(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】非ナノUV遮蔽剤分散体
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20240829BHJP
B82B 1/00 20060101ALI20240829BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240829BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240829BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20240829BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240829BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240829BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240829BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20240829BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240829BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20240829BHJP
A61K 8/45 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
C09K3/00 104Z
B82B1/00 ZNM
A61K8/49
A61Q17/04
A61K8/42
A61K8/34
A61K8/36
A61K8/37
A61K8/89
A61K8/31
A61K8/04
A61K8/45
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513000
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2022072536
(87)【国際公開番号】W WO2023030851
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メンゲ,ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー,フランク
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AC011
4C083AC071
4C083AC231
4C083AC331
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC641
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD151
4C083BB46
4C083CC19
4C083DD27
4C083DD39
4C083EE01
4C083EE17
4C083FF01
4C083FF05
(57)【要約】
本発明は、微粉砕された少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の水性懸濁液(1)の製造プロセス及び微粉砕された少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を含む水性懸濁液(1)に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径D
N30が100nm以上である少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の水性懸濁液(1)の製造プロセスであって、水及び疎水性添加剤の混合物中に前記少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を含む懸濁液(2)を、粉砕装置内で、35~90℃の温度で粉砕するステップを含む、プロセス。
【請求項2】
前記水性懸濁液(1)中の前記少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の、好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径D
N10は、100nm以上、好ましくは0.1~0.4μm、より好ましくは0.1~0.2μmであり;及び/又は
好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径D
N50は、120nm以上、好ましくは0.12~0.5μm、より好ましくは0.12~0.3μmであり;及び/又は
好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径D
N90は、200nm以上、好ましくは0.2~1.0μm、より好ましくは、0.2~0.5μmであり;及び/又は
レーザー回折により決定された粒子径Dv10は、0.1μmを超え、好ましくは0.1~0.4μmであり;及び/又は
レーザー回折により決定された粒子径Dv90は、2.2μm未満、好ましくは2.0μm未満、より好ましくは、1.5μm未満であり、
Dv10及びDv90は、Malvern PanalyticalからのMastersizer 2000を使用して測定されたものである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記水性懸濁液(1)中の100nm未満の粒子の個数は、前記粉砕ステップ中に低減され、好ましくは、前記水性懸濁液(1)中の100nm未満の粒子の個数は、前記粉砕装置内の前記懸濁液(2)の温度を上昇させることによって低減される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記粉砕ステップ中の温度は、40~80℃の範囲、好ましくは40~70℃の範囲、特に45~65℃の範囲にある、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記疎水性添加剤は、好ましくは、6~18個の炭素原子を有するアルコール;C6~C24カルボン酸;C6~C24カルボン酸とC3~C24アルコールとのエステル;ヒドロキシカルボン酸とC6~C24アルコールとのエステル;カルボン酸と多価アルコールとのエステル;C6~C18カルボン酸をベースとする液体モノ-/ジ-/トリ-グリセリド混合物;C6~C24アルコールと芳香族カルボン酸とのエステル又はオキソカルボン酸とのエステル;トリカルボン酸エステル;C2~C12ジカルボン酸と1~22個の炭素原子を有するアルコールとのエステル又は2~10個の炭素原子及び2~6個のヒドロキシ基を有するポリオールとのエステル;置換シクロヘキサン;C6~C22アルコール炭酸エステル;合計12~36個の炭素原子を有する対称又は非対称ジアルキルエーテル;エポキシ化されたカルボン酸エステルのポリオールによる開環生成物;シリコーン油;脂肪族又はナフテン系炭化水素;ジオールエステル;並びにこれらの混合物からなる群から選択され、特に、C6~C24アルコール、好ましくはC10~C17アルコールと、芳香族カルボン酸、好ましくは安息香酸とのエステル、又はヒドロキシカルボン酸とのエステル、好ましくは乳酸エステル、又はオキソカルボン酸とのエステル、好ましくはレブリン酸エステル;ジカルボン酸エステル、好ましくはアジピン酸ジ-n-ブチル;トリカルボン酸エステル、好ましくはクエン酸トリブチル;及びこれらの混合物からなる群から選択される化粧用油である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、不溶性有機UV遮蔽剤、好ましくは、シュウ酸アニリドUV遮蔽剤、トリアジンUV遮蔽剤、ピペラジンUV遮蔽剤、トリアゾールUV遮蔽剤、ビニル基含有アミドUV遮蔽剤、ケイ皮酸アミドUV遮蔽剤、スルホン化ベンズイミダゾール及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、式(1):
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、独立に、C1~C18アルキル又はC1~C18アルコキシである)を有するシュウ酸アニリドUV遮蔽剤;式(2):
【化2】
(式中、R
3、R
4及びR
5は、独立に、H;OH;C1~C18アルコキシ;NH2;NH-R6又はN(R6)2(R6は、C1~C18アルキルである);OR6(R6は、上記と同義である);フェニル;フェノキシ;アニリノ;ピロロ(前記フェニル、フェノキシ、アニリノ又はピロロ部分は、それぞれ、OH、カルボキシ、CO-NH2、C1~C18アルキル若しくは-アルコキシ、C1~C18カルボキシアルキル、C5~C8シクロアルキル、フェニル、メチリデンカンファー基、-(CH=CH)mC(=O)-OR6基(mは、0又は1であり、R6は、上記と同義である)又は
【化3】
の基若しくは対応するアルカリ金属塩、アンモニウム塩、モノ-、ジ-若しくはトリ-C1~C4アルキルアンモニウム塩、モノ-、ジ-若しくはトリ-C2~C4アルカノールアンモニウム塩若しくはそのC1~C18アルキルエステルから選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されている)である)を有するトリアジンUV遮蔽剤;フェニレンビス-ジフェニルトリアジン;ピペラジンUV遮蔽剤;式(31)、(32)又は(33):
【化4】
(式中、T
1は、C1~C18アルキル又は水素であり、T
2は、フェニルで任意選択的に置換されたC
1~C
18-アルキルである)を有するトリアゾールUV遮蔽剤;式(4):
R
9-(Y)
m-CO-C(R
10)=C(R
11)-N(R
12)(R
13) (4)
(式中、R
9は、OH、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ又はCO-OR6(R6は、上記と同義である)から選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されたC1~C18アルキル又はフェニルであり;R
10、R
11、R
12及びR
13は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立に、C1~C18アルキル又は水素であり;Yは、N又はOであり;mは、上記と同義である)を有するビニル基含有アミドUV遮蔽剤;式(5):
【化5】
(式中、R
14は、ヒドロキシ又はC1~C4アルコキシであり;R
15は、水素又はC1~C4アルキルであり;R
16は、-(CONH)m-フェニル(mは、上記と同義であり、フェニル基は、OH、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ又はCO-OR6(R6は、上記と同義である)から選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されている)である)を有するケイ皮酸アミドUV遮蔽剤;式(6):
【化6】
(式中、Mは、水素又はアルカリ金属、アルカリ土類金属若しくは亜鉛である)を有するスルホン化ベンズイミダゾールUV遮蔽剤;及びこれらの混合物からなる群から選択され、
更に好ましくは、前記少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、トリス-ビフェニルトリアジン、1,1’-(1,4-ピペラジンジイル)ビス[1-[2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]フェニル]-メタノン、フェニレンビス-ジフェニルトリアジン及び2,2’-メチレンビス[6-(2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール]からなる群から選択され、特に、前記少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、トリス-ビフェニルトリアジン及び2,2’-メチレンビス[6-(2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール]からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記疎水性添加剤は、前記水性懸濁液(1)中に、前記水性懸濁液(1)の総量を基準として、0.01~10.0重量%、好ましくは0.01~5.0重量%、より好ましくは0.01~3.0重量%、特に0.05~1.0重量%の量で含まれる、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記粉砕ステップは、ボールミル、振動ミル、湿式ローターミル、媒体撹拌ミル又はコロイドミル、好ましくは、湿式ローターミル又は媒体撹拌ミル、特に、直径が0.1~10mm、好ましくは0.15~5mm、特に0.2~3mmである粉砕ビーズ、好ましくは、ガラスビーズ、酸化ジルコニウム又は混合セラミック粉砕ビーズを含む媒体撹拌ミルで実施される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
懸濁液(2)中の前記少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の、レーザー回折により決定された粒子径Dv90は、0.01~300μmの範囲、好ましくは、0.1~250μmの範囲にある、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
水性懸濁液(1)であって、それぞれ前記水性懸濁液(1)の総量を基準として:
a)粒子径D
N30が100nm以上である少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を10~65重量%と;
b)6~18個の炭素原子を有するアルコール;C6~C24カルボン酸;C6~C24カルボン酸とC3~C24アルコールとのエステル;ヒドロキシカルボン酸とC6~C24アルコールとのエステル;カルボン酸と多価アルコールとのエステル;C6~C18カルボン酸をベースとする液体モノ-/ジ-/トリ-グリセリド混合物;C6~C24アルコールと芳香族カルボン酸とのエステル又はオキソカルボン酸とのエステル;トリカルボン酸エステル;C2~C12ジカルボン酸と1~22個の炭素原子を有するアルコールとのエステル又は2~10個の炭素原子及び2~6個のヒドロキシ基を有するポリオールとのエステル;置換シクロヘキサン;C6~C22アルコール炭酸エステル;合計12~36個の炭素原子を有する対称又は非対称ジアルキルエーテル;エポキシ化されたカルボン酸エステルのポリオールによる開環生成物;シリコーン油;脂肪族又はナフテン系炭化水素;ジオールエステル;並びにこれらの混合物からなる群から選択される疎水性添加剤を0.01~10.0重量%と;
c)水と;
を含む、水性懸濁液(1)。
【請求項11】
前記疎水性添加剤は、C6~C24アルコール、好ましくはC10~C17アルコールと、芳香族カルボン酸、好ましくは安息香酸とのエステル、又はヒドロキシカルボン酸とのエステル、好ましくは乳酸エステル、又はオキソカルボン酸とのエステル、好ましくはレブリン酸エステル;ジカルボン酸エステル、好ましくはアジピン酸ジ-n-ブチル;トリカルボン酸エステル、好ましくはクエン酸トリブチル;及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の水性懸濁液(1)。
【請求項12】
前記少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、不溶性有機UV遮蔽剤、好ましくは、シュウ酸アニリドUV遮蔽剤、トリアジンUV遮蔽剤、ピペラジンUV遮蔽剤、トリアゾールUV遮蔽剤、ビニル基含有アミドUV遮蔽剤、ケイ皮酸アミドUV遮蔽剤、スルホン化ベンズイミダゾール及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、式(1):
【化7】
(式中、R
1及びR
2は、独立に、C1~C18アルキル又はC1~C18アルコキシである)を有するシュウ酸アニリドUV遮蔽剤;式(2):
【化8】
(式中、R
3、R
4及びR
5は、独立に、H;OH;C1~C18アルコキシ;NH2;NH-R6又はN(R6)2(R6は、C1~C18アルキルである);OR6(R6は、上記と同義である);フェニル;フェノキシ;アニリノ;ピロロ(このフェニル、フェノキシ、アニリノ又はピロロ部分は、それぞれ、OH、カルボキシ、CO-NH2、C1~C18アルキル若しくは-アルコキシ、C1~C18カルボキシアルキル、C5~C8シクロアルキル、フェニル、メチリデンカンファー基、-(CH=CH)mC(=O)-OR6基(mは、0又は1であり、R6は、上記と同義である)又は
【化9】
の基若しくは対応するアルカリ金属塩、アンモニウム塩、モノ-、ジ-若しくはトリ-C1~C4アルキルアンモニウム塩、モノ-、ジ-若しくはトリ-C2~C4アルカノールアンモニウム塩若しくはそのC1~C18アルキルエステルから選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されている)である)を有するトリアジンUV遮蔽剤;フェニレンビス-ジフェニルトリアジン;ピペラジンUV遮蔽剤;式(31)、(32)又は(33):
【化10】
(式中、T
1は、C1~C18アルキル又は水素であり、T
2は、フェニルで任意選択的に置換されたC
1~C
18-アルキルである)を有するトリアゾールUV遮蔽剤;式(4):
R
9-(Y)
m-CO-C(R
10)=C(R
11)-N(R
12)(R
13) (4)
(式中、R
9は、OH、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ又はCO-OR6(R6は、上記と同義である)から選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されたC1~C18アルキル又はフェニルであり;R
10、R
11、R
12及びR
13は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立に、C1~C18アルキル又は水素であり;Yは、N又はOであり;mは、上記と同義である)を有するビニル基含有アミドUV遮蔽剤;式(5):
【化11】
(式中、R
14は、ヒドロキシ又はC1~C4アルコキシであり;R
15は、水素又はC1~C4アルキルであり;R
16は、-(CONH)m-フェニル(mは、上記と同義であり、フェニル基は、OH、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ又はCO-OR6(R6は、上記と同義である)から選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されている)である)を有するケイ皮酸アミドUV遮蔽剤;式(6):
【化12】
(式中、Mは、水素又はアルカリ金属,アルカリ土類金属又は亜鉛である)を有するスルホン化ベンズイミダゾールUV遮蔽剤;及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、前記少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、トリス-ビフェニルトリアジン,1,1’-(1,4-ピペラジンジイル)ビス[1-[2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]フェニル]-メタノン、フェニレンビス-ジフェニルトリアジン及び2,2’-メチレンビス[6-(2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール]からなる群から選択され、特に、前記少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、トリス-ビフェニルトリアジン及び2,2’-メチレンビス[6-(2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール]からなる群から選択される、請求項10又は11に記載の水性懸濁液(1)。
【請求項13】
前記水性懸濁液(1)は、前記疎水性添加剤を、前記水性懸濁液(1)の総量を基準として、0.01~8.0重量%、好ましくは0.01~5.0重量%、より好ましくは0.01~3.0重量%、特に0.05~1.0重量%の量で含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の水性懸濁液(1)。
【請求項14】
前記少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の、好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径D
N10は、100nm以上、好ましくは0.1~0.4μm、より好ましくは0.1~0.2μmであり;及び/又は
好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径D
N50は、120nm以上、好ましくは0.12~0.5μm、より好ましくは0.12~0.3μmであり;及び/又は
好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径D
N90は、200nm以上、好ましくは0.2~1.0μm、より好ましくは0.2~0.5μmであり;及び/又は
レーザー回折により決定された粒子径Dv10は、0.1μmを超え、好ましくは0.1~0.4μmであり;及び/又は
レーザー回折により決定された粒子径Dv90は、2.2μm未満、好ましくは2.0μm未満、より好ましくは、1.5μm未満であり、
Dv10及びDv90は、Malvern PanalyticalからのMastersizer 2000を使用して測定されたものである、請求項10~13のいずれか一項に記載の水性懸濁液(1)。
【請求項15】
日焼け止め又はデイリーケア組成物に使用するための、請求項10~14のいずれか一項に記載の水性懸濁液(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粉砕された少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の水性懸濁液(1)の製造プロセス並びに微粉砕された少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を含む水性懸濁液(1)及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
有機UV遮蔽剤(UV吸収剤としても知られる)分散体の微粉砕は文献から知られている。
【0003】
化粧用日焼け止め剤に使用するのに適した粒子状有機UV吸収剤は、例えば、国際公開第9703643号パンフレット、国際公開第2009077356号パンフレット及び国際公開第2015155158号パンフレットに記載されている。
【0004】
国際公開第9703643号パンフレットは、微粉砕された有機UV吸収剤の組成物を製造するための方法であって、UV吸収剤をアルキルポリグルコシドの存在下に粉砕することを含む方法を提供するものである。微粉砕された有機UV遮蔽剤の平均粒子径は、0.01~2μm、特に0.05~1μmである。
【0005】
国際公開第2009003934号パンフレットには、微粉砕されたナノスケールの不溶性UV吸収剤の新規な配合物を製造するための他の方法が記載されている。その分散体は、イットリウムで安定化された酸化ジルコニウム粉砕ビーズを含む装置内で、分散剤の補助剤としての消泡剤の存在下に、UV吸収剤を粉砕することによって調製される。
【0006】
粉砕プロセスに消泡剤を使用することに関しては、国際公開第2018069200号パンフレットにおいて、粗大なUV吸収剤が特定の粒子径になるように選択した場合に、起泡が大幅に低減されると主張されている。具体的には、UV吸収剤を水及びアルキルポリグルコシドの混合物中に分散させた分散体で、Dv50が<200nm(光散乱により測定)となる粒子径を達成するためには、固体UV吸収剤のレーザー回折により測定された粒子径分布のDv90が1~150μmの範囲内にあることが必要である。
【0007】
微粉砕された有機UV吸収剤の製造に使用するための粉砕助剤の具体例が、国際公開第2009068469号パンフレットに記載されている。
【0008】
これらのどの刊行物にも、依然として効率的なUV防御を提供する非ナノUV吸収剤懸濁液をどのように調製するかについては教示されていない。ナノ材料を、例えば化粧品に使用することに関する公的な議論が続いていることを鑑みると、非ナノ材料であるUV吸収剤の懸濁液を製造するためのプロセスの開発は絶えず必要とされている。
【0009】
懸濁液の粒子径分布は、粒子の体積(質量)に関し、又は粒子の個数に関し特徴付けることができる。例えば、Dv90=1μmであるとは、分散している材料の体積(又は質量)の90%が1μmよりも小さい粒子から構成されており、10%がそれよりも大きいことを意味している。これに対し、DN30=100nmであるとは、粒子径分布が個数基準であることを表しており、試料中の粒子全体の30%が100nmよりも小さいことを示唆している。経験的に、多分散試料においては、小さい粒子が個数基準の分布DNを支配し、一方、大きい粒子がDvを支配する。粒子の個数又は粒子の質量に対する感度は測定技法により異なる。体積基準の分布はレーザー回折により得ることができ、個数基準の分布は電子顕微鏡法により得ることができる。レーザー回折に関しては、多くの市販の機器が、例えば、Anton Paar(PSAシリーズ)、Microtrac MRB(Sync)又はMalvern Panalytical(Mastersizerシリーズ)から入手可能である。粒子径分布を特徴付ける数値結果は、選択された機器の感度及び分解能に応じて、ある程度の狭い範囲で異なるであろう。当業者は、これらのズレの扱い方を理解しており、この種の機器はR&D及び品質管理研究室で日常的に使用されている。それとは対照的に、電子顕微鏡法は費用がより高額であり、使用頻度はより少ない。
【0010】
このDN及びDvの区別は、材料を「ナノ」に分類することと関連している。欧州委員会の勧告2011/696/EUによれば、ナノ材料とは、DN50の値が100nm以下である微粉砕された分散体である。微粉砕された有機UV吸収剤の製造に関する文献に見られる方法では、通常、最終的に得られるのはナノ分散体である、即ち、不溶性有機UV吸収剤のDv50が50~150nmの範囲にあるナノサイズである、UV吸収剤粒子を含む分散体である(国際公開第2018069200号パンフレット)。UV吸収剤分散体の有効性は、粒子径が小さくなるに従い高くなるため、これは望ましいことのように思える。更に、UV吸収剤の結晶の材料特性によっては、粉砕装置内での破壊機構により、依然としてミクロン範囲にある結晶からナノ材料を生成することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上に概説した背景に反し、本発明の目的は、微粉砕された非ナノサイズの有機UV遮蔽剤を含み、好ましくは、微粉砕された非ナノサイズの有機UV遮蔽剤が不溶性有機UV遮蔽剤である、配合物を提供することにあった。更に本発明の目的は、依然として十分なUV防御効率が得られる非ナノサイズの有機UV遮蔽剤を提供することにあった。本発明の更なる目的は、微粉砕された非ナノサイズの有機UV遮蔽剤を含み、好ましくは、微粉砕された非ナノサイズの有機UV遮蔽剤が不溶性有機UV遮蔽剤である配合物の製造プロセスを提供することにあった。本発明の更なる目的は、非ナノ材料を含む配合物を提供することにあった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、粉砕プロセスにおいて、粉砕機の温度を調整して疎水性の添加剤を添加すると、微粉砕プロセスにおけるナノ材料の形成が回避され、それにより、UV遮蔽剤の十分な効率はそのままにできることを見出した。
【0013】
したがって、第1の態様Aによれば、本発明は、粒子径DN30が100nm以上である少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の水性懸濁液(1)の製造プロセスであって、水及び疎水性添加剤の混合物中に少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を含む懸濁液(2)を、粉砕装置内で、35~90℃の温度で粉砕するステップを含む、プロセスに関する。
【0014】
ECのナノ勧告(Nano recommendation)を考慮すると、原則として、本発明は、粒子径DN30が100nm以内であり、DN50が100nmである少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の水性懸濁液(1)を達成するために使用することもできることに特に言及することができる。粒子径分布の変動を考慮すると、ナノ材料のボーダーラインからより離れた粒子径を標的とし、実際の製造で一つ一つのバッチを分析することを回避することが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、上述の製造プロセスの好ましい実施形態を更に詳細に説明する。更に、水性懸濁液(1)及びその使用の好ましい実施形態をより詳細に説明する。それぞれの好ましい実施形態は、単独でも、他の好ましい実施形態との組合せでも適切であることを理解すべきである。
【0016】
第1の態様の好ましい実施形態A1において、水性懸濁液(1)中の少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の、好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径DN10は、100nm以上、好ましくは0.1~0.4μm、より好ましくは0.1~0.2μmであり;及び/又は
好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径DN50は、120nm以上、好ましくは0.12~0.5μm、より好ましくは0.12~0.3μmであり;及び/又は
好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径DN90は、200nm以上、好ましくは0.2~1.0μm、より好ましくは0.2~0.5μmであり;及び/又は
レーザー回折により決定された粒子径Dv10は、0.1μmを超え、好ましくは0.1~0.4μmであり;及び/又は
レーザー回折により決定された粒子径Dv90は、2.2μm未満、好ましくは2.0μm未満、より好ましくは、1.5μm未満であり、
Dv10及びDv90は、Malvern PanalyticalからのMastersizer 2000を使用して測定されたものである。
【0017】
第1の態様の好ましい実施形態A2では、水性懸濁液(1)中の100nm未満の粒子の個数は、粉砕ステップ中に低減され、好ましくは、水性懸濁液(1)中の100nm未満の粒子の個数は、粉砕装置内の懸濁液(2)の温度を上昇させることによって低減される。「低減される」及び「温度を上昇させる」は、どちらも、DN30が99nm以下である水性懸濁液(1)が生成する粉砕ステップとの比較に関連する用語である。
【0018】
第1の態様の好ましい実施形態A3において、粉砕ステップ中の懸濁液(2)の温度は、40~80℃の範囲、好ましくは40~70℃の範囲、特に45~65℃の範囲にある。
【0019】
第1の態様の好ましい実施形態A4では、疎水性添加剤は、好ましくは、6~18個の炭素原子を有するアルコール;C6~C24カルボン酸;C6~C24カルボン酸とC3~C24アルコールとのエステル;ヒドロキシカルボン酸とC6~C24アルコールとのエステル;カルボン酸と多価アルコールとのエステル;C6~C18カルボン酸をベースとする液体モノ-/ジ-/トリ-グリセリド混合物;C6~C24アルコールと芳香族カルボン酸とのエステル又はオキソカルボン酸とのエステル;トリカルボン酸エステル;C2~C12ジカルボン酸と1~22個の炭素原子を有するアルコールとのエステル又は2~10個の炭素原子及び2~6個のヒドロキシ基を有するポリオールとのエステル;置換シクロヘキサン;C6~C22アルコール炭酸エステル;合計12~36個の炭素原子を有する対称又は非対称ジアルキルエーテル;エポキシ化されたカルボン酸エステルのポリオールによる開環生成物;シリコーン油;脂肪族又はナフテン系炭化水素;ジオールエステル;並びにこれらの混合物からなる群から選択され、特に、C6~C24アルコール、好ましくはC10~C17アルコールと、芳香族カルボン酸、好ましくは安息香酸とのエステル、又はヒドロキシカルボン酸とのエステル、好ましくは乳酸エステル、又はオキソカルボン酸とのエステル、好ましくはレブリン酸エステル;ジカルボン酸エステル、好ましくはアジピン酸ジ-n-ブチル;トリカルボン酸エステル、好ましくはクエン酸トリブチル;及びこれらの混合物からなる群から選択される化粧用油である。
【0020】
第1の態様の好ましい実施形態A5において、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、不溶性有機UV遮蔽剤、好ましくは、シュウ酸アニリドUV遮蔽剤、トリアジンUV遮蔽剤、ピペラジンUV遮蔽剤、トリアゾールUV遮蔽剤、ビニル基含有アミドUV遮蔽剤、ケイ皮酸アミドUV遮蔽剤、スルホン化ベンズイミダゾール及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、式(1):
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、独立に、C1~C18アルキル又はC1~C18アルコキシである)を有するシュウ酸アニリドUV遮蔽剤;式(2):
【化2】
(式中、R
3、R
4及びR
5は、独立に、H;OH;C1~C18アルコキシ;NH2;NH-R6又はN(R6)2(R6は、C1~C18アルキルである);OR6(R6は、上記と同義である);フェニル;フェノキシ;アニリノ;ピロロ(このフェニル、フェノキシ、アニリノ又はピロロ部分は、それぞれ、OH、カルボキシ、CO-NH2、C1~C18アルキル若しくは-アルコキシ、C1~C18カルボキシアルキル、C5~C8シクロアルキル、フェニル、メチリデンカンファー基、-(CH=CH)mC(=O)-OR6基(mは、0又は1であり、R6は、上記と同義である)又は
【化3】
の基若しくは対応するアルカリ金属塩、アンモニウム塩、モノ-、ジ-若しくはトリ-C1~C4アルキルアンモニウム塩、モノ-、ジ-若しくはトリ-C2~C4アルカノールアンモニウム塩若しくはそのC1~C18アルキルエステルから選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されている)である)を有するトリアジンUV遮蔽剤;フェニレンビス-ジフェニルトリアジン;ピペラジンUV遮蔽剤;式(31)、(32)又は(33):
【化4】
(式中、T
1は、C1~C18アルキル又は水素であり、T
2は、フェニルで任意選択的に置換されたC
1~C
18-アルキルである)を有するトリアゾールUV遮蔽剤;式(4):
R
9-(Y)
m-CO-C(R
10)=C(R
11)-N(R
12)(R
13) (4)
(式中、R
9は、OH、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ又はCO-OR6(R6は、上記と同義である)から選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されたC1~C18アルキル又はフェニルであり;R
10、R
11、R
12及びR
13は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立に、C1~C18アルキル又は水素であり;Yは、N又はOであり;mは、上記と同義である)を有するビニル基含有アミドUV遮蔽剤;式(5):
【化5】
(式中、R
14は、ヒドロキシ又はC1~C4アルコキシであり;R
15は、水素又はC1~C4アルキルであり;R
16は、-(CONH)m-フェニル(mは、上記と同義であり、フェニル基は、OH、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ又はCO-OR6(R6は、上記と同義である)から選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されている)である)を有するケイ皮酸アミドUV遮蔽剤;式(6):
【化6】
(式中、Mは、水素又はアルカリ金属、アルカリ土類金属若しくは亜鉛である)を有するスルホン化ベンズイミダゾールUV遮蔽剤;及びこれらの混合物からなる群から選択され、
更に好ましくは、この少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、トリス-ビフェニルトリアジン、1,1’-(1,4-ピペラジンジイル)ビス[1-[2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]フェニル]-メタノン、フェニレンビス-ジフェニルトリアジン及び2,2’-メチレンビス[6-(2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール]からなる群から選択され、特に、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、トリス-ビフェニルトリアジン及び2,2’-メチレンビス[6-(2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール]からなる群から選択される。
【0021】
第1の態様の好ましい実施形態A6では、疎水性添加剤は、水性懸濁液(1)中に、水性懸濁液(1)の総量を基準として、0.01~10.0重量%、好ましくは0.01~5.0重量%、より好ましくは0.01~3.0重量%、特に0.05~1.0重量%の量で含まれる。
【0022】
第1の態様の好ましい実施形態A7では、粉砕ステップは、ボールミル、振動ミル、湿式ローターミル、媒体撹拌ミル又はコロイドミル、好ましくは、湿式ローターミル又は媒体撹拌ミル、特に、直径が0.1~10mm、好ましくは0.15~5mm、特に0.2~3mmである粉砕ビーズ、好ましくは、ガラスビーズ、酸化ジルコニウム又は混合セラミック粉砕ビーズを含む媒体撹拌ミルで実施される。
【0023】
第1の態様の好ましい実施形態A8では、懸濁液(2)中の少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、レーザー回折により決定された粒子径Dv90が、0.01~300μmの範囲、好ましくは0.1~250μmの範囲にある。
【0024】
第2の態様Bでは、本発明は、それぞれ水性懸濁液(1)の総量を基準として、
a)粒子径DN30が100nm以上である少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を10~65重量%と;
b)6~18個の炭素原子を有するアルコール;C6~C24カルボン酸;C6~C24カルボン酸とC3~C24アルコールとのエステル;ヒドロキシカルボン酸とC6~C24アルコールとのエステル;カルボン酸と多価アルコールとのエステル;C6~C18カルボン酸をベースとする液体モノ-/ジ-/トリ-グリセリド混合物;C6~C24アルコールと芳香族カルボン酸とのエステル又はオキソカルボン酸とのエステル;トリカルボン酸エステル;C2~C12ジカルボン酸と1~22個の炭素原子を有するアルコールとのエステル又は2~10個の炭素原子及び2~6個のヒドロキシ基を有するポリオールとのエステル;置換シクロヘキサン;C6~C22アルコール炭酸エステル;合計12~36個の炭素原子を有する対称又は非対称ジアルキルエーテル;エポキシ化されたカルボン酸エステルのポリオールによる開環生成物;シリコーン油;脂肪族又はナフテン系炭化水素;ジオールエステル;並びにこれらの混合物からなる群から選択される疎水性添加剤を0.01~10.0重量%と;
c)水と;
を含む、水性懸濁液(1)に関する。
【0025】
第2の態様の好ましい実施形態B1では、疎水性添加剤は、C6~C24アルコール、好ましくはC10~C17アルコールと、芳香族カルボン酸、好ましくは安息香酸とのエステル、又はヒドロキシカルボン酸とのエステル、好ましくは乳酸エステル、又はオキソカルボン酸とのエステル、好ましくはレブリン酸エステル;ジカルボン酸エステル、好ましくはアジピン酸ジ-n-ブチル;トリカルボン酸エステル、好ましくはクエン酸トリブチル;及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0026】
第2の態様の好ましい実施形態B2では、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、不溶性有機UV遮蔽剤、好ましくは、シュウ酸アニリドUV遮蔽剤、トリアジンUV遮蔽剤、ピペラジンUV遮蔽剤、トリアゾールUV遮蔽剤、ビニル基含有アミドUV遮蔽剤、ケイ皮酸アミドUV遮蔽剤、スルホン化ベンズイミダゾール及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、式(1):
【化7】
(式中、R
1及びR
2は、独立に、C1~C18アルキル又はC1~C18アルコキシである)を有するシュウ酸アニリドUV遮蔽剤;式(2):
【化8】
(式中、R
3、R
4及びR
5は、独立に、H;OH;C1~C18アルコキシ;NH2;NH-R6又はN(R6)2(R6は、C1~C18アルキルである);OR6(R6は、上記と同義である);フェニル;フェノキシ;アニリノ;ピロロ(このフェニル、フェノキシ、アニリノ又はピロロ部分は、それぞれ、OH、カルボキシ、CO-NH2、C1~C18アルキル若しくは-アルコキシ、C1~C18カルボキシアルキル、C5~C8シクロアルキル、フェニル、メチリデンカンファー基、-(CH=CH)mC(=O)-OR6基(mは、0又は1であり、R6は、上記と同義である)又は
【化9】
の基若しくは対応するアルカリ金属塩、アンモニウム塩、モノ-、ジ-若しくはトリ-C1~C4アルキルアンモニウム塩、モノ-、ジ-若しくはトリ-C2~C4アルカノールアンモニウム塩若しくはそのC1~C18アルキルエステルから選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されている)である)を有するトリアジンUV遮蔽剤;フェニレンビス-ジフェニルトリアジン;ピペラジンUV遮蔽剤;式(31)、(32)又は(33):
【化10】
(式中、T
1は、C1~C18アルキル又は水素であり、T
2は、フェニルで任意選択的に置換されたC
1~C
18-アルキルである)を有するトリアゾールUV遮蔽剤;式(4):
R
9-(Y)
m-CO-C(R
10)=C(R
11)-N(R
12)(R
13) (4)
(式中、R
9は、OH、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ又はCO-OR6(R6は、上記と同義である)から選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されたC1~C18アルキル又はフェニルであり;R
10、R
11、R
12及びR
13は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立に、C1~C18アルキル又は水素であり;Yは、N又はOであり;mは、上記と同義である)を有するビニル基含有アミドUV遮蔽剤;式(5):
【化11】
(式中、R
14は、ヒドロキシ又はC1~C4アルコキシであり;R
15は、水素又はC1~C4アルキルであり;R
16は、-(CONH)m-フェニル(mは、上記と同義であり、フェニル基は、OH、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ又はCO-OR6(R6は、上記と同義である)から選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されている)である)を有するケイ皮酸アミドUV遮蔽剤;式(6):
【化12】
(式中、Mは、水素又はアルカリ金属,アルカリ土類金属又は亜鉛である)を有するスルホン化ベンズイミダゾールUV遮蔽剤;及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、トリス-ビフェニルトリアジン,1,1’-(1,4-ピペラジンジイル)ビス[1-[2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]フェニル]-メタノン、フェニレンビス-ジフェニルトリアジン及び2,2’-メチレンビス[6-(2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール]からなる群から選択され、特に、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、トリス-ビフェニルトリアジン及び2,2’-メチレンビス[6-(2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール]からなる群から選択される。
【0027】
第2の態様の好ましい実施形態B3では、水性懸濁液(1)は、疎水性添加剤を、水性懸濁液(1)の総重量を基準として、0.01~8.0重量%、より好ましくは0.01~5.0重量%、より好ましくは0.01~3.0重量%、特に0.05~1.0重量%の量で含む。
【0028】
第2の態様の好ましい実施形態B4では、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の、好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径DN10は、100nm以上、好ましくは0.1~0.4μm、より好ましくは0.1~0.2μmであり;及び/又は
好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径DN50は、120nm以上、好ましくは0.12~0.5μm、より好ましくは0.12~0.3μmであり;及び/又は
好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径DN90は、200nm以上、好ましくは0.2~1.0μm、より好ましくは0.2~0.5μmであり;及び/又は
レーザー回折により決定された粒子径Dv10は、0.1μmを超え、好ましくは0.1~0.4μmであり;及び/又は
レーザー回折により決定された粒子径Dv90は、2.2μm未満、好ましくは2.0μm未満、より好ましくは、1.5μm未満であり、
Dv10及びDv90は、Malvern PanalyticalからのMastersizer 2000を使用して測定されたものである。
【0029】
第3の態様Cでは、本発明は、日焼け止め又はデイリーケア組成物に使用するための、第2の態様Bによる水性懸濁液(1)及びその全ての実施形態に関する。
【0030】
詳細な説明
本発明の例示的な実施形態を詳細に説明する前に、本発明を理解するために重要な定義を示す。
【0031】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、文脈上明らかにそうでないことが指示されない限り、それぞれの複数形も包含する。本発明に関連して、「約」及び「およそ」という用語は、対象とする特徴の技術的効果が依然として確保されると当業者が認識するであろう精度の幅を指す。この用語は、典型的には、示された数値から±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%、更により好ましくは±5%のずれを指す。「含む(comprising)」という用語は、非限定的であることが理解されるべきである。本発明の目的に関する「からなる(consisting of)」という用語は、「含む(comprising of)」という用語の好ましい実施形態であると見なされる。以下、ある群が少なくともある決まった数の実施形態を含むと定義される場合、これは、これらの実施形態のみからなる好ましい群も包含することを意味する。更に、本明細書及び特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」及びこれに類する用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも連続した順番又は時系列順を説明するものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であることと、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載又は図示する順序以外の順序で実施することが可能であることとが理解されるべきである。「第1」、「第2」、「第3」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」、「i」、「ii」等の用語が方法若しくは使用又はアッセイの工程に関する場合、本出願で別段の指定がない限り、本明細書で前述又は後述するように、この工程間に時間を置かないか、又は時間間隔の一貫性がなく、即ち、この工程は、同時に実施され得るか、又はこのような工程間に数秒間、数分間、数時間、数日間、数週間、数ヶ月間若しくは更に数年間の時間間隔があり得る。本明細書に記載される特定の方法、手順、試薬等は、変更される可能性があるため、本発明は、それらに限定されないことが理解されるべきである。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を記載する目的のみに使用され、本発明の範囲を限定することを意図せず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるべきである。他に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術及び科学用語は、当業者が一般に理解する意味と同義である。
【0032】
本明細書において使用される「含まない(does not comprise)(free of)」という用語は、本発明の組成物が、特定の化合物を含まない又は集合的な用語の下に組み合わせられた群であってもよい特定の化合物群を含まない、という文脈においては、組成物が、組成物の総重量を基準として、0.8重量%を超える量の前記化合物又は化合物群を含まないことを意味する。更に本発明による組成物は、前記化合物又は化合物群を0.5重量%を超える量で含まないことが好ましく、好ましくは、組成物は、前記化合物又は化合物群を全く含まない。
【0033】
組成物及びその中に含まれる成分の重量パーセントに言及する場合、本発明によれば、成分全体の量は、100%を超えない(丸めを考慮して±1%)ことを理解すべきである。
【0034】
「日焼け止め組成物」又は「日焼け止め剤」という用語は、紫外放射の特定の部分を吸収し、更に反射及び散乱もさせ得る任意の局所用製品を指す。したがって、「日焼け止め組成物」という用語は、日焼け止め組成物を包含するのみならず、UVを防御する任意の化粧用組成物も包含することを理解すべきである。「局所用製品」という用語は、皮膚に適用される製品を指し、例えば、スプレー、ローション、クリーム、オイル、フォーム、パウダー又はゲルを指し得る。本発明によれば、日焼け止め組成物は、1種又は複数種の活性剤、例えば、有機及び無機UV遮蔽剤並びに他の成分又は添加剤、例えば、乳化剤、エモリエント剤、粘度調整剤、安定剤、防腐剤又は香料を含み得る。
【0035】
好適な無機UV遮蔽剤として、二酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化セリウムを挙げることができる。
【0036】
「デイリーケア組成物」という用語は、紫外放射のある特定の部分を吸収し、更に反射及び散乱もさせ得る、ヒトの身体、例えば、顔又は身体用のデイリーケア製品として使用される任意の局所用製品を指す。デイリーケア組成物は、1種又は複数種の活性剤、例えば、有機及び/又は無機UV遮蔽剤並びに他の成分又は添加剤、例えば、乳化剤、エモリエント剤、粘度調整剤、安定剤、防腐剤又は香料を含み得る。好適なデイリーケア組成物は、本発明によるものであり、例えば、洗い流さないタイプの顔及び身体ケア製品である。
【0037】
顔及び身体に好適な洗い流さないタイプの製品は、例えば、日焼け止め組成物、装飾用製剤及びスキンケア製剤である。
【0038】
好適な装飾用製剤は、例えば、口紅、マニキュア液、アイシャドー、マスカラ、乾燥又は湿潤メークアップ化粧料(make-up)、頬紅、おしろい(powder)、除毛剤及び日焼け用ローションである。
【0039】
好適なスキンケア製剤は、例えば、保湿、肌質改善(refining)及びしわ取り製剤である。言及したデイリーケア組成物は、クリーム、軟膏、ペースト、フォーム、ゲル、ローション、パウダー、メークアップ化粧料、スプレー、スティック又はエアゾールの形態とすることができる。本発明のデイリーケア組成物は、本発明の方法で調製される水性懸濁液(1)中に含まれるUV遮蔽剤を含むため、治療用デイリーケア組成物である。
【0040】
本明細書において使用される「UV遮蔽剤」又は「紫外線遮蔽剤」という用語は、日光により発生する紫外放射を吸収することができ、更には反射及び散乱もし得る有機又は無機化合物を指す。UV遮蔽剤は、そのUV防御曲線に基づき、UV-A、UV-B又は広波長域遮蔽剤に分類することができる。
【0041】
水溶性UV遮蔽剤の水中溶解度は、少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも5重量%である。
【0042】
Cn~Cmという接頭辞は、各場合において、その基の可能な炭素原子の数を示す。
【0043】
「安息香酸アルキル(C12~C15)」という用語は、安息香酸とC12~C15アルキル鎖を含む脂肪アルコールとのエステルを指す。C12~C15アルキル鎖とは、C12、C13、C14又はC15の鎖長を有するアルキル鎖と定義される。
【0044】
本明細書において使用される「Cn~Cmカルボン酸」という用語は、各場合において、n~m個の炭素原子、例えば、6~24個の炭素原子を有する直鎖又は分岐カルボン酸を指す。
【0045】
本明細書において使用される「Cn~Cmアルコール」は、各場合において、n~m個の炭素原子を有する、例えば、3~24個の炭素原子又は6~24個の炭素原子又は1~22個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルコールを指す。
【0046】
本明細書において使用される「C2~C12ジカルボン酸」という用語は、各場合において、2~12個の炭素原子を有するジカルボン酸、例えば、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)又はデカン二酸(セバシン酸)を指す。
【0047】
本明細書において使用される「ジアルキルエーテル」という用語は、各場合において、合計12~36個の炭素原子を有し、少なくとも1つのエーテル部分を含む直鎖又は分岐ジアルキルエーテルを指す。
【0048】
本明細書において使用される「C6~C22アルコール炭酸エステル」という用語は、各場合において、6~22個の炭素原子を有し、2つのアルコキシ基が隣接するカルボニル基から構成される少なくとも1個の官能基を含む、直鎖又は分岐アルコール炭酸エステルを指す。
【0049】
本明細書において使用される「アルキル」という用語は、各場合において、一例として1~18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基を指す。アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル及び1-エチル-2-メチルプロピルである。
【0050】
本明細書において使用される「アルコキシ」という用語は、各場合において、酸素原子を介して結合している、通常、1~20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基を表す。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブチルオキシ、2-ブチルオキシ、イソブチルオキシ、tert-ブチルオキシ等である。
【0051】
本明細書において使用される「カルボキシアルキル」という用語には、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシプロピル、カルボキシイソプロピル、カルボキシブチル、カルボキシイソブチル、カルボキシアミル、カルボキシヘキシル、カルボキシヘプチル、カルボキシオクチル、カルボキシイソオクチル、カルボキシノニル、カルボキシデシル、カルボキシウンデシル、カルボキシドデシル、カルボキシテトラデシル、カルボキシヘキサデシル及びカルボキシオクタデシルが含まれ、カルボキシメチルが好ましい。
【0052】
本明細書において使用される「シクロアルキル」という用語は、各場合において、通常、3~10個又は5~8個の炭素原子を有する単環式脂環式基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル及びシクロデシル又はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを指す。
【0053】
本明細書において使用される「置換された」という用語は、指定された原子に結合している水素原子が、その置換の結果として安定な又は化学的に実現可能な化合物が得られるという条件下において、具体的に述べられた置換基に置き換えられていることを意味する。別段の指定がない限り、置換された原子は、1個又は複数の置換基を有することができ、各置換基は、独立に選択される。
【0054】
「エモリエント剤」という用語は、皮膚を保護、保湿及び潤滑するために使用される、化粧用の特定の油に関連する。エモリエント剤という用語は、ラテン語の「mollire(柔らかくする)」に由来している。概して、エモリエント剤は、皮膚に閉塞性の被覆を形成することによって水分の蒸発を防ぐものである。これらは、その極性指数(polarity index)に応じて異なる群に分けることができる。
【0055】
「敏感な皮膚」という用語は、天然のバリア機能が弱まっており、誘発因子(trigger)によって破壊されている皮膚を指す。誘発因子は、例えば、寒い天候、極端に高温の水、日焼け止め又はデイリーケア組成物に含まれることがある要注意(critical)成分であり得る。
【0056】
本明細書において使用される「紫外線防御指数(SPF)」という用語は、日焼け止め組成物が皮膚を主にUV-B放射からどの程度保護するかを表すものである。具体的には、この指数は、未処置の皮膚と比較して、保護された皮膚にどれだけ長い時間サンバーンを起こさせることなく太陽に曝露することができるかを表している。例えば、本来であれば日光下で10分間でサンバーンが現れるヒトの皮膚に、SPF15の日焼け止め組成物を均等に適用した場合、この日焼け止め剤によって、当業者は15倍長い時間日光下に留まることが可能になる。換言すれば、SPF15とは、日焼け止め剤を、用量が1平方センチメートルあたり2ミリグラム(mg/cm2)となる厚みで均等に塗布したと仮定した場合、皮膚に到達することになるサンバーンを生じさせる(burning)紫外放射が1/15になることを意味する。
【0057】
「広波長域(broadband)」防御(広域スペクトル(broad-spectrum)又は広域防御(broad protection)とも呼ばれる)の定義は、「臨界波長」に基づく。広波長域を網羅するためには、UV-B及びUV-A防御を提供しなければならない。米国の要件によれば、広域スペクトル防御を達成するためには臨界波長が少なくとも370nmであることが必要である。更に欧州委員会は、全ての日焼け止め又は化粧用組成物が、表示されている紫外線防御指数(SPF)の少なくとも3分の1のUV-A防御指数を有するべきであると勧告しており、例えば、日焼け止め組成物のSPFが30である場合、UVA防御指数は少なくとも10でなければならない。
【0058】
「臨界波長」という用語は、UV防御曲線(波長に対する防御率(%))下の面積が、UV領域(290~400nm)の曲線下の総面積の90%を占めるところに位置する波長と定義されている。例えば、臨界波長が370nmであるとは、日焼け止め組成物による防御が、UV-Bの波長、即ち、290~320nmの波長に限定されず、UV領域の防御曲線下面積全体の90%に達する波長が370nmになるという形で、370nmにまで及ぶことを表している。
【0059】
「投与」という用語は、日焼け止め又はデイリーケア組成物をヒトの皮膚に適用することを指す。
【0060】
本明細書において使用される「ナノ材料」という用語は、欧州委員会の勧告2011/696/EUに従う。したがって、ナノ材料において、強凝集体(aggregate)又は弱凝集体(agglomerate)の構成粒子を含めた、個数基準の粒子径分布に基づく粒子の50%以上は、100nmよりも小さい。このような50%という閾値を満たすようにすることは通常の製造では困難であるため、本発明の趣旨において、非ナノUV吸収剤分散体は、100nmより小さい粒子の含有量を、個数基準の粒子径分布を基準として、好ましくは30%未満、より好ましくは10%未満とする。
【0061】
本明細書において使用される「分散体」という用語は、ある材料の散らばった粒子が他の材料の連続相中に分散している系を指す。この2つの相の物質の状態は同一であっても異なっていてもよい。分散体の特定の特殊型(subtype)が、固体要素が流体中に分散している(即ち、溶解していない)、「懸濁液」である。
【0062】
水性懸濁液(1)の製造プロセス及び水性懸濁液(1)並びにその使用に関する好ましい実施形態を以下に説明する。本発明の好ましい実施形態は、単独でも互いに組み合わせても好ましいことを理解すべきである。
【0063】
上に示したように、本発明は、一実施形態において、粒子径DN30が100nm以上である少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の水性懸濁液(1)の製造プロセスであって、水及び疎水性添加剤の混合物中に少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を含む懸濁液(2)を、粉砕装置内で、35~90℃の温度で粉砕するステップを含む、プロセスに関する。
【0064】
粒子径DN30は、例えば、透過型電子顕微鏡法(TEM)又は走査型電子顕微鏡法(SEM)、好ましくは、透過型電子顕微鏡法(TEM)で決定することができる。粒子径DN30が100nm以上である有機UV遮蔽剤は、100nm未満の粒子(個数評価)が30%未満である有機UV遮蔽剤と表現することもできることを理解すべきである。
【0065】
第1の態様の好ましい実施形態A1において、水性懸濁液(1)中の少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の、好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径DN10は、100nm以上、好ましくは0.1~0.4μm、より好ましくは0.1~0.2μmであり;及び/又は
好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径DN50は、120nm以上、好ましくは0.12~0.5μm、より好ましくは0.12~0.3μmであり;及び/又は
好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径DN90は、200nm以上、好ましくは0.2~1.0μm、より好ましくは0.2~0.5μmであり;及び/又は
レーザー回折により決定された粒子径Dv10は、0.1μmを超え、好ましくは0.1~0.4μmであり;及び/又は
レーザー回折により決定された粒子径Dv90は、2.2μm未満、好ましくは2.0μm未満、より好ましくは、1.5μm未満であり、
Dv10及びDv90は、Malvern PanalyticalからのMastersizer 2000を使用して測定されたものである。
【0066】
本発明の好ましい実施形態では、水性懸濁液(1)中の少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の、Malvern PanalyticalからのMastersizer 2000を用いたレーザー回折により決定された粒子径Dv10は、0.1μm超~0.4μm、好ましくは0.15~0.3μmであり;及び/又は
レーザー回折により決定された粒子径Dv50は、0.2μm~0.8μm、好ましくは0.4~0.6μmであり;及び/又は
レーザー回折により決定された粒子径Dv90は、0.5μm~3μm、好ましくは0.5~2.2μmである。
【0067】
本発明の好ましい実施形態では、100nm未満の粒子は10%未満(個数評価)である。好ましくは、個数評価は、透過型電子顕微鏡法で決定される。
【0068】
本発明の好ましい実施形態では、水性懸濁液(1)中の100nm未満の粒子の個数は、粉砕ステップ中に低減される。好ましくは、水性懸濁液(1)中の水性懸濁液(1)中の100nm未満の粒子の個数は、粉砕装置内の懸濁液(2)の温度を上昇させることにより低減される。「低減される」及び「温度を上昇させる」は、どちらも、DN30が99nm以下である水性懸濁液(1)が生成する粉砕ステップとの比較に関連する用語である。
【0069】
本発明の好ましい実施形態では、粉砕ステップにおける懸濁液(2)の温度は、40~80℃の範囲、好ましくは40~70℃の範囲、特に45~65℃の範囲にある。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、粉砕ステップは、1~40時間、より好ましくは2~17時間又は5~15時間又は6~12時間実施される。
【0071】
本発明の好ましい実施形態では、疎水性添加剤は、好ましくは、6~18個の炭素原子を有するアルコール;C6~C24カルボン酸;C6~C24カルボン酸とC3~C24アルコールとのエステル;ヒドロキシカルボン酸とC6~C24アルコールとのエステル;カルボン酸と多価アルコールとのエステル;C6~C18カルボン酸をベースとする液体モノ-/ジ-/トリ-グリセリド混合物;C6~C24アルコールと芳香族カルボン酸とのエステル又はオキソカルボン酸とのエステル;トリカルボン酸エステル;C2~C12ジカルボン酸と1~22個の炭素原子を有するアルコールとのエステル又は2~10個の炭素原子及び2~6個のヒドロキシ基を有するポリオールとのエステル;置換シクロヘキサン;C6~C22アルコール炭酸エステル;合計12~36個の炭素原子を有する対称又は非対称ジアルキルエーテル;エポキシ化されたカルボン酸エステルのポリオールによる開環生成物;シリコーン油;脂肪族又はナフテン系炭化水素;ジオールエステル;並びにこれらの混合物からなる群から選択され、特に、C6~C24アルコール、好ましくはC10~C17アルコールと、芳香族カルボン酸、好ましくは安息香酸とのエステル、又はヒドロキシカルボン酸とのエステル、好ましくは乳酸エステル、又はオキソカルボン酸とのエステル、好ましくはレブリン酸エステル;ジカルボン酸エステル、好ましくはアジピン酸ジ-n-ブチル;トリカルボン酸エステル、好ましくはクエン酸トリブチル;及びこれらの混合物からなる群から選択される化粧用油である。
【0072】
例示的な好ましいC3~C24アルコールは、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-アミルアルコール、n-ヘキサノール、3-メチル-3-ペンタノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、2-エチルヘキサノール、デシルアルコール(カプリンアルコール)、n-ウンデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール及びベヘニルアルコールである。
【0073】
例示的な好ましいC6~C24アルコールは、n-ヘキサノール、3-メチル-3-ペンタノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、2-エチルヘキサノール、デシルアルコール(カプリンアルコール)、n-ウンデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール及びベヘニルアルコールである。
【0074】
芳香族カルボン酸、特に安息香酸とC6~C24アルコールとのエステルが好ましく、C10~C20アルコールとのエステルがより好ましく、C12~C15アルコールとのエステルが更に好ましい。安息香酸と直鎖及び/又は分岐C6~C22アルコールとの好適なエステルとして、Finsolv(登録商標)TNを挙げることができる。
【0075】
カルボン酸と3~24個の炭素原子を有するアルコールとのモノエステルが好ましい。この物質の群には、6~24個の炭素原子を有するカルボン酸、例えば、カプロン酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、カプリン酸、ラウリン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、リノール酸、リノレン酸、エラエオステアリン酸(elaeostearic acid)、アラキジン酸、ガドレイン酸、ベヘン酸及びエルカ酸並びにこれらの工業用(technical-grade)混合物(例えば、天然油脂の加圧による分離において、Roelenのオキソ合成により得られるアルデヒドの還元において、又は不飽和脂肪酸の二量化において得られるもの)と、アルコール、例えば、イソプロピルアルコール、カプロンアルコール、カプリルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、カプリンアルコール、ラウリルアルコール、イソトリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、パルモレイル(palmoleyl)アルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、ペトロセリニルアルコール、リノイル(linoyl)アルコール、リノレニルアルコール、エラエオステアリル(elaeostearyl)アルコール、アラキジルアルコール、ガドレイルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコール及びブラシジルアルコール及びこれらの工業用混合物(例えば、油脂を原料とする工業用メチルエステルの高圧水素化において、又はRoelenのオキソ合成から得られるアルデヒドの高圧水素化において得られるもの、及び不飽和脂肪アルコールの二量化におけるモノマー画分としてのもの)とのエステル化生成物が含まれる。特に重要なのは、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸C16~C18アルキルエステル、ステアリン酸2-エチルヘキシルエステル、オレイン酸セチル、グリセロールトリカプリル酸エステル、ヤシ油脂肪アルコールカプリン酸/カプリル酸エステル及びステアリン酸n-ブチルである。
【0076】
ヒドロキシカルボン酸とC6~C24アルコールとの好適なエステルとしては、リンゴ酸ジオクチルを挙げることができる。
【0077】
好適な多価アルコールとしては、プロピレングリコール、ダイマージオール又はトリマートリオールを挙げることができる。
【0078】
好ましくは、トリグリセリドは、C6~C10カルボン酸をベースとするものである。
【0079】
C2~C10ジカルボン酸、より好ましくはC4~C8ジカルボン酸と、1~16個の炭素原子、より好ましくは2~8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルコールとのエステルが好ましい。好ましいジカルボン酸エステルは、アジピン酸ジ-n-ブチル、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)、コハク酸ジ(2-エチルヘキシル)及び酢酸ジイソトリデシルである。
【0080】
全体で12~24個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の対称又は非対称ジアルキルエーテル、例えば、ジ-n-オクチルエーテル、ジ-n-デシルエーテル、ジ-n-ノニルエーテル、ジ-n-ウンデシルエーテル、ジ-n-ドデシルエーテル、n-ヘキシルn-オクチルエーテル、n-オクチルn-デシルエーテル、n-デシルn-ウンデシルエーテル、n-ウンデシルn-ドデシルエーテル、n-ヘキシルn-ウンデシルエーテル、ジ-tert-ブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ-3-エチルデシルエーテル、tert-ブチルn-オクチルエーテル、イソペンチルn-オクチルエーテル及び2-メチルペンチル-n-オクチルエーテルが好ましい。
【0081】
C6~C24アルコールとヒドロキシカルボン酸との好ましいエステルは、乳酸ラウリルであり、C6~C24アルコールとオキソカルボン酸との好ましいエステルは、レブリン酸ラウリルである。
【0082】
好ましいジオールエステルは、ジオレイン酸エチレングリコール、ジイソトリデカン酸エチレングリコール、ジ(2-エチルヘキサン酸)プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、ジペラルゴン酸プロピレングリコール、ジイソステアリン酸ブタンジオール及びジカプリル酸ネオペンチルグリコールである。
【0083】
好ましいポリオールは、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール及びソルビトールである。
【0084】
本発明の好ましい実施形態では、疎水性添加剤は、安息香酸アルキルエステル、例えば、安息香酸アルキル(C12~C15)(例えば、Cetiol ABとして市販されているもの)、ジブチルアジパット(adipat)(例えば、Cetiol B)及びこれらの混合物から選択される。
【0085】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、不溶性有機UV遮蔽剤である。これに関連して、不溶性UV遮蔽剤という用語は、25℃の水及び化粧用油に溶解しないUV遮蔽剤を指すと理解すべきである。これに対し、水溶性UV遮蔽剤は、水中溶解度が少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも5重量%であり、油溶性UV遮蔽剤は、安息香酸アルキル(C12~C15)、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジイソプロピル、安息香酸フェネチル、炭酸ジカプリリル等の一般的な化粧用油への溶解度が少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも7重量%である。
【0086】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、シュウ酸アニリドUV遮蔽剤、トリアジンUV遮蔽剤、ピペラジンUV遮蔽剤、トリアゾールUV遮蔽剤、ビニル基含有アミドUV遮蔽剤、ケイ皮酸アミドUV遮蔽剤、スルホン化ベンズイミダゾール及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0087】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、式(1):
【化13】
(式中、R
1及びR
2は、独立に、C1~C18アルキル又はC1~C18アルコキシである)を有するシュウ酸アニリドUV遮蔽剤;式(2):
【化14】
(式中、R
3、R
4及びR
5は、独立に、H;OH;C1~C18アルコキシ;NH2;NH-R6又はN(R6)2(R6は、C1~C18アルキルである);OR6(R6は、上記と同義である);フェニル;フェノキシ;アニリノ;ピロロ(このフェニル、フェノキシ、アニリノ又はピロロ部分は、それぞれ、OH、カルボキシ、CO-NH2、C1~C18アルキル若しくは-アルコキシ、C1~C18カルボキシアルキル、C5~C8シクロアルキル、フェニル、メチリデンカンファー基、-(CH=CH)mC(=O)-OR6基(mは、0又は1であり、R6は、上記と同義である)又は
【化15】
の基若しくは対応するアルカリ金属塩、アンモニウム塩、モノ-、ジ-若しくはトリ-C1~C4アルキルアンモニウム塩、モノ-、ジ-若しくはトリ-C2~C4アルカノールアンモニウム塩若しくはそのC1~C18アルキルエステルから選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されている)である)を有するトリアジンUV遮蔽剤;フェニレンビス-ジフェニルトリアジン;ピペラジンUV遮蔽剤;式(31)、(32)又は(33):
【化16】
(式中、T
1は、C1~C18アルキル又は水素であり、T
2は、フェニルで任意選択的に置換されたC
1~C
18-アルキルである)を有するトリアゾールUV遮蔽剤;式(4):
R
9-(Y)
m-CO-C(R
10)=C(R
11)-N(R
12)(R
13) (4)
(式中、R
9は、OH、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ又はCO-OR6(R6は、上記と同義である)から選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されたC1~C18アルキル又はフェニルであり;R
10、R
11、R
12及びR
13は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立に、C1~C18アルキル又は水素であり;Yは、N又はOであり;mは、上記と同義である)を有するビニル基含有アミドUV遮蔽剤;式(5):
【化17】
(式中、R
14は、ヒドロキシ又はC1~C4アルコキシであり;R
15は、水素又はC1~C4アルキルであり;R
16は、-(CONH)m-フェニル(mは、上記と同義であり、フェニル基は、OH、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ又はCO-OR6(R6は、上記と同義である)から選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されている)である)を有するケイ皮酸アミドUV遮蔽剤;式(6):
【化18】
(式中、Mは、水素又はアルカリ金属、アルカリ土類金属若しくは亜鉛である)を有するスルホン化ベンズイミダゾールUV遮蔽剤;及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0088】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、式(1):
【化19】
(式中、R
1及びR
2は、独立に、C1~C18アルキル又はC1~C18アルコキシである)を有するシュウ酸アニリドUV遮蔽剤;式(2):
【化20】
(式中、R
3、R
4及びR
5は、独立に、H;OH;C1~C18アルコキシ;NH2;NH-R6又はN(R6)2(R6は、C1~C18アルキルである);OR6(R6は、上記と同義である);フェニル;フェノキシ;アニリノ;ピロロ(このフェニル、フェノキシ、アニリノ又はピロロ部分は、それぞれ、OH、カルボキシ、CO-NH2、C1~C18アルキル若しくは-アルコキシ、C1~C18カルボキシアルキル、C5~C8シクロアルキル、フェニル、メチリデンカンファー基、-(CH=CH)mC(=O)-OR6基(mは、0又は1であり、R6は、上記と同義である)又は
【化21】
の基若しくはそのC1~C18アルキルエステル;フェニレンビス-ジフェニルトリアジン;ピペラジンUV遮蔽剤;式(31)、(32)又は(33):
【化22】
(式中、T
1は、C1~C18アルキル又は水素であり、T
2は、フェニルで任意選択的に置換されたC
1~C
18-アルキルである)を有するトリアゾールUV遮蔽剤;式(4):
R
9-(Y)
m-CO-C(R
10)=C(R
11)-N(R
12)(R
13) (4)
(式中、R
9は、OH、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ又はCO-OR6(R6は、上記と同義である)から選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されたC1~C18アルキル又はフェニルであり;R
10、R
11、R
12及びR
13は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立に、C1~C18アルキル又は水素であり;Yは、N又はOであり;mは、上記と同義である)を有するビニル基含有アミドUV遮蔽剤;式(5):
【化23】
(式中、R
14は、ヒドロキシ又はC1~C4アルコキシであり;R
15は、水素又はC1~C4アルキルであり;R
16は、-(CONH)m-フェニル(mは、上記と同義であり、フェニル基は、OH、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ又はCO-OR6(R6は、上記と同義である)から選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されている)である)を有するケイ皮酸アミドUV遮蔽剤;式(6):
【化24】
(式中、Mは水素である);及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0089】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、トリス-ビフェニルトリアジン、1,1’-(1,4-ピペラジンジイル)ビス[1-[2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]フェニル]-メタノン、フェニレンビス-ジフェニルトリアジン、2,2’-メチレンビス[6-(2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール]及びこれらの混合物からなる群から選択され、特に、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、トリス-ビフェニルトリアジン及び2,2’-メチレンビス[6-(2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール]からなる群から選択される。
【0090】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、2,2’-メチレンビス[6-(2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール]である。
【0091】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、広波長域遮蔽剤である。
【0092】
本発明の好ましい実施形態では、疎水性添加剤は、水性懸濁液(1)中に、水性懸濁液(1)の総量を基準として、0.01~10.0重量%、好ましくは0.01~5.0重量%、より好ましくは0.01~3.0重量%、特に、0.05~1.0重量%の量で含まれる。
【0093】
本発明の他の実施形態では、疎水性添加剤は、水性懸濁液(1)中に、水性懸濁液(1)の総量を基準として、0.001~10.0重量%、好ましくは0.05~5.0重量%、より好ましくは0.1~3.0重量%、特に0.2~1.0重量%の量で含まれる。
【0094】
本発明の好ましい実施形態では,水性懸濁液(1)は、アルキルポリグルコシドを含まない。
【0095】
本発明の好ましい実施形態では、水性懸濁液(1)は、更に分散剤を含む。
【0096】
好適な分散剤は、ポリグリセロールアルキルエステル、好ましくは、ポリグリセロールモノアルキルエステル及びアルキルポリグルコシド、好ましくは式CnH2n+1O(C6H10O5)xH(式中、nは、8~16の範囲の整数であり、xは、グルコシド部分(C6H10O)の平均重合度であり、1.4~1.6の範囲にある)を有するもの又はそのエステルである。更に好適な分散剤は、国際公開第2009068469号パンフレットに開示されている。
【0097】
本発明によれば、ポリグリセロールモノアルキルエステルのグリセロールの平均重合度は5以上であることが好ましい。
【0098】
好ましい一実施形態では、少なくとも1種のポリグリセロールモノアルキルエステルは、カプリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、ミリスチン酸デカグリセリル、オレイン酸デカグリセリル、ステアリン酸デカグリセリル、イソステアリン酸デカグリセリル、カプリン酸ヘキサグリセリル、ラウリン酸ヘキサグリセリル、ミリスチン酸ヘキサグリセリル、オレイン酸ヘキサグリセリル、ステアリン酸ヘキサグリセリル、イソステアリン酸ヘキサグリセリル、カプリン酸ペンタグリセリル、ラウリン酸ペンタグリセリル、ミリスチン酸ペンタグリセリル、オレイン酸ペンタグリセリル、ステアリン酸ペンタグリセリル、イソステアリン酸ペンタグリセリル及びこれらの組合せからなる群から選択される。特定の好ましい実施形態では、少なくとも1種のポリグリセロールモノアルキルエステルは、モノラウリン酸デカグリセリル(INCI:ラウリン酸ポリグリセリル-10(polyglyceryl-10 laurate))である。
【0099】
HLB(親水性-親油性バランス)が14.5以上であるポリグリセロールモノアルキルエステルが好ましく、HLBが15以上であることがより好ましい。HLP値は、以下の式:
HLB=20・Mh/M
(式中、Mhは、分子の親水性部分の分子量であり、Mは、分子全体の分子量である)によって求められる。
【0100】
ポリグリセロールモノアルキルエステルのHLBが14.5未満である場合、微粉砕メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールを水相成分に分散させるのにより長い時間を要する可能性がある。平均重合度が5以上であり、HLBが14.5以上であるポリグリセロールモノアルキルエステルの例としては、カプリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、ミリスチン酸デカグリセリル、オレイン酸デカグリセリル、ステアリン酸デカグリセリル、イソステアリン酸デカグリセリル、ラウリン酸ヘキサグリセリル、ラウリン酸ペンタグリセリル、ミリスチン酸ペンタグリセリル、ステアリン酸ペンタグリセリル及びオレイン酸ペンタグリセリルを挙げることができ、HLBが15以上のポリグリセロールモノアルキルエステルとしては、カプリン酸デカグリセリル及びモノラウリン酸デカグリセリルを挙げることができる。
【0101】
特に好ましいのは、モノラウリン酸ポリグリセリル、特に、モノラウリン酸デカグリセリル及びデシルグルコシドである。
【0102】
好ましくは、アルキルポリグルコシドは、式CnH2n+1O(C6H10O5)xHの化合物のC1~C12エステル、即ち、C1~C12カルボン酸をグルコシド部分(C6H10O)の1つ又は複数の遊離PH基と反応させることにより形成されるエステルから構成される。これに関連し、好ましくは、エステルは、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、スルホコハク酸、クエン酸又は酒石酸を、グルコシド部分(C6H10O)の1つ又は複数の遊離OH基と反応させることにより形成されるものである。
【0103】
好ましくは、水性懸濁液(1)は、分散剤を、水性懸濁液(1)の総重量を基準として、1~15重量%、より好ましくは5~40重量%、特に6~20重量%の量で含む。
【0104】
分散剤対少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の重量比は、好ましくは0.05~0.5、より好ましくは0.08~0.4、特に0.1~0.3である。
【0105】
この調製物に、増粘剤、消泡剤、pH調整剤、防腐剤等の他の医薬品添加物(excipient)を添加することができる。
【0106】
微粉砕された少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の調製に使用することができる更なる医薬品添加物としては、例えば、レオロジー調整剤、溶媒、pH調整剤又は緩衝剤、消泡剤及び防腐剤がある。
【0107】
レオロジー調整剤は、UV防御組成物に任意選択的に添加され、このような組成物を経時的に安定化させるのに役立つ。水性増粘剤の代表的な例は、ガム類やアルギン酸塩等の天然成分及びその誘導体又は化工デンプン、変性セルロース、ポリアクリレート等の合成/半合成成分である。好ましいレオロジー調整剤はキサンタンガムである。
【0108】
粉砕プロセスに適した溶媒は、水、飽和食塩水、(ポリ)エチレングリコール、グリセリン又は化粧的に許容される油である。他の好適な溶媒は、IPCOM N°000031257D の「脂肪酸のエステル(esters of fatty acids)」、「グリセリルエステル及び誘導体を含む天然及び合成トリグリセリド(natural and synthetic triglycerides including glyceryl esters and derivatives)」、「真珠光沢ワックス(perlescent waxes)」、「炭化水素油(hydrocarbon oils)」及び「シリコーン又はシロキサン(silicones or siloxanes)」の章に開示されている。好ましい溶媒は、水、ブチレングリコール及びカプリリルグリコールである。
【0109】
好適なpH調整剤は、NaOH、TEA及びクエン酸である。
【0110】
好適な消泡剤は、シメチコンである。
【0111】
好適な防腐剤は、COSING Annex Vである。
【0112】
本発明の好ましい実施形態では、粉砕ステップは、ボールミル、振動ミル、湿式ローターミル、媒体撹拌ミル又はコロイドミル、好ましくは、湿式ローターミル又は媒体撹拌ミル、特に、直径が0.1~10mm、好ましくは0.15~5mm、特に0.2~3mmである粉砕ビーズ、好ましくは、ガラスビーズ、酸化ジルコニウム又は混合セラミック粉砕ビーズを含む媒体撹拌ミルで実施される。
【0113】
好ましくは、粉砕ビーズは、イットリウム安定化酸化ジルコニウムであり、より好ましくは、高密度且つ真球度の高いものである。
【0114】
本発明による典型的なイットリウム安定化酸化ジルコニウム粉砕ビーズは、以下の特性を有する:
化学組成:95% ZrO2、5% Y2O3
比重(Specific Density):6.1g/cm3
曲げ強さ:1200MPa
硬度(Hv10):1250
弾性率:210GPa
破壊靱性:6.0Mpam
【0115】
この種の粉砕ビーズは、例えば、日本国のTosho Ceramicsから市販されている。
【0116】
本発明によるプロセスは微粉砕プロセスと称することもできる。
【0117】
通常、微粉砕プロセスは、合成及び任意選択的なそれぞれのワークアッププロセスから得られる固体のUV遮蔽剤原料から開始される。典型的なプロセスステップには、例えば、不純物を除去するため又は特定の結晶構造を得るための結晶化又は再結晶ステップ、濾過等の固/液分離ステップ、UV遮蔽剤粒子の洗浄等の精製ステップ、残留溶媒を除去するための乾燥ステップが含まれる。流動挙動の改善、材料の貯蔵寿命の延長又は取扱い時の発塵の低減を目的とする凝集又は再凝集等の処理ステップも考慮に入れることができる。UV遮蔽材料は、結晶の塊若しくは凝集体を砕くため、又は結晶をより細かく砕く目的でも、予備粉砕に付すことができる。微粉砕に利用することができるUV遮蔽材料としては、粉末又は粒状物が好ましいであろうが、結晶の凝集体等の他の固体形態を処理することも可能である。
【0118】
次いでUV遮蔽材料は、湿式粉砕に適した液体スラリーに配合される。このスラリーは、溶媒、好ましくは水と、この溶媒中で少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の固体を濡らすことができる化合物とを含む。このスラリーは、液体配合物の調製、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の混合及び更なる処理に付すための均質な分散体の形成が可能な設備で調製される。湿式粉砕の場合、スラリーは、結晶表面を安定化させることができる、界面活性剤、乳化剤及び/又はポリマー等の分散剤を含む。この分散剤は、スラリーに同時に配合してもよいし、又はプロセスの途中でスラリーに添加してもよい。スラリーは、有機溶媒、防腐剤、pH調整剤又は緩衝剤、消泡剤等の医薬品添加物を更に含むことができる。
【0119】
本発明を実施するためには、分散体が粉砕装置を通過する際に疎水性添加剤を存在させることが必要である。
【0120】
少なくとも1種の有機UV遮蔽剤分散体の微粉砕は、1を超える処理ステップで実施することができる。少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の性状及び標的とする分散体の粒子径によっては、選択された設備で、スラリーが特定の性状を有することが必要となる場合がある。例えば、撹拌ボールミルを運転するためには、分散体は、粉砕機のブロッキングを防ぐために、最大粒子径を超えてはならない。こうした理由から、コロイドミル等の予備粉砕装置を使用してもよく、又は処理ラインに沿って1台を超える撹拌ボールミルを使用してもよい。当業者は、経済的且つ効率的な製造が達成できるように設備及びプロセスを設計することができるであろう。
【0121】
本発明の好ましい実施形態では、懸濁液(2)中の少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の、レーザー回折により決定された粒子径Dv90は、0.01~300μmの範囲、好ましくは、0.1~250μmの範囲にある。
【0122】
原則として、本発明の実施には、湿式粉砕に使用されるあらゆる装置を使用することができる。好ましくは、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を含む本発明の水性懸濁液(1)の粒子径は、製造時に、非ナノという属性が間違いなく満たされると同時に、生成物の性能も高くなるように調整される。撹拌ボールミル内で発生する剪断力/応力は、粒子をナノサイズに砕くことができる。一方、本発明は、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤粒子を、例えば、湿式ローターミル内で衝撃力を受けた際に発生し得るナノ粒子の付着を抑制するために使用することもできる。
【0123】
最も好ましくは、本発明は、粉砕ビーズを含む撹拌ボールミル等の装置で実施される。
【0124】
本発明の好ましい実施形態においては、疎水性添加剤の作用を活性化するための誘発機構が必要である。具体的には、本発明の効果は、生成物が高温である場合にのみ得られるため、粉砕装置内の生成物の温度を調整することによってオンオフ機構が有効に切り替わる。
【0125】
特定の理論に束縛されるものではないが、疎水性添加剤と温度との協同作用により、UV吸収剤粒子のオストヴァルト成長が促進されると推測される。それにより、ナノ粒子が溶解し、粉砕機内での粉砕作用を打ち消す結晶成長が誘発される。その後、粉砕機から取り出した分散体を冷却することにより、オストヴァルト成長を有効に抑制することができる。当業者であれば、標的とする非ナノ粒子径分布を達成するためのプロセスパラメータの組合せを見出すであろう。
【0126】
上に述べたように、更に本発明は、第2の態様において、それぞれ水性懸濁液(1)の総量を基準として、
a)粒子径DN30が100nm以上である少なくとも1種の有機UV遮蔽剤を10~65重量%と;
b)6~18個の炭素原子を有するアルコール;C6~C24カルボン酸;C6~C24カルボン酸とC3~C24アルコールとのエステル;ヒドロキシカルボン酸とC6~C24アルコールとのエステル;カルボン酸と多価アルコールとのエステル;C6~C18カルボン酸をベースとする液体モノ-/ジ-/トリ-グリセリド混合物;C6~C24アルコールと芳香族カルボン酸とのエステル又はオキソカルボン酸とのエステル;トリカルボン酸エステル;C2~C12ジカルボン酸と1~22個の炭素原子を有するアルコールとのエステル又は2~10個の炭素原子及び2~6個のヒドロキシ基を有するポリオールとのエステル;置換シクロヘキサン;C6~C22アルコール炭酸エステル;合計12~36個の炭素原子を有する対称又は非対称ジアルキルエーテル;エポキシ化されたカルボン酸エステルのポリオールによる開環生成物;シリコーン油;脂肪族又はナフテン系炭化水素;ジオールエステル;並びにこれらの混合物からなる群から選択される疎水性添加剤を0.01~10.0重量%と;
c)水と;
を含む、水性懸濁液(1)に関する。
【0127】
本発明の好ましい実施形態では、疎水性添加剤は、C6~C24アルコール、好ましくはC10~C17アルコールと、芳香族カルボン酸、好ましくは安息香酸とのエステル、又はヒドロキシカルボン酸とのエステル、好ましくは乳酸エステル、又はオキソカルボン酸とのエステル、好ましくはレブリン酸エステル;ジカルボン酸エステル、好ましくはアジピン酸ジ-n-ブチル;トリカルボン酸エステル、好ましくはクエン酸トリブチル;及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0128】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、不溶性有機UV遮蔽剤、好ましくは、シュウ酸アニリドUV遮蔽剤、トリアジンUV遮蔽剤、ピペラジンUV遮蔽剤、トリアゾールUV遮蔽剤、ビニル基含有アミドUV遮蔽剤、ケイ皮酸アミドUV遮蔽剤、スルホン化ベンズイミダゾール及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、式(1):
【化25】
(式中、R
1及びR
2は、独立に、C1~C18アルキル又はC1~C18アルコキシである)を有するシュウ酸アニリドUV遮蔽剤;式(2):
【化26】
(式中、R
3、R
4及びR
5は、独立に、H;OH;C1~C18アルコキシ;NH2;NH-R6又はN(R6)2(R6は、C1~C18アルキルである);OR6(R6は、上記と同義である);フェニル;フェノキシ;アニリノ;ピロロ(このフェニル、フェノキシ、アニリノ又はピロロ部分は、それぞれ、OH、カルボキシ、CO-NH2、C1~C18アルキル若しくは-アルコキシ、C1~C18カルボキシアルキル、C5~C8シクロアルキル、フェニル、メチリデンカンファー基、-(CH=CH)mC(=O)-OR6基(mは、0又は1であり、R6は、上記と同義である)又は
【化27】
の基若しくは対応するアルカリ金属塩、アンモニウム塩、モノ-、ジ-若しくはトリ-C1~C4アルキルアンモニウム塩、モノ-、ジ-若しくはトリ-C2~C4アルカノールアンモニウム塩若しくはそのC1~C18アルキルエステルから選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されている)である)を有するトリアジンUV遮蔽剤;フェニレンビス-ジフェニルトリアジン;ピペラジンUV遮蔽剤;式(31)、(32)又は(33):
【化28】
(式中、T
1は、C1~C18アルキル又は水素であり、T
2は、フェニルで任意選択的に置換されたC
1~C
18-アルキルである)を有するトリアゾールUV遮蔽剤;式(4):
R
9-(Y)
m-CO-C(R
10)=C(R
11)-N(R
12)(R
13) (4)
(式中、R
9は、OH、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ又はCO-OR6(R6は、上記と同義である)から選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されたC1~C18アルキル又はフェニルであり;R
10、R
11、R
12及びR
13は、同一であるか又は異なり、それぞれ独立に、C1~C18アルキル又は水素であり;Yは、N又はOであり;mは、上記と同義である)を有するビニル基含有アミドUV遮蔽剤;式(5):
【化29】
(式中、R
14は、ヒドロキシ又はC1~C4アルコキシであり;R
15は、水素又はC1~C4アルキルであり;R
16は、-(CONH)m-フェニル(mは、上記と同義であり、フェニル基は、OH、C1~C18アルキル、C1~C18アルコキシ又はCO-OR6(R6は、上記と同義である)から選択される1、2又は3個の置換基で任意選択的に置換されている)である)を有するケイ皮酸アミドUV遮蔽剤;式(6):
【化30】
(式中、Mは、水素又はアルカリ金属,アルカリ土類金属又は亜鉛である)を有するスルホン化ベンズイミダゾールUV遮蔽剤;及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、トリス-ビフェニルトリアジン,1,1’-(1,4-ピペラジンジイル)ビス[1-[2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]フェニル]-メタノン、フェニレンビス-ジフェニルトリアジン及び2,2’-メチレンビス[6-(2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール]からなる群から選択され、特に、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、トリス-ビフェニルトリアジン及び2,2’-メチレンビス[6-(2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール]からなる群から選択される。
【0129】
本発明の好ましい実施形態では、水性懸濁液(1)は、疎水性添加剤を、水性懸濁液(1)の総重量を基準として、0.01~8.0重量%、より好ましくは、0.01~5.0重量%、より好ましくは、0.01~3.0重量%、特に、0.05~1.0重量%の量で含む。
【0130】
本発明の他の好ましい実施形態において、疎水性添加剤は、水性懸濁液(1)中に、水性懸濁液(1)の総量を基準として、0.05~5.0重量%、好ましくは、0.1~3.0重量%、特に0.2~1.0重量%の量で含まれる。
【0131】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の、好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径DN10は、100nm以上、好ましくは0.1~0.4μm、より好ましくは0.1~0.2μmであり;及び/又は
好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径DN50は、120nm以上、好ましくは0.12~0.5μm、より好ましくは0.12~0.3μmであり;及び/又は
好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径DN90は、200nm以上、好ましくは0.2~1.0μm、より好ましくは0.2~0.5μmであり;及び/又は
レーザー回折により決定された粒子径Dv10は、0.1μmを超え、好ましくは0.1~0.4μmであり;及び/又は
レーザー回折により決定された粒子径Dv90は、2.2μm未満、好ましくは2.0μm未満、より好ましくは、1.5μm未満であり、
Dv10及びDv90は、Malvern PanalyticalからのMastersizer 2000を使用して測定されたものである。
【0132】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤の、好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径DN10は、100nm以上、好ましくは0.1~0.4μm、より好ましくは0.1~0.2μmであり;及び/又は
好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径DN50は、150nm以上、好ましくは0.15~0.5μm、より好ましくは、0.15~0.3μmであり;及び/又は
好ましくは透過型電子顕微鏡法により決定された粒子径DN90は、200nm以上、好ましくは0.2~1.0μm、より好ましくは、0.2~0.5μmであり;及び/又は
レーザー回折により決定された粒子径Dv10は、0.1μmを超え;及び/又は
レーザー回折により決定された粒子径Dv90は、2.2μm未満である。
【0133】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤は、レーザー回折により決定された比表面積が、8~32m2/g、好ましくは、10~30m2/g、特に13~28m2/gである。
【0134】
疎水性添加剤、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤、分散剤、更なる医薬品添加物等の更に好ましい実施形態及び残りの構成成分の量については既に上に説明した通りであり、水性懸濁液(1)にも同様に適用される。
【0135】
上に述べたように、本発明は、第3の実施形態において、日焼け止め又はデイリーケア組成物に使用するための、本明細書に記載した水性懸濁液(1)に関する。
【0136】
疎水性添加剤、少なくとも1種の有機UV遮蔽剤、分散剤、更なる医薬品添加物等の水性懸濁液(1)及び構成成分の量の好ましい実施形態は既に上に述べた通りであり、その使用に関しても同様に適用されることを理解すべきである。
【0137】
本明細書に開示する日焼け止め又はデイリーケア組成物は、あらゆるタイプの皮膚への投与、特に敏感な皮膚への投与に適している。
【実施例】
【0138】
比較例A
2,2’-メチレンビス[6-(2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノール](メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール及びMBBTとしても知られる)分散体の微粉砕
Plantacare(登録商標)2000 UP(アルキルポリグルコシドがデシルグルコシドであるアルキルポリグルコシド溶液、活性物質50%、BASFから)600gを脱イオン水1400gに溶解した。この溶液に、Tinosorb MBBT(MBBT、BASFから)2000gを加え、均質化した。次いでこの分散体を、1.4Lの粉砕容器及びセラミックディスクを備えた撹拌ボールミル(BachofenからのDyno Mill Multilab)で26℃で粉砕した。粉砕ビーズとして2mmのガラスビーズを使用し、粉砕プロセス中は分散体をミル内で循環させた。90分後にプロセスを停止し、総粉砕エネルギーを0.93kWhとした。生成物を粉砕ビーズから分離した。
【0139】
体積基準の粒子径分布をレーザー回折(Malvern PanalyticalからのMastersizer 2000)により測定した。積分球(Ulbricht Kugel)を備えたLambda 25分光計を用いて比吸光度E(1,1)を測定した。E(1,1)は、分散体のUV遮蔽剤の性能と関連していた。比表面積(SSA)をレーザー回折により決定した(Malvern PanalyticalからのMastersizer 2000)。
【0140】
結果:
粒子径(体積基準):Dv10-Dv50-Dv90(nm)=85-205-1583;SSA=33.9m2/g
E(1,1)=329
【0141】
以下の実施例において、UV吸収剤1は、実施例1のMBBTを指し、UV吸収剤2は、1,3,5-トリアジン,2,4,6-トリス[1,1’-ビフェニル]-4-イル-を指し、UV吸収剤3は、ビス-(ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルベンゾイル)ピペラジンを指し、UV吸収剤4は、3,3’-(1,4-フェニレン)ビス(5,6-ジフェニル-1,2,4-トリアジン)を指す。
【0142】
比較例B1~B10
UV吸収剤分散体の湿式粉砕
様々な配合及び粉砕設備を用いてUV吸収剤を水中で微粉砕した。粉砕プロセス中に2つの試料a)及びb)を採取することにより、微粉砕の進行を監視した。レーザー回折により体積基準の粒子径分布を得た。結果を表1にまとめる。
【0143】
【0144】
【0145】
UV吸収剤分散体の微粉砕は、様々な設備及び配合で機能する。微粉砕の進行は、PSDの結果(とりわけDv50、Dv90)が低下し、SSAが増大していることから明らかである。レーザー回折のナノ粒子に対する感度に限界があるため、Dv10の値は僅かに低下しただけである。
【0146】
比較例C1
UV吸収剤1を50%及びアルキルポリグルコシドを7.5%含む微粉砕された分散体を、レーザー回折及びTEMを用いて分析した。結果を表2にまとめる。粉砕プロセスは、撹拌媒体ミル(LMZ)でY-ZrO2ビーズを使用して実施した。
【0147】
【0148】
TEM分析から個数基準分布が得られる。これは、2011/696/EUに準拠するナノ材料の基準を適用するのに適している。
【0149】
この結果は、材料C1は、レーザー光回折から得られたDv10が約100nmであり、Dv90が2μmを十分に超えているにも関わらず、ナノ領域の境界にある/ナノ領域に近接していることを示している。表1と比較すると、実施例B1~B10の材料はほとんど又は全てがナノ材料であることが示唆される。
【0150】
比較例C2~C4:油の添加
材料C1を出発物質とした。
【0151】
実施例C2~C4においては、油を添加し、粉砕プロセスを継続した。実験は全て2mmのガラスビーズを含むビーカーミル(beaker mill)を使用した。粉砕プロセス中、生成物の温度を制御した。指定された粉砕時間(例えば、4時間)で試料を採取し、PSDを測定した。
【0152】
【0153】
少量のヒマワリ油を添加しても、微粉砕の進行には大きく影響しない。PSDは、粉砕機内の生成物の温度に関わらず、粉砕時間と共に低下する。
【0154】
本発明による実施例C5~C10
材料C1を出発物質とした。
【0155】
実施例C5~C10においては油を添加し、粉砕プロセスを継続した。実験は全て2mmのガラスビーズを含むビーカーミルを使用した。粉砕プロセス中、生成物の温度を制御した。指定された粉砕時間(例えば、2時間)で試料を採取し、PSDを測定した。
【0156】
【0157】
実施例C2~C4とは異なり、短い粉砕時間内では、DV50及びDV90の低下がより小さい。このプロセスを継続すると、微粉砕プロセス中の粒子の成長に起因して、DV10及びDV50が上昇し始める。
【0158】
実施例C7で得られた最終材料を更に分析した。
【0159】
積分球を備えたLambda 25分光計を用いてE(1,1)を測定した。
【0160】
個数基準の粒子径分布及び粒子形態を得るためにTEM分析を実施した。結果を表5にまとめる。
【0161】
【0162】
TEMから、試料C7中の粒子が結晶であることが判明し、凝集体は検出されなかった。ナノ粒子はほとんど存在せず、これは、レーザー回折により得られたDv10値が大きく上昇したことと一致している。
【0163】
これは、本発明によるプロセスを用いることによって、100nm未満のナノ粒子の割合が低減されたことを示している。良好な性能を示す非ナノUV遮蔽剤分散体が入手可能となる。
【0164】
【0165】
セチオールBは52~54℃の高温でセチオールABと類似の効果を示す。
【0166】
本発明による実施例D1~D4
MBBTを50%、水及びラウリン酸ポリグリセリルを含むMBBT懸濁液に油を添加した。2mmのガラスビーズ(実施例D1、D2)及び0.6~0.8mmのY安定化ZrO2ビーズ(実施例D3、D4)を使用して懸濁液を微粉砕した。油を添加する前及び表に示す指定された時間が経過した後に粒子径を測定した。実施例D1においては、最初に試料を採取した後に懸濁液の温度を上昇させた。
【0167】
【0168】
油を含むラウリン酸ポリグリセリル溶液中で高温下にMBBTを粉砕した場合のPSDへの効果は実施例C7と類似していた。
【0169】
本発明による実施例D5~D6
UV吸収剤2を50%、モノラウリン酸デカグリセリル及び油を含む分散体を、0.6~0.8mmのY-ZrO2ビーズを用いて異なる条件下で微粉砕した。
【0170】
【0171】
添加された油を含むラウリン酸ポリグリセリル溶液中で高温下にTBPTを粉砕した場合のPSDへの効果は実施例C7と類似していた。
【0172】
貯蔵安定性
実施例C7で得られた生成物を40℃で5週間保管し、レーザー光回折により粒子径を測定した。
PSD(初期):DV10-DV50-DV90(nm):159-349-1280;SSA(m2/g):19.5
PSD(40℃で5週間後):DV10-DV50-DV90(nm):169-366-1250;SSA(m2/g):18.4
【国際調査報告】