(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】複数の電子ビームを生み出すシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/145 20060101AFI20240905BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20240905BHJP
H01J 37/21 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H01J37/145
H01J37/09 A
H01J37/21 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575542
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 US2022043559
(87)【国際公開番号】W WO2023055567
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジアン シンロン
(72)【発明者】
【氏名】シュリヤン サミート ケイ
(72)【発明者】
【氏名】グレッラ ルカ
(72)【発明者】
【氏名】クミングス ケビン
(72)【発明者】
【氏名】シアーズ クリストファー
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101BB10
5C101EE03
5C101EE16
5C101EE17
5C101EE47
5C101EE65
5C101EE69
5C101EE78
5C101FF02
(57)【要約】
電子ビーム装置は、上部コラム電子オプティクス300および下部コラム電子オプティクスを含む。上部コラム電子オプティクス300は、電子ビームを複数の電子ビームレット312に分割するためのアパーチャアレイ110を含む。上部コラム電子オプティクス300はさらに、複数の電子ビームレット312の焦点を調整するための複数のレンズ304を備えるレンズアレイ302を含む。複数のレンズ304のそれぞれのレンズ304-1~304-3は、複数の電子ビームレット312のそれぞれの電子ビームレット312の焦点を調整するものである。上部コラム電子オプティクス300はさらに、レンズアレイ302とは逆の様式で複数の電子ビームレット312の焦点を調整するための第1のグローバルレンズ306を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部コラム電子オプティクスおよび下部コラム電子オプティクスを備える電子ビーム装置であって、前記上部コラム電子オプティクスが、
電子ビームを複数の電子ビームレットに分割するためのアパーチャアレイと、
前記複数の電子ビームレットの焦点を調整するための複数のレンズを備えるレンズアレイであって、前記複数のレンズのそれぞれのレンズが、前記複数の電子ビームレットのそれぞれの電子ビームレットの焦点を調整するものである、レンズアレイと、
前記複数の電子ビームレットの焦点を、前記レンズアレイとは逆の様式で調整するための第1のグローバルレンズとを備えることを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子ビーム装置であって、前記複数のビームレットをコリメートし、前記複数のビームレットを前記下部コラム電子オプティクスに供給するための第2のグローバルレンズをさらに備え、
前記レンズアレイが、前記アパーチャアレイと前記第1のグローバルレンズとの間に配設され、
前記第1のグローバルレンズが、前記レンズアレイと前記第2のグローバルレンズとの間に配設されることを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子ビーム装置であって、前記第2のグローバルレンズが磁気レンズを含むことを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電子ビーム装置であって、前記下部コラム電子オプティクスが、転写レンズおよび対物レンズを含み、前記転写レンズが、前記転写レンズと前記対物レンズとの間に前記電子ビームレットのクロスオーバーを作り出すように構成されていることを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電子ビーム装置であって、
前記レンズアレイが、前記アパーチャアレイと前記第1のグローバルレンズとの間に配設され、前記レンズアレイが、
前記アパーチャアレイにおけるそれぞれのアパーチャに対応する複数のボアを有する第1のプレートと、
前記複数のビームレットの通過を可能にするためのボアを有する第2のプレートとを備え、
前記第1のプレートが、前記アパーチャアレイと前記第2のプレートとの間に配設されており、
前記第1のグローバルレンズが、
前記第2のプレートと、
前記複数のビームレットの通過を可能にするためのボアを有する第3のプレートとを備え、
前記第2のプレートが、前記第1のプレートと前記第3のプレートとの間に配設されていることを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電子ビーム装置であって、
前記第1のプレートにおける前記複数のボアが、前記アパーチャアレイにおける前記それぞれのアパーチャと整合されており、
前記第1のプレートにおける前記複数のボアが、前記アパーチャアレイにおける前記それぞれのアパーチャのアパーチャサイズよりも大きいボアサイズを有することを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項7】
請求項5に記載の電子ビーム装置であって、
前記アパーチャアレイが接地されており、
前記第1のプレートが接地されており、
前記第2のプレートが負にバイアスされるように構成可能であり、
前記第3のプレートが接地されていることを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項8】
請求項5に記載の電子ビーム装置であって、
前記アパーチャアレイが接地されており、
前記第1のプレートが接地されており、
前記第2のプレートが正にバイアスされるように構成可能であり、
前記第3のプレートが接地されていることを特徴とする、電子ビーム装置。
【請求項9】
請求項5に記載の電子ビーム装置であって、前記第1のプレートが、前記複数のボアを取り囲む複数のダミー孔をさらに有し、前記複数のダミー孔が、前記アパーチャアレイにおけるそれぞれのアパーチャに対応しないことを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項10】
請求項1に記載の電子ビーム装置であって、
前記レンズアレイが、前記アパーチャアレイと前記第1のグローバルレンズとの間に配設され、前記レンズアレイが、
前記アパーチャアレイにおけるそれぞれのアパーチャに対応する第1の複数のボアを有する第1のプレートと、
前記第1の複数のボアと、前記アパーチャアレイにおける前記それぞれのアパーチャとに対応する第2の複数のボアを有する第2のプレートと、
前記複数のビームレットの通過を可能にするためのボアを有する第3のプレートとを含み、
前記第1のプレートが、前記アパーチャアレイと前記第2のプレートとの間に配設されており、前記第2のプレートが、前記第1のプレートと前記第3のプレートとの間に配設されており、
前記第1のグローバルレンズが、
前記第3のプレートと、
前記複数のビームレットの通過を可能にするためのボアを有する第4のプレートとを含み、
前記第3のプレートが、前記第2のプレートと前記第4のプレートとの間に配設されていることを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電子ビーム装置であって、
前記第1の複数のボアおよび前記第2の複数のボアが、互いに、および前記アパーチャアレイにおける前記それぞれのアパーチャと、整合されており、
前記第1の複数のボアにおけるそれぞれのボア、および、前記第2の複数のボアにおけるそれぞれのボアが、前記アパーチャアレイにおけるそれぞれのアパーチャのアパーチャサイズよりも大きなボアサイズを有することを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電子ビーム装置であって、前記第1の複数のボアと前記第2の複数のボアとにおけるそれぞれのボアのボアサイズが、前記それぞれのボアの半径座標の値が増加するにつれて増加することを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項13】
請求項10に記載の電子ビーム装置であって、
前記アパーチャアレイが接地されており、
前記第1のプレートが接地されており、
前記第2のプレートが補助電圧でバイアスされるように構成可能であり、
前記第3のプレートが負にバイアスされるように構成可能であり、
前記第4のプレートが接地されていることを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項14】
請求項10に記載の電子ビーム装置であって、
前記アパーチャアレイが接地されており、
前記第1のプレートが接地されており、
前記第2のプレートが補助電圧でバイアスされるように構成可能であり、
前記第3のプレートが正にバイアスされるように構成可能であり、
前記第4のプレートが接地されていることを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項15】
請求項1に記載の電子ビーム装置であって、
前記レンズアレイが、前記複数の電子ビームレットをデフォーカスするように構成可能であり、
前記第1のグローバルレンズが、前記レンズアレイによってデフォーカスされた前記複数の電子ビームレットをフォーカスするように構成可能であることを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項16】
請求項1に記載の電子ビーム装置であって、
前記レンズアレイが、前記複数の電子ビームレットをフォーカスするように構成可能であり、
前記第1のグローバルレンズが、前記レンズアレイによってフォーカスされた前記複数の電子ビームレットをデフォーカスするように構成可能であることを特徴とする電子ビーム装置。
【請求項17】
電子ビーム装置の上部コラム電子オプティクスにおける方法であって、
アパーチャアレイを使用して、電子ビームを複数の電子ビームレットに分割することと、
前記複数の電子ビームレットのそれぞれの電子ビームレットの焦点を調整するために、複数のレンズのそれぞれのレンズを使用することを含む、前記複数のレンズを含むレンズアレイを使用して前記複数の電子ビームレットの焦点を調整することと、
第1のグローバルレンズを使用して前記複数の電子ビームレットの焦点を調整することとを含み、前記第1のグローバルレンズが、前記レンズアレイとは逆の様式で前記複数の電子ビームレットの焦点を調整することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記上部コラム電子オプティクスにおいて、
前記複数のビームレットをコリメートすることと、
前記コリメートされた複数のビームレットを前記電子ビーム装置の下部コラム電子オプティクスに供給することとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、
前記レンズアレイを使用して前記複数の電子ビームレットの焦点を調整することが、前記複数の電子ビームレットをデフォーカスすることを含み、
前記第1のグローバルレンズを使用して前記複数の電子ビームレットの焦点を調整することが、前記レンズアレイによってデフォーカスされた前記複数の電子ビームレットをフォーカスすることを含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法であって、
前記レンズアレイを使用して前記複数の電子ビームレットの焦点を調整することが、前記複数の電子ビームレットをフォーカスすることを含み、
前記第1のグローバルレンズを使用して前記複数の電子ビームレットの焦点を調整することが、前記レンズアレイによってフォーカスされた前記複数の電子ビームレットをデフォーカスすることを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子オプティクスに関し、より詳細には、電子ビーム装置において複数の電子ビームを生み出すことに関する。
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡(SEM:scanning electron microscope)は、半導体ウェハ検査などの検査用途に長く使用されてきた。従来より、SEMは単一の電子ビームを有している。しかし、より最近には、複数の電子ビーム(すなわち、ビームレット)を備えるSEMが、(例えば、アインツェルレンズのアレイ、または、偏向ダイポールを使用して)開発されている。SEM(または他の電子ビーム装置)のスループットは、ビームレットの数に依存し、ビームレットの数が高くなるにつれスループットも高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0025241号
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0023643号
【特許文献3】国際公開第2021/018332号
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0001095号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ビームレットの数が増大すると重大な問題が生じる。例えば、ビームレットの数は、粗悪な光学分解能と、アーキングリスクを増大させる高い電界強度とによって制限され得る。しかもこれらの問題は、互いに相容れない可能性がある。例えば、電子ビームエネルギーを低減して電界強度を低減し、したがってアーキングリスクを低減することができる。しかし、電子ビームエネルギーが低減されると電子間のクーロン相互作用が増大し、それによって分解能が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの実施形態では、電子ビーム装置が、上部コラム電子オプティクスおよび下部コラム電子オプティクスを含む。上部コラム電子オプティクスは、電子ビームを複数の電子ビームレットに分割するためのアパーチャアレイを含む。上部コラム電子オプティクスはさらに、複数の電子ビームレットの焦点を調整するために複数のレンズを備えるレンズアレイを含む。複数のレンズのそれぞれのレンズは、複数の電子ビームレットのそれぞれの電子ビームレットの焦点を調整するものである。上部コラム電子オプティクスは、レンズアレイとは逆の様式で複数の電子ビームレットの焦点を調整するための第1のグローバルレンズをさらに含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、電子ビーム装置の上部コラム電子オプティクスにおいて方法が実行される。方法は、アパーチャアレイを使用して、電子ビームを複数の電子ビームレットに分割することを含む。方法はさらに、複数のレンズを含むレンズアレイを使用して複数の電子ビームレットの焦点を調整することを含む。複数の電子ビームレットの焦点を調整することは、複数のレンズのそれぞれのレンズを使用して、複数の電子ビームレットのそれぞれの電子ビームレットの焦点を調整することを含む。方法はさらに、第1のグローバルレンズを使用して、複数の電子ビームレットの焦点を調整することを含む。第1のグローバルレンズは、レンズアレイとは逆の様式で複数の電子ビームレットの焦点を調整する。
【0007】
さまざまな記述された実施形態のより良好な理解のために、下記の図面と併せて下記の発明を実施するための形態への参照を行うものとする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】複数の電子ビーム(すなわち、複数のビームレット)を生成する電子ビーム装置を示す図である。
【
図2】複数の電子ビームを生成する電子ビーム装置において使用され得るプレートを示す図である。
【
図3】いくつかの実施形態による、複数の電子ビームを生成し、デフォーカスレンズアレイを使用して電子ビームをデフォーカスし、グローバル結像レンズを使用して電子ビームを中間像面上にフォーカスする、電子ビーム装置(例えば、SEM)の上部コラム電子オプティクスの一部分を示す図である。
【
図4A】いくつかの実施形態による、
図3の上部コラム電子オプティクスの一例の一部分を示す図である。
【
図4B】いくつかの実施形態による、
図4Aの上部コラム電子オプティクスの一領域の拡大図である。
【
図4C】いくつかの実施形態による、
図4Aおよび
図4Bの上部コラム電子オプティクスに対する、等電位線と、電子ビームレットの主軌道とのコンピュータシミュレーションを示す図である。
【
図5】いくつかの実施形態による、
図4A~
図4Cの上部コラム電子オプティクスを使用して生成されたビームレットに対する像面湾曲ぶれを示す図である。
【
図6】いくつかの実施形態による、アパーチャアレイ、第1のマルチボアプレート、第2のマルチボアプレート、およびグローバル結像レンズを備える上部コラム電子オプティクスの一部分を示す図である。
【
図7】いくつかの実施形態による、
図6の上部コラム電子オプティクスにおいて第1のプレートおよび第2のプレートとして使用され得るプレートを示す図である。
【
図8A】いくつかの実施形態による、像面湾曲補正を伴う3つのそれぞれの電子ビームレットの投射を示す図である。
【
図8B】いくつかの実施形態による、像面湾曲補正を伴う3つのそれぞれの電子ビームレットの投射を示す図である。
【
図8C】いくつかの実施形態による、像面湾曲補正を伴う3つのそれぞれの電子ビームレットの投射を示す図である。
【
図9】いくつかの実施形態による、像面湾曲補正を伴う視野にわたるシミュレートされたスポットサイズを示す図である。
【
図10】いくつかの実施形態による、複数の電子ビームを生成し、フォーカスレンズアレイを使用して電子ビームをフォーカスし、グローバルデフォーカスレンズを使用して電子ビームをデフォーカスする、電子ビーム装置(例えば、SEM)の上部コラム電子オプティクスの一部分を示す図である。
【
図11】いくつかの実施形態による、電子ビーム装置において複数の電子ビームを生み出す方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面および本明細書全体を通じて、同様の参照符号は対応する部分を指す。
【0010】
次に、添付図面において例示される例を有するさまざまな実施形態に対して参照を詳細に行うこととする。以下の詳細説明では、さまざまな記述された実施形態の完全な理解を実現するために多くの特定の詳細が明記されている。しかしながら、当業者にとっては、さまざまな記述された実施形態が、これらの特定の詳細なしに実践され得ることは明らかであろう。他の実例では、実施形態の態様を不必要にあいまいにしないように、周知の方法、手順、構成部品、回路、およびネットワークは、詳細に記述されていない。
【0011】
電子オプティクスでは、レンズ作用は電界および/または磁界によってもたらされる。それらの界を生成するために使用されるそれらの両界および構成部品は、文脈に応じて、本願ではレンズと称する。特定の構成部品は、複数のレンズの一部であり得る。例えば、特定の構成部品は、第1のレンズの最終構成部品と第2のレンズの初期構成部品との両方であり得る。
【0012】
図1は、複数の電子ビーム(すなわち、ビームレット)を生成する電子ビーム装置100を示す。電子ビーム装置100は、上部コラム電子オプティクス126および下部コラム電子オプティクス128を含む。上部コラム電子オプティクス126は、複数の電子ビームレット112を形成するためのオプティクスを含む。上部コラム電子オプティクス126では、電子源(例えば、熱電界放出(TFE)源または冷電界放出(CFE)源)が、放出器先端102から電子を放出する。銃レンズ(GL)104は電子を電子ビーム108へとフォーカスし、銃レンズ104は、放出器先端102によって放出された電子を、アパーチャアレイ(AA)110を照射するテレセントリック照射ビーム(TIB)108へとコリメートする。ビーム制限アパーチャ(BLA)106は、アパーチャアレイ(AA)110を照射する電子ビーム108の電流を選択する。ビーム制限アパーチャは、銃レンズ104と同様に、光軸zに沿って、放出器先端102とアパーチャアレイ110との間に配設される。アパーチャアレイ110は、電子ビーム108の残りを遮断しつつ、電子ビームレット112を、アパーチャアレイ110におけるそれぞれのアパーチャを通り抜けることができるようにすることによって、電子ビーム108を複数の電子ビームレット112に分割する(簡単にするために、112-1から112-3までの3つの電子ビームレットが
図1に示されている)。マイクロレンズアレイ(MLA)とも称されるレンズアレイ114は、アパーチャアレイ110の次にくる。レンズアレイ114は、複数のレンズを含み、複数のレンズのそれぞれは、複数の電子ビームレット112のそれぞれの電子ビームレット112を中間像面(IIP)116上にフォーカスする。複数の電子ビームレット112は、中間像面116内に視野FOV
oを有し、各電子ビームレット112は、開口数(NA)β
0を有する。
【0013】
下部コラム電子オプティクス128は、転写レンズ(TL)118および対物レンズ(OL)122を含む。転写レンズ118は、転写レンズ118と対物レンズ122との間の複数の電子ビームレット112のクロスオーバー(xo)120を作り出すように構成される。下部コラム電子オプティクス128は、投射オプティクスである。例えば、複数の電子ビームレット112は、検査のために(例えば、複数の電子ビームレット112に対するビームぶれがウェハ(WF)124で最小化される最適な倍率で)転写レンズ118および対物レンズ122によってウェハ124(または他の基板)上に投射される。複数の電子ビームレット112は、ウェハ124の表面上に視野FOViを有し、各電子ビームレット112は、開口数(NA)βiを有する。ウェハ124(または他の基板)の検査のために、複数の電子ビームレット112によるウェハ124のボンバードによって、ウェハ124から放出された、2次電子(SE)、および/または、バックスキャット電子は、光軸から分裂され、ウィーンフィルタ(図示せず)によって検出システム(図示せず)に向かって偏向され得る。
【0014】
図2は、複数の電子ビームを生成する電子ビーム装置において使用され得るプレート200を示している。例えば、プレート200は、電子ビーム装置100(
図1)のアパーチャアレイ110の一例であり得る。プレート200は、光軸(すなわち、z軸)に垂直なx-y平面内に配設される。プレート200は、アパーチャ202のアレイを含む。アパーチャ202はさらに、ボアまたは孔と称されてもよい。(本願において使用されるように、用語「アパーチャ」、「ボア」、および「孔」は、交換可能である。)アパーチャ202は円形でもよい。プレート200は、電子ビーム装置において電極として機能することができるように導電性(例えば、金属製)である。
【0015】
いくつかの実施形態では、アパーチャ202は、六角形パターンで分布され、このことは、六角形が比較的高い回転対称度を有するので望ましい。代替的に、アパーチャ202は、異なるパターンで分布される(例えば、異なる回転対称度で)。各アパーチャ202のサイズ(例えば、直径)は、対応する電子ビームレット112の電流を決定する。アパーチャ202の数は、複数の電子ビームレット112における電子ビームレット112の数を決定する。
図2の六角形パターンの場合、複数の電子ビームレット112における電子ビームレット112の総数MEB
totは、
【数1】
であり、但し、M
xは、六角形の軸(例えば、x軸)に沿ったアパーチャ202の数である。例えば、
図2において、六角形に分布されたアパーチャ202の5リング(すなわち、M
x=11)内では、ビームレット112の総数は91(すなわち、MEB
tot=91)である。
図2の完全10リング(すなわち、M
x=21)内では、ビームレット112の総数は331(すなわち、MEB
tot=331)である。
【0016】
図2における円形の配列はさらに、中間像面116およびウェハ124の面(例えば、ウェハ124の表面上)(
図1)における複数の電子ビームレット112のパターンを示すことができる。中間像面116からウェハ124の面まで、複数の電子ビームレット112の視野は、1/Mだけ縮小される。ここで、
M=FOV
i/FOV
o=(β
0/β
i)*(BE/LE)
1/2 (2)
であり、但し、BEおよびLEは、それぞれ、複数の電子ビームレット112のビームエネルギーおよびランディングエネルギーである。さらに、
FOV
o=2np (3)
であり、但し、nは、電子ビームレット112の六角形リングの(したがって、アパーチャ202の)数であり、pは、電子ビームレット112間の間隔である。
【0017】
電子ビームレット112の最終的なフォーカスを改善するために(例えば、球面収差を低減するために)、電子ビーム装置100は、複数の電子ビームレットをデフォーカスするためにデフォーカスレンズアレイを使用し、複数の電子ビームレットを中間像面上にフォーカスするために第1のグローバルレンズ(グローバル結像レンズまたはGILとも称される)を使用する電子ビーム装置で置き換えられてもよい。したがって、デフォーカスレンズアレイは、第1の様式で(すなわち、それらをデフォーカスすることによって)複数の電子ビームレットの焦点を調整し、そして、第1のグローバルレンズは、第1の様式とは逆である第2の様式で(すなわち、それらをフォーカスすることによって)複数の電子ビームレットの焦点を調整する。
【0018】
図3は、いくつかの実施形態による、そのような電子ビーム装置(例えば、SEM)の上部コラム電子オプティクス300の一部分を示す。上部コラム電子オプティクス300では、アパーチャアレイ110(例えば、プレート200、
図2)は、テレセントリック照射ビーム(TIB)であり、したがってコリメートされる電子ビーム108を、光軸に平行な軌道を有する複数の電子ビームレット312に分割する。(簡単にするために、312-1から312-3までの3つの電子ビームレットが
図3に示されている。上部コラム電子オプティクス300はさらに、
図1の放出器先端102、銃レンズ104、およびビーム制限アパーチャ106を含むことができるが、簡単にするために、それらは
図3に示されていない。)次いで、電子ビームレット312は、デフォーカスレンズアレイ(DLA)302におけるそれぞれのデフォーカスレンズ304によって別個にデフォーカスされる。(簡単にするために、312-1から312-3までの電子ビームレットに対応する304-1から304-3までの3つのレンズが
図3に示されている。)次いで、第1のグローバルレンズ(すなわち、GIL)306が、デフォーカスされた電子ビームレット312をフォーカスし、偏向させる。偏向させた電子ビームレット312は、クロスオーバー308を形成し、次いで中間像面316に像を形成する。第2のグローバルレンズ310(グローバルフィールドレンズまたはGFLとも称される)は、偏向させた電子ビームレット312をコリメートし、下部コラム電子オプティクス128(
図1に示してあるが、
図3には示さず)をテレセントリックに照射する。
【0019】
デフォーカスレンズアレイ302は、アパーチャアレイ110と第1のグローバルレンズ306との間に光軸に沿って配設される。第1のグローバルレンズ306は、デフォーカスレンズアレイ302と第2のグローバルレンズ310との間に光軸に沿って配設される。第2のグローバルレンズ310は、第1のグローバルレンズ306と下部コラム電子オプティクス128(
図1)との間に光軸に沿って配設される。クロスオーバー308は、第1のグローバルレンズ306と第2のグローバルレンズ310との間で(および、さらに第1のグローバルレンズ306と中間像面316との間で)光軸に沿って生じる。
【0020】
上部コラム電子オプティクス300は、物体面が仮想物体面(VOP)301であり、像面が中間像面316である、投射オプティクスと考えられてもよい。仮想物体面301は、
図3において点線で示されるように、デフォーカスレンズアレイ302におけるデフォーカスレンズ304の像面である。上部コラム電子オプティクス300における電子ビームレット312の像形成関係は、
【数2】
によって得ることができ、但し、f
dは、デフォーカスレンズ304の焦点距離であり、Lは、デフォーカスレンズアレイ302と第1のグローバルレンズ306との間の距離であり、Qは、第1のグローバルレンズ306と中間像面316との間の距離であり、f
gは、第1のグローバルレンズ306の焦点距離である。
【0021】
いくつかの実施形態では、上部コラム電子オプティクス300の光学倍率は、おおよそ1倍である(例えば、仮想物体面301における視野が中間像面316における視野に等しい場合、厳密に1倍である)。開口数(NA)は、
【数3】
によって得ることができ、但し、Mは、投射オプティクスの光学倍率であり、D
AAは、アパーチャアレイ110におけるアパーチャの(例えば、
図2、アパーチャ202の)直径である。
【0022】
図4Aは、いくつかの実施形態による、上部コラム電子オプティクス400の一部分を示す。上部コラム電子オプティクス400は、いくつかの実施形態による、上部コラム電子オプティクス300(
図3)の一例であり得る。上部コラム電子オプティクス400は、アパーチャアレイ110を含み、さらに、放出器先端102、銃レンズ104、およびビーム制限アパーチャ106(
図1に示してあるが、
図4には示さず)を含み得る。アパーチャアレイ110に加えて、上部コラム電子オプティクス400は、各プレートが光軸に垂直に、光軸に沿って順次配列された、第1のプレート402、第2のプレート404、および第3のプレート408を含む。第1のプレート402は、アパーチャアレイ110と第2のプレート404との間に配設される。第2のプレート404は、第1のプレート402と第3のプレート408との間に配設される。第1のプレート402および第2のプレート404は、デフォーカスレンズアレイ302(
図3)の一例である。第2のプレート404および第3のプレート408は、第1のグローバルレンズ306(
図3)の一例である。第2のプレート404および第3のプレート408は、いくつかの実施形態による、複数のビームレット312(
図3)の通過をできるようにする、すなわち、動作中に、すべてのビームレット312がボア406および410を通り抜ける、それぞれのボア406および410を有する。したがって、第2のプレート404および第3のプレート408は、単一ボアプレートである。いくつかの実施形態では、ボア406および410は、(例えば、数十ミクロンのサイズを有する)ビームレット312の球面収差の効果的な除去を保証するために10mm以上の直径を有する。
【0023】
上部コラム電子オプティクス400はさらに、第2のグローバルレンズ310の一例である磁気レンズ414を含む。磁気レンズ414は、ポールピース418およびコイル420を含む。中間像面416は、光軸に垂直な磁気レンズ414の中間に位置する。中間像面416は、中間像面316(
図3)の一例である。磁気レンズ414は、第3のプレート408と下部コラム電子オプティクス128(
図1に示してあるが、
図4Aには示さず)との間に光軸に沿って配設される。
【0024】
図4Bは、いくつかの実施形態による、上部コラム電子オプティクス400の領域412(
図4A)の拡大図である。
図4Bに示されるように、アパーチャアレイ110は、複数のアパーチャ422(例えば、アパーチャ202、
図2)を有し、そのそれぞれは、それぞれの電子ビームレット312(
図3)に対応する。各電子ビームレット312は、それぞれのアパーチャ422を通り抜け、したがって、それぞれのアパーチャ422によって生み出される。第1のプレート402は、アパーチャアレイ110におけるそれぞれのアパーチャ422に対応する複数のボア424を有し、それぞれの電子ビームレット312は、それぞれのボア424を通り抜ける。したがって、第1のプレート402はマルチボアプレートである。プレート200(
図2)は、アパーチャ202がボア424である、第1のプレート402の一例であり得る。いくつかの実施形態では、複数のボア424は、それぞれのアパーチャ422と整合される(すなわち、各ボア424は、それぞれのアパーチャ422と整合される)。複数のボア424は、アパーチャ422のアパーチャサイズ(例えば、各アパーチャ422の直径)よりも大きいボアサイズ(例えば、各ボア424の直径)を有してもよい。アパーチャ422のアパーチャサイズの一例は、アパーチャ422間の間隔が100μmの状態で、50μmである。他の例が実現可能である。
【0025】
いくつかの実施形態では、複数のボア424は、第1のプレート402内のダミー孔426によって取り囲まれている。ダミー孔426は、電子ビームレット312がダミー孔426を通り抜けないように、それぞれのアパーチャ422に対応しない外側ボアである。ボア424はさらに、ダミー孔426とは対照的に、有効孔と称されることもある。ダミー孔426は、ボア424に対する電界分布が均一になることを保証するように使用される。
【0026】
第1のプレート402、第2のプレート404、および第3のプレート408は、それぞれの電極として機能する導電性(例えば、金属製)プレートである。デフォーカスレンズアレイ302によって所望のデフォーカスを、および、第1のグローバルレンズ306(
図3)によって所望のフォーカスを達成するために、第2のプレート404が負の結像電圧V
IMG(
図4A)(例えば、おおよそ30kVのビームエネルギーで-17kVから-24kVの範囲において)でバイアスされながら、アパーチャアレイ110、第1のプレート402、および第3のプレート408は接地される。したがって、いくつかの実施形態によると、第2のプレート404は負にバイアスされるように構成可能である。第2のプレート404は、光軸に沿って、第1のプレート402から6~12mmだけ、および、第3のプレート408から6~12mmだけ隔てられてもよい。これらの隙間により、プレート間に比較的低い電界強度がもたらされ、したがってアーキングリスクが低減または回避される。さらに、これらの設計により、単一のグローバル電圧V
IMGを使用して、第1のグローバルレンズ306を実装することができるようになる。
【0027】
図4Cは、いくつかの実施形態による、上部コラム電子オプティクス400に対する、等電位線430と、電子ビームレット312の主軌道432とのコンピュータシミュレーションを示す。上部コラム電子オプティクス400の構成部品は、
図4Aに示されるようにバイアスされる。第1のプレート402および第2のプレート404は、デフォーカスフィールド434を生じさせ、第2のプレート404および第3のプレート408は、フォーカス(すなわち、結像)フィールド436を生じさせる。デフォーカスフィールド434およびフォーカスフィールド436は電界である。コンピュータシミュレーションは、得られる電子ビームレット132(すなわち、主軌道432を有する電子ビームレット132)が、無視できるほどの球面収差および無視できるほどのクーロン相互作用を有することを立証する。クーロン相互作用は無視できるほどである。何故ならクロスオーバー位置438(第3のプレート408と磁気レンズ414との間の)が、クロスオーバー位置438の周りの電子ビームレット132のエネルギーが低減されないように、負電位を有する自由電界空間内にあるからであり、しかもクロスオーバー角が、電子ビームレット132の開口数と比べてかなり高いからである。したがって、上部コラム電子オプティクス400は、球面収差およびクーロン相互作用により、無視できるほどのぶれを有する複数の電子ビームレット132を作り出す。
【0028】
しかしながら、上部コラム電子オプティクス400には、大きな視野にわたる像面湾曲によって引き起こされるぶれがあり得る。中間像面316(
図3)(例えば、中間像面416内の、
図4A)内の像面湾曲は、軸外れである(すなわち、光軸から外れている)電子ビームレット312の偏向によって生じる。
図5は、いくつかの実施形態による、プレート200(
図2)と、50μmのアパーチャにサイズ設定され、100μmのアパーチャ間隔とされた上部コラム電子オプティクス400(
図4A~4C)とに従って実装された331個の電子ビームレット312を用いるデフォーカスレンズアレイ302での視野にわたる中間像面416(
図4)における像面湾曲ぶれを示す。したがって、視野は、1414μm×1414μmである。
図5の像面湾曲ぶれは、コンピュータシミュレーションによって決定される。
図5は、中心電子ビームレット312-a、x軸およびy軸に沿った最遠電子ビームレット312-b、ならびに最遠角部電子ビームレット312-cに対する像面湾曲ぶれを示す。
図5は、各電子ビームレット312における電子分布に対する第1のスケールと、電子ビームレット312間の距離に対するより大きなスケールとの2つのスケールを有する。各電子ビームレット312に対する5つのリングは、電子ビームレット312に対する20%、40%、60%、80%、および100%電子分布を示す(すなわち、電子ビームレット312に対する電子の20%は、第1のリング内にあり、40%は第2のリング内にある、などである)。
図5に示されるように、最遠角部電子ビームレット312-cは、x軸およびy軸に沿って最遠電子ビームレット312-bよりも大きなスポットサイズを有し、最遠電子ビームレット312-bは、電子中心ビームレット312-aよりも大きなスポットサイズを有する。
【0029】
図5の像面湾曲ぶれを補正するのを助けるために、いくつかの実施形態による、単一のマルチボアプレートの代わりに2つのマルチボアプレートが使用される。第1のマルチボアプレートは接地されて、補助電圧V
FCC(さらに、像面湾曲補正電圧とも称される)は、第2のマルチボアプレートに印加される。V
FCCは、V
IMGとは別個であるため、補助電圧と称される。V
FCCの大きさは、数百ボルトの桁であり得る(例えば、0~1kVの範囲内)。
【0030】
図6は、いくつかの実施形態による、アパーチャアレイ110、第1のプレート602、および第2のプレート606を備える電子ビーム装置(例えば、SEM)の上部コラム電子オプティクス600の一部分を示す。第1のプレート602は、アパーチャアレイ110と、第2のプレート606との間に光軸に沿って配設される。第1のプレート602は、光軸に沿って、第2のプレート606から数十ミクロンの桁の隙間だけ隔てられてもよい。
【0031】
第1のプレート602および第2のプレート606は両方共導電性(例えば、金属製)マルチボアプレートであり、第1のプレート602は、第1の複数のボア604を有し、第2のプレート606は、第2の複数のボア608を有する。第1の複数のボア604は、アパーチャアレイ110におけるそれぞれのアパーチャ(例えば、アパーチャ422、
図4B)に対応する。第2の複数のボア608は、第1の複数のボア604に対応し、しかもアパーチャアレイ110におけるそれぞれのアパーチャに対応する。したがって、第2の複数のボア608および第1の複数のボア604は、同じ数のボアを有する。例えば、第1の複数のボア604および第2の複数のボア608は、互いに整合され、しかもアパーチャアレイ110におけるそれぞれのアパーチャにも整合される(すなわち、各ボア608はそれぞれのボア604およびそれぞれのアパーチャと整合される)。それぞれのボア604(例えば、各ボア604)およびそれぞれのボア608(例えば、各ボア608)は、アパーチャアレイ110内の対応するアパーチャの(例えば、それらが整合されるアパーチャの)アパーチャサイズよりも大きいボアサイズを有してもよい。アパーチャサイズの一例は、アパーチャ422間の間隔が100μmの状態で、50μmである。他の例が実現可能である。第2の複数のボア608における各ボア608は、複数のボア604における対応するボア604と同じボアサイズを有してもよい。第1の複数のボア604および第2の複数のボア608はそれぞれ、第1および第2のプレート602および606におけるそれぞれのダミー孔426(
図4B)によって取り囲まれてもよい。
【0032】
上部コラム電子オプティクス600はさらに、放出器先端102(
図1)、銃レンズ104(
図1)、ビーム制限アパーチャ106(
図1)、第1のグローバルレンズ306(
図3)、および第2のグローバルレンズ310(
図3)を含み得る。(簡単にするために、放出器先端102、銃レンズ104、ビーム制限アパーチャ106、および第2のグローバルレンズ310は、
図6に示されていない。)上部コラム電子オプティクス600(例えば、SEM)を含む電子ビーム装置はさらに、下部コラム電子オプティクス128(
図1)を含み得る。磁気レンズ414は、第2のグローバルレンズ310を実装するために使用されてもよい。
【0033】
第1のグローバルレンズ306は、プレート404および408を使用して、
図4A~Bに示されるように実装され得る。したがって、上部コラム電子オプティクス600は、いくつかの実施形態に従って、上部コラム電子オプティクス400(
図4A~4C)内のプレート402を第1および第2のプレート602および606で置き換えることによって実装され得る。この例では、プレート404は第3のプレートであり、プレート408は第4のプレートである。第3のプレート404は、第2のプレート606と第4のプレート408との間に配設される。第4のプレート408は、第3のプレート404と磁気レンズ414との間に配設される。第2のプレート606は、第1のプレート602と第3のプレート404との間に配設される。
【0034】
第1のプレート602、第2のプレート606、および第3のプレート404は、アパーチャアレイ110と第1のグローバルレンズ306との間に配設されたレンズアレイを構成する(第3のプレート404は、レンズアレイと第1のグローバルレンズ306との両方の一部と考えられるけれども)。レンズアレイは、複数の電子ビームレット612をデフォーカスするデフォーカスレンズとして動作するように構成可能であり得る。第1のグローバルレンズ306は、レンズアレイによってデフォーカスされた複数の電子ビームレット612をフォーカスするフォーカスレンズとして動作するように構成可能であり得る。これらの機能は、適切にバイアスすることを通じて達成される:アパーチャアレイ110および第1のプレート602は接地され、第2のプレート606はVFCCでバイアスされ、第3のプレート404は負の電圧VIMGでバイアスされ、第4のプレート408は接地される。したがって、いくつかの実施形態に従って、第2のプレート606はVFCCでバイアスされるように構成可能であり、第3のプレート404は電圧VIMGで負にバイアスされるように構成可能である。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1の複数のボア604および第2の複数のボア608におけるそれぞれのボアのボアサイズは、それぞれのボアに対する半径座標の値が増大するにつれて増大する。半径座標は、ボアのパターンの中心から測定される。
図7は、いくつかの実施形態による、第1のプレート602および第2のプレート606として使用され得るプレート700を示す。したがって、プレート700におけるボア702は、第1の複数のボア604および第2の複数のボア608の例である。プレート700におけるボア702のボアサイズ(例えば、直径)は、可変的に分布される:ボアサイズは、原点(すなわち、x軸とy軸の交点)からの距離が増大するにつれて、したがって、半径座標rの値が増大するにつれて、増大する。
図7の例では、ボアサイズは、半径座標(と線形関係の)の線形関数として増大する。他の例が実現可能である。ボアサイズが小さくなればなるほど、フォーカス強度は強くなり、ボアサイズが大きくなればなるほど、フォーカス強度は弱くなる。
【0036】
フォーカス強度におけるこの差により、電子ビームレット612-3、612-2、および612-1に対応するそれぞれの仮想物体に対する光軸座標zo
0、zo
1、およびzo
2が異なることによって、
図6に示されるように、V
FCCがゼロのとき、各電子ビームレット312の仮想物体位置が異なるようになる。zo
0、zo
1、およびzo
2に位置する仮想物体の像は、第1のグローバルレンズ306(
図6)の像側にそれぞれの光軸座標zi
0、zi
1、およびzi
2を有する。V
FCCがゼロの場合、電子ビームレット312は、第1のグローバルレンズ306によってアンダーフォーカスされる:
図6に示されるように、像位置zi
0、zi
1、およびzi
2は中間像面(IIP)616の右側にあり、デフォーカスの関係は、(zi
0-IIP)>(zi
1-IIP)>(zi
2-IIP)>0である。しかしながら、第2のプレート606に印加されるある特定の最適化されたV
FCCの値(負のまたは正の)に対して、デフォーカスの関係は、複数の電子ビームレット612に対する像位置が等しいように、(zi
0-IIP)=(zi
1-IIP)=(zi
2-IIP)となる。第3のプレート404に印加される負の電圧V
IMGを最適に調整することによって、デフォーカスの関係は、複数の電子ビームレット612に対する像位置がすべて中間像面616内にあり、電子ビームレット612のすべての像面湾曲が補正されるように、(zi
0-IIP)=(zi
1-IIP)=(zi
2-IIP)=0となる。
【0037】
図8A~8Cおよび9は、いくつかの実施形態による、上部コラム電子オプティクス600のコンピュータシミュレートされた動作による像面湾曲の補正を示す。これらのシミュレーション結果では、第1のグローバルレンズ306は、プレート404および408(
図4A~4B)を使用して実装され、第2のグローバルレンズ310(
図3には示されているが、簡単にするために
図6には示されていない)は、磁気レンズ414を使用して実装される。
【0038】
図8A~8Cは、いくつかの実施形態による、像面湾曲補正状態の3つのそれぞれの電子ビームレット612-3、612-2、および612-1のy-z平面上の投射800A、800B、および800Cを示す。電子ビームレット612-1、612-2、および612-3の偏向は、x-z平面において生じる。y軸は、第2のプレート606および第2の複数のボア608に対応する。3つの電子ビームレット612-1、612-2、および612-3の像位置は、それぞれzi
2、zi
1、およびzi
0である。各投射800A、800B、および800Cは、電子軌道の複数のコンピュータ光線追跡シミュレーションを含む。
図8A~8Cに対するシミュレーションで使用されるV
FCCの所望の値を決定するために、V
FCCはステップ単位で(例えば、数百ボルトまで)増加される。各ステップでは、残留像面湾曲(zi
0-IIP)>(zi
1-IIP)>(zi
2-IIP)は、(zi
0-IIP)≒(zi
1-IIP)≒(zi
2-IIP)≒0になるまで低減される(例えば、電子ビームレット612-1、612-2、および612-3の像位置は、許容できる誤差内までの実質的に中間像面616内にある)。
【0039】
図8A~8Cに示されるように、電子ビームレット612-1、612-2、および612-3は、第1のプレート602、第2のプレート606、および第3のプレート404を含むレンズアレイによって最初にデフォーカスされる。次いで、電子ビームレット612-1、612-2、および612-3は、第1のグローバルレンズ306によってフォーカス(およびデフォーカス)される。電子ビームレット612-1、612-2、および612-3は、zi
2、zi
1、およびzi
0で十分にフォーカスされて、球面収差の除去を伴う良好な像形成性能を示す。この像形成性能は、いくつかの実施形態による、2つの電圧V
IMGおよびV
FCCのみを使用して(プラス第2のグローバルレンズ310に対してバイアスすること)達成され、それによって、上部コラム電子オプティクス600を、わずかな電力供給および簡単な電力経路で実装することができるようになる。
【0040】
図9は、いくつかの実施形態による、像面湾曲補正を伴う視野にわたるシミュレートされたスポットサイズを示す。スポットサイズは、中心電子ビームレット612-aおよび最遠電子ビームレット612-bに対するx軸およびy軸に沿ったスポットサイズ、ならびに、最遠角部電子ビームレット612-cに対するスポットサイズを含む。
図5の場合と同様に、
図9は、各ビームレット312における電子分布に対する第1のスケールと、電子ビームレット312間の距離に対するより大きな第2のスケールとの2つのスケールを有する。
図9における第1のスケールは、
図5における第1のスケールの1/5である。像面湾曲がなくなるのに伴い、電子ビームレット612-bおよび電子ビームレット612-cのスポットサイズは中心電子ビームレット612-aのスポットサイズに近くなるものの、ある特定の非点収差ぶれおよびゆがみが存在する。ゆがみは、ピクセルサイズよりも小さい場合がある。したがって、
図9は、
図5と比較して電子ビームレット分解能における有意な改善を示している。
【0041】
像面湾曲はさらに、中間像面から検査対象のウェハ(または他の基板)までの下部コラム電子オプティクス128(
図1)内にも存在する。下部コラム電子オプティクス128内の像面湾曲を含む軸外収差は、投射光学減倍率を最適化することによって、最小化することができる。例えば、光学減倍率は、特定の使用に対するランディングエネルギーに応じて、5~10倍の範囲またはおおよそその範囲にあり得る。したがって、ウェハ124の面におけるFOV
iは、1414μm×1414μmの中間像面におけるFOV
0に対して、282μm×282μmから141μm×141μmの範囲またはおおよそその範囲にあり得る。そのようなFOV
i値に対する下部コラム電子オプティクス128における像面湾曲は有意であり得る。上部コラム電子オプティクス600(
図6)は、中間像面616における像面湾曲を、(zi
2-IIP)>(zi
1-IIP)>(zi
0-IIP)=0となるように、過補正するV
FCCの値を選択することによって下部コラム電子オプティクス128における像面湾曲を補正するために使用されてもよい。過補正の量(zi
2-IIP)および(zi
1-IIP)は、それぞれの電子ビームレット612-1および612-2に対する、下部コラム電子オプティクス128における像面湾曲距離を補償する。
【0042】
いくつかの実施形態では、電子ビームレット112(
図1)の最終的なフォーカスを改善するために、電子ビーム装置100(
図1)は、複数の電子ビームレットをフォーカスするためにフォーカスレンズアレイを使用し、複数の電子ビームレットをデフォーカスするために第1のグローバルレンズ(グローバルデフォーカスレンズまたはGILとも称される)を使用する電子ビーム装置で置き換えられてもよい。したがって、フォーカスレンズアレイは、第1の様式で(すなわち、それらをフォーカスすることによって)複数の電子ビームレットの焦点を調整し、そして、第1のグローバルレンズは、第1の様式とは逆である第2の様式で(すなわち、それらをデフォーカスすることによって)複数の電子ビームレットの焦点を調整する。
【0043】
図10は、いくつかの実施形態による、そのような電子ビーム装置(例えば、SEM)の上部コラム電子オプティクス1000の一部分を示す。上部コラム電子オプティクス1000では、アパーチャアレイ110(例えば、プレート200、
図2)は、テレセントリック照射ビーム(TIB)であり、したがってコリメートされる電子ビーム108を、光軸に平行な軌道を有する複数の電子ビームレット1012に分割する。(簡単にするために、1012-1から1012-3までの3つの電子ビームレットが
図10に示されている。上部コラム電子オプティクス1000はさらに、
図1の放出器先端102、銃レンズ104、およびビーム制限アパーチャ106を含むことができるが、簡単にするために、それらは図示されていない。)次いで、電子ビームレット1012は、フォーカスレンズアレイ(FLA)1002におけるそれぞれのフォーカスレンズ1004によって別個にフォーカスされる。(簡単にするために、1012-1から1012-3までの電子ビームレットに対応する1004-1から1004-3までの3つのレンズが
図10に示されている。)フォーカスレンズアレイ1002は、電子ビームレット1012を、第1のグローバルレンズ1006と第2のグローバルレンズ310との間(すなわち、第1のグローバルレンズ1006と中間像面1016との間)の仮想物体面(VOP)1008上にフォーカスする。次いで、第1のグローバルレンズ(すなわち、GDL)1006は、フォーカスされた電子ビームレット1012をデフォーカスし、偏向させる。偏向させた電子ビームレット1012は、中間像面1016において像を形成する。フォーカスレンズアレイ1002によって行われるフォーカスは、第1のグローバルレンズ1006によって行われるデフォーカスよりも強力であり、それによって、電子ビームレット1012は中間像面1016において像形成されることができるようになる。第2のグローバルレンズ310は、偏向させたビームレット1012をコリメートし、下部コラム電子オプティクス128(
図1に示してあるが、
図10には示さず)をテレセントリックに照射する。
【0044】
フォーカスレンズアレイ1002は、アパーチャアレイ110と第1のグローバルレンズ1006との間に光軸に沿って配設される。第1のグローバルレンズ1006は、フォーカスレンズアレイ1002と第2のグローバルレンズ310との間に光軸に沿って配設される。第2のグローバルレンズ310は、第1のグローバルレンズ1006と下部コラム電子オプティクス128との間に光軸に沿って配設される。
【0045】
第1のグローバルレンズ1006のデフォーカスフィールドは、光軸を外れる電子ビームレット1012(例えば、電子ビームレット1012-1および1012-3、しかし1012-2ではない)を偏向させて、仮想物体面におけるFOVoよりも大きなFOViを中間像面1016において生成する。したがって、投射光学倍率は1倍よりも大きく、
M=FOVi/FOVo>1x (6)
である。
【0046】
いくつかの実施形態では、上部コラム電子オプティクス1000は、上部コラム電子オプティクス400(
図4A~4B)を含む上部コラム電子オプティクス300(
図3)を使用して、V
IMGを正にさせることによって実装され、正の電圧V
IMGはプレート404に印加され、他の構成部品は、
図4Aに示されるようにバイアスされる。V
IMGを負から正に変えることによって、デフォーカスレンズアレイ302(
図3)は、フォーカスレンズアレイ1002になり、グローバル結像レンズ(すなわち、第1のグローバルレンズ306)は、グローバルデフォーカスレンズ(すなわち、第1のグローバルレンズ1006)になる。したがって、プレート404は、正にバイアスされるように構成可能であり得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、上部コラム電子オプティクス1000は、プレート404およびプレート408(
図4A)を含む上部コラム電子オプティクス600(
図6)を使用して、V
IMGを正にさせることによって実装される。アパーチャアレイ110および第1のプレート602は接地され、第2のプレート606は補助電圧V
FCC(例えば、数百ボルトの桁の)でバイアスされ、第3のプレート404は正の電圧V
IMGでバイアスされ、第4のプレート408は接地される。
【0048】
図11は、いくつかの実施形態による、電子ビーム装置(例えば、SEM)において複数の電子ビームを生み出す方法1100を示すフローチャートである。方法1100は、電子ビーム装置(例えば、上部コラム電子オプティクス300、
図3;400、
図4A~4C;600、
図6および/または1000、
図10)内の上部コラム電子オプティクスを使用して実行されてもよい。
【0049】
方法1100では、電子ビーム(例えば、TIB108、
図3、4C、6、および/または10)は、アパーチャアレイ(例えば、アパーチャアレイ110、
図3、4A~4C、6、および/または10)を使用して複数の電子ビームレット(例えば、電子ビームレット312、
図3;612、
図6;または1012、
図10)に分割される(1102)。
【0050】
複数の電子ビームレットの焦点は、複数のレンズを含むレンズアレイ(例えば、デフォーカスレンズアレイ302、
図3;
図6のレンズアレイ;フォーカスレンズアレイ1002、
図10)を使用して調整される(1104)。複数のレンズのそれぞれのレンズは、複数の電子ビームレットのそれぞれの電子ビームレットの焦点を調整するために使用される。いくつかの実施形態では(例えば、
図3および6におけるように)、複数の電子ビームレットがデフォーカスされる(1106)。代替的に(例えば、
図10におけるように)、複数の電子ビームレットがフォーカスされる(1108)。
【0051】
複数の電子ビームレットの焦点は、第1のグローバルレンズ(例えば、第1のグローバルレンズ306、
図3または6;第1のグローバルレンズ1006、
図10)を使用して調整される(1110)。第1のグローバルレンズは、複数の電子ビームレットの焦点をレンズアレイとは逆の様式で(しかし、同じ倍率でではなく;フォーカスはデフォーカスよりも強力であってもよい)調整する。いくつかの実施形態では(例えば、
図3および6におけるように)、ステップ1106においてレンズアレイによってデフォーカスされた複数の電子ビームレットは、第1のグローバルレンズによってフォーカスされる(1112)。代替的に(例えば、
図10におけるように)、ステップ1108においてレンズアレイによってフォーカスされた複数の電子ビームレットは、第1のグローバルレンズによってデフォーカスされる(1114)。
【0052】
複数の電子ビームレットは、コリメート(1116)され、電子ビーム装置の下部コラム電子オプティクス(例えば、下部コラム電子オプティクス128、
図1)に供給(1118)される。例えば、第2のグローバルレンズ(例えば、第2のグローバルレンズ310、
図3または10)(例えば、磁気レンズ414、
図4A)は、複数の電子ビームレットをコリメートし、複数の電子ビームレットを下部コラム電子オプティクスに供給する。
【0053】
方法1100により、わずかな電力供給および低アーキングリスクを伴う比較的簡単な光学設計を使用して、複数の電子ビームレット(例えば、プレート200、
図2による、331個のビームレットなどの100個を超える電子ビームレット)を高分解能で生成させることができるようになる。
【0054】
説明を目的とした前の記述は、特定の実施形態を参照して説明されてきた。しかしながら、上記の例示的な考察は、網羅的を意図するものでも、開示された精密な形態に対する特許請求の範囲を限定することを意図するものでもない。多くの変形および異形が、上記の教示に鑑みて実現可能である。実施形態は、特許請求の範囲の基礎となる原理、および、その実際の適用を最良に説明するために選択されたので、それによって当業者は、企図される特定の使用に適するようなさまざまな変形を伴う実施形態を最良に使用することができるようになる。
【国際調査報告】