IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ. ホフマン−エルエー ロシュ アーゲーの特許一覧 ▶ ジェネンテック, インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-AMLの治療のための抗体 図1
  • 特表-AMLの治療のための抗体 図2
  • 特表-AMLの治療のための抗体 図3
  • 特表-AMLの治療のための抗体 図4
  • 特表-AMLの治療のための抗体 図5
  • 特表-AMLの治療のための抗体 図6
  • 特表-AMLの治療のための抗体 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】AMLの治療のための抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240905BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20240905BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/02
A61P35/00
A61P7/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 U
A61K31/496
A61K31/706
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513740
(86)(22)【出願日】2022-09-02
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2022074455
(87)【国際公開番号】W WO2023031403
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/240,342
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アマン マリア
(72)【発明者】
【氏名】プース ローレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ボッシュ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイサー マルティン
(72)【発明者】
【氏名】コルベン テレーザ
(72)【発明者】
【氏名】カラニカス ヴァイオス
(72)【発明者】
【氏名】エックマン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】カルネイロ デ メデイロス ブルーノ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA511
4C084ZA512
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC412
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085CC01
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086CB05
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA51
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC41
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、急性骨髄性白血病(AML)及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療に使用される抗CD25抗体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における急性骨髄性白血病(AML)又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療に使用される抗CD25抗体。
【請求項2】
前記抗体の非存在下でのIL-2シグナル伝達と比較して、CD25を介するIL-2のシグナル伝達の50%未満を阻害する、請求項1に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項3】
前記抗体の非存在下でのIL-2シグナル伝達と比較して、CD25を介するIL-2のシグナル伝達の25%未満を阻害する、請求項2に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項4】
前記抗体が、
(a)
配列番号2~5のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号6~11のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域と、
配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域と、
を含む抗体、
(b)
配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域と、
配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域と、
を含む抗体、及び、
(c)
配列番号31~33のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号34~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域と、
配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域と、
を含む抗体、
からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項5】
RG6292である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項6】
配列番号1のアミノ酸150~158、配列番号1のアミノ酸176~180、配列番号1のアミノ酸42~56、及び配列番号1のアミノ酸74~84から選択される少なくとも1つの配列を含むエピトープに結合する、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項7】
配列番号1のアミノ酸70~84を含むエピトープに結合する、請求項6に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項8】
癌細胞、Treg細胞、AML芽細胞及び/又はPMBC細胞を死滅させる、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項9】
1細胞当たりCD25分子約900個を超えるCD25発現レベルを有するTreg細胞及び芽細胞を死滅させる、請求項8に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項10】
1細胞当たりCD25分子約1000個を超えるCD25発現レベルを有するTreg細胞及び芽細胞を死滅させる、請求項9に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項11】
1細胞当たりCD25分子約1000個~約40000個の範囲のCD25発現レベルを有するTreg細胞及び芽細胞を死滅させる、請求項10に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項12】
1細胞当たりCD25分子約1000個~約5000個の範囲のCD25発現レベルを有するTreg細胞及び芽細胞を死滅させる、請求項11に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項13】
ADCC活性を誘起する、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項14】
モノクローナル抗体である、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項15】
IgG抗体である、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項16】
IgG1抗体である、請求項15に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項17】
単一特異性抗体である、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項18】
二価の単一特異性抗体である、請求項17に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項19】
脱フコシル化されている、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項20】
ヒト抗体又はヒト化抗体である、請求項1~19のいずれか一項に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項21】
前記抗体及びNK細胞を、細胞当たりCD25分子900個~5000個を発現する細胞と共インキュベートする場合、前記抗体が、NK細胞におけるCD16発現の減少を最大25%誘起する、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項22】
前記NK細胞がCD56dim NK細胞である、請求項21に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項23】
更なる治療薬とコンジュゲートしない、請求項1~22のいずれか一項に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項24】
1つ以上の更なる治療薬と組み合わせて投与される、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項25】
前記1つ以上の更なる治療薬が、免疫チェックポイント阻害剤、癌ワクチン、FLT3阻害剤、BCL-2阻害剤、IDH阻害剤、低メチル化剤、アントラサイクリン及びそれらの組合せから選択される、請求項24に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項26】
前記免疫チェックポイント阻害剤がPD-1アンタゴニストである、請求項25に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項27】
前記PD-1アンタゴニストが抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体である、請求項26に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項28】
BCL-2阻害剤と組み合わせて使用される、請求項25に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項29】
前記BCL-2阻害剤がベネトクラクスである、請求項28に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項30】
前記低メチル化剤がアザシチジンである、請求項25に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項31】
前記1つ以上の更なる治療薬がFLT3阻害剤である、請求項25に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項32】
BCL-2阻害剤及び低メチル化剤と組み合わせて使用される、請求項25に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項33】
単剤療法として使用される、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項34】
前記被験体由来の腫瘍細胞におけるCD25発現レベルが、1細胞当たりCD25分子少なくとも約900個である、請求項1~33のいずれか一項に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項35】
前記被験体由来の腫瘍細胞におけるCD25発現レベルが、1細胞当たりCD25分子約900個~約5000個の範囲である、請求項1~35のいずれか一項に記載の使用される抗CD25抗体。
【請求項36】
急性骨髄性白血病又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療に使用される、請求項1~23のいずれか一項に規定される抗CD25抗体と1つ以上の更なる治療薬との組合せであって、該抗CD25抗体及び該更なる治療薬が、個別の投与、同時投与又は逐次投与用のものである、組合せ。
【請求項37】
前記1つ以上の更なる治療薬が、請求項25~32のいずれか一項に規定される通りである、請求項36に記載の使用される組合せ。
【請求項38】
被験体において急性骨髄性白血病(AML)又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を治療する方法であって、該被験体に有効量の抗CD25抗体を投与することを含む、方法。
【請求項39】
請求項1~23のいずれか一項に規定される通りである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記抗CD25抗体が単剤療法として投与される、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
1つ以上の更なる治療薬、例えば請求項25~32のいずれか一項に規定される治療薬を投与することを更に含む、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項42】
前記被験体由来の腫瘍細胞におけるCD25発現レベルが、1細胞当たりCD25分子少なくとも約900個である、請求項38~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記被験体由来の腫瘍細胞におけるCD25発現レベルが、1細胞当たりCD25分子約900個~約5000個の範囲である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
急性骨髄性白血病又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療用の薬剤の製造における抗CD25抗体の使用。
【請求項45】
前記抗体が請求項1~23のいずれか一項に規定される通りである、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
前記抗CD25抗体が単剤療法として使用される、請求項44又は45に記載の使用。
【請求項47】
1つ以上の更なる治療薬、例えば請求項25~32のいずれか一項に規定される治療薬と組み合わされる、請求項44又は45に記載の使用。
【請求項48】
急性骨髄性白血病又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療用の薬剤の製造における抗CD25抗体と更なる治療薬との組合せの使用。
【請求項49】
前記抗体が請求項1~23のいずれか一項に規定される通りである、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
前記更なる治療薬が請求項25~32のいずれか一項に規定される通りである、請求項48又は49に記載の使用。
【請求項51】
抗CD25抗体で治療する急性骨髄性白血病を患う患者を選択する方法であって、該患者からの試料中の標的細胞におけるCD25発現レベルを決定することを含み、該細胞が1細胞当たりCD25分子約900個を超える発現レベルを有する場合、該患者が前記抗体による治療に適している、方法。
【請求項52】
前記試料が前記患者からの骨髄試料である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記標的細胞が芽細胞及び/又はTreg細胞である、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項54】
前記CD25発現レベルがフローサイトメトリーによって測定される、請求項51~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
1細胞当たりCD25分子900個を超える発現レベルを有すると判定される場合、前記患者に前記抗CD25抗体を投与することを更に含む、請求項51~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記抗CD25抗体が請求項1~23のいずれか一項に規定される通りである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
抗CD25抗体で治療するAMLを患う患者を選択する方法であって、該患者からの試料中のFLT3-ITD突然変異の有無を判定することを含み、該突然変異が該試料中に存在する場合、該患者が前記抗体による治療に適している、方法。
【請求項58】
FLT3-ITD突然変異を有すると判定される場合、前記抗CD25抗体を前記患者に投与することを更に含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
抗CD25抗体による治療に対するAML患者の応答を予測する方法であって、該患者からの試料中のFLT3-ITD突然変異の有無を判定することを含み、該試料中の該突然変異の存在が、前記抗CD25抗体による治療に応答するとされる患者であることを指し示す、方法。
【請求項60】
被験体における急性骨髄性白血病(AML)を治療する方法であって、該被験体に有効量の抗CD25抗体を投与することを含み、前記被験体がFLT3-ITD突然変異の存在を含む、方法。
【請求項61】
AMLを患う患者からの試料中のFLT3-ITD突然変異の存在を判定することを更に含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記試料が前記患者からの血液試料又は骨髄試料である、請求項57~59又は61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記突然変異の有無が、DNAシークエンシング及び突然変異スクリーニング技術の群から選択される方法によって判定される、請求項57~59、61又は62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
AML患者における再発を予防する又はそのリスクを軽減する方法であって、抗CD25抗体を該患者に投与することを含む、方法。
【請求項65】
1つ以上の更なる治療薬を投与することを更に含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記1つ以上の治療薬が請求項25~32のいずれか一項に規定される通りである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
BCL-2阻害剤と低メチル化剤との併用治療を受けた患者におけるAMLを治療する方法であって、抗CD25抗体を該患者に投与することを含む、方法。
【請求項68】
前記抗CD25抗体が請求項1~23のいずれか一項に規定される通りである、請求項57~67のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急性骨髄性白血病(AML)及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療に使用される抗CD25抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-2受容体のαサブユニット(IL2RA)としても知られているCD25は、高い親和性を伴うIL-2の結合及び続くシグナル伝達カスケードを可能にする表面抗原である。CD25は、増殖のためにIL-2の消費に依拠する制御性T細胞(Treg)上に構成的に発現して、直近で活性化されたT細胞上で過渡的にアップレギュレートする。IL-2は、抗原特異的T細胞のクローンの増大及びそれらのエフェクター機能の獲得において重要な役割を果たす主要なサイトカインである。腫瘍内Tregの存在量、特にエフェクターT細胞(Teff)に対するTregの比率が、ヒトの多くの固形腫瘍における臨床転帰を予測することが示されている(非特許文献1、非特許文献2)。事実、Tregは免疫抑制腫瘍微小環境に寄与しており、それらを枯渇させるための幾つかの戦略が評価されている。
【0003】
CD25 Mab(RG6292)は、非IL-2阻害脱フコシル化IgG1抗体であり、ヒト腫瘍外植片及び癌の前臨床マウスモデルにおいてTregを効率的に枯渇させると同時に、IL-2のTeffへの再分布及び抗腫瘍適応免疫応答の形成を可能にすることが示されている(非特許文献3)。CD25 MabはCD25+標的細胞に結合し、その結晶性断片(Fc)は、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球及びマクロファージ等のエフェクター細胞の表面上に発現するFc受容体に結合する。CD25 Mabは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び抗体依存性細胞貪食(ADCP)を通じて標的細胞の死滅を媒介する。CD25 Mabは現在、第I相単剤療法研究、及びアテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)と組み合わせた第Ib相臨床試験において調査されている。
【0004】
健康なT細胞における役割に加えて、CD25の発現は、T細胞リンパ腫及びB細胞リンパ腫、並びに急性骨髄性白血病(AML)等の多くの血液悪性腫瘍にも記載されている(非特許文献4)。特に、CD25は、AML及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)における腫瘍細胞のサブセット上に発現するとみられ、その発現は生存率の低下と関連するものであった(非特許文献5、非特許文献6)。
【0005】
その上、CD25が、白血病幹細胞、又はAMLにおける前駆表現型を有する細胞に制限される可能性があるという幾つかの証拠が存在する(非特許文献7、非特許文献8)。これらの細胞は、近年のAMLの治療の進歩にもかかわらず疾患の伝播及び高い再発率に関与していると考えられる(非特許文献9)。AML患者の骨髄では健康なボランティアのものと比較して高頻度でTregが観察され、Tregの存在量がAML患者の転帰不良と相関関係にあった(非特許文献10)。このため、AML及びDLBCLに対する更なる治療の選択肢が求められている。
【0006】
AMLに対する現行の治療の選択肢としては、アントラサイクリン-シタラビンレジメン(ダウノルビシンとシタラビンとのレジメン等)、FLT3阻害剤(例えば、ギルテリチニブ、ミドスタウリン、ソラフェニブ)、BCL-2阻害剤(例えば、ベネトクラクス)、IDH阻害剤(例えば、エナシデニブ、イボシデニブ)、低メチル化剤(例えば、アザシチジン、デシタビン)及び抗体療法(例えば、CD33抗体ゲムツズマブオゾガマイシン)、並びにそれらの併用療法が挙げられる。
【0007】
本発明者らはここで、CD25 Mab(RG6292)等の抗CD25抗体が、抑制性Tregを枯渇させるとともに、CD25+悪性細胞に対する直接的な細胞傷害性効果を有する二重の作用機序を潜在的に有し、AML及びDLBLCに対する効果的な治療となり得る抗体をもたらすことを見出した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Nishikawa and Sakaguchi, 2014, Curr Opin Immunol 27, 1-7
【非特許文献2】Wing et al., 2019, Immunity 50, 302-316
【非特許文献3】Solomon et al., 2020, Nature Cancer, 1(12):1153-1166
【非特許文献4】Flynn and Hartley, 2017, Br J Haematol 179, 20-35
【非特許文献5】Fujiwara et al., 2013, Hematology 18, 14-19
【非特許文献6】Gonen et al., 2012, Blood 120, 2297-2306
【非特許文献7】Aref et al., 2020, Leuk Res Rep 13, 100203
【非特許文献8】Kageyama Y et al., 2018, PLOS One 13(12) e.0209295
【非特許文献9】Kantarjian et al., 2021, Blood Cancer J 11, 41
【非特許文献10】Dong et al., 2020, Front Immunol 11, 1710
【発明の概要】
【0009】
本発明は、急性骨髄性白血病(AML)及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療に使用される抗CD25抗体を提供する。
【0010】
本発明の第1の態様において、急性骨髄性白血病又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療に使用される抗CD25抗体が提供される。
【0011】
本発明の第2の態様は、急性骨髄性白血病又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療に使用される抗CD25抗体であって、単独で又は1つ以上の更なる治療薬と組み合わせて投与される、抗CD25抗体を提供する。抗CD25抗体及び更なる治療薬は、個別の投与、同時投与又は逐次投与用のものである。
【0012】
本発明の第3の態様は、急性骨髄性白血病又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療に使用される、抗CD25抗体と更なる治療薬との組合せであって、該抗CD25抗体及び該更なる治療薬が、個別の投与、同時投与又は逐次投与用のものである、組合せを提供する。
【0013】
本発明の第4の態様は、被験体において急性骨髄性白血病又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を治療する方法であって、該被験体に有効量の抗CD25抗体を投与することを含む、方法を提供する。
【0014】
本発明の第5の態様は、急性骨髄性白血病又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療用の薬剤の製造における抗CD25抗体の使用を提供する。
【0015】
本発明の第6の態様は、急性骨髄性白血病又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療用の薬剤の製造における抗CD25抗体及び更なる治療薬の使用を提供する。
【0016】
本発明の第7の態様は、抗CD25抗体で治療する急性骨髄性白血病を患う患者を選択する方法であって、該患者からの試料中の標的細胞におけるCD25発現レベルを測定することを含み、該細胞が1細胞当たりCD25分子約900個を超える発現レベルを有する場合、該患者が抗体による治療に適している、方法を提供する。
【0017】
本発明の第8の態様は、抗CD25抗体で治療するAMLを患う患者を選択する方法であって、該患者からの試料中のFLT3-ITD突然変異の有無を判定することを含み、該突然変異が該試料中に存在する場合、該患者が抗体による治療に適している、方法を提供する。
【0018】
本発明の第9の態様は、抗CD25抗体による治療に対するAML患者の応答を予測する方法であって、該患者からの試料中のFLT3-ITD突然変異の有無を判定することを含み、該試料中の該突然変異の存在が、抗CD25抗体による治療に応答するとされる患者であることを指し示す、方法を提供する。
【0019】
本発明の第10の態様は、被験体におけるAMLを治療する方法であって、該被験体に有効量の抗CD25抗体を投与することを含み、被験体がFLT3-ITD突然変異の存在を含む、方法を提供する。
【0020】
本発明の第11の態様は、AML患者における再発を予防する又はそのリスクを軽減する方法であって、抗CD25抗体を該患者に投与することを含む、方法を提供する。
【0021】
本発明の第12の態様は、BCL-2阻害剤と低メチル化剤との併用治療を受けた患者におけるAMLを治療する方法であって、抗CD25抗体を該患者に投与することを含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】標的細胞におけるCD25の発現を示す図である。4つの標的細胞(iTreg、Pfeiffer、EOL-1及びAML-22)の表面上のCD25分子の密度は、ADCCアッセイ培地中で17時間インキュベートした後にBD quantibrite(商標)ビーズを用いて求めた。iTreg及びPfeiffer細胞のCD25密度は左Y軸に示し、EOL-1及びAML-22のCD25密度は右Y軸に示す。検出限界(L.O.D)は、BD quantibrite(商標)ビーズ上に存在するPE分子の最低数を表すため、1細胞当たりのPE分子数と蛍光強度中央値(MFI)との直線関係はこの値未満では保証されない。
図2】CD25 Mab処理によって誘起される標的細胞におけるADCC潜在性及びCD25密度を示す図である。(A)試験した化合物(CD25 Mab又はアイソタイプ対照抗体)のADCC活性を死滅の度数として示す。計算値は、エフェクターNK細胞及び化合物の非存在下における標的細胞の数に対して正規化した標的細胞の事象数に基づくものである。フローサイトメトリー解析は、ADCCアッセイの開始17時間後に実施した。(B)BD quantibrite(商標)ビーズを用いてADCCアッセイの開始17時間後に求められる、残りの生存する標的細胞(EOL-1及びAML-22)の表面上のCD25分子の密度を示す。検出限界(L.O.D)は、BD quantibrite(商標)ビーズ上に存在するPE分子の最低数を表すため、1細胞当たりのPE分子数と蛍光強度中央値(MFI)との直線関係はこの値未満では保証されない。
図3】NK細胞におけるCD16発現を示す図である。(A)EOL-1又はAML-22細胞及びCD25 Mab又はアイソタイプ対照抗体と17時間共インキュベートした後の、CD16を発現するNK細胞の割合を示す。(B)Pfeiffer細胞又はiTreg及びCD25 Mab又はアイソタイプ対照抗体と17時間共インキュベートした後の、CD16を発現するNK細胞の割合を示す。
図4】NK細胞におけるCD69発現を示す図である。(A)EOL-1又はAML-22細胞及びCD25 Mab又はアイソタイプ対照抗体と17時間共インキュベートした後の、CD69を発現するNK細胞の割合を示す。(B)Pfeiffer細胞又はiTreg及びCD25 Mab又はアイソタイプ対照抗体と17時間共インキュベートした後の、CD69を発現するNK細胞の割合を示す。
図5】NK細胞におけるCD25発現を示す図である。(A)EOL-1又はAML-22細胞及びCD25 Mab又はアイソタイプ対照抗体と17時間共インキュベートした後の、CD25を発現するNK細胞の割合を示す。(B)Pfeiffer細胞又はiTreg及びCD25 Mab又はアイソタイプ対照抗体と17時間共インキュベートした後の、CD25を発現するNK細胞の割合を示す。
図6】ADCC活性とCD25密度との相関関係を示す図である。(A)試験した化合物(CD25 Mab又はアイソタイプ対照抗体)のADCC活性を、各細胞株及びNK細胞ドナー対について得られる最大シグナルに対して正規化した相対発光量の度数として示す。結果は、合計4人の供血者から分離したNK細胞による2つの独立する実験から得られた。細胞傷害性評価は、ADCCアッセイの開始16時間~20時間後にCytoTox-Glo(商標)の発光の読み取りによって実施した。(B)CytoTox-Glo(商標)又はフローサイトメトリーを読み取りとして用いて、CD25 Mabの滴定によりADCCアッセイから導かれるEC50値を示す(各々2人のNK細胞ドナーによる3つの独立する実験)。EC50値は、Prism 8(GraphPad software)及びその内蔵非線形回帰曲線フィット(log(アゴニスト)対応答、可変勾配、4パラメーター)を用いて算出した。(C)ADCCアッセイの開始16時間~20時間後にBD quantibrite(商標)ビーズを用いて求めた、生存する標的細胞(Pfeiffer、EOL-1及びAML-22)の表面上のCD25分子の密度を示す。検出限界(L.O.D)は、BD quantibrite(商標)ビーズ上に存在するPE分子の最低数を表すため、1細胞当たりのPE分子数と蛍光強度中央値(MFI)との直線関係はこの値未満では保証されない。結果は3つの独立する実験から得られた。
図7】CD25+AML細胞及びTregの死滅活性を示す図である。(A)10μg/mlで試験した化合物(CD25 Mab又はアイソタイプ対照抗体)の死滅活性を、CD25+AML細胞の死滅の度数として示す。陽性対照EOL-1細胞株及び4つのAML患者試料を標的細胞として使用した。フローサイトメトリー解析は、ADCCアッセイの開始20時間後に実施した。平均±SEMは、2人のNK細胞ドナー及び技術的反復で得られた結果を表す。多重t検定、多重比較のためのHolm-Sidak補正。(B):(A)に関する上記のTregの死滅活性を示す。平均±SEMは、AML Treg(n=2)又は健康なBM Treg(n=2)で得られた結果を表す。多重t検定、多重比較のためのHolm-Sidak補正。有意レベルは次のように示す:ns、有意でない=P>0.05;、P≦0.05;**、P≦0.01;***、P≦0.001;****、P≦0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、被験体における急性骨髄性白血病(AML)又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療に使用される抗CD25抗体、及び抗CD25抗体を用いて被験体において急性骨髄性白血病又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を治療する方法を提供する。
【0024】
本発明者らは、抗CD25抗体が、広範囲のCD25発現レベルを有するCD25+悪性細胞を枯渇させることができることを見出した。本発明者らは、抗CD25抗体によるCD25+AML及びDLBCL細胞、特にCD25+AML芽細胞の直接的な死滅を示した。特に、本発明者らは、AMLに関連する腫瘍細胞におけるCD25発現レベルが低いにもかかわらず、抗CD25抗体がこれらの腫瘍細胞の死滅に有効であることを見出した。本発明者らは、抗CD25抗体は、CD25の発現が低い癌細胞を標的とするのに使用することができ、それゆえ、芽細胞におけるCD25発現レベルが低いことがあるAML等の癌の治療の使用にも適していることを見出した。
【0025】
CD25はIL-2受容体のα鎖であり、活性化T細胞、制御性T細胞、活性化B細胞、一部のNK T細胞、一部の胸腺細胞、骨髄前駆細胞及び希突起膠細胞に存在する。低いCD25発現は、AML患者の芽細胞でも見られることがある。CD25はCD122及びCD132に結合して、IL-2の高親和性受容体として作用するヘテロ三量体複合体を形成する。ヒトCD25のコンセンサス配列を以下に示し、配列番号1として同定する(Uniprotアクセッション番号P01589;アミノ酸22~240に対応する成熟ヒトCD25の細胞外ドメインに下線を付す)。
【0026】
10 20 30 40 50
MDSYLLMWGL LTFIMVPGCQ AELCDDDPPE IPHATFKAMA YKEGTMLNCE
60 70 80 90 100
CKRGFRRIKS GSLYMLCTGN SSHSSWDNQC QCTSSATRNT TKQVTPQPEE
110 120 130 140 150
QKERKTTEMQ SPMQPVDQAS LPGHCREPPP WENEATERIY HFVVGQMVYY
160 170 180 190 200
QCVQGYRALH RGPAESVCKM THGKTRWTQP QLICTGEMET SQFPGEEKPQ
210 220 230 240 250
ASPEGRPESE TSCLVTTTDF QIQTEMAATM ETSIFTTEYQ VAVAGCVFLL
260 270
ISVLLLSGLT WQRRQRKSRR TI
【0027】
本明細書で使用される場合、「抗CD25抗体」又は「CD25に結合する抗体」とは、IL-2受容体のCD25サブユニットに結合することができる抗体を指す。このサブユニットはIL-2受容体のαサブユニットとしても知られている。
【0028】
抗CD25抗体は、IL-2受容体のCD25サブユニット(抗原)に特異的に結合することができる抗体である。「特異的結合」及び「特異的に結合する("bind specifically", and "specifically bind")」は、抗体が、対象の抗原に対して約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M又は10-13M未満の解離定数(Kd)を有することを意味すると理解される。好ましい実施形態において、解離定数は、10-8M未満、例えば10-9M、10-10M、10-11M、10-12M又は10-13Mの範囲である。
【0029】
本発明における使用に好適な抗CD25抗体としては例えば、国際公開第2017/174331号、国際公開第2018/167104号、国際公開第2019/008386号、国際公開第2019/175215号、国際公開第2019/175216号、国際公開第2019/175217号、国際公開第2019/175220号、国際公開第2019/17522号、国際公開第2019/175223号、国際公開第2019/175224号、国際公開第2019/175226号に記載されているものが挙げられ、その内容は引用することにより本明細書の一部をなす。
【0030】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、無傷の免疫グロブリン分子、及び抗原結合部位を含むその断片の両方を指し、ポリクローナル、モノクローナル、遺伝子操作された形態、そうでなければ修飾された形態の抗体を含み、これらには、限定するものではないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヘテロ接合体及び/又は多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ、トリボディ(tribodies)及びテトラボディ(tetrabodies))、並びに例えばFab’、F(ab’)、Fab、Fv、rIgGを含む抗体の抗原結合断片、ポリペプチド-Fc融合体、単鎖バリアント(single chain variants)(scFv断片、VHH、Trans-bodies(商標)、Affibodies(商標)、サメ単一ドメイン抗体、単鎖又はタンデムダイアボディ(TandAb(商標))、VHH、Anticalins(商標)、Nanobodies(商標)、ミニボディ、BiTE(商標)、二環式ペプチド、及び他の代替的な免疫グロブリンタンパク質足場)が挙げられる。幾つかの実施形態において、抗体は、天然に産生された場合に有するとされる共有結合修飾(例えば、グリカンの結合)を欠いていてもよい。幾つかの実施形態において、抗体は、共有結合修飾(例えば、グリカン、検出可能部分、治療部分、触媒部分、又はポリエチレングリコール等の、抗体の安定性又は投与を改善させる他の化学基の結合)を含有していてもよい。幾つかの実施形態において、抗体はマスクされた抗体(例えば、Probodies(商標))の形態であってもよい。マスクされた抗体は、抗体の抗原結合表面に特異的に結合して、抗体の抗原結合を妨げるブロッキングペプチド又は「マスク」ペプチドを含み得る。マスクペプチドは、切断可能なリンカー(例えばプロテアーゼ)によって抗体に連結する。望ましい環境、すなわち腫瘍環境におけるリンカーの選択的切断により、マスキング/ブロッキングペプチドを解離することができ、腫瘍内での抗原結合が可能となり、それにより潜在的な毒性の問題が制限される。「抗体」は、ラクダ抗体(重鎖のみの抗体)、及びアンチカリン等の抗体様分子を指すこともある(Skerra (2008) FEBS J 275, 2677-83)。幾つかの実施形態において、抗体はポリクローナル又はオリゴクローナルであり、これらは抗体のパネルとして生成され、それぞれが単一の抗体配列と関連し、抗原内の多かれ少なかれ互いに異なるエピトープ(例えば、異なる参照の抗ヒトCD25抗体に関連するヒトCD25細胞外ドメイン内の異なるエピトープ)に結合する。ポリクローナル抗体又はオリゴクローナル抗体は、文献に記載されているように、医療用途のための単一の調剤として提供することができる(Kearns JD et al., 2015. Mol Cancer Ther. 14:1625-36)。
【0031】
本発明で使用される抗体は、単一特異性、二重特異性又は多重特異性であってもよい。「多重特異性抗体」は、1つの標的抗原又はポリペプチドの異なるエピトープに特異的なものであってもよく、又は2つ以上の標的抗原又はポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含有するものであってもよい。本発明の幾つかの実施形態において、抗体は単一特異性である。幾つかの実施形態において、抗体は一価(すなわち、1つのCD25分子に対して1つの抗体の比率)でCD25に結合する。更なる実施形態において、抗体は単一特異性二価抗体であり、すなわち、抗体は2つのCD25分子に対して1つの抗体の比率でCD25に結合する。
【0032】
本発明の幾つかの実施形態において、抗体はモノクローナルである。抗体は、付加的に又は代替的にヒト化又はヒトであってもよい。更なる実施形態において、抗体はヒトであるか、又はいずれの場合も、ヒト被験体におけるその使用及び投与を可能にするフォーマット及び特徴を有する抗体である。
【0033】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術によって産生される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、任意の真核生物、原核生物又はファージクローンを含む単一クローンに由来する抗体を指し、それが産生される方法を指すものではない。
【0034】
本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」とは、フレームワーク領域及びCDR領域が両方ともヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を指す。さらに、抗体が定常領域を含有する場合、その定常領域もヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダム若しくは部位特異的な突然変異誘発、又はin vivoでの体細胞突然変異によって導かれる突然変異)を含んでいてもよい。
【0035】
抗体(Ab)及び免疫グロブリン(Ig)は、同じ構造的特徴を有する糖タンパク質である。免疫グロブリンは、IgA、IgD、IgG、IgE又はIgM等の任意のクラス由来のものであってもよい。免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4等の任意のサブクラスのものであってもよい。本発明の好ましい実施形態において、抗CD25抗体はIgGクラス、好ましくはIgG1サブクラス由来のものである。一実施形態において、抗CD25抗体はヒトIgG1サブクラス由来のものである。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、抗CD25抗体は、高い親和性でFcγR、好ましくは高い親和性で活性化受容体に結合する。好ましくは、抗体は、高い親和性でFcγRI及び/又はFcγRIIa及び/又はFcγRIIIaに結合する。特定の実施形態において、抗体は、約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M又は10-10M未満の解離定数で少なくとも1つの活性化Fcγ受容体に結合する。
【0037】
幾つかの実施形態において、抗体はIgG1抗体、好ましくはヒトIgG1抗体であり、これらは少なくとも1つのFc活性化受容体に結合することができる。例えば、抗体は、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIc、FcγRIIIa及びFcγRIIIbから選択される1つ以上の受容体に結合し得る。幾つかの実施形態において、抗体はFcγRIIIaに結合することができる。幾つかの実施形態において、抗体は、FcγRIIIa及びFcγRIIa及び任意にFcγRIに結合することができる。幾つかの実施形態において、抗体は、これらの受容体と高い親和性で、例えば約10-7M、10-8M、10-9M又は10-10M未満の解離定数で結合することができる。
【0038】
幾つかの実施形態において、抗体は、抑制性受容体であるFcγRIIbと低い親和性で結合する。幾つかの実施形態において、抗体は、約10-7Mより高い、約10-6Mより高い又は約10-5Mより高い解離定数でFcγRIIbに結合する。
【0039】
幾つかの実施形態において、抗体は脱フコシル化されていてもよい。抗体のFc領域は、当該技術分野において既知の技法を用いてグリコシル化プロファイルを変化させるように修飾することができる。フコシル化プロファイルが存在しないか又はそれを減少させた抗体を産生する利用可能な技法としては、GlyMAXX(ProBiogen)等の市販の技術及び国際公開第2011/035884号に開示されている方法等の方法が挙げられる。
【0040】
幾つかの実施形態において、抗CD25抗体はADCC活性を誘起する。抗CD25抗体は、CD25+標的細胞に対してADCC活性を示す。「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」(ADCC)とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)が標的細胞上に結合した抗体を認識し、それによって標的細胞の溶解をもたらす細胞介在性反応を指す。幾つかの実施形態において、抗CD25抗体はADCP活性を誘起する。「抗体依存性細胞介在性貪食」(ADCP)とは、Fc受容体(FcR)を発現する食細胞(マクロファージ等)が標的細胞上に結合した抗体を認識し、それによって標的細胞の貪食をもたらす細胞介在性反応を指す。
【0041】
本発明で使用される抗CD25抗体は、ADCC活性及びADCP活性を通じて機能し得る。ADCC及びADCPは、当該技術分野において既知の利用可能なアッセイを用いて測定することができる。
【0042】
本発明の幾つかの実施形態において、抗CD25抗体は、インターロイキン-2のCD25への結合を阻害しない。本明細書における「インターロイキン-2のCD25への結合を阻害しない」という記述(References)は、抗CD25抗体が非IL-2ブロッキング抗体又は「非ブロッキング」抗体(抗CD25抗体の存在下におけるCD25へのIL-2の結合の非ブロッキングに関して)である、すなわち、該抗体がインターロイキン-2のCD25への結合をブロックしない、特にCD25発現細胞においてインターロイキン-2のシグナル伝達を阻害しないと代替的に表現され得る。本明細書における非IL-2ブロッキング抗体という記述は、「インターロイキン-2のCD25への結合を阻害しない」抗CD25抗体、又は「IL-2のシグナル伝達を阻害しない」抗CD25抗体と代替的に表現される場合もある。「非ブロッキング」、「非IL2ブロッキング」、「ブロックしない」、又は「ブロッキングなし」等(抗CD25抗体の存在下におけるCD25へのIL-2の結合の非ブロッキングに関して)の記述には、本発明の抗CD25抗体が、CD25を介するIL-2のシグナル伝達をブロックしない実施形態が含まれる。すなわち、抗CD25抗体がIL-2シグナル伝達を阻害するのは、抗体の非存在下におけるIL-2シグナル伝達と比較して50%未満である。本明細書に記載される本発明の特定の実施形態において、抗CD25抗体がIL-2シグナル伝達を阻害するのは、抗体の非存在下におけるIL-2シグナル伝達と比較して約50%、40%、35%、30%未満、好ましくは約25%未満である。
【0043】
幾つかの抗CD25抗体はIL-2のCD25への結合を可能にするが、CD25受容体を介するシグナル伝達は依然としてブロックし得る。非IL-2ブロッキング抗CD25抗体は、IL-2のCD25への結合を可能にし、抗CD25抗体の非存在下におけるシグナル伝達と比較してCD25受容体を介するシグナル伝達レベルを少なくとも50%促す。
【0044】
CD25を介するIL-2シグナル伝達は、例えば国際公開第2018/167104号に論じられている方法及び当該技術分野において既知の方法によって測定し得る。抗CD25抗体薬の存在及び非存在下におけるIL-2シグナル伝達の比較は、同じ又は実質的に同じ条件下で行うことができる。
【0045】
幾つかの実施形態において、IL-2シグナル伝達は、標準的なStat-5リン酸化アッセイを用いて細胞内のリン酸化STAT5タンパク質のレベルによる測定によって求めることができる。例えば、IL-2シグナル伝達を測定するStat-5リン酸化アッセイは、10μg/mlの濃度の抗CD25抗体の存在下でPMBC細胞を30分間培養し、その後、様々な濃度のIL-2(例えば、10U/ml、又は0.25U/ml、0.74U/ml、2.22U/ml、6.66U/ml又は20U/mlの様々な濃度)を10分間添加することを伴うものであってもよい。次いで細胞を透過処理してもよく、その後、フローサイトメトリーによって解析されるリン酸化STAT5ペプチドに対する蛍光標識抗体を用いてSTAT5タンパク質のレベルを測定することができる。IL-2シグナル伝達のブロッキング率は次のように算出することができる:ブロッキング%=100×[(抗体群なしのStat5+細胞の%-10μg/ml抗体群ありのStat5+細胞の%)/(Ab群なしのStat5+細胞の%)。
【0046】
非ブロッキング抗CD25抗体の例は、国際公開第2018/167104号、国際公開第2019/175215号、国際公開第2019/175216号、国際公開第2019/175217号、国際公開第2019/175220号、国際公開第2019/17522号、国際公開第2019/175223号、国際公開第2019/17524号、国際公開第2019/17526号に記載されており、その全体は引用することにより本明細書の一部をなす。
【0047】
抗CD25抗体は、ヒトCD25の細胞外領域内のエピトープに特異的に結合し得る。幾つかの実施形態において、抗体は、IL-2結合部位と異なるエピトープに結合し、IL-2のCD25への結合をブロックしない。
【0048】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」とは、抗体又は抗原結合断片によって結合する抗原の一部を指す。当該技術分野においてよく知られているように、エピトープは、隣接するアミノ酸(線状エピトープ)又はタンパク質の三次フォールディングによって並列する隣接しないアミノ酸(立体構造エピトープ)の両方から形成することができる。隣接するアミノ酸から形成されるエピトープは典型的に変性溶媒に曝されても維持されるのに対し、三次フォールディングにより形成されるエピトープは典型的に変性溶媒による処理によって失われる。
【0049】
エピトープは、抗原が関連する立体構造にある場合、抗原内で共有結合的に隣接しているわけではないが、三次元空間内で互いに近接する抗原の一部分で構成されるという点で、立体構造である。例えば、CD25の場合、立体構造エピトープは、CD25細胞外ドメイン内で隣接しないアミノ酸残基で構成されるエピトープであり、線状エピトープは、CD25細胞外ドメイン内で隣接するアミノ酸残基で構成されるエピトープである。抗CD25抗体に関するエピトープの正確な配列及び/又は特にアミノ酸残基を決定する手段は、文献において知られており、抗原配列由来のペプチドとの競合、切断及び/又は突然変異誘発(例えば、アラニンスキャニング又は他の部位特異的突然変異誘発による)された様々な種由来のCD25配列への結合、ファージディスプレイベースのスクリーニング、酵素提示技術、又は(共)結晶構造解析技法が挙げられる。エピトープの空間的立体構造を決定する方法も当該技術分野においてよく知られており、例えば、x線結晶構造解析及び2D核磁気共鳴が挙げられる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, Glenn E. Morris, Ed (1996)を参照されたい。したがって、幾つかの実施形態において、抗CD25抗体は立体構造エピトープを認識し得る。
【0050】
幾つかの実施形態において、抗CD25抗体は、配列番号1のアミノ酸150~163(YQCVQGYRALHRGP)(配列番号52)、配列番号1のアミノ酸166~186(SVCKMTHGKTRWTQPQLICTG)(配列番号53)、配列番号1のアミノ酸42~56(KEGTMLNCECKRGFR)(配列番号54)及び配列番号1のアミノ酸70~88(NSSHSSWDNQCQCTSSATR)(配列番号55)から選択されるアミノ酸ストレッチ(stretches)の1つ以上に含まれる1つ以上のアミノ酸残基を含むエピトープに結合する。好ましくは、エピトープは、配列番号1のアミノ酸150~163(YQCVQGYRALHRGP)(配列番号52)、配列番号1のアミノ酸166~186(SVCKMTHGKTRWTQPQLICTG)(配列番号53)、配列番号1のアミノ酸42~56(KEGTMLNCECKRGFR)(配列番号54)及び/又は配列番号1のアミノ酸70~88(NSSHSSWDNQCQCTSSATR)(配列番号55)から選択される1つ以上のアミノ酸ストレッチに含まれる少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18以上のアミノ酸残基を含む。
【0051】
幾つかの実施形態において、抗CD25抗体はヒトCD25のエピトープに結合し、該エピトープは、配列番号1のアミノ酸150~158(YQCVQGYRA)(配列番号56)、配列番号1のアミノ酸176~180(RWTQP)(配列番号57)、配列番号1のアミノ酸42~56(KEGTMLNCECKRGFR)(配列番号54)及び配列番号1のアミノ酸74~84(SSWDNQCQCTS)(配列番号58)から選択される少なくとも1つの配列を含む。かかる抗体はIL-2のCD25への結合を阻害しない。
【0052】
一実施形態において、抗CD25抗体は、配列番号1のアミノ酸70~84の配列(NSSHSSWDNQCQCTS)(配列番号59)を含むエピトープに結合する。
【0053】
自然抗体及び免疫グロブリンは通常、約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質であり、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖で構成される。各重鎖はアミノ末端に可変ドメイン(V)を有し、その後に多数の定常ドメインが続く。各軽鎖はアミノ末端に可変ドメイン(V)及びカルボキシ末端に定常ドメインを有する。
【0054】
可変領域は、構造的に相補的な抗原標的と相互作用することができ、異なる抗原特異性を有する抗体とアミノ酸配列が異なることを特徴とする。重鎖又は軽鎖いずれかの可変領域は、抗原標的に特異的に結合することができるアミノ酸配列を含有する。これらの配列内には、特異性の異なる抗体間でのそれらの極端な可変性のため「超可変」と称されるより小さい配列がある。かかる超可変領域は「相補性決定領域」又は「CDR」領域とも称される。
【0055】
これらのCDR領域は、特定の抗原決定構造に関する抗体の基本的な特異性の根拠である。CDRは、可変領域内のアミノ酸の隣接しないストレッチを表すが、種に関係なく、可変重鎖及び軽鎖領域内のこれらの重要なアミノ酸配列の位置配置(positional locations)は、可変鎖のアミノ酸配列内で同様の位置を有することが判明している。全ての抗体の可変重鎖及び軽鎖にはそれぞれ3つのCDR領域があり、それぞれの重(H)鎖及び軽(L)鎖に関する他のもの(H1、H2、H3、L1、L2、L3と称する)とは各々隣接しない。本明細書に指定されるCDR領域は、Kabatによって定義される(Kabat et al., 1977. J Biol Chem 252, 6609-6616)。
【0056】
幾つかの実施形態において、抗CD25抗体は、
(a)
配列番号2~5のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号6~11のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域と、
配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域と、
を含む抗体又はその抗原結合断片、
(b)
配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域と、
配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号28のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域と、
を含む抗体又はその抗原結合断片、及び、
(c)
配列番号31~33のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号34~38のいずれか1つのアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域と、
配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域と、
を含む抗体又はその抗原結合断片、
からなる群から選択される。
【0057】
幾つかの実施形態において、抗CD25抗体は、
(a)
配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域と、
配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域と、
を含む抗体又はその抗原結合断片、
b)
配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域と、
配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域と、
を含む抗体又はその抗原結合断片、
c)
配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域と、
配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域と、
を含む抗体又はその抗原結合断片、
d)
配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域と、
配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域と、
を含む抗体又はその抗原結合断片、
e)
配列番号4のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域と、
配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域と、
を含む抗体又はその抗原結合断片、及び、
f)
配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域と、
配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域と、
を含む抗体又はその抗原結合断片、
からなる群から選択される。
【0058】
幾つかの実施形態において、抗CD25抗体は、
a)配列番号16~21のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、
b)配列番号29のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号30のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、及び、
c)配列番号43~48のいずれか1つのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号49のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、
からなる群から選択される。
【0059】
幾つかの実施形態において、抗CD25抗体は、
a)配列番号16のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、
b)配列番号17のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、
c)配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、
d)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、
e)配列番号20のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、
f)配列番号21のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、及び、
g)配列番号16~21のいずれか1つに対する少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域と、配列番号22に対する少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体、
からなる群から選択される。
【0060】
例示した抗体の相補性決定領域(HCDR1~3及びLCDR1~3)並びに重鎖可変領域及び軽鎖可変領域に関する配列番号を以下の表に提供する。
【0061】
【表1】
【0062】
かかる抗体は、国際公開第2019/175216号、国際公開第2019/175217号及び国際公開第2019/1175222号に更に記載されている。その内容は引用することにより本明細書の一部をなす。
【0063】
本明細書においてaCD25-a-686と称される抗体は、RG6292と称されることもある。好ましい実施形態において、抗CD25抗体はRG6292である。「RG6292」と称される抗CD25抗体は、脱フコシル化ヒトIgG1モノクローナル抗体である。RG6292は、配列番号50の配列を有する重鎖配列と、配列番号51の配列を有する軽鎖配列とを有する。
【0064】
かかる抗体は「非IL-2ブロッキング」抗体として知られており、IL-2のCD25への結合を阻害しない。
【0065】
上記で定義した抗体の変異体も使用することができる。抗体の変異体は、各CDR配列に関する配列が、
(i)少なくとも85%の同一性、及び/又は、
(ii)配列番号2~15、23~28、又は31~42と比べた1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換、
を有するアミノ酸配列を含む抗体を含む。
【0066】
抗体の変異体は、軽鎖及び重鎖それぞれに関する配列が、
(i)少なくとも80%の同一性、及び/又は、
(ii)配列番号16~22、29、30又は43~51と比べた1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、
を有するアミノ酸配列を含む抗体も含む。
【0067】
例えば、本発明の一実施形態は、AMLの治療に使用される抗CD25抗体であって、
a)
配列番号2~5のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号6~11のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び配列番号12に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域と、
配列番号13に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号14に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号15に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域と、
を含む抗体又はその抗原結合断片、
b)
配列番号2~5のいずれか1つと比べて1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換を有するアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号6~11のいずれか1つと比べて1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換を有するアミノ酸配列を含むCDR-H2、及び配列番号12と比べて1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換を有するアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む重鎖可変領域と、
配列番号13と比べて1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換を有するアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号14と比べて1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換を有するアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号15と比べて1つ、2つ又は3つのアミノ酸の置換を有するアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む軽鎖可変領域と、
を含む抗体又はその抗原結合断片、及び、
c)
i)配列番号16~21のいずれか1つに対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は、
ii)配列番号16~21と比較して1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つのアミノ酸の置換を有するアミノ酸配列、
を含む重鎖可変領域と、
i)配列番号22に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は、
ii)配列番号22と比較して1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つのアミノ酸の置換を有するアミノ酸配列、
を含む軽鎖可変領域と、
を含む抗体又はその抗原結合断片、
を含む群から選択される、抗CD25抗体を提供する。
【0068】
当該技術分野において既知の同一性パーセント(%)は、配列を比較することによって決定される2つ以上のポリペプチド配列又は2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当該技術分野において、同一性は場合によっては、かかる配列の文字列間の一致によって決定され得る、ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度も意味する。2つのポリペプチド又は2つのポリヌクレオチド配列間の同一性を測定する多くの方法が存在するが、同一性を決定するのに通例使用される方法は、コンピュータープログラムで体系化されている。2つの配列間の同一性を決定する好ましいコンピュータープログラムとしてはGCGプログラムパッケージ(Devereux, et al., Nucleic Acids Research, 12, 387 (1984))、BLASTP、BLASTN及びFASTA(Atschul et al., J. Molec. Biol. 215, 403 (1990))が挙げられるが、これらに限定されない。2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の同一性パーセントは、最適な比較目的で配列をアライメントすることによって(例えば、配列との最良のアライメントのために最初の配列にギャップを導入し得る)、及び対応する位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較することによって決定される。「最良のアライメント」とは、最大の同一性パーセントをもたらす2つの配列のアライメントである。同一性パーセントは、比較される配列における同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドの数によって決定される(すなわち、同一性%=同一位置の数/位置の総数×100)。概して、本明細書における同一性%という記述は、文脈上別段の指定又は示唆のない限り、分子の全長に沿った同一性%を指す。
【0069】
幾つかの実施形態において、抗CD25抗体は、癌細胞、Treg細胞、AML芽細胞及び/又はPMBC細胞を死滅させる。幾つかの実施形態において、抗体は、1細胞当たりCD25分子約900個を超えるCD25発現レベルを有するTreg細胞及び芽細胞を死滅させる。好ましくは、抗体は、1細胞当たりCD25分子約1000個を超える、好ましくは1細胞当たりCD25分子約1000個~40000個、約1000個~約5000個又は約1000個~約2500個の範囲のCD25発現レベルを有するTreg細胞及び芽細胞を死滅させる。
【0070】
特定の細胞におけるCD25発現レベルはCD25密度とも称され、1細胞当たりのCD25分子数の尺度である。細胞におけるCD25発現レベル又は密度は、実施例に論じられるように、及び当該技術分野において知られているように、例えばフローサイトメトリーによって求めることができる。細胞当たりCD25分子約1000個のCD25を有する細胞は、高いCD25発現を有するTreg細胞等の細胞と比較して、低発現CD25細胞であると考えられる。かかる低発現CD25細胞としてはAML芽球が挙げられる。
【0071】
本発明の幾つかの実施形態において、抗CD25抗体は、CD25+AML芽細胞等の低発現CD25細胞を死滅させるのに使用される。
【0072】
幾つかの実施形態において、抗体及びNK細胞を、細胞当たりCD25分子900個~5000個を発現する細胞と共インキュベートする場合、抗CD25抗体は、NK細胞におけるCD16発現の減少を最大25%誘起する。好ましくは、NK細胞はCD56dim NK細胞である。CD16発現の減少は、例えば実施例に論じられる方法及び当該技術分野において知られている方法によって測定することができる。
【0073】
本発明は、急性骨髄性白血病(AML)又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療に関する。好ましくは、本発明は、急性骨髄性白血病(AML)の治療に関する。急性骨髄性白血病(AML)は、骨髄芽球、赤血球細胞及び血小板等の骨髄系集団の異常細胞が増殖し、これらが骨髄内で増殖して蓄積し、血液に広がる血液の癌である。AMLに関する分類スキームは、当該技術分野において知られており、例えばAMLのWHO分類(2008年)及びフランス-アメリカ-イギリスによる(FAB)分類である。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)はアグレッシブタイプの非ホジキンリンパ腫である。
【0074】
抗CD25抗体は患者のAML芽細胞を標的とするのに使用することができる。幾つかの実施形態において、治療される被験体由来の腫瘍細胞におけるCD25発現レベルは、1細胞当たりCD25分子少なくとも約900個である。幾つかの実施形態において、治療される被験体由来の腫瘍細胞におけるCD25発現レベルは、1細胞当たりCD25分子約900個~約5000個の範囲である。
【0075】
本明細書で使用される場合、AML又はDLBCLの「治療」、「治療する」又は「治療すること」という記述は、部分的に又は完全に、1つ以上の症状を軽減し、緩和し、回復させ、阻害し、その発生を遅延させ、その重症度を低減させ、及び/又はその発生率を低減させる物質(例えば抗CD25抗体)の任意の投与を指す。プラスの治療効果は、例えば癌細胞の数の減少、すなわちAML芽細胞の減少とされ得る。
【0076】
本明細書に記載される本発明の実施形態のいずれかの被験体は、好ましくは哺乳類、好ましくは、ネコ、イヌ、ウマ、ロバ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、ハムスター、マウス、ラット、ウサギ又はモルモットであるが、最も好ましくは、被験体はヒトである。このため、本明細書に記載される本発明の全ての態様において、被験体は好ましくはヒトである。被験体は本明細書で患者と称することもある。
【0077】
癌患者を治療するのに有効な本明細書に記載される療法の投薬レジメンは、患者の病態、年齢、及び体重、並びに被験体における抗癌応答を誘発する療法の性能等の因子に応じて変わり得る。抗CD25抗体は治療有効量で使用され得る。本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、治療投与レジメンに従って疾患及び/又は病状に罹患しているか又はかかりやすい集団に投与される場合に、かかる疾患及び/又は病状を治療するのに十分な量(例えば、作用物質又は医薬組成物の量)を意味する。治療有効量は、疾患、障害及び/又は病状の1つ以上の症状の発生率及び/又は重症度を低減させ、その症状を安定させ及び/又はその発生を遅延させる量である。当業者は、「治療有効量」が実際には、特定の被験体において達成される治療成功を必要としないことを理解するであろう。
【0078】
適切な投薬量の選択は当業者の能力の範囲内にあるとされる。例えば、0.01mg/kg、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40又は50mg/kg。幾つかの実施形態において、かかる量は、関連する集団に投与した場合に所望又は有益な結果と相関関係にあるように決定された投与レジメン(すなわち、治療投与レジメン)に従って投与するのに適切な単位投薬量(又はその全ての部分(whole fraction thereof))である。投薬量はまた、投与経路、治療サイクル、又はその結果として、用量を増やす抗体の投与に関係する最大耐量及び用量制限毒性(もしあれば)を決定するのに使用することができる用量漸増プロトコルに対して変更してもよい。
【0079】
幾つかの実施形態において、投与レジメンは、それぞれが同じ長さの期間だけ互いに間をおく複数の用量を含む。代替的に、投与レジメンは、複数の用量、及び個々の用量の間をとる少なくとも2つの異なる期間を含む。幾つかの実施形態において、投与レジメン内の全ての用量は同じ単位投与量である。代替的に、投与レジメン内の種々の用量は異なる量のものとする。幾つかの実施形態において、投与レジメンは、第1の投与量での第1の用量、それに続く第1の投与量と異なる第2の投与量での1回以上の追加用量を含む。投与レジメンは、第1の投与量での第1の用量、それに続く第1の投与量と同じ第2の投与量での1回以上の追加用量を含んでいてもよい。幾つかの実施形態において、投与レジメンは、関連する集団にわたって投与した場合に所望又は有益な結果と相関関係にある(すなわち、治療投与レジメンである)。
【0080】
本明細書に記載される本発明の任意の態様による抗CD25抗体は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤を付加的に含む医薬組成物の形態であってもよい。これらの組成物としては例えば、液体、半固体及び固体の投与製剤、例えば、液体溶液(例えば、注射用及び注入用溶液)、分散液若しくは懸濁液、錠剤、丸剤、又はリポソームが挙げられる。幾つかの実施形態において、好ましい形態は、意図される投与様式及び/又は治療用途に依存し得る。抗体を含有する医薬組成物は、限定するものではないが、経口、粘膜、吸入、局所、バッカル、鼻腔、直腸、又は非経口(例えば、静脈内、注入、腫瘍内、節内、皮下、腹腔内、筋肉内、皮内、経皮、又は被験体の組織の物理的な破壊を伴う他の種類の投与、及び組織の破壊を介する医薬組成物の投与)を含む当該技術分野で既知の適切な方法によって投与することができる。このような製剤は例えば、皮内、腫瘍内若しくは皮下投与、又は静脈内注入に適した注射用又は注入用溶液の形態であってもよい。投与は断続的な投与を伴うことがある。代替的に、投与は、他の化合物の投与と同時に又は他の化合物の投与の間に、少なくとも選択された期間にわたる連続投与(例えば灌流)を伴い得る。幾つかの実施形態において、抗体は、急速な放出及び/又は分解から保護する担体、例えば制御放出製剤、例えば、留置用剤(implants)、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化送達システムを用いて調製することができる。生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。
【0081】
当業者は、例えば、送達経路(例えば、経口、静脈内、皮下等)が投与量に影響を与える可能性があること、及び/又は必要な投与量が送達経路に影響を与える可能性があることを理解するであろう。例えば、特定の部位又は場所内の特に高濃度の作用物質が対象である場合、集中送達が望まれ及び/又は有用であり得る。所与の治療レジメンに関する経路及び/又は投与スケジュールを最適化する際に考慮される他の因子としては、例えば、治療される特定の癌(例えば、種類、ステージ、場所等)、被験体の臨床状態(例えば、年齢、全体的な健康状態等)、併用療法の有無、及び医療従事者に既知の他の因子が挙げられる。医薬組成物は典型的に、製造条件及び保存条件下で無菌かつ安定である必要がある。組成物は、溶液、マイクロエマルション、分散液、リポソーム、又は高い薬物濃度に適した他の規則構造として製剤化することができる。無菌の注射用溶液は、必要に応じて、必要な量の抗体を、上に列挙した成分の1つ又は組合せを含む適切な溶媒に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。非経口投与用の製剤としては、本明細書で論じる、懸濁液、溶液、油性又水性ビヒクル中のエマルション、ペースト、及び移植可能な徐放性又は生分解性製剤が挙げられるが、これらに限定されない。無菌の注射製剤は、非経口的に許容される非毒性の希釈剤又は溶媒を用いて調製してもよい。本発明に従って使用される各医薬組成物は、薬学的に許容可能な分散剤、湿潤剤、懸濁剤、等張剤、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、担体、賦形剤、塩又は安定化剤を含んでいてもよく、これらは、使用される投薬量及び濃度で被験体に対して非毒性である。好ましくは、このような組成物は、所与の投与方法及び/又は投与部位、例えば非経口(例えば、皮下、皮内、又は静脈内注射)、腫瘍内又は腫瘍周囲投与に適合する、癌の治療に使用される薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を更に含み得る。本明細書で使用される場合、本明細書に開示される組成物を製剤化するのに使用される担体、希釈剤又は賦形剤に適用される「薬学的に許容可能な」という用語は、担体、希釈剤又は賦形剤が、組成物の他の成分と適合性でなければならないこと、及びそのレシピエントに対して有害でないことを意味する。
【0082】
幾つかの実施形態において、抗CD25抗体は、他の治療薬との併用療法の一部となり得る。したがって、本発明の第2の態様は、AML又はDLBCLの治療に使用される抗CD25抗体であって、1つ以上の更なる治療薬と組み合わせて投与される、抗CD25抗体を提供する。本発明の第3の態様は、AML又はDLBCLの治療に使用される抗CD25抗体と1つ以上の更なる治療薬との組合せを提供する。抗CD25抗体及び更なる治療薬は、個別の投与、同時投与又は逐次投与用のものである。
【0083】
抗CD25抗体は、共刺激抗体、化学療法及び/又は放射線療法(体の外側から照射することによる、又は放射線コンジュゲート化合物を投与することによる)、サイトカインベースの療法、標的療法、ワクチン若しくはアジュバント、又はそれらの任意の組合せと組み合わせて投与され得る。「組み合わせて」とは、抗CD25抗体の投与前、投与と同時又は投与後の追加療法の施与を指し得る。抗CD25抗体及び更なる治療薬は、個別の投与、同時投与又は逐次投与用のものであり得る。
【0084】
抗CD25抗体及び他の治療薬は、同じ又は異なる送達経路を介して、及び/又は種々のスケジュールに従って投与され得る。代替的に又は付加的に、幾つかの実施形態においては、1回以上の用量の第1の活性剤が、1つ以上の他の活性剤と実質的に同時に、並びに幾つかの実施形態においては共通の経路を介して及び/又は単一組成物の一部として投与される。
【0085】
幾つかの実施形態において、他の治療薬は、1つ以上のFLT3阻害剤(例えば、ギルテリチニブ、ミドスタウリン、ソラフェニブ、キザルチニブ、クレノラニブ)、BCL-2阻害剤(例えばベネトクラクス)、IDH阻害剤(例えば、エナシデニブ、イボシデニブ)、低メチル化剤(例えば、アザシチジン、デシタビン)、更なる抗体(例えば、ゲムツズマブオゾガマイシン等のCD33抗体)、及びそれらの組合せから選択され得る。幾つかの実施形態において、抗CD25抗体は、アントラサイクリン-シタラビンレジメン(ダウノルビシンとシタラビンとのレジメン等)と組み合わせて、任意に更なる治療薬と組み合わせて使用され得る。幾つかの実施形態において、抗体は、BCL-2阻害剤及び低メチル化剤と組み合わせて使用されるものとする。幾つかの実施形態において、抗CD25抗体は、ベネトクラクスと組み合わせて、任意にアザシチジン等の更なる治療薬と組み合わせて使用される。
【0086】
他の治療薬としては、細胞傷害性薬剤等の他の化学療法薬が挙げられるが、これらに限定されない。化学療法薬としては、アルキル化剤、アントラサイクリン、エポチロン、ニトロソウレア、エチレンイミン/メチルメラミン、スルホン酸アルキル、アルキル化剤、代謝拮抗剤、ピリミジンアナログ、エピポドフィロキシン、L-アスパラギナーゼ等の酵素;IFNα、IFN-γ、IL-2、IL-12、G-CSF及びGM-CSF等の生物学的反応修飾物質;シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチン等の白金配位錯体、アントラセンジオン、ヒドロキシ尿素等の置換尿素、N-メチルヒドラジン(MIH)及びプロカルバジンを含むメチルヒドラジン誘導体、ミトタン(o,p’-DDD)及びアミノグルテチミド等の副腎皮質抑制剤;副腎皮質ステロイドアンタゴニスト、例えばプレドニゾン及び等価物、デキサメタゾン及びアミノグルテチミドを含む、ホルモン及びアンタゴニスト;カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン及び酢酸メゲストロール等のプロゲスチン;ジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオール等価物等のエストロゲン;タモキシフェン等の抗エストロゲン;プロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロン/等価物を含むアンドロゲン;フルタミド、性腺刺激ホルモン放出ホルモンアナログ及びリュープロリド等の抗アンドロゲン;並びに、フルタミド等の非ステロイド性抗アンドロゲンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
幾つかの実施形態において、他の治療薬は免疫チェックポイント阻害剤であってもよい。幾つかの実施形態において本発明はまた、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて抗CD25抗体によりAMLを治療することを提供する。本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント」又は「免疫チェックポイントタンパク質」とは、免疫系における、特にT細胞応答の調節のための、抑制性経路に属するタンパク質を指す。正常な生理的条件下で、免疫チェックポイントは、特に病原体に対する応答中の自己免疫を防ぐために非常に重要である。癌細胞は、免疫監視を回避するために、免疫チェックポイントタンパク質の発現制御を変える可能性がある。
【0088】
免疫チェックポイントタンパク質の例は、PD-1、CTLA-4、BTLA、KIR、LAG3、TIGIT、CD155、B7H3、B7H4、VISTA及びTIM3、並びにまたOX40、GITR、ICOS、4-1BB及びHVEMを含むが、これらに限定されない。免疫チェックポイントタンパク質は、他の免疫チェックポイントタンパク質に結合するタンパク質を指すこともある。かかるタンパク質としては、PD-L1、PD-L2、CD80、CD86、HVEM、LLT1、及びGAL9が挙げられる。免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントタンパク質を阻害し得る。例えば、該免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイント阻害剤に特異的に結合する抗体であってもよく、又は該免疫チェックポイントタンパク質の他のアンタゴニストであってもよい。
【0089】
本発明の幾つかの実施形態において、免疫チェックポイントタンパク質はPD-1又はPD-L1であり、免疫チェックポイント阻害剤はPD-1又はPD-L1の阻害剤、すなわちPD-1又はPD-L1のアンタゴニストであってもよい。更なる実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体を介してPD-1/PD-L1相互作用を妨害する。当該技術分野で既知の抗PD-1抗体としては、ニボルマブ及びペムブロリズマブが挙げられる。抗PD-L1抗体としては、アテゾリズマブ(MPDL3280A)等の抗体が挙げられる。
【0090】
幾つかの実施形態において、他の治療薬は癌ワクチンであってもよい。本発明の更なる実施形態は、癌ワクチンと組み合わせて抗CD25抗体によりAMLを治療することを提供する。本明細書で使用される「癌ワクチン」とは、癌患者に投与され、患者自身の免疫応答を強化することによって癌細胞を根絶するように設計された治療用癌ワクチンを指す。癌ワクチンとしては、腫瘍細胞ワクチン(自家及び同種)、樹状細胞ワクチン(ex vivoで生成及びペプチド活性化)、タンパク質/ペプチドベースの癌ワクチン及び遺伝子ワクチン(DNA、RNA及びウイルスベースのワクチン)が挙げられる。したがって、治療用癌ワクチンは原則として、手術、放射線療法及び化学療法等の従来の治療法に抵抗性である進行癌及び/又は再発腫瘍の更なる増殖を阻害するのに利用され得る。腫瘍細胞ベースのワクチン(自家及び同種)としては、可溶性免疫刺激剤、例えば、サイトカイン(IL-2、IFN-g、IL12、GMCSF、FLT3L)、免疫調節受容体(PD-1、CTLA-4、GITR、ICOS、OX40、4-1BB)に対する単鎖Fv抗体を分泌するように、及び/又は、免疫刺激受容体のリガンド、例えばとりわけICOS-リガンド、4-1BBリガンド、GITR-リガンド及び/又はOX40リガンドを細胞膜上に発現させるように、遺伝子改変されたワクチンが挙げられる。幾つかの実施形態において、癌ワクチンはGVAX抗腫瘍ワクチンであってもよい。
【0091】
幾つかの実施形態において、併用療法は、抗CD25抗体と組み合わせた癌ワクチンの投与を含まない。
【0092】
幾つかの実施形態において、抗CD25抗体は別の治療薬にコンジュゲートしない、例えば抗CD25抗体は、抗体-薬物コンジュゲートの形態をとらない。幾つかの実施形態において、抗CD25抗体はカミダンルマブテシリン(ADCT-301)でない。カミダンルマブテシリンは、ジペプチド切断可能なリンカーを介してピロロベンゾジアゼピン(PBD)二量体にコンジュゲートした、HuMax(商標)-TACとして知られる抗CD25抗体である。
【0093】
本発明の幾つかの実施形態において、抗CD25抗体は単剤療法として投与される。例えば、抗CD25抗体が単剤療法として投与される場合、抗CD25抗体は投与される唯一の治療活性剤であり、例えばAML又はDLBCLを治療するために投与される唯一の治療活性剤である。
【0094】
本発明の第4の態様は、被験体においてAML又はDLBCLを治療する方法であって、該被験体に有効量の抗CD25抗体を投与することを含む、方法を提供する。
【0095】
本発明の第5の態様は、AML又はDLBCLの治療用の薬剤の製造における抗CD25抗体の使用を提供する。本発明のこれらの更なる態様にかかる抗CD25抗体は、第1の態様について記載した抗CD25抗体とすることができる。
【0096】
AMLを治療する方法は、1つ以上の更なる治療薬の投与を更に含み得る。幾つかの実施形態において、方法は、上記のように、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤、癌ワクチン、FLT3阻害剤、BCL-2阻害剤、IDH阻害剤、低メチル化剤、更なる抗体、及びそれらの組合せを投与すること、又はアントラサイクリン-シタラビンレジメンと組み合わせて投与することを更に含む。更なる治療薬は、個別に、同時に又は逐次的に投与され得る。
【0097】
本発明の第6の態様は、AML又はDLBCLの治療用の薬剤の製造における抗CD25抗体と更なる治療薬との使用を提供し、抗CD25抗体及び更なる治療薬は、個別の投与、同時投与又は逐次投与用のものである。
【0098】
本発明の第4、第5及び第6の態様にかかる更なる治療薬は、本発明の第1、第2及び第3の態様について定義することができる。
【0099】
本発明はまた、抗CD25抗体による治療のために急性骨髄性白血病(AML)を患う患者を選択することに関する。本発明の第7の態様は、抗CD25抗体で治療するAMLを患う患者を選択する方法であって、該患者からの試料中の標的細胞におけるCD25発現レベルを測定することを含み、該細胞が1細胞当たりCD25分子約900個を超える発現レベルを有する場合、該患者が抗体による治療に適している、方法を提供する。
【0100】
方法は、患者が抗CD25抗体による治療に適しているかどうかを確認するのに使用することができる。患者由来の標的細胞が、1細胞当たりCD25分子約900個を超える、好ましくは1000個を超える発現レベルを有する場合、その患者は抗CD25抗体による治療に適しているとされる。次いで、方法は、抗CD25抗体を患者に投与する工程を更に含み得る。
【0101】
方法は、機能的なFcR+エフェクター細胞が試料中に存在するかどうかを確認する工程を更に含み得る。
【0102】
方法は、被験体から試料を採取することを更に含み得る。試料は、被験体からの生体組織又は体液試料であってもよい。幾つかの実施形態において、試料は患者からの骨髄試料である。
【0103】
標的細胞におけるCD25発現レベルは、例えば実施例で論じるフローサイトメトリーを含む、当該技術分野で既知の方法によって測定することができる。
【0104】
FLT3遺伝子内縦列重複(FLT3-ITD)突然変異を有するAML患者は、予後不良、及び再発リスクの増加に関連する(Dohner et al, 2017, Blood 129(4) 424-447)。FLT-ITD突然変異は、FLT3の膜近傍ドメイン内の少なくとも3~1000より多いヌクレオチドの縦列重複を伴う。本発明者らは驚くべきことに、野生型のFLT3と比較してFLT3-ITD突然変異を有するAML患者は、高い有病率のCD25発現AML細胞を示すことを更に見出した。したがって、FLT3-ITD突然変異を有する患者は、抗CD25抗体療法の対象となり得る。また、FLT3-ITD突然変異の存在をバイオマーカーとして使用することで、AML患者が抗CD25抗体療法単独で、又はAMLを治療する他の治療薬と組み合わせて利益を受けるかどうかを特定、診断及び/又は予測することができる。
【0105】
したがって、本発明の第8の態様は、抗CD25抗体で治療する急性骨髄性白血病を患う患者を選択する方法であって、該患者からの試料中のFLT3-ITD突然変異の有無を判定することを含み、該突然変異が該試料中に存在する場合、該患者が抗体による治療に適している、方法を含む。方法は、患者が抗CD25抗体療法に特に適しているかどうかを特定するのに使用することができる。
【0106】
患者がFLT3-IRD突然変異を有すると判定される場合、方法は、抗CD25抗体を患者に投与することを更に含み得る。抗CD25抗体は、本発明の他の態様について上記で定義した通りとし得る。
【0107】
本発明の第9の態様は、抗CD25抗体による治療に対するAML患者の応答を予測する方法であって、該患者からの試料中のFLT3-ITD突然変異の有無を判定することを含み、該試料中の該突然変異の存在が、抗CD25抗体による治療に応答するとされる患者であることを指し示す、方法を提供する。
【0108】
本発明の第10の態様は、被験体における急性骨髄性白血病を治療する方法であって、該被験体に有効量の抗CD25抗体を投与することを含み、被験体がFLT3-ITD突然変異の存在を含む、方法を提供する。方法は、AMLを患う患者からの試料中のFLT3-ITD突然変異の存在を判定することを更に含むことができる。
【0109】
患者がAMLと診断される場合、患者は、FLT3-ITD突然変異を有することを特徴とするAMLと診断され得る。Dohner et al, 2017, Blood 129(4) 424-447。患者がFLT3-ITD突然変異の存在を特徴とするAMLと診断される場合、本明細書に記載の抗CD25抗体はAMLの治療に特に有用とされ得る。
【0110】
FLT3-ITD突然変異の有無は、当該技術分野で既知の方法によって判定することができる。例えば、Spencer DH et al, 2013 Journal Molecular Diagnostics, vol. 15(1), 81-83、Engen C et al, 2021, Molecular Oncology, vol. 15, 2300-2317を参照されたい。例えば、突然変異の有無は、DNAシークエンシング及び突然変異スクリーニング技術の群から選択される方法によって判定され得る。
【0111】
試料は、患者からの血液試料又は骨髄試料であり得る。幾つかの実施形態において、予測又は選択する方法はin vitro法である。
【0112】
本発明の第11の態様は、AML患者における再発を予防する又はそのリスクを軽減する方法であって、抗CD25抗体を該患者に投与することを含む、方法を提供する。抗CD25抗体は、本発明の他の態様について上記で定義した通りとし得る。
【0113】
抗CD25抗体は、LSC(白血病幹細胞)及び/又は未熟なAML芽球、又は前駆表現型を有する細胞を標的として、再発の予防又はそのリスクの軽減を助けることができる。
【0114】
方法は、1つ以上の更なる治療薬を投与することを更に含むことができる。1つ以上の更なる治療薬は、本発明の第1、第2及び第3の態様について定義した通りとし得る。一実施形態において、更なる治療薬はFLT3阻害剤である。更なる実施形態において、1つ以上の更なる治療薬は、BCL-2阻害剤と低メチル化剤との組合せ、例えばベネトクラクスとアザシチジンとの組合せである。抗CD25抗体及び更なる治療薬は、個別の投与、同時投与又は逐次投与用のものとし得る。
【0115】
本発明の第12の態様は、BCL-2阻害剤と低メチル化剤との併用治療を受けた患者におけるAMLを治療する方法であって、抗CD25抗体を該患者に投与することを含む、方法を含む。抗CD25抗体は上記の通りとし得る。一実施形態において、BCL-2阻害剤と低メチル化剤との併用治療は、ベネトクラクス-アザシチジンの組合せを含む。
【0116】
本発明者らは、BCL-2阻害剤及び低メチル化剤、例えばベネトクラクスとアザシチジンとの組合せで治療したAML患者が依然として、検出可能なレベルのCD25+AML細胞を示すことを見出した。したがって、個別の投与、同時投与又は逐次投与により抗CD25抗体でAML患者を更に治療することによって、再発及び疾患の進行を防ぐのに役立ち得る。
【0117】
本発明はまた、本発明の上記の更なる態様の方法に使用される抗CD25抗体を提供する。
【0118】
「含む(comprising)」という用語を用いて本明細書において記載される態様及び実施形態は、その範囲内の他の特徴又は工程を含み得る。「含む(comprising)」と記載された態様及び実施形態は、「含む(comprising)」という用語が「~から本質的になる(consisting essentially of)」又は「~からなる(consisting of)」という用語に置き換えられた態様及び実施形態も記載していることも理解される。
【0119】
「~を含む群から選択される(selected from the group comprising)」という語句は、これらが本明細書において存在する場合は、「~からなる群から選択される(selected from the group consisting of)」という語句で置き換えることができ、その逆もまた同様である。
【0120】
また、本願は、文脈上別段の要求がない限り、上記の態様及び上記の実施形態のいずれかの全ての互いの組合せを開示していることも理解される。同様に、本願は、文脈上別段の要求がない限り、好ましい特徴及び/又は任意の特徴の全ての組合せを単独で又は他の態様のいずれかと一緒に開示している。
【0121】
ここで、本発明を、以下の実施例によって、図面を参照して更に説明するが、これらの実施例は、当業者が本発明を実施するのを助けることに役立てることを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図するものでは決してない。
【実施例
【0122】
実施例1
細胞及び抗体
樹立された大細胞型B細胞リンパ腫浮遊細胞株であるPfeiffer腫瘍細胞(ATCC)を、20%FBS(Gibco)、1×Glutamax(Gibco)、1×非必須アミノ酸(Gibco)及び1%ピルビン酸ナトリウム(Gibco)を含有するRPMI 1640培地(Gibco)中で培養した。樹立された急性骨髄性白血病浮遊細胞株であるEOL-1腫瘍細胞(DSMZ)は、10%FBS(Gibco)、1×Glutamax(Gibco)、1×非必須アミノ酸(Gibco)及び1%ピルビン酸ナトリウム(Gibco)を含有するRPMI 1640培地(Gibco)中で培養した。
【0123】
AML22細胞はAML患者に由来し、NSGマウスへの移植によって増殖させた。これらの患者由来の細胞はin vitroで培養することができないため、解凍して、アッセイ当日に直接使用した。
【0124】
in vitro誘導Treg(iTreg)細胞は、iTreg培地中、Dynabeads Human T-Activator CD3/CD28(1×10ビーズ/mL、ビーズ対細胞比1:1、Gibco)で10日間活性化することによってナイーブCD4+T細胞から分化し、該iTreg培地は、10%熱不活化ヒトAB血清(Sigma)、1×Glutamax(Gibco)、N-アセチルシステイン(2mg/mL、Sigma)、1%ピルビン酸ナトリウム(Gibco)、1×HEPES(Gibco)、1×非必須アミノ酸(Gibco)、50μM 2-メルカプトエタノール(Thermo Fisher Scientific)、プロロイキン/アルデスロイキン(300U/mL、Novartis)、10ng/mL組換えヒト形質転換増殖因子-β1(R&D Systems)及び100ng/mLラパマイシン(Sigma)を添加したX-Vivo 15(Lonza)からなるものとした。ナイーブCD4+T細胞は、ヒトナイーブCD4+T細胞分離キットII(Miltenyi Biotec)を用いてヒトPBMCから分離した。iTregの純度は、ヒトCD3、CD4、CD25及びFoxP3共発現(90%超)のフローサイトメトリー解析によって確認した。凍結保存したiTregを解凍し、アッセイ当日に直接使用した。
【0125】
RG6292とも称されるCD25 Mabは、GlymaxX技術を用いて産生された脱フコシル化ヒトIgG1 mAbであり、CD25発現標的細胞のADCCの能力を強化する。ヒトIgG1アイソタイプ対照抗体はBiolegendから購入した。
【0126】
ヒトPBMC及びNK細胞の分離
健康なドナー由来のヒトPBMCを、Histopaque-1077(Sigma-Aldrich)上で標準的な密度勾配分離を用いて、バフィーコート(ヘルシンキ宣言に従ってチューリッヒ献血センター)から分離した。NK細胞は、ヒトNK細胞分離キット(Miltenyi Biotec)を用いて分離し、10%FcS(Gibco)、1×Glutamax(Gibco)及びプロロイキン/アルデスロイキン(100U/mL、Novartis)を含有するRPMI 1640培地(Gibco)中で一晩活性化した。
【0127】
フローサイトメトリーの読み取りによるADCCアッセイ
標的細胞(Pfeiffer、EOL-1、AML22、iTreg)を、アッセイ培地(2%FBS(Gibco)及び1×Glutamax(Gibco)を含有するRPMI 1640(Gibco))中、2:1のエフェクター対標的細胞比(1ウェル当たりNK細胞80000個及び標的細胞40000個)で活性化初代NK細胞と混合させた。化合物(CD25 Mab又はアイソタイプ対照抗体)を、開始最終濃度21μg/mLの7倍希釈系列でU底96ウェルプレート(TPP)に添加した。アッセイプレートをオービタルシェーカー上に300rpmで5分間置き、細胞と抗体とを混合させた。室温で15分間プレインキュベートした後、プレートを37℃/5%COで17時間インキュベートした。
【0128】
細胞を、PBS(BD)で希釈したFSV440UV生存率色素で室温において10分間染色した。細胞をFACSバッファー(0.1%BSAを含有するPBS)で洗浄し、ヒトCD16(3G8)、CD45(HI30)、CD34(8G12)、CD56(5.1H11)、CD3(UCHT1)、CD20(2H7)、CD117(YB5.B8)、CD25(24212)、CD123(9F5)、CD69(FN50)、CD4(A161A1)、CD127(A019D5)に対する蛍光色素コンジュゲート抗体で、FACSバッファー中、4℃で30分間染色した。FACSバッファーによる2回の洗浄工程を行った後、FoxP3転写因子染色セット(eBioscience)を用いて室温で60分間、細胞を固定して透過処理を行った。核内染色については、続いて細胞を、ヒトFoxP3(259D)、Bcl-2(Bcl-2/100)及びKi-67(Ki67)に対して1×PERMバッファー中、室温で45分間染色した。試料を1×PERMバッファーで2回洗浄し、取得のためにFACSバッファーに再懸濁した。フローサイトメトリーに使用した抗体は全て、Biolegend、BD又はR&D Systemsからのものとした。
【0129】
サンプルは5レーザーA5 Symphony機器(BD)で取得した。データ解析はFlowJo v10.6.2及びPrism 8(GraphPad software)により実施した。
【0130】
発光の読み取りによるADCCアッセイ
標的細胞(Pfeiffer、EOL-1、AML22)を、アッセイ培地(2%FBS(Gibco)及び1×Glutamax(Gibco)を含有するRPMI 1640(Gibco))中、2:1のエフェクター対標的細胞比(1ウェル当たりNK細胞20000個及び標的細胞10000個)で活性化初代NK細胞と混合させた。化合物(CD25 Mab又はアイソタイプ対照抗体)を、開始最終濃度21μg/mLの7倍希釈系列で白色384ウェル平底組織培養プレート(Falcon)に添加した。アッセイプレートをオービタルシェーカー上に300rpmで5分間置き、細胞と抗体とを混合させた。室温で15分間プレインキュベートした後、プレートを37℃/5%COで16~20時間インキュベートした。
【0131】
アッセイプレートは、蓋をせずに室温でおよそ15分間平衡化した。細胞傷害性は、CytoTox-Glo(商標)細胞傷害アッセイ(Promega)を製造業者の指示通りに用いて測定した。簡潔に言うと、再構成したAAF-Glo(商標)試薬を1倍~4倍希釈で各ウェルに添加した(最終容量40μl/ウェル)。アッセイプレートは室温で15分~60分間インキュベートし、続いてTecanのSpark 10M発光プレートリーダーを用いて発光測定を行った(500msの積分時間)。データ解析はPrism 8(GraphPad software)により実施した。
【0132】
フローサイトメトリーによるCD25密度の定量化
BD quantibrite(商標)ビーズを使用して、PE:mAb比が1:1であれば、1細胞当たりのPE分子数に相当する、1細胞当たりに結合する抗体(ABC)を推定した。PEコンジュゲート抗ヒトCD25抗体の一価結合が想定される場合、CD25分子数は細胞表面上のPE分子数と等価である。
【0133】
細胞アッセイ試料及びビーズは、5レーザーSymphony機器(BD)の同様の機器設定により取得した。フローサイトメトリーデータの解析は、FlowJo v10.6(Tree Star)及びPrism 8(GraphPad software)において実施した。Log10 蛍光に対する1ビーズ当たりのLog10 PE分子の線形回帰、及び1細胞当たりのPE分子数の内挿は、製造業者の指示通りに求めた。
【0134】
CD25密度は4つのCD25発現標的細胞で定量化した。
【0135】
結果
CD25発現レベルが低いAML細胞を死滅させるCD25 Mabの能力を評価するために、様々なCD25発現レベルを有する標的細胞と比較する抗体依存性細胞傷害(ADCC)アッセイを実施した。CD25密度(1細胞当たりの分子数)は、BD quantibrite(商標)ビーズを用いて定量化した。抗体の一価結合が想定される場合、CD25分子数は細胞表面上のPE分子数と等価である。
【0136】
図1に示すように、iTreg及びDLBCL細胞株Pfeifferは、比較的高いレベルのCD25を発現するが、AML細胞株EOL-1及び患者由来のAML22細胞は、それらの表面上に少数のCD25受容体しか保持しない。これらの結果は、ADCCアッセイ培地中、標的細胞単独でインキュベートして17時間後に得られた。
【0137】
CD25 Mabは、結合活性によりCD25に結合するという特徴があり、その結果、CD25発現レベルが高い細胞の死滅を優先的に引き起こすという事実にもかかわらず(非特許文献3)、EOL-1及びAML-22を標的細胞とするCD25 MabのADCC能力は、CD25高標的細胞のものと同等であった。CD25 Mabと共インキュベートして17時間後に、80%より多くの標的細胞がNK細胞によって死滅した(図2のA)のに対し、アイソタイプ対照抗体では特異的な死滅が観察されなかった。最も高いアイソタイプ対照抗体濃度(21μg/mL)で観察されたEOL-1細胞株の死滅の増加は、おそらく非特異的活性に起因すると考えられる。試験した2つの細胞株に関するEC50値は類似していたが(約0.03μg/mL)、化合物の非存在下でのベースラインの死滅は異なっていた。事実、EOL-1細胞の20%と比較して、AML-22の40%~50%が活性化NK細胞によって死滅した。AML-22細胞は、in vitroで培養すると生存率が急激に低下する初代細胞であり、本発明者らは、AML-22細胞が、NK細胞を介した死滅を受けやすくする分子を発現し得ると仮定している。
【0138】
17時間のADCCアッセイ終了時に生存していた標的細胞上のCD25密度(図2のB)も評価した。0.4μg/mLを超えるCD25 Mab濃度では、標的細胞が、1細胞当たりCD25分子1000個~1500個を発現することが見出された。その上、1細胞当たりそれぞれ受容体約800個及び400個のCD25発現レベルを有する末梢及び腫瘍内のヒトにおける従来のCD4及びCD8 T細胞は、CD25 Mabによる枯渇の標的ではないようである(データは示さず)。したがって、これは、CD25 Mabによる死滅を引き起こすのに必要とされる、標的細胞におけるCD25の発現の閾値が、1細胞当たり受容体およそ1000個である可能性が高いことを指し示している。初代ヒトAML骨髄試料(CD25+AML芽球及びTreg)中のCD25密度は1000~4000であるため(データは示さず)、これらの細胞の枯渇が見られると予想される。
【0139】
CD56dim NK細胞上に発現するFcγRIIIa(CD16)受容体への抗体Fc部分の結合によるターゲットエンゲージメント(target engagement)後のNK細胞における機能性マーカーの発現を調査した。NK細胞のこのサブセットは、ヒト末梢血中で最も一般的な集団(NK細胞の90%)を表し、CD56brightCD16neg NK細胞サブセットとは対照的に、強力なADCCメディエーターである。
【0140】
低CD25密度のEOL-1及びAML-22標的細胞との結合後のNK細胞では、CD16の適度なダウンレギュレーションが観察された(図3のA)。対照的に、CD16発現は、エフェクター細胞を高CD25密度のPfeiffer及びiTreg標的細胞と共インキュベートした後、CD25 Mab用量依存的に大きく減少した(図3のB)。したがって、結果は、CD16のダウンレギュレーションの強さが、標的細胞上のCD25密度と相関関係にあることを指し示している。
【0141】
加えて、NK細胞の機能性は、活性化マーカーCD69及びCD25のアップレギュレーションによって測定することができる。CD69の発現は、試験した全ての標的細胞においてCD25 Mabによる処理後に用量依存性的に増加した。AML22標的細胞の高いベースラインの死滅の観察と同様に、CD69のベースライン発現も増加した。事実、薬物化合物の非存在下でAML22と共インキュベートした場合、NK細胞の45%~60%がCD69を発現した(図4のA)。まとめると、これらの結果は、AML22標的細胞が受容体を発現するか、又は強いNK細胞ベースライン活性化レベルを誘導する因子を分泌することを示唆している。他方、他の3つの標的細胞と接触させた場合、ベースラインでNK細胞の20%のみがCD69を発現し、CD25 Mabによる処理後、発現は最大80%まで増加した(図4のB)。
【0142】
NK細胞におけるCD25のアップレギュレーションも観察したところ、アップレギュレーションの強さは、標的細胞上のCD25密度に比例した。図5のAに示すように、低密度のCD25+標的細胞(AML22及びEOL-1)と共インキュベートしたNK細胞のCD25の発現は、緩やかな20%の増大を示した。対照的に、CD25 Mabで処理したNK細胞の最大60%が、高CD25密度の標的細胞に曝した場合にCD25を発現した(図5のB)。注目すべきことに、CD25の発現の増加にもかかわらず、NK細胞は影響を受けず、フラトリサイド(fratricide)の兆候がないことを指し示している(データは示さず)。
【0143】
フローサイトメトリーによって得られた結果の信頼性を高めるために、4人のNK細胞ドナー及び発光の読み取り値を使用してADCCアッセイを実施した(CytoTox-Glo(商標)細胞傷害アッセイ)。図6のAに示すように、3つの標的細胞(AML22、Pfeiffer、EOL-1)で一貫した同等の死滅活性が観察された。用量-応答曲線から算出したEC50値は、フローサイトメトリーベースのADCC読み取り値と発光ベースのADCC読み取り値との間で同様の結果が得られたことを実証した。例えば、EOL-1標的細胞のEC50値は、CytoTox-Glo(商標)を使用すると0.035μg/mL(±0.011 SEM)、フローサイトメトリーによれば0.030(±0.007 SEM)μg/mLであった(図6のB)。CD25 Mabは、1ウェル当たり受容体1500個~38000個の範囲をとるCD25密度で標的細胞全体にわたって強力な死滅活性を実証した(図6のC)。ヒト試料中のCD25密度はこの発現範囲内にあるため(データは示さず)、本発明者らは、機能的なFcR+エフェクター細胞が存在する限り、ヒトPBMC並びにAML患者及びDLBCL患者の腫瘍における標的細胞の効率的な死滅を期待している。
【0144】
これらの実験は、CD25+AML細胞及びDLBCL細胞の直接的な死滅を示している。抗体は、広範囲のCD25発現レベルでCD25+悪性細胞を枯渇させることができた。ヒト試料中における発現レベルはこの範囲内にあり、Tregの枯渇によるCD25 Mabの間接的な効果が既に実証されているため、本発明者らは、CD25 Mabの二重の作用機序がAML及びDLBCLの治療に関与すると予想している。CD25 Mabは抑制性Tregを枯渇させ、AML及びDLBCLのCD25+悪性細胞に対して直接的な細胞傷害性効果を有し得る。
【0145】
実施例2
一次ヒト試料
AML患者のヒト末梢血単核細胞(PBMC)及び骨髄単核細胞(BMMC)は、Discovery Life Sciencesから購入した。試料は、適切な治験審査委員会(IRB)又は倫理委員会の承認の下で収集した。標準的な密度勾配遠心分離を使用して、健康なドナー(HD)のPBMCをバフィーコート(チューリッヒ献血センター)から分離した。全てのヒト試料は、ヘルシンキ宣言に従って、HD又は書面によるインフォームドコンセントを提供した患者から収集した。
【0146】
NK細胞の分離
NK細胞は、ヒトNK細胞分離キット(Miltenyi Biotec)を用いて分離し、10%FcS(Gibco)、1×Glutamax(Gibco)及びプロロイキン/アルデスロイキン(100U/mL、Novartis)を含有するRPMI 1640培地(Gibco)中で一晩活性化した。
【0147】
ADCCアッセイ
CD25発現標的細胞を含有するEOL-1陽性対照細胞株又はAML患者試料を、活性化初代NK細胞と、アッセイ培地(2%FBS(Gibco)及び1×Glutamax(Gibco)を含有するRPMI 1640(Gibco))中、2対1のエフェクター対標的細胞比(1ウェル当たりNK細胞80000個及び標的細胞40000個)で混合させた。化合物(CD25 Mab(RG6292)又はアイソタイプ対照抗体(ヒトIgG1アイソタイプ対照抗体、Biolegend、QA16A12))を、10μg/mLの濃度でU底96ウェルプレート(TPP)に添加した。アッセイプレートをオービタルシェーカー上に300rpmで5分間置き、細胞と抗体とを混合させた。室温で15分間プレインキュベートした後、試料を37℃/5%COで20時間インキュベートした。フローサイトメトリーの読み取りは、以下のセクションで記載するように実施した。Precision Count Beads(商標)(Biolegend)をサンプルの取得前に添加し、同種異系エフェクターNK細胞及び化合物の非存在下における標的細胞の数に対して正規化した絶対数(細胞数/μl)に基づいて死滅活性を算出した。
【0148】
結果
EOL-1細胞株及びAML22細胞に対するCD25 Mabの細胞傷害性を実証したので(実施例1)、本発明者らは、AML患者材料を用いたその機能活性を評価しようと努めた。この目的のために、本発明者らは、CD25+AML細胞の度数が最も高い4人の患者を選択し、ex vivo ADCCアッセイを実施した。本発明者らは、飽和抗体濃度で全ての試料においてCD25+AML細胞を特異的に死滅させることを示した(図7の(A))。その上、本発明者らは、同じ実験構成でTregの死滅を評価したところ、AML及びHD Tregの両方がCD25 Mab処理により効率的に枯渇することを見出した(図7の(B))。まとめると、これらの結果は、HD NK細胞を使用したAML患者試料におけるCD25 Mabの二重の作用機序の概念実証を提示している。
【0149】
実施例3
フローサイトメトリーパネルの設計、染色及び取得
本発明者らは、パネル設計及び最適な検証について最近のガイドライン(Liechti et al., 2021, Nat Immunol 22, 1190-1197)に従って進行した。注目すべきことに、全ての抗体を滴定し、蛍光マイナスワン(FMO)対照及び生体対照(1つ又は一連のマーカーを欠く細胞集団)の組合せを利用してパネルを検証した。
【0150】
凍結保存したAML患者及びHD試料を、10%FBS(Gibco)を含有するDMEM/F-12培地(Gibco)中で解凍した。細胞をHuman TruStain FcX(Biolegend)とともにインキュベートし、PBSで希釈したZombie NIR(Biolegend)生存率色素で染色した。次に、FACSバッファー(0.1%BSAを含有するPBS)及びBrilliant Stainバッファー(BD)を含有する染色バッファー中、表面抗原(HLA-DR(G46-6)、CD16(3G8)、CD45(HI30)、CD33(P67.6)、CD45RA(HI100)、CD34(8G12)、CD56(5.1H11)、CD3(UCHT1)、CD19(HIB19)、CD117(YB5.B8)、CD25(24212)、CD123(9F5)、CD69(FN50)、CD4(A161A1)、CD8a(RPA-T8)、CD71(M-A712)、CD127(A019D5)、CD14、CD38(HIT2)、CD235A(HIR2)、CLEC12A(50C1)、PD-1(EH12.1)、TIM3(7D3))に対する蛍光色素コンジュゲート抗体で細胞を染色した。FoxP3転写因子染色セット(eBioscience)を使用して細胞を固定及び透過処理し、続いて1×PERMバッファー中、細胞内抗原(FoxP3(259D)、Bcl-2(Bcl-2/100)及びKi-67(Ki67))に対して染色した。サンプルは5レーザーAuroraスペクトルサイトメーター(Cytek)で取得した。
【0151】
前処理工程(コンペンセーションマトリックスの適用、各単一生細胞(live single cells)に対するゲーティング)は、SpectroFlo(商標)ソフトウェアを使用して実施した。ミックスされていないファイルは個別にチェックし、必要に応じて統合ソフトウェアを使用して手動の漏れ込み(spillover)補正を調整した。注目すべきことに、わずかな修正しか必要なかった。全ての品質管理工程を通過したFCSファイルのイベントを、Rによる更なる計算分析のためにエクスポートした。
【0152】
コンピューターフローサイトメトリーデータ解析
本発明者らは、患者中心のアプローチを使用して、CD25+AMLクラスター及びTregを特定し、以下に記載するコンピューター解析ワークフローを各患者に個別に適用した。FCSファイルをRにロードし、flowCore Rパッケージのビネットの記載通りに処理した。Logicle変換を発現マトリックスに適用した。各マーカーの密度プロットを視覚的に検査し、従来の手動ゲーティングによって割り当てられた陽性カットオフ値と同様に、陽性及び陰性の発現の定量化を可能にする閾値を規定した。
【0153】
次元削減は、uwot Rパッケージの一部として均一多様体近似及び射影(UMAP)アルゴリズムを使用して実施した。教師なし(Unsupervised)クラスタリングを高次元空間でPhenoGraphを使用して実施し(Levine et al., 2015, Cell 162, 184-197)、その結果はUMAPプロット上でカラーオーバーレイとして視覚化した。生物学的に意味のある細胞集団に達するために、アルゴリズムによって生成されたクラスターをマージし、マーカー発現に基づいて手動でアノテーションを行った。下流の分析では、細胞存在量、マーカー発現、及び適切な場合には陽性細胞の割合が報告された。CD45発現陰性の細胞及びパネル内に存在する他の全てのマーカー(非免疫細胞)、並びに非常に小さいクラスター(0.05%未満)をフィルタリングして除去した。
【0154】
コンピューター解析によって特定されたCD25+細胞集団は、手動ゲーティングによって検証した。図はPrism v8.4.2(GraphPad Software)を用いて作成した。
【0155】
結果
FLT3遺伝子における遺伝子内縦列重複(ITD)はAML患者の約25%に存在し、予後不良及び再発リスクの増加に関連する(Dohner et al., 2010, Blood 115, 453-474)。
【0156】
以前に他の人によって報告されているように(Angelini et al., 2015, Clin Cancer Res 21, 3977-3985、非特許文献7)、AML患者試料の高次元フローサイトメトリー解析を使用して、本発明者らは、FLT3-ITD突然変異の存在が、CD25+AML細胞の有病率の強力な増加をもたらすことを実証した(データは示さず)。
【0157】
その上、本発明者らは、BCL-2が未熟な表現型を有するCD25+AMLクラスターで高度に発現されることを観察した(データは示さず)。この所見は、白血病幹細胞コンパートメントにおいて高いBCL-2発現を示した先の報告と一致する(Lagadinou et al., 2013、Cell Stem Cell 12, 329-341、Renders et al., 2021, Blood 138, 3469-3469)。興味深いことに、低メチル化剤とベネトクラクスとを組み合わせた(HMA-VEN)治療を受けた4人の患者全員においてCD25+AMLクラスターが検出された。
【0158】
したがって、これらの結果は、抗CD25抗体によるFLT3-ITD突然変異を有するAML患者の治療を裏付けるものである。これらの結果はまた、AMLの治療において、特に再発リスクを軽減するために、例えばFLT3阻害剤又はBCL-2阻害剤、例えばベネトクラクスとの併用治療として、抗CD25抗体を使用することも裏付ける。
【0159】
上記の明細書において挙げられる全ての出版物は、引用することにより本明細書の一部をなす。本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の記載された方法及びシステムに様々な変更及び変動を加えられることは、当業者には明らかであろう。本発明を、特定の好ましい実施形態に関連して記載してきたが、特許請求の範囲に記載される本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、分子生物学、細胞免疫学、又は関連分野における当業者に明らかである本発明の実施について記載された様式の様々な変更は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0160】
本願において参照される配列の概要を以下の表に提示する。
【0161】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2024533119000001.xml
【国際調査報告】