(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】高い早期強度および後期強度を有する建設材料組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20240910BHJP
C04B 14/28 20060101ALI20240910BHJP
C04B 22/10 20060101ALI20240910BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20240910BHJP
C04B 24/02 20060101ALI20240910BHJP
C04B 24/04 20060101ALI20240910BHJP
C04B 24/06 20060101ALI20240910BHJP
C04B 24/12 20060101ALI20240910BHJP
C04B 24/16 20060101ALI20240910BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20240910BHJP
C04B 24/32 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B14/28
C04B22/10
C04B22/14 A
C04B22/14 B
C04B24/02
C04B24/04
C04B24/06 A
C04B24/12 A
C04B24/16
C04B24/26 E
C04B24/26 F
C04B24/26 H
C04B24/32 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512217
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2022072301
(87)【国際公開番号】W WO2023025585
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト グラスル
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム デングラー
(72)【発明者】
【氏名】ロズヴィタ ムスナー
(72)【発明者】
【氏名】ゾルト サントミクローシ
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MB06
4G112MB12
4G112MB23
4G112MD01
4G112PA10
4G112PB08
4G112PB10
4G112PB11
4G112PB15
4G112PB16
4G112PB17
4G112PB20
4G112PB22
4G112PB31
4G112PB32
4G112PB36
4G112PC04
4G112PC05
4G112PC12
(57)【要約】
本発明は、ポルトランドセメントクリンカーと、硫酸カルシウムと、20℃で100g/lよりも高い溶解度を有する無機スルフェート源と、ポリアルコールおよび/またはその金属塩と、有機カーボネート、アルカリ金属カーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるカーボネートと、成分F)と、0.80μeq/gを超える電荷密度を有する分散剤とを含む、結合剤組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合剤組成物であって、前記結合剤組成物の全重量を基準としてそれぞれ、
A)25~94.089重量%の量の、ポルトランドセメントクリンカー、
B)5~20重量%の量の、硫酸カルシウムxH
2O、ここで、xは、0~2から選択される、
C)0.3~10重量%の量の、20℃で100g/lよりも高い溶解度を有する無機スルフェート源、
D)0.2~5重量%の量の、ポリアルコールおよび/またはその金属塩、
E)0.3~5重量%の量の、有機カーボネート、アルカリ金属カーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるカーボネート、
F)0.101~3.5重量%の量の、式(I)の化合物、前記の式(I)の化合物の重縮合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される成分F)、ここで、式(I)は、
【化1】
により表され、式中、
R1は、OHであり、
R2は、H、OH、C
1~C
6アルコキシ、-SO
2X、-SO
3X、-OSO
3X、-PO、-PO
3X
2、-OPO
3X
2、-Z-COOXまたは-CH(OH)-SO
3Xであり、
R3は、H、COOX、1~6個のOHにより置換されていてよいC
3~C
6アルキルまたはC
1~C
6アルコキシであり、
mは、0または1であるか、または
mが0である場合には、R1およびR2は、それらが結合される炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、
R4は、COOYまたはSO
3Xであり、
Xは、Hまたはカチオン等価体K
aから選択され、ここで、Kは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、亜鉛カチオン、鉄カチオン、アンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンから選択され、かつaは、1/nであり、ここで、nは、前記カチオンの原子価であり、
Yは、X、C
1~C
6アルキルまたはフェニルから選択され、かつ
Zは、CH
2またはCH(OH)である、および
G)0.01~1重量%の量の、0.80μeq/gを超える電荷密度を有する分散剤
を含む、前記結合剤組成物。
【請求項2】
前記ポリアルコールおよび/またはその金属塩が、i)NR
1R
2R
3、ここで、R
1~R
3は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキル、(CH
2O)
n-OH、(CH
2CH
2O)
n-OH、(CH
2CH
2CH
2O)
n-OH、(CHOH)
n-C(=O)H、または(CHOH)
n-CH
2OHであり、ここで、nは、1~10の整数である、ii)R
5-(CHOH)
o-R
4、ここで、R
4およびR
5は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキル、C
2~C
6-ヒドロキシアルケニル、C
1~C
6-アミノアルキル、-OH、C
1~C
5-アルキル、C(=O)H、またはC(=O)OHであり、oは、0~5の整数である、およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、前記ポリアルコールおよび/またはその金属塩が、i)NR
1R
2R
3およびii)R
5-(CHOH)
o-R
4の混合物である、請求項1に記載の結合剤組成物。
【請求項3】
前記ポリアルコールおよび/またはその金属塩が、i)NR
1R
2R
3、ここで、R
1~R
3は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキルである、ii)R
5-(CHOH)
o-R
4、ここで、R
4およびR
5は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキルであり、oは、0~1の整数である、およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、前記ポリアルコールおよび/またはその金属塩は、i)NR
1R
2R
3、ここで、R
1~R
3は、C
2~C
3-ヒドロキシアルキルである、およびii)R
5-(CHOH)
o-R
4、ここで、R
4およびR
5は、独立してC
1~C
2-ヒドロキシアルキルであり、oは、0~1の整数である、の混合物であり、特に、前記ポリアルコールおよび/またはその金属塩は、i)トリエタノールアミンおよびii)グリセロールの混合物またはi)トリエタノールアミンカルシウム塩およびii)カルシウムグリセロレートの混合物である、請求項1または2に記載の結合剤組成物。
【請求項4】
前記カーボネートが、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ金属カーボネート、好ましくは重炭酸ナトリウムである、請求項1または3に記載の結合剤組成物。
【請求項5】
前記無機スルフェート源が、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ金属硫酸塩であり、好ましくは硫酸ナトリウムであり、および/または
前記硫酸カルシウムが、硫酸カルシウム無水物である、請求項1または4に記載の結合剤組成物。
【請求項6】
前記分散剤が、1.20μeq/gを超える、好ましくは1.2μeq/gを超え14μeq/gまで、より好ましくは1.5~10.0μeq/g、および特に2.0~5.0μeq/gの電荷密度を有する、請求項1または5に記載の結合剤組成物。
【請求項7】
前記分散剤が、一般式(Ia)、(Ib)、(Ic)および/または(Id)の少なくとも1種の構造単位を有する酸官能基を有する単位を含むくし型ポリマーである:
【化2】
式中、
R
1は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基、CH
2COOHまたはCH
2CO-X-R
2、好ましくはHまたはCH
3であり、
Xは、NH-(C
nH
2n)、O(C
nH
2n)〔ここで、n=1、2、3または4〕であり、ここで、前記窒素原子または前記酸素原子は、前記CO基に結合される、または化学結合であり、好ましくはXは、化学結合またはO(C
nH
2n)であり、
R
2は、OM、PO
3M
2、またはO-PO
3M
2であるが、ただしXは、R
2がOMである場合に、化学結合である、
【化3】
式中、
R
3は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基、好ましくはHまたはCH
3であり、
nは、0、1、2、3または4、好ましくは0または1であり、
R
4は、PO
3M
2、またはO-PO
3M
2である、
【化4】
式中、
R
5は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基、好ましくはHであり、
Zは、OまたはNR
7、好ましくはOであり、
R
7は、H、(C
nH
2n)-OH、(C
nH
2n)-PO
3M
2、(C
nH
2n)-OPO
3M
2、(C
6H
4)-PO
3M
2、または(C
6H
4)-OPO
3M
2であり、かつ
nは、1、2、3または4、好ましくは1、2または3である、
【化5】
式中、
R
6は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基、好ましくはHであり、
Qは、NR
7またはO、好ましくはOであり、
R
7は、H、(C
nH
2n)-OH、(C
nH
2n)-PO
3M
2、(C
nH
2n)-OPO
3M
2、(C
6H
4)-PO
3M
2、または(C
6H
4)-OPO
3M
2であり、
nは、1、2、3または4、好ましくは1、2または3であり、かつ
各Mは互いに独立して、Hまたはカチオン等価体である、
および/または
ここで、前記分散剤が、一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)および/または(IId)の少なくとも1個の構造単位を有するポリエーテル側鎖を有する単位を含むくし型ポリマーである:
【化6】
式中、
R
10、R
11およびR
12は互いに独立して、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
Zは、OまたはSであり、
Eは、非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
6アルキレン基、シクロヘキシレン基、CH
2-C
6H
10、1,2-フェニレン、1,3-フェニレンまたは1,4-フェニレンであり、
Gは、O、NHまたはCO-NHであるか、または
EおよびGは一緒になって、化学結合であり、
Aは、C
xH
2x〔ここで、x=2、3、4または5、好ましくは2または3〕であるか、またはCH
2CH(C
6H
5)であり、
nは、0、1、2、3、4または5、好ましくは0、1または2であり、
aは、2~350、好ましくは5~150、より好ましくは20~135、最も好ましくは60~135の整数であり、
R
13は、H、非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基、CO-NH
2および/またはCOCH
3であり、
【化7】
式中、
R
16、R
17およびR
18は互いに独立して、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
Eは、非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
6アルキレン基、シクロヘキシレン基、CH
2-C
6H
10、1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、または1,4-フェニレンであるか、または化学結合であり、
Aは、C
xH
2x〔ここで、x=2、3、4または5、好ましくは2または3〕であるか、またはCH
2CH(C
6H
5)であり、
nは、0、1、2、3、4および/または5、好ましくは0、1または2であり、
Lは、C
xH
2x〔ここで、x=2、3、4または5、好ましくは2または3〕であるか、またはCH
2-CH(C
6H
5)であり、
aは、2~350、好ましくは5~150の整数であり、
dは、1~350、好ましくは5~150の整数であり、
R
19は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
R
20は、Hまたは非分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
【化8】
式中、
R
21、R
22およびR
23は互いに独立して、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
Wは、O、NR
25であるか、またはNであり、
Yは、W=OまたはNR
25である場合に、1であり、かつW=Nである場合に、2であり、
Aは、C
xH
2x〔ここで、x=2、3、4または5、好ましくは2または3〕であるか、またはCH
2CH(C
6H
5)であり、
aは、2~350、好ましくは5~150、より好ましくは20~135、最も好ましくは60~135の整数であり、
R
24は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、かつ
R
25は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基である、
【化9】
式中、
R
6は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
Qは、NR
10、NまたはOであり、
Yは、W=OまたはNR
10である場合に、1であり、かつW=Nである場合に、2であり、
R
10は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、かつ
Aは、C
xH
2x〔ここで、x=2、3、4または5、好ましくは2または3〕であるか、またはCH
2C(C
6H
5)Hであり、
R
24は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
Mは、Hまたはカチオン等価体であり、かつ
aは、2~350、好ましくは5~150、より好ましくは20~135、最も好ましくは60~135の整数である、請求項1または6に記載の結合剤組成物。
【請求項8】
前記分散剤が、構造単位(III)および(IV)を含むホスホリル化重縮合生成物である:
【化10】
式中、
Tは、置換もしくは非置換のフェニルまたはナフチル基であるか、または環原子5~10個を有し、そのうち1または2個の原子がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子である、置換もしくは非置換のヘテロ芳香族基であり、
nは、1または2であり、
Bは、N、NHまたはOであるが、ただし、nは、BがNである場合に、2であり、かつただし、nは、BがNHまたはOである場合に、1であり、
Aは、炭素原子2~5個を有する非分岐状もしくは分岐状のアルキレンまたはCH
2CH(C
6H
5)であり、
aは、1~300の整数であり、
R
25は、H、分岐状もしくは非分岐状のC
1~C
10アルキル基、C
5~C
8シクロアルキル基、アリール基、または環原子5~10個を有し、そのうち1または2個の原子がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子である、ヘテロアリール基であり、
ここで、前記構造単位(IV)は、構造単位(IVa)および(IVb)から選択される:
【化11】
式中、
Dは、置換もしくは非置換のフェニルまたはナフチル基であるか、または環原子5~10個を有し、そのうち1または2個の原子がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子である、置換もしくは非置換のヘテロ芳香族基であり、
Eは、N、NHまたはOであるが、ただし、mは、EがNである場合に、2であり、かつただし、mは、EがNHまたはOである場合に、1であり、
Aは、炭素原子2~5個を有する非分岐状もしくは分岐状のアルキレンまたはCH
2CH(C
6H
5)であり、
bは、0~300の整数であり、
Mは互いに独立して、Hまたはカチオン等価体である、
【化12】
式中、
Vは、置換もしくは非置換のフェニルまたはナフチル基であり、かつ任意にR
8、OH、OR
8、(CO)R
8、COOM、COOR
8、SO
3R
8およびNO
2から選択される1または2個の基により置換され、
R
7は、COOM、OCH
2COOM、SO
3MまたはOPO
3M
2であり、
Mは、Hまたはカチオン等価体であり、かつ
R
8は、C
1~C
4アルキル、フェニル、ナフチル、フェニル-C
1~C
4アルキルまたはC
1~C
4アルキルフェニルである、請求項1から7までのいずれか1項に記載の結合剤組成物。
【請求項9】
前記成分F)が、ヒドロキシカルボン酸または前記ヒドロキシカルボン酸の重縮合物または前記ヒドロキシカルボン酸またはクエン酸または酒石酸のスルフィット付加生成物を含み、好ましくは、前記ヒドロキシカルボン酸または前記ヒドロキシカルボン酸の重縮合物または前記ヒドロキシカルボン酸のスルフィット付加生成物が、グリオキシル酸またはグリオキシル酸の重縮合物またはグリオキシル酸のスルフィット付加生成物であり、より好ましくは、グリオキシル酸の前記重縮合物が、アミン-グリオキシル酸縮合物であり、よりいっそう好ましくは、前記アミン-グリオキシル酸縮合物が、メラミン-グリオキシル酸縮合物、尿素-グリオキシル酸縮合物、メラミン-尿素-グリオキシル酸縮合物、およびポリアクリルアミド-グリオキシル酸縮合物からなる群から選択され、特に尿素-グリオキシル酸縮合物である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の結合剤組成物。
【請求項10】
前記成分F)が、以下の部分
R2は、Hであり、
R3は、1~5個のOHにより置換されていてよいC
3~C
6アルキルであり、かつ
R4は、COOYであり、かつ
Yは、Xであって、アルカリ金属である、
を有する式(I)の塩を含み、好ましくは、前記塩が、グルコン酸ナトリウムである、請求項1から9までのいずれか1項に記載の結合剤組成物。
【請求項11】
前記成分F)が、式(I)の化合物および前記の式(I)の化合物の重縮合物からなる群から選択される少なくとも2種の化合物を含み、好ましくは、成分F)が、式(I)の化合物および前記の式(I)の化合物の重縮合物の混合物を含み、より好ましくは、前記成分F)が、グリオキシル酸の重縮合物および以下の部分
R2は、Hであり、
R3は、1~5個のOHにより置換されていてよいC
3~C
6アルキルであり、かつ
R4は、COOYであり、かつ
Yは、Xであって、アルカリ金属である、
を有する式(I)の塩であり、好ましくは、前記塩が、グルコン酸ナトリウムである、請求項1から10までのいずれか1項に記載の結合剤組成物。
【請求項12】
前記結合剤組成物がさらに、
H)前記結合剤組成物の全重量を基準として、0.5~68.989重量%の量の、補助的なセメント系材料
を含み、好ましくは、前記の補助的なセメント系材料が、スラグ、フライアッシュ、天然ポゾラン、焼成粘土、シリカフューム、石灰石、およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは石灰石である、請求項1から11までのいずれか1項に記載の結合剤組成物。
【請求項13】
遅延形混和剤(RM)の使用であって、前記遅延形混和剤(RM)の全重量を基準としてそれぞれ、
RM1)30~60重量%の量の、有機カーボネート、アルカリ金属カーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるカーボネート、
RM2)5~20重量%の量の、NR
1R
2R
3および/またはその金属塩、ここで、R
1~R
3は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキルである、
RM3)10~30重量%の量の、R
5-(CHOH)
o-R
4および/またはその金属塩、ここで、R
4およびR
5は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキルであり、oは、0~1の整数である、
RM4)12~50重量%の量の、式(I)の化合物、前記の式(I)の化合物の重縮合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される成分RM4)、ここで、式(I)が、
【化13】
により表され、式中、
R1は、OHであり、
R2は、H、OH、C
1~C
6アルコキシ、-SO
2X、-SO
3X、-OSO
3X、-PO、-PO
3X
2、-OPO
3X
2、-Z-COOXまたは-CH(OH)-SO
3Xであり、
R3は、H、COOX、1~6個のOHにより置換されていてよいC
3~C
6アルキルまたはC
1~C
6アルコキシであり、
mは、0または1であるか、または
mが0である場合には、R1およびR2は、それらが結合される炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、
R4は、COOYまたはSO
3Xであり、
Xは、Hまたはカチオン等価体K
aから選択され、ここで、Kは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、亜鉛カチオン、鉄カチオン、アンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンから選択され、かつaは、1/nであり、ここで、nは、前記カチオンの原子価であり、
Yは、X、C
1~C
6アルキルまたはフェニルから選択され、かつ
Zは、CH
2またはCH(OH)である、
および0.80μeq/gを超える電荷密度を有する分散剤を含み、
ポルトランドセメントクリンカーと、硫酸カルシウムと、硫酸ナトリウムと、任意に補助的なセメント系材料とを含む建設材料組成物の広がりおよび/または圧縮強さを改善するための、前記使用。
【請求項14】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の結合剤組成物を含むコンクリート。
【請求項15】
遅延形混和剤(RM)の使用であって、前記遅延形混和剤(RM)の全重量を基準としてそれぞれ、
RM1)30~60重量%の量の、有機カーボネート、アルカリ金属カーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるカーボネート、
RM2)5~20重量%の量の、NR
1R
2R
3および/またはその金属塩、ここで、R
1~R
3は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキルである、
RM3)10~30重量%の量の、R
5-(CHOH)
o-R
4および/またはその金属塩、ここで、R
4およびR
5は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキルであり、oは、0~1の整数である、
RM4)12~50重量%の量の、式(I)の化合物、前記の式(I)の化合物の重縮合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される成分RM4)、ここで、式(I)は、
【化14】
により表され、式中、
R1は、OHであり、
R2は、H、OH、C
1~C
6アルコキシ、-SO
2X、-SO
3X、-OSO
3X、-PO、-PO
3X
2、-OPO
3X
2、-Z-COOXまたは-CH(OH)-SO
3Xであり、
R3は、H、COOX、1~6個のOHにより置換されていてよいC
3~C
6アルキルまたはC
1~C
6アルコキシであり、
mは、0または1であるか、または
mが0である場合には、R1およびR2は、それらが結合される炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、
R4は、COOYまたはSO
3Xであり、
Xは、Hまたはカチオン等価体K
aから選択され、ここで、Kは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、亜鉛カチオン、鉄カチオン、アンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンから選択され、かつaは、1/nであり、ここで、nは、前記カチオンの原子価であり、
Yは、X、C
1~C
6アルキルまたはフェニルから選択され、かつ
Zは、CH
2またはCH(OH)である、
および0.80μeq/gを超える電荷密度を有する分散剤を含み、
建築材料配合物を含有する無機結合剤の硬化を遅延させるためおよび/または建築製品を製造するための、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポルトランドセメントクリンカーと、硫酸カルシウムと、20℃で100g/lよりも高い溶解度を有する無機スルフェート源と、ポリアルコールおよび/またはその金属塩と、有機カーボネート、アルカリ金属カーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるカーボネートと、成分F)と、0.80μeq/gを超える電荷密度を有する分散剤とを含む結合剤組成物に関する。
【0002】
モルタルおよびセメントは、ポルトランドセメントクリンカーをベースとする配合物である。そのようなセメント系は、CO2排出による環境側面を考慮してより頻繁に監視されている。前記CO2排出に対応するためのセメント工業における動向は、普通ポルトランドセメント(OPC)においてより補助的なセメント系材料、例えば石灰石、スラグ、フライアッシュ、および最近新たに開発された焼成粘土を使用することである(Scrivener et al., Cement and Concrete Research, 114, 2018)。
【0003】
前記セメントにおける多量の補助的なセメント系材料の使用の一般的な欠点は、比較的低い早期強度である。焼成粘土および石灰石と混和された系(いわゆるLC3セメント、OPC約50%を使用)において、前記セメントの前記性能は、多くの面、例えば長期強さ(Antoni et al., Cement and Concrete Research, 42, 2012)および耐久性(Scrivener et al., Advances in Civil Engineering Materials, 8, 2019)において、前記OPCに匹敵する。しかしながら、前記早期強度は、前記早期強度に寄与するOPCから生じるC3Sの還元した量のために、前記OPCに比較して相対的に低い。
【0004】
添加剤が、前記早期強度を改善するために水性スラリーまたは粉末分散剤に添加されてよいことは当該技術分野において公知である。しかしながら、そのような添加剤は、ワーカビリティー、すなわち混練性、スプレッダビリティー、噴霧性、ポンパビリティー、またはフローワビリティーを達成することができる。したがって、さらなる添加剤が、十分なワーカビリティーを提供するために必要とされる。そのような添加物は、固体凝集体の形成を防止することができ、かつすでに存在する粒子および水和により新たに形成される粒子を分散させることができ、かつこのように前記ワーカビリティーを改善することができる。この作用は、例えば水硬性結合剤、例えばセメント、石灰、セッコウ、半水セッコウまたは硬セッコウを含有する建設材料組成物の製造において利用される。例えば、凝結調整剤または遅延剤が添加剤として使用されて、前記水和反応を遅延させ、かつ前記ワーカビリティーを改善することができる。前記遅延剤は、反応性セメント成分、特にアルミネートの溶解を抑制することにより、および/またはカルシウムイオンをマスキングすることにより、凝結時の水和を遅延させ、それにより、前記水和反応を減速させる。独国特許出願公開第4217181号明細書(DE 42 17 181 A1)には、水硬性結合剤用の添加剤としてのメラミンとグリオキシル酸との縮合生成物が開示されている。
【0005】
国際公開第2016/206780号(WO2016206780)には、特定のアルカノールアミンを含む水硬性結合剤の強さの発現を促進する添加剤が記載されている。しかしながら、ワーカビリティーが影響を受けるかは不明確なままである。
【0006】
前記の背景に対して、本発明の課題は、十分なワーカビリティーを有する、高い早期強度および/または後期強度を提供する結合剤組成物を提供することであった。さらに、本発明の課題は、減少したCO2プロファイルを有する建設材料組成物を提供することであった。本発明の課題は、より多量のポルトランドセメントクリンカーを有するOPCに比較して匹敵する早期強度および/または後期強度を提供する、減少した量のポルトランドセメントクリンカーを有する結合剤組成物を提供することでもあった。
【0007】
上記の課題は、請求の範囲に記載のとおりの特定の添加剤成分を含む前記結合剤組成物により達成することができることが、驚くべきことに見出された。本明細書に記載された特定の遅延形混和剤および0.80μeq/gを超える電荷密度を有する分散剤が、建設材料組成物の広がりおよび/または圧縮強さを改善するため、建築材料配合物を含有する無機結合剤の硬化を遅延させるためおよび/または建築製品を製造するために使用することができることが、さらに見出された。
【0008】
そのため、第1の態様において、本発明は、結合剤組成物に関するものであって、
A)25~94.089重量%の量の、ポルトランドセメントクリンカー、
B)5~20重量%の量の、硫酸カルシウムxH
2O、ここで、xは、0~2から選択される、
C)0.3~10重量%の量の、20℃で100g/lよりも高い溶解度を有する無機スルフェート源、
D)0.2~5重量%の量の、ポリアルコールおよび/またはその金属塩、
E)0.3~5重量%の量の、有機カーボネート、アルカリ金属カーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるカーボネート、
F)0.101~3.5重量%の量の、式(I)の化合物、前記の式(I)の化合物の重縮合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される成分F)、ここで、式(I)は、
【化1】
により表され、式中、
R1は、OHであり、
R2は、H、OH、C
1~C
6アルコキシ、-SO
2X、-SO
3X、-OSO
3X、-PO、-PO
3X
2、-OPO
3X
2、-Z-COOXまたは-CH(OH)-SO
3Xであり、
R3は、H、COOX、1~6個のOHにより置換されていてよいC
3~C
6アルキルまたはC
1~C
6アルコキシであり、
mは、0または1であるか、または
mが0である場合には、R1およびR2は、それらが結合される炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、
R4は、COOYまたはSO
3Xであり、
Xは、Hまたはカチオン等価体K
aから選択され、ここで、Kは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、亜鉛カチオン、鉄カチオン、アンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンから選択され、かつaは、1/nであり、ここで、nは、前記カチオンの原子価であり、
Yは、X、C
1~C
6アルキルまたはフェニルから選択され、かつ
Zは、CH
2またはCH(OH)である、および
G)0.01~1重量%の量の、0.80μeq/gを超える電荷密度を有する分散剤
を、前記結合剤組成物の全重量を基準としてそれぞれ含む。
【0009】
以下において、前記結合剤組成物の前記成分の好ましい実施態様は、さらに詳細に記載される。それぞれ好ましい実施態様が、単独でならびに他の好ましい実施態様との組合せで関連性があることが理解すべきである。
【0010】
前記の第1の態様の好ましい実施態様A1において、前記ポリアルコール(および/またはその金属塩)は、i)NR1R2R3、ここで、R1~R3は、独立してC1~C6-ヒドロキシアルキル、(CH2O)n-OH、(CH2CH2O)n-OH、(CH2CH2CH2O)n-OH、(CHOH)n-C(=O)H、または(CHOH)n-CH2OHであり、ここで、nは、1~10の整数である、ii)R5-(CHOH)o-R4、ここで、R4およびR5は、独立してC1~C6-ヒドロキシアルキル、C2~C6-ヒドロキシアルケニル、C1~C6-アミノアルキル、-OH、C1~C5-アルキル、C(=O)H、またはC(=O)OHであり、ここで、oは、0~5の整数である、およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、前記ポリアルコール(および/またはその金属塩)は、i)NR1R2R3およびii)R5-(CHOH)o-R4の混合物である。
【0011】
前記の第1の態様の好ましい実施態様A2において、前記ポリアルコール(および/またはその金属塩)は、i)NR1R2R3、ここで、R1~R3は、独立してC1~C6-ヒドロキシアルキルである、ii)R5-(CHOH)o-R4、ここで、R4およびR5は、独立してC1~C6-ヒドロキシアルキルであり、ここで、oは、0~1の整数である、およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、前記ポリアルコール(および/またはその金属塩)は、i)NR1R2R3、ここで、R1~R3は、C2~C3-ヒドロキシアルキルである、およびii)R5-(CHOH)o-R4、ここで、R4およびR5は、独立してC1~C2-ヒドロキシアルキルであり、ここで、oは、0~1の整数である、の混合物であり、かつ特に、前記ポリアルコール(および/またはその金属塩)は、i)トリエタノールアミンおよびii)グリセロールの混合物またはi)トリエタノールアミンカルシウム塩およびii)カルシウムグリセロレートの混合物である。
【0012】
前記の第1の態様の好ましい実施態様A3において、前記カーボネートは、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ金属カーボネート、好ましくは重炭酸ナトリウムである。
【0013】
前記の第1の態様の好ましい実施態様A4において、前記無機スルフェート源は、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ金属硫酸塩、好ましくは硫酸ナトリウムであり、および/または前記硫酸カルシウムは、硫酸カルシウム無水物である。
【0014】
前記の第1の態様の好ましい実施態様A5において、前記分散剤は、1.20μeq/gを超える、好ましくは1.2μeq/gを超え14μeq/gまで、より好ましくは1.5~10.0μeq/g、および特に2.0~5.0μeq/gの電荷密度を有する。
【0015】
前記の第1の態様の好ましい実施態様A6において、前記分散剤は、一般式(Ia)、(Ib)、(Ic)および/または(Id)の少なくとも1個の構造単位を有する酸官能基を有する単位を含む、くし型ポリマーである:
【化2】
式中、
R
1は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基、CH
2COOHまたはCH
2CO-X-R
2、好ましくはHまたはCH
3であり、
Xは、NH-(C
nH
2n)、O(C
nH
2n)〔ここで、n=1、2、3または4〕であり、ここで、前記窒素原子または前記酸素原子は、前記CO基に結合される、または化学結合であり、好ましくはXは、化学結合またはO(C
nH
2n)であり、
R
2は、OM、PO
3M
2、またはO-PO
3M
2であるが、ただし、Xは、R
2がOMである場合に、化学結合である、
【化3】
式中、
R
3は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基、好ましくはHまたはCH
3であり、
nは、0、1、2、3または4、好ましくは0または1であり、
R
4は、PO
3M
2、またはO-PO
3M
2である、
【化4】
式中、
R
5は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基、好ましくはHであり、
Zは、OまたはNR
7、好ましくはOであり、
R
7は、H、(C
nH
2n)-OH、(C
nH
2n)-PO
3M
2、(C
nH
2n)-OPO
3M
2、(C
6H
4)-PO
3M
2、または(C
6H
4)-OPO
3M
2であり、かつ
nは、1、2、3または4、好ましくは1、2または3である、
【化5】
式中、
R
6は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基、好ましくはHであり、
Qは、NR
7またはO、好ましくはOであり、
R
7は、H、(C
nH
2n)-OH、(C
nH
2n)-PO
3M
2、(C
nH
2n)-OPO
3M
2、(C
6H
4)-PO
3M
2、または(C
6H
4)-OPO
3M
2であり、
nは、1、2、3または4、好ましくは1、2または3であり、かつ
各Mは互いに独立して、Hまたはカチオン等価体である、および/または前記分散剤は、一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)および/または(IId)の少なくとも1個の構造単位を有するポリエーテル側鎖を有する単位を含む、くし型ポリマーである:
【化6】
式中、
R
10、R
11およびR
12は互いに独立して、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
Zは、OまたはSであり、
Eは、非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
6アルキレン基、シクロヘキシレン基、CH
2-C
6H
10、1,2-フェニレン、1,3-フェニレンまたは1,4-フェニレンであり、
Gは、O、NHまたはCO-NHであり、または
EおよびGは一緒になって、化学結合であり、
Aは、C
xH
2x〔ここで、x=2、3、4または5、好ましくは2または3〕であるか、またはCH
2CH(C
6H
5)であり、
nは、0、1、2、3、4または5、好ましくは0、1または2であり、
aは、2~350、好ましくは5~150、より好ましくは20~135、最も好ましくは60~135の整数であり、
R
13は、H、非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基、CO-NH
2および/またはCOCH
3である、
【化7】
式中、
R
16、R
17およびR
18は互いに独立して、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
Eは、非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
6アルキレン基、シクロヘキシレン基、CH
2-C
6H
10、1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、または1,4-フェニレンであるか、または化学結合であり、
Aは、C
xH
2x〔ここで、x=2、3、4または5、好ましくは2または3〕であるか、またはCH
2CH(C
6H
5)であり、
nは、0、1、2、3、4および/または5、好ましくは0、1または2であり、
Lは、C
xH
2x〔ここで、x=2、3、4または5、好ましくは2または3〕であるか、またはCH
2-CH(C
6H
5)であり、
aは、2~350、好ましくは5~150の整数であり、
dは、1~350、好ましくは5~150の整数であり、
R
19は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
R
20は、Hまたは非分岐状のC
1~C
4アルキル基である、
【化8】
式中、
R
21、R
22およびR
23は互いに独立して、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
Wは、O、NR
25であるか、またはNであり、
Yは、W=O、またはNR
25である場合に、1であるか、かつW=Nである場合に、2であり、
Aは、C
xH
2x〔ここで、x=2、3、4または5、好ましくは2または3〕であるか、またはCH
2CH(C
6H
5)であり、
aは、2~350、好ましくは5~150、より好ましくは20~135、最も好ましくは60~135の整数であり、
R
24は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、かつ
R
25は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基である、
【化9】
式中、
R
6は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
Qは、NR
10、NまたはOであり、
Yは、W=O、またはNR
10である場合に、1であり、かつW=Nである場合に、2であり、
R
10は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、かつ
Aは、C
xH
2x〔ここで、x=2、3、4または5、好ましくは2または3〕であるか、またはCH
2C(C
6H
5)Hであり、
R
24は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
Mは、Hまたはカチオン等価体であり、かつ
aは、2~350、好ましくは5~150、より好ましくは20~135、最も好ましくは60~135の整数である。
【0016】
前記の第1の態様の好ましい実施態様A7において、前記分散剤は、構造単位(III)および(IV)を含む、ホスホリル化重縮合生成物である:
【化10】
式中、
Tは、置換もしくは非置換のフェニルまたはナフチル基であるか、または環原子5~10個を有し、そのうち1または2個の原子がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子である、置換もしくは非置換のヘテロ芳香族基であり、
nは、1または2であり、
Bは、N、NHまたはOであるが、ただし、nは、BがNである場合に、2であり、かつただし、nは、BがNHまたはOである場合に、1であり、
Aは、炭素原子2~5個を有する非分岐状もしくは分岐状のアルキレンまたはCH
2CH(C
6H
5)であり、
aは、1~300の整数であり、
R
25は、H、分岐状もしくは非分岐状のC
1~C
10アルキル基、C
5~C
8シクロアルキル基、アリール基、または環原子5~10個を有し、そのうち1または2個の原子がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子である、ヘテロアリール基である、
ここで、前記構造単位(IV)は、構造単位(IVa)および(IVb)から選択される:
【化11】
式中、
Dは、置換もしくは非置換のフェニルまたはナフチル基であるか、または環原子5~10個を有し、そのうち1または2個の原子がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子である、置換もしくは非置換のヘテロ芳香族基であり、
Eは、N、NHまたはOであるが、ただし、mは、EがNである場合に、2であり、かつただし、mは、EがNHまたはOである場合に、1であり、
Aは、炭素原子2~5個を有する非分岐状もしくは分岐状のアルキレンまたはCH
2CH(C
6H
5)であり、
bは、0~300の整数であり、
Mは互いに独立して、Hまたはカチオン等価体である、
【化12】
式中、
Vは、置換もしくは非置換のフェニルまたはナフチル基であり、かつ任意にR
8、OH、OR
8、(CO)R
8、COOM、COOR
8、SO
3R
8およびNO
2から選択される1または2個の基により置換され、
R
7は、COOM、OCH
2COOM、SO
3MまたはOPO
3M
2であり、
Mは、Hまたはカチオン等価体であり、かつ
R
8は、C
1~C
4アルキル、フェニル、ナフチル、フェニル-C
1~C
4アルキルまたはC
1~C
4アルキルフェニルである。
【0017】
前記の第1の態様の好ましい実施態様A8において、前記成分F)は、ヒドロキシカルボン酸または前記ヒドロキシカルボン酸の重縮合物または前記ヒドロキシカルボン酸またはクエン酸または酒石酸のスルフィット付加生成物を含み、好ましくは、前記ヒドロキシカルボン酸または前記ヒドロキシカルボン酸の前記重縮合物または前記ヒドロキシカルボン酸の前記スルフィット付加生成物は、グリオキシル酸またはグリオキシル酸の重縮合物またはグリオキシル酸のスルフィット付加生成物であり、より好ましくは、前記のグリオキシル酸の重縮合物は、アミン-グリオキシル酸縮合物であり、よりいっそう好ましくは、前記アミン-グリオキシル酸縮合物は、メラミン-グリオキシル酸縮合物、尿素-グリオキシル酸縮合物、メラミン-尿素-グリオキシル酸縮合物、およびポリアクリルアミド-グリオキシル酸縮合物からなる群から選択され、特に尿素-グリオキシル酸縮合物である。
【0018】
前記の第1の態様の好ましい実施態様A9において、前記成分F)は、以下の部分
R2は、Hであり、
R3は、1~5個のOHにより置換されていてよいC3~C6アルキルであり、かつ
R4は、COOYであり、かつ
Yは、Xであって、アルカリ金属である
を有する、式(I)の塩を含み、好ましくは、前記塩は、グルコン酸ナトリウムである。
【0019】
前記の第1の態様の好ましい実施態様A10において、前記成分F)は、式(I)の化合物および前記の式(I)の化合物の重縮合物からなる群から選択される少なくとも2種の化合物を含み、好ましくは、成分F)は、式(I)の化合物および前記の式(I)の化合物の重縮合物の混合物を含み、より好ましくは、前記成分F)は、グリオキシル酸の重縮合物と、以下の部分
R2は、Hであり、
R3は、1~5個のOHにより置換されていてよいC3~C6アルキルであり、かつ
R4は、COOYであり、かつ
Yは、Xであって、アルカリ金属である
を有する式(I)の塩とを含み、好ましくは、前記塩は、グルコン酸ナトリウムである。
【0020】
前記の第1の態様の好ましい実施態様A11において、前記結合剤組成物はさらに、
H)前記結合剤組成物の全重量を基準として、0.5~68.989重量%の量の、補助的なセメント系材料
を含み、好ましくは、前記の補助的なセメント系材料は、スラグ、フライアッシュ、天然ポゾラン、焼成粘土、シリカフューム、石灰石、およびそれらの混合物、好ましくは石灰石からなる群から選択される。
【0021】
第2の態様において、本発明は、遅延形混和剤(RM)の使用であって、前記遅延形混和剤(RM)が、前記遅延形混和剤(RM)の全重量を基準としてそれぞれ、
RM1)30~60重量%の量の、有機カーボネート、アルカリ金属カーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるカーボネート、
RM2)5~20重量%の量の、NR
1R
2R
3および/またはその金属塩、ここで、R
1~R
3は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキルである、
RM3)10~30重量%の量の、R
5-(CHOH)
o-R
4および/またはその金属塩、ここで、R
4およびR
5は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキルであり、oは、0~1の整数である、
RM4)12~50重量%の量の、式(I)の化合物、前記の式(I)の化合物の重縮合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される成分RM4)、ここで、式(I)は、
【化13】
により表され、式中、
R1は、OHであり、
R2は、H、OH、C
1~C
6アルコキシ、-SO
2X、-SO
3X、-OSO
3X、-PO、-PO
3X
2、-OPO
3X
2、-Z-COOXまたは-CH(OH)-SO
3Xであり、
R3は、H、COOX、1~6個のOHにより置換されていてよいC
3~C
6アルキルまたはC
1~C
6アルコキシであり、
mは、0または1であるか、または
mが0である場合には、R1およびR2は、それらが結合される炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、
R4は、COOYまたはSO
3Xであり、
Xは、Hまたはカチオン等価体K
aから選択され、ここで、Kは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、亜鉛カチオン、鉄カチオン、アンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンから選択され、かつaは、1/nであり、ここで、nは、前記カチオンの原子価であり、
Yは、X、C
1~C
6アルキルまたはフェニルから選択され、かつ
Zは、CH
2またはCH(OH)である、
および0.80μeq/gを超える電荷密度を有する分散剤を含み、
ポルトランドセメントクリンカー、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、および任意に補助的なセメント系材料を含む建設材料組成物の広がりおよび/または前記圧縮強さを改善するための、前記使用に関する。
【0022】
第3の態様において、本発明は、前記の第1の態様による前記結合剤組成物を含むコンクリートに関する。
【0023】
第4の態様において、本発明は、遅延形混和剤(RM)の使用であって、前記遅延形混和剤(RM)の全重量を基準としてそれぞれ、
RM1)30~60重量%の量の、有機カーボネート、アルカリ金属カーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるカーボネート、
RM2)5~20重量%の量の、NR
1R
2R
3および/またはその金属塩、ここで、R
1~R
3は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキルである、
RM3)10~30重量%の量の、R
5-(CHOH)
o-R
4および/またはその金属塩、ここで、R
4およびR
5は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキルであり、oは、0~1の整数である、
RM4)12~50重量%の量の、式(I)の化合物、前記の式(I)の化合物の重縮合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される成分RM4)、ここで、式(I)は、
【化14】
により表され、式中、
R1は、OHであり、
R2は、H、OH、C
1~C
6アルコキシ、-SO
2X、-SO
3X、-OSO
3X、-PO、-PO
3X
2、-OPO
3X
2、-Z-COOXまたは-CH(OH)-SO
3Xであり、
R3は、H、COOX、1~6個のOHにより置換されていてよいC
3~C
6アルキルまたはC
1~C
6アルコキシであり、
mは、0または1であるか、または
mが0である場合には、R1およびR2は、それらが結合される炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、
R4は、COOYまたはSO
3Xであり、
Xは、Hまたはカチオン等価体K
aから選択され、ここで、Kは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、亜鉛カチオン、鉄カチオン、アンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンから選択され、かつaは、1/nであり、ここで、nは、前記カチオンの原子価であり、
Yは、X、C
1~C
6アルキルまたはフェニルから選択され、かつ
Zは、CH
2またはCH(OH)である、
および0.80μeq/gを超える電荷密度を有する分散剤を含み、
無機結合剤を含有する建築材料配合物の硬化を遅延させるためおよび/または建築製品を製造するための、前記使用に関する。
【0024】
詳細な説明
本発明の詳細に例示する実施態様を記載する前に、本発明を理解するのに重要な定義が示される。
【0025】
本明細書および添付の請求の範囲において使用される場合には、“a”および“an”の単数形も、その文脈が明らかに指示しない限り、それぞれの複数形を包含する。本発明に関連して、用語「約(about)」および「ほぼ(approximately)」は、当業者が、当該特徴の技術的効果をなお保証すると理解する精度区間を表す。前記用語は典型的に、±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%、およびよりいっそう好ましくは±5%の示された数値からの偏差を示す。用語「を含む(comprising)」が、限定するものではないと理解すべきである。本発明のためには、用語「からなる(consisting of)」は、用語「を含んでなる(comprising of)」の好ましい実施態様であるとみなされるべきである。以下に群が、少なくともある数の実施態様を含むことを定義される場合には、これは、好ましくはこれらの実施態様のみからなる群も包含することが意味される。さらに、明細書および請求の範囲において用語「第1の」、「第2の」、「第3の」または「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」等および類するものは、同様の要素間で区別するために使用され、かつ必ずしも順序または時系列を記載するためではない。こうして使用される用語は、適切な状況下では交換可能であり、かつ本明細書に記載される発明の実施態様が、本明細書に記載されるかまたは図示されるものとは異なる順序における操作が可能であると理解すべきである。用語「第1の」、「第2の」、「第3の」または「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」、「i」、「ii」等が、方法または使用または分析の工程に関する場合には、前記工程間の時間または時間間隔の一貫性はない、すなわち前記工程は、本明細書の上記または下記の適用において他に指示がない限り、同時に実施されてよいか、またはそのような工程間の秒、分、時間、日、週、月またはそれどころか年の時間間隔があってよい。本発明が、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、試薬等に限定されず、これらは変動しうると理解すべきである。本明細書において使用される用語集が、特定の実施態様のみを記載するためであり、かつ本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定されることも理解すべきである。他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者により普通に理解されるのと同じ意味を有する。
【0026】
用語「置換(された)」は本明細書において使用される場合には、指定される原子に結合される水素原子が、特定される置換基で置き換えられるが、ただし、前記置換は、安定なまたは化学的にあり得る化合物を生じるものとすることを意味する。他に指示がない限り、置換される原子は、1個以上の置換基を有していてよく、かつ各置換基は独立して選択される。
【0027】
用語「置換できる」は、指定される原子に関して使用される場合には、前記原子に結合されるのは水素であり、前記水素を好適な置換基で置き換えることができることを意味する。
【0028】
特定の原子または部分が「1個以上の」置換基で置換されることをいう場合には、用語「1個以上の」は、少なくとも1個の置換基、例えば1~10個の置換基、好ましくは1、2、3、4、または5個の置換基、より好ましくは1、2、または3個の置換基、最も好ましくは1、または2個の置換基を包含することが意図される。用語「非置換」も「置換(された)」も部分に関して明示的に記載されない場合には、前記部分は、非置換であるとみなされるべきである。
【0029】
上記の変化量の定義に記載される有機部分は、用語ハロゲンのように、前記の個々の群要素の個々のリストについての集合的な用語である。接頭辞Cn~Cmは、それぞれ、前記基中の可能な炭素原子の数を示す。
【0030】
用語「ハロゲン」は、それぞれ、フッ素、臭素、塩素またはヨウ素、特にフッ素、塩素、または臭素を表す。
【0031】
用語「アルキル」は本明細書において使用される場合には、それぞれ、通常、炭素原子1~6個、好ましくは炭素原子1~5個または1~4個、より好ましくは炭素原子1~3個または1もしくは2個を有する直鎖状または分岐状のアルキル基を表す。アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、および1-エチル-2-メチルプロピルである。
【0032】
用語「アルコキシ」は本明細書において使用される場合には、それぞれ、酸素原子を介して結合され、かつ通常、炭素原子1~6個、好ましくは炭素原子1~2個、より好ましくは炭素原子1個を有する直鎖状または分岐状のアルキル基を表す。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブチルオキシ、2-ブチルオキシ、イソブチルオキシ、tert-ブチルオキシ等である。
【0033】
用語「ヒドロキシアルキル」は本明細書において使用される場合には、それぞれ、通常、炭素原子1~6個を有し、かつさらに1~5個、好ましくは1~2個のヒドロキシ基、特に1個のヒドロキシ基で置換された直鎖状または分岐状のアルキル基を表す。好ましくは、前記の1個のヒドロキシ基は、前記の直鎖状または分岐状のアルキル基を末端基としているので、前記ヒドロキシ基は、前記分子の残部に結合されるアルキル橋に結合される。ヒドロキシアルキル基の例は、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、n-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシプロピル、n-ヒドロキシブチル、2-ヒドロキシブチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、n-ヒドロキシペンチル、およびn-ヒドロキシヘキシルである。ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、およびヒドロキシブチルが好ましく、特にヒドロキシエチルである。
【0034】
用語「ヒドロキシアルケニル」は本明細書において使用される場合には、それぞれ、通常、炭素原子2~6個、好ましくは2~4個を有し、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を任意の位置に有し、かつさらに1~5個、好ましくは1~2個のヒドロキシ基、特に1個のヒドロキシ基で置換された不飽和炭化水素基を表す。好ましくは、前記の1個のヒドロキシ基は、前記不飽和炭化水素基を末端基としているので、前記ヒドロキシ基は、前記分子の残部に結合されるアルケニル橋に結合される。ヒドロキシアルケニルの例は、ヒドロキシビニル、ヒドロキシアリル、ヒドロキシメタリル、ヒドロキシブテン-1-イル、2-ヒドロキシ-2-ペンテン-1-イル、1-ヒドロキシ-3-ペンテン-1-イル等である。幾何異性体が、前記二重結合に関して可能である場合には、本発明は、そのE-異性体およびZ-異性体の双方に関する。
【0035】
用語「アミノアルキル」は本明細書において使用される場合には、それぞれ、通常、炭素原子1~6個を有し、かつさらに1~5個、好ましくは1~2個のアミノ基、特に1個のアミノ基で置換された直鎖状または分岐状のアルキル基を表す。好ましくは、前記の1個のアミノ基は、前記の直鎖状または分岐状のアルキル基を末端基としているので、前記アミノ基は、前記分子の残部に結合されるアルキル橋に結合される。アミノアルキル基の例は、アミノメチル、アミノエチル、n-アミノプロピル、2-アミノプロピル、n-アミノブチル、2-アミノブチル、2-アミノ-2-メチルプロピル、n-アミノペンチル、およびn-アミノヘキシルである。アミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、およびアミノブチルが好ましく、特にアミノエチルである。
【0036】
組成および組成物中に含まれる成分の重量パーセントをいう場合に、本発明によれば、成分の総量は、100%(丸めるため±1%)を超えないと理解すべきである。
【0037】
その鉱物相は、それらの通常の名称、続いてそれらのセメント表記により示される。その主要化合物は、前記セメント表記においてその酸化物種により表される:CはCaO、SはSiO2、AはAl2O3、$はSO3、HはH2O、この表記は、全体を通して使用される。
【0038】
用語「ポルトランドセメント」は一般に、ポルトランドクリンカー、殊に規格EN 197-1、段落5.2の意味の範囲内のCEM I、II、III、IVおよびVを含有するあらゆるセメント化合物を表す。例示的なセメントは、硫酸カルシウム(7重量%未満)を含有してよいかまたは本質的に硫酸カルシウム(1重量%未満)不含である、DIN EN 197-1に従う普通ポルトランドセメント(OPC)である。
【0039】
カルシウムアルミネートセメント(CACまたは高アルミネートセメントとも呼ばれる)は、カルシウムアルミネート相を含有するセメントを意味する。用語「アルミネート相」は、アルミネート(化学式Al2O3、またはセメント表記における「A」)と他の鉱物種との組合せから生じるあらゆる鉱物相を表す。(Al2O3の形の)アルミナの量は、蛍光X線(XRF)を用いて決定される前記アルミネート含有セメントの全質量の少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも3重量%、およびより好ましくは少なくとも4重量%である。より正確には、アルミネートタイプの前記鉱物相は、例えばトリカルシウムアルミネート(C3A)、モノカルシウムアルミネート(CA)、カルシウム-ジ-アルミネート(CA2)、マイエナイト(C12A7)、ゲーレナイト(C2AS)、テトラカルシウムアルミノフェライト(C4AF)、またはこれらの相のうち幾つかの組合せを含む。
【0040】
スルホアルミネートセメントは、15重量%を上回るイーリマイト(化学式4CaO・3Al2O3・SO3またはセメント表記におけるC4A3$)の含有率を有する。
【0041】
セメント中の鉱物相は、典型的に定量X線回折(XRD)を使用して決定される。
【0042】
本明細書において使用される場合には用語「建設材料組成物」は、結合剤組成物と、骨材、例えば砂とを含む組成物を表す。
【0043】
本明細書において使用される場合には用語「結合剤組成物」は、結合剤、例えばポルトランドセメントを含む組成物を表す。本発明による結合剤組成物は、微細粒状物、すなわち直径が0.125mm未満である粒状物を含む。
【0044】
上記に示されたように、本発明は、一実施態様において、結合剤組成物に関するものであって、
A)25~94.089重量%の量の、ポルトランドセメントクリンカー、
B)5~20重量%の量の、硫酸カルシウムxH
2O、ここで、xは、0~2から選択される、
C)0.3~10重量%の量の、20℃で100g/lよりも高い溶解度を有する無機スルフェート源、
D)0.2~5重量%の量の、ポリアルコールおよび/またはその金属塩、
E)0.3~5重量%の量の、有機カーボネート、アルカリ金属カーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるカーボネート、
F)0.101~3.5重量%の量の、式(I)の化合物、前記の式(I)の化合物の重縮合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される成分F、ここで、式(I)は、
【化15】
により表され、式中、
R1は、OHであり、
R2は、H、OH、C
1~C
6アルコキシ、-SO
2X、-SO
3X、-OSO
3X、-PO、-PO
3X
2、-OPO
3X
2、-Z-COOXまたは-CH(OH)-SO
3Xであり、
R3は、H、COOX、1~6個、好ましくは1~5個のOHにより置換されていてよいC
3~C
6アルキルまたはC
1~C
6アルコキシであり、
mは、0または1であるか、または
mが0である場合には、R1およびR2は、それらが結合される炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、
R4は、COOYまたはSO
3Xであり、
Xは、Hまたはカチオン等価体K
aから選択され、ここで、Kは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、亜鉛カチオン、鉄カチオン、アンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンから選択され、かつaは、1/nであり、ここで、nは、前記カチオンの原子価であり、
Yは、X、C
1~C
6アルキルまたはフェニルから選択され、かつ
Zは、CH
2またはCH(OH)である、および
G)0.01~1重量%の量の、0.80μeq/gを超える電荷密度を有する分散剤
を、前記結合剤組成物の全重量を基準としてそれぞれ含む。
【0045】
好ましい実施態様において、前記結合剤組成物は、
A)25~94.089重量%の量の、ポルトランドセメントクリンカー、
B)5~20重量%の量の、硫酸カルシウムxH
2O、ここで、xは、0~2から選択され、
C)0.3~10重量%の量の、20℃で100g/lよりも高い溶解度を有する無機スルフェート源、
D)0.2~5重量%の量の、ポリアルコール、
E)0.3~5重量%の量の、有機カーボネート、アルカリ金属カーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるカーボネート、
F)0.101~3.5重量%の量の、式(I)の化合物、前記の式(I)の化合物の重縮合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される成分F)、ここで、式(I)は、
【化16】
により表され、式中、
R1は、OHであり、
R2は、H、OH、C
1~C
6アルコキシ、-SO
2X、-SO
3X、-OSO
3X、-PO、-PO
3X
2、-OPO
3X
2、-Z-COOXまたは-CH(OH)-SO
3Xであり、
R3は、H、COOX、1~6個、好ましくは1~5個のOHにより置換されていてよいC
3~C
6アルキルまたはC
1~C
6アルコキシであり、
mは、0または1であるか、または
mが0である場合には、R1およびR2は、それらが結合される炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、
R4は、COOYまたはSO
3Xであり、
Xは、Hまたはカチオン等価体K
aから選択され、ここで、Kは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、亜鉛カチオン、鉄カチオン、アンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンから選択され、かつaは、1/nであり、ここで、nは、前記カチオンの原子価であり、
Yは、X、C
1~C
6アルキルまたはフェニルから選択され、かつ
Zは、CH
2またはCH(OH)である、および
G)0.01~1重量%の量の、0.80μeq/gを超える電荷密度を有する分散剤、
を、前記結合剤組成物の全重量を基準としてそれぞれ含む。
【0046】
好ましくは、前記分散剤の電荷密度は、全ての酸基(例えばスルホネート、ホスフェートおよびカルボキシレート)が、完全に脱プロトン化されると仮定して計算される。電荷密度ρは、
【数1】
(N=陰電荷の数、m=分散剤の全質量)で計算される。
【0047】
以下において、本発明の全ての態様に関連性がある、前記結合剤組成物およびその成分の好ましい実施態様は、以下にさらに詳細に記載される。それぞれ好ましい実施態様は、単独でならびに他の好ましい実施態様との組合せで関連性があると理解すべきである。
【0048】
本発明によれば、用語「ポルトランドセメントクリンカー」は、全く硫酸カルシウム相を含まないクリンカー相の合計をいうと理解すべきである。ポルトランドセメントクリンカー相は、例えばエーライト(C3S)、ビーライト(C2S)、ブラウンミレライト(C4AF)、またはC3Aおよびそれらの混合物を包含している。
【0049】
好ましい実施態様において、前記ポルトランドセメントクリンカーは、前記ポルトランドセメントクリンカーの全重量を基準として、40重量%を超える量のビーライトを主に含む。
【0050】
前記のクリンカーを有する材料は、好ましくは、DIN EN 197-1:2011-11に従う普通ポルトランドセメント(OPC)である。好ましいOPCは、規格CEM I 42.5 N、CEM I 42.5 R、CEM I 52.5 N、およびCEM I 52.5 Rに従うか、またはそれらと、少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも92重量%、および特に少なくとも94重量%の量の、ポルトランドセメントクリンカーとの混合物である。
【0051】
好ましくは、前記結合剤組成物は、前記結合剤組成物の全重量を基準として、28~90重量%、より好ましくは30~80重量%の量の前記ポルトランドセメントクリンカーを含む。特定の実施態様において、前記結合剤組成物は、前記結合剤組成物の全重量を基準として、28~93.75重量%、より好ましくは30~91.86重量%の量の前記ポルトランドセメントクリンカーを含む。
【0052】
前記ポルトランドセメントクリンカーは、C3A、C4AF、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアルミネートタイプを好ましくは含む、普通ポルトランドセメントにより用意されてよい。
【0053】
好ましい実施態様において、前記普通ポルトランドセメントは、少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、およびよりいっそう好ましくは少なくとも10重量%の、C3A、C4AF、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアルミネートタイプを含む。前記普通ポルトランドセメントが、25重量%未満、より好ましくは22重量%未満、およびよりいっそう好ましくは20重量%未満の、C3A、C4AF、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアルミネートタイプを含むことがさらに好ましい。好ましい実施態様において、前記普通ポルトランドセメントは、5重量%未満、より好ましくは4重量%未満、およびよりいっそう好ましくは3重量%未満の、CA、C2AS、CA2、およびC12A7の形のアルミネートタイプCACを含む。好ましくは、本発明による普通ポルトランドセメントは、アルミネート相を含有し、かつ付加的に、少なくとも1種のスルフェート源、好ましくは硫酸カルシウム源を含有していてよい。前記硫酸カルシウム源は、硫酸カルシウム二水和物、硬セッコウ、α-およびβ-半水セッコウ、すなわちα-バッサナイトおよびβ-バッサナイト、またはそれらの混合物から選択されてよい。好ましくは前記硫酸カルシウムは、α-バッサナイトおよび/またはβ-バッサナイトである。
【0054】
好ましい実施態様において、前記普通ポルトランドセメントは、少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも4重量%、およびよりいっそう好ましくは少なくとも4.5重量%の、CaSO4・xH2Oを含み、ここで、xは、0~1.5から選択される。前記普通ポルトランドセメントが、少なくとも3重量%~7重量%未満、より好ましくは少なくとも4~6重量%、およびよりいっそう好ましくは4.5~5.5重量%の、CaSO4・xH2Oを含み、ここで、xは、0~1.5から選択されることがさらに好ましい。
【0055】
好ましくは、前記C3A、C4AF、CA、C2AS、CA2、C12A7、およびCaSO4・×H2Oは、定量X線回折(XRD)を使用して決定される。これに関連して、前記分析のためにリートベルト精密化を実施することが好ましい。
【0056】
好ましい実施態様において、前記普通ポルトランドセメントは、少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、およびよりいっそう好ましくは少なくとも15重量%の、スルホアルミネートタイプ、例えば、化学式4CaO・3Al2O3・SO3またはセメント表記におけるC4A3$を有するイーリマイトを含む。
【0057】
好ましい実施態様において、前記普通ポルトランドセメントは、CaSO4・xH2O、ここで、xは、0~1.5から選択される、およびAl2O3を含み、ここで、前記CaSO4・xH2Oの、Al2O3の量に対する重量比は、1:3~4:1、好ましくは1:2~3:1である。
【0058】
好ましい実施態様において、前記ポルトランドセメントクリンカーは、少なくとも3800cm2/g、好ましくは少なくとも4500cm2/gのブレーン表面積を有する。前記ブレーン表面積は、粉砕の細かさのパラメーターとして使用される。より微細な粉砕は、より高い反応性を可能にする。前記ブレーン表面積は、DIN EN 196-6に従って決定されてよい。
【0059】
好ましくは、前記結合剤組成物は、前記結合剤組成物の全重量を基準として、5~18重量%、より好ましくは6~15重量%の量の前記硫酸カルシウムxH2Oを含む。
【0060】
好ましい実施態様において、前記硫酸カルシウムxH2Oのxは、0~2、好ましくは0から選択される。
【0061】
前記結合剤組成物中の前記硫酸カルシウムxH2Oが、適用されるセメント(例えば普通ポルトランドセメント)に、および補助的に添加される硫酸カルシウムに、由来していてよいと理解すべきである。好ましくは、前記結合剤組成物中の前記硫酸カルシウムxH2Oは、適用されるセメントおよび補助的に添加される硫酸カルシウムに由来する。
【0062】
好ましくは、前記結合剤組成物は、前記結合剤組成物の全重量を基準として、0.4~8重量%、より好ましくは0.5~6重量%の量の、前記の20℃で100g/lよりも高い溶解度を有する無機スルフェート源を含む。
【0063】
好ましい実施態様において、前記無機スルフェート源は、20℃で100g/lを超え1500g/lまでの溶解度を有する。
【0064】
好ましい実施態様において、前記無機スルフェート源は、硫酸カリウム、重硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ金属硫酸塩、好ましくは硫酸ナトリウムである。
【0065】
好ましくは、前記結合剤組成物は、前記結合剤組成物の全重量を基準として、0.2~4.5重量%、より好ましくは0.3~4.0重量%の量の、前記ポリアルコール(および/またはその金属塩)を含む。
【0066】
好ましい実施態様において、前記ポリアルコール(および/またはその金属塩)は、i)NR1R2R3、ここで、R1~R3は、独立してC1~C6-ヒドロキシアルキル、(CH2O)n-OH、(CH2CH2O)n-OH、(CH2CH2CH2O)n-OH、(CHOH)n-C(=O)H、または(CHOH)n-CH2OHであり、nは、1~10の整数である、ii)R5-(CHOH)o-R4、ここで、R4およびR5は、独立してC1~C6-ヒドロキシアルキル、C2~C6-ヒドロキシアルケニル、C1~C6-アミノアルキル、-OH、C1~C5-アルキル、C(=O)H、またはC(=O)OHであり、oは、0~5の整数である、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0067】
好ましくは、NR1R2R3において、R1~R3は、独立してC1~C6-ヒドロキシアルキル、(CH2O)n-OH、(CH2CH2O)n-OH、(CH2CH2CH2O)n-OH、(CHOH)n-C(=O)H、または(CHOH)n-CH2OHであり、ここで、nは、1~5の整数である、より好ましくはR1~R3は、独立してC1~C4-ヒドロキシアルキル、(CH2O)n-OH、(CH2CH2O)n-OH、(CH2CH2CH2O)n-OH、(CHOH)n-C(=O)H、または(CHOH)n-CH2OHであり、ここで、nは、1~3の整数である、よりいっそう好ましくはR1~R3は、独立してC2~C3-ヒドロキシアルキル、(CH2O)n-OH、(CH2CH2O)n-OH、(CH2CH2CH2O)n-OH、(CHOH)n-C(=O)H、または(CHOH)n-CH2OHであり、ここで、nは、1~3の整数である。好ましい実施態様において、NR1R2R3において、R1~R3は、同じである。これに関連して、各R1~R3が、C2~C3-ヒドロキシアルキル、(CH2O)n-OH、(CH2CH2O)n-OH、(CH2CH2CH2O)n-OH、(CHOH)n-C(=O)H、または(CHOH)n-CH2OHであり、ここで、nは、1~3の整数である、かつ特に、各R1~R3が、C2~C3-ヒドロキシアルキルであることが好ましい。特別な実施態様において、NR1R2R3は、トリエタノールアミンである。
【0068】
好ましくは、前記結合剤組成物は、前記結合剤組成物の全重量を基準として、0.05~2.0重量%、より好ましくは0.08~1.75重量%、および特に0.1~1.5重量%の量の、上記に定義されたNR1R2R3を含む。
【0069】
好ましくは、R5-(CHOH)o-R4において、R4およびR5は、独立してC1~C6-ヒドロキシアルキル、C2~C6-ヒドロキシアルケニル、C1~C6-アミノアルキル、-OH、C1~C5-アルキル、C(=O)H、またはC(=O)OHであり、ここで、oは、0~3の整数である、より好ましくは、R4およびR5は、独立してC1~C3-ヒドロキシアルキル、C2~C3-ヒドロキシアルケニル、C1~C3-アミノアルキル、-OH、C1~C5-アルキル、C(=O)H、またはC(=O)OHであり、ここで、oは、1~2の整数である、よりいっそう好ましくは、R4およびR5は、独立してC1~C2-ヒドロキシアルキル、C2~C3-ヒドロキシアルケニル、C1~C2-アミノアルキル、-OH、C1~C5-アルキル、C(=O)H、またはC(=O)OHであり、ここで、oは、1~2の整数である。好ましい実施態様において、R5-(CHOH)o-R4において、R4およびR5は、同じである。これに関連して、各R4およびR5が、C1~C2-ヒドロキシアルキル、C2~C3-ヒドロキシアルケニル、C1-C2-アミノアルキル、-OH、C1~C5-アルキル、C(=O)H、またはC(=O)OHであり、ここで、oは、1~2の整数である、かつ特に、各R4およびR5が、C1~C2-ヒドロキシアルキルであり、ここで、oは、1~2の整数であることが好ましい。特別な実施態様において、R5-(CHOH)o-R4は、グリセロールである。
【0070】
好ましくは、前記結合剤組成物は、前記結合剤組成物の全重量を基準として、0.15~3.0重量%、より好ましくは0.15~2.75重量%、および特に0.2~2.5重量%の量の、上記に定義されたR5-(CHOH)o-R4を含む。
【0071】
好ましい実施態様において、前記結合剤組成物は、少なくとも2種の異なるポリアルコール(および/またはその金属塩)を含む。好ましくは、前記ポリアルコール(および/またはその金属塩)は、i)NR1R2R3、ここで、R1~R3は、独立してC1~C6-ヒドロキシアルキル、(CH2O)n-OH、(CH2CH2O)n-OH、(CH2CH2CH2O)n-OH、(CHOH)n-C(=O)H、または(CHOH)n-CH2OHであり、ここで、nは、1~10の整数である、およびii)R5-(CHOH)o-R4、ここで、R4およびR5は、独立してC1~C6-ヒドロキシアルキル、C2~C6-ヒドロキシアルケニル、C1~C6-アミノアルキル、-OH、C1~C5-アルキル、C(=O)H、またはC(=O)OHであり、oは、0~5の整数である、の混合物である。
【0072】
好ましい実施態様において、前記ポリアルコール(および/またはその金属塩)は、i)NR1R2R3、ここで、R1~R3は、独立してC1~C6-ヒドロキシアルキルである、ii)R5-(CHOH)o-R4、ここで、R4およびR5は、独立してC1~C6-ヒドロキシアルキルであり、oは、0~1の整数である、およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、前記ポリアルコール(および/またはその金属塩)は、i)NR1R2R3、ここで、R1~R3は、C2~C3-ヒドロキシアルキルである、およびii)R5-(CHOH)o-R4、ここで、R4およびR5は、独立してC1~C2-ヒドロキシアルキルであり、oは、0~1の整数である、の混合物であり、かつ特に、前記ポリアルコールは、i)トリエタノールアミンおよびii)グリセロールの混合物である。
【0073】
特別な実施態様において、前記ポリアルコールの前記金属塩は、i)トリエタノールアミンカルシウム塩およびii)カルシウムグリセロレートの混合物である。
【0074】
前記ポリアルコールの前記金属塩は、好ましくはアルカリ土類金属、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛およびアルミニウムからなる群から選択される、好ましくは多価金属塩である。
【0075】
アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウムを含む。好ましい実施態様において、前記アルカリ土類金属はカルシウムである。
【0076】
好ましくは、前記結合剤組成物は、前記結合剤組成物の全重量を基準として、0.4~4.0重量%、より好ましくは0.5~3.0重量%の量の前記カーボネートを含む。
【0077】
好ましい実施態様において、前記カーボネートは、20℃で0.1g/lを超える、好ましくは20℃で1g/lを超える、より好ましくは20℃で10g/lを超える、かつ特に20℃で50g/lを超える溶解度を有する。前記カーボネートが、20℃で0.1~500g/l、好ましくは20℃で1~400g/l、より好ましくは20℃で10~300g/l、および特に20℃で50~200g/lの溶解度を有することも好ましい。
【0078】
好ましい実施態様において、前記カーボネートは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセリンカーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択される有機カーボネートである。
【0079】
好ましい実施態様において、前記カーボネートは、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアルカリ金属カーボネート、より好ましくは重炭酸ナトリウムである。
【0080】
別の好ましい実施態様において、前記カーボネートは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセリンカーボネート、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0081】
好ましくは、前記結合剤組成物は、前記結合剤組成物の全重量を基準として、0.11~3.0重量%、より好ましくは0.3~2.0重量%の量の前記成分F)を含む。
【0082】
すでに上記のように、成分F)は、式(I)の化合物、前記の式(I)の化合物の重縮合物、およびそれらの混合物からなる群から選択され、ここで、式(I)は、
【化17】
により表され、式中、
R1は、OHであり、
R2は、H、OH、C
1~C
6アルコキシ、-SO
2X、-SO
3X、-OSO
3X、-PO、-PO
3X
2、-OPO
3X
2、-Z-COOXまたは-CH(OH)-SO
3Xであり、
R3は、H、COOX、1~6個、好ましくは1~5個のOHにより置換されていてよいC
3~C
6アルキルまたはC
1~C
6アルコキシであり、
mは、0または1であるか、または
mが0である場合には、R1およびR2は、それらが結合される炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、
R4は、COOYまたはSO
3Xであり、
Xは、Hまたはカチオン等価体K
aから選択され、ここで、Kは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、亜鉛カチオン、鉄カチオン、アンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンから選択され、かつaは、1/nであり、ここで、nは、前記カチオンの原子価であり、
Yは、X、C
1~C
6アルキルまたはフェニルから選択され、かつ
Zは、CH
2またはCH(OH)である。
【0083】
好ましい実施態様において、前記成分F)は、式(I)の化合物を含み、ここで、R2は、SO3Xであり、および/またはR4は、COOHである。これに関連して、mが0であることがさらに好ましい。
【0084】
好ましい実施態様において、前記成分F)は、ヒドロキシカルボン酸または前記ヒドロキシカルボン酸の重縮合物または前記ヒドロキシカルボン酸またはクエン酸または酒石酸のスルフィット付加生成物を含み、好ましくは、前記ヒドロキシカルボン酸または前記ヒドロキシカルボン酸の前記重縮合物または前記ヒドロキシカルボン酸の前記スルフィット付加生成物は、グリオキシル酸またはグリオキシル酸の重縮合物またはグリオキシル酸のスルフィット付加生成物であり、より好ましくは、グリオキシル酸の前記重縮合物は、アミン-グリオキシル酸縮合物であり、よりいっそう好ましくは、前記アミン-グリオキシル酸縮合物は、メラミン-グリオキシル酸縮合物、尿素-グリオキシル酸縮合物、メラミン-尿素-グリオキシル酸縮合物、およびポリアクリルアミド-グリオキシル酸縮合物からなる群から選択され、特に尿素-グリオキシル酸縮合物である。
【0085】
好ましい実施態様において、前記成分F)は、以下の部分
R2は、Hであり、
R3は、1~5個のOHにより置換されていてよいC3~C6アルキルであり、かつ
R4は、COOYであり、かつ
Yは、Xであって、アルカリ金属である、
を有する式(I)の塩を含み、好ましくは、前記塩は、グルコン酸ナトリウムである。
【0086】
好ましい実施態様において、前記結合剤組成物は、成分F)の少なくとも2種の成分を含む。好ましくは、前記成分F)は、式(I)の化合物および前記の式(I)の化合物の重縮合物からなる群から選択される少なくとも2種の化合物を含み、より好ましくは、成分F)は、式(I)の化合物と、前記の式(I)の化合物の重縮合物との混合物を含み、よりいっそう好ましくは、前記成分F)は、グリオキシル酸の重縮合物と、以下の部分
R2は、Hであり、
R3は、1~5個のOHにより置換されていてよいC3~C6アルキルであり、かつ
R4は、COOYであり、かつ
Yは、Xであって、アルカリ金属である、
を有する式(I)の塩とを含み、好ましくは、前記塩は、グルコン酸ナトリウムである。
【0087】
特別な実施態様において、前記結合剤組成物は、グリオキシル酸の重縮合物と、グルコン酸ナトリウムとを含む。
【0088】
好ましくは、前記結合剤組成物は、前記結合剤組成物の全重量を基準として、0.02~0.9重量%、より好ましくは0.03~0.8重量%の量の前記分散剤を含む。
【0089】
前記ポリマーの電荷密度は、全ての酸基(スルホネート、ホスフェートおよびカルボキシレート)が完全に脱プロトン化されると仮定して計算された。電荷密度ρは、ρ
【数2】
(N=陰電荷の数、m=ポリマーの全質量)で計算される。
【0090】
好ましい実施態様において、前記分散剤は、1.20μeq/gを超える、好ましくは1.214μeq/gを超え14μeq/gまで、より好ましくは1.5~10.0μeq/g、および特に2.0~5.0μeq/gの電荷密度を有する。
【0091】
好ましい実施態様において、前記分散剤は、一般式(Ia)、(Ib)、(Ic)および/または(Id)の少なくとも1個の構造単位を有する酸官能基を有する単位を含む、くし型ポリマーである:
【化18】
式中、
R
1は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基、CH
2COOHまたはCH
2CO-X-R
2、好ましくはHまたはCH
3であり、
Xは、NH-(C
nH
2n)、O(C
nH
2n)〔ここで、n=1、2、3または4〕であり、ここで、前記窒素原子または前記酸素原子は、前記CO基に結合される、または化学結合であり、好ましくはXは、化学結合またはO(C
nH
2n)であり、
R
2は、OM、PO
3M
2、またはO-PO
3M
2であるが、ただしXは、R
2がOMである場合に、化学結合である、
【化19】
式中、
R
3は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基、好ましくはHまたはCH
3であり、
nは、0、1、2、3または4、好ましくは0または1であり、
R
4は、PO
3M
2、またはO-PO
3M
2であり、
【化20】
式中、
R
5は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基、好ましくはHであり、
Zは、OまたはNR
7、好ましくはOであり、
R
7は、H、(C
nH
2n)-OH、(C
nH
2n)-PO
3M
2、(C
nH
2n)-OPO
3M
2、(C
6H
4)-PO
3M
2、または(C
6H
4)-OPO
3M
2であり、かつ
nは、1、2、3または4、好ましくは1、2または3である、
【化21】
式中、
R
6は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基、好ましくはHであり、
Qは、NR
7またはO、好ましくはOであり、
R
7は、H、(C
nH
2n)-OH、(C
nH
2n)-PO
3M
2、(C
nH
2n)-OPO
3M
2、(C
6H
4)-PO
3M
2、または(C
6H
4)-OPO
3M
2であり、
nは、1、2、3または4、好ましくは1、2または3であり、かつ
各Mは互いに独立して、Hまたはカチオン等価体である。
【0092】
好ましい実施態様において、前記分散剤は、一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)および/または(IId)の少なくとも1個の構造単位を有するポリエーテル側鎖を有する単位を含む、くし型ポリマーである:
【化22】
式中、
R
10、R
11およびR
12は互いに独立して、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
Zは、OまたはSであり、
Eは、非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
6アルキレン基、シクロヘキシレン基、CH
2-C
6H
10、1,2-フェニレン、1,3-フェニレンまたは1,4-フェニレンであり、
Gは、O、NHまたはCO-NHであるか、または
EおよびGは一緒になって、化学結合であり、
Aは、C
xH
2x〔ここで、x=2、3、4または5、好ましくは2または3〕であるか、またはCH
2CH(C
6H
5)であり、
nは、0、1、2、3、4または5、好ましくは0、1または2であり、
aは、2~350、好ましくは5~150、より好ましくは20~135、最も好ましくは60~135の整数であり、
R
13は、H、非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基、CO-NH
2および/またはCOCH
3である、
【化23】
式中、
R
16、R
17およびR
18は互いに独立して、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
Eは、非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
6アルキレン基、シクロヘキシレン基、CH
2-C
6H
10、1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、または1,4-フェニレンであるか、または化学結合であり、
Aは、C
xH
2x〔ここで、x=2、3、4または5、好ましくは2または3〕であるか、またはCH
2CH(C
6H
5)であり、
nは、0、1、2、3、4および/または5、好ましくは0、1または2であり、
Lは、C
xH
2x〔ここで、x=2、3、4または5、好ましくは2または3〕であるか、またはCH
2-CH(C
6H
5)であり、
aは、2~350、好ましくは5~150の整数であり、
dは、1~350、好ましくは5~150の整数であり、
R
19は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
R
20は、Hまたは非分岐状C
1~C
4アルキル基である、
【化24】
式中、
R
21、R
22およびR
23は互いに独立して、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
Wは、O、NR
25であるか、またはNであり、
Yは、W=O、またはNR
25である場合に、1であり、かつW=Nである場合に、2であり、
Aは、C
xH
2x〔ここで、x=2、3、4または5、好ましくは2または3〕であるか、またはCH
2CH(C
6H
5)であり、
aは、2~350、好ましくは5~150、より好ましくは20~135、最も好ましくは60~135の整数であり、
R
24は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、かつ
R
25は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基である、
【化25】
式中、
R
6は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
Qは、NR
10、NまたはOであり、
Yは、W=O、またはNR
10である場合に、1であり、かつW=Nである場合に、2であり、
R
10は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、かつ
Aは、C
xH
2x〔ここで、x=2、3、4または5、好ましくは2または3〕であるか、またはCH
2C(C
6H
5)Hであり、
R
24は、Hまたは非分岐状もしくは分岐状のC
1~C
4アルキル基であり、
Mは、Hまたはカチオン等価体であり、かつ
aは、2~350、好ましくは5~150、より好ましくは20~135、最も好ましくは60~135の整数である。
【0093】
好ましい実施態様において、前記くし型ポリマー中のIの、IIに対する比は、1/1~10/1、より好ましくは3/1~15/1である。
【0094】
好ましい実施態様において、前記くし型ポリマーの分子量は、校正方法としてPEGを用いるGPCにより測定して、10kD~300kD、より好ましくは20kD~100kDである。
【0095】
好ましい実施態様において、前記分散剤は、構造単位(III)および(IV)を含むホスホリル化重縮合生成物である:
【化26】
式中、
Tは、置換もしくは非置換のフェニルまたはナフチル基であるか、または環原子5~10個を有し、そのうち1または2個の原子がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子である、置換もしくは非置換のヘテロ芳香族基であり、
nは、1または2であり、
Bは、N、NHまたはOであるが、ただし、nは、BがNである場合に、2であり、かつただし、nは、BがNHまたはOである場合に、1であり、
Aは、炭素原子2~5個を有する非分岐状もしくは分岐状のアルキレンまたはCH
2CH(C
6H
5)であり、
aは、1~300の整数であり、
R
25は、H、分岐状もしくは非分岐状のC
1~C
10アルキル基、C
5~C
8シクロアルキル基、アリール基、または環原子5~10個を有し、そのうち1または2個の原子がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子である、ヘテロアリール基である、
ここで、前記構造単位(IV)は、構造単位(IVa)および(IVb)から選択される:
【化27】
式中、
Dは、置換もしくは非置換のフェニルまたはナフチル基であるか、または環原子5~10個を有し、そのうち1または2個の原子がN、OおよびSから選択されるヘテロ原子である、置換もしくは非置換のヘテロ芳香族基であり、
Eは、N、NHまたはOであるが、ただし、mは、EがNである場合に、2であり、かつただし、mは、EがNHまたはOである場合に、1であり、
Aは、炭素原子2~5個を有する非分岐状もしくは分岐状のアルキレンまたはCH
2CH(C
6H
5)であり、
bは、0~300の整数であり、
Mは互いに独立して、Hまたはカチオン等価体である、
【化28】
式中、
Vは、置換もしくは非置換のフェニルまたはナフチル基であり、かつ任意にR
8、OH、OR
8、(CO)R
8、COOM、COOR
8、SO
3R
8およびNO
2から選択される1または2個の基により置換され、
R
7は、COOM、OCH
2COOM、SO
3MまたはOPO
3M
2であり、
Mは、Hまたはカチオン等価体であり、かつ
R
8は、C
1~C
4アルキル、フェニル、ナフチル、フェニル-C
1~C
4アルキルまたはC
1~C
4アルキルフェニルである。
【0096】
前記の構造単位(I)および(II)を含む分散剤は、従来の方法により、例えばフリーラジカル重合により、製造することができる。前記分散剤の製造は、例えば、欧州特許出願公開第0894811号明細書(EP0894811)、欧州特許出願公開第1851256号明細書(EP1851256)、欧州特許出願公開第2463314号明細書(EP2463314)、および欧州特許出願公開第0753488号明細書(EP0753488)に記載されている。
【0097】
好ましい実施態様において、前記結合剤組成物はさらに、
H)前記結合剤組成物の全重量を基準として、0.5~68.989重量%、好ましくは5~60重量%、より好ましくは10~50重量%、および特に15~45重量%の量の、補助的なセメント系材料を含み、好ましくは、前記の補助的なセメント系材料は、スラグ、フライアッシュ、天然ポゾラン、焼成粘土、シリカフューム、石灰石、およびそれらの混合物、好ましくは石灰石からなる群から選択される。特定の実施態様において、前記結合剤組成物は、前記結合剤組成物の全重量を基準として、5~65.57重量%、より好ましくは10~61.86重量%の量の前記の補助的なセメント系材料を含む。
【0098】
さらに好ましい実施態様において、前記結合剤組成物はさらに、少なくとも2種の異なる補助的なセメント系材料を含み、好ましくは、前記の少なくとも2種の異なる補助的なセメント系材料は、スラグ、フライアッシュ、天然ポゾラン、焼成粘土、シリカフューム、石灰石、およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、前記結合剤組成物はさらに、スラグ、焼成粘土、石灰石からなる群から選択される少なくとも2種の異なる補助的なセメント系材料を含む。特別な実施態様において、前記結合剤組成物はさらに、焼成粘土および石灰石の組合せまたはスラグおよび石灰石の組合せを含む。
【0099】
さらに好ましい実施態様において、前記の補助的なセメント系材料は、200μm未満のDv90を有する。前記Dv90(体積による)は、その粒子サイズ分布の90パーセント点に相当し、前記粒子の90%が、前記Dv90以下のサイズを有し、かつ10%が、前記Dv90よりも大きいサイズを有することを意味する。一般に、前記Dv90および同じタイプの他の値は、粒子または粒状物の集合の粒度測定プロファイル(体積分布)の特性である。前記粒子の90%が200μm以下のサイズを有するという要件との一致性は、前記粒子の少なくとも90体積%が、200μmの目の開きを有するふるいを通過する場合に保証される。
【0100】
選択的に、前記Dv90は、Malvern Mastersizer 2000を用いる静的レーザー回折により測定される粒子サイズ分布から計算することができる。
【0101】
本発明の好ましい実施態様において、前記ポルトランドセメントクリンカーおよび前記硫酸カルシウムは、60:1~2:1、好ましくは50:1~3:1、より好ましくは40:1~4:1、または20:1~3:1、または10:1~4:1の重量比で存在する。
【0102】
本発明の好ましい実施態様において、前記ポルトランドセメントクリンカーおよび前記の20℃で100g/lよりも高い溶解度を有する無機スルフェート源は、60:1~2:1、好ましくは50:1~3:1、より好ましくは40:1~4:1、または40:1~5:1、または30:1~10:1の重量比で存在する。
【0103】
好ましい実施態様において、前記ポルトランドセメントクリンカーおよび前記の補助的なセメント系材料は、2:1~1:5、好ましくは2:1~1:2、より好ましくは1.8:1~1:1.8または1.8:1~1:1.5、または1.5:1~1:1の重量比で存在する。
【0104】
好ましい実施態様において、前記ポルトランドセメントクリンカーおよび前記ポリアルコール(および/またはその金属塩)は、500:1~10:1、好ましくは300:1~50:1、より好ましくは180:1~80:1の重量比で存在する。
【0105】
好ましい実施態様において、前記ポルトランドセメントクリンカーおよび前記カーボネートは、400:1~10:1、好ましくは300:1~40:1、より好ましくは150:1~60:1の重量比で存在する。
【0106】
好ましい実施態様において、前記ポルトランドセメントクリンカーおよび前記成分F)は、500:1~10:1、好ましくは300:1~50:1、より好ましくは200:1~100:1の重量比で存在する。
【0107】
好ましい実施態様において、前記ポルトランドセメントクリンカーおよび前記分散剤は、2500:1~1000:1、好ましくは2000:1~1100:1、より好ましくは1800:1~1200:1の重量比で存在する。
【0108】
本発明の好ましい実施態様において、上記に定義された結合剤組成物は、少なくとも1種の骨材と混合されて、結合剤組成物と少なくとも1種の骨材とを含む建設材料組成物を提供する。好適な骨材は、例えば、砂、例えば標準砂およびけい砂である。
【0109】
上記に概説されたように、本発明は、第2の態様において、遅延形混和剤(RM)の使用であって、前記遅延形混和剤(RM)の全重量を基準としてそれぞれ、
RM1)30~60重量%の量の、有機カーボネート、アルカリ金属カーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるカーボネート、
RM2)5~20重量%の量の、NR
1R
2R
3および/またはその金属塩、ここで、R
1~R
3は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキルである、
RM3)10~30重量%の量の、R
5-(CHOH)
o-R
4および/またはその金属塩、ここで、R
4およびR
5は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキルであり、ここで、oは、0~1の整数である、
RM4)12~50重量%の量の、式(I)の化合物、前記の式(I)の化合物の重縮合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される成分RM4)、ここで、式(I)は、
【化29】
により表され、式中、
R1は、OHであり、
R2は、H、OH、C
1~C
6アルコキシ、-SO
2X、-SO
3X、-OSO
3X、-PO、-PO
3X
2、-OPO
3X
2、-Z-COOXまたは-CH(OH)-SO
3Xであり、
R3は、H、COOX、1~6個、好ましくは1~5個のOHにより置換されていてよいC
3~C
6アルキルまたはC
1~C
6アルコキシであり、
mは、0または1であるか、または
mが0である場合には、R1およびR2は、それらが結合される炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、
R4は、COOYまたはSO
3Xであり、
Xは、Hまたはカチオン等価体K
aから選択され、ここで、Kは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、亜鉛カチオン、鉄カチオン、アンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンから選択され、かつaは、1/nであり、かつnは、前記カチオンの原子価であり、
Yは、X、C
1~C
6アルキルまたはフェニルから選択され、かつ
Zは、CH
2またはCH(OH)である、
および0.80μeq/gを超える電荷密度を有する分散剤を含み、
ポルトランドセメントクリンカー、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、および任意に補助的なセメント系材料を含む建設材料組成物の広がりおよび/または圧縮強さを改善するための、前記使用に関する。
【0110】
好ましい実施態様において、本発明は、遅延形混和剤(RM)の使用であって、前記遅延形混和剤(RM)の全重量を基準としてそれぞれ、
RM1)30~60重量%の量の、有機カーボネート、アルカリ金属カーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるカーボネート、
RM2)5~20重量%の量の、NR
1R
2R
3、ここで、R
1~R
3は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキルである、
RM3)10~30重量%の量の、R
5-(CHOH)
o-R
4、ここで、R
4およびR
5は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキルであり、oは、0~1の整数である、
RM4)12~50重量%の量の、式(I)の化合物、前記の式(I)の化合物の重縮合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される成分RM4)、ここで、式(I)は、
【化30】
により表され、ここで、
R1は、OHであり、
R2は、H、OH、C
1~C
6アルコキシ、-SO
2X、-SO
3X、-OSO
3X、-PO、-PO
3X
2、-OPO
3X
2、-Z-COOXまたは-CH(OH)-SO
3Xであり、
R3は、H、COOX、1~6個、好ましくは1~5個のOHにより置換されていてよいC
3~C
6アルキルまたはC
1~C
6アルコキシであり、
mは、0または1であるか、または
mが0である場合には、R1およびR2は、それらが結合される炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、
R4は、COOYまたはSO
3Xであり、
Xは、Hまたはカチオン等価体K
aから選択され、ここで、Kは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、亜鉛カチオン、鉄カチオン、アンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンから選択され、かつaは、1/nであり、ここで、nは、前記カチオンの原子価であり、
Yは、X、C
1~C
6アルキルまたはフェニルから選択され、かつ
Zは、CH
2またはCH(OH)である、
および0.80μeq/gを超える電荷密度を有する分散剤を含み、
ポルトランドセメントクリンカー、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、および任意に補助的なセメント系材料を含む建設材料組成物の広がりおよび/または前記圧縮強さを改善するための、前記使用に関する。
【0111】
前記NR1R2R3および前記R5-(CHOH)o-R4の前記金属塩は、独立して好ましくはアルカリ土類金属、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛およびアルミニウムからなる群から選択される、独立して好ましくは、多価金属塩である。
【0112】
アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウムを含む。好ましい実施態様において、前記アルカリ土類金属はカルシウムである。
【0113】
前記建設材料組成物の広がりが、RMおよび前記分散剤の添加後に前記の特定の成分のうち1つがない建設材料組成物の広がりと比較して増加される場合に、前記の広がりが改善されると理解すべきである。前記の広がりは好ましくは、EN 1015-3に従って決定される。
【0114】
さらに、前記建設材料組成物の圧縮強さが、RMおよび前記分散剤の添加後に前記の特定の成分のうち1つがない建設材料組成物の圧縮強さと比較して増加される場合に、前記圧縮強さが改善されると理解すべきである。前記圧縮強さは好ましくは、DIN EN 1015-11に従って決定される。
【0115】
好ましい実施態様において、前記の広がりおよび前記圧縮強さは改善される。
【0116】
好ましい実施態様において、前記遅延形混和剤(RM)は、前記遅延形混和剤(RM)の全重量を基準として、35~50重量%、より好ましくは38~45重量%の量のカーボネートRM1)を含む。
【0117】
好ましい実施態様において、前記遅延形混和剤(RM)は、前記遅延形混和剤(RM)の全重量を基準として、6~15重量%、より好ましくは8~13重量%の量の、NR1R2R3および/またはその金属塩RM2)を含む。好ましい実施態様において、NR1R2R3および/またはその金属塩RM2)において、R1~R3は、独立してC1~C5-ヒドロキシアルキル、好ましくはC1~C4-ヒドロキシアルキル、より好ましくはC2~C4-ヒドロキシアルキル、および特にC2~C3-ヒドロキシアルキルである。好ましくはR1~R3は、同じである。特別な実施態様において、NR1R2R3および/またはその金属塩RM2)は、トリエタノールアミンである。別の特別な実施態様において、NR1R2R3および/またはその金属塩RM2)は、トリエタノールアミンカルシウム塩である。
【0118】
好ましい実施態様において、前記遅延形混和剤(RM)は、前記遅延形混和剤(RM)の全重量を基準として、15~26重量%、より好ましくは18~24重量%の量の、R5-(CHOH)o-R4および/またはその金属塩RM3)を含む。好ましい実施態様において、R5-(CHOH)o-R4および/またはその金属塩RM3)において、R4およびR5は、独立してC1~C5-ヒドロキシアルキル、好ましくはC1~C4-ヒドロキシアルキル、より好ましくはC1~C3-ヒドロキシアルキル、および特にC1~C2-ヒドロキシアルキルであり、ここで、oは、0~1の整数である。特別な実施態様において、R5-(CHOH)o-R4および/またはその金属塩RM5)は、グリセロールである。別の特別な実施態様において、R5-(CHOH)o-R4および/またはその金属塩は、カルシウムグリセロレートである。
【0119】
特別な実施態様において、RM2)は、トリエタノールアミンカルシウム塩であり、かつRM3)は、カルシウムグリセロレートである。
【0120】
好ましい実施態様において、前記遅延形混和剤(RM)は、前記遅延形混和剤(RM)の全重量を基準として、18~45重量%、より好ましくは20~35重量%の量の成分RM4)を含む。
【0121】
好ましい実施態様において、前記遅延形混和剤(RM)は、1/1~9/1の比のグリセロールとトリエタノールアミンとの混合物を含む。
【0122】
成分RM4)の好ましい実施態様は、上記に概説されたような成分F)の前記の好ましい実施態様に対応する。
【0123】
好ましくは、成分RM4)は、式(I)の化合物を含み、ここで、R2は、SO3Xであり、および/またはR4は、COOHである。これに関連して、mが0であることがさらに好ましい。
【0124】
好ましい実施態様において、前記成分RM4)は、ヒドロキシカルボン酸または前記ヒドロキシカルボン酸の重縮合物または前記ヒドロキシカルボン酸またはクエン酸または酒石酸のスルフィット付加生成物を含み、好ましくは、前記ヒドロキシカルボン酸または前記ヒドロキシカルボン酸の前記重縮合物または前記ヒドロキシカルボン酸の前記スルフィット付加生成物は、グリオキシル酸またはグリオキシル酸の重縮合物またはグリオキシル酸のスルフィット付加生成物であり、より好ましくは、グリオキシル酸の前記重縮合物は、アミン-グリオキシル酸縮合物であり、よりいっそう好ましくは、前記アミン-グリオキシル酸縮合物は、メラミン-グリオキシル酸縮合物、尿素-グリオキシル酸縮合物、メラミン-尿素-グリオキシル酸縮合物、およびポリアクリルアミド-グリオキシル酸縮合物からなる群から選択され、特に尿素-グリオキシル酸縮合物である。
【0125】
好ましい実施態様において、前記成分RM4)は、以下の部分
R2は、Hであり、
R3は、1~5個のOHにより置換されていてよいC3~C6アルキルであり、かつ
R4は、COOYであり、かつ
Yは、Xであって、アルカリ金属である、
を有する式(I)の塩を含み、好ましくは、前記塩は、グルコン酸ナトリウムである。
【0126】
好ましい実施態様において、前記遅延形混和剤(RM)は、成分RM4)の少なくとも2種の成分を含む。好ましくは、前記成分RM4)は、式(I)の化合物および前記の式(I)の化合物の重縮合物からなる群から選択される少なくとも2種の化合物を含み、より好ましくは、成分RM4)は、式(I)の化合物と前記の式(I)の化合物の重縮合物との混合物を含み、よりいっそう好ましくは、前記成分RM4)は、グリオキシル酸の重縮合物および以下の部分
R2は、Hであり、
R3は、1~5個のOHにより置換されていてよいC3~C6アルキルであり、かつ
R4は、COOYであり、かつ
Yは、Xであって、アルカリ金属である
を有する式(I)の塩を含み、好ましくは、前記塩は、グルコン酸ナトリウムである。
【0127】
特別な実施態様において、前記遅延形混和剤(RM)は、グリオキシル酸の重縮合物と、グルコン酸ナトリウムとを含む。
【0128】
好ましくは、前記遅延形混和剤(RM)は、前記遅延形混和剤(RM)の全重量を基準として、12~50重量%、より好ましくは15~35重量%、および特に17~30重量%の量の、前記の式(I)の化合物の重縮合物を含む。
【0129】
好ましくは、前記遅延形混和剤(RM)は、前記遅延形混和剤(RM)の全重量を基準として、3~20重量%、より好ましくは4~15重量%、および特に5~10重量%の量の、前記の式(I)の化合物の塩を含む。
【0130】
好ましくは、前記建設材料組成物は、結合剤組成物および少なくとも1種の骨材、例えば砂を含み、ここで、前記結合剤組成物は、前記遅延形混和剤(RM)、前記分散剤、およびポルトランドセメントクリンカーを含む。
【0131】
好ましい実施態様において、前記遅延形混和剤(RM)は、前記結合剤組成物中に、前記結合剤組成物の全重量を基準として、0.5~7.0重量%、好ましくは0.6~5.0重量%、より好ましくは0.8~4.0重量%、および特に1.0~3.0重量%の量で含まれる。
【0132】
好ましい実施態様において、前記分散剤は、前記結合剤組成物中に、前記結合剤組成物の全重量を基準として、0.01~1重量%、0.01~0.95重量%、好ましくは0.02~0.9重量%、より好ましくは0.02~0.85重量%、および特に0.03~0.8重量%の量で含まれる。前記分散剤のさらに好ましい実施態様に関して、前記の第1の態様と同じ好ましい実施態様が当てはまる。
【0133】
好ましい実施態様において、前記結合剤組成物はさらに、少なくとも1種、好ましくは少なくとも2種の補助的なセメント系材料を含む。
【0134】
前記カーボネート、結合剤組成物、ポルトランドセメントクリンカー、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、および任意に補助的なセメント系材料のさらに好ましい実施態様に関して、前記の第1の態様と同じ好ましい実施態様が当てはまる。
【0135】
上記に概説されたように、本発明は、第3の態様において、前記の第1の態様において概説されたような結合剤組成物を含むコンクリートに関する。したがって、前記結合剤組成物のさらに好ましい実施態様に関して、前記の第1の態様と同じ好ましい実施態様が当てはまる。
【0136】
上記に概説されたように、本発明は、第4の態様において、遅延形混和剤(RM)の使用に関するものであって、前記遅延形混和剤(RM)の全重量を基準としてそれぞれ、
RM1)30~60重量%の量の、有機カーボネート、アルカリ金属カーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるカーボネート、
RM2)5~20重量%の量の、NR
1R
2R
3および/またはその金属塩、ここで、R
1~R
3は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキルである、
RM3)10~30重量%の量の、R
5-(CHOH)
o-R
4および/またはその金属塩、ここで、R
4およびR
5は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキルであり、oは、0~1の整数である、
RM4)12~50重量%の量の、式(I)の化合物、前記の式(I)の化合物の重縮合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される成分RM4)、ここで、式(I)は、
【化31】
により表され、式中、
R1は、OHであり、
R2は、H、OH、C
1~C
6アルコキシ、-SO
2X、-SO
3X、-OSO
3X、-PO、-PO
3X
2、-OPO
3X
2、-Z-COOXまたは-CH(OH)-SO
3Xであり、
R3は、H、COOX、1~6個、好ましくは1~5個のOHにより置換されていてよいC
3~C
6アルキルまたはC
1~C
6アルコキシであり、
mは、0または1であるか、または
mが0である場合には、R1およびR2は、それらが結合される炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、
R4は、COOYまたはSO
3Xであり、
Xは、Hまたはカチオン等価体K
aから選択され、ここで、Kは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、亜鉛カチオン、鉄カチオン、アンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンから選択され、かつaは、1/nであり、ここで、nは、前記カチオンの原子価であり、
Yは、X、C
1~C
6アルキルまたはフェニルから選択され、かつ
Zは、CH
2またはCH(OH)である、
および0.80μeq/gを超える電荷密度を有する分散剤を含み、無機結合剤を含有する建築材料配合物の硬化を遅延させるためおよび/または建築製品を製造するための、前記使用に関する。
【0137】
好ましい実施態様において、本発明は、遅延形混和剤(RM)の使用に関するものであって、前記遅延形混和剤(RM)の全重量を基準としてそれぞれ、
RM1)30~60重量%の量の、有機カーボネート、アルカリ金属カーボネート、およびそれらの混合物からなる群から選択されるカーボネート、
RM2)5~20重量%の量の、NR
1R
2R
3、ここで、R
1~R
3は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキルである、
RM3)10~30重量%の量の、R
5-(CHOH)
o-R
4、ここで、R
4およびR
5は、独立してC
1~C
6-ヒドロキシアルキルであり、oは、0~1の整数である、
RM4)12~50重量%の量の、式(I)の化合物、前記の式(I)の化合物の重縮合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される成分RM4)、ここで、式(I)は、
【化32】
により表され、式中、
R1は、OHであり、
R2は、H、OH、C
1~C
6アルコキシ、-SO
2X、-SO
3X、-OSO
3X、-PO、-PO
3X
2、-OPO
3X
2、-Z-COOXまたは-CH(OH)-SO
3Xであり、
R3は、H、COOX、1~6個、好ましくは1~5個のOHにより置換されていてよいC
3~C
6アルキルまたはC
1~C
6アルコキシであり、
mは、0または1であるか、または
mが0である場合には、R1およびR2は、それらが結合される炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、
R4は、COOYまたはSO
3Xであり、
Xは、Hまたはカチオン等価体K
aから選択され、ここで、Kは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、亜鉛カチオン、鉄カチオン、アンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンから選択され、かつaは、1/nであり、ここで、nは、前記カチオンの原子価であり、
Yは、X、C
1~C
6アルキルまたはフェニルから選択され、かつ
Zは、CH
2またはCH(OH)である、
および0.80μeq/gを超える電荷密度を有する分散剤を含み、
無機結合剤を含有する建築材料配合物の硬化を遅延させるためおよび/または建築製品を製造するための、前記使用に関する。
【0138】
好ましくは、前記無機結合剤は、水硬性結合剤、潜在水硬性結合剤、硫酸カルシウムをベースとする無機結合剤、またはそれらの混合物である。好ましい一実施態様において、前記無機結合剤は、ポルトランドセメント、カルシウムアルミネートセメント、スルホアルミネートセメント、およびそれらの混合物から選択される水硬性結合剤である。別の好ましい実施態様において、前記無機結合剤は、ポルトランドセメントおよびアルミネートセメントの混合物、またはポルトランドセメントおよびスルホアルミネートセメントの混合物またはポルトランドセメント、アルミネートセメントおよびスルホアルミネートセメントの混合物を含む。別の好ましい実施態様において、前記無機結合剤は、硫酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウム半水和物、硬セッコウ、およびそれらの混合物から選択される、硫酸カルシウムをベースとする結合剤である。さらに別の好ましい実施態様において、前記無機結合剤は、その無水型の硫酸カルシウムをベースとする結合剤である。
【0139】
別の好ましい実施態様において、前記無機結合剤は、モルタル組成物において使用されてよい。
【0140】
前記モルタル組成物は、付加的に、少なくとも1種の骨材を含んでよい。
【0141】
用語「骨材」は、フィラー材料、すなわち本質的に水和生成物を形成しない不活性材料に関するものと理解される。前記骨材は、石英、砂、大理石、例えば、粉砕大理石、ガラス球、花こう岩、玄武岩、石灰石、砂岩、カルサイト、大理石、蛇紋石、トラバーチン、ドロマイト、長石、片麻岩、沖積砂、およびそれらの混合物から選択されてよい。前記骨材の充填密度は、できる限り高いべきであり、かつそれらの粒子サイズ分布は理想的に、フラータイプのふるい曲線を構成する。
【0142】
骨材は、粒子サイズにより分類されてよい。細骨材、例えば、砂は、一般に、150μm~5mmの直径分布を有する。粗骨材は一般に、5mmを超える直径分布を有する。
【0143】
本発明は、本発明による無機結合剤組成物と、骨材と、水とを含む、混合されたモルタル組成物にも関する。好ましくは、水の、ポルトランドセメントクリンカーに対する比は、0.2~1.5、好ましくは、0.3~1、より好ましくは0.3~0.7および最も好ましくは0.3~0.5である。
【0144】
前記の混合されたモルタル組成物は、コンクリートまたはグラウトを含むことができる。用語「モルタル」または「グラウト」は、細骨材、すなわち直径が150μm~5mmである骨材(例えば砂)、および任意に極めて微細な骨材が添加されるセメントペーストを表す。グラウトは、空隙または間隙における充填のための十分に低い粘度の混合物である。モルタル粘度は、前記モルタルの自重だけではなく、その上に配置されるメーソンリーの自重も支持するのに十分なほど高い。用語「コンクリート」は、粗骨材、すなわち5mmより大きい直径を有する骨材が添加されるモルタルを表す。
【0145】
好ましい実施態様において、前記ポルトランドセメントクリンカーは、混合したてのモルタル組成物1m3あたり180~900kg、より好ましくは180~600kgの量で存在する。
【0146】
前記遅延形混和剤(RM)および前記分散剤の前記成分のさらに好ましい実施態様に関して、前記の第2の態様と同じ好ましい実施態様が当てはまる。
【0147】
好適な建築製品は、例えば、コンクリート、例えば、オンサイトコンクリート、完成したコンクリート部品、プレキャストコンクリート部品、コンクリート商品、キャストコンクリートストーン、コンクリートれんが、吹付けコンクリート(ショットクリート)、レディーミクスコンクリート、エアプレースドコンクリート、3D印刷コンクリートまたはモルタル、コンクリート補修システム、工業用セメントフローリング、一成分系および2成分系シーリングスラリー、スクリード、充填用組成物、およびセルフレベリング組成物、例えば目地材またはセルフレベリング下地、接着剤、例えば建築または構造用接着剤、断熱複合システム用接着剤、またはタイル接着剤、しっくい、プラスター、シーラント、コーティングおよびペイントシステム、特にトンネル用、廃水ドレイン用、飛沫保護用および凝縮物ライン用、スクリード、モルタル、例えばドライモルタル、たれ抵抗性モルタル、流動性モルタルまたはセルフレベリングモルタル、排水設備用モルタル、または補修用モルタル、グラウト、例えば目地グラウト、無収縮グラウト、タイルグラウト、風車用グラウト、アンカー用グラウト、流動性グラウトまたはセルフレベリンググラウト、ETICS(外断熱複合システム)、EIFSグラウト(外断熱外壁仕上げシステム)、膨張爆薬、防水膜、セメント系フォーム、またはセッコウウォールボードであってよい。
【実施例】
【0148】
本発明は、以下の配合表を用いてモルタルにおいて試験された:
セメントCEM I 52.5 N 438.3g
補助的なセメント系材料(石灰石粉末) 394.5g
CaSO4(無水物) 44g
標準砂 1350g
けい砂(0.1~0.3mm) 568g
水 368g
硫酸ナトリウム(無水) 21.9g。
【0149】
使用されたCEM I 52.5 Nは、以下の組成を有していた:
【表1】
【0150】
前記セメントモルタルの製造を、EN 196-1:2005に従って5Lのバッチ体積を有するモルタルミキサー中で行った。前記無機結合剤、前記添加剤(使用される場合)、および水を、混合容器中へ入れ、混合を、前記ミキサー140rpmで開始した。前記標準砂の混合30秒後に、30秒間ゆっくりと添加した。前記標準砂の添加完了後に、前記ミキサー速度を285rpmに設定し、混合をもう30秒間続けた。その工程の後に、前記混合を90秒間停止した。混合のこの中断の最初の30秒以内に、前記容器の壁に付着したモルタルを除去し、かつ前記モルタルに再び添加した。90sの中断後に、前記混合を285rpmのミキサー速度で続けた。全混合時間は4分であった。前記モルタルの広がりを、EN 1015-3に従って混合終了直後に決定した(4分での値)。前記圧縮強さは好ましくは、DIN EN 1015-11に従って決定される。
【0151】
セメント2.5重量%と共に配量した遅延形添加剤配合物A:
遅延剤1 20%
NaHCO3 41%
グルコン酸ナトリウム 7%
グリセロール 21%
TEA 11%。
【0152】
遅延剤1を、国際公開第2019/077050号(WO2019/077050A1):合成手順A、表1中の遅延剤7、第24~26頁に従って合成した。
【0153】
幾つかの分散剤を、フローワビリティーを高めるために使用した:
分散剤1は、1/10の比のエトキシル化ヒドロキシブチルビニルエーテル(エチレンオキシド68)およびアクリル酸を用いて重合される。電荷密度は2.68μeq/gである
分散剤2は、1/3の比のエトキシル化ヒドロキシブチルビニルエーテル(エチレンオキシド68)およびアクリル酸を用いて重合される。電荷密度は0.93μeq/gである
分散剤3は、1/1の比のエトキシル化ヒドロキシブチルビニルエーテル(エチレンオキシド68)およびアクリル酸を用いて重合される。電荷密度は0.32μeq/gである。
【0154】
実験1(異なる分散剤):
第1表:試験されたモルタルの配合物、異なる分散剤の使用に焦点を合わせる
【表2】
【0155】
この実験は、前記分散剤の電荷密度が、流動性モルタルを受容するのに決定的であることを示す。
【0156】
実験2(配合物Aの成分の除去):
以下のモルタル配合物を使用した:
セメント 438.3g
石灰石粉末 394.5g
CaSO4(無水物) 44g
標準砂 1350g
けい砂(0.1~0.3mm) 568g
水 368g
分散剤1 0.3g
硫酸ナトリウム 21.9g。
【0157】
第2表:試験されたモルタルの配合物、特定の成分の省略に焦点を合わせる
【表3】
【0158】
実験3(硫酸ナトリウムの除去):
以下のモルタル配合物を使用した:
セメント 438.3g
石灰石粉末 394.5g
CaSO4(無水物) 44g
標準砂 1350g
けい砂(0.1~0.3mm) 568g
水 368g
分散剤1 0.3g
配合物A 11g。
【0159】
第3表:試験されたモルタルの配合物、硫酸ナトリウムの省略に焦点を合わせる
【表4】
【0160】
実験4(補助的なセメント系材料):
この実験において、本発明の効果は、補助的なセメント系材料として焼成粘土についても試験された。
【0161】
以下のモルタル配合物を使用した:
セメント 438.3g
補助的な粉末 394.5g
CaSO4 44g
標準砂 1350g
けい砂(0.1~0.3mm) 568g
水 368g。
【0162】
第4表:試験されたモルタルの配合物、異なる補助的なセメント系材料に焦点を合わせる
【表5】
【国際調査報告】