(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】熱調節ユニット、基板ハンドリングデバイス、及びリソグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514126
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2022072267
(87)【国際公開番号】W WO2023041251
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】クレーマー,ジス
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197CD02
2H197CD12
2H197CD44
2H197CD50
2H197DB18
2H197DB21
2H197DB24
2H197DB34
2H197GA17
2H197GA21
2H197HA03
2H197JA12
2H197JA17
(57)【要約】
本発明は基板を熱的に調節するための熱調節ユニットを提供し、その熱調節ユニットは、上面と、上面に設けられた複数のガスインレット及びガスアウトレットと、複数のガスインレット及びガスアウトレットに連結された複数の圧力弁であって、各々が、熱調節ユニットの上面にわたって空間圧力分布を生成するために、使用中に、圧力供給部に連結されるように構成されている、複数の圧力弁と、使用中に、空間圧力分布を生成するべく複数の圧力弁を制御するように構成された制御デバイスと、を備えており、制御デバイスは、調節される基板の形状を表す基板形状データを受信するように構成されており、制御デバイスは、基板形状データに基づいて空間圧力分布を適合させるべく複数の圧力弁を制御するように構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を熱的に調節するための熱調節ユニットであって、
上面と、
前記上面に設けられた複数のガスインレット及びガスアウトレットと、
前記複数のガスインレット及びガスアウトレットに連結された複数の圧力弁であって、各々が、前記熱調節ユニットの前記上面にわたって空間圧力分布を生成するために、使用中に、圧力供給部に連結されるように構成されている、複数の圧力弁と、
使用中に、前記空間圧力分布を生成するべく前記複数の圧力弁を制御するように構成された制御デバイスと、
を備え、
前記制御デバイスは、調節される前記基板の形状を表す基板形状データを受信するように構成されており、前記制御デバイスは、前記基板形状データに基づいて前記空間圧力分布を適合させるべく前記複数の圧力弁を制御するように構成されている、熱調節ユニット。
【請求項2】
前記空間圧力分布は前記基板のための真空予圧ガスベアリングを提供する、請求項1に記載の熱調節ユニット。
【請求項3】
前記空間圧力分布は、複数の同心環状圧力領域を備える、請求項1又は2のいずれかに記載の熱調節ユニット。
【請求項4】
前記複数のガスアウトレットは1つ以上の同心円に沿って配置されている、請求項1から3のいずれかに記載の熱調節ユニット。
【請求項5】
前記複数のガスインレットは1つ以上の同心円に沿って配置されている、請求項1から4のいずれかに記載の熱調節ユニット。
【請求項6】
前記上面は複数の溝を備え、各溝は1つ以上のガスインレット又は1つ以上のガスアウトレットを備えている、請求項1から5のいずれかに記載の熱調節ユニット。
【請求項7】
前記複数の溝は円弧形状又は円形状である、請求項6に記載の熱調節ユニット。
【請求項8】
前記基板形状データは反りデータを備える、請求項1から7のいずれかに記載の熱調節ユニット。
【請求項9】
前記制御デバイスは、前記反りデータに基づいて前記複数の圧力弁の制御シーケンス及び/又は制御設定点を決定するように構成されている、請求項8に記載の熱調節ユニット。
【請求項10】
前記制御シーケンスは、前記空間圧力分布を確立するために前記圧力弁が作動する順序を表す、請求項9に記載の熱調節ユニット。
【請求項11】
少なくとも1自由度を有するサポートチャックを更に備える、請求項1から10のいずれかに記載の熱調節ユニット。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の熱調節ユニットを使用する方法であって、
前記複数の圧力弁の各々を圧力供給部に連結するステップと、
前記制御デバイスにおいて、調節される前記基板の形状を表す基板形状データを受信するステップと、
前記複数の圧力弁の各々への正圧、負圧、及び/又は周囲圧力の前記供給を、前記熱調節ユニットの前記上面にわたって空間圧力分布を生成するように制御するステップであって、前記空間圧力分布は前記基板形状データに基づく、制御するステップと、
を備える方法。
【請求項13】
前記生成された空間圧力分布で前記基板を調節するステップと、
前記調節された基板をクランプするステップと、
を更に備える、請求項12に記載の熱調節ユニットを使用する方法。
【請求項14】
請求項1から11のいずれかに記載の熱調節ユニットを備える基板ハンドリングデバイス。
【請求項15】
基板を受けるための入口ポートと、前記基板を前記熱調節ユニット上に位置決めするように構成されたハンドリングロボットとを更に備える、請求項14に記載の基板ハンドリングデバイス。
【請求項16】
請求項1から11のいずれかに記載の熱調節ユニットを備える基板サポート。
【請求項17】
前記複数の圧力弁の各々を圧力供給部に連結するステップと、
前記制御デバイスにおいて、調節される前記基板の形状を表す基板形状データを受信するステップと、
前記複数の圧力弁の各々への正圧、負圧、及び/又は周囲圧力の前記供給を、前記熱調節ユニットの前記上面にわたって空間圧力分布を生成するように制御するステップであって、前記空間圧力分布は前記基板形状データに基づく、制御するステップと、
を備える、請求項16に記載の基板サポートを使用する方法。
【請求項18】
前記生成された空間圧力分布で前記基板を調節するステップと、
前記調節された基板をクランプするステップと、
を更に備える、請求項17に記載の基板サポートを使用する方法。
【請求項19】
請求項1から11のいずれかに記載の熱調節ユニット、請求項14から15のいずれかに記載の基板ハンドリングデバイス、又は請求項16に記載の基板サポートを備える、リソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は2021年9月16日に提出された欧州出願第21197020.7号の優先権を主張するものであり、同出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、基板ハンドリングデバイス、基板サポート、又はリソグラフィ装置において使用される温度調節ユニットと、その温度調節ユニットの使用方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、基板に所望のパターンを適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造において使用可能である。リソグラフィ装置は、例えばパターニングデバイス(例えばマスク)のパターン(「設計レイアウト」又は「設計」と称されることも多い)を、基板(例えばウェーハ)上に提供された放射感応性材料(レジスト)層に投影し得る。
【0004】
[0004] 半導体製造プロセスが進み続けるにつれ、回路素子の寸法は継続的に縮小されてきたが、その一方で、デバイス毎のトランジスタなどの機能素子の量は、「ムーアの法則」と通称される傾向に従って、数十年にわたり着実に増加している。ムーアの法則に対応するために、半導体産業はますます小さなフィーチャを作り出すことを可能にする技術を追求している。基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を用い得る。この放射の波長が、基板上にパターン形成されるフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用されている典型的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm及び13.5nmである。例えば193nmの波長を有する放射線を使用するリソグラフィ装置よりも小さなフィーチャを基板上に形成するためには、4nm~20nmの範囲内、例えば6.7nm又は13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置が用いられ得る。
【0005】
[0005] 基板上のパターンの正確な位置決めを確実にするためには、基板温度又は温度分布が正確にわかっており且つ所定の境界内にあることを確実にするのが重要である。これを確実にするために、基板は、典型的には、基板上へのパターンの適用の前に熱的に調節される。現在半導体デバイスに適用されている基板は、既知の調節システムを使用すると適切に調節されない場合があることが観察されている。
【発明の概要】
【0006】
[0006] 本発明の目的は、基板、特にリソグラフィ装置において適用される基板の改善された熱調節を可能にすることである。
【0007】
[0007] 本発明の一態様によれば、
上面と、
上面に設けられた複数のガスインレット及びガスアウトレットと、
複数のガスインレット及びガスアウトレットに連結された複数の圧力弁であって、各々が、使用中に、圧力供給部に連結されて熱調節ユニットの上面にわたり空間圧力分布を生成するように構成されている、複数の圧力弁と、
使用中に、空間圧力分布を生成するべく複数の圧力弁を制御するように構成されている制御デバイスと、
を備え、
制御デバイスは、調節される基板の形状を表す基板形状データを受信するように構成されており、制御デバイスは、基板形状データに基づいて空間圧力分布を適合させるべく複数の圧力弁を制御するように構成されている、
基板を熱的に調節するための熱調節ユニットが提供される。
【0008】
[0008] 本発明の一態様によれば、本発明による熱調節ユニットの使用方法が提供される。
【0009】
[0009] 本発明の別の一態様によれば、本発明による熱調節ユニットを備える基板ハンドリングデバイスが提供される。
【0010】
[0010] 本発明の別の一態様によれば、本発明による熱調節ユニットを備える基板サポートが提供される。
【0011】
[0011] 本発明の別の一態様によれば、本発明による基板サポートの使用方法が提供される。
【0012】
[0012] 本発明の別の一態様によれば、本発明による熱調節ユニット、基板ハンドリングデバイス、又は基板サポートを備える、リソグラフィ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
[0013] 本発明の実施形態を、添付の概略図を参照して、単なる例示として以下に説明する。
【0014】
【
図2】
図1のリソグラフィ装置の一部の詳細図を図示する。
【
図4】本発明の一実施形態による熱調節ユニットを概略的に図示する。
【
図5】本発明の一実施形態による別の熱調節ユニットを概略的に図示する。
【
図6(a)】反った基板を調節するために本発明による熱調節ユニットによって提供され得る空間圧力分布を概略的に図示する。
【
図6(b)】反った基板を調節するために本発明による熱調節ユニットによって提供され得る空間圧力分布を概略的に図示する。
【
図6(c)】反った基板を調節するために本発明による熱調節ユニットによって提供され得る空間圧力分布を概略的に図示する。
【
図7】本発明による基板ハンドリングデバイスを概略的に図示する。
【
図8】本発明の一実施形態による別の熱調節ユニットを概略的に図示する。
【
図9】本発明の一実施形態による別の熱調節ユニットを概略的に図示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0014] 本文献では、「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外線(例えば、波長が365nm、248nm、193nm、157nm又は126nmの波長)及びEUV(極端紫外線放射、例えば、約5nm~100nmの範囲の波長を有する)を含む、すべてのタイプの電磁放射を包含するために使用される。
【0016】
[0015] 「レチクル」、「マスク」、又は「パターニングデバイス」という用語は、本文で用いる場合、基板のターゲット部分に生成されるパターンに対応して、入来する放射ビームにパターン付き断面を与えるため使用できる汎用パターニングデバイスを指すものとして広義に解釈され得る。また、この文脈において「ライトバルブ」という用語も使用できる。古典的なマスク(透過型又は反射型マスク、バイナリマスク、位相シフトマスク、ハイブリッドマスク等)以外に、他のそのようなパターニングデバイスの例は、プログラマブルミラーアレイ及びプログラマブルLCDアレイを含む。
【0017】
[0016]
図1は、リソグラフィ装置LAを概略的に示す。リソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えばUV放射、DUV放射、又はEUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータとも呼ばれる)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに連結されたマスクサポート(例えばマスクテーブル)MTと、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、特定のパラメータに従って基板サポートを正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに連結された基板サポート(例えばウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0018】
[0017] 動作中、照明システムILは、例えばビームデリバリシステムBDを介して放射源SOから放射ビームを受ける。照明システムILは、放射を誘導し、整形し、及び/又は制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、及び/又はその他のタイプの光学コンポーネント、又はそれらの任意の組み合わせなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。イルミネータILを使用して放射ビームBを調節し、パターニングデバイスMAの平面において、その断面にわたって所望の空間及び角度強度分布が得られるようにしてもよい。
【0019】
[0018] 本明細書で用いられる「投影システム」PSという用語は、使用する露光放射、及び/又は液浸液の使用や真空の使用のような他のファクタに合わせて適宜、屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、アナモルフィック光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システム、及び/又は静電気光学システム、又はそれらの任意の組み合わせを含む様々なタイプの投影システムを包含するものとして広義に解釈するべきである。本明細書で「投影レンズ」という用語が使用される場合、これは更に一般的な「投影システム」PSという用語と同義と見なすことができる。
【0020】
[0019] リソグラフィ装置LAは、投影システムPSと基板Wとの間の空間を充填するように、基板の少なくとも一部を例えば水のような比較的高い屈折率を有する液体で覆うことができるタイプでもよい。これは液浸リソグラフィとも呼ばれる。液浸技法に関する更なる情報は、参照により本願に含まれる米国特許第6952253号に与えられている。
【0021】
[0020] リソグラフィ装置LAは、2つ以上の基板サポートWTを有するタイプである場合もある(「デュアルステージ」とも呼ばれる)。こうした「マルチステージ」機械において、基板サポートWTを並行して使用するか、及び/又は、一方の基板サポートWT上の基板Wにパターンを露光するためこの基板を用いている間に、他方の基板サポートWT上に配置された基板Wに対して基板Wの以降の露光の準備ステップを実行することができる。
【0022】
[0021] 基板サポートWTに加えて、リソグラフィ装置LAは測定ステージを含むことができる。測定ステージは、センサ及び/又はクリーニングデバイスを保持するように配置されている。センサは、投影システムPSの特性又は放射ビームBの特性を測定するように配置できる。測定ステージは複数のセンサを保持することができる。クリーニングデバイスは、例えば投影システムPSの一部又は液浸液を提供するシステムの一部のような、リソグラフィ装置の一部をクリーニングするように配置できる。基板サポートWTが投影システムPSから離れている場合、測定ステージは投影システムPSの下方で移動することができる。
【0023】
[0022] 動作中、放射ビームBは、マスクサポートMT上に保持されている、例えばマスクのようなパターニングデバイスMAに入射し、パターニングデバイスMA上に存在するパターン(設計レイアウト)によってパターンが付与される。マスクMAを横断した放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSはビームを基板Wのターゲット部分Cに集束させる。第2のポジショナPW及び位置測定システムIFを用いて、例えば、放射ビームBの経路内の集束し位置合わせした位置に様々なターゲット部分Cを位置決めするように、基板サポートWTを正確に移動させることができる。同様に、第1のポジショナPMと、場合によっては別の位置センサ(
図1には明示的に図示されていない)を用いて、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。パターニングデバイスMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いて位置合わせすることができる。図示されている基板アライメントマークP1、P2は専用のターゲット部分を占有するが、それらをターゲット部分間の空間に位置付けることも可能である。基板アライメントマークP1、P2は、これらがターゲット部分C間に位置付けられている場合、スクライブラインアライメントマークとして知られている。
【0024】
[0023] 本発明を明確にするために、デカルト座標系が用いられる。デカルト座標系は、3つの軸、すなわちx軸、y軸、及びz軸を有する。3つの軸のそれぞれは、他の2つの軸と直交する。x軸を中心とする回転は、Rx回転と呼ばれる。y軸を中心とする回転は、Ry回転と呼ばれる。z軸を中心とする回転は、Rz回転と呼ばれる。x軸及びy軸は水平面を定義するのに対して、z軸は垂直方向にある。デカルト座標系は本発明を限定しているのではなく、明確化のためにのみ用いられる。代わりに、円筒座標系などの別の座標系を用いて本発明を明確にすることもある。デカルト座標系の向きは、例えばz軸が水平面に沿った成分を有するように異なることがある。
【0025】
[0024]
図2は、
図1のリソグラフィ装置LAの一部のより詳細な図を示す。リソグラフィ装置LAは、基礎フレームBFと、バランスマスBMと、メトロロジフレームMFと、振動絶縁システムISとを備え得る。メトロロジフレームMFは投影システムPSを支持する。また、メトロロジフレームMFは位置測定システムPMSの一部を支持し得る。メトロロジフレームMFは、振動絶縁システムISを介して基礎フレームBFによって支持されている。振動絶縁システムISは、振動が基礎フレームBFからメトロロジフレームMFへと伝搬するのを防止又は低減するために配置される。
【0026】
[0025] 第2のポジショナPWは、基板サポートWTとバランスマスBMとの間に駆動力を提供することによって基板サポートWTを加速するために配置される。駆動力は基板サポートWTを所望の方向に加速させる。運動量の保存により、駆動力はバランスマスBMにも同じ規模で、しかし所望の方向とは反対の方向で、印加される。典型的には、バランスマスBMの質量は、第2のポジショナPW及び基板サポートWTの移動部の質量よりも有意に大きい。
【0027】
[0026] 一実施形態においては、第2のポジショナPWはバランスマスBMによって支持される。例えば、その場合第2のポジショナPWは、基板サポートWTをバランスマスBMの上方に浮揚させるための平面モータを備える。別の一実施形態においては、第2のポジショナPWは基礎フレームBFによって支持される。例えば、その場合第2のポジショナPWはリニアモータを備え、その場合第2のポジショナPWは基板サポートWTを基礎フレームBFの上方に浮揚させるためのガスベアリングのようなベアリングを備える。
【0028】
[0027] 位置測定システムPMSは、基板サポートWTの位置を判定するのに適した任意のタイプのセンサを備えていてもよい。位置測定システムPMSは、マスクサポートMTの位置を判定するのに適した任意のタイプのセンサを備えていてもよい。センサは、干渉計又はエンコーダなどの光学センサであってもよい。位置測定システムPMSは、干渉計とエンコーダとの複合システムを備えていてもよい。センサは、磁気センサ、静電容量センサ、又は誘導センサなど、別のタイプのセンサであってもよい。位置測定システムPMSは、基準、例えばメトロロジフレームMF又は投影システムPSに対する位置を判定してもよい。位置測定システムPMSは、位置を測定することによって又は速度もしくは加速など位置の時間微分を測定することによって、基板テーブルWT及び/又はマスクサポートMTの位置を判定してもよい。
【0029】
[0028] 位置測定システムPMSはエンコーダシステムを備えていてもよい。エンコーダシステムは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、2006年9月7日に提出された米国特許出願第2007/0058173A1号から既知である。エンコーダシステムは、エンコーダヘッドと、格子と、センサとを備える。エンコーダシステムは一次放射ビーム及び二次放射ビームを受光し得る。一次放射ビーム並びに二次放射ビームはいずれも、同じ放射ビーム、すなわち原放射ビームに由来し得る。一次放射ビームと二次放射ビームとのうち少なくとも一方は、原放射ビームを格子で回折することによって生み出される。一次放射ビームと二次放射ビームとの両方が原放射ビームを格子で回折することによって生み出される場合には、一次放射ビームは二次放射ビームとは異なる回折次数を有する必要がある。異なる回折次数とは、例えば、+1次、-1次、+2次、及び-2次である。エンコーダシステムは一次放射ビームと二次放射ビームとを光学的に合成して合成放射ビームにする。エンコーダヘッド内のセンサが、合成放射ビームの位相又は位相差を判定する。センサは、その位相又は位相差に基づいて信号を生成する。信号は、格子に対するエンコーダヘッドの位置を表す。エンコーダヘッドと格子とのうち一方は、基板構造WT上に配置されてもよい。エンコーダヘッドと格子とのうち他方は、メトロロジフレームMF又は基礎フレームBF上に配置されてもよい。例えば、複数のエンコーダヘッドがメトロロジフレームMF上に配置され、その一方で1つの格子が基板サポートWTの上面に配置される。別の一例においては、1つの格子が基板サポートWTの底面に配置され、1つのエンコーダヘッドが基板サポートWTの下方に配置される。
【0030】
[0029] 位置測定システムPMSは干渉計システムを備えていてもよい。干渉計システムは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、1998年7月13日に提出された米国特許第6,020,964号から既知である。干渉計システムは、ビームスプリッタと、ミラーと、基準ミラーと、センサとを備え得る。放射ビームは、ビームスプリッタによって、基準ビームと測定ビームとに分割される。測定ビームはミラーへ伝搬し、ミラーによって反射されてビームスプリッタに戻る。基準ビームは基準ミラーへ伝搬し、基準ミラーによって反射されてビームスプリッタに戻る。ビームスプリッタでは、測定ビームと基準ビームとが合成されて合成放射ビームになる。合成放射ビームはセンサに入射する。センサは合成放射ビームの位相又は周波数を判定する。センサは、その位相又は周波数に基づいて信号を生成する。信号はミラーの変位を表す。一実施形態においては、ミラーは基板サポートWTに連結される。基準ミラーはメトロロジフレームMFに連結されてもよい。一実施形態においては、測定ビームと基準ビームとは、ビームスプリッタではなく追加的な光学コンポーネントによって合成されて合成放射ビームになる。
【0031】
[0030] 第1のポジショナPMはロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを備え得る。ショートストロークモジュールは、ロングストロークモジュールに対して高い精度で小さな移動範囲にわたってマスクサポートMTを移動させるように配置される。ロングストロークモジュールは、投影システムPSに対して相対的に低い精度で大きな移動範囲にわたってショートストロークモジュールを移動させるように配置される。ロングストロークモジュールとショートストロークモジュールとの組み合わせによって、第1のポジショナPMは、投影システムPSに対して高い精度で大きな移動範囲にわたってマスクサポートMTを移動させることができる。同様に、第2のポジショナPWはロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを備え得る。ショートストロークモジュールは、ロングストロークモジュールに対して高い精度で小さな移動範囲にわたって基板サポートWTを移動させるように配置される。ロングストロークモジュールは、投影システムPSに対して相対的に低い精度で大きな移動範囲にわたってショートストロークモジュールを移動させるように配置される。ロングストロークモジュールとショートストロークモジュールとの組み合わせによって、第2のポジショナPWは、投影システムPSに対して高い精度で大きな移動範囲にわたって基板サポートWTを移動させることができる。
【0032】
[0031] 第1のポジショナPM及び第2のポジショナPWは、各々が、マスクサポートMT及び基板サポートWTをそれぞれ移動させるためのアクチュエータを備えている。アクチュエータは、単軸、例えばy軸に沿って駆動力を提供するためのリニアアクチュエータであってもよい。複数の軸に沿って駆動力を提供するために、複数のリニアアクチュエータが適用されてもよい。アクチュエータは、複数の軸に沿って駆動力を提供するための平面アクチュエータであってもよい。例えば、平面アクチュエータは、基板サポートWTを6自由度で移動させるように配置されてもよい。アクチュエータは、少なくとも1つのコイルと少なくとも1つの磁石とを備える電磁アクチュエータであってもよい。アクチュエータは、少なくとも1つのコイルに電流を印加することによって少なくとも1つのコイルを少なくとも1つの磁石に対して移動させるように配置される。アクチュエータは可動磁石式アクチュエータであってもよく、これは基板サポートWTに又はマスクサポートMTに結合された少なくとも1つの磁石を有する。アクチュエータは可動コイル式アクチュエータであってもよく、これは基板サポートWTに又はマスクサポートMTに結合された少なくとも1つのコイルを有する。アクチュエータは、ボイスコイルアクチュエータ、リラクタンスアクチュエータ、ローレンツアクチュエータ、もしくはピエゾアクチュエータ、又は任意の他の適当なアクチュエータであってもよい。
【0033】
[0032] リソグラフィ装置LAは、
図3に概略的に図示される位置制御システムPCSを備えている。位置制御システムPCSは、セットポイントジェネレータSPと、フィードフォワードコントローラFFと、フィードバックコントローラFBとを備えている。位置制御システムPCSは、駆動信号をアクチュエータACTに提供する。アクチュエータACTは、第1のポジショナPMのアクチュエータであってもよく、又は第2のポジショナPWのアクチュエータであってもよい。アクチュエータACTは、基板サポートWT又はマスクサポートMTを備え得るプラントPを駆動する。プラントPの出力は、位置又は速度又は加速などの位置量である。位置量は位置測定システムPMSによって測定される。位置測定システムPMSは信号を生成し、この信号はプラントPの位置量を表す位置信号である。セットポイントジェネレータSPは信号を生成し、この信号はプラントPの所望の位置量を表す基準信号である。例えば、基準信号は基板サポートWTの所望の軌道を表す。基準信号と位置信号との差は、フィードバックコントローラFBの入力を形成する。その入力に基づいて、フィードバックコントローラFBは、アクチュエータACTのための駆動信号の少なくとも一部を提供する。基準信号はフィードフォワードコントローラFFの入力を形成し得る。その入力に基づいて、フィードフォワードコントローラFFは、アクチュエータACTのための駆動信号の少なくとも一部を提供する。フィードフォワードFFは、質量、剛性、共振モード、及び固有振動数など、プラントPの力学的特性についての情報を利用してもよい。
【0034】
[0033] パターン付き放射ビーム、すなわちパターニングデバイスのパターンが与えられた放射ビームによる基板のパターニングの前に、基板は、リソグラフィ装置内にロードされ、パターニングされるのに適した状態になるように調節される。このようなローディング及び調節は、例えば、リソグラフィ装置の一部などであり得る基板ハンドリングデバイスによって実施され得る。
【0035】
[0034] このような調節は、典型的には、所望の実質的に均一な温度又は温度分布を有する基板に到達するための熱調節を伴う。そのような所望の温度又は温度分布に到達するために、基板は、温度調節ユニットを使用して調節され得る。
【0036】
[0035] 既知の配置では、そのような熱調節ユニットは、基板を受けるように及びその基板を真空予圧ガスベアリングによって浮遊させるように構成されている。基板はこの状態に維持され、温度はガスベアリングの適用されるガスによって調節される。
【0037】
[0036] 正確な温度調節を確実にするためには、基板が真空予圧ガスベアリングによって所望の浮上高さで浮遊していることが望ましいであろう。これは、基板が大きな接触表面積を呈する場合、及び/又は基板が例えばプリアライメントなどのプロセスに起因して相対移動する場合に、特に望ましい。基板の熱調節ユニットへのローディング及び熱調節ユニットからのアンローディングの間、並びに熱調節プロセスの間は、基板への損傷又はデブリの発生を回避するために、基板は調節ユニットと接触しないことが、更に望ましいであろう。基板が明確に定義された十分に小さい接触面積を有する場合及び/又は基板の相対移動がない場合には、基板は、損傷、粒子又はデブリの発生の実質的なリスクなしに、熱調節ユニットに接触し得る。この文脈における十分に小さい接触面積は、基板の総表面積の接触面積分率にだけでなく、個々の接触フィーチャのサイズにも関係する。十分に小さい接触面積は、基板と接触フィーチャとの間への微粒子/デブリ捕捉の、許容可能な程度に小さなリスクしか誘発しないように、サイズ決めされる。そうでなければ、粒子及びデブリが、汚染、損傷、又は望ましくない基板の非平坦性をもたらすおそれがある。例示的な十分に小さい接触面積は、例えば約0.5mmの個々のフィーチャを有する基板の全表面積の約1.5%程度であり得る。微粒子/デブリ捕捉のリスク、並びに関係する汚染及び損傷が許容可能な程度に小さいままであるならば、他の接触面積及びフィーチャサイズが使用されてもよいことが理解されよう。
【0038】
[0037] これらの要件は、現在のところ、特に変形した又は反った基板が調節されるときには、満たすのが困難であることが発明者によって観察されている。そのような変形した又は反った基板が既知の熱調節ユニットにロードされると、基板に損傷、例えばスクラッチが引き起こされるおそれがあることが観察されている。また、変形した又は反った基板を既知の熱調節ユニットを使用して所望の浮上高さに維持するのは可能でない場合があることも観察されている。
【0039】
[0038] 本発明の一態様によれば、基板のための改良された熱調節ユニットが提供され、その改良された熱調節ユニットは、これらの問題を緩和すること又は少なくとも軽減することができる。
【0040】
[0039]
図4は、本発明の一実施形態による熱調節ユニット400を概略的に示す。
【0041】
[0040] 図示される実施形態においては、本発明による熱調節ユニット400は、上面410と、上面410に設けられた複数のガスインレット420.1,420.2,420.3及びガスアウトレット430.1,430.2,430.3,430.4とを備えている。本発明によれば、熱調節ユニット400は、複数のガスインレット420及びガスアウトレット430に連結された複数の圧力弁440を更に備える。図示される実施形態においては、ガスインレット420.1が圧力弁440.1に連結されているのに対し、ガスアウトレット430.1及び430.2は圧力弁440.3に連結されている。ガスインレット420.2は圧力弁440.2に連結されている。ガスアウトレット430.3及び430.4は圧力弁440.5に連結されており、ガスインレット420.3は圧力弁440.4に連結されている。熱調節ユニット400は、例えば、ガスインレット420とガスアウトレット430との間に配置された適当なチャネルを備えるディスク形状構造450と、以下に詳細に示されるようにホース又はダクトを連結することができる構造450の外部表面とを備え得る。
【0042】
[0041] 本発明の意味の範囲内では、ガスとは、例えば、空気、又はCDAもしくはXCDAなどの調節された空気を指し得ることに留意されたい。また、ガスとは、基板の熱調節を達成するための任意の他の適当なガスも指し得る。
【0043】
[0042] 本発明によれば、複数の圧力弁440は、基板を支持する上面410にわたって空間圧力分布を生成するために、使用中に、圧力供給部460に連結されるように構成されている。換言すれば、圧力弁440は、基板を支持するために圧力を分配するように構成されている。そのような空間圧力分布は、ガスアウトレット430から排出されるガスによって生成される反発力と、ガスインレット420を介して真空排気されるガスによって生成される吸引力との組み合わせによって、基板の支持を提供し得る。本発明の意味の範囲内では、基板が空間圧力分布によって上面の上方に支持されて保持されるように基板を調節ユニットの上面410の付近に配置するプロセスは、クランププロセスとも呼ばれる。もっとも、基板は、空間圧力分布によって、上面の上方にクランプされた状態で浮遊したままであることに留意されたい。このように、一実施形態においては、空間圧力分布が基板のための真空予圧ガスベアリングを提供する。本発明の意味の範囲内では、真空の使用は、極めて低い圧力に限定されないことに留意されたい。真空又は低い圧力は、本発明の意味の範囲内では、周囲圧力よりも低い圧力を示すために使用される。したがって、一実施形態においては、圧力供給部460は、例えば、ガスアウトレット430.1~430.4に連結され得る、例えば1バール~10バールの正圧、又は例えばおよそ1.5バールの正圧の高圧源と、ガスインレット420.1~420.3に連結され得る、例えば-0.2バールの低い圧力の低圧源とを備え得る。高圧源の調整範囲は、例えばおよそ+/-0.5バールであってもよく、低圧源の調整範囲は、例えばおよそ+/-0.1バールであってもよい。基板のクランププロセス中のある時点で、ガスアウトレット又はガスインレットのうち1つ以上における圧力はゼロ、すなわち周囲圧力に設定され得ることも指摘することができる。換言すれば、圧力弁440は、周囲圧力に圧力制御され又は開放され得る。したがって、使用時には、各圧力弁440.1,440.2,440.3,440.4,440.5は、任意の所与の時刻に、正圧、負圧、又は周囲圧力のうちの1つを供給され、それによって空間圧力分布が生成される。換言すれば、圧力弁440は、使用時に、正圧、負圧、及び/又は周囲圧力を供給され得る。有利なことには、圧力弁440が周囲圧力と正圧及び/又は負圧との間で切り替わるのを可能にすることは、反った基板に関する本発明のクランプ能力を改善する。
【0044】
[0043] 本発明によれば、熱調節ユニット400は制御デバイス470を更に備えており、この制御デバイスは、例えば入力信号470.1によって、調節される基板の形状を表す基板形状データを受信するように構成されると共に、その基板形状データに基づいて複数の圧力弁を制御するように構成されている。そうすることによって、制御デバイス470は、ガスインレット及びガスアウトレットによって生成される空間圧力分布を制御することができ、その結果、特定の形状を有する特定の基板が熱調節ユニット400の上面410の上方にどうやって浮遊する又は保持されるかを制御することができる。したがって、印加又は生成される空間圧力分布は、調節される基板の形状を考慮するように調整されることができる。
【0045】
[0044] 一例として、基板形状データは、基板の反りデータを備え得る。反りデータとは、一般に、基板の面外変形を示すデータを指す。半導体基板に適用される様々なプロセスに起因して、半導体基板の形状は、実質的に平坦なディスクから逸脱し得る。そのような逸脱した形状の例は、例えば、傘形状の基板、又は椀形状の基板、又は鞍形状の基板であり得る。本発明に従って印加される空間圧力分布を制御することによって、反った又は変形した基板の熱調節の際に、反り又は変形が少なくとも部分的に低減されるのを確実にすることができる。その結果、調節されることを必要とする基板の浮上高さはより均一になり、熱調節の改善がもたらされる。例えば、本発明の熱調節ユニットを備える基板サポートテーブルのいくつかの実施形態においては、熱調節の改善に代えて又は加えて、測定又は露光の前に、反りもしくは変形の改善又はクランプされる基板に起因して、基板クランプが改善され得る。
【0046】
[0045] したがって、本発明による熱調節ユニット400を使用する方法においては、圧力弁440は圧力供給部460に連結され、制御デバイス470は調節又はクランプされる基板の形状を表す形状データを受信し、圧力弁440の各々への正圧、負圧、及び/又は周囲圧力の供給は、熱調節ユニット400の上面410にわたって空間圧力分布を生成するように制御され、空間圧力分布は基板形状データに基づいている。このような方法は、本発明による熱調節ユニットを備える基板サポートにも使用され得る。
【0047】
[0046]
図5は、本発明による熱調節ユニット500の一実施形態の更なる詳細を概略的に示す。
図5の上部は熱調節ユニット500の上面図を概略的に示しており、この上部は上面510を有する。図示される実施形態においては、熱調節ユニット500は、複数のガスインレット520及びガスアウトレット530を備える。図示される実施形態においては、ガスインレット及びガスアウトレットは、複数の同心円に沿ってグループ化されている。具体的には、熱調節ユニット500の上面は複数の同心円状に配置された円形溝540.1~540.6を備えており、各溝は1つ以上のガスインレット520又は1つ以上のガスアウトレット530に関連付けられている。図示される実施形態においては、溝540.1,540.3の各々が4つのガスアウトレット530を備えているのに対し、溝540.2は4つのガスインレット520を備えている。当業者には理解されるように、特定の溝に関連付けられたインレット又はアウトレットの数は、例えば溝の半径に応じて変動し得る。一実施形態においては、特定の溝に関連付けられた隣り合うインレット又はアウトレット間の最小距離が考えられ得る。溝540.4~540.6に関連付けられたすべてのガスインレット及びガスアウトレットが示されているわけではないことに留意されたい。当業者には理解されるように、特定の溝に関連付けられたガスインレット又はガスアウトレットは、熱調節ユニット500内の適当なチャネルによって互いに流体連結され得る。そうすることによって、特定の溝に関連付けられたガスインレット又はガスアウトレットが単一の圧力源又は圧力供給部に連結されることができる。しかしながら、一般に、複数の同心円のうちの特定の1つの円に沿って配置された又は特定の溝に関連付けられたガスインレット又はガスアウトレットは、流体連結されなくてもよいことが指摘され得る。一般に、各ガスインレット又はガスアウトレットは、それ専用の圧力供給部に連結され得る。そのような配置では、上面510にわたって追加の又はより詳細な圧力変動を実現することができる。特に、そうすることによって、半径方向に変動する圧力分布に加え、角度方向に変動する圧力分布を実現することができる。
【0048】
[0047]
図5に図示される実施形態、すなわちガスインレット及びガスアウトレットが複数の同心円に沿ってグループ化されている実施形態に関しては、これはガスインレット及びアウトレットのレイアウトの一例に過ぎないことを指摘することができる。他のレイアウトも考えられ得ることが理解されよう。以下の例が言及に値する。
ハニカム型のレイアウト。
ガスインレット及び/又はガスアウトレットが1つ以上の螺旋形状の軌道に沿って配置される螺旋構成。
上面が複数の支持領域又はアイランドにセグメント化され、各領域又はアイランドが例えば3つのガスアウトレットと1つのガスアウトレットとを有する構成。そのような複数の支持領域又はアイランドは同心環状パターンで配置され得る。
多角形状パターン、例えば正多角形状パターン又はダイヤモンド形状パターンは、ガスインレット及びアウトレットを分布させるための基礎と考えられ得る。
XY平面において回転対称性又は二重ミラー対称性(two-fold mirror symmetry)を有する、ガスインレット及びガスアウトレットの他の規則的なパターン。XY平面は一般に基板の平面を指す。
【0049】
[0048]
図5の下部は、線A-A’に沿った熱調節ユニット500の断面図を概略的に示す。この断面図には、溝540.1~540.6、並びにガスインレット520.1に関連付けられた中央凹部540.7が概略的に示されている。熱調節ユニット500の断面図は更に、ガスインレット及びガスアウトレットを熱調節ユニット500の側面500.2に連結するいくつかの内部ダクト又はチャネル580.1,580.2を概略的に示す。図示される実施形態においては、ダクト又はチャネル580.1は溝540.3及び540.1に関連付けられたガスアウトレットを側面500.2に連結しており、その一方でダクト又はチャネル580.2はガスインレット520.1を側面500.2に連結している。よって、図示される配置では、溝540.3及び540.1に関連付けられたガスアウトレットは、共通のガス供給部からガスを供給される。一般に、溝540.3及び540.1に関連付けられたアウトレットへのガス供給は、異なるガス供給部からであってもよいことに留意されたい。一実施形態においては、側面500.2には、ガスインレット及びガスアウトレットからのガスを供給又は抽出するための圧力供給部にダクト又はチャネル580.1,580.2を連結するべく、コネクタが設けられ得る。使用中、ガスがガスアウトレット530に供給されると共にガスがガスインレット520,520.1を介して抽出されると、熱調節ユニット500の上面510に面している基板に対する吸引力及び反発力が生成され得る。
図5において、矢印590は、ガスインレット及びガスアウトレットを使用して生成される反発力及び吸引力の方向を概略的に示す。
【0050】
[0049] 一実施形態においては、生成された空間圧力分布は、基板を支持する真空予圧ガスベアリングとして作用すると考えられ得る。印加される高い圧力及び低い圧力の適当な制御によって、浮上高さ、すなわち基板と熱調節ユニットの上面との間の距離が所望の値に制御され得る。
【0051】
[0050]
図5に示される実施形態においては、ガスアウトレットに供給されるガス及びガスインレットから抽出されるガスを制御することによって生成される空間圧力分布は、同心円状に配置された複数の環状の領域又は圧力領域を備えると考えられ得る。これは、複数の同心円に沿ったガスインレットの特定の配置及び複数の同心円に沿ったガスアウトレットの配置によるものである。
【0052】
[0051]
図5に示される実施形態においては、熱調節ユニット500の上面510は複数の同心円状に配置された環状溝を備え、各溝は複数のガスインレット又はガスアウトレットを備えている。あるいは、環状溝の代わりに、溝は円弧形状であってもよく、各溝は例えば円のセグメントとして成形される。
【0053】
[0052] 本発明による熱調節ユニットによって生成される空間圧力分布に関しては、更に以下のことが言及できる。すなわち、利用可能なガスインレット及びガスアウトレットを使用して生成される空間圧力分布の目的は、熱調節ユニットの上面の上方における、調節される基板の正確な位置決めを、許容する又は可能にすることである。
図5に示される例では、そのような空間圧力分布が、複数の同心円に沿ったインレット及びアウトレットの特定の配置によって実現される。図示される配置では、ガスインレットとして機能する溝540.5が、いずれもガスアウトレットとして機能する溝540.4及び540.6によって囲まれている。同様に、ガスインレットとして機能する溝540.2は、いずれもガスアウトレットとして機能する溝540.1及び540.3によって囲まれている。当業者には、ガスインレット及びガスアウトレットの代替的な配置も考えられ得ることが理解されよう。一例として、ガスインレットとガスアウトレットとが半径方向に交互に配置された配置も考えられ得る。また、隣り合う溝間の半径方向距離は、インレット及びアウトレットが適用されるすべての溝又は円について同じでなくてもよいことが言及できる。
【0054】
[0053] 本発明によれば、熱調節ユニットは、使用中に、空間圧力分布を生成するべく複数の圧力弁を制御するように構成された制御デバイスを更に備える。特に、本発明によれば、制御デバイスは、調節される基板の形状データを表す基板形状データを受信するように構成されており、制御デバイスは、その基板形状データに基づいて空間圧力分布を適合させるべく複数の圧力弁を制御するように構成されている。基板形状データに基づいて空間圧力分布を適合させることによって、調節されるべき基板の変形又は反りを考慮に入れることができる。
図5の下部を参照すると、熱調節ユニット500の制御ユニット又は制御デバイスは、生成される空間圧力分布の特定の部分の振幅を制御するように構成されていてもよい。この点に関して、
図5に示される矢印590は、生成される空間圧力分布の表現と考えられ得ることに留意されたい。適用される空間圧力分布は、瞬間的に適用される静的分布と考えられるべきではないことが指摘できる。むしろ、少なくともクランププロセス、すなわち基板が空間圧力分布によってクランプ状態にされるプロセスの間、様々なガスインレット及びガスアウトレットにおいて印加される圧力は、経時的に変動し得る。
【0055】
[0054] 空間圧力分布、例えばガスインレット及びガスアウトレットにおけるガス圧の印加振幅を制御することによって、
図6に図示されるように、変形した又は反った基板が改善されたかたちで調節され得る。このタイプの制御の更なる利点は、基板をクランプするプロセスの間、基板の移動がより良好に定義されると共に、ある程度まで制御すなわち修正され得るということである。したがって、これは、基板と上面との間の衝突を回避するのに役立ち、また、クランププロセスの間、基板の実際の形状を制御するのにも役立つ。後者に関しては、本発明によって提示されるような空間圧力分布の制御は、基板を局所的に所望の形状にし、それによって基板の残りの部分がより容易にクランプされ得るようにすることを可能にすることが指摘できる。本発明によって提供される空間圧力分布の制御のタイプは、クランププロセス中のガス消費をより良好に制御することも可能にし得ると共に、基板の局所的な撓み又は変形のより良好な制御を可能にする。すなわち、基板の局所的な撓みが大きくなり過ぎないのを確実にすることができる。
【0056】
[0055]
図6は、熱調節ユニットを、3つの異なる状況について、基板及び印加される空間圧力分布の表現と共に、概略的に示す。
【0057】
[0056]
図6(a)は、熱調節ユニット600の断面図を概略的に示しており、熱調節ユニットは、上面610に設けられた、例えば制御されたガス供給又はガス抽出を備え得る複数の溝及び凹部620に沿ってグループ化された、複数のガスインレット及びガスアウトレットを有する。内部ダクト又はチャネルは図示されていないことに留意されたい。
図6(a)は更に、熱調節ユニット600によって調節される基板650を概略的に示す。図示される配置においては、基板650は、実質的に平坦である、すなわち、実質的に面外変形がないと考えられる。矢印630は、実質的に平坦な基板650を熱調節ユニットの上面610の上方の所望の浮上高さに保持するために印加される空間圧力分布を概略的に図示する。
【0058】
[0057]
図6(b)は、
図6(a)に示される熱調節ユニット600の断面図を概略的に示す。
図6(b)は更に、熱調節ユニット600によって調節される基板652を概略的に示す。図示される配置においては、基板652は反った基板であり、その形状は椀形状と言うことができる。よって、基板は面外変形を有しており、又は、別の言い方をすれば、基板は平坦ではない。このような基板652が、熱調節ユニット600によって、
図6(a)に示される空間圧力分布630を用いて保持されるときには、以下の問題が生じるおそれがある。
浮上高さ、すなわち基板652が熱調節ユニットの上面の上方に保持される距離が、所望の範囲の外であり得る及び/又は上面にわたって変動し得る。したがって、熱調節プロセスは最適ではない場合があり、例えば、基板652の不均一な温度分布をもたらす。基板の不均一な温度分布は、不正確なパターニングプロセスをもたらし、例えばオーバーレイエラーを引き起こし得る。
基板、特に基板652の中央部分が熱調節ユニットと接触して、基板652、又は上面610、又はその両方に損傷を引き起こし得る。
【0059】
[0058] 基板652のような反った基板の改善された熱調節を可能にするために、本発明は、調整又は修正された空間圧力分布を印加することを提案する。特に、基板652のような椀形状の基板を適当に調節するためには、印加される調整された空間圧力パターンは、例えば矢印632によって表され得る。空間圧力パターン630と比較すると、空間圧力パターン632は、基板652の外側領域では低減された反発力を、基板652の中央領域では低減された吸引力を、印加する。なお、点線640は、基板650のような平坦な基板について印加される公称力の参照を示す。
【0060】
[0059] 当業者には理解されるように、特定の基板にとって最も適切な圧力分布は、例えば、経験的に、又はシミュレーション、例えば有限要素シミュレーションに基づいて、決定され得る。そのような実験又はシミュレーションに基づいて、例えば、基板の反りの所与の値に対して適当な空間圧力分布を決定することができる。一実施形態においては、基板、例えば基板652の反りは、
図6(b)に示される距離Wの値によって特徴付けられ得る。上述したように、ガスインレット及びガスアウトレットにおいて印加される様々な圧力は、クランププロセス中に変動し得ることに留意されたい。したがって、一実施形態においては、本発明によって印加される最も適切な空間圧力分布は、少なくともクランププロセス中は、動的空間圧力分布、すなわち時間に伴って変動する圧力分布であり得る。一例として、最も適切な圧力分布は、様々な圧力弁が作動する必要があるタイミング及び順序を示すシーケンスも含み得る。
【0061】
[0060] 本発明の一実施形態においては、制御デバイス、例えば制御デバイス470は、所与の値Wに対して所望の空間圧力分布を実現するために、熱調節ユニットの圧力値の所望の設定点をメモリユニットに記憶するように装備され得る。一般に、本発明による熱調節ユニットの制御デバイスは、基板形状データ、例えば基板反りデータに基づいて、複数の圧力弁の制御設定点を決定するように構成され得る。上記から明らかなように、圧力弁のそのような設定点は、時間依存性であり得、すなわち時間の関数として定式化され得る。
【0062】
[0061] 一実施形態においては、制御デバイスは、基板形状データ、例えば反りデータに基づいて、複数の圧力弁を作動させるための制御シーケンスを決定するようにも構成され得る。そのような制御シーケンスは、例えば、所望の空間圧力分布を確立するために圧力弁が作動する順序を表すことができる。
【0063】
[0062] 基板652のような椀形状の基板の場合、例えば、熱調節ユニット600の中央ガスインレットからガスを抽出し、それから隣接する又は周囲の領域に向かって進むことによって、最初に基板の中央部分をクランプするのが好ましいであろう。一般に、本発明において印加される修正された空間圧力分布は、少なくともクランププロセス中には、反った又は変形した基板のクランプ又は浮遊に適応するために、時間依存性の又は時間に伴って変動する空間圧力分布であり得る。したがって、異なるガスインレット及びガスアウトレットを作動させるタイミングは、一般に、本発明によれば、調節される必要がある基板のタイプに応じて、特に基板形状データに応じて、変動し得る。
【0064】
[0063]
図6(c)は、
図6(a)及び
図6(b)に示される熱調節ユニット600の断面図を概略的に示すと共に、更に、熱調節ユニット600によって調節される別の基板654を概略的に示す。図示される配置においては、基板654は反った基板であり、その形状は傘形状と言うことができる。よって、基板は面外変形を有しており、又は、別の言い方をすれば、基板は平坦ではない。このような基板654が、熱調節ユニット600によって、
図6(a)に示される空間圧力分布630を用いて保持されるときには、以下の問題が生じるおそれがある。
浮上高さ、すなわち基板654が熱調節ユニットの上面の上方に保持される距離が、所望の範囲の外であり得る及び/又は上面にわたって変動し得る。したがって、熱調節プロセスは最適ではない場合があり、例えば、基板654の不均一な温度分布をもたらす。基板の不均一な温度分布は、不正確なパターニングプロセスをもたらし、例えばオーバーレイエラーを引き起こし得る。
基板、特に基板654の外側部分が熱調節ユニットと接触して、基板654、又は上面610、又はその両方に損傷を引き起こし得る。
【0065】
[0064] 基板654のような反った基板の改善された熱調節を可能にするために、本発明は、調整又は修正された空間圧力分布を印加することを提案する。特に、基板654のような傘形状の基板を適当に調節するためには、印加される調整された空間圧力パターンは、例えば矢印634によって表され得る。空間圧力パターン630と比較すると、空間圧力パターン634は、基板632の外側領域では増大された反発力を、基板654の中央領域では増大された吸引力を、印加する。なお、点線640は、基板650のような平坦な基板について印加される公称力の参照を示す。
【0066】
[0065] 当業者には理解されるように、
図6(b)を参照して述べたのと同様、特定の基板にとって最も適切な圧力分布は、例えば、経験的に、又はシミュレーション、例えば有限要素シミュレーションに基づいて、決定され得る。そのような実験又はシミュレーションに基づいて、例えば、基板の反りの所与の値に対して適当な空間圧力分布を決定することができ、その反りは、例えば、
図6(c)に示される距離Wの値によって示される。
【0067】
[0066] 調整又は修正された空間圧力分布632及び634を基板652及び654の変形と比較すると、印加される調整された空間圧力分布は、力又は分散された力を基板に対して作用させ、これが調節対象の基板の変形を少なくとも部分的に打ち消すことが理解できる。その結果、調節対象の基板は、熱調節ユニットによって、より平らになった状態で保持され、熱調節プロセスを改善する。したがって、基板の浮上高さは、より容易に所望の範囲内に維持され得る。一例として、熱調節ユニットの上面の上方における基板の浮上高さは、好ましくは10μm~20μmの範囲内であるべきである。
【0068】
[0067] 本発明による熱調節ユニットにおいては、基板の熱調節は、主に、基板内での伝導を介した伝熱と、供給されるガスへの及び供給されるガスからの対流を介した伝熱とによって行われる。制御された浮上高さは、所望の伝熱が基板全体にわたって行われることを確実にする。不均一な浮上高さは、所望の伝熱プロセスを妨害し、ひいては基板上にホットスポット又はコールドスポットをもたらすおそれがある。
【0069】
[0068] 本発明による熱調節ユニットによって実施される熱調節プロセス中に、基板は、熱調節を更に改善するために、回転させられ得る。そのような実施形態においては、基板は、例えば、熱調節プロセス中に異なる時間間隔で又は連続的におよそ4rad/sの速度で回転され得る。
【0070】
[0069]
図6(b)及び
図6(c)は、本発明に従って修正された空間圧力分布を印加することによって、反った又は変形した基板が、本発明による熱調節ユニット上に有利にクランプされ又は浮遊し得ることを概略的に図示している。本発明の適用、すなわち修正された空間圧力プロファイルの適用は、以下の制御態様のうちの1つ以上を更に含み得る。
経時的に異なる圧力設定点、すなわち時間依存性の圧力設定点の適用は、例えば、開始の段階でガス流を急増させるため、もしくはガス流を減少させるために有用であり得、又はガスインレットが切り替えられる前にガスアウトレット、例えばCDAの供給を安定させ得、又はより良好に制御されたロールオフを確実にすると共に必要とされる制御範囲を制限するために椀の段階的な裏返しクランプシーケンスを実施し得る。
任意選択的に圧力フィードバック制御と組み合わせられた、フィードフォワード制御の適用。
特定のガスインレット及びガスアウトレットにおいて、ある瞬間に異なる圧力を印加することによる、局所的な空気圧トルクの発生。一例として、そのような局所的な空気圧トルクは、
図5を参照すると、ガスアウトレット540.1及び540.3を異なるガス供給部に連結することによって実現され得る。これらのアウトレット間に圧力差が印加されると、局所的なトルクが基板に加えられる。ガスアウトレット540.1及び540.2を異なるガス供給部に連結することの代替として、ガスアウトレットをガス供給部に連結するチャネル又はダクトのうちの1つに制約が適用されてもよい。そうすることによって、両チャネルでは異なるペースで圧力の蓄積が起こるので、一時的に局所的な圧力トルクが発生する。
非回転対称の圧力差が、例えば不均一な調節を実施するために、本発明による熱調節ユニットにおいて実装され得る。そのような不均一な調節は、例えば、基板を処理するリソグラフィ装置のいずれかの部分、又は基板、例えばより大きな直交異方性特性又はサドル形状を有する基板における非対称効果を補償するために適用され得る。
【0071】
[0070] 本発明の一態様によれば、本発明による熱調節ユニットを備える基板ハンドリングデバイスが更に提供される。
【0072】
[0071] そのような基板ハンドリングデバイスが
図7に概略的に示されている。
【0073】
[0072]
図7は、本発明による熱調節ユニット800を備える、基板ハンドラとも称される基板ハンドリングデバイス700を概略的に示す。図示される実施形態においては、基板ハンドリングデバイスは、基板を受けるための入口ポート705と、基板を熱調節ユニット800上に位置決めするように構成されたハンドリングロボット710とを備える。一実施形態においては、このようなハンドリングロボット710は、例えば、点線730で示される基板を保持するためのグリッパ720を備えていてもよく、基板を熱調節ユニット800の上面810の上方の位置に搬送するように構成され得る。図示される実施形態においては、熱調節ユニット800は、複数のローディングピン830を備えるローディング機構820を更に備えている。これらのローディングピンは、ローディング機構820によって、点線730によって示される基板を支持するために上方の位置に移動され得、それによって、グリッパ720からローディングピン830への基板の引き継ぎを手筈する。基板がローディングピンによって保持されると、グリッパ720は後退してもよく、基板は、熱調節ユニット800により提供される空間圧力分布によって上面810の上方に浮遊して保持されるまで、下降され得る。なお、ローディングピン830の使用の代替として、基板を一時的に保持する単一のローディングサポートも適用され得る。そのようなローディングサポートは、例えば調節ユニットの中央位置に、例えば
図4に示される構造450など、サポート構造の中心に位置していてもよく、基板を保持するための真空クランプ又は静電クランプのようなクランプ機構を備えていてもよい。基板がクランプによって保持され、グリッパ720が後退すると、単一のローディングサポートは下降され得る。あるいは、ローディングサポート又はローディングピン830を下降させる代わりに、熱調節ユニットのサポート構造体を、上方に移動されるように配置してもよい。
【0074】
[0073] 図示される実施形態においては、ハンドリングロボット710及び熱調節ユニット800は、筐体又はハウジング750内に配置されている。
【0075】
[0074] 熱調節ユニットの上述の実施形態は、ガスインレット520.1に関連付けられた中央凹部、例えば540.7,620を有するものとして、図示され説明されている。本発明の代替的な一実施形態においては、熱調節ユニットにはサポートチャックが設けられてもよい。
図8は、熱調節ユニット800の断面図を概略的に示しており、熱調節ユニットは、上面810に設けられた、例えば制御されたガス供給又はガス抽出を備え得る複数の溝及び凹部820に沿ってグループ化された、複数のガスインレット及びガスアウトレットを有する。内部ダクト又はチャネルは図示されていないことに留意されたい。
図8は、熱調節ユニット800によって調節された基板850の断面を概略的に示す。図示される配置においては、調節が実行済みであるため、基板850は実質的に平坦なものとして示されている。当業者は、これが実施形態の限定ではなく、この基板に対する熱調節は連続的であってもよいし、又は基板はもともと面外変形を実質的に含まなくてもよいことを理解するであろう。矢印830は、熱調節ユニットの上面810の上方の所望の浮上高さで基板850を調節するために印加される空間圧力分布の例を概略的に図示する。熱調節ユニット800は、基板850を物理的に支持するように構成されたサポートチャック860を更に備える。サポートチャック860は、基板850を保持するための真空クランプ又は静電クランプなどのクランプ機構を備えていてもよい。なお、これは
図8には図示されていない。サポートチャック860は少なくとも1自由度を有する。
図8の実施形態においては、サポートチャック860は、基板850を上昇及び/又は下降させるように、少なくともz方向に移動可能である。サポートチャック860は、z軸を中心とする基板850の回転を可能にするように、Rz方向の移動も有し得る。
図8に示される実施形態においては、サポートチャック860は、熱調節ユニットによって生成された空間圧力分布によって浮遊物中で基板が平坦化された後、基板850の下面に接触する。有利なことには、クランプ時の局所的なロールオフ誘起応力が低減され、後続の基板処理ステップにおける精度の改善につながる。
【0076】
[0075]
図9に示される代替的な一実施形態においては、サポートチャック960は、最大で6自由度の移動(すなわち、横方向及び横断方向の移動並びに3つの軸を中心とする回転移動:x,y,z,Rx,Ry,Rz)を可能にするように成形及び構成され得る。
図9に示される特徴は、
図8について説明されたものと同じである。
図9に示されるサポートチャック960のT字形断面は、支持される(クランプされる)基板850の追加の横方向変位を可能にする。有利なことには、2以上の自由度での基板の制御は、より正確で効率的な熱調節及び/又はクランプを可能にする。
図8の実施形態の使用及び利点は、
図9のそれにも当てはまる。
【0077】
[0076]
図8及び
図9のサポートチャックは熱調節ユニットの中心に示されているが、他の任意の適切な場所が使用され得ることに、当業者は気付くであろう。また、複数のサポートチャックが使用されてもよく、例えば、単一の中央サポートチャックを設ける代わりに、複数のサポートチャックが熱調節ユニットの縁部に又は縁部に向かって設けられてもよい。
【0078】
[0077] 本発明の一態様によれば、本発明による熱調節ユニットを備える基板サポートが提供される。この基板サポートは、例えばウェーハテーブルであってもよく、
図1を参照して説明され図示されたものであってもよい。
【0079】
[0078] 本発明の一態様によれば、本発明による熱調節ユニット又は本発明による基板ハンドリングデバイスを備えるリソグラフィ装置が提供される。後者の場合、一実施形態においては、基板ハンドラのハンドリングロボット及び熱調節ユニットは、リソグラフィ装置の筐体又はハウジング内に配置され得る。本発明による熱調節ユニット又は基板ハンドリングデバイスは、基板の熱調節を改善するために、基板がパターニングプロセスを受ける前に、リソグラフィ装置において有利に適用され得る。基板の熱調節の改善は、より正確なパターニングプロセスをもたらし得、リソグラフィ装置の歩留まりの改善をもたらす。
【0080】
[0079] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。考えられる他の用途は、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。
【0081】
[0080] 本明細書ではリソグラフィ装置に関連して本発明の実施形態について具体的な言及がなされているが、本発明の実施形態は他の装置に使用することもできる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、又は、ウェーハ(あるいはその他の基板)もしくはマスク(あるいはその他のパターニングデバイス)などのオブジェクトを測定又は処理する任意の装置の一部を形成してよい。これらの装置は一般にリソグラフィツールと呼ばれることがある。このようなリソグラフィツールは、真空条件又は周囲(非真空)条件を使用することができる。
【0082】
[0081] 以上では光学リソグラフィと関連して本発明の実施形態の使用に特に言及しているが、本発明は、例えばインプリントリソグラフィなど、その他の適用例において使用されてもよく、文脈が許す限り、光学リソグラフィに限定されないことが理解されるであろう。
【0083】
[0082] 文脈上許される場合、本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組み合わせにおいて実装することができる。本発明の実施形態は、1つ以上のプロセッサにより読み取られて実行され得る、機械可読媒体に記憶された命令として実装することも可能である。機械可読媒体は、機械(例えばコンピューティングデバイス)により読み取り可能な形態で情報を記憶又は伝送するための任意の機構を含むことができる。例えば機械可読媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音響又は他の形態の伝搬信号(例えば、搬送波、赤外信号、デジタル信号など)、及び他のものを含むことができる。更に、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令は、特定のアクションを実行するものとして本明細書で説明されることがある。しかしながら、そのような説明は単に便宜上のものであり、そのようなアクションは実際には、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行するコンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、又は他のデバイスから生じ、実行する際、アクチュエータ又は他のデバイスが物質世界と相互作用し得ることを理解すべきである。
【0084】
[0083] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。上記の説明は例示を目的としたものであり、限定するものではない。したがって下記に示す特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。本発明の他の態様は、以下の番号付き条項のように記載されている。
1.基板を熱的に調節するための熱調節ユニットであって、
上面と、
上面に設けられた複数のガスインレット及びガスアウトレットと、
複数のガスインレット及びガスアウトレットに連結された複数の圧力弁であって、各々が、熱調節ユニットの上面にわたって空間圧力分布を生成するために、使用中に、圧力供給部に連結されるように構成されている、複数の圧力弁と、
使用中に、空間圧力分布を生成するべく複数の圧力弁を制御するように構成された制御デバイスと、
を備え、
制御デバイスは、調節される基板の形状を表す基板形状データを受信するように構成されており、制御デバイスは、基板形状データに基づいて空間圧力分布を適合させるべく複数の圧力弁を制御するように構成されている、熱調節ユニット。
2.空間圧力分布は基板のための真空予圧ガスベアリングを提供する、条項1に記載の熱調節ユニット。
3.空間圧力分布は、複数の同心環状圧力領域を備える、条項1又は2のいずれかに記載の熱調節ユニット。
4.複数のガスアウトレットは1つ以上の同心円に沿って配置されている、条項1から3のいずれかに記載の熱調節ユニット。
5.複数のガスインレットは1つ以上の同心円に沿って配置されている、条項1から4のいずれかに記載の熱調節ユニット。
6.上面は複数の溝を備え、各溝は1つ以上のガスインレット又は1つ以上のガスアウトレットを備えている、条項1から5のいずれかに記載の熱調節ユニット。
7.複数の溝は円弧形状又は円形状である、条項6に記載の熱調節ユニット。
8.基板形状データは反りデータを備える、条項1から7のいずれかに記載の熱調節ユニット。
9.制御デバイスは、反りデータに基づいて複数の圧力弁の制御シーケンス及び/又は制御設定点を決定するように構成されている、条項8に記載の熱調節ユニット。
10.制御シーケンスは、空間圧力分布を確立するために圧力弁が作動する順序を表す、条項9に記載の熱調節ユニット。
11.少なくとも1自由度を有するサポートチャックを更に備える、条項1から10のいずれかに記載の熱調節ユニット。
12.条項1から11のいずれかに記載の熱調節ユニットを使用する方法であって、
複数の圧力弁の各々を圧力供給部に連結するステップと、
制御デバイスにおいて、調節される基板の形状を表す基板形状データを受信するステップと、
複数の圧力弁の各々への正圧、負圧、及び/又は周囲圧力の供給を、熱調節ユニットの上面にわたって空間圧力分布を生成するように制御するステップであって、空間圧力分布は基板形状データに基づく、制御するステップと、
を備える方法。
13.生成された空間圧力分布で基板を調節するステップと、
調節された基板をクランプするステップと、
を更に備える、条項12に記載の熱調節ユニットを使用する方法。
14.条項1から11のいずれかに記載の熱調節ユニットを備える基板ハンドリングデバイス。
15.基板を受けるための入口ポートと、基板を熱調節ユニット上に位置決めするように構成されたハンドリングロボットとを更に備える、条項14に記載の基板ハンドリングデバイス。
16.条項1から11のいずれかに記載の熱調節ユニットを備える基板サポート。
17.複数の圧力弁の各々を圧力供給部に連結するステップと、
制御デバイスにおいて、調節される基板の形状を表す基板形状データを受信するステップと、
複数の圧力弁の各々への正圧、負圧、及び/又は周囲圧力の供給を、熱調節ユニットの上面にわたって空間圧力分布を生成するように制御するステップであって、空間圧力分布は基板形状データに基づく、制御するステップと、
を備える、条項16に記載の基板サポートを使用する方法。
18.生成された空間圧力分布で基板を調節するステップと、
調節された基板をクランプするステップと、
を更に備える、条項17に記載の基板サポートを使用する方法。
19.条項1から11のいずれかに記載の熱調節ユニット、条項14から15のいずれかに記載の基板ハンドリングデバイス、又は条項16に記載の基板サポートを備える、リソグラフィ装置。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を
非接触に熱的に調節するための熱調節ユニットであって、
上面と、
前記上面に設けられた複数のガスインレット及びガスアウトレットと、
前記複数のガスインレット及びガスアウトレットに連結された複数の圧力弁であって、各々が、前記熱調節ユニットの前記上面にわたって空間圧力分布を生成するために、使用中に、圧力供給部に連結されるように構成されて
おり、
前記空間圧力分布は前記基板を支持するように真空予圧ガスベアリングを提供する、複数の圧力弁と、
使用中に、前記空間圧力分布を生成するべく前記複数の圧力弁を制御するように構成された制御デバイスと、
を備え、
前記制御デバイスは、調節される前記基板の形状を表す基板形状データを受信するように構成されており、前記制御デバイスは、前記基板形状データに基づいて前記空間圧力分布を適合させるべく前記複数の圧力弁を制御するように構成されている、熱調節ユニット。
【請求項2】
前記空間圧力分布は前記基板のための真空予圧ガスベアリングを提供する、請求項1に記載の熱調節ユニット。
【請求項3】
前記空間圧力分布は、複数の同心環状圧力領域を備える、請求項
1に記載の熱調節ユニット。
【請求項4】
前記複数のガスアウトレットは1つ以上の同心円に沿って配置されている、
及び/又は前記複数のガスインレットは1つ以上の同心円に沿って配置されている、請求項
1に記載の熱調節ユニット。
【請求項5】
前記上面は複数の溝を備え、各溝は1つ以上のガスインレット又は1つ以上のガスアウトレットを備えている、
望ましくは前記複数の溝は円弧形状又は円形状である、請求項
1に記載の熱調節ユニット。
【請求項6】
前記基板形状データは反りデータを備える、
望ましくは前記制御デバイスは、前記反りデータに基づいて前記複数の圧力弁の制御シーケンス及び/又は制御設定点を決定するように構成されている、望ましくは前記制御シーケンスは、前記空間圧力分布を確立するために前記圧力弁が作動する順序を表す、請求項1から
5のいずれかに記載の熱調節ユニット。
【請求項7】
少なくとも1自由度を有するサポートチャックを更に備える、請求項1から
5のいずれかに記載の熱調節ユニット。
【請求項8】
請求項1から
5のいずれかに記載の熱調節ユニットを使用する方法であって、
前記複数の圧力弁の各々を圧力供給部に連結するステップと、
前記制御デバイスにおいて、調節される前記基板の形状を表す基板形状データを受信するステップと、
前記複数の圧力弁の各々への正圧、負圧、及び/又は周囲圧力の前記供給を、前記熱調節ユニットの前記上面にわたって空間圧力分布を生成するように制御するステップであって、前記空間圧力分布は前記基板形状データに基づく、制御するステップと、
を備える方法。
【請求項9】
前記生成された空間圧力分布で前記基板を調節するステップと、
前記調節された基板をクランプするステップと、
を更に備える、請求項
8に記載の熱調節ユニットを使用する方法。
【請求項10】
請求項1から
5のいずれかに記載の熱調節ユニットを備える基板ハンドリングデバイス。
【請求項11】
基板を受けるための入口ポートと、前記基板を前記熱調節ユニット上に位置決めするように構成されたハンドリングロボットとを更に備える、請求項
10に記載の基板ハンドリングデバイス。
【請求項12】
請求項1から
5のいずれかに記載の熱調節ユニットを備える基板サポート。
【請求項13】
前記複数の圧力弁の各々を圧力供給部に連結するステップと、
前記制御デバイスにおいて、調節される前記基板の形状を表す基板形状データを受信するステップと、
前記複数の圧力弁の各々への正圧、負圧、及び/又は周囲圧力の前記供給を、前記熱調節ユニットの前記上面にわたって空間圧力分布を生成するように制御するステップであって、前記空間圧力分布は前記基板形状データに基づく、制御するステップと、
を備える、請求項
12に記載の基板サポートを使用する方法。
【請求項14】
前記生成された空間圧力分布で前記基板を調節するステップと、
前記調節された基板をクランプするステップと、
を更に備える、請求項
13に記載の基板サポートを使用する方法。
【請求項15】
請求項1から
5のいずれかに記載の熱調節ユニット、請求項
10に記載の基板ハンドリングデバイス、又は請求項
12に記載の基板サポートを備える、リソグラフィ装置。
【国際調査報告】