(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】最適化ソリューションジェネレータシステムおよび方法のために光学的誤り訂正を用いるコヒーレントイジングマシン
(51)【国際特許分類】
G06N 99/00 20190101AFI20240910BHJP
【FI】
G06N99/00 180
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509342
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 US2022040647
(87)【国際公開番号】W WO2023158462
(87)【国際公開日】2023-08-24
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523112138
【氏名又は名称】エヌティーティー リサーチ インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ライフェンシュタイン サム
(72)【発明者】
【氏名】加古 敏
(72)【発明者】
【氏名】ルルー ティモテ
(72)【発明者】
【氏名】山本 喜久
(57)【要約】
コヒーレントイジングマシンは、光信号パルスを生成するように構成されたポンプパルス生成器と、光学的誤りパルスを生成するように構成された光学的誤り訂正回路と、光信号パルスおよび光学的誤りパルスを格納するように構成されたメインリングキャビティとを備えることができ、光学的誤りパルスにより、コヒーレントイジングマシンは、イジング解の極小値に収束せず、近くの状態を探索し続ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレントイジングマシンであって、
光信号パルスを生成するように構成されたポンプパルス生成器と、
光学的誤りパルスを生成するように構成された光学的誤り訂正回路と、
前記光信号パルスおよび前記光学的誤りパルスを格納するように構成されたメインリングキャビティとを備え、前記光学的誤りパルスにより、前記コヒーレントイジングマシンは、イジング解の極小値に収束せず、近くの状態を探索し続ける、コヒーレントイジングマシン。
【請求項2】
前記メインリングキャビティが、前記光信号パルスを、圧縮された光信号パルスとして格納するように、前記光信号パルスを圧縮するように構成された位相感応増幅器をさらに備える、請求項1に記載のコヒーレントイジングマシン。
【請求項3】
前記メインリングキャビティが、前記光学的誤りパルスを、圧縮された光学的誤りパルスとして格納するように、前記光学的誤りパルスを圧縮するように構成された位相感応増幅をさらに備える、請求項1に記載のコヒーレントイジングマシン。
【請求項4】
前記光学的誤りパルスの二乗振幅が、前記メインリングキャビティの光学的パラメトリック発振器の飽和レベルに比べて小さい、請求項1に記載のコヒーレントイジングマシン。
【請求項5】
前記光信号パルスは、線形増幅器/減増幅器方式と非線形発振器方式との両方で操作されるように構成された、請求項4に記載のコヒーレントイジングマシン。
【請求項6】
前記光学的誤りパルスは、線形増幅器/減増幅器方式で操作されるように構成された、請求項4に記載のコヒーレントイジングマシン。
【請求項7】
前記ポンプパルス生成器、前記メインリングキャビティ、および前記光学的誤り訂正回路は、単一チップにモノリシックに集積された、請求項1に記載のコヒーレントイジングマシン。
【請求項8】
前記ポンプパルス生成器は、前記光信号パルスを、第2の高調波発生パルスとして生成するように構成された、請求項1に記載のコヒーレントイジングマシン。
【請求項9】
前記光学的誤り訂正回路は、前記光信号パルスおよび前記光学的誤りパルスの振幅を測定するように構成された光学的ホモダイン検出器を備える、請求項1に記載のコヒーレントイジングマシン。
【請求項10】
前記光学的誤り訂正回路は、所定の振幅を有する前記光学的誤りパルスを生成するように構成されたファンアウトおよびファンイン回路を備える、請求項1に記載のコヒーレントイジングマシン。
【請求項11】
イジング問題を解く方法であって、
コヒーレントイジングマシンのポンプパルス生成器によって、光信号パルスを生成することと、
前記コヒーレントイジングマシンの光学的誤り訂正回路によって、光学的誤りパルスを生成することと、
前記コヒーレントイジングマシンのメインリングキャビティによって、前記光信号パルスおよび前記光学的誤りパルスを格納することとを備え、前記光学的誤りパルスにより、前記コヒーレントイジングマシンは、イジング解の極小値に収束せず、近くの状態を探索し続ける、方法。
【請求項12】
前記メインリングキャビティが、前記光信号パルスを、圧縮された光信号パルスとして格納するように、前記コヒーレントイジングマシンの位相感応増幅器によって、前記光信号パルスを圧縮することをさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記メインリングキャビティが、前記光学的誤りパルスを、圧縮された光学的誤りパルスとして格納するように、前記コヒーレントイジングマシンの位相感応増幅によって、前記光学的誤りパルスを圧縮することをさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記光学的誤りパルスの二乗振幅は、前記メインリングキャビティの光学的パラメトリック発振器の飽和レベルに比べて小さい、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記光信号パルスは、線形増幅器/減増幅器方式と非線形発振器方式との両方で操作される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記光学的誤りパルスは、線形増幅器/減増幅器方式で操作される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記ポンプパルス生成器、前記メインリングキャビティ、および前記光学的誤り訂正回路が、単一チップにモノリシックに集積された、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記コヒーレントイジングマシンの前記ポンプパルス生成器によって、前記光信号パルスを、第2の高調波発生パルスとして生成することをさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記光学的誤り訂正回路の光学的ホモダイン検出器によって、前記光信号パルスおよび前記光学的誤りパルスの振幅を測定することをさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記光学的誤り訂正回路のファンアウトおよびファンイン回路と、所定の振幅を有する前記光学的誤りパルスとを備える、生成することをさらに備える、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本出願は、2021年8月17月に出願された米国仮特許出願第63/234,127号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(付録)
付録A~F(8ページ)は、1)シミュレーションパラメータの最適化、2)Gセットのシミュレーション結果、3)パラメータ選択の理由、4)Gセットに対するCIM-SFCの結果および議論、5)CIMアルゴリズムとSBMアルゴリズムとの類似点および相違点、6)CIM-SFCの光学的実施を開示しており、これらはすべて明細書の一部であり、参照により本明細書に組み込まれる。付録Gは、引用文献を開示している。
【0003】
本開示は、quantum-inspired最適化プロセスを使用して、組合せ最適化問題を解くためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
組合せ最適化問題は、現代の科学、工学、医学、およびビジネスにおいて遍在しており、これらの問題は、多くの場合、NPハードであるため、古典的なデジタルコンピュータにおけるランタイムは指数関数的に拡大すると予想される。NPハードな組合せ最適化問題の代表的な例は、非平面イジングモデル(non-planar Ising model)である。特殊用途の量子ハードウェアデバイスは、標準的なヒューリスティックなアプローチ(standard heuristic approach)よりも、より効率的にイジング問題の解を発見するために開発された。1つの例は、時間依存ハミルトニアンによる純粋状態ベクトルの断熱進行を利用する量子アニーリング(quantum annealing,QA)デバイスである。別の例は、量子発振器ネットワークにおける混合状態密度演算子の、量子から古典への遷移を利用するコヒーレントイジングマシン(coherent Ising machine,CIM)である。完全グラフ、密グラフ、および疎グラフなどの様々なイジングモデルに対するQAとCIMとの性能比較が報告されている。さらに、グローバ探索アルゴリズムまたは断熱量子計算アルゴリズムを実施した理想的なゲートモデル量子コンピュータと、CIMとの間の理論的性能比較が実行された。スピン間の全対全結合を備えたCIMは効果的であり得るが、外部FPGA回路のみならず、アナログデジタルコンバータ(ADC)およびデジタルアナログコンバータ(DAC)を使用すると、大量のエネルギー散逸(energy dissipation)が発生し、高速動作のための潜在的なボトルネックをももたらす。
【発明の概要】
【0005】
CIMの標準的な線形結合方式は、構成する量子発振器間の振幅の不均一性の影響を受けることが認識されている。この振幅の不均一性のため、イジングハミルトニアンは、誤ってネットワーク損失にマッピングされ、特にフラストレートしたスピンシステムでは、動作の失敗につながる。この問題を解決するために、誤り訂正フィードバック方式(error correction feedback scheme)が開発され、これにより、CIMは、ブレークアウトローカル探索(BLS)などの最先端のヒューリスティックの状態と、解の精度において競合するようになる。
【0006】
誤り訂正フィードバックのための準古典的モデル
CIMには、いくつかの相互結合および誤り訂正フィードバック方式が存在する。この議論を単純化するために、準古典的な決定論的な見方が使用される。準古典的モデルは、以下のような架空のマシンの近似理論である。初期時間t=0では、
図1Aに示すように、各信号パルス場は、真空状態で準備される。ポンプ場pおよびp
i(
図1Cに示す)がt≧0で、スイッチオンされると、オープンポートから抽出ビームスプリッタBS
eに入射する真空場は、このODL-CIMでは、
図1Cに図示されるように、位相感応増幅器(PSA)102によって圧縮/反圧縮される。すなわち、同相成分
【0007】
【数1】
における真空変動は、1/G倍で減増幅されるが、直交位相成分
【数2】
における真空変動は、G倍で増幅される。同様に、キャビティの線形損失に起因してOPOパルス場に入射する真空変動は、それぞれのPSA102によってすべて圧縮される。さらに、(
図1Cに図示されるように)同相成分に沿ったポンプ場およびフィードバック注入場の変動も、それぞれのPSA102によって減増幅される。
【0008】
圧縮されたリザーバを有するそのような量子光学CIMのためのtruncated-Wigner確率微分方程式(W-SDE)が導出され、研究されてきた。この特定のCIMは、同相成分に沿ったOPOパルス場の間で最大の量子相関を達成し、最大の成功確率を達成する。これは、OPOパルス場の間の量子相関が、そのようなシステムにおいて相関のない新鮮なリザーバノイズを注入することなく、OPOパルス場の真空変動の相互結合によって形成されるためである。上記のW-SDEの近似理論として、大きな減増幅率(deamplification factor)(G>>1)の制限の下で、以下の準古典的モデルが考慮される。(リザーバ工学を使用しない)光学的誤り訂正回路を備えた、より現実的なCIMの完全な量子の説明が、以下で論じられる。
【0009】
CIMにおける振幅不均一性の問題を克服するために、誤り検出および訂正のための補助変数の追加が提案されている。このシステムは、測定フィードバックCIMの修正版として研究されている。スピン変数(信号パルス振幅)xiと、補助変数(誤りパルス振幅)eiとは、以下の決定論的方程式(deterministic equation)
【0010】
【数3】
および
【数4】
に従い、ここで、J
ijは、イジング結合行列、α、β、およびpは、システムパラメータ、ξは、J
ijの正規化定数である(パラメータ選択については付録A参照)。多くの場合、より良好な性能を達成するために、パラメータは、経時的に調整され得る(付録C参照)。このシステムを、イジングソルバとして使用するために、対応するイジング問題に対して考えられる解として、スピン構成σ
i=sign(x
i)を使用する。上記方程式ではノイズが無視されているが、初期のx
i振幅は、ランダムに選択され、可能な軌道の多様なセットが作成される。この方程式系は、CIM-CAC(カオス振幅制御を備えたCIM)として知られ得る。「カオス」という用語が使用されているのは、(以下で論じられるように)CIM-CACがカオス的な振舞いを示すためである。CIM-CACは、デジタルアルゴリズムとして統合された場合の上記の決定論的微分方程式系、または上記の方程式をエミュレートする光学的なCIMを称し得る。
【0011】
CIM-CAC方程式は、以下のように修正でき、
z
i=e
iΣ
jξJ
ijx
j (3)
【数5】
これを、我々は、CIM-CFC(カオスフィードバック制御を備えたCIM)と呼ぶ。式(2)と式(5)との相違は、誤差変数(error variable)e
iの時間進行が、内部振幅x
iではなく、フィードバック信号z
iを監視することである。この新たな式は、CIM-CACに非常に類似した動力学を与え、これは、CIM-CACとCIM-CFCとがほぼ同一の固定点を有することを観察することで理解できる。CIM-CACに加えてCIM-CFCを分析する背後にある動機は、これらのシステムがどのように機能するのかを、より良好に理解しようとすることである。それに加えて、CIM-CFCは、数値積分を容易にする、わずかに単純な動力学を有し得る。
【0012】
非常に異なる一連の方程式、
z
i=Σ
jξJ
ijx
j (6)
【数6】
を有する別のシステムもある。非線形関数fは、f(z)=tanh(z)などのシグモイド状の関数であり、p、k、cおよびβは、システムパラメータである(パラメータ選択については付録A参照)。この新しいフィードバックシステムの重要性は、誤り信号e
iの微分方程式が、「相互結合信号」z
iにおいて線形であることである。それに加えて、z
iは単純に、式(6)におけるような追加の係数e
iなしに、Σ
jξJ
ijx
jとして計算される。これは、このシステムにおける非線形要素は、利得飽和項(gain saturation term)
【0013】
【数7】
と、非線形関数fだけであることを意味する。このシステムのために、f(z)=tanh(z)と仮定されているが、他の関数も使用できる。上記のシステムでは、CIM-CACとCIM-CFCとの2つの重要な態様が、2つの異なる項に分離されている。項f(cz
i)は、振幅不均一性の問題を受動的に解消しながら相互結合を実現するが、項k(z
i-e
i)は、極小値(local minima)を不安定にする誤り信号e
iを導入する。このシステムは、CIM-SFC(分離フィードバック制御を備えたCIM)として知られ得る。
【0014】
CIM-CACおよびCIM-CFC(式(1)~式(5))と比較したCIM-SFC(式(6)、式(7)、および式(8))の別の大きな相違点は、CIM-SFCにおける補助変数eiが、まったく異なる意味を有していることである。CIM-CACおよびCIM-CFCでは、eiは、指数関数的に変化し、相互結合項を調整する厳密な正の数であると意図されている。CIM-SFCでは、eiは、符号情報を格納する変数であり、相互結合信号ziと同じ範囲の値をとる。誤り信号eiは、基本的に、ziに対するローパスフィルタと考えることができ、項k(ei-.zi)は、ziのハイパスフィルタと考えることができる(言い換えると、k(ei-.zi)のみがziにおける急激な変化を記録する)。CIM-SFC、CIM-CAC、およびCIM-CFCの類似点および相違点を理解する手法は、固定点に注目することである。CIM-CACおよびCIM-CFCでは、固定小数点は、
xi=λ1σi (9)
【0015】
【数8】
および、
h
i=Σ
jξJ
ijσ
i (11)
の形式をとる。ここで、σ
iは、イジングハミルトニアンの極小値に対応するスピン構成である。λ
1およびλ
2は、システムパラメータに依存する定数である。CIM-SFCでは、一般に、固定点は非常に複雑であり、明示的に記述するのは難しい。しかしながら、c>>1の制限の場合、固定点は、
x
i=d
-1(1)σ
i (12)
e
i=d
-1(1)h
i (13)
および
d(x)=-x
3+(p-1)x (14)
の形式をとる。繰り返すが、σ
iは、極小値に対応するスピン構成である。この式は、f(cz)が、cz>>1の場合は+1、cz<<-1の場合は-1の値をとる奇数関数である場合にのみ有効である。このため、適切な関数fが選択されることが重要である。
【0016】
これら2つのタイプのシステムの固定点間の大きな相違は、CIM-CACおよびCIM-CFCでは、誤り信号が
【数9】
である一方、CIM-SFCでは、誤り信号が|e
i|∝|h
i|であることである。以下で論じられるように、この相違により、CIM-SFCは、リザーバやポンプ源からの量子ノイズに対して、よりロバストになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】真空状態および圧縮真空状態(squeezed vacuum state)を例示する図である。
【
図1B】コヒーレント状態および圧縮コヒーレント状態を例示する図である。
【
図1C】コヒーレントイジングマシンを例示する図である。
【
図2A】100GHzのCIMにおけるアクティブフォトニックデバイスの動作電力を例示する図である。
【
図2B】CIMにおける3つのサブシステムにおける解までのエネルギーを例示する図である。
【
図2C】CIMにおけるOPO振幅の軌道を例示する図である。
【
図2D】別のCIMにおけるOPO振幅の軌道を例示する図である。
【
図2E】さらに別のCIMにおけるOPO振幅の軌道を例示する図である。
【
図3】4つの異なるフィードバックシステムの相互結合場および注入フィードバック場を例示する図である。
【
図4】異なる進行時間における信号パルス振幅相関を例示する図である。
【
図5】固定および調整されたシステムパラメータを有する信号パルスの軌道を例示する図である。
【
図6A】斬新なCIMのための光学的誤り訂正回路を例示する図である。
【
図6B】
図1Cに図示されるメインキャビティにパルスを提供するポンプパルスファクトリを例示する図である。
【
図6C】
図1Cに図示されるメインキャビティ、
図6Aにおける光学的誤り訂正回路、および
図6Bに図示されるポンプパルスファクトリを含む、光学的フィードバックを備えた斬新なCIMを例示する図である。
【
図7】CIM-SFCおよびCIM-CFCの成功確率対飽和パラメータを例示する図である。
【
図8】CIM-SFCおよびCIM-CFCの解までのエネルギーコストをジュールで例示する図である。
【
図9】CIM-CAC対問題サイズの光学的実施およびGPU実施の解までの推定エネルギーコストを例示する図である。
【
図10】CIM-CAC、CIM-CFC、およびCIM-SFCのTTSを例示する図である。
【
図11】CIM-SFCおよびNMFAのTTS対問題サイズを例示する図である。
【
図12】CIM-CAC、CIM-CFC、およびCIM-SFC対dSBMのための行列ベクトル乗算の必要数を例示する図である。
【
図13】CIM-CAC、CIM-CFC、CIM-SFC、およびdSBMのTTSを例示する図である。
【
図14】CIM-CACおよびdSBMに関する多数の未決のインスタンスを例示する図である。
【
図15】CIM-CACの成功確率を例示する図である。
【
図16】異なるパラメータの問題サイズに関するCIM-CACの性能を例示する図である。
【
図16-1】Gセットグラフに対するCIM-CAC、CIM-CFC、およびdSBMの成功確率およびTTSを例示する表である。
【
図17】CIM-SFCの光学的実施を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、組合せ最適化問題(combinatorial optimization problem)を解くために使用され得るメインキャビティ、光学的誤り訂正回路、およびパルスポンプファクトリの組合せを含む光学的フィードバック訂正を有するコヒーレントイジングマシン(CIM)に関し、本文脈では、その開示が説明される。しかしながら、そのシステムおよび方法は、本開示の範囲内で以下に開示される要素の他の変形を使用して実施できることが理解されよう。
【0019】
本明細書で開示される斬新なCIMアーキテクチャは、光学的に実施される誤り訂正を有する。このアーキテクチャでは、計算集約型の行列ベクトル乗算(MVM)と、非線形フィードバック機能とが、位相感知式(縮退)光学的パラメトリック増幅器(phase sensitive (degenerate) optical parametric amplifier)によって実施される。これらは基本的に、メインキャビティ光学的パラメトリック発振器(OPO)のために使用されるデバイスと同じである。この斬新なCIMアーキテクチャは、薄膜LiNbO3プラットフォームを使用して、将来のフォトニック集積回路にモノリシックに実施される可能性がある。光学的誤り訂正回路を備えたオープン散逸量子発振器のネットワークは、将来のハードウェアプラットフォームとして有望であるだけでなく、そのシンプルで効率的な理論的説明により、quantum-inspiredアルゴリズムとしても有望である。N量子ビット量子システムの時間進行を数値的にシミュレートするために、2N個の複素数振幅が使用され得る。しかしながら、量子発振器ネットワークのために、量子光学の様々な位相空間技法が開発されている。量子発振器のネットワークの完全な説明は、マスタ方程式の正のP表現、truncated-Wigner表現、またはtruncatedフシミ表現に基づくN(または2N)セットの確率微分方程式(stochastic differential equation,SDE)によって可能になった。これらのSDEは、最新のデジタルプラットフォームで、ヒューリスティックアルゴリズムとして使用できる。低Q量子発振器のネットワークを完全に説明するために、ガウス量子モデルを使用した離散マップ手法が利用可能であり、これは計算効率も高い。同様に、断熱ハミルトニアン調整を備えた無散逸量子発振器のネットワークは、Nセットの決定論的方程式によって説明され、現代のデジタルプラットフォームのヒューリスティックアルゴリズムとしても使用される。このヒューリスティックアルゴリズムは、シミュレートされた分岐マシン(SBM)とも呼ばれ、その変形が以下に開示される。これら2つのquantum-inspiredアルゴリズムを比較するのは興味深いが、以下で論じられるSBMのバージョン(dSBM)は、アルゴリズムの性能を向上させるために、非弾性壁を使用して人為的に散逸が追加されるため、必ずしも真のユニタリシステムであるとは限らない。どちらのアルゴリズムも、デジタルコンピュータでシミュレーションされる場合、計算のボトルネックとして行列ベクトル乗算(MVM)を有しているので、MVMの数は、性能比較のための優れた指標である。以下に記載されるように、SBMが一貫して苦労するノードごとのエッジが大きく変化するグラフタイプを除き、ほとんどの場合、どちらのタイプのシステムも、同様の性能を有し得る。
【0020】
CIM-CAC、CIM-CFC、およびCIM-SFCの数値シミュレーション
1つの知られているCIMアーキテクチャは、誤り検出/訂正機構を使用せずに、単純な線形フィードバックを採用し、式(1)におけるフィードバック項は、単純にΣ
jξJ
ijx
jとなる。この場合、
図2Cに図示されるように、特にフラストレートスピンシステムの場合、OPO振幅の不均一性により、イジングハミルトニアンをネットワーク損失に適切にマッピングすることができない。そのようなCIMは、多くの場合、イジングハミルトニアンの基底状態を発見できず、代わりに、結合(ヤコビアン)行列[J
ij]の最低エネルギーの固有状態を発見する。この望ましくない動作は、システムの不均一な振幅の形成によって引き起こされる。この技術的問題は、tanh(Σ
jξJ
ijx
j)などのフィードバックパルスのための非線形フィルタ関数を導入することによって部分的に解消できる。その後、CIMシステムは、
図2Dに図示されるように、少なくともしきい値を十分に上回る均一なOPO振幅を達成し、システムの軌道の終了に向かって適切なマッピング条件を満たすことができる。しかしながら、そのような非線形フィルタリングだけでは、マシンが、多数の極小値にトラップされるのを防ぐほど十分に強力ではない可能性がある。問題サイズNが増加すると、NPハードイジング問題では、極小値の数が指数関数的に増加すると予想されるため、あまりに容易にトラップされるシステムは、効果がない。
【0021】
極小値によって引き起こされるアトラクタを不安定にし、マシンに真の基底状態を探索させ続けるために、式(2)または式(5)によって表される誤り検出/訂正変数を導入することができる。極小値が不安定になると、基底状態も同様に不安定になることは避けられない。これは望ましくないことであるが、CIMマシンは、多くの極小値に到達し、その後、どの極小値が、最もエネルギーが低いのかを発見できる。あるいは、システムパラメータが調整され得、以下に論じられるように、システムは、軌道の終了に向かって基底状態に留まる可能性が高くなる。
【0022】
別のN個の自由度の追加により、マシンは、極小値に到達できるが、その後、極小値を抜け出して、近くの状態を探索し続けることができる。これは、従来のCIMアルゴリズムでは可能ではない。
図2Eに図示されるように、誤り訂正変数を有しているCIMの軌道は平衡に達せず、多くの状態を探索し続ける。逆に、誤り訂正変数(e
i)を有していない
図2Cおよび
図2Dにおけるシステムは、多くの場合、イジングハミルトニアンの高エネルギー励起状態に対応する固定点に迅速に収束する。上記問題は、CIM-CFCおよびCIM-SFCを含む誤り訂正方式を使用して解決できる。CIM-CFCおよびCIM-SFCは、非常に異なる式によって説明されるが、2つのシステムは、元々は、同様の概念によって考案された。CIM-CFCとCIM-SFCとが類似している理由を理解するために、「相互結合信号」M
i(t)=Σ
jξJ
ijx
j(t)および「注入フィードバック信号」I
i(t)を導入することによって、これらのシステムを検討することが役立つ。これらの信号は、CIM-CFCとCIM-SFCとの両方について、
M
i(t)=Σ
jξJ
ijx
j(t) (15)
【0023】
【数10】
であり、ここで、I
i(t)は、M
i(t)の時間進行に依存する。
図3は、4つの異なるフィードバック方式について、相互結合場M
i(t)304に対して、I
i(t)302がどのように変化するのかを図示している。CIM-CFCとCIM-SFCとの類似点は、相互結合場M
i(t)304が、一定期間、一定に留まる場合、注入フィードバック場I
i(t)302は、sign(M
i(t))によって与えられる値に収束することである。しかしながら、M
i(t)304が急激に変化すると、I
i(t)302は、その定常状態の値+1/-1から逸脱する。この小さな偏差は、システムが極小値に近い場合に不安定化を引き起こすのに効果的であり、これによって、マシンは、新しいスピン構成を探索し続ける。
【0024】
CIM-CFCおよびCIM-SFCは、同じ原理に基づいて考案されたが、2つのシステムの動力学は互いに異なる可能性がある。特に、CIM-CFC(およびCIM-CAC)は、軌道が初期条件に非常に敏感であるため、ほぼ常にカオス的な動力学を特徴としている。CIM-SFCの場合、パラメータが動的に調整されない限り、軌道は、多くの場合、すぐに安定した周期軌道となる。
【0025】
この相違を実証するために、
図4は、互いに非常に近い2つの初期条件間のパルス振幅の相関を図示している。(x軸にプロットされた)パルス振幅#1の初期条件は、標準偏差0.25のゼロ平均ガウス分布から選択され、(y軸にプロットされた)同じパルス#2の他の初期条件は、#1に少量のノイズ(標準偏差0.01)を加えたものに等しい。
図4は、Sherrington-Kirkpatrick(SK)スピングラスインスタンスf
0問題サイズN=100の、2つの初期条件間の100個のパルス振幅すべての相関を図示している。CIM-SFC(第1行)では、相関は、4000時間ステップ(往復)後でさえも維持される。これは、2つの初期条件が、ほぼ同一の軌道を辿ることを意味する。しかしながら、CIM-CFC(第2行)では、2つの軌道の初期条件が非常に近いにも関わらず、約100時間ステップ後に、x
i変数の相関がなくなった。これは、CIM-CFCが初期条件に対して非常に感度が高いのに対し、CIM-SFCはそうではないことを定性的に実証している。
【0026】
このパターンは、異なるパラメータおよび初期条件が使用される場合に当てはまる傾向がある。しかしながら、ほとんどの場合、CIM-SFCは相関性を保っているが、システムパラメータと初期条件の一部の領域で、2つの軌道が分岐する。これは、CIM-SFCは、CIM-CFCよりも初期条件の影響を受けにくいものの、探索中、特にパラメータが調整されている場合に、カオス的な動力学が発生する可能性が依然として高いことを意味する。
【0027】
動力学の相違を定性的に理解する別の手法は、単に軌道を見ることによるものである。
図5は、固定システムパラメータと、線形調整システムパラメータとを用いた、両システムの例示的な軌道を図示している(上記のSK問題では、100個のx
i変数のうち10個が図示されている)。パラメータが固定されている場合、2つのシステム間の相違は明らかである。CIM-SFCは、安定した周期的アトラクタに迅速にトラップされるが、CIM-CFCは、予測できない手法で探索を続ける。このため、システムが基底状態を発見するために、CIM-SFCでパラメータがゆっくりと調整されることが必要である。CIM-CFCおよびCIM-CACは、固定パラメータで基底状態を発見することができる。しかしながら、システムパラメータの調整により、CIM-CFCおよびCIM-CACの性能が大幅に向上する(詳細については付録C参照)。
【0028】
図5の左下のパネルでは、CIM-SFCのパラメータcおよびパラメータpは、低い値から高い値まで直線的に増加する(pは、-1から+1の範囲であり、cは、1から3の範囲である)。図示されるように、パラメータが変化すると、システムは、1つのアトラクタから別のアトラクタにジャンプし、最終的には固定点/極小値に到達し得る。CIM-SFCにおいて、パラメータcおよびパラメータpを、低い値から高い値に線形的に増加させることにより、非線形項tanh(cz
i)は、非線形結合項が、-1と1との間の値の連続範囲を有する「ソフトスピン」モードから、tanh(cz
i)が主に+1または-1の値をとる「離散」モードへ遷移する。この遷移は、CIM-SFCが適切に機能するために重要であると考えられる。
【0029】
ほとんどの固定パラメータに対して、CIM-SFCは、
図5におけるような周期的または固定点アトラクタに迅速に接近するが、前述したように、cおよびpのいくつかの特定の値に対して、CIM-SFCは、CIM-CFCと同様のカオス的な動力学を特徴とする可能性がある。決定論的システムを使用して、およびシミュレートされた分岐マシンにおいて、難しい最適化問題を効率的に解く場合、カオス的な動力学が観察されることが図示されている。
【0030】
光学的誤り訂正回路を備えたCIMの実施
図6Aおよび
図6Bは、
図1Cと併せて、光学的誤り訂正回路を備えたCIM-CACおよびCIM-CFCの物理的セットアップを図示している。全体的なアーキテクチャが、
図6Cに図示される。この斬新なアーキテクチャでは、(
図1Cに図示される)メインリングキャビティが、正規化された振幅x
iを有する信号パルスと、正規化された振幅e
iを有する誤りパルスとの両方を格納し、ここで、i=1,2,...,Nである。信号パルスは、真空状態|O>
1|O>
2...|O>
Nから始まり、正(または負)のポンプ速度pによってX座標に沿って増幅(または減増幅)される。
【0031】
誤りパルスは、α>0である場合、コヒーレント状態|α>1|α>2...|α>Nから始まり、以下に説明されるように、ポンプ速度p’によってX座標に沿って増幅(または減増幅)される。誤りパルスの二乗振幅は、メインキャビティOPOの飽和レベルと比較して、小さく
【0032】
【数11】
保たれる。これは、誤りパルスが、線形増幅器/減増幅器方式で操作される一方、信号パルスが、線形増幅器/減増幅器方式
【数12】
と非線形発振器方式
【数13】
との両方で制御されることを意味する。
【0033】
抽出ビームスプリッタ(
図1Cに図示されるBSeは、ノイズのない位相感応増幅器(
図6Aに図示されるようなPSA0によって増幅される信号パルスおよび誤りパルスの部分波を取り出す。PSA0は、追加のノイズを導入せずに、信号パルスおよび誤りパルスを、古典的なレベルへ増幅する。抽出された振幅
【0034】
【数14】
および
【数15】
は、BSeに入射する真空ノイズにより、信号対ノイズ比の低下を受ける。しかしながら、高利得のノイズのない位相感応増幅器PSA0によって、古典的なレベルへ増幅されるので、光学的誤り訂正回路で大きな線形損失があっても、信号対ノイズ比のさらなる低下は発生しない。
【0035】
PSA0出力のごく一部は、抽出された信号パルスおよび誤りパルスを振幅
【数16】
および
【数17】
を用いて測定する光学的ホモダイン検出器600に送られる。ホモダイン検出の測定誤差は、(上記で説明したように)BSeの反射率と、BSeに入射する真空変動によってのみ決定される。
図6Aは、信号パルス対信号パルス間隔2τによって分離された異なる時間インスタンスt=τ;3τ;5τ;...でのファンアウト回路の出力を図示している。
【0036】
たとえば、信号パルス
【数18】
は、まずPSA
jに入力され、その後、(2N-2j+1)τの遅延時間で、光学的遅延線DL
jに送られる。PSA
jの位相感応利得/損失は、時間t=2Nτにおいてファンイン回路の前に到着する増幅/減増幅信号パルスが、
【0037】
【数19】
に等しくなるように、
【数20】
に設定される。したがって、ファンイン回路は、所望の振幅
【数21】
を有するパルスを出力する。PSA
jが、10dBの位相感応線形利得/損失を有していると仮定すると、システムは、10
-2<|ξJ
ij|Jij<1の範囲の任意のイジング結合を実施できる。
【0038】
次に、ファンイン回路の出力は、
【数22】
の係数で増幅する別の位相感応増幅器PSAeに入力される。これは、
【数23】
の測定結果に基づいて、ポンプパワーをPSAeに調整することによって達成される。最後に、PSAeの出力は、
図6Aに図示される信号BS
iを介して、
図1Cに図示されるビームスプリッタBS
iへと、メインキャビティの信号パルス(x
i)に再び注入される。抽出ビームスプリッタBSeは、信号パルスだけでなく、ホモダイン検出のみに使用される誤りパルスも出力する。したがって、CIMを使用する場合、ポンプパワーは、誤りパルスのためにスイッチオフPSA
0され、残りの誤りパルスを、PSA
1、PSA
2、...、PSA
N、PSA
eによって減増幅する。このようにして、CIMは、メインキャビティへの誤りパルスのあらゆる誤注入(spurious injection)を回避する。誤りパルスの動力学は、メインキャビティPSAへのポンプパワーp
iによってのみ支配され、
【0039】
【数24】
または
【数25】
を満たすように設定される。
【0040】
CIM-CACおよびCIM-CFCのこの光学的実施の1つの利点は、1種類の能動デバイス、つまりノイズのない位相感応(縮退光学的パラメトリック)増幅器のみが使用され、他のすべての要素が受動デバイスであることである。この事実により、CIMシステムのオンチップモノリシック統合が可能になる可能性があり、また、以下で論じられる計算ユニットにおける低エネルギー散逸も可能になる。CIM-SFCの同様の光学的実施が付録Fに図示される。
【0041】
図6(b)は、第2の高調波発生(SHG)パルスを、メインキャビティPSA、後置増幅器PSA
0、遅延線増幅器PSA
1、PSA
2、...PSA
Nおよび出口増幅器PSA
eに提供するポンプパルスファクトリを図示している。このポンプパルスファクトリの目的は、CIM全体において最もエネルギーを消費するデバイスであるEOM調整器の使用を低減することである。ソリトン周波数コム発生器(soliton frequency comb generator)は、100GHzの繰り返し周波数および1.56μmの波長でパルス列を生成する。パルス列は、多くの分岐に分割される前に、ポンプ増幅器PSA
pによって増幅される。行列ベクトル乗算
【0042】
【数26】
を実施するために、N個のストレージリングキャビティが、PSA
1、PSA
2、...PSA
Nのためのポンプパルスを連続的に生成する。この目的のために、i番目のリングキャビティに格納されたパルスは、利得
【0043】
【数27】
を実現するために適切な振幅を獲得する。N個のEOMアレイを使用する期間は、リングキャビティの1往復期間のみ、つまり、N×10(ピコ秒)である。ストレージリングキャビティの出力結合損失は、内部PSAの線形利得によって補償される。PSA
p、PSA
s、およびPSA
0のポンプパルスは振幅が一定であるため、PSA
p出力によって直接駆動される。メインキャビティ内の信号パルスおよび誤りパルスのポンプパルスPおよびP
i、ならびに出口PSA
eは、全計算時間中、調整を要する。
【0044】
光学的実施を検討する際に考慮する必要がある別の詳細は、イジングエネルギーの計算である。本開示における結果を生成するために使用されるデジタルシミュレーションでは、イジングエネルギーが、時間ステップ(往復)ごとに計算され、取得された最小エネルギーが、計算の結果として使用される。これは、光学的実施では、システムが、往復ごとに
【0045】
【数28】
個の振幅を測定し、たとえば外部ADC/FPGA回路を使用してイジングエネルギーを計算することを意味する。これでは、ADC/FPGAにおけるデジタル回路が、時間およびエネルギー消費のボトルネックになるため、光学系を使用する目的を果たせなくなる。しかしながら、
図5に図示されるように、適切なパラメータ調整を用いて、システムの最終状態のみを結果に使用し、高い成功確率を維持できることが分かった。800スピンのイジングインスタンス(SKモデル)に関する以下の結果では、成功した軌道が、最終時間ステップ後に、基底スピン構成になる頻度が計算された。CIM-SFCの場合、7401の成功した軌道の100%で、最終的なスピン構成は基底状態であった。言い換えれば、CIM-SFCが、軌道中の任意の時点で基底状態に到達すると、軌道の終了時においても基底状態になる。一方、CIM-CFCおよびCIM-CACでは、これはそれぞれ時間の75%において、および時間の48%においてのみ当てはまった。3つのシステム間での相違は、固有の動力学と、使用されるパラメータとの両方の結果であり得る。
【0046】
これは、光学的誤り訂正を備えたCIMにおいて、システムが、計算結果を得るために何度も往復した後、
【数29】
の最終測定結果を単純にデジタル化することができ、依然として高い成功確率を有することを実証する。CIM-CFCおよびCIM-CACの場合、マシンは通常、たとえその状態に留まらなくても、軌道の終了近くで基底状態に到達するため、最後の数往復中にスピン構成を複数回読み取ることが有益である可能性がある。
【0047】
解までの量子ノイズ解析およびエネルギー
CIMは、アナログ光デバイスの使用を開示しているため、光学的実施に基づいて、量子モデルを使用して、物理システムからのノイズ(この場合、ポンプ源および外部リザーバからの量子ノイズ)が、どの程度性能を低下させるかを研究することが重要である。
【0048】
CIM-CAC用に提案された光学的実施では、実数信号パルス振幅μ
i(光子振幅の単位)は、以下のtruncated-Wigner SDE[22;23]
【数30】
に従い、ここで、項pμ
iは、パラメトリック線形利得を表し、-μ
i.は、線形損失率を表す。これは、相互結合および誤り訂正のためのキャビティバックグラウンド損失および抽出/注入ビームスプリッタ損失を含む。非線形項g
2μ
i
3は、利得飽和(または、信号からポンプへの逆変換)を表し、ここで、gは、飽和パラメータである。飽和光子数は、1/g
2によって与えられ、これは、ポンプ速度p=2(しきい値の2倍)における孤立OPOの平均光子数に等しい。J
ijは、上記で説明したN×Nイジング結合行列の(I,j)要素である。時間tは、線形損失率によって正規化されるため、信号振幅は、時間t=1において1/eで減衰する。
【0049】
【数31】
および
【数32】
は、それぞれ信号パルスおよび誤りパルスの推定振幅であり、Δμ
jおよびΔν
jは、抽出ビームスプリッタに入射する真空変動によって支配される追加ノイズを表す。それらは
【0050】
【数33】
によって特徴付けられ、ここで、R
Bは、抽出ビームスプリッタの反射率であり、ωは、分散1のゼロ平均ガウス確率変数である。n
iは、外部リザーバおよびポンプ源から注入されるノイズである。[22;23]これは、2つの時間相関関数
【0051】
【数34】
によって特徴付けられる。上記は、外部リザーバが、真空状態にあり、ポンプ場が、コヒーレント状態にあると仮定している。
【0052】
実数誤りパルス振幅ν
j(光子振幅の単位)は、
【数35】
によって支配され、ここで、ノイズ項の相関関数は、<m
i(t)m
i(t’)>=1/2δ(t-t’)によって与えられる。誤りパルスのポンプ速度p’
tは、飽和パラメータ
【0053】
【数36】
によって正規化された推定信号パルス振幅
【数37】
によって決定される。
【0054】
誤りパルスは、ある正の実数1/g>>γ>0について、コヒーレント状態|γ>1|γ>2...|γ>Nから始まる。式(18)に利得飽和項が存在しないことは、誤りパルスが、常にしきい値未満でポンピングされることを意味する。それにも関わらず、誤りパルスは、指数関数的に変化する振幅を表す。パラメータβは、誤り訂正動力学の時定数を支配し、αは、目標振幅の二乗である。このフィードバックモデルは、指数関数的に変化する誤りパルス振幅ei=gνjによって、二乗信号パルス振幅
【0055】
【数38】
をαに安定させる。式(17)および式(18)は、正規化された振幅
【数39】
および
【数40】
に対して、ノイズ項を除き、式(1)および式(2)とほぼ同一である
【数41】
および
【数42】
のように書き直される。
【0056】
CIM-CFCは、
図6に図示される実験設定によっても実現される。この場合、誤りパルス振幅に関してtruncated-Wigner SDEは、依然として式(18)または式(21)によって与えられるが、ポンプ速度p’
iは、
【数43】
を用いて
【数44】
に修正される必要がある。
【0057】
最後に、CIM-SFCは、付録Fおよび
図17)に図示される実験設定によっても実現することができる。この場合、式(20)および式(21)は、
【数45】
【数46】
および
【数47】
のように修正される必要がある。
【0058】
式(1)~式(8)によって表されるCIM-CAC、CIM-CFC、およびCIM-SFCの準古典的非線形動力学モデルを、量子非線形動力学モデル(truncated-Wigner SDE)式(20)~式(26)と比較すると、主な相違点は、真空ノイズと、ポンプノイズ項gniおよびgmiの有無である。他の重要な相違点は、量子モデルでは
【0059】
【数48】
および
【数49】
が真空ノイズの寄与を伴う推定振幅であるのに対し、準古典的モデルでは、追加のノイズなしで振幅x
iおよびe
iを再現できることである。
【0060】
CIMの性能に対する量子ノイズの影響を分析することが重要である。式(20)~式(26)に示すように、信号パルスおよび誤りパルスにおける量子ノイズの相対的な大きさは、飽和パラメータgによって支配される。gが増加すると、正規化されたパルス振幅(x
i,e
i)と、正規化された量子ノイズ振幅(gn
iおよびgm
i)との比が小さくなる。したがって、gが増加すると、CIMの性能が低下すると予想される。しかしながら、gが増加すると、OPOしきい値ポンプ出力が減少し([31]における
図C1参照)、これは、gの増加により、解までのOPOエネルギーコストを潜在的に削減できることを示唆している。
【0061】
図7に図示されるように、N=100のイジング問題(SKモデル)の成功確率P
s対飽和パラメータg
2がプロットされる。抽出ビームスプリッタR
Bの反射率は、R
B=0.1であると仮定される。成功確率P
sは、g
2≦10
-4である限り、飽和パラメータg
2にほとんど依存しない。しかしながら、g
2が10
-3を超えると、前述したように信号対量子ノイズ比が減少するため、成功確率は迅速に低下する。
【0062】
図8では、N=100およびN=800のイジング問題(SKモデル)の解のためのエネルギーコストが、メインキャビティPSAへのポンプパワーのみを使用して
【数50】
と図示されており、ここで、MVMは、解までの行列ベクトル乗算ステップの数であり、Δtは、信号寿命(約0.1)によって正規化された往復時間である。
図8では、CIM-SFCは、CIM-CFCと比較して量子ノイズに対してよりロバストであり、潜在的に、より大きなg
2値を使用できることが分かる。これは、誤差変数e
iが、各システムにおいて果たす役割が異なるため、予想されることである。CIM-CFCでは、フィードバック信号は、
【0063】
【数51】
のように計算され、これは、量子ノイズが増加した場合の性能低下の主な原因である。これは、
【数52】
のコヒーレント励起が大きいと、
【数53】
における小さな誤りが増幅され、逆に、
【数54】
のコヒーレント励起が大きいと、
【数55】
における小さな誤りが増幅されるからである。CIM-SFCには、そのようなビートノイズ成分はない。これが、CIM-SFCが、量子ノイズに対してよりロバストである理由である。さらに、非線形関数
【0064】
【数56】
は、量子ノイズの抑制に役立つ。
図8には図示されていないが、CIM-CACの結果は、CIM-CFCの結果とほぼ同一である。
【0065】
光学的誤り訂正回路および(
図6において説明された)ポンプパルスファクトリにおけるエネルギーコストが含まれる場合、エネルギーコストは、
図9に図示されるように桁違いに増加する。ここでは、ポンプパルスエネルギーは、光学的誤り訂正回路におけるPSA
1、PSA
2、...、PSA
NおよびPSA
eにおける小さな信号増幅(約10dB)の場合、100fJ/パルスであり、PSA
0における大きな信号増幅(約50dB)の場合、1pJ/パルスであると仮定される。これらの数値は、780nmのポンプ波長および100フェムト秒のポンプパルス持続時間における薄膜LiNO3リッジ導波路DOPOの実験値に対応する[15]。光学的誤り訂正回路において消費されるポンプエネルギーは、E
correction=[(N+1)×10
-13として推定される。ポンプパルスファクトリにおけるエネルギー消費は、次の3つの部分、すなわち、100GHzソリトン周波数コム発生器、EOM調整器、および位相感応増幅器(
図6(b))で構成される。100GHzソリトン周波数コム発生器には、約100mWの入力電力が必要である。[16]100GHzEOM調整器は、それぞれ約400mWの電気入力電力が必要である。[17]PSA
pのパルスあたりのエネルギーコストは約1pJであるが、ストレージリングキャビティのN個のPSAのエネルギーコストは約100fJである。N個のEOM(EOM
1、EOM
2、:::EOM
N)は、最初の1つの往復時間10
-11N(秒)の間だけ動作する必要があることに留意されたい。100GHzCIMにおける能動デバイスの動作電力が、
図2Aに要約される。ポンプパルスファクトリにおけるエネルギーコストは、E
factory=[1.3×10
-11N(MVM)+4×10
-12N
2+(10
-12+10
-13N)(MVM)N](J)である。
図2Bは、CIMの3つの部分におけるエネルギーコストを要約する。
図9において、CIM-CFCアルゴリズムがGPUにおいて実施されている場合の解までのエネルギーが図示される。このアプローチの詳細な説明が以下に与えられる。
図6において説明されるような誤り訂正回路およびポンプパルスファクトリの光学的実施は、技術的に困難であるが、最新のGPUと比較してエネルギーコストを桁違いに削減できる。
【0066】
CIM-inspiredヒューリスティックアルゴリズム-CIM-CAC、CIM-CFC、およびCIM-SFCのスケーリング性能
3つの古典的な非線形動力学モデル、式(1)、式(2)、式(3)、式(4)、式(5)、式(6)、式(7)、および式(8)が優れたイジングソルバであるか否かをテストするために、デジタルプラットフォーム上でそれらを数値的に統合することが可能である。それに加えて、数値的な安定性を保証するために、いくつかの変数の範囲が制限されており、その詳細は、付録Aにおいて見ることができる。関連する性能指標は、解までの時間、TTS(99%の成功率を得るまでの積分時間ステップの数)である。特に、ランダムに生成されたSherrington-Kirkpatrick(SK)スピングラスインスタンス(結合は、+1と-1との間でランダムに選択される)の問題サイズの関数として中央値TTSがどのようにスケールされるかが比較される。中央値TTSは、問題サイズごとにランダムに生成された100個のインスタンスのセットに基づいて計算され、TTSを評価するために、インスタンスごとに3200の軌道が使用される。
【0067】
図10には、3つのCIM-inspiredアルゴリズム(CIM-CAC、CIM-CFC、CIM-SFC)の中央値TTSが、問題サイズに関して図示される。影付きの領域は25~75パーセンタイルを表す。TTS対
【0068】
【数57】
の線形的な振舞いは、これらのアルゴリズムが、外部リザーバからの量子ノイズを伴う物理CIMでも観察される、TTSの同じ根指数スケーリングを有していることを示す。[8;31]TTSが、
【0069】
【数58】
の形式であると仮定されると、3つのアルゴリズムはすべて、非常に類似したスケーリング係数を有しているように見える。同様のスケーリングに加えて、上の影付きの領域で示されているように、3つのアルゴリズムすべてが、TTSにおいて同様の広がり(25~75パーセンタイル)を示している。CIM-SFCは、すべての場合においてわずかに大きな広がりを有する可能性があるが、問題サイズが大きくなっても、広がりは増加しないようである。
【0070】
CIM-inspiredヒューリスティックアルゴリズム-ノイズ平均場アニーリング(NMFA)との比較
CIM-SFCにおける補助変数(誤りパルス)の重要性を示すために、その性能が、ノイズ平均場アニーリング(NMFA)として知られている別のCIM-inspiredアルゴリズムと比較された。[26]NMFAは、双曲線正接関数を、相互結合項にも適用する。しかしながら、NMFAには、補助変数がなく、極小値から逃れるために(人工)量子ノイズに依存する。
図11では、NMFAからCIM-SFCへのスケーリングが、フィードバックパラメータkの様々な値と比較される。パラメータkは、補助変数によって引き起こされる不安定化力の強さを制御するので、スケーリング振舞いに対する項k(z
i-e
i)の重要性が測定され得る。k=0の場合、CIM-SFCは、NMFAとほぼ同一である。k=0のCIM-SFCの性能がわずかに悪いという事実は、NMFAに含まれるノイズの影響が小さい可能性があり、極小値の不安定化に寄与する可能性があることを示している(これは、
図7においても観察できる)。k=0.15の場合は、中間の場合として図示され、k=0.2は、CIM-SFCにおいて、kのための(実験的に得られた)最適値である。式(7)に誤り訂正フィードバック項k(z
i-e
i)を追加することは、SKインスタンスにおけるTTSのスケーリングと広がりとの両方を改善するのに効果的である。これは、補助変数によって提供される「相関人工ノイズ」が、リザーバからの「ランダムな量子ノイズ」よりも、より良好な解を発見する際に、より効果的であることを示唆する。
【0071】
CIM-inspiredヒューリスティックアルゴリズム-離散シミュレート分岐マシン(dSBM)との比較
CIM-inspiredアルゴリズムの性能は、離散シミュレート分岐マシン(dSBM)として知られる別のヒューリスティックイジングソルバとも比較され得る。[27;29;28]CIMと同様に、dSBMも、アナログスピンおよび連続動力学を利用して、組合せ最適化問題を解く。[29]の著者らは、必要な行列ベクトル乗算(MVM)の数を解と比較することにより、dSBMが、CIM-CACよりもアルゴリズム的に優れていると主張しているようである。[29]の著者らは、多くの問題セットにおいて、実施の実時間TTSについて論じたが、アルゴリズムの優位性を主張する際に、2つの問題サイズに対するSKインスタンスの中央値TTS(MVM単位)のみを使用した。
【0072】
これらの方法を評価するために、解までのMVM(または同等に、解までの積分時間ステップ)を使用することによって、dSBMに対する3つのアルゴリズム(CIM-CAC、CIM-CFC、およびCIM-SFC)の、より詳細な比較が、性能指標として使用され得る。これらのアルゴリズムはすべて、デジタルプラットフォームにおいて実施される場合、計算のボトルネックとして行列ベクトル乗算を伴うため、これは良い比較である。上記で論じたように、イジングエネルギーの計算は、ほとんどの場合、軌道の終了まで残すことができるため、解までのMVMを計算する際には、相互結合項の計算に含まれるMVMのみが考慮される。
【0073】
比較のために使用される問題インスタンスセットは、1)100個のランダムに生成された800スピンのSKインスタンスのセットを含み得る。このインスタンスセットは、+1,-1の重みを有する完全に接続されたインスタンス、2)Max-Cut性能のためのベンチマークとして使用されているGセットインスタンス(https://web.stanford.edu/yyye/yyye/Gset/で入手可能)を含む。この比較のために、問題サイズ800~2000の50個のインスタンスが使用され、これらのインスタンスは、変動するエッジ密度を有し、+1,0の重み、または+1,0,-1の重みのいずれかを含み、3)別の1000個のセットは、最悪の場合の性能を評価するために使用される800スピンおよび1200スピンのSKインスタンスをランダムに生成する。
【0074】
800スピンのSKインスタンスにおける性能を比較するために、dSBMアルゴリズムもGPUにおいて実施された。dSBMのパラメータは、[29]においてパラメータに基づいて選択されており、付録Dにおいて発見できる。
【0075】
図12は、3つのアルゴリズム(CIM-CAC、CIM-CFC、およびCIM-SFC)の性能が、800スピンSKインスタンスセットにおけるdSBMと、インスタンスごとに比較されることを図示している。解までのMVMを評価するために使用される基底状態エネルギーは、4つのアルゴリズムによって発見された最低エネルギーである。4つのアルゴリズムは、すべて同じ最低エネルギーを発見したため、これらが、真の基底状態エネルギーである可能性が高い。4つすべてのシステムのパラメータは、付録Aにおいて発見することができる。
図12において、800スピンインスタンスにおいて性能を比較すると、パラメータが最適化されている場合、4つのシステムすべてが、著しく類似した性能を示している。
図12において使用されたパラメータでは、CIM-SFCは、1つのインスタンスで、基底状態を発見できなかったことに留意することが重要である。しかしながら、異なるパラメータが使用される場合、CIM-SFCは、この特定のインスタンスの基底状態も同様に発見するであろう。これは、CIM-SFCは高い性能を達成できるが、パラメータ選択に非常に敏感であることを意味する。
【0076】
CIM-CFC、CIM-SFC、およびdSBMの中央値TTS(MVM単位)は、ほぼ同一であり、約2×105である。さらに、これら3つのアルゴリズムのTTSにおける広がりは、かなり類似している。CIM-CACは、わずかに悪い(2倍未満悪い)TTS中央値を有するが、CIM-CACが、dSBMよりもより良好に実行するインスタンスは、より難しいインスタンスである傾向にあることは注目に値する。これは、4つのアルゴリズムのうち、CIM-CACが、最悪の場合の性能がわずかに優れている可能性があることを示し得る。このパターンはGセットでも見られる。
【0077】
全体として、4つのアルゴリズムはすべて、完全に接続されたインスタンスセットに対して同様の性能を示し、どの特定のアルゴリズムがこの問題タイプに対して最も効果的であるかについて結論を下すことは不可能である。中央値TTSおよび広がりが同様であることに加えて、4つすべてのシステム間では、TTSに高いレベルの相関がある。これは、インスタンスの難易度がすべてのイジングヒューリスティックの普遍的な特性であること、または、論じられた4つのアルゴリズムに根本的に共通するものがあることを示し得る。付録Eは、これら4つのシステム間の類似点および相違点についての詳細な議論を含む。
【0078】
CIM-SFCは、完全に接続された問題インスタンスにおいて良好な性能を示すが、多くのGセットインスタンスにおいて苦労する。付録Dは、この欠陥の部分的な理由を含むが、完全な理由は理解されていない。GセットにおけるCIM-SFCの結果については、付録Dを参照されたい。
【0079】
3つのアルゴリズム(CIM-CAC、CIM-CFC、およびdSBM)はすべて、Gセットにおいてかなり良好な性能を示すが、3つのアルゴリズムのうち、CIM-CACがより一貫して効果的なアルゴリズムであるように見える。CIM-CACおよびdSBMは、47/50インスタンスにおいて、知られている最良のカット値を発見できたが、CIM-CFCは、45/50のインスタンスにおいて、知られている最良のカット値を発見した。dSBMのTTSを計算するために使用されたシミュレーション時間[29]が、この比較で使用されたものよりもはるかに長かったことは注目に値する。同じシミュレーション時間を仮定すると、dSBMは、おそらく45/50のインスタンスしか解くことができなかったであろう。
図13に実証されるように、CIM-CACおよびCIM-CFCは、ほとんどのインスタンスでdSBMよりも(MVM単位で)高速である。さらに重要なことに、dSBMが高速であるインスタンスのうち、CIM-CACが、知られている最良のカット値を発見できなかったG37を除き、dSBMがCIM-CACよりも大幅に高速である場合はない。一方、我々は、CIM-CACがdSBMよりも1桁以上高速であり、多くの問題タイプを考慮した場合、CIM-CACの方がより信頼性の高いアルゴリズムである13/50のインスタンスを認めた。
【0080】
CIM-CACとCIM-CFCとの間の相違は微妙である。2つのシステムの動力学が非常に類似しているため、これは予想されることである。Gセットの2つのアルゴリズムの性能は、ほとんどの場合ほぼ同一であるが、一部のより難しいインスタンスでは、CIM-CFCが、知られている最良のカット値を発見できない場合や、CIM-CFCが、大幅に長いTSSを有する場合がある。これは、CIM-CACが、基本的により有望なアルゴリズムであるか、CIM-CFCの正確なパラメータ選択が必要であることを示す可能性がある。
【0081】
図12において留意されるように、CIM-CACの最悪の場合の性能は、dSBMの性能よりわずかに優れている可能性がある。これをさらに評価するために、1000個の800スピンおよび1200スピンのSKインスタンスの新たなセットが作成された。
図14では、99%の成功確率を達成するために必要なMVMの数の関数として解かれたインスタンスの数がプロットされている。両方の場合において、dSBMは、より少ない数のMVMで、より簡単なインスタンスを解くことができるが、最も難しいインスタンスの場合、CIM-CACの方が高速である。これは、
図14における2つの曲線の交点を観察することによって理解できる。
【0082】
ほぼすべての場合において、同様の数のMVMが使用された場合、発見された最良のイジングエネルギーは、両方のソルバで同じであった(パラメータについては付録A参照)。しかしながら、N=1200のインスタンスセットにおける2つのインスタンスでは、CACによって発見されたイジングエネルギーは、dSBMによって発見されなかった。これは、これらのインスタンスで50,000のdSBM軌道が使用された場合でも当てはまった。
【0083】
我々の結果に基づくと、dSBMは、いくつかのより難しいSKインスタンスにおいて非常に苦労する可能性があるように見える。しかしながら、これはdSBMのための準最適なパラメータ選択(sub-optimal parameter selection)の結果である可能性がある。使用されるパラメータ(付録A参照)は、良好な中央値TTSを有するように、手作業で最適化されたが、最も難しいインスタンスを解きたい場合には、最適なパラメータではない可能性がある。しかしながら、CIM-CACの場合、TTS中央値のために最適なパラメータは、最も難しいインスタンスでも良好に機能するように見える。
【0084】
イジングソルバが、与えられた問題の真の基底状態を発見することを保証するために、最悪の場合の性能が非常に重要である。この目的のために、少なくとも、ランダムに生成されたSKインスタンスの場合、CIM-CACがより根本的に優れたアルゴリズムである可能性がある。他のCIMの修正に関し、これは、当てはまらない可能性がある。特に、CIM-SFCに関し、(
図10に図示されるように)最悪の場合の性能は、dSBMおよびCIM-CACよりも大幅に悪い。
【0085】
本明細書で開示される提案されたCIM-inspiredアルゴリズムは、現在のデジタルプラットフォームにおいて実施された場合でも、高速かつ正確なイジングソルバであることが証明されている。この性能は、dSBMなどの他の既存のアナログシステムベースのアルゴリズムと非常に類似している。これは、デジタルコンピュータにおけるアナログスピンのシミュレーションが、純粋な離散ヒューリスティックアルゴリズムを上回ることができるか否かという[11]で提起された疑問を再び提示する。
【0086】
上記の記載は、説明の目的のために、特定の実施形態を参照してなされた。しかしながら、上記の例示的な議論は、網羅的であること、または開示を、開示された正確な形式に限定することは意図されていない。上記の教示を考慮して、多くの修正および変形が可能である。実施形態は、本開示の原理およびその実際の応用を、最もよく説明し、それによって、他の当業者が、企図される特定の使用に適したように、様々な修正を加えて、本開示および様々な実施形態を最大限に利用できるように、選択および説明された。
【0087】
本明細書で開示されるシステムおよび方法は、1つまたは複数のコンポーネント、システム、サーバ、機器、他のサブコンポーネントを介して実施されてもよく、またはそのような要素間で分散されてもよい。システムとして実施される場合、そのようなシステムは、特に、汎用コンピュータにおいて発見されるソフトウェアモジュール、汎用CPU、RAMなどのコンポーネントを含む、および/または、包含し得る。技術革新がサーバ上に存在する実施では、そのようなサーバは、汎用コンピュータにおいて見られるような、CPU、RAMなどのコンポーネントを含むか、または、包含し得る。
【0088】
それに加えて、本明細書のシステムおよび方法は、上述したものを超えて、異種または完全に異なるソフトウェア、ハードウェアおよび/またはファームウェアコンポーネントを用いた実施によって達成され得る。本発明に関連付けられた、または本発明を具体化するそのような他のコンポーネント(たとえば、ソフトウェア、処理コンポーネントなど)および/またはコンピュータ可読媒体に関して、たとえば、本明細書における技術革新の態様は、多数の汎用または特殊目的のコンピューティングシステムまたは構成と一致して実施され得る。本明細書の技術革新を用いた使用に適し得る様々な例示的なコンピューティングシステム、環境、および/または構成は、ソフトウェアや、または、パーソナルコンピュータ、ルーティング/接続コンポーネントのようなサーバまたはサーバコンピューティングデバイス、ハンドヘルドまたはラップトップデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのシステム、セットトップボックス、家庭用電子デバイス、ネットワークPC、他の既存のコンピュータプラットフォーム、上記のシステムまたはデバイスの1つまたは複数を含む分散コンピューティング環境などの内部の、または、これらにおいて具体化された他のコンポーネントを含み得るが、これらに限定されない。
【0089】
いくつかのインスタンスでは、システムおよび方法の態様は、たとえば、そのようなコンポーネントまたは回路構成に関連して実行されるプログラムモジュールを含むロジックおよび/またはロジック命令によって達成または実行され得る。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを実行するか、または本明細書の特定の命令を実施するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み得る。本発明はまた、回路構成が、通信バス、回路構成、またはリンクを介して接続される分散ソフトウェア、コンピュータ、または回路設定の状況において実現され得る。分散設定では、メモリストレージデバイスを含むローカルおよびリモートの両方のコンピュータ記憶媒体から、制御/命令が発生する可能性がある。
【0090】
本明細書におけるソフトウェア、回路構成、およびコンポーネントは、1つまたは複数のタイプのコンピュータ可読媒体を含む、および/または、利用することもできる。コンピュータ可読媒体は、そのような回路および/またはコンピューティングコンポーネント上に常駐するか、それらに関連付けられるか、またはそれらによってアクセスできる任意の利用可能な媒体であることができる。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体および通信媒体を備え得る。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、または他のデータなどの情報を記憶するための任意の方法または技術で実施された揮発性および不揮発性、リムーバブルおよび非リムーバブルな媒体を含む。コンピュータ記憶媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリまたは他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)または他の光学媒体、磁気テープ、磁気ディスクストレージまたは他の磁気記憶デバイス、または、所望の情報を格納するために使用でき、コンピューティングコンポーネントによってアクセスできる他の任意の媒体を含むが、これらに限定されない。通信媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、および/または他のコンポーネントを備え得る。さらに、通信媒体は、有線ネットワークまたは直接有線接続などの有線媒体を含み得るが、本明細書では、そのような種類の媒体は、一時的な媒体を含まない。上記のいずれの組合せも、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれる。
【0091】
本説明において、コンポーネント、モジュール、デバイスなどの用語は、様々な手法で実施され得る任意の種類の論理的または機能的なソフトウェア要素、回路、ブロック、および/またはプロセスを称し得る。たとえば、様々な回路および/またはブロックの機能を他の任意の数のモジュールに組み合わせることができる。各モジュールは、本明細書における技術革新の機能を実施するために中央処理装置によって読み取られる有形メモリ(たとえば、ランダムアクセスメモリ、読取専用メモリ、CD-ROMメモリ、ハードディスクドライブなど)に格納されたソフトウェアプログラムとして実施され得る。あるいは、モジュールは、伝送搬送波を介して汎用コンピュータまたは処理/グラフィックハードウェアに伝送されるプログラミング命令を備えることができる。また、モジュールは、本明細書における技術革新によって包含される機能を実施するハードウェア論理回路構成として実施することもできる。最後に、モジュールは、所望されるレベルの性能およびコストを提供する特殊目的命令(SIMD命令)、フィールドプログラマブル論理アレイ、またはそれらの組合せを使用して実施できる。
【0092】
本明細書で開示されるように、本開示と一致する特徴は、コンピュータハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアを介して実施され得る。たとえば、本明細書で開示されるシステムおよび方法は、たとえば、データベース、デジタル電子回路構成、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組合せも含む、コンピュータなどのデータプロセッサを含む、様々な形態で具体化され得る。さらに、開示された実施のいくつかは、特定のハードウェアコンポーネントを説明しているが、本明細書における技術革新と一致するシステムおよび方法は、ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアの任意の組合せで実施され得る。さらに、本明細書における上述された特徴および他の態様および原理は、様々な環境で実施され得る。そのような環境および関連アプリケーションは、本発明による様々なルーチン、プロセスおよび/または動作を実行するために特別に構築され得るか、または、必要な機能を提供するためにコードによって選択的に起動または再構成される汎用コンピュータまたはコンピューティングプラットフォームを含み得る。本明細書で開示されるプロセスは、本質的に、いかなる特定のコンピュータ、ネットワーク、アーキテクチャ、環境、または他の装置に関連するものではなく、ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアの適切な組合せによって実施され得る。たとえば、本発明の教示に従って記述されたプログラムとともに、様々な汎用マシンが使用され得るか、または、必要な方法および技法を実行するための専用の装置またはシステムを構築することが、より便利であり得る。
【0093】
ロジックなど、本明細書で説明された方法およびシステムの態様は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)、プログラマブルアレイロジック(「PAL」)デバイス、電気的プログラマブルロジックおよびメモリデバイス、および標準的なセルベースのデバイスのみならず、特定用途向け集積回路のようなプログラマブルロジックデバイス(「PLD」)を含む様々な回路構成のいずれかにプログラムされた機能としても実施され得る。態様を実施するための他のいくつかの可能なものは、メモリデバイス、メモリ付きマイクロコントローラ(EEPROMなど)、組込みマイクロプロセッサ、ファームウェア、ソフトウェアなどを含む。さらに、態様は、ソフトウェアベースの回路エミュレーション、離散ロジック(シーケンシャルおよび組合せ)、カスタムデバイス、ファジー(ニューラル)ロジック、量子デバイス、および上記デバイスタイプのいずれかのハイブリッドを有するマイクロプロセッサにおいて具体化され得る。基礎となるデバイス技術は、たとえば、相補型金属酸化膜半導体(「CMOS」)のような金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(「MOSFET」)技術や、エミッタ結合ロジック(「ECL」)、ポリマ技術(シリコン共役ポリマや金属共役ポリマ金属構造など)、アナログとデジタルの混合のようなバイポーラ技術など、様々なコンポーネントタイプで提供され得る。
【0094】
本明細書で開示される様々なロジックおよび/または機能は、その振舞い、レジスタ転送、ロジックコンポーネント、および/または、他の特性の観点から、ハードウェア、ファームウェア、および/または、様々なマシン可読またはコンピュータ可読媒体で具体化されるデータおよび/または命令の任意の数の組合せを使用して有効化され得ることにも留意されるべきである。そのようなフォーマットされたデータおよび/または命令が具体化され得るコンピュータ可読媒体は、限定されないが、様々な形式の不揮発性記憶媒体(たとえば、光学、磁気、または半導体記憶媒体)を含むが、繰り返すが、一時的な媒体は含まない。文脈上明らかに別途の必要がない限り、説明全体を通じて、「備える」、「備えている」などの用語は、排他的または網羅的な意味ではなく、包括的な意味、つまり、「含むが、これに限定されない」という意味で解釈されるべきである。単数または複数を使用する単語は、それぞれ複数または単数も含む。それに加えて、「ここに」、「この下に」、「上に」、「下に」という用語、および同様の主旨の用語は、本願全体を参照するものであり、本願の特定の部分を参照するものではない。2つ以上の項目のリストを参照して「または」という単語が使用される場合、その単語は、以下の単語の解釈、すなわち、リスト内の任意の項目、リスト内のすべての項目、およびリスト内の項目の任意の組合せのすべてをカバーする。
【0095】
本発明の現時点で好ましい特定の実施が、本明細書で具体的に説明されたが、本明細書で図示および説明された様々な実施の変形および修正が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく行われ得ることは、本発明に関連する当業者に明らかであろう。したがって、本発明は、適用可能な法の規則によって要求される範囲にのみ限定されることが意図されている。
【0096】
上記は、本開示の特定の実施形態を参照して行われたが、本開示の原理および精神、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、この実施形態における変更を行うことができることが当業者に理解されよう。
【0097】
付録A:シミュレーションパラメータの最適化
ここで、我々は、我々の数値実験において使用されたシミュレーションパラメータを要約する。パラメータは、経験的に最適化されているため、必ずしも真の最適値を反映している訳ではない。
【0098】
【0099】
【0100】
図10、
図11、および
図12において使用されるパラメータ
CIM-CAC
我々のシミュレーションでは、x
i変数は、各時間ステップにおける範囲
【数59】
に制限される。パラメータpおよびパラメータαは、T
r時間ステップ中に開始値から終了値まで線形的に調整され、追加のT
p時間ステップでは最終値に維持される。初期値x
iは、標準偏差10
-4およびe
i=1のゼロ平均ガウス分布から選択されたランダムな値に設定される。TTSを評価するために、インスタンスごとに3200の軌道が計算される。シミュレーションに使用される実際のパラメータが以下に列挙される。
【0101】
【0102】
CIM-CFC
我々のシミュレーションでは、xi変数は、[-1.5,1.5]の範囲に限定され、eiは、範囲[0.01,∞]に限定される。パラメータpは、第1のTr時間ステップ中に開始値から終了値まで線形的に調整され、追加のTp時間ステップのために、最終値に維持される。初期値xiは、標準偏差0.1およびei=1のゼロ平均ガウス分布から選択されたランダムな値に設定される。TTSを評価するために、インスタンスごとに3200の軌道が計算される。シミュレーションのために使用される実際のパラメータが、以下に列挙される。
【0103】
【表6】
CIM-SFC
このシステムは、数値的により安定しているため、x
i変数およびe
i変数の限定は必要とされない。パラメータp、cおよびβは、シミュレーション中に開始値から終了値まで線形的に調整される。初期値x
iは、標準偏差0.1およびe
i=0のゼロ平均ガウス分布から選択されたランダムな値に設定される。TTSを評価するために、インスタンスごとに3200の軌道が計算される。シミュレーションのために使用される実際のパラメータが、以下に列挙される。
【0104】
【0105】
上記のパラメータに加えて、相互結合項の正規化係数ξを
【数60】
として選択することが重要である[31]。
【0106】
この選択は、CIM-SFCにおける成功裡の性能のために重要であるが、CIM-CACおよびCIM-CFCでは重要ではない。それに加えて、
図10および
図11において、すべての問題サイズに対して、我々は同じ数の時間ステップを使用していることに留意することが重要である。問題サイズが小さいほど、最適な時間ステップの数は小さくなる可能性が高いため、時間ステップ数が問題サイズごとに個別に最適化された場合のTTSのスケーリングは、報告されたスケーリングよりも、わずかに悪化する可能性がある。しかしながら、我々は、その相違がそれほど重要になるとは考えていない。異なるパラメータが選択された場合のCIM-CACのTTSのスケーリングについては、付録Cを参照されたい。
【0107】
dSBM
図12では、[29]で説明されているように、dSBMが実施される。使用されるパラメータは、
【表8】
である。
【0108】
図14において使用されるパラメータ
N=800のためのパラメータは、
図12のためのパラメータと同じである。N=1200のためのパラメータが、以下に図示される。N=1200のために使用される軌道の数は、ほとんどのインスタンスで3200であったが、成功確率を正確に評価するために、両アルゴリズムについて、10の最も難しいインスタンスに対して、10000~50000の軌道が計算された。また、N=1200の場合の難しさのため、我々は、真の基底状態が発見されたか否かあまり確信がない。
【0109】
【0110】
【0111】
数値積分
(dSBMを除く)すべての場合において積分にオイラーステップが使用される。上記で説明したように、数値の安定性を保証するために、我々は、x
i変数の範囲を制限する。これは性能のためには必要ないが、成功確率を損なうことなく積分時間ステップを2倍または3倍増加させることができる。
図15において、我々は、制限付きシステムと制限なしシステムとの両方について、時間ステップに対するCIM-CACの成功確率を示す。
【0112】
CIM-CFCに関するセクション5における結果は、この数値制限を使用しておらず、セクション5におけるCIMは、物理マシンが意図され、0.2の時間ステップが使用される。
【0113】
付録B:Gセットのシミュレーション結果
図13におけるdSBMの結果は、[29]におけるdSBMのGPU実施から直接取得される。表3におけるTTSの単位は、解までの時間ステップ、または同等に、解までのMVMである。我々のシミュレーションでは、インスタンスの難易度に応じて、TTSを評価するために3200、10000または32000のいずれかの軌道が生成された。太字の数字は、3つのアルゴリズムの中で最も優れたTTSである。
【0114】
GセットのためのCIM-CACパラメータ
変数は、付録Aで説明されているように制限されており、初期条件も同様に設定される。以下のパラメータは、すべてのGセットインスタンスについて同じである。
【表11】
【0115】
一方、各フェーズで使用されるパラメータp、ΔT、および時間ステップ数は、以下のようにインスタンスタイプによって選択される。
【表12】
【0116】
GセットのためのCIM-CFCパラメータ
変数は、付録Aで説明されているように制限されており、初期条件も同様に設定される。以下のパラメータは、すべてのGセットインスタンスについて同じである。
【表13】
【0117】
一方、各フェーズで使用されるパラメータp、ΔT、および時間ステップの数は、以下のように、インスタンスタイプによって選択される。
【表14】
【0118】
付録C:パラメータ選択の理由
パラメータは、大部分が数値的に選択されるが、p、α、βの選択は、以下のように理解できる。探索プロセス中にCIM-CACが到達する平均残留エネルギーは、次の式によって大まかに推定できることが観察されている。[11]
【0119】
【0120】
ここで、Kは、問題タイプおよびサイズにのみ依存する定数である。この式は基本的に、システムの有効サンプリング温度を予測する(ただし、分布は、正確なボルツマン分布ではない可能性がある)。この根本原理に基づいて、我々は、アニーリング効果を生み出すために「システム温度」を徐々に下げる。これがpおよびαを増加させる動機である。異なるGセットインスタンスにおけるpの範囲の異なる選択は、最大カット問題の構造に応じて、定数Kについて大きく異なる値を反映している。より一般的な設定では、Kの値は、問題タイプに基づいて予測できるため、それに応じてpおよびαの範囲を選択できる。検証されていないが、同様の式がCIM-CFCにも当てはまる可能性が高いため、CIM-CFCのパラメータも同じ手法で選択される。
【0121】
問題サイズに関する最適なパラメータ(CIM-CAC)
図16において、我々は、パラメータが線形的に調整される場合(青影)と比較して、パラメータが固定されている場合(赤影)のスケーリングの相違が分かる。それに加えて、問題サイズが大きい場合、我々は、良好な結果を得るために、長いアニール時間を必要とするので、最適なアニール時間(言い換えれば、最適な調整速度)は、問題サイズに応じて変化する。このパターンは、Gセットのパラメータを選択するときにも使用された。
【0122】
図16は、MFB-CIM([31]参照)におけるCIM-CACのためにガウス量子モデルを使用して作成されたが、g
2=10
-4が使用されているため、このモデルと、本書で論じられている無ノイズモデルとの性能の相違は重要ではない。
図16では、0.01の時間ステップが使用されていることにも留意されたい。これが、
図16におけるTTSが、0.125の時間ステップが使用された本書で論じられた結果よりも1桁長い理由である。
【0123】
付録D:GセットにおけるCIM-SFCの結果および考察
CIM-SFCに関する現在の理解に基づくと、|czi|>>0およびtanh(czi)≒sign(czi)であるとき、項tanh(czi)が、czi≒0およびtanh(czi)≒cziである場合の「ソフトスピン」モードから、「離散スピン」モードへ遷移することが非常に重要である。これは、ランダムに選択されたスピン構成に対してziが平均して約
【0124】
【数62】
に近似することを保証し、したがって、我々は、すべての場合でcに同じ値を使用でき、同様の結果を得ることができることが、我々が(上記で定義されたような)正規化係数ξを使用する理由である。しかしながら、これは、SKインスタンスなど、各ノードの接続性が等しいインスタンスでのみ機能するため、我々は、z
iがすべてのiに対してほぼ同じ範囲の値を有すると期待できる。
【0125】
一部のGセットインスタンス、特に平面グラフインスタンスでは、一部のノードの次数がはるかに大きいため、我々が、どのような正規化係数ξを使用しても、cziはある場合には大きすぎ、別の場合には小さすぎることになる。これが、CIM-SFCが多くのGセットインスタンス、特に平面グラフにおいて苦労する理由の1つであり得る。これは、dSBMが、良好な結果を得るために、同じ正規化係数に依存しているため、dSBMが、平面グラフにおいて苦労する理由である可能性もある。CIM-CACおよびCIM-CFCは、ΣjJijσjの様々な値を自動的に補償するため、この正規化係数を必要とせず、これが、平面グラフで良好な動作をする理由である可能性がある。
【0126】
一方、トロイダルグラフの場合、これらのグラフのために、ΣjJijσjは、5つの異なる値しか取り得ることができないので、その逆もある。これは、CIM-SFCの場合、「ソフトスピン」から「離散スピン」への移行が非常に迅速であることを意味している可能性があるので、我々は、これらのグラフで良好な結果を得るために、パラメータを慎重に調整する必要がある。
【0127】
アナログ/離散遷移に関するこの観察は、Gセットでの悪い結果を部分的に説明する可能性があるが、これは十分な説明ではない。たとえば、CIM-SFCは、各ノードが同様の接続性を有しているため、上記の特性を有していない一部のランダムグラフ(G9など)において苦労する。
【0128】
以下は、GセットにおけるCIM-SFCの結果と、使用されたパラメータである(すべてのインスタンスがテストされた訳ではない)。
【0129】
【0130】
インスタンスG14~G21(800ノードの平面グラフ)およびG51~G54(1000ノードの平面グラフ)の場合、CIM-SFCは、ゼロまたはゼロ以外の非常に小さな成功確率を示す。2000ノードのインスタンスは、まだテストされていない。
【0131】
GセットにおけるCIM-SFCのパラメータ
共通パラメータ
p|-1.0→1.0
【0132】
問題タイプによって選択されるパラメータ
【表16】
【0133】
CIM-SFCのパラメータは実験的に選択され、パラメータが、性能および動力学にどのように影響するかについての理解は、限られている。我々は、このシステムがさらに徹底的に研究されたら、我々は、多くの異なる問題タイプで良好な性能が保証されるようにパラメータを選択する、より体系的な方法が見つかることを願っている。
【0134】
付録E:CIMアルゴリズムとSBMアルゴリズムとの類似点および相違点
連続アナログ動力学を使用して、離散最適化問題を解くことは、幾分新しい概念であり、これらの異なるアプローチを比較することは興味深い。[13,11,29]この付録において、我々は、3つのCIM-inspiredアルゴリズムとSBMアルゴリズムとの類似点および相違点について簡単に論じる。
【0135】
セクション6で論じられた4つすべてのシステムである、CIM-CAC、CIM-CAC、CIM-SFC、およびdSBMは、元々は、同じ基本原理によって動機付けられた[10,27]:
関数
【0136】
【数63】
は、イジングコスト関数の連続近似として使用できる。
【0137】
元のCIMアルゴリズムでは、pを増加させることによってHが変形される間、勾配降下法を使用してHの極小値を発見する。このシステムには、2つの大きな欠点がある[10]:
1.極小値が安定している。
2.振幅の不均一性により、イジング問題のコスト関数へのマッピングは正しくない。
【0138】
セクション6において論じられた4つのアルゴリズムはすべて、これら2つの欠点を克服することを目的とした元のCIMアルゴリズムの修正として考えることができる。[11,27,28,29]3つのアルゴリズムすべてにおいて、第1の欠点は、システムに新たな自由度を追加することによって解消され、N個のスピンに対してN個だけではなく、2N個のアナログ変数が存在するようになった。SBMでは、これは位置ベクトルxiと、速度/運動量ベクトルyiとの両方を含めることによって行われるが、我々は、修正されたCIMアルゴリズムに、補助変数eiを追加する。
【0139】
第2の欠点を解消するために、dSBMのクリエータは、離散化および「非弾性壁」を追加したが、CIM-CFCおよびCIM-SFCでは、この離散化は必要ない。3つのアルゴリズムはすべて、異なるメカニズムを使用して、システムが、イジングハミルトニアンの極小値(軌道の終了中)においてのみ固定点を有することを保証するが、これは、しばしば、元のCIMアルゴリズムには当てはまらない。これらのシステムは、基本的に非常に類似しているので、システムがデジタルアルゴリズムと同様の性能を達成できることは、それほど驚くべきことではない。
【0140】
また、我々は、dSBMが良好な性能を達成するには、システムを不連続にする離散化および非弾性壁を使用する必要があることにも留意したい。これは、離散プロセスを好むデジタルプラットフォームにおいて実施する場合には非常に好ましいが、これらのアルゴリズムを、アナログ物理プラットフォームにおいて実施する場合には、好ましくない。一方、CIM-CAC、CIM-CFC、およびCIM-SFCでは、システムが連続的に進化するため、本書で提案される光CIMアーキテクチャのようなアナログ実施のためにより適している。
【0141】
CIMと、[29]においてaSBMと命名された[27]における元の分岐マシンとの興味深い1つの相違点は、aSBMが完全に単一の無散逸システムであることである。このため、ある種の散逸緩和に依存する散逸CIMや、(シミュレーションされたアニーリングまたはブレークアウトローカル探索[14]のような)他のイジングヒューリスティックとは異なり、aSBMは、(量子アニーリングと同様に)計算の断熱進行(adiabatic evolution)に依存する。しかしながら、[29]では、新しいSBMアルゴリズムは、非弾性壁を追加することによって、この断熱進行の概念から逸脱しており、そのため、新しい分岐マシンは、経時的に情報が失われる散逸システムとなる。本書で論じられたアルゴリズムの高い性能をシステムが達成するために、散逸が実際に必要か否かを理解しようとすることは興味深いであろう。たとえば、振幅不均一性の問題を解消しながら、断熱性を維持する別の手法で、aSBMを修正することができる。これが可能であるか否かは、本書の範囲を超えている。
【0142】
付録F:CIM-SFCの光学的実施
図17は、
図6に図示されるCIM-CACおよびCIM-CFCの光学的実施と同様のCIM-SFCの光学的実施を図示している。フィードバック信号
【数64】
は、減衰係数
【数65】
を用いて、PSA
eによって、(増幅ではなく)減増幅され、ここで、
【数66】
は、
【数67】
である光学的ホモダイン測定結果である。このフィードバック信号は、その後、BS
iを介してメインキャビティ内の信号パルスx
iに再び注入される。ファンイン回路出力
【数68】
の一部は、遅延時間N
Tを有する遅延線DL
eによって遅延され、(メインキャビティ内部の)誤りパルスe
iと結合される。これは、式(8)における項
【数69】
を実施する。式(8)のR.H.Sに関する項
【数70】
は、メインキャビティの位相感応増幅器PSA
eによって実施される。これも減増幅プロセスである。最後に、誤り訂正信号の振幅
【数71】
が、標準的な光学的遅延線を備えたメインキャビティの内部で、信号パルスx
iに結合される。
【国際調査報告】