(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】生分解性ラミネートフィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240905BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20240905BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B32B27/00 M
C08K5/20
C08L67/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519065
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2022076843
(87)【国際公開番号】W WO2023052360
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ベアンハート シック
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム ローマン
(72)【発明者】
【氏名】ティモ ベンヤミン ヴィット
(72)【発明者】
【氏名】フランク ブロス
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AB01D
4F100AB33D
4F100AH02A
4F100AH02B
4F100AH03A
4F100AH03B
4F100AJ06D
4F100AK21C
4F100AK25A
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK42B
4F100AK51A
4F100AK69C
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA02A
4F100CA23C
4F100CA30B
4F100CB00A
4F100CB00C
4F100DG10D
4F100EJ55B
4F100GB15
4F100JA04A
4F100JA05A
4F100JA20A
4F100JB05A
4F100JC00
4F100JD02C
4F100JD03C
4F100JL11A
4F100JL11C
4F100YY00A
4F100YY00B
4J002CF031
4J002CF051
4J002CF182
4J002CF192
4J002EP016
4J002FD166
4J002FD176
4J002GF00
(57)【要約】
本発明は、A/B層構造を有する生分解性ラミネートフィルムに関し、ここで、厚さ0.5~7μmの層Aは、ポリウレタン又はアクリレート接着剤を含み、かつ厚さ5~150μmの層Bは、脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族-芳香族ポリエステルを含み、ここで脂肪族-芳香族ポリエステルは、次の組成のものである:b1-i) 成分b1-i及びb1-iiに対して、30~70mol%のC6~C18ジカルボン酸;b1-ii) 成分b1-i及びb1-iiに対して、30~70mol%のテレフタル酸;b1-iii) 成分b1-i及びb1-iiに対して、98~100mol%のプロパン-1,3-ジオール又はブタン-1,4-ジオール;b1-iv) 成分b1-i及びb1-iiに対して、0~2質量%の鎖延長剤及び/又は分岐剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A/B層構造を有する生分解性ラミネートフィルムであって、厚さ0.5~7μmの層Aがポリウレタン又はアクリレート接着剤を含み、層Bが、脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族-芳香族ポリエステルと、エルカ酸アミド及びステアリン酸アミドから選択される0.05質量%~0.3質量%の潤滑剤とを含み、脂肪族芳香族ポリエステルが、以下の組成のもの:
b1-i) 成分b1-i及びb1-iiに対して、30~70mol%の脂肪族C
6~C
18ジカルボン酸;
b1-ii) 成分b1-i及びb1-iiに対して、30~70mol%の芳香族ジカルボン酸;
b1-iii) 成分b1-i及びb1-iiに対して、98~100mol%の1,3-プロパンジオール又は1,4-ブタンジオール;
b1-iv) 成分b1-i~b1-iiiに対して、0~2質量%の鎖延長剤及び/又は分岐剤
であり、
エルカ酸アミドを含む層Bが5~80μmの層厚を有し、かつ
ステアリン酸アミドを含む層Bが5~50μmの層厚を有する、生分解性ラミネートフィルム。
【請求項2】
層Bが、
b1) 60~99.95質量%の、ポリブチレンアジペートコテレフタレート、ポリブチレンアゼレートコテレフタレート、ポリブチレンセバケートコテレフタレートからなる群から選択される脂肪族-芳香族ポリエステル、
b2) 0~15質量%、好ましくは3~12質量%のポリヒドロキシアルカノエート、好ましくはポリ乳酸、
b3) 0~25質量%、好ましくは3~20質量%の無機充填剤
b4) 0.05~0.3質量%の、エルカ酸アミド及びステアリン酸アミドから選択される潤滑剤
を含む、請求項1に記載のラミネートフィルム。
【請求項3】
層Aが水性ポリウレタン分散液から形成され、ポリウレタンの少なくとも60質量%が以下:
a1) 少なくとも1種のジイソシアネート
a2) 少なくとも1種のポリエステルオール
a3) ジヒドロキシカルボン酸及びジアミノカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種の二官能性カルボン酸
から構成され、かつポリウレタンのガラス転移温度が20℃未満であるか、又はポリウレタンの融点が20℃を上回らず、10J/G未満の融解エンタルピーを有する、請求項1又は2に記載のラミネートフィルム。
【請求項4】
層Bが10~50μmの層厚を有し、層Bの全質量に対して0.05~0.3質量%のエルカ酸アミドを含有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載のラミネートフィルム。
【請求項5】
A/B/C/B層構造を有する生分解性ラミネートフィルムであって、層A及びBが請求項1から4までのいずれか1項に記載の定義を有し、層Cがポリグリコール酸、エチレンビニルアルコール又は好ましくはポリビニルアルコールからなる酸素又は芳香バリア層である、生分解性ラミネートフィルム。
【請求項6】
バリア層が、個々の層C’/C/C’からなり、層Cがポリビニルアルコールからなり、層C’が接着促進剤層である、請求項5に記載のラミネートフィルム。
【請求項7】
A/B/C/B’層構造を有する生分解性ラミネートフィルムであって、層A、B及びB’が請求項1から4までのいずれか1項に記載の定義を有し、層B’が10~100μmの層厚を有し、層B’の合計質量に基づいて、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド又は好ましくはベヘン酸アミドを0.2~0.5質量%含有する、生分解性ラミネートフィルム。
【請求項8】
生分解性フィルム、金属箔、金属化箔、セロファン、又は好ましくは紙もしくはボール紙からなる群から選択される基材の複合フィルムラミネーションのための、請求項1から7のいずれか1項に記載のラミネートフィルムの使用。
【請求項9】
複合フィルムを製造するための方法であって、i) 層Bの表面をコロナ処理によって活性化し、ii) ポリウレタン接着剤の水性分散液を塗布し、乾燥させ、iii) 得られた請求項1から7までのいずれか1項に記載のラミネートフィルムを、適切な圧延圧力によって、面Aを有する基材に圧着する、複合フィルムを製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、A/B層構造を有する生分解性ラミネートフィルムに関し、ここで、厚さ0.5~7μmの層Aは、ポリウレタン又はアクリレート接着剤を含み、かつ厚さ5~150μmの層Bは、脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族-芳香族ポリエステルを含み、ここで脂肪族-芳香族ポリエステルは、次の組成のものである:
b1-i) 成分b1-i及びb1-iiに対して、30~70mol%のC6~C18ジカルボン酸;
b1-ii) 成分b1-i及びb1-iiに対して、30~70mol%のテレフタル酸;
b1-iii) 成分b1-i及びb1-iiに対して、98~100mol%のプロパン-1,3-ジオール又はブタン-1,4-ジオール;
b1-iv) 成分b1-i及びb1-iiに対して、0~2質量%の鎖延長剤及び/又は分岐剤。
【0002】
本発明は、さらに、特に紙又はボール紙のような基材のコーティングのための前記ラミネートフィルムの使用、並びに前記ラミネートフィルムを基材上にプレスする複合フィルムの製造方法に関する。
【0003】
フレキシブル包装は、特に食品産業で使用されている。それらは、多くの場合、適した接着剤によって互いに接着した複合フィルムからなり、互いに接着したフィルムの少なくとも1つはポリマーフィルムである。使用後は堆肥化して処分できる生分解性複合フィルム包装に対する需要が高い。
【0004】
これまで文献では種々のアプローチが追求されてきた:
国際公開第2010/034712号は、生分解性ポリマーで紙を押出コーティングする方法を記載している。国際公開第2010/034712号に記載した方法により入手可能なコーティングした紙は、紙への接着、機械的特性、バリア特性及び紙複合体の生分解性が限られているため、あらゆる用途に適しているわけではない。
【0005】
国際公開大2012/013506号は、複合フィルムを製造するための水性ポリウレタン分散接着剤の使用を記載しており、その一部は工業的に堆肥化可能である。工業用堆肥化プラントでの分解は、高湿度下、特定の微生物の存在下、及び約55℃の温度下で行う。生分解性に関するフレキシブル包装の要件は常に高まっており、現在家庭で堆肥化できることが多くの用途で必要とされている。国際公開第2012/013506号に記載される複合フィルムは、この基準を十分に満たしておらず、かつ機械的特性及びバリア特性の点でも、全てのフレキシブル包装の用途に適しているわけではない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、生分解性の点で改善され、好ましくは家庭で堆肥化可能であり、基材、好ましくは紙に対して良好な接着性を有し、現代のフレキシブル包装の他の要件も満たすラミネートフィルムを提供することであった。
【0007】
驚くべきことに、前記ラミネートフィルムはこれらの基準を満たしている。
【0008】
本発明を以下でさらに詳細に説明する。
【0009】
層Aは接着層とも呼ばれ、層Bと基材との間に結合を形成する。層Aは0.5~7μmの層厚を有し、ポリウレタン又はアクリレート接着剤を含む。
【0010】
層Aの接着剤は、本質的に、好ましくは、ポリマー結合剤として少なくとも1種の水中に分散したポリウレタン、及び任意に国際公開第2012/013506号に詳細に記載されている充填剤、増粘剤、消泡剤のような添加剤とからなる。明示的に参照される国際公開第2012/013506号に記載されているポリウレタン接着剤の本質的な特徴を以下に列挙する。
【0011】
ポリマー結合剤は、好ましくは水中、又は水と好ましくは150℃(1bar)未満の沸点を有する水溶性有機溶媒との混合物中での分散液の形で存在する。水は唯一の溶媒として特に好ましい。接着剤の組成に関する質量データの場合、水又は他の溶剤は計算に含まれない。
【0012】
ポリウレタン分散接着剤は生分解性であることが好ましい。本出願の意味における生分解性は、例えば、使用される材料の全炭素含有量に対するCO2の形で放出されるガス状炭素の比率が、20日後に、ISO規格14855(2005)に従って測定して、少なくとも30%、好ましくは少なくとも60%又は少なくとも80%である場合に存在する。
【0013】
ポリウレタンは、好ましくは、一方では主にポリイソシアネート、特にジイソシアネートからなり、他方では反応物としてポリエステルジオール及び二官能性カルボン酸からなる。ポリウレタンは、好ましくは少なくとも40質量%、特に好ましくは少なくとも60質量%、極めて特に好ましくは少なくとも80質量%のジイソシアネート、ポリエステルジオール及び二官能性カルボン酸から構成される。
【0014】
ポリウレタンは非晶質又は半晶質であってよい。ポリウレタンが半晶質である場合に、融点は好ましくは80℃未満である。ポリウレタンは、ポリウレタンに対して、10質量%超、50質量%超、又は少なくとも80質%の量でポリエステルジオールを含むことが好ましい。BASF SEから商品名Epotal(登録商標)で販売されているポリウレタン分散液が特に適している。
【0015】
全体として、ポリウレタンは以下のものから構成されることが好ましい:
a) ジイソシアネート、
b) ジオールであって、
b1) ジオール(b)の合計量に対して10~100mol%がポリエステルジオールであり、500~5000g/molの分子量を有し、
b2) ジオール(b)の合計量に対して0~90mol%が60~500g/molの分子量を有する、
ジオール
c) ジヒドロキシカルボン酸及びジアミノカルボン酸から選択される少なくとも1つの二官能性カルボン酸、
d) 任意に、モノマー(a)~(c)とは異なる、アルコール性ヒドロキシル基、第一級もしくは第二級アミノ基、又はイソシアネート基である反応性基を有するさらなる多価化合物、及び
e) 任意に、モノマー(a)~(d)とは異なり、アルコール性ヒドロキシル基、第一級もしくは第二級アミノ基、又はイソシアネート基である反応性基を有する1価化合物。
【0016】
特に好ましいのは、国際公開2021/175676号として公開されているPCT/EP2021/054570号に記載されている層Aの家庭で堆肥化可能な接着剤である。本明細書で明示的に参照される、PCT/EP2021/054570号に記載されているポリウレタン接着剤の本質激な特徴を以下に列挙する。
【0017】
PCT/EP2021/054570号の水性ポリウレタン分散接着剤は、家庭用堆肥化条件(25±5°C)で生分解性である複合フィルムの製造に適しており、少なくとも1つの層Bと第2の基材がポリウレタン分散接着剤Aを使用して接着されており、かつ
ここで、基材の少なくとも1つは、家庭用堆肥条件下で生分解性であるポリマーフィルムであり、ポリウレタンの少なくとも60質量%は、
(a) 少なくとも1つのジイソシアネート
(b) 少なくとも1つのポリエステルジオール、及び
(c) ジヒドロキシカルボン酸及びジアミノカルボン酸から選択される少なくとも1つの二官能性カルボン酸
からなり、
ポリウレタンは、20℃未満のガラス転移温度を有し、20℃超の融点を有さないか、又は10J/g未満の溶融エンタルピーで20℃超の融点を有し、かつ
好ましくは、ポリウレタン接着剤の層Aは、家庭用堆肥条件下で360日以内に90質量%超でCO2と水に分解し、かつポリウレタン接着剤の層Aは、好ましくは家庭で堆肥化可能であり、かつ好ましくは、それから製造されるラミネートフィルムA/Bは、25±5℃で180日以下の期間にわたって好気性堆肥化した後に、材料の元の乾燥質量の最大10%が>2mmのふるい画分に存在する場合、家庭用堆肥条件下で生分解性である。
【0018】
好ましくは、ポリウレタン接着剤、層B及び/又は基材及び/又は複合フィルムからのフィルムは、家庭で堆肥化可能である。
【0019】
BASF SEから商品名Epotal(登録商標)Ecoで販売されているポリウレタン分散液が特に適している。
【0020】
本発明による層Bは、5~150μmの層厚を有し、脂肪族ポリエステル及び/又は脂肪族-芳香族ポリエステルを含み、ここで、脂肪族-芳香族ポリエステルは、次の組成:
b1-i) 成分b1-i及びb1-iiに対して、30~70mol%のC6~C18ジカルボン酸;
b1-ii) 成分b1-i及びb1-iiに対して、30~70mol%のテレフタル酸;
b1-iii) 成分b1-i及びb1-iiに対して、98~100mol%のプロパン-1,3-ジオール又はブタン-1,4-ジオール;
b1-iv) 成分b1-i及びb1-iiに対して、0~2質量%の鎖延長剤及び/又は分岐剤
のものである。
【0021】
脂肪族ポリエステルは、例えば、国際公開第2010/034711号にさらに詳細に記載されているポリエステルを意味すると理解され、これを本明細書で明示的に参照する。
【0022】
国際公開第2010/034711号の(i)のポリエステルは、一般に次のような構造を有する:
i-a) 成分i-a~i-bに対して、80~100mol%のコハク酸;
i-b) 成分i-a~i-bに対して、0~20mol%の1つ以上のC6~C20ジカルボン酸;
i-c) 成分i-a~i-bに対して、99~102mol%、好ましくは99~100mol%の1,3-プロパンジオール又は1,4-ブタンジオール;
i-d) 成分i-a~i-cに対して、0~1質量%の鎖延長剤又は分岐剤。
【0023】
国際公開第2010/034711号のポリエステルiの合成は、好ましくは、個々の成分の直接重縮合反応で生じる。ジカルボン酸誘導体は、ジオールと一緒に、エステル交換触媒の存在下で高分子量重縮合物に直接変換される。一方で、コポリエステルは、ジオールの存在下でポリブチレンサクシネート(PBS)とC6~C20ジカルボン酸とのエステル交換反応によって得ることもできる。触媒としては、通常、亜鉛触媒、アルミニウム触媒、特にチタン触媒が使用される。テトラ(イソプロピル)オルトチタン酸塩、特にテトライソブトキシチタン酸塩(TBOT)のようなチタン触媒は、文献で頻繁に使用されるスズ、アンチモン、コバルト、鉛の触媒、例えばジオクタン酸スズよりも優れており、製品に残留する触媒や触媒の変換生成物の量が少なく、毒性が低い。この事実は、生分解性ポリエステルが環境に直接放出されるため、特に重要である。
【0024】
言及されたポリエステルは、特開2008-45117号公報及び欧州特許出願公開第488617号明細書に記載されている方法を使用して製造できる。最初に成分a~cを、50~100mL/g、好ましくは60~80mL/gのVZを有するプレポリエステルに変換し、そしてこれを鎖延長剤i~d、例えばジイソシアネート又はエポキシド含有ポリメタクリレートと鎖延長反応により反応させて、100~450mL/g、好ましくは150~300mL/gのVZを有するポリエステルiを得ることが有利であることが見出されている。
【0025】
使用される酸成分i-aは、酸成分a及び酸成分bに対して80~100mol%、好ましくは90~99mol%、特に好ましくは92~98mol%のコハク酸である。コハク酸は、石油化学ルートを介して、好ましくは、例えば欧州特許出願公開第2185682号明細書に記載されているような再生可能な原料から入手可能である。欧州特許出願公開第2185682号明細書は、パスツレラ科(Pasteurellaceae)の微生物を用いて、異なる炭水化物から出発してコハク酸及び1,4-ブタンジオールを製造するためのバイオテクノロジープロセスを開示している。
【0026】
酸成分i-bは、酸成分i-a及び酸成分i-bに対して0~20mol%、好ましくは1~10mol%、特に好ましくは2~8mol%使用される。
【0027】
C6~C20ジカルボン酸i-bは、特にアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸及び/又はC18ジカルボン酸として理解されるべきである。スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸及び/又はブラシル酸が好ましい。前記酸は再生可能な原料から入手できる。例えば、セバシン酸はヒマシ油から入手できる。かかるポリエステルは、優れた生物学的分解挙動を特徴としている[文献:Polym. Degr. Stab. 2004, 85, 855-863]。
【0028】
ジカルボン酸i-a及びi-bは、遊離酸として、又はエステル形成誘導体の形で使用できる。エステル形成性誘導体としては、特に、ジ-C1~C6アルキルエステル、例えばジメチル-、ジエチル-、ジ-n-プロピル、ジ-イソプロピル、ジ-n-ブチル、ジ-イソブチル、ジ-t-ブチル、ジ-n-ペンチル、ジ-イソペンチル又はジ-n-ヘキシルエステルが挙げられる。ジカルボン酸の無水物も使用できる。ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体は、個々に又は混合物として使用できる。
【0029】
ジオールの1,3-プロパンジオール及び1,4-ブタンジオールも、再生可能な原料から入手できる。2つのジオールの混合物も使用できる。溶融温度がより高く、形成されるコポリマーの結晶化が良好であるため、1,4-ブタンジオールがジオールとして好ましい。
【0030】
一般に、重合の開始時に、ジオール(成分i-c)を酸(成分i-a及びi-b)に、ジオールと二酸との比1.0:1~2.5:1、好ましくは1.3:1~2.2:1で添加する。過剰量のジオールは重合中に除去されるため、重合の終了時にはほぼ等モル比が達せられる。ほぼ等モルとは、二酸/ジオール比が0.98~1.00であることを意味すると理解される。
【0031】
一実施形態において、成分i-a~i-bの合計質に基づいて、0~1質量%、好ましくは0.1~0.9質量%、特に好ましくは0.1~0.8質量%の、多官能性イソシアネート、イソシアヌレート、オキサゾリン、カルボン酸無水物例えば無水マレイン酸、エポキシド(特にエポキシド含有ポリ(メタ)アクリレート)、少なくとも三官能性のアルコール又は少なくとも三官能性のカルボン酸からなる群から選択される分岐剤i-d及び/又は鎖延長剤i-dを含む。原則として、分岐剤は使用せず、鎖延長剤のみを使用する。
【0032】
二官能性鎖延長剤として、例えばトルエン2,4-ジイソシアネート、トルエン2,6-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレン1,5-ジイソシアネート又はキシリレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート又はメチレンビス(4-イソシアナトシクロヘキサン)が適している。特に好ましいのは、イソホロンジイソシアネート、特に1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0033】
脂肪族ポリエステルは、特にポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート-コ-アジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネート-コ-セバケート(PBSSe)、ポリブチレンサクシネート-コ-アゼレート(PBSAz)、又はポリブチレンサクシネート-コ-ブラシレート(PBSBr)のようなポリエステルを意味すると理解される。例えば、脂肪族ポリエステルPBS及びPBSAは、BioPBS(登録商標)という名称でMitsubishi社によって販売されている。より最近の開発は、国際公開第2010/034711号に記載されている。
【0034】
ポリエステルiは、一般に、5000~100000の範囲、特に10000~75000g/molの範囲、好ましくは15000~50000g/molの範囲の数平均分子量(Mn)、30000~300000、好ましくは60000~200000g/molの質量平均分子量(Mw)及び1~6、好ましくは2~4のMw/Mn比を有する。粘度数は30~450、好ましくは100~400g/mL(o-ジクロロベンゼン/フェノール(質量比50/50)で測定)である。融点は85~130℃の範囲、好ましくは95~120℃の範囲である。DIN EN 1133-1に基づくMVR範囲は、8~50cm3/10分、特に15~40cm3/10分(190℃、2.16kg)の範囲である。
【0035】
層Bの脂肪族ポリエステルの中では、ポリヒドロキシアルカノエート、例えばポリカプロラクトン(PCL)、ポリ-3-ヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸-コ-3-ヒドロキシ吉草酸(P(3HB)-コ-P(3HV))、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸-コ-4-ヒドロキシ酪酸(P(3HB)-コ-P(4HB))及びポリ-3-ヒドロキシ酪酸-コ-3-ヒドロキシヘキサン酸(P(3HB)-コ-P(3HH))、特にポリ乳酸(PLA)が使用される。
【0036】
以下の特性プロフィールを有するポリ乳酸b2を使用することが好ましい:
溶融体積速度(ISO1133-1DEに準拠した190℃及び2.16kgでのMVR、0.5~100、特に5~50cm3/10分)
融点240℃未満
ガラス転移点(Tg)55℃超
水分含有量1000ppm未満
残留モノマー含有量(ラクチド)0.3%未満
分子量80000ダルトン超。
【0037】
好ましいポリ乳酸は、NatureWorks社製の結晶性ポリ乳酸タイプ、例えばIngeo(登録商標)6201D、6202D、6251D、3051D、及び3251D、特に4043D及び4044D、並びにTotal Corbion社製のポリ乳酸、例えばLuminy(登録商標)L175及びLX175 Corbion、及びHisun社製のポリ乳酸、例えばRevode(登録商標)190又は110である。しかし、非晶質タイプのポリ乳酸、例えばNatureWorks社製のIngeo(登録商標)4060Dも適している。
【0038】
層B中の脂肪族-芳香族ポリエステルb1は、例えば、国際公開第96/15173号~第15176号又は国際公開第98/12242号(参照を持って本明細書に組み込まれたものとする)に記載されているような、直鎖状、鎖延長した及び必要に応じて分枝状及び鎖延長したポリエステルを意味すると理解されるべきである。異なる部分芳香族ポリエステルの混合物も同様に有用である。興味深い最近の開発は、再生可能な原材料に基づく(国際公開第2010/034689号を参照)。特に、ポリエステルb1は、ecoflex(登録商標)(BASF SE)のような製品である。
【0039】
好ましいポリエステルb1は、必須成分として以下を含むポリエステルを含む:
b1-i) 成分b1-i)及びb1-ii)に対して30~70mol%、好ましくは40~60mol%、特に好ましくは50~60mol%の脂肪族ジカルボン酸又はそれらの混合物、好ましくは以下:アジピン酸、特にアゼライン酸、セバシン酸及びブラシル酸
b1-ii) 成分b1-i)及びb1-ii)に対して30~70mol%、好ましくは40~60mol%、特に好ましくは40~50mol%の芳香族ジカルボン酸又はそれらの混合物、好ましくは以下:テレフタル酸
b1-iii) 成分b1-i)及びb1-ii)に対して98~100mol%の1,4-ブタンジオール及び1,3-プロパンジオール、並びに
b1-iv) 成分b1-i)~b1-iii)に対して0~2質量%、好ましくは0.1~1質量%の鎖延長剤、特に二官能性又は多官能性イソシアネート、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネート、及び任意に分岐剤、好ましくはトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、特にグリセロール。
【0040】
適切な脂肪族二酸及び対応する誘導体b1-iは、一般に6~18個の炭素原子、好ましくは9~14個の炭素原子を有するものである。それらは直鎖状でも分岐状でもあってよい。
【0041】
例には、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、及びスベリン酸(スベリン酸)が含まれる。ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体は、個々に又はそれらの2つ以上の混合物として使用することができる。
【0042】
アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸又はそれらのそれぞれのエステル形成性誘導体又はそれらの混合物を使用することが好ましい。アゼライン酸もしくはセバシン酸、又はそれらのそれぞれのエステル形成性誘導体、又はそれらの混合物を使用することが特に好ましい。
【0043】
以下の脂肪族芳香族ポリエステルが特に好ましい:ポリブチレンアジペート-コ-テレフタレート(PBAT)、ポリブチレンアジペート-コ-アゼレートテレフタレート(PBAAzT)、ポリブチレンアジペート-コ-セバケートテレフタレート(PBASeT)、ポリブチレンアゼレート-コ-テレフタレート(PBAzT)及びポリブチレンセバケート-コ-テレフタレート(PBSeT)、並びにこれらのポリエステルの混合物。
【0044】
オーストラリア規格AS 5810-2010及びISO 14855-1(2012)に準拠した家庭での堆肥化適性の向上により、ポリブチレンアジペート-コ-アゼレートテレフタレート(PBAAzT)、ポリブチレンアジペート-コ-セバケートテレフタレート(PBASeT)、ポリブチレンアゼレート-コ-テレフタレート(PBAzT)及びポリブチレンセバケート-コ-テレフタレート(PBSeT)、並びにポリブチレンアジペート-コ-テレフタレート(PBAT)とポリブチレンアゼレート-コ-テレフタレート(PBAzT)及びポリブチレンセバケート-コ-テレフタレート(PBSeT)との混合物が特に好ましい。
【0045】
芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体b1-iiは、単独で又は2種以上の混合物として使用できる。エステル形成性誘導体、例えばテレフタル酸又はテレフタル酸ジメチルを使用することが特に好ましい。
【0046】
ジオールb1-iiiである1,4-ブタンジオール及び1,3-プロパンジオールは、再生可能な原料として利用できる。言及したジオールの混合物も使用できる。
【0047】
一般に、ポリエステルの合計質量に対して0~1質量%、好ましくは0.1~1.0質量%、特に好ましくは0.1~0.3質量%の分岐剤、及び/又はポリエステルの合計質量に対して0~1質量%、好ましくは0.1~1.0質量%の鎖延長剤(b1-vi)が使用される。使用される鎖延長剤は、好ましくは二官能性又は多官能性イソシアネート、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートであり、使用される分岐剤は、好ましくはポリオール、例えばトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、特にグリセロールである。
【0048】
ポリエステルb1は、一般に、5000~100000の範囲、特に10000~75000g/モルの範囲、好ましくは15000~38000g/モルの範囲の数平均分子量(Mn)を有し、30000~300000、好ましくは60000~200000g/モルの質量平均分子量(Mw)及び1~6、好ましくは2~4のMw/Mn比を有する。粘度数は50~450、好ましくは80~250g/mL(o-ジクロロベンゼン/フェノール(質量比50/50)で測定)である。融点は85~150℃の範囲、好ましくは95~140℃の範囲である。
【0049】
ポリエステルb1のEN ISO 1133-1 DEによるMVR(溶融体積速度)(190℃、2.16kg質量)は、一般に0.5~20、好ましくは5~15cm3/10分である。DIN EN 12634による酸価は、一般に0.01~1.2mg KOH/g、好ましくは0.01~1.0mg KOH/g、特に好ましくは0.01~0.7mg KOH/gである。
【0050】
一般に、チョーク、グラファイト、石膏、カーボンブラック、酸化鉄、硫酸カルシウム、ドロマイト、カオリン、二酸化ケイ素(石英)、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、ケイ酸塩、ワラストナイト、マイカ、モンモリロナイト、タルクからなる群から選択される、層Bの合計質量に対して、0~25質量%、特に3~20質量%の少なくとも1つの無機充填剤b3が使用される。好ましい無機充填剤は、二酸化ケイ素、カオリン及び硫酸カルシウムであり、特に好ましくは、炭酸カルシウム及びタルクである。
【0051】
層Bの好ましい実施形態は、以下を含む:
b1) 60~100質量%、好ましくは60~99.95質量%の、ポリブチレンアジペートコテレフタレート、ポリブチレンアゼレートコテレフタレート、ポリブチレンセバケートコテレフタレートからなる群から選択される脂肪族芳香族ポリエステル、
b2) 0~15質量%、好ましくは3~12質量%のポリヒドロキシアルカノエート、好ましくはポリ乳酸、
b3) 0~25質量%、好ましくは3~20質量%の無機充填剤。
【0052】
層Bは、特に好ましくはさらに
b4)エルカ酸アミド及びステアリン酸アミドから選択される0.05~0.3質量%の潤滑剤
を含む。
【0053】
一実施形態において、層Bは潤滑剤も離型剤も含まない。この実施形態は、150μmの層厚さまでの層Aとの非常に良好な適合性を有し、その結果、紙又はボール紙のような基材へのラミネートフィルムの接着が非常に良好である。これは、紙又はボール紙からフィルムを剥がそうとすると、繊維の破れが発生することを示す。
【0054】
さらなる実施形態において、層Bは、層Bの合計質量に対して0.05~0.3質量%の滑剤又は離型剤、例えばエルクアミド又は好ましくはステアリン酸アミドを含有する。潤滑剤又は離型剤は、特にブロッキング防止剤と併用して、ポリエステルフィルムを広げる際のブロッキングを防止し、さらなる工程でラミネートするために使用できる。このラミネート体はポリエステルを含む層を有しており、必要に応じて後でラミネート体を変形させることができる。この実施形態は、層厚50μmまで、ステアリン酸アミドの場合には80μmまでの層Aと非常に良好な適合性を有し、その結果、紙又はボール紙のような基材へのラミネートフィルムの接着力が非常に良好である。これは、紙又はボール紙からフィルムを剥がそうとすると繊維の破れが発生することからも明らかである。しかしながら、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミドのような潤滑剤又は離型剤が層Bに0.3質量%を超える濃度で使用される場合、層Aとの相溶性が不十分になることが観察される。層Bがステアリン酸アミドを含む場合、層Bは、好ましくは5~50μm、好ましくは10~50μmの厚さを有する。層Bがエルク酸アミドを含む場合、層の厚さは5~80μmの範囲が好ましく、5~50μmの範囲がより好ましく、10~50μmの範囲が特に好ましい。
【0055】
さらに、本発明による成分i~vの化合物は、当業者に公知の他の添加剤を含有してよい。例えば、プラスチック産業で一般的に使用される安定剤のような添加剤;前記無機充填剤b3又は結晶性ポリ乳酸のような核剤;ステアリン酸塩(特にステアリン酸カルシウム)のような固結防止剤;クエン酸エステル(特にクエン酸アセチルトリブチル)のような可塑剤;トリアセチルグリセロール又はエチレングリコール誘導体のようなグリセリン酸エステル、ポリソルベート、パルミチン酸塩又はラウリン酸塩のような界面活性剤;帯電防止剤、紫外線吸収剤;紫外線安定剤;防曇剤、顔料、又は好ましくは生分解性染料であるBASF SE社製のSicoversal(登録商標)を含む。添加剤は、層Bに対して0~2質量%、特に0.1~2質量%の濃度で使用される。可塑剤は、本発明による層B中に0.1~10質量%で含んでよい。
【0056】
食品業界のフレキシブル包装について、酸素バリア及び香りバリアに対して高い要求がある。本明細書で追加のバリア層Cを備えた層構造が有利であることが証明されている。適切な層構造は、例えばA/B/C/Bであり、ここで、層A及びBは前記意味を有し、層Cは、ポリグリコール酸(PGA)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、又は好ましくはポリビニルアルコール(PVOH)からなるバリア層を表す。
【0057】
酸素バリア層Cは、通常2~10μmの層厚を有し、ポリビニルアルコールからなることが好ましい。適切なPVOHは、例えば、三菱化学社製のGポリマー、特にGポリマーBVE8049である。PVOHはバイオポリマー層Bに十分に接着しないため、バリア層は、個々の層C’/C/C'から構成されることが好ましく、ここで層C’は接着促進層を表す。接着促進剤として、例えば三菱化学社製のコポリマーBTR-8002Pが適している。接着促進層の層厚は通常2~6μmである。これらの場合、ラミネートフィルム全体は、例えば、A/B/C’/C/C’/B又はB’の層構成を有する。
【0058】
さらなる適切な層構造はA/B/C/B’であり、ここで、層A、B及びCは上記の意味を有し、層B’は、10~100μmの層厚を有し、層Bについて記載した成分に加えて、潤滑剤又は離型剤として、層B’の合計質量に対して、0.1~0.5質量%、好ましくは0.2~0.5質量%のエルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、又は好ましくはベヘン酸アミドを含む。
【0059】
本発明によるラミネートフィルムは、生分解性フィルム、金属箔、金属化フィルム、セロファン、又は好ましくは紙製品からなる群から選択される基材の複合フィルムのラミネート加工のために使用される。
【0060】
本発明の目的上、「紙製品」という用語には、あらゆる種類の紙及びボール紙が含まれる。
【0061】
前記紙製品の製造に適した繊維は、一般的に使用される全ての種類、例えば、機械パルプ、漂白及び未漂白化学パルプ、全ての一年生植物からの紙パルプ及び古紙(被覆又は非被覆のいずれかのスクラップの形である)である。前記繊維は、紙製品の原料となるパルプを製造するために、単独で又はそれらの混合物の形で使用できる。機械パルプという用語には、例えば、木材パルプ、熱機械パルプ(TMP)、化学熱機械パルプ(CTMP)、圧縮木材パルプ、半化学パルプ、高収率化学パルプ及びリファイナーメカニカルパルプ(RMP)が含まれる。適切な化学パルプの例としては、硫酸パルプ、亜硫酸パルプ、ソーダパルプが挙げられる。紙パルプの製造に適した一年草の例としては、米、小麦、サトウキビ及びケナフがある。
【0062】
いずれの場合も紙パルプの固形分含量に対して、0.01~3質量%、好ましくは0.05~1質量%の量の糊がパルプに通常添加されるが、これは仕上げられる紙の所望のサイジングの程度によって異なる。紙は、他の物質、例えばデンプン、顔料、染料、蛍光増白剤、殺生物剤、紙力増強剤、定着剤、消泡剤、保持剤及び/又は脱水助剤を含んでよい。
【0063】
製造される複合フィルムは、好ましくは以下の構造を有する:
i) 坪量30~600g/m2、好ましくは40~400g/m2、特に好ましくは50~150g/m2の紙、
ii) 5.5~300μm、好ましくは10~150μm、特に好ましくは15~100μmの総厚を有する本発明によるラミネートフィルム。
【0064】
紙層については、種々材料、例えば白色又は茶色のクラフトライナー、セルロース、古紙、段ボール、スクリーンを使用できる。
【0065】
紙フィルム複合体の総厚は、通常、31~1000g/m2である。好ましくは、ラミネート加工によって80~500μmの紙フィルム複合体を製造することができ、特に好ましくは押出コーティングによって50~300μmの紙フィルム複合体を製造することができる。
【0066】
本発明によるラミネートフィルム及び基材からの複合フィルムの製造は、好ましくはいくつかのステップで実施される:最初に、好ましくは、i) 層Bの表面をコロナ処理によって活性化し、ii) ポリウレタン接着剤の水性分散液を塗布し、乾燥させ、iii) 得られた請求項1~7のラミネートフィルムを、適切なローラー圧力を使用してA面を有する基材上に押し付ける。
【0067】
ポリマー分散液Aでコーティングする前の層Bの表面処理は、必ずしも必要ではない。しかしながら、コーティングプロセスの前に層Bの表面を改質すると、より良い結果が得られる。接着効果を高めるために、従来の表面処理、例えばコロナ処理を本明細書で使用できる。コロナ処理又は他の表面処理は、コーティング組成物との十分な濡れ性を得るために必要な程度に実施される。この目的のために、通常、毎分1平方メートルあたり約10ワットのコロナ処理で十分である。代替的又は追加的に、プライマー又は中間層を層Bと接着剤コーティングAの間に使用することもできる。言及したように、複合フィルム、特にラミネートフィルムは、他の追加の機能層、例えばバリア層、印刷層、着色層又はラッカー層又は保護層を含んでもよい。機能層の位置は、好ましくは外側、すなわち接着剤が塗布された側とは反対側の層Bの側にあってよい。
【0068】
本発明による複合フィルム内で、ラミネートフィルムが対応するバリア効果を発揮するため、基材(例えば、紙)は、鉱油及び他のタイプの油、並びにグリース及び水分からの保護を有する。一方で、ラミネートフィルムを食品包装に使用する場合、ラミネートフィルムがこのバリア効果を発揮するため、食品は、例えば、古紙中に存在する鉱物油や鉱物物質から保護される。ラミネートフィルムは、紙、ボール紙、セロファン、金属だけでなく、それ自体に溶着できるため、例えばコーヒーカップ、飲料用カートン、冷凍製品用カートンの製造にも使用できる。
【0069】
複合フィルムは、乾燥食品、例えばコーヒー、紅茶、粉末スープ、粉末ソース用の紙袋の製造;液体、例えば化粧品、洗剤、飲料;管状ラミネート体;紙製キャリーバッグ、アイスクリーム、菓子類(例えばチョコレート及びミューズリーバー)用の紙ラミネート及び共押出物、及び紙粘着テープ;紙コップ、ヨーグルトカップ;調理済みの食事の皿;ラップされた段ボール包装(缶、ドラム缶)、外装用の耐湿性箱(ワインボトル、食品又は飲料製品);コーティングされたボードで作られたフルーツボックス;ファーストフードのプレート;クラムシェルボックス;飲料用カートン及び液体用カートン(洗濯及びクリーニング製品など)、冷凍製品用の箱、アイスクリームの包装(アイスクリームカップ、包装材など)、例えばアイスクリームカップ、円錐形アイスワッフルの包装材);紙ラベル;植木鉢と植木鉢の製造のために特に適している。
【0070】
押出コーティングプロセスを使用してラミネートフィルムを基材に適用することが有利であってよい。中間層としては、前記水性ラミネート接着剤(ポリマー分散液A)が塗布される。押出コーティングプロセスでラミネート用接着剤を使用する利点は、押出温度を下げることができることである。穏やかな条件を使用することでエネルギーを節約し、生分解性ポリマー、好ましくは家庭で堆肥化できるポリマーの分解を防ぐ。
【0071】
分散コーティングは塗布前に加熱する必要がない。塗布技術は、シート状コーティングに関してはホットメルト接着剤に匹敵する。塗布速度は非常に速く、最大3000m/分である。したがって、分散コーティングプロセスは、抄紙機のライン上で実施できる。
【0072】
薄層の場合に、押出コーティングプロセス又は分散塗布プロセスの特殊な場合として、層Aをホットメルトの形で塗布することも可能である。このプロセスは、Ullmann、TSE Troller Coatingに記載されている。ホットメルト接着剤は、約150~200℃に予熱した保管容器からノズルにポンプで注入され、そこから材料が表面に塗布される。
【0073】
本発明に従って製造される複合フィルムは、フレキシブル包装、特に食品包装の製造に特に適している。
【0074】
したがって、本発明は、生分解性であるか、又は好ましくは家庭用堆肥条件下で生分解性である複合フィルムを製造するための本明細書に記載のラミネートフィルムの使用を提供し、ここで、複合フィルムは家庭用堆肥化可能なフレキシブル包装の一部である。
【0075】
本発明の利点は、本発明に従って使用されるラミネートフィルムが、基材と層Bのような異なる材料間の良好な接着結合を可能にし、結合した複合材料に高レベルの強度を与えることである。本発明に従って製造された複合フィルムは、良好な生分解性、特に家庭での堆肥化適性も有する。
【0076】
本発明の目的において、物質又は物質の混合物についての「生分解性」という特徴は、この物質又は物質の混合物が、DIN EN 13432に従って180日後に少なくとも90%の生分解性の程度を有する場合に満たされる。
【0077】
一般に、生分解性は、ポリエステル(混合物)が妥当な検出可能な期間内に分解されることを意味する。分解は、酵素的、加水分解的、酸化的、及び/又は電磁放射線、例えば紫外線の作用によって起こり、通常は主に細菌、酵母、菌類、藻類のような微生物の作用によって引き起こされる。生分解性は、例えばポリエステルと堆肥を混合し、一定期間保存することで定量化できる。例えば、DIN EN 13432(ISO 14855を参照)に従って、CO2を含まない空気が堆肥化中に成熟堆肥に流れ、規定の温度プログラムにさらされる。ここで、生分解性は、試料の正味CO2放出量(試料を含まない堆肥によるCO2放出量を差し引いた後)と試料の最大CO2放出量(試料の炭素含有量から計算)との比によって定義される。生分解の割合が定義されている。生分解性ポリエステル(混合物)は、通常、堆肥化してからわずか数日後に、菌類の増殖、ひび割れ、穴の形成のような劣化の明らかな兆候を示す。
【0078】
生分解性を測定するための他の方法は、例えば、ASTM D 5338及びASTM D 6400-4に記載されている。
【0079】
本発明は、好ましくは、家庭用堆肥条件(25±5℃)下で生分解性であるラミネートフィルム、又はこれらのラミネートフィルムを含む複合フィルムを提供する。家庭用堆肥条件は、ラミネートフィルム又は複合フィルムが360日以内にCO2と水中で90質量%以上に分解されることを意味する。
【0080】
家庭での堆肥化適性は、オーストラリア規格AS 5810-2010又はフランス規格NF T 51-800又はISO 14855-1(2012)「Determination of the ultimate aerobic biodegradability of plastic materials under controlled composting conditions - Method by analysis of evolved carbon dioxide」に従って周囲温度(28±2℃)で試験され、ISO規格 14855-1(2012)に記載されている58℃の温度ではなく、家庭での堆肥化条件をシミュレートする。
【0081】
特徴:
ガラス転移温度を、示差走査熱量測定法(ASTM D 3418-08、第二の加熱曲線の「中間点温度」、加熱速度20K/分)を使用して測定した。
【0082】
融点及び融解エンタルピーを、DIN 53765 (1994)(融点=ピーク温度)に従って、ポリウレタンフィルムを120℃に加熱した後、20K/分で加熱し、23℃まで20K/分で冷却し、そこで20時間熱処理することにより測定する。
【0083】
出発材料
層Aの成分)
a-1) BASF SE社製のEpotal(登録商標)Eco 3702、水性ポリウレタン分散液(PCT/EP2021/054570号を参照)
a-2) BASF SE社製のEpotal(登録商標)P100eco、水性ポリウレタン分散液(国際公開第2010/034712号を参照)。
【0084】
層B)の成分
成分b1):
b1-1) ポリブチレンアジペートコテレフタレート:BASF SE社製のecoflex(登録商標)F C1200(2.5~4.5cm3/10分のMVR(190℃、2.16kg))
b1-2) ポリブチレンセバケートコテレフタレート:BASF SE社製のecoflex(登録商標)FS C2200(3~5cm3/10分のMVR(190℃、5kg))
成分b2)
b2-1) ポリ乳酸:NatureWorks社製の(PLA)Ingeo(登録商標)4044 D(1.5~3.5cm3/10分のMVR(190℃、2.16kg))
成分b3)
b3-1) Elementis社製のPlustalc H05C
b3-2) Omya社製の炭酸カルシウム
成分b4)
b4-1) エルカ酸アミド:Croda International Plc社製のCrodamideTM ER
b4-2) ステアリン酸アミド:Croda社製のCrodamide SRV
b4-3) ベヘン酸アミド:Croda社製のCrodamide BR
成分b5)
b5-1) Joncryl(登録商標)ADR 4468、BASF SE社製のグリシジルメタクリレート。
【0085】
C)層の成分
c-1(C’) 三菱化学社製のBTR-8002P接着促進剤
c-2 三菱化学製社製のGポリマーBVE8049 PvOH。
【0086】
B層の配合
表1に示す化合物をCoperion MC 40押出機で製造した。出口温度を250℃に設定した。続いて押出物を水中で造粒した。造粒後、顆粒を60℃で乾燥した。
【0087】
フィルム製造のためのブローフィルムプラントの説明:
ブローフィルムプラントは、直径30mm及び長さ25Dの一軸スクリュー押出機、直径80mm及びダイギャップ0.8mmのスパイラルマンドレルディストリビュータから構成されていた。膨張率は通常3.5であり、フィルムチューブの横幅は約440mmである。
【0088】
多層フィルムを同時押出によって製造した。
【0089】
【0090】
表1及び表2中のVは比較例を意味する。
【0091】
【0092】
※ラミネートフィルムの基材(紙)に対する密着性を以下のように測定した:
ベースフィルムBを、コロナ処理した面を上向きにして実験用塗布台に固定し、試験する接着剤をナイフでフィルムに直接塗布した。接着剤Aを熱風送風機で2分間乾燥させた後、ラミネートフィルムをハンドローラーで塗布し、70℃、ローラー速度5m/分及びラミネート圧力6.5barで50gsm~130gsmの厚さの紙にローラーラミネートステーションで圧着した。続いてこのラミネートを、切断鋳型を用いて幅15mmのストリップに切断し、種々の保管サイクルにかけた。保管後、ラミネートストリップを引張試験機で引き離し、必要な力を記録した。試験は引張試験機を使用し、90度の角度及び100mm/分の引き剥がし速度で行った。試験ストリップの片側を切り開き、緩んだ端の一方を引張試験機の上部クランプに、もう一方を下部クランプに固定し、試験を開始した。
【0093】
表2の最後の列に示されている評価(+)は、次を意味する:>0.6N/15mmの力での繊維の引き抜き。
【0094】
最後の列に示されている評価(-)は、次を意味する:>0.6N/15mmの力で繊維の引き抜きがないこと。
【0095】
表2に示す試験から、層中に脱型剤b4を含まないラミネートフィルムは、ラミネートフィルムの総層厚が約150μmまで、紙基材に対して非常に良好な接着性を示すことがわかる。脱型剤としてエルカ酸アミドb4-1又はステアリン酸アミドb4-2を0.3質量%の濃度まで使用すると、ラミネートフィルムの総層厚が約50~60μmになるまで、紙基材に対して非常に良好な接着性が得られる。一方、脱型剤としてベヘン酸アミドb4-3を0.2~0.3質量%の濃度、又はステアリン酸を0.4質量%の濃度で使用した場合、ラミネートフィルムの厚さが10~17μmになると、紙への接着性はすでに不十分である。
【0096】
家庭での堆肥化試験
家庭での堆肥化適性は、フランス規格NF T 51-800又はISO 14855-1(2012)「Determination of the ultimate aerobic biodegradability of plastic materials under controlled composting conditions - Method by analysis of evolved carbon dioxide」に従って周囲温度(28±2℃)で試験され、記載されている58℃の温度ではなく、家庭での堆肥化条件をシミュレートする。
【0097】
実施例4及び12の厚さ約60μmのラミネートフィルムの家庭での堆肥化適性を上記の条件下で試験したところ、それぞれ116日及び157日後にフィルムの完全(>90%)分解が観察された。したがって、これらのフィルムは、オーストラリア規格AS 5810-2010及びISO 14855-1(2012)に基づく家庭での堆肥化可能性の基準を満たしている。したがって、層構造A/B及び層Bの組成:I、V~XI(表1を参照)の薄いフィルムも家庭で堆肥化できると考えられる。
【国際調査報告】