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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240903BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20240903BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240903BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240903BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240903BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240903BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L33/04
C08L75/04
C08L83/04
C08L63/00 C
C08K3/013
C08K5/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510370
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 KR2022015196
(87)【国際公開番号】W WO2023059154
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0134137
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0128214
(32)【優先日】2022-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ホン・チャン・イ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ミ・ジュン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AE042
4J002BG021
4J002CD001
4J002CH022
4J002CK021
4J002CP031
4J002CP191
4J002DE077
4J002DE087
4J002DE097
4J002DE107
4J002DE147
4J002DF017
4J002DJ007
4J002EA016
4J002EC056
4J002EE036
4J002EF036
4J002EF056
4J002FD017
4J002FD202
4J002FD206
4J002GQ00
(57)【要約】
本出願は、硬化性組成物及びその用途に関する。本出願の硬化性組成物は、駆動または保持過程で熱を発生させる製品に適用され、前記熱を処理できる材料として使用可能な硬化性組成物を提供しうる。本出願の硬化性組成物は、熱を発生させる素子が複数集積されている製品に適用され、前記製品の温度を均一に保持しながら、前記素子から発生する熱を効率的に処理しうる。また、本出願の硬化性組成物は、前記のような製品に適用され、前記複数の素子のいずれかの素子に異常発熱、爆発または発火が発生する場合でもそのような発熱、爆発または発火の隣接する他の素子への影響を防止または最小化できる。本出願の硬化性組成物は、さらに前記のような機能を長期間にわたって安定的に行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂成分及び相転移物質を含み、
0℃~60℃の温度範囲内で25J/g以上の潜熱を示す硬化体を形成し、
前記硬化体の潜熱区間の広さが9℃以上である、硬化性組成物。
【請求項2】
前記硬化体の潜熱区間の広さが9℃~20℃の範囲内である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
硬化体は、密度が0.7g/cm~1.5g/cmの範囲内である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
硬化体が、20~90の範囲内のショアOO硬度または10~90の範囲内のショアA硬度を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
硬化性樹脂成分は、重量平均分子量が9,000g/mol以上である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
硬化性樹脂成分が、アクリル樹脂成分、ポリウレタン成分、シリコーン樹脂成分またはエポキシ樹脂成分である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
相転移物質として、第1の相転移物質及び第2の相転移物質を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
第1の相転移物質の融点が40℃超過であり、第2の相転移物質の融点が40℃以下である、請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
第1の相転移物質と第2の相転移物質の融点の差が1℃~20℃の範囲内である、請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
第1の相転移物質が第2の相転移物質に対して高いオンセット温度を有し、前記オンセット温度の差の絶対値が5℃~20℃の範囲内である、請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
第1の相転移物質の潜熱区間が第2の相転移物質の潜熱区間に対して狭い、請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
第1の相転移物質の潜熱区間と第2の相転移物質の潜熱区間の差の絶対値が1℃超過であり、10℃以下である、請求項11に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
第1の相転移物質が第2の相転移物質に対して高い潜熱を有する、請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
第1の相転移物質の潜熱と第2の相転移物質の潜熱の差の絶対値が100%以下である、請求項13に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
第2の相転移物質が、第1の相転移物質の100重量部に対して8~100重量部で含まれる、請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
硬化性樹脂成分100重量部に対して20~75重量部の相転移物質を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項17】
水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、ボヘマイト(AlOOH)、ハイドロマグネサイト、マグネシア、アルミナ、窒化アルミニウム(AlN,aluminum nitride)、窒化ホウ素(BN,boron nitride)、窒化ケイ素(Si,silicon nitride)、炭化ケイ素(SiC)、酸化亜鉛(ZnO)及び酸化ベリリウム(BeO)からなる群から選ばれる少なくとも1つのフィラーをさらに含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項18】
溶融した相転移物質と硬化性樹脂成分を混合する段階を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項19】
請求項1に記載の硬化性組成物の硬化体。
【請求項20】
発熱部品及び前記発熱部品に隣接して存在する、請求項1~17のいずれか一項に記載の硬化性組成物または請求項19に記載の硬化体を含む製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2021年10月8日付韓国特許出願第10-2021-0134137号及び2022年10月6日付大韓民国特許出願第10-2022-0128214号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、硬化性組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0003】
製品から発生する熱を処理する技術の重要性がますます高まっている。熱を処理する代表的な方法の一つは、熱伝導性に優れた素材を使用して製品から発生した熱を外部に排出するか、または冷却媒体などを使用して発生した熱を消滅させる方法がある。
【0004】
熱を発生させる素子(発熱素子)が集まって構成された製品において熱を処理することは難しい問題である。
【0005】
例えば、バッテリーモジュールやバッテリーパックは、複数のバッテリーセルまたは複数のバッテリーモジュールを含み、それらは相対的に互いに隣接して位置する。したがって、いずれかのバッテリーセルやバッテリーモジュールで発生した熱は、隣接する他の素子に影響を及ぼし、場合によっては連鎖発火や連鎖爆発などの問題を引き起こすことがある。
【0006】
したがって、このような製品では、いずれかの素子から発生した熱や爆発または火災などが隣接する他の素子に影響を及ぼさないようにすることが必要である。
【0007】
また、製品によっては、駆動や保持過程で全体的に均一な温度を保持する必要がある。したがって、前記のように複数の発熱素子が集まって構成された製品では、駆動または保持過程で全体的な製品の温度を均一に保持することができ、いずれかの発熱素子から発生する異常発熱や、爆発または火災を他の素子に可能な限り伝播せずに処理できる技術が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、硬化性組成物及びその用途に関する。本出願の硬化性組成物は、駆動または保持過程で熱を発生させる製品に適用され、前記熱を処理できる材料として使用可能な硬化性組成物を提供しうる。本出願の硬化性組成物は、熱を発生させる素子が複数集積されている製品に適用され、前記製品の温度を均一に保持しながら、前記素子から発生する熱を効率的に処理しうる。また、本出願の硬化性組成物は、前記のような製品に適用され、前記複数の素子のいずれかの素子に異常発熱、爆発または発火が発生する場合でもそのような発熱、爆発または発火の隣接する他の素子への影響を防止または最小化できる。本出願の硬化性組成物は、さらに前記のような機能を長期間にわたって安定的に行うことができる。本出願は、さらに前記のような硬化性組成物によって形成された硬化体、または前記硬化性組成物、または前記硬化体の用途を提供しうる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で言及する物性のうち温度がその物性に影響を及ぼす物性は、特に規定しない限り、常温で測定した物性である。
【0010】
本明細書において用語の常温とは、加温及び減温されていない自然のままの温度であり、例えば、約10℃~30℃の範囲内のいずれかの温度、例えば、約15℃、約18℃、約20℃、約23℃または約25℃程度の温度を意味する。また、本明細書で特に規定しない限り、温度の単位は、℃である。
【0011】
本明細書で言及する物性のうち圧力がその結果に影響を及ぼす場合には、特に規定しない限り、当該物性は、常圧で測定した物性である。用語の「常圧」とは、加圧及び減圧されていない自然のままの圧力であり、通常、約1気圧(約700~800mmHg程度)程度を常圧と呼ぶ。
【0012】
本明細書で言及する物性のうち湿度がその結果に影響を及ぼす場合には、特に規定しない限り、当該物性は、前記常温及び常圧状態で特に調節されていない湿度で測定した物性である。
【0013】
本出願は、硬化性組成物に関する。用語の硬化性組成物は、硬化できる組成物である。硬化は、物理的及び/又は化学的反応によって組成物が固まる現象である。
【0014】
前記硬化性組成物は、エネルギー線硬化型、湿気硬化型、熱硬化型または常温硬化型であってもよく、前記硬化方式のうち2種以上の方式が適用されるハイブリッド硬化型であってもよい。
【0015】
エネルギー線硬化型は組成物に紫外線などのエネルギー線を照射する方式、湿気硬化型の場合には適切な湿気下で組成物を保持する方式、熱硬化型の場合には適切な熱を組成物に印加する方式または常温硬化型の場合には常温で硬化性組成物を保持する方式で硬化性組成物を硬化させることができ、ハイブリッド硬化型の場合には前述した方式のうち2種以上の方式が同時に適用されるか、または段階的に適用されて硬化性組成物が硬化されてもよい。一例において、本出願の硬化性組成物は少なくとも常温硬化型であってもよい。例えば、本出願の硬化性組成物は、常温で保持された状態で別々のエネルギー線の照射及び熱の印加なしに硬化されてもよい。
【0016】
本出願の硬化性組成物は、1液型硬化性組成物または2液型硬化性組成物であってもよい。1液型硬化性組成物は、硬化に必要な成分が混合された状態で保管される組成物であり、2液型硬化性組成物は、硬化に必要な成分が物理的に分離された状態で保管される組成物である。2液型硬化性組成物は、通常、いわゆる主剤パートと硬化剤パートを含み、硬化のためには前記主剤及び硬化剤パートが混合される。本出願の硬化性組成物が2液型硬化性組成物の場合、前記硬化性組成物は、前記2液型硬化性組成物の主剤パートまたは硬化剤パートであるか、または前記主剤及び硬化剤パートの混合物であってもよい。
【0017】
前記硬化性組成物は、所定の温度範囲で潜熱(latent heat)を示す硬化体を形成してもよい。潜熱は、通常、ある物質が温度変化なしに状態変化(Phase transition)を引き起こすのに必要な熱量として定義される。しかし、本出願の前記硬化体が前記潜熱を示すときに必ずしも全体的に状態変化を引き起こさなければならないものではない。本出願の硬化体の潜熱は、前記硬化体の少なくとも一部または前記硬化体が含む成分の状態変化過程で発生しうる。
【0018】
本出願において硬化体が所定の温度範囲で潜熱を示すということは、後述する実施例に記載された方式で行われたDSC(Differential Scanning Calorimeter)分析において硬化体が所定の温度範囲で吸熱ピークを示すことを意味する。本出願の硬化体が前記潜熱を示す過程は、等温過程(isothermal process)である。したがって、前記硬化体は、発熱する製品に適用されて前記製品の温度を均一に保持しながら、前記熱を制御することができ、一つの製品から発生した異常発熱、爆発及び/又は発火が隣接する他の製品に及ぼす影響を最小化または防止しうる。
【0019】
前記硬化体が示す潜熱の下限は、15J/g、20J/g、25J/g、30J/g、35J/g、40J/g、45J/g、50J/g、55J/g、60J/g、65J/g、70J/g、75J/g、80J/g、85J/gまたは90J/g程度であってもよく、その上限は、200J/g、195J/g、190J/g、185J/g、180J/g、175J/g、170J/g、165J/g、160J/g、155J/g、150J/g、145J/g、140J/g、135J/g、130J/g、125J/g、120J/g、115J/g、110J/g、105J/g、100J/g、95J/g、90J/g、85J/g、80J/g、75J/g、70J/g、65J/g、60J/g、55J/g、50J/g、45J/gまたは40J/g程度であってもよい。前記硬化体が示す潜熱は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。このような潜熱を示す硬化体は、様々な用途で優れた熱制御機能を行うことができ、特にバッテリーモジュールやバッテリーパックにおいて安定的に熱を制御しうる。
【0020】
前記硬化体が前記潜熱を示す温度区間が制御されてもよい。
【0021】
本明細書において潜熱区間は、前記潜熱を示す温度区間で、後述する実施例のDSC(Differential Scanning Calorimeter)分析の吸熱ピークが確認される吸熱区間で吸熱ピークのleft on-setの変曲点における温度から前記吸熱ピークのright on-setの変曲点における温度までの範囲である。本明細書において、前記吸熱ピークのleft on-setの変曲点における温度は、オンセット(on-set)温度と呼ばれることもあり、前記吸熱ピークのright on-setの変曲点における温度は、オフセット(off-set)温度と呼ばれることもある。
【0022】
DSC分析の吸熱区間では吸熱ピークを1つまたは2つ以上確認できるが、複数の吸熱ピークが観察される場合でも、最初の吸熱ピークが始まる地点における前記吸熱ピークの変曲点の温度(潜熱区間開始温度またはオンセット温度)と最後の吸熱ピークが終了する地点で前記吸熱ピークの変曲点の温度(潜熱区間終了温度またはオフセット)までの範囲を前記潜熱区間と定義する。
【0023】
前記のような潜熱、潜熱区間、オンセット温度及びオフセット温度の概念は、相転移物質に対しても同様に適用される。
【0024】
前記潜熱区間の温度の下限は、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、27℃または30℃程度であってもよく、その上限は、80℃、78℃、76℃、74℃、72℃、70℃、68℃、66℃、64℃、62℃、60℃、58℃、56℃、54℃、52℃、50℃、48℃、46℃、44℃、42℃または40℃程度であってもよい。前記潜熱区間は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0025】
前記硬化体は、前記潜熱を示す温度区間の広さ、すなわち、潜熱区間の広さが調節されてもよい。前記潜熱区間の広さは、前記潜熱区間終了温度(前記オフセット温度)から前記潜熱区間開始温度(前記オンセット温度)を引いた値である。前記潜熱区間の広さの下限は、9℃、9.5℃、10℃、12℃、14℃、15℃、16℃、18℃または19℃程度であってもよく、その上限は、60℃、55℃、50℃、45℃、40℃、35℃、30℃、25℃、20℃または15℃程度であってもよい。前記硬化体が示す潜熱の潜熱区間の広さは、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0026】
一例において、前記硬化体が前記潜熱を示す潜熱区間のオンセット温度が調節されてもよい。このとき、前記オンセット温度の定義は、前述のとおりである。前記オンセット温度が存在する区間範囲の下限は、10℃、12℃、14℃、16℃、18℃、20℃、22℃、24℃、26℃または28℃程度であってもよく、その上限は、60℃、58℃、56℃、54℃、52℃、50℃、48℃、46℃、44℃、42℃、40℃、38℃、36℃、34℃、32℃、30℃、28℃または26℃程度であってもよい。前記オンセット温度は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0027】
一例において、前記硬化体が前記潜熱を示す潜熱区間のオフセット温度が調節されてもよい。このとき、前記オフセット温度の定義は、前述のとおりである。前記オフセット温度が存在する区間範囲の下限は、30℃、32℃、34℃、36℃、38℃、40℃、42℃、44℃、46℃、48℃または50℃程度であってもよく、その上限は、80℃、78℃、56℃、74℃、72℃、70℃、68℃、66℃、64℃、62℃、60℃、58℃、56℃、54℃、52℃、50℃、48℃、46℃または44℃程度であってもよい。前記オフセット温度は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0028】
前記のような潜熱特性を持つ硬化体は、様々な発熱製品に適用され、当該製品が安定的かつ均一な温度範囲で作動できるようにすることができる。また、前記硬化体は、相対的に隣接配置されている複数の発熱する素子を含む製品に適用され、全体的な製品の温度を均一に保持することができ、いずれかの素子での異常発熱、発火及び/又は爆発が他の素子に及ぼす影響を最小化または防止しうる。特に前記潜熱特性を示す硬化体は、駆動温度が約15℃~60℃の範囲内に保持されなければならない製品(例えば、二次バッテリーセルまたはそれを複数含むバッテリーモジュールないしバッテリーパックなど)に適用されて効率的に熱を制御しうる。
【0029】
前記本出願の硬化体は、前記のような潜熱特性を長期間安定的に保持しうる。一例において、前記硬化性組成物は、硬化体が前記潜熱特性を示すようにするために、いわゆる相転移物質(PCM:Phase Change Material)を含んでもよい。相転移物質としては、固体(solid)から液体(liquid)に相転移しながら、吸熱をする物質が使用されてもよいが、このような物質は、潜熱を示しながら液相に転移するため、硬化体から消失しうる。したがって、このような場合、前記潜熱特性が経時的に消失しうる。本出願では、硬化体を形成する硬化性樹脂成分の選択、架橋度の調節、前記相転移物質の種類及び割合の調節及び/又は硬化性組成物の製造方法の調節を通じて硬化体内の相転移物質が液相に転移した後でも硬化体内で消失せず、したがって、前記のような潜熱特性を長期間安定的に保持しうる。
【0030】
例えば、本出願の前記硬化体は、下記式1のΔWが所定範囲内に制御されてもよい。
【0031】
[式1]
△W=100×(W-W)/W
【0032】
式1において△Wは、硬化体の重量変化率(単位%)であり、Wfは、前記硬化体を80℃で24時間保持した後に測定した前記硬化体の重量であり、Wiは、前記80℃で24時間保持する前の前記硬化体の重量である。式1のΔWを測定するための具体的な方式は実施例項目で記載する。また、前記式1において重量(W及びW)の単位は、互いに同じ単位が適用される限り、制限されない。
【0033】
前記重量変化率(△W)の上限は、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1.5%、1%または0.5%程度であってもよい。前記重量変化率は、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であってもよい。前記重量変化率(ΔW)は、その値が小さいほど硬化体内に相転移物質が安定的に保持されることを意味するため、その下限は特に制限されない。前記重量変化率(ΔW)の下限は、例えば、0%または0.5%程度であってもよい。前記重量変化率(ΔW)は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0034】
本出願では、前記のような潜熱特性ないし重量変化特性を相転移物質として、いわゆる複合物質(composite material)を適用することなく達成しうる。相転移物質は、熱を制御できる吸熱特性を示すが、通常、熱伝導度が低下する。したがって、処理しなければならない熱を前記相転移物質に伝達することは容易ではない。このためにグラファイト(graphite)や炭素繊維などのように熱伝導度の高い物質と相転移物質を複合化した複合物質が知られている。このような物質は、相転移物質の短所である低い熱伝導度問題をある程度解決できるが、素材の密度ないし比重を増加させるために、軽量化の観点からは不利である。しかし、本出願では、硬化体を形成する硬化性樹脂成分の選択、架橋度の調節、前記相転移物質の種類及び割合の調節及び/又は硬化性組成物の製造方法の調節を通じて前記複合化された相転移物質を使用しなくても、相転移物質の短所である低い熱伝導度による熱制御効率低下の問題を解決でき、これによって軽量化された素材の提供が可能である。
【0035】
本出願では、前記のような潜熱特性ないし重量変化特性を相転移物質として、いわゆるカプセル化されていない相転移物質、すなわち、非カプセル化された相転移物質を使用しながらも達成しうる。すなわち、相転移物質は、相転移過程で液体に転移する場合が多く、液体に転移した相転移物質は、硬化体から容易に漏出しうる。したがって、通常、相転移物質の漏出を防止するために、相転移物質を液相にならない素材でカプセル化した相転移物質が使用される。しかし、このような場合、相転移物質が相転移物質ではない素材でカプセル化されたため、相転移物質の性能を安定的に確保することは容易ではない。本出願では、後述するように、硬化体のマトリックスの制御を通じて相転移物質として、非カプセル化された相転移物質を使用する場合にも前記重量変化特性を示すことができる。
【0036】
一例において、前記硬化性組成物は、前記相転移物質として、非カプセル化された相転移物質を含んでもよく、前記硬化性組成物または硬化体に存在する全体の相転移物質の重量を基準とした前記非カプセル化された相転移物質の含量の下限は、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%または95重量%程度であってもよく、その上限は100重量%、99重量%、98重量%、97重量%、96重量%または95重量%程度であってもよい。前記非カプセル化された相転移物質の含量は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0037】
一例において、前記硬化体は、密度が所定の範囲内であってもよい。前記のような密度は、軽量化された素材の提供可能性を考慮して制御されてもよい。例えば、前記密度の下限は、0.5g/cm、0.55g/cm、0.6g/cm、0.65g/cm、0.7g/cm、0.75g/cm、0.8g/cm、0.85g/cm、0.9g/cm、0.95g/cm、1g/cm、1.05g/cm、1.1g/cmまたは1.15g/cm程度であってもよく、その上限は、2g/cm、1.8g/cm、1.6g/cm、1.5g/cm、1.45g/cm、1.4g/cm、1.35g/cm、1.3g/cm、1.25g/cm、1.2g/cm、1.15g/cm、1.1g/cm、1.05g/cm、1g/cmまたは0.95g/cm程度であってもよい。前記硬化体の密度は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0038】
本出願の前記硬化体の硬度が調節されてもよい。硬化体の硬度は、当該硬化体の架橋度によって影響を受ける。一般に架橋の程度が緻密であれば、硬度が上昇し、逆に架橋の程度が低いほど硬度は低く測定される。本出願では、硬化体内に保持される相転移物質の保持効率を考慮して適正な硬度が示されるように硬化体の架橋度を調節しうる。架橋度が低すぎて硬度が低すぎると、相転移物質が硬化体の内部に適切に保持されないこともあり、逆に架橋度が高すぎて硬度が高すぎると、相転移物質の性能が適切に発現されないこともある。
【0039】
例えば、前記硬化体の硬度の下限は、ショア(shore)OO硬度で20、25、30、35、40、45、50、55、60、70または80程度であるか、またはショア(shore)A硬度で10、15、20、25、30、35、40または50程度であってもよく、その上限は、ショア(shore)OO硬度で90、85、80、75、70、65または60程度であるか、またはショア(shore)A硬度で90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25または20程度であってもよい。前記硬化体の硬度は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0040】
硬化体の硬度は、硬化性樹脂成分の分子量と架橋度などと関連して決められるが、本出願では、前記硬化体を形成する硬化性樹脂成分の分子量とその樹脂成分の架橋度を前記範囲内の硬度を示すように制御し、相転移物質を安定的に保持しうるネットワークを提供しうる。また、前記範囲内の硬度は、硬化体が複雑な形状の空間を安定的に充填できるようにし、さらに耐振動性や耐衝撃性も向上させることができる。
【0041】
本出願の硬化性組成物は、硬化性樹脂成分を含んでもよい。用語の硬化性樹脂成分の範疇には、それ自体がいわゆる樹脂成分の場合はもちろん、硬化反応後に樹脂成分を形成できる成分も含まれる。したがって、前記硬化性樹脂成分は、単分子性、オリゴマー性または高分子性化合物であってもよい。
【0042】
本出願では、前記硬化性樹脂成分として、重量平均分子量(Mw,Weight Average Molecular Weight)が所定の範囲内である成分を使用してもよい。硬化性樹脂成分の重量平均分子量は、架橋構造とともに相転移物質の保持に影響を及ぼす。すなわち、同一または類似の架橋度下でも前記架橋構造を連結する硬化性樹脂成分の重量平均分子量が低すぎると、やはり相転移物質の漏出が発生しうるため、適切なレベルの重量平均分子量を確保することが必要である。例えば、前記硬化性樹脂成分の重量平均分子量の下限は、9,000g/mol、10,000g/mol、15,000g/mol、20,000g/molまたは25,000g/mol程度であってもよく、その上限は、1,000,00/mol、900,000g/mol、800,000g/mol、700,000g/mol、600,000g/mol、500,000g/mol、400,000g/mol、300,000g/mol、200,000g/mol、100,000g/mol、90,000g/mol、80,000g/mol、70,000g/mol、60,000g/mol、50,000g/mol、40,000g/molまたは30,000g/mol程度であってもよい。このような分子量特性を持つ硬化性樹脂成分は、相転移物質を内部に安定的に保持できる硬化体のネットワークを形成しうる。特に前記分子量特性を持つ樹脂成分として、シリコーン樹脂成分が効果的に適用されてもよい。前記重量平均分子量は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0043】
硬化性樹脂成分の種類は、特に制限されるものではない。一例において、前記硬化性樹脂成分は、ポリウレタン成分、シリコーン樹脂成分、アクリル樹脂成分またはエポキシ樹脂成分を含んでもよい。前記ポリウレタン成分、シリコーン樹脂成分、アクリル樹脂成分またはエポキシ樹脂成分は、ポリウレタン、シリコーン樹脂、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂であるか、または硬化反応を経て前記ポリウレタン、シリコーン樹脂、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂を形成する成分であってもよい。適用可能な硬化性樹脂成分の具体的な種類には特に制限はなく、公知のポリウレタン成分、シリコーン樹脂成分、アクリル樹脂成分またはエポキシ樹脂成分のうち、前述したような分子量特性及び/又は硬度特性を示すものを選択して使用してもよく、このような樹脂成分の架橋度を制御することにより、最終硬化体の硬度などを制御してもよい。
【0044】
例えば、前記硬化性樹脂成分がシリコーン樹脂成分の場合、前記成分は、付加硬化型シリコーン樹脂成分であって、(1)分子中に2つ以上のアルケニル基を含むポリオルガノシロキサン及び(2)分子中に2つ以上のケイ素結合水素原子を含有するポリオルガノシロキサンを含んでもよい。前記化合物は、例えば、白金触媒などの触媒の存在下で、付加反応によって硬化物を形成しうる。
【0045】
前記(1)ポリオルガノシロキサンは、少なくとも2つのアルケニル基を含む。このとき、アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基またはヘプテニル基などが含まれ、このうちビニル基が通常適用されるが、これに制限されるものではない。前記(1)ポリオルガノシロキサンにおいて、前述したアルケニル基の結合位置は、特に限定されるものではない。例えば、前記アルケニル基は、分子鎖の末端及び/又は分子鎖の側鎖に結合していてもよい。また、前記(1)ポリオルガノシロキサンにおいて、前述したアルケニルの他に含まれてもよい置換基の種類としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基、クロロメチル基、3-クロロプロピル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、このうちメチル基またはフェニル基が通常適用されるが、これに制限されるものではない。
【0046】
前記(1)ポリオルガノシロキサンの分子構造は特に限定されず、例えば、直鎖状、分岐状、環状、網状または一部が分岐状をなす直鎖状などのように、いかなる形状であっても有してもよい。通常、前記のような分子構造のうち、特に直鎖状の分子構造を有するものが適用されるが、これに制限されるものではない。
【0047】
前記(1)ポリオルガノシロキサンのより具体的な例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、R SiO2/2で表されるシロキサン単位とR SiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン共重合体、R SiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン共重合体、RSiO2/2で表されるシロキサン単位とRSiO3/2で表されるシロキサン単位またはRSiO3/2で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン共重合体及び前記のうち2つ以上の混合物が挙げられるが、これに制限されるものではない。前記において、Rは、アルケニル基以外の炭化水素基で、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基、ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基、クロロメチル基、3-クロロプロピル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などが挙げられる。また、前記においてRは、アルケニル基であり、具体的にはビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基またはヘプテニル基などが挙げられる。
【0048】
前記付加硬化型シリコーン組成物において、(2)ポリオルガノシロキサンは、前記(1)ポリオルガノシロキサンを架橋させる役割を果たすことができる。前記(2)ポリオルガノシロキサンにおいて、水素原子の結合位置は特に限定されず、例えば、分子鎖の末端及び/又は側鎖に結合されていてもよい。また、前記(2)ポリオルガノシロキサンにおいて、前記ケイ素結合水素原子の他に含まれてもよい置換基の種類は特に限定されず、例えば、(1)ポリオルガノシロキサンで言及したようなアルキル基、アリール基、アラルキル基またはハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、このうち、通常、メチル基またはフェニル基が適用されるが、これに制限されるものではない。
【0049】
前記(2)ポリオルガノシロキサンの分子構造は特に限定されず、例えば、直鎖状、分岐状、環状、網状または一部が分岐状をなす直鎖状などのようにいかなる形状であってもよい。前記のような分子構造のうち、通常、直鎖状の分子構造を有するものが適用されるが、これに制限されるものではない。
【0050】
前記(2)ポリオルガノシロキサンのより具体的な例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキサン酸基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、R SiO1/2で表されるシロキサン単位とR HSiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン共重合体、R HSiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン共重合体、RHSiO2/2で表されるシロキサン単位とRSiO3/2で表されるシロキサン単位またはHSiO3/2で表されるシロキサン単位を含むポリオルガノシロキサン共重合体及び前記のうち2以上の混合物が挙げられるが、これに制限されるものではない。前記において、Rはアルケニル基以外の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、またはナフチル基などのアリール基、ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基、クロロメチル基、3-クロロプロピル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などであってもよい。
【0051】
前記(2)ポリオルガノシロキサンの含量は、適切な硬化が行われる程度に含まれる場合、特に限定されるものではない。例えば、前記(2)ポリオルガノシロキサンは、前述した(1)ポリオルガノシロキサンに含まれるアルケニル基1つに対して、ケイ素結合水素原子が0.5~10個となる量で含まれてもよい。このような範囲で硬化を十分に行って、耐熱性を確保しうる。
【0052】
前記付加硬化型シリコーン樹脂成分は、硬化のための触媒として、白金または白金化合物をさらに含んでもよい。このような白金または白金化合物の具体的な種類は、特に制限されるものではない。触媒の割合も適切な硬化が可能なレベルに調節されればよい。
【0053】
他の例において、前記シリコーン樹脂成分は、縮合硬化性シリコーン樹脂成分であり、例えば、(a)アルコキシ基含有シロキサンポリマー、及び(b)水酸基含有シロキサンポリマーを含んでもよい。
【0054】
前記(a)シロキサンポリマーは、例えば、下記化1で表される化合物であってもよい。
【0055】
SiO(OR (化1)
【0056】
化1においてR及びRは、それぞれ独立して水素原子または置換もしくは非置換の一価炭化水素基を表し、Rは、アルキル基を表し、R、R及びRがそれぞれ複数個存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよく、a及びbは、それぞれ独立して0以上、1未満の数を表し、a+bは、0超過、2未満の数を表し、cは、0超過、2未満の数を表し、dは、0超過、4未満の数を表し、a+b+c×2+dは4である。
【0057】
化1の定義において、一価炭化水素は、例えば、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基またはトリル基などであってもよく、このとき、炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基またはオクチル基などであってもよい。また、化1の定義において、一価炭化水素基は、例えば、ハロゲン、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、グリシジル基、グリシドキシ基またはウレイド基などの公知の置換基で置換されていてもよい。
【0058】
化1の定義において、Rのアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基またはブチル基などが挙げられる。アルキル基の中で、メチル基またはエチル基などが通常適用されるが、これに制限されるものではない。
【0059】
化1のポリマーのうち分枝状または3次架橋されたシロキサンポリマーを使用してもよい。また、この(a)シロキサンポリマーには、目的を損なわない範囲内で、具体的には、脱アルコール反応を阻害しない範囲内で水酸基が残存していてもよい。
【0060】
前記(a)シロキサンポリマーは、例えば、多官能のアルコキシシランまたは多官能クロロシランなどを加水分解及び縮合させることにより製造してもよい。この分野の平均的な技術者は、所望の(a)シロキサンポリマーに応じて適切な多官能アルコキシシランまたはクロロシランを容易に選択でき、それを使用した加水分解及び縮合反応の条件も容易に制御しうる。一方、前記(a)シロキサンポリマーの製造時には、目的に応じて、適切な一官能のアルコキシシランを併用してもよい。
【0061】
前記(a)シロキサンポリマーとしては、例えば、信越シリコーン社のX40-9220またはX40-9225、GEトレイシリコーン社のXR31-B1410、XR31-B0270またはXR31-B2733などのような市販のオルガノシロキサンポリマーを使用してもよい。
【0062】
前記縮合硬化性シリコーン組成物に含まれる、(b)水酸基含有シロキサンポリマーとしては、例えば、下記化2で表される化合物を使用してもよい。
【0063】
【化1】
【0064】
化2において、R及びRは、それぞれ独立して水素原子または置換もしくは非置換の1価の炭化水素基を表し、R及びRがそれぞれ複数存在する場合、前記は互いに同一でも異なっていてもよく、nは、5~2,000の整数を表す。
【0065】
化2の定義において、一価炭化水素基の具体的な種類としては、例えば、前記化1の場合と同じ炭化水素基が挙げられる。
【0066】
前記(b)シロキサンポリマーは、例えば、ジアルコキシシラン及び/又はジクロロシランなどを加水分解及び縮合させることにより製造してもよい。この分野の平均的技術者は、所望の(b)シロキサンポリマーに応じて適切なジアルコキシシランまたはジクロロシランを容易に選択でき、それを使用した加水分解及び縮合反応の条件も容易に制御しうる。前記のような(b)シロキサンポリマーとしては、例えば、GEトレイシリコーン社のXC96-723、YF-3800、YF-3804などのような、市販の二官能オルガノシロキサンポリマーを使用してもよい。
【0067】
前述した付加硬化型または縮合硬化型シリコーン組成物は、本出願で適用されるシリコーン樹脂成分の一例である。
【0068】
他の例において、硬化性樹脂成分がポリウレタン成分の場合、前記成分は少なくともポリオールとポリイソシアネートを含んでもよい。前記において、ポリオールは少なくとも2つのヒドロキシ基を含む化合物であり、ポリイソシアネートは、少なくとも2つのイソシアネート基を含む化合物である。これらの化合物は、それぞれ単分子性、オリゴマー性または高分子性化合物であってもよい。
【0069】
適用可能なポリオールの種類には大きな制限はなく、例えば、公知のポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールを適用してもよい。前記においてポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのアルキレングリコール部分の炭素数が1~20、1~16、1~12、1~8または1~4であるポリアルキレングリコールや、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体系ポリオール、PTME(poly(tetramethylene glycol))、PHMG(poly(hexamethylene ether glycol))などが知られている。また、前記ポリエステルポリオールとしては、二塩基酸とグリコールから合成されるポリオールとして、前記二塩基酸単位及びグリコール単位を含むポリエステルポリオールまたはポリカプロラクトンポリオール(環状ラクトンの開環重合から得られる)などが知られている。また、前記のようなポリオールの他にもカーボネート系ポリオール、植物性ポリオールヒマシ油、HTPB(Hydroxyl-terminated polybutadiene)やHTPIB(Hydroxyl-terminated polyisobutylene)などの炭化水素系のポリオールも知られている。
【0070】
本出願では、前記のような公知のポリオールの中から適切な種類を選択して使用されてもよい。
【0071】
前記ポリイソシアネートとしても公知の芳香族または脂肪族ポリイソシアネート化合物の中から適切な種類を選択して使用されてもよい。
【0072】
硬化性組成物内において前記硬化性樹脂成分の含量の下限は、前記硬化性組成物の全重量を基準として30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%または80重量%程度であってもよく、その上限は、100重量%未満95重量%、90重量%、85重量%、80重量%、75重量%、70重量%、65重量%、60重量%または55重量%程度であってもよい。前記含量は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。前記含量は、硬化性組成物の全重量を基準としたものであり、ただし、硬化性組成物がフィラー及び/又は溶媒を含む場合に前記フィラー及び溶媒を除いた硬化性組成物の全重量を基準とした割合である。
【0073】
硬化性組成物は、前述した潜熱特性を確保するために、いわゆる、相転移物質(PCM:Phase Change Material)を含んでもよい。相転移物質は、公知のように相転移(phse transition)過程で吸熱または発熱する物質である。前記相転移過程は、等温過程(isothermal process)である。
【0074】
前記相転移物質が吸熱または発熱する相転移は、固体から固体への相転移、固体から液体への相転移、固体から気体への相転移または液体から気体への相転移であってもよい。前述した相転移反応(固体→固体、固体→液体、固体→気体、液体→気体)は、吸熱反応であってもよい。効率の面で固体から液体に相転移する物質が有利であるが、このような物質は、相転移後に液相となるので、硬化体内で保持されにくい。しかし、本出願の硬化体は、前述した重量変化率を示し、したがって、固体から液体に相転移する物質を適用してもよい。したがって、本出願で適用する相転移物質は、固相及び液相との間で相転移が起こる物質であってもよく、前記固相から液相への相転移反応は、吸熱反応である物質であってもよい。
【0075】
本出願で適用される前記相転移物質は、所定の範囲の融点(melting point)を有してもよい。例えば、前記融点の下限は、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃または50℃程度であってもよく、その上限は、100℃、95℃、90℃、85℃、80℃、75℃、70℃、65℃、60℃、55℃、50℃、45℃または40℃程度であってもよい。前記融点は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0076】
適切な温度制御特性を確保するために、本出願の硬化性組成物が含む全相転移物質の中で前述した融点を有する相転移物質の含量の下限は、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%または95重量%程度であってもよく、その上限は、100重量%、99重量%、98重量%、97重量%、96重量%または95重量%程度であってもよい。前記含量は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0077】
他の例において、前記硬化性組成物は、前記相転移物質として、前記範囲の融点を有する相転移物質のみを含んでもよい。
【0078】
相転移物質としては、所定温度区間で所定範囲の潜熱を示すものを使用してもよい。
【0079】
例えば、前記相転移物質が示す潜熱の下限は、100J/g、110J/g、120J/g、130J/g、140J/g、150J/g、160J/g、170J/gまたは180J/g程度であってもよく、その上限は、400J/g、380J/g、360J/g、340J/g、320J/g、300J/g、280J/g、260J/g、240J/g、220J/g、200J/g、180J/gまたは160J/g程度であってもよい。前記潜熱は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0080】
相転移物質が前記潜熱を示す温度区間(温度区間)の下限は、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃または50℃程度であってもよく、その上限は、100℃、95℃、90℃、85℃、80℃、75℃、70℃、65℃、60℃、55℃、50℃、45℃または40℃程度であってもよい。前記潜熱を示す温度区間は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0081】
適切な温度制御特性を確保するために、本出願の硬化性組成物が含む全相転移物質の中で前述した潜熱特性を持つ相転移物質の含量の下限は、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%または95重量%程度であってもよく、その上限は、100重量%、99重量%、98重量%、97重量%、96重量%または95重量%程度であってもよい。前記含量は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0082】
他の例において、前記硬化性組成物は、前記相転移物質として、前述した潜熱特性を持つ相転移物質のみを含んでもよい。
【0083】
前記のような相転移物質の適用を通じて所望の硬化体を形成しうる。
【0084】
相転移物質としては、前述した特性を示すものであれば公知の物質が適用されてもよい。相転移物質としては、無機系物質、有機系物質または共融混合物(eutectic)系物質が知られている。このような物質の中で前述した潜熱特性を持つ物質として、有機系相転移物質が使用されてもよい。
【0085】
有機系相転移物質としては、脂肪酸(Fatty acid)、アルコール(polyalcohol)、ケトン(ketone)、D-乳酸(D-lactic acid)またはパラフィン(paraffin)系物質が知られており、本出願では前記物質のうち1種または2種以上の混合が使用されてもよい。
【0086】
前記脂肪酸(Fattic acid)としては、ギ酸(formic acid)、n-オクタン酸(n-octanoic acid)、ラウリン酸(lauric acid)またはパルミチン酸(palmitic acid)、ステアリン酸(stearic acid)などが挙げられ、アルコール系相転移物質としては、グリセリン(glycerin)、ポリエチレングリコール(PEG)、キシリトール(xylitol)またはエリスリトール(erythritol)などが挙げられ、ケトン系相転移物質としては、2-ペンタデカノン(2-pentadecanone)または4-ヘプタデカノン(4-heptadekanone)などが挙げられる。
【0087】
相転移物質として、パラフィン系物質が使用されてもよい。パラフィン系相転移物質としては、n-ヘプタデカン(n-heptadecane)、n-オクタデカン(n-octadecane)、n-ノナデカン(n-Nonadecane)、n-エイコサン(n-Eicosane)、n-ヘンイコサン(n-henicosane)、n-ドコサン(n-docosane)、n-トリコサン(n-tricosane)、n-ペンタコサン(n-pentacosane)、n-ヘキサコサン(n-hexacosane)、n-ヘプタコサン(n-heptacosane)、n-オクタコサン(n-octacosane)、n-ノナコサン(n-nonacosane)、n-トリアコンタン(n-triacontane)、n-ヘントリアコンタン(n-hentriacontane)、n-ドトリアコンタン(n-dotriacontane)、n-テトラトリアコンタン(n-triatriacontane)またはその他の高次パラフィン(Paraffin C16~C18、Paraffin C13~C24、RT 35 HC、Paraffin C16~C28、Paraffin C20~C33、Paraffin C22~C45、Paraffin C22~C50、Paraffin natural wax811、Paraffin natural wax106など)などが知られている。
【0088】
本出願では、前記公知のパラフィン系物質の中から適正種類を選択して使用してもよい。
【0089】
適切な効果を達成するため、本出願では、前記相転移物質として、前述した範囲の融点を有し、炭素数が5以上のパラフィンを使用してもよい。前記パラフィンの炭素数は、他の例において、5~40または10~30の範囲内であってもよい。このようなパラフィンは、炭素数を有するアルカン(alkane)であってもよい。
【0090】
一例において、前記パラフィン系物質として、n-ノナデカン(n-nonadecane)、n-ドコサン(n-docosane)、n-エイコサン(n-eicosane)、n-ヘンエイコサン(n-heneicosane)、n-トリコサン(n-tricosane)、n-テトラコサン(n-tetracosane)、n-ペンタコサン(n-pentacosane)、n-ヘキサコサン(n-hexacosane)、n-ヘプタコサン(n-heptacosane)、ラウリン酸(lauric acid)及びミリスチン酸(myristic acid)からなる群から選ばれる少なくとも1つが使用されてもよい。
【0091】
適切な特性を具現するために、本出願では、相転移物質として、前述した種類のうち2種以上が適用されてもよい。
【0092】
一例において、硬化性組成物は相転移物質として、互いに異なる種類の第1及び第2の相転移物質を含んでもよい。
【0093】
例えば、前記硬化性組成物は、相転移物質として、融点が40℃超過の第1の相転移物質と融点が40℃以下の第2の相転移物質を含んでもよい。
【0094】
前記第1の相転移物質の融点の下限は、40℃、41℃、42℃、43℃または44℃程度であってもよく、その上限は、100℃、95℃、90℃、85℃、80℃、75℃、70℃、65℃、60℃、55℃、50℃または45℃程度であってもよい。前記第1の相転移物質の融点は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0095】
前記第2の相転移物質の融点の上限は、40℃、39℃、38℃または約37.5℃程度であってもよく、その下限は、25℃、30℃または35℃程度であってもよい。前記第2の相転移物質の融点は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0096】
前記第1の相転移物質と第2の相転移物質の融点の差の下限は、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃または8℃程度であってもよく、その上限は、20℃、19℃、18℃、17℃、16℃、15℃、14℃、13℃、12℃、11℃、10℃、9℃または8℃程度であってもよい。前記融点の差は、第1の相転移物質の融点から第2の相転移物質の融点を引いた値である。前記融点の差は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0097】
前記第1及び第2の相転移物質は、それぞれ所定の範囲内の潜熱を示すことができる。例えば、第1及び第2の相転移物質それぞれの潜熱の下限は、100J/g、110J/g、120J/g、130J/g、140J/g、150J/g、160J/g、170J/gまたは180J/g程度であってもよく、その上限は、400J/g、380J/g、360J/g、340J/g、320J/g、300J/g、280J/g、260J/g、240J/g、220J/g、200J/g、180J/gまたは160J/g程度であってもよい。前記潜熱は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0098】
前記第1及び第2の相転移物質は、前記第1の相転移物質の潜熱と第2の相転移物質の潜熱が互いに異なり、その差の絶対値が所定範囲となるように選ばれてもよい。前記潜熱の差は、第1及び第2の相転移物質のうち潜熱がより大きい物質の潜熱をAとし、潜熱がより小さい物質の潜熱をBとすると、下記式2で計算される値である。
【0099】
[式2]
潜熱の差=100×(A-B)/B
【0100】
前記潜熱の差の絶対値の上限は、100%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%または15%程度であってもよく、その下限は、0%、5%または10%程度であってもよい。前記潜熱の差の絶対値は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0101】
このような特性が満たされるように相転移物質を選ぶことによって所望の硬化体をより効果的に形成しうる。
【0102】
適切な特性を確保するために、第1及び第2の相転移物質としては、前記第1の相転移物質が第2の相転移物質に対して高いオンセット温度を有するように選ばれてもよい。
【0103】
この場合、前記オンセット温度の差の絶対値の下限は、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃または9℃程度であってもよく、その上限は、20℃、19℃、18℃、17℃、16℃、15℃、14℃、13℃、12℃、11℃または10℃程度であってもよい。前記オンセット温度の差の絶対値は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0104】
前記において第1の相転移物質のオンセット温度の下限は、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃または40℃程度であってもよく、その上限は、80℃、75℃、70℃、65℃、60℃、55℃、50℃または45℃程度であってもよい。前記オンセット温度は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0105】
前記において前記第1の相転移物質の潜熱区間(オフセット温度とオンセット温度の差)は、第2の相転移物質の潜熱区間(オフセット温度とオンセット温度の差)に対して狭くてもよい。
【0106】
前記のような場合、前記第1の相転移物質の潜熱区間と第2の相転移物質の潜熱区間の差の絶対値の下限は、0.4℃、0.6℃、0.8℃、1℃、1.1℃、1.2℃、1.3℃、1.4℃、1.5℃、1.6℃または1.7℃程度であってもよく、その上限は、10℃、9℃、8℃、7℃、6℃、5℃、4℃、3℃または2℃程度であってもよい。前記絶対値は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0107】
前記のような場合、前記第1の相転移物質の潜熱区間の下限は、0.5℃、1℃、1.5℃、2℃、2.5℃、3℃、3.5℃、4℃、4.5℃、5℃または5.5℃程度であってもよく、その上限は、20℃、18℃、16℃、14℃、12℃、10℃、8℃または6℃程度であってもよい。前記第1の相転移物質の潜熱区間は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0108】
前記において前記第1の相転移物質は、第2の相転移物質に対して高い潜熱を有してもよい。例えば、前記第1の相転移物質の潜熱の下限は、100J/g、110J/g、120J/g、130J/g、140J/g、150J/g、160J/g、170J/gまたは180J/g程度であってもよく、その上限は、400J/g、380J/g、360J/g、340J/g、320J/g、300J/g、280J/g、260J/g、240J/g、220J/g、200J/g、180J/gまたは160J/g程度であってもよい。前記潜熱は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0109】
前記のような状態で前記第1及び第2の相転移物質は、上述した差(前記式2)の絶対値を有してもよい。
【0110】
すなわち、前記第1及び第2の相転移物質の潜熱の差の絶対値の上限は、100%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%または15%程度であってもよく、その下限は、0%、5%または10%程度であってもよい。前記潜熱の差の絶対値は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0111】
前記のように第1及び第2の相転移物質を選択することにより、所望の温度区間で安定した温度制御性能を確保しうる。例えば、製品の異常発熱ないし発火により温度が漸進的または急激に上昇する場合、第1及び第2の相転移物質の中で低いオンセット温度を有する物質と他の物質が順次作用し、それらのそれぞれの前記潜熱特性によって所望の効果を発揮できる。
【0112】
適切な温度制御特性を確保するために、本出願の硬化性組成物が含む全相転移物質の中で前記第1及び第2の相転移物質の合計の含量の下限は、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%または95重量%程度であってもよく、その上限は100重量%、99重量%、98重量%、97重量%、96重量%または95重量%程度であってもよい。前記含量は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0113】
相転移物質の前記硬化性組成物内での含量として、前記硬化性樹脂成分100重量部に対して前記相転移物質の含量の下限は、20重量部、21重量部、22重量部、23重量部、24重量部、25重量部、26重量部、27重量部、28重量部、29重量部または30重量部程度であってもよく、その上限は、75重量部、74重量部、73重量部、72重量部、71重量部、70重量部、69重量部、68重量部、67重量部、66重量部、65重量部、64重量部、63重量部、62重量部、61重量部、60重量部、59重量部、58重量部、57重量部、56重量部、55重量部、54重量部、53重量部、52重量部、51重量部、50重量部、49重量部、48重量部、47重量部、46重量部、45重量部、44重量部、43重量部、42重量部、41重量部、40重量部、39重量部、38重量部、37重量部、36重量部、35重量部、34重量部、33重量部または32重量部程度であってもよい。前記含量は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0114】
相転移物質として、前記第1及び第2の相転移物質が適用される場合、前記第2の相転移物質の第1の相転移物質100重量部に対する含量の下限は、6重量部、7重量部、8重量部、9重量部、10重量部、11重量部、12重量部、13重量部、14重量部、15重量部、16重量部、17重量部、18重量部、19重量部、20重量部、21重量部、22重量部、23重量部、24重量部、25重量部、26重量部、27重量部、28重量部、29重量部、30重量部、31重量部、32重量部、33重量部または34重量部程度であってもよく、その上限は、95重量部、90重量部、85重量部、80重量部、75重量部、70重量部、65重量部、60重量部、55重量部、50重量部、45重量部、40重量部、35重量部、30重量部、25重量部、20重量部または15重量部程度であってもよい。前記含量は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。
【0115】
硬化性組成物は、任意の追加成分としてフィラー、例えば、熱伝導性フィラーを含んでもよい。これらのフィラーは、相転移物質の低い熱伝導度を補完する。
【0116】
熱伝導性フィラーは特に制限されず、例えば、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、ボヘマイト(AlOOH)、ハイドロマグネサイト、マグネシア、アルミナ、窒化アルミニウム(AlN,aluminum nitride)、窒化ホウ素(BN,boron nitride)、窒化ケイ素(Si,silicon nitride)、炭化ケイ素(SiC)、酸化亜鉛(ZnO)または酸化ベリリウム(BeO)などの無機フィラーが挙げられるが、これに制限されるものではない。前記フィラーの中から1種または2種以上が選ばれてもよい。低密度の硬化体を形成しようとする場合には、前記フィラー成分の中から比重の小さいフィラー(例えば、水酸化アルミニウムなど)が選ばれてもよい。
【0117】
前記においてフィラーの形態は特に制限されることなく、例えば、球状、針状、板状、その他の無定形のフィラーが使用されてもよい。
【0118】
一例において、前記フィラーとしては、平均粒径が10μm~200μmの範囲内であるフィラーを使用してもよい。前記平均粒径は、後述する実施例に記載された方式で測定したD50粒径である。このような粒径のフィラーの適用を通じて所望の効果をより効率的に確保しうる。
【0119】
前記フィラーの粒径は、他の例において、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上または40μm以上であるか、または180μm以下、160μm以下、140μm以下、120μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下または50μm以下程度であってもよい。
【0120】
硬化性組成物内において前記熱伝導性フィラーの含量は、目的に応じて調節される。例えば、硬化性組成物において前記熱伝導性フィラーは、前記硬化性樹脂成分100重量部に対して約200重量部以下で含まれてもよい。前記比率は、他の例において、195重量部以下、190重量部以下、185重量部以下、180重量部以下、175重量部以下、170重量部以下、165重量部以下、160重量部以下、155重量部以下、150重量部以下、145重量部以下、140重量部以下、135重量部以下、130重量部以下、125重量部以下、120重量部以下、115重量部以下、110重量部以下、105重量部以下、100重量部以下、95重量部以下、90重量部以下、85重量部以下、80重量部以下、75重量部以下、70重量部以下、65重量部以下、60重量部以下、55重量部以下、50重量部以下、45重量部以下または40重量部以下であるか、または10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、25重量部以上、30重量部以上、35重量部以上、40重量部以上、45重量部以上、50重量部以上、55重量部以上、60重量部以上、65重量部以上、70重量部以上または75重量部以上程度であってもよい。
【0121】
前記硬化性組成物は、さらに任意の追加成分として、軽量化の観点から中空フィラー(hollow filler)をさらに含んでもよい。
【0122】
前記中空フィラーの適用を通じて軽量化に寄与しうる。
【0123】
例えば、前記フィラーは、D50粒径(平均粒径)が10μm~100μmの範囲内であってもよい。前記D50粒径は、他の例において、12μm以上、14μm以上、16μm以上、18μm以上、20μm以上、22μm以上、24μm以上、26μm以上、28μm以上、30μm以上、32μm以上、34μm以上、36μm以上、38μm以上、40μm以上、42μm以上、44μm以上、46μm以上、48μm以上、50μm以上、52μm以上、54μm以上、56μm以上または58μm以上であるか、または98μm以下、96μm以下、94μm以下、92μm以下、90μm以上、88μm以下、86μm以下、84μm以下、82μm以下、80μm以下、78μm以下、76μm以下、74μm以下、72μm以下、70μm以下、68μm以下、66μm以下、64μm以下、62μm以下または60μm以下程度であってもよい。
【0124】
前記中空フィラーは、密度が約0.05~1g/mlの範囲内であってもよい。前記密度は、他の例において、0.01g/ml以上、0.15g/ml以上、0.2g/ml以上、0.25g/ml以上、0.3g/ml以上、0.35g/ml以上、0.4g/ml以上、0.45g/ml以上、0.5g/ml以上、0.55g/ml以上または0.6g/ml以上であるか、または0.95g/ml以下、0.9g/ml以下、0.85g/ml以下、0.8g/ml以下、0.75g/ml以下、0.7g/ml以下、0.65g/ml以下、0.6g/ml以下、0.55g/ml以下、0.5g/ml以下、0.45g/ml以下、0.4g/ml以下、0.35g/ml以下、0.3g/ml以下、0.25g/ml以下、0.2g/ml以下または0.15g/ml以下程度であってもよい。
【0125】
中空フィラーとしては、前記粒径及び/又は密度を有し、前記硬化性ポリオルガノシロキサン成分と均一に混合できるものであれば、特に制限なく様々な種類を適用しうる。
【0126】
例えば、中空フィラーとしては、公知の有機フィラー、無機フィラーまたは有無機混合フィラーを使用してもよい。中空フィラーが適用される場合でもセル(shell)部位が有機物からなる有機粒子、無機物からなる無機粒子及び/又は有無機物質からなる有無機粒子などを使用してもよい。このような粒子としては、PMMA(poly(methyl methacrylate))などのアクリル粒子、エポキシ粒子、ナイロン粒子、スチレン粒子及び/又はスチレン/ビニルモノマーの共重合体粒子などや、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化インジウム粒子、酸化スズ粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化亜鉛粒子及び/又はチタニア粒子などの無機粒子などが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0127】
一例において前記中空フィラーとしては、セル(shell)部位がソーダライム(soda-lime)材料からなる粒子(ソーダライムフィラー)、セル部位がソーダライムボロシリケート(soda-lime borosilicate)材料からなる粒子(ソーダライムボロシリケートフィラー)、セノスフェア(cenosphere)フィラーまたはその他のシリカ粒子を適用しうる。
【0128】
前記中空フィラーが含まれる場合、その割合には特に制限はなく、硬化体の物性を損なうことなく、所望の軽量化が可能な範囲で適正割合で選ばれてもよい。
【0129】
硬化性組成物は、前記成分にさらに必要な他の成分を含んでもよい。例えば、硬化性組成物は、前記成分の他に必要な場合に追加添加剤、例えば、触媒、顔料や染料、分散剤、チキソトロピー付与剤、難燃剤などをさらに含んでもよい。
【0130】
このような硬化性組成物は、溶剤型組成物、水系組成物または無溶剤型組成物であってもよく、適切には無溶剤型組成物であってもよい。
【0131】
硬化性組成物は、前述したように1液型組成物であるか、または2液型組成物であってもよく、場合によっては2液型組成物の主剤または硬化剤パートであるか、または前記主剤及び硬化剤パートの混合物であってもよい。
【0132】
また、硬化性組成物が2液型組成物の場合に硬化性樹脂成分以外に他の成分の主剤及び硬化剤パート内での割合には特に制限はない。例えば、前記相転移物質及び/又はフィラーは、主剤または硬化剤パートの両方に含まれてもよく、主剤及び硬化剤パートに分けられて含まれてもよい。
【0133】
本出願の硬化性組成物は、様々な用途に好適に使用され、特に発熱製品に適用されて前記製品の熱を制御する素材として使用されてもよい。
【0134】
一例において、前述した潜熱特性、重量変化率、密度及び/又は硬度特性を満たすために、前記硬化性組成物の製造方法が選ばれてもよい。
【0135】
例えば、前記硬化性組成物は、前記相転移物質が溶融している状態で前記相転移物質と硬化性樹脂成分を混合して製造してもよい。このような段階を通じて所望の硬化性組成物をより効果的に提供しうる。
【0136】
したがって、前記硬化性組成物の製造方法は、溶融した前記相転移物質と前記硬化性樹脂成分を混合する段階を含んでもよく、具体的には、前記相転移物質を溶融させる段階と溶融した前記相転移物質と前記硬化性樹脂成分を混合する段階を含んでもよい。
【0137】
前記相転移物質を溶融させる方法は特に制限されず、例えば、前記相転移物質の融点以上の温度で前記相転移物質を保持して溶融させることができる。
【0138】
一例において、前記相転移物質の保持温度は、前記相転移物質の融点に対して10℃~100℃以上高い温度であってもよい。前記温度は、他の例において、前記相転移物質の融点に対して15℃以上、20℃以上、25℃以上または30℃以上高い温度であるか、及び/又は前記相転移物質の融点に対して95℃以下、90℃以下、85℃以下、80℃以下、75℃以下、70℃以下、65℃以下、60℃以下、55℃以下、50℃以下、45℃以下、40℃以下、35℃以下または30℃以下と低い温度であってもよい。
【0139】
このような温度範囲で溶融させた相転移物質と硬化性樹脂成分を混合して硬化性組成物を製造することにより、所望の特性の硬化性組成物を効率的に製造してもよい。前記溶融した相転移物質と硬化性樹脂成分の混合時の温度は、前記相転移物質を溶融させた温度と同じ範囲内の温度であるか、またはそれより低い温度であってもよい。
【0140】
一例において、前記混合は、前記相転移物質の融点に対して10℃~100℃以上の高い温度で行われてもよい。前記温度は他の例において、前記相転移物質の融点に対して15℃以上、20℃以上、25℃以上または30℃以上高い温度であるか、または前記相転移物質の融点に対して95℃以下、90℃以下、85℃以下、80℃以下、75℃以下、70℃以下、65℃以下、60℃以下、55℃以下、50℃以下、45℃以下、40℃以下、35℃以下または30℃以下と低い温度であってもよい。
【0141】
本出願は、さらに前述した硬化性組成物の硬化体に関する。前記硬化性組成物を硬化させて硬化体を得る方法には制限がなく、前記硬化性組成物の類型に応じて適切な硬化方式が適用されればよい。例えば、エネルギー線硬化型の場合、組成物に紫外線などのエネルギー線を照射する方式、湿気硬化型の場合、適切な湿気下で組成物を保持する方式、熱硬化型の場合、適切な熱を組成物に印加する方式、常温硬化型の場合、常温で組成物を保持する方式、ハイブリッド硬化型の場合、2種以上の硬化方式を適用する方式などを使用してもよい。前述したように適切な例において、前記硬化性組成物は常温硬化型であってもよい。
【0142】
本出願は、さらに前記組成物またはその硬化体を含む製品に関する。本出願の硬化性組成物またはその硬化体は、発熱部品、発熱素子または発熱製品の熱を制御する素材として有用に適用されてもよい。したがって、前記製品は、発熱部品または発熱素子または発熱製品を含んでもよい。用語の発熱部品、素子または製品は、使用過程で熱を発生させる部品、素子または製品を意味し、その種類は特に制限されるものではない。代表的な発熱部品、素子または製品としては、バッテリーセル、バッテリーモジュールまたはバッテリーパックなどを含む様々な電気/電子製品がある。
【0143】
本出願の製品は、例えば、前記発熱部品、素子または製品と前記発熱部品などに隣接して存在する前記硬化性組成物(または前記2液型組成物)やその硬化体を含んでもよい。このような場合に前述したように、前記発熱部品、素子または製品は、適正駆動温度が約15℃~60℃の範囲内である部品、素子または製品であってもよい。すなわち、本出願の硬化性組成物は、発熱部品、素子または製品に隣接して配置され、製品の駆動温度を前記範囲内で均一に保持することに有用である。
【0144】
本出願の製品を構成する具体的な方法は特に制限されず、本出願の硬化性組成物または2液型組成物またはその硬化体が放熱素材として適用される場合、公知の様々な方式で前記製品を構成してもよい。
【0145】
一例において、前記硬化性組成物は、バッテリーモジュールまたはバッテリーパックの構成時にポッティング材(potting material)として使用されてもよい。ポッティング材は、バッテリーモジュールやバッテリーパック内の複数の単位バッテリーセルの少なくとも一部または全部と接触しながらこれを覆っている素材であってもよい。本出願の前記硬化性組成物またはその硬化体は、前記ポッティング材として適用されたときにバッテリーモジュールやパックのバッテリーセルから発生する熱を制御でき、連鎖発火または爆発などを防止でき、前記モジュール、パックまたはバッテリーセルの駆動温度を均一に保持できる。本出願では、さらに硬化前には粘度やチキソトロピーが適正レベルに制御されてポッティング効率に優れており、硬化後に不要な気泡の発生なしに安定したポッティング構造を形成する硬化性組成物を提供しうる。本出願では、硬化後に低密度を示し、体積に対して軽量でありながら高出力のバッテリーモジュールやパックを提供できる硬化性組成物を提供しうる。本出願では、さらに絶縁性などを含む要求物性にも優れた硬化性組成物を提供しうる。
【0146】
この場合、バッテリー関連技術として、前記硬化性組成物は、バッテリーモジュールやバッテリーパックなどの放熱素材や車両用OBC(On Board Charger)の放熱素材として適用されてもよい。したがって、本出願は、さらに前記硬化性組成物またはその硬化体を放熱素材として含むバッテリーモジュール、バッテリーパックまたはオンボードチャージャー(OBC)に関するものであってもよい。前記バッテリーモジュール、バッテリーパックまたはオンボードチャージャーにおいて前記硬化性組成物または硬化体の適用位置や適用方法は特に制限されず、公知の方式が適用されてもよい。また、本出願の硬化性組成物は、前記用途に制限されず、優れた放熱特性、保管安定性及び接着力が要求される様々な用途に効果的に適用されてもよい。
【0147】
本出願の他の例において、本出願は、前記硬化性組成物の硬化体を有する電子装備または装置に関するものであってもよい。
【0148】
電子装備または装置の種類は特に制限されず、例えば、車両用AVN(audio video navigation)や電気自動車用OBC(On Board Charger)モジュール、LEDモジュールまたはICチップとこれを含むコンピュータやモバイル機器などが挙げられる。
【0149】
前記硬化性組成物の硬化体は、前記装備または装置内で熱を発散し、衝撃に対する耐久性、及び絶縁性などを付与しうる。
【0150】
前記硬化性組成物は、一例においてバッテリーポッティング材として使用されてもよい。
【0151】
本出願は、さらに前記ポッティング材を適用したバッテリーモジュールに関する。このようなバッテリーモジュールは、同一体積に対して軽量でありながら高出力を示すことができ、バッテリーセルなどで発生した熱が適切に制御され、連鎖発火などの問題点も発生しない。
【0152】
前記バッテリーモジュールは、一例において基板、前記基板上に配置された複数のバッテリーセル、及び前記複数のバッテリーセルの少なくとも一部または全体を覆っている前記硬化性組成物またはその硬化物を含んでもよい。
【0153】
前記構造において、前記硬化性組成物またはその硬化物(ポッティング材)は、一例において前記複数のバッテリーセルの全面(基板側と接触するバッテリーセルの表面を除く)と接触しながら前記バッテリーセルを覆っているか(図1の構造)、または複数のバッテリーセルの上部とだけ接触していてもよい(図2の構造)。
【0154】
図1及び図2は、前記のようなバッテリーモジュールの構造の模式図であり、基板10、バッテリーセル20及び前記ポッティング材(30、前記硬化性組成物またはその硬化物)を含む構造を示す図である。バッテリーモジュールは、バッテリーセル20を前記基板10に固定する接着素材40をさらに含んでもよく、一例において、前記接着素材40は、熱伝導性を有するように構成されてもよい。
【0155】
前記硬化性組成物またはその硬化物がポッティング材として適用される限り、バッテリーモジュールの具体的な構成、例えば、前記バッテリーセル、基板及び/又は接着素材の種類は特に制限されず、公知の素材が適用されてもよい。
【0156】
例えば、前記バッテリーセルとしては、公知のパウチ型、角型または円筒形のバッテリーセルが適用されてもよく、基板や接着素材としても公知の素材が適用されてもよい。
【0157】
前記バッテリーモジュールの製造方法は特に制限されず、例えば、基板上に形成された複数のバッテリーセルの上部に前記硬化性組成物を注入し、必要に応じて硬化させる段階を経て形成してもよい。
【0158】
本出願の硬化性組成物は、適切な粘度及びチキソトロピー性を有するので、非常に隣接して配置されたバッテリーセルの間を効率的に充填でき、ポッティング材を形成した後に所望の断熱性と遮熱性などを示すことができる。
【0159】
例えば、前記バッテリーモジュールやバッテリーパックなどの製品は、前記硬化性組成物を適正な温度に保持して溶融させる段階と、前記段階で溶融した硬化性組成物を発熱部品に適用する段階を含む方法で製造してもよい。
【0160】
前記硬化性組成物を溶融させる段階における温度は、具体的な適用態様に応じて定めることができる。例えば、前記発熱製品が前述したバッテリーセル、バッテリーモジュールやバッテリーパックの場合、前記溶融させる段階における温度の下限は、40℃または50℃程度であってもよく、その上限は、80℃または70℃程度であってもよい。前記温度は、前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上であるか、または前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下であるか、または前述した下限のうち任意のいずれかの下限超過またはそれ以上でありながら、前述した上限のうち任意のいずれかの上限未満または以下の範囲内であってもよい。前記温度が低すぎると、硬化性組成物の流動性が低下するか、または溶融後に硬化性組成物の硬化速度が速すぎて適用が容易ではないこともあり、高すぎると、発熱製品に損傷が発生するか、または硬化性組成物内で密度が相対的に低い相転移物質が表面に移行して不均一な硬化体が生成されることもある。
【0161】
前記溶融された硬化性組成物を発熱部品に適用する方法には特に制限はなく、公知のポッティング工程やその他の工程を通じて硬化性組成物は適用されてもよい。
【0162】
また、必要な場合、前記適用後に前記硬化性組成物を硬化させる段階が行われてもよいが、このとき、硬化方法は硬化性組成物の類型によって適正な方法が選ばれてもよい。
【発明の効果】
【0163】
本出願は、硬化性組成物及びその用途を提供しうる。本出願の硬化性組成物は、駆動または保持過程で熱を発生させる製品に適用され、前記熱を処理できる材料として使用可能な硬化性組成物を提供しうる。本出願の硬化性組成物は、熱を発生させる素子が複数集積されている製品に適用され、前記製品の温度を均一に保持しながら、前記素子から発生する熱を効率的に処理しうる。また、本出願の硬化性組成物は、前記のような製品に適用されて前記複数の素子のうちいずれかの素子に異常発熱、爆発または発火が発生する場合でもそのような発熱、爆発または発火の隣接する他の素子への影響を防止または最小化できる。本出願の硬化性組成物は、さらに前記のような機能を長期間にわたって安定的に行ってもよい。本出願は、さらに前記のような硬化性組成物によって形成された硬化体または硬化性組成物または前記硬化体の用途を提供しうる。
【図面の簡単な説明】
【0164】
図1図1は、本出願の例示的なバッテリーモジュールの模式図である。
図2図2は、本出願の例示的なバッテリーモジュールの模式図である。
図3図3は、実施例1の硬化体に対するDSC分析結果を示す図である。
図4図4は、実施例2の硬化体に対するDSC分析結果を示す図である。
図5図5は、実施例3の硬化体に対するDSC分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0165】
以下、実施例を通じて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲が下記実施例によって制限されるものではない。
【0166】
1.潜熱の測定
潜熱は、以下の方式で評価した。約3~5mg程度の試料をDSC(Differential Scanning Calorimeter)装備(TA instrument社,Q200モデル)にロードした。前記装備の潜熱評価のための温度区間を-20℃から200℃に設定した後、約10℃/分の速度で昇温しながら吸熱区間を測定し、前記吸熱区間で確認された吸熱ピークを積分して潜熱(単位:J/g)を計算した。前記吸熱ピークのleft onsetでの変曲点における温度を潜熱区間開始温度(オンセット温度)とし、right onset地点での変曲点における温度を潜熱区間終了温度(オフセット温度)とし、潜熱区間の広さは、前記オフセット温度からオンセット温度を引いた値である。
【0167】
相転移物質の潜熱測定時には、前記試料として当該相転移物質を使用した。
【0168】
硬化体の潜熱測定時に試料は、硬化性組成物を硬化させて製造した。具体的には、前記硬化性組成物の主剤及び硬化剤パートを1:1の体積比で混合して混合物を製造し、前記混合物を80℃のチャンバー(chamber)内で1時間程度放置した後、注入器でアルミニウム皿(dish))に約10mm程度の厚さになるように塗布し、常温(約25℃)で24時間保持して硬化体を製造した。
【0169】
一方、前記において相転移物質の融点は、前記吸熱ピークの頂点における温度と定義した。
【0170】
2.温度制御性能試験
硬化性組成物の主剤及び硬化剤パートを1:1の体積比で混合した状態で、80℃のチャンバー(chamber)内で1時間程度保持した。次に、前記混合物を注入器でアルミニウム皿(dish)に約10mm程度の厚さになるように塗布し、常温(約25℃)で約24時間保持して硬化させた。硬化体を横及び縦の長さがそれぞれ3cmの四角形に裁断して試片を製造した。ホットプレート(AS ONE社,NDK-1A-Fモデル)上にKタイプthermocouple(OMEGA社製)を付着し、その上に前記試片を密着させてテープで固定した。次に、ホットプレートの温度を35℃から約5.45℃/分の速度で上昇させながら、前記温度上昇の開始時点から11分が経過した時点で温度を測定した(温度データロガー:FLUKE社のIR thermometers566モデル)。
【0171】
3.硬度測定
硬化性組成物の主剤及び硬化剤パートを1:1の体積比で混合した状態で80℃のチャンバー(chamber)内で1時間程度保持し、次に、前記混合物を注入器でアルミニウム皿(dish)に約10mm程度の厚さになるように塗布した後、常温(約25℃)で約24時間保持して硬化させ、その硬化体についてASTMD2240規格に従って硬度を測定した。硬度の測定時にはASKER Durometer機器を使用した。平らな状態のサンプルの表面に約1.5kg程度の荷重を加えて初期硬度を測定し、15秒後に安定化した測定値で確認して硬度を評価した。ショア(Shore)AまたはショアOO硬度を測定した。
【0172】
4.密度の測定
硬化体の密度は、ASTMD792規格に従ってgas pycnometer装備(モデル名:BELPYCNO,メーカー:MicrotracBEL社)を使用して確認した。前記装備を使用してヘリウムガスの注入による常温での密度測定値を確認しうる。前記硬化体は、実施例または比較例で製造された主剤及び硬化剤パートを1:1の体積比で混合した状態で80℃のチャンバー(chamber)内で1時間程度保持し、次に、前記混合物を注入器でアルミニウム皿(dish)に約10mm程度の厚さになるように塗布した後、常温(約25℃)で約24時間保持して硬化させて製造した。
【0173】
5.GPC(Gel Permeation Chromatograph)
材料の分子量特性は、GPC(Gel permeation chromatography)を使用して測定した。5mLのバイアル(vial)に分析対象材料を入れ、約5mg/mL程度の濃度になるようにトルエンに希釈する。その後、Calibration用の標準試料と分析しようとする材料をsyringe filter(pore size:0.45μm)を通じて濾過させた後、測定した。分析プログラムは、Agilent technologies社のChemStationを使用し、試料のelution timeをcalibration curveと比較して重量平均分子量(Mw)または水平均分子量(Mn)をそれぞれ求めた。GPCの測定条件は、以下の通りである。
【0174】
<GPC測定条件>
機器:Agilent technologies社の1200 series
カラム:Polymer laboratories社のPLgel mixed B2個使用
溶媒:トルエン
カラム温度:40℃
サンプル濃度:5mg/mL、10μL注入
標準試料:ポリスチレン(Mp:3900000、723000、316500、52200、31400、7200、3940、485)
【0175】
6.フィラーの粒径分析
フィラーの粒径は、ISO-13320に準拠してMarven社のMASTERSIZER 3000装備を用いて測定し、測定時に溶媒としてはEthanolを使用した。フィラーの粒径としてはD50粒径を測定し、これを平均粒径とした。前記D50粒径は、粒度分布の体積基準累積50%での粒径(メディアン径)として、体積基準で粒度分布を求め、全体積を100%とした累積曲線において累積値が50%となる地点での粒子径である。
【0176】
7.重量変化(△W)
硬化性組成物の主剤パートと硬化剤パートを1:1の体積比で混合して混合物を製造した。前記混合物を80℃のチャンバー(chamber)に1時間程度保持し、注入器でアルミニウム皿(dish)に約10mm程度の厚さになるように塗布した。塗布された混合物を常温(約25℃)で24時間保持して硬化させて硬化体を製造した。硬化体を横及び縦の長さがそれぞれ1cmの四角形に裁断して試片(重量:W,単位g)を製造した。試片をfilter paper上に載置した状態で約80℃のチャンバー内で約24時間保持した後に取り出し、再び試片の重量(重量:W,単位g)を測定した。前記過程で測定された重量を下記式Aに代入して重量変化率(△W)を測定した。同一の硬化性組成物から形成された4つの試片に対してそれぞれ重量変化率を測定し、その平均値を下記表1及び2に記載した。
【0177】
[式A]
△W=100×(W-W)/W
【0178】
実施例1.
主剤パートの製造
硬化性樹脂成分として、シリコーン樹脂成分(Lord社製,CoolTherm SC-6705)を使用した。前記シリコーン樹脂成分の主剤と相転移物質を混合して主剤パートを製造した。相転移物質としては、ドコサン(n-docosane)とエイコサン(n-eicosane)を使用した。DSC分析において、前記ドコサンは、融点が約44℃程度であり、潜熱は、約170J/g程度であり、前記エイコサンは、融点が約36℃程度であり、潜熱が約152J/g程度であった。また、前記ドコサンの潜熱区間開始温度(オンセット温度)は、約41.53℃程度であり、潜熱区間終了温度(オフセット温度)は、約46.99℃程度であり、前記エイコサンの潜熱区間開始温度(オンセット温度)は、約31.79℃程度であり、潜熱区間終了温度(オフセット)は、約38.96℃程度であった。したがって、前記ドコサンの潜熱区間(オフセット温度からオンセット温度を引いた値)は、約5.46℃程度であり、前記エイコサンの潜熱区間は、約7.17℃程度である。前記シリコーン樹脂成分の重量平均分子量(Mw)は、約28,000g/mol程度であった。前記混合時において混合比率は、76.1:17.9:6の重量比率(主剤:n-docosane:n-eicosane)とした。主剤パートの製造時に、まず、相転移物質を約80℃の温度で1時間保持して完全に溶融させ、溶融した相転移物質を主剤などと混合し、380rpmで30分間攪拌して主剤パートを製造した。前記相転移物質と主剤の混合は、約80℃程度の温度で行った。
【0179】
硬化剤パートの製造
シリコーン樹脂成分(Lord社製,CoolTherm SC-6705)の硬化剤と相転移物質を混合して硬化剤パートを製造した。相転移物質としては、主剤パートの製造時と同じものを使用した。前記混合時において混合比率は、76.1:17.9:6の重量比率(硬化剤:n-docosane:n-eicosane)とした。硬化剤パートの製造時にまず、相転移物質を約80℃の温度で1時間保持して完全に溶融させ、溶融した相転移物質を主剤などと混合し、380rpmで30分間攪拌して主剤パートを製造した。前記相転移物質と硬化剤の混合は、約80℃程度の温度で行った。
【0180】
硬化性組成物
前記主剤及び硬化剤パートを体積比が1:1となるように準備して硬化性組成物を製造した。前記硬化性組成物は、常温硬化型であり、前記硬化性組成物を常温で約12時間以上保持して硬化させることができる。図3は、前記硬化体に対して行ったDSC分析結果を示す図である。
【0181】
実施例2.
主剤及び硬化剤パートの製造時にさらに平均粒径(D50粒径)が約50μm程度の水酸化アルミニウムフィラー(ATH)を配合し、主剤パートの配合時の配合割合を約48.7:11.4:3.9:36の重量比率(主剤:n-docosane:n-eicosane:ATH)とし、硬化剤パートの配合時の配合割合を約48.7:11.4:3.9:36の重量比率(硬化剤:n-docosane:n-eicosane:ATH)としたことを除いては、実施例1と同様に主剤パート、硬化剤パート及び硬化性組成物をそれぞれ製造した。図4は、前記硬化体に対して行ったDSC分析結果を示す図である。
【0182】
実施例3.
主剤及び硬化剤パートの製造時にさらに平均粒径(D50粒径)が約50μm程度の水酸化アルミニウムフィラー(ATH)を配合し、主剤パートの配合時の配合割合を約48.7:13.4:1.9:36の重量比率(主剤:n-docosane:n-eicosane:ATH)とし、硬化剤パートの配合時の配合割合を約48.7:13.4:1.9:36の重量比率(硬化剤:n-docosane:n-eicosane:ATH)としたことを除いては、実施例1と同様に主剤パート、硬化剤パート及び硬化性組成物をそれぞれ製造した。図5は、前記硬化体に対して行ったDSC分析結果を示す図である。
【0183】
比較例1.
主剤及び硬化剤パートの製造時に相転移物質として、n-ドコサン1種のみを使用し、さらに平均粒径(D50粒径)が約50μm程度の水酸化アルミニウムフィラー(ATH)を配合し、主剤パートの配合時の配合比率を約50.8:15.9:33.3の重量比率(主剤:n-docosane:ATH)とし、硬化剤パートの配合時の配合比率を約50.8:15.9:33.3の重量比率(硬化剤:n-docosane:ATH)としたことを除いては、実施例1と同様に主剤パート、硬化剤パート及び硬化性組成物をそれぞれ製造した。
【0184】
比較例2.
主剤及び硬化剤パートの製造時に相転移物質として、n-エイコサン1種のみを使用し、主剤パートの配合時の配合割合を約76:24の重量比率(主剤:n-eicosane)とし、硬化剤パートの配合時の配合割合を約76:24の重量割合(硬化剤:n-eicosane)としたことを除いては、実施例1と同様に主剤パート、硬化剤パート及び硬化性組成物をそれぞれ製造した。
【0185】
比較例3.
主剤パートの配合時の配合比率を約76.1:22.4:1.5の重量比率(主剤:n-docosane:n-eicosane)とし、硬化剤パートの配合時の配合比率を約76.1:22.4:1.5の重量比率(硬化剤:n-docosane:n-eicosane)としたことを除いては、実施例1と同様に主剤パート、硬化剤パート及び硬化性組成物をそれぞれ製造した。
【0186】
比較例4.
主剤パートの製造
硬化性樹脂成分として、シリコーン樹脂成分(Lord社製,CoolTherm SC-6705)を使用した。前記シリコーン樹脂成分の主剤と相転移物質及び平均粒径(D50粒径)が約50μm程度の水酸化アルミニウムフィラー(ATH)を配合して主剤パートを製造した。相転移物質としては、実施例1で使用したものと同一のドコサン(n-docosane)とパラフィン(OCI)を使用した。前記パラフィン(OCI)は、DSC分析において融点が約62℃程度であり、潜熱は、約170J/g程度であり、潜熱区間開始温度(オンセット温度)は、約45.89℃程度であり、潜熱区間終了温度(オフセット温度))は、約67.44℃程度であった。前記混合時において混合比率は48.6:11.4:4:36の重量比率(主剤:n-docosane:paraffin(OCI):ATH)とした。混合は、実施例1と同様にして行った。
【0187】
硬化剤パートの製造
シリコーン樹脂成分(Lord社製,CoolTherm SC-6705)の硬化剤と相転移物質及び水酸化アルミニウムフィラーを混合して硬化剤パートを製造した。相転移物質及びアルミニウムフィラーとしては、主剤パートの製造時と同じものを使用した。前記混合時において混合比率は、48.6:11.4:4:36の重量比率(硬化剤:n-docosane:paraffin(OCI):ATH)とした。混合は、実施例1と同様にして行った。
【0188】
硬化性組成物
前記主剤及び硬化剤パートを体積比が1:1となるように準備して硬化性組成物を製造した。前記硬化性組成物は、常温硬化型であり、前記硬化性組成物を常温で約12時間以上保持して硬化させることができる。図3は、前記硬化体に対して行ったDSC分析結果を示す図である。
【0189】
比較例5.
主剤パートの製造
硬化性樹脂成分として、シリコーン樹脂成分(Lord社製、CoolTherm SC-6705)を使用した。前記シリコーン樹脂成分の主剤と相転移物質及び平均粒径(D50粒径)が約50μm程度の水酸化アルミニウムフィラー(ATH)を配合して主剤パートを製造した。相転移物質としては、比較例4で適用したパラフィン(OCI)と前記パラフィンとは異なる第2のパラフィン(Junsei)を使用した。前記パラフィン(Junsei)は、DSC分析において融点が約28℃程度であり、潜熱は、約175J/g程度であり、潜熱区間開始温度(オンセット温度)は、約27.28℃程度であり、潜熱区間終了温度(オフセット温度)は、約29.15℃程度であった。前記混合時において混合比率は、48.6:7.7:7.7:36の重量比率(主剤:paraffin(OCI):paraffin(Junsei):ATH)とした。混合は実施例1と同様にして行った。
【0190】
硬化剤パートの製造
シリコーン樹脂成分(Lord社製,CoolTherm SC-6705)の硬化剤と相転移物質及び水酸化アルミニウムフィラーとを混合して硬化剤パートを製造した。相転移物質及びアルミニウムフィラーとしては、主剤パートの製造時と同じものを使用した。前記混合時において混合比率は、48.6:7.7:7.7:36の重量比率(主剤:paraffin(OCI):paraffin(Junsei):ATH)とした。混合は、実施例1と同様にして行った。
【0191】
硬化性組成物
前記主剤及び硬化剤パートを体積比が1:1となるように準備して硬化性組成物を製造した。前記硬化性組成物は、常温硬化型であり、前記硬化性組成物を常温で約12時間以上保持して硬化させることができる。図3は、前記硬化体に対して行ったDSC分析結果を示す図である。
【0192】
前記実施例及び比較例に対する評価結果をまとめると、下記表1及び2の通りである。
【0193】
【表1】
【0194】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】