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特表2024-533101ポリカーボネート樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20240905BHJP
   C08K 13/04 20060101ALI20240905BHJP
   C08J 3/215 20060101ALI20240905BHJP
   C08K 7/14 20060101ALN20240905BHJP
   C08K 5/5399 20060101ALN20240905BHJP
   C08K 5/521 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K13/04
C08J3/215 CFD
C08K7/14
C08K5/5399
C08K5/521
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513522
(86)(22)【出願日】2023-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 KR2023010899
(87)【国際公開番号】W WO2024039099
(87)【国際公開日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】10-2022-0104189
(32)【優先日】2022-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0097211
(32)【優先日】2023-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ス-キョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン-ワン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ヒ-チャン
(72)【発明者】
【氏名】イ、リュル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミンス
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ウス
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA06
4F070AA50
4F070AA60
4F070AB08
4F070AB11
4F070AB26
4F070AC28
4F070AC55
4F070AC66
4F070AD02
4F070AE01
4F070AE07
4F070DA55
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FC06
4J002CG003
4J002CG00W
4J002CG013
4J002CG01W
4J002CG02X
4J002CG033
4J002CG03W
4J002CP17X
4J002DL006
4J002EW047
4J002EW158
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD137
4J002FD138
(57)【要約】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関し、より詳細には、A-1)溶融指数(300℃、1.2kg)が15~25g/10minであるポリカーボネート20~75重量%と、B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体5~25重量%と、C)ガラス繊維5~45重量%と、D)液状のリン系難燃剤2~12重量%と、E)ホスファゼン化合物1~7重量%とを含むポリカーボネート樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関する。
本発明によれば、ポストコンシューマーリサイクル(post-consumer recycle)ポリカーボネートを高含量で含むことで、リサイクル比率を高めながらも、耐衝撃性、耐熱性及び難燃性がいずれも優れたポリカーボネート樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品を提供する効果がある。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)溶融指数(300℃、1.2kg)が15~25g/10minであるポリカーボネート20~75重量%と、
B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体5~25重量%と、
C)ガラス繊維5~45重量%と、
D)液状のリン系難燃剤2~12重量%と、
E)ホスファゼン化合物1~7重量%とを含むことを特徴とする、ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、A-2)溶融指数(300℃、1.2kg)が5g/10min以上15g/10min未満であるポリカーボネート1~50重量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記A)ポリカーボネートは、ポストコンシューマーリサイクル(post-consumer recycle)ポリカーボネートであることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
前記B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体及びポリシロキサンを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
前記B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、下記化学式1で表される芳香族ポリカーボネート系第1繰り返し単位と、下記化学式2で表される、1つ以上のシロキサン結合を有する芳香族ポリカーボネート系第2繰り返し単位とを含むか、または下記化学式3で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【化16】
(前記化学式1において、R1~R4は、それぞれ独立して、水素、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、及びハロゲンから選択され、Zは、非置換であるか、またはC1-6アルキルもしくはC6-20アリールで置換されたC1-10アルキレン;非置換であるか、またはC1-10アルキルで置換されたC3-15シクロアルキレン;酸素;S;SO;SO2;及びCOから選択される。)
【化17】
(前記化学式2において、X1及びX2は、それぞれ独立して、C1-10アルキレンであり、Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ基、C1-6アルコキシ基、及びC6-20アリール基から選択され、R5~R8は、それぞれ独立して、水素;非置換であるか、またはオキシラニル、オキシラニルで置換されたC1-10アルコキシ基、もしくはC6-20アリールで置換されたC1-15アルキル;ハロゲン;C1-10アルコキシ;アリル;C1-10ハロアルキル;及びC6-20アリールから選択され、n2は、30~120の整数である。)
【化18】
(前記化学式3において、X3及びX4は、それぞれ独立して、C1-10アルキレンであり、R9~R12は、それぞれ独立して、水素;非置換であるか、またはオキシラニル、オキシラニルで置換されたC1-10アルコキシ、もしくはC6-20アリールで置換されたC1-15アルキル;ハロゲン;C1-10アルコキシ;アリル;C1-10ハロアルキル;あるいはC6-20アリールであり、n1は、30~120の整数である。)
【請求項6】
前記B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、シロキサンドメインの平均サイズが20nm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
前記C)ガラス繊維は、平均長さ1~15mmであり、断面の平均横長さが15~45μm、及び断面の平均縦長さが2~15μmであることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
前記D)液状のリン系難燃剤は、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(bisphenol-A bis(diphenyl phosphate))、トリフェニルホスフェート(tri-phenyl phosphate)、及びレゾルシノールビスジフェニルホスフェート(resorcinol bis diphenyl phosphate)からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項9】
前記E)ホスファゼン化合物は、環状ホスファゼン化合物、鎖状ホスファゼン化合物、及び架橋型ホスファゼン化合物からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項10】
前記D)液状のリン系難燃剤とE)ホスファゼン化合物の重量比(D:E)は、1.2:1~3.0:1であることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、ASTM D256に準拠して、厚さ3.2mmのノッチ付き試験片で常温にて測定したアイゾット衝撃強度が11kgf・cm/cm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項12】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、ASTM D648に準拠して、厚さ6.4mmの試験片で18.6kgの荷重下で測定した熱変形温度が97℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項13】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、UL94 Vテストに準拠して、厚さ0.8mmの試験片で測定した難燃性がV-0等級以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項14】
A)溶融指数(300℃、1.2kg)が15~25g/10minであるポリカーボネート20~75重量%と、A-2)溶融指数(300℃、1.2kg)が5g/10min以上15g/10min未満であるポリカーボネート0~50重量%と、B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体5~25重量%と、C)ガラス繊維5~45重量%と、D)液状のリン系難燃剤2~12重量%と、E)ホスファゼン化合物1~7重量%とを含んで、200~350℃及び100~400rpmの条件下で混練及び押出するステップを含むことを特徴とする、ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2022年08月19日付の韓国特許出願第10-2022-0104189号及びこれに基づいて2023年07月26日付で再出願された韓国特許出願第10-2023-0097211号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関し、より詳細には、最終消費者が使用後に捨てたプラスチックをリサイクルしたポストコンシューマーリサイクル(post-consumer recycle)ポリカーボネートを高含量で含んでも、難燃性、耐衝撃性及び耐熱性がいずれも優れたポリカーボネート樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
プラスチックは、優れた生産性、軽量性、断熱性などの様々な利点により、数十年間、様々な分野で使用されているが、構造的特徴上、分解がよく起こらないため、埋め立てる際に環境汚染の問題を発生させる。このような問題を解決するために、様々な研究が進められてきており、そのうちの1つがリサイクルである。廃プラスチックをリサイクルすると、環境汚染の問題を解決することができ、コスト削減の面でも大きな効果が得られる。
【0004】
IT、電気・電子及び自動車メーカは、環境配慮のトレンドに合わせて、最終消費者が使用後に捨てたプラスチックをリサイクルしようとするが、既存のプラスチックに比べて機械的物性が低下するため、使用に多くの制約が伴う。
【0005】
様々な種類のプラスチックの中でポリカーボネートは、非結晶性であり、熱可塑性樹脂であって、常温で耐衝撃性が高く、熱安定性及び透明性に優れ、寸法安定性が高いという利点があるので、建築素材、電気・電子製品の外装材及び部品、自動車部品並びに光学部品をはじめとする各種産業用樹脂として広範囲に活用されている。
【0006】
ポリカーボネートは、利点も多いが、低温で耐衝撃性が低く、樹脂自体に難燃特性がないため、電気・電子及び自動車装置に適用する際に、火災が発生すると危険であるという問題がある。これを解決するために、ポリカーボネートに難燃剤を使用する場合、耐衝撃性などの機械的物性及び耐熱性が低下するという問題が発生する。
【0007】
また、ポストコンシューマーリサイクルポリカーボネートを熱可塑性樹脂組成物に使用すると、耐衝撃性及び耐熱性がさらに低下する問題があるため、少量でのみ使用されている。
【0008】
そのため、熱可塑性樹脂組成物にポストコンシューマーリサイクルポリカーボネートを高含量で含めることで、リサイクル樹脂の比率を高めることができながらも、優れた難燃性、耐衝撃性及び耐熱性を付与することができる熱可塑性樹脂組成物の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2011-0126425号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本記載は、ポストコンシューマーリサイクル(post-consumer recycle)ポリカーボネートを高含量で含むにもかかわらず、難燃性、耐衝撃性及び耐熱性がいずれも優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0011】
また、本記載は、前記ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本記載は、前記ポリカーボネート樹脂組成物を含む成形品を提供することを目的とする。
【0013】
本記載の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本記載によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本記載は、A-1)溶融指数(300℃、1.2kg)が15~25g/10minであるポリカーボネート20~75重量%と、B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体5~25重量%と、C)ガラス繊維5~45重量%と、D)液状のリン系難燃剤2~12重量%と、E)ホスファゼン化合物1~7重量%とを含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【0015】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、好ましくは、A-1)溶融指数(300℃、1.2kg)が15~25g/10minであるポリカーボネート20~75重量%と、A-2)溶融指数(300℃、1.2kg)が5g/10min以上15g/10min未満であるポリカーボネート0~50重量%と、B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体5~25重量%と、C)ガラス繊維5~45重量%と、D)液状のリン系難燃剤2~12重量%と、E)ホスファゼン化合物1~7重量%とを含むことができる。
【0016】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、好ましくは、A-1)溶融指数(300℃、1.2kg)が15~25g/10minであるポリカーボネート20~75重量%と、A-2)溶融指数(300℃、1.2kg)が5g/10min以上15g/10min未満であるポリカーボネート1~50重量%と、B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体5~25重量%と、C)ガラス繊維5~45重量%と、D)液状のリン系難燃剤2~12重量%と、E)ホスファゼン化合物1~7重量%とを含むことができる。
【0017】
前記A-1)ポリカーボネートは、好ましくは、ポストコンシューマーリサイクル(post-consumer recycle)ポリカーボネートであってもよく、前記A-2)ポリカーボネートは、好ましくは、一般のポリカーボネートであってもよい。
【0018】
前記B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、好ましくは、芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体及びポリシロキサンを含んでなってもよい。
【0019】
前記B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、好ましくは、下記化学式1で表される芳香族ポリカーボネート系第1繰り返し単位と、下記化学式2で表される、1つ以上のシロキサン結合を有する芳香族ポリカーボネート系第2繰り返し単位とを含むか、または下記化学式3で表される繰り返し単位を含むことができる。
【0020】
【化1】
(前記化学式1において、R1~R4は、それぞれ独立して、水素、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、及びハロゲンから選択され、Zは、非置換であるか、またはC1-6アルキルもしくはC6-20アリールで置換されたC1-10アルキレン;非置換であるか、もしくはC1-10アルキルで置換されたC3-15シクロアルキレン;酸素;S;SO;SO2;及びCOから選択される。)
【0021】
【化2】
(前記化学式2において、X1及びX2は、それぞれ独立して、C1-10アルキレンであり、Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ基、C1-6アルコキシ基、及びC6-20アリール基から選択され、R5~R8は、それぞれ独立して、水素;非置換であるか、またはオキシラニル、オキシラニルで置換されたC1-10アルコキシ基、もしくはC6-20アリールで置換されたC1-15アルキル;ハロゲン;C1-10アルコキシ;アリル;C1-10ハロアルキル;及びC6-20アリールから選択され、n2は、30~120の整数である。)
【0022】
【化3】
(前記化学式3において、X3及びX4は、それぞれ独立して、C1-10アルキレンであり、R9~R12は、それぞれ独立して、水素;非置換であるか、またはオキシラニル、オキシラニルで置換されたC1-10アルコキシ、もしくはC6-20アリールで置換されたC1-15アルキル;ハロゲン;C1-10アルコキシ;アリル;C1-10ハロアルキル;あるいはC6-20アリールであり、n1は、30~120の整数である。)
【0023】
前記B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、好ましくは、シロキサンドメインの平均サイズが20nm以上であってもよい。
【0024】
前記C)ガラス繊維は、好ましくは、平均長さ1~15mmであり、断面の平均横長さが15~45μm、及び断面の平均縦長さが2~15μmであってもよい。
【0025】
前記D)液状のリン系難燃剤は、好ましくは、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(bisphenol-A bis(diphenyl phosphate))、トリフェニルホスフェート(tri-phenyl phosphate)、及びレゾルシノールビスジフェニルホスフェート(resorcinol bis diphenyl phosphate)からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0026】
前記E)ホスファゼン化合物は、好ましくは、環状ホスファゼン化合物、鎖状ホスファゼン化合物、及び架橋型ホスファゼン化合物からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0027】
前記D)液状のリン系難燃剤とE)ホスファゼン化合物の重量比(D:E)は、好ましくは、1.2:1~3.0:1であってもよい。
【0028】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D256に準拠して、厚さ3.2mmのノッチ付き試験片で常温にて測定したアイゾット衝撃強度が11kgf・cm/cm以上であってもよい。
【0029】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D648に準拠して、厚さ6.4mmの試験片で18.6kgの荷重下で測定した熱変形温度が97℃以上であってもよい。
【0030】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、好ましくは、UL94 Vテストに準拠して、厚さ0.8mmの試験片で測定した難燃性がV-0等級以上であってもよい。
【0031】
また、本記載は、A-1)溶融指数(300℃、1.2kg)が15~25g/10minであるポリカーボネート20~75重量%と、A-2)溶融指数(300℃、1.2kg)が5g/10min以上15g/10min未満であるポリカーボネート0~50重量%と、B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体5~25重量%と、C)ガラス繊維5~45重量%と、D)液状のリン系難燃剤2~12重量%と、E)ホスファゼン化合物1~7重量%とを含んで、200~350℃及び100~400rpmの条件下で混練及び押出するステップを含むことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0032】
前記ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、好ましくは、A-1)溶融指数(300℃、1.2kg)が15~25g/10minであるポリカーボネート20~75重量%と、A-2)溶融指数(300℃、1.2kg)が5g/10min以上15g/10min未満であるポリカーボネート1~50重量%と、B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体5~25重量%と、C)ガラス繊維5~45重量%と、D)液状のリン系難燃剤2~12重量%と、E)ホスファゼン化合物1~7重量%とを含んで、200~350℃及び100~400rpmの条件下で混練及び押出するステップを含むことができる。
【0033】
また、本記載は、前記ポリカーボネート樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品を提供する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、ポストコンシューマーリサイクルポリカーボネートを高含量で含むにもかかわらず、難燃性、耐熱性及び耐衝撃性がいずれも優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供する効果がある。
【0035】
さらに、本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物は、ポストコンシューマーリサイクルポリカーボネートの含量を高めることができるので、廃プラスチックのリサイクル比率を高め、環境に優しく、温室効果ガスを減らし、エネルギーを節約する利点を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明のポリカーボネート樹脂組成物に関して詳細に説明する。
【0037】
本発明者らは、ポリカーボネート樹脂組成物にポストコンシューマーリサイクルポリカーボネートを高含量で含むにもかかわらず、液状のリン系難燃剤とホスファゼン化合物の組み合わせ、ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体、及びガラス繊維を所定の含量で含む場合、難燃性、耐熱性及び耐衝撃性がいずれも優れることを確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成するようになった。
【0038】
本記載によるポリカーボネート樹脂組成物を詳細に説明すると、次の通りである。
【0039】
本記載のポリカーボネート樹脂組成物は、A-1)溶融指数(300℃、1.2kg)が15~25g/10minであるポリカーボネート20~75重量%と、B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体5~25重量%と、C)ガラス繊維5~45重量%と、D)液状のリン系難燃剤2~12重量%と、E)ホスファゼン化合物1~7重量%とを含むことを特徴とし、このような場合、リサイクルされたポリカーボネートを高含量で含みながらも、難燃性、耐衝撃性及び耐熱性がいずれも優れ、環境に優しいという効果がある。
【0040】
(A-1)溶融指数(300℃、1.2kg)が15~25g/10minであるポリカーボネート)
前記A-1)ポリカーボネートは、一例として、ポリカーボネート樹脂組成物の総重量に対して20~75重量%、好ましくは25~72重量%、より好ましくは28~72重量%、さらに好ましくは30~62重量%であってもよく、この範囲内で、リサイクル比率が高いので、環境に優しく、水とエネルギーの消費量が減少しながらも、難燃性、耐熱性及び耐衝撃性に優れるという効果がある。
【0041】
前記A-1)ポリカーボネートは、溶融指数が、好ましくは17~22g/10min、より好ましくは19~21g/10minであってもよく、この範囲内で、物性バランス及び耐衝撃性に優れるという効果がある。
【0042】
本記載において、溶融指数は、ASTM D1238に準拠して、300℃及び1.2kgの荷重下で測定する。
【0043】
前記A-1)ポリカーボネートは、多分散指数が、一例として2.75超、好ましくは2.8以上、より好ましくは2.8~3.2、さらに好ましくは2.8~3.0であってもよく、この範囲内で、機械的物性及び物性バランスに優れるという効果がある。
【0044】
本記載において、多分散指数は、分子量の分布を意味し、重量平均分子量を数平均分子量で除して算出した値である。多分散指数が高いという意味は、分子量分布の標準偏差が大きいことを意味し、重量平均分子量よりも大きいか小さい分子量がさらに多く存在することを意味する。
【0045】
本記載において、重量平均分子量及び数平均分子量は、別途に定義しない限り、GPC(Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を用いて測定することができ、具体例として、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPCを通じて、標準PS(standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。このとき、具体的な測定例として、溶媒はTHF、カラム温度は40℃、流速は0.3ml/min、試料の濃度は20mg/ml、注入量は5μlとし、カラムモデルは1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B Guard(50×4.6mm)、測定機器はAgilent 1200シリーズシステム、屈折率(Refractive index)検出器(detector)はAgilent G1362 RID、RI温度は35℃、データの処理はAgilent ChemStation S/W、及び試験方法(Mn、Mw及びPDI)はOECD TG 118の条件で測定することができる。
【0046】
前記A-1)ポリカーボネートは、重量平均分子量が、一例として20,000g/mol以上28,000g/mol未満、好ましくは22,000~27,000g/mol、より好ましくは24,000~27,000g/molであってもよく、この範囲内で、機械的物性及び物性バランスに優れるという効果がある。
【0047】
前記A-1)ポリカーボネートは、ASTM D648に準拠して測定した熱変形温度が、一例として124℃以上、好ましくは127℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは130~140℃であってもよく、この範囲内で、機械的物性及び物性バランスに優れるという効果がある。
【0048】
本記載において、熱変形温度は、ASTM D648に準拠して、厚さ6.4mmの試験片で18.6kgの荷重下で測定することができる。
【0049】
前記A-1)ポリカーボネートは、一例として、ポストコンシューマーリサイクルポリカーボネートであってもよく、この場合、廃プラスチックをリサイクルすることで、環境に優しく、エネルギーと水が節約され、炭素の排出が減少するという効果がある。
【0050】
本記載において、ポストコンシューマーリサイクルポリカーボネートは、本発明の定義に従う限り、本発明の属する技術分野で一般的にポストコンシューマーリサイクルポリカーボネートとして認められる場合、特に制限されず、一例として、回収された廃プラスチックからリサイクルされたポリカーボネートであり、具体例としては、回収された廃プラスチックから選別、洗浄及び粉砕を経て利用可能な原料の状態で準備されたものを意味する。また、必要に応じて、押出工程を経てペレット状に加工されたものを使用することができ、この場合、追加で精製などの別途の加工が不要であるという利点がある。このようなポストコンシューマーリサイクルポリカーボネートは、1回以上の加工を経たものであるため、着色剤、滑剤、及び/又は離型剤などの添加剤を含み得る。
【0051】
前記ポストコンシューマーリサイクルポリカーボネートは、一例として、リサイクルポリカーボネート、または再生ポリカーボネートとも称することができる。
【0052】
前記A-1)ポリカーボネートは、一例として、芳香族ジオール化合物及びカーボネート前駆体を含んで重合された樹脂であってもよい。
【0053】
前記芳香族ジオール化合物は、一例として、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA;BPA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ;BPZ)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、及びα,ω-ビス[3-(ο-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、ビスフェノールAであってもよい。
【0054】
前記カーボネート前駆体は、一例として、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレシルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、カルボニルクロライド(ホスゲン)、トリホスゲン、ジホスゲン、カルボニルブロマイド及びビスハロホルメートからなる群から選択された1種以上であってもよく、製造効率及び物性の観点から、トリホスゲン、ホスゲンまたはこれらの混合を使用することが好ましい。
【0055】
具体的な一例として、前記芳香族ジオール化合物及びカーボネート前駆体の重合で形成されたポリカーボネートは、下記化学式4で表される繰り返し単位を含む。
【0056】
【化4】
【0057】
前記化学式4において、R’1~R’4は、それぞれ独立して、水素、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、またはハロゲンであり、Z’は、非置換であるか、またはC1-6アルキルもしくはC6-20アリールで置換されたC1-10アルキレン、非置換であるか、またはC1-10アルキルで置換されたC3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO2、あるいはCOである。
【0058】
好ましくは、前記化学式4において、R’1~R’4は、それぞれ独立して、水素またはC1-3アルキルであり、Z’は、非置換であるか、もしくはメチル又はフェニルで置換されたC1-6アルキレンであってもよい。
【0059】
前記A-1)ポリカーボネートは、一例として、線状ポリカーボネート、分岐状(branched)ポリカーボネート、及びポリエステルカーボネート共重合体からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは線状ポリカーボネートであってもよく、この場合、流動性が向上して外観特性に優れるという利点がある。
【0060】
前記線状ポリカーボネートは、好ましくはビスフェノールA系ポリカーボネートであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0061】
前記A-1)ポリカーボネートは、一例として、本発明の定義に従う限り、市販の製品を使用してもよい。
【0062】
(A-2)溶融指数(300℃、1.2kg)が5g/10min以上~15g/10min未満であるポリカーボネート)
前記A-2)ポリカーボネートは、一例として、溶融指数(300℃、1.2kg)が5g/10min以上15g/10min未満、好ましくは7~12g/10min、より好ましくは9~11g/10minであってもよく、この範囲内で、機械的物性及び耐熱性に優れるという効果がある。
【0063】
前記A-2)ポリカーボネートは、多分散指数が、一例として2.75以下、好ましくは2.6以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.3~2.5であってもよく、この範囲内で、機械的物性及び物性バランスに優れるという効果がある。
【0064】
前記A-2)ポリカーボネートは、重量平均分子量が、一例として28,000g/mol以上、好ましくは29,000g/mol以上、より好ましくは30,000g/mol以上、さらに好ましくは30,000~37,000g/molであってもよく、この範囲内で、機械的物性及び物性バランスに優れるという効果がある。
【0065】
前記A-2)ポリカーボネートは、ASTM D648に準拠して測定した熱変形温度が、一例として124℃以上、好ましくは127℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは130~140℃であってもよく、この範囲内で、機械的物性及び物性バランスに優れるという効果がある。
【0066】
前記A-2)ポリカーボネートは、一例として、一般のポリカーボネートであってもよい。
【0067】
本記載において、一般のポリカーボネートは、本発明の定義に従う限り、本発明の属する技術分野で一般的に一般のポリカーボネートとして認められる場合、特に制限されず、本記載のポストコンシューマーリサイクルポリカーボネートと対比されるものであって、ポリカーボネートを構成する単量体を重合製造した後、射出などの成形加工を経ていないポリカーボネート、またはこれに相応する入手可能なポリカーボネートであってもよい。
【0068】
前記一般のポリカーボネートは、一例として、バージン(virgin)ポリカーボネート、新生ポリカーボネート、フレッシュ(fresh)ポリカーボネート、または非再生ポリカーボネートと称することができる。
【0069】
前記A-2)ポリカーボネートをなす単量体は、好ましくは、前記A-1)ポリカーボネートで言及されたものと同一の範囲内で選択されてもよい。
【0070】
前記A-2)ポリカーボネートは、一例として、ポリカーボネート樹脂組成物の総重量に対して0~50重量%、好ましくは1~50重量%、より好ましくは7~45重量%、さらに好ましくは10~42重量%、より一層好ましくは15~42重量%であってもよく、この範囲内で、耐衝撃性及び耐熱性に優れるという利点がある。
【0071】
(B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体)
前記B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、一例として、芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体及びポリシロキサンを含んでなるものであってもよく、このような場合、耐衝撃性が改善されるという利点がある。
【0072】
本発明において、B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、ポリカーボネートの主鎖にポリシロキサンが導入された点で前記A-1)ポリカーボネートと区別される。
【0073】
前記芳香族ジオール化合物及びカーボネート前駆体は、一例として、上述した前記A-1)ポリカーボネートの製造時に使用されるものと同じものであってもよい。
【0074】
前記B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、一例として、ポリカーボネートとポリシロキサンの縮合重合によって製造されるか、または芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体及びポリシロキサンを界面重合して製造されてもよいが、これに限定されるものではないことを明示する。
【0075】
前記B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、一例として、下記化学式1で表される芳香族ポリカーボネート系第1繰り返し単位と;下記化学式2で表される、1つ以上のシロキサン結合を有する芳香族ポリカーボネート系第2繰り返し単位と;を含む。
【0076】
【化5】
【0077】
前記化学式1において、R1~R4は、それぞれ独立して、水素、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、及びハロゲンから選択され、Zは、非置換であるか、またはC1-6アルキルもしくはC6-20アリールで置換されたC1-10アルキレン;非置換であるか、またはC1-10アルキルで置換されたC3-15シクロアルキレン;酸素;S;SO;SO2;及びCOから選択される。
【0078】
好ましくは、前記化学式1において、R1~R4は、それぞれ独立して、水素またはC1-3アルキルであり、Zは、非置換であるか、またはメチルもしくはフェニルで置換されたC1-6アルキレンであってもよい。
【0079】
前記化学式1で表される第1繰り返し単位は、好ましくは、芳香族ジオール化合物であるビスフェノールAと、カーボネート前駆体であるトリホスゲンとが重合された場合であって、下記化学式1-1で表される。
【0080】
【化6】
【0081】
前記化学式1で表される第1繰り返し単位は、一例として、ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体中の全繰り返し単位100mol%に対して、一例として20~95mol%、好ましくは30~85mol%、より好ましくは40~80mol%で含まれてもよい。
【0082】
【化7】
【0083】
前記化学式2において、X1及びX2は、それぞれ独立して、C1-10アルキレンであり、Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ基、C1-6アルコキシ基、及びC6-20アリール基から選択され、R5~R8は、それぞれ独立して、水素;非置換であるか、またはオキシラニル、オキシラニルで置換されたC1-10アルコキシ基、もしくはC6-20アリールで置換されたC1-15アルキル;ハロゲン;C1-10アルコキシ;アリル;C1-10ハロアルキル;及びC6-20アリールから選択され、n2は、30~120の整数である。
【0084】
好ましくは、前記化学式2において、X1及びX2は、それぞれ独立して、C2-10アルキレンであり、より好ましくはC2-6アルキレンであり、最も好ましくはイソブチレンであってもよく、前記Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素であってもよい。
【0085】
より好ましくは、前記化学式2において、R5~R8は、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、3-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-(オキシラニルメトキシ)プロピル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、アリル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、フェニル、またはナフチルであってもよい。
【0086】
さらに好ましくは、前記R5~R8は、それぞれ独立して、C1-10アルキルまたはC1-6アルキルであり、より好ましくはC1-3アルキルであり、特に好ましくはメチルであってもよい。
【0087】
また、前記化学式2において、n2は30~120の整数であってもよく、好ましくは34~110の整数であってもよい。
【0088】
前記化学式2で表される第2繰り返し単位は、好ましくは、下記化学式2-1で表される。
【0089】
【化8】
【0090】
前記化学式2-1において、R5~R8及びn2は、前記で定義したものと同じである。
【0091】
前記化学式2で表される第2繰り返し単位は、一例として、ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体中の全繰り返し単位100mol%に対して、一例として5~80mol%、好ましくは15~70mol%、より好ましくは20~60mol%で含まれてもよい。
【0092】
好ましくは、前記ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、下記化学式3で表される第3繰り返し単位をさらに含むことができる。
【0093】
【化9】
【0094】
前記化学式3において、X3及びX4は、それぞれ独立して、C1-10アルキレンであり、R9~R12は、それぞれ独立して、水素;非置換であるか、またはオキシラニル、オキシラニルで置換されたC1-10アルコキシ、もしくはC6-20アリールで置換されたC1-15アルキル;ハロゲン;C1-10アルコキシ;アリル;C1-10ハロアルキル;あるいはC6-20アリールであり、n1は、30~120の整数である。
【0095】
好ましくは、前記化学式3において、X3及びX4は、それぞれ独立して、C2-10アルキレンであってもよく、好ましくはC2-4アルキレン、より好ましくは、プロパン-1,3-ジイルであってもよい。
【0096】
前記化学式3において、R9~R12は、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、3-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-(オキシラニルメトキシ)プロピル、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、アリル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、フェニル、またはナフチルであってもよい。
【0097】
好ましくは、前記R9~R12は、それぞれ独立して、C1-10アルキルまたはC1-6アルキルであり、より好ましくはC1-3アルキルであり、さらに好ましくはメチルである。
【0098】
また、前記化学式3において、n1は、30~120の整数であってもよく、好ましくは34~110の整数であってもよい。
【0099】
前記化学式3で表される第3繰り返し単位をさらに含む場合、組成物の耐熱性及び耐衝撃性がより一層向上するという利点を提供することができる。
【0100】
前記化学式3で表される第3繰り返し単位は、好ましくは、下記化学式3-1で表される。
【0101】
【化10】
【0102】
前記化学式3-1において、R9~R12及びn1は、前記で定義したものと同じである。
【0103】
前記化学式3で表される第3繰り返し単位は、一例として、第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位の合計100mol%を基準として、1~30mol%、好ましくは3~25mol%、より好ましくは5~20mol%でさらに含まれてもよい。
【0104】
前記B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、重量平均分子量が、一例として1,000~100,000g/mol、好ましくは5,000~70,000g/mol、より好ましくは5,000~50,000g/molであってもよく、この範囲内で、組成物の加工及び成形が容易でありながらも、耐衝撃性と耐熱性を同時に満たすという利点を提供する。
【0105】
前記B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、シロキサンドメインの平均サイズが一例として20nm以上、好ましくは20~60nm、より好ましくは30~60nmであってもよく、この範囲内で、ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体のシロキサンドメインがゴム(rubber)のような衝撃補強剤としての役割を行うことで、耐衝撃性を大きく向上させることができる。
【0106】
本発明で使用された「ドメイン」という用語は、マトリックス鎖中に分散している他の単位鎖を意味する。また、本発明において「シロキサンドメインの平均サイズ」とは、ポリカーボネート鎖中に分散されたポリシロキサン鎖の平均サイズを意味し、具体的には、ポリカーボネート鎖をマトリックスとして分散形成されたポリシロキサン鎖、より具体的にはポリシロキサンの集合体又は凝集体の平均サイズを意味することができる。
【0107】
本発明において、シロキサンドメインの平均サイズは、一例として、顕微鏡を介した形状の分析を通じて測定することができ、具体的な一例として、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)または透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)を用いて常温で測定したものである。好ましくは、前記シロキサンドメインの平均サイズは、顕微鏡で撮影した写真から、一例として10個のシロキサンドメインをランダムに選択し、そのサイズを測定した後、算出した平均値である。
【0108】
前記B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、一例として、ポリカーボネート樹脂組成物の総重量に対して5~25重量%、好ましくは7~23重量%、より好ましくは9~20重量%、さらに好ましくは9~16重量%であってもよく、この範囲内で、物性バランス及び耐衝撃性が改善されるという効果がある。
【0109】
(C)ガラス繊維)
前記C)ガラス繊維は、一例として、ポリカーボネート樹脂組成物の総重量に対して5~45重量%、好ましくは7~45重量%、より好ましくは7~40重量%、さらに好ましくは7~28重量%であってもよく、この範囲内で、機械的物性、加工性などを高く維持しながらも、優れた耐熱性を提供することができる。
【0110】
前記C)ガラス繊維は、一例として、平均長さが1~15mm、好ましくは1~10mm、より好ましくは1~7mm、さらに好ましくは2~5mmであってもよく、この範囲内で、樹脂との機械的強度が改善されると共に、最終品の外観特性に優れるという効果がある。
【0111】
前記C)ガラス繊維は、断面の平均横長さが、一例として15~45μm、好ましくは20~35μm、より好ましくは25~30μmであってもよく、この範囲内で、流動性及び機械的物性に優れるという効果がある。
【0112】
前記C)ガラス繊維は、断面の平均縦長さが、一例として2~15μm、好ましくは2~12μm、より好ましくは4~10μmであってもよく、この範囲内で、流動性及び機械的物性に優れるという効果がある。
【0113】
前記C)ガラス繊維は、断面の縦横比が、一例として1.5~5、好ましくは2~4.7、より好ましくは2.5~4.5、さらに好ましくは3~4.5、より一層好ましくは3.5~4.5であってもよく、この範囲内で、流動性及び機械的物性に優れ、最終品においてねじれやひねりが減少して、寸法安定性に優れるという効果がある。
【0114】
本記載において、断面の縦横比は、縦の長さに対する横の長さの比率であって、前記縦横比が1であれば円形であり、1を超えれば楕円形を有する。
【0115】
前記C)ガラス繊維は、一例としてチョップドガラス繊維(chopped glass fiber)であってもよく、この場合、相溶性に優れるという利点がある。
【0116】
本記載において、チョップドガラス繊維は、本発明の属する技術分野で通常用いるチョップドファイバーガラス(chopped fiber glass)であれば、特に制限されない。
【0117】
本記載において、ガラス繊維の平均長さ、断面の横長さ及び断面の縦長さは、本発明の属する技術分野で通常用いる測定方法により測定することができ、具体的には、顕微鏡分析法を通じて30個を測定し、その平均値で算出することができる。
【0118】
前記C)ガラス繊維は、一例として、シラン系化合物またはウレタン系化合物で表面処理されたものであってもよく、好ましくは、アミノシラン系化合物、エポキシシラン系化合物、及びウレタン系化合物からなる群から選択された1種以上の表面処理剤で表面処理されたものを使用することができ、より好ましくは、エポキシシラン系化合物で表面処理されたものであり、この場合、樹脂組成物中での分散性に優れるので、機械的強度が改善されるという効果がある。
【0119】
前記表面処理剤は、一例として、表面処理されたガラス繊維の総100重量%(ガラス繊維+表面処理剤)に対して0.1~10重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.1~3重量%、さらに好ましくは0.1~0.8重量%、より一層好ましくは0.2~0.5重量%の範囲で含まれてもよく、この範囲内で、機械的物性、物性バランス及び最終品の外観に優れるという効果がある。
【0120】
前記アミノシラン系化合物は、一般にガラス繊維にコーティング剤として使用されるアミノシランであれば、特に制限されないが、一例として、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-アセトアセテートプロピルトリメトキシシラン、γ-アセトアセテートプロピルトリエトキシシラン、γ-シアノアセチルトリメトキシシラン、γ-シアノアセチルトリエトキシシラン及びアセトキシアセトトリメトキシシランからなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合、機械的物性及び耐熱性に優れながらも、射出物の表面特性に優れるという効果がある。
【0121】
前記エポキシシラン系化合物は、一般にガラス繊維にコーティング剤として使用されるエポキシシランであれば、特に制限されないが、一例として、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランからなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合、機械的物性及び耐熱性に優れながらも、射出物の表面特性に優れるという効果がある。
【0122】
前記C)ガラス繊維は、本発明の定義に従う限り、当業界で通常使用される範囲内で適宜選択して使用することができる。
【0123】
(D)液状のリン系難燃剤)
前記D)液状のリン系難燃剤は、一例として、ポリカーボネート樹脂組成物の総重量に対して2~12重量%、好ましくは3~10重量%、より好ましくは3~8重量%、さらに好ましくは4~7重量%で含まれてもよく、この範囲内で、耐衝撃性及び耐熱性に優れると共に、収得される成形品の外観が美麗であり、優れた難燃性が発現されるという効果がある。
【0124】
前記D)液状のリン系難燃剤は、常温で液状を維持する難燃剤を意味し、より具体的には、大気圧下、常温で液状を維持し、本発明に係る樹脂組成物に難燃性を付与する機能、及び溶融指数を調節する機能を同時に有し、それによって、本発明に係る樹脂組成物全体において最小量の難燃剤の使用でも難燃特性を安定的に満たすと同時に、生産性を向上させ、収得される成形品の外観及び加工上の問題点を解決するという効果を提供する。また、後述するE)ホスファゼン化合物との組み合わせによって、V-0等級以上の難燃性が確保されると共に、耐衝撃性及び耐熱性がさらに向上するシナジー効果が発現される。
【0125】
本記載において、常温は、20±5℃の範囲内の一地点であり得る。
【0126】
前記D)液状のリン系難燃剤は、一例として、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(bisphenol-A bis(diphenyl phosphate);BPADP)、トリフェニルホスフェート(tri-phenyl phosphate;TPP)、及びレゾルシノールビスジフェニルホスフェート(resorcinol bis diphenyl phosphate;RDP)からなる群から選択された1種以上であり、好ましくは、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)であり、この場合、耐衝撃性及び耐熱性に優れると共に、難燃性が確保されるという利点がある。
【0127】
(E)ホスファゼン化合物)
前記E)ホスファゼン化合物は、一例として、ポリカーボネート樹脂組成物の総重量に対して1~7重量%、好ましくは2~6重量%、より好ましくは2~5重量%、さらに好ましくは3~4重量%であり、この範囲内で、前記D)液状のリン系難燃剤との組み合わせによって、難燃性が確保されると共に、耐衝撃性及び耐熱性がさらに向上するという利点を提供する。
【0128】
前記E)ホスファゼン化合物は、一例として、分子に-P=N-結合を有する有機化合物であり、好ましくは、環状ホスファゼン化合物、鎖状ホスファゼン化合物、及び架橋型ホスファゼン化合物からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、環状ホスファゼン化合物であり、この場合、難燃性及び機械的物性に優れるという効果がある。
【0129】
前記環状ホスファゼン化合物は、好ましくは、下記化学式5で表される化合物であってもよい。
【0130】
【化11】
【0131】
前記化学式5において、mは3~25の整数であり、R13及びR14は、同一又は異なり、アリール基またはアルキルアリール基を示す。
【0132】
前記化学式5において、mは、好ましくは3~5の整数である。
【0133】
前記化学式5で表される環状ホスファゼン化合物は、より好ましくは、R13及びR14がフェニル基である環状フェノキシホスファゼンであり、より好ましくは、フェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン、及びデカフェノキシシクロペンタホスファゼンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0134】
前記鎖状ホスファゼン化合物は、好ましくは、下記化学式6で表される化合物であってもよい。
【0135】
【化12】
【0136】
前記化学式6において、nは3~10,000の整数であり、Xは、-N=P(OR153基、または-N=P(O)OR15基を示し、Yは、-P(OR164基、または-P(O)(OR162基を示す。R15及びR16は、同一又は異なり、アリール基またはアルキルアリール基を示す。
【0137】
前記化学式6において、nは、好ましくは3~100の整数、より好ましくは3~25の整数である。
【0138】
前記化学式6で表される鎖状ホスファゼン化合物は、好ましくは、R15及びR16がフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼンである。
【0139】
前記架橋型ホスファゼン化合物は、一例として、環状ホスファゼン化合物及び鎖状ホスファゼン化合物からなる群から選択された1種以上のホスファゼン化合物が、下記化学式7で表される架橋基によって架橋されてなるものである。
【0140】
【化13】
【0141】
前記化学式7において、Aは、-C(CH32-、-SO2-、-S-、または-O-であり、Iは、0または1の整数である。
【0142】
前記化学式7において、
【化14】
及び
【化15】
の表示は、CH3が省略されたものではなく、結合であることを明確にするためのものである。
【0143】
前記架橋型ホスファゼン化合物は、好ましくは、前記化学式5において、R13及びR14がフェニル基である環状フェノキシホスファゼン化合物が、前記化学式7で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物、前記化学式6において、R15及びR16がフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼン化合物が、前記化学式7で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物、またはこれらの混合であってもよく、より好ましくは、環状フェノキシホスファゼン化合物が、前記化学式7で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物であってもよい。
【0144】
前記D)液状のリン系難燃剤とE)ホスファゼン化合物との組み合わせを含む場合、これらの組み合わせによるシナジー効果によって、V-0等級以上の難燃性が実現されると共に、耐衝撃性及び耐熱性がいずれも著しく改善されるという利点がある。
【0145】
前記D)液状のリン系難燃剤は、一例として、前記E)ホスファゼン化合物よりも多い量で含まれてもよく、この場合、少ない難燃剤の含量でもさらに優れた難燃性を実現できるという利点がある。
【0146】
前記D)液状のリン系難燃剤とE)ホスファゼン化合物の重量比(D:E)は、一例として1.2:1~3.0:1、好ましくは1.2:1~2.7:1、より好ましくは1.2:1~2.4:1、さらに好ましくは1.2:1~2.2:1、より一層好ましくは1.3:1~2.1:1、特に好ましくは1.5:1~2.1:1、特にさらに好ましくは1.7:1~2.1:1であってもよく、この範囲内で、少ない含量でもさらに優れた難燃性が実現され、耐衝撃性及び耐熱性に優れるという利点がある。
【0147】
前記D)液状のリン系難燃剤とE)ホスファゼン化合物の総和は、ポリカーボネート樹脂組成物の総重量に対して、一例として4~14重量%、好ましくは5~13重量%、より好ましくは6~12重量%、さらに好ましくは7~11重量%であってもよく、この範囲内で、難燃性、耐衝撃性及び耐熱性がいずれも著しく改善されるという利点がある。
【0148】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、一例として、コア-シェル構造の衝撃補強剤フリーであってもよく、この場合、前記D)液状のリン系難燃剤とE)ホスファゼン化合物との組み合わせを通じて、耐衝撃性及び耐熱性に優れると共に、難燃性がさらに改善されるという効果がある。前記コア-シェル構造の衝撃補強剤は、一例として、メタクリレート-ブタジエン系ゴムを含むコア-シェル構造の衝撃補強剤であってもよい。
【0149】
本記載において、「コア-シェル構造の衝撃補強剤フリー」ということは、ポリカーボネート樹脂組成物の製造時に、コア-シェル構造の衝撃補強剤を意図的に添加していないことを意味する。
【0150】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、一例として、熱安定剤、難燃補助剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、カップリング剤、光安定剤、離型剤、分散剤、滴下防止剤、耐候安定剤、酸化防止剤、相溶化剤、顔料、染料、帯電防止剤、耐摩耗剤、充填材及び抗菌剤からなる群から選択された1種以上の添加剤を含むことができ、このような場合、本記載のポリカーボネート樹脂組成物本来の物性を低下させないながらも、必要な物性が良好に実現されるという効果がある。
【0151】
前記添加剤は、ポリカーボネート樹脂組成物の総100重量部に対して、それぞれ0.01~20重量部、好ましくは0.05~10重量部、より好ましくは0.1~5重量部を含むことができる。このような場合、本記載のポリカーボネート樹脂組成物本来の物性を低下させないながらも、必要な物性が良好に実現されるという効果がある。
【0152】
前記熱安定剤は、一例として、ヒンダードフェノール系熱安定剤、ジフェニルアミン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤及びリン系熱安定剤からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、ヒンダードフェノール系熱安定剤、リン系熱安定剤、またはこれらの混合であってもよく、この場合、押出工程時に熱による酸化を防止し、機械的物性に優れるという効果がある。
【0153】
前記ヒンダードフェノール系熱安定剤は、一例として、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、またはこれらの混合であってもよく、好ましくは、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]であってもよい。
【0154】
前記ジフェニルアミン系熱安定剤は、一例として、フェニルナフチルアミン、4,4’-ジメトキシジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、及び4-イソプロポキシジフェニルアミンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0155】
前記硫黄系熱安定剤は、一例として、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル-3,3’-チオジプロピオン酸エステル、及びペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオンエステル)からなる群から選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0156】
前記リン系熱安定剤は、一例として、トリス(ミックスド、モノ及びジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,3-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシル)ホスファイト、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジ-トリデシルホスファイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンホスホネート、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-2-エチルヘキシル-ホスファイト、ビス(2,4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジデシルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、及びトリドデシルトリチオホスファイトからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイトであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0157】
前記滑剤は、一例として、改質されたモンタン酸ワックス(modified montanic acid wax)、ペンタエリスリトールの長鎖エステル(long chain ester of pentaerythritol)、及びネオペンチルポリオールの脂肪酸エステル(fatty acid ester of neopentylpolyol)からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0158】
前記紫外線吸収剤は、一例として、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0159】
前記トリアジン系紫外線吸収剤は、一例として、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、及び2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0160】
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤は、一例として、2,4-ジヒドロキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシ-ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシルオキシ-ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-ベンゾフェノン、及び2,2’,4,4’-テトラヒドロキシ-ベンゾフェノンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0161】
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、一例として、2-(2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2-メチレンビス(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、(2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、及び(2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0162】
前記シアノアクリレート系紫外線吸収剤は、一例として、2’-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3-(3’,4’-メチレンジオキシフェニル)-アクリレート、またはこれらの混合であってもよい。
【0163】
(ポリカーボネート樹脂組成物)
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D256に準拠して、厚さ3.2mmのノッチ付き試験片で常温にて測定したアイゾット衝撃強度が11kgf・cm/cm以上、より好ましくは13kgf・cm/cm以上、さらに好ましくは15kgf・cm/cm以上、より一層好ましくは15~25kgf・cm/cmであってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れる。
【0164】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D648に準拠して、厚さ6.4mmの試験片で18.6kgの荷重下で測定した熱変形温度が97℃以上、より好ましくは105℃以上、さらに好ましくは110℃以上、より一層好ましくは113℃以上、特に好ましくは115℃以上、特にさらに好ましくは115~125℃であってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れる。
【0165】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、好ましくは、UL94 Vテスト(Vertical Burning Test)に準拠して、厚さ0.8mmの試験片で測定した難燃性がV-0等級以上であってもよく、この範囲内で、耐衝撃性及び耐熱性に優れると共に、高い難燃性が付与されるという効果がある。
【0166】
(ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法)
本記載のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、A-1)溶融指数(300℃、1.2kg)が15~25g/10minであるポリカーボネート20~75重量%と、A-2)溶融指数(300℃、1.2kg)が5g/10min以上~15g/10min未満であるポリカーボネート0~50重量%と、B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体5~25重量%と、C)ガラス繊維5~45重量%と、D)液状のリン系難燃剤2~12重量%と、E)ホスファゼン化合物1~7重量%とを含んで、200~350℃及び100~400rpmの条件下で混練及び押出するステップを含むことを特徴とする。このような場合、耐衝撃性、耐熱性及び難燃性がいずれも優れるという効果がある。
【0167】
前記ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、前述したポリカーボネート樹脂組成物の全ての技術的特徴を共有する。したがって、重複する部分についての説明は省略する。
【0168】
前記混練及び押出は、一例として、一軸押出機、二軸押出機、またはバンバリーミキサを通じて行われてもよく、この場合、組成物が均一に分散し、相溶性に優れるという効果がある。
【0169】
前記混練及び押出は、一例として、バレル温度が200~350℃、好ましくは220~330℃、より好ましくは240~310℃である範囲内で行われてもよく、この場合、単位時間当たりの処理量が適切であり、かつ十分な溶融混練が可能となり得、樹脂成分の熱分解などの問題を引き起こさないという効果がある。
【0170】
前記混練及び押出は、一例として、スクリュー回転数が100~400rpm、好ましくは150~350rpm、より好ましくは200~300rpmである条件下で行われてもよく、この場合、単位時間当たりの処理量が適切であるので、工程効率に優れながらも、ガラス繊維の過度の切断を抑制するという効果がある。
【0171】
(成形品)
本記載の成形品は、本記載のポリカーボネート樹脂組成物を含むことを特徴とし、この場合、ポストコンシューマーリサイクルポリカーボネートを高含量で含むことで、環境に優しいと共に、耐衝撃性、耐熱性及び難燃性がいずれも優れるという効果がある。
【0172】
前記成形品は、一例として、電気及び電子部品、自動車部品、または産業用素材であってもよい。
【0173】
本記載の成形品の製造方法は、好ましくは、A-1)溶融指数(300℃、1.2kg)が15~25g/10minであるポリカーボネート20~75重量%と、A-2)溶融指数(300℃、1.2kg)が5g/10min以上~15g/10min未満であるポリカーボネート0~50重量%と、B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体5~25重量%と、C)ガラス繊維5~45重量%と、D)液状のリン系難燃剤2~12重量%と、E)ホスファゼン化合物1~7重量%とを含んで、200~350℃及び100~400rpmの条件下で混練及び押出してペレットに製造するステップと、製造されたペレットを射出して成形品を製造するステップとを含み、このような場合、ポストコンシューマーリサイクルポリカーボネートを高含量で含むことで、環境に優しく、耐衝撃性、耐熱性及び難燃性がいずれも優れるという効果がある。
【0174】
前記製造されたペレットは、一例として、除湿乾燥器または熱風乾燥器を用いて十分に乾燥させた後、射出加工して製造することができる。
【0175】
以上の本記載において、ポリカーボネート樹脂組成物の総重量とは、A-1)溶融指数(300℃、1.2kg)が15~25g/10minであるポリカーボネート、B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体、C)ガラス繊維、D)液状のリン系難燃剤、及びE)ホスファゼン化合物を合わせた総重量を意味し、A-2)溶融指数(300℃、1.2kg)が5g/10min以上~15g/10min未満であるポリカーボネートを含む場合、ポリカーボネート樹脂組成物の総重量は、前記A-1)、A-2)、B)、C)、D)及びE)成分を合わせた総重量を意味する。
【0176】
本記載の成形品の製造方法は、本発明の定義に従う限り、本発明の属する技術分野で通常用いられる条件、方法及び装置などを用いる場合、特に制限されない。
【0177】
本記載のポリカーボネート樹脂組成物、その製造方法及び成形品を説明するにおいて、明示的に記載していない他の条件や装備などは、当業界において通常行われる範囲内で適宜選択することができ、特に制限されないことを明示する。
【0178】
以下、本記載の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本記載を例示するものに過ぎず、本記載の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0179】
実施例及び比較例で使用された材料は、次の通りである。
*A-1)ASTM D1238に準拠した溶融指数(300℃、1.2kg)が20g/10minであるポリカーボネート:ポストコンシューマーリサイクルポリカーボネート(PCR-PC)
*A-2)ASTM D1238に準拠した溶融指数(300℃、1.2kg)が10g/10minであるポリカーボネート:一般のポリカーボネート(一般のPC;LG化学社のPC1300-10)
*B-1)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体(Si-PC):SPC8100-02(LG化学社、ポリオルガノシロキサンドメインの平均サイズが50nm~60nm)
*B-2)コア-シェル構造の衝撃補強剤(MBS):メチルメタクリレート-ブタジエン系ゴムを含むコア-シェル構造の衝撃補強剤(LG化学社、EM538)
*C)ガラス繊維:シラン系化合物で表面処理されたガラス繊維(平均長さ3mm、及び断面の平均横長さ28μm、断面の平均縦長さ7μm)
*D)液状のリン系難燃剤(BPADP):ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(ADEKA社、FP600)
*E)ホスファゼン化合物:フェノキシホスファゼン(Weihai Jinwei Chem Industry、HPC TP-JW01)
【0180】
[実施例]
下記の表1~表3に記載された組成及び含量で混合した後、ミキサーで均一に混合し、これを二軸押出機(スクリュー直径26mm、L/D=40)で溶融及び混練した後、押出温度250~300℃及びスクリュー回転速度250rpmの条件下で押出して、ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを製造した。これを、80℃で4時間以上乾燥させた後、射出成形機(ENGEL社、80MT)を用いて、ノズル温度260℃で射出して物性測定用試験片を製造した後、48時間以上放置した後、物性を測定した。
【0181】
【表1】
【0182】
【表2】
【0183】
【表3】
V-NOT*:UL94 Vテストに準拠した燃焼基準に符合しないため、難燃等級の評価が不可能である。すなわち、試験片の燃焼時間が超えるか、またはバーンアウト(burn out)される。
【0184】
前記表1~表3に示したように、本発明のポリカーボネート樹脂組成物(実施例1~10)は、比較例1~13と比較して、衝撃強度、難燃性及び熱変形温度がいずれも優れるという効果が確認できた。また、A-1)PCR-PCを高含量で含んでも、優れた衝撃強度、難燃性及び熱変形温度を示すことによって、リサイクル比率を高めることができるという利点があった。特に、D)液状のリン系難燃剤とE)ホスファゼン化合物の重量比(D:E)が1.2:1~3.0:1である実施例1~8は、難燃性がさらに優れていた。
【0185】
具体的には、B-1)Si-PC及びE)ホスファゼンを含まない比較例1は、衝撃強度が非常に低く、比較例1にB-2)MBS衝撃補強剤をさらに含む比較例2は、衝撃強度は多少上がったが、難燃性が低下した。
【0186】
また、B-1)Si-PCを含まず、B-2)MBS衝撃補強剤を含む比較例3は、難燃性及び衝撃強度が低下し、D)BDADPとE)ホスファゼンの両方を含まない比較例4は、衝撃強度が低く、難燃性が非常に劣悪であった。
【0187】
また、B-1)Si-PCの代わりにB-2)MBS衝撃補強剤を含み、D)BDADPを単独使用した比較例5は、難燃性及び熱変形温度が低く、B-1)Si-PCの代わりにB-2)MBS衝撃補強剤を含む比較例6は、難燃性及び熱変形温度が低く、D)BDADPを単独使用した比較例7は、難燃性及び熱変形温度が低下した。
【0188】
また、B-1)Si-PCの含量が本発明の範囲を外れた比較例8及び9は、難燃性が低下し、比較例9は衝撃強度も低かった。
【0189】
また、C)ガラス繊維の含量が本発明の範囲を外れた比較例10及び11は、難燃性が劣悪であった。
【0190】
また、D)BDADPを含まない比較例12は、難燃性の測定が不可能な程度に難燃性が劣悪であり、E)ホスファゼンを本発明の範囲を超えて含む比較例13は、衝撃強度が低下した。
【0191】
結論的に、本発明に係るA-1)ポストコンシューマーリサイクルポリカーボネート、B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体、C)ガラス繊維、及びD)液状のリン系難燃剤とE)ホスファゼン化合物との組み合わせを所定の含量で含むポリカーボネート樹脂組成物は、耐衝撃性、耐熱性及び難燃性がいずれも優れるという効果が確認できた。さらに、A-1)ポストコンシューマーリサイクルポリカーボネートを高含量で使用するにもかかわらず、耐衝撃性、耐熱性及び難燃性が全て改善される効果があった。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-1)溶融指数(300℃、1.2kg)が15~25g/10minであるポリカーボネート20~75重量%と、
B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体5~25重量%と、
C)ガラス繊維5~45重量%と、
D)液状のリン系難燃剤2~12重量%と、
E)ホスファゼン化合物1~7重量%とを含むことを特徴とする、ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、A-2)溶融指数(300℃、1.2kg)が5g/10min以上15g/10min未満であるポリカーボネート1~50重量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記A-1)ポリカーボネートは、ポストコンシューマーリサイクル(post-consumer recycle)ポリカーボネートであることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
前記B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、芳香族ジオール化合物、カーボネート前駆体及びポリシロキサンを含んでなることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
前記B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、下記化学式1で表される芳香族ポリカーボネート系第1繰り返し単位と、下記化学式2で表される、1つ以上のシロキサン結合を有する芳香族ポリカーボネート系第2繰り返し単位とを含むか、または下記化学式3で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【化16】
(前記化学式1において、R1~R4は、それぞれ独立して、水素、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、及びハロゲンから選択され、Zは、非置換であるか、またはC1-6アルキルもしくはC6-20アリールで置換されたC1-10アルキレン;非置換であるか、またはC1-10アルキルで置換されたC3-15シクロアルキレン;酸素;S;SO;SO2;及びCOから選択される。)
【化17】
(前記化学式2において、X1及びX2は、それぞれ独立して、C1-10アルキレンであり、Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ基、C1-6アルコキシ基、及びC6-20アリール基から選択され、R5~R8は、それぞれ独立して、水素;非置換であるか、またはオキシラニル、オキシラニルで置換されたC1-10アルコキシ基、もしくはC6-20アリールで置換されたC1-15アルキル;ハロゲン;C1-10アルコキシ;アリル;C1-10ハロアルキル;及びC6-20アリールから選択され、n2は、30~120の整数である。)
【化18】
(前記化学式3において、X3及びX4は、それぞれ独立して、C1-10アルキレンであり、R9~R12は、それぞれ独立して、水素;非置換であるか、またはオキシラニル、オキシラニルで置換されたC1-10アルコキシ、もしくはC6-20アリールで置換されたC1-15アルキル;ハロゲン;C1-10アルコキシ;アリル;C1-10ハロアルキル;あるいはC6-20アリールであり、n1は、30~120の整数である。)
【請求項6】
前記B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体は、シロキサンドメインの平均サイズが20nm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
前記C)ガラス繊維は、平均長さ1~15mmであり、断面の平均横長さが15~45μm、及び断面の平均縦長さが2~15μmであることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
前記D)液状のリン系難燃剤は、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(bisphenol-A bis(diphenyl phosphate))、トリフェニルホスフェート(tri-phenyl phosphate)、及びレゾルシノールビスジフェニルホスフェート(resorcinol bis diphenyl phosphate)からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項9】
前記E)ホスファゼン化合物は、環状ホスファゼン化合物、鎖状ホスファゼン化合物、及び架橋型ホスファゼン化合物からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項10】
前記D)液状のリン系難燃剤とE)ホスファゼン化合物の重量比(D:E)は、1.2:1~3.0:1であることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、ASTM D256に準拠して、厚さ3.2mmのノッチ付き試験片で常温にて測定したアイゾット衝撃強度が11kgf・cm/cm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項12】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、ASTM D648に準拠して、厚さ6.4mmの試験片で18.6kgの荷重下で測定した熱変形温度が97℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項13】
前記ポリカーボネート樹脂組成物は、UL94 Vテストに準拠して、厚さ0.8mmの試験片で測定した難燃性がV-0等級以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項14】
-1)溶融指数(300℃、1.2kg)が15~25g/10minであるポリカーボネート20~75重量%と、A-2)溶融指数(300℃、1.2kg)が5g/10min以上15g/10min未満であるポリカーボネート0~50重量%と、B)ポリシロキサン-ポリカーボネート共重合体5~25重量%と、C)ガラス繊維5~45重量%と、D)液状のリン系難燃剤2~12重量%と、E)ホスファゼン化合物1~7重量%とを含んで、200~350℃及び100~400rpmの条件下で混練及び押出するステップを含むことを特徴とする、ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【国際調査報告】