(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】多層材料の強度予測システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B32B 43/00 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
B32B43/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510371
(86)(22)【出願日】2023-06-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 KR2023007530
(87)【国際公開番号】W WO2023243914
(87)【国際公開日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】10-2022-0071405
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン・ナム・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・テ・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン・ジン・チョン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ミ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ウク・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ダム・ヒョク・イム
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100JK07
(57)【要約】
本願発明は、2個以上のフィルムが積層された多層材料の強度を予測するシステムおよび方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n個(nは2以上の整数)のフィルムが積層された多層材料の強度予測システムであって、
各層(k)の弾性率(E
k)、ポアソン比(ν
k)、せん断弾性係数(G
k)、厚さ(Z
k)、積層角度(θ
k)、主応力方向強度([F]
k)、多層材料の総厚さ(h)の内いずれか1つ以上が入力される入力部と、
入力部に入力された値を適用して多層材料の強度を算出する制御部と、
前記制御部に連結されているディスプレイと、
前記制御部に連結されているストレージと、を備え、
前記制御部は、
入力部に入力された値に基づいて各層の応力を算出することと、
各層の応力に各層の積層角度(θ
k)を適用して各層の主方向応力([σ]
k)に変換することと、
別途入力された各層の主応力方向強度([F]
k)を、多層材料の強度を判別する強度判別パラメーター([f]
k)として構成することと、
各層の主方向応力([σ]
k)と強度判別パラメーター([f]
k)を組み合わせて各層の安全係数を算定することと、
算定された各層の安全係数のうち最小値を抽出して多層材料の強度値と定めることと、を実施する、システム。
【請求項2】
算定された各層の安全係数から多層材料の強度値を定めることは、
算定された各層の安全係数のうち最小値を抽出することと、
抽出された最小値が、安全係数が予め設定しておいたULF基準を満たせば、抽出された最小値を多層材料の強度値と定めることと、を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御部は、
入力部に入力された値に基づいて各層の安全係数を算定するサイクルをn回繰り返すことと、
k番目のサイクルで算出された値を入力値に反映してk+1番目のサイクルを行い、多層材料を形成するn層がいずれも破断した際の強度を多層材料の強度とすることと、を実施し、
kは1からn-1の整数であり、nは多層材料を構成する各層の数を意味する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御部は、
入力部に入力された値に基づいて各層の安全係数を算定するサイクルを繰り返すことと、
k番目のサイクルで算出された値を入力値に反映してk+1番目のサイクルを行うことと、
k番目のサイクルで算出された値とk+1番目のサイクルで算出された値を比較することによって定められた多層材料の強度がもはや増加しない場合には、k番目のサイクルで算出された値を多層材料の強度と定めることと、を実施し、
kは1からn-1の整数であり、nは多層材料を構成する各層の数を意味する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御部が、入力部に入力された値に基づいて各層の応力を算出することは、
入力された各層の弾性率、ポアソン比、せん断弾性係数を適用して各層の剛性マトリックス([Q]
k)を導出することと、
導出された剛性マトリックス値に各層の積層角度(θ
k)を反映して各層の剛性マトリックスを再設定することと、
各層の厚さ(Z
k)情報受けて再設定された剛性マトリックス値を用いて多層材料の剛性マトリックスを算出することと、
算出された多層材料の剛性マトリックスに対するコンプライアンス行列を設定することと、
任意の力(/F)およびモーメント(/M)に対するコンプライアンス行列を用いて、ミッドプレーンの歪および曲率を算出することと、
算出されたミッドプレーンの歪および曲率と、各層の厚さ(Z
K)情報と、を活用して各層の歪を算出することと、
各層の歪と各層の剛性マトリックス([Q]
k)を用いて、各層の応力を算出することと、を含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項6】
n個(nは2以上の整数)のフィルムが積層された多層材料の強度予測方法であって、
各層の弾性率(E
k)、ポアソン比(ν
k)、せん断弾性係数(G
k)、厚さ(Z
k)、積層角度(θ
k)、多層材料の総厚さ(h)の内いずれか1つ以上を入力して各層の応力を算出するステップと、
算出された各層の応力に各層の積層角度(θ
k)を適用して各層の主方向応力([σ]
k)に変換するステップと、
別途入力された各層の主応力方向強度([F]
k)を、多層材料の強度を判別する強度判別パラメーター([f]
k)として構成するステップと、
各層の主方向応力([σ]
k)と強度判別パラメーター([f]
k)を組み合わせて各層の安全係数を算定するステップと、
算定された各層の安全係数のうち最小値を抽出して多層材料の強度値と定めるステップと、を含む方法。
【請求項7】
算定された各層の安全係数のうち最小値を抽出して多層材料の強度値と定めるステップは、
算定された各層の安全係数のうち最小値を抽出することと、
抽出された最小値が、安全係数が予め設定しておいたULF基準を満たせば、抽出された最小値を多層材料の強度値と定めることと、を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
各層の応力を算出し、算出された各層の応力を組み合わせて各層の安全係数を算定するステップをn回繰り返すことと、
k番目のサイクルで算出された値を入力値に反映してk+1番目のサイクルを行い、多層材料を形成するn個の層がいずれも破断した際の強度を多層材料の強度とすることと、を含み、
kは1からn-1の整数であり、nは多層材料を構成する各層の数を意味する、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
各層の応力を算出し、算出された各層の応力を組み合わせて各層の安全係数を算定するステップを繰り返すことと、
k番目のサイクルで算出された値を入力値に反映してk+1番目のサイクルを行うことと、
k番目のサイクルで算出された値とk+1番目のサイクルで算出された値を比較することによって定められた多層材料の強度がもはや増加しない場合には、k番目のサイクルで算出された値を多層材料の強度と定めることと、を含み
kは1からn-1の整数であり、nは多層材料を構成する各層の数を意味する、請求項6または7に記載の方法。
【請求項10】
各層の応力を算出するステップは、
入力された各層の弾性率、ポアソン比、せん断弾性係数を適用して各層の剛性マトリックス([Q]
k)を導出する過程と、
導出された剛性マトリックス値に各層の積層角度(θ
k)を反映して各層の剛性マトリックスを再設定する過程と、
各層の厚さ(Z
k)情報を受けて再設定された剛性マトリックス値を用いて多層材料の剛性マトリックスを算出する過程と、
算出された多層材料の剛性マトリックスに対するコンプライアンス行列を設定する過程と、
任意の力(/F)およびモーメント(/M)に対するコンプライアンス行列を用いて、ミッドプレーンの歪および曲率を算出する過程と、
算出されたミッドプレーンの歪および曲率と、各層の厚さ(Z
K)情報を活用して各層の歪を算出する過程と、
各層の歪と各層の剛性マトリックス([Q]
k)を用いて、各層の応力を算出する過程と、を含む、請求項6または7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2022年6月13日付の韓国特許出願第10-2022-0071405号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本願発明は、多層材料、具体的には多層フィルムの強度予測システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高分子フィルムとは、厚さが0.25mm以下の非繊維型平板状のプラスチック成形物であり、軽くて遮断性が良く、透明性にも優れ、価格も相対的に安いため、包装材、生活用品、電子機器、自動車、航空機など、ほとんど全ての分野で使用されている。
【0004】
しかし、単一のフィルムのみでは複合的な要求物性を満たすことが難しいという問題がある。これを改善するために、2つまたはそれ以上のフィルムを積層した構造の多層材料が開発されている。
【0005】
多層材料の開発過程において、単に個別のフィルムの物性を組み合わせただけでは、多層材料の物性、特に強度を算出することはできない。従来は、多層材料の物性、特に強度を評価するために、各フィルムの組み合わせパターンに対してそれぞれ多層材料の試験片を製造し、製造された試験片に対する評価を実施していた。このような多層材料の試験片を製造する方法では、多層材料の試験片の製造に時間がかかるだけでなく、多様なフィルムの種類と物性を全て評価することが難しいという問題がある。
【0006】
したがって、多層材料を直接製造することなく、多層材料の物性、特に強度予測が可能な方法に対する需要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明の目的は、上述したように、シミュレーションステップにおいて多層材料の物性、特に強度予測が可能なシステムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本願発明は多層材料の強度予測システムを提供する。
【0009】
一実施形態において、本願発明は、n個(nは2以上の整数)のフィルムが積層された多層材料の強度予測システムに関し、各層の弾性率(Ek)、ポアソン比(νk)、せん断弾性係数(Gk)、厚さ(Zk)、積層角度(stacking angle、θk)、主応力方向強度(principal stress direction strength、[F]k)、多層材料の総厚さ(h)が入力される入力部と、入力部に入力された値を用いて多層材料の強度を算出する制御部と、制御部に連結されているディスプレイと、制御部に連結されているストレージと、を備える。
【0010】
また、制御部は、入力部に入力された値に基づいて各層の応力(stress)を算出し、各層の応力に各層の積層角度(θk)を適用することにより各層の主方向応力([σ]k)に変換し、
別途入力された各層の主応力方向強度([F]k)を、多層材料の強度を判別する強度判別パラメーター(strength discrimination parameter、[f]k)として構成し、
各層の主方向応力([σ]k)と強度判別パラメーター([f]k)を組み合わせて各層の安全係数(safety coefficient)を算定し、
算定された各層の安全係数のうち最小値を抽出して多層材料の強度値と定める(define)。
【0011】
具体的な一実施形態において、算定された各層の安全係数から多層材料の強度値を定めることは、
算定された各層の安全係数のうち最小値を抽出し、
安全係数が予め設定しておいたULF(Ultimate Laminate Failure)基準を満たせば、抽出された最小値を多層材料の強度値と定めることになる。
【0012】
一実施形態において、制御部は、入力部に入力された値に基づいて各層の安全係数を算定するサイクルをn回繰り返す。k番目のサイクルにおいて算出された値を入力値に反映してk+1番目のサイクルを行い、多層材料を形成するn層がいずれも破断した際の強度を多層材料の強度とする。ここで、kは1からn-1の整数であり、nは多層材料を構成する各層の数を意味する。
【0013】
別の一実施形態において、制御部は、入力部に入力された値に基づいて各層の安全係数を算定するサイクルを繰り返す。k番目のサイクルにおいて算出された値を入力値に反映してk+1番目のサイクルを行い、k番目のサイクルで算出された値とk+1番目のサイクルで算出された値を比較することによって定められた多層材料の強度がもはや増加しない場合には、k番目のサイクルで算出された値を多層材料の強度と定める。ここで、kは1からn-1の整数であり、nは多層材料を構成する各層の数を意味する。
【0014】
一実施形態において、制御部が、入力部に入力された値に基づいて各層の応力(stress)を算出することは、
入力された各層の弾性率、ポアソン比、せん断弾性係数を適用して各層の剛性マトリックス([Q]k、stiffness matrix)を導出し、
導出された剛性マトリックス値に各層の積層角度(θk)を反映して各層の剛性マトリックスを再設定し、
各層の厚さ(Zk)情報を受けて再設定された剛性マトリックス値を用いて多層材料の剛性マトリックスを算出し、
算出された多層材料の剛性マトリックスに対するコンプライアンス行列(compliance matrix)を設定し、
任意の力(/F)およびモーメント(/M)に対するコンプライアンス行列(compliance matrix)を用いて、中間面(mid-plane)の歪および曲率(curvature)を算出し、
算出された中間層(mid-plane)の歪および曲率(curvature)と、各層の厚さ(ZK)情報と、を活用して各層の歪(strain)を算出し、
各層の歪(strain)と各層の剛性マトリックス([Q]k)を用いて、各層の応力(stress)を算出することになる。
【0015】
また、本願発明は、多層材料の強度予測方法を提供する。一実施形態において、本願発明は、n個(nは2以上の整数)のフィルムが積層された多層材料の強度予測方法に関し、
各層の弾性率(Ek)、ポアソン比(νk)、せん断弾性係数(Gk)、厚さ(Zk)、積層角度(θk)、多層材料の総厚さ(h)を入力して各層の応力(stress)を算出するステップと、
算出された各層の応力に各層の積層角度(θk)を適用して各層の主方向応力([σ]k)に変換するステップと、
別途入力された各層の主応力方向強度([F]k)を、多層材料の強度を判別する強度判別パラメーター([f]k)として構成するステップと、
各層の主方向応力([σ]k)と強度判別パラメーター([f]k)を組み合わせて各層の安全係数を算定するステップと、
算定された各層の安全係数のうち最小値を抽出して多層材料の強度値と定めるステップと、を含む。
【0016】
具体的な実施形態において、算定された各層の安全係数のうち最小値を抽出して多層材料の強度値と定めるステップは、
算定された各層の安全係数のうち最小値を抽出し、
安全係数が予め設定しておいたULF(Ultimate Laminate Failure)基準を満たせば、抽出された最小値を多層材料の強度値と定めることになる。
【0017】
一実施形態において、本願発明は、各層の応力(stress)を算出し、これらを組み合わせて各層の安全係数を算定するステップをn回繰り返す。k番目のサイクルで算出された値を入力値に反映してk+1番目のサイクルを行い、多層材料を形成するn個の層がいずれも破断したときの強度を多層材料の強度とする。ここで、kは1からn-1の整数であり、nは多層材料を構成する各層の数を意味する。
【0018】
別の例において、本願発明は、各層の応力(stress)を算出し、これらを組み合わせて各層の安全係数を算定するステップを繰り返し実施する。k番目のサイクルで算出された値を入力値に反映してk+1番目のサイクルを行い、k番目のサイクルで算出された値とk+1番目のサイクルで算出された値を比較することによって定められた多層材料の強度がもはや増加しない場合には、k番目のサイクルで算出された値を多層材料の強度と定める。ここで、kは1からn-1の整数であり、nは多層材料を構成する各層の数を意味する。
【0019】
一つの例において、各層の応力(stress)を算出するステップは、
入力された各層の弾性率、ポアソン比、せん断弾性係数を適用して各層の剛性マトリックス([Q]k、stiffness matrix)を導出するステップと、
導出された剛性マトリックス値に各層の積層角度(θk)を反映して各層の剛性マトリックスを再設定するステップと、
各層の厚さ(Zk)情報を受けて再設定された剛性マトリックス値を用いて多層材料の剛性マトリックスを算出するステップと、
算出された多層材料の剛性マトリックスに対するコンプライアンス行列(compliance matrix)を設定するステップと、
任意の力(/F)およびモーメント(/M)に対するコンプライアンス行列(compliance matrix)を用いて、ミッドプレーン(mid-plane)の歪および曲率(curvature)を算出するステップと、
算出されたミッドプレーン(mid-plane)の歪および曲率(curvature)と、各層の厚さ(ZK)情報と、を活用して各層の歪(strain)を算出するステップと、
各層の歪(strain)と各層の剛性マトリックス([Q]k)を用いて、各層の応力(stress)を算出するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0020】
本願発明に係る多層材料強度予測システムおよび方法は、多層材料試験片を製造することなく、多層材料の物性、特に強度予測が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本願発明の一実施形態に係る多層材料の物性予測システムの構成図である。
【
図2】本願発明の一実施形態に係る多層材料の強度予測方法のフローチャートである。
【
図3】本願発明の一実施形態に係る多層材料の強度予測方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願発明は、n個(nは2以上の整数)のフィルムが積層された多層材料の強度予測システムを提供する。
【0023】
一実施形態において、本願発明に係る多層材料の強度予測システムは、各層の弾性率(Ek)、ポアソン比(νk)、せん断弾性係数(Gk)、厚さ(Zk)、積層角度(θk)、主応力方向強度([F]k)、多層材料の総厚さ(h)の内いずれか1つ以上が入力される入力部と、
入力部に入力された値を適用して多層材料の強度を算出する制御部と、
制御部に連結されているディスプレイと、
制御部に連結されているストレージと、を含む。
【0024】
また、制御部は、入力部に入力された値に基づいて各層の応力(stress)を算出し、各層の応力に各層の積層角度(θk)を適用して各層の主方向応力([σ]k)に変換し、別途入力された各層の主応力方向強度([F]k)を多層材料の強度を判別する強度判別パラメーター([f]k)として構成し、各層の主方向応力([σ]k)と強度判別パラメーター([f]k)を組み合わせて各層の安全係数を算定し、算定された各層の安全係数のうち最小値を抽出して多層材料の強度値と定める。
【0025】
また、本願発明は、多層材料の強度予測方法を提供する。一実施形態において、本願発明は、n個(nは2以上の整数)のフィルムが積層された多層材料の強度予測方法に関し、
各層の弾性率(Ek)、ポアソン比(νk)、せん断弾性係数(Gk)、厚さ(Zk)、積層角度(θk)、多層材料の総厚さ(h)の内いずれか1つ以上が入力されて各層の応力(stress)を算出するステップ(ステップa)と、
算出された各層の応力に各層の積層角度(θk)を適用して各層の主方向応力([σ]k)に変換するステップ(ステップb)と、
別途入力された各層の主応力方向強度([F]k)を、多層材料の強度を判別する強度判別パラメーター([f]k)として構成するステップ(ステップc)と、
各層の主方向応力([σ]k)と強度判別パラメーター([f]k)を組み合わせて各層の安全係数を算定するステップ(ステップd)と、
算定された各層の安全係数のうち最小値を抽出して多層材料の強度値と定めるステップ(ステップe)と、を含む。
【0026】
一例として、本願発明において多層材料の強度を予測するステップは下記の通りである。
【0027】
入力される情報は、各層(k)における機械方向(縦方向)(Machine Direction、MD、1)および横方向(Transverse Direction、TD、2)の弾性率(Elastic modulus)(Ek
1,2)と、各層(k)における機械方向(1)および横方向(2)のポアソン比(Poisson’s ratio)(νk
1,2)と、各層(k)における機械方向(1)および横方向(2)のせん断弾性係数(Shear modulus)(GK
1,2)と、多層材料のx方向に対する各層の機械方向(1)の角度(θk)と、各層(k)の厚さ(Zk)と、多層材料の総厚さ(h)と、の内いずれか1つ以上を備える。また、各層の主応力方向強度([F]k)も入力情報に含まれる。
【0028】
まず、入力された情報を活用して、各層(k)の応力(stress)(σk
x,y)を算出する。そして、算出された各層の応力(stress、σk
x,y)に各層の積層角度(θk)を適用して各層の主方向応力([σ]k
1,2)に変換する。
【0029】
また、別途入力された各層の主応力方向強度([F]k
1,2)を、多層材料の強度を判別する強度判別パラメーター([f]k
1,2)として構成し、各層の主方向応力([σ]k
1,2)と強度判別パラメーター([f]k
1,2)を組み合わせて各層の安全係数(Sk
f)を算定する。例えば、各層の安全係数(Sk
f)を算定するために、サイ-ウ判定基準(Tsai-Wu criterion)を適用することができ、または、最大応力判定基準(Maximum Stress criterion)、最大歪判定基準(Maximum Strain criterion)もしくはサイ-ヒル判定基準(Tsai-Hill criterion)などを適切に適用することもできる。
【0030】
算定された各層の安全係数(S
k
f)のうち最小値((S
k
f)
min)を抽出して多層材料の強度値(
【数1】
)と定める。このとき、算定された各層の安全係数のうち最小値((S
k
f)
min)を多層材料の強度値(
【数2】
)と定め、この値が予め設定しておいたULF(Ultimate Laminate Failure)基準を満たせば、これを最終的な多層材料の強度値(
【数3】
)と定める。
【0031】
算定された各層の安全係数(S
k
f)のうち最小値((S
k
f)
min)を抽出して多層材料の強度値(
【数4】
)と定めるステップは、ULF基準を適用する方法に応じて下記の3つの方法に区分することができる。
【0032】
1つ目の方法では、上述した各層の応力(stress)を算出するステップ(ステップa)から各層の安全係数を算定するステップ(ステップd)を1回繰り返し、算定された各層の安全係数(S
k
f)のうち最小値((S
k
f)
min)を抽出して多層材料の強度値(
【数5】
)と定め、定められた多層材料の強度値(
【数6】
)が予め設定しておいたULF(Ultimate Laminate Failure)基準を満たせば、これを最終的な多層材料の強度値(
【数7】
)と定める。この場合は、多層材料を構成する各層の内いずれか1つの層でも破断した際、これを反映した強度を最終的な多層材料の強度値とする。
【0033】
2つ目の方法では、各層の応力(stress)を算出するステップ(ステップa)から各層の安全係数を算定するステップ(ステップd)をn回繰り返す。ここでは、k番目のサイクルで算出された値を入力値に反映してk+1回目のサイクルを行う。多層材料を形成するn個の層がいずれも破断した際の強度を多層材料の強度値(
【数8】
)と定め、この値が予め設定しておいたULF(Ultimate Laminate Failure)基準を満たせば、これを最終的な多層材料の強度値(
【数9】
)と定める。ここで、kは1からn-1の整数であり、nは多層材料を構成する各層の数を意味する。各サイクルにおいては、算定された各層の安全係数(S
k
f)のうち最小値((S
k
f)
min)を抽出し、当該サイクルにおける多層材料の強度値(
【数10】
)と定める。この場合は、多層材料を構成する全ての層が破断する強度を反映して最終的な多層材料の強度値とする。
【0034】
3つ目の方法では、上述した各層の応力(stress)を算出するステップ(ステップa)から各層の安全係数を算定するステップ(ステップd)を繰り返し行う。ここでは、k番目のサイクルで算出された値を入力値に反映してk+1番目のサイクルを行い、k番目のサイクルで算出された値とk+1番目のサイクルで算出された値を比較することによって定められた多層材料の強度がもはや増加しない場合には、k番目のサイクルで算出された値を多層材料の強度と定める。ここで、kは1~n-1の整数であり、nは多層材料を構成する各層の数を意味する。各サイクルにおいては、算定された各層の安全係数(S
k
f)のうち最小値((S
k
f)
min)を抽出し、当該サイクルにおける多層材料の強度値(
【数11】
)と定める。この場合は、多層材料を構成する層の中で最大荷重に耐える層の強度を反映して最終的な多層材料の強度値とする。
【0035】
別の一実施形態においては、算定された各層の安全係数(S
k
f)のうち最小値((S
k
f)
min)を抽出して多層材料の強度値(
【数12】
)と定める。このとき、算定された各層の安全係数のうち最小値((S
k
f)
min)を多層材料の強度値(
【数13】
)と定め、この値が予め設定しておいたULF(Ultimate Laminate Failure)基準を満たすかどうかを確認することができる。
【0036】
多層材料の強度値(
【数14】
)と定められた値が予め設定しておいたULF(Ultimate Laminate Failure)基準を満たせば、これを最終的な多層材料の強度値(
【数15】
)と定める。
【0037】
逆に、多層材料の強度値(
【数16】
)と定められた値が予め設定しておいたULF(Ultimate Laminate Failure)基準を満たさなければ、当該サイクルで決定された破断層の弾性率を調整して再算出することになる。具体的な例としては、破断層の弾性率に係数rを適用して調整することになる。例えば、r=0である場合は、当該サイクルにおける破断層は、次のローディングサイクル(loading cycle)における当該方向の応力分担能力(stress-bearing capacity)を喪失したと仮定し、0<r<1の範囲である場合は、当該サイクルにおける破断層は、次のローディングサイクルにおける当該層の応力分担能力が一部失われたと仮定する。同時に、当該破断層の強度を無限大に変更し、次のローディングサイクルでも同じ層の破断が発生しないようにする。
【0038】
別の一実施形態において、各層の弾性率(Ek)、ポアソン比(νk)、せん断弾性係数(Gk)、厚さ(Zk)、積層角度(θk)、多層材料の総厚さ(h)の内いずれか1つ以上が入力されて各層の応力(stress)を算出するステップ(ステップa)は、下記のように行うことができる。
【0039】
まず、入力される情報は、各層(k)における機械方向(縦方向)(Machine Direction、MD、1)および横方向(Transverse Direction、TD、2)の弾性率(Elastic modulus)(Ek
1,2)、各層(k)における機械方向(1)および横方向(2)のポアソン比(Poisson’s ratio)(νk
1,2)、各層(k)における機械方向(1)および横方向(2)のせん断弾性係数(Shear modulus)(GK
1,2)、多層材料のx方向に対する各層の機械方向(1)の角度(θk)、各層(k)の厚さ(Zk)、多層材料の総厚さ(h)などである。
【0040】
弾性率(Ek
1,2)、ポアソン比(νk
1,2)、せん断弾性係数(Shear modulus)(Gk
1,2)を用いて、各層(k)の機械方向(1)および横方向(2)の剛性マトリックス(stiffness matrix)([Q]k
1,2)を算出し、各層(k)の機械方向(1)および横方向(2)の剛性マトリックス([Q]k
1,2)に対するコンプライアンス行列(compliance matrix)([S]k
1,2)を設定し、剛性マトリックス([Q]k
1,2)に各層(k)の積層角度(θk)を反映して各層(k)の剛性マトリックス([Q]k
x,y)を再設定し、各層(k)の厚さ(Zk)情報を受けて再設定された剛性マトリックス値を用いて多層材料の剛性マトリックス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)を算出する。そして、多層材料の剛性マトリックス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)に対するコンプライアンス行列(compliance matrix)([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)を設定する。
【0041】
次に、任意の力(/F)およびモーメント(/M)に対するコンプライアンス行列(compliance matrix)を用いて、ミッドプレーン(mid-plane)の歪および曲率(curvature)を算出し、算出されたミッドプレーン(mid-plane)の歪および曲率(curvature)と、各層の厚さ(ZK)情報と、を活用して各層の歪(strain)を算出することになる。
【0042】
具体的には、任意の力(/F)およびモーメント(/M)は仮想の外力を想定したものであり、多層材料に対して単位垂直応力(unit normal stress)を仮想的に加えるために、総厚さの値を用いて定めることができる。
【0043】
上記の力(/N)およびモーメント(/M)と、多層材料の剛性マトリックス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)に対するコンプライアンス行列(compliance matrix)([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)を用いてミッドプレーン(mid-plane)歪(strain)(ε0
x,y)および曲率(curvatures)(kx,y,s)を算出し、ミッドプレーン(mid-plane)の歪(strain)(ε0
x,y)および曲率(kx,y,s)と、各層(k)の厚さ(Zk)情報を活用して各層(k)の歪(strain)(εk
x,y)を算出し、各層(k)の歪(strain)と各層(k)の剛性マトリックス([Q]k
x,y)を用いて各層(k)の応力(stress)(σk
x,y)を算出する。そして、算出された各層の応力(stress、σk
x,y)に各層の積層角度(θk)を適用して各層の主方向応力([σ]k
1,2)に変換する。
【0044】
以下、図面および実施形態により本願発明をより具体的に説明するが、本願発明の範疇がこれに限定されるものではない。
【0045】
(第1実施形態)
図1は、本願発明の第1実施形態に係る多層材料の強度予測システムの構成図である。
【0046】
図1に示されているように、本願発明の第1実施形態に係る多層材料の強度予測システムの構成は、使用者が各層(k)の機械方向(Machine Direction、MD、以下「1」と呼び、主方向を意味する)および横方向(Transverse Direction、TD、以下「2」と呼ぶ)の弾性率(Elastic modulus)(E
k
1,2)、各層(k)の機械方向(1)および横方向(2)のポアソン比(Poisson’s ratio)(ν
k
1,2)、各層(k)の機械方向(1)および横方向(2)のせん断弾性係数(Shear modulus)(G
K
1,2)、多層材料のx方向に対する各層の機械方向(1)の角度(θ
k)、各層(k)の厚さ(Z
k)などを入力するための入力部10と、入力部10に連結されている物性算出部21と、制御部20と、制御部20に連結されているディスプレイ30と、制御部20に連結されているストレージ40と、を備える。
【0047】
本願発明において、多層材料(multilayer materials)とは、2つ以上の材料が積層された構造を有する積層体を意味し、高分子などの多層フィルムを意味することができ、FRP(fiber reinforced plastics)およびアルミニウムパウチなどの異種材料間の複合材料などを意味することができる。例えば、多層材料は多層フィルムを意味することができる。
【0048】
(第2実施形態)
図2および
図3は、本願発明の一実施形態に係る多層材料の強度予測方法のフローチャートである。
【0049】
図2を参照すると、2つ以上の材料が積層された多層材料において、
各層(k)の機械方向(1)および横方向(2)の弾性率(Elastic modulus)(E
k
1,2)、各層(k)の機械方向(1)および横方向(2)のポアソン比(Poisson’s ratio)(ν
k
1,2)、各層(k)の機械方向(1)および横方向(2)のせん断弾性係数(Shear modulus)(G
K
1,2)、多層材料のx方向に対する各層の機械方向(1)の角度(θ
k)、各層(k)の厚さ(Z
k)が入力される(S11)。
【0050】
弾性率(E
k
1,2)、ポアソン比(ν
k
1,2)、せん断弾性係数(Shear modulus)(G
k
1,2)を用いて、各層(k)の機械方向(1)および横方向(2)の剛性マトリックス(stiffness matrix)([Q]
k
1,2)を下記の式(1)のように算出する(S12)。
【数17】
(等方性材料の場合には、G=E/2(1+ν)である。)
【0051】
このように算出された各層(k)の機械方向(1)および横方向(2)の剛性マトリックス([Q]k
1,2)に対するコンプライアンス行列(compliance matrix)([S]k
1,2)を設定する(S13)。
【0052】
導出された剛性マトリックス([Q]
k
1,2)に各層(k)の積層角度(θ
k)を反映して各層(k)の剛性マトリックス([Q]
k
x,y)を下記の式(2)のように再設定する(S14)。
【数18】
【0053】
各層(k)の厚さ情報および再設定された剛性マトリックス値を用いて、積層体全体すなわち多層材料の剛性マトリックス([A]
x,y、[B]
x,y、[D]
x,y)を下記の式(3)のように算出する(S15)。
【数19】
【0054】
このように算出された積層体全体すなわち多層材料の剛性マトリックス([A]
x,y、[B]
x,y、[D]
x,y)に対するコンプライアンス行列(compliance matrix)([a]
x,y、[b]
x,y、[c]
x,y、[d]
x,y)を下記の式(4)のように設定する(S16)。
【数20】
【0055】
本願発明では、多層材料全体に対して単位垂直応力(unit normal stress)を仮想的に加えるために、総厚さ値を用いて下記の式(5)または式(6)のように定めることができる(S17)。ここで、式(5)は多層材料のx方向強度を求める際に適用され、式(6)は多層材料のy方向強度を求める際に適用される。
【数21】
【数22】
【0056】
入力された全体力(/N)および全体モーメント(/M)と、積層体全体すなわち多層材料の剛性マトリックス([A]
x,y、[B]
x,y、[D]
x,y)に対するコンプライアンス行列(compliance matrix)([a]
x,y、[b]
x,y、[c]
x,y、[d]
x,y)を用いてミッドプレーン(mid-plane)の歪(strain)(ε
0
x,y)および曲率(curvatures)(k
x,y,s)を下記の式(7)のように算出する(S18)。
【数23】
【0057】
ミッドプレーン(mid-plane)の歪(ε
0
x,y)および曲率(k
x,y,s)と、入力部を介して入力された各層(k)の厚さ(Z
k)情報を活用し、各層(k)の歪(strain)(ε
k
x,y)を下記の式(8)のように算出する(S19)。
【数24】
【0058】
各層(k)の歪(strain)と、各層(k)の剛性マトリックス([Q]
k
x,y)を用いて、各層(k)の応力(stress)(σ
k
x,y)を下記の式(9)のように算出する(S20)。
【数25】
【0059】
次に、
図3を参照すると、算出された各層(k)の応力(stress)(σ
k
x,y)は、層別角度(θ
k)情報を用いて各層のMD、TD方向(主方向)応力([σ]
k
1,2)に変換される(S21)。ここで、下記の式(10)が用いられる。
【数26】
【0060】
これとは別に、各層kの主応力方向強度([F]k
1,2)は、例えば、下記のように入力されることになる(S22)。
【0061】
各層(k)の方向1の引張強度:F
k
1t、方向1の圧縮強度:F
k
1c
各層(k)の方向2の引張強度:F
k
2t、方向2の圧縮強度:F
k
2c
各層(k)の方向6の引張強度:F
k
6、方向1-2の二軸引張強度:F
k
12
ここで、各層の方向は
図4に示した通りである。
図4を参照すると、多層材料の水平方向を方向1またはx方向に設定し、垂直方向を方向2またはy方向に設定する。また、対角方向を方向6またはs方向に設定する。
【0062】
入力された各層(k)強度を用いて多層材料全体の強度を判別するためのパラメーターを下記式(11)のように構成する(S23)。下記の式(11)は、サイ-ウ判定基準(Tsai-Wu criterion)を適用した例である。
【数27】
【0063】
ここで、二軸引張強度実験値(experimental biaxial tensile strength)を使用することができない場合には、下記の式(12)のように仮定することができる。
【数28】
【0064】
各層の主方向応力([σ]
k
1,2)と強度判別パラメーター([f]
k
1,2)を活用して各層の安全係数(S
k
f)を算定する(S24)。例えば、サイ-ウ判定基準を適用すると、下記の式(13)のように安全係数が算定される。
【数29】
【0065】
式(12)の2次方程式を解くと、各層(k)の安全係数(Sk
f)に対して2つの解が得られ、このうち正の値(Sk
fa)は引張強度、負の値(Sk
fr)は圧縮強度を表す。各層の安全係数を比較して、最小の安全係数を示す層(ki)を破断層と定めることができる(S25)。
【0066】
このとき、破断層の安全係数を当該ローディングサイクル(i)における強度値(
【数30】
)として定めることができる(S26)。この場合、先のS17ステップで、式(5)により単位垂直応力(unit normal stress)を加えた場合には、式(14)により多層材料のx方向強度が導出される。
【数31】
【0067】
また、先のS17ステップで、式(6)により単位垂直応力(unit normal stress)を加えた場合には、式(15)により多層材料のy方向強度が導出される。
【数32】
【0068】
当該ローディングサイクルの結果が予め設定したULF(Ultimate Laminate Failure)基準を満たせば(S27)、定められた強度値(
【数33】
)を多層材料の最終的な強度(
【数34】
)と決定する(S28)。
【0069】
もし、ULF基準を満たしていないのであれば、S29およびS30ステップを行い、アルゴリズムサイクル全体を再適用することになる。
【0070】
ここで、ULF基準は、下記の例1から3の内いずれか1つを選択して適用することができる(S27)。
【0071】
(例1)ローディングサイクル(i=1)、多層材料を構成する各層の内いずれか1つの層でも破断に到達したときの当該強度を多層材料の最終的な強度とする。
【0072】
(例2)ローディングサイクル(i=n)、多層材料を形成する全ての層(n個)が破断した際の当該強度を多層材料の最終的な強度とする。
【0073】
(例3)i番目のローディングサイクルの結果とi+1番目のローディングサイクルの結果を比較した際に、当該強度が増加しなければ、i番目のローディングサイクルで選定された強度を最終的な強度とする。
【0074】
S26で定められた多層材料の強度値(
【数35】
)がULF基準を満たさなければ、当該サイクル(i)で決定された破断層の弾性率を調整して再算出することになる(S29)。この場合、破断層の弾性率に係数rを適用して調整することになる。例えば、r=0である場合は、当該サイクルにおける破断層は、次のローディングサイクルで当該方向の応力分担能力を喪失したと仮定し、0<r<1の範囲である場合は、当該サイクルにおける破断層は、次のローディングサイクルで当該層の応力分担能力が一部失われたと仮定する。
【0075】
同時に、当該破断層の強度を無限大に変更し、次のローディングサイクルでも同じ層の破断が発生しないようにする(S30)。
【0076】
(第3実施形態)
本願発明の別の一実施形態において、入力部に入力される入力値をすぐに入手することができない場合には、他の物性値(property value)を用いて変換する過程を通じて導出することができる。
【0077】
一実施形態において、各層(k)の弾性率(Ek)と各層(k)のポアソン比(νk)は、ラメの第1定数(fist Lame constant、λk)、せん断弾性係数(Gk)、体積弾性率(Kk)の内いずれか1つ以上の物性値(physical property)を用いて算出することができる。例えば、下記の数式1から9を用いて弾性率(Ek)とポアソン比(νk)に変換することができる。
【0078】
入手可能な組み合わせが(λ
k、G
k)であるときは、下記の数式1による。
【数36】
【0079】
入手可能な組み合わせが(λ
k、E
k)であるときは、下記の数式2による。
【数37】
【0080】
入手可能な組み合わせが(λ
k、ν
k)であるときは、下記の数式3による。
【数38】
【0081】
入手可能な組み合わせが(λ
k、K
k)であるときは、下記の数式4による。
【数39】
【0082】
入手可能な組み合わせが(G
k、E
k)であるときは、下記の数式5による。
【数40】
【0083】
入手可能な組み合わせが(G
k、ν
k)であるときは、下記の数式6による。
【数41】
【0084】
入手可能な組み合わせが(G
k、K
k)であるときは、下記の数式7による。
【数42】
【0085】
入手可能な組み合わせが(K
k、E
k)であるときは、下記の数式8による。
【数43】
【0086】
入手可能な組み合わせが(K
k、ν
k)であるときは、下記の数式9による。
【数44】
【0087】
上記の数式1から9は例示であり、必要に応じて2つ以上の数式を組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0088】
10:入力部
20:制御部
21:積層体全体の物性算出部
22:各フィルム層の歪および応力算出部
30:ディスプレイ
40:ストレージ
100:多層材料
【国際調査報告】