(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】計測方法および装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516530
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2022072840
(87)【国際公開番号】W WO2023041274
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】コーレン、アルマン、ユージーン、アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】クーン、ウィレム、マリー、ジュリア、マルセル
(72)【発明者】
【氏名】コネンベルフ、アレクサンダー、プラセティア
(72)【発明者】
【氏名】タッカー、トゥーニス、ヴィレム
(72)【発明者】
【氏名】デン ボエフ、アリー、ジェフリー
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197CA03
2H197CA06
2H197HA03
2H197JA22
2H197JA23
(57)【要約】
【解決手段】計測方法および関連装置が開示される。この方法は、第1の画像を取得することであって、前記第1の画像は前記画像をキャプチャするために使用される光学システムの1つまたは複数の非アイソプラナティック収差を受けることと、以下の操作:前記第1の画像に対するフィールド空間におけるフィールド非アイソプラナティック補正操作であって、前記フィールド空間が光学システムのフィールド面に対応する操作、および前記第1の画像に対する瞳空間における瞳非アイソプラナティック補正操作であって、前記瞳空間が光学システムの瞳面に対応する操作、のうちの1つまたは両方を実行することによって、前記1つまたは複数の非アイソプラナティック収差の影響について前記第1の画像を非反復的に補正することと、を含む。前記1つまたは複数の非アイソプラナティック収差は、物体の歪みおよび/または瞳の歪みと組み合わされたコンボリューションとして記述可能なクラスの非アイソプラナティック収差を含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の画像を取得することであって、前記第1の画像は前記画像をキャプチャするために使用される光学システムの1つまたは複数の非アイソプラナティック収差を受けることと、
以下の操作:
前記第1の画像に対するフィールド空間におけるフィールド非アイソプラナティック補正操作であって、前記フィールド空間が光学システムのフィールド面に対応する操作、および
前記第1の画像に対する瞳空間における瞳非アイソプラナティック補正操作であって、前記瞳空間が光学システムの瞳面に対応する操作、
のうちの1つまたは両方を実行することによって、前記1つまたは複数の非アイソプラナティック収差の影響について前記第1の画像を非反復的に補正することと、
を含み、
前記1つまたは複数の非アイソプラナティック収差は、物体の歪みおよび/または瞳の歪みと組み合わされたコンボリューションとして記述可能なクラスの非アイソプラナティック収差を含む、計測方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの非アイソプラナティック補正操作を実行することは、
第1クラスの非アイソプラナティック収差の影響を補正する前記フィールド非アイソプラナティック補正操作、および
第2クラスの非アイソプラナティック収差の影響を補正する前記瞳非アイソプラナティック補正操作、
のうちの1つまたは両方を実行することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1クラスの非アイソプラナティック収差は、前記フィールド空間における歪みによって補正可能な前記非アイソプラナティック収差を含み、前記第2クラスの非アイソプラナティック収差は、前記瞳空間の歪みによって補正可能な前記非アイソプラナティック収差を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1クラスの非アイソプラナティック収差のみの影響を補正するために前記フィールド非アイソプラナティック補正操作のみを実行すること、または前記第2クラスの非アイソプラナティック収差のみの影響を補正するために前記瞳非アイソプラナティック補正操作のみを実行することを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットおよび前記第2クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットを補正することを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記適切なサブセットは、前記非アイソプラナティック収差の記述をフィールド座標の第1スカラー関数と瞳座標の第2スカラー関数に近似因数分解することによって決定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の画像は、複素フィールド表現を含み、
前記第1の画像の順方向フーリエ変換を実行して、変換された画像を取得することと、
前記瞳非アイソプラナティック補正操作を実行して、瞳空間における前記第2クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットを補正することと、
フィールド表現に対して逆方向フーリエ変換を実行することと、
前記フィールド非アイソプラナティック補正操作を実行して、フィールド空間における前記第1クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットを補正することと、
を含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記瞳非アイソプラナティック補正操作を実行して前記第2クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットを補正することと、前記フィールド非アイソプラナティック補正操作を実行して前記第1クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットを単一の補正操作で補正することと、を含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの非アイソプラナティック補正操作は、歪み演算を含む、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのアイソプラナティック収差を補正することをさらに含む、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記フィールド空間内で少なくとも1つのアイソプラナティック補正操作を実行することによって補正可能な第1クラスのアイソプラナティック収差、および/または前記瞳空間内で少なくとも1つのアイソプラナティック補正操作を実行することによって補正可能な第2クラスのアイソプラナティック収差を補正することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の画像は、リソグラフィプロセスによって基板上に形成された構造の画像を含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記光学システムは、5つ未満のレンズ素子を有する対物レンズシステムを備える、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
基板上の少なくとも1つの構造を測定するように動作可能な計測装置であって、
i)請求項1から13のいずれかに記載の方法を実行するように動作可能なプログラム命令を含むコンピュータプログラムを含む非一時的コンピュータプログラムキャリアと、ii)前記非一時的コンピュータプログラムキャリア上に含まれるコンピュータプログラムを実行するように動作可能なプロセッサと、を備える処理装置を備え、
前記処理装置は、請求項1から13のいずれかに記載の方法を実行するように動作可能である、計測装置。
【請求項15】
非平面光学素子またはレンズ素子の数が5つ未満である複数の非平面光学素子またはレンズ素子と、
物体歪みおよび/または瞳歪みと組み合わされたコンボリューションとして記述可能なクラスの非アイソプラナティック収差以外の無視できる非アイソプラナティック収差と、
を備える対物レンズシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]
本出願は、2021年9月14日に出願された欧州出願第21196655.1号および2021年11月22日に出願された欧州出願21209476.7号の優先権を主張し、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、例えば、基板上の構造の特性を決定するために使用され得る計測方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、基板上に所望のパターンを付与するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用することができる。リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイス(例えば、マスク)のパターン(「設計レイアウト」または「設計」とも呼ばれる)を、基板(例えばウェハ)上に設けられた放射感応性材料(レジスト)の層に投影することができる。
【0004】
基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用することができる。この放射の波長は、基板上に形成できるフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用されている代表的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm、13.5nmである。4~20nmの範囲内、例えば6.7nmまたは13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置を用いて、例えば波長193nmの放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さいフィーチャを基板上に形成することができる。
【0005】
低k1リソグラフィを使用して、リソグラフィ装置の古典的な解像限界よりも小さい寸法のフィーチャを処理することができる。このようなプロセスでは、解像度の式はCD=k1×λ/NAとして表すことができる。ここで、λは使用する放射の波長、NAはリソグラフィ装置の投影光学系の開口数、CDは「限界寸法」(通常、印刷される最小のフィーチャサイズであるが、この場合はハーフピッチ)およびk1は経験的な解像度係数である。一般に、k1が小さいほど、特定の電気的機能と性能を実現するために回路設計者が計画した形状と寸法に似たパターンを基板に再現することが難しくなる。これらの困難を克服するために、高度な微調整ステップをリソグラフィ投影装置および/または設計レイアウトに適用することができる。これらには、たとえば、NAの最適化、カスタマイズされた照明スキーム、位相シフトパターニングデバイスの使用、設計レイアウトにおける光学近接効果補正(OPC:optical proximity correction、「光学補正およびプロセス補正」とも呼ばれる)などの設計レイアウトのさまざまな最適化、または一般に「解像度向上技術」(RET:resolution enhancement techniques)として定義されている他の方法が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、リソグラフィ装置の安定性を制御するための厳しい制御ループを使用して、低k1でのパターンの再現を改善することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リソグラフィプロセスでは、例えばプロセス制御および検証のために、作成された構造の測定を頻繁に行うことが望ましい。このような測定を行うための様々なツールが知られており、これには走査型電子顕微鏡やスキャトロメータなどの様々な形態の計測装置が含まれる。このようなツールを指す一般的な用語は、計測装置または検査装置であり得る。
【0007】
ホログラフィック画像から位相情報を抽出できるようにするホログラフィック計測ツールが知られている。参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願WO2019197117A1は、基板上に製造された構造の特性、例えばオーバーレイを決定するための、暗視野デジタルホログラフィック顕微鏡(df―DHM)に基づく方法および計測装置を開示している。
【0008】
計測ツールは、補正すべき収差を含むレンズシステムを有する場合がある。これは、例えばコストおよび/または複雑さを軽減するためにレンズシステムが簡素化されている場合に特に当てはまる。これらの収差には、アイソプラナティック(isoplanatic)なものもあれば、非アイソプラナティック(non-isoplanatic)なものもある。収差が非アイソプラナティックである場合でも、これらの収差の少なくとも一部を補正することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲および詳細な説明に開示されている。
【0010】
本発明の第1の態様では、第1の画像を取得することであって、前記第1の画像は前記画像をキャプチャするために使用される光学システムの1つまたは複数の非アイソプラナティック収差を受けることと、以下の操作:前記第1の画像に対するフィールド空間におけるフィールド非アイソプラナティック補正操作であって、前記フィールド空間が光学システムのフィールド面に対応する操作、および前記第1の画像に対する瞳空間における瞳非アイソプラナティック補正操作であって、前記瞳空間が光学システムの瞳面に対応する操作、のうちの1つまたは両方を実行することによって、前記1つまたは複数の非アイソプラナティック収差の影響について前記第1の画像を非反復的に補正することと、を含み、前記1つまたは複数の非アイソプラナティック収差は、物体の歪みおよび/または瞳の歪みと組み合わされたコンボリューションとして記述可能なクラスの非アイソプラナティック収差を含む、計測方法が提供される。
【0011】
本発明の第2の態様では、非平面光学素子またはレンズ素子の数が5つ未満である複数の非平面光学素子またはレンズ素子と、物体歪みおよび/または瞳歪みと組み合わされたコンボリューションとして記述可能なクラスの非アイソプラナティック収差以外の無視できる非アイソプラナティック収差と、を備える対物レンズシステムが提供される。
【0012】
本発明のさらなる態様では、適切な装置、関連する処理装置および計測装置上で実行されるときに第1の態様の方法を実行するように動作可能なプログラム命令を含むコンピュータプログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の実施形態は、添付の概略図を参照して、例としてのみ説明される。
【
図3】半導体製造を最適化するための3つの主要技術間の連携を表す、全体的なリソグラフィの概略図である。
【
図5】
図5(a)は、第1の対の照明アパーチャを使用する本発明の実施形態に係るターゲットの測定に使用する暗視野スキャトロメータの概略図であり、
図5(b)は、所与の照明方向におけるターゲット格子の回折スペクトルの詳細を示す図であり、
図5(c)は、回折ベースのオーバーレイ測定にスキャトロメータを使用する際にさらなる照明モードを提供する第2の対の照明アパーチャを示す図であり、
図5(d)は、第1の対のアパーチャと第2の対のアパーチャを組み合わせた第3の対の照明アパーチャを示す図である。
【
図6】一実施形態に係る、1つまたは複数の非アイソプラナティック収差の影響について前記画像を非反復的に補正する方法のフローチャートである。
【
図7】本明細書に開示される収差補正方法と組み合わせて、精密計測ツールの対物レンズシステムとして使用され得るレンズシステムの概略図である。
【
図8】本明細書に開示されるシステムおよび/または方法を制御するためのコンピュータシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書では、「放射線」および「ビーム」という用語は、紫外線(例えば、波長が365、248、193、157または126nm)およびEUV(極端紫外線放射、例えば、約5~100nmの範囲の波長を有する)を含むすべてのタイプの電磁放射線を包含するために使用される。
【0015】
本明細書で使用される「レチクル」、「マスク」または「パターニングデバイス」という用語は、入射放射ビームに基板の目標部分に作成されるべきパターンに対応するパターン化された断面を与えるために使用できる一般的なパターニングデバイスを指すと広く解釈され得る。「ライトバルブ」という用語もこの文脈で使用できる。標準的なマスク(透過型または反射型、バイナリ、位相シフト、ハイブリッドなど)に加えて、他のこのようなパターニングデバイスの例は、プログラマブルミラーアレイおよびプログラマブルLCDアレイを含む。
【0016】
図1は、リソグラフィ装置LAを概略的に示す。このリソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えばUV放射、DUV放射またはEUV放射)を調整するよう構成される照明システム(イルミネータとも呼ばれる)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構築され、特定のパラメータにしたがってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするよう構成される第1位置決め装置PMに接続されるマスクサポート(例えばマスクテーブル)MTと;基板(例えばレジストコートされたウェハ)Wを保持するよう構築され、特定のパラメータにしたがって基板サポートを正確に位置決めするよう構成される第2位置決め装置PWに接続される基板サポート(例えばウェハテーブル)WTと;パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば一以上のダイを含む)目標部分Cに投影するよう構成される投影システム(例えば屈折型投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0017】
動作中、照明システムILは、例えばビームデリバリシステムBDを介して、放射源SOからビームを受け取る。照明システムILは、放射を方向付け、放射を成形し、および/または放射を制御するための屈折型、反射型、磁気型、電磁気型、静電型、および/または他の形式の光学素子といった各種光学素子またはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。イルミネータILは、パターニングデバイスMAの平面におけるその断面において所望の空間および角度強度分布を有するように放射ビームBを調整するために使用されてもよい。
【0018】
本明細書において使用する「投影システム」PSという用語は、使用する露光放射、および/または液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、アナモルフィック光学システム、磁気光学システム、電磁光学システムおよび/または静電光学システム、又はその任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」PSという用語と同義と見なすことができる。
【0019】
リソグラフィ装置LAは、投影システムPSと基板Wの間の隙間を埋めるように、基板の少なくとも一部が比較的高屈折率を有する液体(例えば水)により覆われる形式の装置であってよい。これは、液浸リソグラフィとも呼ばれる。液浸技術の詳細については、米国特許第6952253号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
リソグラフィ装置LAはまた、2つ以上の基板サポートWT(「デュアルステージ」とも呼ばれる)を有するタイプのものであり得る。そのような「多段」機械では、基板サポートWTを並行して使用することができ、および/または基板Wのその後の露光の準備におけるステップを、基板サポートWTの1つに位置する基板W上で実行することができる。他の基板サポートWT上の基板Wは、他の基板W上のパターンを露光するために使用されている。
【0021】
基板サポートWTに加えて、リソグラフィ装置LAは、測定ステージを含み得る。測定ステージは、センサおよび/または洗浄装置を保持するように配置されている。センサは、投影システムPSの特性または放射ビームBの特性を測定するように配置することができる。測定ステージは、複数のセンサを保持することができる。洗浄装置は、リソグラフィ装置の一部、例えば、投影システムPSの一部または液浸液を提供するシステムの一部を洗浄するように構成することができる。基板サポートWTが投影システムPSから離れているとき、測定ステージは投影システムPSの下に移動することができる。
【0022】
動作中、放射ビームBは、マスクサポートMTに保持されるパターニングデバイス、例えばマスクMAに入射し、パターニングデバイスMA上に存在するパターン(デザインレイアウト)によりパターン化される。マスクMAの通過後、放射ビームBはビームを基板Wの目標部分Cに合焦させる投影システムPSを通過する。第2位置決め装置PWおよび位置測定システムIFの助けを借りて、放射ビームBの経路内の異なる目標部分Cを集束されアライメントされた位置に位置するように基板サポートWTを正確に移動できる。同様に、第1位置決め装置PMおよび場合により別の位置センサ(
図1には明示されていない)は、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めするために用いることができる。パターニングデバイスMAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2および基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示の基板アライメントマークP1、P2は専用の目標部分を占めるが、それらは目標部分の間のスペースに配置されてもよい。基板アライメントマークP1、P2は、これらが目標部分Cの間に配置されるとき、スクライブレーンアライメントマークとして知られている。
【0023】
図2に示されるように、リソグラフィ装置LAは、たまにリソセルまたは(リソ)クラスタとも称され、しばしば基板W上での露光前および露光後プロセスを実行するための装置も含むリソグラフィシセルLCの一部を形成してよい。従来、これらは、例えば基板Wの温度を調整するため、例えばレジスト層の溶剤を調整するために、レジスト層を堆積させるスピンコート装置SC、露光されたレジストを現像する現像装置DE、冷却プレートCH、およびベークプレートBKを含む。基板ハンドラまたはロボットROは、基板Wを入力/出力ポートI/O1,I/O2から取り出し、それらを異なるプロセス装置間で基板を移動させ、リソグラフィ装置LAのローディングベイLBに基板Wを運ぶ。リソセルの装置(しばしば集合的にトラックとも称される)は、通常はトラック制御ユニットTCUの制御下にあり、TCU自体は監視制御システムSCSにより制御され、SCSは例えばリソグラフィ制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置LAを制御してもよい。
【0024】
リソグラフィ装置LAによって露光された基板Wを正確かつ一貫して露光するために、基板を検査して、後続の層間のオーバーレイエラー、線幅、限界寸法(CD)などのパターン構造の特性を測定することが望ましい。この目的のために、検査ツール(図示せず)をリソセルLCに含めることができる。エラーが検出された場合、たとえば、特に同じバッチまたはロットの他の基板Wがまだ露光または処理される前に検査がなされる場合には、後続の基板の露光または基板Wで実行される他の処理ステップを調整することができる。
【0025】
計測装置と呼ばれることもある検査装置は、基板Wの特性、特に、異なる基板Wの特性がどのように変化するか、または同じ基板Wの異なる層に関連する特性が層ごとにどのように変化するかを決定するために使用される。あるいは、検査装置は、基板W上の欠陥を特定するように構成されてもよく、例えば、リソセルLCの一部であってもよく、またはリソグラフィ装置LAに統合されてもよく、または独立型(スタンドアロン)の装置であってもよい。検査装置は、潜像(露光後のレジスト層の画像)、または半潜像(後露光ベークステップPEB後のレジスト層の画像)、または現像されたレジスト画像(レジストの露光部分または非露光部分が除去された画像)、またはエッチングされた画像(エッチングなどのパターン転写ステップ後)の特性を測定することができる。
【0026】
通常、リソグラフィ装置LAでのパターニングプロセスは、基板W上の構造のディメンジョニングおよび配置の高精度を必要とする処理における最も重要なステップの1つである。この高精度を保証するために、
図3に概略的に示すように、3つのシステムをいわゆる「全体的な」統制環境で組み合わせることができる。これらのシステムの1つは、計測ツールMET(2番目のシステム)とコンピュータシステムCL(3番目のシステム)に(実質的に)接続されているリソグラフィ装置LAである。そのような「全体的な」環境の鍵は、これら3つのシステム間の連携を最適化してプロセスウィンドウ全体を強化し、リソグラフィ装置LAによって実行されるパターニングがプロセスウィンドウ内にとどまることを保証する厳密な制御ループを提供することである。プロセスウィンドウは、特定の製造プロセスが定義された結果(機能的半導体デバイスなど)を生成する一連のプロセスパラメータ(たとえば、ドーズ、フォーカス、オーバーレイ)、通常、その範囲内でリソグラフィプロセスまたはパターニングプロセスのプロセスパラメーターが変化を許可される、を定義する。
【0027】
コンピュータシステムCLは、パターン化される設計レイアウト(の一部)を使用して、どの解像度向上技術を使用するかを予測し、計算機によるリソグラフィシミュレーションおよび計算を実行して、どのマスクレイアウトおよびリソグラフィ装置設定がパターニングプロセスの最大の全体的なプロセスウィンドウを達成するかを決定することができる(
図3において第1スケールSC1の二重矢印で示されている)。通常、解像度向上技術は、リソグラフィ装置LAのパターニングの可能性に一致するように構成される。コンピュータシステムCLはまた、例えば次善の処理によって欠陥が存在するかどうかを予測するために、プロセスウィンドウ内のどこでリソグラフィ装置LAが現在動作しているか(例えば、計測ツールMETからの入力を使用して)を検出するために使用されてもよい(
図3において第2スケールSC2の「0」を指す矢印で示されている)。
【0028】
計測ツールMETは、コンピュータシステムCLに入力を提供して、正確なシミュレーションおよび予測を可能にすることができ、リソグラフィ装置LAにフィードバックを提供して、例えばリソグラフィ装置LAの較正状態にいて起こり得るドリフトを特定することができる(
図3において第3スケールSC3の複数の矢印で示されている)。
【0029】
リソグラフィプロセスでは、例えばプロセス制御および検証のために、作成された構造の測定を頻繁に行うことが望ましい。このような測定を行うための様々なツールが知られており、これには走査型電子顕微鏡やスキャトロメータなどの様々な形態の計測装置が含まれる。スキャトロメータの公知の例は、アンダーフィルターゲット(測定ビームが格子より小さいスポットを生成する程に十分大きい単純格子または異なる層における重複格子の形のターゲット)またはオーバーフィルターゲット(照明スポットが部分的または全体的にターゲットを包含する)等の専用の計測ターゲットの提供に頼るものが多い。更に、格子等のアンダーフィルターゲットを照明する角度分解スキャトロメータ等の計測ツールの使用は、ターゲット構造の数学モデルと散乱放射の相互作用をシミュレーションし、シミュレーション結果をそれらの測定と比較することによって格子の特性が演算されうる、いわゆる再構成方法の使用を許容する。モデルのパラメータは、シミュレーションされた相互作用が現実のターゲットから観測されたものと同様の回折パターンを生成するまで調整される。
【0030】
スキャトロメータは、瞳またはスキャトロメータの対物レンズの瞳との共役面にセンサを有することにより(通常は瞳ベースの測定と呼ばれる測定)、または像平面または像平面との共役面にセンサを有することにより、リソグラフィプロセスのパラメータの測定(この場合、測定は、通常、画像またはフィールドベースの測定と呼ばれる)を可能とする汎用性の高い機器である。このようなスキャトロメータおよび関連する測定技術は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、特許出願US20100328655号、US2011102753A1号、US20120044470A号、US20110249244号、US20110026032号またはEP1,628,164A号にさらに記載されている。前述のスキャトロメータは、軟X線および可視から近赤外の波長範囲の光を使用して、複数の格子からの複数のターゲットを1つの画像で測定できる。
【0031】
スキャトロメータMTなどの計測装置が
図4に示されている。この装置は、投影光学システム6を介して基板W上に放射5を投影する放射源2(例えば、広帯域(白色光)放射源)を備える。反射または散乱放射8は、対物レンズシステム8によって収集され、検出器4に送られる。検出器4によって検出された散乱放射8は、その後、処理ユニットPUによって処理され得る。対物レンズシステム8の瞳面PPおよび像面IPも示されている。本明細書中の「瞳面」および「フィールド面」という用語は、それぞれこれらの面またはそれに共役な任意の面を指す場合がある。このようなスキャトロメータは、垂直入射スキャトロメータまたは(図示のように)斜入射スキャトロメータとして構成され得る。いくつかの実施形態では、投影光学システム6と対物レンズシステム8が組み合わされる。すなわち、同じ対物レンズシステムが、基板の照明とそこからの散乱放射の収集の両方に使用される。
【0032】
第1の実施形態では、スキャトロメータMTは、角度分解スキャトロメータである。そのようなスキャトロメータでは、回折格子の特性を再構成または計算するために、測定された信号に再構成法を適用することができる。そのような再構成は、例えば、散乱放射とターゲット構造の数学的モデルとの相互作用をシミュレーションし、シミュレーション結果を測定結果と比較することから生じ得る。数学的モデルのパラメータは、シミュレートされた相互作用が実際のターゲットから観察されたものと同様の回折パターンを生成するまで調整される。
【0033】
第2の実施形態では、スキャトロメータMTは分光スキャトロメータMTである。そのような分光スキャトロメータMTでは、放射源から放出された放射はターゲットに向けられ、ターゲットからの反射または散乱放射は、正反射性の反射放射のスペクトルを測定する(つまり、波長の関数としての強度の測定)スペクトロメータ検出器に向けられる。このデータから、例えば厳密結合波解析と非線形回帰により、またはシミュレーションされたスペクトルのライブラリとの比較により、検出されたスペクトルを生じさせるターゲットの構造またはプロファイルを再構築できる。
【0034】
第3の実施形態では、スキャトロメータMTは、エリプソメトリックスキャトロメータである。エリプソメトリックスキャトロメータは、各偏光状態の散乱放射を測定することにより、リソグラフィプロセスのパラメータを決定することを可能にする。そのような計測装置は、例えば、計測装置の照明セクションに適切な偏光フィルタを使用することにより、(直線、円、または楕円などの)偏光を放出する。計測装置に適した放射源は、偏光放射も提供してもよい。既存のエリプソメトリックスキャトロメータの様々な実施形態は、米国特許出願第11/451,599号、第11/708,678号、第12/256,780号、第12/486,449号、第12/920,968号、第12/922,587号、第13/000,229号、第13/033,135号、第13/533,110号および第13/891,410号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
スキャトロメータMTの一実施形態では、スキャトロメータMTは、反射スペクトルおよび/または検出構成の非対称性を測定することにより、2つの正しく位置合わせされていない格子または周期構造のオーバーレイを測定するように構成される。非対称性は、オーバーレイの程度に関連する。2つの(典型的には重なり合う)格子構造は、2つの異なる層(必ずしも連続した層である必要はない)に適用されてもよく、ウェハ上の実質的に同じ位置に形成されてもよい。スキャトロメータは、例えば共同所有の特許出願EP1,628,164Aに記載されるように、非対称性を明確に区別できるよう対称的な検出構成を有することができる。これにより、回折格子のミスアライメントを簡単に測定できる。周期構造の非対称性を介して測定されるターゲットとして周期構造を含む2つの層の間のオーバーレイエラーを測定するためのさらなる例は、国際特許出願公開番号第WO2011/012624号または米国特許出願第US20160161863号に見いだすことができ、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0036】
関心のある他のパラメータは、フォーカスおよびドーズであってもよい。フォーカスおよびドーズは、参照により本書にその全体が組み込まれる米国特許出願US2011-0249244に記載されるように、散乱計によって(または代替的に走査型電子顕微鏡によって)同時に決定されうる。単一の構造が用いられてもよく、それは、フォーカスエネルギーマトリックス(FEM、フォーカス露光マトリックスとも呼ばれる)の各点についてクリティカルディメンジョンおよび側壁角度の測定値の固有の組み合わせを有する。仮にこれらのクリティカルディエンジョンおよび側壁角度の固有の組み合わせが利用可能であれば、フォーカスおよびドーズの値は、これらの測定値から一意に決定されうる。
【0037】
計測ターゲットは、リソグラフィプロセスによって多くの場合レジスト内に形成されるが、例えばエッチングプロセスの後にも形成される、複合格子の集合体であってもよい。典型的に、格子内の構造のピッチおよび線幅は、計測ターゲットから来る回折次数を捕捉可能な測定光学系(特に光学系のNA)に強く依存する。先に示したように、回折された信号は、二つの層の間のシフト(「オーバレイ」とも称される)を決定するために用いられてもよいし、リソグラフィプロセスにより生成される元の格子の少なくとも部分を再構築するために用いられてもよい。この再構築は、リソグラフィプロセスの品質の指針を提供するために用いられてもよく、かつ、リソグラフィプロセスの少なくとも一部を制御するために用いられてもよい。ターゲットは、ターゲット内のデザインレイアウトの機能部分の寸法を模倣するように構成されるより小さなサブセグメンテーション(小区分)を有してもよい。このサブセグメンテーションに起因して、ターゲットは、全体的なプロセスパラメータの測定結果がデザインレイアウトの機能部分に酷似することとなるように、デザインレイアウトの機能部分により類似した振る舞いをするであろう。ターゲットは、アンダーフィルモードまたはオーバーフィルモードで測定されうる。アンダーフィルモードにおいて、測定ビームは、ターゲット全体よりも小さなスポットを生成する。オーバーフィルモードにおいて、測定ビームは、ターゲット全体よりも大きなスポットを生成する。このようなオーバーフィルモードでは、異なるターゲットを同時に測定することが可能であってもよく、したがって異なるプロセスパラメータを同時に決定する。
【0038】
特定のターゲットを使用するリソグラフィパラメータの全体的な測定品質は、このリソグラフィパラメータの測定に用いる測定レシピによって少なくとも部分的に決まる。「基板測定レシピ」の用語は、測定自体の一以上のパラメータを含んでもよいし、測定された一以上のパターンの一以上のパラメータを含んでもよいし、または両方を含んでもよい。例えば、ある基板測定レシピに用いられる測定が回折ベースの光学測定である場合、測定の一以上のパラメータは、放射の波長、放射の偏光、基板に対する放射の入射角、基板上のパターンに対する放射の向きなどを含んでもよい。測定レシピを選択する基準の一つは、例えば、プロセスの変動に対する一つの測定パラメータの感受性であってもよい。より多くの例は、米国特許出願US2016-0161863号および公開された米国特許出願US2016/0370717号に記載されており、その全体が参照により本書に組み込まれる。
【0039】
図5(a)は、計測装置の一実施形態、より具体的には暗視野スキャトロメータを示す。ターゲットTおよびターゲットを照射するために使用される測定放射の回折光線が、
図5(b)により詳細に示されている。図示されている計測装置は、暗視野計測装置として知られているタイプのものである。計測装置は、独立式の装置であってもよいし、リソグラフィ装置LA(例えば、測定ステーションにて)またはリソグラフィセルLCのいずれかに組み込まれてもよい。装置を通じて複数の分岐を有する光軸は、破線Oで示される。この装置において、光源11(例えば、キセノンランプ)により出力される光は、レンズ12,14および対物レンズ16を備える光学システムにより、ビームスプリッタ15を介して基板W上に向けられる。これらレンズは、4F配置の二重シーケンスで構成される。検出器上に基板の像を与えるのであれば、異なるレンズ配置を用いることもでき、同時に、このレンズ配置は、空間周波数フィルタリング用の中間瞳面の利用を可能にする。したがって、放射が基板に入射する位置での角度範囲は、基板面での空間スペクトルを示し、本書で(共役)瞳面と称される面内の空間強度分布を定義することにより選択できる。具体的には、レンズ12と14の間であって対物レンズ瞳面の逆投影像である面内に適切な形状のアパーチャプレート13を挿入することによりこれを実現できる。図示される例では、符号13N,13Sのアパーチャプレート13が異なる形状を有し、異なる照明モードの選択を可能にする。第1照明モードにおいて、アパーチャプレート13Nは、説明のみを目的として「北」と指定された方向からの軸外を提供する。第2照明モードにおいて、アパーチャプレート13Sは、同様であるが「南」と名付けられた反対方向からの照明を提供するために用いられる。所望の照明モード外のいずれの不要な光も所望の測定信号に干渉することから、瞳面の残りは暗闇であることが望ましい。
【0040】
図5(b)に示されるように、ターゲットTは、対物レンズ16の光軸Oに直交するよう基板Wに配置される。基板Wは、サポート(図示せず)により支持されてよい。軸Oからずれた角度からターゲットTに入射する測定放射Iの光線は、ゼロ次の光線(実線0)および二つの1次光線(一点破線+1および二点破線-1)を生じさせる。はみ出る小さなターゲットの場合、これらの光線は、計測ターゲットTおよび他のフィーチャを含む基板の領域をカバーする多数の平行光線の一つにすぎないことを忘れてはならない。プレート13のアパーチャは(有効な光量を認めるのに必要な)有限の幅を有するため、実際には入射光線Iがある角度範囲を占め、回折光線0および+1/-1は多少拡がるであろう。小さいターゲットの点像分布関数によれば、+1および-1の各次数は、ある角度範囲にわたってさらに拡がり、図示されるような単一の理想的な光線とならないであろう。ターゲットの格子ピッチおよび照明角度は、1次光線が中心光軸の近くにアライメントされて対物レンズに入射するように設計または調整されることができることに留意する。
図5(a)Aおよび
図5(b)に示される光線は、図面において純粋にこれらが容易に識別可能となるように、多少軸外しとなるよう示されている。
【0041】
基板W上のターゲットTにより回折される少なくとも0および+1の次数は、対物レンズ16により収集され、ビームスプリッタ15を通って戻るように方向付けられる。
図5(a)に戻ると、北(N)および南(S)の符号が付された径方向に反対のアパーチャを指定することにより、第1および第2照明モードの双方が示される。測定放射の入射光線Iが光軸の北側からである場合、つまり、アパーチャプレート13Nを用いて第1照明モードが適用される場合、+1(N)の符号が付された+1の回折光線が対物レンズ16に入射する。反対に、アパーチャプレート13Sを用いて第2照明モードが適用される場合、(-1(S)の符号が付された)-1の回折光線が対物レンズ16に入射するものとなる。
【0042】
第2ビームスプリッタ17は、回折ビームを二つの測定路に分割する。第1測定路において、光学システム18は、ゼロ次および1次の回折ビームを用いて第1センサ19(例えばCCDまたはCMOSセンサ)上でターゲットの回折スペクトル(瞳面像)を形成する。各回折次数がセンサ上の異なる点でぶつかるため、画像処理は、次数を比較および対比できる。センサ19に撮像される瞳面像は、計測装置のピント調整および/または1次回折ビームの強度測定の規格化に用いることができる。瞳面像は、再構成などの多くの測定の目的のために用いることもできる。
【0043】
第2測定路において、光学システム20,22は、センサ23(例えばCCDまたはCMOSセンサ)上にターゲットTの像を形成する。第2測定路において、瞳面に共役となる面内に開口絞り21が設けられる。開口絞り21は、ゼロ次の回折ビームを遮るように機能し、センサ23上に形成されるターゲットの画像が-1または+1次のビームからのみ形成されるようにする。センサ19および23の撮像画像は、画像を処理する処理部PUに出力される。PUの機能は、実行すべき測定の具体的な形式に依存するであろう。なお、本書に用いられる「画像」の用語は広義である。仮に-1次および+1次の一方しか存在しなければ、格子ライン自体の画像は形成されないであろう。
【0044】
図5に示されるアパーチャプレート13および視野絞り21の具体的形状は、純粋に例にすぎない。本発明の別の実施形態において、ターゲットの軸上照明が用いられ、実質的に一方の1次回折光のみをセンサに向けて通過させるために軸外アパーチャを持つ開口絞りが用いられる。さらに別の実施形態において、1次ビームの代わりに又は1次ビームに加えて、2次、3次、さらに高次のビーム(
図5に不図示)を測定に用いることができる。
【0045】
これら異なる形式の測定に適用可能な測定放射を作るため、アパーチャプレート13は、所望のパターンを所定の位置にもたらすように回転するディスクの周りに形成される多数のアパーチャパターンを備えてもよい。なお、アパーチャプレート13Nまたは13Sは、一方向(設定に応じてXまたはY)に方向付けられた格子の測定にのみ用いることができる。直交する格子の測定のため、90°または270°のターゲットの回転が実行されてもよい。異なるアパーチャプレートが
図5(c)および5(d)に示されている。 これらの使用、および装置の他の多数の変形形態および用途は、上述した先行公開出願に記載されている。
【0046】
以上の計測ツールは、低い収差(例えば、良い装置間マッチングのため)および大きい波長範囲(例えば、広い応用範囲をサポートするため)を要求する。装置間マッチングは(顕微鏡の)対物レンズの十分に小さい収差変動に(少なくとも部分的に)依存し、この要求はチャレンジングであり常に満たされるとは限らない。このことは、光学収差を悪化させることなく波長範囲を大きくすることは本質的に不可能であるということも意味する。更に、原価、ツールの体積および/または質量が無視できないため、同じウェハを同時に測定するための複数のセンサを提供することによる並列化を通じたウェハサンプリング密度(ウェハ毎のサンプリング点数や、ロット毎のサンプリングウェハ数)を高める可能性を制限してしまう。
【0047】
これらの課題の少なくともいくつかに対処するために、計算的に画像/位相を取得するアプローチを採用する計測装置が、参照によって本書に援用される米国特許公報第2019/0107781号において記述されている。このような計測デバイスは、普通または比較的平凡な収差性能の比較的シンプルなセンサ光学要素を使用してもよい。このように、センサ光学要素は収差を有し、従って比較的収差の多い像を生成することが許容される。もちろん、センサ光学要素内でより大きい収差を許容するだけでは、これらの光学収差の効果を補償するために何かがなされない限り、像の質に許容できないインパクトが及ぶ。そこで、センサ光学要素内の収差性能の緩和のネガティブな効果を補償するために、計算的像形成技術が使用される。
【0048】
とりわけリソグラフィ制御および監視用途に使用され得る既知のタイプのメトロロジーは、デジタルホログラフィック顕微鏡法、特に暗視野デジタルホログラフィック顕微鏡法である。デジタルホログラフィック顕微鏡法は、ホログラフィと顕微鏡を組み合わせたイメージング技術である。物体の投影画像を記録する他の顕微鏡観察法とは異なり、デジタルホログラフィック顕微鏡法は、3次元(3D)物体を照射することによって得られる物体放射と、物体放射とコヒーレントな参照放射との干渉によって形成されるホログラムを記録する。画像は、例えば、電荷結合素子(CCD)または相補型金属酸化物半導体(CMOS)を使用して取り込むことができる。物体放射は物体から散乱した放射であるため、物体放射の波面は物体によって変調または成形される。前記散乱放射は、反射放射、回折放射、または透過放射を含み得る。したがって、物体放射の波面は、照射された物体の情報、例えば3D形状情報を運ぶ。キャプチャされたホログラムの画像に基づいて、コンピューター再構成アルゴリズムを使用して物体の画像を数値的に再構成できる。強度ベースの計測に対するホログラムベースの計測の重要な利点は、ホログラムベースの計測では、前述の米国特許出願公開第2019/0107781号に記載されている計算集約的な位相回復技術を必要とせずに、物体の強度情報と位相情報の両方を取得できることである。位相情報を追加すると、センサの収差を補正できるため、より簡単なセンサ光学セットアップの使用も可能になる。
【0049】
参照により本明細書に組み込まれる国際特許出願WO2019197117A1は、基板上に製造された構造の特性、例えばオーバーレイを決定するための、暗視野デジタルホログラフィック顕微鏡(df-DHM)に基づく方法および計測装置を開示している。そこに記載されているdf-DHMは、2つの参照放射ビーム(参照放射)を提供するために使用される参照光学ユニットを備える。2つの参照放射ビームは、+1回折次数および-1回折次数などの物体放射(例えば、ターゲットからの散乱放射ビーム)の2つの対応する部分とそれぞれ対にされ得る。2つの散乱参照ビームのペアは、2つの干渉パターン (つまり、1つは+1回折次数に対応し、もう1つは-1回折次数に対応) を形成するために順次使用される。第1および第2の干渉縞は、構造の特性を決定するために使用される。
【0050】
上述の一部の計測装置の照明および検出センサ光学系を簡素化したり、光学系をよりコンパクトにしたりすると、センサのペッツバール和(Petzval sum)が上昇し、設計上、場合によっては製造時にも大きな収差レベルが発生する可能性がある。このような収差は、例えば4D収差を含むことができる。4D収差とは、各物点(2D座標ベクトルによって記述される)が独自の2D収差関数(したがって独自のPSF)を有するという事実を指す。これは、非アイソプラナティック収差の最も一般的な形式である。
【0051】
4D収差の特定のサブセットについては、単純なデコンボリューション操作によって収差を補正できる。4D収差のこの特定のサブセットは、次の収差カテゴリの一方または両方を含む:アイソプラナティック視野収差(瞳座標に依存する)および/またはアイソプラナティック瞳収差(視野座標に依存する)。このような場合、df-DHMまたは他のコヒーレントホログラフィック顕微鏡を使用して実装できるようなコヒーレントイメージングレジームを想定すると、収差補正は2つの2D高速フーリエ変換(FFT)に基づく単純なデコンボリューション(または他の補正)によって実行できる。簡潔に言うと、このようなアプローチには次のステップが含まれる。
・ホログラムの順方向FFTを実行し、側波帯を選択する。
・アイソプラナティック瞳収差を補正するための瞳空間表現のデコンボリューション。
・フィールド表現に対して逆方向FFTを実行する。
・アイソプラナティックフィールド収差を補正するためのフィールド表現のデコンボリューション。
この方法は、4D収差の特定の限定されたサブセットに対してのみ機能するが、すべての任意の4D収差には機能しない。
【0052】
インコヒーレントレジーム(例えば、
図5に示すようなツールおよびコンピュータによるイメージングを使用する場合)では、瞳面(またはフーリエ面、または単に「瞳」) にはアクセスできないため(後者は複素フィールドの知識を必要とする)、可能な唯一の収差補正はフィールド面補正である(例えばフィールド面でのデコンボリューションを使用するなど)。これにより、順方向または逆方向の2Dフーリエ変換によってフィールド空間と瞳空間の間で変換できるようになる。
【0053】
しかしながら、これらのアプローチは、物理的制約および/または時間的制約により、アイソプラナティック収差補正にのみ使用できる。この文脈におけるアイソプラナティック収差は、瞳面座標のみに依存する、および/またはフィールド面座標のみに依存する収差を指す。これらの定義の前者、つまり瞳面座標のみに依存する収差は、アイソプラナティックのより一般的な定義であり、そのような収差を補正するためにデコンボリューションを適用できることはよく知られていることが理解されよう。しかしながら、同じアプローチはフィールド座標のみに依存する収差にも適用できる。拡張すると、本開示の文脈において、非アイソプラナティック収差は、瞳面座標とフィールド面座標の両方に依存する収差を指す(各物点はフィールド面において異なる点広がり関数(PSF)を有する)。
【0054】
このため、現在の収差補正方法では収差補正の可能性が非常に限られている。対照的に、本明細書に開示される概念は、いくつかの非アイソプラナティック収差の補正を含むため、より大きな収差補正の可能性を有する。
【0055】
特に、フィールド面と瞳面の両方のフィールドを計算的に歪めることにより、計算的に安価な方法で特定のクラスの非アイソプラナティック収差を補正することができる。このようなクラスの非アイソプラナティック収差は、物体および/または瞳の歪みと組み合わされたコンボリューション(畳み込み)として記述可能な非アイソプラナティック収差を含み得る。
【0056】
したがって、面ごとの歪みを使用して効率的に補正できる非アイソプラナティック収差の最も一般的な形式は、収差のある位相関数と収差のない線形位相関数の差である収差関数によって記述できる。収差位相関数は、歪んだフィールド記述と歪んだ瞳記述の積であり、歪んだフィールド記述は、フィールド座標の関数であり、歪んだ瞳記述は、瞳座標の関数である。 つまり、次のように与えられる。
【数1】
ここで、
【数2】
は、物点またはフィールド点
【数3】
および瞳座標
【数4】
の収差関数を表す(この文脈において、収差を非アイソプラナティックとして区別するのは、物点と瞳座標の両方へのこの依存である)。そのフーリエ変換により、物体点
【数5】
のPSFが得られる。アイソプラナティックの場合、Wは
【数6】
に依存しない。
【数7】
および
【数8】
への依存は非アイソプラナティズム(non-isoplanatism)を意味する。
【数9】
は瞳座標を示し、
【数10】
は歪んだ瞳を示す(つまり、各瞳点
【数11】
は異なる点
【数12】
にマッピングされる)。 同様に、
【数13】
は物体座標(すなわちフィールド座標)を表し、
【数14】
は歪んだ物体/フィールドを表す(たとえば、各フィールド点
【数15】
は異なるフィールド点
【数16】
にマッピングされる)。 言い換えれば、収差のないシステムの場合、
【数17】
にある点光源は瞳内に線形位相関数
【数18】
を生成する。物体面と瞳面が歪んでいる場合、
【数19】
にある点光源は瞳内に位相関数
【数20】
を生成する。これら2つの位相関数の差は、特定の物体点
【数21】
に対する収差関数
【数22】
である。
【0057】
したがって、本明細書に開示される計測方法は、第1の画像を取得することであって、前記第1の画像は前記画像をキャプチャするために使用される光学システムの1つまたは複数の非アイソプラナティック収差を受けることと、
以下の操作:
前記第1の画像に対するフィールド空間におけるフィールド非アイソプラナティック補正操作であって、前記フィールド空間が光学システムのフィールド面に対応する操作、および
前記第1の画像に対する瞳空間における瞳非アイソプラナティック補正操作であって、前記瞳空間が光学システムの瞳面に対応する操作、
のうちの1つまたは両方を実行することによって、前記1つまたは複数の非アイソプラナティック収差の影響について前記第1の画像を非反復的に補正することと、
を含み、
前記1つまたは複数の非アイソプラナティック収差は、物体の歪みおよび/または瞳の歪みと組み合わされたコンボリューションとして記述可能なクラスの非アイソプラナティック収差を含む。
【0058】
提案されたアプローチでは、非アイソプラナティック収差補正は、少なくともコヒーレントレジームにおいて(例えば、デジタルホログラフィック顕微鏡(DHM)のホログラフィツールを使用して)、
図6のフローチャートに示されるような一連のステップによって実現され得る。これらのステップは、一実施形態では、例として以下を含むことができる。
・ステップ600:第1の画像IMG(例えば、ホログラム)に対してフーリエ変換(例えば、FFT)を実行し、両方の側波帯のうちの1つを選択する。
・ステップ610:瞳空間(または瞳表現)において瞳非アイソプラナティック補正演算(例えば、歪み補正)を実行して、第2クラスの非アイソプラナティック収差を補正する。ここで、前記第2のクラスの非アイソプラナティック収差は、前記瞳空間の歪みによって補正可能な前記非アイソプラナティック収差を含む。
・ステップ620:瞳空間表現において瞳面アイソプラナティック補正演算(例えばデコンボリューション)を実行して、瞳空間で補正可能な第2クラスのアイソプラナティック収差を補正する。
・ステップ630:フィールド表現に対して逆方向フーリエ変換(例えば、FFT)を実行する。
・ステップ640:第1クラスの非アイソプラナティック収差を補正するためにフィールド空間でフィールド非アイソプラナティック補正演算(例えば、歪み補正)を実行する。ここで、前記第1クラスの非アイソプラナティック収差はフィールド空間で補正可能である(第1の画像をキャプチャするために使用された光学システムのフィールド面表現)。
・ステップ650:第1クラスのアイソプラナティック収差を補正するためにフィールド空間(またはフィールド表現)内でフィールドアイソプラナティック補正演算(例えば、デコンボリューション)を実行する。ここで、前記第1クラスの非アイソプラナティック収差は、前記フィールド空間における歪みによって補正可能な前記非アイソプラナティック収差を含む。
・代替実施形態では、瞳空間(ステップ610)およびフィールド空間(ステップ640)におけるそれぞれの歪み補正の上記のステップを単一のステップに組み合わせることができる。
【0059】
このような方法の結果は、補正された画像IMG’、より具体的には、収差補正された複素数値フィールド振幅(complex-valued field amplitude)
【数23】
となり得る。
【0060】
インコヒーレントイメージングの特定の場合の工程620および640は、同一のアルゴリズム実装を持たないように、コヒーレントイメージングの場合の対応するものを適応させてもよいことに留意されたい。
【0061】
上記のステップの順序により(明らかに、歪み補正とデコンボリューションのステップは各空間で任意の順序で実行され得る)、実行されるFFTの数に関する計算負荷は2つのFFTで構成される。これは、フィールド依存の収差のみに対する最先端の収差補正の場合と同じである。したがって、歪み補正ステップの追加の計算負荷は比較的軽微である。
【0062】
一実施形態では、例えば、物体フィールド振幅の位相情報が利用できないインコヒーレントイメージングの状況では、実施形態はステップ620、630、および640のみを含んでもよい。
【0063】
一実施形態では、本明細書に開示される提案された方法によって補正可能な特定の非アイソプラナティック収差に対する提案された歪み補正は、最小限の計算負担で迅速に実行できる非反復的な歪み補正(例えば、単純な演算によって実施される)である。前記歪み補正のそれぞれは、必要に応じて、第1クラスの非アイソプラナティック収差または第2クラスの非アイソプラナティック収差のすべてに対する単一の歪み補正を含んでもよい。
【0064】
(デジタルホログラフィック顕微鏡、DHMに適用されるような)フーリエ空間
【数24】
における非アイソプラナティック・コヒーレント・イメージングの場合、非アイソプラナティック収差を受ける(複素数値の)コヒーレントイメージフィールド
【数25】
(ホログラムのフーリエ変換の側波帯で表される)は、次のように記述できる。
【数26】
ここで、
【数27】
は、4D PSF(非アイソプラナティック;混合フーリエ空間(瞳)
【数28】
&実空間(フィールド)
【数29】
表現)であり、
【数30】
は、物体フィールドまたはサンプルフィールドを記述する(これは実際には平面波の変調であり、複素数値である)。
【0065】
非アイソプラナティック4D PSF関数は次のように記述できる。
【数31】
ここで、
【数32】
は、すでに説明した4D位相収差関数(非アイソプラナティック)である。
【0066】
非アイソプラナティック4D収差関数
【数33】
は、補正可能な可能性のある収差に関して次のように記述できる。
【数34】
ここで、
【数35】
および
【数36】
は、デコンボリューションによって常に補正可能な収差(フィールド空間または瞳空間のアイソプラナティック収差)を表し、
【数37】
および
【数38】
は、補正がより困難な収差(非アイソプラナティック収差)を表し、
【数39】
は、瞳面の歪みによって補正可能な非アイソプラナティック収差を表し、
【数40】
は、フィールド面の歪みによって補正可能な非アイソプラナティック収差を表す。
【0067】
しかしながら、一般に
【数41】
および
【数42】
によって表される収差のすべてが、本明細書に開示される技術を使用して同時に補正できるわけではない。このため、これらの収差のどれを補正するかについて決定を下すことができる。これらの収差のうちどれを補正するかを選択するために2つのアプローチが提案されている。第1のアプローチ(以下、排他的論理和アプローチと呼ぶ)は、
【数43】
で表されるすべての収差のみ、または
【数44】
で表されるすべての収差のみを補正することを提案する(たとえば、アイソプラナティック収差
【数45】
)。第2のアプローチ(以下、選択的ANDアプローチと呼ぶ)は、ω型およびβ型収差のそれぞれの適切なサブセットを提案する(つまり、それぞれ、前記第1クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットと、前記第2クラスの非アイソプラナティック収差)。
【0068】
排他的論理和アプローチと選択的ANDアプローチは、収差位相関数の変数
【数46】
によって表現される補正可能な収差のより一般化された概念の特殊なケースであると理解でき、
【数47】
および
【数48】
を適切に選択することから得られる。
【0069】
排他的論理和技術を考慮すると、非アイソプラナティック収差の影響を受ける(複素数値の)コヒーレント画像フィールドは、次のように記述できる。
【数49】
この実施形態では、次の2つのオプションのうちの1つだけについて収差補正を実行できることが提案される。
【数50】
【数51】
ここで、
【数52】
で表される収差は、瞳面でのデコンボリューションによって補正でき、
【数53】
で表される収差は、フィールド面でのデコンボリューションによって補正でき、
【数54】
で表される収差は、瞳面の歪み補正によって補正することができるか、
【数55】
で表される収差はフィールド面の歪み補正によって補正することができる。
【0070】
選択的ANDテクニックの場合、上記のコヒーレント画像フィールド
【数56】
は、
2つのスカラー関数
【数57】
への
【数58】
の近似因数分解を含むことができ、これらはそれぞれフィールド面および瞳面における歪み補正によって補正可能である。すなわち、
【数59】
は、次のようになる。
【数60】
ここで、
【数61】
フィールドでの
【数62】
の歪み補正(これは実際には逆方向FFTステップの後に行われるが、ここでは簡潔にするために示されている)と瞳での
【数63】
の歪み補正は、次のようになる。
【数64】
ここで、
【数65】
である。
瞳でのデコンボリューションの準備により以下が得られる。
【数66】
そして瞳でのデコンボリューションにより以下が得られる。
【数67】
フィールド領域への逆方向FFTにより以下が得られる。
【数68】
そしてフィールドでのデコンボリューションにより以下が得られる。
【数69】
ここで、
【数70】
は、収差補正された物体フィールドである。
【0071】
この実施形態の因数分解ステップを考慮すると、第1の例は、波面収差係数W111(チルト)によって表される収差を考慮しない(すなわち、W111=0という仮定の下で)。
【0072】
W111なしでの
【数71】
の因数分解は、
【数72】
ここで、
【数73】
は、瞳の歪みによって補正でき、
【数74】
はフィールドの歪みによって補正できる。
【0073】
さらなる例には、波面収差係数W111が含まれる。
【数75】
【数76】
ここで、
【数77】
は、瞳の歪みによって補正でき、
【数78】
はフィールドの歪みによって補正できる。
【0074】
これらのテクニックを使用して、少なくとも、デジタルホログラフィック顕微鏡(DHM)に適用されるようなコヒーレントな場合には、提案された方法は、
【数79】
で表される収差W111(倍率)、W311(歪み)、W511(高次歪み)、
【数80】
で表される収差W131(コマ)、W151(高次コマ)、および(少なくともいくつかの条件下では)W331(6次コマ)およびW551を含むいくつかの高次項、の補正を可能にする。これは、アイソプラナティック収差に加えて発生し、 たとえば、
【数81】
によって表される収差(ピストン収差として知られるW200、W400、W600)および
【数82】
によって表される収差(それぞれフォーカス、非球面収差、高次球面収差として知られるW020、W040、W060)である。これは、本明細書に開示される方法を使用して補正可能な軸対称の4D収差のみである。
各非アイソプラナティックフィールド依存収差がフィールド空間(「節点」として知られる)に独自の「オリジン」を持つ、非軸対称収差に対する同様のアプローチは、すべての節点がまったく同じ位置に存在する上記の定式化を直接拡張したものである。
【0075】
上で簡単に述べたように、インコヒーレント・イメージング・レジームにおける非アイソプラナティック収差も、本明細書に開示される方法を使用して補正することができる。 このような実施形態では、
【数83】
によって表される非アイソプラナティック収差(例えば、W111、W311、W511)のみが(例えばフィールド面で歪みを適用することにより非反復的に)補正可能である。これは、
【数84】
によって表される収差(例えば、W131(コマ)、W151(高次コマ)または他の高次収差など)を補正するための瞳面へのアクセスがないためである。本明細書で言及される特定の収差はすべて、書籍「Jose Sasian、 Introduction to Aberrations in Optical Imaging Systems (Cambridge University Press、2013)」に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
フーリエ空間
【数85】
へのフーリエ変換後の画像強度を持つインコヒーレント画像フィールド
【数86】
は、次のように記述され得る。
【数87】
非アイソプラナティック4D PSF関数の場合、次のようになる。
【数88】
前と同様、補正可能な収差に関する非アイソプラナティック4D収差関数は次のとおりである。
【数89】
したがって、次のようになる。
【数90】
【0077】
この場合、
【数91】
は、瞳面にアクセスできないため修正できない。
【数92】
は、フィールドの歪みによって補正可能であり、
【数93】
は デコンボリューションによって修正可能である。
【0078】
上で説明した収差補正の概念は、一般的にイメージングおよび計測用途に適用可能である。しかしながら、一実施形態では、それらは、例えばそのような計測ツールの対物レンズシステムを交換するために、
図4または
図5(a)に示すような計測ツールの簡素化された光学配置を可能にするという特定の目的を有する。例えば、そのような対物レンズシステムは、5つ未満、4つ未満、または3つ未満の非平面光学素子またはレンズ素子を有するコンパクトな構成を備え得る。特定の(透過型)実施例は、それぞれが非球面と球面を有する2つのレンズ要素のみを備え得る。この開示の文脈において、レンズ要素は、透過型レンズ素子または反射型レンズ素子、すなわち任意の非平面光学素子を含むことができる。
【0079】
特に、そのようなレンズシステムは大きな開口数(NA)、例えば、0.7より大きいNA、0.75より大きいNA、0.8より大きいNA、0.85より大きいNA、または0.9より大きいNAを有することが望ましい。
【0080】
図7は、2つのレンズ素子のみを備えるレンズシステムの一実施形態の概略図である。第1レンズ素子LE1は、第1非球面AS1と第1球面SS1とを備える。第2レンズ素子LE2は、第2非球面AS2と第2球面SS2とを備える。この配置では、球面SS1、SS2は相互に向き合っており、非球面はシステムの入力面と出力面を形成している。点線はシステムを通過する光線の例である。
【0081】
5つ未満、4つ未満、または3つ未満の光学素子を備えるこのような単純な対物レンズシステムは、大きな非アイソプラナティック収差を含むいくつかの収差なしには製造できないことが理解されよう。したがって、リソグラフィ監視に必要な精密計測での使用には、そのような非アイソプラナティック収差の補正が必要である。本明細書に開示される概念は、そのような精密計測用途への使用を可能にする。
【0082】
一実施形態では、レンズシステムは、補正可能な非アイソプラナティック収差、すなわち、本明細書に開示される方法によって補正可能な収差(すなわち、基準
【数94】
を満たす収差)のみを含み得る。グループから外れる非アイソプラナティック収差は、レンズシステムには実質的に存在しないため、対物レンズシステムの非アイソプラナティック収差は無視できるほどである。この文脈における無視できる非アイソプラナティック収差とは、マレシャル基準に従って無視できることを意味する。マレシャル基準は、Max BornとEmile Wolf 著の書籍『Principles of optics』、ケンブリッジ大学出版局、第7版(1999年)の528ページに定義されている。これに基づくと、回折焦点での正規化強度が0.8以上の場合、マレシャル系は適切に補正される(したがって、非アイソプラナティック収差は無視できる)。これは、基準球からの波面の二乗平均平方根偏差がλ/14より小さい場合に発生する。ここで、λ/14は0.071λ、つまり71ミリ波である。この点において、レンズシステムは、対物レンズの視野内で少なくとも71ミリ波以内で、できれば50ミリ波以上、または30ミリ波以上である、本明細書に開示される方法を使用して補正できない非アイソプラナティック収差に対する収差性能を備えていてもよい。同様に、本明細書に開示される方法を使用して補正される収差は、同じ基準に従って補正され得る。
【0083】
一実施形態では、本明細書に開示される収差補正テクニックはリアルタイムで実装することができる。この文脈におけるリアルタイムとは、大量生産(HVM)製造環境における計測用途にとって十分に速いことを意味する。
【0084】
本明細書に記載の非反復収差補正方法の後に、残りの非アイソプラナティック収差の処理に対処する反復収差補正手順が続いてもよいことが理解されよう。
【0085】
上記の例は、オーバーレイを測定するための計測ツールに関して、より一般的には集積回路の製造におけるリソグラフィプロセスの監視に関して説明されているが、本明細書で開示される概念はそれに限定されない。本明細書に開示される計測ツールは、焦点、線量、限界寸法、およびオーバーレイのより複雑な形式であるEPE(Edge Placement Error)(たとえば、オーバーレイと限界寸法の均一性の組み合わせ) など、ターゲットなどの構造の任意の関心のある特性を測定するために使用できる。本明細書に開示される計測ツールは、リソグラフィおよびIC製造とは別の状況で他のサンプルまたは物体を測定するために同様に使用することができる。
【0086】
図8は、本明細書に開示される方法およびフローの実装を支援することができるコンピュータシステム800を示すブロック図である。コンピュータシステム800は、情報を通信するためのバス802または他の通信メカニズムと、情報を処理するためにバス802に結合されたプロセッサ804(または複数のプロセッサ804および805)を含む。コンピュータシステム800はまた、プロセッサ804によって実行される情報および命令を記憶するためにバス802に結合されたランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶装置などのメインメモリ806を含む。メインメモリ806はまた、プロセッサ804によって実行される命令の実行中に、一時変数または他の中間情報を格納するために使用されてもよい。コンピュータシステム800は、プロセッサ804のための静的情報および命令を記憶するために、バス802に結合された読み出し専用メモリ(ROM)808または他の静的記憶装置をさらに含む。磁気ディスクまたは光ディスクなどの記憶装置810が提供され、情報および命令を記憶するためにバス802に結合される。
【0087】
コンピュータシステム800は、バス802を介して、コンピュータユーザに情報を表示するための陰極線管(CRT)またはフラットパネルまたはタッチパネルディスプレイなどのディスプレイ812に結合され得る。英数字キーおよび他のキーを含む入力デバイス814は、情報およびコマンド選択をプロセッサ804に伝達するためにバス802に結合される。別のタイプのユーザ入力デバイスは、方向情報およびコマンド選択をプロセッサ804に伝達し、ディスプレイ812上のカーソルの動きを制御するための、マウス、トラックボール、またはカーソル方向キーなどのカーソル制御816である。この入力デバイスは通常、第1軸(xなど)と第2軸(yなど)の2つの軸に2自由度を備えており、これによりデバイスは平面内の位置を指定できる。タッチパネル(スクリーン)ディスプレイを入力デバイスとして使用することもできる。
【0088】
本明細書で説明される方法のうちの1つまたは複数は、プロセッサ804がメインメモリ806に含まれる1つまたは複数の命令の1つまたは複数のシーケンスを実行することに応答して、コンピュータシステム800によって実行され得る。このような命令は、記憶装置810などの別のコンピュータ可読媒体からメインメモリ806に読み込まれてもよい。メインメモリ806に含まれる一連の命令を実行することにより、プロセッサ804は本明細書に記載のプロセスステップを実行する。マルチプロセッシング構成内の1つまたは複数のプロセッサを使用して、メインメモリ806に含まれる一連の命令を実行することもできる。代替の実施形態では、ハードワイヤード回路を、ソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせて使用することができる。したがって、ここでの説明は、ハードウェア回路とソフトウェアの特定の組み合わせに限定されない。
【0089】
本明細書で使用される「コンピュータ可読媒体」という用語は、実行のためにプロセッサ804に命令を提供することに関与する任意の媒体を指す。このような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含むがこれらに限定されない多くの形式をとることができる。不揮発性媒体には、例えば、記憶装置810などの光ディスクまたは磁気ディスクが含まれる。揮発性媒体には、メインメモリ806などのダイナミックメモリが含まれる。伝送媒体には、バス802を構成するワイヤを含む、同軸ケーブル、銅線および光ファイバが含まれる。伝送媒体は、無線周波数(RF)や赤外線(IR)データ通信中に生成されるものなど、音響波または光波の形をとることもある。コンピュータ可読媒体の一般的な形式には、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、その他の磁気媒体、CD-ROM、DVD、その他の光学媒体、パンチカード、紙テープ、 穴のパターンを有する他の物理媒体、RAM、PROM、EPROM、FLASH-EPROM、その他のメモリチップまたはカートリッジ、以下に説明する搬送波、またはコンピュータが読み取ることができるその他の媒体が含まれる。
【0090】
コンピュータ可読媒体の様々な形態は、1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを実行のためにプロセッサ804に運ぶことに関与し得る。たとえば、命令は最初はリモートコンピュータの磁気ディスク上に保存される場合がある。リモートコンピュータは命令を動的メモリにロードし、モデムを使用して電話回線経由で命令を送信できる。コンピュータシステム800にローカルなモデムは、電話回線上のデータを受信し、赤外線送信機を使用してデータを赤外線信号に変換することができる。バス802に結合された赤外線検出器は、赤外線信号で搬送されるデータを受信し、そのデータをバス802上に置くことができる。バス802はデータをメインメモリ806に搬送し、プロセッサ804はそこから命令を取り出して実行する。メインメモリ806によって受信された命令は、オプションで、プロセッサ804による実行の前または後のいずれかに記憶装置810に記憶され得る。
【0091】
コンピュータシステム800はまた、バス802に結合された通信インターフェース818を含むことが好ましい。通信インターフェース818は、ローカルネットワーク822に接続されたネットワークリンク820に結合する双方向データ通信を提供する。例えば、通信インターフェース818は、対応するタイプの電話回線へのデータ通信接続を提供する総合サービスデジタルネットワーク(ISDN)カードまたはモデムであってよい。別の例として、通信インターフェース818は、互換性のあるLANへのデータ通信接続を提供するローカルエリアネットワーク(LAN)カードであってもよい。無線リンクも実装することができます。このような実装形態では、通信インターフェース818は、さまざまな種類の情報を表すデジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号、または光信号を送受信する。
【0092】
ネットワークリンク820は、通常、1つまたは複数のネットワークを介して他のデータデバイスにデータ通信を提供する。例えば、ネットワークリンク820は、ローカルネットワーク822を介して、ホストコンピュータ824またはインターネットサービスプロバイダ(ISP)826によって運営されるデータ機器への接続を提供することができる。ISP826は、現在では一般的に「インターネット」828と呼ばれている世界規模のパケットデータ通信ネットワークを通じてデータ通信サービスを提供する。ローカルネットワーク822およびインターネット828は両方とも、デジタルデータストリームを搬送する電気信号、電磁信号、または光信号を使用する。コンピュータシステム800との間でデジタルデータを搬送する様々なネットワークを介する信号、ネットワークリンク820および通信インターフェース818を介する信号は、情報を搬送する搬送波の例示的な形態である。
【0093】
コンピュータシステム800は、ネットワーク、ネットワークリンク820、および通信インターフェース818を介して、メッセージを送信し、プログラムコードを含むデータを受信することができる。インターネットの例では、サーバ830は、インターネット828、ISP826、ローカルネットワーク822、および通信インターフェース818を介して、アプリケーションプログラムの要求されたコードを送信することができる。1つのそのようなダウンロードされたアプリケーションは、例えば、本明細書に記載される1つ以上の技術を提供することができる。受信されたコードは、受信されたときにプロセッサ804によって実行され、および/または後で実行するために記憶装置810または他の不揮発性記憶装置に記憶され得る。このようにして、コンピュータシステム800は、搬送波の形態でアプリケーションコードを取得することができる。
【0094】
本出願の文脈では、「歪み」および「歪み補正」という用語が使用される。「歪み」とは、ある点から別の点に関数値を再割り当てすることを意味する。例えば、 歪みの前に関数f(x,y)があり、関数値f0が点(x0,y0)に割り当てられると仮定する。歪みの後、同じ関数値f0が別の点(x0’,y0’)に割り当てられる。もちろん、この例は、異なる関数値と他の異なる点へのマッピングを持つが、画像内のすべての関連点に適用される。すべての点(x,y)に対するマッピング(x,y)→(x’,y’) が歪みを定義する。歪み補正を適用するには、フォワードモデルで何らかの歪み(x,y)→(x’,y’)が適用されると想定される。歪みを補正するには、(x’,y’)→(x,y)を適用することで歪みを計算的に反転する。
【0095】
さらなる実施形態は、以下の番号付けされた項のリストに開示される。
1.第1の画像を取得することであって、前記第1の画像は前記画像をキャプチャするために使用される光学システムの1つまたは複数の非アイソプラナティック収差を受けることと、
以下の操作:
前記第1の画像に対するフィールド空間におけるフィールド非アイソプラナティック補正操作であって、前記フィールド空間が光学システムのフィールド面に対応する操作、および
前記第1の画像に対する瞳空間における瞳非アイソプラナティック補正操作であって、前記瞳空間が光学システムの瞳面に対応する操作、
のうちの1つまたは両方を実行することによって、前記1つまたは複数の非アイソプラナティック収差の影響について前記第1の画像を非反復的に補正することと、
を含み、
前記1つまたは複数の非アイソプラナティック収差は、物体の歪みおよび/または瞳の歪みと組み合わされたコンボリューションとして記述可能なクラスの非アイソプラナティック収差を含む、計測方法。
2.前記少なくとも1つの非アイソプラナティック補正操作を実行することは、
第1クラスの非アイソプラナティック収差の影響を補正する前記フィールド非アイソプラナティック補正操作、および
第2クラスの非アイソプラナティック収差の影響を補正する前記瞳非アイソプラナティック補正操作、
のうちの1つまたは両方を実行することを含む、項1に記載の方法。
3.前記第1クラスの非アイソプラナティック収差は、前記フィールド空間における歪みによって補正可能な前記非アイソプラナティック収差を含み、前記第2クラスの非アイソプラナティック収差は、前記瞳空間の歪みによって補正可能な前記非アイソプラナティック収差を含む、項2に記載の方法。
4.前記第1クラスの非アイソプラナティック収差のみの影響を補正するために前記フィールド非アイソプラナティック補正操作のみを実行すること、または前記第2クラスの非アイソプラナティック収差のみの影響を補正するために前記瞳非アイソプラナティック補正操作のみを実行することを含む、項2または3に記載の方法。
5.前記第1クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットおよび前記第2クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットを補正することを含む、項2または3に記載の方法。
6.前記適切なサブセットは、前記非アイソプラナティック収差の記述をフィールド座標の第1スカラー関数と瞳座標の第2スカラー関数に近似因数分解することによって決定される、項5に記載の方法。
7.前記第1の画像は、複素フィールド表現(complex field representation)を含み、
前記第1の画像の順方向フーリエ変換を実行して、変換された画像を取得することと、
前記瞳非アイソプラナティック補正操作を実行して、瞳空間における前記第2クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットを補正することと、
フィールド表現に対して逆方向フーリエ変換を実行することと、
前記フィールド非アイソプラナティック補正操作を実行して、フィールド空間における前記第1クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットを補正することと、
を含む、項5または6に記載の方法。
8.前記瞳非アイソプラナティック補正操作を実行して前記第2クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットを補正することと、前記フィールド非アイソプラナティック補正操作を実行して前記第1クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットを単一の補正操作で補正することと、を含む、項5または6に記載の方法。
9.前記第1の画像は、コヒーレント測定放射を使用して取得される、項8に記載の方法。
10.前記少なくとも1つの非アイソプラナティック補正操作は、歪み演算(distortion operation)を含む、項1から9のいずれかに記載の方法。
11.続いて、反復収差補正手順を実行して、残存する非アイソプラナティック収差を補正することを含む、項1から10のいずれかに記載の方法。
12.少なくとも1つのアイソプラナティック収差を補正することをさらに含む、項1から11のいずれかに記載の方法。
13.前記フィールド空間内で少なくとも1つのアイソプラナティック補正操作を実行することによって補正可能な第1クラスのアイソプラナティック収差、および/または前記瞳空間内で少なくとも1つのアイソプラナティック補正操作を実行することによって補正可能な第2クラスのアイソプラナティック収差を補正することを含む、項12に記載の方法。
14.前記少なくとも1つのアイソプラナティック補正操作は、デコンボリューションを含む、項12または13に記載の方法。
15.前記第1の画像は、リソグラフィプロセスによって基板上に形成された構造の画像を含む、項1から14のいずれかに記載の方法。
16.前記光学システムは、5つ未満のレンズ素子を有する対物レンズシステムを備える、項1から15のいずれかに記載の方法。
17.前記対物レンズシステムは、3つ未満のレンズ素子を備える、項16に記載の方法。
18.前記対物レンズシステムは、0.7より大きい開口数を備える、項16または17に記載の方法。
19.適切な装置上で実行されると、項1から15のいずれかに記載の方法を実行するように動作可能なプログラム命令を含むコンピュータプログラム。
20.項19に記載のコンピュータプログラムを含む非一時的コンピュータプログラムキャリア。
21.項20の非一時的コンピュータプログラムキャリアと、
前記非一時的コンピュータプログラムキャリアに含まれるコンピュータプログラムを実行するように動作可能なプロセッサと、
を備える処理装置。
22.基板上の少なくとも1つの構造を測定するように動作可能な計測装置であって、
項21に記載の処理装置を備え、
前記処理装置は、項1から15のいずれかの方法を実行するように動作可能である、計測装置。
23.サンプルによって散乱された散乱放射を収集するための対物レンズシステムと、
前記対物レンズシステムによって収集された前記散乱放射から画像を検出するように動作可能な検出器と、
を備える、項22に記載の計測装置。
24.前記対物レンズシステムは、物体歪みおよび/または瞳歪みと組み合わされたコンボリューションとして記述可能な前記クラスの非アイソプラナティック収差以外の無視できる非アイソプラナティック収差を含む、項23に記載の計測装置。
25.前記対物レンズシステムは、5つ未満のレンズ素子を備える、項23または24に記載の計測装置。
26.前記対物レンズシステムは、3つ未満のレンズ素子を備える、項23または24に記載の計測装置。
27.2つのレンズ素子を備え、各レンズ素子は、球面および非球面を備える、項26に記載の計測装置。
28.前記レンズ素子の球面は、相互に向き合っている、項27に記載の計測装置。
29.前記対物レンズシステムは、0.7より大きい開口数を備える、項23から28のいずれかに記載の計測装置。
30.前記対物レンズシステムは、0.8より大きい開口数を備える、項23から28のいずれかに記載の計測装置。
31.非平面光学素子またはレンズ素子の数が5つ未満である複数の非平面光学素子またはレンズ素子と、
物体歪みおよび/または瞳歪みと組み合わされたコンボリューションとして記述可能なクラスの非アイソプラナティック収差以外の無視できる非アイソプラナティック収差と、
を備える対物レンズシステム。
32.前記対物レンズシステムは、3つ未満の非平面光学素子またはレンズ素子を備える、項31に記載の対物レンズシステム。
33.2つのレンズ素子を備え、各レンズ素子が球面および非球面を備える、項32に記載の対物レンズシステム。
34.前記レンズ素子の球面が相互に向き合っている、項33に記載の対物レンズシステム。
35.0.7より大きい開口数を有する、項31から34のいずれかに記載の対物レンズシステム。
36.0.8より大きい開口数を有する、項31から34のいずれかに記載の対物レンズシステム。
【0096】
本明細書では、ICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特定の言及がなされ得るが、本明細書に記載されるリソグラフィ装置は、他の用途を有し得ることを理解するべきである。他の可能な用途には、統合光学システム、磁区メモリ、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどのガイダンスと検出パターンの製造が含まれる。
【0097】
本明細書では、検査装置または計測装置との関連で本発明の実施形態を具体的に参照することができるが、本発明の実施形態は、他の装置で使用することができる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、リソグラフィ装置、またはウェハ(または他の基板)またはマスク(または他のパターニングデバイス)などの物体を測定または処理する任意の装置の一部を形成することができる。「計測装置」という用語は、検査装置または検査システムを表してもよい。例えば、発明の実施形態を備える検査装置が、基板の欠陥または基板上の構造の欠陥を検出するために使用されてもよい。このような実施形態では、基板上の構造の興味のある特性が、基板上の構造における欠陥、基板上の構造の特定の部分の不存在、基板上の望ましくない構造の存在に関してもよい。
【0098】
「計測装置/ツール/システム」または「検査装置/ツール/システム」への具体的な参照がなされたが、これらの用語は同じまたは同様のタイプのツール、装置、システムを表してもよい。例えば、発明の実施形態を備える検査または計測装置が、基板またはウェーハ上の構造の特性を判定するために使用されてもよい。例えば、発明の実施形態を備える検査装置または計測装置が、基板の欠陥または基板またはウェーハ上の構造の欠陥を検出するために使用されてもよい。このような実施形態では、基板上の構造の興味のある特性が、基板またはウェーハ上の構造における欠陥、基板またはウェーハ上の構造の特定の部分の不存在、基板またはウェーハ上の望ましくない構造の存在に関してもよい。
【0099】
上記では、光学リソグラフィの文脈での本発明の実施形態の使用について具体的に言及してきたが、文脈が許せば、本発明は光学リソグラフィに限定されず、その他のアプリケーション、たとえばインプリントリソグラフィでも使用することができる。
【0100】
前述されたターゲットまたはターゲット構造(より一般化して基板上の構造)は、測定の目的のために具体的に設計および形成された計測ターゲット構造であったが、他の実施形態では、興味のある特性が基板上に形成されたデバイスの機能部である一または複数の構造上で測定されてもよい。多くのデバイスは、規則的な格子状の構造を有する。「構造」「ターゲット格子」「ターゲット構造」の用語は、構造が実行中の測定のために具体的に提供されたことを要求しない。更に、計測ターゲットのピッチPは、スキャトロメータの光学システムの解像限界に近くてもよいし、より小さくてもよいが、リソグラフィプロセスによってターゲット部分Cにおいて作られる典型的な製品フィーチャの寸法より格段に大きくてもよい。実際には、ターゲット構造内のオーバーレイ格子の線および/または空間は、製品フィーチャと寸法において同様のより小さい構造を含むように作られてもよい。
【0101】
本発明の特定の実施形態が上記で説明されたが、本発明は、説明された以外の方法で実施されてもよいことが理解されよう。上記の説明は、限定ではなく例示を意図したものである。したがって、以下に記載される特許請求の範囲から逸脱することなく、記載された本発明に変更を加えることができることが当業者には明らかであろう。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の画像を取得することであって、前記第1の画像は前記画像をキャプチャするために使用される光学システムの1つまたは複数の非アイソプラナティック収差を受けることと、
以下の操作:
前記第1の画像に対するフィールド空間におけるフィールド非アイソプラナティック補正操作であって、前記フィールド空間が光学システムのフィールド面に対応する操作、および
前記第1の画像に対する瞳空間における瞳非アイソプラナティック補正操作であって、前記瞳空間が光学システムの瞳面に対応する操作、
のうちの1つまたは両方を実行することによって、前記1つまたは複数の非アイソプラナティック収差の影響について前記第1の画像を非反復的に補正することと、
を含み、
前記1つまたは複数の非アイソプラナティック収差は、物体の歪みおよび/または瞳の歪みと組み合わされたコンボリューションとして記述可能なクラスの非アイソプラナティック収差を含む、計測方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの非アイソプラナティック補正操作を実行することは、
第1クラスの非アイソプラナティック収差の影響を補正する前記フィールド非アイソプラナティック補正操作、および
第2クラスの非アイソプラナティック収差の影響を補正する前記瞳非アイソプラナティック補正操作、
のうちの1つまたは両方を実行することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1クラスの非アイソプラナティック収差は、前記フィールド空間における歪みによって補正可能な前記非アイソプラナティック収差を含み、前記第2クラスの非アイソプラナティック収差は、前記瞳空間の歪みによって補正可能な前記非アイソプラナティック収差を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1クラスの非アイソプラナティック収差のみの影響を補正するために前記フィールド非アイソプラナティック補正操作のみを実行すること、または前記第2クラスの非アイソプラナティック収差のみの影響を補正するために前記瞳非アイソプラナティック補正操作のみを実行することを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットおよび前記第2クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットを補正することを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記適切なサブセットは、前記非アイソプラナティック収差の記述をフィールド座標の第1スカラー関数と瞳座標の第2スカラー関数に近似因数分解することによって決定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の画像は、複素フィールド表現を含み、
前記第1の画像の順方向フーリエ変換を実行して、変換された画像を取得することと、
前記瞳非アイソプラナティック補正操作を実行して、瞳空間における前記第2クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットを補正することと、
フィールド表現に対して逆方向フーリエ変換を実行することと、
前記フィールド非アイソプラナティック補正操作を実行して、フィールド空間における前記第1クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットを補正することと、
を含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記瞳非アイソプラナティック補正操作を実行して前記第2クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットを補正することと、前記フィールド非アイソプラナティック補正操作を実行して前記第1クラスの非アイソプラナティック収差の適切なサブセットを単一の補正操作で補正することと、を含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの非アイソプラナティック補正操作は、歪み演算を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つのアイソプラナティック収差を補正することをさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記フィールド空間内で少なくとも1つのアイソプラナティック補正操作を実行することによって補正可能な第1クラスのアイソプラナティック収差、および/または前記瞳空間内で少なくとも1つのアイソプラナティック補正操作を実行することによって補正可能な第2クラスのアイソプラナティック収差を補正することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の画像は、リソグラフィプロセスによって基板上に形成された構造の画像を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記光学システムは、5つ未満のレンズ素子を有する対物レンズシステムを備える、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
基板上の少なくとも1つの構造を測定するように動作可能な計測装置であって、
i)請求項
1に記載の方法を実行するように動作可能なプログラム命令を含むコンピュータプログラムを含む非一時的コンピュータプログラムキャリアと、ii)前記非一時的コンピュータプログラムキャリア上に含まれるコンピュータプログラムを実行するように動作可能なプロセッサと、を備える処理装置を備え、
前記処理装置は、請求項
1に記載の方法を実行するように動作可能である、計測装置。
【請求項15】
非平面光学素子またはレンズ素子の数が5つ未満である複数の非平面光学素子またはレンズ素子と、
物体歪みおよび/または瞳歪みと組み合わされたコンボリューションとして記述可能なクラスの非アイソプラナティック収差以外の無視できる非アイソプラナティック収差と、
を備える対物レンズシステム。
【国際調査報告】