(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサの少なくとも1つの閾値の調整
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
A61M5/31 520
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518318
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2022076290
(87)【国際公開番号】W WO2023046795
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ジェイソン・ドレイク
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ポール・モリス
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・アントニー・スミス
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE06
4C066EE14
4C066HH02
4C066HH12
4C066QQ77
4C066QQ78
(57)【要約】
薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサの少なくとも1つの閾値を調整する方法が開示され、薬物送達装置は可動投与量プログラミングコンポーネントを含み、センサは、薬物投与中、センサに関する可動投与量プログラミングコンポーネントの移動を、センサの出力信号を少なくとも1つの閾値と比較することによって検出するために提供され及び構成され、方法は、以下のステップ:薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサのための製造セットアップリグを、参照可動投与量プログラミングコンポーネントと、参照可動投与量プログラミングコンポーネントが移動したときに参照センサにより生成される信号を処理するように構成された電子システムとにより参照センサのための閾値の設定を特定し、特定された設定を閾値係数に変換することによって、較正するステップと、移動する参照可動投与量プログラミングコンポーネントをサンプリングすることによってセンサの出力信号のデータを収集し、収集されたデータに基づいて閾値係数を使って少なくとも1つの閾値を計算し、計算された少なくとも1つの閾値で、センサと共に使用するように構成された別の電子システムをプログラミングすることによって、生産用薬物送達装置又は生産用薬物送達付属装置のセンサの閾値を調整するステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達装置(1)又は薬物送達付属装置のセンサ(215;215a、215b)の少なくとも1つの閾値を調整する方法であって、前記薬物送達装置(1)は可動投与量プログラミングコンポーネント(70、70a、70b)を含み、前記センサ(215;215a、215b)は、薬物の投与中、前記センサ(215;215a、215b)に関する前記可動投与量プログラミングコンポーネント(70、70a、70b)の移動を、前記センサ(215;215a、215b)の出力信号(1004)を少なくとも1つの閾値と比較することによって検出するために提供され及び構成され、前記方法は:
- 薬物送達装置(1)又は薬物送達付属装置のセンサ(215;215a、215b)のための製造セットアップリグを、参照可動投与量プログラミングコンポーネントと、前記参照可動投与量プログラミングコンポーネントが移動したときに参照センサにより生成される信号を処理するように構成された電子システムとにより、前記参照センサのための閾値の設定を特定し、特定された設定を閾値係数に変換することによって、較正するステップと、
- 移動する前記参照可動投与量プログラミングコンポーネントをサンプリングすることによって前記センサ(215:215a、215b)の前記出力信号(1004)のデータを収集し、前記収集されたデータに基づいて前記閾値係数を使って少なくとも1つの閾値を計算し、前記計算された少なくとも1つの閾値で、前記センサと共に使用するように構成された別の電子システムをプログラミングすることによって、生産用薬物送達装置(1)の又は生産用薬物送達付属装置のセンサ(215:215a、215b)の閾値を調整するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
薬物送達装置(1)又は薬物送達付属装置のセンサ(215;215a、215b)のための前記製造セットアップリグを較正する前記ステップが、複数回、繰り返し実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
薬物送達装置(1)又は薬物送達付属装置のセンサ(215;215a、215b)のための前記製造セットアップリグを較正する前記ステップが、前記製造セットアップリグの少なくとも1つのパラメータが変更され、それが閾値の前記設定を前記特定することに影響を与える場合に実行される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記参照センサの前記信号を前記処理することが、前記参照センサ及び前記電子システムに少なくとも1つの既定の電圧が供給された状態で、少なくとも1つの既定の周囲気温範囲で、前記参照可動投与量プログラミングコンポーネントの既定の位置において前記信号の複数の読み取り値を得ることを含む、請求項1、2、又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記参照センサの前記信号を前記処理することが、得られた読み取り値の、デフォルト閾値より低い及び高い数を計算し、得られた読み取り値の、デフォルト閾値より低い及び高い数がほぼ等しくなるまで前記デフォルト閾値を変化させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記参照センサの前記信号の前記得られた読み取り値が、アナログ-デジタル変換器ADCによってデジタル化され、前記閾値係数TFはTF=(T-L)/(H-L)として計算され、式中、T=閾値ADC、L=読み取り値の平均<最大10%、H=読み取り値の平均>最大90%である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記センサが、光学検知装置(215;215a、215b)、電磁放射線検知装置、容量型検知装置、誘導型検知装置、磁気検知装置、電離放射線検知装置、音響検知装置、電流検知装置、電圧検知装置、加速度検知装置、ジャイロスコープ検知装置のうちの1つである、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記可動投与量プログラミングコンポーネントが、既定の角度周期性を有するロータリエンコーダシステム(70a、70b)を含み、前記較正及び調整ステップ中、前記ロータリエンコーダシステムの回転が前記センサにより検出される、請求項1~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ロータリエンコーダシステムがほぼ等間隔の12のフラッグ(70a、70b)を含み、前記センサが、前記ロータリエンコーダシステムの360°の回転中に300のサンプルを得て、サンプリング時間は前記360度の回転にわたり均等に分散される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記閾値係数が、生産用薬物送達装置の又は生産用薬物送達付属装置の典型的な動作電圧に合わせて調整される、請求項1~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
薬物送達装置(1)の又は薬物送達付属装置のセンサ(215;215a、215b)の少なくとも1つの閾値を調整するために提供される、薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサのための製造セットアップリグであって、前記薬物送達装置は可動投与量プログラミングコンポーネント(70、70a、70b)を含み、前記センサ(215;215a、215b)は、薬物の投与中、前記センサ(215;215a、215b)に関する前記可動投与量プログラミングコンポーネント(70、70a、70b)の移動を、前記センサ(215;215a、215b)の出力信号(1004)を少なくとも1つの閾値と比較することによって検出するために提供され及び構成され、前記製造セットアップリグは:
- 参照可動投与量プログラミングコンポーネントと、
- 参照センサと、
- 前記参照可動投与量プログラミングコンポーネントが移動したときに前記参照センサにより生成された信号を処理し、特定された設定を閾値係数に変換するように構成された電子システムと、
を含む、製造セットアップリグ。
【請求項12】
前記参照可動投与量プログラミングコンポーネントと、前記参照センサと、前記電子システムとのうちの少なくとも1つは、生産用薬物送達装置又は生産用薬物送達付属装置を表す既定の名目特性を有する、請求項11に記載の製造セットアップリグ。
【請求項13】
前記電子システムのための少なくとも1つの既定の電圧供給を含む、請求項11又は12に記載の製造セットアップリグ。
【請求項14】
少なくとも1つの既定の周囲気温範囲を提供するように構成される、請求項11、12、又は13に記載の製造セットアップリグ。
【請求項15】
生産用薬物送達装置(1)又は生産用薬物送達付属装置であって、前記生産用薬物送達装置(1)は可動投与量プログラミングコンポーネント(70、70a、70b)を含み、前記生産用薬物送達装置(1)及び/又は前記生産用薬物送達付属装置は、少なくとも1つのセンサ(215;215a、215b)であって、薬物の投与中、前記少なくとも1つのセンサ(215;215a、215b)に関する前記可動投与量プログラミングコンポーネント(70、70a、70b)の移動を、前記少なくとも1つのセンサ(215;215a、215b)の出力信号(1004)を少なくとも1つの閾値と比較することによって検出するために提供され及び構成された少なくとも1つのセンサ(215;215a、215b)を含み、前記少なくとも1つのセンサ(215;215a、215b)の前記少なくとも1つの閾値は、請求項1~10の何れか1項に記載の方法によって調整される、生産用薬物送達装置(1)又は生産用薬物送達付属装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサの少なくとも1つの閾値の調整に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2016131713A1号パンフレットは、注入装置に取り付けるためのデータ収集装置及びそこからの薬剤投与量情報を収集することに関する。データ収集装置は、注入装置に取り付けるように構成された嵌合機構と、薬剤の送達中に、注入装置の可動投与量プログラミングコンポーネントの、データ収集装置に関する移動を検出するように構成されたセンサ機構と、前記検出された移動に基づいて、注入装置により投与される薬剤投与量を特定するように構成されたプロセッサ機構と、を含み得る。センサ機構は、特に発光ダイオード(LED)等の光源を含む光センサ、例えば光学式エンコーダユニットと、光変換器等の光検出器と、を含み得る。プロセッサ機構は、光学式エンコーダによりパルスが出力されてから経過した時間をモニタし、前記時間が所定の閾値を超えた場合に前記薬剤投与量を特定するように構成され得る。
【0003】
国際公開第2019101962A1号パンフレットには、既定の角度周期性を有するロータリエンコーダシステムを含む可動投与量プログラミングコンポーネントと、薬剤投与中に、可動投与量プログラミングコンポーネントの、センサ機構に関する移動を検出するように構成された第一の光センサを含むセンサ機構と、を含む注入装置が記載されている。第一の光センサは、ストローブサンプリングモードにおいて第一の周波数で動作するように構成される。注入装置は第二の光センサをさらに含み、これはロータリエンコーダシステムの、第二の光センサに関する移動を検出し、ストローブサンプリングモードにおいて、第一の周波数より低い第二の周波数で動作するように構成される。さらにまた、注入装置は、ロータリエンコーダシステムの検出された移動に基づいて、注入装置により投与される薬剤投与量を特定するように構成されたプロセッサ機構を含む。ロータリエンコーダシステムは、注入装置の動作のダイアルモード中に第一の光センサに関して回転可能であるように構成され得る。第二の光センサは、ストローブサンプリングモードにおいて、第一の周波数より低い第二の周波数で動作するように構成され得る。国際公開第2019101962A1号パンフレットでは、光センサ及びロータリエンコーダシステムを用いて薬剤又は薬物投与量を特定する別の実施形態が開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示では、薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサの少なくとも1つの閾値を調整するための方法と装置とを説明する。
【0005】
1つの態様において、本開示は、薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサの少なくとも1つの閾値を調整する方法を提供し、薬物送達装置は可動投与量プログラミングコンポーネントを含み、センサは、薬物の投与中、センサに関する可動投与量プログラミングコンポーネントの移動を、センサの出力信号を少なくとも1つの閾値と比較することによって検出するために提供され及び構成され、方法は、以下のステップ、すなわち、薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサのための製造セットアップリグを、参照可動投与量プログラミングコンポーネントと、参照可動投与量プログラミングコンポーネントが移動したときに参照センサにより生成される信号を処理するように構成された電子システムとにより、参照センサのための閾値の設定を特定し、特定された設定を閾値係数に変換することによって、較正するステップと、移動する参照可動投与量プログラミングコンポーネントをサンプリングすることによってセンサの出力信号のデータを収集し、収集されたデータに基づいて閾値係数を使って少なくとも1つの閾値を計算し、計算された少なくとも1つの閾値で、センサと共に使用するように構成された別の電子システムをプログラミングすることによって、生産用薬物送達装置の又は生産用薬物送達付属装置のセンサの閾値を調整するステップと、を含む。調整は、薬物送達装置又は薬物送達付属装置のほか、その他のコンポーネントにおいても生じる各センサ内の固有の自然変動を克服し、それゆえ、各センサの正確で一貫した動作を改善するために実行され得る。自然変動は、例えば製造公差及び装置の特性から生じ得る。較正ステップは、閾値係数を得るために1回のみ実行され得て、それがその後、薬物送達装置又は薬物送達付属装置の製造ごとに実行され得る調整ステップで使用される。このように、この調整方法により、個々の生産用装置の各センサを較正する代わりに、生産用装置の1つ又は複数の閾値を効率的に調整することができる。参照センサは特に、生産用薬物送達装置又は生産用薬物送達付属装置の少なくとも1つのセンサとは異なるセンサである。例えば、参照センサは、所望のセンサ仕様からの小さい自然変動しか生じない、特に選択されたセンサであり得る。
【0006】
この方法は、薬物の投与中にセンサに関して移動する可動投与量プログラミングコンポーネントを有する何れの薬物送達装置にも適用可能である。この調整方法は、薬物送達装置又は薬物送達付属装置の1つ又は複数のセンサに適用され得る。例えば、数個のセンサを備える装置において、各センサ又はセンサのサブセットのための閾値係数を取得し、数個の閾値係数を使ってこれらから全体の閾値係数を計算することが可能であり、それをその後、生産用装置の1つ又は複数の閾値を調整するために使用できる。
【0007】
実施形態において、薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサのための製造セットアップリグを較正するステップは、何度も繰り返して実行され得る。これによって全体の較正結果を改善し得て、それは、これが数個の個々の較正結果に基づき、全体の較正をより正確に表すことができ、例えば複数の個々の較正結果の平均であり得るからである。
【0008】
実施形態において、薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサのための製造セットアップリグを較正するステップは、製造セットアップリグの少なくとも1つのパラメータが変更され、それが閾値の設定を特定することに影響を与える場合に実行され得る。これは、品質保証に役立ち得る。
【0009】
別の実施形態において、参照センサの信号を処理するステップは、参照可動投与量プログラミングコンポーネントの既定の位置において、参照センサと電子システムに少なくとも1つの既定の電圧供給を供給して、少なくとも1つの既定の周囲気温範囲内で複数の読み取り値を得ることを含み得る。これによって、較正が既定の条件下で行われることが確実となり得、較正ステップ中に得られた結果は高い精度を有する。
【0010】
実施形態において、参照センサの信号を処理するステップは、得られた読み取り値の、デフォルト閾値より低い及び高いものの数を計算し、例えば計数し、得られた読み取り値の、デフォルト閾値より低い及びそれより高い数がほぼ等しくなるまでデフォルト閾値を変化させることを含み得る。これによって、センサ信号は、可動投与量プログラミングコンポーネントの標的とほぼ同じ高低比を有し得ることが確実となり得る。
【0011】
実施形態において、参照センサの信号の得られた読み取り値は、アナログ-デジタル変換器ADCを用いてデジタル化され得て、閾値係数TFはTF=(T-L)/(H-L)として計算され得、式中、T=閾値ADC、L=読み取り値の平均<最大10%、H=読み取り値の平均>最大90%である。これによって、ADCドメインにおいて、参照センサ信号(読み取り値)のデジタル化サンプルと、これらの読み取り値から計算された閾値から閾値係数を計算できる。
【0012】
別の実施形態において、センサは、光学検知装置、電磁放射線検知装置、容量型検知装置、誘導型検知装置、磁気検知装置、電離放射線検知装置、音響検知装置、電流検知装置、電圧検知装置、加速度検知装置、ジャイロスコープ検知装置のうちの1つであり得る。一般に、センサが可動投与量プログラミングコンポーネントの移動の検出に適しており、移動を示し、移動を特定するための少なくとも1つの閾値に匹敵する信号を送達する場合、何れの種類のセンサにもこの方法を適用できる。
【0013】
また別の実施形態において、可動投与量プログラミングコンポーネントは、既定の角度周期性を有するロータリエンコーダシステムを含み得て、較正及び調整ステップ中、ロータリエンコーダシステムの回転がセンサにより検出される。回転は、光、磁気、誘導性、容量型センサ等の非接触センサで検出され得る。ロータリエンコーダシステムは、例えば光センサを用いる国際公開第20191010952A1号パンフレットにおいて開示されているように実装され得る。
【0014】
特定の実施形態において、ロータリエンコーダシステムは、ほぼ均等に離間された12のフラッグを含み得て、センサはロータリエンコーダシステムが360°回転する間に300のサンプルを取得し、サンプリング時間は360°の回転にわたり均等に分散される。これは、各センサのための閾値を合理的正確さで定めることができるようにするのに適切であることがわかっている。必要に応じて、有効な角度分解能を増大させるために、適切な内挿法を使用できる。
【0015】
また別の実施形態において、閾値係数は、生産用薬物送達装置の又は生産用薬物送達付属装置の典型的な動作電圧に合わせて調整され得る。典型的な動作電圧とは特に、それで生産用装置が動作させられるように設計された動作電圧を意味する。例えば、閾値係数が、典型的な動作電圧とは異なる参照動作電圧で特定された場合、それは相応に調整することによって、特に典型的及び参照動作電圧間の比に対応する値で乗算することによって、典型的な動作電圧に調整され得る。
【0016】
別の態様において、本開示は薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサの少なくとも1つの閾値の調整のために提供される、薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサのための製造セットアップリグを提供し、薬物送達装置は可動投与量プログラミングコンポーネントを含み、センサは、薬物の投与中、センサに関する可動投与量プログラミングコンポーネントの移動を、センサの出力信号を少なくとも1つの閾値と比較することによって検出するために提供され及び構成され、製造セットアップリグは、参照可動投与量プログラミングコンポーネントと、参照センサと、参照可動投与量プログラミングコンポーネントが移動したときに参照センサにより生成された信号を処理し、特定された設定を閾値係数に変換するように構成された電子システムと、を含む。この製造リグは、薬物送達装置又は薬物送達付属装置の生産において、閾値係数を取得し、その後、この閾値係数を生産用薬物送達装置又は生産用薬物送達付属装置の閾値の調整時に適用するために使用され得る。
【0017】
実施形態において、参照可動投与量プログラミングコンポーネントと、参照センサと、電子システムとのうちの少なくとも1つは、生産用薬物送達装置又は生産用薬物送達付属装置を表す規定の名目特性を有し得る。それゆえ、製造セットアップリグが、少なくとも一部に、生産用装置を表し、閾値係数が生産用装置に似たコンポーネントで特定されたことが確実となり得る。
【0018】
別の実施形態において、製造セットアップリグは電子システムのための少なくとも1つの既定の電圧供給を含み得る。この供給は、例えば安定化されて、広い動作範囲内の安定な電圧を送達し得て、それによって閾値係数を予測可能な条件下で取得できることが確実となり得る。
【0019】
また別の実施形態において、製造セットアップリグは、少なくとも1つの既定の周囲気温範囲を提供するように構成され得る。周囲気温は閾値係数の特定に影響を与え得るため、既定の周囲気温範囲によって、変化する周囲気温下でも正確な結果が得られることが確実になり得る。
【0020】
また別の態様において、本開示は生産用薬物送達装置又は生産用薬物送達付属装置を提供し、生産用薬物送達装置は可動投与量プログラミングコンポーネントを含み、生産用薬物送達装置及び/又は生産用薬物送達付属装置は、少なくとも1つのセンサであって、薬物の投与中、少なくとも1つのセンサに関する可動投与量プログラミングコンポーネントの移動を、少なくとも1つのセンサの出力信号を少なくとも1つの閾値と比較することによって検出するために提供され及び構成された少なくとも1つのセンサを含み、少なくとも1つのセンサの少なくとも1つの閾値は、本願で開示される方法によって調整される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】ロータリエンコーダシステムの第一の実施形態の側面図である。
【
図3】
図2に示されるロータリエンコーダシステムの平面図である。
【
図4】ロータリエンコーダシステムの第二の実施形態側面図である。
【
図5】
図4に示されるロータリエンコーダシステムの平面図である。
【
図6】装置コントローラの実施形態の概略ブロック図である。
【
図7】回転中の典型的なセンサ信号(360°回転するごとに300サンプル)のトレースを示す。
【
図8】センサ信号の典型的な連続読み取り値の例を示し、読み取り値は各読み取り値の大きさに基づいて、最も低い読み取り値が第一の読み取り値、最も高い読み取り値は最後の読み取り値となるように順序付けされている。
【
図9】センサ信号の順序付けされた連続読み取り値の例を示し、35、40と60の平均、及び65パーセンタイル読み取り値が強調され、±3σのエラーバーが示される。
【
図10】1000個の注入装置の母集団からの平均センサ読み取り値を示し、偏差限界3σとする。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本開示の実施形態を、注入装置、特にペン型の注入装置に関して説明する。しかしながら、本開示はこのような用途に限定されず、その他の種類の薬物送達装置でも、特にペン以外の形状のものでも等しく利用され得る。全ての絶対値は本明細書において例として示されているにすぎず、限定的と解釈されるべきではない。
【0023】
注入ボタンとグリップが組み合わせられた注射ペンの例とその機械的構成が、国際特許出願国際公開第2014033195A1号パンフレットに詳しく記載されている。別々の注入ボタン及びグリップコンポーネントがある注入装置の他の例は、国際公開第2004078239A1号パンフレットに記載されている。
【0024】
以下の記述の中で、「遠位」、「遠位方向に」、及び「遠位端」という用語は、注射ペンの、針が設けられる端を指す。「近位」、「近位方向に」、及び「近位端」は、注入装置の、注入ボタン又は投与量ノブが設けられる反対の端を指す。
【0025】
まず、ロータリエンコーダシステムと投与量選択及び排出機構を有する注射ペンの構成を説明する。これは、当業者が後述の閾値調整をよりよく理解できるようにするのに役立つ。
【0026】
図1は、注射ペン1の分解図である。
図1の注射ペン1は、プレフィルド型使い捨て注射ペンであり、ハウジング10を含み、インスリン容器14が収容されており、そこに針15を取り付けることができる。針は、内側針キャップ16と、外側針キャップ17又は他のキャップ18の何れかにより保護される。注射ペン1から排出されるべきインスリン投与量は、投与量ノブ12を回すことによってプログラム、又は「ダイアル操作」でき、すると、その時現在プログラムされている投与量が投与量窓13を介して、例えば倍数単位で表示される。例えば、注射ペン1がヒトインスリンを投与するように構成されている場合、投与量はいわゆる国際単位(IU)で表示され得て、1IUは高純度結晶インスリン約45.5マイクログラム(1/22mg)の生物学的等価量である。インスリン類似体又はその他の薬剤を送達するための注入装置においては、他の単位が使用され得る。選択された投与量は、
図1の投与量窓13に示されているものとは異なる方法でも同等に表示され得る点に留意すべきである。
【0027】
投与量窓13はハウジング10の開口の形態であり得、それによってユーザは、投与量ノブ12が回されると動き、現在プログラムされている投与量の視覚的表示を提供するように構成されたダイアルスリーブ70の限定部分を見ることができる。投与量ノブ12は、プログラミング中に回されるとハウジング10に関してらせん経路で回転する。この例において、データ収集装置(薬物送達又は注入付属装置)を取り付けやすくするために、投与量ノブ12は1つ又は複数の形成部71a、71b、71cを含む。
【0028】
注射ペン1は、投与量ノブ12を回すことによって機械的なクリック音を発生し、ユーザに音声フィードバックが提供されるように構成され得る。ダイアルスリーブ70は、インスリン容器14内のピストンと機械的に相互作用する。この実施形態において、投与量ノブ12は注入ボタンとしても機能する。針15が患者の皮膚部分に打ち込まれて投与量ノブ12が軸方向に押されると、表示窓13に表示されたインスリン投与量が注射ペン1から排出される。投与量ノブ12が押されてから注射ペン1の針15が皮膚部分に特定時間とどまると、投与量のうちの高いパーセンテージが実際に患者の体内に注入される。インスリン投与量の排出によっても機械的クリック音が発生し得るが、これは投与量のダイアル操作中に投与量ノブ12を回転させたときに発生する音とは異なる。
【0029】
この実施形態において、インスリン投与量の送達中に、投与量ノブ12は軸方向に移動して回転せずにその当初の位置に戻り、他方でダイアルスリーブ70は回転してその当初位置に戻り、例えばゼロ単位の投与量を表示する。
【0030】
注射ペン1は、インスリン容器14が空になるか、注射ペン1内の薬剤の消費期限(例えば、最初の使用から28日後)に到達するまで、複数回の注射プロセスに使用され得る。
【0031】
さらに、注射ペン1を初めて使用する前にインスリン容器14及び針15から空気を抜くために、例えば針15付きの注射ペン1を上向きにして持ち、インスリン2単位を選択し、投与量ノブ12を押すことによって、いわゆる「プライムショット」を実行する必要があり得る。説明を簡単にするために、以下において、排出量は注入される投与量に実質的に対応し、それによって、例えば注射ペン1から排出される薬剤の量は使用者が受ける投与量と等しいと仮定される。しかしながら、排出量と注入量との差(例えば、損失)は考慮する必要があり得る。
【0032】
前述のように、投与量ノブ12はまた、注入ボタンとしても機能し、それによって同じコンポーネントがダイアル操作及び吐出のために使用される。1つ又は複数の光センサを含むセンサ機構215(
図2、3及び4、5)が注入ボタン又は投与量ノブ12の中に取り付けられ得て、これはダイアルスリーブ70の、注入ボタン12に関する相対的回転位置を検知するように構成される。この相対回転は、吐出又は送達される投与量の大きさと同等として、投与歴情報を生成し、保存又は表示するために使用できる。センサ機構215は、第一の(光)センサ215aと第二の(光)センサ215bを含み得る。センサ機構215はまた、薬物送達又は注入付属装置にも装着され得て、これは異なる注入装置1に使用できるようになされ、センサ機構215により取得されるデータを収集するように構成され得る。
【0033】
センサ機構215の光センサ215a、215bは、それぞれ
図2、3及び4、5に示されるシステム500及び900等のロータリエンコーダシステムと共に使用され得る。回転エンコーダシステムは、前述の装置1と共に使用されるように構成され、以下に記載の既定の角度周期性を有し得る。
【0034】
図2及び
図3に示されるように、第一のセンサ215a及び第二のセンサ215bは、ダイアルスリーブ70の近位端における特に適合された領域を標的とするように構成される。この実施形態では、第一のセンサ215a及び第二のセンサ215bは、IR光発光ダイオード(LED)を含む赤外線(IR)反射センサ及びIR感応フォトトランジスタである。したがって、ダイアルスリーブ70の特に適合された近位領域は、反射エリア70aと非反射(すなわち吸収)エリア70bとに分けられ、その結果、所定の角度周期性が得られる。ダイアルスリーブ70の、反射エリア70aと非反射(すなわち吸収)エリア70bを含む部分は、エンコーダリングと呼ばれ得て、これは
図2及び3に示されるように、エリア70a、70bにより画定される既定の角度周期性を有する。
【0035】
生産コストを最小限に抑えるために、これらのエリア70a、70bを射出成形ポリマから形成することが好都合であり得る。ポリマ材料の場合、吸収率と反射率は、例えば吸収率についてはカーボンブラック、反射率については酸化チタン等の添加物を用いて制御することができる。吸収領域は成形ポリマ材料であり、反射領域は金属で製作される(追加的な金属コンポーネントか、又はポリマダイアルスリーブ70のセグメントの選択的金属化)代替的な実装も可能である。
【0036】
2つのセンサを有することにより、後述の電力管理方法が容易となる。第一のセンサ215aは、特定の薬物又は投薬レジームに当てはまる投与歴要件に必要な分解能、例えば1IUに相応の周期で、交互の反射領域70a及び非反射領域70bの連続を標的とするように配置される。第二のセンサ215bは、第一のセンサ215aと比較してより低い周期で、交互の反射領域70a及び非反射領域70bの連続を標的とするように配置される。ロータリエンコーダシステム500は、第一のセンサ215aのみと機能して、吐出される投与量を測定することができると理解すべきである。第二のセンサ215bにより、後述の電力管理方法が容易となる。
【0037】
図2及び3では、2セットのエンコード領域70a、70bが、一方が外側、他方が内側の同心円状に示されている。しかしながら、2つのエンコード領域70a、70bの何れの適当な配置も可能である。領域70a、70bはキャスタレート領域として示されているが、その他の形状と構成も可能であることを念頭に置くべきである。
【0038】
図4に示されるように、この実施形態の2つのセンサ215は、ダイアルスリーブ70の特に適合された領域70a、70bを標的とするように構成される。この実施形態では、IR反射センサが使用され、したがって、ダイアルスリーブ70の領域は反射及び吸収セグメント70a、70bに分割される。セグメント70a、70bはまた、本明細書においてはフラッグとも呼ばれ得る。
【0039】
図2及び3に関して上述したエンコーダシステム500とは異なり、
図4及び5に示されるエンコーダシステム900では、両方のIRセンサ215が同じ種類の領域70a、70bを標的とする。換言すれば、センサ215は、これらが同時に、両方が反射領域70aと面するか、又は両方が吸収領域70bと面するように配置される。ある投与量を吐出している間に、ダイアルスリーブ70は、吐出された薬剤単位ごとに注入ボタン210に関して反時計回りに15°回転する。代替的なフラッグ要素は、30°(すなわち2単位)の区画にある。センサ215は相互に位相ずれし、それらの間の角度が
図5に示されるように奇数単位(例えば、15°、45°、75°等)と等しくなるように配置される。
【0040】
図5に示されるエンコーダシステム900は、1回転あたり12単位、例えば12の交互領域70a、70bを有する。一般に、実施形態は1回転あたり4単位の何れの倍数でも動作する。センサ215間の角度又はαは次式により表現でき、mとnはどちらも何れかの整数であり、1回転あたり4m単位が吐出される。
【数1】
式 - センサ間の角度
【0041】
装置1又は装置1に取り付けるための付属装置はまた、
図6に概略的に示されるように、センサユニット700も含み得る。センサユニット700は、2つのセンサ215a、215bを含むセンサ機構215と、センサ機構215を制御し、外部装置との通信、ユーザ入力の処理、ユーザのための情報出力等のその他のタスクを実行する電子システムと、を含み得る。センサ機構215を制御することは特に、光センサ215a、215bの少なくとも1つを駆動することを含み得て、駆動することは特に、エンコーダリングの回転の測定のための光パルスを生成し、反射エリア70aからのこれらの測定光パルスの反射を検出するために、光センサをどのように制御するかを意味する。電子システムは、例えばマイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はその他等の1つ又は複数のプロセッサと、プロセッサ機構23により実行されるソフトウェアを記憶できるプログラムメモリ24及びメインメモリ25を含むメモリユニット24、25と、Wi-Fi(商標)又はBluetooth(登録商標)等の無線ネットワークを介して他の機器と通信するための無線通信インタフェースであり得る通信ユニット又は出力27、及び/又は例えばユニバーサルシリアルバス(USB)、ミニUSB、又はマイクロUSBコネクタを受けるソケット等の無線通信リンク用インタフェースと、例えばLCD(液晶表示体)、1つ又は複数のLED、及び/又は電子ペーパディスプレイなどの表示ユニット30と、例えば1つ又は複数のボタン及び/又はタッチ入力装置等のユーザインタフェース(UI)31と、電源スイッチ28と、バッテリ29と、を含み得る。
【0042】
電子システムのコンポーネント23、24、25、27、28、29、30、31は、コンポーネントの配線を含むPCBにはんだ付けされ得る。センサ機構215は、PCBに取り付けられても、プロセッサ機構23にワイヤ接続されてもよい。センサユニット700の実装は、それを組み込むべき薬物送達装置又は薬物送達付属装置に依存する。例えば、コンポーネント23、24、25、27、28、29、30、31を備えるPCBは、注入装置1の遠位端に組み込まれ得て、センサ215a、215bは
図2、3及び4、5に示されように配置され、PCBにワイヤで接続され得る。コンポーネント23、24、25、27のうちの少なくとも幾つかは、SoC(システムオンチップ)又はマイクロコントローラにも含まれ得る。
【0043】
プログラムメモリ25に記憶されるファームウェアは、プロセッサ機構23を、センサ機構215を制御して、装置1を用いて送達される薬物投与量の排出を検出することができ、センサ215a、215bの各々が、特に
図2、3及び4、5に関して上述したように、検出された送達薬物投与量に対応するセンサ信号を出力するように構成し得る。プロセッサ機構23は、センサ215a、215bの各々のセンサ信号を受信して各センサ信号の読み取り値を得、これらが処理されて送達投与量が計算される。読み取り値は、例えばセンサ215a、215bのアナログ電圧信号の1つ又は複数の電圧サンプルを含み得る。読み取り値はまた、特定の時間範囲にわたるセンサ215a、215bのアナログ電圧信号の積分も含み得る。電圧信号の代わりに、センサにより生成される電流、電荷、又はその他の出力信号もまた、読み取り値、例えばセンサ信号の周波数、周波数シフトを得るために使用され得る。読み取り値は、注入装置1の動作中に、装置1により吐出される単位数を測定するために、各センサ215a、215bにより得られ得る。
【0044】
吐出単位数を測定することは、以下により詳しく説明するように、各センサ信号のピークを計数し、計数されたピークから送達投与量を導き出すことを含み得る。ピークは、センサ信号が、特に1つ又は複数の既定の閾値を超える既定の要件を満たすときに計数され得る。例えば、2つのエンコード領域70a及び70b間の遷移が光センサ215a、215bによりサンプリングされると、センサ215a、215bのセンサ信号はその状態を変化させ、したがって、この遷移をそのトレースの中で信号トレースの立ち下がり又は立ち上がりとして反映させる。信号状態の変化は、プロセッサ機構23により実行されるセンサ信号処理によって、特にセンサ信号を、プロセッサ機構23の内蔵不揮発性メモリの中でプログラムされ得る1つ又は複数の既定の閾値と比較することによって検出され得る。1つ又は複数の閾値はそれゆえ、いつ領域70a及び70b間の遷移が検出されたかを特定する。しかしながら、既定の閾値には、センサ及びその他のコンポーネントに固有の自然偏差が生じ得る。換言すれば、各注射ペンは、製造公差及びコンポーネントの公差、特にロータリエンコーダシステムの機械的コンポーネントの公差により、また電子システムコンポーネント、特にセンサ215a、215bの特性のばらつきにより相互に異なる。それゆえ、注入装置1の1つ又は複数の閾値は、後述のように、較正及び調整ステップを含む方法によって調整され得る。
【0045】
装置1に組み込む必要のあるバッテリ29の大きさを小さくすることができるように、ロータリエンコーダシステムの500の電力使用を小さくする、ことができる。この実施形態で使用されるセンサ215a、215bには、動作するために特定の量の電力が必要となる。この実施形態は、センサ215a、215bが制御された周期で間欠的にオンオフを切り替えることができるように(すなわち、ストローブサンプリングモードで)配置される。本来的に、エイリアシングが発生する前に、サンプリングされたロータリエンコーダシステムにより計数可能な最大回転速度には限界がある。エイリアシングとは、サンプリングレートが、検知された領域がセンサを通過するレートより低い現象であり、これは、領域の変化が見落とされたときにカウントミスが生じることを意味する。第一の周波数215aと比較して低い周波数の第二のセンサ215bは、それにもエイリアシングが発生する前に、より高い回転速度に耐えることができる。第二のセンサ215bは吐出される投与量を第一のセンサ215aと同じ分解能まで分解できないが、第二のセンサ215bの出力はより高い速度でも信頼できる状態のままである。したがって、両方のセンサ215a、215bが組み合わせて使用されて、第一の閾値回転(吐出)速度まで、送達される投与量を正確に特定することができる。センサ215a、215bはすると、第二の(より高い)閾値投与速度まで、送達される大体の投与量を特定するために使用できる。第二の閾値速度より高い速度では、センサ215a、215bは送達される投与量を正確に、又は概算で特定することができず、したがって、第二の閾値は、注射ペン1では物理的に不可能な速度より高く設定される。
【0046】
第一の速度閾値は、第一のセンサ215aのサンプリングレートと、所期の薬物又は投与レジームにより必要とされる分解能(例えば、1IU当たり1回の遷移)に固定されるエンコーダ領域遷移の周期によって特定される。第二の速度閾値は、第二のセンサ215bのサンプリングレートと、エンコーダ領域遷移の周期によって特定される。第一の閾値は、吐出速度の最大範囲が、吐出される投与量の正確な報告のために、システムによりカバーできるように設定される。
【0047】
図3に示される例示的実施形態は、送達される投与量の1IUあたり1回の遷移の領域遷移を標的とする第一のセンサ215aと、送達される投与量の6IUあたり1回の遷移の領域遷移を標的とする第二のセンサ215bを有する。その他の選択肢も可能であり、これには2IUあたり1回の遷移、4IUあたり1回の遷移、8IUあたり1回の遷移、IU単位あたり1回の遷移が含まれる。これらの選択肢は各々、
図3に示されるロータリエンコーダシステム500に1回転あたり24の別々の領域70a、70bがあるため、可能である。一般に、1回転当たりの別々の領域70a、70bの数がn単位であった場合、m単位あたり1回の領域遷移における選択肢があり、mは、1より大きくnより小さい、nの何れかの整数因数である。
【0048】
両方のセンサ215a、215bのサンプリング周波数が低速であるほど、必要な電力消費量は小さく、したがってバッテリ29の必要な大きさも小さくなる。したがって、設計によりサンプリング周波数をできるだけ小さくすることが最適である。
【0049】
プログラムメモリ25に記憶され、送達された投与量を検出するためにプロセッサ機構23により実行されるファームウェアはまた、光センサ215a及び/又は215bを、測定光パルスを生成するように、すなわち光センサ215a、215bを駆動するように構成するためにも実装される。光センサ215a、215bは、プロセッサ機構23によって、異なるサンプリングレートで、特に第一のサンプリングレートで、又は少なくとも1つの第二のサンプリングレートで光パルスを生成するように構成できる。第一のサンプリングレートはここで、少なくとも1つの第二のサンプリングレートより低い。サンプリングレートは、連続する2つの光パルスの時間間隔を決定する。
【0050】
一般に、光センサ215a、215b、特にセンサ215a、215bにより含まれるフォトトランジスタは有意な公差を有し得る。その出力は、プロセッサ機構23、例えばマイクロコントローラへのアナログ-デジタル(ADC)入力によって、ちょうどセンサ215a、215bのIR LEDがパルス動作するときに読み取られる。同様に、IR LED及びそのドライブの公差にはある程度の広がりがある。その上に、ハウジング10内でのセンサ215a、215bの位置決め、特に領域70a、70bからのセンサ215a、215bの距離によっても公差が増大する。
【0051】
以下に、センサ215a、215bの閾値の調整方法の実施形態、特にセンサ215a、215bを備えるセンサ機構215とロータリエンコーダシステム500とを含むシステムを特性化し、その後、この情報を較正の形態で生産用装置に移行させるためにとられるステップを説明する。また、このような方法の、装置の特性化と評価のための使用における派生形態についても説明する。
【0052】
1.概観:
a.この項で別段の記載がないかぎり、以下の説明は、
図2及び3に示されるような2つの光センサを利用する、直交インクリメンタルロータリエンコーダを含む注入装置に焦点を当てる。この実施形態では、両方のセンサが個別に、ただし同様に扱われ、それはこれらが名目上同じであるからであるが、そうであることが必要又は重要というわけではない。それでも、これは、用語が1つのセンサに関していても両方に当てはまるため、説明を簡潔にするのに役立つ。
【0053】
b.このプロセスには2つのステップがある:
i.ステップ1:ある参照標的及び電子システムのための最適な閾値設定を発見する。するとこれは、生産用装置を設定するために使用される係数(閾値係数)に変換される。基本的に、このステップは製造セットアップリグのコミッショニングである。
ii.ステップ2:較正を生産用装置に移行させる。各モジュールは、第一のステップと同様に製造セットアップリグを通過させられ、TFに基づいて各センサの閾値が割り当てられる。
【0054】
c.2ステッププロセスによって、製造中、第二の動作だけが必要となるため、より速い処理が可能となる。ステップ1は反復して行われ得るため、低速であり得、データを結果と並べて完全にチェックすることができる。これは1回のみ行われるか、又はQAチェックのために、又はエンコーダリングの変更等のリグへの重要な偏向が行われた後等に行われる。ステップ2によって各センサのための明示的な出力が得られる。いったん確立すれば、各モジュールについて独立したチェックは不要となる。
【0055】
d.ステップ1は、標準(名目上の機械的及び電子的特性を有する代表的モジュール)内の参照ターゲット(エンコーダリング)を回転させ、モジュール電子システムを通じて既知の回転位置において複数の読み取り値を得る。これは、既知の供給電圧及び気温で実行できる。これらのデータから、最適な閾値が反復的に計算され、閾値係数(TF)を作成するために使用される。基本的に、このステップはリグを較正する。
【0056】
e.製造中、第二のステップが行われる。被試験装置(DUT)又は生産用装置は、センサ閾値のセットアップを必要とするモジュールである。ステップ1と同様にして、参照ターゲットをDUT内で回転させ、その間にセンサの読み取り値を収集する。データを適切にパースした後、ステップ1のTFパラメータを使ってそのモジュールの各センサのための閾値が計算される。モジュールはその後、これらの閾値を用いてプログラムされる。
【0057】
2.背景:
a.この実施形態では、センサは供給電圧と温度の影響を受け得る。電力消費を抑え、回路規模を最小にするために、センサの安定性は、これらのパラメータに関して、遷移(例えば、領域70a及び70b間、及び領域70a、70bのグレイコード配置の場合はグレイコード遷移)が起こる信号レベル閾値の最適な設定によって制御され得る。これは特に、1ビットを十分に超える、この場合は12ビットのADCデジタル化により実現され得るが、他の変換レベルも使用することができる。
【0058】
b.サンプル信号のデジタル性質により、グレイコード遷移のための閾値を表すADCレベルを最適化するためにセットアッププロセスを適用することが可能である。これは事実上、電子システム応答の一貫性を確保するために参照(標準)ターゲットを使用する較正である。
【0059】
c.センサは、信号が飽和することなく良好なダイナミックレンジを得るように駆動され得、例えば信号動作範囲は線形であり得る。この実施形態では、この基準を満たすことは、測定のために十分な電力だけが使用され、それによって有効性が最適化されることを示唆する。
【0060】
d.しかしながら、電力消費が問題とならない場合、このプロセスは、実際に飽和する信号及び/又は非線形の信号で使用され得る。
【0061】
e.ADCを供給電圧とレシオメトリックに設定することにより、供給電圧によるセンサ信号振幅の変動に対する部分的補償がこの設計に本来備わることになる。そのため、ADC値で動作することが有益であり得、それは、このほうが単純であり、供給電圧の変化に対してより安定であるからである。これはまた、ADCが絶対及び/又は差分電圧を読み取るように設定される場合にも当てはまり得る。
【0062】
3.センサの特性と閾値の設定:
a.エンコーダリング(ターゲット)は、(例えば、
図2及び3のように)例えば等間隔で配置された交互に白と黒の12のフラッグを有し得る。参照ターゲットは、センサ内で正確に360°、又はその倍数回転させることができ、その間に、典型的には均等に分散される、正確に画定された複数のステップでサンプルが得られる。ADC値の適当な処理の後、各センサは理想的には、回転に対してプロットされたときに方形波(等しいマーク-スペース比を示唆する)を生成すべきである。
【0063】
b.ステップ数が増えるにつれて回転分解能は改善されるが、測定を完了するのに必要な時間によるか物理的制約によるかを問わず、ある時点で、現実的な限界に到達する。しかしながら多数のステップは不要であり、この方法は、製造公差についてエンコーダ電子システムを正規化できるセットアップルーチンに基づくことができる。
【0064】
c.このようなシステムを使って測定し、読み取り値を記録するためには、典型的に360°にわたり1センサにつき300のサンプルを使用し得る。これは、各センサの閾値を合理的程度に正確に画定するために十分であり得る。必要に応じて、有効な角度分解能を増やすために、適切な内挿法を使用できる。
【0065】
d.フラッグ遷移は重要であり得るので、データ収集及び/又はデータ選択中にこの点を考慮することができる。この方法で使用されるデータは、結果にバイアスが確実に含まれないようにするために、遷移領域から十分に離れたところで開始及び停止し得る。
【0066】
e.データは、制御された電圧及び既知の温度、例えば20℃±5℃の範囲内で動作する装置で収集され得る。このデータ(ADC読み取り値)を使ってデフォルト閾値を導入することができ、それより高い及び低いサンプルの数を計算、例えば計数できる。各センサについて、閾値レベルは、閾値より高い及び低いサンプルの数が等しくなるまで、ADC値において繰り返し変更され得る。これによって、例えばグレイコードに使用される各センサ信号は、1回転を通じて平均してターゲットと同じ高低比を有し得ることが確実となる。最適な閾値を見つけるために、その他の数学的手法も使用することができる。
【0067】
f.この閾値設定では、機械的及びセンサ遷移地点間の最適な整合が本来的に備わる。センサのロー状態対ハイ状態の比がターゲットの黒対白の比のそれと等しい場合に、正しい整合とすることができる。
【0068】
g.機械的及びセンサ遷移地点間が正しく整合すると、センサ間の位相合わせをチェックすることが可能となり得る。
【0069】
h.ADCドメインでは、機械的公差、表面テクスチャのムラ、汚染等の多くの理由により、ターゲットでは一貫した高いレベルの読み取り値(白フラッグ)が得られない可能性がある。しかしながら、この実施形態では、各フラッグの名目読み取り値は全フラッグを通じて10%以内(他の基準も使用できるが、参照ターゲットの相違に基づくものであるべきである)であり得ると予想され得る。
【0070】
i.以下のパラメータが画定される:
max=最大値
Hs=サム値>最大90%
Hc=カウント読み取り値>最大90%
H=読み取り値平均>最大90%(Hs/Hcと等しい)
Ls=サム値<最大10%
Lc=カウント読み取り値<最大10%
L=読み取り値平均<最大10%(Ls/Lcと等しい)
TF=閾値係数
T=閾値(ADC)
これらは次式により関係付けられる:
T=L+(TF*(H-L))
【0071】
図7は、ロータリエンコーダシステムが360°回転する間のセンサ信号の例示的トレース1000を、信号1000の得られた300のサンプルとともに示す。
図7の図式トレースでは、値<最小サンプル値(min)の10%の信号サンプル1006及び値>最大サンプル値(max)の90%の信号サンプル1008、ADC閾値1002及び信号サンプルを閾値1002と比較して生成された最終出力信号1004も示されている。
【0072】
j.センサの閾値は、したがって、TF=(T-L)/(H-L)に書き換えることのできる式により、各々の閾値係数(TF)を計算するために使用され得る。その後、TFはこの較正システムを通じて、正しい閾値設定を他の機器のセットアップに移行させるために使用され得る。
【0073】
k.TFは各センサについても、又は両方をカバーする1つの平均値としても画定できる。典型的には1つの値が十分であり得る。
【0074】
l.白フラッグサンプル及び/又は黒フラッグがデータセットの中で、例えばインデックスを付けることによって識別可能である場合、その情報を使って平均白フラッグと平均黒フラッグの値を特定することができる。装置のサンプルからのデータの解析では、閾値がその計算方法にそれほど依存しない可能性があることが示唆される。
【0075】
m.記録されたデータを用いて、障害状態及び/又は異常の可能性をチェックするその他の解析を行うことが可能となり得る。これらには以下が含まれるが、これらに限定されない:
i.一方のセンサ又は両方のセンサで白フラッグレベルが低すぎる
ii.一方のセンサ又は両方のセンサで白フラッグレベルが高すぎる
iii.一方のセンサ又は両方のセンサで黒フラッグレベルが高すぎる
iv.センサ間のクロストーク
v.不正確な位相合わせ
vi.デジタル化不良:不正確なデジタル化レベル、固定ビット/s、多重化不良、ビット/s反転、レベル抜け等
vii.過剰ノイズ
viii.センサ/s信号/sのドリフト
ix.スプリアス読み取り値
【0076】
n.閾値係数は典型的に、注射ペンのバッテリ電源、例えばコインセルの典型的な動作電圧、例えば2.5V又は2.7Vにとって適切となるように調整できる。様々な供給電圧及び/又は温度でデータ収集プロセスを繰り返すことにより、閾値、信号レベル、又はそれら両方の適応型調整を容易にすることのできるデータが提供され得て、この調整は、信号較正プロセスが不十分又は不適切となり得るメトリクスについて補償するために、マイクロコントローラ及び/又は他のコンピュータ内で数学的に実行できる。これらの調整は、例えば、ただしこれらに限定されないが、ルックアップテーブル、連続関数モデル、ステップ関数等、多くの方法で実行できる。これらは、準リアルタイムで、又はその後の処理の一部として行うことができる。
【0077】
o.この方法には以下の事柄が暗に含まれ得る:
i.システムのセットアップに使用される参照電子システム及び参照ターゲットは、ペン装置で使用されるものを代表し得る。
ii.製造部品と試験リグとの間に一貫性があり得る。
iii.システム及び装置の相違は、関心対象範囲にわたり線形又はほぼ線形であり得る。
iv.温度及び電圧に対する応答は装置を通じて一貫し得る。
【0078】
p.このプロセスは、
図2及び3に示されるような2つの光センサを利用する直交インクリメンタルロータリエンコーダを含む注射ペンの実施形態に関して設計されたが、これはセンサからの信号がデジタル化されてデジタル表現が形成されるその他のエンコーダ装置にも適用可能である。これはロータリエンコーダシステムに限定されない。このようなシステム/装置は、電磁放射線検知、容量型検知、誘導型検知、磁気検知、電離放射線検知、音響検知、電流検知、電圧検知、加速度検知、ジャイロスコープ検知等を使用するがこれらに限定されない1つ又は複数のセンサを含み得る。
【0079】
q.プロセスは、1つ又は複数のセンサを備えるエンコーダシステムに適用可能であり得る。
【0080】
r.その他のシステム特性化、調査、及び評価も、この方法又はその派生形態を使って実行され得る。これらには以下が含まれ得るが、これらに制約されない:
i.外からの照明の影響
ii.音響ノイズ、衝撃、振動の影響
iii.流体浸入の影響
iv.EMC(電磁環境適合性)のチェック
v.湿度、圧力等の大気条件
vi.電離放射線の影響
【0081】
別の実施形態において、センサ読み取り値は前述の方法と同様に捕捉され得て、300の読み取り値が各センサについて、エンコーダターゲットの360°の完全な回転の中で等しい回転間隔で取得される。
【0082】
各装置の製造中に読み取り値を捕捉するために、使用中に装置で提供されるものと同じ無線プロトコルであってもよい無線通信プロトコルを介して、装置と遠隔的に通信することが可能であり得る。代替的に、読み取り値は、別の無線通信プロトコルを介して、又は装置の組立が完了してからは利用できないかもしれないが、装置との物理的接続を介しても捕捉され得る。例えば、センサユニット700の通信ユニット27は、無線通信モジュールを含み得て、それを介して、読み取り値を捕捉するために外部装置との遠隔通信が行われ得る。外部装置は例えば、閾値設定を特定し、設定を閾値係数に変換するための前述の計算を実行するように構成されたコンピューティングデバイスであり得る。
【0083】
物理的接続が装置に対して行われた場合、外部の電力を装置に提供することが可能であり得る。したがって、読み取り値は既知の一貫した供給電圧で捕捉され得て、これは装置の典型的な動作電圧とは異なり得る。より高い電圧で読み取り値を捕捉し、試験対象装置の埋め込み電源からのエネルギーを引き出さないようにすることが有利であり得る。したがって、読み取り値は、負荷を受けたときに、装置の年齢、使用、及び温度に応じて2.9V~2.3Vの動作電圧が得られ得るリチウムコインセルのみから電源を受ける装置の典型的な動作電圧ではなく、単一電池、例えばリチウムコインセルの名目開放回路電圧で、又はそのあたりで、すなわち約3.1Vの電圧で捕捉することが有利であり得る。
【0084】
センサ読み取り値が捕捉されたら、300の読み取り値を各読み取り値の大きさに基づいて連続的に、最も低い読み取り値が第一の読み取り値、最大の読み取り値が最後の読み取り値となるように順序付けできる。このような連続で順序付けされる読み取り値の例が
図8に示されている。この方法を適用すると、150番目の読み取り値は中央値又は50パーセンタイル読み取り値であり、150の読み取り値は中央値の読み取り値以下、150の読み取り値は中央値の読み取り値より大きい。読み取り値が360°の完全な回転内で等しい角度間隔で捕捉されるため、これは、センサの読み取り値が360°の回転の中の180°に関する中央値の読み取り値より高いことを示唆している。
【0085】
エンコーダターゲットが等間隔の白と黒の交互の12のフラッグを含み、各白フラッグが30°をカバーし、各黒フラッグが30°をカバーし、各フラッグの応答が各々の中心の周囲で対称であると考えられる場合、これらの順序付けされた読み取り値は、エンコーダターゲットが黒フラッグの中心から白フラッグの中心まで30°回転する間の平均読み取り値を表すと考えることができる。
【0086】
さらに、
図2及び3に示される実施形態と同様に、装置が同じエンコーダターゲットの周囲に位置付けられた2つのセンサを含み、直交グレイコードシーケンスを提供する場合、360°の1回転で2ビットのグレイコードの24の遷移がある。センサがグレイコード遷移を等間隔にするように位置付けられた場合、遷移は名目上、エンコーダシステムが15°回転するたびに起こることになる。
【0087】
装置が休止状態のとき、エンコーダシステムはしっかりと特定されたエンコーダ状態を提供する(すなわち、遷移からできるだけ遠くになるようにする)ことが望ましいことがある。したがって、名目設計は、装置の24の考え得る休止状態の何れにおいても(休止状態は、装置がダイアル操作モードであるときに実現される)、グレイコードから7.5°となるようにすることが好ましいことがあり得る。
【0088】
装置全体の中の多数のコンポーネント間の機械的公差により、エンコーダシステムを通じた全体的な回転公差が生じ、これは、製造装置の母集団の中のある何れかの装置が、休止状態において7.5°の名目設計より遷移に近くなる原因となり得る。
【0089】
例えば、複合的な回転公差は±3°の範囲内であり得る。したがって、何れの装置も休止状態にあるときに遷移の4.5°以内にあり得る。
【0090】
この例で、等しい回転間隔で捕捉された大きさ順の300のセンサ読み取り値を考えると、35パーセンタイルと65パーセンタイルの読み取り値は中央値から4.5°回転で起こる(中央値から±15%離れ、全体の範囲は30°であるため、メジアンから±4.5°離れている)と推測できる。したがって、休止状態でのセンサ読み取り値のロバストなデジタル化のために、35パーセンタイルと65パーセンタイルとの読み取り値の間に大きなマージンがあり、センサ読み取り値がデジタル化される閾値が0(黒)又は1(白)であることが望ましいことがある。順序付けされた連続読み取り値の例が、35、40と60の平均、及び65パーセンタイルの読み取り値がハイライトされ、±3σエラーバーと共に
図9に示されている。
【0091】
この実施形態では、閾値は、中央値、すなわち50パーセンタイルの読み取り値を考えることによって特定できる。閾値はまた、50パーセンタイルの各側の等間隔の2つ以上の読み取り値の平均を考えることによっても特定することができる。例えば、閾値は、40及び60パーセンタイル値の平均を考えることによって特定され得る。50パーセンタイルの何れかの側の複数のパーセンタイル測定値の平均を利用することにより、生産用装置の母集団全体の変動係数を縮小し得る。
【0092】
センサ読み取り値が装置の予想動作電圧ではなく供給電圧で記録される場合、スケールファクタを閾値に適用して、電圧変動がセンサ読み取り値に与える影響を補償し得る。この電圧補償係数は、開発試験を通じて、ある範囲の供給電圧で1つの装置及びエンコーダターゲットからセンサ読み取り値を捕捉することによって特定することができる。特に、線形補償係数を適用することができ、又は経験的データに基づいて、より複雑な係数を適用することができる。
【0093】
更なる経験データの示唆に基づき、追加的な補償係数が適用され得て、これは製造試験リグと組立が完了した装置の母集団との間のセンサ読み取り値に見られる差に基づき得る。
【0094】
次式は、上述の方法のための閾値計算の例である:
閾値=(40パーセンタイル+60パーセンタイル)/2*動作電圧/供給電圧
- 動作電圧は2.3Vであり得る
- 供給電圧は3.1Vであり得る
【0095】
各装置の寿命中、センサ読み取り値はある動作電圧範囲における送達投与量を特定するために捕捉され得る。これらの電圧は、製造試験中の最初の使用時の3.1Vから、通常使用中の典型的な動作電圧2.7V~2.5V、及び装置の寿命終了に近い約2.3Vの電圧の範囲であり得る。注入装置は、電圧が<2.5Vに低下したときに、例えばセンサにユニット700の表示ユニット30(
図6)を介してユーザに警告し、電圧が<2,3Vに低下したときに、さらに寿命終了警告を生成するように構成され得る。注入装置が低温環境中で保管されている場合、電圧低下は装置の寿命の早い時期に生じ得る。
【0096】
装置閾値はしたがって、より低い動作電圧範囲に基づいても計算され得て、その結果、エンコーダシステムの所与の構成についてのセンサ読み取り値が低くなり得る。より低い動作電圧では、白いターゲットに面したときのセンサ読み取り値は有意に低くなり得、一方、黒いターゲットに面したときのセンサ読み取り値はほとんど変化しない可能性がある。
【0097】
製造試験中、エンコーダシステム及び吐出機構を有する装置が完全に組み立てられると、更なる品質保証試験を行うことができる。これらの試験は、バッテリ、特にコインセルが新品で未使用であるため、最も高い動作電圧でセンサ読み取り値を捕捉し得て、製造環境の温度は制御され得る。閾値がより低い動作電圧に基づいて設定される場合、製造試験により、注入装置の機能がより高い電圧で動作しているときにロバストであることが確認され得る。
【0098】
逆に、閾値が名目又は高い動作電圧に基づいて設定される場合、製造試験では、装置の機能がより低い電圧での動作中にロバストであることを確認できない可能性がある。
【0099】
センサ読み取り値の捕捉と閾値計算は、エンコーダシステム内の各センサについて個別に実行され得る。
【0100】
統計的工程管理を実現し、機能的許容限界を確実に超えないようにするために、何れかのkパーセンタイル値に又はパーセンタイル値の範囲に許容限界を適用できる。機能的許容限界の開発は、開発ビルドフェーズ中に捕捉された経験的データに基づき得る。統計的工程管理限界は、通常程度に破壊された装置母集団内の外れ値を特定するために、製造プロセスの連続的モニタリング及びセンサ読み取りデータに基づき得る。
図10は、3σを偏差限界とする、1000個の注入装置の母集団からの平均センサ読み取り値の例を示す。
【0101】
「薬物」又は「薬剤」という用語は本明細書中では同義として使用され、1つ又は複数の活性薬剤成分又は薬学的に許容される塩若しくはその溶媒和化合物と、任意選択的に薬学的に許容されるキャリアを含む医薬製剤を表す。活性薬剤成分(API(active pharmaceutical ingredient))は、最も広い意味において、人又は動物に対する生物学的効果を有する化学構造である。薬理学において、薬物又は薬剤は病気の治療、治癒、予防、若しくは診断で使用されるか、又はそれ以外に身体的若しくは精神的健康を向上させるために使用される。薬物又は薬剤は、限定的期間にわたり、又は慢性疾患のためには定期的に使用され得る。
【0102】
後述のように、薬物又は薬剤は、1つ又は複数の病気の治療のために、少なくとも1つのAPI、又はその組合せを様々な種類の調合で含むことができる。APIの例としては、分子量500Da以下の小分子、ポリペプチド、ペプチド、たんぱく質(例えば、ホルモン、増殖因子、抗体、抗体フラグメント、及び酵素)、炭水化物と多糖類、及び酸、二本鎖又は一本鎖DNA(ネイキッド及びcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNA及びRNA等のアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、及びオリゴヌクレオチドが含まれ得る。核酸は、ベクトル、プラスミド、又はリポソーム等の分子送達系に組み込まれ得る。1つ又は複数の薬物の混合物も想定される。
【0103】
薬物又は薬剤は、薬物送達装置と共に使用するようになされた一次包装又は「薬物容器」に収容され得る。薬物容器は、例えばカートリッジ、シリンジ、リザーバ、又はその他の、1つ又は複数の薬物の適当な保存(例えば、短期又は長期保存)のための適当なチャンバを提供するように構成された固形若しくは柔軟な容器であり得る。例えば、幾つかの例において、チャンバは薬物を少なくとも1日(例えば、1~少なくとも30日間)保存するように設計され得る。幾つかの例において、チャンバは薬物を約1カ月~約2年間保存するように設計され得る。保管は、室温(例えば、約20℃)又は低温(例えば、約-4℃~約4℃)で行われ得る。幾つかの例において、薬物容器は投与される薬剤調合物の2つ以上の成分(例えば、APIと希釈剤、又は2種類の薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保管するように構成される2室式カートリッジであり得るか、それを含み得る。このような例において、2室式カートリッジの2つのチャンバは、人又は動物の体内に吐出する前及び/又は吐出中に2つ以上の成分を混合できるように構成され得る。例えば、2つのチャンバは、これらが相互に流体連通して(例えば、2つのチャンバ間の導管による)、吐出前にユーザが希望に応じて2つの成分を混合できるように構成され得る。代替的に、又はそれに加えて、2つのチャンバは、成分が人又は動物の体内に吐出されている間に混合できるように構成され得る。
【0104】
本明細書に記載の薬物送達装置に収容された薬物又は薬剤は、様々な種類の医学的障害の治療及び/又は予防に使用できる。障害の例としては、例えば真正糖尿病又は、糖尿病性網膜症などの真正糖尿病の合併症、深部静脈又は肺血栓等の血栓閉塞症が含まれる。障害のまた別の例は、急性冠動脈症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、花粉症、アテローム性動脈硬化、及び/又は関節リウマチである。API及び薬物の例は、Rote Liste 2014等のハンドブック、例えば、これらに限定されないが、メイングループ12(抗糖尿病薬)又は86(腫瘍薬)、及びメルクインデックス第15版に記載されているものである。
【0105】
1型若しくは2型真正糖尿病又は1型若しくは2型真正糖尿病の合併症の治療及び/又は予防のためのAPIの例には、インスリン、例えばヒトインスリン、又はインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体若しくはGLP-1受容体作動薬、又はその類似体若しくは誘導体、ジペブチジルペプチターゼ-4(DPP4)阻害薬、又は薬学的に許容される塩若しくはその溶媒和化合物、又はそれらのあらゆる混合物が含まれる。本明細書で使用されるかぎり、「類似体」及び「誘導体」という用語は、形式的に天然に存在するペプチドの構造、例えばヒトインスリンのそれから、天然に存在するペプチド内にある少なくとも1つのアミノ酸残基を削除及び/若しくは置換することによって、並びに/又は少なくとも1つのアミノ酸残基を追加することによって導出できる分子構造を有するポリペプチドを指す。追加及び/又は置換されるアミノ酸残基は、コード化可能なアミノ酸残基又はその他の天然に存在する残基か、又は純粋な合成アミノ酸残基の何れでもあり得る。インスリン類似体は、「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、形式的に天然に存在するペプチドの構造、例えばヒトインスリンのそれから導出可能な、1つ又は複数の有機置換基(例えば、脂肪酸)がアミノ酸のうちの1つ以上と結合する分子構造を有するポリペプチドを指す。任意選択により、天然に存在するペプチドの中にある1つ又は複数のアミノ酸が削除され、及び/若しくはコード化不能なアミノ酸を含むその他のアミノ酸に置換されていてもよく、又はコード化不能のものを含むアミノ酸が天然に存在するペプチドに追加されていている。
【0106】
インスリン類似体の例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン)、Lys(B3)、Glu(B29)、ヒトインスリン(インスリンリスプロ)、Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト)、位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、又はAlaに置換され、位置B29のLysがProに置換され得るヒトインスリン、Ala(B26)ヒトインスリン、Des(B28-B30)ヒトインスリン、Des(B27)ヒトインスリン、及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0107】
インスリン誘導体の例は例えば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標))、B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-ミリストイルヒトインスリン、B29-N-パルミトイルヒトインスリン、B28-N-ミリストイル-LysB28ProB29ヒトインスリン、B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン、B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン、B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン、B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルカミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))、B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、及びB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0108】
GLP-1、GLP-1類似体、及びGLP-1受容体作動薬の例は、例えば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標))、エキセナチド(Exendin-4、Byetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺により生成される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セモグラチド、タスポグラチド、アルビグラチド(Syncria(登録商標))、デュラグラチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングルナチド/HM-11260C(Efpeglenatide)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、゜CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(Pegapamodtide)、BHM-034である。MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマデュチド(SAR425899)、エキセナチド-XTEN、及びグルカゴン-Xten。
【0109】
オリゴヌクレオチドの例は例えば、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬、又はアルポート症候群の治療のためのRG012である。
【0110】
DPP4阻害薬の例は、リナグリプチン、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0111】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、及びゴセレリン等の、脳下垂体ホルモン若しくは視床下部ホルモン又は調節性活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストが含まれる。
【0112】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン若しくは超低分子量ヘパリン、又はそれらの誘導体、又は硫酸化多糖類、例えば上述の多糖類のポリ硫酸化形態、及び/又は、薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の一例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0113】
「抗体」という用語は、本明細書で使用されるかぎり、免疫グロブリン分子又はその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例には、抗原を結合する能力を保持するF(ab)及びF(ab’)2フラグメントが含まれる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型又はヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(例えばネズミ)、又は一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態において、抗体はエフェクタ機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態において、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低い、又はそれを持たない。例えば、抗体は、アイソタイプ若しくはサブタイプ、抗体フラグメント又は変異体とすることができ、これはFc受容体との結合を支持せず、例えば、突然変異した、又は欠失したFc受容体結合領域を有する。抗体という用語はまた、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)及び/又は交差結合領域の配向性を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗体結合分子も含む。
【0114】
「フラグメント」又は「抗体フラグメント」という用語は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(例えば、抗体重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントとしては、例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、単一特異性、又は二重特異性、三重特異性、四重特異性及び多重特異性抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)等の多重特異性抗体フラグメント、一価、又は二価、三価、四価及び多価抗体等の多価抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディ又はバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、及びVHH含有抗体が含まれる。抗原結合抗体フラグメントのその他の例は当業界で知られている。
【0115】
「相補性決定領域」すなわち「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖及び軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖及び軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的に、当業界で知られているように、抗原結合に直接関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接関与することができ、又はCDR内の1つ又は複数のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与え得る。
【0116】
抗体の例は、アンチPCSK-9mAb(例えば、アリロクマブ)、アンチIL-6mAb(例えば、サリルマブ)、及びアンチIL-4mAb(例えば、デュピルマブ)である。
【0117】
本明細書に記載のあらゆるAPIの薬学的に許容される塩もまた、薬物送達装置における薬物又は薬剤において使用されることが想定される。薬学的に許容される塩は、例えば酸付加塩及び塩基性塩である
【0118】
当業者であれば、本発明の完全な範囲と主旨から逸脱することなく、本明細書に記載のAPI、製剤、装置、方法、システム、及び実施形態の様々な構成要素に修正(追加及び/又は削除)を加えることができ、本発明はそのような修正及びそのあらゆる均等物を包含することがわかるであろう。
【0119】
例示的な薬物送達装置は、ISO11608-1:2014(E)5.2項の表1に記載されている針ベースの注射システムを含み得る。ISO11608-1:2014(E)に記載されているように、針ベースの注射システムは広く、複数回投与容器システムと単回投与(部分又は全量排出)容器システムに分類され得る。容器は、交換可能容器でも、一体化された交換不能容器でもよい。
【0120】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、複数回投与容器システムは、交換式容器を備える針ベースの注入装置を含み得る。このようなシステムでは、各容器は複数回分の投与量を保持し、その大きさは固定でも可変(ユーザにより事前設定される)でもよい。他の複数回投与容器システムは、一体化された交換不能容器を備える針ベースの注入装置を含み得る。このようなシステムでは、各容器は複数回分の投与量を保持し、その大きさは固定でも可変(ユーザにより事前設定される)でもよい。
【0121】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、単回投与容器システムは交換式容器を備える針ベースの注入装置を含み得る。このようなシステムの一例において、各容器は1回分の投与量を保持し、送達可能量の全量が排出される(全量排出)。別の例では、各容器は1回分の投与量を保持し、送達可能量の一部が排出される(部分排出)。同じくISO11608-1:2014(E)に記載されているように、単回投与容器システムは、一体化された交換不能容器を備える針ベースの注入装置を含み得る。このようなシステムの一例では、各容器は1回分の投与量を保持し、送達可能量の全量が排出される(全量排出)。別の例では、各容器は1回分の投与量を保持し、送達可能量の一部が排出される(部分排出)。
【国際調査報告】