IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソイテックの特許一覧

特表2024-532199キャリア基板の前面に有用な層を転写するための方法
<>
  • 特表-キャリア基板の前面に有用な層を転写するための方法 図1A
  • 特表-キャリア基板の前面に有用な層を転写するための方法 図1B
  • 特表-キャリア基板の前面に有用な層を転写するための方法 図1C
  • 特表-キャリア基板の前面に有用な層を転写するための方法 図1D
  • 特表-キャリア基板の前面に有用な層を転写するための方法 図1E
  • 特表-キャリア基板の前面に有用な層を転写するための方法 図2
  • 特表-キャリア基板の前面に有用な層を転写するための方法 図3
  • 特表-キャリア基板の前面に有用な層を転写するための方法 図4A
  • 特表-キャリア基板の前面に有用な層を転写するための方法 図4B
  • 特表-キャリア基板の前面に有用な層を転写するための方法 図4C
  • 特表-キャリア基板の前面に有用な層を転写するための方法 図5
  • 特表-キャリア基板の前面に有用な層を転写するための方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】キャリア基板の前面に有用な層を転写するための方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/853 20230101AFI20240829BHJP
   C30B 29/30 20060101ALI20240829BHJP
   C30B 29/22 20060101ALI20240829BHJP
   C30B 33/06 20060101ALI20240829BHJP
   C30B 29/32 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H10N30/853
C30B29/30 B
C30B29/30 A
C30B29/22 A
C30B29/22 Z
C30B33/06
C30B29/32 C
C30B29/32 D
C30B29/32 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510341
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2022073007
(87)【国際公開番号】W WO2023030896
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】2109287
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ‐アルフレッド, セドリック
(72)【発明者】
【氏名】ベン モハメド, ナディア
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BC01
4G077BC31
4G077BC32
4G077BC36
4G077BC37
4G077BC42
4G077BC43
4G077BC60
4G077FF06
(57)【要約】
本発明は支持基板(20)上に作業層(15)を転写するためのプロセスに関し、そのプロセスは、a)ドナー層(12)を備えるドナー基板(10)を提供するステップと、b)ドナー層(12)への種の注入によって、主面と共に作業層(15)を画定する弱化領域(14)を形成するステップと、c)支持基板(20)をドナー基板(10)と接合するステップと、d)第1の段階と第2の段階とを含む熱処理を施すステップであって、第1の持続時間の第1の段階が、第1の温度までの温度上昇を含み、弱化領域(14)での種によって生成される欠陥の成熟を可能にし、および弱化領域(14)での破断の開始を防止するように設計され、第2の持続時間の第2の段階が、第1の温度よりも低い第2の温度での保持期間を含み、かつ弱化領域(14)に沿って破断を開始するステップを含む。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板(20)上に作業層(15)を転写するためのプロセスであって、
a)主面を起点として、圧電材料から形成されたドナー層(12)と、ハンドル基板(13)とを備えるドナー基板(10)を提供するステップであって、前記ドナー層(12)が、前記ハンドル基板(13)の一方の面上に位置する、ステップと、
b)前記ドナー層(12)への種の注入によって、前記主面に平行であり、かつ前記主面と共に作業層(15)を画定する弱化領域(14)を形成するステップと、
c)前記ハンドル基板(13)と前記支持基板(20)との間に前記ドナー層(12)を介在させるように、前記支持基板(20)を前記ドナー基板(10)と接合するステップと、
d)第1の段階と第2の段階とをこの順で含む熱処理を施すステップであって、第1の持続時間の前記第1の段階が、第1の温度までの温度上昇を含み、かつ第1に、前記弱化領域(14)での前記種によって生成される欠陥の成熟を可能にし、および第2に、前記弱化領域(14)での破断の開始を防止するように設計され、第2の持続時間の前記第2の段階が、前記第1の温度よりも低い第2の温度での保持期間を含み、かつ前記弱化領域(14)に沿って破断を開始し、したがって前記支持基板(20)上に前記作業層(15)を転写するように設計される、ステップと、
を含む、プロセス。
【請求項2】
ステップd)がまた、前記第1の段階に先行し、前記第1の温度よりも低い強化温度と呼ばれる温度で実行される強化段階を含み、前記強化段階が、ステップc)の実行中に前記支持基板(20)と前記ドナー基板(10)との間に形成される界面の結合エネルギーを強化するように意図される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第1の段階が、温度の上昇、前記第1の温度での保持期間、および前記第2の温度への温度の低下をこの順で含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第1の段階が、ステップb)の実行中の前記種の注入の条件に従って調整される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ハンドル基板(13)および前記支持基板(20)をそれぞれ形成する材料の熱膨張係数の相対差が10%未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ハンドル基板(13)がバルク基板を備え、前記バルク基板の一方の面上に中間層があり、前記中間層が前記ドナー層(12)と前記バルク基板との間に介在し、好適には、前記中間層がポリマー材料を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第1の温度が、300℃未満、好適には250℃未満、さらにより好適には220℃未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第2の持続時間が6時間未満、好適には4時間未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第2の温度が、180℃未満、好適には170℃未満である、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記種が、水素イオン、ヘリウムイオンから選択される少なくとも1つの要素を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記圧電材料が、LiTaO、LiNbO、LiAlO、BaTiO、PbZrTiO、KNbO、BaZrO、CaTiO、PbTiO、KTaOから選択される少なくとも1つの要素を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
接合するステップc)の前に、前記ドナー層(12)上および/または前記支持基板(20)の前面(21)上に誘電材料の層を形成するステップが先行する、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
接合するステップc)が分子結合を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、異質構造の分野に関する。
【0002】
特に、本発明は、SmartCut(商標)技術を伴う、支持基板に作業層を転写するためのプロセスに関する。
【0003】
より詳細には、本発明によるプロセスは、亀裂および/または層間剥離の発生のリスクを低減するために、破断温度を低下させることが可能なプロセスに関する。
【0004】
次いで、本発明によるプロセスは、好適には、圧電オンインシュレータ基板の製造のために実施される。
【背景技術】
【0005】
(発明の技術的背景)
仏国特許出願公開第3068508号明細書は、支持基板に作業層を転写するためのプロセスを開示している。特に、仏国特許出願公開第3068508号明細書は、SmartCut(商標)プロセスに従って、支持基板に作業層を転写するためのプロセスを開示している。
【0006】
仏国特許出願公開第3068508号明細書に記載されている転写プロセスは、これに関連して、以下のステップを含む:
a0)前面から後面まで、ハンドル基板の一方の面上に位置するドナー層を備えるドナー基板を提供するステップ、
b0)前面に平行な平面に沿って延び、前記前面と共に作業層を画定する弱化領域を形成するように、前面を介してドナー層に種を注入するステップ、
c0)ドナー基板の前面を支持基板の主面と接合するステップ、
d0)弱化領域内で破断波の伝播を開始し、かつ次いで、支持基板の主面に作業層を転写するように意図された熱処理を施すステップ。
【0007】
このプロセスは、好適には、作業層および支持基板を形成する材料が異なる熱膨張係数を有することを条件として実施される。より具体的には、仏国特許出願公開第3068508号明細書に開示されているプロセスは、制御されない破断のリスク、または作業層の部分的な転写もしくは欠陥のリスクを低減することを目的とし、支持基板を形成する材料の熱膨張係数と同様の熱膨張係数を有する材料から作製されたハンドル基板の使用を提案している。
【0008】
それにもかかわらず、この種のドナー基板の使用は依然として問題がある。
【0009】
これは、ドナー層とハンドル基板との間に形成される界面が熱処理に敏感なためである。より詳細には、この界面は、ドナー層の亀裂および/または層間剥離の発生部位であり得る。
【0010】
したがって、本発明の目的は、ドナー層とハンドル基板との間に形成された界面における亀裂の発生、およびドナー層の層間剥離の発生を防止することができる、ドナー基板に作業層を転写するためのプロセスを提案することである。
【発明の簡単な説明】
【0011】
本発明の目的は、支持基板上に作業層を転写するためのプロセスによって達成され、プロセスは以下のステップ:
a)主面を起点として、圧電材料から形成されたドナー層と、ハンドル基板とを備えるドナー基板を提供するステップであって、ドナー層が、ハンドル基板の一方の面上に位置する、ステップと、
b)ドナー層への種の注入によって、主面に平行であり、かつ主面と共に作業層を画定する弱化領域を形成するステップと、
c)ハンドル基板と支持基板との間にドナー層を介在させるように、支持基板をドナー基板と接合するステップと、
d)第1の段階と第2の段階とをこの順で含む熱処理を施すステップであって、第1の持続時間の第1の段階が、第1の温度までの温度上昇を含み、かつ第1に、弱化領域での種によって生成される欠陥の成熟を可能にし、および第2に、前記弱化領域での破断の開始を防止するように設計され、第2の持続時間の第2の段階が、第1の温度よりも低い第2の温度での保持期間を含み、かつ弱化領域に沿って破断を開始し、したがって前面に作業層を転写するように設計される、ステップと、
を含み、第1の温度と第2の温度との絶対差は40℃未満かつ30℃超である。
【0012】
一実施形態では、ステップd)はまた、第1の温度よりも低い温度(強化温度と呼ばれる)で実行される、第1の段階に先行する強化段階を含み、強化段階は、ステップc)の実行中に支持基板とドナー基板との間に形成される界面の結合エネルギーを強化するように意図される。
【0013】
一実施形態では、第1の段階は、温度の上昇、第1の温度での保持期間、および第2の温度への温度の低下をこの順で含む。
【0014】
一実施形態では、第1の段階は、ステップb)の実行中の種の注入の条件に従って調整される。
【0015】
一実施形態では、ハンドル基板および支持基板をそれぞれ形成する材料の熱膨張係数の間の相対差は、10%未満である。
【0016】
一実施形態では、ハンドル基板はバルク基板を備え、バルク基板の一方の面上に中間層があり、中間層はドナー層とバルク基板との間に介在し、好適には、中間層はポリマー材料を含む。
【0017】
一実施形態では、第1の温度は、300℃未満、好適には250℃未満、さらにより好適には220℃未満である。
【0018】
一実施形態では、第1の温度と第2の温度との間の絶対差は、40℃未満かつ30℃超である。
【0019】
一実施形態では、第2の持続時間は6時間未満、好適には4時間未満である。
【0020】
一実施形態では、第2の温度は180℃未満、好適には170℃未満である。
【0021】
一実施形態では、種は、水素イオン、ヘリウムイオンから選択される少なくとも1つの要素を含む。
【0022】
一実施形態では、圧電材料は、LiTaO、LiNbO、LiAlO、BaTiO、PbZrTiO、KNbO、BaZrO、CaTiO、PbTiO、KTaOから選択される少なくとも1つの要素を含む。
【0023】
一実施形態では、接合するステップc)の前に、ドナー層上および/または支持基板の前面上に誘電材料の層を形成するステップが先行する。
【0024】
一実施形態では、接合するステップc)は、分子結合を含む。
【0025】
他の特徴および利点は、添付の図面を参照して非限定的な例として与えられる、本発明による支持基板上に作業層を転写するためのプロセスの以下の説明において明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A図1Aは、本発明によるプロセスのステップa)の概略図であり、より詳細には、図1Aはドナー基板を、前記ドナー基板の主面に垂直な断面に沿って示す。
図1B図1Bは、本発明によるプロセスのステップb)の概略図であり、より詳細には、図1Bはドナー基板を、前記ドナー基板の主面に垂直な断面に沿って示し、矢印は、弱化領域を形成するための主面を介した種の注入を示す。
図1C図1Cは、本発明によるプロセスのステップc)の概略図であり、より詳細には、図1Cは、ドナー基板および支持基板によって形成されたアセンブリを、前記ドナー基板の主面に垂直な断面に沿って示す。
図1D図1Dは、本発明によるプロセスのステップd)の第1の段階の概略図であり、より詳細には、図1Dは、ドナー基板および支持基板によって形成されたアセンブリの弱化領域における欠陥の成熟を、前記ドナー基板の主面に垂直な断面に沿って示す。
図1E図1Eは、本発明によるプロセスのステップd)の第2の段階の概略図であり、より詳細には、図1Eは、支持基板の前面上に転写する目的で、ドナー層からの作業層の剥離をもたらす破断を示す。
図2図2は、本発明の1つの特定の実施形態による、前記ドナー基板の主面に垂直な断面に沿ったドナー基板の概略図であり、より詳細には、この実施形態によれば、ハンドル基板はバルク基板を備え、バルク基板の一方の面上には中間層が、中間層がバルク基板とドナー層との間に介在するように存在する。
図3図3は、本発明の文脈において実施される可能性が高い熱処理のグラフ表示であり、より詳細には、横軸は時間単位の時間tを示し、縦軸は摂氏温度単位の温度T°を示す。
図4A図4Aは、ステップd)の実行に関するパラメータを決定するために実施される可能性が高い、第1の処理と呼ばれる熱処理のグラフ表示であり、より詳細には、横軸は時間単位の時間を示し、縦軸は摂氏温度単位の温度を示す。
図4B図4Bは、ステップd)の実行に関するパラメータを決定するために実施される可能性が高い、第2の処理と呼ばれる熱処理のグラフ表示であり、より詳細には、横軸は時間単位の時間を示し、縦軸は摂氏温度単位の温度を示す。
図4C図4Cは、ステップd)の実行に関するパラメータを決定するために実施される可能性が高い、第3の処理と呼ばれる熱処理のグラフ表示であり、より詳細には、横軸は時間単位の時間を示し、縦軸は摂氏温度単位の温度を示す。
図5図5は、ドナー層上に位置する第1の層と呼ばれる誘電材料の層を備えるドナー基板を示す。
図6図6は、支持基板の前面上に位置する、第2の層と呼ばれる誘電材料(例えばシリカ)の層を含む支持基板を示す。
【発明の詳細な説明】
【0027】
以下の説明を簡単にするために、先行技術またはプロセスの様々な提示された実施形態において、同じ要素または同じ機能を実行する要素には同じ参照符号が使用される。
【0028】
図面は、読みやすさのための縮尺通りではない概略図である。特に、層の厚さは、これらの層の横方向寸法に対して縮尺通りではない。
【0029】
本発明は、支持基板の前面上に作業層を転写するためのプロセスに関する。
【0030】
特に、本プロセスは、ステップa)~d)の実行を含む。より詳細には、ステップa)は、ドナー基板を提供することを含む。ドナー基板は、主面を起点として、圧電材料から形成されたドナー層と、ハンドル基板とを備える。
【0031】
ステップb)は、ドナー層に種を注入することによって、主面に平行に延び、主面と共に作業層を画定する弱化領域を形成することを含む。
【0032】
ステップc)は、ドナー層を支持基板の前面と接合することを含む。
【0033】
ステップd)は、第1の段階および第2の段階をこの順で含む熱処理を含む。第1の持続時間の第1の段階は、第1の温度までの温度上昇を含み、かつ第1に、弱化領域内で種によって生成された欠陥の成熟を開始し、第2に、前記弱化領域内での破断の開始を防止するように設計される。第2の段階は、第1の温度よりも低い第2の温度で保持期間を含み、かつ弱化領域に沿って破断を開始し、したがって前面上に作業層を転写するような第2の持続時間のものである。
【0034】
図1A図1Eは、本発明による支持基板の前面上に作業層を転写するためのプロセスにおいて実施される様々なステップの概略図である。
【0035】
図1Aは、ドナー基板10の提供を含むステップa)の描写である。これに関連して、ドナー基板10は、主面11を起点として、圧電材料から形成されたドナー層12と、ハンドル基板13とを備える。言い換えると、ドナー層12は、ハンドル基板13の一方の面上に位置する。
【0036】
ドナー基板10の形成は、例えば、ハンドル基板の面上に圧電基板を結合するステップと、ドナー層を形成するように圧電基板を薄くするステップとをこの順で含んでもよい。ドナー基板10の形成はまた、ドナー層とハンドル基板13との間に形成された結合界面を強化することを意図した熱処理のステップを含んでもよい。ドナー基板10の上記の形成は、例としてのみ与えられており、したがって、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0037】
ドナー層12を形成する圧電材料は、LiTaO、LiNbO、LiAlO、BaTiO、PbZrTiO、KNbO、BaZrO、CaTiO、PbTiO、KTaOから選択される少なくとも1つの要素を含んでもよい。
【0038】
ハンドル基板13は、任意の種類の材料、より具体的にはシリコンなどの半導体材料、またはガラスなどの絶縁材料を含んでもよい。
【0039】
特定の一実施形態では、図2に示すように、ハンドル基板はバルク基板13aを含んでもよく、バルク基板13aの一方の面上に中間層13bがある。より具体的には、中間層13bは、この特定の実施形態では、バルク基板13aとドナー層12との間に介在する。
【0040】
バルク基板13aは、任意の種類の材料、より具体的にはシリコンなどの半導体材料、またはガラスなどの絶縁材料を含んでもよい。
【0041】
中間層13bは、バルク基板13aとドナー層12との間の接着機能を保証する絶縁材料、より具体的にはポリマー材料を含んでもよい。
【0042】
ハンドル基板および支持基板をそれぞれ形成する材料の熱膨張係数の間の相対差は、10%未満であってもよい。このような材料の使用は、以下に記載されるように、ステップd)における熱処理の実行中に発生する可能性が高い応力を低減することを可能にする。
【0043】
ステップa)の後に、図1Bに示すステップb)が続く。
【0044】
より詳細には、ステップb)は、ドナー層12への種の注入による弱化領域14の形成を含む。より具体的には、弱化領域は、主面11に平行な平面に延び、主面11と共に作業層15を画定する。
【0045】
「弱化領域」は、ドナー層12からの作業層15の剥離を引き起こすように、それに沿って破断波が伝播する可能性が高い領域を意味すると理解される。
【0046】
さらに、このように特定する必要はないが、注入される種は、熱活性化によって、第1に弱化領域内の欠陥の成熟、および第2に弱化領域に沿った破断波の伝播を引き起こすことができるように選択されることが理解される。
【0047】
種の注入は、より詳細にはイオン注入、より具体的には水素イオンおよび/またはヘリウムイオンの注入を実施してもよい。
【0048】
注入条件は、注入種のドーズ量および注入エネルギーに関して、作業層15の厚さを決定する。一例として、LiTaOから作製されたドナー層12の場合、30keV~300keVの注入エネルギーで、116at/cm~517at/cmのレベルの水素イオンをドーズすることにより、200nm~2000nmの厚さを有する作業層15の形成が可能になる。
【0049】
本発明によるプロセスはまた、ステップc)(図1C)の実行を含む。
【0050】
ステップc)は、ドナー層12を支持基板20とハンドル基板13との間に介在させるように、ドナー基板10を支持基板20と接合することを含む。
【0051】
したがって、図1Cに示すように、接合を含むステップc)は、主面11を支持基板20の前面21と接触させることを含む。
【0052】
しかしながら、本発明はこの態様に限定されず、ステップc)の前に、ドナー層上および/または支持基板の前面上に誘電材料の層を形成するステップを採用することが可能である。
【0053】
これに関連して、図5は、ドナー層上に位置する誘電材料(例えばシリカ)の層(第1の層17と呼ばれる)を備えるドナー基板10を示す。
【0054】
代替としてまたは追加的に、誘電材料の層は、支持基板20の前面上に形成されてもよい。これに関連して、図6は、支持基板20の前面上に位置する、第2の層22と呼ばれる誘電材料(例えばシリカ)の層を含む支持基板20を示す。
【0055】
このような場合、第1の層17および/または第2の層22は、ステップc)の実行の終わりに、ドナー層と支持基板との間に介在していることが見出されるべきである。
【0056】
接合するステップc)は、ドナー基板および支持基板の自由面が接触したときに結合波の伝播をもたらし、結果として前記面間の接着をもたらす分子結合を含んでもよい。本発明は、分子結合の実施のみに限定されない。これに関連して、圧縮または熱圧縮による結合、接着剤層による結合を採用することが可能である。
【0057】
次いで、ステップc)の後に、作業層15の剥離を引き起こし、結果として支持基板20の前面21上に作業層を転写するように、弱化領域に沿って破断波を開始することを意図した熱処理のステップd)が続く。
【0058】
しかしながら、前記ドナー層12とハンドル基板13との間に形成された界面でのドナー層の亀裂の発生または層間剥離の発生を防止するために、破断波の開始が可能な限り低い温度で起こるように熱処理が実行される。
【0059】
これに関連して、熱処理は、それぞれ第1の段階および第2の段階と呼ばれる2つの段階を含む。
【0060】
図3は、ステップd)の実行中に実施される可能性が高い熱処理の一例をグラフ形式で示す。
【0061】
より詳細には、図3は、横軸に沿って時間を示し、縦軸に沿ってドナー基板10および支持基板20によって形成されたアセンブリが曝される温度を示し、第1の段階は、温度の上昇A、第1の温度での保持期間B、および第2の温度への温度の低下Cをこの順で含む。
【0062】
第1の持続時間d1の第1の段階(図1Dに示す)は、第1の温度T1への温度上昇を含み、かつ第1に、弱化領域内で種によって生成された欠陥16の成熟を可能にし、第2に、前記弱化領域内での破断の開始を防止するように設計される。
【0063】
「欠陥の成熟」は、弱化領域の平面内での気泡の形成および成長を意味すると理解される。この成熟は、熱エネルギーの入力によって活性化される。
【0064】
第2の持続時間d2の第2の段階(図1Eに示す)は、第1の温度T1よりも低い第2の温度T2での保持期間を含み、かつ弱化領域に沿って破断を開始し、したがって前面上に作業層を転写するように設計される。
【0065】
このように指定する必要はないが、第2の段階は第1の段階と連続して実行されることが理解される。
【0066】
ステップd)は、より詳細にはバッチオーブン内、制御された雰囲気下、より具体的には不活性雰囲気下で実行されてもよい。本発明は、バッチオーブンの実施に限定されない。より詳細には、急速熱処理炉も使用されてもよい。
【0067】
二段階熱処理の使用は、現行技術水準で現在想定されているものよりも低い温度で破断波、結果として支持基板20上への作業層15の転写を開始することを可能にする。
【0068】
第1の段階の前に、好適には、ドナー基板と支持基板との接合中に形成される界面を強化する段階が先行してもよい。これに関連して、強化段階は、第1の温度よりも低い、強化温度Tsと呼ばれる温度で行われる。
【0069】
このように指定する必要はないが、第1の段階は、ステップb)の実行中に種の注入の条件に従って調整されることが理解される。
【0070】
より詳細には、熱処理の条件、より具体的には、第1の温度T1、第2の温度T2、第1の持続時間d1および第2の持続時間d2は、経験的に決定されてもよい。
【0071】
これに関連して、例として、図4A図4Cは、ステップc)の終わりに得られた25個のアセンブリのバッチが曝された異なる熱処理のグラフ表示である。これらの熱処理のそれぞれの実行中に、本発明者らは、アセンブリのそれぞれの中で発生する可能性が高い破断の開始の検出の瞬間を特定した。
【0072】
したがって、図4Aは、第1の熱処理と呼ばれる熱処理をグラフ形式で示し、第1および第2の温度はそれぞれ200℃および160℃であり、第1および第2の持続時間はそれぞれ7分および6時間である。
【0073】
図4Bは、第2の温度および第2の持続時間がそれぞれ170℃および4時間であるという点で第1の熱処理とは異なる、第2の熱処理と呼ばれる熱処理をグラフ形式で示す。
【0074】
図4Cは、第1および第2の持続時間がそれぞれ20分および4時間であるという点で第1の熱処理とは異なる、第3の熱処理と呼ばれる熱処理をグラフ形式で示す。
【0075】
第1の処理の実行中に、本発明者らは、熱処理オーブン内に存在する25個のうち8個のアセンブリが破断を受けなかったことを観察した。
【0076】
他方、第2の処理(図4B)の実行中に第2のより高い温度(170℃)を使用することにより、前記処理の第2の段階において25個のアセンブリの各々の内部で破断波の開始が可能になる。しかしながら、25個のアセンブリのうちの2個における破断波の開始は、第2の段階における保持期間の終了後にのみ観察された。この第2のアニーリングの実行中の一般的な条件下では、本発明によるプロセスに必要な安定性を与えることは不可能である。
【0077】
第3の処理の実行中のより長い成熟期間(第1の段階)の使用は、第1の段階中(より具体的には温度の低下C中)に破断波の開始をもたらした。この性質の熱処理は、ステップd)の安定化を可能にしない。
【0078】
これらの結果に基づいて、本発明者らは、採用される注入条件の最適な熱処理パラメータが以下の通りであると考えている:
温度T1=200℃、
持続時間d1=15分、
温度T2=170℃、
持続時間d2=4時間。
【0079】
したがって、上記の原理により、ステップd)の実行に最適な熱処理条件を決定することが可能になる。
【0080】
第1の温度T1が300℃未満、好適には250℃未満、さらにより好適には220℃未満である場合が好適である。
【0081】
第1の温度T1と第2の温度T2との絶対差が40℃未満かつ30℃超の場合が、常に好適である。例えば、第2の温度T2は、180℃未満、好適には170℃未満である。
【0082】
第2の持続時間d2が6時間未満、好適には4時間未満である場合が好適である。
【0083】
本発明の用語によるステップd)の熱処理の実行は、破断波の開始が起こる可能性が高い保持期間の温度を低下させることを可能にする。この態様は、ドナー層とハンドル基板との間に形成される界面、および使用される場合には潜在的に中間層における応力を低減することを可能にする。
【0084】
言い換えると、本発明で使用される熱処理は、「発明の技術的背景」の項で説明されるように、亀裂および/または層間剥離の発生を低減する。
【0085】
言うまでもなく、本発明は、記載された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、実施の変形が適用されてもよい。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
【国際調査報告】