(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】RNAアフィニティー精製のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/115 20100101AFI20240910BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240910BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240910BHJP
C12N 15/19 20060101ALI20240910BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240910BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240910BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240910BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240910BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240910BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20240910BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240910BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240910BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240910BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240910BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240910BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240910BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C12N15/115 Z
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/13
C12N15/19
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/10 112Z
C12N15/10 110Z
A61K48/00
A61K31/7105
A61K39/395 D
A61K39/00 H
A61K9/127
A61K9/107
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513920
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 IB2022058234
(87)【国際公開番号】W WO2023031856
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ジアンピン・ツイ
(72)【発明者】
【氏名】トン-ミン・フー
(72)【発明者】
【氏名】アリソン・ジェシカ・マシューズ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA17
4C076AA19
4C076CC07
4C076FF11
4C084AA13
4C084MA22
4C084MA24
4C084NA14
4C084ZB09
4C085AA03
4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA22
4C086MA24
4C086NA14
4C086ZB09
(57)【要約】
本開示は、RNAアフィニティー精製のための方法および組成物を提供する。特に本開示は、組成物、およびアフィニティーリガンドと特異的に結合する1つまたはそれ以上のアプタマーを含むmRNAを製造および使用する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)、少なくとも1つの3’非翻訳領域(3’UTR)、および少なくとも1つのポリアデニル化(ポリA)配列を含むメッセンジャーRNA(mRNA)であって、少なくとも1つのRNAアプタマーを含むmRNA。
【請求項2】
RNAアプタマーはRNAスカフォールドに埋め込まれている、請求項1に記載のmRNA。
【請求項3】
RNAスカフォールドは少なくとも1つの二次構造モチーフを含む、請求項2に記載のmRNA。
【請求項4】
二次構造モチーフはテトラループ、シュードノット、またはステムループである、請求項3に記載のmRNA。
【請求項5】
RNAスカフォールドは少なくとも1つの三次構造を含む、請求項2~4のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項6】
二次構造モチーフおよび/または三次構造はヌクレアーゼ耐性である、請求項2~5のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項7】
RNAスカフォールドはトランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、またはリボザイムである、請求項2~6のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項8】
リボザイムは触媒的に不活性である、請求項7に記載のmRNA。
【請求項9】
RNAスカフォールドはトランスファーRNA(tRNA)を含む、請求項2~7のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項10】
RNAアプタマーはtRNAのtRNAヘアピンループに埋め込まれている、請求項9に記載のmRNA。
【請求項11】
RNAアプタマーはtRNAのtRNAアンチコドンループに埋め込まれている、請求項9に記載のmRNA。
【請求項12】
RNAアプタマーはtRNAのtRNA Dループに埋め込まれている、請求項9に記載のmRNA。
【請求項13】
RNAアプタマーはtRNAのtRNA Tループに埋め込まれている、請求項9に記載のmRNA。
【請求項14】
RNAアプタマーは5’UTRに位置する、請求項1~13のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項15】
RNAアプタマーはORFの3’末端と3’UTRの5’末端との間に配置されている、請求項1~13のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項16】
RNAアプタマーは3’UTRに位置する、請求項1~13のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項17】
RNAアプタマーは3’UTRの3’末端とポリA配列の5’末端との間に配置されている、請求項1~13のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項18】
RNAアプタマーはポリA配列の3’末端に配置されている、請求項1~13のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項19】
mRNAは1つのRNAアプタマーを含むか、または1つのRNAアプタマーからなる、請求項1~18のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項20】
mRNAは1~4個のRNAアプタマーを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項21】
RNAアプタマーは同一である、請求項1~20のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項22】
RNAアプタマーは別個のものである、請求項1~20のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項23】
RNAアプタマーは合成により得られる、請求項1~23のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項24】
RNAアプタマーはスプリットアプタマーまたはXアプタマーである、請求項23に記載のmRNA。
【請求項25】
RNAアプタマーは天然由来のものである、請求項1~24のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項26】
RNAアプタマーはヘアピンRNA、tRNA、またはリボスイッチに由来する、請求項25に記載のmRNA。
【請求項27】
RNAアプタマーは生体直交性のスカフォールドに埋め込まれている、請求項1~26のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項28】
生体直交性のスカフォールドはV5、F29、F30、またはそれらのバリアントである、請求項27に記載のmRNA。
【請求項29】
生体直交性のスカフォールドは配列番号34の5’ヌクレオチド配列および配列番号35の3’ヌクレオチド配列を含み、アプタマー配列は配列番号34と配列番号35との間に配置されている、請求項28に記載のmRNA。
【請求項30】
生体直交性のスカフォールドは配列番号39の5’ヌクレオチド配列、配列番号40の内部ヌクレオチド配列、および配列番号41の3’ヌクレオチド配列を含み、第1のアプタマー配列は配列番号39と配列番号40との間に配置され、第2のアプタマー配列は配列番号40と配列番号41との間に配置され、場合により、第1および第2のアプタマーは同一であるか、または異なるものである、請求項28に記載のmRNA。
【請求項31】
RNAアプタマーが埋め込まれた生体直交性のスカフォールドは、配列番号29または配列番号31のヌクレオチド配列を含む、請求項28に記載のmRNA。
【請求項32】
RNAアプタマーはアフィニティーリガンドに結合する、請求項1~31のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項33】
アフィニティーリガンドはプロテインA、プロテインG、ストレプトアビジン、グルタチオン、デキストラン、または蛍光分子を含む、請求項32に記載のmRNA。
【請求項34】
アフィニティーリガンドはストレプトアビジンを含む、請求項32または33に記載のmRNA。
【請求項35】
アフィニティーリガンドはクロマトグラフィー樹脂上に固定化されている、請求項32~34のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項36】
RNAアプタマーはS1mまたはSmである、請求項1~35のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項37】
1~4個のS1mまたはsm RNAアプタマーを含む、請求項36に記載のmRNA。
【請求項38】
S1mまたはsm RNAアプタマーは、
1)ORFの3’末端と3’UTRの5’末端との間;
2)3’UTR内;
3)3’UTRの3’末端とポリA配列の5’末端との間;および/または
4)ポリA配列の3’末端
に配置されている、請求項36または37に記載のmRNA。
【請求項39】
RNAアプタマーは配列番号2または配列番号6のヌクレオチド配列を含む、請求項36~38のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項40】
RNAアプタマーが埋め込まれたtRNAは、配列番号7のヌクレオチド配列を含む、請求項36~38のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項41】
mRNAは少なくとも1つのポリペプチドをコードする、請求項1~40のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項42】
ポリペプチドは生物学的に活性なポリペプチド、治療用ポリペプチド、または抗原性ポリペプチドである、請求項41に記載のmRNA。
【請求項43】
抗原性ポリペプチドは抗体またはそのフラグメント、酵素補充ポリペプチド、またはゲノム編集ポリペプチドを含む、請求項42に記載のmRNA。
【請求項44】
治療用ポリペプチドは抗体重鎖、抗体軽鎖、酵素、またはサイトカインを含む、請求項42に記載のmRNA。
【請求項45】
生物学的に活性なポリペプチドはゲノム編集ポリペプチドを含む、請求項42に記載のmRNA。
【請求項46】
mRNAはキメラ5’または3’UTRを含む、請求項1~45のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項47】
mRNAは少なくとも1つの化学修飾を含む、請求項1~46のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項48】
化学修飾はシュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、4-チオ-シュードウリジン、5-アザ-ウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メチルウリジン、5-メチルウリジン、5-メトキシウリジン、または2-O-メチルウリジンである、請求項47に記載のmRNA。
【請求項49】
化学修飾はシュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、5-メチルシトシン、5-メトキシウリジン、またはそれらの組み合わせである、請求項47に記載のmRNA。
【請求項50】
化学修飾はN1-メチルシュードウリジンである、請求項47に記載のmRNA。
【請求項51】
ポリA配列は少なくとも10個の連続するアデノシン残基である、請求項1~50のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項52】
ポリA配列は10~500個の連続するアデノシン残基である、請求項1~51のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項53】
2つのポリA配列を含み、各ポリA配列は10~500個の連続するアデノシン残基を含み、少なくとも1つのRNAアプタマーまたはRNAアプタマーが埋め込まれたtRNAが2つのポリA配列の間に配置されている、請求項1~52のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項54】
mRNAは5’キャップを含む、請求項1~53のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項55】
mRNAの翻訳効率は、RNAアプタマーを含まないmRNAと比較して実質的に同じである、請求項1~54のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項56】
mRNAはin vitro転写(IVT)を用いて合成される、請求項1~55のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項57】
mRNAはin vivoまたはex vivoで発現される、請求項1~55のいずれか1項に記載のmRNA。
【請求項58】
請求項1~57のいずれか1項に記載のmRNAをコードするベクター。
【請求項59】
ベクターが5’から3’の向きに少なくとも以下の要素a~e:
a.RNAポリメラーゼプロモーター;
b.5’UTRをコードするポリヌクレオチド配列;
c.ORFをコードするポリヌクレオチド配列;
d.3’UTRをコードするポリヌクレオチド配列;および
e.少なくとも1つのRNAアプタマーをコードするポリヌクレオチド配列
を含む、請求項58に記載のベクター。
【請求項60】
f.ポリA配列および/またはポリアデニル化シグナルをコードするポリヌクレオチド配列
をさらに含む、請求項59に記載のベクター。
【請求項61】
請求項58~60のいずれか1項に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項62】
請求項1~57のいずれか1項に記載のmRNAを含む医薬組成物。
【請求項63】
mRNAを精製するための方法であって、以下の工程:
(a)請求項1~57のいずれか1項に記載のmRNAを含む試料をクロマトグラフィー樹脂上に固定化されたアフィニティーリガンドと接触させる工程であって、RNAアプタマーはアフィニティーリガンドに対する結合親和性を含む、工程;
(b)クロマトグラフィー樹脂からmRNAを溶出させる工程;および
(c)試料からmRNAを精製する工程
を含む方法。
【請求項64】
接触工程(a)と溶出工程(b)との間に1つまたはそれ以上の洗浄工程を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
RNAを精製する方法であって、以下の工程:
(a)RNAを含む試料をクロマトグラフィー樹脂上に固定化されたアフィニティーリガンドと接触させる工程;
(b)クロマトグラフィー樹脂からRNAを溶出させる工程;および
(c)試料からRNAを単離する工程
を含み、
RNAは少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)および少なくとも1つのRNAアプタマーを含み、
RNAアプタマーはアフィニティーリガンドに対する結合親和性を含む、
方法。
【請求項66】
RNAは少なくとも1つの5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも1つの3’非翻訳領域(3’UTR)、および少なくとも1つのポリアデニル化(ポリA)配列をさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
RNAは少なくとも約500ヌクレオチド長、少なくとも約750ヌクレオチド長、少なくとも約1,000ヌクレオチド長、少なくとも約1,500ヌクレオチド長、少なくとも約2,000ヌクレオチド長、少なくとも約2,500ヌクレオチド長、少なくとも約3,000ヌクレオチド長、少なくとも約3,500ヌクレオチド長、少なくとも約4,000ヌクレオチド長、少なくとも約4,500ヌクレオチド長、または少なくとも約5,000ヌクレオチド長である、請求項65または66に記載の方法。
【請求項68】
RNAは5’キャップを含む、請求項65~67のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
RNAはmRNAである、請求項65~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
mRNAは純度90%以上である、請求項65~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
mRNAを精製する方法であって、以下の工程:
(a)mRNAを含む試料をクロマトグラフィー樹脂上に固定化されたアフィニティーリガンドと接触させる工程;
(b)クロマトグラフィー樹脂からmRNAを溶出させる工程;および
(c)試料からmRNAを単離する工程
を含み、
mRNAは少なくとも1つの5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)、少なくとも1つの3’非翻訳領域(3’UTR)、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリA)配列、および少なくとも1つのRNAアプタマーを含み、
RNAアプタマーはアフィニティーリガンドに対する結合親和性を含む、
方法。
【請求項72】
mRNAは純度90%以上である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
疾患または障害を治療または予防する方法であって、それを必要とする対象に請求項62に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項74】
複数のmRNA分子を含む医薬組成物であって、mRNAの少なくとも約90%が、少なくとも1つの5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)、少なくとも1つの3’非翻訳領域(3’UTR)、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリA)配列、および少なくとも1つのRNAアプタマーを含む、医薬組成物。
【請求項75】
少なくとも1つの5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)、少なくとも1つの3’非翻訳領域(3’UTR)、および少なくとも1つのポリアデニル化(ポリA)配列を含むメッセンジャーRNA(mRNA)であって、少なくとも1つのtRNAを含むmRNA。
【請求項76】
少なくとも1つの5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)、少なくとも1つの3’非翻訳領域(3’UTR)、および少なくとも1つのポリアデニル化(ポリA)配列を含むメッセンジャーRNA(mRNA)であって、少なくとも1つのRNAアプタマーが埋め込まれたtRNAを含むmRNA。
【請求項77】
少なくとも1つの5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)、少なくとも1つの3’非翻訳領域(3’UTR)、および少なくとも1つのポリアデニル化(ポリA)配列を含むメッセンジャーRNA(mRNA)であって、少なくとも1つのRNAアプタマーが埋め込まれた生体直交性のスカフォールドを含むmRNA。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年9月2日に出願された米国仮出願第63/240,027号および2022年7月20日に出願されたEP優先権出願第22315159.8号の優先権の利益を主張するものであり、各々の内容は、あらゆる目的のために参照によってその全体が組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
メッセンジャーRNA(mRNA)治療薬は、様々な疾患の治療においてますます重要なアプローチとなりつつあり、タンパク質補充療法、抗体療法、従来的なワクチン療法、および/または遺伝子療法に代わる新たな選択肢である。mRNA治療では、目的のタンパク質またはペプチドをコードするmRNAが、患者または患者の標的細胞に送達される。mRNAが患者の標的細胞に入ると、患者の翻訳装置が目的のタンパク質またはペプチドを生成し、それに続いて発現させる。よって、高純度で安全なmRNA産物を確実に生成することが重要である。
【0003】
治療薬のためのmRNAはしばしば、鋳型プラスミドDNAからmRNAを転写するRNAポリメラーゼのような酵素を用いたin vitro転写系を用いて合成され、それと同時にまたはその後に5’-キャップの付加および3’-ポリアデニル化が行われる。そのような反応の結果は、全長mRNAと様々な望ましくない汚染物質、例えば、タンパク質、非RNA核酸、望ましくないRNA種、スペルミジン、DNA、ピロリン酸塩、エンドトキシン、界面活性剤、および有機溶媒を含む組成物である。治療用途に適したクリーンで均質なmRNAを提供するためには、これらの汚染物質を精製しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
潜在的な治療用途のために、大規模製造プロセスからRNAを精製する、より効果的で信頼性が高く、安全な方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書における説明から、本開示は、限定はされないが以下を含む複数の側面および実施形態を包含することが理解されるであろう:
【0006】
1つの側面において、本開示は、少なくとも1つの5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)、少なくとも1つの3’非翻訳領域(3’UTR)、および少なくとも1つのポリアデニル化(ポリA)配列を含むメッセンジャーRNA(mRNA)であって、少なくとも1つのRNAアプタマーを含むmRNAを提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは、RNAスカフォールドに埋め込まれている。
【0008】
いくつかの実施形態では、RNAスカフォールドは、少なくとも1つの二次構造モチーフを含む。いくつかの実施形態では、二次構造モチーフはテトラループ、シュードノット、またはステムループである。いくつかの実施形態では、RNAスカフォールドは、少なくとも1つの三次構造を含む。いくつかの実施形態では、二次構造モチーフおよび/または三次構造はヌクレアーゼ耐性である。
【0009】
いくつかの実施形態では、RNAスカフォールドは、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、またはリボザイムである。いくつかの実施形態では、リボザイムは触媒的に不活性である。いくつかの実施形態では、RNAスカフォールドは、トランスファーRNA(tRNA)を含む。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは、tRNAのtRNAヘアピンループに埋め込まれている。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは、tRNAのtRNAアンチコドンループに埋め込まれている。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは、tRNAのtRNA Dループに埋め込まれている。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは、tRNAのtRNA Tループに埋め込まれている。
【0010】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは5’UTRに位置する。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは、ORFの3’末端と3’UTRの5’末端との間に配置されている。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは3’UTRに位置する。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは、3’UTRの3’末端とポリA配列の5’末端との間に配置されている。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは、ポリA配列の3’末端に配置されている。
【0011】
いくつかの実施形態では、mRNAは1つのRNAアプタマーを含むか、または1つのRNAアプタマーからなる。いくつかの実施形態では、mRNAは1~4個のRNAアプタマーを含む。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは同一である。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは別個のものである。
【0012】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは合成により得られる。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはスプリットアプタマーまたはXアプタマーである。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは天然由来のものである。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは、ヘアピンRNA、tRNA、またはリボスイッチに由来する。
【0013】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは生体直交性のスカフォールドに埋め込まれている。
【0014】
いくつかの実施形態では、生体直交性のスカフォールドは、V5、F29、F30、またはそれらのバリアントである。
【0015】
いくつかの実施形態では、生体直交性のスカフォールドは、配列番号34の5’ヌクレオチド配列および配列番号35の3’ヌクレオチド配列を含み、アプタマー配列は配列番号34と配列番号35との間に配置されている。
【0016】
いくつかの実施形態では、生体直交性のスカフォールドは、配列番号39の5’ヌクレオチド配列、配列番号40の内部ヌクレオチド配列、および配列番号41の3’ヌクレオチド配列を含み、第1のアプタマー配列は配列番号39と配列番号40との間に配置され、第2のアプタマー配列は配列番号40と配列番号41との間に配置され、場合により、第1および第2のアプタマーは同一であるか、または異なるものである。
【0017】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーが埋め込まれた生体直交性のスカフォールドは、配列番号29または配列番号31のヌクレオチド配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはアフィニティーリガンドに結合する。いくつかの実施形態では、アフィニティーリガンドはプロテインA、プロテインG、ストレプトアビジン、グルタチオン、デキストラン、または蛍光分子を含む。いくつかの実施形態では、アフィニティーリガンドはストレプトアビジンを含む。いくつかの実施形態では、アフィニティーリガンドはクロマトグラフィー樹脂上に固定化されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはS1mまたはSmである。いくつかの実施形態では、mRNAは1~4個のS1mまたはsm RNAアプタマーを含む。いくつかの実施形態では、S1mまたはsm RNAアプタマーは、1)ORFの3’末端と3’UTRの5’末端との間;2)3’UTR内;3)3’UTRの3’末端とポリA配列の5’末端との間;および/または;4)ポリA配列の3’末端に配置されている。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは配列番号2または6のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーが埋め込まれたtRNAは、配列番号7のヌクレオチド配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、mRNAは少なくとも1つのポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは生物学的に活性なポリペプチド、治療用ポリペプチド、または抗原性ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、抗原性ポリペプチドは、抗体またはそのフラグメント、酵素補充ポリペプチド、またはゲノム編集ポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドは、抗体重鎖、抗体軽鎖、酵素、またはサイトカインを含む。いくつかの実施形態では、生物学的に活性なポリペプチドは、ゲノム編集ポリペプチドを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、mRNAはキメラ5’または3’UTRを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、mRNAは少なくとも1つの化学修飾を含む。いくつかの実施形態では、化学修飾は、シュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、4-チオ-シュードウリジン、5-アザ-ウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メチルウリジン、5-メチルウリジン、5-メトキシウリジン、または2-O-メチルウリジンである。いくつかの実施形態では、化学修飾はシュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、5-メチルシトシン、5-メトキシウリジン、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、化学修飾はN1-メチルシュードウリジンである。
【0023】
いくつかの実施形態では、ポリA配列は、少なくとも10個の連続するアデノシン残基である。いくつかの実施形態では、ポリA配列は10~500個の連続するアデノシン残基である。いくつかの実施形態では、mRNAは2つのポリA配列を含み、各ポリA配列は10~500個の連続するアデノシン残基を含み、少なくとも1つのRNAアプタマーまたはRNAアプタマーが埋め込まれたtRNAが、2つのポリA配列の間に配置されている。
【0024】
いくつかの実施形態では、mRNAは5’キャップを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、mRNAの翻訳効率は、RNAアプタマーを含まないmRNAと比較して実質的に同じである。
【0026】
いくつかの実施形態では、mRNAはin vitro転写(IVT)を用いて合成される。
【0027】
いくつかの実施形態では、mRNAは、in vivoまたはex vivoで発現される。
【0028】
1つの側面において、本開示は、上記のmRNAをコードするベクターを提供する。いくつかの実施形態において、ベクターは5’から3’の向きに少なくとも以下の要素a~eを含む:a)RNAポリメラーゼプロモーター;b)5’UTRをコードするポリヌクレオチド配列;c)ORFをコードするポリヌクレオチド配列;d)3’UTRをコードするポリヌクレオチド配列;およびe)少なくとも1つのRNAアプタマーをコードするポリヌクレオチド配列。いくつかの実施形態では、ベクターは、ポリA配列および/またはポリアデニル化シグナルをコードするポリヌクレオチド配列をさらに含む。
【0029】
別の側面において、本開示は、上記のベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0030】
別の側面において、本開示は、上記のmRNAを含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、疾患または障害を治療または予防する方法において、それを必要とする対象に投与される。
【0031】
別の側面において、本明細書に開示されるものは、(a)mRNAを含む試料をクロマトグラフィー樹脂上に固定化されたアフィニティーリガンドと接触させる工程であって、RNAアプタマーはアフィニティーリガンドに対する結合親和性を含む、工程;(b)クロマトグラフィー樹脂からmRNAを溶出させる工程;および(c)試料からmRNAを精製する工程を含む、mRNAを精製するための方法である。いくつかの実施形態では、方法は、接触工程(a)と溶出工程(b)との間に1つまたはそれ以上の洗浄工程を含む。
【0032】
別の側面において、本明細書に開示されるものは、RNAを精製する方法であって、(a)RNAを含む試料をクロマトグラフィー樹脂上に固定化されたアフィニティーリガンドと接触させる工程;(b)クロマトグラフィー樹脂からRNAを溶出させる工程;および(c)試料からRNAを単離する工程を含み、ここで、RNAは少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)および少なくとも1つのRNAアプタマーを含み、RNAアプタマーはアフィニティーリガンドに対する結合親和性を含む、方法である。
【0033】
いくつかの実施形態では、RNAは少なくとも1つの5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも1つの3’非翻訳領域(3’UTR)、および少なくとも1つのポリアデニル化(ポリA)配列をさらに含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、RNAは、少なくとも約500ヌクレオチド長、少なくとも約750ヌクレオチド長、少なくとも約1,000ヌクレオチド長、少なくとも約1,500ヌクレオチド長、少なくとも約2,000ヌクレオチド長、少なくとも約2,500ヌクレオチド長、少なくとも約3,000ヌクレオチド長、少なくとも約3,500ヌクレオチド長、少なくとも約4,000ヌクレオチド長、少なくとも約4,500ヌクレオチド長、または少なくとも約5,000ヌクレオチド長である。
【0035】
いくつかの実施形態では、RNAは5’キャップを含む。いくつかの実施形態では、RNAはmRNAである。
【0036】
いくつかの実施形態では、mRNAは純度90%以上である。
【0037】
別の側面において、本明細書に開示されるものは、mRNAを精製する方法であって、(a)mRNAを含む試料をクロマトグラフィー樹脂上に固定化されたアフィニティーリガンドと接触させる工程;(b)クロマトグラフィー樹脂からmRNAを溶出させる工程;および(c)試料からmRNAを単離する工程を含み、ここで、mRNAは、少なくとも1つの5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)、少なくとも1つの3’非翻訳領域(3’UTR)、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリA)配列、および少なくとも1つのRNAアプタマーを含み、RNAアプタマーは、アフィニティーリガンドに対する結合親和性を含む、方法である。いくつかの実施形態では、mRNAは純度90%以上である。
【0038】
別の側面において、本明細書に開示されるものは、複数のmRNA分子を含む医薬組成物であって、mRNAの少なくとも約90%が、少なくとも1つの5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)、少なくとも1つの3’非翻訳領域(3’UTR)、少なくとも1つのポリアデニル化(ポリA)配列、および少なくとも1つのRNAアプタマーを含む、医薬組成物である。
【0039】
別の側面において、本明細書に開示されるものは、少なくとも1つの5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)、少なくとも1つの3’非翻訳領域(3’UTR)、および少なくとも1つのポリアデニル化(ポリA)配列を含むメッセンジャーRNA(mRNA)であって、少なくとも1つのtRNAを含むmRNAである。
【0040】
別の側面において、本明細書に開示されるものは、少なくとも1つの5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)、少なくとも1つの3’非翻訳領域(3’UTR)、および少なくとも1つのポリアデニル化(ポリA)配列を含むメッセンジャーRNA(mRNA)であって、少なくとも1つのRNAアプタマーが埋め込まれたtRNAを含むmRNAである。
【0041】
別の側面において、本明細書に開示されるものは、少なくとも1つの5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも1つのオープンリーディングフレーム(ORF)、少なくとも1つの3’非翻訳領域(3’UTR)、および少なくとも1つのポリアデニル化(ポリA)配列を含むメッセンジャーRNA(mRNA)であって、少なくとも1つのRNAアプタマーが埋め込まれた生体直交性のスカフォールドを含むmRNAである。
【0042】
本開示の上記および他の特徴および利点は、添付の図面と併せて解釈される以下の例示的な実施形態の詳細な説明から、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、アプタマーでタグ付けされたmRNAのアフィニティー精製プロセスの工程を図式化したものである。
【
図2】
図2は、ストレプトアビジンセファロースビーズとのインキュベーション前(入力)、またはランダムアプタマーもしくはS1mアプタマーのいずれかを用いたストレプトアビジンアフィニティー結合精製および溶出工程後(未結合対溶出)にNanodropで測定したRNA濃度(ng)を示している。アフィニティー精製後に回収されたRNAの割合は、アフィニティー精製を行わなかった入力試料に対する相対値である。
【
図3】
図3は、4×S1mアプタマーでタグ付けされたAREエレメントを有するpAM14(2,496bp)またはタグ付けされていないAREエレメントを有するpAM15プラスミド(2,168bp)のプラスミドマップを示している。
【
図4】
図4は、ストレプトアビジンセファロースビーズとのインキュベーション前(入力)、またはTNFα-53でタグ付けされた4×S1mアプタマーmRNAもしくはTNFα-53 mRNA陰性対照のいずれかを用いたストレプトアビジンアフィニティー結合精製および溶出工程後(未結合対溶出)にNanodropで測定したRNA濃度(ng)を示している。精製されたRNAの割合は、アフィニティー精製を行わなかった入力試料に対する相対値である。
【
図5】
図5は、以下のコンストラクトを含む以下のプラスミドマップを示している:(1)pAM22、M.サームオートトロフィカス(M.thermautotrophicust)のtRNA
GLN2スカフォールドを保持する2,173bpの対照プラスミド(pAM22(tRNA);プラスミドマップには、Gln2アンチコドンループに対するアンチコドンアームの位置に注釈が付けられている)、(2)pAM20、Smアプタマーを保持する2,134bpの対照プラスミド(pAM20(Sm))、(3)pAM21、tRNAアンチコドンアーム配列が両側に隣接するアンチコドンループtRNA
GLN2配列の一部に埋め込まれたSmアプタマー配列を保持する2,206bpの実験用プラスミド(pAM21(tRNA Sm)、および(4)pAM23、Sm-tRNA
GLN2コンストラクトのタンデム2リピート構成を保持する2,306bpの実験用プラスミド(2×tRNA Sm)。各タグはT7プロモーターにより駆動された。
【
図6】
図6は、ストレプトアビジンセファロースビーズとのインキュベーション前(入力)、またはSm、tRNA、tRNA-Sm、および2×tRNA Smアプタマータグを含むmRNAのいずれかを用いたストレプトアビジンアフィニティー結合精製洗浄工程(洗浄1~3)および溶出工程(溶出)後にNanodropで測定したRNA濃度(ng)を示している。アフィニティー精製後におけるRNA回収の割合は、アフィニティー精製を行わなかった入力試料に対する相対値である。
【
図7】
図7は、アプタマー-転写産物の局在化、アプタマーのコピー数、tRNAスカフォールドに埋め込まれたアプタマー、およびtRNAスカフォールドに埋め込まれたアプタマーのタンデムリピートコピーに基づく、最適化された結合親和性とmRNAの翻訳のためのアプタマータグ付けストラテジーを示している。
【
図8】
図8は、ヒト化強化緑色蛍光タンパク質(hEGFP)を保持するpAM11(3,541bp)および4×S1mアプタマーでタグ付けされたhEGFPを保持するpAM8プラスミド(3,213bp)のプラスミドマップを示している。
【
図9】
図9は、hEGFP(レーン1、pAM11由来)および4×S1mアプタマーでタグ付けされたhEGFP(レーン2、pAM8由来)のPCR産物鋳型のIVT反応から生成されたmRNAを含むアガロースゲルの画像である。
【
図10】
図10は、ストレプトアビジンセファロースビーズとのインキュベーション前(入力)、またはhEGFPもしくは4×S1mアプタマーでタグ付けされたhEGFPを含むmRNAのいずれかを用いたストレプトアビジンアフィニティー結合精製および溶出工程(溶出)後にNanodropで測定したRNA濃度(ng)を示している。精製されたRNAの割合は、アフィニティー精製を行わなかった入力試料に対する相対値である。
【
図11】
図11は、hEGFPまたはhEGFP-4×S1m mRNAをトランスフェクトしたHEK293FT細胞の24時間後における代表的な蛍光顕微鏡画像である。
【
図12】
図12は、24時間後にhEGFP(左列、上パネル)、hEGFP-4×S1m(左列、下パネル)、長いポリAテールを有するhEGFP(右列、上パネル)、または長いポリAテールを有するhEGFP-4×S1m(右列、下パネル)mRNAをトランスフェクトしたHEK293FT細胞を撮影した代表的な蛍光顕微鏡画像のパネルを示している。
【
図13】
図13A~
図13Bは、S1mアプタマーのトポロジー的順序が下流のmRNAアフィニティー精製に影響を与えるかどうかをテストしている。
図13Aは、mRNA転写産物中のS1mアプタマーの位置をテストするために設計された実験用コンストラクトの概略図である。S1mアプタマーを(1)5’UTRの直に上流、(2)3’UTRの直に上流、(3)3’UTR中、(4)3’UTRの直に下流、または(5)ポリA配列の3’末端のいずれかに配置した。
図13Bは、ストレプトアビジン結合および溶出工程(未結合対溶出)の後、アフィニティー精製を行わなかった入力試料に対する、アフィニティー精製後に回収されたRNAの割合を示している。
【
図14】
図14は、転写産物中のアプタマーのコピー数(価数)が下流のmRNAアフィニティー精製に影響を与えるかどうかをテストしている。
図14は、1から6コピーのS1mアプタマーを含むmRNAコンストラクトを用いたストレプトアビジン結合および溶出工程(未結合対溶出)の後、アフィニティー精製を行わなかった入力試料に対する、アフィニティー精製後に回収されたRNAの割合を示している。
【
図15】
図15は、2×S1m、4×S1m、または異なるタンパク質コード配列(シンガポール’16ヘマグルチニン)および異なるUTRを含むtRNA S1mアプタマーでタグ付けされたmRNAを用いたストレプトアビジン結合および溶出工程(未結合対溶出)の後、アフィニティー精製を行わなかった入力試料に対する、mRNAアフィニティー精製後に回収されたRNAの割合を示している。
【
図16】
図16A~
図16Cは、mRNA転写産物におけるアプタマーの配置が、HSKMc細胞における翻訳動態に影響を及ぼすかどうかをテストしている。
図16Aは、mRNAの他のトポロジー的順序の成分に対するS1mアプタマーの位置の影響をテストするために設計された実験用コンストラクトの概略図である。
図16Bは、タグ付けされていない対照mRNAまたは
図16Aに示した5つの、アプタマーでタグ付けされたmRNAのうちの1つをトランスフェクトしたHSKMc細胞について、フローサイトメトリー解析により算出したGFP陽性細胞の総数(パーセントで表示)の棒グラフである。
図16Cは、
図16BにおけるGFP陽性高細胞数(パーセントで表示)を示す棒グラフである。
【
図17】
図17A~
図17Cは、mRNA転写産物におけるアプタマーの配置が、Hela細胞における翻訳動態に影響を及ぼすかどうかをテストしている。
図17Aは、mRNAの他のトポロジー的順序の成分に対するS1mアプタマーの位置の影響をテストするために設計された実験用コンストラクトの概略図である。
図17Bは、タグ付けされていない対照mRNAまたは
図17Aに示した5つの、アプタマーでタグ付けされたmRNAのうちの1つをトランスフェクトしたHela細胞について、フローサイトメトリー解析により算出したGFP陽性細胞の総数(パーセントで表示)の棒グラフである。
図17Cは、
図17BにおけるGFP陽性高細胞数(パーセントで表示)のみを示した棒グラフである。
【
図18】
図18は、対照、またはポリAテール長を増加させたアプタマーでタグ付けされたmRNA(「アプタマー、ポリ(A)2×60_6+A’s」と表示)のいずれかをトランスフェクトしたHela細胞について、フローサイトメトリー解析により算出したGFP陽性細胞の総数(パーセントで表示)の棒グラフを示している。
【
図19】
図19A~
図19Bは、tRNAスカフォールドによるS1mアプタマーの安定化が、mRNAアフィニティー精製およびその後のmRNA翻訳効率に影響を及ぼすかどうかを調べている。
図19Aは、タグ付けされていないmRNA対照、2×S1mアプタマー、4×S1mアプタマー転写産物、またはtRNA S1mアプタマーでタグ付けされたmRNAを用いたストレプトアビジン結合および溶出工程(未結合対溶出)後の、入力試料に対するmRNAアフィニティー精製後に回収されたRNAの割合を示す棒グラフである。
図19Bは、タグ付けされていないmRNA対照またはtRNA S1mアプタマーでタグ付けされたmRNA(「tRNA安定化アプタマー」と表示)をトランスフェクションした後、フローサイトメトリー解析により算出したGFP陽性Hela細胞の総数(パーセントで表示)の棒グラフである。
【
図20】
図20Aは、F30-アプタマーによって形成される二次RNA構造である。
図20Bは、タグ付けされていないmRNA対照、4×S1mアプタマー、F30スカフォールドで安定化させた1×S1mアプタマー(F30-1×S1m)、またはF30スカフォールドで安定化させた2×S1mアプタマー(F30-2×S1m)でタグ付けされたmRNAを用いたストレプトアビジン結合および溶出工程(未結合対溶出)の後、入力試料に対するmRNAアフィニティー精製後に回収されたRNAの割合を示す棒グラフである。
図20Cは、ストレプトアビジンセファロースビーズとのインキュベーション前(入力)、またはタグ付けされていないmRNA対照、4×S1mアプタマー、F30-2×S1mアプタマー、またはF30-1×S1mでタグ付けされたmRNAのいずれかを用いたストレプトアビジンアフィニティー結合精製および溶出工程(溶出)後にNanodropで測定したRNA濃度(ng)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示は、特に、新規のmRNA組成物およびRNAアフィニティー精製のための方法を対象とする。特に、本開示は、少なくとも1つのRNAアプタマーを含むmRNA組成物に関する。開示されたmRNA組成物に関連するRNAアプタマーは、効果的なアフィニティー精製法の使用を可能にし、なおかつ翻訳効率および免疫原性への最小限の影響を有する。また、本明細書には、これらのmRNAでタグ付けされたアプタマー組成物を製造する方法も開示される。
【0045】
I.定義
本明細書中で他に定義されない限り、本発明に関連して使用される科学的および技術的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。例示的な方法および材料が以下に記載されるが、本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料もまた、本発明の実施または試験に使用される。矛盾がある場合は、定義を含め、本明細書が優先するものとする。一般に、本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学、ウイルス学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、合成有機化学、医薬および製薬化学、ならびにタンパク質および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションに関連して使用される学術用語、および技術は、当該技術分野において周知であり、そして一般的に使用されている。酵素反応および精製技術は、当技術分野において一般的に達成されているように、または本明細書に記載されているように、製造元の仕様書に従って実施される。さらに、文脈によって別段要求されない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。本明細書および実施形態を通じて、用語「有する(have)」および「含む(comprise)」、または「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(comprises)」、または「含む(comprising)」などの変形は、記述された整数または整数の群を含むことを意味すると理解されるが、他のいかなる整数または整数の群も除外するものではない。本明細書において言及された全ての刊行物および他の参考文献は、その全体が参照により組み入れられる。本明細書では多数の文献が引用されているが、この引用は、これらの文献のいずれかが当該技術分野における一般常識の一部を形成することを認めるものではない。
【0046】
「1つの(a)」または「1つの(an)」実体という用語は、その実体の1つまたはそれ以上を指すことに留意されたい;例えば、「ヌクレオチド配列」は、1つまたはそれ以上のヌクレオチド配列を表すものと理解される。したがって、本明細書では、「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、「1つまたはそれ以上の(one or more)」および「少なくとも1つの(at least one)」という用語は互換的に使用される。
【0047】
さらに、本明細書で使用される「および/または」は、2つの指定された特徴または成分の各々について、他方を伴うか伴わないかにかかわらず、具体的な開示とみなされる。よって、本明細書において「Aおよび/またはB」などの句で使用される「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A(単独)」、および「B(単独)」を含むことが意図される。同様に、「A、B、および/またはC」などの句で使用される「および/または」という用語は、以下の各側面を包含することが意図される:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)。
【0048】
側面が「comprising(含む)」という言葉で本明細書において記載されている場合は常に、「consisting of(からなる)」および/または「consisting essentially of(から本質的になる)」の観点で記載される類似の側面もまた提供されることが理解される。
【0049】
特に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的用語は、この開示の関連する当該技術分野の通常の熟練者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology、Juo,Pei-Show、第2版、2002年、CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology、第3版、1999年、Academic PressおよびOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology、改訂版、2000年、Oxford University Pressは、本開示で使用される多くの用語の一般的な辞書を当業者に提供しうる。
【0050】
単位、接頭辞、および記号は、国際単位系(SI)で認められている形式で表記される。数値範囲は、範囲を定義する数値を含んでいる。特に断りのない限り、アミノ酸配列はアミノからカルボキシの方向で左から右に書かれる。本明細書で提供される見出しは、本開示の様々な側面を限定するものではない。したがって、すぐ下に定義した用語は、本明細書の全体を参照することによって、より完全に定義される。
【0051】
「およそ」または「約」という用語は、本明細書において、およそ、おおよそ、その周辺、またはその領域内を意味するために使用される。「約」という用語が数値範囲と併せて使用される場合、それは記載された数値の上下の境界を拡張することによって、その範囲を修正する。一般的に、「約」という用語は、例えば、10パーセントの上下(高低)の変動によって、記載された値の上下に数値を修正しうる。いくつかの実施形態では、本用語は、指し示された数値から±10%、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.9%、±0.8%、±0.7%、±0.6%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%、±0.05%、または±0.01%の偏差を指し示す。いくつかの実施形態では、「約」は指し示された数値から±10%の偏差を指し示す。いくつかの実施形態では、「約」は指し示された数値から±5パーセントの偏差を指し示す。いくつかの実施形態では、「約」は指し示された数値から±4パーセントの偏差を指し示す。いくつかの実施形態では、「約」は指し示された数値から±3パーセントの偏差を指し示す。いくつかの実施形態では、「約」は指し示された数値から±2パーセントの偏差を指し示す。いくつかの実施形態では、「約」は指し示された数値から±1パーセントの偏差を指し示す。いくつかの実施形態では、「約」は指し示された数値から±0.9パーセントの偏差を指し示す。いくつかの実施形態では、「約」は指し示された数値から±0.8パーセントの偏差を指し示す。いくつかの実施形態では、「約」は指し示された数値から±0.7パーセントの偏差を指し示す。いくつかの実施形態では、「約」は指し示された数値から±0.6パーセントの偏差を指し示す。いくつかの実施形態では、「約」は指し示された数値から±0.5パーセントの偏差を指し示す。いくつかの実施形態では、「約」は指し示された数値から±0.4パーセントの偏差を指し示す。いくつかの実施形態では、「約」は指し示された数値から±0.3パーセントの偏差を指し示す。いくつかの実施形態では、「約」は指し示された数値から±0.1パーセントの偏差を指し示す。いくつかの実施形態では、「約」は指し示された数値から±0.05パーセントの偏差を指し示す。いくつかの実施形態では、「約」は指し示された数値から±0.01パーセントの偏差を指し示す。
【0052】
文脈に応じて、「ポリヌクレオチド」または「ヌクレオチド」という用語は、単数の核酸および複数の核酸を包含しうる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、単離された核酸分子またはコンストラクト、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)またはプラスミドDNA(pDNA)である。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、従来型のホスホジエステル結合を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、非従来型の結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)に見出されるようなアミド結合)を含む。「核酸」という用語は、ポリヌクレオチド中に存在する1つまたはそれ以上の核酸セグメント、例えば、DNAまたはRNAのフラグメントを指しうる。「単離された」核酸またはポリヌクレオチドにより、その本来の環境から取り除かれた核酸分子、DNAまたはRNAが意図される。例えば、ベクターに含まれる第VIII因子ポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、本開示の目的では単離されているとみなされる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例は、異種宿主細胞中で維持された、または溶液中の他のポリヌクレオチドから(部分的または実質的に)精製された組換えポリヌクレオチドを含む。単離されたRNA分子には、本開示のポリヌクレオチドのin vivoまたはin vitro RNA転写産物が含まれる。本開示に従う単離されたポリヌクレオチドまたは核酸は、さらに合成的に生成されたそのような分子を含む。さらに、ポリヌクレオチドまたは核酸は、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、または転写終結シグナルのような調節エレメントを含みうる。
【0053】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」という用語は、単数形の「ポリペプチド(polypeptide)」および複数形の「ポリペプチド(polypeptides)」を包含することが意図され、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直鎖状に連結されたモノマー(アミノ酸)から構成される分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、2つまたはそれ以上のアミノ酸の任意の鎖または複数の鎖を意味し、特定の長さの産物を指すものではない。よって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または2つまたはそれ以上のアミノ酸の1つの鎖または複数の鎖を指すために使用される他のいかなる用語も、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりに、またはこれらの用語のいずれかと交換可能に使用される。「ポリペプチド」という用語はまた、限定はされるものではないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解切断、または非天然起源のアミノ酸による修飾を含む、ポリペプチドの発現後修飾の産物を指すことも意図される。ポリペプチドは、天然の生物学的供給源に由来するものでも、組換え技術によって産生されたものでもよいが、必ずしも指定された核酸配列から翻訳されたものである必要はない。それは、化学合成を含め、どのような方法でも生成される。
【0054】
「単離された」ポリペプチド、またはそのフラグメント、バリアント、または誘導体とは、その天然の環境にはないポリペプチドを指す。特定のレベルの精製が要求されることはない。例えば、単離されたポリペプチドは、単純にその本来の環境または自然環境から取り除かれる。宿主細胞中で発現された組換え生成ポリペプチドおよびタンパク質は、本開示の目的のために単離されたものとみなされ、任意の適切な技術によって分離、分画、または部分的もしくは実質的に精製されたネイティブまたは組換えのポリペプチドも同様である。
【0055】
本明細書で使用される場合、「投与する」または「投与すること」とは、本明細書に記載の組成物、例えば、キメラタンパク質を対象に送達することを指す。組成物、例えば、キメラタンパク質は、当技術分野で公知の方法を用いて対象に投与される。特に、組成物は、静脈内、皮下、筋肉内、皮内、または任意の粘膜表面、例えば、経口、舌下、頬側、鼻腔、直腸、膣、または肺経路を介して投与される。いくつかの実施形態では、投与は静脈内投与である。いくつかの実施形態では、投与は皮下投与である。いくつかの実施形態では、投与は自己投与である。いくつかの実施形態では、親が子供にキメラタンパク質を投与する。いくつかの実施形態では、キメラタンパク質は、医師、衛生士、看護師のような医療従事者によって対象に投与される。
【0056】
II.メッセンジャーRNA(mRNA)
本明細書で開示するのは、RNAアプタマーを含むmRNA組成物である。mRNAは典型的には、DNAからリボソームへ情報を伝達するタイプのRNAと考えられている。mRNAの存在は典型的に非常に短く、プロセシングと翻訳、それに続く分解を含む。典型的には、真核生物では、mRNAのプロセシングは、N末端(5’)に「キャップ」を、C末端(3’)に「テール」を付加することを含む。
【0057】
典型的なキャップは、5’-5’-三リン酸結合を介して最初の転写ヌクレオチドに連結されるグアノシンの7-メチルグアノシンキャップである。キャップの存在は、ほとんどの真核細胞に見られるヌクレアーゼに対する耐性を与える上で重要である。5’キャップは典型的には、次のようにして追加される:まず、RNA末端ホスファターゼが5’ヌクレオチドから末端リン酸基の1つを除去し、2つの末端リン酸を残す;次に、グアノシン三リン酸(GTP)がグアニリルトランスフェラーゼを介して末端リン酸に付加され、5’5’5三リン酸連結が生成される;そして、グアニンの7-窒素がメチルトランスフェラーゼによってメチル化される。
【0058】
テールは典型的には、ポリアデニル化イベントであり、それによってポリアデニリル部分がmRNA分子の3’末端に付加される。この「テール」の存在は、エキソヌクレアーゼによる分解からmRNAを守る役割を果たす。メッセンジャーRNAはリボソームによって、タンパク質を構成する一連のアミノ酸へと翻訳される。
【0059】
いくつかの実施形態において、mRNAは5’および/または3’非翻訳領域(UTR)を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示のmRNAは、mRNAの安定性または翻訳に影響を及ぼす1つまたはそれ以上の要素を含む5’UTRを含む。いくつかの実施形態では、5’UTRは約50から500ヌクレオチド長でありうる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示のmRNAは、ポリアデニル化シグナル、細胞内のmRNAの位置の安定性に影響を及ぼすタンパク質への結合部位、またはmiRNAに対する1つまたはそれ以上の結合部位のうちの1つまたはそれ以上を含む3’UTRを含む。いくつかの実施形態では、3’UTRは50から500ヌクレオチド長以上であってもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に開示のmRNAは、mRNA転写産物によってコードされる遺伝子とは異なる遺伝子に由来する5’または3’UTRを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に開示のmRNAは、キメラである5’または3’UTRを含む。
【0060】
本明細書に開示のmRNAは、様々な公知の方法のいずれかに従って合成されうる。例えば、本発明によるmRNAは、in vitro転写(IVT)を介して合成されてもよい。in vitro転写の方法は当技術分野で知られている。例えば、Geallら、(2013年)Semin.Immunol.25(2):152~159頁;Brunelleら、(2013年)Methods Enzymol.530:101~14頁を参照されたい。簡単に説明すると、IVTは典型的には、プロモーターを含む直鎖状もしくは環状のDNA鋳型、リボヌクレオチド三リン酸のプール、DTTおよびマグネシウムイオンを含みうるバッファー系、および適切なRNAポリメラーゼ(例えば、T3、T7またはSP6 RNAポリメラーゼ)、DNAse I、ピロホスファターゼ、および/またはRNAseインヒビターを用いて行われる。正確な条件は、具体的な用途によって変動するであろう。これらの試薬の存在は、最終的なmRNA産物には望ましくなく、治療用途に適したクリーンで均質なmRNAを提供するために精製されなければならない不純物または汚染物質とみなされる。いくつかの実施形態では、in vivtro転写反応から提供されるmRNAが望ましい場合があるが、細菌、真菌、植物、および/または動物から生成される野生型mRNAを含む、他のmRNA源が本開示に従って使用されてもよい。
【0061】
本明細書に開示の方法は、様々なヌクレオチド長のmRNAを精製するために使用されうる。いくつかの実施形態において、開示の方法は、約1kb、1.5kb、2kb、2.5kb、3kb、3.5kb、4kb、4.5kb、5kb、6kb、7kb、8kb、9kb、10kb、11kb、12kb、13kb、14kb、または15kbを超える長さのmRNAを精製するために使用されうる。本明細書に開示のmRNAは、修飾されていても修飾されていなくてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に開示のmRNAは、典型的にはRNAの安定性を高める1つまたはそれ以上の修飾を含む。例示的な修飾は、骨格修飾、糖修飾、または塩基修飾を含む。いくつかの実施形態において、本開示のmRNAは、プリン(アデニン(A)、グアニン(G))またはピリミジン(チミン(T)、シトシン(C)、ウラシル(U))、ならびにプリンおよびピリミジンの修飾ヌクレオチド類似体または誘導体として、例えば、1-メチルアデニン、2-メチルアデニン、2-メチルチオ-N-6-イソペンテニルアデニン、N6-メチルアデニン、N6-イソペンテニルアデニン、2-チオシトシン、3-メチルシトシン、4-アセチル-シトシン、5-メチルシトシン、2,6-ジアミノプリン、1-メチル-グアニン、2-メチル-グアニン、2,2-ジメチル-グアニン、7-メチル-グアニン、イノシン、1-メチル-イノシン、プソイドウラシル(5-ウラシル)、ジヒドロウラシル、2-チオ-ウラシル、4-チオ-ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウラシル、5-(カルボキシヒドロキシメチル)-ウラシル、5-フルオロウラシル、5-ブロモ-ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウラシル、5-メチル-2-チオ-ウラシル、5-メチル-ウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、5-メチルアミノメチル-ウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオ-ウラシル、5’-メトキシカルボニルメチル-ウラシル、5-メトキシ-ウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、1-メチル-プソイドウラシル、クエオシン、β-D-マンノシル-クエオシン、ホスホルアミデート、ホスホロチオエート、ペプチドヌクレオチド、メチルホスホネート、7-デアザグアノシン、5-メチルシトシン、およびイノシンを含むがこれらに限定されない、天然に存在するヌクレオチドおよび/またはヌクレオチド類似体(修飾ヌクレオチド)から合成されうる。いくつかの実施形態では、本開示のmRNAは、シュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-1-メチル-シュードウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-チオ-1-メチル-シュードウリジン、4-チオ-シュードウリジン、5-アザ-ウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メチルウリジン、5-メチルウリジン、5-メトキシウリジン、および2-O-メチルウリジンからなるが、限定はされない、少なくとも1つの化学修飾を含む。いくつかの実施形態において、修飾ヌクレオチドは、N1-メチルシュードウリジンを含む。そのような類似体の調製は、例えば、米国特許第4,373,071号、米国特許第4,401,796号、米国特許第4,415,732号、米国特許第4,458,066号、米国特許第4,500,707号、米国特許第4,668,777号、米国特許第4,973,679号、米国特許第5,047,524号、米国特許第5,132,418号、米国特許第5,153,319号、米国特許第5,262,530号、および米国特許第5,700,642号から、当業者には公知である。
【0062】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示のmRNAは、単一の遺伝子または単一の合成もしくは発現コンストラクト由来のmRNAを含む。しかしながら、いくつかの実施形態において、本明細書に開示のmRNA組成物は、複数のmRNA転写産物を含み、各々が1つまたはそれ以上のタンパク質をコードしうるか、または集合的にコードする。
【0063】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示のRNAアプタマーを含むmRNAは、治療用ポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドは、抗体重鎖、抗体軽鎖、酵素、またはサイトカインを含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、mRNAはサイトカインをコードする。サイトカインの非限定的な例は、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、INF-α、INF-γ、GM-CFS、M-CSF、LT-β、TNF-α、成長因子、およびhGHを含む。
【0065】
1つの実施形態では、RNAアプタマーを含むmRNAは、ゲノム編集ポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態において、ゲノム編集ポリペプチドは、CRISPRタンパク質、制限ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクタータンパク質(TALEヌクレアーゼ、TALENを含むTALE)、またはジンクフィンガータンパク質(ZFヌクレアーゼ、ZFNを含むZF)である。例えば、国際公開第WO2020139783号を参照されたい。
【0066】
いくつかの実施形態において、mRNAは、酵素補充療法において利用される酵素をコードする。酵素補充療法の例は、ゴーシェ病、ファブリー病、MPS I、MPS II(ハンター症候群)、MPS VI、およびグリコーゲン貯蔵病II型のようなライソゾーム病を含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、RNAアプタマーを含むmRNAは、目的の抗原をコードする。抗原は、ウイルス、例えば、インフルエンザウイルス、コロナウイルス(例えば、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、またはMERS関連ウイルス)、エボラウイルス、デングウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ライノウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ジカウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)、ヒトパラインフルエンザウイルス3型(PIV3)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、またはチクングニアウイルスに由来するポリペプチドでありうる。
【0068】
抗原は、細菌、例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、モラクセラ(例えば、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis);耳炎、呼吸器感染症、および/または副鼻腔炎を引き起こす)、クラミジア・トラコーマティス(Chlamydia trachomatis)(クラミジアを引き起こす)、ボレリア(例えば、ライム病を引き起こすボレリア・バーグドルフェリ(Borrelia burgdorferi))、炭疽菌(炭疽を引き起こす)、腸チフス菌(腸チフスを引き起こす)、結核菌(結核を引き起こす)、アクネ菌(ニキビを引き起こす)、または非定型インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)に由来するものでありうる。
【0069】
望まれる場合、RNAアプタマーを含むmRNAは、複数の抗原をコードしていてもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に開示のmRNAは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の抗原をコードする。これらの抗原は、同じ病原体、または異なる病原体由来のものでありうる。例えば、複数の抗原に翻訳可能なポリシストロニックmRNA(例えば、各抗原コード配列が2Aペプチドのような自己切断ペプチドをコードするヌクレオチドリンカーによって分離されている)が、さらにアプタマーに融合される。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示のmRNA組成物はワクチンにおいて使用される。mRNAワクチンは、病原体由来の抗原タンパク質を含む従来的なサブユニットワクチンの有望な代替物を提供する。mRNAをベースとするワクチンは、ワクチン接種対象における複雑な抗原のde novo発現を可能とし、その結果、適切な翻訳後修飾と、抗原の、その天然のコンフォメーションでの提示とを可能とする。さらに、mRNAワクチンの製造プロセスは、一度確立されれば、様々な抗原に使用することができ、mRNAワクチンの迅速な開発と展開が可能となる。mRNAワクチンの詳細な議論は、Pardiら、(2018年)Nat Rev Drug Discov 17、261~279頁に見出される。
【0071】
III.アプタマー
RNAのアフィニティー精製の広範な使用は、効率的なRNA融合タグの欠如のために制限されてきた。精製されるRNAが、固定相(すなわち、クロマトグラフィー樹脂)に固定化できる標的に対する強い親和性を持つ配列を自然に含んでいない限り、RNAは、タンパク質科学で使用されるポリヒスチジンタグに類似した、そうするための特定の配列によるタグ付けを必要としうる。
【0072】
本明細書で開示するのは、少なくとも1つのアプタマーを含むmRNA組成物である。これらのmRNA組成物に関連するアプタマーは、アフィニティー精製の使用を可能にし、翻訳効率および免疫原性への最小限の影響を有する。また、本明細書には、そのようなmRNAでタグ付けされたアプタマー組成物を製造する方法も開示される。
【0073】
本明細書で使用される「アプタマー」という用語は、特定の標的に対する非共有結合部位を有する任意の核酸配列を指す。例示的なアプタマー標的には、核酸配列、タンパク質、ペプチド、抗体、小分子、ミネラル、抗生物質などが含まれる。アプタマー結合部位は、アプタマーの二次構造、三次構造、またはコンフォメーション構造に起因して生じうる。
【0074】
本明細書で使用される「RNAアプタマー」という用語は、RNAから構成されるアプタマーを意味する。いくつかの実施形態において、RNAアプタマーはmRNA転写産物のヌクレオチド配列中に含まれる。他の実施形態では、RNAアプタマーはmRNA転写産物のヌクレオチド配列から分離されている。
【0075】
アプタマーは典型的には、高い親和性と特異性で特定の標的に結合することができる。アプタマーは、他の結合タンパク質(例えば、抗体)と比べて、いくつかの利点を有する。例えば、アプタマーは完全にin vitroで(例えば、SELEXアプタマー選択法を介して)改変することができ、化学合成によって製造することができ、望ましい保存特性を有し、そして、治療用途において免疫原性をほとんど、あるいは全く誘発しない。一般的には、Proskeら、(2005年)Appl.Microbiol.Biotechnol 69:367~374頁を参照されたい。
【0076】
アプタマーは歴史的には、リガンドに直接結合することによって遺伝子発現を調節するために使用されてきた。これらのアプタマーは制御タンパク質と同様に作用し、標的に対して非常に特異的な結合ポケットを形成し、その後、コンフォメーションが変化する。
【0077】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは合成により得られる。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは、原核生物および/または真核生物から天然に由来する。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは、ヘアピンRNA、tRNA、またはリボスイッチに由来する。
【0078】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはリボスイッチに由来する。リボスイッチは、遺伝子の転写および翻訳を制御する小分子センサーとして機能する制御性RNAエレメントである。いくつかのリボスイッチのクラスが、当技術分野で知られている。例示的なリボスイッチは、B12リボスイッチ、TPPリボスイッチ、SAMリボスイッチ、グアニンリボスイッチ、FMNリボスイッチ、リジンリボスイッチ、およびPreQ1リボスイッチを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはスプリットアプタマーである。スプリットアプタマーは、スプリット-タンパク質系(β-ガラクトシダーゼなど)に類似したものであり、特定の標的が存在すると、より高次の構造へと集合する2つまたはそれ以上の短い核酸鎖に依存する。Debaisら、(2020年)Nucleic Acids Res 48(7):3400~3422頁。例示的なスプリットアプタマーはATP-アプタマーである。SassanfarとSzostak(1993年)Nature 364(6437)-550~553頁。ATPアプタマーは、ステムを閉じるループを取り除き、安定性の損失を補うための追加のヌクレオチドにより各フラグメントを延長することで、2つのRNAフラグメントに分割されたRNAアプタマーである。2つのRNAフラグメントはどちらも単独ではATPと結合しないが、ATPの存在下では結合能力が再活性化される。Debiaisら、(2020年)Nucleic Acids Res 48(7):3400~3422頁。
【0080】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはX-アプタマーである。X-アプタマーは、結合親和性、特異性、および汎用性を向上させるために、天然ヌクレオチドと化学修飾ヌクレオチドを組み合わせて改変されている。X-アプタマーの例示的な実施形態はPS2-アプタマーである。PS2-アプタマーは、RNAアプタマーの1ヌクレオチドにホスホロジチオエート(すなわち、PS2)置換を含むRNAアプタマーであり、アプタマーの結合親和性がナノモルからピコモルの範囲に高められている。Abeydeeraら、(2016年)Nucleic Acids Res.44(17):8052~8064頁。
【0081】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはリガンドに結合する。いくつかの実施形態では、リガンドはアフィニティー精製系で利用される。いくつかの実施形態において、アフィニティーリガンドは、プロテインA、プロテインG、ストレプトアビジン、グルタチオン(GSH)、デキストラン(セファデックス)、セルロース(例えば、ジエチルアミノエチルセルロース)または蛍光分子を含む。いくつかの実施形態では、アフィニティーリガンドはクロマトグラフィー樹脂上に固定化されている。
【0082】
いくつかの実施形態において、アフィニティーリガンドは、プロテインAを含む。DNAアプタマーは、プロテインAを標的とすることが以前に示されている。例えば、Stoltenburgら、(2016年)Sci Rep.6:33812を参照されたい。
【0083】
いくつかの実施形態において、本開示のRNAアプタマーはストレプトアビジンと結合する。ストレプトアビジン結合アプタマーについては、例えば、SrisawatとEngelke(2001年)RNA 7(4):632~641頁に記載されている。
【0084】
また、セファデックスに結合するRNAアプタマーも本明細書に開示される。セファデックス結合アプタマーは、例えば、Srisawatら、(2001年)Nucleic Acid Res 29(2):e4に記載されている。
【0085】
グルタチオン(GSH)に結合するRNAアプタマーも本明細書に開示される。グルタチオン結合アプタマーについては、例えば、Balaら、(2011年)、RNA Biology 8(1):101~111頁に記載されている。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはGSHapt 8.17またはGSHapt 5.39である。
【0086】
また、蛍光分子に結合するRNAアプタマーも本明細書に開示される。そのようなアプタマーの例は、例えば、Paigeら、(2011年)Science 333(6042):642~646頁に記載されている。
【0087】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはS1mアプタマーを含む。いくつかの実施形態において、本開示に従って使用されるS1mアプタマーは、Bachlerら、(1999年)RNA 5(11):1509~1516頁、SrisawatとEngelke(2001年)RNA 7(4):632~641頁、またはLiとAltman、(2002年)Nuc.Acids Res.30(17):3706~3711頁に記載されているアプタマーである。いくつかの実施形態において、RNAアダプターは配列番号2のヌクレオチド配列を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはSmアプタマーを含む。いくつかの実施形態において、RNAアダプターは配列番号6のヌクレオチド配列を含む。
【0089】
A.アプタマーの位置
mRNA中へのアプタマーの導入は、翻訳に影響を与えることが報告されている。mRNA上のアプタマーの位置は、翻訳への影響の大きさを部分的に決定しうる。例えば、構造化したRNAを転写産物の5’-UTRに挿入すると、タンパク質の翻訳レベルが低下すると一般に考えられている。Babendureら、(2006年)、RNA 12:851~861頁;Kotterら、(2009年)Nuc Acids Res 37(18):e120。アプタマーをmRNA分子の5’UTRに挿入するとヘアピンループが形成され、mRNAの構造が変化してリボソームへのアクセスが阻害され、翻訳が妨げられる。例えば、米国特許出願公開第2007/0136827号を参照されたい。
【0090】
本明細書では、mRNAのORFに関して様々な位置にあるアプタマーを含むRNAアプタマーが開示される。mRNA上のRNAアプタマーの位置の選択は、翻訳の制御の大きさと基礎発現レベルの両方に関して評価される。例えば、キャップまたは開始コドンから0~100塩基の間の5’-UTR内の様々な位置にアプタマーを含むレポーターコンストラクトが構築されうる。いくつかの実施形態では、アプタマーの後の下流領域は、ペプチドリーダー配列を保存するために維持でき、それにより、アプタマーに対する上流配列の改変が制限される。
【0091】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは5’UTRに位置する。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは、5’UTRに続いて、タンパク質をコードするORFの直前に配置される。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは、タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)に続いて、3’UTRの直前に配置される。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは、ORFの3’末端と3’UTRの5’末端との間に配置されている。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは3’UTRに配置される。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは3’UTRの下流、ポリAテールの直前に配置される。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは、3’UTRの3’末端とポリA配列の5’末端との間に配置されている。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはポリAテールの直後(すなわち、転写産物の末端)に配置される。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは、ポリA配列の3’末端に配置されている。
【0092】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはmRNAに直接結合していなくてもよい。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはリンカーに結合している。例えば、Elenkoら、(2009年)J Am Chem Soc.131(29):9866~9867頁を参照されたい。
【0093】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはアフィニティー精製後にmRNAから除去される。これは、例えば、RNAアプタマーまたはRNAスカフォールドにハイブリダイズするDNAオリゴヌクレオチドを用いて達成されうる。その結果生じる二重鎖は、その後、RNase Hのような酵素で切断される。例えば、Batey RT、(2014年)、Curr Opin Struct Biol.26:1~8頁を参照されたい。
【0094】
B.アプタマーのコピー数
アプタマーのコピー数の増加は、アプタマーがより大きな三次元構造を形作ること(すなわち、利用可能なアフィニティーリガンド結合部位の数を高めること、またはユニークなリガンド結合部位を形成すること)を可能にしうる。アプタマーコピーを戦略的に配置することで、同族のアフィニティーリガンドとのアビディティーの増強が可能となりうる。
【0095】
いくつかの実施形態において、開示された方法および組成物において使用されるmRNAは、アプタマーの複数のコピーを含む。これまでの報告によると、5’-UTRにおいて低分子結合アプタマーを1つ使用すると、リガンド添加時に翻訳の8倍の抑制が可能となるが、アプタマーを3つ使用すると37倍抑制される。Kotterら、(2009年)、Nucleic Acids Res.37(18):e120。いくつかの実施形態において、mRNAに導入されるアプタマーのコピー数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上である。
【0096】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは複数のコピーのアプタマー配列を含む。いくつかの実施形態において、RNAアプタマーは配列番号5のヌクレオチド配列を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、アプタマーのコピーは、反復タンデム構成にある。本明細書に開示の4×S1mアプタマーは、反復タンデム構成の複数コピーアプタマーの一例である。
【0098】
IV.RNAスカフォールド
いくつかの実施形態において、本明細書に開示のmRNA組成物は、RNAスカフォールドに埋め込まれたRNAアプタマーを含む。本明細書で使用される場合、「RNAスカフォールド」という用語は、目的の機能モジュールの特性を組織化、保護、または強化するための空間アーキテクチャを形作る、予め定義された構造を有するように集合しうるノンコーディングRNA分子を指す。例示的な機能モジュールは、核酸(例えば、アプタマー)またはタンパク質でありうる。いくつかの実施形態において、本開示に従う使用に適したRNAスカフォールドは、RNA構造を破壊することなくRNAと会合しうる。さらに、適切なRNAスカフォールドは、RNA構造を破壊することなく、RNAアプタマーの埋め込みを可能とする。いくつかの実施形態において、本開示に従って使用されるRNAスカフォールドは、RNAの発現または翻訳に有意な悪影響を及ぼさない任意のRNAスカフォールドでありうる。
【0099】
RNAスカフォールドの予め定義された構造は、ヘアピンステム間の塩基対形成(キッシングループ)のような自己集合のためのRNA特異的配列モチーフ、および/または化学修飾を含む。MyhrvoldとSilver(2015年)Nat Struct Mol Bio 22(1):8~10頁。RNA特異的配列モチーフは、二次構造(すなわち、二次元構造)および/または三次構造(すなわち、三次元構造)を形成しうる。いくつかの実施形態では、RNAスカフォールドは、少なくとも1つの二次構造モチーフを含む。いくつかの実施形態では、RNAスカフォールドは、少なくとも1つの三次構造モチーフを含む。一般的な二次および/または三次RNA構造モチーフは、オープンおよびスタック型の3方向ジャンクション、4方向ジャンクション、ホリデイ構造に類似した4方向ジャンクション、ステムループ(すなわち、ヘアピンループ)、内部ループ(すなわち、インターナルループ)、バルジ、テトラループ、マルチブランチループ、シュードノットおよびノット、90°キンク、ならびに偽ねじれ角を含む。Shannaら、(2021年)Molecules 26(5):1422。
【0100】
RNAスカフォールドは、天然由来のもの(例えば、アテニュエーター、tRNA、リボスイッチ、ターミネーター)または二次もしくは三次RNA構造を形成するように人工的に改変されたもののいずれかでありうる。Delebecqueら、(2012年)Nat Protoc 7(10):1797~1807頁。典型的には、RNAスカフォールドの所定の構造を保持するために、RNAスカフォールドのRNAループ(例えば、ヘアピンループ)が、目的の機能モジュールを埋め込むための標的領域となる。例えば、米国特許出願公開第20050282190A1号を参照されたい。しかしながら、RNAスカフォールドの所定の構造は、さらに望ましい特性を持つように修正される。例えば、エキソヌクレアーゼ消化とエンドヌクレアーゼ消化の一方または両方に対して耐性を持つように、所定のRNAスカフォールド構造が修正されうる。
【0101】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示のmRNA組成物は、トランスファーRNA(tRNA)に埋め込まれたRNAアプタマーを含む。tRNAは標準的な安定したクローバーリーフ構造に折り畳まれ、アンフォールディングに耐性があり、ヌクレアーゼ分解からRNA融合物を保護することができることから、トランスファーRNA(tRNA)スカフォールドは、アフィニティー精製系における魅力的なタグ付けの候補となる。アプタマーをtRNAスカフォールドのアンチコドンループに埋め込むと、適切なフォールディングが促進されることが実証されている。一般に、PonchonとDardel(2007年)Nat.Methods 4(7):571~576頁;Ponchonら、(2013年)Nucleic Acids Res.41:e150を参照されたい。tRNAスカフォールドに埋め込まれたRNAアプタマーを使用すると、細胞溶解物から転写産物特異的なRNA結合タンパク質を首尾良くプルダウンできることが実証されている。Iioka Hら、(2011年)Nuc.Acids Res.39(8):e53。
【0102】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示のmRNA組成物は、配列番号7のヌクレオチド配列を含むtRNAに埋め込まれたRNAアプタマーを含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは、tRNAのtRNAヘアピンループに埋め込まれている。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはtRNAアンチコドンループに埋め込まれている。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはtRNA Dループに埋め込まれている。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはtRNA Tループに埋め込まれている。
【0104】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示のmRNA組成物は、生体直交性のスカフォールドに埋め込まれたRNAアプタマーを含む。生体直交性のスカフォールドの顕著な特徴は、細胞内ヌクレアーゼによって認識されず、分解の標的とならないことである。Filonovら、(2015年)Chem Biol.22(5):649~660頁。生体直交性のスカフォールドの例は、V5、F29、F30、またはそれらのバリアントを含む。同上。F29とF30は、天然に存在するリボスイッチおよびウイルスRNAに見られるのと同じ3方向ジャンクションモチーフを共有している。Shuら、(2014年)Nucleic Acids Res.42、e10.F30は、内部のターミネーター配列を除去するために変異させたF29の改変バージョンである。Filonovら、(2015年)Chem Biol.22(5):649~660頁。
【0105】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示のmRNA組成物は、生体直交性のスカフォールドに埋め込まれたRNAアプタマーを含む。いくつかの実施形態では、生体直交性のスカフォールドは、V5、F29、F30、またはそれらのバリアントである。
【0106】
いくつかの実施形態では、生体直交性のスカフォールドは、配列番号34の5’ヌクレオチド配列および配列番号35の3’ヌクレオチド配列を含み、アプタマー配列は配列番号34と配列番号35との間に配置されている。
【0107】
いくつかの実施形態では、生体直交性のスカフォールドは、配列番号39の5’ヌクレオチド配列、配列番号40の内部ヌクレオチド配列、および配列番号41の3’ヌクレオチド配列を含み、第1のアプタマー配列は配列番号39と配列番号40との間に配置され、第2のアプタマー配列は配列番号40と配列番号41との間に配置され、場合により、第1および第2のアプタマーは同一であるか、または異なるものである。
【0108】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーが埋め込まれた生体直交性のスカフォールドは、配列番号29または配列番号31のヌクレオチド配列を含む。
【0109】
他の例示的なRNAスカフォールドには、リボソームRNA(rRNA)およびリボザイムが含まれる。いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはリボソームRNAに埋め込まれている。いくつかの実施形態では、リボソームRNAは5S rRNAまたはその誘導体である。例示的な5S rRNAスカフォールドおよびその誘導体は、Stepanovら、(Methods Mol Biol.2323:75~97頁、2021年)にさらに詳細に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0110】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーはリボザイムに埋め込まれている。いくつかの実施形態では、リボザイムは触媒的に不活性である。
【0111】
いくつかの実施形態では、RNAアプタマーは、T-カセットに埋め込まれている。いくつかの実施形態では、T-カセットRNAスカフォールドは、以下の配列を含む:
【化1】
(配列番号43、ここで、太字の下線部テキストはアプタマー挿入部位に対応している。アプタマーは1つ、2つ、または3つ全てのアプタマー挿入部位に挿入されうる。いくつかの実施形態では、T-カセットRNAスカフォールドには、1、2、または3個のアプタマーが埋め込まれている。いくつかの実施形態では、アプタマーは同一である。他の実施形態では、アプタマーは異なる。さらに他の実施形態では、3つのアプタマーのうち2つが異なる。さらに他の実施形態では、2つまたは3つのアプタマーは同一である。
【0112】
いくつかの実施形態において、T-カセットRNAスカフォールドは、GAACGAAACTCTGGGAGCTGCGATTGGCAGAATTCCGTTAGCAAGGCCGCAGGACTTGCATGCTTATCCTGCGGCGCGGGCGCGTTTCCCGGGTTACGCGCCCGCCTTAAGTGTTTCTCGAGTTGGCACTTAAGCTTGCTAACGGAATTCCCCCATATCCAACTTCCAATTTAATCTTTCTTTTTTAATTTTCACTTATTTGCG(配列番号44)のポリヌクレオチド配列によってコードされる。
【0113】
T-カセットスカフォールドは、さらに詳細には、Wursterら、(Nucleic Acids Research、37(18):6214~6224頁、2009年)に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0114】
V.RNAのアフィニティー精製
1つの側面において、本明細書に開示されるのは、mRNA試料を精製するための方法である。いくつかの実施形態において、開示の方法に従って精製されたmRNAは、mRNA合成からの不純物を実質的に含まない。このような不純物には、例えば、早期に中断されたRNA配列、DNA鋳型、および/またはin vitro合成で使用される酵素試薬が含まれる。
【0115】
いくつかの実施形態において、mRNAを精製するための開示の方法は、以下の工程を含む:(a)少なくとも1つのアプタマーを含むmRNAを含む試料を、クロマトグラフィー樹脂上に固定化されたアフィニティーリガンドと接触させる工程であって、RNAアプタマーはアフィニティーリガンドに対する結合親和性を含む、工程;(b)mRNAをクロマトグラフィー樹脂から溶出させる工程;および(c)試料からmRNAを精製する工程。
【0116】
アフィニティークロマトグラフィーは、本明細書に開示のmRNA組成物および方法と共に使用される1つの精製方法である。本明細書に開示のRNAアプタマーは、選択されたアフィニティーリガンドに対する結合親和性を含む。選択されたアフィニティーリガンドは、クロマトグラフィー樹脂に固定化(例えば架橋)される。したがって、RNAアプタマーを含むmRNAは、アフィニティーリガンドを含む樹脂と結合する。クロマトグラフィー樹脂材料は、カラム内に存在することが好ましく、RNAを含む試料はカラムの上部に負荷され、溶出液はカラムの下部で回収される。本明細書に開示のアフィニティー精製法の一般的な図解については、例えば、
図1を参照されたい。
【0117】
クロマトグラフィー樹脂は、クロマトグラフィー法において固定相として使用されることが知られている任意の材料でありうる。本明細書に開示のRNAアプタマーと相互作用するアフィニティーリガンドとして使用される分子のタイプは、様々なタイプでありうる。アフィニティーリガンドの非網羅的な例は、抗体、タンパク質、オリゴヌクレオチド、色素、ボロン酸基、またはキレート化金属イオンである。固定相は、有機物および/または無機物で構成されていてもよい。
【0118】
最も広く使用されている固定相材料は、架橋アガロースおよび合成コポリマー材料のような親水性炭水化物である。これらの材料は、セルロースの誘導体、ポリスチレン、合成ポリアミノ酸、合成ポリアクリルアミドゲル、またはガラス表面を含みうる。クロマトグラフィー樹脂として使用できる材料のさらなる例は、ポリスチレンジビニルベンゼン、シリカゲル、非極性残基で修飾されたシリカゲル、またはデキストラン、セファデックス、アガロース、デキストラン/アガロース混合物、および当技術分野で知られている他のもののような、ゲルクロマトグラフィーもしくは他のクロマトグラフィー法に適した他の材料である。
【0119】
クロマトグラフィー樹脂は、RNAアプタマーが結合親和性を有するアフィニティーリガンドを用いて官能化される。いくつかの実施形態では、樹脂は、アガロース培地、またはフェニル基で官能化された膜(例えば、GE HealthcareのPhenyl Sepharose(商標)またはSartoriusのPhenyl Membrane)、Tosoh Hexyl、CaptoPhenyl、低または高置換のPhenyl Sepharose(商標)6 Fast Flow、Phenyl Sepharose(商標)High Performance、Octyl Sepharose(商標)High Performance(GE Healthcare);Fractogel(商標)EMD PropylもしくはFractogel(商標)EMD Phenyl(E.Merck、ドイツ);Macro-Prep(商標)MethylもしくはMacro-Prep(商標)t-Butyl columns(Bio-Rad、カリフォルニア);WP HI-Propyl(C3)(商標)(J.T.Baker、ニュージャージー)またはToyopearl(商標)エーテル、フェニル、もしくはブチル(TosoHaas、PA)でありうる。ToyoScreen PPG、ToyoScreen Phenyl、ToyoScreen Butyl、およびToyoScreen Hexylは、硬質メタクリルポリマービーズをベースとしている。GE HiScreen Butyl FFおよびHiScreen Octyl FFは、高流量のアガロースベースのビーズをベースにしている。好ましいものは、Toyopearl Ether-650M、Toyopearl Phenyl-650M、Toyopearl Butyl-650M、Toyopearl Hexyl-650C(TosoHaas、PA)、POROS-OH(ThermoFisher)、またはそれぞれOH、硫酸、もしくはブチルリガンドを含むCIM-OH、CIM-SO3、CIM-C4 A、およびCIM C4 HDLのようなメタクリレートベースのモノリシックカラムである(BIA Separations)。
【0120】
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィー樹脂はアフィニティーリガンドとしてプロテインAを含む。例示的なプロテインA樹脂は、Byzen Pro Protein A樹脂(MilliporeSigma;18887)、Dynabeads Protein A磁気ビーズ(ThermoFisher;10001D)、Pierce Protein A Agarose(ThermoFisher;20334)、Pierce Protein A/G Plus Agarose(ThermoFisher;20423)、Pierce Protein A Plus UltraLink(ThermoFisher;53142)、Pierce Recombinant Protein A Agarose(ThermoFisher)、POROS MabCapture A Select(ThermoFisher)を含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィー樹脂は、アフィニティーリガンドとしてストレプトアビジンを含む。例示的なストレプトアビジン樹脂は、ストレプトマイセス・アビジニー(Streptomyces avidinii)由来のStreptavidin-Agarose(MilliporeSigma;S1638)、Pierce Streptavidin Plus UltaLink Resin(ThermoFisher;53117)、Pierce High Capacity Streptavidin Agarose(ThermoFisher;20357)、Streptavidin 6HC Agarose Resin(ABT;STV6HC-5)、Streptavidin Resin-Amintra(Abcam;ab270530)を含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィー樹脂はアフィニティーリガンドとしてグルタチオン(GSH)を含む。例示的なGSH樹脂は、Glutathione Resin(GenScript;L00206)、Pierce Glutathione Agarose(ThermoFisher;16102BID)、Glutathione Sepharose 4B GST-tagged Protein Resin 9Cytiva;17075605);Glutathione Affinity Resin-Amintra(Abcam;ab270237)を含む。
【0123】
特定の実施形態において、本明細書に開示の精製プロセスは、mRNA合成中またはmRNA合成後に実施されうる。例えば、mRNAを本明細書に記載のように精製してから、キャップおよび/またはテールをmRNAに付加してもよい。いくつかの実施形態では、mRNAはキャップおよび/またはテールがmRNAに付加された後に精製される。いくつかの実施形態では、mRNAはキャップの付加後に精製される。いくつかの実施形態では、mRNAはキャップおよび/またはテールがmRNAに付加される前と後の両方で精製される。一般に、本明細書に記載の精製工程は、mRNA合成の各工程の後に、場合により透析および/または濾過などの他の精製プロセスと一緒に行ってもよい。例えば、mRNAは最初の合成後に透析を受けて短鎖を除去し(例えば、テールの有無にかかわらず)、その後、本明細書に記載の精製に供してもよい。本明細書に開示の精製方法は、mRNA試料に複数回適用してもよい。
【0124】
VI.ベクター
1つの側面において、本明細書に開示されるのは、本明細書に開示のmRNA組成物を含むベクターである。目的のタンパク質をコードする核酸配列(例えば、治療用ポリペプチドをコードするmRNA)は、多くのタイプのベクター中にクローニングされる。例えば、核酸はプラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、およびコスミドを含むが、これらに限定はされないベクター中にクローニングされる。特に注目されるベクターは、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、シークエンシングベクター、およびin vitro転写に最適化されたベクターを含む。
【0125】
1つの実施形態では、ベクターは宿主細胞内でmRNAを発現させるために使用される。別の実施形態では、ベクターはIVTの鋳型として使用される。治療用途に適した最適に翻訳されたIVT mRNAの構築は、Sahinら、(2014年)、Nat.Rev.Drug Discov.13、759~780頁;Weissman(2015年)、Expert Rev.Vaccines 14、265~281頁に詳細に開示されている。
【0126】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示のベクターは、5’から3’の向きに少なくとも以下のものを含む:RNAポリメラーゼプロモーター;5’UTRをコードするポリヌクレオチド配列;ORFをコードするポリヌクレオチド配列;3’UTRをコードするポリヌクレオチド配列;および少なくとも1つのRNAアプタマーをコードするポリヌクレオチド配列。いくつかの実施形態では、本明細書に開示のベクターはまた、ポリA配列および/またはポリアデニル化シグナルをコードするポリヌクレオチド配列も含む。
【0127】
様々なRNAポリメラーゼプロモーターが当技術分野で知られている。1つの実施形態では、プロモーターはT7 RNAポリメラーゼプロモーターである。他の有用なプロモーターは、T3およびSP6 RNAポリメラーゼプロモーターを含むが、これらに限定されるものではない。T7、T3およびSP6プロモーターのコンセンサスヌクレオチド配列は当技術分野で知られている。
【0128】
また、本明細書に開示のベクターまたはRNA組成物を含む宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞)も本明細書に開示される。
【0129】
ポリヌクレオチドは、多数の異なる方法のいずれか、例えば、エレクトロポレーション(Amaxa Nucleofector-II(Amaxa Biosystems、ケルン、ドイツ))、(ECM 830(BTX)(Harvard Instruments、ボストン、マサチューセッツ)またはGene Pulser II(BioRad、デンバー、コロラド)、Multiporator(Eppendort、ハンブルク、ドイツ)、リポフェクションを使用したカチオン性リポソーム媒介トランスフェクション、ポリマーカプセル化、ペプチド媒介トランスフェクション、「遺伝子銃」のような微粒子銃送達系(例えば、Nishikawaら、(2001年)、Hum Gene Ther.12(8):861~70頁を参照)、またはTransIT-RNA transfection Kit(Mirus、マジソン、ウィスコンシン)を含むがこれらに限定されない市販の方法を使用して標的細胞中に導入される。
【0130】
宿主細胞中にポリヌクレオチドを導入するための化学的な手段は、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズのようなコロイド分散系、ならびに水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質ベースの系を含む。In vitroおよびin vivoでの送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0131】
外因性核酸を宿主細胞に導入するため、または細胞を本発明のインヒビターに曝露するために使用される方法に関係なく、宿主細胞におけるmRNA配列の存在を確認するために、様々なアッセイが実施されうる。そのようなアッセイは当業者にはよく知られている。
【0132】
VII.医薬組成物
本発明に従って精製されたRNAは、例えばワクチンとして使用するための医薬組成物の成分として有用である。これらの組成物は典型的には、RNAと薬学的に許容される担体を含む。本発明の医薬組成物はまた、低分子免疫増強剤(例えば、TLRアゴニスト)などの1つまたはそれ以上の追加成分も含みうる。本発明の医薬組成物は、リポソーム、水中油型エマルション、または微粒子のようなRNAのための送達系も含みうる。いくつかの実施形態において、医薬組成物は脂質ナノ粒子(LNP)を含む。1つの実施形態では、組成物はLNP内にカプセル化された抗原をコードする核酸分子を含む。いくつかの実施形態において、LNPは少なくとも1つのカチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、カチオン性脂質、ポリエチレングリコール(PEG)結合(PEG化)脂質、コレステロールベースの脂質、およびヘルパー脂質を含む。
【0133】
本発明をよりよく理解するために、以下の実施例を示す。これらの実施例は説明のためのみのものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきものではない。
【0134】
実施例
特定の実施形態に関する前述の説明は、本開示の一般的な性質を十分に明らかにするものであるため、当業者であれば、当業者が備えている技能の範囲内で知識を適用することにより、過度な実験を行うことなく、本開示の一般的な概念から逸脱することなく、そのような特定の実施形態を様々な用途向けに容易に修正および/または適合させることができる。したがって、そのような適合および修正は、本明細書に提示された教示および指針に基づいて、開示されている実施形態の均等物の意味および範囲内にあることが意図されている。本明細書における語法または用語は説明を目的とするものであり、限定するものではないため、本明細書における用語または語法は、教示および指針に照らして当業者によって解釈されるべきであることを理解されたい。
【実施例1】
【0135】
アプタマー合成
2つのRNAアプタマー配列を化学合成した。第1のRNAアプタマーヌクレオチド配列は、陰性対照として機能するランダム配列アプタマーであった(配列番号1)。第2の配列は、ストレプトアビジンに結合することが以前に報告されているS1mアプタマーである(配列番号2)。Bachlerら、(1999年)、RNA 5(11):1509~1516頁;Srisawat,C.とEngelke,D.R.、(2001年)、RNA 7(4):632~641頁;Li,Y.とAltman、S.、Nucleic Acids Res.(2002年)、30(17):3706~3711頁。ランダムアプタマー(配列番号1)およびS1mアプタマー(配列番号2)のヌクレオチド配列を以下に示す。
【0136】
【実施例2】
【0137】
ストレプトアビジンセファロースビーズアフィニティー精製およびRNA定量
アプタマーの結合を、セファロースビーズアフィニティー精製ストラテジーを使用して分析し、それに続き、RNA回収率を定量した。
【0138】
RNAアプタマーと結合用のストレプトアビジンビーズを調製する方法には、以下の工程が含まれる:(1)ストレプトアビジンセファロースビーズの調製。ビーズ保存液を除去するため、20μLのストレプトアビジンセファロースビーズ(1試料あたり)を600×g、1分間、4℃でスピンし、結合バッファー(1試料あたり500μL)で2回洗浄した。続いて、ビーズをRNasin Ribonuclease Inhibitor(3μL/100ユニット)を含む20μLの結合バッファーに再懸濁させ、その後、氷上で15分間インキュベートした。(2)RNAアプタマーの調製。2.5μgのRNAアプタマーを10μLの結合バッファーに再懸濁させた。56℃で5分間、37℃で10分間加熱した後、室温で5分間インキュベートしてアプタマーの構造をリフォールディングさせることにより、RNAアプタマーのリフォールディングを行った。RNAアプタマー調製手順の最後に、総RNAアプタマー収量の対照(入力対照)として、結合バッファーと1:2で混合した2μLのランダムアプタマーおよびS1mアプタマーを回収した。(3)インキュベーション条件。mRNA(2.5μg)アプタマーを含む10μLのリフォールディングさせたアプタマーをビーズに添加し、ローテーター上、4℃で2時間インキュベートした。続いて、ビーズを100μLの結合バッファーで3回洗浄し、アプタマーの二次構造を維持するため、残りの手順の間は氷上に保持した。(4)ビーズからのRNAアプタマーの溶出。溶出は、以下の手順で250μLのフェノール系試薬を使用して行った。50μLの冷クロロホルムをビーズに加え、10秒間激しく振盪した後、12,000×gで15分間スピンした(4℃)。RNAを含む各試料の水性上相(1試料あたり約125μL)をMonarchクリーンアップカラムに直接加え、製造元の指示に従った(Monarch RNA Cleanup Kit;NEB)。RNAを各Monarchカラムから50μLのDEPC処理水に溶出させた。ストレプトアビジンアフィニティー精製後のRNA濃度は、製造元の仕様によって設定されたパラメーターを用いてNanodropで定量した。
【0139】
実施例1で調製したアプタマーをストレプトアビジンセファロースビーズでアフィニティー精製し、溶出させ、溶出液中のRNA回収量を上記の方法を用いて定量した。ランダムアプタマー配列の試料は、RNAの回収をもたらさなかった(Nanodropの検出限界は2.5ng/μL)。対照的に、S1mアプタマーの試料は、ストレプトアビジンビーズとのインキュベーション前に回収したS1mアプタマーRNA試料(約9,600ng/μL)に対して、約13%のRNA回収率(1,250ng/μL)を示した(
図2)。この結果は、実施例1で設計したS1mアプタマーがストレプトアビジンでアフィニティー精製でき、よって、ストレプトアビジンアフィニティーベースの精製系における機能性タグとして適切となりうることを示している。
【実施例3】
【0140】
複数コピー(4×)アプタマーでタグ付けされたmRNAの合成とアフィニティー精製
結合親和性に対するアプタマーのコピー数の影響を分析するために、複数コピーアプタマーをmRNAに導入し、アプタマーを含まないmRNAと比較した。
【0141】
タンデム4リピート構成におけるS1mアプタマーの配置(4×S1m;配列番号5)は、セファロースビーズに対してより高い親和性を有することが以前に示されている。LeppekとStoecklin、(2014年)Nuc.Acids Res.42(2):e13。RNAアプタマーのコピー数が結合親和性に及ぼす影響を調べるために、in vitro転写(IVT)用のcDNA鋳型を生成するDNAプラスミドを構築して、mRNAにタグ付けされた4×S1mアプタマーが作製された。同上。
【0142】
DNAプラスミドpAM14およびpAM15を、以前に記載されたようにして、T7プロモーターによって駆動されるマウスTNFαの3’UTR由来のAUリッチエレメント(ARE)RNAをコードする53bpヌクレオチド配列を含むように改変した。Stoecklin Gら、(2004年)、EMBO J23(6):1212~1324頁;LeppekとStoecklin、(2014年)Nuc.Acids Res.42(2):e13。pAM14(2,496bp)は、pAM15(2,168bp)と同じベクター骨格に由来するものであるが、5’から3’方向に30merのポリAテールが隣接する4×S1mアプタマーを含んでいる。
【0143】
IVT用のcDNA鋳型(配列番号5)を得るために、TNFα-53-4×S1mのヌクレオチド配列をpAM14プラスミドからAM5/6プライマー対で増幅させた。陰性対照のcDNA鋳型は、プラスミドpAM15から同じAM5/6プライマー対を用いて増幅させて、5’UTRおよび3’UTR隣接部を含む配列(それぞれ配列番号3および4)を生成した。AM5/6プライマー結合部位の位置は、
図3に示されているように、pAM14およびpAM15のプラスミドマップに注釈が付けられている。
【0144】
その後、市販のRNA試薬と手順を用いて、実験群、TNFα-53-4×S1m mRNA、および対照群のIVT反応を実施した。(HiScribe T7 ARCA mRNA synthesis Kit with tailing、NEB)。キャップおよびテール反応の後、濾過したmRNAを使用するまで-20℃で保存した。
【0145】
5’UTR、3’UTR、および4×S1mアプタマーのヌクレトチド配列を以下に示す。
【0146】
【0147】
TNFα-53-4×S1mアプタマーmRNAのアフィニティー結合を分析するために、アプタマーmRNAをストレプトアビジンセファロースビーズでアフィニティー精製し、溶出させ、溶出液中のRNA回収量を上記の方法を用いて定量した。ストレプトアビジンセファロースビーズとTNFα-53でタグ付けされた4×S1m mRNAまたはTNFα-53 mRNA陰性対照試料との結合親和性を評価し、比較した。アフィニティー精製したTNFα-53でタグ付けされた4×S1m mRNAは、ストレプトアビジンビーズとのインキュベーション前に回収した4×S1m mRNA試料(約2,800ng/μL)に対して、54%のRNA回収率(1,500ng/μl)を示した(
図4)。対照的に、アフィニティー精製したTNFα-53陰性対照のRNA回収率はわずか2%であった。この結果は、複数のアプタマーコピー(例えば、4×S1m)を導入することで、mRNAのアフィニティー精製効率を改善できる可能性を示している。
【実施例4】
【0148】
RNAスカフォールドに埋め込まれたアプタマーでタグ付けされた異なるmRNAの合成とアフィニティー精製
下流のmRNAアフィニティー精製プロセスにおけるtRNAスカフォールドに埋め込まれたRNAアプタマーの効率をテストするために、4つのベクターを構築した。
【0149】
Smアプタマーを分析のために選択した。Smアプタマー(配列番号6)およびtRNA-Smアプタマー(配列番号7)のヌクレオチド配列を以下に示す。
【0150】
【0151】
目的のプラスミドのマップが
図5に示されている。簡単に説明すると、これらは:(1)pAM22、メタノサーモバクター・サームオートトロフィカス(Methanothermobacter thermautotrophicust)のtRNA
GLN2スカフォールドを保持する対照コンストラクト(pAM22(tRNA);プラスミドマップには、Gln2アンチコドンループに対するアンチコドンアームの位置に注釈が付けられている)、(2)pAM20、Smアプタマーを保持する対照コンストラクト(pAM20(Sm))、(3)pAM21、tRNAアンチコドンアーム配列が両側に隣接するアンチコドンループtRNA
GLN2配列の一部に埋め込まれたSmアプタマー配列を保持する実験用コンストラクト(pAM21(tRNA Sm)、および(4)pAM23、Sm-tRNA
GLN2コンストラクトのタンデム2リピート構成を保持する実験用コンストラクト(2×tRNA Sm)である。各タグはT7プロモーターにより駆動された。
【0152】
IVT用のcDNA鋳型を得るために、実施例3に記載のようにして、アプタマータグのヌクレオチド配列をフランキングプライマーにより増幅させた。その後、市販のRNA試薬と手順を用いて、実験群、tRNA Sm、2×tRNA Sm mRNA、および対照群のIVT反応を実施した。(HiScribe T7 ARCA mRNA Kit with tailing、NEB)。キャップおよびテール反応の後、濾過したmRNAを使用するまで-20℃で保存した。
【0153】
Sm、tRNA、tRNA-Sm、および2×tRNA Smアプタマータグのアフィニティー結合を分析した。実施例2と同じ結合および溶出方法を適用した。
【0154】
図6に示されているように、tRNA(pAM22)タグまたはSmアプタマー(pAM20)タグのいずれを用いても、同程度のRNA回収率が得られたが、これは、テストした実験条件下における非特異的な結合を指し示している。対照的に、tRNAスカフォールドに1コピー(pAM21)または2コピー(pAM23)埋め込まれたSmアプタマーを使用すると、入力RNAに対して60%のRNA回収率が得られ、精製効率が有意に向上することが示された。この結果は、tRNAのようなRNAスカフォールド構造を使用することで、アプタマータグの結合効率が向上しうることを示している。
【実施例5】
【0155】
複数コピーアプタマー(eHGFP-4×S1m)でタグ付けされたhEGFPをコードするmRNAの合成とアフィニティー精製
本例は、RNAアプタマータグを含めることがmRNAの発現とタンパク質の翻訳に及ぼす影響を研究するものである。アプタマーはmRNAの一部となるように設計されるため、アプタマータグが翻訳に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0156】
翻訳効率に対するRNAアプタマーの潜在的な影響をテストするために、ヒト化強化緑色蛍光タンパク質(hEGFP;以下に示す配列番号8)のORFを5’および3’UTR配列で挟み、T7プロモーターにより駆動させ、5’から3’の方向に30merのポリAテールで終結するプラスミドを構築した(pAM11)。実験用プラスミドpAM8は、4×S1mアプタマー配列(配列番号5)を3’UTRの下流、ポリAテールの直前に導入することにより作製した。
図8はpAM11およびpAM8のプラスミドマップを示している。
【0157】
【0158】
IVT cDNA鋳型を得るために、hEGFPまたはhEGFP-4×S1mアプタマーでタグ付けされたヌクレオチド配列をAM5/6プライマー対で増幅させた。プライマー対の設計および配向は、実施例3において開示したストラテジーと同様である。IVT反応は、HiScribe(商標)T7 ARCA mRNA Kitを用いて、製造元の指示に従って実施した。追加のポリアデニル化工程を避けるため、IVT用の鋳型DNAで30merのアデノシンテール部を作製した。
【0159】
図9のアガロースゲルに示されているように、得られたmRNAは期待されるサイズ(レーン1 hEGFPおよびレーン2 hEGFP-4×S1m)を有し、良質であった。
【0160】
アフィニティー結合に対する4×S1mアプタマーの効果をテストするために、hEGFPまたはhEGFP-4×S1mを含むmRNAをそれぞれストレプトアビジンセファロースビーズでアフィニティー精製した。実施例2で概説したのと同じ結合および溶出方法を適用した。
【0161】
4×S1mアプタマーでタグ付けされたhEGFPは、入力対照試料と比較して63%のRNA回収率をもたらし、これはアプタマー無しのhEGFPのRNA回収率よりも有意に高かった(
図10)。
【実施例6】
【0162】
複数コピーアプタマー(eHGFP-4×S1m)でタグ付けされたmRNAのタンパク質翻訳と機能の分析
タンパク質の翻訳と機能に対するRNAアプタマータグの効果を、細胞内のGFP発現を直接可視化することで評価した。この効果をテストするため、pAM8およびpAM11から生成されたhEGFP mRNAをアフィニティー精製後に単離し、HEK293FT細胞にトランスフェクトした。製造元の指示に従ってMirus TransIT Transfection試薬を使用し、0.5μgのRNAを24ウェルプレートのHEK293FT細胞にトランスフェクトした。24時間後、蛍光顕微鏡で細胞を調査した。
【0163】
図11に示すように、4×S1mアプタマーを含むmRNAは、アプタマーを含まないmRNA(左パネル)よりも低い強度のシグナルを生じる(右パネル)。したがって、ストレプトアビジンアプタマータグ(4×S1m)を4コピー導入すると、hEGFP発現の翻訳効率の減少が導かれうると思われる。この結果は、ある種のアプタマーをmRNAに導入すると、タンパク質の翻訳に悪影響を及ぼしうることを示している。
【実施例7】
【0164】
複数コピーアプタマーでタグ付けされ、長くしたポリAテールを含むmRNAのタンパク質翻訳と機能の分析
短いポリAテール(30merのアデノシン)が、アプタマー配列のために翻訳効率に影響を及ぼしているのではないかという仮説が立てられた。翻訳効率に対するポリAテールの影響を調べるため、hEGFP-4×S1mアプタマーでタグ付けされたmRNAを、ポリ(A)ポリメラーゼ(NEB、M0276S)を用いた追加のポリアデニル化反応に供した。
【0165】
ポリアデニル化は、アガロースゲル上でのmRNA産物のシフトによって確認された(データは示さず)。mRNAを上記のようにしてアフィニティー精製し、より長いポリAを有するmRNAをHEK293細胞にトランスフェクトした。
図12に示すように、より長いポリAテールを持つhEGFP-4×S1mアプタマーでタグ付けされたmRNAは、より短い(30mer)ポリAテールを持つmRNAよりも有意に高いEGFP発現を示した。この結果は、ポリAテールの長さが、特定のアプタマー配列を含むmRNAの翻訳効率に影響を与えうることを示唆している。
【実施例8】
【0166】
RNA回収におけるアプタマーの位置の分析
アプタマー配列はmRNAの一部となるように設計されており、潜在的なアプタマーの構造またはその配置が発現に悪影響を及ぼす可能性がある。そのような影響を理解するために、アプタマーでタグ付けされたmRNAコンストラクトを設計して、(1)他のトポロジー的順序のmRNA成分に対するアプタマーの位置、(2)アプタマーのコピー数(すなわちアプタマーの価数)、(3)周囲のスカフォールディング(すなわち安定化tRNAスカフォールド)、または
図7に示すような構成の組み合わせをテストした。
【0167】
具体的には、この例では、4×S1mアプタマー配列の位置の変更が、mRNA内の他のトポロジー的順序の部分に対し、mRNAアフィニティー精製後のRNA回収に影響を与えるかどうかを調べる。設計されたmRNAコンストラクトのパネルを
図13Aに示す。
【0168】
とりわけ、4×S1mアプタマーを、(1)5’UTRの直に上流、(2)3’UTRの直に上流、(3)3’UTR中、(4)3’UTRの直に下流、または(5)ポリA配列の3’末端への埋め込みのいずれかに局在化させた。
【0169】
cDNA鋳型を生成し、IVTを使用して特定のアプタマー構成を持つmRNAを生成した。mRNAは、ストレプトアビジンセファロースビーズを使用してアフィニティー精製し、実施例2に記載されているようにして定量した。
【0170】
テストした各アプタマーでタグ付けされたmRNAのアフィニティー精製RNA収量(アフィニティー精製を行わなかった入力試料に対する、ストレプトアビジン結合および溶出工程後の相対値)(未結合対溶出)を
図13Bに示し、各試料(未結合および溶出)の平均値および標準偏差値を以下の表1に示す。
【0171】
【0172】
図13Bおよび表1に示すように、4×S1mアプタマーを含むmRNAは、アプタマーの位置に関係なく、アプタマーを欠く対照mRNAと比較して特異的な結合を生じた。この結果は、4×S1mアプタマーをmRNAの複数の位置のうちの1つに導入しても、アフィニティー精製収率には影響しないことを示している。
【実施例9】
【0173】
RNA回収におけるアプタマーの価数の分析
mRNA転写産物内のアプタマー位置と同様に、アプタマーの価数(すなわちアプタマーのコピー数)は、RNA回収に影響を与えうる別の変数である。実施例3で行った分析をさらに拡張するため、S1mアプタマーの1~6個のタンデムリピートコピー(1×S1mから6×S1mと表示)を含むようにアプタマーでタグ付けされたmRNAコンストラクトのパネルを設計した。この試験では、アプタマータグを3’UTRの後に配置した。
【0174】
cDNA鋳型を生成し、IVTを使用して、特定のアプタマーの価数を持つmRNAを生成した。mRNAは、ストレプトアビジンセファロースビーズを用いて、アフィニティー精製し、実施例2に記載されているようにして定量した。
【0175】
テストした各アプタマーの価数のmRNAコンストラクトのアフィニティー精製RNA収量(未結合対溶出)を
図14に示し、各試料(未結合および溶出)の平均値および標準偏差値を以下の表2に示す。
【0176】
【0177】
図14に示すように、精製効率は3コピーのアプタマー(3×S1m)まで上昇し、それ以降は後続のコピー(4×S1m~6×S1m)を加えてもRNAアフィニティー精製収率の改善は見られなかった。この結果は、アプタマーの価数を上げると結合親和性が向上することを示している。
【実施例10】
【0178】
RNA回収における代替的なmRNAの文脈でのアプタマー結合の分析
アフィニティー精製において効率的な結合を提供するアプタマーが、代替的なRNAの文脈において機能的であることを実証するため、実施例3に示されているものとは異なるタンパク質コード領域(シンガポール’16ヘマグルチニン)と異なるUTRをコードするmRNAのパネルを設計した。
【0179】
試験した各コンストラクトのストレプトアビジンアフィニティー結合精製プロセス後のRNA収量(未結合対溶出)を
図15に示す。各試料(未結合および溶出)の平均値および標準偏差値を以下の表3に示す。
【0180】
【0181】
図15に示すように、アプタマーは、隣接配列の変化にもかかわらず、ストレプトアビジンセファロースビーズに対する特異的な結合を提供する。この結果は、本明細書に開示のストレプトアビジンアプタマーmRNAの設計が、代替的なRNAの文脈においてロバストであることを実証している。
【実施例11】
【0182】
タンパク質の翻訳におけるアプタマーの位置の分析
mRNA翻訳動態がmRNA転写産物内のアプタマーの配置によって影響を受けるかどうかを理解するために、実施例8で設計したコンストラクトのパネルからのmRNAをmRNA翻訳効率アッセイで評価し、GFPの発現を検出した。
【0183】
簡単に説明すると、ヒト化EGFP(hEGFP)をコードするmRNAをin vitro転写(IVT)によって生成した後、トランスフェクション試薬と混合した。次に、混合物をHela細胞またはヒト骨格筋(HSKMc)細胞にアプライした。24時間のインキュベーション後、トランスフェクトされた細胞のGFP蛍光をフローサイトメトリー解析によって定量した。細胞内のGFP蛍光強度は、hEGFPをコードするmRNA転写産物の翻訳効率に正比例する。
【0184】
以下の工程は、mRNA翻訳効率アッセイのトランスフェクション手順を説明するものである:
(1)細胞株の調製。HelaまたはHSKMc細胞株を12ウェルプレート中の完全増殖培地に播種し、80~90%コンフルエントまで増殖させた。Hela 229細胞の培地条件はDMEMおよび10%のFBSであり、HSK Mc細胞の培地条件は199培地、20%のFBS、および1%のPenStrepであった。
(2a)HskMc細胞株のためのMirus TransITトランスフェクション試薬を用いたmRNAの調製。TransIT-mRNAトランスフェクション試薬およびmRNAブースト試薬を使用前に室温まで温め、軽くボルテックスした。mRNAトランスフェクションのために製造元のプロトコールに従い、テストする各mRNAのチューブに400μLのOpti-MEMに対して5μgのmRNA(500ng/μLのmRNAを10μL)を含めた。陰性対照では、mRNAの代わりに培地を添加した。その後、8μLのmRNA Boost Reagentを加え、ピペッティングによりチューブをよく混合した。次に、8μLのTransit mRNA Reagentを加え、よく混合した後、室温で2~5分間インキュベートし、複合体が形成されるのに十分な時間をとった。
(3a)HskMc細胞株のトランスフェクション。106.5μLのmRNAミックスを12ウェルプレートの各ウェルに滴下して添加し(約1.25μg mRNA/ウェル;各コンストラクトにつき、3重にウェルをセットアップ)、軽く揺すってTransIT-mRNA Reagent:mRNA Boost:RNA複合体を均一に分散させた。続いて、プレートを24時間インキュベートした。
(2b)Hela細胞株に対するLipofectamine MessengerMaxトランスフェクション試薬を用いたmRNAの調製。mRNAトランスフェクションチューブの製造元のプロトコールに従い、312μLのOpti-MEMに4μgのmRNA(500ng/μLのmRNAを8μL)を加えてテストされる各mRNAを調製し、よく混合した。陰性対照では、mRNAの代わりに培地を添加した。別のチューブで、8μLのMessengerMaxトランスフェクション試薬を312μLのOpti-MEMに加え、よく混合した。その後、mRNAチューブの容量をトランスフェクション混合チューブに加え、室温で15分間インキュベートし、複合体が形成されるのに十分な時間をとった。
(3b)Hela細胞株のトランスフェクション。2bで説明した160μL/ウェルのmRNAミックスを12ウェルプレートの各ウェルに滴下して添加した(約1μg mRNA/ウェル;各コンストラクトにつき、3重にウェルをセットアップ)。続いて、プレートを24時間インキュベートした。
【0185】
以下の工程は、mRNA翻訳効率アッセイで使用されるフローサイトメトリー解析のための細胞染色およびソーティング手順を説明するものである:
(1)細胞の採取。細胞単層から培地を吸引し、1mlのPBSで洗浄した後、1ウェルあたり250μLの1×Accutaseで解離させ、室温で5分間インキュベートした。250μLのPBSを各ウェルに添加し、細胞を1.5mlの微量遠心チューブ中に採取した。
(2)細胞染色。Live/Dead染色は、製造元の説明書(Live/Dead Fixable Far Red Dead Cell Stain Kit)に従って全試料に対して実施した。細胞の固定はオプショナルであったが、必須の工程ではなかった。続いて、細胞を1mlのPBSで洗浄することによって過剰な染色を除去し、20℃で5分間300rcfを実行して細胞をペレットにし、古い上清を除去し、試料を400μLの染色バッファー(BD Biosciences)中に再懸濁した。
(3)補正ビーズ。補正対照試料は、製造元の指示に従って、live/dead反応性ArC補正ビーズを調製するか、またはGFP BrightComp eBeadsを使用して作製した。
(4)FACS解析。HskMcおよびHela細胞株については、130μmのソーティングチップを使用した。非染色ビーズおよび染色補正ビーズを最初に流して、FSC/SSC電圧設定を調整し、ゲートウィンドウを設定した。
【0186】
図16A~
図16Cおよび
図17A~
図17Bに示すように、mRNA内のアプタマーの配置が異なるアプタマーでタグ付けされたmRNAのmRNA翻訳効率を、それぞれHskMc細胞株およびHela細胞株のいずれかで評価した。発現は、バックグラウンド以上のGFPシグナルを持つ細胞の総数(%GFP+Cells)と、あるシグナル強度の閾値以上の細胞の数(%high GFP+Cells)として定量した。
【0187】
全長mRNA配列内のアプタマータグの位置は、翻訳効率に有意な影響を与える。アプタマーをmRNAの5’末端に配置すると翻訳が排除されるが、それ以外の位置では様々なレベルの翻訳が可能であった。アプタマーを3’UTRの後に配置すると、GFP強度の増加によって示されるように、翻訳効率が最も高くなった。この傾向は、HskMcとHelaの両細胞株で再現可能であった。
【実施例12】
【0188】
翻訳効率に及ぼす長くしたポリAテール長の分析
実施例7では、ポリAテールの長さを長くすることで、アプタマーでタグ付けされたmRNAの翻訳効率が高まることを実証した。
【0189】
翻訳増強の量を定量するために、長くしたポリAテールをS1mアプタマーでタグ付けされたmRNAに付加し、実施例11に記載のmRNA翻訳効率アッセイでテストした。IVTに使用されるベクターには、コード化されたポリAテール、具体的には60個のAを持つセグメント化されたポリAテール、NsiI制限酵素切断部位、そしてさらに60個のAが含まれていた。
上記のベクターから生成されるmRNAは全て、セグメント化されたポリAテールを含み、ARCAでキャップされていた。
図18の右側の2つの条件には、1μlの大腸菌ポリ(A)ポリメラーゼ(NEB、M0276)をバッファーと追加のATPとともに45分間インキュベートする追加のポリアデニル化工程が含まれており、典型的には、
図18に示した各RNAの末端におよそ200個のAが追加されることになるが、GFP陽性Hela細胞の総数(パーセントで表示)は、対照と比較して、長くしたポリAテールを持つアプタマーでタグ付けされたmRNAの方が有意に多くなっていた。この結果は、アプタマーでタグ付けされたmRNAのポリAテール長を長くすることで、細胞内の下流のmRNA翻訳動態を改善できることを確認している。
【実施例13】
【0190】
RNAスカフォールドに埋め込まれたアプタマーでタグ付けされたmRNAのRNA回収および翻訳効率の分析
実施例5の所見を確認し、拡張するために、tRNAスカフォールドタグに埋め込まれたS1mアプタマー(実施例5参照)を、ストレプトアビジンアフィニティー精製後のRNA回収およびmRNA翻訳効率に関して、2×S1mおよび4×S1mアプタマーでタグ付けされたmRNAと比較した。
【0191】
図19Aに示すように、S1mアプタマーを囲む安定化配列の追加により、4×S1mアプタマーでタグ付けされたmRNAの結合効率と同等のRNA精製収率が得られ、RNAスカフォールドがアフィニティー精製収率を有意に増加させることが実証された。tRNAスカフォールドによるS1mアプタマーの安定化は、
図19Bに示すようにmRNAの翻訳効率に影響を与えなかった。結果を以下の表4にまとめる。
【0192】
【実施例14】
【0193】
生体直交性のRNAスカフォールド中で安定化されたアプタマーでタグ付けされたmRNAの合成とアフィニティー精製
tRNAをスカフォールドとするアプタマーは、細菌細胞および哺乳動物細胞中でのエンドヌクレアーゼ切断により、RNAの安定性が低下することがよくある。Filonovら、(2015年)Chem Biol.22(5):649~660頁。tRNAスカフォールドの代替物は、生体直交性のスカフォールドである。生体直交性のスカフォールドは、V5、F29、またはF30スカフォールドのように、細胞内ヌクレアーゼに認識されにくく、分解の標的となりにくい。同上。
【0194】
生体直交性のスカフォールドがS1mアプタマーを安定化させ、下流のmRNAアフィニティー精製プロセスの効率を改善しうるかどうかをテストするために、1×S1mアプタマーを安定化させるF30スカフォールド(F30-1×S1mアプタマー)または2×S1mアプタマーを安定化させるF30スカフォールド(F30-2×S1mアプタマー)のいずれかを含む2つのベクターを構築した。F30-1×S1mアプタマーおよびF30-2×S1mアプタマーの配列を以下に示す。
【0195】
F30-1×S1mアプタマーをコードするDNA配列(下線を付した太字がF30セグメント):
【化2】
【0196】
F30-1×S1mアプタマー(下線を付した太字がF30セグメント):
【化3】
【0197】
F30-2×S1mアプタマーをコードするDNA配列(下線を付した太字がF30セグメント):
【化4】
【0198】
F30-2×S1mアプタマー(下線を付した太字がF30セグメント):
【化5】
【0199】
他の目的のアプタマーがF30スカフォールドに容易に挿入されうる。1×アプタマー構成では、左のF30配列と「1×右」のF30配列が1つのアプタマーに隣接する。2×アプタマー構成では、左のF30配列と中央のF30配列が第1のアプタマーに隣接し、中央のF30配列と「2×右」のF30配列が第2のアプタマーに隣接する。F30-1×アプタマーおよびF30-2×アプタマーの配列を以下に示す。
【0200】
F30-1×アプタマーをコードするDNA配列:
TTGCCATGTGTATGTGGG(左F30配列、配列番号32)-アプタマー配列-CCCACATACTCTGATGATCCTTCGGGATCATTCATGGCAA(「1×右」F30配列、配列番号33)
【0201】
F30-1×アプタマー:
UUGCCAUGUGUAUGUGGG(左F30配列、配列番号34)-アプタマー配列-CCCACAUACUCUGAUGAUCCUUCGGGAUCAUUCAUGGCAA(「1×右」F30配列、配列番号35)
【0202】
F30-2×アプタマーをコードするDNA配列:
TTGCCATGTGTATGTGGG(左F30配列、配列番号36)-アプタマー配列-CCCACATACTCTGATGATCC(中央F30配列、配列番号37)-アプタマー配列-GGATCATTCATGGCAA(「2×右」F30配列、配列番号38)
【0203】
F30-2×S1mアプタマー(下線を付した太字がF30セグメント):
UUGCCAUGUGUAUGUGGG(左F30配列、配列番号39)-アプタマー配列-CCCACAUACUCUGAUGAUCC(中央F30配列、配列番号40)-アプタマー配列-GGAUCAUUCAUGGCAA(「2×右」F30配列、配列番号41)
【0204】
F30-1×S1mおよびF30-2×S1mアプタマーmRNAのアフィニティー結合を分析するために、アプタマーmRNAをストレプトアビジンセファロースビーズでアフィニティー精製し、溶出させ、溶出液中のRNA回収量を上記の方法を用いて定量した。ストレプトアビジンセファロースビーズとタグ付けされていないmRNA(アプタマー無し対照)、4×S1mアプタマー、F30-1×S1mアプタマー、またはF30-2×S1mアプタマーでタグ付けされたmRNAのいずれかとの結合親和性を評価し、比較した。
【0205】
以下の表5にも示されているように、アフィニティー精製されたF30-1×S1mおよびF30-2×S1m mRNAは、ストレプトアビジンビーズとのインキュベーション前に回収した入力試料に対して、約30~40%のRNA回収率をもたらした(
図20B)。
【0206】
【0207】
溶出されたF30-2×S1mおよびF30-1×S1mでタグ付けされたmRNAからの全RNA回収率は、それぞれ約900ng/μLおよび800ng/μLであった(
図20C)。対照的に、アフィニティー精製溶出陰性対照では、RNA回収率はわずか200ng/μLであった。
【0208】
この結果は、アプタマー(例えば、S1mアプタマー)を安定化させるために生体直交性のスカフォールド(すなわち、F30)を導入することが、mRNAのアフィニティー精製効率を向上させるために使用できる可能性があることを示している。
【0209】
本開示の他の実施形態は、本明細書に開示された明細書および本開示の実務を考慮すれば、当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は、例示的なものとしてのみ考慮されることが意図されており、本開示の真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって指し示される。
【0210】
本明細書で引用する全ての特許および刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0211】
配列
【0212】
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【表10-4】
【表10-5】
【表10-6】
【表10-7】
【表10-8】
【表10-9】
【表10-10】
【表10-11】
【表10-12】
【表10-13】
【表10-14】
【表10-15】
【表10-16】
【表10-17】
【表10-18】
【表10-19】
【表10-20】
【表10-21】
【表10-22】
【表10-23】
【表10-24】
【表10-25】
【表10-26】
【配列表】
【国際調査報告】