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特表2024-533405環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 327/04 20060101AFI20240905BHJP
   C07D 327/06 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C07D327/04
C07D327/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515492
(86)(22)【出願日】2023-01-09
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 KR2023000350
(87)【国際公開番号】W WO2023132713
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】10-2022-0003553
(32)【優先日】2022-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】サン・ウォン・ロ
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ソ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ス・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エ・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・ジェ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ス・ジョン・キム
(57)【要約】
本発明は、環状スルホン酸エステル誘導体化合物の収率と性状を改善することができる製造方法を提供するための発明であり、(A)本明細書に記載の化学式1で表される化合物とチオ酢酸(Thioacetic acid)とを反応させ、本明細書に記載の化学式2で表される化合物を製造するステップと、(B)前記化学式2で表される化合物を酸化的環化反応させ、本明細書に記載の化学式3で表される化合物を製造するステップと、を含む、環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記化学式1で表される化合物とチオ酢酸(Thioacetic acid)とを反応させ、下記化学式2で表される化合物を製造するステップと、
(B)前記化学式2で表される化合物を酸化的環化反応させ、下記化学式3で表される化合物を製造するステップと、を含む、環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法:
【化1】
【化2】
【化3】
(前記化学式1~化学式3中、
mは、0または1であり、
~Rは、それぞれ独立して、水素;または置換もしくは非置換のC-C10のアルキル基である。)
【請求項2】
前記化学式1で表される化合物と前記チオ酢酸の当量比が1:1~1:3である、請求項1に記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法。
【請求項3】
前記(A)ステップが酸触媒下で行われる、請求項1に記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法。
【請求項4】
前記(A)ステップが極性非プロトン性溶媒中で行われる、請求項1に記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法。
【請求項5】
前記極性非プロトン性溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、およびアセトニトリルから選択される1種以上である、請求項4に記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法。
【請求項6】
前記(A)ステップが20℃~40℃の温度下で行われる、請求項1に記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法。
【請求項7】
前記(B)ステップが酸触媒下で行われる、請求項1に記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法。
【請求項8】
前記(B)ステップが極性プロトン性溶媒中で行われる、請求項1に記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法。
【請求項9】
前記極性プロトン性溶媒が、蒸留水、メタノール、エタノール、プロパノール、およびイソプロパノールから選択される1種以上である、請求項8に記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法。
【請求項10】
前記(B)ステップで、酸化的環化反応が、H、HOCl、NCS、NBS、およびKHSO・0.5KHSO・0.5KSOから選択される1種以上の酸化剤下で行われる、請求項1に記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法。
【請求項11】
前記(B)ステップが0℃~25℃の温度下で行われる、請求項1に記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年1月10日付の韓国特許出願第10-2022-0003553号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトンは、リチウム二次電池において、非水電解液添加剤として有用な化合物として知られている。しかしながら、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトンは、毒性イッシュー、ガス発生、安定性などの問題があるため、非水電解液添加剤として使用可能な環状スルホン酸エステル誘導体化合物に関する研究が活発に行われている。例えば、1,3-プロパンスルトンのガンマ位置(環構造において、酸素の隣の炭素位置)にヒドロキシ基を含有する置換基を取り入れた環状スルホン酸エステル誘導体化合物、または1,4-ブタンスルトンのデルタ位置(環構造において、酸素の隣の炭素位置)にヒドロキシ基を含有する置換基を取り入れた環状スルホン酸エステル誘導体化合物は、リチウム二次電池の非水電解液添加剤として用いられた際に、高温でも安定で、かつ抵抗の低い電極-電解質の界面を形成し、リチウム二次電池の寿命特性を向上させることができる。
【0004】
一方、前記環状スルホン酸エステル誘導体化合物は、例えば、3-ブテン-1,2-ジオールの、a)ヒドロスルホン化反応およびb)脱水反応により製造される。ところが、3-ブテン-1,2-ジオールのヒドロスルホン化反応生成物であるスルホネートを無機塩副産物から精製することが困難であり、脱水反応で用いるSOClにより、腐食性気体が生じるという問題がある。また、前記a)過程での精製イッシュー、および前記b)過程での反応性イッシューなどにより、全体収率が50%未満と低い傾向を示し、生成物が黒いタール状(黒色のガム(gum)状)で得られるという問題がある。
【0005】
そこで、上述の問題を解決することができる環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法に関する研究が必要とされている状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造工程、収率、生成物の性状などを改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法を提供する。
【0008】
(1)本発明は、(A)下記化学式1で表される化合物とチオ酢酸(Thioacetic acid)とを反応させ、下記化学式2で表される化合物を製造するステップと、(B)前記化学式2で表される化合物を酸化的環化反応させ、下記化学式3で表される化合物を製造するステップと、を含む、環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法を提供する。
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】
【化3】
【0012】
前記化学式1~化学式3中、
mは、0または1であり、
~Rは、それぞれ独立して、水素;または置換もしくは非置換のC-C10のアルキル基である。
【0013】
(2)本発明は、前記化学式1で表される化合物と前記チオ酢酸の当量比が1:1~1:3である、前記(1)に記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法を提供する。
【0014】
(3)本発明は、前記(A)ステップが酸触媒下で行われる、前記(1)または(2)に記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法を提供する。
【0015】
(4)本発明は、前記(A)ステップが極性非プロトン性溶媒中で行われる、前記(1)から(3)の何れか一つに記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法を提供する。
【0016】
(5)本発明は、前記極性非プロトン性溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、およびアセトニトリルから選択される1種以上である、前記(4)に記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法を提供する。
【0017】
(6)本発明は、前記(A)ステップが20℃~40℃の温度下で行われる、前記(1)から(5)の何れか一つに記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法を提供する。
【0018】
(7)本発明は、前記(B)ステップが酸触媒下で行われる、前記(1)から(6)の何れか一つに記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法を提供する。
【0019】
(8)本発明は、前記(B)ステップが極性プロトン性溶媒中で行われる、前記(1)から(7)の何れか一つに記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法を提供する。
【0020】
(9)本発明は、前記極性プロトン性溶媒が、蒸留水、メタノール、エタノール、プロパノール、およびイソプロパノールから選択される1種以上である、前記(8)に記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法を提供する。
【0021】
(10)本発明は、前記(B)ステップで、酸化的環化反応が、H、HOCl、NCS、NBS、およびKHSO・0.5KHSO・0.5KSOから選択される1種以上の酸化剤下で行われる、前記(1)から(9)の何れか一つに記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法を提供する。
【0022】
(11)本発明は、前記(B)ステップが0℃~25℃の温度下で行われる、前記(1)から(10)の何れか一つに記載の環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造工程を改善することができ、収率を向上させることができ、改善された性状を有する生成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1で製造された生成物のH-NMRスペクトルである。
図2】比較例1で製造された生成物のH-NMRスペクトルである。
図3】(a)は、実施例1で製造された化学式aで表される化合物のデジタルカメラ写真、(b)は、比較例1で製造された化学式aで表される化合物のデジタルカメラ写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。この際、本明細書および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0026】
本発明は、環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法に関し、(A)下記化学式1で表される化合物とチオ酢酸(Thioacetic acid)とを反応させ、下記化学式2で表される化合物を製造するステップと、(B)前記化学式2で表される化合物を酸化的環化反応させ、下記化学式3で表される化合物を製造するステップと、を含む。
【0027】
【化4】
【0028】
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】
前記化学式1~化学式3中、
mは、0または1であり、
~Rは、それぞれ独立して、水素;または置換もしくは非置換のC-C10のアルキル基である。
【0031】
本発明において、前記置換アルキル基での置換基は、重水素、ハロゲン基、ヒドロキシ基、-COOR基(Rは、非置換のC-Cのアルキル基)、-SONR’基(R’は、水素または非置換のC-Cのアルキル基)、シアノ基、または直鎖状もしくは分岐状のC-Cのアルコキシ基であってもよい。
【0032】
前記化学式3の合成の容易さの点から、前記R~Rは、それぞれ独立して、水素;または非置換のC-Cのアルキル基であってもよい。具体的に、前記R~Rは、合成の容易さおよび構造安定性の点から、いずれも水素であってもよい。
【0033】
前記化学式3で表される化合物は、下記化学式aまたはbで表される化合物であってもよい。
【0034】
【化7】
【0035】
【化8】
【0036】
以下、環状スルホン酸エステル誘導体化合物の製造方法の各ステップを具体的に説明する。
【0037】
(A)ステップ
前記(A)ステップは、前記化学式1で表される化合物の二重結合とチオ酢酸が反応(すなわち、末端のアルケンとチオ酢酸とのチオール-エン(thiol-ene)反応)し、チオアセテート中間体を形成させるステップである。
【0038】
本発明によると、前記化学式1で表される化合物と前記チオ酢酸の当量比は、1:1~1:3、具体的には1:1~1:2.5、より具体的には1:1~1:2であってもよい。前記化学式1で表される化合物と前記チオ酢酸の当量比が上記の範囲内である場合、確認可能なその他の副産物が生成することなく、99%以上の転化率(化学式1で表される化合物の、化学式2で表される化合物への転化率)が達成可能であるという利点がある。
【0039】
本発明によると、前記(A)ステップは、反応機構上のプロトン伝達(Proton transfer)を促進させるために、酸触媒下で行われてもよい。前記酸触媒は、例えば、トリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid、TFA)、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)などであってもよい。
【0040】
本発明によると、前記(A)ステップは、適切な量のラジカル中間体が生成されやすいように、極性非プロトン性溶媒中で行われてもよい。
【0041】
本発明によると、前記極性非プロトン性溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、およびアセトニトリルから選択される1種以上であってもよい。この場合、溶媒が反応に関与せず、かつラジカル中間体が効果的に生成されるという利点がある。
【0042】
本発明によると、前記(A)ステップは、20℃~40℃、具体的には30℃~40℃の温度下で行われてもよい。この場合、前記(A)ステップの反応速度が速いだけでなく、チオアセテート中間体(化学式2で表される化合物)が分解されないことができる。
【0043】
前記(A)ステップは、チオアセテート中間体が分解されることを防止するとともに、反応転化率を極大化するために、2時間~8時間行われてもよい。
【0044】
(B)ステップ
前記(B)ステップは、反応中間体である化学式2で表される化合物に酸化剤を投入し、酸化的環化反応が起こるようにすることで、化学式3で表される化合物が形成されるようにするステップである。
【0045】
本発明によると、前記(B)ステップは、酸化反応を促進するpHを維持するために、酸触媒下で行われてもよい。前記(B)ステップにおける酸触媒は、前記化学式2で表される化合物1当量に対して3当量以上添加されてもよい。前記(B)ステップにおける酸触媒が、例えば、HClである場合には、酸触媒として、かつClソースとして働くことができる。
【0046】
本発明によると、前記(B)ステップは、前記化学式2で表される化合物の溶解度を確保するために、極性プロトン性溶媒中で行われてもよい。
【0047】
本発明によると、前記極性プロトン性溶媒は、蒸留水、メタノール、エタノール、プロパノール、およびイソプロパノールから選択される1種以上であってもよい。この場合、前記化学式2で表される化合物(反応物)、酸化剤、酸触媒の均一な相内で反応が進行することができる。
【0048】
本発明によると、前記(B)ステップにおいて、酸化的環化反応は、H、HOCl、NCS、NBS、およびKHSO・0.5KHSO・0.5KSOから選択される1種以上の酸化剤下で行われてもよい。
【0049】
本発明によると、前記(B)ステップは、0℃~25℃、具体的には0℃~15℃の温度下で行われてもよい。この場合、酸化剤による過度な酸化反応を制御することができ、反応安定性が確保されることができる。
【0050】
前記(B)ステップは、酸化剤により生じる副反応(例えば、酸化剤自体の分解反応など)を防止するために、次のように温度を制御しながら行うことができる。具体的に、前記(B)ステップで酸化剤を投入する時には、0℃~10℃に温度を維持し、酸化剤の投入完了後には0℃~25℃の温度下で酸化的環化反応を進行させることができる。
【0051】
前記(B)ステップは、化学式3で表される化合物(生成物)の異性化を防止する範囲内で収率を極大化するために、4時間~24時間行われてもよい。
【0052】
一方、前記(B)ステップにおいて、酸化剤は過量で投入され、反応完了後に残余の酸化剤をクエンチング(quenching)するために、亜硫酸ナトリウム(NaSO)を投入してもよい。前記クエンチングにより、残余の酸化剤が爆発する危険を防止することができる。
【0053】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0054】
実施例および比較例
実施例1
【化9】
丸底フラスコに、3-ブテン-1,2-ジオール(3-butene-1,2-diol)52.8g(1当量)、チオ酢酸(thioacetic acid)91.3g(2当量)、トリフルオロ酢酸(trifluoroacetic acid、TFA)34.2g(0.5当量)、ジクロロメタン100mlを投入し、5時間還流(reflux)しながら反応させた。真空を加えて揮発性有機物質を除去し、チオアセテート中間体(S-(3,4-dihydroxybutyl)-1-yl thioacetate)93.9g(収率:95.3%)を薄い黄色の液体の形態で得た。
【0055】
新しい丸底フラスコ(以下、反応器)に前記チオアセテート中間体42gとMeOH100mlを投入した後、0℃に冷却した。反応器の内温を0℃に維持し、濃度が35質量%であるHCl水溶液68mlをゆっくりと投入した後、濃度が30質量%であるH水溶液84mlをゆっくりと投入した。H水溶液の投入完了後に、0℃で4時間撹拌して反応させた後、25℃に昇温し、25℃で4時間撹拌して反応させ、NaSO15gを投入し、さらに1時間撹拌した。エチルアセテート200mlで生成物を抽出し(有機層を分離)、水層から生成物をさらに抽出(エチルアセテート100mlで3回)した。有機層を集めた後、MgSOで水分を除去してから減圧蒸留し、化学式aで表される化合物26.3g(収率:76.7)を無色の溶液の形態で得た。
【0056】
比較例1
【化10】
丸底フラスコに、3-ブテン-1,2-ジオール(3-butene-1,2-diol)20g、脱イオン水(DI water)90mlを投入した後、65℃で激しく撹拌しながらNaOH(20g)で中和されたNa水溶液(脱イオン水100mlにNa59.4gが溶解された溶液)を5分かけて投入した。撹拌中に、6MのHSO水溶液を使用してpHを7.3~7.6に維持した。3-ブテン-1,2-ジオールが全て消尽されると、減圧蒸留して溶媒を除去した。白色の固体残余物にMeOH250mlを投入し、2時間撹拌した。溶解されていない無機物を濾過し、固体状の無機塩はMeOH2500mlを用いて洗浄した。濾液を減圧蒸留し、無機塩が混合されているスルホネート中間体(3,4-dihydroxybutane-1-sulfonic acid sodium salt)42g(収率:94%、純度:55%)を得た。
【0057】
前記スルホネート中間体1.9gをクロロホルム溶液10mlに分散させた後、DMF0.08ml(0.1当量)を投入した。常温でSOCl1.5ml(2当量)を滴下した後、55℃で8時間撹拌して反応させた。反応が終了した後、反応溶液を常温に冷却させた後、フィルター処理して固体副産物を除去し、濾液を減圧蒸留して濃縮した。0℃で濃縮された溶液にメタノール10ml、12MのHCl0.8mlを投入し、2時間撹拌して加水分解させた後、減圧蒸留して溶媒を除去した。精製されていない生成物をDCM(ジクロロメタン)に溶解させ、セライト(Celite)2gを投入した後、30分間撹拌してから、セライトをフィルター処理してから濾液を濃縮し、化学式aで表される化合物0.55g(収率:36%)を黒色のガム状で得た。
【0058】
実験例
それぞれの実施例1および比較例1で、TLCによりチオアセテート中間体またはスルホネート中間体が全て消尽されたことを確認し、反応が完了した溶液から0.05mlを取ってDMSO-d6 0.45mlで薄めた後、核磁気共鳴分光分析器(B500 Bruker Avace Neo、Bruker社)を用いてH-NMRスペクトルを得、それを図1および図2にそれぞれ示した。
【0059】
H-NMRスペクトルから、実施例1および比較例1の両方で化学式aで表される化合物が製造されたことを確認した。実施例1は、化学式aで表される化合物の収率が76.7%であって、比較例1の収率(36%)よりも高いことを確認した。
【0060】
このことから、本発明に係る製造方法により環状スルホン酸エステル誘導体化合物を製造すると、収率が改善されることが分かる。
【0061】
参考までに、比較例におけるNMRの2.897ppm、2.738ppのピークは、残留DMFのピークである。
【0062】
また、生成物の性状を確認した図3図3(a)は、実施例1で製造された化学式aで表される化合物のデジタルカメラ写真、図3(b)は、比較例1で製造された化学式aで表される化合物のデジタルカメラ写真)を参照すると、本発明に係る製造方法により環状スルホン酸エステル誘導体化合物を製造する場合、化合物の性状(色純度)が改善されることが分かる。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
【国際調査報告】