(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-03
(54)【発明の名称】被試験デバイスのエミュレーションのためのパラメータ制御を含む機械学習波形生成デジタル・ツイン
(51)【国際特許分類】
G01R 31/28 20060101AFI20240827BHJP
G01R 13/20 20060101ALI20240827BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240827BHJP
【FI】
G01R31/28 F
G01R13/20 Z
G01R31/28 Q
G06N20/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510442
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 US2022041119
(87)【国際公開番号】W WO2023023407
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】ピカード・ジョン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】パターソン・ジャスティン・イー
(72)【発明者】
【氏名】トリッチュラー・ヘイケ
【テーマコード(参考)】
2G132
【Fターム(参考)】
2G132AA15
2G132AB03
2G132AC10
2G132AD10
2G132AG14
2G132AL11
(57)【要約】
波形生成装置は、被試験デバイスからの波形をパラメータに関連付けるように構成された機械学習システムと、ユーザが1つ以上のユーザ入力を提供することを可能にするように構成されたユーザ・インタフェースと、1つ以上のプロセッサとを有し、1つ以上のプロセッサは、1つ以上のパラメータを含む1つ以上の入力をユーザ・インタフェースを通して受け、受けた1つ以上のパラメータに機械学習システムを適用し、機械学習システムによって1つ以上のパラメータに基づく波形を生成し、生成した波形を出力する処理を1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される。波形生成方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形を生成した条件を記述するパラメータに上記波形をメタデータとして関連付けるように構成された機械学習システムと、
ユーザが1つ以上のユーザ入力を提供することを可能にするように構成されたユーザ・インタフェースと、
1つ以上のプロセッサと
を具え、
該1つ以上のプロセッサが、
少なくとも1つ以上のパラメータを含む1つ以上のユーザ入力を上記ユーザ・インタフェースを通じて受信する処理と、
上記機械学習システムを受信した上記1つ以上のパラメータに適用する処理と、
上記機械学習システムによって、上記1つ以上のパラメータに基づいて波形を生成する処理と、
上記生成された波形を出力する処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される波形生成装置。
【請求項2】
訓練モードにおいて、パラメータのセットを被試験デバイスに送信し、上記被試験デバイスから得られる波形を取得し、上記パラメータのセットと上記得られる波形を訓練入力として上記機械学習システムに送信する試験自動化システムを更に具える請求項1による波形生成装置。
【請求項3】
上記試験自動化システムが、パラメータ生成部と、上記被試験デバイスから波形を取得するための試験測定装置とを有する請求項2による波形生成装置。
【請求項4】
上記パラメータ生成部が、1つ以上のパラメータの複数の値を掃引して上記パラメータのセットを生成するように構成される請求項3による波形生成装置。
【請求項5】
生成された上記波形がデジタル形式で出力され、上記波形生成装置が、上記デジタル形式の生成された上記波形をアナログ形式の生成された上記波形に変換するデジタル・アナログ・コンバータを更に具える請求項1による波形生成装置。
【請求項6】
上記アナログ形式の生成された上記波形が、電気/光変換インタフェースに提供される請求項5による波形生成装置。
【請求項7】
上記デジタル・アナログ・コンバータによる変換より前に、生成された上記波形に電気/光変換の補償を適用するためのディエンベディング・フィルタを更に具える請求項6による波形生成装置。
【請求項8】
生成された波形に1つ以上の障害を付与するための障害パラメータ・ミキサを更に具える請求項1による波形生成装置。
【請求項9】
上記ユーザ・インタフェースは、ユーザから障害の選択を受けるように構成される請求項8による波形生成装置。
【請求項10】
上記1つ以上のプロセッサは、上記機械学習システムにおいて上記波形と上記パラメータとの間に関連を生成することによって、上記機械学習システムを訓練する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成される請求項1による波形生成装置。
【請求項11】
機械学習システムを含む装置によって波形を生成する方法であって、
ユーザ・インタフェースを介して1つ以上のパラメータを受ける処理と、
受けた上記1つ以上のパラメータに上記機械学習システムを適用する処理と、
上記機械学習システムにより、上記1つ以上のパラメータに基づいて波形を生成する処理と、
生成した上記波形を出力する処理と
を具える波形生成方法。
【請求項12】
波形シミュレーション装置からの出力を用いて上記機械学習システムを訓練する処理を更に具える請求項11による波形生成方法。
【請求項13】
試験自動化システムからの出力を用いて上記機械学習システムを訓練する処理を更に具え、上記試験自動化システムが、パラメータのセットを被試験デバイスに送信するパラメータ生成部と、上記パラメータのセットに従って動作する上記被試験デバイスからの波形を取得する試験測定装置とを有する請求項11による波形生成方法。
【請求項14】
生成された上記波形がデジタル形式で出力され、生成された上記波形をアナログ形式に変換する処理を更に具える請求項11による波形生成方法。
【請求項15】
上記アナログ形式の生成された上記波形を電気/光変換インタフェースに提供する処理を更に具える請求項14による波形生成方法。
【請求項16】
生成された上記波形を上記アナログ形式に変換する前に、生成された上記波形に電気/光変換の補償を適用する処理を更に具える請求項15による波形生成方法。
【請求項17】
生成された上記波形に1つ以上の障害を付与する処理を更に具える請求項11による波形生成方法。
【請求項18】
ユーザから選択された1つ以上の障害を受ける処理を更に具える請求項17による波形生成方法。
【請求項19】
上記機械学習システムにおいて、受けた上記パラメータと関連する波形メタデータとの間の関連を作成する処理によって、上記機械学習システムを訓練する処理を更に具える請求項11による波形生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験測定システムに関し、より詳細には、被試験デバイスのパラメータと波形生成装置との相互作用をエミュレートするためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気部品や光学部品のメーカーは、顧客に送付する前に部品(コンポーネント)を試験する。製造ラインでの光学部品及び電気部品の試験では、通常、部品の動作パラメータを設定し、部品を試験して出力データを収集し、次いで、出力データを評価して、部品が試験方法に合格か不合格かを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0209282号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0081592号明細書
【特許文献3】米国特許第5483473号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2019/0129398号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「テクトロニクス社製オシロスコープ」の紹介サイト、テクトロニクス、[online]、[2024年4月18日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/products/oscilloscopes>
【非特許文献1】「任意波形ジェネレータ」の紹介サイト、テクトロニクス、[online]、[2024年4月18日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/products/arbitrary-waveform-generators>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この試験プロセスは、部品ごとに何百回も行われる場合がある。この試験プロセスは、各部品の製造コストを、部品の個数を掛けただけ上昇させ、その個数は、メーカーによっては、数千から数十万に達することもある。
【0006】
更に、被試験デバイスのデバイス・パラメータは、全ての動作モードで試験する必要があるため、試験自体に時間がかかる。自動試験スクリプトを実行すると、試験デバイスの負担がいくらか軽減される可能性があるが、多くの場合、被試験マシンには自動試験モードが組み込まれていないか、そのような試験モードが最も必要な開発の初期段階では利用できない。また、多くのデバイスには自動試験モードがまったくないため、これらのデバイスでは自動試験を利用できない。
【0007】
光トランシーバと電気トランシーバの設計と組み立てには、コストと時間がかかる。開発に時間がかかる要因の1つには、デバイスの特性を試験して、複数の異なる受信機との相互運用性を確認することがある。もしその設計が試験に不合格の場合は、続いて設計が行われ、試験が行われる。設計を繰り返すたびに、デバイス開発に遅れが生じる。
【0008】
本開示による実施形態は、現場におけるこれら及び他の欠陥に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示技術の実施形態は、送信機デバイス自体のデジタル・ツインとして送信機デバイスのモデルを作成することを含む。このデジタル・ツイン(デジタル的に模倣した仮想モデル)は、被試験デバイス(DUT)のパラメータに基づいて波形特性を学習し、DUTの波形と一致する波形を生成する。次に、DUT自体ではなく、デジタル・ツイン波形生成装置を使用して、DUTと複数の既存の受信機タイプとの相互運用性を試験する。デジタル・ツインには、自動試験スクリプトが含まれても良く、いずれにせよ、DUT自体と比較して、目的の波形を生成するための操作が容易なものとなろう。
【0010】
デジタル・ツインを使用するもう1つの利点は、以下で説明するように、DUTが物理的に利用可能になる前の、DUTがまだ設計段階の間に、デジタル・ツインを開発して運用できることである。このため、デジタル・ツインを使用すると、開発者は、DUT自体が目的の出力を生成できるようになる前に、DUTの目的の出力を試験に利用できる。
【0011】
いくつかの実施形態では、DUTは、光送信機であっても良い。しかしながら、他の実施形態は、電気信号を生成する装置に関する。デジタル・ツイン・デバイスは、訓練(トレーニング)モード又は動作(ランタイム)モードで動作する機械学習ネットワークを含む。以下で説明するように、デジタル・ツイン・デバイスは、実際の波形又はシミュレートされた波形のいずれかを使用して訓練(トレーニング)される。いずれの場合も、訓練モードでは、波形は、メタデータとして、特定の波形を生成する条件を記述するパラメータに関連付けられる。
【0012】
次に、動作モードでは、デジタル・ツインは、訓練(学習)済み機械学習ネットワークを使用して、ユーザが選択又は提供したパラメータに基づいて特定の波形を選択又は生成する。デジタル・ツインは、任意波形生成装置(AWG:Arbitrary Waveform Generator)を制御して、アナログ波形を実際に生成することができ、これをユーザが受信機の特性を試験するために印可しても良い。別の実施形態では、デジタル・ツインは、AWG自体の一部であっても良い。以下では、これらの実施形態について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示技術の実施形態による、シミュレートされた波形を用いた被試験デバイス(DUT)のための機械学習訓練ネットワークを含むシステム・ブロック図である。
【
図2】
図2は、本開示技術の実施形態による、実際の波形を用いた被試験デバイス(DUT)のための機械学習訓練ネットワークを含むシステム・ブロック図である。
【
図3】
図3は、本開示技術の実施形態による、ユーザ入力に基づいてシミュレートされた電気波形を生成するために使用される訓練済み機械学習ネットワークのシステム・ブロック図である。
【
図4】
図4は、本開示技術の実施形態による、ユーザ入力に基づいてシミュレートされた光波形を生成するために使用される訓練済み機械学習ネットワークのシステム・ブロック図である。
【
図5】
図5は、本開示技術の実施形態による、ユーザ入力に基づいてシミュレートされた電気波形を生成するための機械学習ネットワークを含む任意波形生成装置のシステム・ブロック図である。
【
図6】
図6は、本開示技術の実施形態による、ユーザ入力に基づいてシミュレートされた電気波形を生成するための機械学習ネットワークを含む任意波形生成装置の別のシステム・ブロック図である。
【
図7】
図7は、本開示技術の実施形態による、ユーザ入力に基づいてシミュレートされた光波形を生成するための機械学習ネットワークを含む任意波形生成装置のシステム・ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本開示技術の実施形態による、シミュレートされた波形を用いた被試験デバイス(DUT)のための機械学習訓練ネットワークを含む訓練システム50のシステム・ブロック図である。上述したように、光及び電気送受信機(トランシーバ)の設計、組み立て及び試験にはコストがかかる。しかしながら、典型的には、そのような送受信機によって最終的に生成される所望の波形は、送受信機が完全に開発される前に利用可能となる。
【0015】
図1の訓練システム50は、DUTシミュレータ100とデジタル・ツイン・デバイス200の2つの主要コンポーネントを含む。デジタル・ツイン・デバイス200は、例えば、1つ以上の汎用プロセッサ又は専用プロセッサ上で動作するアプリケーションとして、ソフトウェアの形で具現化されても良い。DUTシミュレータ100は、最終的に送受信機の送信機によって生成される所望の出力波形の集合(コレクション)を記憶する。概して、送受信機(トランシーバ)の開発者は、送受信機の開発中に所望の波形のモデルを作成し、それらのコピーを、各波形の作成に用いるパラメータとともに、DUTシミュレータ100内に格納する。この波形開発は、送受信機を組み立てる前に行うことができる。
【0016】
DUTシミュレータ100が所望の波形を取得(アクイジション:波形データを取得)して保存した後、シミュレータは、各波形及びそれに関連するパラメータをデジタル・ツイン・デバイス200に伝達する。概して、DUTシミュレータ100のユーザは、このシミュレータを操作して、特定の波形を生成するパラメータの様々な範囲の値及び組み合わせを個々にくまなく掃引する(sweep through:くまなく調べる)。これらのパラメータ及びそれらに関連する波形の組み合わせは、DUTシミュレータ100に格納される。パラメータには、波形を何らかの方法で分類するのに有用なものを含めることができる。入力パラメータのデータには、様々なタイプの情報が含まれても良い。これには、送信機チューニング・パラメータが含まれても良く、これは、波形の送信に使用される送信機レジスタ中の様々なパラメータである。パラメータは、数十個、あるいは数百個ある場合もある。パラメータ・データの他の例としては、限定するものではないが、温度、湿度、波形について行われる任意のタイプの測定、波形データの応答の帯域幅、波形が伝送される媒体の伝達関数の推定値、FFE等化処理タップ、波形のノイズ、波形を作成又は取得するために使用される試験測定装置のノイズ、平均光パワー、ジッタ、などがある。従って、何千ものパラメータの組み合わせがあり得る。パラメータのあり得る組み合わせの夫々は、波形に関連付けられる。そして、パラメータの組み合わせは、各組み合わせについて、DUTシミュレータ100において波形と関連付けられ、DUTシミュレータ100中に記憶される。
【0017】
種々のパラメータ及び波形が互いに関連づけられた後、パラメータ・データ及び波形データは、訓練(トレーニング)のためにデジタル・ツイン装置200に送られる。訓練中、機械学習ネットワーク220は、訓練モードで動作する。機械学習ネットワーク220は、ユーザ・インタフェース240によって制御され、これは、グラフィカル・ユーザ・インタフェース又はプログラム・インタフェースであっても良い。訓練モードでは、機械学習ネットワーク220は、波形を生成したパラメータを訓練のための入力として与えられる。それらパラメータによって生成された波形は、メタデータとして提供され、機械学習ネットワークは、これを使用してネットワークを訓練する(学習させる)。具体的には、機械学習ネットワーク220は、パラメータ及びそれらの波形メタデータについて、波形を生成したパラメータと波形を相関させる処理を反復する。
【0018】
更に、機械学習ネットワーク220は、その訓練の一部として、一組の入力パラメータが与えられると、ある波形を正確に予測する予測モデルを作成する。その後、これらの予測は、以下で説明するように、デジタル・ツイン・デバイスのランタイム・モードで使用される。いくつかの実施形態では、ユーザは、ユーザ・インタフェース240を操作して、機械学習ネットワーク220による収集のために、特定の波形を生成するために使用される制御可能なパラメータの夫々を最小値から最大値まで掃引する。
【0019】
このようにして、デジタル・ツイン200は、機械学習ネットワーク220によって、特定の波形を特定のパラメータ設定とマッチングさせるようにデジタル・ツインに教える。いくつかの実施形態では、機械学習ネットワーク220は、学習用の画像データに対して動作するResNet又はRegNetネットワークを使用しても良い。これらの実施形態では、機械学習ネットワーク220は、波形そのものではなく、波形の画像を訓練に用いても良い。
【0020】
DUTシミュレータ100は、単一のデバイスについてのパラメータ及び波形メタデータを記憶しても良いし、DUTシミュレータが、複数の異なるデバイスについてのパラメータ及び波形メタデータを記憶しても良い。概して、DUTシミュレータに格納された複数のデバイスの中の1つのデバイスのみに由来するパラメータ及び波形メタデータが、任意の時点での機械学習ネットワーク220の訓練に使用される。
【0021】
図2は、DUT用の機械学習訓練(トレーニング)ネットワークを含む訓練システム60のシステム・ブロック図である。
図1の訓練システム50とは異なり、
図2の訓練システム60は、機械学習ネットワーク220の訓練のために、シミュレーションではなく実際の波形を使用する。訓練システム60では、実際のDUTが既に存在するため、
図1のシステム50のように、波形をシミュレーションする必要はなく、DUTによって波形を生成できる。
【0022】
訓練システム60は、試験自動化システム150を含み、試験自動化システムは、DUT160を制御する。DUT160は、試験自動化システム150からパラメータを受信し、これらパラメータを使用して連続波形を生成し、これはオシロスコープ170に送られる。オシロスコープは、DUT160から連続波形を受信し、DUT160からの連続波形とマッチングしているか又は連続波形と関連する波形出力を生成する。次に、
図1を参照して説明した訓練システム50と同様に、試験自動化システム150は、訓練のために、パラメータに加えて、これらに対応する波形をメタデータとして、機械学習ネットワーク220に送信する。デジタル・ツイン・デバイス200内の機械学習ネットワーク220は、上記と同様に動作し、パラメータ及び波形メタデータを収集し、波形及びパラメータ間の相互接続された予測値を生成して、機械学習ネットワーク220を訓練する(train:学習させる)。
【0023】
デジタル・ツイン・デバイス200内の機械学習ネットワーク220が訓練された後、ユーザは、デジタル・ツイン・デバイス200を使用して、相互運用性試験又は他の用途のために、波形を選択して生成しても良い。
【0024】
図3は、本開示技術の実施形態による、ユーザ入力に基づいてシミュレートされた波形を生成するために使用されるデジタル・ツイン・デバイス200中の訓練済み(trained:学習済み)機械学習ネットワークのシステム・ブロック図である。この動作モードでは、デジタル・ツイン・デバイス200が、波形又は波形信号を生成し、これによって、任意波形生成装置300にアナログ電気波形を生成させる。生成されたアナログ電気波形は、試験のためにDUT400に送られても良い。DUT400は、例えば、デジタル・ツイン・デバイス200に記憶されている様々な波形との相互運用性を試験するために使用される受信機であっても良い。
【0025】
ユーザ・インタフェース240は、DUTモデル・パラメータ・パネル250を含み、これを通してユーザは、所望の波形を生成するためのパラメータの特定の値を選択できる。DUTモデル・パラメータ・パネル250は、グラフィカル・ユーザ・インタフェースであっても良いし、プログラムによるコマンド(programmatic commands)によって制御されても良い。DUTモデル・パラメータ・パネル250に図示される特定のパラメータは、上記のシステム50及び60において機械学習ネットワーク220を訓練するために使用されたパラメータと一致する。上述したように、機械学習ネットワーク220は、特定の波形を特定のパラメータのセットと関連付けるように訓練されたものである。
【0026】
このランタイム・モードでは、ユーザは、DUTモデル・パラメータ・パネル250を使用してパラメータを選択する。次に、機械学習ネットワーク220は、DUTモデル・パラメータ・パネル250内の正確なパラメータ設定に基づいて、機械学習ネットワーク220からの出力として、最良の波形又は波形を示す信号を生成する。上述のように、訓練中、機械学習ネットワーク220は、特定の波形をメタデータとして、その波形を生成するために使用されるパラメータと密接に関連付けている。このとき、このランタイム・モードでは、機械学習ネットワークが逆方向に動作し、元々は波形を作成するのに使用されたパラメータに基づいて、波形を生成する。
【0027】
動作中、ユーザがDUTモデル・パラメータ・パネル250内の個々のパラメータを調整すると、機械学習ネットワーク220は、選択されたパラメータに最も密接にマッチングする波形を生成する。別の実施形態では、機械学習ネットワーク220からの出力は、以前に分類された波形記憶データベースへのインデックスとして使用されても良い。この実施形態では、機械学習ネットワーク220からの出力を利用して、以前に掃引されたパラメータ値のセットの中の1つに最も関連するものとして、機械学習ネットワークに以前に提供された複数の波形の中から1つを選択しても良い。
【0028】
波形が、機械学習ネットワーク220によって選択され、出力された後に、オプションで、AWG300内のデジタル・アナログ・コンバータ(DAC)におけるような、AWG300内の信号経路を通して波形が経験する特性について、波形を補償するために、ディエンベディング・フィルタ(de-embedding filter)270を適用しても良い。
【0029】
実施形態は、汎用の障害パラメータ・パネル260を更に有していても良く、これは、機械学習ネットワーク220によって生成された波形を更に変更するために使用できる。汎用障害パラメータ・パネル260の要素を選択することにより、ユーザは、機械学習ネットワーク220によって生成される波形を、機械学習ネットワーク220からの出力を変更しない場合と比較して、実際のデバイスから現れるであろう波形を、より正確に反映するように変更できる。例えば、ユーザは、AWG300に送られる前に、ノイズ、ジッタ、シンボル間干渉(ISI)又はその他の要因などを、障害パラメータ・ミキサ(impairment parameter mixer)280において、波形に追加しても良い。汎用障害パラメータ260によって行われたフィルタ処理は、波形に制御可能な障害を生じさせるが、これは、波形が物理的な伝送リンクを通ることで、どのように変更されるかを模倣するものとなる。いくつかの実施形態では、障害パラメータ・ミキサ280は、ディエンベディング・フィルタ270よりも前にあっても良い。
【0030】
デジタル・ツイン200及びAWG300を上述した方法で用いることにより、ユーザは、波形生成装置が実際に組み立てられ、動作した後に、波形生成装置を制御するかのように、パラメータの制御を行えるが、デジタル・ツイン200は、波形生成装置が組み立てられるよりも、ずっと前から利用可能であっても良い。デジタル・ツイン200を利用したこのモデリングによれば、デバイス(device:装置)を物理的に組み立てる前に、設計のコンセプト(概念)を試験することによって、より安価な設計サイクルが可能になる。
【0031】
図4は、ユーザ入力に基づいてシミュレートされた波形を生成するために使用されるデジタル・ツイン・デバイス200内の訓練済み機械学習ネットワークのシステム・ブロック図である。
図4では、更に、AWG300によって電気波形が生成された後、電気/光変換インタフェース350に印加され、これが、AWG300の電気波形出力を光波形に変換する。次に、光波形は、光受信機400又は光信号を受信するように構成された他の装置に印加されても良い。デジタル・ツイン200では、ディエンベディング・フィルタ272が、訓練セッション中に、光から電気への変化における差異に対して最適化されるのに加えて、ランタイム中に、電気から光学への変化に対して最適化されても良い。そうでない場合には、ディエンベディング・フィルタ272は、
図3を参照して上述したディエンベディング・フィルタ270と同じに又は類似して動作する。
【0032】
図5は、本開示技術の実施形態による、電気波形を生成するための機械学習ネットワーク220を含む任意波形生成装置500のシステム・ブロック図である。
図5の任意波形生成装置500は、
図3のデジタル・ツイン200と類似しているが、任意波形生成装置500は、
図3のAWG300のような外部AWGに結合されることなく、それ自体で出力波形を生成する回路を含む点が異なる。具体的には、デジタル・アナログ・コンバータ(DAC)510は、機械学習ネットワーク220によって選択され、ディエンベディング・フィルタ270及び障害パラメータ・ミキサ280によって変更されたデジタル波形を受ける。次いで、DAC510は、デジタル波形をアナログ波形信号に変換する。アナログ波形信号は、任意波形生成装置500の最終出力用に出力波形を調整するために、1つ以上の出力回路520によって変更されても良い。出力回路520は、例えば、1つ以上の増幅器、バッファ又は他の調整回路(conditioning circuits)を含んでもよい。
【0033】
任意波形生成装置500から出力された最終的なアナログ波形は、分析のためにDUT400に送られてもよいし、又は、以下に説明するように、他の目的に使用されても良い。
図5に示すシステムは、PCI Express 又は、その他のデータ伝送経路の試験に使用されても良い。例えば、任意波形生成装置500は、デバイスのパラメータ間の相互作用をよりよく理解したい研究開発エンジニアが、これらパラメータを調整するときに有用なことがある。
【0034】
任意波形生成装置500が、
図6のオシロスコープ600のようなオシロスコープ画面上でライブかつインタラクティブに更新される比較的短いデータ・パターンを生成する場合を考察してみよう。任意波形生成装置500のDUTモデル・パラメータ250を調整することにより、ユーザは、特定のパラメータが出力波形にどのように影響するかをリアルタイムで確認できる。特定のパラメータを変更しても、最終的な波形出力にほとんど違いがない場合がある。あるいは、1つのパラメータの小さな変更が、機械学習ネットワーク220によって生成され、波形生成装置500によって出力される波形に大きな違いを生じることもある。いずれの場合も、任意波形生成装置500をオシロスコープ600に結合させることにより、ユーザは、パラメータ調整の効果をリアルタイムで確認できる。更に、オシロスコープ600を使用して、機械学習ネットワーク220によって生成された波形を見ることにより、ユーザは、上述した訓練段階における機械学習ネットワークの訓練の品質を検査することができる。
【0035】
図7は、本開示技術の実施形態による、ユーザ入力に基づいて光波形を生成するための機械学習ネットワーク220を含む任意波形生成装置500のシステム・ブロック図である。
図7の任意波形生成装置500は、任意波形生成装置500から出力される電気波形を光波形に変換する電気/光変換インタフェース350に結合されている点で、
図4のデジタル・ツイン・デバイス200と同様である。そして、光波形は、試験のために光受信機400又はその他のDUTに提供されても良い。
図7の任意波形生成装置500と
図4のデジタル・ツイン・デバイス200との主な違いは、先に詳細に説明したように、DAC510の存在である。
【0036】
デジタル・ツイン・デバイス200及び/又は任意波形生成装置500を含む本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0037】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0038】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0039】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。
実施例
【0040】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0041】
実施例1は、波形生成装置であって、波形を生成した条件を記述するパラメータに上記波形をメタデータとして関連付けるように構成された機械学習システムと、ユーザが1つ以上のユーザ入力を提供することを可能にするように構成されたユーザ・インタフェースと、1つ以上のプロセッサとを具え、該1つ以上のプロセッサが、少なくとも1つ以上のパラメータを含む1つ以上のユーザ入力を上記ユーザ・インタフェースを通じて受信する処理と、上記機械学習システムを受信した上記1つ以上のパラメータに適用する処理と、上記機械学習システムによって、上記1つ以上のパラメータに基づいて波形を生成する処理と、上記生成された波形を出力する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される。
【0042】
実施例2は、実施例1による波形生成装置であって、訓練モードにおいて、パラメータのセットを被試験デバイスに送信し、上記被試験デバイスから得られる波形を取得し、上記パラメータのセットと上記得られる波形を訓練入力として上記機械学習システムに送信する試験自動化システムを更に具える。
【0043】
実施例3は、実施例2による波形生成装置であって、上記試験自動化システムが、パラメータ生成部と、上記被試験デバイスから波形を取得(アクイジション)するための試験測定装置とを有する。
【0044】
実施例4は、実施例3による波形生成装置であって、上記パラメータ生成部が、1つ以上のパラメータの複数の値をくまなく掃引(sweep through:くまなく調べる)して上記パラメータのセットを生成するように構成されている。
【0045】
実施例5は、上述した実施例のいずれかによる波形生成装置であって、生成された上記波形がデジタル形式で出力され、上記波形生成装置が、上記デジタル形式の生成された上記波形を、アナログ形式の生成された上記波形に変換するデジタル・アナログ・コンバータを更に具える。
【0046】
実施例6は、実施例5による波形生成装置であって、上記アナログ形式の生成された上記波形が、電気/光変換インタフェースに提供される。
【0047】
実施例7は、実施例6による波形生成装置であって、上記波形生成装置が、上記デジタル・アナログ・コンバータによる変換より前に、生成された上記波形に電気/光変換の補償を適用するためのディエンベディング・フィルタを更に具える。
【0048】
実施例8は、上述した実施例のいずれかによる波形生成装置であって、上記波形生成装置が、生成された上記波形に1つ以上の障害を付与するための障害パラメータ・ミキサ(impairment parameter mixer)を更に具える。
【0049】
実施例9は、実施例8による波形生成装置であって、上記ユーザ・インタフェースは、ユーザから障害の選択を受けるように構成されている。
【0050】
実施例10は、上述の実施例のいずれかによる波形生成装置であって、上記1つ以上のプロセッサは、上記機械学習システムにおいて上記波形と上記パラメータとの間に関連を生成することによって、上記機械学習システムを訓練する(学習させる)処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう更に構成されている。
【0051】
実施例11は、機械学習システムを含む装置によって波形を生成する方法であって、ユーザ・インタフェースを介して1つ以上のパラメータを受ける処理と、受けた上記1つ以上のパラメータに上記機械学習システムを適用する処理と、上記機械学習システムにより、上記1つ以上のパラメータに基づいて波形を生成する処理と、生成した上記波形を出力する処理とを具える。
【0052】
実施例12は、実施例11による方法であって、波形シミュレーション装置からの出力を用いて上記機械学習システムを訓練する処理を更に具える。
【0053】
実施例13は、上述の実施例の方法のいずれかによる方法であって、試験自動化システムからの出力を用いて上記機械学習システムを訓練する処理を更に具え、上記試験自動化システムが、パラメータのセットを被試験デバイスに送信するパラメータ生成部と、上記パラメータのセットに従って動作する上記被試験デバイスからの波形を取得する試験測定装置とを有する。
【0054】
実施例14は、上述した実施例の方法のいずれかによる方法であって、生成された上記波形がデジタル形式で出力され、生成された上記波形をアナログ形式に変換する処理を更に具える。
【0055】
実施例15は、実施例14による方法であって、上記アナログ形式の生成された上記波形を電気/光変換インタフェースに提供する処理を更に具える。
【0056】
実施例16は、実施例15による方法であって、生成された上記波形を上記アナログ形式に変換する前に、生成された上記波形に電気/光変換の補償を適用する処理を更に具える。
【0057】
実施例17は、上述の例示の方法のいずれかによる方法であって、生成された上記波形に1つ以上の障害を付与する処理を更に具える。
【0058】
実施例18は、実施例17による方法であって、ユーザから選択された1つ以上の障害を受ける処理を更に具える。
【0059】
実施例19は、上述の実施例の方法のいずれかによる方法であって、上記機械学習システムにおいて、受けた上記パラメータと関連する波形メタデータとの間の関連を作成する処理によって、上記機械学習システムを訓練する処理を更に具える。
【0060】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0061】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0062】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【国際調査報告】