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特表2024-533477亜鉛めっき(ZM)鋼を含む複数の部品の洗浄および/または防錆前処理のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】亜鉛めっき(ZM)鋼を含む複数の部品の洗浄および/または防錆前処理のための方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/78 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
C23C22/78
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515956
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2022075028
(87)【国際公開番号】W WO2023036889
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】21196358.2
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】ポスナー,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァプナー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】コルト,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ジルヴィア
【テーマコード(参考)】
4K026
【Fターム(参考)】
4K026AA07
4K026AA13
4K026AA22
4K026BB10
4K026EA13
(57)【要約】
本発明はシリーズの複数の部品の洗浄および/または防錆前処理のための方法に関し、前記シリーズの前記部品は少なくとも部分的に亜鉛めっき(ZM)鋼で構成される。洗浄段階の後であって、さらなる洗浄および/または防錆前処理の前に、前記部品は前記亜鉛めっき(ZM)鋼表面の湿潤性を向上させるための処理段階を通過し、この処理では、前記部品の前記亜鉛めっき(ZM)鋼の少なくとも表面が、ルイス酸がLi、Na、K、Ca2+、Mg2+またはAl3+から選択され、ルイス塩基が多塩基性ブレンステッド酸のアニオンから選択される少なくとも1つのビルダーを含む水性媒体と接触する。湿潤化のための処理段階における前記ビルダーの総濃度は、少なくとも0.4mol/kgである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリーズの複数の部品の洗浄および/または防錆前処理のための方法であって、前記シリーズの前記部品が少なくとも部分的に亜鉛めっき(ZM)鋼で構成され、前記シリーズの前記部品がそれぞれ連続する方法ステップi)~iii):
i)前記部品を、7.0を超えるpHを有し、少なくとも1種の界面活性剤を含む水性洗浄液と接触させること;
ii)前記部品の前記亜鉛めっき(ZM)鋼の少なくとも表面を、ルイス酸がLi、Na、K、Ca2+、Mg2+またはAl3+から選択され、ルイス塩基が多塩基性ブレンステッド酸のアニオンから選択されるルイス酸塩基対の塩を表す少なくとも1つのビルダー、および、任意選択で少なくとも1種の界面活性剤を含む、水性剤と接触させること、ここで、前記ビルダーの総濃度が少なくとも0.4モル/kg、好ましくは少なくとも0.5モル/kg、特に好ましくは少なくとも0.6mol/kgであるが、好ましくは2.0mol/kgを超えない;および
iii)さらなる水性洗浄液と接触させることにより洗浄すること、および/または、化成処理の第1段階の水性処理液と接触させることによる防錆前処理
を通過する、方法。
【請求項2】
方法ステップii)における前記部品の前記亜鉛めっき(ZM)鋼の表面の前記接触が、洗浄されるおよび/または腐食から保護される前記シリーズの前記部品の1平方メートル当たり、特に洗浄されるおよび/または腐食から保護される前記シリーズの前記部品の接触する前記亜鉛めっき(ZM)鋼の表面の1平方メートル当たり、1.00リットル以下、好ましくは0.50リットル以下、特に好ましくは0.20リットル以下の前記水性剤が分注されるように、供給から前記水性剤を分注することによって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
方法ステップii)における前記接触用の前記水性剤が、少なくとも前記亜鉛めっき(ZM)鋼の表面が前記水性剤の液膜、1平方メートル当たり好ましくは0.20リットル以下、特に好ましくは0.10リットル以下、非常に特に好ましくは0.07リットル以下、とりわけ好ましくは0.05リットル以下の体積に基づく層によって覆われるように分注され、前記亜鉛めっき(ZM)鋼の表面に生じることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性剤が、方法ステップii)において、スプレーとして、スプレーミストとして、または液膜として、好ましくはスプレーおよび/またはスプレーミストとして、特に好ましくはスプレーミストとして分注されることを特徴とする、2つの先行する請求項2および3に記載の方法。
【請求項5】
前記スプレーミスティングが、前記分注される水性剤の平均液滴が100μm未満、好ましくは60μm未満、より好ましくは40μm未満であるが、好ましくは5μm以上、特に好ましくは10μm以上で行われることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記スプレーミスティングにおける前記液滴の平均速度が5m/s未満、好ましくは2m/s未満、特に好ましくは1m/s未満であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
方法ステップii)において、接触させるために分注されるが接触しないまたは方法ステップiii)において水溶液と接触させるまで同じ場所に留まらない前記水性剤の部分が廃棄されることを特徴とする、先行する請求項2~6の1つまたはそれ以上に記載の方法。
【請求項8】
方法ステップii)の前記水性剤中の前記ビルダーの前記多塩基性ブレンステッド酸の前記アニオンが、硫酸、リン酸、二リン酸、ポリリン酸、炭酸のアニオンから、好ましくはリン酸、二リン酸、ポリリン酸、炭酸のアニオンから、特に好ましくは炭酸のアニオンから選択される、または多塩基性カルボン酸、特にジ-およびトリカルボン酸のアニオンから選択され、これらは順に好ましくはカルボキシル基に対してα-位にヒドロキシル基を有し、特に好ましくはクエン酸および/または酒石酸から選択されることを特徴とする、先行する請求項の1つまたはそれ以上に記載の方法。
【請求項9】
方法ステップii)の前記水性剤中の前記ビルダーのルイス酸が、Na、Kおよび/またはMg2+から選択され、好ましくはNaおよび/またはKから選択されることを特徴とする、先行する請求項の1つまたは両方に記載の方法。
【請求項10】
およびNH を除く他のルイス酸の割合が、方法ステップii)の前記水性剤中のLi、Na、K、Ca2+、Mg2+またはAl3+から選択されるルイス酸の全体に基づいて、5.0重量%未満、好ましくは2.0重量%未満、特に好ましくは1.0重量%未満、非常に特に好ましくは0.5重量%未満であることを特徴とする、先行する請求項の1つまたはそれ以上に記載の方法。
【請求項11】
方法ステップii)の前記水性剤中の元素Zr、Ti、Hf、Ce、Crの水溶性化合物の割合が、各場合において、それぞれの元素に基づいて、10mg/kg未満、好ましくは5mg/kg未満、特に好ましくは1mg/kg未満であることを特徴とする、先行する請求項の1つまたはそれ以上に記載の方法。
【請求項12】
方法ステップii)の前記水性剤中の、鉄のように、好ましくは亜鉛のように正の標準還元電位を有する金属元素の水溶性化合物の割合が、各場合において、それぞれの元素に基づいて、10mg/kg未満、好ましくは5mg/kg未満、特に好ましくは1mg/kg未満であることを特徴とする、先行する請求項の1つまたはそれ以上に記載の方法。
【請求項13】
方法ステップii)の前記水性剤中の高分子有機化合物の割合が、1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、特に好ましくは0.05重量%未満であることを特徴とする、先行する請求項の1つまたはそれ以上に記載の方法。
【請求項14】
方法ステップi)および/または方法ステップii)の前記水性剤が、好ましくは少なくとも8、特に好ましくは少なくとも10、非常に特に好ましくは少なくとも12であるが、好ましくは18以下、特に好ましくは16以下のHLB値を有する、非イオン界面活性剤から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含み、方法ステップi)および/または方法ステップii)のそれぞれの前記水性剤中の前記界面活性剤、好ましくは前記非イオン界面活性剤の割合が、0.01重量%を超える、好ましくは0.10重量%を超える、特に好ましくは0.20重量%を超えるが、好ましくは2.00重量%を超えないことを特徴とする、先行する請求項の1つまたはそれ以上に記載の方法。
【請求項15】
方法ステップii)における前記水性剤のpHが、10.5以下、好ましくは9.5以下、特に好ましくは8.5以下であるが、好ましくは少なくとも6.5、特に好ましくは少なくとも7.5であることを特徴とする、先行する請求項の1つまたはそれ以上に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリーズの複数の部品の洗浄および/または防錆前処理のための方法に関し、前記シリーズの部品が少なくとも部分的に亜鉛めっき(ZM)鋼で構成される。この目的のために、洗浄段階の後であって、さらなる洗浄および/または防錆前処理の前に、前記部品は、前記亜鉛めっき(ZM)鋼表面の湿潤性を向上させるための処理段階を通過し、前記部品の前記亜鉛めっき(ZM)鋼の少なくとも表面は、ルイス酸がLi、Na、K、Ca2+、Mg2+またはAl3+から選択され、ルイス塩基が多塩基性ブレンステッド酸のアニオンから選択されるルイス酸-塩基対の塩である少なくとも1つのビルダーを含む水性媒体と接触する。湿潤化のための処理段階におけるビルダーの総濃度は、少なくとも0.4mol/kgである。
【背景技術】
【0002】
自動車製造では、マグネシウムと合金にした鋼への亜鉛めっきの使用が、軽量構造の車体に対する需要の増加により重要性を増している。他の溶融亜鉛コーティングと比較して、亜鉛とマグネシウムのコーティングは、特に有機浸漬コーティング材料で塗装した後でも、顕著に高い防食効果と腐食性剥離に対する優れた耐性を与える。この改善された特性プロファイルにより、より薄い層厚の被膜を提供することができ、それにもかかわらず、上塗り適性と防食に対する高い要求を満たすことができる。層厚がより薄くなることに伴う軽量化により、溶融亜鉛めっき(ZM)鋼が軽量構造の車体製造において、比較的省資源のストリップ材料を提供することを可能にし、自動車製造において、アルミニウムなどの他の軽量金属の表面積率に加えて、車体のこの材料の表面積率がさらに増加する。
【0003】
溶融亜鉛めっき(ZM)鋼帯で実現される金属めっきは、約1.5~8重量%の金属アルミニウムとマグネシウムを含み、マグネシウムの割合は少なくとも0.2重量%である。先行来技術で確立された成形、前処理およびめっき方法におけるこれらの被膜の基本的な適合性は認識されており、原理的には実証されている(特性095 E、「連続溶融めっき鋼帯および鋼板」、第8および第10章、2017年版、Wirtschaftsvereinigung Stahl)が、めっきと自然酸化層の特定の組成に基づいて、特に洗浄と前処理の場合に、可能な限り均一で再現性のあるめっき結果のために、従って最適な防錆特性または所望の表面機能性のために、考慮しなければならない特別な特徴がある。
【0004】
例えば、溶融亜鉛めっき(ZM)圧延鋼板の防錆前処理の前に、洗浄の過程で合金成分マグネシウムの酸化物の割合を変化させると有利である場合があることが先行技術から知られている。例えば、米国特許出願公開第2016/0168683号明細書は、洗浄に続く酸性水性組成物を用いる処理工程が、次の化成処理の結果として、より優れた防錆めっきが生じるように、酸化物層の性質を変化させることができることを報告している。塩酸、リン酸、硫酸の水溶液が、最終的に表面近傍の酸化物層中のマグネシウムの割合を減少させる適当な酸性組成物として挙げられている。米国特許出願公開第2016/0010216号明細書はまた、溶融亜鉛めっき(ZM)圧延鋼板の表面近傍酸化物層における酸化マグネシウムの減少が防錆前処理に有利であることを記載しており、この目的のために、マグネシウムの錯化剤を含む中性またはアルカリ性の水性組成物による圧延鋼板の処理を提案しており、この処理は脱脂と関連している、またはこれに続く。提案された錯化剤は有機酸またはそれらの塩から選択され、好ましくはグリシンおよび二リン酸から選択される。そこで挙げられている実施例では、グリシンを添加した脱脂用の市販クリーナーに基づいて表面近傍の酸化マグネシウムの割合を減少させることができることが、その中の教示によれば示されている。
【0005】
溶融亜鉛めっき(ZM)鋼の表面を有する部品の連続処理では、部品が洗浄または防錆前処理の湿式化学処理工程に接触すると、表面がもはや完全に湿潤しないという方法に関連した問題も頻繁に生じる。(ZM)の表面を含む部品の表面処理ラインの定置運転では、それゆえ、着実で満足のいく結果をほとんど確保することができない、または複雑な槽の手入れを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0168683号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/0010216号明細書
【発明の概要】
【0007】
この文脈において、本発明の目的は、一方では、溶融亜鉛めっき(ZM)鋼によって形成される表面を、次の洗浄および防錆前処理のために最適に状態調整することであり、他方では、複数の部品の連続処理において、これらの表面の湿潤性を均一な品質で確保することであり、これにより、洗浄工程および/または防錆前処理であり得る次の湿式化学処理工程を同様に首尾よく行うことができる。
【0008】
この目的は、シリーズの複数の部品の洗浄および/または防錆前処理のための方法であって、前記シリーズの前記部品が少なくとも部分的に亜鉛めっき(ZM)鋼で構成され、前記シリーズの前記部品がそれぞれ連続する方法ステップi)~iii)を通過する方法によって達成される:
i)前記部品を、7.0を超えるpHを有し、少なくとも1種の界面活性剤を含む水性洗浄液と接触させること;
ii)前記部品の前記亜鉛めっき(ZM)鋼の少なくとも表面を、ルイス酸がLi、Na、K、Ca2+、Mg2+またはAl3+から選択され、ルイス塩基が多塩基性ブレンステッド酸のアニオンから選択されるルイス酸塩基対の塩を表す少なくとも1つのビルダー、および、任意選択で少なくとも1種の界面活性剤を含む、水性剤と接触させること、ここで、前記ビルダーの総濃度が少なくとも0.4モル/kgである;および
iii)さらなる水性洗浄液と接触させることにより洗浄すること、および/または化成処理の第1段階の水性処理液と接触させることによる防錆前処理。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一連の処理段階i)~iii)は、本発明の成功の決め手となるものであり、前記シリーズの部品から粗い汚れを除去し、易湿潤性の表面を提供する役割を果たす、洗浄段階を最初に含むため、以下ではこれを前洗浄とも称する。
【0010】
この前洗浄は、中間のすすぎおよび/または乾燥工程の有無にかかわらず、好ましくは中間のすすぎ工程はあるが乾燥工程はない、亜鉛めっき(ZM)鋼表面である部品の少なくとも表面が、少なくとも1つのビルダーを含む水性剤と接触する処理段階の後に行われる。方法ステップii)によって、(ZM)表面の永久的な湿潤性が得られ、次の洗浄および/または防錆表面処理のために最適に状態調整された表面が提供される。従って、方法ステップii)は以下では、コンディショニングとも称される。
【0011】
コンディショニングの後には、本発明の方法では、既に述べたように、防錆塗料の塗布に必要な方法ステップが続き、塗料の塗布のために、再びまず洗浄工程が行われる、または既に行われた防錆前処理が直ちに行われるかのいずれかであり、方法の経済性を考慮すると、防錆前処理が直ちに行われるのが結局のところは好ましい変形である。しかしながら、通常、特定の防錆前処理には、それに適合した特定の前洗浄も必要であり、こうした場合におけるコンディショニングは、最初に洗浄が行われ、その後、下流の防錆前処理が行われる。
【0012】
原理的には、コンディショニングによってもたらされる(ZM)表面の湿潤性は驚くほど持続的であり、例えば本管から引き込んだ水を使用したすすぎ工程によって、その後の防錆塗料の性能に関連するいかなる方法によっても損なわれることはない。それにもかかわらず、本発明の方法における方法ステップiii)が方法ステップii)に直接続く場合、すなわち中間乾燥工程がなく、特に中間乾燥工程もすすぎ工程もない場合、かさねて経済的観点から好ましい。
【0013】
本発明の意味における「すすぎ工程」は、除去すべき活性成分を他の活性成分で置換することなく、すすぎ液によって、部品に付着している未乾燥塗膜内に溶解している、直前の湿式化学処理工程からの活性成分を、部品の表面から可能な限り除去することのみを意図するプロセスを示す。この文脈における活性成分とは、部品との接触により使用される水相に溶解または分散している成分であるので、それぞれの水溶液中のその割合および濃度は、積極的に、すなわち、この目的のために提供された装置で計量することによって、連続処理の過程で、方法技術の観点から確立された値を上回って維持されなければならない。
【0014】
本発明の意味の範囲内で「乾燥工程」とは、未乾燥塗膜を有する部品の表面を、技術的手段を用いて乾燥させる工程を意味する。
【0015】
シリーズの部品の処理は、複数の部品が、本発明の方法のそれぞれの処理工程i)~iii)で提供され、通常システム槽に保存されている処理液と接触する場合、個々の部品が連続して、従って互いに異なる時間に接触するものである。この場合、システム槽は、連続洗浄および/または防錆前処理を目的としてそれぞれの処理液が配置される容器であるが、必ずしも接触する場所ではない。従って、システム槽に保存されている、部品の(ZM)表面と接触させるのに十分な処理液の一部をここから供給して、システム槽から空間的に離れて、例えばスプレーチャンバーやミストチャンバー内で部品に塗布することもできる。
【0016】
処理段階i)-前洗浄
処理段階i)は、汚れ、特に引き抜き油、成形油、圧延油および防錆油を部品表面から除去する役割を果たす。通常、従って好ましくは、方法ステップi)を通過後のシリーズの部品の(ZM)表面は、部品の(ZM)表面の1平方メートル当たり0.50g未満、特に好ましくは0.10g未満の炭素層を有する。部品の(ZM)表面に残っている炭素の層は、熱分解によって測定できる。この目的のために、規定された表面積の代表的な部品部分を酸素雰囲気中で基材温度550℃(PMT)にし、放出される二酸化炭素の量を赤外線センサー、例えば分析装置Leco(登録商標)RC-412 Multiphase Carbon Determinator(Leco Corp.)によって炭素量として定量する。
【0017】
方法ステップii)における表面状態調整に先行する洗浄は、本発明に従って、アルカリ性水溶液および界面活性剤含有溶液によって行われる。本発明の意味における界面活性剤は、その表面活性のために、親水性分子成分と少なくとも1つの親油性分子成分、または親油性分子成分と少なくとも1つの親水性分子成分から構成され、表面活性有機化合物の分子量が2000g/molを超えない表面活性有機化合物であると考えられている。
【0018】
本発明の方法のステップi)における界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤から選択でき、一般に非イオン界面活性剤の使用が好ましい。(ZM)の金属表面を含む部品を前洗浄するための水性剤の成分として特に適当な非イオン界面活性剤は、そのHLB値(親水性-親油性-バランス)が少なくとも8、特に好ましくは少なくとも10、非常に特に好ましくは少なくとも12であるが、特に好ましくは18以下、非常に特に好ましくは16以下のものである。HLB値は、水との混和性またはO/Wエマルションを形成する性質に関して、非イオン界面活性剤の分類のための定量的な参照変数として機能する。定量化のために、非イオン界面活性剤の親油基および親水基への分解が行われる。HLB値は次に以下のように計算され、任意のスケールで0~20の値を仮定することができる。
【数1】
(式中M:非イオン界面活性剤の親油基のモル質量
M:非イオン界面活性剤のモル質量)
【0019】
物質の観点からは、本発明の方法の前洗浄において、アルコキシル化アルキルアルコール、アルコキシル化脂肪アミンおよび/またはアルキルポリグリコシドから、特に好ましくはアルコキシル化アルキルアルコールおよび/またはアルコキシル化脂肪アミンから、非常に特に好ましくはアルコキシル化アルキルアルコールから選択されるこうした非イオン性界面活性剤が好ましい。この場合、消泡効果のために、アルコキシル化アルキルアルコールおよび/またはアルコキシル化脂肪アミンは、好ましくはエンドキャップされ、特に好ましくは、順に好ましくは8個以下の炭素原子、特に好ましくは4個以下の炭素原子を有するアルキル基を有する。特に好ましくは、こうしたアルコキシル化アルキルアルコールおよび/またはアルコキシル化脂肪アミンが、エトキシル化および/またはプロポキシル化されて存在する本発明の方法における前洗浄のための非イオン界面活性剤として使用され、アルキレンオキシド単位の数は、好ましくは16以下、特に好ましくは12以下、非常に特に好ましくは10以下であるが、特に好ましくは4を超える、非常に特に好ましくは6を超える。
【0020】
上記の非イオン界面活性剤の親油性成分に関して、アルキル基が飽和で、好ましくは分岐しておらず、アルキル基の炭素原子の数が好ましくは6を超え、特に好ましくは少なくとも10、非常に特に好ましくは少なくとも12であるが、好ましくは20以下、特に好ましくは18以下、非常に特に好ましくは16以下である、こうしたアルコキシル化アルキルアルコールおよび/またはアルコキシル化脂肪アミンが、本発明の方法の前洗浄における非イオン界面活性剤として好ましい。
【0021】
全体として、より長鎖の非イオン性界面活性剤は、従来の引き抜き油、成形油、圧延油、および防錆油の効果的な前洗浄に非常に適しており、好ましいことが明らかであるので、本発明の方法のさらに好ましい実施態様では、こうしたアルコキシル化アルキルアルコールおよび/またはアルコキシル化脂肪アミン、特に、親油性アルキル基が少なくとも10個の炭素原子、特に好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含み、アルキル基中の最長の炭素鎖が少なくとも8個の炭素原子から成り、HLB値が12~16の範囲であるアルコキシル化アルコールが存在するのが好ましい。
【0022】
アルコキシル化アルキルアルコールの好ましい典型は、例えば、以下から選択される。
- 4~8倍のエトキシル化またはプロポキシル化C6~C12脂肪アルコール、
- 8~12倍のエトキシル化C12~C18脂肪アルコール、
- 6~14倍のプロポキシル化C12~C18脂肪アルコール、
- 6~10倍のエトキシル化およびプロポキシル化C12~C14脂肪アルコール、
これらは順にメチル、ブチルまたはベンジル末端基が閉鎖された形態で存在し得る。
【0023】
DIN 53 917(1981)に従って決定される曇点は、前洗浄に使用される非イオン界面活性剤のさらなる好適な選択基準であり、アルコキシル化アルキルアルコール、アルコキシル化脂肪アミンおよび/またはアルキルポリグリコシドから選択され、好ましくは20℃を超えるが、特に好ましくは前洗浄の適用温度未満であり、非常に特に好ましくは前洗浄用水性剤のそれぞれ選択された適用温度より5℃を超えて高いが10℃を超えない。
【0024】
方法ステップi)の水性洗浄液中の界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤の割合は、それぞれの場合に洗浄液に基づいて、好ましくは0.01重量%を超える、特に好ましくは0.10重量%を超える、非常に特に好ましくは0.20重量%を超えるが、好ましくは2.00重量%を超えない。化合物または物質の割合が質量に基づくパーセンテージとして以下に示されている場合、他により具体的な情報がない場合は、それぞれの溶液またはそれぞれの剤が常に参照変数となる。
【0025】
水性洗浄液の適用、従って水性洗浄液を接触させることは、好ましくは少なくとも30℃、特に好ましくは少なくとも40℃、しかし好ましくは60℃未満で行われる。前洗浄の洗浄液は、先行技術で確立された塗布タイプによって、シリーズの部品と接触することができる。これらには、特に、浸漬、すすぎ、跳ねかけおよび/または噴霧が挙げられ、浸漬および/または噴霧法での適用が好ましい。
【0026】
本発明の方法において、水性洗浄液のpHは、部品の油性汚れを効果的に取り除く十分な前洗浄のためにアルカリ性に設定されるが、部品の金属基材の剥離を緩和するために、pHは好ましくは12.0を超えない。本発明の方法は、特に、製造材料として溶融亜鉛めっき(ZM)圧延鋼板、並びに鋼およびアルミニウムなどの他の材料を使用する自動車製造において使用されることを意図しているので、連続して製造される車体は、ふつうは異なる金属材料の混合物から構成される。方法ステップi)の前洗浄は、実質的にもっぱら、通常有機汚れの成分を表面から取り除く-いわゆる脱脂のためにのみ機能するので、洗浄液のpHは、可能な限り低い酸洗効果が得られるように選択できる。この点で、水性洗浄液については、そのpHが11.5を超えない、特に好ましくは10.5を超えないが、脱脂効果を得るために少なくともpHが8.0に設定されることが好ましい場合となり得る。
【0027】
処理段階ii)-コンディショニング
処理段階ii)は、溶融亜鉛めっき(ZM)鋼によって形成された部品の表面を、次の洗浄および/または前処理段階に対して確実かつ恒久的に湿潤性にする役割を果たし、このようにして、本発明に従って処理された部品の均一な表面特性および防食を確実なものにし、シリーズの部品の処理の場合に再現可能なものとする。
【0028】
処理段階ii)において行われる(ZM)の表面のコンディショニングは、前記表面を、1つまたは複数のビルダーを含む水性剤と接触させる必要があり、ビルダーは、ルイス酸がLi、Na、K、Ca2+、Mg2+またはAl3+、から選択され、ルイス塩基が多塩基性ブレンステッド酸のアニオンから選択されるルイス酸-塩基対の塩を表す。
【0029】
(ZM)の表面の十分な湿潤性を達成するためには、これらのビルダーの総濃度が少なくとも0.4mol/kg、好ましくは少なくとも0.5mol/kg、特に好ましくは少なくとも0.6mol/kgである必要がある。通常は、高濃度は必要ではなく、洗浄および/または防錆前処理の次の方法ステップのための湿潤性のさらなる向上をもたらさない。従って、著しく高い濃度は不経済であり、次の処理段階における槽の手入れの際に、部品に付着した未乾燥塗膜または浸漬する部品によって常にある程度発生するビルダー成分の持ち越しによって、方法の複雑さが増大するので、ルイス酸がLi、Na,K、Ca2+、Mg2+またはAl3+から選択され、ルイス塩基が多塩基性ブレンステッド酸のアニオンから選択されるようなルイス酸-塩基対の塩から選択されるビルダーの総濃度が、水性剤中、好ましくは2.0mol/kgを超えず、特に好ましくは1.2mol/kgを超えない。
【0030】
コンディショニングに適したビルダーは、ルイス酸-塩基対の多塩基性ブレンステッド酸のアニオンが、硫酸、リン酸、二リン酸、ポリリン酸、炭酸のアニオンから、特に好ましくはリン酸、二リン酸、ポリリン酸、炭酸のアニオンから、非常に特に好ましくは炭酸のアニオンから選択されるものである。適当なビルダーはまた、多塩基性有機酸に基づいて提供でき、好ましくは、ルイス塩基が多塩基性カルボン酸、特に好ましくはジ-およびトリカルボン酸アニオンによって形成され、これらのアニオンは、順に好ましくはカルボキシル基に対してa-位にヒドロキシル基を有し、非常に特に好ましくはクエン酸および/または酒石酸のアニオンによって形成される、こうしたルイス酸-塩基対から選択される。ルイス塩基が有機酸のアニオンによって形成されるこうしたビルダーの割合は、コンディショニング剤に錯化効果を付加的に付与するために、ビルダーの合計比率に基づいて、好ましくは50重量%未満、特に好ましくは30重量%未満であるが、好ましくは少なくとも0.05mol/kgであり、これは部品の(ZM)表面の酸化物被覆率のさらなる均一化に有利である。
【0031】
コンディショニングのための水性剤に含まれるビルダーの特に好適なルイス酸は、方法ステップii)によって残渣なしに除去できる、カチオンNa、Kおよび/またはMg2+であることが見出されているので、これらは好ましく、ビルダーのルイス酸は、特に好ましくはNaおよび/またはKから選択される。
【0032】
部品の(ZM)の表面は、先に述べたように、少なくとも1つのビルダーの存在下で、次の洗浄および/または防錆前処理のために十分に状態調整される。説明したビルダーは、金属表面やその酸化物との関係において、できる限り無関係に挙動し、化学吸着、金属化、または酸洗と沈殿の結合機構による化成のいずれによっても、緻密な薄層を形成しない。この点で、コンディショニングが成功するには、水性剤のさらなる成分の割合をできるだけ少なくすることが有利であり、また経済的な理由からも望ましい。
【0033】
従って、HおよびNH を除く他のルイス酸の割合は、Li、Na、K、Ca2+、Mg2+またはAl3+から選択される水性コンディショニング剤中のルイス酸の全体に基づいて、好ましくは5.0重量%未満、特に好ましくは2.0重量%未満、非常に特に好ましくは1.0重量%未満、最も特に好ましくは0.5重量%未満である。
【0034】
特に好ましくは、化成被膜の形成を防ぐために、水性コンディショニング剤中の元素Zr、Ti、Hf、Ce、Crの水溶性化合物の割合が、それぞれの元素に基づいて、10mg/kg未満、特に好ましくは5mg/kg未満、非常に特に好ましくは1mg/kg未満である場合である。
【0035】
特定の金属相の析出を防ぐために、鉄のように、好ましくは亜鉛のように正の標準還元電位を有する金属元素(Me)の水溶性化合物の水性コンディショニング剤中の割合が、各場合において、それぞれの元素に基づいて、10mg/kg未満、特に好ましくは5mg/kg未満、非常に特に好ましくは1mg/kg未満であると、同様に好ましい。標準還元電位は、通常の水素電極H/H(pH=0)に対して、金属イオン活性1、20℃で測定した、電気化学ハーフセルMe/Men+の還元電位である。
【0036】
さらに、化学吸着薄層を防ぐために、水性コンディショニング剤中の高分子有機化合物の割合が1重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満、非常に特に好ましくは0.05重量%未満であると好ましい。本発明の文脈では、有機化合物は分子量が1000uを超える場合、重合体である。
【0037】
次の防錆前処理の過程で起こる層ビルドアップの場合の、(ZM)表面に吸着した微粒子による点欠陥を防ぐために、水性コンディショニング剤中の分散微粒子成分の割合が、1重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満、非常に特に好ましくは0.05重量%未満である場合特に好ましい。水性剤の分散した微粒子成分は、規定された部分体積の水性分散液の公称排除限界(NMWC、公称分子量カットオフ)が10kDの限外濾過のリテンテートの乾燥後に残存する固形分である。ただし限外ろ過が脱イオン水(κ<1μScm-1)を添加しながら行われ、濾液中10μScm-1未満の導電率が測定されるまでに限る。
【0038】
ビルダーに関しては、部品を水性剤で湿潤させるのに界面活性剤がさらに存在することが特に有利であり、ビルダーとの相互作用において、次の洗浄および/または防錆前処理のための均一に状態調整された(ZM)表面が提供されることが見出されている。この文脈では、方法ステップi)の前洗浄に使用される界面活性剤が一般的に好ましい。これは、非イオン性界面活性剤の質と量の両方に当てはまる。
【0039】
特に、ルイス酸塩基対の塩のルイス塩基として機能する多塩基性ブレンステッド酸のアニオンが炭酸のアニオンから選択されるビルダーを含む水性剤については、水性剤に界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤を添加するのが有利であることが証明されている。
【0040】
炭酸のアニオンをベースとするビルダーと共に、以下から選択される非イオン界面活性剤が特に好ましいことが分かっている:
-4~8倍のエトキシル化またはプロポキシル化C6~C12脂肪アルコール、
-8~12倍のエトキシル化C12~C18脂肪アルコール、
-6~14倍のプロポキシル化C12~C18脂肪アルコール、および/または
-6~10倍のエトキシル化およびプロポキシル化C12~C14脂肪アルコール、
これらは順に好ましくはメチル、ブチルまたはベンジル末端基が閉鎖された形態で存在することが好ましい。
【0041】
本発明による方法の特定の実施態様において、部品をすすぎ工程なしに前洗浄からコンディショニングに、いわばウェットインウェットで直接移動させることができるので、界面活性剤が、方法ステップi)およびii)の両方において同一に選択されることが好ましい。
【0042】
水性コンディショニング剤のpHは、好ましくは6.5を超え、特に好ましくはこの剤はアルカリ性に設定される。ただし、部品の金属材料(ZM)の特に表面の強い酸洗は理想的には避けられる。同時に、この方法は、異なる金属製造材料で構成された部品、特に溶融亜鉛めっき(ZM)鋼に加え、さらに鋼および/またはアルミニウムで構成された部品、例えば車体の処理用に適している。従って、本発明によれば、水性コンディショニング剤のpHが10.5以下、特に好ましくは9.5以下、非常に特に好ましくは8.5以下であるが、好ましくは少なくとも7.5であれば好ましい。
【0043】
水性コンディショニング剤のポイント単位の全アルカリ度は、好ましくは30ポイント未満、特に好ましくは25ポイント未満であるが、好ましくは少なくとも10ポイント、特に好ましくは少なくとも15ポイントである。さらに、水性剤に含まれるビルダーまたは複数のビルダーを介して、十分に大きな緩衝効果が生じ、これは溶融亜鉛めっき(ZM)表面のコンディショニングに有利であることがわかっている。同時に、遊離アルカリ度は、酸洗の結果生じる攻撃が大きくなりすぎるような値を超えてはならず、これは、特に薄い液膜として塗布する場合に不利であることが分かっており、例えば、さらなるすすぎ工程を必要とすることがある。この点において、10.0未満、特に好ましくは8.0未満、非常に特に好ましくは7.0未満の遊離アルカリ度を有する水性コンディショニング剤が好ましい。全アルカリ度または遊離アルカリ度は、50mLに希釈した2gの水性剤を0.1nの塩酸でpH3.6まで滴定することによって測定する。mL単位の酸溶液の消費量は、全アルカリ度のポイント数を示す。
【0044】
驚くべきことに、水性剤を塗布する方法が、部品の連続処理においてコンディショニングを成功させるために選択的であることがさらに証明され、これは、(ZM)の表面の湿潤性が、方法ステップii)を通過後、シリーズの部品を同じ液量のコンディショニング剤で処理する限りにおいて(すなわち、処理された部品の数とともに水性剤の体積当たりの処理表面規則的に増加する場合)、処理された全体表面と共にますます低下することが観察されるためであり、これは、例えば、浸漬塗布または部品から流れ出る水性剤の閉鎖循環を伴う噴霧塗布の場合によくあることである。その原因については、これまで完全には解明されていないが、水性剤に吸着された不純物、特に酸洗によって金属基材に吸着された塩負荷が、達成された(ZM)表面の湿潤性の喪失と因果関係があると考えることができる。
【0045】
連続処理の間に(ZM)の表面のコンディショニングによって得られる湿潤性の低下に対抗するために、第一に、コンディショニング剤が可能な限り効果的に、かつ過剰量なく処理される表面に塗布されると有利である。従って、本発明の方法の好ましい実施形態では、方法ステップii)における部品の亜鉛めっき(ZM)鋼の表面の接触は、洗浄されるおよび/または腐食から保護される連続処理に係る部品の1平方メートル当たり、特に洗浄されるおよび/または腐食から保護される連続処理に係る部品が接触する亜鉛めっき(ZM)鋼の表面の1平方メートル当たり、1.00リットル以下、好ましくは0.50リットル以下、特に好ましくは0.20リットル以下の水性剤が分注されるように、供給から水性剤を分注することによって行われる。
【0046】
この好ましい実施形態および表面積に関係のある水性剤の分注量に関連して、洗浄されるおよび/または腐食から保護される連続処理に係る部品の表面積は、12面、好ましくは6面を有する多面体の表面を表し、特に好ましくは直方体の表面であり、これは各場合において部品を完全に取り囲み、そうすることによって最小の表面積を有し、多面体の各表面は少なくとも1点で部品に接触する。部品が車体である場合、水性コンディショニング剤の表面積関連の分注に関係のある表面積は、好ましくは、車体を完全に取り囲む最小の表面積を有する直方体の表面積であり、直方体の各表面は、少なくとも1点で車体に接する。
【0047】
この場合、水性剤の分注量は、経済的考慮から、これが湿潤性の一因となることなく、(ZM)の表面に可能な限り効果的に分配されるべきであり、例えば、液体体積が塗布直後に部品の表面からまだ流れ出していないことが確実になる。従って、方法ステップii)で接触させるための水性剤の分注が、少なくとも亜鉛めっき(ZM)鋼の表面が水性剤の液膜で覆われるように行われる場合が好ましく、好ましくは0.20リットル以下、特に好ましくは0.10リットル以下、非常に特に好ましくは0.07リットル以下、とりわけ好ましくは0.05リットル以下の、表面積に基づく体積被覆が亜鉛めっき(ZM)鋼の表面に生じる。ここでの体積被覆は、分注体積の場合のように、多面体で近似された部品の表面積を指すのではなく、実際の幾何学的な表面積を指し、体積付着量は液膜を排出した後の差分秤量によって決定できる。
【0048】
亜鉛めっき(ZM)鋼の表面に、それに応じて好ましい水性コンディショニング剤の制御分注、またはそれに応じて好ましい水性コンディショニング剤の限られた量の塗布のために、方法ステップii)において、水性剤の分注がスプレーとして、スプレーミストとして、または液膜として、特に好ましくはスプレーおよび/またはスプレーミストとして、特に好ましくはスプレーミストまたは液体形態、特に好ましくはスプレーおよび/またはスプレーミスト、とりわけ好ましくはスプレーミストとして行われるのが有利であり、従ってさらに好ましい。剤をスプレーおよび/またはスプレーミストとして部品の表面と接触させることは、先行技術で確立されたスプレーおよびミスト方法を使用して行われ、スプレーランスを用いて局所的に限定された方法で、および/または複数のアトマイザーノズルを取り付けることができる噴霧リングを用いて、部品を部分的に取り囲む方法で行うことができる。スプレーおよび/またはスプレーミストの分注に使用される噴霧装置は、例えば、圧力噴霧器、回転噴霧器、または二物質噴霧器である。連続処理に係る部品の複雑さと形状に応じて、ローラー、布、ブラシ、絵筆、または液体を塗布するための同様の用具を使用して、直接塗布法で液膜を連続処理に係る部品に塗布できる。
【0049】
本発明による好ましい水性コンディショニング剤の制御塗布は、湿潤させる表面に的を絞った方法で有向の噴霧器を取り付けることによって、および/または搬送フレームと共に搬送される部品に、所定の体積流量で、湿潤させるべき部品の表面が閉鎖液膜に正確に露出されるような搬送経路を通じて実現されるスプレーミストを提供することによって、特に効率的に達成される。このようにして、本発明の方法の前述の好ましい実施形態による極めて効率的な手順が利用可能となり、処理プロセス全体にわたって(ZM)表面の良好な湿潤性を確実なものにするという方法ステップii)の目的が可能な限り少ない材料を使用しながら確実に達成される。
【0050】
例えば、液膜の完全な形成に必要な量の水性コンディショニング剤を分注するために、本発明によれば、方法ステップii)においてスプレーおよび/またはスプレーミストとして分注される剤は、100μm未満、特に好ましくは60μm未満、非常に特に好ましくは40μm未満の平均液滴サイズを有する。平均液滴サイズが40μm未満の場合、剤は非常に強く噴霧されるため、エアロゾルとの境界領域を超え、スプレーミストが存在する。剤がさらに霧化され、平均液滴サイズが小さくなると、液滴はますます懸濁状態になり、重力に従わなくなる。懸濁液中に保持されたスプレーミストは、スプレーチャンバーを通る部品の輸送に伴って移動し、部品によって部分的に押しのけられるので、指向性の沈殿が湿潤する表面を阻み、部品の表面は液膜によって一様に湿潤しなくなる。従って、方法ステップii)で分注されるコンディショニング剤が5μm以上、特に好ましくは10μm以上の平均液滴サイズを有することが好ましい。
【0051】
コンディショニング剤のスプレーおよび/またはスプレーミストが、平均液滴サイズを有する液滴の平均速度が5m/s未満、好ましくは2m/s未満、特に好ましくは1m/s未満であるように分注されると、接触する部品の表面に閉鎖液膜を形成するのにも有利である。これは特に、平均液滴サイズが100μm未満、特に好ましくは60μm未満、特に好ましくは40μm未満のスプレーおよび/またはスプレーミストに適用される。
【0052】
本発明によれば、スプレーまたはスプレーミストの液滴の平均液滴サイズおよび平均速度は、部品を囲む多面体の幾何学的重心の位置で決定され、この位置は、先に述べたように、部品の表面積当たりに分注される剤の量を決定するためにも使用される。測定は、光散乱と位相ドップラー風速計によって行うことができる。
【0053】
すでに述べたように、方法ステップii)で達成された部品の(ZM)表面の湿潤性は、連続処理において、同じ部分体積の水性コンディショニング剤が部品の表面と繰り返し接触し、定期的に補給されない場合、著しく低下する。本発明の方法の好ましい実施態様において、方法ステップii)は、接触させるために分注されたが、部品と接触せず、例えば過剰のスプレーとして底部に沈んでそこで回集される、または方法ステップiii)において水溶液と接触させるまで、部品の表面に残らず、例えば部品から流れ落ちてスプレーチャンバー内に留まる部分の水性剤が廃棄されるように行われる。コンディショニング剤の一部が、もはや接触させるために提供されず、例えばスプレーチャンバーから除去された場合、「廃棄」されたとみなされる。
【0054】
処理段階iii)-洗浄および/または防錆前処理:
コンディショニングのための処理段階に続く方法ステップiii)は、洗浄および/または防錆前処理が完了するという点において、本方法を完成させる。この方法ステップの意味での洗浄は、洗浄液を用いた湿式化学処理を意味すると理解され、その過程で、部品の金属表面(しかし少なくとも溶融亜鉛めっき(ZM)鋼基材の表面)に付着する有機不純物が取り除かれ、部品の(ZM)表面の1平方メートル当たり、好ましくは部品の全金属表面の1平方メートル当たり、0.10g未満、好ましくは0.05g未満の炭素被膜が生じる。適当な洗浄液は、方法ステップi)の洗浄液に関連して記載されているため、好ましくは同じ界面活性剤、特に非イオン界面活性剤も使用できる。しかしながら、方法ステップiii)の意味での洗浄には、酸洗反応により金属表面の酸化物層の化成を引き起こす洗浄液を用いた処理も含まれる。しかしながら、その結果が、それぞれの元素に基づく金属または半金属の異なる元素で1mg/mを超える層の被膜である場合には、方法ステップiii)の意味での洗浄はない。この場合、当業者であれば、本発明の意味における防錆前処理に起因する化成層形成を指すであろうが、これは、コンディショニングの直後または任意選択で、先に述べた洗浄の後に行うことができる。
【0055】
本発明の文脈では、特に、結晶性(リン酸塩処理)または非晶質(クロメート処理、Zr/Tiに基づく化成処理)のいずれかであり得る無機バリア層による不動態化は、防錆前処理とみなすことができる。無機不動態化としては、例えば公開特許出願公報DEおよびDEに記載されているように、鉄イオン並びに任意選択でさらに溶解した元素コバルト、ニッケル、マンガンおよびモリブデンの金属イオンの存在下でのアルカリ不動態化も挙げられる。
【0056】
(ZM)表面の湿潤性が残っているまたは不十分であると、この不動態化タイプでは防食の低下を頻繁に引き起こすので、部品の(ZM)表面の完全かつ永続的な湿潤性を確実にする本発明は特に薄膜不動態化として知られているものに有利である。この点で、こうした防錆前処理は、それぞれの元素に基づいて、金属または半金属の異なる元素による200mg/m未満の層の被膜を生じさせる方法ステップiii)に好ましい。
【0057】
こうした薄膜不動態化として、方法ステップiii)における防錆前処理用の水性処理液として、クロムを含む、または好ましくはクロムが含まれていない化成溶液を使用できる。本発明に従って連続処理に係る部品の表面を洗浄し、状態調整できる好ましい化成溶液は、元素Zr、Ti、Hfおよび/またはSiのヘキサフルオロアニオンをベースとする。
【0058】
化成溶液は、好ましくは、さらに、金属モリブデン、銅、ビスマスおよび/またはマンガンの溶解イオンを含む。
【0059】
一連の部品
本発明によれば、部品は溶融亜鉛めっき(ZM)鋼材料を含む。この場合、溶融亜鉛めっきは1.5~8重量%の金属アルミニウムおよびマグネシウムを含む金属被膜であり、金属被膜中のマグネシウムの割合は好ましくは少なくとも0.2重量%である。
【0060】
しかしながら、本発明の方法は、溶融亜鉛めっき(ZM)鋼への適用に限定されないので、鋼、特に冷間圧延鋼(CRS)、および電解亜鉛めっき(ZE)または熱間亜鉛めっき(Z)、合金亜鉛めっき、特に(ZF)、(ZA)、またはアルミニウムめっき(AZ)、(AS)鋼などの、鉄鋼産業によって提供される通常の基材も、部品のさらなる構成要素として適している。本発明の方法では、アルミニウム、マグネシウムおよびそれらの合金のような軽金属も、部品の溶融亜鉛めっき(ZM)鋼と共に処理でき、そのプロセスで洗浄するおよび/または防錆前処理を施すことができる。
【0061】
異なる材料は、一般に、サイズに合わせて切断され、成形され、溶接、接着、圧着によって接合される平らな製品の形態で部品中に存在している。本発明に従って連続して前処理される部品は、好ましくは、車体またはその部品、熱交換器、物体の側面、パイプ、槽またはトラフから選択される。
【0062】
本発明に従って処理された部品は、方法ステップiii)に続くプロセス工程で、有機トップコート系、特にディップコーティング、特に好ましくはカソード電着コーティングで供給できる。
【国際調査報告】