(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ヒト第VIII因子の選択的測定
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240910BHJP
G01N 33/86 20060101ALI20240910BHJP
G01N 33/52 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/86
G01N33/52 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508710
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 IB2021000578
(87)【国際公開番号】W WO2023021311
(87)【国際公開日】2023-02-23
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116540
【氏名又は名称】河野 香
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー,アルフレット
(72)【発明者】
【氏名】グリッチェ,ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】シュレンク,ゲラルド
(72)【発明者】
【氏名】ビルヴァイン,マンフレット
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルマイヤー,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ツラビンガー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ドチカル,ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA10
2G045FB03
2G045FB11
2G045FB15
(57)【要約】
ヒト凝固第VIII因子(FVIII)の選択的かつ感度の高い活性測定のための方法及びキットが本明細書に記載される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のヒト凝固第VIII因子(FVIII)の活性を測定するための方法であって、
a)前記試料を、前記ヒトFVIIIに選択的に結合する捕捉剤と、前記捕捉剤が前記ヒトFVIIIに選択的に結合することを可能にするのに十分な条件下及び時間にわたってインキュベートするステップであって、それによって反応混合物を形成し、前記捕捉剤が、固体支持体に結合している、前記ステップと、
b)前記反応混合物からヒトFVIIIの非結合画分を除去するステップと、
c)発色アッセイを使用して、前記反応混合物中の前記ヒトFVIIIの活性を測定するステップと、を含む、前記方法。
【請求項2】
d)FVIII参照調製物と比較することによって、前記反応混合物中の前記ヒトFVIIIの活性を決定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発色アッセイが、
c1)前記反応混合物に、活性化第IX因子(FIXa)、第X因子(FX)、カルシウムイオン、リン脂質、及びトロンビンを添加し、前記反応混合物を、活性化FX(FXa)を生成するのに十分な条件下及び時間にわたってインキュベートすることと、
c2)前記反応混合物に、FXa特異的発色基質を添加し、前記反応混合物を、測定可能なシグナルを生成するのに十分な条件下及び時間にわたってインキュベートすることと、
c3)任意に、前記反応混合物に、停止剤を添加して、前記FXa特異的発色基質からのシグナル生成を停止することと、
c4)前記反応混合物から生成された前記シグナルを測定することと、によって行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記発色基質が、CH
3OCO-D-シクロヘキシルアラニン-Gly-Arg-pNAである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記停止剤が、酢酸である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記捕捉剤が、ヒトFVIIIのA1、A2、A3、B、C1、またはC2ドメインに選択的に結合する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記捕捉剤が、ヒトFVIIIの前記A2ドメインに選択的に結合する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記捕捉剤が、ヒトFVIIIの前記Bドメインに結合しない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記捕捉剤が、抗体、抗原結合断片、アフィボディ、アプタマー、またはアフィニティリガンドである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
捕捉抗体が、GMA-8024、GMA-8023、またはその抗原結合断片もしくはバリアントである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試料が、非ヒト動物由来の血漿及び/または血清を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記非ヒト動物が、実験動物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記非ヒト動物が、ヒツジ、ヤギ、カニクイザル、ウサギ、ラット、アカゲザル、マウス、ブタ、ハムスター、ミニピッグ、またはモルモットである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記試料が、クエン酸血漿を含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記試料が、1つ以上のFVIII活性模倣剤を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記FVIII活性模倣剤が、抗体、抗原結合断片、ペプチド、核酸、または小分子である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記FVIII活性模倣剤が、二重特異性抗体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記二重特異性抗体が、エミシズマブである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記試料が、ステップa)の前に希釈される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記試料が、1:1~約1:100,000倍希釈される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記試料が、1:2~約1:20,000倍希釈される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記試料が、約1:10倍希釈される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記固体支持体が、フラスコ、ELISAプレート、マルチウェルプレート、フィルム、チューブ、シート、カラム、またはミクロ粒子である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
ステップa)における前記インキュベーションが、室温で約1時間にわたって行われる、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
ステップc1)における前記インキュベーションが、室温で約15分にわたって行われる、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ステップc2)における前記インキュベーションが、室温で約25分にわたって行われる、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
ステップb)におけるヒトFVIIIの非結合画分の前記除去が、前記固体支持体を洗浄緩衝液で洗浄することによって行われる、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ステップb)におけるヒトFVIIIの非結合画分の前記除去が、前記固体支持体をPBS-Tween緩衝液で約3回洗浄することによって行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ヒトFVIIIが、組換えFVIIIである、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ヒトFVIIIが、全長FVIIIである、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ヒトFVIIIが、Bドメイン欠失FVIIIである、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
試料中のヒト凝固第VIII因子(FVIII)の活性を測定するためのキットであって、
i.前記ヒトFVIIIに選択的に結合する捕捉剤であって、前記捕捉剤が、固体支持体に結合している、前記捕捉剤、
ii.活性化第IX因子(FIXa)、第X因子(FX)、カルシウムイオン、リン脂質、及びトロンビンのうちの1つ以上を含む、第1のバイアル、
iii.FXa特異的発色基質を含む、第2のバイアル、及び/または
iv.任意に、停止剤を含む、第3のバイアルを含む、前記キット。
【請求項33】
前記捕捉剤が、ヒトFVIIIのA1、A2、A3、B、C1、またはC2ドメインに選択的に結合する、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
前記捕捉剤が、ヒトFVIIIの前記A2ドメインに選択的に結合する、請求項32または33に記載のキット。
【請求項35】
前記捕捉剤が、ヒトFVIIIの前記Bドメインに結合しない、請求項32または33に記載のキット。
【請求項36】
前記捕捉剤が、抗体、抗原結合断片、アフィボディ、アプタマー、またはアフィニティリガンドである、請求項32~35のいずれか一項に記載のキット。
【請求項37】
捕捉抗体が、GMA-8024、GMA-8023、またはその抗原結合断片もしくはバリアントである、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
前記固体支持体が、フラスコ、ELISAプレート、マルチウェルプレート、フィルム、チューブ、シート、カラム、またはミクロ粒子である、請求項32~37のいずれか一項に記載のキット。
【請求項39】
前記発色基質が、CH
3OCO-D-シクロヘキシルアラニン-Gly-Arg-pNAである、請求項32~38のいずれか一項に記載のキット。
【請求項40】
前記停止剤が、酢酸である、請求項32~39のいずれか一項に記載のキット。
【請求項41】
反応緩衝液、FVIII希釈緩衝液、洗浄緩衝液、及び/またはFVIII参照調製物のうちの1つ以上を更に含む、請求項32~40のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、発色ベースアッセイの分野に関し、より具体的には、血漿及び他の流体中の第VIII因子(FVIII)凝固促進活性の測定のための発色ベースアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
血漿または他の流体中の治療的に投与される第VIII因子(FVIII)の凝固促進活性を選択的に測定する能力は、第VIII因子置換処理アプローチを調査するために不可欠である。ヒトFVIII薬物候補の試験及び開発、または代替投与経路の評価中、正常レベルの内因性FVIIIを有する動物モデルにおいてそれらを試験することがしばしば必要とされる。しかしながら、ヒトFVIIIを定量化し、動物宿主モデルの内因性FVIIIから十分な正確性及び精度で区別することは困難である。内因性非ヒトFVIIIの存在は、薬物動態試験分析に潜在的にバイアスをかけ得るだけでなく、特定の製造プロセス関連添加物もまた、アッセイ性能に影響を与え得る。例えば、ウイルス不活性化プロセス中に使用される溶媒/洗剤混合物は、アッセイに干渉し得る。
【0003】
したがって、非ヒトFVIIIを含有する動物血漿の存在下、または製造関連添加物の存在下、ヒトFVIIIの選択的かつ感度の高い活性測定を可能にするアッセイの必要性は満たされていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ヒト凝固第VIII因子(FVIII)の選択的かつ感度の高い活性測定を可能にする方法及びキットが本明細書に記載される。方法は、別の動物由来の内因性FVIII及び/または他の製造関連添加剤の存在下でも、ヒトFVIIIに選択的に結合するFVIII認識捕捉剤を利用する。
【0005】
一態様において、試料中のヒト凝固第VIII因子(FVIII)の活性を測定するための方法であって、
a)試料を、ヒトFVIIIに選択的に結合する捕捉剤と、捕捉剤がヒトFVIIIに選択的に結合することを可能にするのに十分な条件下及び時間にわたってインキュベートするステップであって、それによって反応混合物を形成し、捕捉剤が、固体支持体に結合している、ステップと、
b)反応混合物からヒトFVIIIの非結合画分を除去するステップと、
c)発色アッセイを使用して、反応混合物中のヒトFVIIIの活性を測定するステップと、を含む、方法が本明細書に提供される。
【0006】
いくつかの実施形態において、方法は、d)FVIII参照調製物と比較することによって、反応混合物中のヒトFVIIIの活性を決定することを更に含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、発色アッセイは、
c1)反応混合物に、活性化第IX因子(FIXa)、第X因子(FX)、カルシウムイオン、リン脂質、及びトロンビンを添加し、反応混合物を、活性化FX(FXa)を生成するのに十分な条件下及び時間にわたってインキュベートすることと、
c2)反応混合物に、FXa特異的発色基質を添加し、反応混合物を、測定可能なシグナルを生成するのに十分な条件下及び時間にわたってインキュベートすることと、
c3)任意に、反応混合物に、停止剤を添加して、FXa特異的発色基質からのシグナル生成を停止することと、
c4)反応混合物から生成されたシグナルを測定することと、によって行われる。
【0008】
いくつかの実施形態において、発色基質は、CH3OCO-D-シクロヘキシルアラニン-Gly-Arg-pNAである。
【0009】
いくつかの実施形態において、停止剤は、酢酸である。
【0010】
いくつかの実施形態において、捕捉剤は、ヒトFVIIIのA1、A2、A3、B、C1、またはC2ドメインに選択的に結合する。いくつかの実施形態において、捕捉剤は、ヒトFVIIIのA2ドメインに選択的に結合する。いくつかの実施形態において、捕捉剤は、ヒトFVIIIのBドメインに結合しない。いくつかの実施形態において、捕捉剤は、抗体、抗原結合断片、アフィボディ、アプタマー、またはアフィニティリガンドである。
【0011】
いくつかの実施形態において、捕捉抗体は、GMA-8024、GMA-8023、またはその抗原結合断片もしくはバリアントである。
【0012】
いくつかの実施形態において、試料は、非ヒト動物由来の血漿及び/または血清を含む。いくつかの実施形態において、非ヒト動物は、実験動物である。いくつかの実施形態において、非ヒト動物は、ヒツジ、ヤギ、カニクイザル、ウサギ、ラット、アカゲザル、マウス、ブタ、ハムスター、ミニピッグ、またはモルモットである。いくつかの実施形態において、試料は、クエン酸血漿を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、試料は、ステップa)の前に希釈される。試料は、1:2~約1:20000倍希釈され得る。一実施形態において、試料は、約1:10倍希釈される。
【0014】
いくつかの実施形態において、固体支持体は、フラスコ、ELISAプレート、マルチウェルプレート、フィルム、チューブ、シート、カラム、またはミクロ粒子である。
【0015】
いくつかの実施形態において、ステップa)におけるインキュベーションは、室温で約1時間行われる。
【0016】
いくつかの実施形態において、ステップc1)におけるインキュベーションは、室温で約15分間行われる。
【0017】
いくつかの実施形態において、ステップc2)におけるインキュベーションは、室温で約25分間行われる。
【0018】
いくつかの実施形態において、ステップb)における非結合ヒトFVIIIの除去は、固体支持体を洗浄緩衝液で洗浄することによって行われる。いくつかの実施形態において、ステップb)における非結合ヒトFVIIIの除去は、固体支持体をPBS-Tween緩衝液で約3回洗浄することによって行われる。
【0019】
様々な実施形態において、ヒトFVIIIは、組換えFVIIIである。いくつかの実施形態において、ヒトFVIIIは、全長FVIIIである。いくつかの実施形態において、ヒトFVIIIは、Bドメイン欠失FVIIIである。
【0020】
一態様において、試料中のヒト凝固第VIII因子(FVIII)の活性を測定するためのキットであって、
i.ヒトFVIIIに選択的に結合する捕捉剤であって、捕捉剤が、固体支持体に結合している、捕捉剤、
ii.活性化第IX因子(FIXa)、第X因子(FX)、カルシウムイオン、リン脂質、及びトロンビンのうちの1つ以上を含む、第1のバイアル、
iii.FXa特異的発色基質を含む、第2のバイアル、及び/または
iv.任意に、停止剤を含む、第3のバイアルを含む、キットが本明細書に提供される。
【0021】
上述されるキットのいくつかの実施形態において、捕捉剤は、ヒトFVIIIのA1、A2、A3、B、C1、またはC2ドメインに選択的に結合する。上述されるキットのいくつかの実施形態において、捕捉剤は、ヒトFVIIIのA2ドメインに選択的に結合する。上述されるキットのいくつかの実施形態において、捕捉剤は、ヒトFVIIIのBドメインに結合しない。いくつかの実施形態において、捕捉剤は、抗体、抗原結合断片、アフィボディ、アプタマー、またはアフィニティリガンドである。いくつかの実施形態において、捕捉抗体は、GMA-8024、GMA-8023、またはその抗原結合断片もしくはバリアントである。
【0022】
上述されるキットのいくつかの実施形態において、固体支持体は、フラスコ、ELISAプレート、マルチウェルプレート、フィルム、チューブ、シート、カラム、またはミクロ粒子である。いくつかの実施形態において、発色基質は、CH3OCO-D-シクロヘキシルアラニン-Gly-Arg-pNAである。いくつかの実施形態において、停止剤は、酢酸である。
【0023】
キットのいくつかの実施形態は、反応緩衝液、FVIII希釈緩衝液、洗浄緩衝液、及び/またはFVIII参照調製物のうちの1つ以上を更に含み得る。
【0024】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する、添付の図面は、以下に記載されるいくつかの態様を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に従う発色FVIII活性アッセイの概略図を示す。CHA及びpNAは、それぞれ、シクロヘキシルアラニン及びp-ニトロフェニルアニリドを表す。
【
図2】188、94、及び47mU/mLのBドメイン欠失(BDD)rFVIII濃度について得られたブランク補正光学密度(OD)を示す。本発明の発色FVIII活性アッセイの一実施形態に従って試験された異なる捕捉抗体のmIU/mLで測定されたFVIII活性。左から右へ、抗FVIII捕捉抗体は、GMA-8024、GMA-8023、GMA-012、ESH-8、ESH-4、RFF-VIIIC/8、RFF-VIIIC/5、及びN55195Mである。
【
図3】平均較正曲線及びバックフィットアッセイ較正のそれらの公称値との一致を示す。エラーバーは、平均の単一標準偏差を示す。
【
図4】BDD rFVIII調製物を使用することによって得られた平均較正曲線及びバックフィットアッセイ較正のそれらの公称値との一致を示す。エラーバーは、平均の単一標準偏差を示す。
【
図5】クエン酸動物血漿種にスパイクされたヒトFVIII(100mU/mL)について決定された個々の回収率を示す。カラム上部の数字は、スパイクされた100mU/mLのパーセントとしての回収率を示す。
【
図6】動物血清試料にスパイクされたヒトFVIII(100mU/mL)について決定された回収率を示す。カラム上部の数字は、スパイクされた100mU/mLのパーセントとしての回収率を示す。
【
図7】クエン酸ヤギ、ヒツジ、及びカニクイザル血漿にスパイクされたヒトFVIIIについての用量-応答曲線を示す。インサートは、緩衝液希釈系列について決定されたもののパーセントとして与えられる、二重対数濃度-応答曲線の相対勾配、及び曲線の対応する決定係数を示す。
【
図8】クエン酸ウサギ及びラット血漿ならびにマウス血清にスパイクされたヒトFVIIIについての用量-応答曲線を示す。インサートは、緩衝液希釈系列について決定されたもののパーセントとして与えられる、二重対数濃度-応答曲線の相対勾配、及び曲線の対応する決定係数を示す。
【
図9】クエン酸アカゲザル血漿及びモルモット血清にスパイクされたヒトFVIIIについての用量-応答曲線を示す。インサートは、緩衝液希釈系列について決定されたもののパーセントとして与えられる、二重対数濃度-応答曲線の相対勾配、及び曲線の対応する決定係数を示す。
【
図10】ブタ及びハムスター血清にスパイクされたヒトFVIIIについての用量-応答曲線を示す。インサートは、緩衝液希釈系列について決定されたもののパーセントとして与えられる、二重対数濃度-応答曲線の相対勾配、及び曲線の対応する決定係数を示す。
【
図11】A~Dは、経時的なアッセイの中間精度及び頑健性を実証するために、6ヶ月の期間にわたって3人のオペレーターによって実施された、108の測定のデータを示す。A及びBは、それぞれ、全ての個々の値及び3人のオペレーターの値を示す(平均±SD)一方で、C及びDは、QQプロット(C)及びヒストグラム(D)の形態でデータを提示する。
【
図12】溶媒洗剤(S/D)溶液、すなわち、1%のTriton X100、0.3%のポリソルベート80、及び0.3%の溶媒洗剤(S/D)の存在下、10IU ヒトFVIII/mL、ならびにPBS緩衝液中の同じFVIII濃度(=天然FVIII)を含有する試料について得られた濃度-応答曲線を示す。インサートは、天然FVIIIについて決定された勾配のパーセントとして表される、希釈-応答曲線の相対勾配、及びそれらの変動係数を示す。
【
図13】溶媒洗剤(S/D)溶液、すなわち、1%のTriton X 100、0.3%のポリソルベート80、及び0.3%の溶媒洗剤(S/D)の存在下、1IU/mLのFVIII濃度、ならびに10倍低い試料希釈を必要とし、よって抗体ベースFVIII捕捉中のS/D成分のレベルを著しく増加させる、PBS緩衝液中の同じFVIII濃度(=天然FVIII)を使用して得られた濃度-応答曲線を示す。インサートは、天然FVIIIについて決定された勾配のパーセントとして表される、希釈-応答曲線の相対勾配、及びそれらの変動係数を示す。
【
図14】S/D溶液中の3つのレベルのヒトFVIII(10、1、及び0.1IU/mL)及びS/D溶液の個々の成分の回収率を示す。
【
図15】S/Dウイルス不活性化溶液の個々の成分の存在下でのアッセイ性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本出願は、とりわけ、試料中のヒト凝固第VIII因子(FVIII)の凝固促進活性を測定するための方法及びキットを提供する。以下の実施例セクションにおいて実証されるように、本発明者らは、ヒト第VIII因子(FVIII)の凝固促進活性が、(従来のアッセイと同様に)溶液中ではないが、捕捉され、よって精製されたヒトFVIIIで実施される、ヒトFVIIIの選択的捕捉、続いてFVIII活性についての発色アッセイを組み合わせることによって、内因性FVIIIを含有する動物血漿マトリックス中で選択的に測定することができるかを調査した。方法は、FVIII産物が動物中に存在する内因性FVIIIに加えて投与されるエクスビボ血漿試験にも使用することができる。更に、アッセイは、FVIII測定がアッセイ干渉のために実行可能ではない場合がある、製造関連マトリックスに使用することができる。最後に、臨床環境では、アッセイは、二重特異性抗体のような、FVIII活性模倣剤の存在下、これらの薬剤の干渉なしに、ヒトFVIIIの測定を可能にすることができる。
【0027】
一態様において、試料中のヒト凝固FVIIIの活性を測定するための方法が本明細書に提供される。方法のステップは、a)試料を、ヒトFVIIIに選択的に結合する捕捉剤と、捕捉剤がヒトFVIIIに選択的に結合することを可能にするのに十分な条件下及び時間にわたってインキュベートすることであって、それによって反応混合物を形成し、捕捉剤が、固体支持体に結合している、インキュベートすること、及びb)反応混合物から非結合ヒトFVIIIを除去すること、c)活性アッセイを使用して、反応混合物中のヒトFVIIIの活性を測定することのうちの1つ以上を含むことができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、方法は、d)FVIII参照調製物と比較することによって、反応混合物中のヒトFVIIIの活性を決定するステップを更に含むことができる。
【0029】
本明細書の態様は、捕捉剤を開示する。捕捉剤は、ヒトFVIII、またはヒトFVIII上に存在するか、そうでなければヒトFVIIIと会合する標的部位への選択的または実質的に選択的な(すなわち、限られた交差反応性を有する)結合が可能である任意の分子を指す。本明細書で使用される場合、「選択的に」という用語は、独自の効果もしくは影響を有すること、または1つの方法のみで、もしくは1つの標的のみと反応することを指す。本明細書で使用される場合、「選択的に結合する」という用語は、捕捉剤に関して行われる場合、薬剤がヒトFVIIIまたは他の動物由来のFVIII上の非標的部位と実質的に交差反応しないような、ヒトFVIIIまたはヒトFVIII上に存在する示された標的部位への捕捉剤の区別的結合を指す。ヒトFVIII、またはヒトFVIII上に存在するか、もしくはそうでなければヒトFVIIIと会合する標的部位に選択的に結合することができる任意の捕捉剤は、本明細書に開示される方法で使用され得る。捕捉剤は、一般に、単一の特異性を有するが、2つ以上の標的部位について複数の特異性を有する捕捉剤が使用され得る。捕捉剤の非限定的な例としては、抗体、抗原結合断片、アフィボディ、アプタマー(例えば、DNAアプタマー)、合成ペプチド、結合分子、核酸、及びヒトFVIIIを特異的に捕捉することができ、好ましくは活性アッセイに干渉しない、例えば、FIXa媒介性FXa生成のための補因子としてのFVIIIの役割に干渉しない、他のアフィニティリガンドが挙げられる。
【0030】
いくつかの実施形態において、捕捉剤は、ヒトFVIIIのA1、A2、A3、B、C1、またはC2ドメインに選択的に結合する。いくつかの実施形態において、捕捉剤は、ヒトFVIIIのA2ドメインに選択的に結合する。いくつかの実施形態において、捕捉剤は、ヒトFVIIIのBドメインに結合しない。
【0031】
捕捉剤の選択的結合は、例えば、結合アフィニティ、結合特異性、及び結合アビディティなどの、結合特性を含むことができる。結合アフィニティは、捕捉剤がその結合部位または部分に存在する時間の長さを指し、捕捉剤がその結合部位または部分に結合する強度として見ることができる。結合アフィニティは、平衡で比Kd/Kaとして定義される、捕捉剤の平衡解離定数(KD)を説明することができ、Kaは、捕捉剤の会合速度定数であり、Kdは、捕捉剤の解離速度定数である。結合アフィニティは、会合及び解離の両方によって決定され、単独では、高い会合も低い解離も、高いアフィニティを確保することはできない。会合速度定数(Ka)、またはオンレート定数(Kon)は、単位時間当たりの結合事象の数、または捕捉剤及びその結合部位もしくは部分がその薬剤-部分複合体に可逆的に会合する傾向を測定する。会合速度定数は、M-1s-1で表され、次のように記号化される:[CA]×[BS]×Kon。会合速度定数が大きいほど、捕捉剤がその結合部位もしくは部分により急速に結合するか、または捕捉剤とその結合部位もしくは部分との間の結合アフィニティが高い。解離速度定数(Kd)、またはオフレート定数(Koff)は、その成分分子、すなわち、捕捉剤及びその結合部位または部分に可逆的に分離(解離)する薬剤-部分複合体の単位時間当たりの解離事象の数を測定する。解離速度定数は、s-1で表され、次のように記号化される:[CA+BS]×Koff。解離速度定数が小さいほど、捕捉剤がその結合部位もしくは部分により密接に結合するか、または捕捉剤とその結合部位もしくは部分との間の結合アフィニティが高い。平衡解離定数(KD)は、新しい薬剤-部分複合体が形成される速度が、薬剤-部分複合体が平衡で解離する速度と等しいと測定する。平衡解離定数は、Mで表され、Koff/Kon=[CA]×[BS]/[CA+BS]として定義され、[CA]は、捕捉剤のモル濃度であり、[BS]は、結合部位または部分のモル濃度であり、[CA+BS]は、薬剤-部分複合体のモル濃度であり、全ての濃度は、システムが平衡にあるときのそのような成分のものである。平衡解離定数が小さいほど、捕捉剤がその結合部位もしくは部分により密接に結合するか、または捕捉剤とその結合部位もしくは部分との間の結合アフィニティが高い。
【0032】
一実施形態において、本明細書に開示される捕捉剤の結合アフィニティは、例えば、1×105M-1s-1未満、1×106M-1s-1未満、1×107M-1s-1未満、または1×108M-1s-1未満の会合速度定数を有し得る。別の実施形態において、本明細書に開示される捕捉剤の結合アフィニティは、例えば、1×105M-1s-1超、1×106M-1s-1超、1×107M-1s-1超、または1×108M-1s-1超の会合速度定数を有し得る。他の態様において、本明細書に開示される捕捉剤の結合アフィニティは、1×105M-1s-1~1×108M-1s-1、1×106M-1s-1~1×108M-1s-1、1×105M-1s-1~1×107M-1s-1、または1×106M-1s-1~1×107M-1s-1の会合速度定数を有し得る。
【0033】
別の実施形態において、本明細書に開示される捕捉剤の結合アフィニティは、1×10-3s-1未満、1×10-4s-1未満、または1×10-5s-1未満の解離速度定数を有し得る。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される捕捉剤の結合アフィニティは、例えば、1.0×10-4s-1未満、2.0×10-4s-1未満、3.0×104s-1未満、4.0×10-4s-1未満、5.0×10-4s-1未満、6.0×10-4s-1未満、7.0×10-4s-1未満、8.0×10-4s-1未満、または9.0×10-4s-1未満の解離速度定数を有し得る。別の実施形態において、本明細書に開示される捕捉剤の結合アフィニティは、例えば、1×10-3s-1超、1×10-4s-1超、または1×10-5s-1超の解離速度定数を有し得る。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される捕捉剤の結合アフィニティは、例えば、1.0×10-4s-1超、2.0×10-4s-1超、3.0×10-4s-1超、4.0×10-4s-1超、5.0×10-4s-1超、6.0×10-4s-1超、7.0×10-4s-1超、8.0×10-4s-1超、または9.0×10-4s-1超の解離速度定数を有し得る。
【0034】
別の実施形態において、本明細書に開示される捕捉剤の結合アフィニティは、50nM未満または約50nMの平衡解離定数を有し得る。この実施形態の態様において、本明細書に開示される捕捉剤の結合アフィニティは、例えば、50nM未満もしくは約50nM、20nM未満もしくは約20nM、10nM未満もしくは約10nM、5nM未満もしくは約5nM、2nM未満もしくは約2nM、1nM未満もしくは約1nM、0.5nM未満もしくは約0.5nM、0.45nM未満もしくは約0.45nM、0.4nM未満もしくは約0.4nM、0.35nM未満もしくは約0.35nM、0.3nM未満もしくは約0.3nM、0.25nM未満もしくは約0.25nM、0.2nM未満もしくは約0.2nM、0.15nM未満もしくは約0.15nM、0.1nM未満もしくは約0.1nM、または0.05nM未満もしくは約0.05nMの平衡解離定数を有し得る。別の実施形態において、本明細書に開示される捕捉剤の結合アフィニティは、0.5nM超の平衡解離定数を有し得る。この実施形態の態様において、本明細書に開示される捕捉剤の結合アフィニティは、例えば、0.5nM超、0.45nM超、0.4nM超、0.35nM超、0.3nM超、0.25nM超、0.2nM超、0.15nM超、0.1nM超、または0.05nM超の平衡解離定数を有し得る。
【0035】
更に別の実施形態において、本明細書に開示される捕捉剤の結合アフィニティは、例えば、1×100M-1s-1未満、1×101M-1s-1未満、1×102M-1s-1未満、1×103M-1s-1未満、または1×104M-1s-1未満の、ヒト以外の動物由来のFVIIIについての会合速度定数を有し得る。別の実施形態において、本明細書に開示される捕捉剤の結合アフィニティは、例えば、最大1×100M-1s-1、最大1×101M-1s-1、最大1×102M-1s-1、最大1×103M-1s-1、または最大1×104M-1s-1の、ヒト以外の動物由来のFVIIIについての会合速度定数を有し得る。
【0036】
結合特異性は、その結合部位または部分を含有する分子と、その結合部位または部分を含有しない分子とを区別する捕捉剤の能力である。結合特異性を測定する1つの方法は、その結合部位または部分を含有する分子についての捕捉剤のKon会合速度を、その結合部位または部分を含有しない分子についての捕捉剤のKon会合速度に対して比較することである。例えば、ヒトFVIIIについての捕捉剤の会合速度定数(Ka)を、他の動物由来のFVIIIに対して比較すること。この実施形態の態様において、ヒトFVIIIに選択的に結合する捕捉剤は、他の動物由来のFVIIIについての会合速度定数(Ka)に対して、例えば、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、または少なくとも9倍である、ヒトFVIIIについての会合速度定数(Ka)を有する。この実施形態の更なる態様において、ヒトFVIIIに選択的に結合する捕捉剤は、他の動物由来のFVIIIについての会合速度定数(Ka)に対して、例えば、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも1,000倍、または少なくとも10,000倍である、ヒトFVIIIについての会合速度定数(Ka)を有する。この実施形態のまた他の態様において、ヒトFVIIIに選択的に結合する捕捉剤は、他の動物由来のFVIIIについての会合速度定数(Ka)に対して、例えば、多くとも1倍、多くとも2倍、多くとも3倍、多くとも4倍、多くとも5倍、多くとも6倍、多くとも7倍、多くとも8倍、または多くとも9倍である、ヒトFVIIIについての会合速度定数(Ka)を有する。この実施形態のまた他の態様において、ヒトFVIIIに選択的に結合する捕捉剤は、他の動物由来のFVIIIについての会合速度定数(Ka)に対して、例えば、多くとも10倍、多くとも100倍、多くとも1,000倍、または多くとも10,000倍である、ヒトFVIIIについての会合速度定数(Ka)を有する。
【0037】
捕捉剤の結合特異性はまた、他の動物由来のFVIIIに対するヒトFVIIIの結合特異性比として特徴付けることができる。この実施形態の態様において、捕捉剤は、例えば、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも64:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、少なくとも20:1、少なくとも25:1、少なくとも30:1、少なくとも35:1、または少なくとも40:1の、他の動物由来のFVIIIに対するヒトFVIIIについての結合特異性比を有する。この実施形態のまた他の態様において、捕捉剤は、例えば、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、少なくとも20:1、少なくとも25:1、少なくとも30:1、少なくとも35:1、または少なくとも40:1の、他の動物由来のFVIIIに対するヒトFVIIIについての結合特異性比を有する。この実施形態の更に他の態様において、捕捉剤は、例えば、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも64:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、少なくとも20:1、少なくとも25:1、少なくとも30:1、少なくとも35:1、または少なくとも40:1の、他の動物由来のFVIIIに対するヒトFVIIIについての結合特異性比を有する。
【0038】
機能アフィニティとしても知られる、結合アビディティは、多価捕捉剤とその結合部位または部分との間の機能結合強度の合計を指す。捕捉剤は、ヒトFVIII上に2つ以上の結合部位を有することができる。捕捉剤の結合アビディティは、個々の捕捉剤結合部位の結合アフィニティに依存するが、捕捉剤が完全に解離するためには、全ての薬剤結合部位相互作用が同時に破壊されなければならないため、結合アビディティは、結合アフィニティよりも大きい。捕捉剤は、その捕捉剤の任意の及び全ての結合部位または部分に選択的に結合することができることが想定される。
【0039】
典型的には、捕捉剤は、ヒトFVIIIを他の動物由来のFVIIIから区別することができる。他の動物由来のFVIIIは、試料中に存在し得るが、他の動物由来のFVIIIが、捕捉に必要な結合部位を欠くか、またはヒトFVIIIに対して捕捉剤へのはるかに弱い結合アフィニティを有するため、本明細書に開示される捕捉剤に選択的に結合しないであろう。他の動物由来のFVIIIの1つの非限定的な例は、試料が直接採取されるか、または由来する動物のゲノムから発現される天然発生または内因性FVIIIである。他の動物由来のFVIIIの更に別の非限定的な例は、ヒトFVIIIを発現するために使用される細胞培養株の細胞から発現されるFVIIIである。
【0040】
いくつかの実施形態において、捕捉剤は、抗体、または抗体断片である。抗体は、その抗原に特異的に結合する特定の抗原に応答して作製された免疫系によって生成された分子を指し、天然発生抗体及び非天然発生抗体の両方を含む。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二量体、多量体、単一特異性抗体、二重特異性抗体、例えば、ジスルフィド安定化Fv断片、scFvタンデム[(scFv)2断片]など、多重特異性抗体、多価抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、二機能性抗体、Ig受容体のような細胞関連抗体、線状抗体、ダイアボディ、トリボディ、テトラボディ、ミニボディ、または断片が所望の生物活性を示す限り、その誘導体もしくは類似体、及びその一本鎖誘導体であり得る。抗体は、VH及びVLドメイン、ならびに軽鎖定常ドメイン(CL)及び重鎖定常ドメイン、CH1、CH2、及びCH3を含む全長免疫グロブリン分子、または全長免疫グロブリン分子の免疫活性断片、例えば、Fab断片、F(ab′)2断片、Fc断片、Fd断片、Fv断片、一本鎖Fv(scFv)などであり得る。抗体は、任意の脊椎動物種(例えば、ヒト、ヤギ、ウマ、ロバ、マウス、ラット、ウサギ、またはニワトリ)に由来し得、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)、クラス(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM)、またはサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)であり得る。
【0041】
本明細書に開示される方法を実施するのに有用な抗体は、市販されているか、または当該技術分野で周知の方法に従って生成することができる。例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法によって生成することができる。抗体断片は、無傷の抗体のタンパク質分解消化を介して生成することができるか、または組換え宿主細胞によって直接産生することができる。例えば、Fab’断片は、E.coliから直接回収し、化学的にカップリングして、F(ab’)2断片を形成することができる。別の実施形態において、F(ab′)2は、F(ab′)2分子の組み立てを促進するロイシンジッパーGCN4を使用して形成することができる。別のアプローチによれば、Fv、Fab、またはF(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。抗体断片の産生のための他の技法は、当業者には明らかである。
【0042】
一実施形態において、捕捉抗体は、GMA-8024、またはその抗原結合断片もしくはバリアントである。
【0043】
一実施形態において、捕捉抗体は、GMA-8023、またはその抗原結合断片もしくはバリアントである。
【0044】
一実施形態において、捕捉抗体は、GMA-012、またはその抗原結合断片もしくはバリアントである。
【0045】
捕捉剤は、捕捉剤がヒトFVIIIを特異的に捕捉することができ、好ましくは、活性アッセイに干渉しない、例えば、FIXa媒介性FXa生成のための補因子としてのFVIIIの役割に干渉しない限り、他の形態(例えば、アフィボディ、アプタマー、合成ペプチド)をとり得る。いくつかの実施形態において、捕捉剤は、アフィボディである。アフィボディ分子は、標的タンパク質への特異的なアフィニティを有する、小さい非常に頑健なタンパク質である。それらは通常、3ヘリックスバンドルドメインフレームワークに基づいて設計される。いくつかの実施形態において、捕捉剤は、アプタマーである。アプタマーは、高いアフィニティ及び特異性でそれらの標的と結合することができる構造化核酸分子である。アプタマーは、ヘリックス及び一本鎖ループを形成するそれらの傾向のため、様々な形状を想定することができる。
【0046】
本明細書に開示される捕捉剤は、捕捉剤のための支持体としての固相に結合され得る。本明細書で使用される場合、「固相支持体」という用語は、「固体支持体」または「固相」と同義であり、本明細書で開示される捕捉剤を固定化するために使用することができる任意のマトリックスを指す。固相は、捕捉剤に結合するのに十分な表面アフィニティを有する任意の好適な材料を使用して構築され得る。選択された固相支持体は、それを可溶性または非結合材料から容易に分離可能にし、一般に、例えば、過剰な試薬、反応副産物、または溶媒などの、非結合材料が固相支持体結合アッセイ成分から分離またはそうでなければ(例えば、洗浄、濾過、遠心分離などによって)除去されることを可能にする物理的特性を有することができる。固相支持体を作製し、使用する方法の非限定的な例は、例えば、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,上記,(2001)、及びCurrent Protocols in Molecular Biology,上記,(2004)に記載されており、これらの各々は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0047】
有用な固体支持体としては、天然ポリマー炭水化物及びそれらの合成修飾、架橋、または置換誘導体、例えば、寒天、アガロース、架橋アルギン酸、置換及び架橋グアーガム、デキストラン、ジアゾセルロース、炭水化物、デンプン、セルロースエステル、特に硝酸及びカルボン酸を含むもの、混合セルロースエステル、ならびにセルロースエーテル;窒素を含有する天然ポリマー、例えば、架橋または修飾ゼラチンを含む、タンパク質及び誘導体;天然炭化水素ポリマー、例えば、ラテックス及びゴム;合成ポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート及びその部分加水分解誘導体、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレートを含む、ビニルポリマー、上記ポリ縮合物のコポリマー及びターポリマー、例えば、ポリエステル、ポリアミド、及び他のポリマー、例えば、ポリウレタンまたはポリエポキシド;無機材料、例えば、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルカリ及びアルカリ土類金属、アルミニウム及びマグネシウムのケイ酸塩を含む、アルカリ土類金属及びマグネシウムの硫酸塩または炭酸塩;ならびにアルミニウムまたはケイ素酸化物または水和物、例えば、クレイ、アルミナ、タルク、カオリン、ゼオライト、シリカゲル、またはガラス(これらの材料は、上記ポリマー材料とフィルターとして使用することができる);ならびに上記のクラスの混合物またはコポリマー、例えば、既存の天然ポリマー上での合成ポリマーの重合を開始することによって得られるグラフトコポリマーが挙げられる。ニトロセルロース及びナイロンも使用することができる。これらの材料の全ては、フィルム、シート、チューブ、カラム;ピンまたは「ディップスティック」;磁性粒子、微粒子、ミクロ粒子、ビーズ、またはプレートなどの、好適な形状で使用することができ、またはそれらは、紙、ガラス、プラスチックフィルム、織物などのような、適切な不活性担体上にコーティング、結合、または積層することができる。
【0048】
あるいは、固体支持体は、ミクロ粒子を構成することができる。適切なミクロ粒子としては、ポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリプロピレン、ラテックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、または同様の材料で構成されるものが挙げられる。更に、ミクロ粒子は、磁場内でのミクロ粒子の操作を促進するために、磁性または常磁性ミクロ粒子であり得る。ミクロ粒子は、可溶性試薬及び生体試料の混合物中に懸濁することができ、または支持体材料によって保持及び固定化することができる。後者の場合では、支持体材料上または支持体材料中のミクロ粒子は、支持体材料内の他の位置への実質的な移動が可能ではない。あるいは、ミクロ粒子は、沈降または遠心分離によって、可溶性試薬及び生体試料の混合物中の懸濁液から分離することができる。ミクロ粒子が磁性または常磁性であるとき、ミクロ粒子は、磁場によって可溶性試薬及び生体試料の混合物中の懸濁液から分離することができる。
【0049】
捕捉剤は、吸着によって固体支持体に結合され得、疎水性力によって保持される。あるいは、固体支持体の表面は、捕捉剤の支持体への共有結合を引き起こす化学プロセスによって活性化され得る。捕捉剤は、イオン捕捉によって固相に結合され得、荷電ポリマーによって保持される。
【0050】
本明細書に開示されるインキュベーションステップ後、非結合ヒトFVIII、非ヒトFVIII、及び/または後続活性アッセイに干渉し得る他の薬剤を含む、任意の非結合成分を混合物から除去するために、洗浄ステップが行われ得る。洗浄は、捕捉剤及び捕捉されたヒトFVIIIを含有する固体支持体を洗浄緩衝液で洗浄することによって行われ得る。いくつかの実施形態において、洗浄緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)及びTween(PBST緩衝液と称される)を含む。一実施形態において、洗浄緩衝液は、PBS及び0.05%のTween 20を含む。別の実施形態において、洗浄緩衝液は、PBS及び約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、または0.1%のTween 20を含む。洗浄は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、または10回を超えて行われ得る。一実施形態において、洗浄は、3回行われる。
【0051】
本明細書に開示されるヒトFVIIIの活性の存在または測定の検出は、限定なしに、インビトロアッセイ、細胞ベースアッセイ、またはインビボアッセイを含む、監視されているヒトFVIIIの存在またはそれと関連する活性を示す特徴を定性的または定量的に測定することができる任意のアッセイによって達成することができる。アッセイは、非特異的ポリペプチドアッセイ、例えば、UV吸収アッセイもしくは化学ベースアッセイ、Bradfordアッセイもしくはビウレットアッセイのようなものなど、または特異的ポリペプチドアッセイ、例えば、発色アッセイ、比色アッセイ、クロノメトリックアッセイ、化学発光アッセイ、電気化学発光アッセイ、生物発光アッセイ、蛍光発生アッセイ、共鳴エネルギー移動アッセイ、平面分極アッセイ、フローサイトメトリーアッセイ、免疫ベースアッセイ、もしくは活性アッセイ、酵素活性、阻害活性、凝固活性、もしくは重合活性のようなものなどであり得る。ヒトFVIIIの特徴を検出するために、またはヒトFVIII活性を測定するために使用される実際のアッセイは、限定なしに、存在するヒトFVIIIの量、アッセイされている特徴、及び当業者の選好性を含む、因子を考慮に入れることによって、当業者によって決定することができる。本明細書に開示されるヒトFVIIIの存在または活性を検出することは、シングルプレックスまたはマルチプレックスで実施することができる。
【0052】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態は、発色アッセイを用いる。発色アッセイは、典型的には、特定のオリゴペプチドまたはポリペプチド部分及び発色団(色素担体)で構成され、通常、プロテアーゼ活性を有する因子を決定するために、例えば、血液及び血漿試料中の凝固因子(例えば、FVIII)を決定するために使用されるペプチド基質を使用する。初期は無色である、発色ペプチド基質は、試料中に存在するヒトFVIIIの量及び/または活性に依存して切断され、それによって発色団を放出する。切断は、未切断基材の光学特性とは異なり、分光光度測定によって測定することができる、産物の光学特性を変化させる。ペプチド基質に結合することができる発色基の非限定的な例としては、パラ-ニトロアニリン(pNA)、5-アミノ-2-ニトロ安息香酸(ANBA)、7-アミノ-4-メトキシクマリン(ANC)、キノニルアミド(QUA)、5-アミノイソフタル酸ジメチル(DPA)、及びそれらの誘導体が挙げられる。蛍光発生基質には、限定なしに、Z-Gly-Pro-Arg-AMC[Z=ベンジルオキシカルボニル、AMC=7-アミノ-4-メチルクマリン]、ホモバニリン酸、4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル酢酸、還元フェノキサジン、還元ベンゾチアジン、Amplex(登録商標)、レゾルフィンβ-D-ガラクトピラノシド、フルオレセインジガラクトシド(FDG)、フルオレセインジグルクロニド及びそれらの構造的バリアント(それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,208,148号、同第5,242,805号、同第5,362,628号、同第5,576,424号、及び同第5,773,236号)、4-メチルウンベリフェリルβ-D-ガラクトピラノシド、カルボキシウンベリフェリルβ-D-ガラクトピラノシド、ならびにフッ素化クマリンβ-D-ガラクトピラノシド(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,830,912号)が含まれる。
【0053】
非限定的な活性アッセイは、血液凝固カスケードに基づいてFVIII活性を測定するために使用される発色アッセイである。このアッセイでは、トロンビン活性化第VIII因子は、第IXa因子と複合体を形成し、この複合体は、その後、第X因子を活性化する。活性化第X因子活性は、p-ニトロ-アニリン(pNA)のような発色基を解放する発色基質の加水分解によってアクセスすることができる。dODにおいて405nmで測定される1分当たりの吸光度の変化によって決定される、pNA放出の初期速度は、第Xa因子活性に、その後、試料中のFVIII活性に比例している。過剰な第IXa因子、及び第X因子を使用することによって、第X因子の活性化の速度は、試料中に存在するトロンビン切断第VIII因子の量にのみ比例している。
【0054】
いくつかの実施形態において、発色アッセイは、反応混合物に、活性化第IX因子(FIXa)、第X因子(FX)、カルシウムイオン、リン脂質、及びトロンビンを添加し、反応混合物を、活性化FX(FXa)を生成するのに十分な条件下及び時間にわたってインキュベートするステップ、反応混合物に、FXa特異的発色基質を添加し、反応混合物を、測定可能なシグナルを生成するのに十分な条件下及び時間にわたってインキュベートするステップ、任意に、反応混合物に、停止剤を添加して、FXa特異的発色基質からのシグナル生成を停止するステップ、ならびに反応混合物から生成されたシグナルを測定するステップの1つ以上を含むことができる。
【0055】
活性化第IX因子(FIXa)、第X因子(FX)、カルシウムイオン、リン脂質、及びトロンビンを含む発色アッセイの試薬は、任意の順序で添加され得る。いくつかの実施形態において、活性化第IX因子(FIXa)、第X因子(FX)、カルシウムイオン、リン脂質、及びトロンビンを含む発色アッセイの試薬が段階的に添加される。例えば、FVIIIが活性化されて、活性化FVIII(FVIIIa)を形成することを可能にするために、トロンビンがまず添加され得る。活性化第IX因子(FIXa)及び第X因子(FX)は、FVIIIaがFX及びFIXaとテナーゼ複合体を形成することを可能にするために、その後かつ過剰に添加され、活性化第X因子(FXa)の生成をもたらし得る。代替的な実施形態において、活性化第IX因子(FIXa)、第X因子(FX)、カルシウムイオン、リン脂質、及びトロンビンを含む発色アッセイの試薬が同時に添加される。いくつかの実施形態において、トロンビンは、プロトロンビンとして供給され得る。試薬は、任意の供給源、例えば、ヒトまたは動物(主にウシ供給源)のものであり得る。
【0056】
FXa特異的発色基質は、FXaについての選択性を有する任意の基質であり、本明細書に記載されるものなどの発色基を有し得る。一実施形態において、発色基質は、CH3OCO-D-シクロヘキシルアラニン-Gly-Arg-pNAである。発色基質溶液はまた、合成トロンビン阻害剤を含有し得る。
【0057】
FXa特異的発色基質が添加された後、反応に続いて、動力学的測定のための発色現像(吸光度増加)の連続的な読み取り、またはエンドポイント測定のための所定の時間後に発色現像を停止することが行われ得る。後者について、停止剤が使用され得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、停止剤は、酢酸である。一実施形態において、停止剤は、約20%の酢酸である。他の実施形態において、停止剤は、約5%、約10%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約35%、約40%の酢酸である。
【0059】
特定の実施形態において、選択的発色FVIII活性アッセイは、マイクロプレートのウェル上に固定される抗ヒトFVIII抗体によってヒトFVIIIを特異的に捕捉することに基づく(
図1)。インキュベーション後、後続の洗浄ステップは、動物FVIIIを含む、任意の非結合成分を除去する。次いで、活性化FIXa(FIXa)、第X因子(FX)、カルシウム、リン脂質、及びトロンビンを含む、FVIIIについての発色アッセイの試薬が添加され、活性化因子FVIII(FVIIIa)がFIXa媒介性FXa生成のための補因子として作用することを可能にする。最後に、アッセイ中に生成された活性化FX(FXa)は、FXaについての特定の基質によって検出される。FVIII発色活性は、FVIII参照調製物との比較によって決定される。
【0060】
本開示の態様は、部分的に、本明細書に開示されるヒトFVIIIを含む試料を含む。試料は、本明細書に開示されるヒトFVIIIの存在または活性について試験される任意の材料であり得る。限定なしに、精製、部分精製、または未精製ヒトFVIII;製剤化ヒトFVIII産物;例えば、細菌、酵母、昆虫、または哺乳動物源からの粗製、分画もしくは部分精製、または精製細胞溶解物;ならびに細胞、組織、または臓器試料を含む、様々な試料を、本明細書に開示される方法に従ってアッセイすることができる。試料は、例えば、ヒト、トリ、ブタ、ウマ、ウシ、マウス、ネコ、ラット、イヌ、またはヒツジなどの、昆虫または哺乳動物を含むが、これらに限定されない、任意の対象個体由来であり得る。いくつかの実施形態において、試料は、非ヒト動物から得られる。いくつかの実施形態において、試料は、ヒツジ、ヤギ、カニクイザル、ウサギ、ラット、アカゲザル、マウス、ブタ、ハムスター、ミニブタ、及びモルモットを含むが、これらに限定されない、実験動物から得られる。
【0061】
この実施形態の一態様において、試料は、ヒトFVIIIを含有するか、または潜在的に含有する生体試料であり得る。生体試料は、個体から直接採取された任意の細胞、組織、または臓器試料を含むことができる。生体試料はまた、限定なしに、血液、尿、痰、精液、糞便、唾液、胆汁、脳液、鼻腔スワブ、泌尿生殖器スワブ、鼻腔吸引物、脊髄液などを含む、個体から直接採取された任意の体液の試料であり得る。生体試料はまた、限定なしに、血液試料の血漿画分、血液試料の血清画分、または精製プロセスからの溶出液を含む、個体から直接採取された試料に由来する任意の調製物を含むことができる。血液試料は、全血試料、血漿試料、または血清試料などの、血液から採取または誘導される任意の試料を指す。いくつかの実施形態において、試料は、クエン酸血漿試料である。いくつかの実施形態において、試料は、組換えヒトFVIIIの製造に使用されるものなどの添加剤を含有し得る。そのような添加剤の非限定的な例は、有効なウイルス不活性化溶液としてしばしば使用され、1%のTriton X-100、0.3%のポリソルベート80、及び0.3%のリン酸トリ-n-ブチル(tnBP)を含有する、溶媒洗剤(S/D)溶液である。いくつかの実施形態において、試料は、1つ以上のFVIII活性模倣剤を含有し得る。FVIII活性模倣剤は、従来の方法でのFVIII測定にバイアスをかけることが知られている。FVIII活性模倣剤には、抗体(例えば、二重特異性抗体)、抗原結合断片、ペプチド、核酸、または小分子が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、FVIII活性模倣剤は、エミシズマブなどの、二重特異性抗体である。
【0062】
本明細書に記載される方法は、動物の内因性FVIIIに加えて、動物に投与されるか、または動物血漿に添加されるヒトFVIIIの活性を選択的に決定することを可能にすることが想定される。本明細書に記載される方法は、正常なレベルの内因性動物FVIIIの存在下でも、非臨床モデルにおける試験ヒトFVIII産物の凝固促進活性を特異的に測定することができる。FVIII活性を測定する現在利用可能な方法は、ヒトFVIII(直接添加されるか、または遺伝子移入によって生成されるかにかかわらず)と内因性動物FVIIIとを区別することができず、むしろヒト及び動物凝固因子の両方の活性を測定する場合がある。残念なことに、この測定は、バイアスを導入し得、投与/生成されたFVIIIと内因性FVIIIとの間の差がゼロに達する、投与/生成されたヒトFVIIIの循環半減期の終わりに更により高くなる。
【0063】
更に、本明細書に記載される方法はまた、例えば、干渉に起因して、分析のために現在利用可能ではない試料マトリックス中のFVIII活性の測定を可能にすることができる。そのような干渉試料マトリックスの非限定的な例は、血漿由来及び組換えFVIIIの製造プロセスに含まれるウイルス不活性化に使用される、溶媒-洗剤(S/D)溶液である。しかしながら、できるだけ多くの中間体及び同じ試料タイプにおいてFVIII活性を決定及び監視することが興味深い。本明細書に記載される方法はまた、溶媒-洗剤溶液及び個々の化合物の存在下での測定を可能にすることができる。
【0064】
試料は、試料内のヒトFVIIIまたはその活性の検出可能性を改善する方法で処理され得る。そのような処理は、例えば、試料の粘度を低減、または試料の成分画分を精製し得る。処理の方法は、溶解、希釈、精製、抽出、濾過、蒸留、分離、濃縮、干渉成分の不活性化、及び試薬の添加を含むことができる。加えて、ヒトFVIIIを含有する疑いのある固体材料は、それが液体培地を形成するか、またはヒトFVIIIを放出するように修飾されると、試験試料として使用され得る。試験の前の生体試料の選択及び前処理は、当該技術分野で周知である。
【0065】
いくつかの実施形態において、試料は、FVIII活性が許容されるレベルの正確性及び精度で測定することができるように、インキュベーションステップの前に希釈される。いくつかの実施形態において、試料は、1:1~約1:100,000倍希釈される。いくつかの実施形態において、試料は、1:2~約1:20000倍希釈される。いくつかの実施形態において、試料は、約1:5、約1:10、約1:20、約1:40、約1:80、約1:100、約1:160、約1:200、約1:320、約1:400、約1:500、約1:640、約1:800、約1:1000、約1:1280、約1:1200、約1:1500、約1:1600、約1:1800、約1:2000、約1:2400、約1:2500、約1:4000、約1:5000、約1:8000、約1:10000、約1:12000、約1:14000、約1:15000、約1:16000、約1:18000、または約1:20000倍希釈される。
【0066】
いくつかの実施形態において、試料は、FVIII活性を保存することと適合する希釈緩衝液で希釈され得る。本明細書で使用される例示的な希釈緩衝液は、イミダゾール及びNaClを含む。いくつかの実施形態において、希釈緩衝液は、約1~10g/Lのイミダゾール及び約1~10g/LのNaClを含み、7~8のpHを有する。いくつかの実施形態において、希釈緩衝液は、約1、約1.5、約2、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3、約3.1、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、約4、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約1~3、約2~4、約3~5、約2.5~4.5、約3~6、約4~8、または約5~10g/Lのイミダゾールを含む。いくつかの実施形態において、希釈緩衝液は、約1、約1.5、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.75、約5.8、約5.85、約5.9、約5.95、約6、約6.1、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約1~3、約2~4、約3~5、約2.5~4.5、約3~6、約4~8、または約5~10g/LのNaClを含む。いくつかの実施形態において、希釈緩衝液は、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、または約8.0のpHを有する。一実施形態において、希釈緩衝液は、約3.4g/Lのイミダゾール、約5.85g/LのNaClを含み、約7.4のpHを有する。
【0067】
いくつかの実施形態において、試料の捕捉剤とのインキュベーションは、捕捉剤のヒトFVIIIへの選択的結合を可能にする条件下で行われる。いくつかの実施形態において、試料の捕捉剤とのインキュベーションは、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約70分、約80分、約90分、約100分、約110分、約2時間、または約3時間にわたって室温で行われる。いくつかの実施形態において、試料の捕捉剤とのインキュベーションは、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約70分、約80分、約90分、約100分、約110分、約2時間、または約3時間にわたって37℃で行われる。いくつかの実施形態において、試料の捕捉剤とのインキュベーションは、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約70分、約80分、約90分、約100分、約110分、約2時間、または約3時間にわたって20℃で行われる。
【0068】
いくつかの実施形態において、試料の捕捉剤とのインキュベーションは、捕捉剤のヒトFVIIIへの選択的結合を可能にする条件下で行われる。いくつかの実施形態において、試料の捕捉剤とのインキュベーションは、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約70分、約80分、約90分、約100分、約110分、約2時間、約3時間、約20~30分、約30~60分、約40~80分、約60~90分、または約1~2時間にわたって室温で行われる。いくつかの実施形態において、試料の捕捉剤とのインキュベーションは、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約70分、約80分、約90分、約100分、約110分、約2時間、約3時間、約20~30分、約30~60分、約40~80分、約60~90分、または約1~2時間にわたって約37℃で行われる。いくつかの実施形態において、試料の捕捉剤とのインキュベーションは、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約70分、約80分、約90分、約100分、約110分、約2時間、約3時間、約20~30分、約30~60分、約40~80分、約60~90分、または約1~2時間にわたって約20℃で行われる。
【0069】
いくつかの実施形態において、発色アッセイの試薬(例えば、活性化第IX因子(FIXa)、第X因子(FX)、カルシウムイオン、リン脂質、及びトロンビン)の添加後の反応混合物のインキュベーションは、活性化FX(FXa)を生成するのに十分な条件下及び時間にわたって行われる。いくつかの実施形態において、発色アッセイの試薬(例えば、活性化第IX因子(FIXa)、第X因子(FX)、カルシウムイオン、リン脂質、及びトロンビン)の添加後の反応混合物のインキュベーションは、約1分、約2分、約3分、約4分、約5分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分、約11分、約12分、約13分、約14分、約15分、約16分、約17分、約18分、約19分、約20分、約25分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約2時間、約1~10分、約5~12分、約8~15分、約10~20分、約15~30分、または約20~40分にわたって室温で行われる。いくつかの実施形態において、発色アッセイの試薬(例えば、活性化第IX因子(FIXa)、第X因子(FX)、カルシウムイオン、リン脂質、及びトロンビン)の添加後の反応混合物のインキュベーションは、約1分、約2分、約3分、約4分、約5分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分、約11分、約12分、約13分、約14分、約15分、約16分、約17分、約18分、約19分、約20分、約25分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約2時間、約1~10分、約5~12分、約8~15分、約10~20分、約15~30分、または約20~40分にわたって約37℃で行われる。いくつかの実施形態において、発色アッセイの試薬(例えば、活性化第IX因子(FIXa)、第X因子(FX)、カルシウムイオン、リン脂質、及びトロンビン)の添加後の反応混合物のインキュベーションは、1分、約2分、約3分、約4分、約5分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分、約11分、約12分、約13分、約14分、約15分、約16分、約17分、約18分、約19分、約20分、約25分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約2時間、約1~10分、約5~12分、約8~15分、約10~20分、約15~30分、または約20~40分にわたって20℃で行われる。
【0070】
いくつかの実施形態において、発色アッセイのための反応緩衝液が提供される。本明細書で使用される例示的な反応緩衝液は、約1~10g/LのTris、約0.1~10g/LのNa2EDTA、約10~50g/LのNaClを含み、pH7.5~9を有する。いくつかの実施形態において、反応緩衝液は、約1、約2、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.85、約5.9、約5.95、約6、約6.06、約6.1、約6.15、約6.2、約6.25、約6.3、約6.35、約6.4、約6.45、約6.5、約6.55、約6.6、約6.65、約6.7、約6.75、約6.8、約6.85、約6.9、約7、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8、約9、約10、または約2~4、約3~8、約4~7、約6~7、約5~8、もしくは約6~9g/LのTrisを含む。いくつかの実施形態において、反応緩衝液は、約0.1、約0.5、約1、約2、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.75、約2.8、約2.85、約2.9、約2.95、約3、約3.03、約3.05、約3.1、約3.15、約3.2、約3.25、約3.3、約3.35、約3.4、約3.45、約3.5、約3.55、約3.6、約3.65、約3.7、約3.75、約3.8、約3.85、約3.9、約4、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約0.1~4、約1~5、約2~4、約3~4、約3~5、約4~6、または約5~8g/LのNa2EDTAを含む。いくつかの実施形態において、反応緩衝液は、約10、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約37、約40、約45、約50、約10~20、約15~25、約20~40、約20~30、または約30~50g/LのNaClを含む。いくつかの実施形態において、希釈緩衝液は、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8.0、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、約8.5、約8.6、約8.7、約8.8、約8.9、または約9.0のpHを有する。一実施形態において、反応緩衝液は、約6.06g/LのTris、約3.03g/LのNa2EDTA、約25g/LのNaClを含み、約8.3のpHを有する。
【0071】
いくつかの実施形態において、FXa特異的発色基質(例えば、CH3OCO-D-シクロヘキシルアラニン-Gly-Arg-pNA)の添加後の反応混合物のインキュベーションは、活性化FX(FXa)を生成するのに十分な条件下及び時間にわたって行われる。いくつかの実施形態において、FXa特異的発色基質の添加後の反応混合物のインキュベーションは、約5分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分、約11分、約12分、約13分、約14分、約15分、約16分、約17分、約18分、約19分、約20分、約21分、約22分、約23分、約24分、約25分、約26分、約27分、約28分、約29分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約2時間、約1~10分、約5~15分、約10~20分、約15~30分、約20~40分、または約25~50分にわたって室温で行われる。いくつかの実施形態において、FXa特異的発色基質の添加後の反応混合物のインキュベーションは、5分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分、約11分、約12分、約13分、約14分、約15分、約16分、約17分、約18分、約19分、約20分、約21分、約22分、約23分、約24分、約25分、約26分、約27分、約28分、約29分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約2時間、約1~10分、約5~15分、約10~20分、約15~30分、約20~40分、または約25~50分にわたって37℃で行われる。いくつかの実施形態において、FXa特異的発色基質の添加後の反応混合物のインキュベーションは、5分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分、約11分、約12分、約13分、約14分、約15分、約16分、約17分、約18分、約19分、約20分、約21分、約22分、約23分、約24分、約25分、約26分、約27分、約28分、約29分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約2時間、約1~10分、約5~15分、約10~20分、約15~30分、約20~40分、または約25~50分にわたって約20℃で行われる。発色基質からのシグナル生成を停止するために、停止剤(例えば、酢酸)が添加され得る。
【0072】
様々な実施形態において、検出されているヒトFVIIIは、組換えFVIIIである。いくつかの実施形態において、ヒトFVIIIは、全長FVIIIである。いくつかの実施形態において、ヒトFVIIIは、Bドメイン欠失FVIIIである。いくつかの実施形態において、ヒトFVIIIは、野生型ヒトFVIIIと比較して1つ以上の変異を含む修飾FVIIIである。いくつかの実施形態において、ヒトFVIIIは、Bドメイン欠失に加えて、野生型ヒトFVIIIと比較して1つ以上の変異を含む修飾Bドメイン欠失FVIIIである。いくつかの実施形態において、ヒトFVIIIは、組換えFVIII融合タンパク質である。
【0073】
本明細書に開示される方法は、例えば、正確性、精度、検出限界(LOD)、定量限界(LOQ)、範囲、特異性、選択性、直線性、堅牢性、及びシステム好適性を含む、いくつかのパラメータによって評価され得る。方法の正確性は、分析方法の正確さの尺度、または測定値と、従来の真の値もしくは許容される参照値として許容される値との間の一致の近さである。方法の精度は、手順が均質な試料の複数のサンプリングに繰り返し適用されるとき、個々の試験結果間の一致の程度である。そのようなものとして、精度は、1)アッセイ内変動性、2)日内変動性(繰り返し性)、及び3)日間変動性(中間精度)、ならびに4)ラボ間変動性(再現性)を評価する。変動係数(CV%)は、観測値または理論平均値に対して表される精度の定量的尺度である。
【0074】
本明細書に開示される方法は、バックグラウンドにかけて、ヒトFVIIIの存在または活性を検出することができるべきである。方法の検出限界(LOD)は、陰性対照またはブランクとは顕著に異なるシグナルを生じさせるヒトFVIIIの濃度を指し、バックグラウンドと区別することができるヒトFVIIIの最も低い濃度を表す。
【0075】
よって、一実施形態において、本明細書に開示される方法は、陰性対照またはブランクとは顕著に異なる量でヒトFVIIIのLODを検出することができる。この実施形態の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、10ng以下、9ng以下、8ng以下、7ng以下、6ng以下、5ng以下、4ng以下、3ng以下、2ng以下、1ng以下のヒトFVIIIの、LODを有する。この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、900pg以下、800pg以下、700pg以下、600pg以下、500pg以下、400pg以下、300pg以下、200pg以下、100pg以下のヒトFVIIIの、LODを有する。この実施形態の更なる態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、90pg以下、80pg以下、70pg以下、60pg以下、50pg以下、40pg以下、30pg以下、20pg以下、10pg以下のヒトFVIIIの、LODを有する。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、9pg以下、8pg以下、7pg以下、6pg以下、5pg以下、4pg以下、3pg以下、2pg以下、1pg以下のヒトFVIIIの、LODを有する。この実施形態のまた他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、0.9pg以下、0.8pg以下、0.7pg以下、0.6pg以下、0.5pg以下、0.4pg以下、0.3pg以下、0.2pg以下、0.1pg以下のヒトFVIIIの、LODを有する。
この実施形態の別の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、10nM以下、9nM以下、8nM以下、7nM以下、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、または1nM以下のヒトFVIIIの、LODを有する。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、900pM以下、800pM以下、700pM以下、600pM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下、または100pM以下のヒトFVIIIの、LODを有する。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、100pM以下、90pM以下、80pM以下、70pM以下、60pM以下、50pM以下、40pM以下、30pM以下、20pM以下、または10pM以下のヒトFVIIIの、LODを有する。この実施形態のまた他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、10pM以下のヒトFVIII、9pM以下、8pM以下、7pM以下、6pM以下、5pM以下、4pM以下、3pM以下、2pM以下、または1pM以下のヒトFVIIIの、LODを有する。この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、1000fM以下、900fM以下、800fM以下、700fM以下、600fM以下、500fM以下、400fM以下、300fM以下、200fM以下、または100fM以下のヒトFVIIIの、LODを有する。この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、100fM以下、90fM以下、80fM以下、70fM以下、60fM以下、50fM以下、40fM以下、30fM以下、20fM以下、または10fM以下のヒトFVIIIの、LODを有する。この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、10fM以下、9fM以下、8fM以下、7fM以下、6fM以下、5fM以下、4fM以下、3fM以下、2fM以下、または1fM以下のヒトFVIIIの、LODを有する。
【0076】
定量限界(LOQ)は、許容されるレベルの正確性及び精度で測定することができる試料または検体中のヒトFVIIIの最も低い及び最も高い濃度である。定量下限は、検出方法がバックグラウンドから一貫して測定することができる最も低い用量を指す。定量上限は、検出方法がシグナルの飽和が生じる前に一貫して測定することができる最も高い用量である。方法の直線範囲は、定量下限と上限との間の面積である。直線範囲は、定量の上限から定量の下限を差し引くことによって計算される。本明細書で使用される場合、「下方漸近線のためのシグナル対ノイズ比」という用語は、バックグラウンドシグナルで割った検出下限で方法において検出されたシグナルを指す。本明細書で使用される場合、「上方漸近線のためのシグナル対ノイズ比」という用語は、バックグラウンドシグナルで割った検出上限で方法において検出されたシグナルを指す。
よって、一実施形態において、本明細書に開示される方法は、陰性対照またはブランクとは顕著に異なる量でヒトFVIIIのLOQを検出することができる。この実施形態の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、10ng以下、9ng以下、8ng以下、7ng以下、6ng以下、5ng以下、4ng以下、3ng以下、2ng以下、1ng以下のヒトFVIIIの、LOQを有する。この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、900pg以下、800pg以下、700pg以下、600pg以下、500pg以下、400pg以下、300pg以下、200pg以下、100pg以下のヒトFVIIIの、LOQを有する。この実施形態の更なる態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、90pg以下、80pg以下、70pg以下、60pg以下、50pg以下、40pg以下、30pg以下、20pg以下、10pg以下のヒトFVIIIの、LOQを有する。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、9pg以下、8pg以下、7pg以下、6pg以下、5pg以下、4pg以下、3pg以下、2pg以下、1pg以下のヒトFVIIIの、LOQを有する。この実施形態のまた他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、0.9pg以下、0.8pg以下、0.7pg以下、0.6pg以下、0.5pg以下、0.4pg以下、0.3pg以下、0.2pg以下、0.1pg以下のヒトFVIIIの、LOQを有する。
この実施形態の別の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、10nM以下、9nM以下、8nM以下、7nM以下、6nM以下、5nM以下、4nM以下、3nM以下、2nM以下、または1nM以下のヒトFVIIIの、LOQを有する。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、900pM以下、800pM以下、700pM以下、600pM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下、または100pM以下のヒトFVIIIの、LOQを有する。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、100pM以下、90pM以下、80pM以下、70pM以下、60pM以下、50pM以下、40pM以下、30pM以下、20pM以下、または10pM以下のヒトFVIIIの、LOQを有する。この実施形態のまた他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、10pM以下のヒトFVIII、9pM以下、8pM以下、7pM以下、6pM以下、5pM以下、4pM以下、3pM以下、2pM以下、または1pM以下のヒトFVIIIの、LOQを有する。この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、1000fM以下、900fM以下、800fM以下、700fM以下、600fM以下、500fM以下、400fM以下、300fM以下、200fM以下、または100fM以下のヒトFVIIIの、LOQを有する。この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、100fM以下、90fM以下、80fM以下、70fM以下、60fM以下、50fM以下、40fM以下、30fM以下、20fM以下、または10fM以下のヒトFVIIIの、LOQを有する。この実施形態の更に他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、10fM以下、9fM以下、8fM以下、7fM以下、6fM以下、5fM以下、4fM以下、3fM以下、2fM以下、または1fM以下のヒトFVIIIの、LOQを有する。
【0077】
本明細書に開示される方法は、50%以下の精度を有し得る。この実施形態の態様において、本明細書に開示される方法は、50%以下、40%以下、30%以下、または20%以下の精度を有し得る。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される方法は、15%以下、10%以下、または5%以下の精度を有する。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される方法は、4%以下、3%以下、2%以下、または1%以下の精度を有し得る。
【0078】
本明細書に開示される方法は、少なくとも50%の精度を有し得る。この実施形態の態様において、本明細書に開示される方法は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%の精度を有し得る。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される方法は、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の精度を有し得る。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される方法は、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の精度を有し得る。
【0079】
本明細書に開示される方法は、統計的に有意である下方漸近線についてのシグナル対ノイズ比、及び統計的に有意である上方漸近線についてのシグナル対ノイズ比を有し得る。この実施形態の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、または少なくとも20:1の、下方漸近線についてのシグナル対ノイズ比を有し得る。この実施形態の他の態様において、本明細書に開示される方法は、例えば、少なくとも10:1、少なくとも15:1、少なくとも20:1、少なくとも25:1、少なくとも30:1、少なくとも35:1、少なくとも40:1、少なくとも45:1、少なくとも50:1、少なくとも60:1、少なくとも70:1、少なくとも80:1、少なくとも90:1、または少なくとも100:1、少なくとも150:1、少なくとも200:1、少なくとも250:1、少なくとも300:1、少なくとも350:1、少なくとも400:1、少なくとも450:1、少なくとも500:1、少なくとも550:1、または少なくとも600:1の上方漸近線についてのシグナル対ノイズ比を有し得る。
【0080】
本明細書に開示される方法の特異性は、例えば、他の動物由来のFVIIIなどの、他の関連する成分を除外してヒトFVIIIを測定する方法の能力を定義する。本明細書に開示される方法の選択性は、試料中の様々な物質を区別する方法の能力を説明する。本明細書に開示される方法の直線性は、試料中のヒトFVIIIの濃度に比例して、直接的に、または十分に定義された数学的変換によって、結果を誘発する方法の能力を説明する。よって、一実施形態において、本明細書に開示される方法は、例えば、他の動物由来のFVIIIの活性の70以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、または10%以下を有する、ヒトFVIIIを他の動物から区別し得る。
【0081】
本明細書に開示される方法の堅牢性は、方法の通常(だが可変的な)条件下で同一の試料について得られた結果の再現性を説明する。本明細書に開示される方法の頑健性は、方法パラメータにおける小さいが意図的な変動によって影響を受けないままであるその能力を測定する方法の能力を説明し、通常使用におけるその信頼性の指標を提供する。よって、堅牢性は、不可避の変化を評価するのに対し、頑健性は、意図的な変化を評価する。堅牢性及び頑健性によって評価される典型的なパラメータには、凍結/解凍の効果、インキュベーション時間、インキュベーション温度、試薬の寿命、試料調製、試料保存、細胞継代数、多くの毒素、精製間の変動性、及びニッキング反応間の変動性が含まれる。本明細書に開示される方法についての頑健性パラメータには、細胞バンク(凍結の開始、中間、及び終了)、細胞継代レベル、細胞播種密度、細胞ストック密度(培養中の日数)、フラスコ中の細胞齢(播種までの待機時間)、インキュベーション時間、異なるプレート、血清の過剰量、及び試薬の供給源が含まれる。本明細書に開示される方法のシステム好適性は、試薬及び器具の性能を含む、方法性能を、参照標準の分析によって経時的に決定する方法の能力を説明する。システム好適性は、装置、電子機器、アッセイ性能、及び分析される試料が、統合されたシステムを構成するという事実を指す。システム好適性は、平行性について試験することによって評価することができ、これは、log用量対応答をプロットするときであり、参照の段階希釈及び試料の段階希釈は、平行曲線を生じさせるはずである。
【0082】
本明細書の態様は、本明細書に開示される方法を実施するのに有用な1つ以上の成分を含むキットを開示する。キットの1つ以上の成分は、本明細書に開示される1つ以上の捕捉剤、1つ以上の固相支持体、及び/またはヒトFVIIIの存在を検出及び/またはその活性を測定するのに必要な1つ以上の試薬を含み得る。本明細書に開示されるキットは、固相及び固相に固定された捕捉剤を含むことができる。本明細書に開示されるキットは、活性化第IX因子(FIXa)、第X因子(FX)、カルシウムイオン、リン脂質、及びトロンビンを含む発色アッセイにおいて使用される1つ以上の試薬を、1つのまたは別個のバイアルにおいて含むことができる。いくつかの実施形態において、トロンビンは、プロトロンビンとして供給され得る。いくつかの実施形態において、FIXa及びFXは、1つのバイアルにおいて、別個のバイアルにおいてリン脂質、及びまた別個のバイアルにおいてカルシウムイオンと組み合わせられ得る。いくつかの実施形態において、FIXa、リン脂質、及びCaは、1つのバイアルにおいて、FXは、別個のバイアルにおいて組み合わされる。本明細書に開示されるキットはまた、FXa特異的発色基質(例えば、CH3OCO-D-シクロヘキシルアラニン-Gly-Arg-pNA)及び任意に停止剤(例えば、酢酸)を含むことができる。発色基質バイアルはまた、合成トロンビン阻害剤を含有し得る。試薬は、任意の供給源、例えば、ヒトまたは動物(主にウシ供給源)のものであり得る。
【0083】
本明細書に開示されるキットはまた、捕捉剤及び/またはアッセイステップのための陽性対照として有用なFVIII参照調製物を含み得る。所望の場合、この成分は、試験試料中で検出されたシグナルを比較することができる標準曲線の生成を促進するために、複数の濃度で試験キットに含めることができる。
【0084】
本明細書に開示されるキットは、結合緩衝液、反応緩衝液、FVIII希釈緩衝液、及び本明細書に記載されるものなどの洗浄緩衝液のうちの1つ以上を更に含むことができる。
【0085】
キットは、概して、1つ以上の別個の組成物として、または任意に、試薬の適合性が許容する場合、混合物として、成分を保持する1つ以上の容器を有するパッケージを含む。キットはまた、ユーザー観点から望ましくあり得る、他の材料(複数可)、例えば、緩衝液(複数可)、希釈剤(複数可)、標準(複数可)、及び/または試料処理、洗浄、もしくはアッセイの任意の他のステップを実施するのに有用な任意の他の材料(複数可)を含むことができる。本明細書に開示されるキットはまた、本明細書に開示される1つ以上の方法を実施するための指示を含み得る。本明細書に開示されるキットに含まれる指示は、包装材料に貼付することができ、または添付文書として含めることができる。指示は、典型的には、書面または印刷物であるが、そのようなものに限定されない。そのような指示を記憶し、それらをエンドユーザーに伝達することができる任意の媒体は、本明細書に開示される実施形態によって企図される。そのような媒体としては、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD ROM)などが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「指示」という用語は、指示を提供するインターネットサイトのアドレスを含むことができる。
【実施例】
【0086】
本発明は、以下の実施例によってもまた記載及び実証される。しかしながら、明細書のいかなる場所においても、これらの、及び他の実施例の使用は例示のためだけのものであり、本発明の、またはあらゆる例示形態の範囲及び意味を少しも制限するものではない。同様に、本発明は、本明細書で記載された任意の特定の好ましい実施形態に限定されるものではない。それどころか、本発明の多くの修飾及び変更は、本明細書を読むことで当業者に明らかとなり得、そしてこのような変更は、本発明の趣旨または範囲を逸脱しない範囲で実施可能である。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲に付与される権利と同等の範囲全体に加えて特許請求の範囲の用語によってのみ制限されるべきである。
【0087】
実施例1:モノクローナル抗体ベース発色FVIII活性アッセイの説明
ELISAリーダーELx808(BioTek、Szabo,Vienna,Austria)、プレートウォッシャー(ELx405、BioTek)、ピペッティングロボットシステム(Precision 2000、BioTek)、及びプレートシェーカー(PHMP-4、Grant Bio.Szabo,Vienna,Austria)を使用して、方法を開発した。更に、96ウェルNunc MaxiSorp F96平底プレートをThermoFisher Scientific(Vienna,Austria)から入手した。緩衝液化学物質は、VWR(Vienna,Austria)から購入し、Tween 20(EIAグレード)は、Bio-Rad(Vienna,Austria)から入手し、塩酸ベンズアミジン一水和物は、Sigma(Vienna,Austria)から入手した。モノクローナル抗第VIII因子(FVIII)抗体は、Green Mountain Antibodies(A2-HC、GMA-8024、Green Mountain Antibodies、Szabo,Vienna,Austria)から購入した。発色FVIII活性試験のための試薬(試薬A:リン脂質、ヒト血清アルブミン、ロットコード#7M..、試薬B:FIX、FX、Ca2+ヒト血清アルブミン、ロットコード#7L..、基質FXa-1:10μmol+0.012μmolのα-NAPAP/バイアル、ロットコード#8M..、FVIII反応緩衝液、6.06g/LのTris、3.03g/LのNa2EDTA、25g/LのNaCl、pH8.3、ロットコード#9T..、及びFVIII希釈緩衝液3.4g/Lのイミダゾール、5.85g/LのNaCl、pH7.4、ロットコード#9Y.)は、Baxter(Vienna,Austria)からであった。以下の緩衝液/溶液を調製した:コーティング緩衝液(0.1MのNaHCO3、0.1MのNa2CO3、pH9.5)、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、0.8%のNaCl、0.02 %のKCl、0.02%のKH2PO4、0.126%のNa2HPO4×2H2O、pH7.2)、洗浄緩衝液(PBST、0.05%のTween 20を含むPBS)、遮断/希釈緩衝液(0.1%の脱脂粉乳、2mMのベンズアミジン、650mMのNaClを含むPBST)、停止溶液(20%の酢酸)、及び抗体捕捉溶液(コーティング緩衝液中で1:100に希釈された、抗FVIIIモノクローナル抗体)。
【0088】
100μL/ウェルの抗体捕捉溶液を、+2~+10℃で一晩コーティングした。3回行われる、PBSTでの洗浄ステップ後、プレートを200μL/ウェルの遮断緩衝液で室温(RT)で1時間遮断し、次いで洗浄した。ウェルを100μL/ウェルの希釈緩衝液で充填した。6つの段階1+1希釈物を、標準、試料、及びアッセイ対照についてプレート上で直接二通りに調製した。B11及びB12位をアッセイブランクとして使用した。0.97IU/mLのFVIII濃度を有するヒト血漿標準ORKL17(Siemens)を参照標準として使用した。6点較正曲線は、3.03~97mIU/mLのFVIII活性範囲をカバーした。試料を、それらの推定FVIIIレベルに従って希釈して、較正曲線の範囲内のFVIII濃度を得たが、アッセイ対照(正常参照血漿CRYOcheck、Precision BioLogic CCNRP-05)を1/5で希釈した後、段階1+1希釈をプレート上で調製した。希釈物を室温で1時間インキュベートした。次いで、洗浄されたプレートをFVIII希釈緩衝液(200μL/ウェル)で10分間室温でインキュベートし、空にした後、発色FVIII活性アッセイを、Precision 2000システムを使用して行った。FVIII希釈緩衝液を試薬Aと1+1で混合し、装填し(40μL/ウェル)、試薬B(20μL/ウェル)を添加し、プレートをプレートシェーカー上で室温で15分間インキュベートした。基質(100μL/ウェル)を添加し、室温で25分間のインキュベーション後、停止溶液(40μL/ウェル)を添加した。プレートは、405nm(参照波長620nm)で測定し、定量的評価は、6つの非ゼロアッセイキャリブレーターのブランク補正光学密度(OD)とFVIII濃度との間の二重対数較正曲線に基づいた。
【0089】
アッセイ(
図1)は、ウェルの表面上で捕捉及び固定化されたヒトFVIIIで実施された、ヒトFVIIIの特異的捕捉ステップ、続いて発色活性アッセイを含んだ。このアッセイでは、FVIIIをヒトトロンビンによってまず活性化して、活性化FVIII(FVIIIa)を形成した。FVIIIaは、次いで、過剰な試薬によって供給された、第X因子(FX)及び活性化第FIX因子(FIXa)でテナーゼ複合体を形成し、活性化第X因子(FXa)の生成をもたらした。FVIII濃度に厳密に依存的な定義された範囲内にある、得られたFXa濃度は、次いで、発色pNAを形成する基質CH
3OCO-D-シクロヘキシルアラニン-Gly-Arg-pNAの加水分解によって決定した。
【0090】
実施例2:適切な捕捉抗体の選択
本発明の方法における使用に適した抗FVIII抗体は、少なくとも以下の特徴を有するべきである:(1)ヒトFVIIIについての絶対選択性、及び(2)FVIIIの抗体の結合は、発色FVIII活性試験に干渉するべきではない。後者の必要条件を、表1に要約された抗FVIII抗体について調査した。
【表1】
【0091】
抗体を、PBS中での希釈によって達成される、10μg/mLの濃度でF96マイクロプレート(100μL/ウェル)のウェル上にコーティングした。PBSTでの洗浄ステップ後、650mMのNaCl、1mg/mLの脱脂粉乳、及び2mMのベンズアミジンを含有するPBST中で調製された、Bドメイン欠失(BDD)rFVIIIの段階1+1希釈系列を、ウェルに装填し(100μL/ウェル)、60分間室温でインキュベートした。次いで、プレートを洗浄し、実施例1に上述されるように更に処理した。
図2は、表1に列挙される抗FVIII抗体について188、94、及び47mU/mLのBDD rFVIII濃度について得られたブランク補正ODを示す。
図2において左から右へ、抗FVIII捕捉抗体は、GMA-8024、GMA-8023、GMA-012、ESH-8、ESH-4、RFF-VIIIC/8、RFF-VIIIC/5、及びN55195Mである。
【0092】
発色FVIIIアッセイにおける応答は、BDD rFVIIIを捕捉するために使用される抗体に応じて、かなり異なった。それにもかかわらず、用量依存的応答が全てのそれらの抗体について観察され、これは明確なシグナルを提供した。FVIIIの重鎖のA2ドメインに対して指向される、抗体GMA-8024は、評価される3つ全てのFVIII濃度について最も高いシグナルを提供し、したがって、以下の実施例において使用された。
【0093】
実施例3:ヒト参照血漿調製物で得られたアッセイ較正曲線
0.97IU/mL(ロット番号503267)の標識FVIII活性を有するヒト参照血漿調製物ORKL17(Siemens)をアッセイ較正曲線に使用した。この曲線は、6つの段階希釈(1/10、1/20、1/40、1/80、1/160、及び1/320)を含み、3.03~97.0mIU/mLの範囲であった。表2は、6つのアッセイキャリブレーターD1~D6及びブランクについての平均ブランク補正光学密度(OD)を示す。表2はまた、アッセイ標準D1~D6のブランク補正OD及びFVIII濃度の対数間で計算された、log-log回帰曲線の属性を示す。特に、勾配、y-切片(y-int)、相関係数r、及び相対総合誤差(RTE)が示される。RTEは、式RTE=|x
n-x
c|+2 SD x
c×100に従って計算し、式中、x
n及びx
cは、それぞれ、アッセイ標準の公称及び計算濃度を表す。アッセイ標準の計算濃度x
cは、較正曲線の式において較正曲線標準のブランク補正ODを挿入することによって得られた。得られた濃度にそれぞれの希釈係数を乗じ、最終的に、6つの結果を平均化し、この平均の標準偏差(SD x
c)も計算した。これらの較正曲線属性について、108の曲線の最小及び最大値ならびに平均及び対応する相対標準偏差が示される。
【表2】
【0094】
3.03~97.0mIU FVIII/mLの範囲の、108のlog-log較正曲線は、同様の形状、良好な正確性、及び適切な精度を実証した。よって、アッセイ標準D1~D6について決定された平均ブランク補正ODのRSDは、より低い濃度について示されたより高いRSDで15.2%を超えなかったRSDを有した。log-log較正曲線の平均勾配及び平均y-切片についてのRSDは、それぞれ、4.3%及び-5.3%であり、較正曲線の同様の形状を実証した。0.9977~1.0000の範囲である個々の値での0.9996の平均相関係数、及び1.6%~18.3%の範囲である個々の値での6.5%の低い平均RTEは両方、適用された曲線フィッティングモデルの正確性を確認した。留意すべきことに、RTEは、所与の較正曲線の適切なフィッティングを示す25%を超えるべきではない。
図3は、平均較正曲線及びバックフィットアッセイ較正のそれらの公称値との一致を示す。
【0095】
キャリブレーターバックフィッティングの結果は、全てのバックフィット値がそれらのそれぞれの公称値から±14%未満逸脱したため、較正曲線の良好な正確性を裏付けた。これは明らかに、例えば、生体分析方法の検証のためのEMAガイドラインによって、定義された±20%範囲内である[2]。3.03mIU FVIII/mL、D6の正確で精度の高い決定を可能にする、アッセイの感度は、従来の発色アッセイのそれと同様であり、明らかに低減していないように思われたが、FVIIIは、発色試験を実行する前に抗体によって捕捉されなければならなかった。
【0096】
実施例4:ヒトBドメイン欠失(BDD)組換えFVIIIで得られたアッセイ較正曲線
較正曲線は、実施例1に記載される方法を使用して750IU/mLの活性でヒト組換えBDD FVIII調製物を使用して構築した。較正曲線は、2.9~93.8mIU/mLの範囲であった。表3は、4つのlog-log較正曲線について計算された、アッセイキャリブレーターD1~D6についての平均ブランク補正OD、ブランク及び勾配、y-切片、相関係数r、及びRTEを示す。
【表3】
【0097】
重鎖のA2ドメインに位置する、捕捉抗体GMA-8024のエピトープの位置を考慮すると、BDD FVIII調製物で得られたシグナルは、全長血漿FVIIIのものと高さが同様であった。4つのlog-log較正曲線は、同様の形状、良好な正確性、及び適切な精度を実証した。よって、平均ブランク補正ODについて決定されたRSDは、7.1%を超えなかったが、勾配及びy切片についてのRSDは、それぞれ、2.0%及び1.8%と低かった。0.9989の平均相関係数及び12.0%の平均RTEは、適用された曲線フィッティングモデルの正確性を確認した。較正曲線フィッティングの適切な正確性は、全てバックフィット値がそれらのそれぞれの公称値から±13%未満逸脱した、キャリブレーターバックフィッティングの結果によって裏付けられた。アッセイ標準D6に含有される2.9mU FVIII/mLの正確で精度の高い決定を可能にする、アッセイの感度は、発色試験を実行する前にモノクローナル抗体によってFVIIIを捕捉する追加のステップにもかかわらず、従来の発色アッセイのそれと同様であった。更に、同じ規模の勾配は、血漿由来全長FVIII及びBDD rFVIIIについて得られ、捕捉ステップが両方のFVIII分子について効率的に機能したことを証明した。
図4は、BDD rFVIII調製物を使用することによって得られた平均較正曲線及びバックフィットアッセイ較正のそれらの公称値との一致を示す。
【0098】
実施例5:実験動物クエン酸血漿試料についての選択性調査
抗体ベース発色FVIII活性アッセイの選択性は、1/10の最小希釈での異なるクエン酸実験動物血漿試料の測定によって確認された。表4は、得られた結果を示し、2.9mU/mLの最も低いFVIII濃度でのアッセイ標準D6の平均OD、ブランクについての平均OD、及び1/10希釈動物血漿試料について測定されたものを提供した。加えて、「Δブランク%」及び「ΔD6%」というカラムは、1/10希釈血漿試料について決定されたシグナルを、ブランク及びアッセイ標準D6のものと関連付け、それぞれ、(OD
血漿-OD
ブランク)/OD
ブランク6×100及び(OD
血漿-OD
D6)/OD
D6×100として計算された相対差を示す。
【表4】
【0099】
6つのクエン酸動物血漿試料の中で、ヒツジ血漿試料のみは、アッセイブランクよりもわずかに高いシグナルを示し、他の全ては、ブランクよりもわずかに低いシグナルを提供した。しかしながら、これらのわずかな差は、アッセイとの実質的な干渉を示さなかったが、むしろ測定変動性を反映した。2.9mU FVIII/mLを含有する最も低いアッセイ標準のパーセントとして表され、1/10希釈動物血漿試料によって誘発されたシグナルは、少なくとも20.4%低かった。これらのデータは、内因性動物FVIIIがアッセイに干渉したという証拠がなかったため、ヒトFVIIIについての抗体ベース発色FVIIIアッセイの選択性を確認した。
【0100】
実施例6:実験動物血清試料についての選択性調査
抗体ベース発色FVIII活性アッセイの選択性は、1/10の最小試料希釈での異なる動物血清試料の測定によって確認された。表5は、得られた結果を示し、2.9mU/mLの最も低いFVIII濃度でのアッセイ標準D6の平均OD、ブランクについての平均OD、及び1/10希釈動物血清試料について測定されたものを提供した。加えて、「Δブランク%」及び「ΔD6%」というカラムは、血清試料について決定されたシグナルを、ブランク及びアッセイ標準D6のものと関連付け、それぞれ、(OD
血漿-OD
ブランク)/OD
ブランク×100及び(OD
血漿-OD
D6)/OD
D6×100として計算された相対差を示す。
【表5】
【0101】
全ての血清試料は、ブランクよりもわずかに低いシグナルを提供し、ブランクとの差は、2.5%を超えなかった。2.9mU FVIII/mLを含有する最も低いアッセイ標準のパーセントとして表され、1/10希釈血清試料によって誘発されたシグナルは、少なくとも23.3%低かった。これらのデータは、内因性動物タンパク質がアッセイに干渉したという証拠がなかったため、ヒトFVIIIについての抗体ベース発色FVIIIアッセイの選択性を確認した。
【0102】
実施例7:クエン酸実験動物血漿試料中のヒトFVIII回収率
クエン酸動物血漿試料を、100mUのヒトFVIIIでスパイクし、1/10の最終希釈で測定した。得られたFVIII回収率は、許容可能、すなわち、一般に許容される80~120%の範囲[2]内であり、スパイク-回収率実験に使用された100mU/mLの低FVIII濃度にもかかわらず、83.3%から116.9%まで変動した。これらのデータは、回収率を明らかに増加させたであろう、内因性動物第VIII因子からのシグナルがなかったため、抗体駆動捕捉ステップによって導入された選択性を確認した。そのような上昇した回収率は、ヒトFVIIIに特異的ではない従来の発色第VIII因子アッセイを実行するときに観察されたであろう。
図5は、クエン酸動物血漿種にスパイクされたヒトFVIIIについて決定された個々の回収率を示す。
【0103】
実施例8:実験動物血清試料中のヒトFVIII回収率分析
動物血清試料を、100mUのヒトFVIIIでスパイクし、1/10の最終希釈で測定した。
図6は、動物血清試料にスパイクされたヒトFVIIIについて決定された回収率を示す。
【0104】
回収率は、良好、すなわち、一般に許容される80~120%の範囲[2]内であり、スパイク-回収率実験に使用された100mU/mLの低FVIII濃度にもかかわらず、86.7%から115.8%まで変動した。データは、動物アルブミン及び免疫グロブリンを含む主要血清タンパク質について比較的高い濃度でアッセイに導入された、動物血清タンパク質の存在によって引き起こされた干渉がなかったことによって、アッセイの選択性を確認した。
【0105】
実施例9:動物血漿及び血清試料中のスパイクされたヒトFVIIIについての平行性調査
アッセイ較正曲線が緩衝液で希釈された標準で構築されるとき、試料の濃度-応答曲線のアッセイ標準のそれに対する十分な平行性が前提条件である。しかしながら、緩衝液ベースの較正曲線の使用は、アッセイの頑健性を増加するだけでなく、生体試薬の数を低減することによって、及び異なる動物マトリックスの個々の較正曲線の構築を必要としないことによって、その複雑性を軽減することも意図される。血漿/血清マトリックスの影響がないことを実証する緩衝液及び動物マトリックス中の分析物の希釈系列間の適切な平行性は、この簡素化を可能にすることができる。したがって、平行性は、100mU/mLのヒトFVIIIでスパイクされた血漿/血清試料について得られた結果を用いてチェックした。
図7は、クエン酸ヤギ、ヒツジ、及びカニクイザル血漿にスパイクされたヒトFVIIIの用量-応答曲線を示す。
【0106】
クエン酸ヤギ、ヒツジ、及びカニクイザル血漿についての濃度-応答曲線の勾配は、1/10の希釈で開始して、高濃度の動物タンパク質の存在にもかかわらず、アッセイ標準のそれと同様の勾配を有した。よって、動物試料の勾配は、アッセイ標準のそれと8%未満で異なった。それらの直線性は、ほぼ同一であり、全ての決定係数は、少なくとも0.995であった。これらのデータは、アッセイに対する動物タンパク質マトリックスの本質的な影響がない可能性が最も高いことを実証し、よって、緩衝液ベースの較正曲線を使用することの重要なアッセイ簡素化を支持した。
図8は、クエン酸ウサギ及びラット血漿ならびにマウス血清にスパイクされたヒトFVIIIについての用量-応答曲線を示す。
【0107】
クエン酸ラット及びウサギ血漿ならびにマウス血清についての濃度-応答曲線の勾配は、希釈1/10で開始して、7%未満のアッセイ標準との差でアッセイ標準と同様の勾配を有した。それらの直線性は、ほぼ同一であり、決定係数は、少なくとも0.992であった。これらのデータは、アッセイに対する動物タンパク質マトリックスの本質的な影響がない可能性が最も高いことを実証し、よって、緩衝液ベースの較正曲線を使用することの重要なアッセイ簡素化を支持した。
図9は、クエン酸アカゲザル血漿及びモルモット血清にスパイクされたヒトFVIIIについての用量-応答曲線を示す。
【0108】
アカゲザル血漿及びモルモット血清についての濃度-応答曲線の勾配は、アッセイ標準のそれと同様の勾配を有し、動物試料の用量-応答曲線の勾配は、アッセイ標準のそれと6%未満で異なった。それらの直線性は、同一であった(R
2=0.999)。これらのデータは、アッセイに対する動物タンパク質マトリックスの本質的な影響がない可能性が最も高いことを実証し、よって、緩衝液ベースの較正曲線を使用することの重要なアッセイ簡素化を支持した。
図10は、ブタ及びハムスター血清にスパイクされたヒトFVIIIについての用量-応答曲線を示す。
【0109】
ブタ及びハムスター血清についての濃度-応答曲線の勾配は、アッセイ標準のそれと同様の勾配を有し、動物試料の勾配は、アッセイ標準のそれと5%未満で異なった。それらの直線性は、少なくとも0.999の相関係数で、ほぼ同一であった。これらのデータは、アッセイに対する動物タンパク質マトリックスの本質的な影響がない可能性が最も高いことを実証し、よって、緩衝液ベースの較正曲線を使用することの重要なアッセイ簡素化を支持した。
【0110】
実施例10:カニクイザル血漿中の選択されたアッセイ性能特徴
この試験のために、アッセイを、Siemens参照血漿の代わりにアッセイ較正のために0.88IU/mLの割り当てられたFVIII濃度で参照血漿SSC/ISTH #04を使用して実施例1に記載されるように実施した。これは、2.8~88mIU/mLの較正範囲で感度のわずかな増加をもたらしたが、較正曲線の品質属性には影響を及ぼさなかった。カニクイザル血漿中の性能特徴の中で、ヒトFVIII測定についての選択性は、天然及びヒトFVIIIでスパイクされた後のクエン酸カニクイザル血漿の測定によって確認された。このスパイクは、組換えヒト全長FVIII及びヒト組換えBDD FVIIIで実施した。スパイクされた試料は、アッセイ正確性についての尺度としてFVIII回収率を計算するために使用し、一方、それらの繰り返された分析は、アッセイの繰り返し性に関するデータを提供した。最後に、スパイクされた試料の希釈系列について得られた濃度-応答曲線は、標準と試料との間の平行性の評価を可能にした。表6は、2.8mIU/mLのFVIII濃度を表す、クエン酸カニクイザル血漿プールの、及び対応するアッセイ標準D6の、6つの1/10希釈について決定された、ブランク補正ODを示す。
【表6】
【0111】
アッセイ標準D6は、2.8mIU/mLのFVIII濃度を表した。
【0112】
6つの1/10希釈されたクエン酸カニクイザル血漿試料は、0.001及び-0.003の平均でゼロに近いブランク補正ODを有したが、最も低いFVIII濃度(2.8mIU/mL)を含有する対応するアッセイ標準は、それぞれ、0.107及び0.100のブランク補正ODを示した。よって、クエン酸カニクイザル血漿について見出されたFVIII濃度は、<0.03IU/mLであり、アッセイの定量下限を表した。
【0113】
カニクイザル血漿中のスパイク-回収率試験のために、7部の希釈緩衝液を、2部のクエン酸カニクイザル血漿、ならびに、それぞれ、1.63及び1.76IU/mLのFVIII濃度を表す、1部の希釈された全長組換えFVIIIまたは組換えBDD FVIIIと混合した。次いで、これらの試料を、プレート上で直接1+1で段階希釈し、1/10のカニクイザル血漿の最終希釈、ならびに全長及びBDD rFVIIIでスパイクされた試料について、それぞれ、81.5及び88.1mIU/mLの公称FVIII濃度をもたらした。表7は、クエン酸カニクイザル血漿試料にスパイクされた、全長及びBDD rFVIIIについて決定された回収率を示す。
【表7】
【0114】
決定された全ての回収率は、スパイクされた全長rFVIII調製物について決定されたわずかに良好な回収率で、一般的に許容される100±20%範囲内にあった[2]。特に、平均回収率は、それぞれ、全長及びBDD rFVIII調製物について102.7%及び92.4%であった。三重スパイクの平均について決定されたRSDは、2.8%を超えなかった。これらのデータは、本発明のアッセイによって、内因性サルFVIIIによる干渉なしに、ヒトFVIIIの正確かつ精度の高い測定を達成することができることを確認した。表8は、用量-応答曲線の勾配、相対勾配(列「勾配%」)、及び相関係数を示す。
【表8】
【0115】
「勾配%」という行は、対応するアッセイ標準の用量-応答曲線の勾配のパーセントとして表される、相対的な勾配を示す。
【0116】
スパイクされたサル血漿試料の用量-応答曲線について決定された勾配は、アッセイ標準とは6%以下で異なった。用量-応答曲線の平均相対勾配は、それぞれ、全長及びBDD rFVIIIでスパイクされた血漿試料について、104.9%及び100.5%であった。
【0117】
実施例11:緩衝液における選択されたアッセイ性能特徴
凍結乾燥されたヒト参照血漿調製物CRYOcheck(Precision BioLogic)をアッセイ対照として使用した。
図11A~11Dは、この期間にわたる精度及び正確性を実証するために、6ヶ月の期間にわたって3人のオペレーターによって実施された、108の測定のデータを示す。
【0118】
6ヶ月の期間にわたって3人のオペレーターによって実施された、108の測定によって得られた平均は、0.57±0.06IU/mL(RSD 10.4%)であった。データは、D’Agostino&Pearson検定で確認されるように正規分布した(p=0.1174、GraphPad Prism 8.3)。GraphPad Prism 8.3で計算されたANOVAは、3人のオペレーターによって得られた結果間に統計的に有意な差がなかったことを示した(p=0.3407)。これらのデータは、6ヶ月の長期間にわたるアッセイの適切な中間精度及び頑健性を確認した。表9は、全長及びBDD rFVIII調製物で行われた、繰り返し性試験の結果を示す。
【表9】
【0119】
両方のrFVIII調製物は、30IU/mLよりも高いFVIII活性を有し、よって、全長及びBDD rFVIII調製物の測定のために調製された段階希釈系列は、それぞれ、希釈1/400及び1/20000で開始した。1実行で6倍の測定について得られたRSDは、低かった:全長及びBDD rFVIIIについて、それぞれ、3.0%及び1.8%のRSDを決定した。よって、これらの結果は、生体分析方法の一般的な精度要件を満たした[2]。
【0120】
実施例12:抗体ベース発色FVIIIアッセイに対する溶媒-洗浄剤ウイルス不活性化溶液の影響
FVIIIの抗体ベース捕捉、続いて発色活性測定は、これまでのところアッセイへのかなりの干渉のために測定に適していない試料マトリックス中のFVIII活性を測定する追加の選択肢を提供する。本発明のアッセイの利点は、捕捉ステップに影響がない限り、捕捉されたFVIIIを洗浄することによって、発色アッセイに干渉する物質を除去することができることである。
【0121】
有効なウイルス不活性化溶液としてしばしば使用され、1%のTriton X-100、0.3%のポリソルベート80、及び0.3%のリン酸トリ-n-ブチル(tnBP)を含有する溶媒洗剤(S/D)溶液は、発色活性アッセイと不適合性である特定のマトリックスの一例である。しかしながら、S/D溶液の成分の存在は、プレート結合抗体によるFVIIIの捕捉に干渉することは予想されなかった。
図12は、S/D溶液、すなわち、1%のTriton X 100、0.3%のポリソルベート80、及び0.3%のtnBPの存在下、10IUのヒトFVIII/mL、ならびにPBS緩衝液中の同じFVIII濃度(=天然FVIII)を含有する試料について得られた濃度-応答曲線を示す。
【0122】
S/D溶液及び緩衝液中のFVIIIについて得られたほぼ同一の希釈-反応曲線は、S/D混合物がアッセイ性能に対する影響を有さなかったことを示した。勾配及び二乗相関係数は、両方の試料間の類似性を示した。
図13は、同様の実験の結果を示すが、1IU/mLのFVIII濃度のみを使用し、10倍低い試料希釈を必要とし、よって抗体ベースFVIII捕捉中にS/D成分のレベルを著しく増加させる。
【0123】
より低い濃度のFVIIIを使用する条件下では、はるかに高い濃度のS/D成分が初期捕捉ステップ中に存在し、両方の希釈-反応曲線は、勾配及び直線性において非常に類似していた。よって、S/D溶液の存在は、アッセイ性能に対する最小限の影響を有したか、または影響を有さなかった。
図14は、S/D溶液中の3つのレベルのヒトFVIII(10、1、及び0.1IU/mL)及びS/D溶液の個々の成分の回収率を示す。
図15は、S/Dウイルス不活性化溶液の個々の成分の存在下でのアッセイ性能を示す。
参考文献
[1]Rotblat F,Goodall AH,O’Brien DP,Rawlings E,Middleton S,Tuddenham EGD(1983):Monoclonal antibodies to human procoagulant factor VIII.J Lab Clin Med 101,736-46.
[2]EMEA/CHMP/EWP/192217/2009.Bioanalytical assay validation(2011).
***
【0124】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際、本明細書に記載されるものに加えた本発明の様々な修飾は、前述の記載から当業者には明らかとなるであろう。このような修飾は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0125】
本明細書で引用される全ての特許、出願、刊行物、試験方法、文献、及び他の資料は、本明細書に物理的に存在するかのように、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のヒト凝固第VIII因子(FVIII)の活性を測定するための方法であって、
前記試料は1つ以上のFVIII活性模倣剤を含み、前記方法は、
a)前記試料を、前記ヒトFVIIIに選択的に結合する捕捉剤と、
1つ以上のFVIII活性模倣剤の存在下で前記捕捉剤が前記ヒトFVIIIに選択的に結合することを可能にするのに十分な条件下及び時間にわたってインキュベートするステップであって、それによって反応混合物を形成し、前記捕捉剤が固体支持体に結合している、前記ステップ、
b)前記反応混合物からヒトFVIIIの非結合画分を除去するステップ、及び
c)発色アッセイを使用して、前記反応混合物中の前記ヒトFVIIIの活性を測定するステップ
を含む、前記方法。
【請求項2】
d)FVIII参照調製物と比較することによって、前記反応混合物中の前記ヒトFVIIIの活性を決定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発色アッセイが、
c1)前記反応混合物に、活性化第IX因子(FIXa)、第X因子(FX)、カルシウムイオン、リン脂質、及びトロンビンを添加し、前記反応混合物を、活性化FX(FXa)を生成するのに十分な条件下及び時間にわたってインキュベートすること、
c2)前記反応混合物に、FXa特異的発色基質を添加し、前記反応混合物を、測定可能なシグナルを生成するのに十分な条件下及び時間にわたってインキュベートすること、
c3)任意に、前記反応混合物に、停止剤を添加して、前記FXa特異的発色基質からのシグナル生成を停止すること、及び
c4)前記反応混合物から生成された前記シグナルを測定すること
によって行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記発色基質がCH
3OCO-D-シクロヘキシルアラニン-Gly-Arg-pNAである、
及び/または前記停止剤が酢酸である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記捕捉剤が、ヒトFVIIIのA1、A2、A3、B、C1、またはC2ドメインに選択的に結合する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記捕捉剤が、ヒトFVIIIのA2ドメインに選択的に結合する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記捕捉剤が、ヒトFVIIIのBドメインに結合しない、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記捕捉剤が、抗体、抗原結合断片、アフィボディ、アプタマー、またはアフィニティリガンドである、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
捕捉抗体が、GMA-8024、GMA-8023、またはその抗原結合断片もしくはバリアントである、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記試料が、非ヒト動物
または実験動物由来の血漿及び/または血清を含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記非ヒト動物が、ヒツジ、ヤギ、カニクイザル、ウサギ、ラット、アカゲザル、マウス、ブタ、ハムスター、ミニピッグ、またはモルモットである、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記FVIII活性模倣剤が、抗体、抗原結合断片、ペプチド、核酸、または小分子である、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記FVIII活性模倣剤が、二重特異性抗体である、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記二重特異性抗体が、エミシズマブである、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
(1)前記試料が、ステップa)の前に希釈される;
(2)ステップa)におけるインキュベーションが、室温で約1時間にわたって行われる;
(3)ステップc1)におけるインキュベーションが、室温で約15分にわたって行われる;
(4)ステップc2)におけるインキュベーションが、室温で約25分にわたって行われる;及び/または
(5)ステップb)におけるヒトFVIIIの非結合画分の除去が、前記固体支持体を洗浄緩衝液で洗浄することによって行われる
請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記試料が、
ステップa)の前に、1:1~約1:100,000倍希釈される、
1:2~約1:20,000倍希釈される、または約1:10倍希釈される、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記固体支持体が、フラスコ、ELISAプレート、マルチウェルプレート、フィルム、チューブ、シート、カラム、またはミクロ粒子である、請求項1~
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒトFVIIIが、組換えFVIIIである、請求項1~
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒトFVIIIが、全長FVIII
、またはBドメイン欠失FVIIIである、請求項1~
18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
試料中のヒト凝固第VIII因子(FVIII)の活性を測定するためのキットであって、
i.前記ヒトFVIIIに選択的に結合する捕捉剤であって、固体支持体に結合している捕捉剤、
ii.活性化第IX因子(FIXa)、第X因子(FX)、カルシウムイオン、リン脂質、及びトロンビンのうちの1つ以上を含む第1のバイアル、
iii.FXa特異的発色基質を含む第2のバイアル、及び/または
iv.任意に、停止剤を含む第3のバイアル
を含む、前記キット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0125
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0125】
本明細書で引用される全ての特許、出願、刊行物、試験方法、文献、及び他の資料は、本明細書に物理的に存在するかのように、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
最後に、本発明の好ましい実施態様を項分け記載する。
[実施態様1]
試料中のヒト凝固第VIII因子(FVIII)の活性を測定するための方法であって、
a)前記試料を、前記ヒトFVIIIに選択的に結合する捕捉剤と、前記捕捉剤が前記ヒトFVIIIに選択的に結合することを可能にするのに十分な条件下及び時間にわたってインキュベートするステップであって、それによって反応混合物を形成し、前記捕捉剤が、固体支持体に結合している、前記ステップと、
b)前記反応混合物からヒトFVIIIの非結合画分を除去するステップと、
c)発色アッセイを使用して、前記反応混合物中の前記ヒトFVIIIの活性を測定するステップと、を含む、前記方法。
[実施態様2]
d)FVIII参照調製物と比較することによって、前記反応混合物中の前記ヒトFVIIIの活性を決定することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
[実施態様3]
前記発色アッセイが、
c1)前記反応混合物に、活性化第IX因子(FIXa)、第X因子(FX)、カルシウムイオン、リン脂質、及びトロンビンを添加し、前記反応混合物を、活性化FX(FXa)を生成するのに十分な条件下及び時間にわたってインキュベートすることと、
c2)前記反応混合物に、FXa特異的発色基質を添加し、前記反応混合物を、測定可能なシグナルを生成するのに十分な条件下及び時間にわたってインキュベートすることと、
c3)任意に、前記反応混合物に、停止剤を添加して、前記FXa特異的発色基質からのシグナル生成を停止することと、
c4)前記反応混合物から生成された前記シグナルを測定することと、によって行われる、実施態様1または2に記載の方法。
[実施態様4]
前記発色基質が、CH
3
OCO-D-シクロヘキシルアラニン-Gly-Arg-pNAである、実施態様3に記載の方法。
[実施態様5]
前記停止剤が、酢酸である、実施態様3または4に記載の方法。
[実施態様6]
前記捕捉剤が、ヒトFVIIIのA1、A2、A3、B、C1、またはC2ドメインに選択的に結合する、実施態様1~5のいずれかに記載の方法。
[実施態様7]
前記捕捉剤が、ヒトFVIIIの前記A2ドメインに選択的に結合する、実施態様1~6のいずれかに記載の方法。
[実施態様8]
前記捕捉剤が、ヒトFVIIIの前記Bドメインに結合しない、実施態様1~6のいずれかに記載の方法。
[実施態様9]
前記捕捉剤が、抗体、抗原結合断片、アフィボディ、アプタマー、またはアフィニティリガンドである、実施態様1~8のいずれかに記載の方法。
[実施態様10]
捕捉抗体が、GMA-8024、GMA-8023、またはその抗原結合断片もしくはバリアントである、実施態様9に記載の方法。
[実施態様11]
前記試料が、非ヒト動物由来の血漿及び/または血清を含む、実施態様1~10のいずれかに記載の方法。
[実施態様12]
前記非ヒト動物が、実験動物である、実施態様11に記載の方法。
[実施態様13]
前記非ヒト動物が、ヒツジ、ヤギ、カニクイザル、ウサギ、ラット、アカゲザル、マウス、ブタ、ハムスター、ミニピッグ、またはモルモットである、実施態様12に記載の方法。
[実施態様14]
前記試料が、クエン酸血漿を含む、実施態様9~13のいずれかに記載の方法。
[実施態様15]
前記試料が、1つ以上のFVIII活性模倣剤を含む、実施態様1~14のいずれかに記載の方法。
[実施態様16]
前記FVIII活性模倣剤が、抗体、抗原結合断片、ペプチド、核酸、または小分子である、実施態様15に記載の方法。
[実施態様17]
前記FVIII活性模倣剤が、二重特異性抗体である、実施態様16に記載の方法。
[実施態様18]
前記二重特異性抗体が、エミシズマブである、実施態様17に記載の方法。
[実施態様19]
前記試料が、ステップa)の前に希釈される、実施態様1~18のいずれかに記載の方法。
[実施態様20]
前記試料が、1:1~約1:100,000倍希釈される、実施態様19に記載の方法。
[実施態様21]
前記試料が、1:2~約1:20,000倍希釈される、実施態様20に記載の方法。
[実施態様22]
前記試料が、約1:10倍希釈される、実施態様21に記載の方法。
[実施態様23]
前記固体支持体が、フラスコ、ELISAプレート、マルチウェルプレート、フィルム、チューブ、シート、カラム、またはミクロ粒子である、実施態様1~22のいずれかに記載の方法。
[実施態様24]
ステップa)における前記インキュベーションが、室温で約1時間にわたって行われる、実施態様1~23のいずれかに記載の方法。
[実施態様25]
ステップc1)における前記インキュベーションが、室温で約15分にわたって行われる、実施態様1~24のいずれかに記載の方法。
[実施態様26]
ステップc2)における前記インキュベーションが、室温で約25分にわたって行われる、実施態様1~25のいずれかに記載の方法。
[実施態様27]
ステップb)におけるヒトFVIIIの非結合画分の前記除去が、前記固体支持体を洗浄緩衝液で洗浄することによって行われる、実施態様1~26のいずれかに記載の方法。
[実施態様28]
ステップb)におけるヒトFVIIIの非結合画分の前記除去が、前記固体支持体をPBS-Tween緩衝液で約3回洗浄することによって行われる、実施態様27に記載の方法。
[実施態様29]
前記ヒトFVIIIが、組換えFVIIIである、実施態様1~28のいずれかに記載の方法。
[実施態様30]
前記ヒトFVIIIが、全長FVIIIである、実施態様1~29のいずれかに記載の方法。
[実施態様31]
前記ヒトFVIIIが、Bドメイン欠失FVIIIである、実施態様1~29のいずれかに記載の方法。
[実施態様32]
試料中のヒト凝固第VIII因子(FVIII)の活性を測定するためのキットであって、
i.前記ヒトFVIIIに選択的に結合する捕捉剤であって、前記捕捉剤が、固体支持体に結合している、前記捕捉剤、
ii.活性化第IX因子(FIXa)、第X因子(FX)、カルシウムイオン、リン脂質、及びトロンビンのうちの1つ以上を含む、第1のバイアル、
iii.FXa特異的発色基質を含む、第2のバイアル、及び/または
iv.任意に、停止剤を含む、第3のバイアルを含む、前記キット。
[実施態様33]
前記捕捉剤が、ヒトFVIIIのA1、A2、A3、B、C1、またはC2ドメインに選択的に結合する、実施態様32に記載のキット。
[実施態様34]
前記捕捉剤が、ヒトFVIIIの前記A2ドメインに選択的に結合する、実施態様32または33に記載のキット。
[実施態様35]
前記捕捉剤が、ヒトFVIIIの前記Bドメインに結合しない、実施態様32または33に記載のキット。
[実施態様36]
前記捕捉剤が、抗体、抗原結合断片、アフィボディ、アプタマー、またはアフィニティリガンドである、実施態様32~35のいずれかに記載のキット。
[実施態様37]
捕捉抗体が、GMA-8024、GMA-8023、またはその抗原結合断片もしくはバリアントである、実施態様36に記載のキット。
[実施態様38]
前記固体支持体が、フラスコ、ELISAプレート、マルチウェルプレート、フィルム、チューブ、シート、カラム、またはミクロ粒子である、実施態様32~37のいずれかに記載のキット。
[実施態様39]
前記発色基質が、CH
3
OCO-D-シクロヘキシルアラニン-Gly-Arg-pNAである、実施態様32~38のいずれかに記載のキット。
[実施態様40]
前記停止剤が、酢酸である、実施態様32~39のいずれかに記載のキット。
[実施態様41]
反応緩衝液、FVIII希釈緩衝液、洗浄緩衝液、及び/またはFVIII参照調製物のうちの1つ以上を更に含む、実施態様32~40のいずれかに記載のキット。
【国際調査報告】