(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】多相複合3D物体の調製方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/336 20170101AFI20240905BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20240905BHJP
B29C 64/386 20170101ALI20240905BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240905BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20240905BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240905BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20240905BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20240905BHJP
【FI】
B29C64/336
B29C64/106
B29C64/386
B33Y80/00
B29C64/112
B33Y10/00
B33Y50/00
B33Y40/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515961
(86)(22)【出願日】2022-08-31
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 EP2022074213
(87)【国際公開番号】W WO2023036668
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/118002
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ファン
(72)【発明者】
【氏名】カイ,チー チョン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,チエ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ニーダーへーファー,フロリアン
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AG03
4F213AG18
4F213AG26
4F213AG27
4F213AR12
4F213WA25
4F213WA54
4F213WA58
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL15
4F213WL16
4F213WL24
4F213WL85
(57)【要約】
コア及びシェルを含む多相複合3D物体の調製方法であって、(A)3D物体の3Dモデルのコア及びシェルのデータを生成する工程と;(B)生成されたデータに従って、少なくとも1つの第1組成物から前記3Dモデルのコアを構築し、少なくとも1つの第2組成物から前記3Dモデルのシェルを構築する工程であって、前記コアが、第1ディスペンサーから少なくとも1つの第1組成物を吐出することによって構築される、工程と;(C)少なくとも1つの第1組成物及び少なくとも1つの第2組成物を固化させて、多相複合3D物体を得る工程とを含み、少なくとも1つの第1組成物の固化材料及び少なくとも1つの第2組成物の固化材料が、異なる特性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(A)3D物体の3Dモデルのコア及びシェルのデータを生成する工程と;
(B)生成されたデータに従って、少なくとも1つの第1組成物から前記3Dモデルのコアを構築し、少なくとも1つの第2組成物から前記3Dモデルのシェルを構築する工程であって、前記コアが、第1ディスペンサーから少なくとも1つの第1組成物を吐出することによって構築される、工程と;
(C)少なくとも1つの第1組成物及び少なくとも1つの第2組成物を固化させて、多相複合3D物体を得る工程と、
を含む、コア及びシェルを含む多相複合3D物体の調製方法であって、
少なくとも1つの第1組成物の固化材料及び少なくとも1つの第2組成物の固化材料が、異なる特性を有する、方法。
【請求項2】
工程(A)において、3D物体の3Dモデルのコア及びシェルのデータが、コンピュータ支援設計(CAD)システムから生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シェルの厚さが、少なくとも1μm、好ましくは少なくとも14μm、より好ましくは少なくとも30μmである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
シェルの厚さが、1~3000μm、好ましくは14~1500μm、より好ましくは30~1500μm又は40~500μmの範囲である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
シェルの厚さが均一又は不均一である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
コアが1つ以上の層を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの第1組成物の固化材料及び少なくとも1つの第2組成物の固化材料が、以下の特性:機械的特性、熱的特性、電子的特性、光学的特性及び耐薬品性のうちの少なくとも1つにおいて異なる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記機械的特性が、以下の特性:ヤング率、引張強度、破断伸び、引張靭性、及び衝撃強度のうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの第1組成物及び少なくとも1つの第2組成物が、以下の条件:
(i)少なくとも1つの第2組成物の固化材料のノッチなし衝撃強度が、少なくとも1つの第1組成物の固化材料のノッチなし衝撃強度の少なくとも150%、好ましくは少なくとも200%であること;
(ii)少なくとも1つの第2組成物の固化材料のノッチ付き衝撃強度が、少なくとも1つの第1組成物の固化材料のノッチ付き衝撃強度の150%、好ましくは少なくとも200%であること;
(iii)少なくとも1つの第2組成物の固化材料の破断伸びが、少なくとも1つの第1組成物の固化材料の破断伸びの少なくとも150%、好ましくは少なくとも200%であること
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの第1組成物及び少なくとも1つの第2組成物が、以下の条件:
(iv)少なくとも1つの第1組成物の固化材料のヤング率が、少なくとも1つの第2組成物の固化材料のヤング率の少なくとも120%、好ましくは少なくとも150%であること;
(v)少なくとも1つの第1組成物の固化材料の引張強度が、少なくとも1つの第2組成物の固化物の引張強度の少なくとも120%、好ましくは少なくとも150%であること
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
シェルが、第2ディスペンサーから少なくとも1つの第2組成物を吐出することによって、少なくとも1つの第2組成物をディップコーティングすることによって、及び/又は少なくとも1つの第2組成物をスピンコーティングすることによって、構築される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
吐出が、インクジェットノズルによる吐出、押し出しによる吐出、又はスプレーコーティングによる吐出を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
コアが、インクジェットノズルを介して第1ディスペンサーから少なくとも1つの第1組成物を吐出することによって構築され、シェルが、インクジェットノズルを介して第2ディスペンサーから少なくとも1つの第2組成物を吐出することによって構築される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
コア及び/又はシェルが、等方性、異方性、及びそれらの組み合わせを示す2D-3D構造をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項15】
前記2D-3D構造が、ハニカム構造、オーセティック構造、スタック構造及びチェスボード構造から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
組成物の少なくとも1つが硬化性成分を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項17】
工程(C)における固化が、熱、溶媒蒸発、放射線、例えばUV照射、電子ビーム及びマイクロ波、又はそれらの組み合わせによって行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項18】
請求項1又は2に記載の方法によって得られる、多相複合3D物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元(以下、「3D」という)印刷用の化学材料の技術分野に属し、特に、多相複合3D物体の調製方法及びそれによって得られる多相複合3D物体に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性ポリマーを用いた3D印刷技術、例えばステレオリソグラフィー(SLA)、デジタルライトプロセッシング(DLP)、又はフォトポリマージェッティング(PPJ)は、補聴器又は歯科部品のラピッドプロトタイピング及びラピッド製造プロセスなど、多くの用途で使用されている。しかしながら、改善された特性を有する3D物体を調製するための簡単な方法の開発が強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、コアとシェルを含む多相複合3D物体の調製方法を提供することである。
【0004】
本発明の別の目的は、本発明による方法によって得られる多相複合3D物体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、上記の目的は以下の実施形態によって達成できることが判明した。
【0006】
1.以下の工程:
(A)3D物体の3Dモデルのコア及びシェルのデータを生成する工程と;
(B)生成されたデータに従って、少なくとも1つの第1組成物から前記3Dモデルのコアを構築し、少なくとも1つの第2組成物から前記3Dモデルのシェルを構築する工程であって、前記コアが、第1ディスペンサーから少なくとも1つの第1組成物を吐出すること(dispensing)によって構築される、工程と;
(C)少なくとも1つの第1組成物及び少なくとも1つの第2組成物を固化させて、多相複合3D物体を得る工程と、
を含む、コア及びシェルを含む多相複合3D物体の調製方法であって、
少なくとも1つの第1組成物の固化材料及び少なくとも1つの第2組成物の固化材料が、異なる特性を有する、方法。
【0007】
2.工程(A)において、3D物体の3Dモデルのコア及びシェルのデータが、コンピュータ支援設計(CAD)システムから生成される、項目1に記載の方法。
【0008】
3.シェルの厚さが、少なくとも1μm、好ましくは少なくとも14μm、より好ましくは少なくとも30μmである、項目1又は2に記載の方法。
【0009】
4.シェルの厚さが、1~3000μm、好ましくは14~1500μm、より好ましくは30~1500μm又は40~500μmの範囲である、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
【0010】
5.シェルの厚さが均一又は不均一である、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
【0011】
6.コアが1つ以上の層を含む、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
【0012】
7.少なくとも1つの第1組成物の固化材料及び少なくとも1つの第2組成物の固化材料が、以下の特性:機械的特性、熱的特性、電子的特性、光学的特性及び耐薬品性のうちの少なくとも1つにおいて異なる、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
【0013】
8.前記機械的特性が、以下の特性:ヤング率、引張強度、破断伸び、引張靭性、及び衝撃強度のうちの少なくとも1つを含む、項目7に記載の方法。
【0014】
9.少なくとも1つの第1組成物及び少なくとも1つの第2組成物が、以下の条件:
(i)少なくとも1つの第2組成物の固化材料のノッチなし衝撃強度が、少なくとも1つの第1組成物の固化材料のノッチなし衝撃強度の少なくとも150%、好ましくは少なくとも200%であること;
(ii)少なくとも1つの第2組成物の固化材料のノッチ付き衝撃強度が、少なくとも1つの第1組成物の固化材料のノッチ付き衝撃強度の150%、好ましくは少なくとも200%であること;
(iii)少なくとも1つの第2組成物の固化材料の破断伸びが、少なくとも1つの第1組成物の固化材料の破断伸びの少なくとも150%、好ましくは少なくとも200%であること
のうちの少なくとも1つを満たす、項目1から8のいずれか一項に記載の方法。
【0015】
10.少なくとも1つの第1組成物及び少なくとも1つの第2組成物が、以下の条件:
(iv)少なくとも1つの第1組成物の固化材料のヤング率が、少なくとも1つの第2組成物の固化材料のヤング率の少なくとも120%、好ましくは少なくとも150%であること;
(v)少なくとも1つの第1組成物の固化材料の引張強度が、少なくとも1つの第2組成物の固化物の引張強度の少なくとも120%、好ましくは少なくとも150%であること
のうちの少なくとも1つを満たす、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
【0016】
11.シェルが、第2ディスペンサーから少なくとも1つの第2組成物を吐出することによって、少なくとも1つの第2組成物をディップコーティングすることによって、及び/又は少なくとも1つの第2組成物をスピンコーティングすることによって、構築される、項目1から10のいずれか一項に記載の方法。
【0017】
12.吐出が、インクジェットノズルによる吐出、押し出しによる吐出、又はスプレーコーティングによる吐出を含む、項目1から11のいずれか一項に記載の方法。
【0018】
13.コアが、インクジェットノズルを介して第1ディスペンサーから少なくとも1つの第1組成物を吐出することによって構築され、シェルが、インクジェットノズルを介して第2ディスペンサーから少なくとも1つの第2組成物を吐出することによって構築される、項目1から12のいずれか一項に記載の方法。
【0019】
14.コア及び/又はシェルが、等方性、異方性、及びそれらの組み合わせを示す2D-3D構造をさらに含む、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
【0020】
15.前記2D-3D構造が、ハニカム構造、オーセティック構造、スタック構造及びチェスボード構造から選択される、項目14に記載の方法。
【0021】
16.組成物の少なくとも1つが硬化性成分を含む、項目1から15のいずれか一項に記載の方法。
【0022】
17.工程(C)における固化が、熱、溶媒蒸発、放射線、例えばUV照射、電子ビーム及びマイクロ波、又はそれらの組み合わせによって行われる、項目1から16のいずれか一項に記載の方法。
【0023】
18.項目1から17のいずれか一項に記載の方法によって得られる、多相複合3D物体。
【0024】
本発明の方法によれば、機械的特性、特に衝撃強度及び破断伸びのような特性が改善された3D物体を簡単な方法で得ることができ、弾性率及び引張強度は依然として高いままである。また、この方法は、3D物体の特性を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、コア及びシェルを含む3D物体の模式図(断面図)である。
【
図2】
図2は、コア及びシェルを含む3D物体の模式図(3Dビュー)である。
【
図3】
図3は、コア及びシェルを含む3D物体の概略図(3Dビュー)であり、
図3(a)は、コアがさらに2D-3D構造を含むことを示し、
図3(b)は、シェルがさらに2D-3D構造を含むことを示し、
図3(c)は、コアとシェルの両方がさらに2D-3D構造を含むことを示す。
【
図5】
図5は、アイゾットノッチなし衝撃強度に及ぼすシェル厚さの影響を示している。
【
図6】
図6は、異なる材料を用いて試料のコアを構築することによって印刷された複合構造の概略図である。
【
図7】
図7は、組成物A及び組成物Bを使用して構築された複合構造の概略図である。
【
図8】
図8は、異なる材料を用いて印刷された複合構造をさらに含むシェル及びコアの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
未定義の冠詞「a」、「an」、「the」は、当該冠詞に続く用語によって指定される1つ以上の種を意味する。
【0027】
本開示の文脈では、特徴について言及された任意の具体的な値(終点としての範囲に言及された具体的な値を含む)を再結合して、新たな範囲を形成することができる。
【0028】
本発明の1つの態様は、以下の工程:
(A)3D物体の3Dモデルのコアとシェルのデータを生成する工程と;
(B)生成されたデータに従って、少なくとも1つの第1組成物から前記3Dモデルのコアを構築し、少なくとも1つの第2組成物から前記3Dモデルのシェルを構築する工程であって、前記コアが、第1ディスペンサーから少なくとも1つの第1組成物を吐出することによって構築される、工程と;
(C)少なくとも1つの第1組成物及び少なくとも1つの第2組成物を固化させて、多相複合3D物体を得る工程と、
を含む、コアとシェルを含む多相複合3D物体の調製方法に関し、
ここで、少なくとも1つの第1組成物の固化材料及び少なくとも1つの第2組成物の固化材料が、異なる特性を有する。
【0029】
実施形態において、3D物体の3Dモデルのコアとシェルのデータは、工程(A)でコンピュータ支援設計(CAD)システムから生成される。
【0030】
本発明によれば、シェルはその表面が外部に接続されている層であり、コアは残りの部分である。
【0031】
図1、2及び3は、コア及びシェルを含む3D物体の例を示している。
【0032】
シェルの厚さは、少なくとも1μm、好ましくは少なくとも14μm、より好ましくは少なくとも30μm、例えば40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、120μm、150μm、200μm、250μm、300μm、500μm、800μm、1000μm、1500μm、2000μm、2500μm又は3000μmであることができる。
【0033】
実施形態において、シェルの厚さは、1~3000μm、又は10~2000μm、好ましくは14~3000μm、14~2000μm、14~1500μm、より好ましくは30~3000μm、30~2000μm、30~1500μm、40~3000μm、40~2000μm、40~1500μm、50~3000μm、50~2000μm、50~1500μm、60~3000μm、60~2000μm、60~1500μm、70~1500μm、40~1000μm又は40~500μmの範囲であることができる。
【0034】
実施形態において、シェルの厚さは均一であっても不均一であってもよい。実施形態において、シェルの厚さは、3D成形の主応力方向に沿って均一である。シェルの厚さが不均一であるシナリオでは、当業者は、上述のシェルの厚さ(値又は範囲)がシェルの平均厚さを意味することを理解し得る。
【0035】
実施形態において、コアは、1つ以上の層(内層)、例えば1つ又は2つ又は3つ以上の内層を含むことができる。実施形態において、2つ以上の内層がある場合、隣接する内層は異なる特性を有する。実施形態において、隣接する内層は異なる特性を有し、隣接しない内層は同じ特性を有する。実施形態において、隣接する内層は異なる特性を有し、隣接しない内層もまた異なる特性を有する。実施形態において、これらすべての内層の特性は異なる。これらの特性の詳細は、少なくとも1つの第1組成物の固化材料及び少なくとも1つの第2組成物の固化材料の特性に関する以下の説明を参照することができる。
【0036】
各内層の厚さは、少なくとも1μm、少なくとも14μm、少なくとも30μm、少なくとも70μm、少なくとも200μm、少なくとも500μm、少なくとも1000μm、少なくとも1500μm、少なくとも2000μm、少なくとも2500μm、又は少なくとも3000μmであることができる。異なる内層の厚さは同じでも異なっていてもよい。
【0037】
実施形態において、少なくとも1つの第1組成物の固化材料及び少なくとも1つの第2組成物の固化材料は、以下の特性:機械的特性、熱的特性、電子的特性、光学的特性及び耐薬品性のうちの少なくとも1つにおいて異なる。
【0038】
機械的特性は、ヤング率、引張強度、破断伸び、引張靭性、及び衝撃強度を含むことができる。熱的特性は、熱撓み温度、熱膨張係数などを含むことができる。電気的特性は、誘電率、導電率などを含む。耐薬品性は、酸、塩基、酸素、溶剤などに対する耐性を含む。
【0039】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの第1組成物の固化材料及び少なくとも1つの第2組成物の固化材料は、以下の特性:ヤング率、引張強度、破断伸び、引張靭性、及び衝撃強度のうちの少なくとも1つ(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、又は全て)において異なる。
【0040】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの第1組成物及び少なくとも1つの第2組成物は、以下の条件:
(i)少なくとも1つの第2組成物の固化材料のノッチなし衝撃強度が、少なくとも1つの第1組成物の固化材料のノッチなし衝撃強度の少なくとも150%、好ましくは少なくとも200%であること;
(ii)少なくとも1つの第2組成物の固化材料のノッチ付き衝撃強度が、少なくとも1つの第1組成物の固化材料のノッチ付き衝撃強度の150%、好ましくは少なくとも200%であること;
(iii)少なくとも1つの第2組成物の固化材料の破断伸びが、少なくとも1つの第1組成物の固化材料の破断伸びの少なくとも150%、好ましくは少なくとも200%であること
のうちの少なくとも1つを満たす。
【0041】
条件(i)において、少なくとも1つの第2組成物の固化材料のノッチなし衝撃強度は、少なくとも1つの第1組成物の固化材料のノッチなし衝撃強度の少なくとも150%、少なくとも200%(例えば250%、300%、350%、400%、450%、500%、550%又は600%)、好ましくは少なくとも220%又は少なくとも250%であることができる。好ましくは、少なくとも1つの第2組成物の固化材料のノッチなし衝撃強度は、少なくとも1つの第1組成物の固化材料のノッチなし衝撃強度の150%~600%、又は200%~500%、又は250%~450%、又は250%~400%、又は250%~350%であることができる。
【0042】
本発明によれば、少なくとも1つの第1組成物の固化材料のノッチなし衝撃強度がをxであり;少なくとも1つの第2組成物の固化材料のノッチなし衝撃強度がyである場合、少なくとも1つの第2組成物の固化材料のノッチなし衝撃強度は、少なくとも1つの第1組成物の固化材料のノッチなし衝撃強度の(y/x)×100%である。他のパラメータも相応に計算することができる。
【0043】
2つ以上の第1組成物が存在する場合、2つ以上の第1組成物の固化材料のノッチなし衝撃強度は、それらの質量平均値を意味する。例えば、2つの第1組成物、すなわち組成物10と組成物11があり、組成物10が30質量%、組成物11が70質量%であり、それらのノッチなし衝撃強度がそれぞれm及びnである場合、質量平均ノッチなし衝撃強度は、30%×m+70%×nとして計算することができる。2つ以上の第2組成物及び他のパラメータについても同様である。
【0044】
条件(ii)において、少なくとも1つの第2組成物の固化材料のノッチ付き衝撃強度は、少なくとも1つの第1組成物の固化材料のノッチ付き衝撃強度の少なくとも150%、少なくとも200%(例えば250%、300%、350%、400%、450%、500%、600%、700%、800%)、好ましくは少なくとも220%、少なくとも250%、又は少なくとも300%であることができる。好ましくは、少なくとも1つの第2組成物の固化材料のノッチ付き衝撃強度は、少なくとも1つの第1組成物の固化材料のノッチ付き衝撃強度の150%~800%、又は200%~700%、250%~600%、又は300%~500%であることができる。
【0045】
条件(iii)において、少なくとも1つの第2組成物の固化材料の破断伸びは、少なくとも1つの第1組成物の固化材料の破断伸びの少なくとも150%(例えば200%、250%、300%、500%、600%、800%、1000%、1200%又は1500%)、好ましくは少なくとも200%又は少なくとも500%である。好ましくは、少なくとも1つの第2組成物の固化材料の破断伸びは、150%~1500%、200%~1400%、又は300%~1200%、又は500%~1200%、又は600%~1200%であることができる。
【0046】
実施形態において、少なくとも1つの第1組成物及び少なくとも1つの第2組成物は、条件(i)、又は条件(ii)、又は条件(iii)、又は条件(i)及び(ii)、又は条件(i)及び(iii)、又は条件(ii)及び(iii)、又は条件(i)、(ii)及び(iii)を満たす。
【0047】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの第1組成物及び少なくとも1つの第2組成物は、以下の条件:
(iv)少なくとも1つの第1組成物の固化材料のヤング率が、少なくとも1つの第2組成物の固化材料のヤング率の少なくとも120%、好ましくは少なくとも150%であること;
(v)少なくとも1つの第1組成物の固化材料の引張強度が、少なくとも1つの第2組成物の固化物の引張強度の少なくとも120%、好ましくは少なくとも150%であること
のうちの少なくとも1つ(例えば1つ又は2つ)を満たす。
【0048】
本開示において、ヤング率、引張強度及び破断伸びは、ASTM D638に従って試験することができる。
【0049】
本開示において、アイゾットノッチ付き衝撃強度は、室温でASTM-D256-10に従って試験することができる。
【0050】
本開示において、アイゾットノッチなし衝撃強度は、ASTM-D4812-11に従って試験することができる。
【0051】
条件(iv)において、少なくとも1つの第1組成物の固化材料のヤング率は、少なくとも1つの第2組成物の固化材料のヤング率の少なくとも120%(例えば130%、140%、150%、160%、180%、200%、250%、300%、350%又は400%)、好ましくは少なくとも150%である。好ましくは、少なくとも1つの第1組成物の固化材料のヤング率は、少なくとも1つの第2組成物の固化材料のヤング率の120%~400%、又は130%~350%、又は140%~300%、又は150%~250%である。
【0052】
条件(v)において、少なくとも1つの第1組成物の固化材料の引張強度は、少なくとも1つの第2組成物の固化物の引張強度の少なくとも120%(例えば130%、140%、150%、160%、180%、200%、250%、300%、350%又は400%)、好ましくは少なくとも150%である。好ましくは、少なくとも1つの第1組成物の固化材料の引張強度は、少なくとも1つの第2組成物の固化物の引張強度の120%~400%、又は130%~350%、又は140%~300%、又は150%~250%である。
【0053】
実施形態において、少なくとも1つの第1組成物及び少なくとも1つの第2組成物は、条件(iv)、又は条件(v)、又は条件(iv)及び(v)を満たす。
【0054】
実施形態において、少なくとも1つの第1組成物及び少なくとも1つの第2組成物は、以下の条件:(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)のうちの少なくとも1つ(例えば、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、又は全て)を満たす。例えば、少なくとも1つの第1組成物及び少なくとも1つの第2組成物は、条件(i)及び(iv)、又は条件(i)及び(v)、又は条件(ii)及び(iv)、又は条件(ii)及び(v)、又は条件(i)、(ii)、(iii)及び(iv)、又は条件(i)、(ii)、(iii)及び(v)、又は条件(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)を満たす。
【0055】
第1組成物及び第2組成物の成分
硬化性成分
本発明によれば、組成物の少なくとも1つは、少なくとも1種の硬化性成分を含む。
【0056】
実施形態において、第1組成物は、少なくとも1種の硬化性成分を含む。実施形態において、第2組成物は、少なくとも1種の硬化性成分を含む。実施形態において、第1組成物及び第2組成物の両方が、少なくとも1種の硬化性成分を含む。
【0057】
前記硬化性成分は、熱、溶媒蒸発、放射線、例えばUV照射、電子ビーム及びマイクロ波、又はそれらの組み合わせによって、好ましくはUV照射又は熱、又はそれらの組み合わせによって硬化可能である。
【0058】
好ましくは、本発明に適した硬化性成分は、少なくとも1つの放射線硬化性官能基を含有することができる。
【0059】
本発明の一実施形態において、本発明の硬化性成分は、少なくとも1つの放射線硬化性官能基を含有するモノマー及び/又はオリゴマーを含む。
【0060】
好ましくは、放射線硬化性官能基は、エチレン性不飽和官能基、エポキシ基、又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0061】
好ましくは、硬化性成分中の放射線硬化性官能基の数は、硬化性成分1個の分子あたり、1~10、好ましくは1~8、例えば1~6の範囲、例えば1、2、3、4、5又は6である。
【0062】
少なくとも1つのエポキシ基を含有する硬化性成分としての非限定的な例としては、エポキシ化オレフィン、芳香族グリシジルエーテル、脂肪族グリシジルエーテル、又はそれらの組み合わせ、好ましくは芳香族又は脂肪族グリシジルエーテルを挙げることができる。
【0063】
使用可能なエポキシ化オレフィンの例としては、エポキシ化C2~C10-オレフィン、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、ビニルオキシラン、スチレンオキシド又はエピクロロヒドリンが挙げられ、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、ビニルオキシラン、スチレンオキシド又はエピクロロヒドリンが好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はエピクロロヒドリンが特に好ましく、エチレンオキシド及びエピクロロヒドリンが非常に特に好ましい。
【0064】
芳香族グリシジルエーテルとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、フェノール/ジシクロペンタジエンのアルキル化生成物、例えば2,5-ビス[(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]オクタヒドロ-4,7-メタノ-5H-インデン(CAS番号[13446-85-0])、トリス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]メタンイソマー(CAS番号[66072-39-7])、フェノールベースのエポキシノボラック(CAS番号[9003-35-4])、クレゾールベースのエポキシノボラック(CAS番号[37382-79-9])が挙げられる。
【0065】
脂肪族グリシジルエーテルの例としては、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,1,2,2-テトラキス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]エタン(CAS番号[27043-37-4])、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル(α,ω-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ポリ(オキシプロピレン)、CAS番号[16096-30-3])、及び水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(2,2-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]プロパン、CAS番号[13410-58-7])が挙げられる。
【0066】
より好ましくは、硬化性成分は少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する。
【0067】
本発明の実施形態において、エチレン性不飽和官能基は、炭素-炭素不飽和結合、例えば以下の官能基に見出されるものを含有し:アリル、ビニル、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシ、(メタ)アクリルアミド、アセチレニル、マレイミド、(メタ)アクリロイルなど;好ましくは、エチレン性不飽和官能基は、炭素-炭素不飽和二重結合を含有し;より好ましくは、エチレン性不飽和官能基は、アリル、ビニル、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシ、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリロイルから選択される。
【0068】
本発明の好ましい実施形態において、硬化性成分は、エチレン性不飽和官能基及び/又はエポキシ基に加えて、ウレタン基、エーテル基、エステル基、カーボネート基、及びそれらの任意の組み合わせを含有する。
【0069】
硬化性成分として、少なくとも1つの放射線硬化性官能基を含有するオリゴマーには、例えば、任意に連結基を介してエチレン性不飽和官能基に結合されたコア構造を含有するオリゴマーが含まれる。連結基の例としては、エーテル、エステル、アミド、ウレタン、カーボネー、又はカーボネート基を挙げることができる。いくつかの実施態様において、連結基は、エチレン性不飽和官能基の一部、例えばアクリロキシ基又はアクリルアミド基である。コア基は、アルキル(エーテル分岐鎖アルキル基)、アリール(例えば、フェニル)、ポリエーテル、ポリエステル、シロキサン、ウレタン、又は他のコア構造、及びそれらのオリゴマーであり得る。好適なエチレン性不飽和官能基は、炭素-炭素二重結合を含有する基、例えばメタクリレート基、アクリレート基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アクリロイル基、メタクリロイル基、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態において、好適なオリゴマーは、単官能及び/又は多官能アクリレート、例えばモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、又はより多官能のもの、又はそれらの組み合わせを含む。任意に、オリゴマーは、硬化性、柔軟性及び/又はさらなる特性をさらに向上させるために、シロキサン骨格を含むことができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーは、以下のクラスから選択することができる:ウレタン(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するウレタンベースのオリゴマー)、ポリエーテル(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するポリエーテルベースのオリゴマー)、ポリエステル(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するポリエステルベースのオリゴマー)、ポリカーボネート(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するポリカーボネートベースのオリゴマー)、ポリエステルカーボネート(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するポリエステルカーボネートベースのオリゴマー)、エポキシ(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するエポキシベースのオリゴマー)、シリコーン(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するシリコーンベースのオリゴマー)、又はそれらの任意の組み合わせ。好ましくは、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーは、以下のクラスから選択することができる:ウレタンベースのオリゴマー、エポキシベースのオリゴマー、ポリエステルベースのオリゴマー、ポリエーテルベースのオリゴマー、ポリエーテルウレタンベースのオリゴマー、ポリエステルウレタンベースのオリゴマー、又はシリコーンベースのオリゴマー、及びそれらの任意の組み合わせ。
【0071】
本発明の好ましい実施態様において、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーは、ウレタン繰り返し単位と、1つ、2つ又はそれ以上のエチレン性不飽和官能基、例えば炭素-炭素不飽和二重結合を含有するもの、例えば(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、アリル基及びビニル基とを含むウレタンベースのオリゴマーを含む。好ましくは、オリゴマーは、オリゴマー分子の骨格内に少なくとも1つのウレタン結合(例えば、1つ、2つ又はそれ以上のウレタン結合)、及びオリゴマー分子にペンダントしている少なくとも1つのアクリレート及び/又はメタクリレート官能基(例えば、1つ、2つ又はそれ以上のアクリレート及び/又はメタクリレート官能基)を含有する。いくつかの実施形態において、脂肪族、脂環式、又は脂肪族と脂環式の混合のウレタン繰り返し単位が好適である。ウレタンは、典型的には、ジイソシアネートとジオールとの縮合によって調製される。繰り返し単位1つ当たり少なくとも2つのウレタン部分を有する脂肪族ウレタンが有用である。さらに、ウレタンを調製するために使用されるジイソシアネート及びジオールは、同一であっても異なっていてもよい二価の脂肪族基を含む。
【0072】
一実施形態において、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するポリエステルウレタンベースのオリゴマー又はポリエーテルウレタンベースのオリゴマーを含む。エチレン性不飽和官能基は、炭素-炭素不飽和二重結合を含有するもの、例えば、アクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、アリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アクリロイル基、メタクリロイル基など、好ましくはアクリレート基及びメタクリレート基であることができる。
【0073】
好適なウレタンベースのオリゴマーは、当該技術分野で知られており、多くの異なる手順によって容易に合成することができる。例えば、多官能アルコールをポリイソシアネート(好ましくは、化学量論的過剰のポリイソシアネート)と反応させて、NCO末端プレオリゴマーを形成し、これをその後、ヒドロキシ官能性エチレン性不飽和モノマー、例えばヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートと反応させることができる。多官能アルコールは、1個の分子当たり2個以上のOH基を含有する化合物であればよく、モノマーポリオール(例えば、グリコール)、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどであってもよい。本発明の一実施形態におけるウレタンベースのオリゴマーは、(メタ)アクリレート官能基を含有する脂肪族ウレタンベースのオリゴマーである。
【0074】
好適なポリエーテル又はポリエステルウレタンベースのオリゴマーは、脂肪族又は芳香族ポリエーテル又はポリエステルポリオールと、(メタ)アクリレート基などのエチレン性不飽和官能基を含有するモノマーで官能基化された脂肪族又は芳香族ポリイソシアネートとの反応生成物を含む。好ましい実施形態において、ポリエーテル及びポリエステルは、それぞれ脂肪族ポリエーテル及びポリエステルである。好ましい実施形態において、ポリエーテル及びポリエステルウレタンベースのオリゴマーは、脂肪族ポリエーテル及びポリエステルウレタンベースのオリゴマーであり、(メタ)アクリレート基を含む。
【0075】
一実施形態において、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーの25℃での粘度は、DIN EN ISO 3219に従って測定され、200~100000cPの範囲、例えば200cP、300cP、400cP、600cP、800cP、1000cP、1500cP、2000cP、3000cP、4000cP、5000cP、6000cP、7000cP、8000cP、10000cP、20000cP、30000cP、40000cP、50000cP、60000cP、70000cP、80000cP、90000cP、95000cP、好ましくは300~60000cP、例えば400~15000cP、又は500cP~60000cPの範囲であることができる。
【0076】
モノマーは組成物の粘度を下げることができる。モノマーは、単官能又は多官能(二官能、三官能、又は四官能など)であり得る。一実施形態において、モノマーは、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、20個以下の炭素原子を有するビニル芳香族のもの、20個以下の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステル、ビニルエーテル、3~8個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸及びそれらの無水物、及びビニル置換複素環からなる群から選択することができる。
【0077】
本開示の文脈において、「(メタ)アクリレートモノマー」という用語は、(メタ)アクリレート部分を含むモノマーを意味する。(メタ)アクリレート部分の構造は以下の通りである:
【化1】
(式中、RはH又はメチルである)。
【0078】
(メタ)アクリレートモノマーは、単官能又は多官能(例えば二官能、三官能)の(メタ)アクリレートモノマーであり得る。例示的な(メタ)アクリレートモノマーとしては、C1~C20アルキル(メタ)アクリレート、C1~C10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、C3~C10シクロアルキル(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、2-(2-エトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0079】
C1~C20アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-セチル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びイソステアリル(メタ)アクリレート(ISTA)を挙げることができる。C6~C18アルキル(メタ)アクリレート、特にC6~C16アルキル(メタ)アクリレート又はC8~C12アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0080】
C1~C10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばC2~C8ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、又は3-ヒドロキシ-2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0081】
C3~C10シクロアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート又はシクロヘキシルメタクリレートを挙げることができる。
【0082】
多官能(メタ)アクリレートモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸エステル、特に多官能アルコールのアクリル酸エステル、特にヒドロキシル基が、さらなる官能基を含まないか、含むとしてもエーテル基を含むものを挙げることができる。このようなアルコールの例としては、例えば、二官能アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、及びより高い縮合度を有する対応物、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなど、1,2-、1,3-又は1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、アルコキシル化フェノール化合物、例えばエトキシル化及び/又はプロポキシル化ビスフェノール、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジメタノール、3以上の官能価を有するアルコール、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、及び対応するアルコキシル化、特にエトキシル化及び/又はプロポキシル化アルコールが挙げられる。アルコキシル化フェノール化合物の場合、アルコキシル化の程度は、好ましくは2~40、2~30、より好ましくは2~20、例えば2~6、又は8~20である。
【0083】
本開示の文脈において、「(メタ)アクリルアミドモノマー」という用語は、(メタ)アクリルアミド部分を含むモノマーを意味する。(メタ)アクリルアミド部分の構造は以下の通りである:CH2=CR1-CO-N(式中、R1は水素又はメチルである)。(メタ)アクリルアミドモノマーの具体例としては、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリン、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-(ヒドロキシメチル)メタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)メタクリルアミド、N-(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド及びN,N-ジエチルメタクリルアミドを挙げることができる。(メタ)アクリルアミドモノマーは、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0084】
20個以下の炭素原子を有するビニル芳香族ものの例としては、スチレン、及びC1~C4-アルキル置換スチレン、例えばビニルトルエン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレンを挙げることができる。
【0085】
20個以下の炭素原子(例えば2~20個又は8~18個の炭素原子)を有するカルボン酸のビニルエステルの例としては、ビニルラウレート、ビニルステアレート、ビニルプロピオネート及びビニルアセテートを挙げることができる。
【0086】
ビニルエーテルの例としては、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等が挙げられる。
【0087】
3~8個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸又はメタクリル酸を挙げることができる。
【0088】
ビニル置換複素環の例としては、モノビニル置換複素環(ここで、複素環は、2~7個の炭素原子と、N、O及びSから選択される1~4個(好ましくは1個又は2個)のヘテロ原子を含有する5~8員環である)、例えばビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルモルホリン-2-オン、N-ビニルカプロラクタム及び1-ビニルイミダゾール、ビニルアルキルオキサゾリジノン、例えばビニルメチルオキサゾリジノンを挙げることができる。
【0089】
好ましいモノマーは、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、20個以下の炭素原子を有するビニル芳香族もの、及びビニル置換複素環である。
【0090】
好ましい実施形態において、硬化性成分は、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーとモノマーの両方を含む。オリゴマーとモノマーの質量比は、10:1~1:25、好ましくは8:1~1:20、又は5:1~1:15、又は3:1~1:10の範囲、例えば2:1、1:1、1:2、1:3、1:5、1:8又は1:9であり得る。
【0091】
実施形態において、第1及び第2組成物は、硬化性成分として:
少なくとも1つの放射線硬化性官能基を含有する少なくとも1つのオリゴマー、及び
少なくとも1つの放射線硬化性官能基を含有する少なくとも1つのモノマー
を含む。
【0092】
実施形態において、第1及び第2組成物は、硬化性成分として:
少なくとも1つの放射線硬化性官能基を含有する少なくとも1つのオリゴマー、及び
少なくとも1つの単官能モノマー
を含む。
【0093】
実施形態において、第1及び第2組成物は、硬化性成分として:
以下のクラス:ウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、エポキシ、シリコーン、又はそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する少なくとも1つのオリゴマー;及び
少なくとも1つの放射線硬化性官能基を含有する少なくとも1つのモノマー
を含む。
【0094】
実施形態において、第1及び第2組成物は、硬化性成分として:
以下のクラス:ウレタンベースオリゴマー、エポキシベースオリゴマー、ポリエステルベースオリゴマー、ポリエーテルベースオリゴマー、ウレタンアクリレートベースオリゴマー、ポリエーテルウレタンベースオリゴマー、ポリエステルウレタンベースオリゴマー、又はシリコーンベースオリゴマー、及びそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する少なくとも1つのオリゴマー;及び
少なくとも1つの放射線硬化性官能基を含有する少なくとも1つのモノマー
を含む。
【0095】
実施形態において、第1及び第2組成物は、硬化性成分として:
以下のクラス:ウレタンベースオリゴマー、エポキシベースオリゴマー、ポリエステルベースオリゴマー、ポリエーテルベースオリゴマー、ウレタンアクリレートベースオリゴマー、ポリエーテルウレタンベースオリゴマー、ポリエステルウレタンベースオリゴマー、又はシリコーンベースオリゴマー、及びそれらの任意の組み合わせから選択される少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する少なくとも1つのオリゴマー;
少なくとも1つの多官能モノマー;及び
少なくとも1つの単官能モノマー
を含む。
【0096】
実施形態において、第1組成物は、硬化性成分として:
エチレン性不飽和官能基を含有するウレタンベースオリゴマー、
多官能アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、及び
少なくとも1つの単官能モノマー
を含む。
【0097】
実施形態において、第1組成物は、硬化性成分として:
(メタ)アクリレート基を含有するウレタンベースオリゴマー、
多官能アルコールの(メタ)アクリル酸エステルであって、多官能アルコールがアルコキシル化フェノール化合物であり、好ましくはアルコキシル化度が2~40である、多官能アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、及び
少なくとも1つの単官能モノマー
を含む。
【0098】
実施形態において、第1組成物は、硬化性成分として:
メタクリレート基を含有するウレタンベースオリゴマー、
多官能アルコールの(メタ)アクリル酸エステルであって、多官能アルコールがアルコキシル化フェノール化合物であり、好ましくはアルコキシル化度が8~20である、多官能アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、及び
少なくとも1つの単官能モノマー
を含む。
【0099】
実施形態において、第2組成物は、硬化性成分として:
エチレン性不飽和官能基を含有するポリエーテルウレタンベースオリゴマー、
多官能アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、及び
少なくとも1つの単官能モノマー
を含む。
【0100】
実施形態において、第2組成物は、硬化性成分として:
(メタ)アクリレート基を含有するポリエーテルウレタンベースオリゴマー、
多官能アルコールの(メタ)アクリル酸エステルであって、多官能アルコールがアルコキシル化フェノール化合物であり、好ましくはアルコキシル化度が2~40である、多官能アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、及び
少なくとも1つの単官能モノマー
を含む。
【0101】
実施形態において、第2組成物は、硬化性成分として:
アクリレート基を含有するポリエーテルウレタンベースオリゴマー、
多官能アルコールの(メタ)アクリル酸エステルであって、多官能アルコールがアルコキシル化フェノール化合物であり、好ましくはアルコキシル化度が2~6である、多官能アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、及び
少なくとも1つの単官能モノマー
を含む。
【0102】
光重合開始剤
本発明の第1組成物及び第2組成物は、少なくとも1種の光重合開始剤を含むことができる。例えば、光重合開始剤は、少なくとも1種のフリーラジカル光重合開始剤及び/又は少なくとも1種のイオン性光重合開始剤、好ましくは少なくとも1種(例えば1種又は2種)のフリーラジカル光重合開始剤を含むことができる。3D印刷用組成物に使用するために当該技術分野で知られている全ての光重合開始剤を使用することが可能であり、例えば、SLA、DLP又はPPJプロセスに適した当該技術分野で知られている光重合開始剤を使用することが可能である。
【0103】
例示的な光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、塩素化アセトフェノン、ジアルコキシアセトフェノン、ジアルキルヒドロキシアセトフェノン、ジアルキルヒドロキシアセトフェノンエステル、ベンゾイン及びその誘導体(例えばベンゾインアセテート、ベンゾインアルキルエーテル)、ジメトキシベンジオン、ジベンジルケトン、ベンゾイルシクロヘキサノール及び他の芳香族ケトン、アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキシド、アシルホスホネート、ケトスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジフェニルジチオカーボネートが挙げられる。
【0104】
例えば、フリーラジカル光重合開始剤は、ラジカル光重合を開始するために一般的に使用されるものから選択することができる。フリーラジカル光重合開始剤の例としては、Irgacure(登録商標)369、Irgacure(登録商標)TPO-L、ベンゾイン類、例えば、ベンゾイン、ベンゾインエーテル、例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、及びベンゾインアセテート;アセトフェノン類、例えば、アセトフェノン、2,2-ジメトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン及び1,1-ジクロロアセトフェノン;ベンジルケタール、例えばベンジルジメチルケタール及びベンジルジエチルケタール;アントラキノン、例えば2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tertブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン及び2-アミルアントラキノン;トリフェニルホスフィン;ベンゾイルホスフィンオキシド、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin TPO);エチル-2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート;ビスアシルホスフィンオキシド;ベンゾフェノン類、例えば、ベンゾフェノン及び4,4’-ビス(N,N’-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン;チオキサントン及びキサントン;アクリジン誘導体;フェナジン誘導体;キノキサリン誘導体;1-フェニル-1,2-プロパンジオン2-O-ベンゾイルオキシム;4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-プロピル)ケトン(Irgacure(登録商標)2959);2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン;1-アミノフェニルケトン又は1-ヒドロキシフェニルケトン、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシイソプロピルフェニルケトン、フェニル1-ヒドロキシイソプロピルケトン、及び4-イソプロピルフェニル1-ヒドロキシイソプロピルケトン、及びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0105】
光重合開始剤の具体例としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-N,N-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンの組み合わせ、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイ1-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィネート及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、及びこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0106】
光重合開始剤の量は、本発明の組成物の総質量に基づいて、0.1~10質量%の範囲、例えば0.2質量%、0.5質量%、0.8質量%、1質量%、2質量%、3質量%、5質量%、8質量%、又は10質量%、好ましくは0.1~5質量%又は0.1~3質量%の範囲であることができる。
【0107】
さらなる添加剤
実際の応用のために、任意に、本発明の組成物は、さらなる添加剤、例えば非反応性希釈剤及び/又は補助剤などをさらに含んでもよい。
【0108】
本発明に好適な非反応性希釈剤は、例えば、(ビ)シクロ脂肪族もの、例えばシクロヘキサン及びそのアルキル化誘導体、及びデカヒドロナフタレン、環状スルホキシド、例えばスルホラン、窒素複素環、例えばピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、キナルジン及びN-メチルピロリドン、及びカルボキサミド、例えばN,N-ジメチルホルムアミド及びN,N-ジメチルアセトアミドを含む。
【0109】
補助剤としての好ましい例としては、界面活性剤、難燃剤、核剤、滑剤、染料、顔料、触媒、UV吸収剤及び安定剤、例えば酸化、加水分解、光、熱又は変色に対する安定剤、無機及び/又は有機フィラー、補強材及び可塑剤を挙げることができる。加水分解防止剤としては、オリゴマー及び/又はポリマーの脂肪族又は芳香族カルボジイミドが好ましい。エージング及び有害な環境影響に対して本発明の硬化物を安定化させるために、好ましい実施形態では安定剤がシステムに添加される。
【0110】
界面活性剤は、表面活性化合物、例えばアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びそれらの混合物である。このような界面活性剤は、例えば、分散剤、可溶化剤などとして使用することができる。界面活性剤の例は、McCutcheon’s,第1巻:Emulsifiers&Detergents,McCutcheon’s Directories,Glen Rock,USA,2008(International Ed.又はNorth American Ed.)に記載されている。
【0111】
本発明の組成物が使用中に熱酸化損傷に曝される場合、好ましい実施形態では、酸化防止剤が添加される。フェノール酸化防止剤が好ましい。フェノール酸化防止剤、例えばBASF SE社のIrganox(登録商標)1010は、Plastics Additive Handbook,第5版,H.Zweifel編,Hanser Publishers,Munich,2001,98-107頁、116頁及び121頁に記載されている。
【0112】
本発明の組成物がUV光に曝される場合、好ましくはUV吸収剤でさらに安定化される。UV吸収剤は、一般に、高エネルギーのUV光を吸収してエネルギーを放散する分子として知られている。工業的に採用されている慣用のUV吸収剤は、例えば、桂皮酸エステル、ジフェニルシアンアクリレート、ホルムアミジン、ベンジリデンマロネート、ジアリールブタジエン、トリアジン及びベンゾトリアゾールの群に属する。市販のUV吸収剤の例は、Plastics Additive Handbook,第5版,H.Zweifel編,Hanser Publishers,Munich,2001,116-122頁に見出すことができる。
【0113】
上記の補助剤に関するさらなる詳細は、専門文献、例えばPlastics Additive Handbook,第5版,H.Zweifel編,Hanser Publishers,Munich,2001年に見出すことができる。
【0114】
可塑剤は、ポリマーのガラス転移温度(Tg)を下げるために使用することができる。可塑剤は、ポリマー鎖の間に入り込み、鎖の間隔を広げる(「自由体積」を増やす)ことで、ポリマーのガラス転移温度を下げ、柔らかくする。
【0115】
存在する場合、本発明の組成物中のさらなる添加剤(単数又は複数)の量は、本発明の組成物の総質量に基づいて、0~60質量%、例えば5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%、50質量%、60質量%、好ましくは0~50質量%、又は0~30質量%の範囲であってよい。
【0116】
本発明の組成物は、組成物の成分を混合することによって調製することができる。
【0117】
本発明の実施形態によれば、混合は室温又は高温(例えば40~60℃)で撹拌しながら行うことができる。全ての成分が均一に混合される限り、混合時間及び攪拌速度に特に制限はない。具体的な実施形態において、混合は、1000~3000RPM、好ましくは1500~2500RPMで5~60分間、より好ましくは6~30分間行うことができる。攪拌後、混合物を濾過することができる。この点について、濾紙又はカプセルフィルターを使用することができる。
【0118】
コア及びシェル及び3D物体の構築
本発明によれば、前記3Dモデルのコアは、生成されたデータに従って、少なくとも1つの第1組成物から構築され、前記3Dモデルのシェルは、少なくとも1つの第2組成物から構築され、前記コアは、第1ディスペンサーから少なくとも1つの第1組成物を吐出することによって構築される。
【0119】
実施形態において、シェルは、少なくとも1つの第2組成物を第2ディスペンサーから吐出することによって、少なくとも1つの第2組成物をディップコーティングすることによって、及び/又は少なくとも1つの第2組成物をスピンコーティングすることによって構築される。
【0120】
本発明によれば、吐出は、インクジェットノズルによる吐出、押し出しによる吐出、又はスプレーコーティングによる吐出を含むことができる。
【0121】
好ましい実施形態において、コアは、インクジェットノズルを介して第1ディスペンサーから少なくとも1つの第1組成物を吐出することによって構築され、シェルは、インクジェットノズルを介して第2ディスペンサーから少なくとも1つの第2組成物を吐出することによって構築される。
【0122】
本発明の3D物体は、3D印刷システムを使用して構築することができる。3D印刷システムは
図4に示している。3D印刷システムは、第1組成物又は第2組成物を含有する2つのディスペンサー(1、2)を含む。
【0123】
ディスペンサーは、複数のインクジェットノズルを有し、そこから第1組成物及び第2組成物を噴射することができる。例えば、第1組成物はディスペンサー1によって噴射され、第2組成物はディスペンサー2によって噴射される。
【0124】
3D印刷システムは、コンピュータ支援設計(CAD)システム及び硬化器(curers)をさらに含むことができる。
【0125】
3D物体は層状に構築され、各層の深さは通常、各インクジェットノズルからの出力を選択的に調整することによって制御可能である。
【0126】
好ましい実施形態によれば、コア及び/又はシェルは、等方性、異方性、及びそれらの組合せを示す2D-3D構造などの複合構造をさらに含む。
【0127】
2D-3D構造は、ハニカム、スタック、フィラメント、チェスボード、ウェーブライン、球状、円筒状、ケルビン構造、及びウェーブ構造を含む、従来の複合材料に使用されている構造から選択することができる。また、2D-3D構造は、オーセティック構造を含む負のポアソン比を有する構造から選択することもできる。
【0128】
固化
本発明によれば、工程(C)における固化は、熱、溶媒蒸発、放射線、例えばUV照射、電子ビーム及びマイクロ波、又はそれらの組み合わせによって行われる。好ましくは、工程(C)における固化は、UV照射又は熱、又はそれらの組み合わせによって行われる。
【0129】
具体的な実施形態において、照射光の波長は350~480nmの範囲、例えば355、360、365、385、395、405、420、440、460又は480nmであることができる。
【0130】
一実施形態において、工程(B)及び工程(C)は以下のように行うことができ:
(I)第1及び第2組成物の層を形成するステップ
(II)放射線を照射して、第1及び第2組成物の層の少なくとも一部を硬化させて、硬化層を形成するステップ;
(III)硬化した層上に第1及び第2組成物の新しい層を導入するステップ;
(IV)第1及び第2組成物の新しい層に放射線を適用して、新しい硬化した層を形成するステップ;及び
(V)3D物体が製造されるまで、ステップ(III)と(IV)を繰り返すステップ、
ここで、ステップ(I)及びステップ(III)は、工程(A)で生成されたデータに従って行われる。
【0131】
本発明によれば、ステップ(II)又は(IV)における硬化時間は、当業者によって、実際の適用に従ってそれぞれ決定されてもよい。例えば、各層の硬化時間は、0.5~15秒、例えば1~10秒であることができる。
【0132】
一実施形態において、方法は、ステップ(V)で得られた3D物体を全体として後硬化させて最終的な3D物体を形成する工程をさらに含む。後硬化は、UV照射、熱処理、又はそれらの組み合わせによって行うことができる。
【0133】
通常、熱処理における温度は40~160℃、好ましくは50~140℃又は50~100℃の範囲である。本発明によれば、後硬化時間は15分~500分の範囲、例えば15分、20分、60分、120分、180分、250分、300分、400分、好ましくは60分~250分であることができる。
【0134】
本開示のさらなる態様は、本発明の方法によって得られる3D物体に関する。
【0135】
本発明によれば、本発明による多相複合3D物体は、シェルのない同じサイズを有する比較用3D物体と比較すると、改善された機械的特性、特に衝撃強度及び破断伸びを有するが、弾性率と引張強度は依然として高いままである。
【0136】
本明細書において使用される、シェルのない同じサイズを有する比較用3D物体は、本発明による多相複合3D物体のシェルも同じコアの材料から形成される3D物体、すなわち、コアが本発明による多相複合3D物体のフルサイズまで延びる3D物体を意味する。具体例は、本願の実施例1又は実施例11を参照することができる。
【0137】
実施形態において、本発明による多相複合3D物体のノッチなし衝撃強度は、シェルのない同じサイズを有する比較用3D物体のノッチなし衝撃強度の少なくとも120%、好ましくは少なくとも140%又は少なくとも160%である。
【0138】
実施形態において、本発明による多相複合3D物体のノッチ付き衝撃強度は、シェルを含まない同じサイズを有する比較用3D物体のノッチ付き衝撃強度の少なくとも150%、好ましくは少なくとも200%又は少なくとも250%である。
【0139】
実施形態において、本発明による多相複合3D物体の破断伸びは、シェルを含まない同じサイズを有する比較用3D物体の破断伸びの少なくとも120%、好ましくは少なくとも130%又は少なくとも140%である。
【0140】
実施形態において、本発明による多相複合3D物体のヤング率は、シェルを含まない同じサイズを有する比較用3D物体のヤング率の少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%又は少なくとも70%である。
【0141】
3D物体には、ソール、アウターウェア、布、履物、玩具、マット、タイヤ、ホース、手袋、及びシールを含むことができる。
【実施例】
【0142】
材料と略語
Bomar BR-541S:二官能ポリエーテルウレタンアクリレート、Tgは44℃であり、粘度は60℃で3000mPa・sであり、Dymax社製。
【0143】
Bomar BR-952:二官能脂肪族ウレタンメタクリレート、Tgは159℃であり、粘度は25℃で7200mPa・sであり、Dymax社製。
【0144】
Miramer M2100:ビスフェノールA(EO)10ジアクリレート、Tgは-7℃であり、粘度は25℃で600~700であり、Miwon社製。
【0145】
Miramer M240:ビスフェノールA(EO)4ジアクリレート、Tgは42℃であり、粘度は25℃で900~1300であり、Miwon社製。
【0146】
ACMO:アクリロイルモルホリン、粘度は25℃で12~14mPa・sであり、RAHNから入手可能。
【0147】
IBOA:イソボルニルアクリレート、粘度は25℃で10mPa・sであり、IGMから入手可能。
【0148】
HBA:2-ヒドロキシブチルアクリレート、粘度は20℃で10.7mPa・sであり、BASF社から入手可能。
【0149】
TPO:Omnirad TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)、IGMから入手可能。
【0150】
方法
(1)引張試験
引張試験はASTM D638 タイプ-1に従って、Zwick Z050引張装置を用いて行った。使用したパラメータは以下を含む:開始位置でのグリップとグリップの間隔:115mm;予荷重:0.1MPa;試験速度:5mm/分。
【0151】
(2)室温でのアイゾットノッチ付き衝撃強度(ASTM-D256-10)。
【0152】
(3)室温でのアイゾットノッチなし衝撃強度(ASTM-D4812-11)。
【0153】
プリンター
Xaar 1003GS12プリントヘッドを2個搭載したNotion PPJ 3Dプリンター。
【0154】
組成物A及び組成物Bの調製
表1に示す質量量の全ての成分をプラスチックバイアルに添加し、FlackTek DAC.1 VAC-Pスピードミキサーで2000RPM、50℃で10分間混合し、すべての固形分が溶解したことを確認し、その後、孔径1μmの濾紙/カプセルフィルターで濾過して液体の硬化性組成物を得ることにより、硬化性組成物A及び組成物Bを調製した。
【0155】
【0156】
実施例1~9-アイゾットノッチなし衝撃強度に及ぼすシェル厚さの影響
CADは、3D形状上のすべての面のエリアを覆う領域を特定することによって、試料のシェルを見つけるために使用した。例えば、実施例1~9のアイゾットノッチなし衝撃強度試験の試料はASTM-D4812-11に従って作製したものであり、ここで、この試料は63.5mm×12.7mm×3.17mmの寸法を有する立方体であり、この場合、このような試料のシェルはすべての表面を覆い、6つの四辺形表面の集合体であった。
【0157】
実施例1~9の試料は、組成物Aを組成物Bとともに印刷することにより調製され、強靭なシェルを組成物Aで印刷し、コアを組成物Bで印刷した。実施例1~9は、以下の表2に示すように、0μm~1260μmの異なるシェル厚さを有した。
【0158】
試料の調製の詳細は以下の通りである:Notion PPJ 3Dプリンターを用いて、40%のUVエネルギー(約800mW/cm2、波長385nm)及び250mm/sの印刷速度で3D印刷を行うことにより、試料を直接調製した。印刷した試料を、NextDent UV硬化ボックス(UV強度6mW/cm2、波長405nm)で20分間UV後硬化し、その後、Binder VD53オーブンを用いて60℃で12時間真空乾燥した。
【0159】
実施例1~9で得られた試料のノッチなし衝撃強度を
図5と表2に示す。
【0160】
【0161】
実施例1~9から結論づけられるように、組成物Aで作られたシェルは、ノッチなし衝撃強度を著しく向上させた。
【0162】
実施例10~12及び実施例13(比較例)-機械的特性に及ぼすシェルの影響
CADは、3D形状の外側を構成するすべての平面又は曲面のエリアを覆う領域を特定することによって、試料のシェルを見つけるために使用した。
【0163】
ASTM D638-タイプ1に従って調製した引張試験試料において、シェルはすべての表面を覆い、4つの平らな四辺形表面と2つの曲面を含む。
【0164】
ASTM-D256-10に従って調製したアイゾットノッチ付き衝撃強度試験試料において、シェルはすべての表面を覆い、9つの平らな面を含む。
【0165】
ASTM-D4812-11に従って調製したアイゾットノッチなし衝撃強度試験試料において、試料は、63.5mm×12.7mm×3.17mmの寸法を有する立方体であり、この場合シェルはすべての表面を覆い、6つの平らな四辺形表面を含む。
【0166】
実施例10(参照)の試料は、組成物Aを印刷して調製した。実施例11(参照)の試料は、組成物Bを印刷して調製した。
【0167】
実施例12の試料は、組成物Aを組成物Bとともに印刷することにより調製し、ここで、強靭なシェルが組成物Aで印刷し、コアが組成物Bで印刷した。強靭なシェルの厚さは630μmであった。ヤング率、引張強度及び破断伸びを試験するための試料では、組成物Aと組成物Bの質量比は7.7:92.3であった。シェルの厚さを630μmに維持するため、ノッチ付き衝撃強度を試験するための試料では、組成物Aと組成物Bの質量比は12:88であり、ノッチなし衝撃強度を試験するための試料では組成物Aと組成物Bの質量比は10:90であった。
【0168】
実施例13(比較例)の試料は、実施例12と同じ比での組成物Aと組成物Bの混合物を印刷することにより調製した。ヤング率、引張強度及び破断伸びを試験するための試料では、組成物Aと組成物Bの質量比は7.7:92.3であった。ノッチ付き衝撃強度を試験するための試料では、組成物Aと組成物Bの質量比は12:88であり、ノッチなし衝撃強度を試験するための試料では、組成物Aと組成物Bの質量比は10:90であった。実施例12及び実施例13は、同じ比の組成物A及び組成物Bを含有するが、異なる構造を有する、すなわち、実施例12の試料はコア-シェル構造を有するが、実施例13の試料はコア-シェル構造を有さない。
【0169】
試料の調製の詳細は以下の通りである:Notion PPJ 3Dプリンターを用いて、40%のUVエネルギー(約800mW/cm2)及び250mm/sの印刷速度で3D印刷を行うことにより、試料を直接調製した。印刷した試料を、NextDent UV硬化ボックスで20分間UV後硬化し、その後、Binder VD53オーブンを用いて60℃で真空乾燥した。
【0170】
実施例10、11、12及び13で得られた試料の機械的特性を表3に示している。
【0171】
【0172】
表3の結果から結論けられるように、実施例12における組成物Aから作られる630μmのシェルは、実施例11で得られた試料と比較して、他の機械的特性をあまり失うことなく、試料の衝撃強度を大幅に増加させた。しかしながら、実施例13に示すように、組成物Aと組成物Bを同じ比で混合したものを用いた場合には、試料の衝撃強度、特にノッチ付き衝撃強度はあまり向上しなかった。
【0173】
実施例14~23-コアはさらに複合構造を含む
CADは、3D形状の外側を構成するすべての平面又は曲面のエリアを覆う領域を特定することによって、試料のシェルを見つけるために使用した。ASTM D638-タイプ1に従って調製した引張試験試料において、シェルはすべての表面を覆い、4つの平らな四辺形表面と2つの曲面を含む。
【0174】
実施例14の引張試験試料は、組成物Bを印刷して調製した。実施例15の試料は、組成物Aを印刷して調製した。
【0175】
実施例16~23の引張試験試料は、
図6、
図7及び表4に示すように、異なる材料を用いて試料のコアを構築することにより、引張試験試料に複合構造を組み込んで調製した。
【0176】
試料の調製の詳細は以下の通りである:Notion PPJ 3Dプリンターを用いて、40%のUVエネルギー(約800mW/cm2)及び250mm/sの印刷速度で3D印刷を行うことにより、試料を直接調製した。印刷した試料を、NextDent UV硬化ボックスで20分間UV後硬化し、その後、Binder VD53オーブンを用いて60℃で真空乾燥した。
【0177】
実施例14~23で得られた試料の引張特性を表4に示している。
【0178】
【0179】
表4の結果からわかるように、コア内の複合構造は、試料の機械的特性、特に破断伸びをさらに変化させ、要求に応じて機械的性能をカスタマイズすることを可能にした。
【0180】
実施例24~26-シェルとコアはさらに複合構造を含む
CADは、3D形状の外側を構成するすべての平面又は曲面のエリアを覆う領域を特定することによって、試料のシェルを見つけるために使用した。
【0181】
ASTM D638-タイプ1に従って調製した引張試験試料において、シェルはすべての表面を覆い、4つの平らな四辺形表面と2つの曲面を含む。
【0182】
アイゾットノッチなし衝撃強度試験試料において、ASTM-D4812-11に従って試料を調製し、ここで、試料は63.5mm×12.7mm×3.17mmの寸法を有する立方体であり、この場合シェルはすべての表面を覆い、6つの平らな四辺形表面を含む。
【0183】
実施例24~26の試料は、
図8及び表5に示すように、異なる材料を用いて試料のコアとシェルを構築して調製した。組成物Aから形成したシェルの厚さは630μmであった。実施例24では、コアは組成物Bから形成した。実施例25及び26では、コアは組成物A及び組成物Bから形成した。
【0184】
試料の調製の詳細は以下の通りである:Notion PPJ 3Dプリンターを用いて、40%のUVエネルギー(約800mW/cm2、波長385nm)及び250mm/sの印刷速度で3D印刷を行うことにより、試料を直接調製した。印刷した試料を、NextDent UV硬化ボックス(UV強度6mW/cm2、波長405nm)で20分間UV後硬化し、その後、Binder VD53オーブンを用いて60℃で12時間真空乾燥した。
【0185】
【0186】
実施例24~26の結果によると、シェルとコア内の複合構造の組み込みにより、機械的特性、特に衝撃強度及び破断伸びを調整することが可能になった。
【国際調査報告】