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特表2024-532992ポリウレタン複合材料、ポリウレタン複合材料を含む積層製品及びその製造方法
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  • 特表-ポリウレタン複合材料、ポリウレタン複合材料を含む積層製品及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ポリウレタン複合材料、ポリウレタン複合材料を含む積層製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20240905BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20240905BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240905BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20240905BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240905BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240905BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C08J5/04
C08K7/02
C08L75/04
B32B5/28 A
B32B27/40
B32B27/18 B
B32B5/24 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565375
(86)(22)【出願日】2022-06-06
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 CN2022097116
(87)【国際公開番号】W WO2023035698
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/117427
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】グオ ドン フー
(72)【発明者】
【氏名】シュアイ ピン ゴン
(72)【発明者】
【氏名】レイ スン
(72)【発明者】
【氏名】シン ガン ワン
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA04
4F072AB09
4F072AB29
4F072AD43
4F072AE06
4F072AE07
4F072AF01
4F072AF02
4F072AF06
4F072AG03
4F072AH04
4F072AH21
4F072AH24
4F072AK15
4F072AL12
4F100AA37A
4F100AB01B
4F100AB01C
4F100AB02B
4F100AB02C
4F100AB03B
4F100AB03C
4F100AB10B
4F100AB10C
4F100AB31B
4F100AB31C
4F100AC10A
4F100AD11A
4F100AG00
4F100AG00A
4F100AH08A
4F100AK51
4F100AK51A
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA041
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA11
4F100CA01
4F100CA01A
4F100CA02
4F100CA02A
4F100CA08
4F100CA08A
4F100DG12A
4F100DH01
4F100DH01A
4F100DJ01
4F100DJ01A
4F100EH36A
4F100EH61
4F100EH61A
4F100EJ17
4F100EJ17A
4F100EJ42
4F100EJ42A
4F100EJ82
4F100EJ82A
4F100GB32
4F100GB48
4F100JA02A
4F100JA13
4F100JJ02A
4F100JJ03A
4F100JJ07A
4F100JK02
4F100JK04
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4J002CK021
4J002DA016
4J002DA027
4J002DA057
4J002DH047
4J002DH057
4J002DL006
4J002EB027
4J002EB047
4J002EU187
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD137
(57)【要約】
本発明は、新規のポリウレタン(PU)複合材、該PU複合材の製造方法、及び該PU複合材を含む被覆物品に関する。前記PU複合材料は、PU複合材の合計質量に対して、強化繊維35~75質量%及びポリウレタンフォーム25~65質量%を含み、その際強化繊維は、強化繊維の合計質量に対して、連続相の形での強化繊維75~100質量%及び不連続相の形での強化繊維0~25質量%を含む。本発明はさらに、少なくとも1層の断熱層と断熱層の両側に配置された少なくとも2つのポリウレタン複合材料とを含む積層製品、積層製品の製造方法、及び積層製品を含む電池システムのための被覆物品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン複合材料であって、ポリウレタン複合材料が、ポリウレタン複合材料の合計質量に対して、強化繊維35~75質量%及びポリウレタンフォーム25~65質量%を含み、
ポリウレタンフォームが、以下、
(a) 少なくとも1つのイソシアネート又はイソシアネートプレポリマー
からなるイソシアネート成分、並びに
(b) イソシアネートに対して反応性のある少なくとも1つのポリオール、
(c) 任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、
(d) 難燃剤、
(e) 任意に充填剤、
(f) 発泡剤、
(g) 触媒、及び
(h) 任意に添加剤及び/又は助剤
からなるポリオール成分
を含む二成分反応系から得られ、
強化繊維が、ガラス繊維、玄武岩繊維、炭素繊維及び天然繊維からなる群から選択され、好ましくはガラス繊維及び玄武岩繊維であり、より好ましくはガラス繊維であり、かつ
強化繊維が、強化繊維の合計質量に対して、連続相の形での強化繊維75~100質量%及び不連続相の形での強化繊維0~25質量%を含む、
ポリウレタン複合材料。
【請求項2】
強化繊維がポリウレタンフォームで含浸されている、請求項1に記載のポリウレタン複合材料。
【請求項3】
連続相の形での強化繊維が、マット、織布、又はそれらの組み合わせの形である、請求項1又は2に記載のポリウレタン複合材料。
【請求項4】
ポリウレタン複合材料が、1層~4層のマット、織布、又はこれらの組み合わせを含む、請求項3に記載のポリウレタン複合材料。
【請求項5】
不連続相の形での強化繊維が6~100mmの長さを有する、請求項1又は2に記載のポリウレタン複合材料。
【請求項6】
ポリウレタン複合材料が、2.2g/mm3未満の密度を有する、請求項1又は2に記載のポリウレタン複合材料。
【請求項7】
ポリウレタン複合材料が、0.5~10mmの厚さを有するシートの形で形成される、請求項1又は2に記載のポリウレタン複合材料。
【請求項8】
ポリウレタン複合材料が、膨張性グラファイト、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、リン酸トリエチル、リン酸トリス(2-クロリソプロピル)、メラミン、膨張性グラファイト(EG)、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、リン酸トリス(1-クロロ-2-プロピル)(TCPP)、リン酸トリエチル(TEP)、塩素及び臭素含有ポリオール、例えばエピクロロヒドリン、無水クロレンド酸、トリクロロブチレンオキシド(TCBO)、リン含有ポリオール、例えばオルトリン酸のエステル、リン酸のエステル、ホスファネートポリオール、ホスフィンオキシドポリオール及びホスホルアミドポリオールからなる群から選択される難燃剤(d)を含む、請求項1又は2に記載のポリウレタン複合材料。
【請求項9】
ポリウレタン複合材料が、耐火試験のUL94 V0グレードに合格する、請求項1又は2に記載のポリウレタン複合材料。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のポリウレタン複合材料の製造方法であって、
1) 強化繊維を連続相の形で提供するステップ、
2) 以下の材料、
(b) イソシアネートに対して反応性のある少なくとも1つのポリオール、
(c) 任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、
(d) 難燃剤、
(e) 任意に充填剤、
(f) 発泡剤、
(g) 触媒、及び
(h) 任意に添加剤及び/又は助剤
をタンク内で20~80℃の温度下で混合することによりポリオール成分を調製するステップ、
3) ステップ2)で得られたポリオール成分を、イソシアネート成分及び任意に不連続相の形で強化繊維と、20~80℃の温度下で混合して、混合物を得るステップ、
4) 第1のノズル又は射出ヘッドによって、ステップ3)で得られた混合物を、ステップ1)で提供した連続相の形での強化繊維上に噴霧又は射出し、任意に、不連続相の形での強化繊維をステップ1)で提供した連続相の形での強化繊維上に第2のノズルによって噴霧して、噴霧又は射出した製品を得るステップ、
5) ステップ4)で得られた噴霧又は射出した製品を、40~180℃の温度を有する鋳型中で、100~2000トンのホットプレス型締力下でホットプレスするステップ、
並びに
6) 脱型し、任意にトリミングするステップ、
を含み、
ステップ6)で得られたポリウレタン複合材料は、ポリウレタン複合材料の合計質量に対して、強化繊維35~75質量%及びポリウレタンフォーム25~65質量%を含み、
強化繊維は、強化繊維の合計質量に対して、連続相の形での強化繊維75~100質量%及び不連続相の形での強化繊維0~25質量%を含み、
強化繊維は、ガラス繊維、玄武岩繊維、炭素繊維及び天然繊維からなる群から選択され、好ましくはガラス繊維及び玄武岩繊維、より好ましくはガラス繊維である、
ポリウレタン複合材料の製造方法。
【請求項11】
ステップ3)における不連続相の形での強化繊維が、現場で長繊維を切断することによって得られ、ポリウレタンのイソシアネート成分とポリオール成分との混合物に一定の割合で添加され、かつ切断した強化繊維が6~100mmの長さを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ1)における連続相の形での強化繊維が、マット、織布、又はそれらの組み合わせの形である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のポリウレタン複合材料、又は請求項10から12までのいずれか1項に記載の製造方法により得られたポリウレタン複合材料を含む被覆物品。
【請求項14】
PU複合材料の少なくとも片面に配置された少なくとも1枚の金属シートをさらに含む、請求項13に記載の被覆物品。
【請求項15】
PU複合材料の両側に配置された2枚の金属シートを含む、請求項14に記載の被覆物品。
【請求項16】
金属シートが、アルミニウム合金、鉄、鋼、及びアルミニウムシートから選択される、請求項13又は14に記載の被覆物品。
【請求項17】
金属シートが0.08~1.2mmの厚さを有する、請求項13又は14に記載の被覆物品。
【請求項18】
金属シートが、0.2~1.2mm、好ましくは0.5~1.0mmの厚さを有する、請求項13又は14に記載の被覆物品。
【請求項19】
積層製品であって、
少なくとも1つの断熱層、及び
断熱層の両側に配置された、請求項1から9までのいずれか1項に記載のポリウレタン複合材料又は請求項10から12までのいずれか1項に記載の方法によって製造されたポリウレタン複合材料の少なくとも2つの層
を含み、断熱層が、バインダーとバインダー中で分散させた断熱材とを含む、前記積層製品。
【請求項20】
断熱層が、断熱層の合計質量に対して、10質量%~70質量%、好ましくは20質量%~50質量%の断熱材を含む、請求項19に記載の積層製品。
【請求項21】
断熱層が、50g/m2~500g/m2の面密度を有する、請求項19に記載の積層製品。
【請求項22】
断熱層が膨張性断熱層であり、かつ断熱材が膨張性断熱材であり、リン含有材料、窒化物含有材料、硫黄含有材料、ホウ素含有材料、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、膨張性グラファイト(EG)、ペンタエリトリトール、カオリン、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項19に記載の積層製品。
【請求項23】
膨張性グラファイトが、50μm~500μmの平均粒径を有する、請求項22に記載の積層製品。
【請求項24】
バインダーが、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項19に記載の積層製品。
【請求項25】
バインダーがポリウレタンであり、ポリウレタンがイソシアネートとイソシアネートに対して反応性のあるポリオールとを含む反応混合物の反応生成物であり、イソシアネートに対して反応性のあるポリオールが1000~10000、好ましくは4000~6000の質量平均分子量を有するポリオールを含む、請求項24に記載の積層製品。
【請求項26】
イソシアネートに対して反応性のあるポリオールが2~3の官能価を有する、請求項25に記載の積層製品。
【請求項27】
積層製品が5~20倍の発泡率を有する、請求項19に記載の積層製品。
【請求項28】
積層製品が、断熱層とポリウレタン複合材料層との間に配置される少なくとも1つの基材層をさらに含み、基材層が繊維シート、プラスチックシート、及び金属シートを含む、請求項19に記載の積層製品。
【請求項29】
積層製品が、積層製品の側面に配置された少なくとも金属シートをさらに含む、請求項19又は28に記載の積層製品。
【請求項30】
請求項19から29までのいずれか1項に記載の積層製品の製造方法であって、
1) i) 断熱材とバインダーを混合し、
ii) ステップi)の混合物を基材の表面に適用し、そして混合物を硬化させ、
iii) 任意に基材を除去する
ことにより、断熱層を提供するステップ、
2) ステップ1)で得られた断熱層の両側に配置した連続相の形での強化繊維を提供するステップ、
3) 以下の材料
(b) イソシアネートに対して反応性のある少なくとも1つのポリオール、
(c) 任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、
(d) 難燃剤、
(e) 任意に充填剤、
(f) 発泡剤、
(g) 触媒、及び
(h) 任意に添加剤及び/又は助剤
をタンク内で20~80℃の温度で混合してポリオール成分を調製するステップ、
4) ステップ3)で得られたポリオール成分を、イソシアネート成分及び任意に不連続相の形での強化繊維と20~80℃の温度下で混合して混合物を得るステップ、
5) ステップ4)で得られた混合物を、ステップ2)で提供した断熱層の両側に配置させた連続相の形での強化繊維上に、第1のノズル又は射出ヘッドによって噴霧又は射出するステップ、及び任意に、第2のノズルによって、ステップ2)で提供した連続相の形での強化繊維上に不連続相の形での強化繊維を噴霧して、噴霧又は射出した製品を得るステップ、
6) ステップ5)で得られた噴霧又は射出した製品を、40~180℃の温度を有する鋳型中で100~2000トンのホットプレス型締力下でホットプレスするステップ、
並びに
7) 脱型し、任意にトリミングし、それにより断熱層の両側に配置させたポリウレタン複合材料を含む積層製品を得るステップ
を含む、前記積層製品の製造方法に関し、
ここで、ポリウレタン複合材料は、ポリウレタン複合材料の合計質量に対して、強化繊維35~75質量%及びポリウレタンフォーム25~65質量%を含み、
強化繊維は、強化繊維の合計質量に対して、連続相の形での強化繊維75~100質量%及び不連続相の形での強化繊維0~25質量%を含み、かつ
強化繊維は、ガラス繊維、玄武岩繊維、炭素繊維及び天然繊維からなる群から選択され、好ましくはガラス繊維及び玄武岩繊維、より好ましくはガラス繊維である、
積層製品の製造方法。
【請求項31】
ステップ4)における不連続相の形での強化繊維が、現場で長繊維を切断することによって得られ、ポリウレタンのイソシアネート成分とポリオール成分との混合物に一定の割合で添加され、かつ切断した強化繊維が6~100mmの長さを有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ステップ1)における連続相の形での強化繊維が、マット、織布、又はそれらの組み合わせの形である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
請求項19から29までのいずれか1項に記載の積層製品、又は請求項30から32のいずれか1項に記載の製造方法により製造された積層製品を含む、電池システムに適した被覆物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月9日に出願された国際出願番号PCT/CN2021/117427号の利益を主張し、その内容全体は参照をもって本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、新規のポリウレタン(PU)複合材料、該PU複合材料の製造方法、及び該PU複合材料を含む被覆物品に関する。前記PU複合材料は、PU複合材の合計質量に対して、強化繊維35~75質量%及びポリウレタンフォーム25~65質量%を含み、その際強化繊維は、強化繊維の合計質量に対して、連続相の形での強化繊維75~100質量%及び不連続相の形での強化繊維0~25質量%を含む。本発明はさらに、少なくとも1層の断熱層と断熱層の両側に配置されたポリウレタン複合材料とを含む積層製品、積層製品の製造方法、及び積層製品を含む被覆物品に関する。
【0003】
背景技術
電気自動車の発展に伴い、軽量設計及び電池の容量制限にますます注目が集まっている。現在、電池パック内の電池構成部分を保護するために、電池パックの上部カバーとして主に打ち抜きした金属シートを使用している。金属材料は良好な機械的特性を示すが、密度が高く、したがって部品の質量が高くなる;したがって、金属製の上部カバーに代わる新たな軽量、薄型及び難燃性の部品を提供することが急務である。
【0004】
従来技術は、電池パックの上部カバーとして、ポリプロピレン又はポリアミドをベースとする射出成形部品を開示している。しかしながら、かかるポリプロピレン又はポリアミド材料の射出成形の解決策では、非常に大きなサイズの部品を実現することは困難であり、その射出成形は、高い鋳型コスト、高い射出圧力及び射出温度を要求する。現在までに、スプレートランスファー成形(STM)製品又は長繊維射出成形(LFI)製品、例えばこのようにして得られたPU複合材料を電池パックの上部カバーとして使用できることを開示又は示唆している文献又は特許はない。
【0005】
例えば、米国特許出願公開2019/0153185号明細書は、非耐力壁要素、外壁被覆材、及び天井要素として使用される、ポリウレタンフォームコア及び2枚の建築材料プレートを含むサンドイッチ構成要素を開示している。具体的には、建築プレートが、建築材料プレートの引張強度を向上させる繊維、織物又は補強材をさらに含みうることが開示されている。それにもかかわらず、ポリウレタンフォームコアを改変して、例えば電池パックの上部カバーとして電池分野に具体的に適用できることについて開示又は示唆されていない。さらに、建築分野におけるポリウレタンフォームは比較的厚く、より薄い電池パックの上部カバーとしての使用を妨げることが当業者には理解される。
【0006】
さらに、従来技術は、チョップドガラス繊維に樹脂を含浸させることを特徴とする、ポリウレタンフォームシートを製造するためのシートモールディングコンパウンド(SMC)プロセスを開示している。しかしながら、このSMCプロセスは、通常、高密度、厚い構成部品、最終構成部品内の強化ガラス繊維の不均一な分布、及び後処理ステップの高い費用という欠点を有する。
【0007】
一方、中国特許出願公開107437631号明細書は、複数のシングル電池、フレーム及び保護プレートを含有する電池モジュールを開示している。保護プレートは、膨張性グラファイト(EG)プレート及び絶縁封止フィルムを含有し、EGプレートは、接着剤から形成される基板及び基板中に分散させたEG粒子を含有し、かつ封止フィルムは、ポリイミド(PI)フィルム又はポリプロピレン(PP)フィルムである。米国特許出願公開20080020270号明細書は、EG及びポリウレタンを含むフィルム(「安全フィルム」)、並びにポリウレタン及びポリエチレンテレフタレートから選択される基材フィルムを含む、モバイル機器のための二次電池を記載している。しかしながら、従来技術は、限られたEG含有量を有する製品しか提供されず、したがって断熱効果も限られていた。
【0008】
したがって、軽量、薄厚、良好な機械的特性及び難燃性を有し、かつ同時に費用効率の高い方法で製造できる複合材料を提供することが継続的に必要である。さらに、複合材料は、幅広い原材料を使用することにより容易に調製され、かつ優れた電磁界面(EMI)遮蔽性能及び複合材料についての前記利点を有する被覆物品を提供する必要がある。複合材についての前記利点に加えて、優れた断熱特性を有する製品を提供する必要もある。
【0009】
発明の概要
本発明の目的は、従来技術の前記問題を克服し、軽量、良好な機械的強度、難燃性及び優れた耐電圧性を有する複合材料を提供することであり、同時に、費用効率の高い方法で準備することができる。
【0010】
驚くべきことに、本発明者らは、前記目的は、ポリウレタン(PU)複合材料の合計質量に対して、強化繊維35~75質量%及びポリウレタンフォーム25~65質量%を含むポリウレタン複合材料であって、
ここで、ポリウレタンフォームは、以下、
(a) 少なくとも1つのイソシアネート又はイソシアネートプレポリマー
からなるイソシアネート成分、並びに
(b) イソシアネートに対して反応性のある少なくとも1つのポリオール、
(c) 任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、
(d) 難燃剤、
(e) 任意に充填剤、
(f) 発泡剤、
(g) 触媒、及び
(h) 任意に添加剤及び/又は助剤
からなるポリオール成分
を含む二成分反応系から得られ、
強化繊維は、ガラス繊維、玄武岩繊維、炭素繊維及び天然繊維からなる群から選択され、かつ
強化繊維は、強化繊維の合計質量に対して、連続相の形での強化繊維75~100質量%及び不連続相の形での強化繊維0~25質量%を含む、
前記ポリウレタン(PU)複合材料により達成できることを見出した。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、前記PU複合材料を製造するための方法に関し、該方法は、以下
1) 強化繊維を連続相の形で提供するステップ、
2) 以下の材料をタンク内で20~80℃の温度下で混合することによりポリオール成分を調製するステップ、
(b) イソシアネートに対して反応性のある少なくとも1つのポリオール、
(c) 任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、
(d) 難燃剤、
(e) 任意に充填剤、
(f) 発泡剤、
(g) 触媒、及び
(h) 任意に添加剤及び/又は助剤;
3) ステップ2)で得たポリオール成分を、イソシアネート成分及び任意に不連続相の形で強化繊維と、20~80℃の温度下で混合して、混合物を得るステップ、
4) 第1のノズル又は射出ヘッドによって、ステップ3)で得た混合物を、ステップ1)で提供した連続相の形での強化繊維上に噴霧又は射出し、任意に、不連続相の形での強化繊維をステップ1)で提供した連続相の形での強化繊維上に第2のノズルによって噴霧して、噴霧又は射出した製品を得るステップ、
5) ステップ4)で得た噴霧又は射出した製品を、40~180℃の温度を有する鋳型中で、100~2000トンのホットプレス型締力下でホットプレスするステップ、
並びに
6) 脱型し、任意にトリミングするステップ、
を含み、
ステップ6)で得られたポリウレタン複合材料は、ポリウレタン複合材料の合計質量に対して、強化繊維35~75質量%及びポリウレタンフォーム25~65質量%を含み、
強化繊維は、強化繊維の合計質量に対して、連続相の形での強化繊維75~100質量%及び不連続相の形での強化繊維0~25質量%を含み、
強化繊維は、ガラス繊維、玄武岩繊維、炭素繊維及び天然繊維からなる群から選択され、好ましくはガラス繊維及び玄武岩繊維、より好ましくはガラス繊維である。
【0012】
驚くべきことに、前記PU複合材料、又は前記方法により製造されたPU複合材料が、軽量化、良好な機械的強度、難燃性及び優れた耐電圧性を示すことが、本出願において見出された。さらに、前記方法は、堅牢かつ簡単な方法で実施される。同様に、PU複合材料は、費用効率よく得られる。
【0013】
さらに他の態様において、本発明は、少なくとも1つの前記PU複合材料、又は前記方法により製造されたPU複合材料を含む、被覆物品に関する。
【0014】
本発明の他の目的は、軽量、良好な機械的強度、難燃性及び良好な断熱性を有する積層製品を提供することである。
【0015】
驚くべきことに、本発明者らは、この目的は、少なくとも1つの断熱層及び断熱層の両側に配置された前記した少なくとも2つのポリウレタン複合層を含む積層製品によって達成できることを見出し、ここで、断熱層は、バインダー、及びバインダー中に分散させた断熱材料を含む。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、以下
1) i) 断熱材とバインダーを混合し、
ii) ステップi)の混合物を基材の表面に適用し、そして混合物を硬化させ、
iii) 任意に基材を除去する
ことにより、断熱層を設けるステップ、
2) ステップ1)で得た断熱層の両側に配置した連続相の形での強化繊維を提供するステップ、
3) 以下の材料
(b) イソシアネートに対して反応性のある少なくとも1つのポリオール、
(c) 任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、
(d) 難燃剤、
(e) 任意に充填剤、
(f) 発泡剤、
(g) 触媒、及び
(h) 任意に添加剤及び/又は助剤
をタンク内で20~80℃の温度で混合してポリオール成分を調製するステップ、
4) ステップ3)で得たポリオール成分を、イソシアネート成分及び任意に不連続相の形での強化繊維と20~80℃の温度下で混合して混合物を得るステップ、
5) ステップ4)で得た混合物を、ステップ2)で設けた断熱層の両側に配置させた連続相の形での強化繊維上に、第1のノズル又は射出ヘッドによって噴霧又は射出するステップ、及び任意に、第2のノズルによって、ステップ2)で提供した連続相の形での強化繊維上に不連続相の形での強化繊維を噴霧して、噴霧又は射出した製品を得るステップ、
6) ステップ5)で得た噴霧又は射出した製品を、40~180℃の温度を有する鋳型中で100~2000トンのホットプレス型締力下でホットプレスするステップ、
並びに
7) 脱型し、任意にトリミングし、それにより断熱層の両側に配置させたポリウレタン複合材料を含む積層製品を得るステップ
を含む、前記積層製品を製造する方法に関し、
ここで、ポリウレタン複合材料は、ポリウレタン複合材料の合計質量に対して、強化繊維35~75質量%及びポリウレタンフォーム25~65質量%を含み、
強化繊維は、強化繊維の合計質量に対して、連続相の形での強化繊維75~100質量%及び不連続相の形での強化繊維0~25質量%を含み、かつ
強化繊維は、ガラス繊維、玄武岩繊維、炭素繊維及び天然繊維からなる群から選択され、好ましくはガラス繊維及び玄武岩繊維、より好ましくはガラス繊維である。
【0017】
驚くべきことに、前記積層製品、又は前記方法により製造された積層製品が、軽量、良好な機械的強度、難燃性、及び優れた耐電圧性を示すことが、本出願において見出された。さらに、前記方法は、堅牢かつ簡単な方法で実施される。同様に前記積層製品は、費用効率よく得られる。
【0018】
さらに他の態様において、本発明は、少なくとも1つの前記積層製品、又は前記方法により製造された積層製品を含む、被覆物品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、PU複合材料を製造するためのSTMプロセスを示す。
図2図2は、PU複合材料を製造するためのLFIプロセスを示す。
図3図3は、PU複合材と金属シートとを含む被覆物品を示す。
図4図4は、2つのPU複合層とその間に断熱層とを含む積層製品を示す。
図5図5は、断熱層の製造方法を示す。
図6図6は、積層製品の製造方法を示す。
【0020】
発明の詳細な説明
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって慣用的に理解される意味を有する。本明細書において使用される場合に、以下の用語は、特に特定されない限り、以下の意味を有する。
【0021】
本明細書において使用される場合に、「a」及び「an」の冠詞は、冠詞の文法上の目的語の1つ又は1超(すなわち少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「1つの要素(an element)」は、1つの要素又は1超の要素を意味する。
【0022】
本明細書で使用される場合に、「含む(comprising)」という表現は、「からなる(consisting of)」という表現も包含する。
【0023】
特に明記されない限り、全てのパーセンテージ(%)は「質量パーセント」である。
【0024】
特に明記されない限り、温度は室温をいい、圧力は周囲圧力をいう。
【0025】
本明細書において使用される場合に、用語「連続相の形での強化繊維」は、繊維層を構成する繊維が結合又は連結して一体の層を形成している繊維層をいう。
【0026】
本明細書において使用される場合に、用語「不連続相の形での強化繊維」は、繊維同士が結合していない、又は一体化した形ではない繊維をいう。
【0027】
I. PU複合材料
一態様において、本発明は、ポリウレタン(PU)複合材料であって、ポリウレタン複合材料が、ポリウレタン(PU)複合材料の合計質量に対して、強化繊維35~75質量%及びポリウレタンフォーム25~65質量%を含み、
ポリウレタンフォームが、以下、
(a) 少なくとも1つのイソシアネート又はイソシアネートプレポリマー
からなるイソシアネート成分、並びに
(b) イソシアネートに対して反応性のある少なくとも1つのポリオール、
(c) 任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、
(d) 難燃剤、
(e) 任意に充填剤、
(f) 発泡剤、
(g) 触媒、及び
(h) 任意に添加剤及び/又は助剤
からなるポリオール成分
を含む二成分反応系から得られ、
強化繊維が、ガラス繊維、玄武岩繊維、炭素繊維及び天然繊維からなる群から選択され、好ましくはガラス繊維及び玄武岩繊維であり、より好ましくはガラス繊維であり、かつ
強化繊維は、強化繊維の合計質量に対して、連続相の形での強化繊維75~100質量%及び不連続相の形での強化繊維0~25質量%を含む、
ポリウレタン(PU)複合材料に関する。
【0028】
一実施形態において、強化繊維を、ポリウレタンフォームで含浸させる。
【0029】
一実施形態において、連続相の形での強化繊維は、マット、織布、又はそれらの組み合わせの形である。特定の実施形態において、連続相の形での強化繊維は、China Jushi Co.Ltdから市販されている集合ロービングE512である。本発明において、用語「マット」は、フェルト、薄い布地、比較的薄いシート、ニット状等の形である材料を意味する。一実施形態において、マットは、当該技術分野において公知の方法、例えば縦糸及び横糸を用いた従来の方法又はエレクトロスピニング方法によって形成される。これらに基づいて、連続相の形での強化繊維は、ベールマット、チョップドストランドマット、織布、不織布、繊維布、ステッチマット等の形であってもよいことが理解されるであろう。
【0030】
一実施形態において、連続相の形での強化繊維は、1平方メートルあたり200~1600グラム、好ましくは1平方メートルあたり400~900グラムの密度を有する。
【0031】
一実施形態において、PU複合材料は、1層~4層のマット、織布又はそれらの組み合わせ、好ましくは1層~4層、例えば1層、2層、3層、又は4層の連続相の形での強化繊維マットを含む。
【0032】
一実施形態において、PU複合材料は、不連続相の形での強化繊維を含む。一実施形態において、不連続相の形での強化繊維は、6~100mm、好ましくは8~80mm、より好ましくは10~50mm、さらに好ましくは12~25mmの長さである。特定の実施形態において、不連続相の形での強化繊維は、China Jushi Co.Ltdから市販されている集合ロービングE440である。
【0033】
一実施形態において、PU複合材料は、2.2g/mm3未満、好ましくは1.8g/mm3未満、好ましくは1.6g/mm3未満、より好ましくは1.5g/mm3未満、さらにより好ましくは1.3g/mm3未満、最も好ましくは1.2g/mm3未満の密度を有する。
【0034】
一実施形態において、PU複合材料は、0.5~10mm、好ましくは1~5mm、より好ましくは1~3mm、さらにより好ましくは1~2mmの厚さを有するシートの形で作製される。
【0035】
一実施形態において、ポリウレタン複合材料は、膨張性グラファイト、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、リン酸トリエチル、リン酸トリス(2-クロリソプロピル)、メラミン、膨張性グラファイト(EG)、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、リン酸トリス(1-クロロ-2-プロピル)(TCPP)、リン酸トリエチル(TEP)、塩素及び臭素を含むポリオール、例えばエピクロロヒドリン、無水クロレンド酸、トリクロロブチレンオキシド(TCBO)、リンを含むポリオール、例えばオルトリン酸のエステル、リン酸のエステル、ホスファネートポリオール、ホスフィンオキシドポリオール及びホスホルアミドポリオールからなる群から選択される難燃剤(d)を含む。
【0036】
一実施形態では、PU複合材料は、GB/T1447-2005に従って決定して、少なくとも90MPa、好ましくは少なくとも95MPa、より好ましくは少なくとも100MPa、さらにより好ましくは少なくとも120MPa、最も好ましくは少なくとも130MPaの引張強度を有する。
【0037】
一実施形態では、PU複合材料は、GB/T1449-2005に従って決定して、少なくとも180MPa、好ましくは少なくとも185MPa、より好ましくは少なくとも190MPa、さらにより好ましくは少なくとも200MPa、最も好ましくは少なくとも230MPaの曲げ強度を有する。
【0038】
一実施形態において、PU複合材料は、耐火試験についてUL94 V0グレードに合格する。一実施形態において、PU複合材料は、UL94 5VA耐火試験に合格する。
【0039】
ポリウレタン
PU複合材料の調製には、「イソシアネート成分」及び「ポリオール成分」(以下、「樹脂成分」又は「樹脂」ともいう)が使用され、「ポリオール成分」は、イソシアネートに対して反応性のあるポリオール(b)、任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤(c)、難燃剤(d)、任意に充填剤(e)、発泡剤(f)、触媒(g)、並びに任意に助剤及び添加剤(h)の混合物であり、「イソシアネート成分」は、少なくとも1つのイソシアネート又はイソシアネートプレポリマー(a)である。ポリオール成分は、イソシアネートと反応してウレタン結合を形成する。かかるシステムは、例えば米国特許第4,218,543号明細書において開示されている。
【0040】
本発明において、ポリオール成分は、強化繊維、すなわち連続した形及び不連続な形での強化繊維を含まないことに留意されたい。
【0041】
好ましい実施形態において、「イソシアネート成分」及び「ポリオール成分」を、衝突混合させ、ほぼ大気圧で鋳型中に噴霧又は射出させ、その後鋳型が閉じられる。鋳型は、40~180℃、好ましくは70~150℃、より好ましくは90~130℃に予熱され、任意に鋳型の表面上にインサート(例えば金属シート、金属箔、又は固体難燃剤層)を含む。原料を、鋳型中の繊維織物上に均一に噴霧又は射出し、その後、典型的に1~15分、好ましくは90秒~10分、より好ましくは2~8分後に成形部品を型から取り出す。
【0042】
イソシアネート又はイソシアネートプレポリマー(a)
本発明のポリウレタンを製造するために使用されるイソシアネート成分は、ポリウレタンを製造するために公知であるイソシアネートのいずれかを含む。これらは、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/又は芳香族イソシアネート、例えばトリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2-エチルブチレン1,4-ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、ブチレン1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4-及び/又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン2,4-及び/又は2,6-ジイソシアネート及び/又はジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-及び2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ポリマーMDI、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4-及び/又は2,6-ジイソシアネート(TDI)、3,3’-ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2-ジフェニルエタンジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネートを含む。2,2’-、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアネート、及びポリマーMDIを使用することが特に好ましい。
【0043】
他の可能なイソシアネートは、例えば"Kunststoffhandbuch, Band 7, Polyurethane" [Plastics handbook, volume 7, Polyurethanes], Carl Hanser Verlag, 3rd edition, 1993, chapters 3.2 and 3.3.2に挙げられている。
【0044】
加えて、イソシアネート成分は、イソシアネートプレポリマーの形で使用してもよい。イソシアネートプレポリマーは、例えば、30~100℃、好ましくは約80℃の温度で、前記イソシアネートと追加のポリオール(a’)とを反応させることによって得られる。本発明に従って使用されるプレポリマーを製造するために、ウレトンイミン改質MDI及びポリエステルをベースとする市販のポリオール、例えばアジピン酸又はポリエーテルから誘導されたもの、例えばエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドから誘導されたものと一緒に4,4’-MDIが好ましい。本発明に従って使用されるプレポリマーを製造するために、4,4'-MDI及びエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドから誘導されるポリオールが好ましい。
【0045】
追加のポリオール(a’)は、当業者に公知であり、例えば "Kunststoffhandbuch [Plastics handbook], Volume 7, Polyurethane [Polyurethanes]", Carl Hanser Verlag, 3rd Edition 1993, chapter 3.1において記載されている。
【0046】
エーテルベースのプレポリマーは、イソシアネート、特に好ましくは4,4’-MDIと、2~3官能性ポリオキシプロピレンポリオール及び/又はポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンポリオールとを反応させることによって得られることが好ましい。これらは通常、プロピレンオキシド単独、又はエチレンオキシドとの混合物の、H官能性、特にOH官能性の出発物質への一般的に公知の塩基触媒付加により製造される。使用される出発物質は、例えば、水、エチレングリコールもしくはプロピレングリコール、及びグリセロール又はトリメチロールプロパンである。さらに、DMC触媒として公知の多金属シアン化物化合物も触媒として使用されうる。例えば、成分(b)下で以下に記載されるポリエーテルを追加のポリオール(a’)として使用してよい。
【0047】
エチレンオキシド/プロピレンオキシド混合物を使用する場合に、エチレンオキシドは、好ましくは、アルキレンオキシドの合計量に対して、10~50質量%の量で使用される。アルキレンオキシドは、ブロック状に、又はランダム混合物として組み込みこまれてよい。より反応性の高い第一級OH末端基の含有量を増加させるために、エチレンオキシド末端ブロック(「EOキャップ」)を組み込むことが特に好ましい。ポリオール(a’)の数平均分子量は、好ましくは1750~5500g/モルの範囲である。
【0048】
適宜、慣用の鎖延長剤又は架橋剤が、イソシアネートプレポリマーの調製において挙げた追加のポリオールに添加される。通常の鎖延長剤又は架橋剤は、以下のc)に記載したものと同一であってよい。鎖延長剤又は架橋剤としてジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール又はモノエチレングリコール(MEG)を使用することが特に好ましい。
【0049】
イソシアネートに対して反応性のあるポリオール(b)
イソシアネートに対して反応性のあるポリオール(b)は、当該技術分野においてポリウレタンの製造のために有用であり、かつ少なくとも2つの反応性水素原子を有するポリオールのいずれかであってよい。例えば、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールの群から選択されるポリエーテルポリアミン及び/又はポリオール、又はそれらの混合物を使用することが可能である。
【0050】
好ましく使用されるポリオールは、200~10,000、好ましくは300~8000、より好ましくは500~6000、最も好ましくは2500~3500の質量平均分子量、20~1200mgKOH/g、好ましくは30~1000mgKOH/g、より好ましくは40~500のOH価を有するポリエーテルポリオール、及び/又は350~2000、好ましくは350~650の分子量、及び60~650mgKOH/g、好ましくは120~310mgKOH/gのOH価を有するポリエステルポリオールである。次のポリオールが、本発明において好ましい:LUPRANOL(登録商標)2095(BASF)、LUPRANOL(登録商標)2090(BASF)、LUPRANOL3505/1(BASF)、LUPRAPHEN(登録商標)3905(BASF)、LUPRAPHEN(登録商標)3907(BASF)、LUPRAPHEN(登録商標)3909(BASF)、STEPANPOL(登録商標)PS3152、PS2412、PS1752、CF6925(Stepan Company)。
【0051】
本発明において使用されるポリエーテルポリオールは、公知の方法により製造されうる。例えば、それらは、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを使用するか、又は、2~8個の反応性水素原子を含む少なくとも1つの出発分子を添加して、アルカリ金属アルコラート、例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドもしくはカリウムエトキシド、又はカリウムプロポキシドを触媒として使用するアニオン重合を介して、又はルイス酸、例えば五塩化アンチモン、フッ化ホウ素エーテラート等、又は漂白土を触媒として使用するカチオン重合を介して、アルキレンラジカル中に炭素原子2~4個を有する1つ以上のアルキレンオキシドから製造されうる。
【0052】
適したアルキレンオキシドの例は、テトラヒドロフラン、プロピレン1,2-オキシド、ブチレン1,2-オキシド又はブチレン2,3-オキシド、スチレンオキシド、好ましくはエチレンオキシド及びプロピレン1,2-オキシドである。アルキレンオキシドは、個々に、交互に連続して、又は混合物として使用されうる。
【0053】
使用されうる出発分子の例は、水、有機ジカルボン酸、例えばコハク酸、アジピン酸、フタル酸、及びテレフタル酸、脂肪族及び芳香族の有機ジカルボン酸、任意にアルキル基中に炭素原子1~4個を有するN-モノ-、N,N-、及びN,N’-ジアルキル置換ジアミン、例えば任意にモノ及びジアルキル置換されたエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,3-プロピレンジアミン、1,3-又は1,4-ブチレンジアミン、1,2-、1,3-、1,4-、1,5-、及び1,6-ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、2,3-、2,4-、及び2,6-トリレンジアミン、並びに4,4’-、2,4’-、及び2,2’-ジアミノジフェニルメタンである。
【0054】
ポリエステルポリオールは、例えば、炭素原子2~12個、好ましくは炭素原子4~6個を有するジカルボン酸と、多価アルコールとから製造されうる。使用されうるジカルボン酸の例は、脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、及びセバシン酸、並びに芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸である。ジカルボン酸は、個々に、又は混合物の形で、例えばコハク酸、グルタル酸、及びアジピン酸の混合物の形で使用されうる。多価アルコールの例は、炭素原子2~10個、好ましくは2~6個を有するグリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、及びジプロピレングリコール、炭素原子3~6個を有するトリオール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、高官能アルコールとしてペンタエリスリトールである。多価アルコールは、所望の特性に従って、単独で使用することも、又は任意に互いに混合して使用することもできる。
【0055】
ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールの量は、樹脂の合計質量に対して、好ましくは0~40質量%、特に好ましくは15~35質量%である。
【0056】
鎖延長剤及び/又は架橋剤(c)
使用されうる鎖延長剤及び/又は架橋剤(c)は、好ましくは500g/mol未満、特に好ましくは60~400g/molであるモル質量を有する物質であり、ここで、鎖延長剤はイソシアネートに対して反応性のある2つの水素原子を有し、架橋剤はイソシアネートに対して反応性のある3つの水素原子を有する。これらは単独で、又は好ましくは混合物の形で使用されうる。500未満、特に60~400、特に60~350の分子量を有するジオール及び/又はトリオールを使用することが好ましい。使用されうるものの例は、炭素原子2~14個、好ましくは2~10個を有する脂肪族、脂環式、及び/又は芳香脂肪族ジオール、例えばエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-、1,3-、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエタノールアミン、又はトリオール、例えば1,2,4-又は1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサン、グリセロール、及びトリメチロールプロパンである。鎖延長剤及び/又は架橋剤(c)は、好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール及びグリセリンから選択される。
【0057】
鎖延長剤及び/又は架橋剤c)の量は、存在する場合、樹脂の合計質量に対して、好ましくは0~50質量%、特に好ましくは10~40質量%である。
【0058】
難燃剤(d)
使用されうる難燃剤(d)は、添加型難燃剤及び反応性難燃剤、又はそれらの組み合わせである。添加剤難燃剤は、ポリマーに化学的に結合していないモノマー分子である。添加難燃剤は、固体難燃剤、液体難燃剤、又はそれらの組み合わせの形であってよい。市販されている添加剤難燃剤は、トリス(2-クロリソプロピル)ホスフェート、メラミン、膨張性グラファイト(EG)、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、トリス(1-クロロ-2-プロピル)ホスフェート(TCPP)、トリエチルホスフェート(TEP)である。反応性難燃剤は、一般的に、ハロゲン及び/又はリンを含むポリオールである。難燃性ポリオールは、PU合成においてポリイソシアネートと反応してよい末端ヒドロキシル基を有する。ハロゲン含有FRポリオールは、塩素及び臭素含有ポリオール、例えばエピクロロヒドリン、無水クロレンド酸及びトリクロロブチレンオキシド(TCBO);リン含有ポリオール、例えばオルトリン酸のエステル、リン酸のエステル、ホスファネートポリオール、ホスフィンオキシドポリオール、ホスホルアミドポリオールであってよい。
【0059】
難燃性の目的から、難燃剤の合計量は、樹脂の合計質量に対して、好ましくは5~30質量%、より好ましくは10~25質量%の範囲である。
【0060】
充填剤(e)
使用されうる充填剤は、それ自体公知の通常の有機又は無機充填剤である。挙げてよい個々の例は、無機充填剤、例えばケイ酸塩鉱物、金属酸化物、例えばアルミナ、酸化チタン及び酸化鉄である。本発明において、充填剤は、600μm未満、好ましくは500μm未満、より好ましくは400μm未満の平均粒径を有する。充填剤(e)は、好ましくは、酸化チタン及び酸化鉄から選択される。
【0061】
充填剤の量は、樹脂の合計質量に対して0~30質量%、好ましくは0~15質量%である。難燃剤(d)と充填剤(e)との質量比は、0.1~10、好ましくは0.5~2の範囲である。
【0062】
充填剤は、例えば金属の熱膨張係数よりも大きいポリウレタンフォームの熱膨張係数を低減し、したがってこの係数を金属の熱膨張係数と一致させるように機能することができる。これは、熱負荷を受けた場合に層間の低い応力をもたらすため、金属シートとポリウレタンコア層との間の耐久性の高い接着のために特に有利である。
【0063】
本発明において、充填剤(e)は、強化繊維、すなわち連続した形及び不連続な形での強化繊維を含まない。言い換えれば、ポリオール成分は、強化繊維、すなわち連続した形及び不連続な形での強化繊維を含まない。
【0064】
発泡剤(f)
本発明に従って使用される発泡剤(f)は、好ましくは水を含む。使用されうる発泡剤(f)は、水だけでなく、当該技術分野における他の化学的及び/又は物理的発泡剤も含みうる。化学発泡剤は、イソシアネートとの反応によりガス状生成物を形成する化合物であり、例えば水又はギ酸である。物理的発泡剤は、ポリウレタン製造のための出発原料中で溶解又は乳化されており、かつポリウレタン形成の条件下で蒸発する化合物である。例えば、これらは、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、及び他の化合物、例えば過フッ素化アルカン、例えばペルフルオロヘキサン、フルオロクロロカーボン、及びエーテル、エステル、ケトン及び/又はアセタールである。好ましい一実施形態において、水が唯一の発泡剤(f)として使用される。この場合、本発明に従ったポリウレタンフォームは、水発泡ポリウレタンスプレーフォームである。水に関して特に制限はない。ミネラルウォーター、脱イオン水、又は水道水を使用してよい。
【0065】
発泡剤の量は、樹脂の合計質量に対して0~5質量%、好ましくは0.1~3質量%である。
【0066】
触媒(g)
触媒(g)として、イソシアネート-ポリオール反応を促進する任意の化合物を使用できる。かかる化合物は公知であり、例えば"Kunststoffhandbuch, volume 7, Polyurethane", Carl Hanser Verlag, 3rd edition 1993, chapter 3.4.1において記載されている。これらはアミン系触媒及び有機金属化合物系触媒を含む。
【0067】
有機金属化合物系触媒として、例えば、有機スズ化合物、例えば有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えば酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)、ラウリン酸スズ(II)、及び有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩、例えばジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジオクチルスズジアセテート、及びカルボン酸ビスマス、例えばネオデカン酸ビスマス(III)、2エチルヘキサン酸ビスマス、オクタン酸ビスマス、又はカルボン酸のアルカリ金属塩、例えば酢酸カリウム又はギ酸カリウムを使用できる。
【0068】
触媒(g)としてアミン系触媒、例えばN,N,N’,N’-テトラメチルジプロピレントリアミン、2-[2-(ジメチルアミノ)エチル-メチルアミノ]エタノール、N,N,N’-トリメチル-N’-2-ヒドロキシエチル-ビス-(アミノエチル)エーテル、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N,N,N-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N-トリエチルアミノエトキシエタノール、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリメチルヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、ジメチルエタノールアミン、N-メチルイミダゾール、Nエチルイミダゾール、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン、ジメチルアミノプロピルアミン、N-エチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン及びジアザビシクロノネンを使用することが好ましい。ここで、挙げられてよい例は、Jeffcat ZF10(CAS番号83016-70-0)、Jeffcat DMEA(CAS番号108-01-0)及びDabco T(CAS番号2212-32-0)である。この種の反応触媒はVOC値を低減する効果を有する。
【0069】
触媒(g)の量は、樹脂の合計質量に対して、好ましくは0.1~5質量%、特に好ましくは0.1~3.5質量%である。
【0070】
添加剤及び/又は助剤(h)
使用されうる添加剤及び/又は助剤(h)は、界面活性剤、防腐剤、着色剤、酸化防止剤、補強剤、安定剤、及び吸水剤を含むが、これらに制限されない。ポリウレタンフォームの製造において、硬化するまで発泡反応混合物を安定化させるために少量の界面活性剤を使用することが一般に非常に好ましい。かかる界面活性剤は、有利には、発泡反応混合物を安定化させるために十分な量で使用される液体又は固体のオルガノシリコーン界面活性剤を含む。典型的に、助剤、特に界面活性剤の量は、樹脂の合計質量に対して、好ましくは0~15質量%、より好ましくは0.5~6質量%である。
【0071】
前記助剤及び添加剤の使用及び作用に関するさらなる情報、並びにさらなる例は、例えば"Kunststoffhandbuch, Band 7, Polyurethane" [“Plastics handbook, volume 7, Polyurethanes”], Carl Hanser Verlag, 3rd edition 1993, chapter 3.4において挙げられる。
【0072】
ポリオール成分とイソシアネート成分の質量比は、1:0.6~1:2、好ましくは1:0.7~1:1の範囲である。
【0073】
PU複合材料の製造方法
さらなる態様において、本発明は、前記PU複合材料を製造するための方法に関し、該方法は、以下
1) 強化繊維を連続相の形で提供するステップ、
2) 以下の材料をタンク内で20~80℃の温度下で混合することによりポリオール成分を調製するステップ、
(b) イソシアネートに対して反応性のある少なくとも1つのポリオール、
(c) 任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、
(d) 難燃剤、
(e) 任意に充填剤、
(f) 発泡剤、
(g) 触媒、及び
(h) 任意に添加剤及び/又は助剤;
3) ステップ2)で得たポリオール成分を、イソシアネート成分及び任意に不連続相の形で強化繊維と、20~80℃の温度下で混合して、混合物を得るステップ、
4) 第1のノズル又は射出ヘッドによって、ステップ3)で得た混合物を、ステップ1)で提供した連続相の形での強化繊維上に噴霧又は射出し、任意に、不連続相の形での強化繊維をステップ1)で提供した連続相の形での強化繊維上に第2のノズルによって噴霧して、噴霧又は射出した製品を得るステップ、
5) ステップ4)で得た噴霧又は射出した製品を、40~180℃の温度を有する鋳型中で、100~2000トンのホットプレス型締力下でホットプレスするステップ、
並びに
6) 脱型し、任意にトリミングするステップ、
を含み、
ステップ6)で得られたポリウレタン複合材料は、ポリウレタン複合材料の合計質量に対して、強化繊維35~75質量%及びポリウレタンフォーム25~65質量%を含み、
強化繊維は、強化繊維の合計質量に対して、連続相の形での強化繊維75~100質量%及び不連続相の形での強化繊維0~25質量%を含み、
強化繊維は、ガラス繊維、玄武岩繊維、炭素繊維及び天然繊維からなる群から選択され、好ましくはガラス繊維及び玄武岩繊維、より好ましくはガラス繊維である。
【0074】
一実施形態において、ステップ1)、3)及び4)において使用される連続相の形での強化繊維及び任意に不連続相の形での強化繊維の合計量、及びステップ3)において使用されるポリオール成分及びイソシアネート成分の合計量は、質量比で約(35~75):(25~65)である。
【0075】
一実施形態において、ステップ3)における不連続相の形での強化繊維は、現場で長繊維を切断することによって得られ、ポリウレタンのイソシアネート成分とポリオール成分との混合物に一定の割合で添加され、かつ切断した強化繊維の長さは、6~100mm、好ましくは8~80mm、より好ましくは10~50mm、さらに好ましくは12~25mmである。
【0076】
一実施形態において、ステップ1)における連続相の形での強化繊維は、マット、織布、又はそれらの組み合わせの形である。
【0077】
スプレートランスファー成形(STM)プロセス
一態様において、本発明は、前記PU複合材料を製造するためのスプレートランスファー成形(STM)プロセスであって、
1) 強化繊維を連続相の形で提供するステップ、
2) 以下の材料をタンク内で20~80℃の温度下で混合することによりポリオール成分を調製するステップ、
(b) イソシアネートに対して反応性のある少なくとも1つのポリオール、
(c) 任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、
(d) 難燃剤、
(e) 任意に充填剤、
(f) 発泡剤、
(g) 触媒、及び
(h) 任意に添加剤及び/又は助剤;
3) ステップ2)で得たポリオール成分を、イソシアネート成分と、20~80℃の温度下で混合して、混合物を得るステップ、
4) 第1のノズルによって、ステップ3)で得た混合物を、ステップ1)で提供した連続相の形での強化繊維上に噴霧し、任意に、不連続相の形での強化繊維をステップ1)で提供した連続相の形での強化繊維上に第2のノズルによって噴霧して、噴霧した製品を得るステップ、
5) ステップ4)で得た噴霧した製品を、40~180℃の温度を有する鋳型中で、100~2000トンのホットプレス型締力下でホットプレスするステップ、
並びに
6) 脱型し、任意にトリミングするステップ、
を含むプロセスを提供し、
ここで、ステップ6)で得られたポリウレタン複合材料は、ポリウレタン複合材料の合計質量に対して、強化繊維35~75質量%及びポリウレタンフォーム25~65質量%を含み、
強化繊維は、強化繊維の合計質量に対して、連続相の形での強化繊維75~100質量%及び不連続相の形での強化繊維0~25質量%を含み、
強化繊維は、ガラス繊維、玄武岩繊維、炭素繊維及び天然繊維からなる群から選択され、好ましくはガラス繊維及び玄武岩繊維、より好ましくはガラス繊維である。
【0078】
一実施形態において、このプロセスは、ステップ1)において、連続相の形で強化繊維の1層か~4層、例えば1層、2層、3層又は4層を提供することを含む。
【0079】
一実施形態において、ステップ1)において、開放鋳型は、40~180℃、好ましくは70~150℃、より好ましくは90~130℃の温度で予熱される。
【0080】
一実施形態において、ステップ4)において、第1のノズルを使用して、ステップ3)において得られた混合物を強化繊維層上に噴霧する。一実施形態において、ステップ4)において、第1のノズルは、得られるPU複合材料が比較的薄く、例えば0.5~10mm、好ましくは1~5mm、より好ましくは1~3mm、さらに好ましくは1~2mmの厚さになるような速度で移動する。
【0081】
一実施形態において、ステップ4)において、混合物の噴霧は、強化繊維層の2つの表面上で一方の端から他方の端へ連続的に移動する第1のノズルで実施される。この実施形態において、強化繊維層の第1の表面上に噴霧を実施してよく、その後、強化繊維層を有するPUを取り上げ、ひっくり返し、連続して置き、そして強化繊維層の第2の表面上に噴霧を実施する。
【0082】
他の実施形態において、ステップ4)において、混合物の噴霧を、強化繊維層の一方の表面上に実施する。
【0083】
好ましい実施形態において、このプロセスは、ステップ4)において、第2のノズルを使用して強化繊維層上に強化繊維を不連続相の形で噴霧することを含む。この実施形態において、不連続相の形での強化繊維の噴霧は、所望に応じて、対象の複合材料の全領域なたが部分領域に対して実施されてよい。この実施形態において、不連続の強化繊維は、ステップ3)で得られた混合物の噴霧と同時に噴霧される。したがって、不連続の強化繊維を、ステップ3)で得られた混合物中に配置して分散させることができる。
【0084】
一実施形態において、ステップ1)及び4)において使用される連続相の形での強化繊維及び任意に不連続相の形での強化繊維の合計量、及びステップ3)において使用されるポリオール成分及びイソシアネート成分の合計量は、質量比で約(35~75):(25~65)である。
【0085】
特定の実施形態において、強化繊維は、強化繊維の合計質量に対して、連続相の形で強化繊維を100質量%含む。
【0086】
一実施形態において、ステップ5)において、鋳型を閉じて、1~15分間、好ましくは90秒~10分間、より好ましくは2~8分間保持する。
【0087】
一実施形態において、ステップ5)において、鋳型を閉じて、40~180℃、好ましくは70~150℃、より好ましくは90~130℃の温度で保持する。一実施形態において、ステップ5)において、鋳型を閉じて、100~2000トン、好ましくは200~1500トン、より好ましくは300~1000トンのホットプレス型締力下に保持する。
【0088】
一実施形態において、PU複合材料は、少なくとも1つのインサート、例えば金属シート、金属箔、又は固体難燃剤層を含むものとして任意に製造されてよい。一実施形態において、PU複合材料と少なくとも1枚の金属シートとを含む被覆物品が得られる。他の実施形態において、PU複合材料と固体難燃剤の層とを含む被覆物品が得られる。
【0089】
一実施形態において、ステップ6)において、トリミングステップを、STMプロセスにおいてトリミング切断するために鋳型上で設計したナイフを用いて、脱型と同時に実施する。この実施形態において、このSTMプロセスにおいて使用される装置を、トリミング切断するために鋳型上にナイフで設計する。
【0090】
長繊維射出(LFI)プロセス
他の態様において、本発明は、
1) 強化繊維を連続相の形で提供するステップ、
2) 以下の材料、
(b) イソシアネートに対して反応性のある少なくとも1つのポリオール、
(c) 任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、
(d) 難燃剤、
(e) 任意に充填剤、
(f) 発泡剤、
(g) 触媒、及び
(h) 任意に添加剤及び/又は助剤
を、20~80℃の温度でタンク内で混合してポリオール成分を調製するステップ、
3) ステップ2)で得たポリオール成分と、イソシアネート成分及び不連続相の強化繊維とを20~80℃の温度で混合して混合物を得るステップ、
4) ステップ3)で得た混合物を、ステップ1)で提供した連続相の形での強化繊維上に射出ヘッドによって射出し、射出製品を得るステップ、
5) ステップ4)で得た射出成形品を、温度40~180℃の鋳型内で、ホットプレス型締力100~2000トンでホットプレスするステップ、並びに
6) 脱型し、任意にトリミングするステップ
を含む、前記PU複合材料を製造するための長繊維射出(LFI)プロセスをさらに提供し、
ここで、ステップ6)で得たポリウレタン複合材料は、ポリウレタン複合材料の合計質量に基づいて、35~75質量%の強化繊維及び25~65質量%のポリウレタンフォームを含み、
強化繊維は、強化繊維の合計質量に基づいて、75~100質量%未満の連続相の形の強化繊維と、>0~25質量%の不連続相の形の強化繊維とを含み、
強化繊維は、ガラス繊維、玄武岩繊維、炭素繊維及び天然繊維からなる群から選択され、好ましくはガラス繊維及び玄武岩繊維、より好ましくはガラス繊維である。
【0091】
一実施形態において、このプロセスは、ステップ1)において、連続相の形で強化繊維の1層か~4層、例えば1層、2層、3層又は4層を提供することを含む。
【0092】
一実施形態において、ステップ1)において、開放鋳型は、40~180℃、好ましくは70~150℃、より好ましくは90~130℃の温度で予熱される。
【0093】
一実施形態において、ステップ3)において、混合を、射出の直前に混合チャンバー内で実施する。
【0094】
一実施形態において、ステップ3)において、不連続相の形の強化繊維は、混合チャンバーの直前の現場で長繊維を切断することによって得られ、イソシアネート成分とポリオール成分の混合物に(すなわち、混合チャンバーに)一定の速度で添加される。この実施形態において、細断前の強化繊維はファイバーコイルの形であり、ボビンに巻き付けられている。
【0095】
一実施形態において、強化繊維は、得られるPU組成物がPU複合材料の合計質量に対して35~75質量%の強化繊維の繊維含有量を有する割合で添加される。
【0096】
一実施形態において、ステップ1)及び3)において使用される連続相の形での強化繊維及び不連続相の形での強化繊維の合計量、及びステップ3)において使用されるポリオール成分及びイソシアネート成分の合計量は、質量比で約(35~75):(25~65)である。
【0097】
一実施形態において、ステップ3)において、不連続相の形での強化繊維は、6~100mm、好ましくは8~80mm、より好ましくは10~50mm、さらに好ましくは12~25mmを有する。
【0098】
一実施形態において、ステップ4)において、射出ヘッドを使用して、ステップ3)で得られた混合物を開放鋳型内の強化繊維層の表面上に射出する。
【0099】
一実施形態において、ステップ5)において、鋳型を閉じて、40~180℃、好ましくは70~150℃、より好ましくは90~130℃の温度で保持する。一実施形態において、ステップ5)において、鋳型を閉じて、100~2000トン、好ましくは200~1500トン、より好ましくは300~1000トンのホットプレス型締力下に保持する。一実施形態において、ステップ5)において、鋳型を閉じて、1~15分間、好ましくは90秒~10分間、より好ましくは2~8分間保持する。
【0100】
一実施形態において、PU複合材料は、少なくとも1つのインサート、例えば金属シート、金属箔、又は固体難燃剤層を含むものとして任意に製造されてよい。一実施形態において、PU複合材料と少なくとも1枚の金属シートとを含む被覆物品が得られる。他の実施形態において、PU複合材料と少なくとも1枚の金属箔とを含む被覆物品が得られる。
【0101】
一実施形態において、ステップ6)において、トリミングステップを、LFIプロセスにおいてトリミング切断するために鋳型上で設計したナイフを用いて、脱型と同時に実施する。この実施形態において、このLFIプロセスにおいて使用される装置を、トリミング切断するために鋳型上にナイフで設計する。
【0102】
驚くべきことに、本発明者らは、上記の全てのプロセスが、0.5~10mm、好ましくは1~5mm、より好ましくは1~3mm、さらにより好ましくは1~2mmの厚さ、及び低下した密度、例えば1.8g/mm3未満、好ましくは1.6g/mm3未満、より好ましくは1.5g/mm3未満、さらにより好ましくは1.3g/mm3未満、最も好ましくは1.2g/mm3未満の密度を有する、PU複合材料を製造できることを見出した。さらに、それらは、少ない原材料の必要量、良好な繊維とPUと間の含浸、安い費用、短いサイクル時間等の利点を有する。
【0103】
さらに、STMプロセス及びLFIプロセスについての圧力及び温度の要件が比較的低いため、工具費用の削減につながる。さらに、STM及びLFIは、厚い壁及び薄い壁を含む高解像度の形状を有する複雑な部品を首尾よく成形できる。
【0104】
被覆物品
一態様において、本発明は、少なくとも1つの前記ポリウレタン複合材料、又は前記方法により得られたポリウレタン複合材料を含む被覆物品を提供する。
【0105】
一実施形態では、被覆物品は、1~5mm、好ましくは1.2~3mmの厚さを有する。
【0106】
一実施形態において、被覆物品は、少なくとも1枚のPU複合材料シートの少なくとも片面に配置された少なくとも1枚の金属シートをさらに含む。好ましい実施形態において、被覆物品は、PU複合材料シートの両側に配置された2枚の金属シートを含む。この実施形態において、被覆物品は、コア層としてのPU複合材料シートと、コア層の両側に配置された2枚の金属シートとを含み、サンドイッチ状構造を形成する。他の好ましい実施形態において、被覆物品は、PU複合材料シートの片面に配置された1枚の金属シートを含む。いくつかの代わりの実施形態において、被覆物品は、1枚の金属シートと、金属シートの両側に配置された2枚のPU複合シートとを含む。一実施形態において、金属シートは、アルミニウム合金、鉄、鋼、及びアルミニウムシートから独立して選択される。
【0107】
金属シートは、0.08~1.2mm、好ましくは0.08~0.6mm、より好ましくは0.12~0.4mm、最も好ましくは0.2~0.3mmの厚さを有してよい。
【0108】
好ましい実施形態において、金属シートは、0.2~1.2mm、好ましくは0.5~1.0mmの厚さを有する。このような厚さの金属シートは、機械的強度の向上を有利に提供し、物品をかかる金属シートで覆うことが可能にし、機械的強度の要件をさらに満たすことが見出された。
【0109】
本発明の被覆物品は、電池パックの上部カバーとして使用することができる。
【0110】
本発明による被覆物品は、良好な防火性能、電磁界面(EMI)遮蔽性能、優れた電気絶縁性及び耐電圧性を有し、電池パックの上部カバーとしての使用に適している。加えて、本発明の被覆物品は、厚さ2mmでUL94 V0グレードに合格する。本発明による被覆物品を上部カバーとして含む電池パックは、GB 38031-2020による外部火災燃焼試験に合格する。
【0111】
本発明による被覆物品はさらに良好な遮蔽効率(SE)を有する。一実施形態において、被覆物品は、少なくとも40、好ましくは少なくとも50、より好ましくは少なくとも60の遮蔽率(dB)を示す。dB値は、被覆材なしの電界強度をE0、被覆材ありの電界強度をE1として、[dB]=20×log(E0/E1)の式で計算される。例えば、60のdB値は、被覆物品が電磁エネルギーの99.9%を反射及び/又は吸収することを示す。
【0112】
II. 積層製品
一態様において、本発明は、少なくとも1つの断熱層と、断熱層の両側に配置された少なくとも2つのPU複合材料層とを含む積層製品に関し、ここで、断熱層は、バインダーとバインダー中で分散させた断熱材料とを含む。
【0113】
図4に示すように、積層製品は、2つのPU複合材料層と、2つのPU複合材料層の間に配置された1つの断熱層を含む。
【0114】
積層製品に含まれるPU複合材料は、特に明記されない限り、「PU複合材料」の部、又は「PU複合材料の製造方法」の部(段落I.PU複合材料を参照されたい)において記載したものと同一の意味を有する。簡潔にするため、ここでは繰り返さない。
【0115】
一実施形態において、断熱層は、断熱層の合計質量に対して、10質量%~70質量%、好ましくは20質量%~50質量%、より好ましくは20質量%~40質量%の断熱材料を含む。代わりに、断熱層は、50~500g/m2、50~200g/m2、100~200g/m2の面密度を有する。表面密度は、平方メートルあたりの材料の質量(g)をいうと解される。断熱材の質量パーセント/面密度が高すぎると、断熱材が結合してフィルムを形成するのが難しくなり、一方で、断熱材の質量パーセント/面密度が低すぎると、相応の断熱特性を達成することができない。
【0116】
一実施形態において、断熱層は膨張性断熱層であり、断熱材は膨張性断熱材である。
【0117】
膨張性断熱材は、高温にさらされる場合に不燃性ガス(SO2、CO2、アンモニア等)及び/又は水蒸気を放出し、膨張して炭素フォーム層を形成する。放出された不燃性ガス及び/又は水蒸気は、周囲の酸素濃度を薄め、火災の危険性を軽減する。さらに、形成された炭素フォーム層は、その緩い構造により良好な断熱性能を有し、高温が周囲に広がるのを防ぎ、それにより良好な断熱遮断として機能する。
【0118】
適した膨張性断熱材料は、リン含有材料、窒化物含有材料、硫黄含有材料、ホウ素含有材料、水蒸気を放出する化合物(例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、膨張性グラファイト(EG))、ペンタエリスリトール、カオリン、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに制限されない。
【0119】
例えば、リン含有物質は、リン酸塩、例えばリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、又はリン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム(APP)、リン酸モノアンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸トリクロロエチル(TCEP)、リン酸トリクロロプロピル(TCPP)、ピロリン酸アンモニウム、リン酸トリフェニル等を含む。窒素含有物質は、メラミン、メラミン塩、リン酸の塩、グアニジン、メラミンシアヌレート、メラミンホルムアルデヒド、メチロール化メラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、尿素、ジメチル尿素、ピロリン酸メラミン、ジシアンジアミド、リン酸グアニル尿素及びグリシンを含む。硫黄含有物質は、スルホン酸塩、例えばスルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウム又はスルホン酸アンモニウム、パラトルエンスルホン酸塩、硫酸塩、例えば硫酸ナトリウム、硫酸カリウム又は硫酸アンモニウムを含む。ホウ素含有材料は、ホウ酸、及びホウ酸塩、例えば五ホウ酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム、及びホウケイ酸塩を含む。熱にさらされると分解して水蒸気を放出する化合物は、水酸化カルシウム、二水酸化マグネシウム、三水酸化アルミニウム、又は膨張性グラファイト(EG)を含むが、これらに制限されない。他の適した膨張性断熱材は、多官能性アルコール、例えばペンタエリトリトール、カオリン等を含む。
【0120】
一実施形態において、膨張性グラファイトは、50μm~500μm、好ましくは50μm~300μm、より好ましくは100μm~200μmの平均粒径を有する。本発明者らは、粒径が500μmを超えると加工が困難になることを見出した。一方で、粒径が50μmより小さい場合には、発泡率が制限され、それにより断熱性能も損なわれる。
【0121】
一実施形態において、バインダーは、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0122】
好ましい実施形態において、バインダーはポリウレタンである。段落I(PU複合材料)において記載したように、ポリウレタンは、イソシアネートと、イソシアネートに対して反応性のあるポリオールとを含む反応混合物の反応生成物である。イソシアネート及びイソシアネートに対して反応性のあるポリオールは、段落I(PU複合材料)において記載した「イソシアネート成分」及び「イソシアネートに対して反応性のあるポリオール」と同一である。簡潔にするため、ここでは繰り返さない。
【0123】
一実施形態において、好ましいポリオールは、1000~10000、好ましくは4000~6000の質量平均分子量を有する。好ましくは、ポリオールは2~3の官能価を有する。本発明者らは、前記で定義したポリウレタン材料を使用して製造した積層製品が弾性を有し、非剛性であることを見出した。
【0124】
一実施形態において、積層製品は5~20の膨張率を有する。言い換えれば、積層製品は、膨潤し、かつ元の製品の5倍~20倍の厚さの製品に膨張しうる。好ましくは、積層製品は、膨張前の厚さが5mm未満であり、膨張後の最大の厚さが25mm未満である。この特性は、積層製品が電池システムのシェルとして使用される場合に特に有利である。電池システムの内部の空洞空間は一般に限られているため、発泡積層製品は厚すぎないことが予想される。したがって、断熱材の前記好ましい質量パーセント及び面密度で、膨張後の積層製品の厚さは、電池システム内に含まれる電池構成要素を破壊しない25mm以下となる。
【0125】
膨張率は、積層製品の膨張後の厚みを膨張前の厚みで除した値で定義される。
【0126】
一実施形態において、積層製品は、断熱層とポリウレタン複合材料層との間に配置される少なくとも1つの基材層をさらに含み、基材層には繊維シート、プラスチックシート、及び金属シートを含む。
【0127】
繊維シートは、例えばガラス繊維(GF)、炭素繊維、天然繊維(例えば竹繊維)、特に織布又は不織布の形の天然繊維から作られ、金属シートは、例えばアルミニウム合金、鉄、鋼又はアルミニウムから作られ、かつプラスチックシートは、例えばポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリウレタン(PU)、ポリアミド(PA)、ポリビニルブチラール(PVB)又はエチレン酢酸ビニル(EVA)から作られる。
【0128】
一実施形態において、積層製品は、積層製品の側面に配置された少なくとも1つの金属シートをさらに含む。積層製品を電池パックに適用する場合に、金属シートは電池セルと反対側に配置される。金属シートは主に積層製品の機械的強度をさらに向上させる。
【0129】
断熱層の製造方法を図5に示す。具体的には、いくつかの実施形態において、断熱層は、
i) 断熱材をバインダーと混合するステップ、
ii) ステップi)で得られた混合物を基材の表面上に(例えば、噴霧又はナイフコーティングによって)適用し、混合物を硬化させるステップ、及び
iii) 任意に基板を除去して断熱層を得るステップ
によって製造される。
【0130】
バインダーがポリウレタンである特定の実施形態において、断熱層は、
i) 断熱材をポリオール成分と混合するステップ、
ii) ステップi)で得られた混合物をイソシアネート成分と混合するステップ、
iii) ステップii)で得られた混合物を基材の表面上に(例えば、噴霧又はナイフコーティングによって)適用し、混合物を硬化させるステップ、及び
iv) 任意に基板を除去して断熱層を得るステップ
によって製造される。
【0131】
なお、前記製造方法において使用される基材は、剥離紙、繊維シート、プラスチックシート、金属シートを含む。基材が剥離紙である場合に、最終断熱層から剥離紙を除去する。
【0132】
一実施形態において、積層製品は、耐火試験についてUL94 V0グレードに合格する。一実施形態において、積層製品は、UL94 5VA耐火試験に合格する。
【0133】
一実施形態において、積層製品は、片面800~1300℃(T1と呼ばれる)で10分間耐火試験される。その結果、反対側(T2とする)の温度は400℃以下であることを示した。好ましい実施形態において、T2は350℃未満である。より好ましい実施形態において、T2は300℃未満である。さらにより好ましい実施形態において、T2は280℃未満である。最も好ましい実施形態において、T2は260℃未満である。
【0134】
積層製品の製造方法
さらなる態様において、本発明は、以下
1) i) 断熱材とバインダーを混合し、
ii) ステップi)の混合物を基材の表面に(例えば、噴霧又はナイフコーティングによって)適用し、そして混合物を硬化させ、
iii) 任意に基材を除去する
ことにより、断熱層を設けるステップ、
2) ステップ1)で得た断熱層の両側に配置した連続相の形での強化繊維を提供するステップ、
3) 以下の材料
(b) イソシアネートに対して反応性のある少なくとも1つのポリオール、
(c) 任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、
(d) 難燃剤、
(e) 任意に充填剤、
(f) 発泡剤、
(g) 触媒、及び
(h) 任意に添加剤及び/又は助剤
をタンク内で20~80℃の温度で混合してポリオール成分を調製するステップ、
4) ステップ3)で得たポリオール成分を、イソシアネート成分及び任意に不連続相の形での強化繊維と20~80℃の温度下で混合して混合物を得るステップ、
5) ステップ4)で得た混合物を、ステップ2)で設けた断熱層の両側に配置させた連続相の形での強化繊維上に、第1のノズル又は射出ヘッドによって噴霧又は射出するステップ、及び任意に、第2のノズルによって、ステップ2)で提供した連続相の形での強化繊維上に不連続相の形での強化繊維を噴霧して、噴霧又は射出した製品を得るステップ、
6) ステップ5)で得た噴霧又は射出した製品を、40~180℃の温度を有する鋳型中で100~2000トンのホットプレス型締力下でホットプレスするステップ、
並びに
7) 脱型し、任意にトリミングし、それにより断熱層の両側に配置させたポリウレタン複合材料を含む積層製品を得るステップ
を含む、前記積層製品を製造する方法に関し、
ここで、ポリウレタン複合材料は、ポリウレタン複合材料の合計質量に対して、強化繊維35~75質量%及びポリウレタンフォーム25~65質量%を含み、
強化繊維は、強化繊維の合計質量に対して、連続相の形での強化繊維75~100質量%及び不連続相の形での強化繊維0~25質量%を含み、かつ
強化繊維は、ガラス繊維、玄武岩繊維、炭素繊維及び天然繊維からなる群から選択され、好ましくはガラス繊維及び玄武岩繊維、より好ましくはガラス繊維である。
【0135】
簡単な理解を目的として、図6に積層製品の製造方法の一例を示す。
【0136】
一実施形態において、ステップ4)における不連続相の形での強化繊維は、現場で長繊維を切断することによって得られ、ポリウレタンのイソシアネート成分とポリオール成分との混合物に一定の割合で添加され、かつ切断した強化繊維の長さは、6~100mmである。
【0137】
一実施形態において、ステップ1)における連続相の形での強化繊維は、マット、織布、又はそれらの組み合わせの形である。
【0138】
なお、断熱層を作製するために適した材料は、段落II(積層製品)において記載したものと同一である。前記ステップ2)~5)において使用される適した材料は、段落I(PU複合材料)において記載したと同一である。簡潔にするため、ここでは繰り返さない。
【0139】
積層製品の製造のためのスプレートランスファー成形(STM)プロセス
一態様において、本発明は、以下
1) i) 断熱材とバインダーを混合し、
ii) ステップi)の混合物を基材の表面に(例えば、噴霧又はナイフコーティングによって)適用し、そして混合物を硬化させ、
iii) 任意に基材を除去する
ことにより、断熱層を設けるステップ、
2) ステップ1)で得た断熱層の両側に配置した連続相の形での強化繊維を提供するステップ、
3) 以下の材料
(b) イソシアネートに対して反応性のある少なくとも1つのポリオール、
(c) 任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、
(d) 難燃剤、
(e) 任意に充填剤、
(f) 発泡剤、
(g) 触媒、及び
(h) 任意に添加剤及び/又は助剤
をタンク内で20~80℃の温度で混合してポリオール成分を調製するステップ、
4) ステップ3)で得たポリオール成分を、イソシアネート成分と20~80℃の温度下で混合して混合物を得るステップ、
5) ステップ4)で得た混合物を、ステップ2)で設けた断熱層の両側に配置させた連続相の形での強化繊維上に、第1のノズルによって噴霧するステップ、及び任意に、第2のノズルによって、ステップ2)で提供した連続相の形での強化繊維上に不連続相の形での強化繊維を噴霧して、噴霧製品を得るステップ、
6) ステップ5)で得た噴霧製品を、40~180℃の温度を有する鋳型中で100~2000トンのホットプレス型締力下でホットプレスするステップ、
並びに
7) 脱型し、任意にトリミングし、それにより断熱層の両側に配置させたポリウレタン複合材料を含む積層製品を得るステップ
を含む、前記積層製品を製造するためのスプレートランスファー成形(STM)プロセスに関し、
ここで、ポリウレタン複合材料は、ポリウレタン複合材料の合計質量に対して、強化繊維35~75質量%及びポリウレタンフォーム25~65質量%を含み、
強化繊維は、強化繊維の合計質量に対して、連続相の形での強化繊維75~100質量%及び不連続相の形での強化繊維0~25質量%を含み、かつ
強化繊維は、ガラス繊維、玄武岩繊維、炭素繊維及び天然繊維からなる群から選択され、好ましくはガラス繊維及び玄武岩繊維、より好ましくはガラス繊維である。
【0140】
なお、「PU複合材料を製造するためのスプレートランスファー成形(STM)プロセス」において使用される全ての要素(例えば、制限されることなく、使用される原材料、条件(温度、圧力等)、装置又はデバイス、ステップの順序)も、特に明記されない限り、積層製品を製造するためのSTMプロセスのステップ2)~7)に適用される。簡潔にするため、ここでは繰り返さない。
【0141】
積層製品の製造のための長繊維射出(LFI)プロセス
他の態様において、本発明は、以下
1) i) 断熱材とバインダーを混合し、
ii) ステップi)の混合物を基材の表面に(例えば、噴霧又はナイフコーティングによって)適用し、そして混合物を硬化させ、
iii) 任意に基材を除去する
ことにより、断熱層を設けるステップ、
2) ステップ1)で得た断熱層の両側に配置した連続相の形での強化繊維を提供するステップ、
3) 以下の材料
(b) イソシアネートに対して反応性のある少なくとも1つのポリオール、
(c) 任意に鎖延長剤及び/又は架橋剤、
(d) 難燃剤、
(e) 任意に充填剤、
(f) 発泡剤、
(g) 触媒、及び
(h) 任意に添加剤及び/又は助剤
をタンク内で20~80℃の温度で混合してポリオール成分を調製するステップ、
4) ステップ3)で得たポリオール成分を、イソシアネート成分及び不連続相の形での強化繊維と20~80℃の温度下で混合して混合物を得るステップ、
5) ステップ4)で得た混合物を、ステップ2)で設けた断熱層の両側に配置させた連続相の形での強化繊維上に、射出ヘッドによって射出して、射出した製品を得るステップ、
6) ステップ5)で得た射出した製品を、40~180℃の温度を有する鋳型中で100~2000トンのホットプレス型締力下でホットプレスするステップ、
並びに
7) 脱型し、任意にトリミングし、それにより断熱層の両側に配置させたポリウレタン複合材料を含む積層製品を得るステップ
を含む、積層製品の製造のための長繊維射出(LFI)プロセスに関し、
ここで、ポリウレタン複合材料は、ポリウレタン複合材料の合計質量に対して、強化繊維35~75質量%及びポリウレタンフォーム25~65質量%を含み、
強化繊維は、強化繊維の合計質量に対して、連続相の形での強化繊維75~100質量%及び不連続相の形での強化繊維0~25質量%を含み、かつ
強化繊維は、ガラス繊維、玄武岩繊維、炭素繊維及び天然繊維からなる群から選択され、好ましくはガラス繊維及び玄武岩繊維、より好ましくはガラス繊維である。
【0142】
なお、「PU複合材料を製造するための長繊維射出(LFI)プロセス」において使用される全ての要素(例えば、制限されることなく、使用される原材料、条件(温度、圧力等)、装置又はデバイス、ステップの順序)も、特に明記されない限り、積層製品を製造するためのLFIプロセスのステップ2)~7)に適用される。簡潔にするため、ここでは繰り返さない。
【0143】
驚くべきことに、前記積層製品、又は前記方法により製造された積層製品が、軽量、良好な機械的強度、難燃性、及び同時に良好な断熱特性示すことが、本出願において見出された。さらに、前記方法は、堅牢かつ簡単な方法で実施される。同様に前記積層製品は、費用効率よく得られる。
【0144】
さらに他の態様において、本発明は、少なくとも1つの前記積層製品、又は前記方法により製造された積層製品を含む、電池システムに適した被覆物品に関する。
【0145】
本願全体を通して、プロセスの実施形態において言及される材料は、製品の実施形態におけるものと同一の意味を有し、かつ製品の部に記載されている一般的、好ましい、より好ましい、最も好ましい定義と材料の量は、特に明記されない限り、製品の製造方法及び製品から作成された物品にも適用されることに留意されたい。
【0146】
実施例
本発明は、実施例及び比較例を挙げて説明されるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0147】
一般的な説明
以下の出発材料を実施例において使用する:
【化1-1】
【化1-2】
【0148】
次の方法を、特性を決定するために使用した:
kg/m3での密度 GB/T 6343-2008
難燃性 UL94 V0
UL 94 5VA標準
引張強度/係数 GB/T1447-2005
曲げ強度/係数 GB/T1449-2005。
【0149】
実施例A:PU複合材料
I. 製造例
実施例1~5及び比較例1のPU複合材料を、表1に規定した量のポリオール成分、イソシアネート成分及び強化繊維を使用して製造した。比較例2のPU複合材料は、先行技術のシートモールディングコンパウンド(SMC)プロセスによって製造した、HUAYUAN ADV. MATERIALSからのHY3102SMCの名前で市販されているものを購入した。
【0150】
【表1-1】
【表1-2】
* 前記文章において述べたように、ポリオール成分に含まれる充填剤は強化繊維を含まない。
【0151】
実施例1~3
本発明によるPU複合材料を、以下のステップを含む長繊維射出(LFI)プロセスによって製造した。
【0152】
表1に記載したポリオール成分Aの材料を混合して、ポリオール成分Aを形成した。表1に記載したイソシアネート成分Bの材料を混合して、イソシアネート成分Bを形成した。得られたポリオール成分Aとイソシアネート成分Bとを4barの圧力で静的に混合して、約200mPa・sの粘度を有する混合物を得て、そして強化繊維を切り刻み、得られた混合物に撹拌しながら添加して最終混合物を得た。チョップド強化繊維の長さは15mmであった。その最終混合物を、約110℃に予熱し、切断トリミング及びネジ穴の掘削のためのナイフを備え、インサート(例えば、ガラス繊維マット、及び/又は金属シート、金属箔、固体難燃層)が固定可能であり、その中に2層のガラス繊維マットが置かれている開放鋳型に約650g/m2の量で射出した。続いて、鋳型を閉じ、約800トンでクランプした。
【0153】
部品を5分間成形し、そして脱型した。厚さ約1.8mmの生成物を得た。
【0154】
表1から、使用される連続及び不連続強化繊維の量と、出発材料として使用されるポリオール成分Aとイソシアネート成分Bと量は、(35~55):(45~65)の比率であったことが理解できる。
【0155】
実施例4及び5
本発明によるPU複合材料を、以下のステップを含むスプレートランスファー成形(STM)プロセスによって製造した。
【0156】
表1に記載したポリオール成分Aの材料を混合し、30℃~40℃のタンク温度に維持して、粘度を低下させたポリオール成分Aを調製した。表1に記載したイソシアネート成分Bの材料を混合して、イソシアネート成分Bを形成した。ポリオール成分Aとイソシアネート成分Bとを約150barの圧力で衝突混合して、約500mPa・sの粘度を有する混合物を得た。そして、この混合物を2層のガラス繊維マットの表面に約650g/m2の量で噴霧した。
【0157】
ほぼ大気圧で、得られたガラス繊維入りPUを、ロボットによって、約110℃に予熱し、切断トリミング及びネジ穴の掘削のためのナイフを備え、インサート(例えば、ガラス繊維マット、及び/又は金属シート、金属箔、固体難燃層)が固定可能である開放鋳型上に配置し、その後、鋳型を閉じて約500トンでクランプした。
【0158】
部品を5分間成形し、そして脱型した。厚さ約1.8mm~2.4mmの生成物を得た。
【0159】
比較例1
実施例1~3に記載したプロセスと同一のプロセスによりPU複合材料を調製した。厚さ約1.4mmの生成物を得た。
【0160】
II. 実施例の効果
PU複合材料製品の特性試験
製造例のPU複合材料製品についての物理的及び化学的特性を表2に示す。
【0161】
【表2】
【0162】
実施例6~7 - 被覆物品の電磁遮断シールディング特性の試験
それぞれ実施例2及び実施例4のPU複合材料を含む実施例6及び実施例7の被覆物品を調製した。被覆物品は、コア層としてPU複合材料のシートと、コア層の片側に配置された厚さ0.2mmの1枚のアルミニウム合金シートとを含んだ。
【0163】
これらの被覆物品の電磁波シールディング性能を試験した。結果を表3において挙げる。
【0164】
【表3】
【0165】
実施例8~10 - 電池パックの耐火性能の試験
それぞれ実施例3~実施例5の被覆物品を含む実施例8~実施例10の電池パックを調製した。電池パックはそれぞれ、被覆物品と底部トレイとを備えた。底部トレイは、アルミニウム合金シートを打ち抜き加工して作製した。
【0166】
これらの電池パックの耐火性能を試験した。結果を表4において挙げる。
【0167】
外部火災燃焼試験: GB 38031-2020
・試験方法:(8.2.7.1)
・標的から3m以上の距離から燃料パンに点火する
・60秒間火を予熱する
・燃料パンを電池パックの下に移動する
・電池パックを70秒間火に直接さらす
・燃料パンにカバーを追加し、60秒間試験を継続する
・燃料パンを取り外す
・電池パックを2時間観察する
・要件:(5.2.7)
・電池パックは爆発してはいけない
・ニッケル水素電池は適用しない。
【0168】
【表4】
【0169】
表3から見出せるように、本発明によるPU複合材料を含む被覆物品は、良好なEMIシールディング性能を有する。
【0170】
表4から見出せるように、本発明による被覆物品を上部カバーとして含む電池パックは、外部火災燃焼試験に合格する。
【0171】
実施例11~13 耐電圧試験
実施例11の被覆物品は、一緒にホットプレスした実施例4のPU複合材料の2つの層を含む。実施例12の被覆物品は、実施例4の1つのPU複合材料と、そのPU複合材料の片面に配置された1枚の鋼板(厚さ=0.2mm)とを含む。実施例13の被覆物品は、1枚の鋼板(厚さ=0.2mm)と、アルミニウム合金板の両面に配置された実施例4のPU複合材の2層とを含む。
【0172】
それらの耐電圧性能を評価するために、実施例11~13のカバー物品を高DC電圧(3000V)に対して60秒間試験した。そして、被覆物品を1000℃で30分間燃焼した。実施例12の被覆物品については、PU複合材料側を火で燃焼した。そして、実施例11~13の燃焼した被覆物品を再び高直流電圧(3000V又は1000V)に対して60秒間試験した。
【0173】
結果を以下の表5において示す。燃焼前の実施例11~13の被覆物品は、3000Vの電圧下で3mA未満の漏れ電流を示していることに留意されたい。燃焼後の実施例12の被覆物品は、1000Vの電圧下で3mA未満の漏れ電流を示し、一方で実施例11及び13の被覆物品は、さらに3000Vの電圧下でも3mA未満の漏れ電流を示した。さらに、実施例11~13の被覆物品は、絶縁破壊又はフラッシュオーバーを示さなかった。
【0174】
これらの試験結果は、実施例11~13の被覆物品が優れた耐電圧性及び電気絶縁特性を有し、電池システムのカバー/シェルとして特に適していることを示す。
【0175】
【表5】
【0176】
実施例B: 積層製品
I. 製造例
実施例14~17: 膨張性断熱層の製造
実施例14及び15の膨張性断熱層を、表6において定義した量のポリオール成分、イソシアネート成分及び膨張性成分を使用して製造した。
【0177】
【表6】
【0178】
実施例14
本発明による膨張性断熱層を、以下のステップを含む噴霧技術によって製造した。
【0179】
表6に記載したポリオール成分A’の材料を混合して、ポリオール成分A’を形成した。表6に記載したイソシアネート成分B’の材料を混合して、イソシアネート成分B’を形成した。膨張性グラファイトをポリオール成分A’に予備混合し、30℃~40℃の温度のタンクに保持して、予備混合混合物を得た。予備混合した混合物とイソシアネート成分B’とを約10barの圧力で混合して、混合物を得た。そして、その混合物を、約100g/m2の面密度を有する膨張性断熱層(「IL100」の層とも呼ばれる)を得る量で剥離紙上に噴霧した。
【0180】
そして、膨張性断熱材を備えた剥離紙を約100℃のオーブンで5分間加熱して硬化させ、その後膨張性断熱層を剥離紙から剥がした。
【0181】
実施例15
本発明による膨張性断熱層を、ナイフコーティング技術によって製造した。
【0182】
表6に記載したポリオール成分A’の材料を混合して、ポリオール成分A’を形成した。表6に記載したイソシアネート成分B’の材料を混合して、イソシアネート成分B’を形成した。APP422、メラミン、ペンタエリスリトール、及びカオリンを含む膨張性成分をポリオール成分A’に予め混合し、30℃~40℃の温度のタンクに保持して、予備混合混合物を得た。予備混合した膨張性混合物とイソシアネート成分B’とを約150barの圧力で混合して、混合物を得た。そして、その混合物を、約100g/m2の面密度を有する膨張性断熱層(「IL100-2」の層とも呼ばれる)を得る量で剥離紙上にナイフコーティングした。
【0183】
そして、膨張性断熱材を備えた剥離紙を約100℃のオーブンで5分間加熱して硬化させ、その後膨張性断熱層を剥離紙から剥がした。
【0184】
実施例16及び17の膨張性断熱層を、スプレー量及びナイフコーティング量を変更して、それぞれ約150g/m2及び230g/mの面密度を有する膨張性断熱層を得たことを除いて、実施例14に記載したプロセスと同一のプロセスによって製造した(これらを「IL150」又は「IL230」とも呼ぶ)。
【0185】
実施例18~23: 積層製品の作製
実施例18の積層製品を、以下のステップを含むスプレートランスファー成形(STM)プロセスによって製造した。
【0186】
図6に示すように、実施例14の膨張性断熱層(すなわち、IL100)を設け、2層のガラス繊維マットを膨張性断熱層の両側に配置した。
【0187】
表1の実施例4に記載したポリオール成分Aの材料を混合し、30℃~40℃のタンク温度に維持して、粘度を低下させたポリオール成分Aを調製した。表1の実施例4に記載したイソシアネート成分Bの材料を混合して、イソシアネート成分Bを形成した。ポリオール成分Aとイソシアネート成分Bとを約150barの圧力で衝突混合して、約500mPa・sの粘度を有する混合物を得た。そして、この混合物を、膨張性断熱層の片側に配置されたガラス繊維マット(面密度=750g/mを有する)上に約650g/mの量で噴霧した。この混合物を、膨張性断熱層の反対側に配置されたガラス繊維マット(それぞれ面密度=200g/mを有する)上に約650g/mの量で噴霧した。
【0188】
ほぼ大気圧で、膨張性断熱層と、膨張性断熱層の両側に配置された2つのポリウレタン複合材料を含む得られた製品を、ロボットによって約110℃に予熱され、約110℃に予熱し、切断トリミング及びネジ穴の掘削のためのナイフを備え、インサート(例えば、ガラス繊維マット、及び/又は金属シート、金属箔、固体難燃層)が固定可能である開放鋳型上に配置し、そして鋳型を閉じて約500トンでクランプした。
【0189】
この部品を5分間成型し、その後離型し、GF750/IL100/GF200とも呼ばれる積層製品を得た。
【0190】
実施例19及び20の積層製品を、実施例19が実施例16の膨張性断熱層(すなわち、「IL150」)を使用し、一方で実施例20が実施例17の膨張性断熱層(すなわち「IL230」)を使用したことを除いて、実施例18に記載したプロセスと同一のプロセスによって製造した。実施例21及び22の積層製品を、ガラス繊維マットの面密度を表7に示すように変更したことを除いて、実施例18に記載したプロセスと同一のプロセスによって製造した。
【0191】
実施例23の積層製品を、膨張断熱層を実施例15に従って作製した(すなわち、IL100-2)ことを除いて、実施例18と同一のプロセスによって製造した。
【0192】
比較例3:
比較例の製品を、膨張断熱層が設けられていないことを除いて、実施例18に記載したプロセスと同一のプロセスによって製造した。その製品をGF750/GF200という。
【0193】
II. 実施例の効果
実施例18~23及び比較例3に従って製造した積層製品を、片面1300℃(T1)で10分間耐火試験する。表7に示すように、反対側の温度をT2として記録する。
【0194】
【表7】
【0195】
前記表7に示すように、本発明に従って製造した積層製品(実施例18~23)は、反対側T2の温度が400℃未満であるため、優れた断熱性能を示す。特に実施例18~22のT2は320℃をさらに下回る。
【0196】
積層製品の耐電圧性能を評価するために、実施例22の積層製品を高直流電圧(3000V)に対して60秒間試験した。そして、この積層製品を1000℃で30分間燃焼した。そして、実施例22の燃焼した被覆物品を再び高直流電圧(3000V)に対して60秒間試験した。
【0197】
結果を以下の表8において示す。実施例22の積層製品は、燃焼前後において3000Vの電圧下での漏れ電流が3mA未満であったことに留意されたい。加えて、絶縁破壊又はフラッシュオーバーも起こらない。
【0198】
これらの試験結果は、実施例22の積層製品が優れた耐電圧性及び電気絶縁性を有しており、電池システムのカバー/シェルとして特に適していることを示す。
【0199】
【表8】
【0200】
本明細書に記載される構造、材料、成分、組成物、及び方法は、本発明の代表的な例であることを意図しており、本発明の範囲が実施例の範囲によって限定されないことが理解されるであろう。当業者であれば、開示された構造、材料、組成物、及び方法を変更して本発明を実施することができ、かかる変更は本発明の範囲内であるとみなされることを認識するであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその同等物の範囲内に含まれるかかる修正及び変形を包含することが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-03-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
一実施形態において、PU複合材料は、2.2g/cm 3 未満、好ましくは1.8g/cm 3 未満、好ましくは1.6g/cm 3 未満、より好ましくは1.5g/cm 3 未満、さらにより好ましくは1.3g/cm 3 未満、最も好ましくは1.2g/cm 3 未満の密度を有する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0102】
驚くべきことに、本発明者らは、上記の全てのプロセスが、0.5~10mm、好ましくは1~5mm、より好ましくは1~3mm、さらにより好ましくは1~2mmの厚さ、及び低下した密度、例えば1.8g/cm 3 未満、好ましくは1.6g/cm 3 未満、より好ましくは1.5g/cm 3 未満、さらにより好ましくは1.3g/cm 3 未満、最も好ましくは1.2g/cm 3 未満の密度を有する、PU複合材料を製造できることを見出した。さらに、それらは、少ない原材料の必要量、良好な繊維とPUと間の含浸、安い費用、短いサイクル時間等の利点を有する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項6
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項6】
ポリウレタン複合材料が、2.2g/cm 3 未満の密度を有する、請求項1又は2に記載のポリウレタン複合材料。
【国際調査報告】