(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-05
(54)【発明の名称】静電チャック及び半導体加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240829BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240829BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240829BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/205
H01L21/302 101R
C23C14/50 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024517094
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 CN2022118310
(87)【国際公開番号】W WO2023045788
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】202111105860.8
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510182294
【氏名又は名称】北京北方華創微電子装備有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING NAURA MICROELECTRONICS EQUIPMENT CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.8 Wenchang Avenue Beijing Economic-Technological Development Area, Beijing 100176, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】シー チュェンイー
(72)【発明者】
【氏名】イェ ファ
(72)【発明者】
【氏名】イー ビン
【テーマコード(参考)】
4K029
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
4K029AA06
4K029AA24
4K029BD01
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4K029JA06
5F004BB22
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5F131EA03
5F131EB12
5F131EB16
5F131EB82
5F131EB85
(57)【要約】
本発明は、静電チャック及び半導体加工装置を提供する。該静電チャックにおいて、ガス通路構造は、環状ガス通路、主ガス通路群及び副ガス通路群を含み、環状ガス通路は、チャック本体の上面のエッジの近くに位置し、その内側に熱交換領域を画定することに用いられ、主ガス通路群は中央吸気孔の周囲を周回しており、副ガス通路群は主ガス通路群の周囲を周回しており、主ガス通路群は、中央吸気孔と副ガス通路群にそれぞれ連通し、中央吸気孔から流出したバックブローガスを副ガス通路群に送る速度を向上させることができるように設けられ、副ガス通路群は、主ガス通路群と環状ガス通路にそれぞれ連通し、バックブローガスを熱交換領域の様々な位置に均一に分布させることができるように設けられる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体加工装置に適用され、チャック本体を含む静電チャックであって、
前記チャック本体の上面には、バンプ構造、中央吸気孔及びガス通路構造が設けられ、前記バンプ構造は、前記チャック本体の上面の非ガス通路領域内に位置し、ウエハを載置するための載置面を有し、前記載置面と前記チャック本体の上面との間に所定の間隔があり、
前記ガス通路構造は、環状ガス通路、主ガス通路群及び副ガス通路群を含み、前記環状ガス通路は、前記チャック本体の上面のエッジに位置し、その内側に熱交換領域を画定することに用いられ、前記主ガス通路群と副ガス通路群はいずれも前記熱交換領域内に分布し、前記主ガス通路群は前記中央吸気孔の周囲を周回しており、前記副ガス通路群は前記主ガス通路群の周囲を周回しており、
前記主ガス通路群は、前記中央吸気孔と前記副ガス通路群にそれぞれ連通し、前記中央吸気孔から流出したバックブローガスを前記副ガス通路群に送る速度を向上させることができるように設けられ、
前記副ガス通路群は、前記主ガス通路群と前記環状ガス通路にそれぞれ連通し、前記バックブローガスを前記熱交換領域の様々な位置に均一に分布させることができるように設けられることを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記チャック本体の上面の指定された領域の面積に対して、前記主ガス通路群の前記チャック本体の上面での正投影の面積の割合は50%以下であり、前記指定された領域の面積は、前記上面の中心を円心とし、直径が指定された直径である円の面積であることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記指定された直径は50mm以下であることを特徴とする請求項2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記主ガス通路群は前記中央吸気孔の周方向に均等に分布する複数の主ガス通路を含み、各前記主ガス通路は、いずれも前記中央吸気孔の径方向に設けられ、且つ、各前記主ガス通路の吸気端はいずれも前記中央吸気孔に連通し、各前記主ガス通路の排気端はいずれも前記副ガス通路群に連通することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記主ガス通路の幅は0.5mm以上3mm以下であり、前記主ガス通路の深さは0.1mm以上0.4mm以下であり、前記主ガス通路の数は9本以上20本以下であることを特徴とする請求項4に記載の静電チャック。
【請求項6】
前記副ガス通路群は1段のサブガス通路群を含み、前記サブガス通路群は複数の副ガス通路を含み、各前記主ガス通路の排気端はいずれも少なくとも1つの前記副ガス通路の吸気端に連通し、同一の前記主ガス通路に連通する複数の前記副ガス通路は、該主ガス通路の排気端から前記中央吸気孔から離れる異なる方向に延在するか、又は、
前記副ガス通路群は前記中央吸気孔から離れる方向に沿って順に周回している複数段のサブガス通路群を含み、各段の前記サブガス通路群はいずれも複数の副ガス通路を含み、各前記主ガス通路の排気端はいずれもそれに隣接する1段の前記サブガス通路群の少なくとも1つの前記副ガス通路の吸気端に連通し、同一の前記主ガス通路に連通する複数の前記副ガス通路は、該主ガス通路の排気端から前記中央吸気孔から離れる異なる方向に延在し、上流側段の各副ガス通路の排気端はいずれもそれに隣接する下流側段の少なくとも1つの副ガス通路の吸気端に連通し、且つ上流側段の同一の副ガス通路に連通する下流側段の複数の副ガス通路は、該上流側段の副ガス通路の排気端から前記中央吸気孔から離れる異なる方向に延在することを特徴とする請求項4に記載の静電チャック。
【請求項7】
前記副ガス通路の幅は0.5mm以上3mm以下であり、前記副ガス通路の深さは0.1mm以上0.4mm以下であり、前記副ガス通路の数は9本以上100本以下であることを特徴とする請求項6に記載の静電チャック。
【請求項8】
前記副ガス通路群は2段の前記サブガス通路群を含み、それぞれ第1段のガス通路群と第2段のガス通路群であり、前記第1段のガス通路群は複数の第1副ガス通路を含み、各前記主ガス通路の排気端はいずれも3本の前記第1副ガス通路の吸気端に連通し、同一の前記主ガス通路に連通する3本の前記第1副ガス通路のうち、中間の前記第1副ガス通路は、該主ガス通路と同軸であり、両側の2つの前記第1副ガス通路は、中間の前記第1副ガス通路に対して対称的に分布し、異なる前記主ガス通路に連通し、隣接する任意の2本の前記第1副ガス通路の排気端は合流して第1共通排気端を形成し、
前記第2段のガス通路群は複数の第2副ガス通路を含み、同一の前記主ガス通路に連通する3本の前記第1副ガス通路のうち、中間の前記第1副ガス通路の排気端は2本の前記第2副ガス通路の吸気端に連通し、各前記第1共通排気端はいずれも2本の前記第2副ガス通路の吸気端に連通し、且つ、前記第1副ガス通路の排気端に連通する任意の2本の隣接する前記第2副ガス通路と前記第1共通排気端に連通する前記第2副ガス通路の排気端は合流して第2共通排気端を形成し、前記第2共通排気端はいずれも前記環状ガス通路に連通することを特徴とする請求項6に記載の静電チャック。
【請求項9】
前記副ガス通路群は複数の移行ガス通路をさらに含み、各前記移行ガス通路の吸気端は各前記第2共通排気端に1対1で対応して連通し、各前記移行ガス通路の排気端はいずれも前記環状ガス通路に連通することを特徴とする請求項8に記載の静電チャック。
【請求項10】
前記環状ガス通路の環状中心線の直径は270mm以上290mm以下であり、前記環状ガス通路の径方向幅は0.5mm以上3mm以下であり、前記環状ガス通路の深さは0.1mm以上0.4mm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項11】
前記バンプ構造は、前記非ガス通路領域内に均等に分布する複数のバンプを含み、前記チャック本体の上面の面積に対して複数の前記バンプの前記チャック本体の上面での正投影の合計面積の割合は2%以上10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック。
【請求項12】
前記所定の間隔は2μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1又は11に記載の静電チャック。
【請求項13】
プロセスチャンバと、前記プロセスチャンバ内に設けられる静電チャックと、を含む半導体加工装置であって、前記静電チャックとして、請求項1~12のいずれか1項に記載の静電チャックを使用することを特徴とする半導体加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造の分野に関し、具体的には、静電チャック及び半導体加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電チャック(Electrostatic Chuck、略称:ESC)は、プロセス中のウエハの移動やずれを回避するために、静電吸着によってウエハを載置する。プロセスでは、ウエハへの静電チャックの熱伝達能力を向上させ、真空断熱を回避するために、静電チャックとウエハとの間の隙間に一定圧力のバックブローガスを注入する必要もあり、それによって静電チャックがウエハ温度を制御する能力を向上させることができ、また、静電チャックはウエハにRFバイアスを供給することもできる。
【0003】
静電チャックは通常、真空チャンバに配置され、物理蒸着(Physical Vapor Deposition、略称:PVD)装置を例として、ウエハがPVD装置の真空チャンバ内に搬送されて静電チャック上に配置されると、真空チャンバはバックグラウンド真空状態(バックグラウンド真空度は、通常、10-8Torr又は10-9Torrオーダーである)になる。このとき、ウエハと静電チャックは真空断熱状態にあり、静電チャックはウエハの温度制御を実現できず、両者間の隙間にバックブローガスを注入して一定のガス圧力(例えば、1~20Torr)に維持する必要があり、バックブローガスが静電チャックとウエハの間で熱伝達を行うことで、静電チャックの温度制御能力を実現することができる。
【0004】
静電チャックは、クーロン型及びジョンセン・ラーベック型(Johnsen-Rahbek effect、略称:J-R型)の2種類に分けられ、クーロン型静電チャックの動作原理は、電極とウエハの間に発生する静電引力を利用してウエハを吸着することであり、一方、J-R型静電チャックの動作原理は、静電チャックの上面とウエハの間に発生する静電引力を利用してウエハを吸着することである。熱伝達効率を向上させるために、通常、静電チャックの上面にガス通路が設けられ、バックブローガスがガス通路を介してウエハの様々な位置に拡散することに寄与し、しかしながら、上記クーロン型静電チャックは、電極がウエハに近いため、電極の上方の誘電体層の厚さが薄く、上記ガス通路を設けることができず、これに対して、J-R型静電チャックは電極がウエハから遠く、電極の上方の誘電体層が厚く、ガス通路を製造することができる。
【0005】
しかしながら、J-R型静電チャックの場合、従来のガス通路構造は、バックブローガス圧力の安定性及び均一性がプロセス要件に満たしてPVDプロセスを開始できるにはバックブローガスを長時間(100s以上)注入する必要があるが、PVDプロセスの時間は一般に20~100sの範囲にしかなく、その結果、装置の生産性が低く、工業生産に適用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術の技術的問題の少なくとも1つを解決するために、バックブローガス圧力が安定性及び均一性の要件を満たすことを確保したうえで、バックブローガスのガス注入時間を効果的に短縮させることができ、それによって装置の生産性を向上させることができる静電チャック及び半導体加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を実現するために、半導体加工装置に適用され、チャック本体を含み、前記チャック本体の上面には、バンプ構造、中央吸気孔及びガス通路構造が設けられ、前記バンプ構造は、前記チャック本体の上面の非ガス通路領域内に位置し、ウエハを載置することに用いられ、前記バンプ構造は、ウエハを載置するための載置面を有し、前記載置面と前記チャック本体の上面との間に所定の間隔があり、
前記ガス通路構造は、環状ガス通路、主ガス通路群及び副ガス通路群を含み、前記環状ガス通路は、前記チャック本体の上面のエッジに位置し、その内側に熱交換領域を画定することに用いられ、前記主ガス通路群と副ガス通路群はいずれも前記熱交換領域内に分布し、前記主ガス通路群は前記中央吸気孔の周囲を周回しており、前記副ガス通路群は前記主ガス通路群の周囲を周回しており、
前記主ガス通路群は、前記中央吸気孔と前記副ガス通路群にそれぞれ連通し、前記中央吸気孔から流出したバックブローガスを前記副ガス通路群に送る速度を向上させることができるように設けられ、
前記副ガス通路群は、前記主ガス通路群と前記環状ガス通路にそれぞれ連通し、前記バックブローガスを前記熱交換領域の様々な位置に均一に分布させることができるように設けられる静電チャックを提供する。
【0008】
選択可能に、前記チャック本体の上面の指定された領域の面積に対して、前記主ガス通路群の前記チャック本体の上面での正投影の面積の割合は50%以下であり、前記指定された領域の面積は、前記上面の中心を円心とし、直径が指定された直径である円の面積である。
【0009】
選択可能に、前記指定された直径は50mm以下である。
【0010】
選択可能に、前記主ガス通路群は前記中央吸気孔の周方向に均等に分布する複数の主ガス通路を含み、各前記主ガス通路は、いずれも前記中央吸気孔の径方向に設けられ、且つ、各前記主ガス通路の吸気端はいずれも前記中央吸気孔に連通し、各前記主ガス通路の排気端はいずれも前記副ガス通路群に連通する。
【0011】
選択可能に、前記主ガス通路の幅は0.5mm以上3mm以下であり、前記主ガス通路の深さは0.1mm以上0.4mm以下であり、前記主ガス通路の数は9本以上20本以下である。
【0012】
選択可能に、前記副ガス通路群は1段のサブガス通路群を含み、前記サブガス通路群は複数の副ガス通路を含み、各前記主ガス通路の排気端はいずれも少なくとも1つの前記副ガス通路の吸気端に連通し、同一の前記主ガス通路に連通する複数の前記副ガス通路は、該主ガス通路の排気端から前記中央吸気孔から離れる異なる方向に延在するか、又は、
前記副ガス通路群は前記中央吸気孔から離れる方向に沿って順に周回している複数段のサブガス通路群を含み、各段の前記サブガス通路群はいずれも複数の副ガス通路を含み、各前記主ガス通路の排気端はいずれもそれに隣接する1段の前記サブガス通路群の少なくとも1つの前記副ガス通路の吸気端に連通し、同一の前記主ガス通路に連通する複数の前記副ガス通路は、該主ガス通路の排気端から前記中央吸気孔から離れる異なる方向に延在し、上流側段の各副ガス通路の排気端はいずれもそれに隣接する下流側段の少なくとも1つの副ガス通路の吸気端に連通し、且つ上流側段の同一の副ガス通路に連通する下流側段の複数の副ガス通路は、該上流側段の副ガス通路の排気端から前記中央吸気孔から離れる異なる方向に延在する。
【0013】
選択可能に、前記副ガス通路の幅は0.5mm以上3mm以下であり、前記副ガス通路の深さは0.1mm以上0.4mm以下であり、前記副ガス通路の数は9本以上100本以下である。
【0014】
選択可能に、前記副ガス通路群は2段の前記サブガス通路群を含み、それぞれ第1段のガス通路群と第2段のガス通路群であり、前記第1段のガス通路群は複数の第1副ガス通路を含み、各前記主ガス通路の排気端はいずれも3本の前記第1副ガス通路の吸気端に連通し、同一の前記主ガス通路に連通する3本の前記第1副ガス通路のうち、中間の前記第1副ガス通路は、該主ガス通路と同軸であり、両側の2つの前記第1副ガス通路は、中間の前記第1副ガス通路に対して対称的に分布し、異なる前記主ガス通路に連通し、隣接する任意の2本の前記第1副ガス通路の排気端は合流して第1共通排気端を形成し、
前記第2段のガス通路群は複数の第2副ガス通路を含み、同一の前記主ガス通路に連通する3本の前記第1副ガス通路のうち、中間の前記第1副ガス通路の排気端は2本の前記第2副ガス通路の吸気端に連通し、各前記第1共通排気端はいずれも2本の前記第2副ガス通路の吸気端に連通し、且つ、前記第1副ガス通路の排気端に連通する任意の2本の隣接する前記第2副ガス通路と前記第1共通排気端に連通する前記第2副ガス通路の排気端は合流して第2共通排気端を形成し、前記第2共通排気端はいずれも前記環状ガス通路に連通する。
【0015】
選択可能に、前記副ガス通路群は複数の移行ガス通路をさらに含み、各前記移行ガス通路の吸気端は各前記第2共通排気端に1対1で対応して連通し、各前記移行ガス通路の排気端はいずれも前記環状ガス通路に連通する。
【0016】
選択可能に、前記環状ガス通路の環状中心線の直径は270mm以上290mm以下であり、前記環状ガス通路の径方向幅は0.5mm以上3mm以下であり、前記環状ガス通路の深さは0.1mm以上0.4mm以下である。
【0017】
選択可能に、前記バンプ構造は、前記非ガス通路領域内に均等に分布する複数のバンプを含み、前記チャック本体の上面の面積に対して複数の前記バンプの前記チャック本体の上面での正投影の合計面積の割合は2%以上10%以下である。
【0018】
選択可能に、前記所定の間隔は2μm以上10μm以下である。
【0019】
別の技術案として、本発明は、プロセスチャンバと、前記プロセスチャンバ内に設けられる静電チャックと、を含み、前記静電チャックとして、本発明に係る上記静電チャックを使用する半導体加工装置をさらに提供する。
【0020】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0021】
本発明に係る静電チャックによれば、ガス通路構造は、環状ガス通路、主ガス通路群及び副ガス通路群を含み、環状ガス通路は、チャック本体の上面のエッジの近くに位置し、その内側に熱交換領域を画定することに用いられ、それによって該領域内のガス圧力がチャンバ圧力の影響を受けないことを確保し、ガス圧力の安定性を確保し、バックブローガスの正常な熱交換を可能にする。主ガス通路群と副ガス通路群はいずれも該熱交換領域内に分布し、主ガス通路群は中央吸気孔の周囲を周回しており、中央吸気孔と副ガス通路群にそれぞれ連通し、中央吸気孔から流出したバックブローガスを副ガス通路群に送る速度を向上させることができるように設けられ、それによってバックブローガスが中央吸気孔から周囲に迅速に拡散できることを確保することができる。副ガス通路群は上記主ガス通路群の周囲を周回しており、主ガス通路群と環状ガス通路にそれぞれ連通し、バックブローガスを熱交換領域の様々な位置に均一に分布させることができるように設けられる。上記主ガス通路群は、バックブローガス圧力が安定性の要件を迅速に満たすようにすることに主要な作用を発揮し、副ガス通路群はバックブローガスが均一性の要件を迅速に満たすようにすることに主要な作用を発揮し、従って、上記主ガス通路群と副ガス通路群を組み合わせて使用することで、バックブローガス圧力が安定性及び均一性の要件を満たすことを確保したうえで、バックブローガスのガス注入時間を効果的に短縮させることができ、それによって装置の生産性を向上させることができる。
【0022】
本発明に係る半導体加工装置によれば、本発明に係る上記静電チャックを使用することで、バックブローガス圧力が安定性及び均一性の要件を満たすことを確保したうえで、バックブローガスのガス注入時間を効果的に短縮させることができ、それによって装置の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施例に係る静電チャックの側面断面模式図である。
【
図2】本発明の第1実施例に係る静電チャックのガス通路構造の上面図である。
【
図3】本発明の第1実施例に係る静電チャックのガス通路構造の別の上面図である。
【
図4】本発明の第2実施例に係る静電チャックのガス通路構造の上面図である。
【
図5】本発明の第3実施例に係る静電チャックの全体上面図である。
【
図6】
図5における静電チャックの部分上面図である。
【
図7】本発明の第3実施例で使用された静電チャックと従来技術の静電チャックとの平均ガス圧力-時間曲線の比較図である。
【
図8】本発明の第3実施例で使用された静電チャックと従来技術の静電チャックとのガス圧力-ウエハ位置曲線の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
当業者が本発明の技術案をよりよく理解するために、以下、図面を参照しながら、本発明に係る静電チャック及び半導体加工装置について詳しく説明する。
【0025】
第1実施例
図1に示すように、本実施例は、静電チャック1を提供し、それはチャック本体11を含み、該チャック本体11内に電極12が設けられ、該電極12は通常、直流電源に電気的に接続され、ウエハ吸着用の電力を供給することに用いられる。通常、上記チャック本体11の電極12の上方に位置する部分は誘電体層であり、電極12の下方に位置する部分はベースである。誘電体層とベースはいずれもセラミック材料からなり、上記電極12は焼結によってセラミック材料の内部に埋め込まれ得る。
【0026】
本実施例に係る静電チャック1は、ジョンセン・ラーベック型(Johnsen-Rahbek effect、略称:J-R型)静電チャックであり、その動作原理は、チャック本体11の上面111とウエハ2の間に発生する静電引力を利用してウエハ2を吸着することである。これに基づいて、本実施例では、チャック本体11の上面111にバンプ構造、中央吸気孔及びガス通路構造が設けられ、該バンプ構造は該非ガス通路領域(中央吸気孔及びガス通路構造を除く領域)内に均等に分布する複数のバンプ13を含み、複数のバンプ13で構成される載置面はウエハ2を載置することに用いられ、該載置面とチャック本体11の上面111との間に所定の間隔(即ち、バンプ13の高さ)があり、該所定の間隔は、チャック本体11の上面111とウエハ2の間に十分な静電引力を発生させることができるように設定され、それによってプロセス中のウエハ2の移動やずれを回避することを確保する。
【0027】
下記式は、クーロンの法則の式である。
【0028】
【0029】
式中、Fは静電引力、Kはクーロン定数、Qは上面111の電荷量、qはウエハ2の下面の電荷量、rはウエハ2の下面とチャック本体11の上面111との間隔(J-R型静電チャックの場合)である。
クーロンの法則の式から分かるように、静電引力Fは間隔rの二乗に反比例するため、静電引力Fの大きさは主に間隔rの大きさに依存し、該間隔rが小さいほど、静電引力Fは大きくなる。また、静電引力Fは上面111の電荷量Qに正比例するため、上面111のバンプ構造とガス通路構造を除く領域の面積が大きいほど、静電引力Fは大きくなる。
【0030】
上記原理に基づいて、選択可能に、複数のバンプ13で構成される載置面とチャック本体11の上面111との間の所定の間隔は2μm以上10μm以下である。上記所定の間隔を該数値の範囲内に設定することで、所定の間隔が大きすぎるため、静電引力Fが不足し、さらにプロセス中のウエハ2の移動やずれを引き起こす可能性を回避することができるだけでなく、所定の間隔がプロセス中にウエハ2と上面111の間に注入されるバックブローガスの分子平均自由行程よりも小さいため、バックブローガスの熱伝導性が悪化し、さらに静電チャックの温度制御能力を損なうことを回避することもできる。
【0031】
また、選択可能に、該上面111の面積に対して、複数のバンプ13のチャック本体11の上面111での正投影の合計面積の割合は2%以上10%以下である。上記割合を該数値範囲内に設定することで、割合が大きすぎるため、上面111の面積が不足し、さらに上面111の電荷量Qの不足を引き起こし、最終的に静電引力Fの不足を引き起こすことを回避することができるだけでなく、割合が小さすぎるため、ウエハ2を均一で安定して支持できないことを回避することもできる。
【0032】
いくつかの選択可能な実施例では、複数のバンプ13は、例えば、
図5に示す複数のバンプ13の配置形態のように、非ガス通路領域において上面111の中心を円心とし、半径が異なる複数の円に均等に配置されてもよい。又は、非ガス通路領域においてアレイ状に配置されてもよく、該アレイは、例えば、矩形アレイ又はほかの任意の形状のアレイである。本発明では、複数のバンプ13の数や配置形態について、特に限定しない。
【0033】
いくつかの選択可能な実施例では、バンプ13は、TAC(水素フリーダイヤモンドライクカーボン膜)材料からフィルター型カソーディック真空アーク(FCVA)方法によって製造される。該方法によって製造されたバンプは、耐摩耗性に優れ、高温に耐えることができ、それによって静電チャックの寿命を延ばすことができる。
【0034】
いくつかの選択可能な実施例では、電極11とチャック本体11の上面111との間隔は0.5mm以上2mm以下であり、該間隔を該範囲内に設定することで、良好な静電引力Fを得ることができる。
【0035】
図2に示すように、中央吸気孔112はチャック本体11の上面111の中央位置に位置し、上面111とウエハ2の間にバックブローガスを注入することで、両者の熱交換を実現し、それによって静電チャックの温度制御を実現する。
【0036】
図2に示すように、ガス通路構造は、環状ガス通路31、主ガス通路群及び副ガス通路群を含み、環状ガス通路31はチャック本体11の上面111のエッジの近くに位置し、その内側に上記熱交換領域(内輪領域111aと外輪領域111bを含む)を画定することに用いられ、チャック本体11の上面111のエッジ領域111cがチャンバ内部に連通するため、該領域におけるガス圧力が急に低下し、その結果、該エッジ領域111cにおけるバックブローガスの熱交換が不能になり、この場合、上記環状ガス通路31によって、環状ガス通路31の内側の熱交換領域(内輪領域111aと外輪領域111bを含む)内のガス圧力がチャンバ圧力の影響を受けないことを確保し、ガス圧力の安定性を確保することができ、バックブローガスの正常な熱交換を可能にする。
【0037】
いくつかの選択可能な実施例では、環状ガス通路31の環状中心線の直径は、270mm以上290mm以下であり、好ましくは、280mmであり、環状ガス通路31の径方向幅は、0.5mm以上3mm以下であり、好ましくは、2mmであり、環状ガス通路31の深さは、0.1mm以上0.4mm以下であり、好ましくは、0.2mmである。上記環状ガス通路31の環状中心線の直径、径方向幅及び深さの設定範囲によって、上記熱交換領域の面積をできるだけ拡大するのを確保することができるだけでなく、環状ガス通路31の内側の熱交換領域内のガス圧力がチャンバ圧力の影響を受けないことを確保し、ガス圧力の安定性を確保することもでき、バックブローガスの正常な熱交換を可能にする。
【0038】
主ガス通路群と副ガス通路群はいずれも上記熱交換領域内に分布し、主ガス通路群は、中央吸気孔112の周囲を周回しており、例えば、
図2における内輪領域111aに位置し、副ガス通路群は該主ガス通路群の周囲を周回しており、例えば、
図2における外輪領域111bに位置し、主ガス通路群は、中央吸気孔112と副ガス通路群にそれぞれ連通し、中央吸気孔112から流出したバックブローガスを副ガス通路群に送る速度を向上させることができるように設けられ、それによってバックブローガスが中央吸気孔112から周囲に迅速に拡散可能であることを確保でき、即ち、バックブローガスの拡散速度を向上させ、該主ガス通路群はバックブローガス圧力が安定性の要件を迅速に満たすようにすることに主要な作用を発揮する。
【0039】
上記主ガス通路群は中央吸気孔112に近い内輪領域111aに位置するが、中央吸気孔112におけるガス圧力はほかの領域よりも高いため、主ガス通路群のチャック本体11の上面111での正投影の面積が大きすぎると、内輪領域111aのガス圧力が高くなり易く、さらに該領域でウエハの「膨らみ」現象が発生してしまう。該問題を解決するために、指定された領域の面積Rに対して、主ガス通路群のチャック本体11の上面111での正投影の面積の割合は50%以下であり、該指定された領域の面積Rは、上面111の中心を円心とし、直径が指定された直径である円の面積であり、即ち、上記内輪領域111aの外周縁内の領域である。選択可能に、該指定された直径は、例えば50mm以下であり、例えば50mmである。勿論、バックブローガスが中央吸気孔112から周囲に迅速に拡散できることを確保し、バックブローガス圧力が安定性の要件を迅速に満たすようにすることができるために、主ガス通路群のチャック本体11の上面111での正投影の面積は小さすぎることが好ましくない。
【0040】
いくつかの選択可能な実施例では、上記主ガス通路群は中央吸気孔112の周方向に均等に分布する複数の主ガス通路32を含み、各主ガス通路32はいずれも中央吸気孔112の径方向に設けられることで、バックブローガスが外輪領域111bへ流れる経路を最も短くし、それによってバックブローガスが中央吸気孔112から周囲に迅速に拡散できることを確保する。且つ、各主ガス通路32の吸気端はいずれも中央吸気孔112に連通し、各主ガス通路32の排気端はいずれも副ガス通路群に連通する。中央吸気孔112から流出したバックブローガスは同時に各主ガス通路32を経由して周囲に拡散して副ガス通路群に流入する。
【0041】
いくつかの選択可能な実施例では、上記主ガス通路32の数、幅、及び深さ等のパラメータを設定することによって、主ガス通路群のチャック本体11の上面111での正投影の面積を調整することができ、例えば、主ガス通路32の幅は、0.5mm以上3mm以下であり、好ましくは、2mmであり、主ガス通路32の深さは、0.1mm以上0.4mm以下であり、好ましくは、0.2mmであり、主ガス通路32の数は、9本以上20本以下であり、好ましくは、10本である。例えば、
図2には15本の主ガス通路32が示されている。主ガス通路32の数、幅、及び深さを上記数値範囲内に設定することで、主ガス通路群のチャック本体11の上面111での正投影の面積が大きすぎるため、内輪領域111aのガス圧力が高くなり、さらに該領域でウエハの「膨らみ」現象が発生することを回避することができるだけでなく、バックブローガスが中央吸気孔112から周囲に迅速に拡散できるようにチャック本体11の上面111での正投影の面積が十分に大きいのを確保することもでき、それによってバックブローガス圧力が安定性の要件を迅速に満たすことを実現する。
【0042】
なお、主ガス通路群は、上記実施例で使用された構造に限定されず、実際の使用において、ほかの任意の構造を使用してもよく、バックブローガス圧力が安定性の要件を迅速に満たせばよい。
【0043】
副ガス通路群は、上記主ガス通路群と環状ガス通路31にそれぞれ連通し、バックブローガスを熱交換領域(内輪領域111aと外輪領域111bを含む)の様々な位置に均一に分布させることができるように設けられ、つまり、副ガス通路群はバックブローガスを迅速に均一に拡散させることができる。副ガス通路群はバックブローガスが均一性の要件を迅速に満たすようにすることに主要な作用を発揮し、従って、上記主ガス通路群と副ガス通路群を組み合わせて使用することで、バックブローガス圧力が安定性及び均一性の要件を満たすことを確保したうえで、バックブローガスのガス注入時間を効果的に短縮させることができ、それによって装置の生産性を向上させることができる。
【0044】
なお、上記主ガス通路群と副ガス通路群が位置するガス通路領域とウエハ表面との間の距離が大きく、上面111の非ガス通路領域とウエハ表面との間の距離が小さいため、上記主ガス通路群と副ガス通路群はバックブローガスの拡散をガイドする作用を発揮できるとともに、両者がいずれも非ガス通路領域に連通するため、バックブローガスは順に上記主ガス通路群と副ガス通路群に沿って流れた後、非ガス通路領域にさらに拡散し、最終的に熱交換領域全体にバックブローガスを満たすことを実現し、それによって熱交換領域とウエハ表面と間のガス圧力の均一性及び安定性を実現する。
【0045】
いくつかの選択可能な実施例では、副ガス通路群は1段のサブガス通路群を含み、
図2に示すように、該サブガス通路群は、外輪領域111b内に位置し、複数の副ガス通路33を含み、各主ガス通路32の排気端はいずれも2本の副ガス通路33の吸気端に連通し、同一の主ガス通路32に連通する2本の副ガス通路33は該主ガス通路32の排気端から中央吸気孔112から離れる異なる方向に延在し、例えば、
図2において、同一の主ガス通路32に連通する2本の副ガス通路33は中央吸気孔112から離れるとともに互いに離れる方向に延在し、最終的に、環状ガス通路31に連通する。2本の副ガス通路33毎に上記主ガス通路32の2本の分岐通路として使用されることで、主ガス通路32から流出したバックブローガスをさらに該主ガス通路32の排気端から中央吸気孔112から離れる異なる方向に拡散させることができ、それによってバックブローガスが均一性の要件を迅速に満たすようにする作用を発揮できる。
【0046】
なお、実際の使用において、同一の主ガス通路32に連通する副ガス通路33の数は1本であってもよく、この場合、異なる副ガス通路33同士を互いに連通させることができ、同様にバックブローガスが均一性の要件を迅速に満たすようにする作用を発揮できる。又は、同一の主ガス通路32に連通する副ガス通路33の数は3本以上であってもよく、例えば、
図3に示すように、同一の主ガス通路32に連通する副ガス通路33の数は3本であってもよく、該数は具体的なニーズに応じて自由に設定することができる。
【0047】
いくつかの選択可能な実施例では、副ガス通路33の幅は、0.5mm以上3mm以下であり、好ましくは、2mmであり、副ガス通路33の深さは、0.1mm以上0.4mm以下であり、好ましくは、0.2mmであり、副ガス通路33の数は、9本以上100本以下であり、好ましくは、20本である。副ガス通路33の幅、深さ及び数を上記数値範囲内に設定することで、バックブローガスが均一性の要件を迅速に満たすようにする作用を効果的に発揮できる。
【0048】
さらになお、上記副ガス通路33は、ストレート通路に限定されず、湾曲通路、折線通路等のほかの任意の形状の通路を使用してもよく、本発明では、これについて特に限定しない。
【0049】
第2実施例
図4に示すように、本実施例に係る静電チャックは、副ガス通路群の構造が異なり、複数の移行ガス通路34が増設されるという点以外、上記第1実施例と同様である。以下、本実施例と上記第1実施例との相違点についてのみ詳しく説明する。
【0050】
具体的には、
図4に示すように、チャック本体11の上面111において、外輪領域111bと環状ガス通路31との間に環状移行領域111dがさらに分割され、これに基づいて、副ガス通路群は1段のサブガス通路群を含み、該サブガス通路群は外輪領域111b内に位置し、複数の副ガス通路33を含み、各主ガス通路32の排気端はいずれも2本の副ガス通路33の吸気端に連通し、同一の主ガス通路32に連通する2本の副ガス通路33は該主ガス通路32の排気端から中央吸気孔112から離れる異なる方向に延在し、例えば、
図2において、同一の主ガス通路32に連通する2本の副ガス通路33は中央吸気孔112から離れるとともに互いに離れる方向に延在し、且つ、異なる主ガス通路32に連通する隣接する任意の2本の副ガス通路33の排気端は合流して共通排気端Aを形成することで、これら2本の副ガス通路33の相互連通を実現し、それによってバックブローガスが均一性の要件を迅速に満たす効率をさらに向上させることができる。
【0051】
そして、上記副ガス通路群は複数の移行ガス通路34をさらに含み、複数の移行ガス通路34は上記環状移行領域111dに位置し、各移行ガス通路34の吸気端は各共通排気端Aに1対1で対応して連通し、各移行ガス通路34の排気端はいずれも環状ガス通路31に連通する。移行ガス通路34によって、互いに連通する複数の副ガス通路33をさらに環状ガス通路31に連通させることができる。
【0052】
なお、実際の使用において、上記移行ガス通路34を省略してもよく、即ち、上記環状移行領域111dを設けず、上記共通排気端Aを環状ガス通路31の位置まで直接延在させて環状ガス通路31に連通させるようにしてもよい。
【0053】
本実施例に係る静電チャックのほかの構造及び機能は上記第1実施例と同様であり、ここで重複説明を省略する。
【0054】
第3実施例
1つの好ましい実施形態として、
図5及び
図6に示すように、本実施例に係る静電チャックは、副ガス通路群の構造が異なるという点以外、上記第1、第2実施例と同様である。以下、本実施例と上記第1、第2実施例との相違点についてのみ詳しく説明する。
【0055】
図5及び
図6に示すように、副ガス通路群は中央吸気孔112から離れる方向に順に周回している2段のサブガス通路群を含み、いずれも上記外輪領域に位置する。2段のサブガス通路群はそれぞれ第1段のガス通路群と第2段のガス通路群であり、第1段のガス通路群は複数の第1副ガス通路33aを含み、第2段のガス通路群は複数の第2副ガス通路33bを含む。
【0056】
各主ガス通路32の排気端はいずれも3本の第1副ガス通路33aの吸気端に連通し、同一の主ガス通路32に連通する3本の第1副ガス通路のうち、中間の第1副ガス通路331は該主ガス通路32と同軸であり、両側の2つの第1副ガス通路332は中間の第1副ガス通路331に対して対称的に分布し、且つ、異なる主ガス通路32に連通し、隣接する任意の2本の第1副ガス通路331の排気端は合流して第1共通排気端A1を形成し、同一の主ガス通路32に連通する3本の第1副ガス通路のうち、中間の第1副ガス通路331の排気端はいずれも2本の第2副ガス通路33bの吸気端に連通し、各第1共通排気端A1はいずれも2本の第2副ガス通路33bの吸気端に連通し、且つ、第1副ガス通路331の排気端に連通する任意の2本の隣接する第2副ガス通路33bと第1共通排気端A1に連通する第2副ガス通路33bの排気端は合流して第2共通排気端A2を形成するか、又は、異なる排気端(中間の第1副ガス通路331の排気端及び第1共通排気端A1を含む)に連通し且つ隣接する任意の2本の第2副ガス通路33bの排気端は合流して第2共通排気端A2を形成し、該第2共通排気端33bはいずれも環状ガス通路31に連通する。
【0057】
選択可能に、上記副ガス通路群は複数の移行ガス通路34をさらに含み、各移行ガス通路34の吸気端は各第2共通排気端A2に1対1で対応して連通し、各移行ガス通路34の排気端はいずれも環状ガス通路31に連通する。
【0058】
以下、
図5に示す静電チャックで使用されたガス通路構造を例として実験を行い、具体的なパラメータとして、主ガス通路32、副ガス通路33、環状ガス通路31及び移行ガス通路34の幅はいずれも2mmであり、主ガス通路32の数は15本であり、副ガス通路の総数は60本であり、環状ガス通路31の環状中心線の直径は280mmである。
【0059】
図7は、本発明の第3実施例で使用された静電チャックと従来技術の静電チャックとの平均ガス圧力-時間曲線の比較図である。
図7に示すように、平均ガス圧力がB1線に達すると、このときの平均ガス圧力の大きさがプロセス要件を満たすと判定し、平均ガス圧力がB2線に達すると、このときの平均ガス圧力の安定性がプロセス要件を満たすと判定し、このとき、PVDプロセスを開始することができ、通常、B1の数値はB2の数値の90%である。曲線S1は、従来技術の静電チャックの平均ガス圧力-時間曲線であり、曲線S2は、本発明の第3実施例で使用された静電チャックの平均ガス圧力-時間曲線であり、比較したところ、曲線S1上のB1線に対応する時点t2(100s以上)が曲線S2上のB1線に対応する時点t1(12s程度)よりも大きいことが分かり、即ち、本発明の第3実施例で使用された静電チャックは従来技術よりも速くB1線とB2線に満たすことができ、このことから明らかなように、本実施例に係る静電チャックは、バックブローガス圧力が安定性の要件を満たすことを確保したうえで、バックブローガスのガス注入時間を効果的に短縮させることができる。
【0060】
図8は、本発明の第3実施例で使用された静電チャックと従来技術の静電チャックとのガス圧力-ウエハ位置曲線の比較図である。
図8に示すように、曲線S1は、従来技術の静電チャックのガス圧力-ウエハ位置曲線であり、曲線S2は、本発明の第3実施例で使用された静電チャックのガス圧力-ウエハ位置曲線であり、比較したところ、曲線S1のガス圧力の大きさがウエハの中央位置(150mm)からエッジ位置に徐々に小さくなり、且つ中央位置における最高ガス圧力が680Paであり、エッジ位置における最低ガス圧力が340Paであり、ガス圧力の均一性が悪いことが分かった。曲線S2について、ウエハの中央位置(150mm)におけるガス圧力とエッジ位置におけるガス圧力との差は非常に小さく、いずれも680Pa程度であり、このことから明らかなように、本実施例に係る静電チャックは、バックブローガス圧力の安定性を効果的に向上させることができる。
【0061】
なお、上記第3実施例は好ましい実施例を示すものに過ぎず、本発明はこれに限定されず、実際の使用において、副ガス通路群は、中央吸気孔112から離れる方向に沿って順に周回している3段以上のサブガス通路群を含んでもよく、この場合、各主ガス通路32の排気端はいずれもそれに隣接する1段のサブガス通路群の少なくとも1つの副ガス通路の吸気端に連通し、同一の主ガス通路32に連通する複数の副ガス通路は、該主ガス通路32の排気端から中央吸気孔112から離れる異なる方向に延在し、上流側段の各副ガス通路の排気端はいずれもそれに隣接する下流側段の少なくとも1つの副ガス通路の吸気端に連通し、且つ上流側段の同一の副ガス通路に連通する下流側段の複数の副ガス通路は、該上流側段の副ガス通路の排気端から中央吸気孔112から離れる異なる方向に延在する。
【0062】
本実施例に係る静電チャックのほかの構造及び機能は上記第1、第2実施例と同様であり、ここで重複説明を省略する。
【0063】
以上のように、本発明の上記各実施例に係る静電チャックは、上記主ガス通路群と副ガス通路群を組み合わせて使用することで、バックブローガス圧力が安定性及び均一性の要件を満たすことを確保したうえで、バックブローガスのガス注入時間を効果的に短縮させることができ、それによって装置の生産性を向上させることができる。
【0064】
別の技術案として、本発明の実施例は半導体加工装置をさらに提供し、プロセスチャンバと、該プロセスチャンバ内に設けられる静電チャックと、を含み、該静電チャックとして、本発明の上記各実施例に係る静電チャックを使用する。
【0065】
本発明の実施例に係る半導体加工装置は、本発明の実施例に係る上記静電チャックを使用することで、バックブローガス圧力が安定性及び均一性の要件を満たすことを確保したうえで、バックブローガスのガス注入時間を効果的に短縮させることができ、それによって装置の生産性を向上させることができる。
【0066】
なお、以上の実施形態は、本発明の原理を説明するために採用した例示的な実施形態に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の趣旨及び本質を逸脱することなく、種々の変形や改良を行うことができ、これらの変形や改良も本発明の保護範囲とみなされる。
【国際調査報告】