよい。このとき、使用可能な熱媒体の種類としては、スチーム、熱風、熱い油などの昇温した流体などを用いてもよいが、本発明がこれに限定されるものではなく、また、供給される熱媒体の温度は、熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適宜選択してもよい。一方、直接供給される熱源としては、電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、前述した例に限定されるものではない。
【0126】
また、さらに前述の生分解性高吸水性樹脂を含む物品が提供される。
【0127】
前記物品は、吸水性物品、衛生用品、土壌保水剤、土木用止水材、建築用止水材、育苗用シート、鮮度保持剤、湿布用材料、電気絶縁体、口腔用物品、歯用物品、化粧品用物品および皮膚用物品から構成される群より選択される1種以上であってもよい。
【0128】
このとき、前記高吸水性樹脂を含む衛生用品としては、例えば、子供用紙おむつや、成人用おむつまたは生理用ナプキンなどが挙げられる。このような衛生用品は、吸収体中に前述の一具現例の高吸水性樹脂が含まれるという点を除いては、通常の衛生用品の構成を有することができる。
【0129】
以下、発明の理解のために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は発明を例示するためのものであるだけで、発明をこれらのみに限定するものではない。
【0130】
製造例A:重合性抗菌単量体1-1の製造
【0131】
【化14】
【0132】
ハイドロキノン(21g、19.1mmol)、トリエチルアミン(TEA、38.7g、38.2mmol)を、250mLの丸い底フラスコに入れ、テトラヒドロフラン(THF)150mLに溶解した後、ドライアイスとアセトンとを用いて氷浴(ice bath)で反応器の温度を-78℃に下げ、アクリロイルクロリド(Acryloyl chloride、17.3g、19.1mmol)を20分間ゆっくり反応溶液に滴下した。反応終了後、反応物をエチルアセテートに十分希釈した後、EtOAc/ブライン(brine)で水洗して有機層を分離した。マグネシウムスルフェートで水を除去し、減圧下で通過した溶液を濃縮させた後、ヘキサン/酢酸エチルカラムクロマトグラフィー分離法で精製して重合性抗菌単量体1-1(25.7g、収率82%)を得た。得られた重合性抗菌単量体1-1のH NMRスペクトルを図1に示した。
【0133】
MS[M+H]=164.05
H NMR(500MHz、DMSO、δ[ppm]):6.2(dd、1H、CH=CH)、6.3(dd、1H、CH=CH)、6.5(dd、1H、CH=CH)、6.7(d、1H、Ar-H)、6.9(d、1H、Ar-H)、9.46(s、1H、OH)。
【0134】
製造例B:重合性抗菌単量体1-2の製造
【0135】
【化15】
【0136】
レゾルシノール(Resorcinol、21g、19.1mmol)、トリエチルアミン(TEA、38.7g、38.2mmol)を250mLの丸底フラスコに入れ、テトラヒドロフラン(THF)150mLに溶解した後、ドライアイスとアセトンを用いて氷浴(ice bath)で反応器の温度を-78℃に下げ、アクリロイルクロリド(Acryloylchloride、17.3g、19.1mmol)を20分間ゆっくり反応溶液に滴下した。反応終了後、反応物をエチルアセテートに十分希釈した後、EtOAc/ブライン(brine)で水洗して有機層を分離した。マグネシウムスルフェートで水を除去し、減圧下で通過した溶液を濃縮させた後、ヘキサン/酢酸エチルカラムクロマトグラフィー分離法で精製して重合性抗菌単量体1-2(22.3g、収率71%)を得た。
【0137】
MS[M+H]=164.05
H NMR(500MHz、DMSO、δ[ppm]):6.2(dd、1H、CH=CH)、6.3(dd、1H、CH=CH)、6.5(dd、1H、CH=CH)、6.4(d、1H、Ar-H)、6.6(d、1H、Ar-H)、9.89(s、1H、OH)。
【0138】
実施例-高吸水性樹脂組成物の製造
実施例1
(ステップ1)撹拌機、窒素投入器、温度計を装着した3Lのガラス容器にアクリル酸100g、架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(Mn=575)0.25g、光開始剤としてフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド0.00625g、熱開始製として過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;SPS)0.125g、40%水酸化ナトリウム溶液100gおよび前記製造例Aで製造した重合性抗菌単量体1-1の0.2gを添加して窒素を連続的に投入しながら単量体組成物を製造した。このとき、前記アクリル酸および前記重合性抗菌単量体1-1の中和度は70モル%であった。
【0139】
(ステップ2)以後、前記単量体組成物を横250mm、縦250mm、高さ30mmのステンレス材質の容器に加え、80℃のUVチェンバで紫外線を60秒間照射(照射量:10mV/cm)して重合した後、2分間エージング(aging)させてシート形態の含水ゲル重合体を製造した。
【0140】
(ステップ3)製造された含水ゲル重合体を3cm×3cmの大きさに切り出した後、ミートチョッパ(meat chopper)に投入して重合体を粉砕して1mmないし10mmの大きさを有する含水ゲル粒子粉(crumb)を得た。以降、得られた粉を600μmの孔大きさを有するステンレスワイヤーガーゼの上に約30mm厚さに広げ、120℃の熱風オーブンで11時間乾燥した。このように得られた乾燥重合体を粉砕機を用いて粉砕して、ASTM規格の標準網篩で分級して150ないし850μmの粒子の大きさを有するベース樹脂を得てこれを高吸水性樹脂とした。
【0141】
実施例2
前記実施例1で、前記製造例Aで製造した重合性抗菌単量体1-1を0.5g用いたことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0142】
実施例3
前記実施例1で、前記製造例Aで製造した重合性抗菌単量体1-1を1.0g用いたことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0143】
実施例4
前記実施例1で、前記製造例Aで製造した重合性抗菌単量体1-1の代わりに、前記製造例Bで製造した重合性抗菌単量体1-2を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0144】
実施例5
前記実施例4で前記製造例Bで製造した重合性抗菌単量体1-2を0.5g用いたことを除いては、実施例4と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0145】
実施例6
前記実施例4で前記製造例Bで製造した重合性抗菌単量体1-2を1.0g用いたことを除いては、実施例4と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0146】
比較例1
前記実施例1で重合性抗菌単量体1-1を用いないことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0147】
参照例1
前記実施例1で、前記製造例Aで製造した重合性抗菌単量体1-1を0.05g用いたことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0148】
実験例1
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂に対して、次のような方法で物性を評価し、その結果を下記の表4に示した。
【0149】
異に表記しない限り、下記の物性評価はいずれも、恒温恒湿(23±1℃、相対湿度50±10%)で行い、生理食塩水または塩水は0.9重量%塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を意味する。
【0150】
(1)大腸菌に対する抗菌特性評価
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂2gを250細胞培養フラスコ(cell culture flask)に入れた後、試験微生物である大腸菌(E.coli、ATCC 25922)が3000±300CFU/mlで接種された人工尿50mlを注入した。以降、前記高吸水性樹脂が人工尿溶液を十分吸収できるように約1分間混ぜて、溶液が十分吸収された樹脂は、ゲルの形態を示すが、これを35℃が維持されるインキュベータ(incubator)(JEIO TECH社)で12時間培養した。培養が完了した試料に0.9wt%NaCl溶液(solution)を150mL追加して約1分間振とう(Shaking)し、この希釈溶液を寒天培地プレート(Agar medium plate)に塗抹した。以降コロニー計数(Colony counting)が可能になるように段階希釈(Serial dilution)を行い、この過程で0.9wt%NaCl溶液(solution)を用いた。静菌性能は希釈濃度を考慮して、初基濃度の微生物濃度(Co、CFU/mL)計算した後、下記の数式1に大腸菌(E.coli、ATCC 25922)の静菌減少率(%)を計算し、その結果を下記の表4に示した。
【0151】
【数2】
【0152】
前記の式において、
sampleは、静菌物質を含有する高吸水性樹脂の培養液での微生物濃度(Co)であり、
Referenceは、静菌物質を含有しない比較例1の高吸水性樹脂の培養液での微生物濃度(Co)である。
【0153】
このとき、前記抗菌特性評価に用いられる人工尿は、下記のように製造された。
【0154】
まず、1000mLのフラスコに下記の表1に記載の試薬を記載された重量の通りに入れ、1000mL目盛りまで水を満たした後、混合してStock solutionを製造し、100mLのフラスコに下記の表2に記載の試薬を記載された重量の通りに入れ、20mL目盛りまで水を満たした後、混合してCationic solutionを製造し、100mLのフラスコに下記の表3に記載の試薬を記載された重量の通りに入れ、100mL目盛りまで水を満たした後、混合してUrea/glucose solutionを製造した。
【0155】
次に、製造されたStock solutionとCationic solutionを高圧滅菌器を用いて、120℃で15分間滅菌した後、常温まで十分冷やして、製造されたUrea/glucose solutionを0.22μm syringe filter(Hydrophilic、Sartoriusstedim社製)を用いて不純物を除去した。
【0156】
以降、Stock solutionの940mL、Cationic solutionの10mLおよびUrea/glucose solutionの50mLを十分混合して人工尿を製造した。製造された人工尿は、通常冷蔵保管して2週間使用可能であり、2週が過ぎた人工尿は実験に用いない。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
【0159】
【表3】
【0160】
(2)遠心分離保水能(CRC:Centrifuge Retention Capacity)
ヨーロッパ不織布産業協会(European Disposables and Nonwovens Association、EDANA)規格EDANAWSP 241.3によって、各実施例および比較例の高吸水性樹脂それぞれに対して、無荷重下での吸収倍率による遠心分離保水能を測定した。
【0161】
具体的には、高吸水性樹脂W(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れ、密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に浸水させた。30分経過した後、遠心分離機を用いて250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を抜いて、封筒の重量W(g)を測定した。また、樹脂を用いずに同一な操作を行った後に、そのときの重量W1(g)を測定した。得られた各質量を用いて、次のような式によってCRC(g/g)を算出し、その結果を下記の表4に示した。
【0162】
[数式2]
CRC(g/g)={[W(g)-W(g)]/W(g)}-1
【0163】
前記数式2において、
(g)は、高吸水性樹脂の初基重量(g)であり、
(g)は、高吸水性樹脂を用いず、生理食塩水に前記封筒を30分間浸水して吸収させた後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に測定した封筒の重量であり、
(g)は、常温で生理食塩水に高吸水性樹脂を30分間浸水して吸収させた後、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に、高吸水性樹脂を含めて測定した封筒の重量である。
【0164】
【表4】
【0165】
前記の表4を参照すると、実施例の高吸水性樹脂は、アクリル酸系単量体の重合時に重合性抗菌単量体を用いない比較例1の高吸水性樹脂および重合性抗菌単量体が、アクリル酸単量体100重量部に対して、0.05重量部で用いられた参照例1の高吸水性樹脂に対して向上した遠心分離保水能(CRC)を示すとともに、グラム陰性菌の一つである大腸菌に対して優れた抗菌性を示すことを確認できる。
図1
【国際調査報告】