IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サノフイの特許一覧

特表2024-533664薬物送達装置又は薬物送達付属装置の光センサの駆動
<>
  • 特表-薬物送達装置又は薬物送達付属装置の光センサの駆動 図1
  • 特表-薬物送達装置又は薬物送達付属装置の光センサの駆動 図2
  • 特表-薬物送達装置又は薬物送達付属装置の光センサの駆動 図3
  • 特表-薬物送達装置又は薬物送達付属装置の光センサの駆動 図4
  • 特表-薬物送達装置又は薬物送達付属装置の光センサの駆動 図5
  • 特表-薬物送達装置又は薬物送達付属装置の光センサの駆動 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】薬物送達装置又は薬物送達付属装置の光センサの駆動
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20240905BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61M5/31 520
A61M5/315 550
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518321
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2022076286
(87)【国際公開番号】W WO2023046791
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】21315176.4
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】グレン・ブルックス
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ドレイク
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066QQ32
4C066QQ52
4C066QQ72
4C066QQ78
4C066QQ82
4C066QQ84
(57)【要約】
薬物送達装置又は薬物送達付属装置の光センサの駆動方法が開示され、薬物送達装置は可動投与量プログラミングコンポーネントを含み、光センサは、薬物の投与中、可動投与量プログラミングコンポーネントの、センサ機構に関する移動を、測定光パルスを生成し、可動投与量プログラミングコンポーネントからの測定光パルスの反射を検出することによって検出するために提供され、そのように構成され、方法は、光センサを、少なくとも1つの既定のパルスレートで測定光パルスを生成し、1つ又は複数の測定光パルスの前に少なくとも1つのプライミング光パルスを生成するように構成することを含み、少なくとも1つのプライミング光パルスは、少なくとも1つの既定のパルスレートのうちの1つで生成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達装置(1)又は薬物送達付属装置の光センサ(215a、215b)の駆動方法であって、前記薬物送達装置(1)は可動投与量プログラミングコンポーネントを含み、前記光センサ(215a、215b)は、薬物の投与中、前記可動投与量プログラミングコンポーネントの、センサ機構(215)に関する移動を、測定光パルス(1000)を生成し、前記可動投与量プログラミングコンポーネントからの前記測定光パルスの反射を検出することによって検出するために提供され、そのように構成され、前記方法は、前記光センサ(215a、215b)を、少なくとも1つの既定のパルスレートで前記測定光パルス(1000)を生成し、1つ又は複数の測定光パルスの前に少なくとも1つのプライミング光パルスを生成するように構成することを含み、前記少なくとも1つのプライミング光パルスは、前記少なくとも1つの既定のパルスレートのうちの1つで生成される方法。
【請求項2】
前記光センサを前記少なくとも1つのプライミング光パルスを生成するように構成することは、前記測定光パルスを生成するための対応するパラメータとは異なる1つ又は複数のパラメータを有し得る前記少なくとも1つのプライミング光パルスを生成することを含み、特に、前記少なくとも1つのパラメータは以下、すなわち、プライミング及び測定光パルスのエネルギ、プライミング及び測定光パルスの持続時間のうちの1つ又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定光パルスは、第一のパルスレート又は少なくとも1つの第二のパルスレートの何れかで生成され、前記第一のパルスレートは前記少なくとも1つの第二のパルスレートより低く、前記少なくとも1つのプライミング光パルスは前記少なくとも1つの第二のパルスレートのうちの1つで生成され、前記光センサは少なくとも、前記第一のパルスレートで測定光パルスを生成する前に、前記少なくとも1つのプライミング光パルスを生成するように構成され、各プライミング光パルスは、後続の測定光パルスの前の、前記少なくとも1つの第二のパルスレートに対応する時間シフトで生成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記光センサを、前記第一のパルスレート又は前記少なくとも1つの第二のパルスレートの何れかで前記測定光パルスを生成するように構成することは、前記光センサの出力信号が少なくとも1つの既定の閾値を上回るか又は下回るかに応じて前記パルスレートを切り換えることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記光センサは、前記出力信号が前記少なくとも1つの既定の閾値より低い場合に前記第一のパルスレートで前記測定光パルスを生成し、前記出力信号が前記少なくとも1つの既定の閾値より高い場合は前記少なくとも1つの第二のパルスレートで前記測定光パルスを生成するように構成される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1つの第二のパルスレートと1つの閾値が提供され、前記光センサは、前記光センサの前記出力信号が前記閾値と交差した時に前記測定光パルスの前記生成を前記第一及び前記第二のパルスレート間で切り換えるように構成される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記光センサは、前記光センサの前記出力信号が前記閾値より高いときに前記第一のパルスレートで前記測定光パルスを生成し、前記光センサの前記出力信号が前記閾値より低いときに前記第二のパルスレートで前記測定光パルスを生成するように、又はその逆に構成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの閾値を、特に前記検出された反射に応じて変化させることをさらに含む、請求項4~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記光センサは、デフォルトとして前記第一又は前記第二のパルスレートで前記測定光パルスを生成するように構成される、請求項4~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第一のパルスレートは約2ミリ秒であり、前記第二のパルスレートと前記時間シフトは約250マイクロ秒である、請求項4~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
以下、すなわち、前記測定光パルスの前記持続時間を変調すること、前記光センサの前記出力信号の振幅及び/又は波形を変更すること、前記測定光パルスのエネルギを変調することのうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
薬物送達装置(1)又は薬物送達付属装置の光センサ(215a、215b)を駆動する装置であって、請求項1~11の何れか1項に記載の方法を実行するように構成され、特にコントローラ、特にマイクロコントローラを含み、前記コントローラは、プログラムによって請求項1~11の何れか1項に記載の方法を実行するように構成される装置。
【請求項13】
前記薬物送達装置により送達及び/又は選択される投与量を、可動投与量プログラミングコンポーネントからの測定光パルスの検出された反射に基づいて特定するように構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
薬物送達装置(1)又は薬物送達付属装置のセンサユニット(700)であって、請求項12又は13に記載の装置によって駆動される1つ又は複数の光センサ(215a、215b)を含み、薬物送達装置又は薬物送達付属装置に組み込むために提供され、そのように構成されるセンサユニット。
【請求項15】
薬物送達装置(1)又は薬物送達付属装置であって、前記薬物送達装置は可動投与量プログラミングコンポーネントを含み、前記薬物送達装置又は前記薬物送達付属装置は請求項14に記載のセンサユニット(700)を含む薬物送達装置又は薬物送達付属装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物送達装置又は薬物送達付属装置の光センサを駆動することに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2016131713A1号パンフレットは、注入装置に取り付けるためのデータ収集装置及びそこからの薬剤投与量情報を収集することに関する。データ収集装置は、注入装置に取り付けるように構成された嵌合機構と、薬剤の送達中に、注入装置の可動投与量プログラミングコンポーネントの、データ収集装置に関する移動を検出するように構成されたセンサ機構と、前記検出された移動に基づいて、注入装置により投与される薬剤投与量を特定するように構成されたプロセッサ機構と、を含み得る。センサ機構は、特に発光ダイオード(LED)等の光源を含む光センサ、例えば光学式エンコーダユニットと、光変換器等の光検出器と、を含み得る。プロセッサ機構は、光学式エンコーダによりパルスが出力されてから経過した時間をモニタし、前記時間が所定の閾値を超えた場合に前記薬剤投与量を特定するように構成され得る。
【0003】
国際公開第2019101962A1号パンフレットには、既定の角度周期性を有するロータリエンコーダシステムを含む可動投与量プログラミングコンポーネントと、薬剤投与中に、可動投与量プログラミングコンポーネントの、センサ機構に関する移動を検出するように構成された第一の光センサを含むセンサ機構と、を含む注入装置が記載されている。第一の光センサは、ストローブサンプリングモードにおいて第一の周波数で動作するように構成される。注入装置は第二の光センサをさらに含み、これはロータリエンコーダシステムの、第二の光センサに関する移動を検出し、ストローブサンプリングモードにおいて、第一の周波数より低い第二の周波数で動作するように構成される。さらにまた、注入装置は、ロータリエンコーダシステムの検出された移動に基づいて、注入装置により投与される薬剤投与量を特定するように構成されたプロセッサ機構を含む。ロータリエンコーダシステムは、注入装置の動作のダイアルモード中に第一の光センサに関して回転可能であるように構成され得る。第二の光センサは、ストローブサンプリングモードにおいて、第一の周波数より低い第二の周波数で動作するように構成され得る。国際公開第2019101962A1号パンフレットでは、光センサ及びロータリエンコーダシステムを用いて薬剤又は薬物投与量を特定する別の実施形態が開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示では、薬物送達装置又は薬物送達付属装置の光センサを駆動するための方法と装置とを説明する。
【0005】
1つの態様において、本開示は、薬物送達装置又は薬物送達付属装置の光センサの駆動方法を提供し、薬物送達装置は可動投与量プログラミングコンポーネントを含み、光センサは、薬物の投与中、可動投与量プログラミングコンポーネントの、センサ機構に関する移動を、測定光パルスを生成し、可動投与量プログラミングコンポーネントからの測定光パルスの反射を検出することによって検出するために提供され、そのように構成され、方法は、光センサを、少なくとも1つの既定のパルスレートで測定光パルスを生成し、1つ又は複数の測定光パルスの前に少なくとも1つのプライミング光パルスを生成するように構成することを含み、少なくとも1つのプライミング光パルスは、少なくとも1つの既定のパルスレートのうちの1つで生成され、特に少なくとも1つのプライミング光パルスは、光センサを、1つ又は複数の測定光パルスで測定を行うのに適した状態、特にある種の「定常状態」にするためにのみ使用される。プライミング光パルスが選択された既定のパルスレートで生成されると、測定光パルスを選択された既定のパルスレートで生成する光センサの信号挙動が刺激される。少なくとも1つのプライミング光パルスにより、光センサは、原則として、ある種の「定常状態」とされ、それゆえ、少なくとも1つの既定のパルスレートのうちの選択された1つからより独立した状態され得る。プライミング光パルスは、測定光パルスとは、特にそれが測定を行うために使用されるのではなく、特にそれをある種の「定常状態」にすることによって光センサを測定するために「準備する」ために使用されるという点で異なる。例えば、光センサが光パルス発生器とフォトセンサを含むとき、パルス発生器による少なくとも1つのプライミング光パルスの放出中、フォトセンサのサンプリングは行われないことがあり得る。プライミング光パルスは特に、測定を行うための光センサの1つ又は複数の要求事項に合わせて、特にそれを測定光パルスによる正確な測定を行うのに最も適した状態にするために適応され得る。それゆえ、プライミング光パルスは、原則として、例えば異なる振幅又は持続時間で測定光パルスを生成するために使用されるパラメータとは異なるパラメータで生成され得る。
【0006】
少なくとも1つのプライミング光パルスは特に、測定光パルスを生成する光センサの信号挙動の正確な刺激を得るために、測定光パルスとほぼ同じパラメータ、例えばほぼ同じ振幅、ほぼ同じ持続時間、ほぼ同じエネルギで生成され得る。
【0007】
実施形態において、光センサを少なくとも1つの光パルスを生成するように構成することは、測定光パルスを生成するための対応するパラメータとは異なる1つ又は複数のパラメータを有し得る少なくとも1つのプライミング光パルスを生成することを含み得て、特に、少なくとも1つのパラメータは以下、すなわち、プライミング及び測定光パルスのエネルギ、プライミング及び測定光パルスの持続時間のうちの1つ又は複数を含む。例えば、プライミング光パルスは、光センサの特定の要求事項を満たす測定光パルスより低い若しくは高いエネルギ及び/又はより短い若しくは長い持続時間で生成され得る。
【0008】
可動投与量プログラミングコンポーネントは、実施形態において、既定の角度周期性を有するロータリエンコーダシステムを含み、ロータリエンコーダシステムからの測定光パルスの反射が検出され得る。光センサの空間分解能は、可動投与量プログラミングコンポーネント、特にロータリエンコーダシステムの遷移において、特に可動投与量プログラミングコンポーネント、特にロータリエンコーダシステム上のフラッグ等の反射ターゲットの遷移において多大な影響を有する。光センサはそれゆえ、通常、ターゲットの反射率における段階的変化のエッジを、その出力信号における急激な変化としてではなく、曖昧な、又は平滑な遷移として検出する。その結果、センサ出力信号の振幅は、可動投与量プログラミングコンポーネント、特にロータリエンコーダシステムの遷移、例えばフラッグの遷移の周囲で位置に依存するものとなる。これはまた、機械的遷移地点、特にフラッグ遷移地点がセンサ出力信号により検出されたものと一致し得ないことも意味し得る。しかしながら、実施形態において、本願で開示される方法では、光センサを異なるパルスレートで測定光パルスを生成するように構成することが可能となり得る。より高いパルスレートは特に、ロータリエンコーダシステムのエッジ又は遷移を、より低いパルスレートより高い空間分解能でサンプリングするために使用され得る。異なるパルスレートの適用は特に、例えばより高いパルスレートを可動投与量プログラミングコンポーネントのターゲット、特にロータリエンコーダシステムのエッジ又は遷移をサンプリングするためだけに使用することにより、エネルギを節約するのに役立ち得る。
【0009】
「光パルス」という用語は、本明細書で使用されるかぎり、電磁スペクトルのうち、紫外光、可視光、及び赤外光を含み得る部分内の電磁放射パルスを含み得る。それゆえ、「光パルス」という用語は、可視光に限定されると解釈してはならない。実際、「光パルス」は、本開示に関して、互換的検出器、特に光センサで検出され得るあらゆる電磁放射パルスを意味し得る。
【0010】
実施形態において、測定光パルスは、第一のパルスレートか、又は少なくとも1つの第二のパルスレートの何れかで生成され得て、第一のパルスレートは少なくとも1つの第二のパルスレートより低く、少なくとも1つのプライミング光パルスは少なくとも1つの第二のパルスレートのうちの1つで生成され、光センサは少なくとも、第一のパルスレートで測定光パルスを生成する前に、少なくとも1つのプライミング光パルスを生成するように構成され得て、各プライミング光パルスは、後続の測定光パルスの前の、少なくとも1つの第二のパルスレートに対応する時間シフトで生成される。パルスレートの変化によって、例えばフォトトランジスタが光センサの中で使用されている場合、光センサからの出力信号における、特にセンサ特性によるシフトが生じ得る。このようなシフトの発生を排除し、又は少なくとも軽減させるために、1つ又は複数のプライミング光パルスが少なくとも、第一のパルスレートで測定パルスを生成する前に生成され得る。それゆえ、本開示の光センサの駆動方法により、測定光パルスを生成するために使用される異なるパルスレートの結果として生じるセンサ出力信号振幅の変動を緩和させることができる。これによって、光センサの出力における、特に光センサのフォトトランジスタの出力における小幅なシフトを原因とする測定の不確実性が低減し得て、それと同時に、光センサのエネルギ使用も、センサ出力信号の変動によるパルスレートの不必要な変化の発生を減少させることによって最小化され得て、これはパルスレートの切り換えをトリガし得る。少なくとも1つの第二のパルスレートに対応する、測定光パルスの前の時間シフトでプライミング光パルスを生成することで、パルスレートの切り換えにより生じる可能性のある望ましくない効果の最適な補償を得ることが可能となる。
【0011】
別の実施形態において、光センサを、第一のパルスレート又は少なくとも1つの第二のパルスレートの何れかで測定光パルスを生成するように構成することは、光センサの出力信号が少なくとも1つの既定の閾値を上回るか下回るかに応じてパルスレートを切り換えることを含み得る。少なくとも1つの閾値は特に、遷移が、少なくとも一部に、より高い空間分解能で検出され得るようにパルスレートを切り換えることができるように選択され得る。少なくとも1つの既定の閾値は、特に試験測定によって選択され、又はある較正により特定される静的閾値であり得る。
【0012】
ある実施形態において、光センサは、出力信号が少なくとも1つの既定の閾値より低い場合に第一のパルスレートで測定光パルスを生成し、出力信号が少なくとも1つの既定の閾値より高い場合は少なくとも1つの第二のパルスレートで測定光パルスを生成するように構成され得る。例えば、少なくとも1つの閾値は、ロータリエンコーダシステムのターゲットからの測定光パルスの典型的な反射より低いが、反射がない場合より高く選択され得て、それによって、ロータリエンコーダシステムのターゲットへの遷移の開始時にパルスレートは第一から少なくとも1つの第二のパルスレートに切り換えることができ、遷移の終了時にこれは第一のパルスレートに再び戻され得る。それゆえ、遷移のサンプリングは、より高い空間分解能で行われ得て、その結果、光センサの出力信号がより正確となる。
【0013】
別の実施形態において、1つの第二のパルスレートと1つの閾値が提供され得て、光センサは、光センサの出力信号がこの閾値と交差した時に測定光パルスの生成を第一及び第二のパルスレート間で切り換えるように構成され得る。この場合、複数の第二のパルスレート及び複数の閾値での実装と比較して、実装に必要な労力が軽減され、その結果として幾つかの用途にとって十分な正確さが得られ得る。
【0014】
また別の実施形態において、光センサは、光センサの出力信号が閾値より高いときに第一のパルスレートで測定光パルスを生成し、光センサの出力信号が閾値より低いときに第二のパルスレートで測定光パルスを生成するように、又はその逆に構成され得る。
【0015】
さらにまた別の実施形態において、方法は、少なくとも1つの閾値を、特に検出された反射に応じて変化させることを含み得る。これによって、閾値を例えばロータリエンコーダシステムの、特にロータリエンコーダシステムのターゲットの反射率に合わせることができる。反射率が、例えば塵埃によって時間と共に低下すると、少なくとも1つの閾値は、例えばより低い反射率に対応するように低下させられ得る。また、光センサが劣化する可能性のために少なくとも1つの閾値の変更が提供され得る。
【0016】
また別の実施形態において、光センサは、デフォルトとして第一のパルスレートで測定光パルスを生成するように構成され得る。それゆえ、方法は、測定のための最小エネルギ需要値で開始され得て、これによって例えば注入装置のバッテリ電力が節約され得る。代替的な実施形態では、光センサは、デフォルトとして第二のパルスレートで測定光パルスを生成するように構成され得る。
【0017】
ある実施形態において、第一のパルスレートは約2ミリ秒であり得、第二のパルスレートと時間シフトは約250マイクロ秒であり得る。この特定の実装は特に、国際公開第2014033195号パンフレットに記載されている装置等の注入装置に適当であり得る。
【0018】
実施形態において、方法は、以下、すなわち、測定光パルスの持続時間を変調すること、光センサの出力信号の振幅及び/又は波形を変更すること、測定光パルスのエネルギを変調することのうちの少なくとも1つをさらに含み得る。これらの方策は、パルスレート切り換えによる測定の不確実性をさらに低下させ得る。
【0019】
他の態様において、本開示は薬物送達装置又は薬物送達付属装置の光センサを駆動する装置を提供し、装置は、本願で開示される方法を実行するように構成され、装置は特にコントローラ、特にマイクロコントローラを含み、コントローラは、プログラムによって、本願で開示される方法を実行するように構成される。プログラムは例えば、薬物送達装置又は付属装置の電子部品のコントローラのファームウェアの一部であり得る。
【0020】
ある実施形態において、装置は、薬物送達装置により送達及び/又は選択される投与量を、可動投与量プログラミングコンポーネントからの測定光パルスの検出された反射に基づいて特定するように構成され得る。
【0021】
別の態様において、本開示は薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサユニットを提供し、センサユニットは、本願で開示される装置によって駆動される1つ又は複数の光センサを含み、センサユニットは、薬物送達装置又は薬物送達付属装置に組み込むために提供され、そのように構成される。センサユニットは例えば、コントローラを含む電子部品及び、コントローラと少なくとも1つの光センサの動作に必要なその他の電子コンポーネントを備えるプリント回路基板(PCB)を含み得て、少なくとも1つの光センサはPCBとワイヤ接続され得る。
【0022】
また別の態様において、本開示は薬物送達装置又は薬物送達付属装置を提供し、薬物送達装置は可動投与量プログラミングコンポーネントを含み、薬物送達装置又は薬物送達付属装置は、本願で開示されるセンサユニットを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ある実施形態による注入装置を示す。
図2】ロータリエンコーダシステムの側面図である。
図3図2に示されるエンコーダシステムの平面図である。
図4】装置コントローラの実施形態の概略ブロック図を示す。
図5】ある実施形態による光センサを駆動するために生成される光パルスの例示的シーケンスと、この光センサの出力信号の例示的なトレースを示す。
図6図5の例示的シーケンスの詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本開示の実施形態を、注入装置、特にペン型の注入装置に関して説明する。しかしながら、本開示はこのような用途に限定されず、その他の種類の薬物送達装置でも、特にペン以外の形状のものでも等しく利用され得る。全ての絶対値は本明細書において例として示されているにすぎず、限定的と解釈されるべきではない。
【0025】
注入ボタンとグリップが組み合わせられた注入装置の例は、国際公開第2014033195号パンフレットに記載されている。別々の注入ボタンとダイアルグリップコンポーネントを有する注入装置の他の例は、例えば国際公開第2004078239号パンフレットにおいて開示されている。
【0026】
以下の記述の中で、「遠位」、「遠位方向に」、及び「遠位端」という用語は、注射ペンの、針が設けられる端を指す。「近位」、「近位方向に」、及び「近位端」は、注入装置の、注入ボタン又は投与量ノブが設けられる反対の端を指す。
【0027】
図1は、注射ペン1、例えば、国際公開第2014033195号パンフレットで説明される注射ペンの分解図である。図1の注射ペン1は、プレフィルド型使い捨て注射ペンであり、ハウジング10を含み、インスリン容器14が収容されており、そこに針15を取り付けることができる。針は、内側針キャップ16と、外側針キャップ17又は他のキャップ18の何れかにより保護される。注射ペン1から排出されるべきインスリン投与量は、投与量ノブ12を回すことによってプログラム、又は「ダイアル操作」でき、すると、その時現在プログラムされている投与量が投与量窓13を介して、例えば倍数単位で表示される。例えば、注射ペン1がヒトインスリンを投与するように構成されている場合、投与量はいわゆる国際単位(IU)で表示され得て、1IUは高純度結晶インスリン約45.5マイクログラム(1/22mg)の生物学的等価量である。インスリン類似体又はその他の薬剤を送達するための注入装置においては、他の単位が使用され得る。選択された投与量は、図1の投与量窓13に示されているものとは異なる方法でも同等に表示され得る点に留意すべきである。
【0028】
投与量窓13はハウジング10の開口の形態であり得、それによってユーザは、投与量ノブ12が回されると動き、現在プログラムされている投与量の視覚的表示を提供するように構成されたダイアルスリーブ70の限定部分を見ることができる。投与量ノブ12は、プログラミング中に回されるとハウジング10に関してらせん経路で回転する。この例において、データ収集装置(薬物送達又は注入付属装置)を取り付けやすくするために、投与量ノブ12は1つ又は複数の形成部71a、71b、71cを含む。
【0029】
注射ペン1は、投与量ノブ12を回すことによって機械的なクリック音を発生し、ユーザに音声フィードバックが提供されるように構成され得る。ダイアルスリーブ70は、インスリン容器14内のピストンと機械的に相互作用する。この実施形態において、投与量ノブ12は注入ボタンとしても機能する。針15が患者の皮膚部分に打ち込まれて投与量ノブ12が軸方向に押されると、表示窓13に表示されたインスリン投与量が注射ペン1から排出される。投与量ノブ12が押されてから注射ペン1の針15が皮膚部分に特定時間とどまると、投与量のうちの高いパーセンテージが実際に患者の体内に注入される。インスリン投与量の排出によっても機械的クリック音が発生し得るが、これは投与量のダイアル操作中に投与量ノブ12を回転させたときに発生する音とは異なる。
【0030】
この実施形態において、インスリン投与量の送達中に、投与量ノブ12は軸方向に移動して回転せずにその当初の位置に戻り、他方でダイアルスリーブ70は回転してその当初位置に戻り、例えばゼロ単位の投与量を表示する。
【0031】
注射ペン1は、インスリン容器14が空になるか、注射ペン1内の薬剤の消費期限(例えば、最初の使用から28日後)に到達するまで、複数回の注射プロセスに使用され得る。
【0032】
さらに、注射ペン1を初めて使用する前にインスリン容器14及び針15から空気を抜くために、例えば針15付きの注射ペン1を上向きにして持ち、インスリン2単位を選択し、投与量ノブ12を押すことによって、いわゆる「プライムショット」を実行する必要があり得る。説明を簡単にするために、以下において、排出量は注入される投与量に実質的に対応し、それによって、例えば注射ペン1から排出される薬剤の量は使用者が受ける投与量と等しいと仮定される。しかしながら、排出量と注入量との差(例えば、損失)は考慮する必要があり得る。
【0033】
前述のように、投与量ノブ12はまた、注入ボタンとしても機能し、それによって同じコンポーネントがダイアル操作及び吐出のために使用される。1つ又は複数の光センサを含むセンサ機構215(図2及び3)が注入ボタン又は投与量ノブ12の中に取り付けられ得て、これはダイアルスリーブ70の、注入ボタン12に関する相対的回転位置を検知するように構成される。この相対回転は、吐出又は送達される投与量の大きさと同等として、投与歴情報を生成し、保存又は表示するために使用できる。センサ機構215は、第一の(光)センサ215aと第二の(光)センサ215bを含み得る。センサ機構215はまた、薬物送達又は注入付属装置にも装着され得て、これは異なる注入装置1に使用できるようになされ、センサ機構215により取得されるデータを収集するように構成され得る。
【0034】
センサ機構215の光センサ215a、215bは、図2及び3に示されるシステム500等のエンコーダシステムと共に使用され得る。エンコーダシステムは、前述の装置1と共に使用されるように構成され、以下に記載の既定の角度周期性を有し得る。図2及び図3に示されるように、第一のセンサ215a及び第二のセンサ215bは、ダイアルスリーブ70の近位端における特に適合された領域を標的とするように構成される。この実施形態では、第一のセンサ215a及び第二のセンサ215bは、IR反射センサである。したがって、ダイアルスリーブ70の特に適合された近位領域は、反射エリア70aと非反射(すなわち吸収)エリア70bとに分けられ、その結果、所定の角度周期性が得られる。ダイアルスリーブ70の、反射エリア70aと非反射(すなわち吸収)エリア70bを含む部分は、エンコーダリングと呼ばれ得て、これは図2及び3に示されるように、エリア70a、70bにより画定される既定の角度周期性を有する。
【0035】
光センサ215a、215bは、パルス発生器、特にLEDと、フォトセンサ、特にフォトダイオード又はフォトトランジスタを含み得る。パルス発生器とフォトセンサは、1つのハウジング内に、特にシングルチップソリューションとして組み込まれ得るか、又はこれらは離散的電子コンポーネントでもあり得る。留意すべき点として、パルス発生器とフォトセンサは独立して動作し得て、特にこれらは別の信号及びクロックで制御され得る。「パルスレート」という用語は、本明細書で使用されるかぎり、特に、例えばそのパルスクロック又は周波数で測定のための光パルス及び/又はプライミング光パルスが放出されるパルス発生器のパルスレートと理解されたい。フォトセンサは、サンプリングレートを有する信号によりサンプリング、すなわち制御され得て、これは特に、フォトセンサがサンプリングレートで読み取られるか、又はフォトセンサの出力信号がサンプリングレートで生成されることを意味する。パルスレートとサンプリングレートは同じであっても、又はこれらは異なっていてもよい。パルスレートとサンプリングレートは同時に生じる信号を生成し得る、又はパルスレートとサンプリングレートは、時間的にずれる信号を生成し得る、又はパルスレートとサンプリングレートは、異なる持続時間を有し、例えば位相シフトを有する信号を生成し得る、及び/又は発生器のパルス持続時間はセンサのサンプル時間と異なり得る。特にパルス発生器による少なくとも1つのプライミング光パルスの放出中に、フォトセンサのサンプリングは行われなくてよく、これは、少なくとも1つのプライミング光パルスが特に、フォトセンサの出力信号のサンプルを作成する目的ではなく、あるフォトセンサのある種の「定常状態」を生じさせる目的で提供され得るからである。
【0036】
生産コストを最小限に抑えるために、これらのエリア70a、70bを射出成形ポリマから形成することが好都合であり得る。ポリマ材料の場合、吸収率と反射率は、例えば吸収率についてはカーボンブラック、反射率については酸化チタン等の添加物を用いて制御することができる。吸収領域は成形ポリマ材料であり、反射領域は金属で製作される(追加的な金属コンポーネントか、又はポリマダイアルスリーブ70のセグメントの選択的金属化)代替的な実装も可能である。
【0037】
2つのセンサを有することにより、後述の電力管理方法が容易となる。第一のセンサ215aは、特定の薬物又は投薬レジームに当てはまる投与歴要件に必要な分解能、例えば1IUに相応の周期で、交互の反射領域70a及び非反射領域70bの連続を標的とするように配置される。第二のセンサ215bは、第一のセンサ215aと比較してより低い周期で、交互の反射領域70a及び非反射領域70bの連続を標的とするように配置される。エンコーダシステム500は、第一のセンサ215aのみと機能して、吐出される投与量を測定することができると理解すべきである。第二のセンサ215bにより、後述の電力管理方法が容易となる。
【0038】
図2及び3では、2セットのエンコード領域70a、70bが、一方が外側、他方が内側の同心円状に示されている。しかしながら、2つのエンコード領域70a、70bの何れの適当な配置も可能である。領域70a、70bはキャスタレート領域として示されているが、その他の形状と構成も可能であることを念頭に置くべきである。
【0039】
装置1又は装置1に取り付けるための付属装置はまた、図4に概略的に示されるように、センサユニット700も含み得る。センサユニット700は、2つのセンサ215a、215bを含むセンサ機構215と、センサ機構215を制御するための装置とを含み得る。センサ機構215を制御することは特に、光センサ215a、215bの少なくとも1つを駆動することを含み得て、駆動することは特に、エンコーダリングの回転の測定のための光パルスを生成し、反射エリア70aからのこれらの測定光パルスの反射を検出するために、光センサをどのように制御するかを意味する。制御装置は、例えばマイクロプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はその他等の1つ又は複数のプロセッサと、プロセッサ機構23により実行されるソフトウェアを記憶できるプログラムメモリ24及びメインメモリ25を含むメモリユニット24、25と、Wi-Fi(商標)又はBluetooth(登録商標)等の無線ネットワークを介して他の機器と通信するための無線通信インタフェースであり得る通信ユニット又は出力27、及び/又は例えばユニバーサルシリアルバス(USB)、ミニUSB、又はマイクロUSBコネクタを受けるソケット等の無線通信リンク用インタフェースと、例えばLCD(液晶表示体)、1つ又は複数のLED、及び/又は電子ペーパディスプレイなどの表示ユニット30と、例えば1つ又は複数のボタン及び/又はタッチ入力装置等のユーザインタフェース(UI)31と、電源スイッチ28と、バッテリ29と、を含み得る。
【0040】
制御装置のコンポーネント23、24、25、27、28、29、30、31は、コンポーネントの配線を含むPCBにはんだ付けされ得る。センサ機構215は、PCBに取り付けられても、プロセッサ機構23にワイヤ接続されてもよい。センサユニット700の実装は、それを組み込むべき薬物送達装置又は薬物送達付属装置に依存する。例えば、コンポーネント23、24、25、27、28、29、30、31を備えるPCBは、注入装置1の遠位端に組み込まれ得て、センサ215a、215bは図2及び3に示されように配置され、PCBにワイヤで接続され得る。コンポーネント23、24、25、27のうちの少なくとも幾つかは、SoC(システムオンチップ)又はマイクロコントローラにも含まれ得る。
【0041】
プログラムメモリ25に記憶されるファームウェアは、プロセッサ機構23を、センサ機構215を制御して、装置1を用いて送達される薬物投与量の排出を検出することができ、センサ215a、215bの各々が、特に図2及び3に関して上述したように、検出された送達薬物投与量に対応するセンサ信号を出力するように構成し得る。プロセッサ機構23は、センサ215a、215bの各々のセンサ信号を受信して各センサ信号の読み取り値を得、これらが処理されて送達投与量が計算される。読み取り値は、例えばセンサ215a、215bのアナログ電圧信号の1つ又は複数の電圧サンプルを含み得る。読み取り値はまた、特定の時間範囲にわたるセンサ215a、215bのアナログ電圧信号の積分も含み得る。電圧信号の代わりに、センサにより生成される電流、電荷、又はその他の出力信号もまた、読み取り値、例えばセンサ信号の周波数、周波数シフトを得るために使用され得る。読み取り値は、注入装置1の動作中に、装置1により吐出される単位数を測定するために、各センサ215a、215bにより得られ得る。吐出単位数を測定することは、以下により詳しく説明するように、各センサ信号のピークを計数し、計数されたピークから送達投与量を導き出すことを含み得る。
【0042】
装置1に組み込む必要のあるバッテリ29の大きさを小さくすることができるように、エンコーダシステムの500の電力使用を小さくすることができることが有利である。この実施形態で使用されるセンサ215a、215bには、動作するために特定の量の電力が必要となる。この実施形態は、センサ215a、215bが制御された周期で間欠的にオンオフを切り替えることができるように(すなわち、ストローブサンプリングモードで)配置される。本来的に、エイリアシングが発生する前に、サンプリングされたエンコーダシステムにより計数可能な最大回転速度には限界がある。エイリアシングとは、サンプリングレートが、検知された領域がセンサを通過するレートより低い現象であり、これは、領域の変化が見落とされたときにカウントミスが生じることを意味する。第一の周波数215aと比較して低い周波数の第二のセンサ215bは、それにもエイリアシングが発生する前に、より高い回転速度に耐えることができる。第二のセンサ215bは吐出される投与量を第一のセンサ215aと同じ分解能まで分解できないが、第二のセンサ215bの出力はより高い速度でも信頼できる状態のままである。したがって、両方のセンサ215a、215bが組み合わせて使用されて、第一の閾値回転(吐出)速度まで、送達される投与量を正確に特定することができる。センサ215a、215bはすると、第二の(より高い)閾値投与速度まで、送達される大体の投与量を特定するために使用できる。第二の閾値速度より高い速度では、センサ215a、215bは送達される投与量を正確に、又は概算で特定することができず、したがって、第二の閾値は、注射ペン1では物理的に不可能な速度より高く設定される。
【0043】
第一の速度閾値は、第一のセンサ215aのパルスレートと、所期の薬物又は投与レジームにより必要とされる分解能(例えば、1IU当たり1回の遷移)に固定されるエンコーダ領域遷移の周期によって特定される。第二の速度閾値は、第二のセンサ215bのパルスレートと、エンコーダ領域遷移の周期によって特定される。第一の閾値は、吐出速度の最大範囲が、吐出される投与量の正確な報告のために、システムによりカバーできるように設定される。
【0044】
図3に示される例示的実施形態は、送達される投与量の1IUあたり1回の遷移の領域遷移を標的とする第一のセンサ215aと、送達される投与量の6IUあたり1回の遷移の領域遷移を標的とする第二のセンサ215bを有する。その他の選択肢も可能であり、これには2IUあたり1回の遷移、4IUあたり1回の遷移、8IUあたり1回の遷移、12IU単位あたり1回の遷移が含まれる。これらの選択肢は各々、図3に示されるエンコーダシステム500に1回転あたり24の別々の領域70a、70bがあるため、可能である。一般に、1回転当たりの別々の領域70a、70bの数がn単位であった場合、m単位あたり1回の領域遷移における選択肢があり、mは、1より大きくnより小さい、nの何れかの整数因数である。
【0045】
両方のセンサ215a、215bのサンプリング周波数が低速であるほど、必要な電力消費量は小さく、したがってバッテリ29の必要な大きさも小さくなる。したがって、設計によりサンプリング周波数をできるだけ小さくすることが最適である。
【0046】
プログラムメモリ25に記憶され、送達された投与量を検出するためにプロセッサ機構23により実行されるファームウェアはまた、光センサ215a及び/又は215bを、測定光パルスを生成するように、すなわち光センサ215a、215bを駆動するように構成するためにも実装される。光センサ215a、215bは、プロセッサ機構23によって、異なるパルスレートで、特に第一のパルスレートで、又は少なくとも1つの第二のパルスレートで光パルスを生成するように構成できる。第一のパルスレートはここで、少なくとも1つの第二のパルスレートより低い。パルスレートは、連続する2つの光パルスの時間間隔を決定する。
【0047】
図5は、ファームウェアにより構成されるプロセッサ機構23によって駆動される光センサ215a、215bにより生成される光パルス1000のシーケンスの例を示している。図の光パルス1000のシーケンスは、第一の、すなわち「低速」パルスレートによる光パルス1002の第一のシーケンスを含み、連続するパルス1002間の時間間隔はT1である。時間間隔T1は、例えば国際公開第2014033195号パンフレットに記載されている注射ペンの特定の実施形態では例えば約2ミリ秒であり得、すなわち連続する2つの光パルス1002間の時間間隔は約2ミリ秒である。この光パルス1002の第一のシーケンスは特に、デフォルトで生成されて、エンコーダリングの特性、特にエリア70a、70bの数、それらの寸法、及び反射エリア70a同士間の距離に合わせて調整され得る。これは、サンプリングに必要なエネルギ消費とエリア70a及び70b間の遷移を表すセンサ出力信号を取得するのに必要な空間分解能との妥協点として選択され得る。
【0048】
光パルス1000のシーケンスはまた、第二の、すなわち「高速」パルスレートによる光パルス1004の第二のシーケンスも含み、連続するパルス間の時間間隔はT2である。時間間隔T2は、例えば国際公開第2014033195号パンフレットに記載されている注射ペンの特定の実施形態では例えば約250マイクロ秒であり得、すなわち、連続する2つの光パルス1004間の時間間隔は250マイクロ秒であり、それゆえ、光パルス1002間の時間間隔T1よりはるかに小さい。光パルス1004のより高速のパルスレートにより、光パルス1002の低速のパルスレートより高い空間分解能が得られ、したがって、特にエリア70a及び70b間の遷移を光パルス1002より高い正確さで検出するのに適している。
【0049】
図5には4つの「高速」光パルス1004しか示されていないが、これより多い、又は少ない「高速」光パルス1004、特に16の光パルスが提供され得ると理解すすべきであり、これらは例えば国威出願第2014033195号に記載されている注入装置との実装に適用され得る。
【0050】
留意すべき点として、異なるパルスレート、例えば第一及び第二のパルスより速いパルスレートの光パルスのその他のシーケンスが、さらにより高い空間分解能を得るために提供され得る。
【0051】
光センサの出力信号1008が、図5の下の例示的トレースに示されている。出力信号1008はエリア70a及び70b間のエンコーダリングの遷移の検出を表す。エリア70a及び70b間の遷移が光センサによりサンプリング又は検出されると、出力信号1008は、図5に示されるように時点1012でも変化し、これはエリア70a、70b間の遷移の理想的なエッジ検出を表す。
【0052】
上で概説したように、2つ以上の異なるパルスレートを用いる駆動方式によって、特に、エリア70a及び70b間の遷移を検出しなければならない場合に、エンコーダリングのエリアの空間分解能を高めることができる。特に、ファームウェアはプロセッサ機構23を、エリア70a及び70b間の遷移が第一のパルスレートで実現され得る分解能より高い空間分解能でサンプリングされるべきであるときに、パルスレートが第一から第二のパルスレートへと切り替えられるように構成し得る。光センサの空間分解能は、フラッグ遷移、又はエリア70a及び70b間の遷移においてかなりの影響を有し得る。光センサは通常、エリア70a及び70b間の遷移の中でそれが現れ得る時のターゲット反射の段階的変化のエッジを、その出力信号における急激な変化としてではなく、曖昧な、又は平滑化された遷移として検出する。その結果、センサ出力信号の振幅は、フラッグ遷移の周囲で位置に依存するものとなり得る。これはまた、機械的なフラッグ遷移地点が光センサにより検出されるものと一致し得ないことも意味し得る。それゆえ、エリア70a及び70b間の遷移が光センサ215の検出範囲内で出現したときにより高速のパルスレートに切り換えることによって、より正確なセンサ信号、特に検出された遷移をより正確に表すセンサ信号が得られ得る。
【0053】
パルスレートの切り換えは、図6の遷移検出のより詳細な図の中に示されているように、1つ又は複数の閾値により制御され得る。図6には2つの例示的な既定の閾値TH、TH’が示されている。各既定の閾値TH、TH’は、よりよい空間分解能を得るためのパルスレートのT1からT2への切り換えをトリガするために提供され得る。閾値THは閾値TH’より大きい。閾値TH、TH’は例えば、光センサ、例えばフォトトランジスタ、フォトダイオードの受光部のそれぞれ出力電圧又は電流の電圧又は電流値であり得る。
【0054】
ファームウェアはプロセッサ機構23を、光センサの出力信号を、それを閾値TH、TH’の少なくとも一方と比較することによって処理するように構成し得る。プロセッサ機構23が、光センサの出力信号が閾値TH、TH’を(エリア70a及び70b間の遷移が検出されたときの出力信号の挙動に応じて)上回ったこと、又は下回ったことを検出すると、プロセッサ機構23はパルスレートを第一から第二のそれに切り換え、すなわちより小さい時間間隔T2の光パルス1004を生成することによってパルスレートを増大させて、空間分解能をより高くし得る。
【0055】
大きい方の閾値THは例えば、エリア70a及び70b間のより急峻な遷移のため、例えば光センサの出力信号がより大きい勾配で変化するときのために提供され得る。これは図6において、例示的トレース1008’により示される。小さい方の閾値TH’は例えば、エリア70a及び70b間のより平滑な遷移のため、例えば光センサの出力信号がより小さい勾配で変化するときのために提供され得、これは図6において例示的トレース1008’’によって示される。両方の閾値TH、TH’を上回る、又は下回るのは、時点1010で発生し、それによってパルスレートの切り換えが時点1012で起こることになる。
【0056】
閾値TH、TH’は既定値であり得るが、例えばパルスレートの切り換えを反射エリア70aの反射率によりよく適応させるために、エンコーダリングの特定の実装に合わせて調整することも可能である。例えば、閾値TH、TH’は較正手順に適応させられ得て、その間にこれは例えば反射率に合わせて調整され得る。
【0057】
図6では出力信号1008が閾値TH、TH’を下回ることが示されているが、特に出力信号1008のトレースが逆転した時には出力信号1008が閾値TH、TH’を上回ることが検出され得ると理解されたく、すなわち非反射エリア70bから反射エリア70aへの遷移が検出されるべきである場合にはそれが低い値から高い値に上昇し、これは図5及び6において、信号1008の低い値から高い値への第二の遷移により示されている。
【0058】
また、光センサの駆動方法の他のパラメータを変更することも可能である。ファームウェアはプロセッサ機構23を、特に光パルス1002及び1004の持続時間を変調させるように構成し得る。例えば、持続時間は、エンコーダリングの回転速度で変調され得て、それによって測定光パルス1002及び1004はより高い、又はより低い回転速度によりよく適応される。他のパラメータは出力信号の振幅であり、これも特にパルスレートに応じて変調可能である。例えば、パルスレートがより低いパルスレートからより高いものに切り換えられるとき、出力信号の振幅は、パルスレートの切り換えによる変動を縮小するために増大させられ得る。
【0059】
次に、光センサの出力信号におけるパルスレート切り換えによる影響を緩和するための方策について述べる。まず、これらの影響を説明する:パルスレートが変化すると、通常、光センサの出力信号において、例えばフォトトランジスタの出力において、センサ特性による小幅なシフトが発生する。エンコーダリングが、光センサがフラッグ遷移(エリア70a及び70b間の遷移)に近く、出力信号が閾値、例えば図6のTH又はTH’に近くなるように位置付けられると、パルスレートの変化による出力信号の振幅の小さい変動によって、このプロシージャは高いパルスレートのままとされることが想定される。例えば、2つのパルスレートでの実装では、閾値と交差すると、高パルスレートでのサンプルが発生し、その後、これは低いパルスレートへと下がり、その結果、振幅が小幅で縮小して、それによって閾値がトリップされ得て、それが再び高パルスレートに切り換えられる。このような状況は、グレイコードでのエンコーダリングの実装における揺らぎの原因となり得、それによって測定の不確実性が増大し得る。高いレートでの不必要なサンプリングによってエネルギも浪費され得る。
【0060】
これは、プライミング光パルス、例えばプライミングIR LED駆動パルスを測定に用いられる光パルスの前に含めることによって緩和され得る。図5及び6において、プライミング光パルスは参照番号1006で示され、測定光パルス1002の前の時間間隔T2で生成され、これは光パルス1004の高速、すなわち第二のパルスレートと同じ期間である。最適な補償のためには、この期間は高速、すなわち第二のパルスレートの期間と一致するべきであることを示すことができる。
【0061】
プライミング光パルス1006は、測定光パルス1002及び/又は1004と同じパラメータで、特に同じ続時間及びエネルギ(特に、振幅及び放出スペクトル)で生成できる。しかしながら、例えばパルスレート切り換えによる望ましくない影響をよりよく軽減させるために、プライミング光パルス1006が1つ又は複数のパラメータにおいて測定光パルス1002及び/又は1004とは異なるようにすることも可能であり、有利であり得る。例えば、プライミング光パルスを光センサの特性に合わせるために、プライミング光パルスの持続時間及び/又はエネルギは、測定光パルスのそれらと異なり得る。特に、プライミング光パルスの持続時間及び/又はエネルギを異なるようにすることは、センサの特性に応じて光センサの出力信号のシフトを縮小するのにより適し得て、特に測定光パルスより短い持続時間及びそれより低いエネルギは、パルスレートが切り換えられたときの光センサの出力信号のシフトを十分に軽減し得る。
【0062】
軽減はまた、光パルスを生成するために駆動パルスの持続時間を適切に変調すること、又は閾値を変更すること、又は光センサの出力信号の振幅を変調することによっても実施され得る。
【0063】
本願で開示される光センサの駆動方法は特に、国際公開第2014033195号パンフレットに記載されている注射ペン等、既定の角度周期性を有するロータリエンコーダシステムを備える可動投与量プログラミングコンポーネントを含む注入装置に特に適している。しかしながら、本開示による駆動方法は、既定の角度周期性を有するロータリエンコーダシステムを備える可動投与量プログラミングコンポーネントを有する薬物送達装置全般に適用可能である。本開示の方法はまた、薬物送達付属装置、例えば注入装置等の薬物送達装置に取り付けるように提供され、投与量記録及び/又は外部電子機器との接続性等の電子的機能を提供するように設計され、構成された無線通信装置にも適用できると理解されたい。このような付属装置は例えば、図4に示され、付属装置が取り付けられる薬物送達装置により選択及び/又は送達される投与量を測定できるように設計されるセンサユニット700を備える電子部品を含み得る。付属装置に含まれる電子部品はすると、本願で開示される方法を、特に、投与量の選択及び/又は排出を検出するための測定光パルスを生成するために提供される1つ又は複数の光センサを駆動するためのマイクロコントローラ等のコントローラを構成するファームウェアによって実行し得る。本願で開示される方法が特に適している光エンコーダシステムの実装は、例えば前述の国際公開第2019101962A1号パンフレットにおいて開示されている。
【0064】
本願で開示される方法によれば、可動投与量プログラミングコンポーネントの移動を正確に表す光センサの出力信号を生成できる。これは特に、ロータリエンコーダシステムの異なるエリア間の遷移をサンプリングするためにそれによって測定光パルスが生成されるパルスレートを第一のより低いパルスレートから少なくとも1つの第二のより高いパルスレートに切り換えることによって得られ得る。切り換えは特に、光センサの出力信号が1つ又は複数の閾値と交差することによってトリガされ得る。パルスレートの切り換えによる出力信号への影響を軽減するために、本願で開示される実施形態は、第一のパルスレートでの測定の光パルスの前に生成されるプライミング光パルスを導入することを提案する。プライミング光パルスは特に、測定光パルスの前の、少なくとも1つの第二のパルスレートに対応する時間シフトで生成される。
【0065】
「薬物」又は「薬剤」という用語は本明細書中では同義として使用され、1つ又は複数の活性薬剤成分又は薬学的に許容される塩若しくはその溶媒和化合物と、任意選択的に薬学的に許容されるキャリアを含む医薬製剤を表す。活性薬剤成分(API(active pharmaceutical ingredient))は、最も広い意味において、人又は動物に対する生物学的効果を有する化学構造である。薬理学において、薬物又は薬剤は病気の治療、治癒、予防、若しくは診断で使用されるか、又はそれ以外に身体的若しくは精神的健康を向上させるために使用される。薬物又は薬剤は、限定的期間にわたり、又は慢性疾患のためには定期的に使用され得る。
【0066】
後述のように、薬物又は薬剤は、1つ又は複数の病気の治療のために、少なくとも1つのAPI、又はその組合せを様々な種類の調合で含むことができる。APIの例としては、分子量500Da以下の小分子、ポリペプチド、ペプチド、たんぱく質(例えば、ホルモン、増殖因子、抗体、抗体フラグメント、及び酵素)、炭水化物と多糖類、及び酸、二本鎖又は一本鎖DNA(ネイキッド及びcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNA及びRNA等のアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、及びオリゴヌクレオチドが含まれ得る。核酸は、ベクトル、プラスミド、又はリポソーム等の分子送達系に組み込まれ得る。1つ又は複数の薬物の混合物も想定される。
【0067】
薬物又は薬剤は、薬物送達装置と共に使用するようになされた一次包装又は「薬物容器」に収容され得る。薬物容器は、例えばカートリッジ、シリンジ、リザーバ、又はその他の、1つ又は複数の薬物の適当な保存(例えば、短期又は長期保存)のための適当なチャンバを提供するように構成された固形若しくは柔軟な容器であり得る。例えば、幾つかの例において、チャンバは薬物を少なくとも1日(例えば、1~少なくとも30日間)保存するように設計され得る。幾つかの例において、チャンバは薬物を約1カ月~約2年間保存するように設計され得る。保管は、室温(例えば、約20℃)又は低温(例えば、約-4℃~約4℃)で行われ得る。幾つかの例において、薬物容器は投与される薬剤調合物の2つ以上の成分(例えば、APIと希釈剤、又は2種類の薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保管するように構成される2室式カートリッジであり得るか、それを含み得る。このような例において、2室式カートリッジの2つのチャンバは、人又は動物の体内に吐出する前及び/又は吐出中に2つ以上の成分を混合できるように構成され得る。例えば、2つのチャンバは、これらが相互に流体連通して(例えば、2つのチャンバ間の導管による)、吐出前にユーザが希望に応じて2つの成分を混合できるように構成され得る。代替的に、又はそれに加えて、2つのチャンバは、成分が人又は動物の体内に吐出されている間に混合できるように構成され得る。
【0068】
本明細書に記載の薬物送達装置に収容された薬物又は薬剤は、様々な種類の医学的障害の治療及び/又は予防に使用できる。障害の例としては、例えば真正糖尿病又は、糖尿病性網膜症などの真正糖尿病の合併症、深部静脈又は肺血栓等の血栓閉塞症が含まれる。障害のまた別の例は、急性冠動脈症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、花粉症、アテローム性動脈硬化、及び/又は関節リウマチである。API及び薬物の例は、Rote Liste 2014等のハンドブック、例えば、これらに限定されないが、メイングループ12(抗糖尿病薬)又は86(腫瘍薬)、及びメルクインデックス第15版に記載されているものである。
【0069】
1型若しくは2型真正糖尿病又は1型若しくは2型真正糖尿病の合併症の治療及び/又は予防のためのAPIの例には、インスリン、例えばヒトインスリン、又はインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体若しくはGLP-1受容体作動薬、又はその類似体若しくは誘導体、ジペブチジルペプチターゼ-4(DPP4)阻害薬、又は薬学的に許容される塩若しくはその溶媒和化合物、又はそれらのあらゆる混合物が含まれる。本明細書で使用されるかぎり、「類似体」及び「誘導体」という用語は、形式的に天然に存在するペプチドの構造、例えばヒトインスリンのそれから、天然に存在するペプチド内にある少なくとも1つのアミノ酸残基を削除及び/若しくは置換することによって、並びに/又は少なくとも1つのアミノ酸残基を追加することによって導出できる分子構造を有するポリペプチドを指す。追加及び/又は置換されるアミノ酸残基は、コード化可能なアミノ酸残基又はその他の天然に存在する残基か、又は純粋な合成アミノ酸残基の何れでもあり得る。インスリン類似体は、「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、形式的に天然に存在するペプチドの構造、例えばヒトインスリンのそれから導出可能な、1つ又は複数の有機置換基(例えば、脂肪酸)がアミノ酸のうちの1つ以上と結合する分子構造を有するポリペプチドを指す。任意選択により、天然に存在するペプチドの中にある1つ又は複数のアミノ酸が削除され、及び/若しくはコード化不能なアミノ酸を含むその他のアミノ酸に置換されていてもよく、又はコード化不能のものを含むアミノ酸が天然に存在するペプチドに追加されていている。
【0070】
インスリン類似体の例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン)、Lys(B3)、Glu(B29)、ヒトインスリン(インスリンリスプロ)、Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト)、位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、又はAlaに置換され、位置B29のLysがProに置換され得るヒトインスリン、Ala(B26)ヒトインスリン、Des(B28-B30)ヒトインスリン、Des(B27)ヒトインスリン、及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0071】
インスリン誘導体の例は例えば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標))、B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-ミリストイルヒトインスリン、B29-N-パルミトイルヒトインスリン、B28-N-ミリストイル-LysB28ProB29ヒトインスリン、B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン、B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン、B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン、B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルカミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))、B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、及びB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0072】
GLP-1、GLP-1類似体、及びGLP-1受容体作動薬の例は、例えば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標))、エキセナチド(Exendin-4、Byetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺により生成される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セモグラチド、タスポグラチド、アルビグラチド(Syncria(登録商標))、デュラグラチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングルナチド/HM-11260C(Efpeglenatide)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、゜CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(Pegapamodtide)、BHM-034である。MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマデュチド(SAR425899)、エキセナチド-XTEN、及びグルカゴン-Xten。
【0073】
オリゴヌクレオチドの例は例えば、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬、又はアルポート症候群の治療のためのRG012である。
【0074】
DPP4阻害薬の例は、リナグリプチン、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0075】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、及びゴセレリン等の、脳下垂体ホルモン若しくは視床下部ホルモン又は調節性活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストが含まれる。
【0076】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン若しくは超低分子量ヘパリン、又はそれらの誘導体、又は硫酸化多糖類、例えば上述の多糖類のポリ硫酸化形態、及び/又は、薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の一例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0077】
「抗体」という用語は、本明細書で使用されるかぎり、免疫グロブリン分子又はその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例には、抗原を結合する能力を保持するF(ab)及びF(ab’)2フラグメントが含まれる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型又はヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(例えばネズミ)、又は一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態において、抗体はエフェクタ機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態において、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低い、又はそれを持たない。例えば、抗体は、アイソタイプ若しくはサブタイプ、抗体フラグメント又は変異体とすることができ、これはFc受容体との結合を支持せず、例えば、突然変異した、又は欠失したFc受容体結合領域を有する。抗体という用語はまた、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)及び/又は交差結合領域の配向性を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗体結合分子も含む。
【0078】
「フラグメント」又は「抗体フラグメント」という用語は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(例えば、抗体重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントとしては、例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、単一特異性、又は二重特異性、三重特異性、四重特異性及び多重特異性抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)等の多重特異性抗体フラグメント、一価、又は二価、三価、四価及び多価抗体等の多価抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディ又はバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、及びVHH含有抗体が含まれる。抗原結合抗体フラグメントのその他の例は当業界で知られている。
【0079】
「相補性決定領域」すなわち「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖及び軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖及び軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的に、当業界で知られているように、抗原結合に直接関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接関与することができ、又はCDR内の1つ又は複数のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与え得る。
【0080】
抗体の例は、アンチPCSK-9mAb(例えば、アリロクマブ)、アンチIL-6mAb(例えば、サリルマブ)、及びアンチIL-4mAb(例えば、デュピルマブ)である。
【0081】
本明細書に記載のあらゆるAPIの薬学的に許容される塩もまた、薬物送達装置における薬物又は薬剤において使用されることが想定される。薬学的に許容される塩は、例えば酸付加塩及び塩基性塩である
【0082】
当業者であれば、本発明の完全な範囲と主旨から逸脱することなく、本明細書に記載のAPI、製剤、装置、方法、システム、及び実施形態の様々な構成要素に修正(追加及び/又は削除)を加えることができ、本発明はそのような修正及びそのあらゆる均等物を包含することがわかるであろう。
【0083】
例示的な薬物送達装置は、ISO11608-1:2014(E)5.2項の表1に記載されている針ベースの注射システムを含み得る。ISO11608-1:2014(E)に記載されているように、針ベースの注射システムは広く、複数回投与容器システムと単回投与(部分又は全量排出)容器システムに分類され得る。容器は、交換可能容器でも、一体化された交換不能容器でもよい。
【0084】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、複数回投与容器システムは、交換式容器を備える針ベースの注入装置を含み得る。このようなシステムでは、各容器は複数回分の投与量を保持し、その大きさは固定でも可変(ユーザにより事前設定される)でもよい。他の複数回投与容器システムは、一体化された交換不能容器を備える針ベースの注入装置を含み得る。このようなシステムでは、各容器は複数回分の投与量を保持し、その大きさは固定でも可変(ユーザにより事前設定される)でもよい。
【0085】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、単回投与容器システムは交換式容器を備える針ベースの注入装置を含み得る。このようなシステムの一例において、各容器は1回分の投与量を保持し、送達可能量の全量が排出される(全量排出)。別の例では、各容器は1回分の投与量を保持し、送達可能量の一部が排出される(部分排出)。同じくISO11608-1:2014(E)に記載されているように、単回投与容器システムは、一体化された交換不能容器を備える針ベースの注入装置を含み得る。このようなシステムの一例では、各容器は1回分の投与量を保持し、送達可能量の全量が排出される(全量排出)。別の例では、各容器は1回分の投与量を保持し、送達可能量の一部が排出される(部分排出)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】