(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】光学的に透明なUV硬化及び熱硬化エポキシ組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20240905BHJP
C08G 59/42 20060101ALI20240905BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240905BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C09J163/00
C08G59/42
C09J11/06
C09J4/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516524
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 US2022043411
(87)【国際公開番号】W WO2023043757
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】フェン、 ディンソン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、 チャン ハン
(72)【発明者】
【氏名】オウヤン、 ジャンボ
【テーマコード(参考)】
4J036
4J040
【Fターム(参考)】
4J036AB07
4J036AJ08
4J036AJ09
4J036DB21
4J036EA04
4J036GA09
4J036GA21
4J036GA23
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4J040EC301
4J040FA082
4J040HB18
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4J040HD13
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4J040KA13
4J040KA14
4J040LA10
4J040MA05
4J040MA10
4J040NA17
(57)【要約】
【解決手段】
光学的透明性を有する接着剤組成物が開示される。この組成物は、飽和エポキシ官能化化合物;脂環式無水物及びカチオン触媒を包含する熱硬化系;組成物の架橋密度を制御するのに十分な量の、主に疎水性の架橋性(メタ)アクリレート;並びに光開始剤を包含し、熱硬化前に組成物の始めの固定を可能にする。この組成物は、少なくとも95%の光透過率及び<1%の黄色度(*b)を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)飽和エポキシ官能化化合物、
b)脂環式無水物及びカチオン触媒を含む熱硬化系、
c)組成物の架橋密度を制御するのに十分な量の、主に疎水性の架橋性(メタ)アクリレート、並びに
d)光開始剤、
を含む、光学的透明性を有する接着剤組成物であって、
硬化した組成物が、少なくとも95%の光透過率及び<1%の黄色度(*b)を提供する、接着剤組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂が、約65℃の温度に約1000時間さらされても光学的に透明なままである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約9MPa以上のブロックせん断試験結果によって実証されるように、65℃で72時間後のアルコール中での耐薬品性を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂が、水素化ビスフェノールAエポキシ樹脂、水素化ビスフェノールFエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂が、全組成物の重量に基づいて約60%~約80%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記脂環式無水物が、テトラヒドロフタル酸無水物(THPA)、ヘキサヒドロフタル酸無水物(HHPA)、メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA)、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(MHHPA)、及びメチルナド酸無水物(NMA)から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記脂環式無水物が、全組成物の重量に基づいて約15%~約30%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記無水物/前記エポキシ樹脂の比が約1.1対約0.7である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記触媒が、アミノ非含有触媒又はイミダゾール非含有触媒である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記触媒が、亜鉛触媒、錫触媒及びホスフィン触媒から成る群から選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
前記触媒が、トリブチルメチルアンモニウムブロミド、トリブチル(メチル)ホスホニウムジメチルホスファート、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
主に疎水性の架橋性(メタ)アクリレートが、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート、ポリウレタントリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートジ(ペンタメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ジグリセロールジアクリレート、ジグリセロールテトラ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールエトキシ化トリ(メタ)アクリレート、グリセリルプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエン-ポリウレタン-アクリル酸エステルブロック共重合体、ポリウレタン-アクリル酸エステルブロック共重合体、ポリウレタン-シリコーン-アクリル酸エステル共重合体、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記架橋性(メタ)アクリレートが、全組成物の重量に基づいて約15%~約50%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記光開始剤が、ベンゾインケタール、ヒドロキシケトン、アシルホスフィンペルオキシド、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記光開始剤が、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシル-1,2-ジフェニルエチル-1-ケトン;トリメチルベンゾイルジフェニルオキシホスフェート、1-ヒドロキシルシクロヘキシルベンゾフェノン及び2-メチル1-[4-メチルチアフェニル]-2-ジメチルチア-プロピル-1-ケトンから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記光開始剤が、全組成物の重量に基づいて約0.05%~約10%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、及びそれらの組み合わせから成る群から選択されるモノ-(メタ)アクリレートをさらに包含する、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
基材と請求項1に記載の組成物とを含む光学部品。
【請求項19】
前記光学部品が光半導体素子を含む、請求項15に記載の光学部品。
【請求項20】
前記光学部品がディスプレイモジュールを含む、請求項15に記載の光学部品。
【請求項21】
前記光学部品がカメラモジュールを含む、請求項15に記載の光学部品。
【請求項22】
飽和エポキシ官能化化合物、カチオン触媒、光開始剤を含む第1パートと、
主に疎水性の架橋性(メタ)アクリレート及び脂環式無水物を含む第2パートと、
を含む、二液型接着剤組成物であって、
硬化した組成物が、少なくとも95%の光透過率及び<1%の黄色度(*b)を提供する、二液型接着剤組成物。
【請求項23】
第1パートが架橋性(メタ)アクリレートをさらに包含する、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
飽和エポキシ官能化化合物、脂環式無水物、カチオン触媒、主に疎水性の架橋性(メタ)アクリレート及び光開始剤を含む成分を混合する工程を含む、接着剤組成物の製造方法であって、
硬化した組成物が、少なくとも95%の光透過率及び<1%の黄色度(*b)を提供する、製造方法。
【請求項25】
以下の方法によって形成された接着製品:
(i)飽和エポキシ官能化化合物、カチオン触媒、脂環式無水物、主に疎水性の架橋性(メタ)アクリレート及び光開始剤を含む混合物を形成する工程、
(ii)前記混合物をUVエネルギーにさらして、架橋性(メタ)アクリレートのフリーラジカル重合を引き起こし、混合物を部分的に硬化させる工程;並びに
(iii)工程(ii)の部分的に硬化した混合物をさらに熱硬化させて、少なくとも95%の光透過率及び<1%の黄色度(*b)を有する製品を形成する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紫外線(UV)硬化及び熱硬化の両方が可能であり、光学的透明性を経時的に保持して光学用途に有用である、光学的に透明なエポキシ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、エポキシ組成物は、様々な最終用途に対応するために、並びに特に強度、耐久性、耐収縮性の向上等の物理的特性を強化するために、粘度調整剤として包含される無機充填剤又は顔料等の成分を必要とする。例えば、シリカ、ガラス繊維、木材等のセルロース系材料が一般的なエポキシ充填剤である。例えば、米国特許出願公開第20110298003号明細書には、無機充填剤を除いた硬化生成物の屈折率よりも大きい屈折率を有する、エポキシ樹脂、硬化剤、及び無機充填剤を含有する光学用エポキシ樹脂組成物が記載されている。この従来の組成物は、本発明とは異なり、充填剤成分を必要とする。
【0003】
充填剤は従来のエポキシ樹脂系に利点を提供するが、組成物が当初に光学的に透明であり、経時でもその状態を維持すること、すなわち、経時的に黄変しにくいことを必要とする用途には、通常有用ではない。
【0004】
開始剤を含まないハイブリッドエポキシ接着剤を含有する一液型組成物が、「高性能UV硬化及び熱硬化ハイブリッドエポキシ接着剤」、ポリマー及び複合材料に関するIOP会議(PCM 2017)に記載されている。この記事には、ビスマレイミド化合物、部分的にアクリル化されたビスフェノールAエポキシ樹脂、アクリルモノマー、エポキシ樹脂及び潜在性硬化剤を含有するハイブリッド組成物について記載されている。
【0005】
通常、エポキシベースの組成物は、実質的な光透過性/半透明性、つまり、硬化した材料を通して見ることができ、光が通過できる能力を必要とする用途に使用するのに十分な光学的透明性を提供しない。これは、エポキシ材料、無機充填剤及び他の遮光添加剤の選択、硬化系及び他の添加剤の選択を包含する、使用する材料の固有の不透明性が原因である可能性があり、これら全てが時間の経過と共に光学的透明性又はその欠如に寄与する。粘度調整剤は、目的の基材上に堆積された組成物の望ましくない移動を防止するために、組成物の粘度及びレオロジーを制御し得るが、一般に光学的透明性に悪影響を与える。芳香族エポキシ又は酸化性基含有エポキシにも同じことが当てはまる。これらのエポキシは、官能基に対する酸化効果により、当初に光学的透明性を有さない、又は経時で光学的透明性を失う。さらに、光遮断成分の組み込みに起因して光が効果的に透過して硬化を開始したり又は完全に硬化したりできない組成物では、光硬化機構は一般に効果的ではない。
【0006】
経時で黄変するのは望ましくなく、前述したように酸化の影響が原因である可能性がある。経時的な黄色化を除去するために、本発明は、酸化の可能性を最小限に抑え、その結果、経時的に容易に酸化する可能性のある二重結合又は他の基の存在を最小限に抑えることを目指す。したがって、本発明の各成分の選択は、これを念頭に置いて行われる。
【0007】
現在、UV硬化及び熱硬化を使用して硬化可能であり、当初に光学的に透明であり、経時でも透明のままであり、強度を高める又は得るための充填剤又は粘度調整剤等の追加成分を必要としないエポキシ組成物が必要とされている。望ましくは、そのような組成物は、強力な接着特性、耐薬品性、及び一連の柔軟性特性も示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第20110298003号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、上で論じた問題の解決策を提供し、優れた光学的透明性と耐薬品性のバランス、強度及び柔軟性、並びに当業者に知られている他の利点を提供する。本開示は、当初に及び経時的に光学的透明性を有するエポキシ組成物を提供する。組成物は、初めにUV硬化を受けて組成物を固定し、それにより基材上への組成物の堆積を制御することができる。初めの固定(つまり、粘着付与)により、接着剤の移行を心配することなく、製造/組立プロセスでのその後の取り扱いが可能になる。UVへの暴露を使用して組成物が初めに固定されると、熱硬化機構/条件を使用して組成物を完全に硬化させることができる。UV硬化機構を使用できるので、塗布時の接着剤の初期粘着性が向上し、塗布中の粘度制御の問題が軽減される。上述したように、従来、使用中の接着剤の堆積及び移動を制御するために、必要に応じて充填剤等の粘度調整剤が必要であった。接着剤を熱条件にさらすことによって完全に硬化させることができる。本開示の光学的に透明な(すなわち、実質的に透明な又は実質的に半透明な)エポキシ組成物は、一液型又は二液型の組成物に配合して、様々な用途、特に光半導体素子、ディスプレイモジュール、カメラモジュール及び他の光学用途等の光学用途に使用することができる。
【0010】
本開示は:
a)飽和エポキシ官能化化合物、
b)脂環式無水物及びカチオン触媒を包含する熱硬化系、
c)組成物の架橋密度を制御するのに十分な量の架橋性(メタ)アクリレート、並びに
d)光開始剤、
を包含する光学的透明性を有する接着剤組成物であって、
硬化した組成物が、少なくとも95%の光透過率及び<1%の黄色度(*b)を提供する、接着剤組成物を包含する。この光透過率は光学的透明度と相関する。
【0011】
また本発明の組成物は、飽和エポキシ官能化化合物、カチオン触媒、光開始剤を包含する第1パートと;架橋性(メタ)アクリレート及び脂環式無水物を包含する第2パートとを包含する二液型エポキシ接着剤組成物を包含してもよく、硬化した組成物は、少なくとも95%の光透過率及び<1%の黄色度(*b)を提供する。
【0012】
本発明の組成物は、飽和エポキシ官能化化合物、脂環式無水物、カチオン触媒、架橋性(メタ)アクリレート及び光開始剤を包含する成分を混合する工程を含む接着剤組成物の製造方法も包含してよい。硬化した組成物は、少なくとも95%の光透過率及び<1%の黄色度(*b)を提供する。
【0013】
また本発明の組成物は、
(i)飽和エポキシ官能化化合物、カチオン触媒、脂環式無水物、架橋性(メタ)アクリレート及び光開始剤を包含する混合物を形成する工程;
(ii)前記混合物をUVエネルギーにさらして架橋性(メタ)アクリレートのフリーラジカル重合を引き起こし、前記混合物を部分的に硬化させる工程;並びに
(iii)工程(ii)の部分的に硬化した混合物をさらに熱硬化させて、少なくとも95%の光透過率及び<1%の黄色度(*b)を有する製品を形成する工程;
の方法によって形成される接着製品を包含してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の開示の目的のためには、(メタ)アクリレートという用語は、メタクリレート及びアクリレートを包含する。
【0015】
単数形「a」、「an」、「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を包含する。
【0016】
数値に関連して本明細書で使用される「約」又は「およそ」は、数値±10%、好ましくは±5%、より好ましくは±1%以下を指す。
【0017】
本明細書で使用される「含む(comprising)」及び「含む(comprises)」という用語は、「包含する(including)」、「包含する(includes)」、「含有する(containing)」又は「含有する(contains)」と同義であり、包括的又は無制限であり、追加の列挙されていない部材、要素、又は方法工程を排除するものではない。
【0018】
本明細書で使用される少なくとも1は、1以上、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9以上を意味する。成分に関する表示は、分子の絶対数ではなく、成分の種類を指す。したがって、「少なくとも1つのポリマー」は、例えば、少なくとも1種類のポリマー、すなわち、1種類のポリマー又はいくつかの異なるポリマーの混合物が使用されてよいことを意味する。
【0019】
量、濃度、寸法、及び他のパラメータが、範囲、好ましい又は所望の範囲、上限値、下限値、又は好ましい上限値及び限界値の形で表される場合、文脈上、得られる範囲が明確に言及されているかどうかに関係なく、上限又は好ましい値と下限又は好ましい値とを組み合わせることによって得られる範囲も具体的に開示されることを理解されたい。
【0020】
本明細書では、好ましい(Preferred)、好ましくは(preferably)、又は望ましい(desired)、望ましくは(desirably)は、特定の状況下で特定の利益をもたらす可能性のある開示の実施形態を指すために頻繁に使用される。しかしながら、1つ又は複数の好ましい又は望ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを意味するものではなく、それらの他の実施形態を本開示の範囲から除外することを意図するものではない。
【0021】
特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、ポリマーに言及する場合の分子量という用語は、そのポリマーの数平均分子量(Mn)を指す。数平均分子量Mnは、末端基分析(DIN EN ISO 4629に準拠したOH数、EN ISO 11909に準拠した遊離NCO含有量)に基づいて計算することができ、又は溶離液としてTHFを使用したDIN 55672に準拠したゲル浸透クロマトグラフィーによって決定することができる。
【0022】
本発明の組成物は、光学的透明性と鮮明な色を経時的に維持しながら、優れた機械的耐性と耐薬品性のバランスを達成することが実証されている成分の組み合わせを有するエポキシベースの組成物を包含する。これらの成分は(1)飽和エポキシ官能化化合物;(2)(i)脂環式無水物及び(ii)カチオン触媒を包含する熱硬化系;(3)組成物の架橋密度を制御するのに十分な量の架橋性(メタ)アクリレート;並びに(4)光開始剤を包含する。
【0023】
組成物は、硬化すると、少なくとも95%の光透過率及び少なくとも1%未満の黄色度(*b)を与える。組成物は、多くの非常に有用な特性及び利点を備えており、その中には、架橋成分を調整することで調整できる一連の柔軟性や、約9MPa以上のブロックせん断試験結果で実証されているように、65℃で72時間後のアルコール中での耐薬品性が包含される。
【0024】
本組成物の成分の選択は、出発物質ができる限り光学的に透明であり(光学的透明性の要件を満たす)、光学的透明性が許容できないほど経時的に黄変しないように行われる。
【0025】
エポキシ官能化成分
本発明の組成物は、飽和エポキシ官能化化合物を包含する。不飽和エポキシ官能化化合物を使用すると、光学用途に十分な当初透明度を欠くか、時間の経過とともに早期に黄変するか、あるいはその両方が生じることが判明している。したがって、本発明者らは、飽和エポキシ官能化化合物の使用により、当初に及び経時的に光学的透明性が得られることを発見した。
【0026】
有用な飽和エポキシ官能化化合物の種類の例としては、水素化ビスフェノールAエポキシ樹脂、水素化ビスフェノールFエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
このような飽和化合物の市販の例としては、ヘクシオンエポネックス1510;デナコール252、JER YX8034;Jer YX8000;Jer YX8000D;及びJer YX8040が挙げられる。
【0028】
有用な飽和脂環式エポキシ官能化化合物としては、エパロイ8220、及びダウシラキュアUVR-6110脂環式エポキシド;及びEHPE3150等の多官能性脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。
【0029】
さらに、強化された靭性及び伸び特性を有する有用な市販の飽和エポキシ官能化化合物としては、ニッソー-JP100/200、PolyBD605E、アデカEPU73B、YX7400、カネカMXシリーズ、JERスペシャルティYX-7400、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0030】
飽和エポキシ官能化化合物は、全組成物の重量に基づいて約60%~約80%の量で存在してよい。
【0031】
熱硬化系(脂環式無水物及びカチオン触媒)
本発明の組成物は、脂環式無水物及びカチオン触媒を包含する熱硬化系を包含する。芳香族無水物とは対照的に、液体の脂環式無水物が本発明の組成物に使用される。芳香族無水物は、当初でも経時でも必要な光学的透明性を実現できないため、有用ではないことが判明している。
【0032】
有用な脂環式無水物の例としては、テトラヒドロフタル酸無水物(THPA)、ヘキサヒドロフタル酸無水物(HHPA)、メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA)、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(MHHPA)、メチルナド酸無水物(NMA)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。無水物は、全組成物に基づいて約15重量%~約40重量%の量で、より望ましくは全組成物に基づいて約20重量%~約35重量%の量で、さらに望ましくは全組成物に基づいて約25重量%~約30重量%の量で存在してよい。無水物/エポキシ樹脂の比は、約1.1~約0.7、より望ましくは約0.85~約0.95であってよい。
【0033】
カチオン性触媒は、非アミノ触媒、非イミダゾール含有触媒、及びそれらの組み合わせから選択してよい。有用な触媒の例としては、亜鉛触媒、錫触媒及びホスフィン触媒から選択される触媒が挙げられる。有用な触媒の具体例としては、トリブチルメチルアンモニウムブロミド、トリブチル(メチル)ホスホニウムジメチルホスファート、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。カチオン触媒は、熱硬化を効果的に触媒するのに十分な量で存在してよいが、一般には、全組成物の約0.1重量%~約2重量%の量で存在してよく、より望ましくは全組成物の約0.2重量%~約1重量%の量で存在してよく、さらにより望ましくは全組成物の約0.4重量%~約0.8重量%の量で存在してよい。
【0034】
架橋性(メタ)アクリレート成分
本発明の組成物は、主に非極性架橋性(メタ)アクリレートを、組成物の架橋密度を制御し、所望の耐薬品性及び柔軟特性を得るのに十分な量で包含する。「主に非極性」とは、(メタ)アクリレートに含有されるヒドロキシ基又はアルコキシ基が10個以下であることを意味し、これらの基は、加水分解により耐薬品性が低下する。望ましくは、架橋性(メタ)アクリレート成分は比較的非極性である、すなわち、親水性よりも疎水性が高い。これにより、より極性の高い材料が提供するものよりもアルコール及び水の老化安定性が向上することが確認されている。望ましくは、架橋性(メタ)アクリレートは、優れた耐薬品性、並びに向上した柔軟性及び伸び特性を提供する。本発明の組成物は、架橋密度を制御するために架橋性(メタ)アクリレートの量を慎重に選択することによって、柔軟性と耐薬品性の維持との間のバランスを可能にする。単相組成を維持し分離を防止するために、架橋性(メタ)アクリレートの選択がエポキシ化合物と適合することも重要である。架橋性(メタ)アクリレートの量は、接着力、耐薬品性、柔軟性及び弾性率に大きな影響を与える。架橋性(メタ)アクリレートは、一般に、全組成物の約15重量%~約45重量%の量で存在してよく、より望ましくは全組成物の約20重量%~約40重量%の量で存在してよく、さらにより望ましくは、全組成物の約25重量%~約35重量%の量で存在してよい。
【0035】
有用な架橋性(メタ)アクリレートの非限定例としては、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート、ポリウレタントリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートジ(ペンタメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ジグリセロールジアクリレート、ジグリセロールテトラ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールエトキシ化トリ(メタ)アクリレート、グリセリルプロポキシレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエン-ポリウレタン-アクリル酸エステルブロック共重合体、ポリウレタン-アクリル酸エステルブロック共重合体、ポリウレタン-シリコーン-アクリル酸エステル共重合体、及びそれらの組み合わせから選択されるものが挙げられる。
【0036】
架橋性(メタ)アクリレート成分は、架橋度を制御し、したがって柔軟性及び耐薬品性等の特性の制御に寄与するために、様々な量で存在してよい。一般に、架橋性(メタ)アクリレートは、全組成物の約15重量%~約45重量%、望ましくは全組成物の約20重量%~約40重量%、さらにより望ましくは約25重量%~約35重量%の量で存在してよい。最も望ましくは、架橋性(メタ)アクリレートの量は、所望の架橋度、したがって所望の柔軟性及び耐薬品性を得るために、これらの範囲内で調整される。
【0037】
架橋性(メタ)アクリレート成分は、望ましくは約-40℃~約60℃、より望ましくは約-40℃~約10℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0038】
光開始剤成分
本発明の組成物用に選択される他の成分と同様に、光開始剤成分は、実質的に透明で安定である、すなわち経時的な黄変又は変色に寄与しないように選択されなければならない。有用な光開始剤の種類としては、ベンゾインケタール、ヒドロキシケトン、アシルホスフィンペルオキシド、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。有用な光開始剤化合物の具体例としては、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシル-1,2-ジフェニルエチル-1-ケトン、トリメチルベンゾイルジフェニルオキシホスフェート、1-ヒドロキシルシクロヘキシルベンゾフェノン、2-メチル1-[4-メチルチアフェニル]-2-ジメチルチア-プロピル-1-ケトン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
光開始剤は、全組成物の重量に基づいて約0.05%~約5%の量で、望ましくは全組成物の重量に基づいて約0.1%~約3%の量で、さらにより望ましくは、全組成物の重量に基づいて約0.2%~約0.5%の量で存在してもよい。
【0040】
添加剤
本開示の組成物は、当初に又は経時的に光学的透明性に悪影響を与えることなく、最終製品の機械的及び化学的特性を改変するために選択される、様々な追加成分を包含してよい。したがって、色に寄与する材料、又は経時で変色又は黄変する材料は望ましくない。
【0041】
例えば、本発明の組成物は、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、及びそれらの組み合わせから選択されるモノ-(メタ)アクリレートをさらに包含してよい。
【0042】
ポリブタジエンウレタンアクリレートシリーズBR-640D、641D、641E、643等のブロック樹脂は、本開示において有用な添加剤である。有用な特定の例としては、SR833S及びSR348が挙げられる。BR-640D、641D、641E、643は、2つの官能性を有するポリブタジエン(PBd)ウレタンアクリレートオリゴマーであり、コネチカット州トリントンの株式会社ダイマックスから入手可能である。これらの材料は疎水性が非常に高い。
【0043】
組成物は、10~50秒間LED硬化されて固定され、30~70分間熱硬化される。
【0044】
光学特性
本発明の組成物は、以下の光学特性を有するように設計された:
a)透過率:>94%
b)b*<1%
c)ヘイズ<1.0。
光学特性は次のように測定した:2枚のガラススライドの間に接着剤の層(この層は、12.5ミル(約318μm)のコーティング厚さを有する)を配置し、次に、LED硬化によって接着剤を硬化して固定し、続いて、前述のように熱硬化することによって、本発明の組成物のそれぞれの積層試料を準備した。試料が完全に硬化した後、ASTM D1003に従って、データカラー社から入手可能なデータカラー650装置を使用して、透過率、ヘイズ及び黄色度b*値について試験した。
【実施例】
【0045】
以下の表1及び表2は、本発明の組成物を示す。表1は本発明の二液型組成物(A)を示し、表2は一液型組成物(C~E)を示す。これらの組成物の試験結果を表3に示す。
【0046】
ブロックせん断試験を、実質的にASTM D905-08(2008)「圧縮荷重によるせん断における接着剤結合の強度特性」に従って実行した(1インチ×1インチのガラス、1/4インチの重複)。
【0047】
以下の機械的特性は、本発明の組成物にとって許容可能であり、望ましいと考えられる。
【0048】
>20MPaの引張強度が望ましい。伸びに関しては、少なくとも>2%、望ましくは>10%の伸びが望ましい。>400MPaの弾性率が望ましい。化学老化接着特性:当初(老化前)>15MPa;化学老化後>10MPa。
【0049】
【0050】
【0051】
比較の組成物
以下の比較用の二液型組成物を、本明細書で論じる本発明の調製方法に従って配合し、引張強度(Mpa)、引張係数(Mpa)及び伸び%について試験し、さらに異なる条件下で接着特性を測定した。接着試験では基材からの剥離が見られ、その結果、有用な配合物としては不合格であった。これは主に、IPA/水の熱浸漬で剥離したEPON863エポキシの極性基に起因しており、耐薬品性には意図的な試薬の選択が重要であることを示している。
【0052】
比較の一液型組成物Dも配合し、以下の表3に示すとおりである。組成物を試験し、その結果を以下の表4に示す。選択したエポキシは飽和であるが、架橋性(メタ)アクリレートは極性が高過ぎ(全アクリレート成分中に合計13個のアルコキシ基)、(メタ)アクリレート上のこれらの親水基は化学浸漬試験における層間剥離に寄与すると考えられ、したがって本発明の一部ではない。
【0053】
比較の二液型組成物Eを配合し、表5に示す。組成物Fの試験結果を表6に示す。試験結果に反映されているように、この組成物は機械的試験及び光学的透明性の要件において不合格であった。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【国際調査報告】