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特表2024-532937抽出イオンビームの均一性を制御するための装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-10
(54)【発明の名称】抽出イオンビームの均一性を制御するための装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/08 20060101AFI20240903BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20240903BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20240903BHJP
【FI】
H01J27/08
H01J37/08
H01J37/317 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515850
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 US2022040773
(87)【国際公開番号】W WO2023038772
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】17/473,101
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シューアー, ジェイ ティ.
(72)【発明者】
【氏名】ライト, グラハム
(72)【発明者】
【氏名】クルンチ, ピーター エフ.
(72)【発明者】
【氏名】リハンスキー, アレクサンドル
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101DD03
5C101DD18
5C101DD20
5C101DD23
5C101DD25
5C101DD27
5C101DD29
5C101DD38
(57)【要約】
均一性が改善されたリボンイオンビームを抽出することができるイオン源が開示される。イオン源の壁のうちの1つは、チャンバに面するその内面に突出部を有する。突出部は、自由電子及びイオンのシンクとして機能する損失面積を生成する。これにより、突出部近傍のプラズマ密度が低減され、突出部近傍のビーム電流を変更することによって、イオン源から抽出されるリボンイオンビームの均一性が改善され得る。突出部の形状は、所望の均一性を実現するために変更されてよい。突出部はまた、円筒形状イオン源に利用されてもよい。特定の複数の実施形態では、突出部が、機械的に調整可能な複数の突出部要素によって形成される。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端、第2の端、及び前記第1の端と前記第2の端を接続する複数の壁を備える、チャンバであって、前記複数の壁のうちの1つは、高さよりも大きい幅を有する抽出開口を有する抽出プレートである、チャンバ、並びに
前記チャンバ内にプラズマを生成するためのプラズマ生成器を備え、
前記抽出プレートとは異なる前記複数の壁のうちの1つは、前記チャンバの内部に向けて延在する突出部を有する突出壁である、イオン源。
【請求項2】
前記突出部は、少なくとも1箇所において少なくとも3mmチャンバの中へ延在する、請求項1に記載のイオン源。
【請求項3】
前記突出部は、前記第1の端から前記第2の端まで一定の曲率半径を有する、請求項1に記載のイオン源。
【請求項4】
前記突出部は三角形状を有する、請求項1に記載のイオン源。
【請求項5】
前記突出部は台形状を有する、請求項1に記載のイオン源。
【請求項6】
前記突出壁は、前記抽出プレートに対向する、請求項1に記載のイオン源。
【請求項7】
前記突出壁は、前記抽出プレートに隣接している、請求項1に記載のイオン源。
【請求項8】
前記プラズマ生成器は、前記第1の端に配置された間接加熱カソードを備える、請求項1に記載のイオン源。
【請求項9】
前記突出部の最大厚さが、幅方向において前記抽出開口の中心で生じる、請求項1に記載のイオン源。
【請求項10】
第1の端、第2の端、及び前記第1の端と前記第2の端を接続する円筒形状ハウジングを備える、チャンバであって、高さよりも大きい幅を有する抽出開口が、前記円筒形状ハウジングに配置されている、チャンバ、並びに
前記チャンバ内にプラズマを生成するためのプラズマ生成器を備え、
突出部が、前記円筒形状ハウジングから前記チャンバの内部に向けて延在する、イオン源。
【請求項11】
前記突出部は、前記抽出開口から180°だけオフセットされるように、前記抽出開口に対向して前記円筒形状ハウジングに配置されている、請求項10に記載のイオン源。
【請求項12】
前記突出部は、前記抽出開口から90°だけオフセットされている、請求項10に記載のイオン源。
【請求項13】
前記プラズマ生成器は、前記第1の端に配置された間接加熱カソードを備える、請求項10に記載のイオン源。
【請求項14】
前記突出部の最大厚さが、幅方向において前記抽出開口の中心で生じる、請求項10に記載のイオン源。
【請求項15】
第1の端、第2の端、及び前記第1の端と前記第2の端を接続する複数の壁を備える、チャンバであって、前記複数の壁のうちの1つは、高さよりも大きい幅を有する抽出開口を有する抽出プレートである、チャンバ、
前記チャンバ内にプラズマを生成するためのプラズマ生成器、並びに
前記チャンバの内部の中へ延在する、前記複数の壁に電気的に接続された機械的に調整可能な複数の突出部要素を備える、イオン源。
【請求項16】
前記チャンバ内で前記機械的に調整可能な複数の突出部要素の位置を制御するためのアクチュエータを更に備える、請求項15に記載のイオン源。
【請求項17】
前記機械的に調整可能な複数の突出部要素の各々が、独立して制御される、請求項16に記載のイオン源。
【請求項18】
前記機械的に調整可能な複数の突出部要素は、前記抽出プレートに対向する壁を貫通して延在する、請求項15に記載のイオン源。
【請求項19】
前記機械的に調整可能な複数の突出部要素は、前記抽出プレートに隣接する壁を貫通して延在する、請求項15に記載のイオン源。
【請求項20】
前記プラズマ生成器は、前記第1の端に配置された間接加熱カソードを備える、請求項15に記載のイオン源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年9月13日に出願された米国特許出願第17/473,101号の優先権を主張し、該米国特許出願の開示は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、イオン源(間接加熱カソード(IHC)イオン源など)から抽出されるリボンイオンビームの均一性を制御するためのシステムを説明する。
【背景技術】
【0003】
半導体デバイスは複数の工程を使用して製造される。それらの工程のうちの幾つかは、ワークピースの中にイオンを注入する。様々なイオン源を使用して、イオンを生成することができる。1つのそのような機構は、間接加熱カソード(IHC)イオン源である。IHCイオン源は、カソードの後方に配置されたフィラメントを備える。カソードは、フィラメントよりも正の電圧に維持され得る。フィラメントに電流を流すと、フィラメントから熱電子が放出され、それらの熱電子はより正に帯電したカソードに向けて加速される。これらの熱電子は、カソードを加熱するのに役立ち、次に、カソードにイオン源のチャンバの中へ電子を放出させる。カソードは、チャンバの一端に配置される。反射電極(repeller)が、典型的には、カソードに対向するチャンバの端に配置される。
【0004】
特定の複数の実施形態では、IHCイオン源が、リボンイオンビームを抽出するように構成される。リボンイオンビームの幅は、リボンイオンビームの高さよりもかなり大きい。残念なことに、多くのシステムでは、抽出されたリボンイオンビームのビーム電流が、その幅に沿って均一ではない。この不均一性は、ワークピースの中に注入されるイオンの濃度を不均一にする可能性がある。他の複数の実施形態では、四重極レンズなどのビームライン内の更なる構成要素を利用して、この不均一性を補償しようと試み得る。これらの対策は、ビームラインシステムに更なる複雑さとコストを追加する可能性がある。
【0005】
したがって、イオン源から抽出されているリボンイオンビームの均一性を制御することができるシステムがあれば有益であろう。
【発明の概要】
【0006】
均一性が改善されたリボンイオンビームを抽出することができるイオン源が開示される。イオン源の壁のうちの1つは、チャンバに面するその内面に突出部を有する。突出部は、自由電子及びイオンのシンクとして機能する損失面積を生成する。これにより、突出部近傍のプラズマ密度が低減され、突出部近傍のビーム電流を変更することによって、イオン源から抽出されるリボンイオンビームの均一性が改善され得る。突出部の形状は、所望の均一性を実現するために変更されてよい。突出部はまた、円筒形状イオン源に利用されてもよい。特定の複数の実施形態では、突出部が、機械的に調整可能な複数の突出部要素によって形成される。
【0007】
一実施形態によれば、イオン源が開示される。イオン源は、第1の端、第2の端、及び第1の端と第2の端を接続する複数の壁を備える、チャンバを備える。複数の壁のうちの1つは、その高さよりも大きい幅を有する抽出開口を有する抽出プレートである。イオン源は、更に、チャンバ内にプラズマを生成するためのプラズマ生成器を備える。抽出プレートとは異なる複数の壁のうちの1つは、チャンバの内部に向けて延在する突出部を有する突出壁である。幾つかの実施形態では、この突出部が、少なくとも1箇所において少なくとも3mmチャンバの中へ延在する。特定の複数の実施形態では、突出部が、第1の端から第2の端まで一定の曲率半径を有する。幾つかの実施形態では、突出部が三角形状を有する。幾つかの実施形態では、突出部が台形状を有する。幾つかの実施形態では、突出壁が抽出プレートに対向する。特定の複数の実施形態では、突出壁が抽出プレートに隣接している。幾つかの実施形態では、プラズマ生成器が、第1の端に配置された間接加熱カソードを備える。
【0008】
別の一実施形態によれば、イオン源が開示される。イオン源は、第1の端、第2の端、及び第1の端と第2の端を接続する円筒形状ハウジングを備える、チャンバを備える。その高さよりも大きい幅を有する抽出開口が、円筒形状ハウジングに配置されている。イオン源は、更に、チャンバ内にプラズマを生成するためのプラズマ生成器を備える。突出部が、円筒形状ハウジングからチャンバの内部に向けて延在する。幾つかの実施形態では、突出部が、抽出開口から180°だけオフセットされるように、抽出開口に対向して円筒形状ハウジングに配置される。幾つかの実施形態では、突出部が、抽出開口から90°だけオフセットされる。特定の複数の実施形態では、プラズマ生成器が、第1の端に配置された間接加熱カソードを備える。幾つかの実施形態では、突出部の最大厚さが、幅方向において抽出開口の中心で生じる。
【0009】
別の一実施形態によれば、イオン源が開示される。イオン源は、第1の端、第2の端、及び第1の端と第2の端を接続する複数の壁を備える、チャンバを備える。複数の壁のうちの1つは、その高さよりも大きい幅を有する抽出開口を有する抽出プレートである。イオン源は、更に、チャンバ内にプラズマを生成するためのプラズマ生成器、及び、チャンバの内部の中へ延在する、複数の壁に電気的に接続された機械的に調整可能な複数の突出部要素を備える。幾つかの実施形態では、イオン源が、チャンバ内で機械的に調整可能な複数の突出部要素の位置を制御するためのアクチュエータを備える。特定の複数の実施形態では、機械的に調整可能な複数の突出部要素の各々が、独立して制御される。幾つかの実施形態では、機械的に調整可能な複数の突出部要素が、抽出プレートに対向する壁を貫通して延在する。特定の複数の実施形態では、機械的に調整可能な複数の突出部要素が、抽出プレートに隣接する壁を貫通して延在する。幾つかの実施形態では、プラズマ生成器が、第1の端に配置された間接加熱カソードを備える。
【0010】
本開示をより良く理解するために、添付の図面が参照される。添付の図面では、同様な要素が同様な数字を用いて参照される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1A図1Bは、2つの実施形態によるIHCイオン源を示すブロック図である。
図1B図1A図1Bは、2つの実施形態によるIHCイオン源を示すブロック図である。
図2A図1AのIHCイオン源の断面図である。
図2B図1BのIHCイオン源の断面図である。
図3図1のIHCイオン源を使用するイオン注入システムのブロック図である。
図4A図4A図4Eは、別の実施形態によるIHCイオン源のブロック図である。
図4B図4A図4Eは、別の実施形態によるIHCイオン源のブロック図である。
図4C図4A図4Eは、別の実施形態によるIHCイオン源のブロック図である。
図4D図4A図4Eは、別の実施形態によるIHCイオン源のブロック図である。
図4E図4A図4Eは、別の実施形態によるIHCイオン源のブロック図である。
図5A図5A図5Bは、2つの実施形態による円筒形状IHCイオン源の断面図である。
図5B図5A図5Bは、2つの実施形態による円筒形状IHCイオン源の断面図である。
図6】プラズマ密度に対する突出部の影響を示す図である。
図7】機械的に調整可能な突出部要素を有するIHCイオン源のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1A図1Bは、2つの実施形態による改善された均一性を有するリボンイオンビームを抽出するために利用され得るIHCイオン源10を示す。図2A図2Bは、それぞれ、図1A図1BのHCイオン源10の断面図を示す。これらの実施形態では、IHCイオン源10が、2つの対向する端、及びこれらの端を接続する壁101を備える、チャンバ100を含む。これらの壁101は、側壁、すなわち、抽出プレート103と抽出プレート103に対向する底壁とを含む。抽出プレート103は、イオンが抽出される抽出開口140を含む。抽出開口140は、幅方向(X方向とも呼ばれる)において高さ方向(Y方向とも呼ばれる)においてよりもかなり大きくてよい。Z方向は、抽出プレート103の厚さに沿って規定され、リボンイオンビームの移動方向として規定される。例えば、抽出開口140は、幅方向において2インチよりも大きくてよく、高さ方向において0.5インチよりも小さくてよい。
【0013】
チャンバ100の壁101は、導電性材料(タングステン又は別の高融点金属など)で構築されてよく、互いに電気的に通じていてよい。カソード110が、チャンバ100の第1の端104においてチャンバ100内に配置される。フィラメント160が、カソード110の後方に配置される。フィラメント160は、フィラメント電源165と通じている。フィラメント電源165は、電流をフィラメント160に流すように構成されている。それによって、フィラメント160は熱電子を放出する。カソードバイアス電源115が、フィラメント160をカソード110に対して負にバイアスする。したがって、これらの熱電子は、フィラメント160からカソード110に向けて加速され、これらの熱電子がカソード110の裏面に当たると、カソード110を加熱する。カソードバイアス電源115は、例えば、カソード110の電圧よりも負に200Vから1500Vの間にある電圧を有するように、フィラメント160をバイアスし得る。次いで、カソード110は、その前面からチャンバ100の中に熱電子を放出する。
【0014】
したがって、フィラメント電源165は、フィラメント160に電流を供給する。カソードバイアス電源115は、フィラメント160をバイアスする。それによって、フィラメント160はカソード110よりも負になる。その結果、電子はフィラメント160からカソード110に向けて引き寄せられる。カソード110は、アーク電圧電源111と通じている。アーク電圧電源111は、チャンバ100に対してカソードに電圧を供給する。このアーク電圧は、カソードで放出された熱電子をチャンバ100の中に加速して、中性ガスをイオン化する。このアーク電圧電源111によって引き出される電流は、プラズマを通して駆動される電流量の測定値である。特定の複数の実施形態では、壁101が他の電源の接地基準となる。
【0015】
この実施形態では、反射電極120が、カソード110に対向するチャンバ100の第2の端105においてチャンバ100内に配置される。カソード110の中心と反射電極120の中心とは、チャンバ100の中心軸109上の2点を形成してよい。
【0016】
反射電極120は、反射電極電源123と電気的に通じていてよい。その名が示すように、反射電極120は、カソード110から放出された電子を、チャンバ100の中心に向けて反発させる役割を果たす。例えば、特定の複数の実施形態では、反射電極120が、電子を反発させるために、チャンバ100に対して負の電圧にバイアスされてよい。例えば、特定の複数の実施形態では、反射電極120が、チャンバ100に対して0と-150Vとの間にバイアスされる。特定の複数の実施形態では、反射電極120が、チャンバ100に対して浮遊状態であってよい。言い換えると、反射電極120は、浮遊状態にあるときに、反射電極電源123にもチャンバ100にも電気的に接続されていない。この実施形態では、反射電極120の電圧が、カソード110の電圧に近い電圧にドリフトする傾向がある。代替的に、反射電極120は、壁101と電気的に接続されてよい。
【0017】
特定の複数の実施形態では、チャンバ100内で磁場190が生成される。この磁場は、電子を1つの方向に沿って閉じ込めることを目的とする。磁場190は、通常、第1の端104から第2の端105まで、壁101に平行に通っている。例えば、電子は、カソード110から反射電極120までの方向(すなわち、X方向)に平行なカラム内に閉じ込められてよい。したがって、電子は、X方向に動く電磁力を受けない。しかし、他の方向における電子の移動は、電磁力を受ける可能性がある。
【0018】
1以上のガス容器108が、ガス入口106を介してチャンバ100と連通していてよい。各ガス容器108は、各ガス容器からのガスの流れを調節するために、マスフローコントローラ(MFC)を含んでよい。
【0019】
抽出電源170を使用して、IHCイオン源10の壁101をビームライン内の残りの構成要素に対してバイアスすることができる。例えば、プラテン260(図2参照)は、接地などの第1の電圧であってよく、一方で、IHCイオン源10がプラテン260よりも正にバイアスされるように、IHCイオン源10に正電圧が印加される。したがって、抽出電圧と呼ばれる、抽出電源170によって供給される電圧は、IHCイオン源10から抽出されるイオンのエネルギーを決定する。更に、抽出電源170によって供給される電流は、全抽出ビーム電流の尺度となる。
【0020】
特定の複数の実施形態では、カソードバイアス電源115と抽出電源170との間にフィードバックループが存在する。具体的には、抽出ビーム電流を一定値に維持することが望ましい場合がある。したがって、抽出電源170から供給される電流がモニタされてよく、カソードバイアス電源115の出力を調整して、一定の抽出電流を維持することができる。このフィードバックループは、コントローラ180によって実行されよく、又は別のやり方で実行されてよい。
【0021】
コントローラ180は、電源のうちの1以上と通じていてよい。それによって、これらの電源によって供給される電圧又電流が、モニタされてよく及び/又は修正されてよい。更に、コントローラ180は、チャンバ100の中への各ガスの流れを調節するために、各ガス容器108のMFCと通じていてよい。コントローラ180は、マイクロコントローラ、パーソナルコンピュータ、専用コントローラ、又は別の適切な処理ユニットなどの処理ユニットを含んでよい。コントローラ180はまた、半導体メモリ、磁気メモリ、又は別の適切なメモリなどの非一時的なストレージ要素も含んでよい。この非一時的なストレージ要素は、コントローラ180が本明細書で説明される機能を実行することを可能にする指示命令及び他のデータを含み得る。例えば、コントローラ180は、IHCイオン源10がフィラメント160に対してカソードに印加される電圧を変化させることを可能にするように、カソードバイアス電源115と通じていてよい。コントローラ180はまた、反射電極をバイアスするために反射電極電源123とも通じていてよい。更に、コントローラ180は、カソードバイアス電源115によって供給される電圧、電流、及び/又は電力をモニタすることができる。
【0022】
図3は、図1AのIHCイオン源10を使用するイオン注入システムを示す。IHCイオン源10の抽出開口の外側且つ近傍には、1以上の電極200が配置されている。
【0023】
電極200から下流に、質量分析器210が配置されている。質量分析器210は、磁場を使用して、抽出されたリボンイオンビーム1の経路を導く。磁場は、それらのイオンの質量と電荷に従ってイオンの飛行経路に影響を与える。分解開口(resolving aperture)221を有する質量分解デバイス(mass resolving device)220が、質量分析器210の出力部(すなわち、遠位端)に配置される。磁場を適切に選択することによって、選択された質量及び電荷を有するリボンイオンビーム1内のそれらのイオンのみが、分解開口221を通して導かれることとなる。他のイオンは、質量分解デバイス220又は質量分析器210の壁に衝突し、システム内でそれ以上移動することができないことになる。
【0024】
コリメータ230が、質量分解デバイス220から下流に配置され得る。コリメータ230は、分解開口221を通過したリボンイオンビーム1からのイオンを受け入れ、複数の平行な又は略平行なビームレットから生成されるリボンイオンビームを生成する。質量分析器210の出力部(すなわち、遠位端)と、コリメータ230の入力部(すなわち、近位端)とは、一定の距離だけ離隔し得る。質量分解デバイス220は、これら2つの構成要素間のスペースに配置される。
【0025】
コリメータ230から下流に、加速/減速段240が配置されてよい。加速/減速段240は、エネルギー純度モジュールと称され得る。エネルギー純度モジュールは、イオンビームの偏向、減速、及び集束を独立して制御するように構成されたビームラインレンズ構成要素である。例えば、エネルギー純度モジュールは、垂直静電エネルギーフィルタ(VEEF)又は静電フィルタ(EF)であってよい。加速/減速段240から下流に、プラテン260が配置されている。ワークピースが、処理中にプラテン260上に配置される。
【0026】
図1A図1B及び図2A図2Bに戻って参照すると、チャンバ100が、突出部150を有する少なくとも1つの壁101を含む。突出部150は、チャンバ100に面する内面から内向きに延在する。突出部150を有するこの壁は、突出壁151と呼ばれてもよい。言い換えると、突出部150は、突出壁151の厚さを変化させる。特定の複数の実施形態では、図1A及び図2Aで示されているように、突出壁151が、抽出プレート103に対向する底壁である。他の複数の実施形態では、図1B及び図2Bで示されているように、突出壁151が、抽出プレート103に隣接する。
【0027】
突出壁151が、図1A及び図2Aで示されているようなときに、突出部150は、Z方向に延在する。突出壁151が、図1B及び図2Bで示されているようなときに、突出部150は、Y又は-Y方向に延在する。
【0028】
いずれの実施形態においても、突出部150は、チャンバ100内の損失面積を増加させる。特に、突出部150は、導電性であり、壁101と電気的に接続され、自由電子とイオンのシンクとして機能する。この損失面積は、突出部150に近接するプラズマ密度を低減させる役割を果たす。
【0029】
幾つかの実施形態では、突出部150の最大延在が、抽出開口の中心で生じる。本明細書で使用されるときに、「抽出開口の中心」という用語は、X(すなわち、幅)方向における抽出開口の中心を指す。更に、図1A図1Bは、突出部150最大厚さが抽出開口140の中心で生じることを示すが、他の複数の実施形態も可能である。例えば、図4Dで示されているように、突出部の最大厚さは、第1の端104及び/又は第2の端105に近接して生じてよい。これは、イオン源が端の近くでより高いプラズマ密度を生成する場合に有益であり得る。
【0030】
突出部150は、任意の適切な形状を有してよい。例えば、図2A図2Bでは、突出部150の断面が、内壁から内向きに延在する矩形である。矩形の寸法は、チャンバの中心に向かう寸法である厚さと、厚さに垂直な高さとして規定される。突出部150は、0.060インチと0.250インチの間の高さを有してよい。この突出部150は、フィンと呼ばれてよい。無論、他の形状も可能である。例えば、突出部150の断面は、丸みを帯び、チャンバ100内に縁部が存在しないような曲率半径を有してよい。
【0031】
更に、チャンバ100から離れる方向に面する突出壁151の外面は、変化せず、平坦なままであってよい。より具体的には、突出部150はチャンバ100の中に延在する。更に、突出部150の厚さは、幅方向(すなわち、X方向)における位置の関数として変化してよい。例えば、突出部150の厚さは、抽出開口140の中心において最も厚くてよく、中心から第1の端104に向けて及び第2の端105に向けて離れるように移動するにつれて減少してよい。
【0032】
特定の複数の実施形態では、突出部150の最も薄い部分と突出部150の最も厚い部分との間の最大差が、チャンバ100の高さの5%と25%の間であってい。例えば、突出部150は、少なくとも1箇所において少なくとも1mmチャンバ100の中に延在してよい。特定の複数の実施形態では、突出部150が、少なくとも1箇所において少なくとも3mmチャンバ100の中に延在してよい。無論、他の複数の実施形態では、他の複数の寸法が使用されてよい。
【0033】
特定の複数の実施形態では、突出部150が、図1A図1Bで示されているものと同様に、X方向に沿って滑らかな曲率半径を有してよい。しかし、他の曲率も可能である。例えば、第1の端104と抽出開口140の中心との間の第1の曲率半径、及び、第2の端105と抽出開口140の中心との間の第2の曲率半径が存在してよい。更に、図1A図1Bは、第1の端104と第2の端105とに延在する突出部150を示しているが、他の複数の実施形態では、突出部150が、幅方向においてより小さくてよい。それによって、図4Aなどで示されているように、突出部150は、第1の端104から離れた位置で開始し、第2の端105の前の位置で終端する。
【0034】
図1A図1Bは、2つの実施形態による突出壁151を示す。この複数の実施形態では、突出部150が、第1の端104で開始し、第2の端105まで延在する。更に、突出部150は、全体を通して一定の曲率半径を有する。
【0035】
しかし、突出部150は、他の形状を有してよい。例えば、図4Bで示されているように、突出部150は、三角形状として現れてよい。突出部150の厚さは、第1の端104から抽出開口140の中心まで、及び、第2の端105から抽出開口140の中心まで、直線的に増加する。別の複数の実施形態では、突出部150が、第1の端104の後ろの位置で開始し、第2の端105の前の位置で終端する。
【0036】
代替的に、図4Cで示されているように、突出部150は、台形状であってよい。突出部150の厚さは、第1の端104から及び第2の端105から、抽出開口140の中心付近に位置付けられている平坦な領域まで直線的に増加する。別の複数の実施形態では、突出部150が、第1の端104の後ろの位置で開始し、第2の端105の前の位置で終端する。
【0037】
更に、先の図面の全ては、抽出開口140の中心の周りで対称な突出部150を示している。しかし、他の複数の実施態様も可能である。例えば、イオン源内のプラズマ密度が、以下のように分布する場合がある。すなわち、第1の端104の近くの密度が、第2の端105の近くの密度よりも大きい。この場合、図4Eで示されているように、突出部150の最大(又は最小)厚さが、第2の端105の近くよりも第1の端104の近くで生じてよい。
【0038】
更に、図4A図4Eは、突出壁151が抽出プレート103に対向するように示されているが、他の複数の実施形態では、突出壁151が、図2Aなどで示されているように、抽出プレート103に隣接していてもよい。言い換えると、図4A図4Eで示されている突出壁151の構成は、突出壁151が抽出プレート103に隣接する場合にも実現できる。
【0039】
更に、図4A図4Cでは、最大プラズマ密度が、抽出開口140の中心付近で見られると想定している。しかし、最大プラズマ密度が、第1の端104及び第2の端105の近くに配置される場合、図4A図4Cで示されている形状は、次のように逆転されてよい。すなわち、図4Dで示されているように、最小厚さが抽出開口140の中心において見られ、最大厚さが端の近傍で見られる。
【0040】
図5A図5Bで示されている別の一実施形態では、チャンバ500が円筒形状であってよい。図5Aで示されているように、突出部150は、抽出開口140に対向して配置されてよく、すなわち180°だけオフセットされてよい。他の複数の実施形態では、図5Bで示されているように、突出部が、抽出開口140から90°だけオフセットされて配置されてよい。無論、突出部150は、チャンバ500の内面に沿っていかなる位置にも配置されてよい。更に、突出部150の形状は、上述された図1A図1B及び図4A図4Eで示された形状のいずれかであってよい。
【0041】
特定の理論に束縛されることなしに、IHCイオン源10内のプラズマは、中心軸109の周りで回転する傾向があると考えられる。図1Aで示されているように、この中心軸109は、カソード110の中心と反射電極120の中心を通過する。この回転は、E×Bドリフトによって引き起こされ得る。磁場190は、中心軸109と平行に生成されることに留意されたい。また、プラズマの電位はその中心で最も大きく、壁101に向けて移動するにつれて減少する。したがって、磁場190に垂直な電場が存在する。この組み合わせにより、磁場190と電場との両方に垂直な方向において電磁力が生成される。この回転を引き起こすのは、この電磁力であろう。
【0042】
チャンバ内に突出壁151を組み込むことによって、回転するプラズマが突出部150に接触する。これにより、自由電子とイオンが中性化され、プラズマ密度が減少する。これは、図6で示されている。プラズマは、この図では反時計回りに回転していることに留意されたい。プラズマ密度は、突出部150の左側で大幅に低減されていることにも留意されたい。この現象は、木工旋盤に似ているかもしれない。旋盤は、旋削工具を被加工材に当てた場所の材料を除去する。
【0043】
言い換えると、プラズマ密度は、抽出開口140の中心付近でより大きくなり得ると考えられているが、この領域内の損失面積を増加させることによって、この領域内のプラズマ密度が低減され得る。更に、抽出電流が幅の関数として知られている場合、幅にわたってプラズマ断面積を低減させるために、突出部150を適切に成形することが可能であり得る。それによって、抽出されるイオンビーム電流は、幅方向に沿って略一定になる。
【0044】
突出部150を適切に成形する能力は、図7で示されている一実施形態を使用して実現され得る。この実施形態では、突出部が、機械的に調整可能な複数の突出部要素152a~152eの使用によって形成される。図7は、機械的に調整可能な5つの突出部要素を示しているが、要素の数はこの開示によって限定されない。一実施形態では、機械的に調節可能な突出部要素152a~152eの各々が、独立して制御されてよく、突出部が様々な異なる形状になることを可能にする。他の複数の実施形態では、機械的に調節可能な突出部要素152a~152eの群が、共通に制御されてよい。一実施例として、機械的に調整可能な突出部要素152a及び152eは共通に制御されてよく、機械的に調整可能な突出部要素152b及び152dは共通に制御されてよい。この構成により、抽出開口140の中心の周りで対称な突出部が形成され得る。
【0045】
機械的に調整可能な突出部要素152a~152eは、タングステン又は別の適切な材料などの、壁と同じ導電性材料で作製されてよい。機械的に調整可能な突出部要素152a~152eは、チャンバ100の壁101と電気的に接続されてよい。更に、機械的に調整可能な突出部要素152a~152eは、直方体であってよい。それによって、突出部要素の上面図は、図7で示されているようになり、側面図は、図2A又は図2Bで示されているようになる。矩形の突出部要素の寸法は、チャンバの中心に向かう寸法である厚さと、厚さに垂直な高さと、X方向における寸法である幅として規定されてよい。
これらの機械的に調整可能な突出部要素152a~152eは、0.060インチと0.250インチの間の高さを有してよい。機械的に調節可能な突出部要素152a~152eは、チャンバの高さの少なくとも5%と25%の間の厚さを有してよい。それによって、それらはチャンバの中に延在してよい。各機械的に調整可能な突出部要素152a~152eの幅は、同じであってよく、又はそれらは異なっていてもよい。例えば、特定の複数の実施形態では、機械的に調整可能な突出部要素152a~152eが、チャンバの幅全体にわたり延在する。それによって、N個の要素の各々が、約W/Nの幅を有する。ここで、Wは、チャンバ100の幅である。他の複数の実施形態では、機械的に調節可能な突出部要素152a~152eがまた、チャンバ100の幅の50%を占めてもよい。この実施例では、N個の要素の各々が、約W/2Nの幅を有する。ここで、Wは、チャンバ100の幅である。
【0046】
無論、他の形状も可能である。例えば、機械的に調整可能な突出部要素152a~152eの断面は、図2A図2Bで示されているように、丸みを帯び、チャンバ100内に縁部が存在しないような曲率半径を有してよい。
【0047】
更に、図7は、機械的に調整可能な突出部要素が、チャンバの内部に晒される平坦な表面を有することを示しているが、他の複数の実施形態も可能である。例えば、図7で示されている機械的に調整可能な突出部では、内面がY方向において丸みを帯びていてよい。これらの機械的に調節可能な突出部要素152a~152eは、タングステン又は高融点金属などの別の適切な材料で構築されてよい。
【0048】
更に、図7は、抽出プレート103に対向する壁に配置された機械的に調整可能な突出部要素を示しているが、他の複数の実施形態が可能である。
例えば、機械的に調節可能な突出部要素は、図1Bで示されている構成と同様に、抽出プレート103に隣接する壁に配置されてもよい。
【0049】
更に、機械的に調整可能な突出部要素は、図5A図5Bで示されているものなどの、円筒形状チャンバと共に使用されてよい。
【0050】
特定の複数の実施形態では、機械的に調整可能な突出部要素152a~152eが、1以上のアクチュエータ153に結合されてよい。他の複数の実施形態では、機械的に調節可能な突出部要素152a~152eが、手作業で移動されてよい。
【0051】
幾つかの実施形態では、機械的に調節可能な突出部要素の各々についての適切な位置を決定するための較正プロセスが存在してよい。例えば、ファラデーカップのアレイなどのビームプロファイラが、ビームラインに沿って抽出開口140の外側に配置されてよい。例えば、ファラデーカップのアレイは、プラテン260に近接して配置されてよい。ビームプロファイラは、コントローラ180と通信してよい。コントローラ180は、抽出されたイオンビームの均一性を改善するように、アクチュエータ153を制御する。
【0052】
上述されたのは、IHCイオン源であるイオン源である。しかし、他のイオン源も、この抽出プレート103と共に使用されてよい。例えば、磁化DCプラズマ源、管状陰極源、ベルナスイオン源、及び誘導結合プラズマ(ICP)イオン源も、突出部150を有するこの抽出プレート103を使用してよい。したがって、抽出プレートは、様々な異なるプラズマ生成器を有するイオン源と共に使用されてよい。
【0053】
本システム及び方法は、多くの利点を有する。上述されたように、リボンイオンビームを抽出する特定の複数のイオン源では、リボンイオンビームが、その幅にわたり均一でない。この不均一性を修正することを試みるために、様々な技法が採用されている。本システムは、チャンバ内の特定の領域内のプラズマ密度を選択的に低減させるための機構を提供する。このやり方では、イオン源が、中心又はカソードの近くなどのチャンバの特定の部分においてより密度が高いプラズマを生成する場合であっても、突出部又は機械的に調整可能な突出部要素が、これを補償することができ、より均一なイオンビームが抽出されることを可能にする。更に、このシステムは、イオン源における不均一性に対処し、この課題を補償するためにビームラインシステムにおいて従来使用されていた構成要素の複雑さ及び数を削減する。
【0054】
本開示は、本明細書で説明される特定の複数の実施形態による範囲には限定されない。実際、本明細書に記載のものに加えて、本開示の他の様々な実施形態及び修正例が、前記載及び添付図面から当業者には明らかだろう。このため、そのような他の実施形態及び修正例は、本開示の範囲内に含まれると意図される。更に、本明細書では、本開示を、特定の目的のための特定の環境における特定の実施態様の文脈で説明したが、当業者は、その有用性がそれに限定されず、本開示が、任意の数の目的のために任意の数の環境において有益に実装され得ることを認識するであろう。したがって、以下で説明される特許請求の範囲は、本明細書に記載した本開示の範囲及び精神を最大限広く鑑みた上で解釈されたい。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6
図7
【国際調査報告】