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特表2024-534427血栓塞栓性障害を予防かつ治療するためのミルベキシアン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】血栓塞栓性障害を予防かつ治療するためのミルベキシアン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/513 20060101AFI20240912BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61K31/513 ZNA
A61P7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516849
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 US2022043797
(87)【国際公開番号】W WO2023043999
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】63/245,522
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/278,582
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(71)【出願人】
【識別番号】397060175
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカ エヌ.ベー.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【弁理士】
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ストロニー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ピーターズ,ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】チンタラ,マドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ネッセル,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ペレラ,リヤナゲ ビドヤ
(72)【発明者】
【氏名】リィ,ダンシ
(72)【発明者】
【氏名】リュートゲン,ジョセフ エム
(72)【発明者】
【氏名】ザイフェルト,ディートマル アルフレート
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ-バートン,シャーロット
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB14
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA54
(57)【要約】
疾患または障害、例えば、血栓性または血栓塞栓性障害を治療する方法にて有用な治療特性を有する第XIa因子阻害剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静脈血栓塞栓性障害を治療または予防する方法であって、その必要とする患者に一日総用量が25mg~400mgのミルベキシアン、またはその医薬的に許容される塩を経口投与することを含む、方法。
【請求項2】
一日総用量が50mg~400mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一日総用量が25mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
一日総用量が50mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
一日総用量が100mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
一日総用量が150mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
一日総用量が200mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
一日総用量が単回用量で投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
一日総用量が分割用量で投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
一日総用量が2回用量で投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
静脈血栓塞栓性障害が近位および/または遠位深部静脈血栓症、非致死的肺塞栓症、または死亡である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
静脈血栓塞栓性障害が近位および/または遠位深部静脈血栓症である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
静脈血栓塞栓性障害が非致死的肺塞栓症である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
静脈血栓塞栓性障害が死亡である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
手術から回復している患者にて術後静脈血栓塞栓性事象を予防するのに、該患者に1日用量のミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を投与することを含む方法であって、ここで該投与により、1日に付き40mgのエノキサパリンを患者に皮下投与することでもたらされるよりも、患者が結果としてより少ない術後静脈血栓塞栓性事象を経験することとなる、方法。
【請求項16】
患者が腹部手術、膝関節置換術または股関節置換術から回復している、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の1日用量が50mgである、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の1日用量が100mgである、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の1日用量が150mgである、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項20】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の1日用量が200mgである、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項21】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の1日用量が単回用量で投与される、請求項15ないし16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の1日用量が分割用量で投与される、請求項15ないし16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
静脈血栓塞栓性障害を治療または予防するために、治療的に効果的な量のミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を一日に1回または2回でその必要とする患者に経口投与することを含む方法であって、ここでミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を用いて治療された患者において全静脈血栓塞栓性事象の発生率が、25%未満であって、アルファが5%である、方法。
【請求項24】
全静脈血栓塞栓性事象の発生率が20%未満である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
全静脈血栓塞栓性事象の発生率が15%未満である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
全静脈血栓塞栓性事象の発生率が10%未満である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が50mgから400mgの範囲にある一日総用量で投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が50mg、100mg、200mg、および400mgからなる群より選択される一日総用量で投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が50mgの一日総用量で投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が100mgの一日総用量で投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が150mgの一日総用量で投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が200mgの一日総用量で投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が400mgの一日総用量で投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
ミルベキシアンが一日に2回投与される、請求項23~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
ミルベキシアンが一日に1回投与される、請求項23~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
静脈血栓塞栓症の発生率が、エノキサパリンと比べて出血の危険性を増大させることなく、用量依存的な様式で生じる、請求項23~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
治療的に効果的な量が、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩で治療される患者において全静脈血栓塞栓性事象の発生率を25%未満にするのに効果的であると臨床的に証明されている、請求項23~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
静脈血栓塞栓性障害の治療または予防を必要とする患者に、25mg~400mgの一日総用量のミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を経口投与することで、かかる障害を治療または予防するための医薬品の製造におけるミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の経口用剤形の使用。
【請求項39】
一日総用量が50mg~400mgである、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
一日総用量が25mgである、請求項38に記載の使用。
【請求項41】
一日総用量が50mgである、請求項38に記載の使用。
【請求項42】
一日総用量が100mgである、請求項38に記載の使用。
【請求項43】
一日総用量が150mgである、請求項38に記載の使用。
【請求項44】
一日総用量が200mgである、請求項38に記載の使用。
【請求項45】
一日総用量が単回用量にて投与される、請求項38~44のいずれか一項に記載の使用。
【請求項46】
一日総用量が分割用量にて投与される、請求項38~44のいずれか一項に記載の使用。
【請求項47】
一日総用量が2回用量にて投与される、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
静脈血栓塞栓性障害が近位および/または遠位深部静脈血栓症、非致死的肺塞栓症、または死亡である、請求項38~44のいずれか一項に記載の使用。
【請求項49】
静脈血栓塞栓性障害が近位および/または遠位深部静脈血栓症である、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
静脈血栓塞栓性障害が非致死的肺塞栓症である、請求項48に記載の使用。
【請求項51】
静脈血栓塞栓性障害が死亡である、請求項48に記載の使用。
【請求項52】
手術から回復している患者にて術後静脈血栓塞栓性事象を予防するための医薬品の製造におけるミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の経口剤形の使用であって、ここで該医薬品を該患者に投与することで、一日当たり40mgのエノキサパリンを患者に皮下投与することでもたらされるよりも患者が術後静脈血栓塞栓性事象を経験することが少なくなる、使用。
【請求項53】
患者が腹部手術、膝関節置換術、または股関節置換術から回復している、請求項52に記載の使用。
【請求項54】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の一日投与量が50mgである、請求項52または請求項53に記載の使用。
【請求項55】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の一日投与量が100mgである、請求項52または請求項53に記載の使用。
【請求項56】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の一日投与量が150mgである、請求項52または請求項53に記載の使用。
【請求項57】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の一日投与量が200mgである、請求項52または請求項53に記載の使用。
【請求項58】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の一日投与量が単回用量にて投与される、請求項52ないし53のいずれか一項に記載の使用。
【請求項59】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の一日投与量が分割用量にて投与される、請求項52ないし53のいずれか一項に記載の使用。
【請求項60】
静脈血栓塞栓性障害を治療または予防するために、患者に一日に1回または2回投与するのに適合する医薬品を製造するためのミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の固形剤形の使用であって、ここで該投与によって全静脈血栓塞栓性事象の発生率が25%未満であって、アルファが5%でもたらされる、使用。
【請求項61】
全静脈血栓塞栓性事象の発生率が20%未満である、請求項60に記載の使用。
【請求項62】
全静脈血栓塞栓性事象の発生率が15%未満である、請求項60に記載の使用。
【請求項63】
全静脈血栓塞栓性事象の発生率が10%未満である、請求項60に記載の使用。
【請求項64】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が50mg~400mgの範囲にある一日総用量で投与される、請求項60に記載の使用。
【請求項65】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が50mg、100mg、200mg、および400mgからなる群より選択される一日総用量で投与される、請求項60に記載の使用。
【請求項66】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が50mgの一日総用量で投与される、請求項60に記載の使用。
【請求項67】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が100mgの一日総用量で投与される、請求項60に記載の使用。
【請求項68】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が150mgの一日総用量で投与される、請求項60に記載の使用。
【請求項69】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が200mgの一日総用量で投与される、請求項60に記載の使用。
【請求項70】
ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が400mgの一日総用量で投与される、請求項60に記載の使用。
【請求項71】
ミルベキシアンが一日に2回投与される、請求項60~70のいずれか一項に記載の使用。
【請求項72】
ミルベキシアンが一日に1回投与される、請求項60~70のいずれか一項に記載の使用。
【請求項73】
静脈血栓塞栓症の発生率が、エノキサパリンと比べて出血の危険性を増大させることなく、用量依存的な様式で生じる、請求項60~70のいずれか一項に記載の使用。
【請求項74】
治療的に効果的な量が、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩で治療される患者において全静脈血栓塞栓性事象の発生率を25%未満とするのに効果的であると臨床的に証明されている、請求項60~70のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年9月17日付け出願の米国仮特許出願第63/245,522号、および2021年11月12日付け出願の米国仮特許出願63/278,582号の利益を主張するものであり、その各々が出典明示によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、血栓塞栓性障害を治療するためのミルベキシアンの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
経口抗凝固剤は、静脈および動脈性血栓塞栓症を予防かつ治療するための主たる薬剤である。多くの適応症において、直接作用型経口抗凝固剤がビタミンK拮抗剤に取って代わっているが、主たる副作用として出血が依然残ったままである。心房細動のある適任の患者での抗凝固剤の過少使用、および低用量の直接作用型経口凝固剤のレジメの不適切な使用は、出血の恐れがその一因である(Steinbergら、International trends in clinical characteristics and oral anticoagulation treatment for patients with atrial fibrillation:Results from the GARFIELD-AF、ORBIT-AF I、and ORBIT-AF II registries. Am Heart J 2017;194:132-40;Sanghaiら、Rates of potentially inappropriate dosing of direct-acting oral anticoagulants and associations with geriatric conditions among older patients with atrial fibrillation:The SAGE-AF study. J Am Heart Assoc 2020;9:e014108)。従って、より安全な経口抗凝固剤についての必要性が依然として存在する。
【0004】
第XI因子は、それが血栓を成長させる重要な促進因子であるが、止血において補助的な役割を果たすため、新たな抗凝固剤を開発するための有望な標的でもある(Weitzら、Factor XI inhibition to uncouple thrombosis from hemostasis:JACC review topic of the week. J Am Coll Cardiol 2021;78:625-31)。
【0005】
TKR後のVTEを予防するための第2相試験では、FXI活性を減少させることの臨床的な安全性および有効性についてのデータが唯一公表されただけである。手術をする前の36日間にわたって対象をFXIを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド(FXI-ASO、アベラシマブ(abelacimab))で処理し、FXIのレベルを下げた。この試験では、エノキサパリン(enoxaparin)と比べて、VTE事象の危険性が用量依存的に減少した。しかしながら、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびアベラシマブは非経口投与を必須とする(Bullerら、Factor XI antisense oligonucleotide for prevention of venous thrombosis. N Engl J Med 2015;372:232-40;Verhammeら、Abelacimab for prevention of venous thrombosis. N Engl J Med 2021, 385(7):609-617)。
【0006】
ミルベキシアンは、活性化形態のヒト凝固第XI因子(FXIa)と高い親和性および選択性で結合し、該因子を阻害する、直接作用型の可逆的な小分子の治療剤である。ミルベキシアンは、式(I):
【化1】
で示される構造を有する大環状化合物である。
【0007】
ミルベキシアンの化学名は(5R,9S)-9-(4-(5-クロロ-2-(4-クロロ-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)フェニル)-6-オキソピリミジン-1(6H)-イル)-21-(ジフルオロメチル)-5-メチル-21H-3-アザ-1(4,2)-ピリジン-2(5,4)-ピラゾラシクロノナファン-4-オンである。ミルベキシアンおよびミルベキシアンの製造方法は米国特許第9,453,018号に記載されており、その全体を出典明示によって本明細書に組み込むものとする。ミルベキシアンの1または複数のポリマー中の非晶質固体分散組成物がWO2020210629に記載されており、その全体を出典明示によって本明細書に組み込むものとする。
【0008】
当該分野において、血栓性事象に罹患しているか、またはその危険性のあるいずれかの患者にて、臨床的に有意な出血の危険性を増大させることなく、血栓を有意に減少させる、新たな抗凝固剤療法に対する要求がある。
【発明の概要】
【0009】
いくつかの態様において、本開示は、静脈血栓塞栓性障害を治療するか、または予防する方法であって、その必要のある患者にミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を一日の総用量で25mg~400mgにて経口投与することを含む、方法に向けられる。
【0010】
他の態様において、本開示は、手術から回復している患者にて術後静脈血栓塞栓性事象を予防し、該患者にミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を一日の用量で投与することを含む方法であって、ここで該投与が、一日当たり40mgのエノキサパリン(低分子量ヘパリン)を患者に皮下投与することでもたらされるであろう術後静脈血栓塞栓性事象よりも、結果として、患者に該事象をほとんど経験させない、方法に向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】静脈血栓塞栓症を発症する危険性のある個体、例えば、人工膝関節全置換術を受けている個体において、ミルベキシアンの静脈血栓閉塞性事象を予防する能力を検査するように設計された、実施例1にて記載の研究の研究デザインの概要を示す。中間解析(IA)#1は、BID処理群の各々における約50人の対象が静脈造影を終えるか、または症候性静脈血栓塞栓性(VTE)事象のあった時に、行われた。IA#2は、運営委員会の裁量で、25mgを1日に1回投与するレジメンを持続することの必要性を決定するために行われた追加のIAであった。
【0012】
図2】実施例1に記載の研究の各処理アームでの全VTEの発生率および95%信頼区間を示す。
【0013】
図3】試験中にて静脈造影を用いた、深部静脈血栓症(DVT)に罹患している対象の、血栓の重症度による血栓の発生率を示す。
【0014】
図4】実施例1に記載の研究の静脈造影を用いた、DVTに罹患している対象の、DVT平均重症度評点を示す。
【0015】
図5】実施例1に記載の研究の各処理アームでの出血の発生率および95%信頼区間を示す。
【0016】
図6】ミルベキシアンおよびエノキサパリンを用いた、活性化部分トロンボプラスチン時間の割合の中央値および任意の出血または臨床的に関連する出血の発生率を示す。
【0017】
図7】ECATウサギにおいて、血栓を誘導した後の頸動脈血流に対するビヒクルおよびミルベキシアンのIV投与の効果を示す。平均値±SEMおよび一群当たりn=6
【0018】
図8】ECATウサギにおいて、対照となる頸動脈血流(すなわち、損傷前の血流)の%として表される、ビヒクルおよびミルベキシアンの積分に付された血流での作用を示す。*ビヒクルと比べてP<0.05(片側)。平均値±SEMおよび一群当たりn=6
【0019】
図9】ECATウサギの予防にて、ミルベキシアンの総血漿中濃度と、血栓の重量の減少%として表される抗血栓作用との間の関係を示す。IV、静脈内;ECAT(electrically mediated carotid arterial thrombosis)、電気的介在性頸動脈血栓形成;SEM、平均値の標準偏差
【0020】
図10】ECATウサギにおける、ビヒクルおよびミルベキシアンのaPTT、TT、およびPTに対する作用を示す。*ビヒクルと比べてP<0.05(片側)。平均値±SEMおよび一群当たりn=6
【0021】
図11】ECATウサギにおける、ミルベキシアンの抗血栓活性をエクスビボにおけるaPTTでの追跡を示す。aPTT、活性化部分トロンボプラスチン時間;TT、トロンビン時間;PT、プロトロンビン時間;ECAT、電気的介在性頸動脈血栓形成;SEM、平均値の標準偏差;IV、静脈内
【0022】
図12】ビヒクルおよびミルベキシアンの頸動脈血流に対する作用を示す(対照の頸動脈流の%として表される)。処理プロトコルでは、動脈血栓形成を開始した15分後にビヒクルまたはミルベキシアンをIV(ボーラス+注入)投与に付した。平均値±SEMおよび一群当たりn=6
【0023】
図13】FXIのASO誘発性阻害でのウサギECAT実験にて観察されるFXIレベルおよび血栓重量の用量依存的減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書にて使用される場合、「治療する」または「治療」なる語には、血栓塞栓性障害の治療的処置が含まれる。「治療する」または「治療」なる語は、哺乳動物における、特にヒトにおける病態の治療を対象とし、(a)病態を阻害すること、すなわち、その発症を阻止すること;および/または(b)病態を緩和すること、すなわち、病態の退行を生じさせることを含む。いくつかの実施態様において、ミルベキシアンは手術を受けている患者におけるVTEの術後治療に使用される。いくつかの実施態様において、ミルベキシアンはVTEの短期治療(すなわち、VTEの急性治療)に使用される。
【0025】
本明細書にて使用される場合、「予防」または「予防する」なる語は、哺乳動物にて、特にヒトにて、臨床性病態の発生する確率を低下させることを目的とした、無症状の病態の予防的処置をいう。患者は、一般集団と比べて、臨床性病態に罹患する危険性を増加させるのが知られている因子に基づき、予防的治療のために選択される。いくつかの実施態様において、「予防」は、近位および/または遠位深部静脈血栓症(症候性DVTおよび静脈造影の評価によって確認された無症候性DVTの両方、または客観的に確認された症候性DVT);非致死的PE;または治療期間中の任意の死亡を含む、TKR手術の後の全VTE事象を発症する可能性を減少させることを目的とした、哺乳動物での、特にヒトでの血栓塞栓性障害の一次予防を対象とする。患者は、一般集団と比べて、臨床性病態に罹患する危険性を増加させるのが知られている因子に基づき、予防的治療のために選択される。いくつかの実施態様において、ミルベキシアンは手術を受ける患者でのVTEの術前血栓予防に使用される。いくつかの実施態様において、ミルベキシアンは手術を受ける患者でのVTEの術後血栓予防に使用される。
【0026】
本明細書にて使用される場合、「治療的に効果的な量」なる語は、第XIa因子および/または血漿カリクレインを阻害するのに、および/または本明細書に列挙される障害を予防または治療するのに単独で投与した場合に効果的である、ミルベキシアン、またはその治療的に効果的な塩もしくは溶媒和物の量を包含するものとする。実施態様において、治療的に効果的な量は、第XIa因子および/または血漿カリクレインを阻害するのに、および/または本明細書に列挙される障害を予防または治療するのに単独で投与した場合に効果的である、ミルベキシアン、またはその治療的に効果的な塩の量を包含するものとする。実施態様において、ミルベキシアンの治療的に効果的な量は、治療期間中の患者において全VTE事象の発生を減少させるのに効果的であることが臨床的に証明されている。実施態様において、ミルベキシアンの治療的に効果的な量は、ミルベキシアンの治療的に効果的な溶媒和物、例えば、アセトン一溶媒和物を含む。
【0027】
本明細書にて使用される場合、「血栓症」なる語は、血栓の形成または存在;血管から供給される組織の虚血または梗塞を惹起する可能性のある血管内での血栓の形成をいう。「塞栓症」なる語は、本明細書にて使用される場合、血流に沿ってその留置部位に運ばれた血栓または異物により動脈が突然遮断されることをいう。「血栓塞栓症」なる語は、本明細書にて使用される場合、別の血管に栓をするために、起源部位から血流に沿って運ばれる血栓性材料での血管の閉塞をいう。「血栓塞栓性障害」なる語は、「血栓性」および「塞栓性」の両方の障害を包含する。
【0028】
「血栓塞栓性障害」なる語はまた、本明細書にて使用される場合、アテローム性動脈硬化症、アテローム血栓症、末梢閉塞性動脈疾患、静脈血栓症、静脈血栓塞栓症(VTE)、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、冠状動脈血栓症、腎塞栓症、肺塞栓症、および血液が血栓症を促進する人工表面に暴露される、医療用インプラント、装置または操作からもたらされる血栓症から選択される具体的な障害を包含するが、これらに限定されない。
【0029】
いくつかの実施態様において、「血栓塞栓性障害」は、アテローム性動脈硬化症、末梢閉塞性動脈疾患、静脈血栓症、静脈血栓塞栓症(VTE)、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、冠状動脈血栓症、腎塞栓症、肺塞栓症、および血液が血栓症を促進する人工表面に暴露される、医療用インプラント、装置または操作からもたらされる血栓症から選択される具体的な障害を包含するが、これらに限定されない。
【0030】
もう一つ別の実施態様において、「血栓塞栓性障害」なる語は、静脈血栓塞栓症、深部静脈血栓症(DVT)、近位および/または遠位DVT、症候性近位および/または遠位DVT、無症候性近位および/または遠位DVT、または肺塞栓症を包含する。
【0031】
いくつかの実施態様において、ミルベキシアンは、手術を受ける患者においてVTEの一次予防のために使用される。いくつかの実施態様において、ミルベキシアンは、手術を受ける患者においてVTEの術前血栓予防のために使用される。
【0032】
いくつかの態様において、本開示は静脈血栓塞栓性障害を治療または予防する方法であって、ここでその必要とする患者に、臨床的に効果的な量のミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を経口的に投与することを含む、方法に向けられる。いくつかの実施態様において、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の臨床的に効果的な量は、25mg~400mgの一日総用量であってもよい。他の実施態様において、臨床的に効果的な量は50mg~400mgの一日総用量であってもよい。
【0033】
いくつかの態様において、本開示は静脈血栓塞栓性障害を治療または予防する方法であって、ここでその必要とする患者に、25mg~400mgの一日総用量のミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を経口的に投与することを含む、方法に向けられる。他の実施態様において、一日総用量はミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の50mg~400mgである。
【0034】
いくつかの態様において、本開示の方法は、静脈血栓塞栓性障害を治療または予防することに向けられる。いくつかの実施態様において、静脈血栓塞栓性障害は、複合的な無症候性深部静脈血栓症、確認された症候性静脈血栓塞栓症(脚の症候性深部静脈血栓症または非致死的肺塞栓症)、または死亡である。
【0035】
他の実施態様において、静脈血栓塞栓性障害は、近位深部静脈血栓症(症候性または無症候性)、遠位深部静脈血栓症(症候性または無症候性)、非致死的肺塞栓症、または死亡である。
【0036】
他の実施態様において、静脈血栓塞栓性障害は、近位および/または遠位深部静脈血栓症、非致死的肺塞栓症、または死亡である。
【0037】
他の実施態様において、静脈血栓塞栓性障害は近位および/または遠位深部静脈血栓症である。
【0038】
他の実施態様において、静脈血栓塞栓性障害は非致死的肺塞栓症である。
【0039】
他の実施態様において、静脈血栓塞栓性障害は死亡である。
【0040】
いくつかの態様において、本開示は、手術から回復している患者において、術後の静脈血栓塞栓性事象を予防する方法であって、ここで該患者に一日用量のミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を投与することを含み、その投与が患者において40mg/日のエノキサパリンを患者に皮下投与することでもたらされるよりも少ない術後の静脈血栓塞栓性事象を経験させる、方法に向けられる。
【0041】
かかる方法のいくつかの実施態様において、患者は、上記の静脈血栓塞栓性障害などの術後の静脈血栓塞栓性事象を経験する危険性がある。いくつかの実施態様において、患者は外科的操作から回復している。いくつかの実施態様において、患者は腹部手術、膝関節置換術、または股関節置換術から回復している。
【0042】
かかる方法にて、患者は外科的操作を受ける直前から始めるか、または外科的操作の直後から始めるかのいずれかでミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を投与されてもよい。
【0043】
これらの方法のいくつかの実施態様において、患者は40mg/日のエノキサパリンを患者に皮下投与することでもたらされるよりも少ない術後の静脈血栓塞栓性事象を経験する。すなわち、患者が術後の静脈血栓塞栓性事象を経験する危険性は、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を患者に投与した方が、40mgのエノキサパリンを皮下投与するよりも低い。
【0044】
これらの方法のいくつかの実施態様において、危険性の割合は、例えば、0.55以下、0.5以下、0.45以下、0.4以下、0.35以下、または0.3以下のように0.6以下である。すなわち、かかる方法では、術後の静脈血栓塞栓性事象を経験する患者の危険性は、40mgのエノキサパリンを患者に皮下投与した場合に、患者が経験するであろう危険性の0.6倍以下である。
【0045】
いくつかの態様において、本開示は、血栓形成を促進する、血液が人工表面に暴露される医療用インプラント、装置または操作からもたらされる血栓症を治療または予防する方法であって、日用量の治療的に効果的な量のミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を患者に投与することを含む、方法に向けられる。
【0046】
いくつかの態様において、本開示は、静脈血栓塞栓性障害を治療または予防する方法であって、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩をその必要とする患者に一日に1回または2回で経口投与することを含み、ここでミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩で治療した患者における全静脈血栓塞栓性事象の発生率が、25%未満であって、アルファが5%である、方法を提供する。
【0047】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、その必要とする患者におけるミルベキシアンを用いる治療は、エノキサパリンを用いた全VTEの発生率と比較して、全VTE事象にて統計学的に有意な減少(p<0.0001(片側))を惹起する。
【0048】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、その必要とする患者におけるミルベキシアンを用いる治療は、全VTE事象の発生を用量依存的な応答様式にて防止し、その全VTE事象の発生率は30%より統計的に低い割合であって、アルファが5%であり、ここでその全VTE事象は、治療期間中の近位および/または遠位DVT(静脈造影評価によって無症候性と確認されるか、または客観的に症候性と確認された深部静脈血栓症)、非致死的PE、または任意の死亡)を包含する。
【0049】
他の実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、患者での全VTE事象の発生率は25%より統計的に低い割合であって、アルファが5%である。
【0050】
他の実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、患者での全VTE事象の発生は20%より統計的に低い割合であって、アルファが5%である。
【0051】
他の実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、患者での全VTE事象の発生率は15%より統計的に低い割合であって、アルファが5%である。
【0052】
他の実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、患者での全VTE事象の発生率は10%より統計的に低い割合であって、アルファが5%である。
【0053】
いくつかの態様において、本開示は、治療的に効果的な量のミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を一日に1回または2回にわたってその必要とする患者に経口的に投与することを含む、静脈血栓塞栓性障害を治療または予防する方法であって、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を用いて治療される患者での全静脈血栓塞栓性事象の発生率が、5%の片側アルファおよびCI=95%で修飾治療企図(ITT)集団にて25%未満である、方法を提供する。
【0054】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、その必要とする患者におけるミルベキシアンを用いる治療は、エノキサパリンを用いた全VTEの発生率と比較して、全VTE事象にて統計学的に有意な減少(p<0.0001(片側))を惹起する。
【0055】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、その必要とする患者におけるミルベキシアンを用いる治療は、全VTE事象の発生を用量依存的な応答様式にて防止し、その全VTE事象の発生は修飾治療企図集団にて5%の片側アルファおよびCI=95%(CIは発生率の信頼区間を意味する)で30%より統計的に低い割合であり、ここでその全VTE事象は、治療期間中の近位および/または遠位DVT(静脈造影評価によって無症候性と確認されるか、または客観的に症候性と確認された)、非致死的PE、または任意の死亡)を包含する。
【0056】
他の実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、患者での全VTE事象の発生は、修飾治療企図集団にて5%の片側アルファおよびCI=95%で25%より統計的に低い割合である。
【0057】
他の実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、患者での全VTE事象の発生は、修飾治療企図集団にて5%の片側アルファおよびCI=95%で20%より統計的に低い割合である。
【0058】
他の実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、患者での全VTE事象の発生は、修飾治療企図集団にて5%の片側アルファおよびCI=95%で15%より統計的に低い割合である。
【0059】
他の実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、患者での全VTE事象の発生は、修飾治療企図集団にて5%の片側アルファおよびCI=95%で10%より統計的に低い割合である。
【0060】
本明細書にて使用される場合、「治療企図集団(intention-to-treat population)」(ITT集団)なる語は、以下の実施例1にて記載されるような臨床試験にてインフォームドコンセントに署名した、すべての無作為化した対象をいう。本明細書にて使用される場合、「修飾治療企図集団」(mITT-CEC判定集団)なる語は、有効性の評価項目の可能性があるとの妥当な評価を受け、以下の実施例1にて記載されるような臨床研究にて少なくとも1用量の研究薬のミルベキシアンを摂取している対象から構成される、ITT集団の部分集合をいう。
【0061】
本明細書にて開示される方法のいくつかの実施態様において、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の治療的に効果的な量は、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩で治療した患者にて、全静脈血栓塞栓性事象の発生率を25%未満とすることを達成するのに効果的であると臨床的に証明された量である。
【0062】
いくつかの実施態様において、50mgないし400mgの量のミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が、エノキサパリンを用いた全VTE事象の発生率と比べて、全VTE事象にて統計学的に有意な減少(p<0.0001(片側))を惹起するのに効果的であると臨床的に証明された。
【0063】
開示された方法のいくつかの態様においては、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が患者に経口投与される。
【0064】
投与量のミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が、例えば、錠剤、カプセル(徐放製剤または時限放出製剤を含有するカプセルを含む)、ピル、散剤、顆粒、エリキシル、チンキ、懸濁液、シロップおよびエマルジョンなどの任意の適切な経口剤形、製剤または医薬製剤で投与され得る。
【0065】
いくつかの実施態様において、投与される用量のミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩は即時放出製剤として製剤化されてもよい。いくつかの実施態様において、投与される用量のミルベキシアンは即時放出カプセル製剤として製剤化されてもよい。いくつかの実施態様において、投与される用量のミルベキシアンは、ミルベキシアンの1または複数のポリマー中非晶質性固体分散組成物として製剤化されていもよい。いくつかの実施態様において、非晶質の固体分散体中のポリマーはヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(HPMCAS)である。いくつかの実施態様において、ミルベキシアンの1または複数のポリマー中非晶質性固体分散組成物は噴霧乾燥によって製造される。いくつかの実施態様において、ミルベキシアンの1または複数のポリマー中非晶質性固体分散組成物は、ミルベキシアンが1または複数のポリマー中に分子的に分散されているものを含む。
【0066】
開示されている方法のいくつかの態様において、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が投与される患者は哺乳動物である。いくつかの実施態様において、患者はヒトである。他の実施態様において、患者は男性である。患者は女性である。いくつかの実施態様において、患者は年齢が50歳以上であるヒトである。他の実施態様において、患者は年齢が50歳未満のヒトである。いくつかの実施態様において、患者は年齢が18歳未満のヒトである。
【0067】
開示されている方法のいくつかの態様において、患者はミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を投与される。
【0068】
いくつかの実施態様において、患者はミルベキシアンを投与される。
【0069】
他の実施態様において、患者はミルベキシアンの医薬的に許容される塩を投与される。
【0070】
本明細書にて使用される場合、「医薬的に許容される塩」は、化合物がその酸または塩基塩を製造することによって修飾されるところの誘導体をいう。医薬的に許容される塩の例として、限定されないが、アミンなどの塩基性基の無機または有機酸塩;カルボン酸などの酸性基のアルカリまたは有機塩が挙げられる。医薬的に許容される塩には、例えば、非毒性の無機または有機酸から形成される親化合物の、従来の非毒性塩または第四級アンモニウム塩が含まれる。例えば、かかる従来の非毒性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、および硝酸などの無機酸から誘導される塩;および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸およびイセチオン酸などの有機酸から製造される塩が含まれる。ミルベキシアンの医薬的に許容される塩は、従来の化学的方法を用いて合成され得る。一般に、かかる塩は、ミルベキシアンを化学量論量の適切な塩基または酸と、水または有機溶媒中、あるいはその2種の混合液中で反応させることにより製造され得る;一般には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。適切な塩の一覧が、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, Mack Publishing Company, Easton, Pa.(1990)にて見られ、その開示を出典明示により本明細書に組み込む。
【0071】
ミルベキシアンの医薬的に許容される塩が投与されるところの開示の方法の実施態様において、その場合、特定された量はミルベキシアンをベースとする。すなわち、ミルベキシアンの特定量を含有する、医薬的に許容される塩の量が投与される。例えば、ミルベキシアン、またはその医薬的に許容される塩を50mg投与するとは、50mgのミルベキシアンを、または50mgのミルベキシアンを含有する量のミルベキシアンの医薬的に許容される塩のいずれかを投与することをいう。
【0072】
開示されている方法のいくつかの態様において、患者には50mg~400mgの一日総用量のミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が投与される。
【0073】
本明細書にて使用される場合、「一日総用量」なる語は、一日に投与されるミルベキシアンの総量をいう。かくして、一日総用量は、所定の一日にあらゆる投薬エピソードにて投与される蓄積量を表す。例えば、所定の日に、2回の投薬エピソードの各々で25mgのミルベキシアンを患者に投与する場合、その時にはその日の一日総用量は50mgである。
【0074】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩は、一日総用量が単回用量で投与されるように投与される。
【0075】
いくつかの実施態様において、一日に1回の用量は、約18-30時間ごとに1回、約20-28時間ごとに1回、約22-26時間ごとに1回、または約23-25時間ごとに1回にて患者に投与されてもよい。
【0076】
他の実施態様において、一日に1回の用量は、約20時間ごとに1回、約21時間ごとに1回、約22時間ごとに1回、約23時間ごとに1回、約24時間ごとに1回、約25時間ごとに1回、約26時間ごとに1回、約27時間ごとに1回、または約28時間ごとに1回にて患者に投与されてもよい。
【0077】
他の実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が、一日総用量が分割用量で投与されるように投与される。
【0078】
他の実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が、一日総用量が2回の用量で投与されるように投与される。
【0079】
一日総用量が2回の用量で投与される場合のいくつかの実施態様において、その用量は、約8-16時間ごとに1回、約9-15時間ごとに1回、約10-14時間ごとに1回、または約11-13時間ごとに1回にて患者に投与されてもよい。
【0080】
一日総用量が2回の用量で投与される場合のいくつかの実施態様において、その用量は、約10時間ごとに1回、約10時間ごとに1回、約10時間ごとに1回、約10時間ごとに1回、約10.5時間ごとに1回、約11時間ごとに1回、約11.5時間ごとに1回、約12時間ごとに1回、約12.5時間ごとに1回、約13時間ごとに1回、約13.5時間ごとに1回、または約14時間ごとに1回にて投与されてもよい。
【0081】
他の実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩は、一日総用量が2回より多くの回数の用量で投与される。
【0082】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩は、一日に1回または2回、少なくとも10日間連続して患者に投与されてもよい。
【0083】
本明細書に記載されるいずれかの方法の他の実施態様において、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩は、一日に1回または2回、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、少なくとも14日間、少なくとも15日間、少なくとも30日間、少なくとも6カ月間、少なくとも1年間、または少なくとも5年間にわたって患者に投与されてもよい。
【0084】
膝関節または股関節置換術を受けている患者にて全静脈血栓塞栓事象(VTE)を予防するのにミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が投与される実施態様において、一日に1回または2回、少なくとも10日間連続して、少なくとも11日間連続して、少なくとも12日間連続して、少なくとも13日間連続して、または少なくとも14日間連続して患者に投与されてもよい。
【0085】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩は、例えば、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、または400mgなどの25mg~400mgの範囲にある一日総用量で投与される。
【0086】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩は、例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、または400mgなどの50mg~400mgの範囲にある一日総用量で投与される。
【0087】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩は、50mg、100mg、200mg、および400mgからなる群より選択される一日総用量で投与される。
【0088】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩は25mgの一日総用量で投与される。
【0089】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩は50mgの一日総用量で投与される。
【0090】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩は少なくとも50mgの一日総用量で投与される。
【0091】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩は100mgの一日総用量で投与される。
【0092】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩は少なくとも100mgの一日総用量で投与される。
【0093】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩は200mgの一日総用量で投与される。
【0094】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩は少なくとも200mgの一日総用量で投与される。
【0095】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩は400mgの一日総用量で投与される。
【0096】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載のいずれかの方法では、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩は少なくとも400mgの一日総用量で投与される。
【0097】
本明細書に記載される方法のいくつかの態様において、10~14日間の治療期間の間にエンドポイントである任意の出血(Any Bleeding)事象が発生することと、ミルベキシアンとの間に用量依存的応答はない。
【0098】
本明細書に記載されるいずれかの方法のいくつかの実施態様において、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を患者に投与しても、患者の出血の発生率は増加せず、例えば、患者の出血発生率を1%を超えて、2%を超えて、3%を超えて、4%を超えて、5%を超えて、6%を超えて、7%を超えて、または8%を超えて増加させることはない。
【0099】
本明細書に記載される血栓塞栓性障害を治療または予防するいずれかの方法のいくつかの実施態様において、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を患者に投与しても、患者の大出血の発生率を0.5%、0.75%、1%、1.25%または1.5%を超えて増加させることはない。
【0100】
ミルベキシアン(またはその医薬的に許容される塩)の量、またはミルベキシアン(またはその医薬的に許容される塩)を投与する時間間隔のいずれかに言及する場合、概算または約の使用は、任意の特定の量または時間間隔の5%以内(より多く、またはより少なく)、10%以内(より多く、またはより少なく)、12.5%以内(より多く、またはより少なく)、15%以内(より多く、またはより少なく)、17.5%以内(より多く、またはより少なく)、または20%以内(より多く、またはより少なく)である量または時間間隔であってもよいことが理解されよう。
【0101】
本開示はまた、以下の態様:
態様1. 静脈血栓塞栓性障害を治療または予防する方法であって、その必要とする患者に1日総用量が25mg~400mgのミルベキシアン、またはその医薬的に許容される塩を経口投与することを含む、方法;
態様2. 一日総用量が50mg~400mgである、態様1に記載の方法;
態様3. 一日総用量が25mgである、態様1に記載の方法;
態様4. 一日総用量が50mgである、態様1に記載の方法;
態様5. 一日総用量が100mgである、態様1に記載の方法;
態様6. 一日総用量が150mgである、態様1に記載の方法;
態様7. 一日総用量が200mgである、態様1に記載の方法;
態様8. 一日総用量が単回用量で投与される、態様1~7のいずれか一に記載の方法;
態様9. 一日総用量が分割用量で投与される、態様1~7のいずれか一に記載の方法;
態様10. 一日総用量が2回用量で投与される、態様9に記載の方法;
態様11. 静脈血栓塞栓性障害が近位および/または遠位深部静脈血栓症、非致死的肺塞栓症、または死亡である、態様1~10のいずれか一に記載の方法;
態様12. 静脈血栓塞栓性障害が近位および/または遠位深部静脈血栓症である、態様11に記載の方法;
態様13. 静脈血栓塞栓性障害が非致死的肺塞栓症である、態様11に記載の方法;
態様14. 静脈血栓塞栓性障害が死亡である、態様11に記載の方法;
態様15. 手術から回復している患者にて術後静脈血栓塞栓性事象を予防するのに、該患者に1日投与量のミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を投与することを含む方法であって、ここで該投与により、1日に付き40mgのエノキサパリンを患者に皮下投与することでもたらされるよりも、患者が結果としてより少ない術後静脈血栓塞栓性事象を経験することとなる、方法;
態様16. 患者が腹部手術、膝関節置換術または股関節置換術から回復している、態様15に記載の方法;
態様17. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の1日投与量が50mgである、態様15または態様16に記載の方法;
態様18. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の1日投与量が100mgである、態様15または態様16に記載の方法;
態様19. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の1日投与量が150mgである、態様15または態様16に記載の方法;
態様20. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の1日投与量が200mgである、態様15または態様16に記載の方法;
態様21. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の1日投与量が単回用量で投与される、態様15ないし20のいずれか一に記載の方法;
態様22. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の1日投与量が分割用量で投与される、態様15ないし20のいずれか一に記載の方法;
態様23. 静脈血栓塞栓性障害を治療または予防するために、治療的に効果的な量のミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を一日に1回または2回でその必要とする患者に経口投与することを含む方法であって、ここでミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を用いて治療された患者において全静脈血栓塞栓性事象の発生率が、25%未満であって、アルファが5%である、方法;
態様24. 全静脈血栓塞栓性事象の発生率が20%未満である、態様23に記載の方法;
態様25. 全静脈血栓塞栓性事象の発生率が15%未満である、態様23に記載の方法;
態様26. 全静脈血栓塞栓性事象の発生率が10%未満である、態様23に記載の方法;
態様27. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が50mgから400mgの範囲にある一日総用量で投与される、態様23に記載の方法;
態様28. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が50mg、100mg、200mg、および400mgからなる群より選択される一日総用量で投与される、態様23に記載の方法;
態様29. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が50mgの一日総用量で投与される、態様23に記載の方法;
態様30. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が100mgの一日総用量で投与される、態様23に記載の方法;
態様31. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が150mgの一日総用量で投与される、態様23に記載の方法;
態様32. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が200mgの一日総用量で投与される、態様23に記載の方法;
態様33. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が400mgの一日総用量で投与される、態様23に記載の方法;
態様34. ミルベキシアンが一日に2回投与される、態様23~33のいずれか一に記載の方法;
態様35. ミルベキシアンが一日に1回投与される、態様23~33のいずれか一に記載の方法;
態様36. 静脈血栓塞栓症の発生率が、エノキサパリンと比べて出血の危険性を増大させることなく、用量依存的な様式で生じる、態様23~35のいずれか一に記載の方法;
態様37. 治療的に効果的な量が、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩で治療される患者において全静脈血栓塞栓性事象の発生率を25%未満にするのに効果的であると臨床的に証明されている、態様23~36のいずれか一に記載の方法;
態様38. 静脈血栓塞栓性障害の治療または予防を必要とする患者に、25mg~400mgの一日総用量のミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩を経口投与することによる、その静脈血栓塞栓性障害を治療または予防するための医薬品の製造におけるミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の経口用剤形の使用。
態様39. 一日総用量が50mg~400mgである、態様38に記載の使用。
態様40. 一日総用量が25mgである、態様38に記載の使用;
態様41. 一日総用量が50mgである、態様38に記載の使用;
態様42. 一日総用量が100mgである、態様38に記載の使用;
態様43. 一日総用量が150mgである、態様38に記載の使用;
態様44. 一日総用量が200mgである、態様38に記載の使用;
態様45. 一日総用量が単回用量にて投与される、態様38~44のいずれか一に記載の使用;
態様46. 一日総用量が分割用量にて投与される、態様38~44のいずれか一に記載の使用;
態様47. 一日総用量が2回用量にて投与される、態様46に記載の使用;
態様48. 静脈血栓塞栓性障害が近位および/または遠位深部静脈血栓症、非致死的肺塞栓症、または死亡である、態様38~47のいずれか一に記載の使用;
態様49. 静脈血栓塞栓性障害が近位および/または遠位深部静脈血栓症である、態様48に記載の使用;
態様50. 静脈血栓塞栓性障害が非致死的肺塞栓症である、態様48に記載の使用;
態様51. 静脈血栓塞栓性障害が死亡である、態様48に記載の使用;
態様52. 手術から回復している患者にて術後静脈血栓塞栓性事象を予防するための医薬品の製造におけるミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の経口剤形の使用であって、ここで該医薬品を該患者に投与することで、一日当たり40mgのエノキサパリンを患者に皮下投与することでもたらされるよりも患者が術後静脈血栓塞栓性事象を経験することが少なくなる、使用;
態様53. 患者が腹部手術、膝関節置換術、または股関節置換術から回復している、態様52に記載の使用;
態様54. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の一日投与量が50mgである、態様52または態様53に記載の使用;
態様55. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の一日投与量が100mgである、態様52または態様53に記載の使用;
態様56. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の一日投与量が150mgである、態様52または態様53に記載の使用;
態様57. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の一日投与量が200mgである、態様52または態様53に記載の使用;
態様58. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の一日投与量が単回用量にて投与される、態様52~57のいずれか一に記載の使用;
態様59. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の一日投与量が分割用量にて投与される、態様52~57のいずれか一に記載の使用;
態様60. 静脈血栓塞栓性障害を治療または予防するために、患者に一日に1回または2回投与するのに適合する医薬品を製造するためのミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩の固形剤形の使用であって、ここで該投与によって全静脈血栓塞栓性事象の発生率が25%未満であって、アルファが5%でもたらされる、使用;
態様61. 全静脈血栓塞栓性事象の発生率が20%未満である、態様60に記載の使用;
態様62. 全静脈血栓塞栓性事象の発生率が15%未満である、態様60に記載の使用;
態様63. 全静脈血栓塞栓性事象の発生率が10%未満である、態様60に記載の使用;
態様64. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が50mg~400mgの範囲にある一日総用量で投与される、態様60に記載の使用;
態様65. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が50mg、100mg、200mg、および400mgからなる群より選択される一日総用量で投与される、態様60に記載の使用;
態様66. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が50mgの一日総用量で投与される、態様60に記載の使用;
態様67. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が100mgの一日総用量で投与される、態様60に記載の使用;
態様68. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が150mgの一日総用量で投与される、態様60に記載の使用;
態様69. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が200mgの一日総用量で投与される、態様60に記載の使用;
態様70. ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩が400mgの一日総用量で投与される、態様60に記載の使用;
態様71. ミルベキシアンが一日に2回投与される、態様60~70のいずれか一に記載の使用;
態様72. ミルベキシアンが一日に1回投与される、態様60~70のいずれか一に記載の使用;
態様73. 静脈血栓塞栓症の発生率が、エノキサパリンと比べて出血の危険性を増大させることなく、用量依存的な様式で生じる、態様60~72のいずれか一に記載の使用;
態様74. 治療的に効果的な量が、ミルベキシアンまたはその医薬的に許容される塩で治療される患者において全静脈血栓塞栓性事象の発生率を25%未満にするのに効果的であると臨床的に証明されている、態様60~73のいずれか一に記載の使用;
に向けられる。
【0102】
当業者であれば、本明細書に記載の実施態様と均等である多くの事項を認識するであろうし、あるいはただ単に慣用的な実験を用いるだけでその均等を確認できるであろう。
【0103】
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許および特許出願は、各個々の刊行物、特許または特許出願が、出典明示により具体的かつ個別的に本明細書に組み込まれるのを示すのと同じ程度に、出典明示により本明細書に組み込まれる。
【0104】
実施例
実施例1
選択的人工膝関節置換術を受ける参加者において、ミルベキシアンの皮下用エノキサパリンに対する研究を次のように行った。
【0105】
本研究は、無作為化でオープンラベルの研究対象の薬物-用量を盲検とする、複数の施設での研究であり、選択的人工膝関節置換術を受ける対象にて、経口用第XIa因子阻害剤であるミルベキシアンの皮下用エノキサパリンに対する効能および安全性を評価した。
【0106】
本研究の目的は、治療期間中の静脈血栓塞栓症(VTE)の全体事象(近位および/または遠位深部静脈血栓症[DVT][静脈造影評価によって無症候性と確認されるか、または客観的に症候性と確認された深部静脈血栓症]、非致死的肺塞栓症[PE]、または任意の死亡)におけるミルベキシアンの効能を決定することである。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【0107】
この研究は直接作用型の第XIa阻害剤であるミルベキシアンについての用量誘導性研究であった。該研究の目的は、静脈血栓塞栓症の予防において、40mgのエノキサパリンを皮下投与した場合と比べて、異なる経口用量(一日に2回(BIDまたはbid)および一日に1回(QDまたはqd)でミルベキシアンの安全性、忍容性および効能を評価することであった。
【0108】
方法
この研究は、一次選択的片側人工膝関節置換(TKR)術を受けている対象におけるミルベキシアンのフェーズ2のオープンラベルの二重盲検の無作為化した能動的対照の複数の施設での用量範囲の研究である。該研究はプロスペクティブ・ランダマイズド・オープンラベル・ブラインデッド・エンドポイント(PROBE)設計を用いた。
【0109】
1242人の対象を無作為に割り付けた。患者をミルベキシアンまたはエノキサパリンのいずれかを含む処置群に無作為に割り付けた。ミルベキシアン群とエノキサパリン群との対象の特性はバランスがとれており、類似する研究の対象にとって典型的であった。
【0110】
研究期間にわたって合計で8つの処理群:25~200mgの範囲のBIDの4つのミルベキシアンのBID投与レジメン、25、50、200mgの3つのミルベキシアンの一日1回の投与レジメン、40mgのエノキサパリンの一日1回の対照群があった。4つのミルベキシアンのBID投与レジメン、および200mgのミルベキシアンの一日1回の群が、中断することなく継続され、各群で150人の対象に無作為に割り付けることができた。エノキサパリン対照群も同様に300人の対象でその事前に特定された無作為化を完了した。ミルベキシアン25mgの一日1回の投与レジメンは、アドホックな中間解析(IA)の間、約3~8週間ごとに対象の治療アサイメントによって進行中の安全性および効能のデータを見直すことに関与する非盲検オペレーション委員会(OC)により休止とされ;ミルベキシアン25mgの一日1回の処理群の記録は34人の対象で打ち切られた。この時点で、ミルベキシアン50mgを一日1回のレジメンで開始するようにプロトコルに修正を加えた。その後のOCの推奨下で、無作為化の割合を修飾し、ミルベキシアン50mgの一日1回の群をそれが150人の対象の無作為化を完全に終えることができるようにした。図1は、各研究群に無作為に割り当てられる対象の数を含め、研究計画を提供する。
【0111】
研究は3つのフェーズ:TKR手術を行う前の30日までのスクリーニングフェーズ、術後10~14日の投与フェーズ(ミルベキシアンおよびエノキサパリンの両方で治療する群で治療する平均期間は11.7日間であった)、および4週間の追跡フェーズで構成された。ミルベキシアンの初回用量は、創縫合の開始として規定される、術後12~24時間に投与された。
【0112】
患者
選択的片側人工膝関節置換術を受ける患者は、彼らが50歳以上であり、選択的一次片側TKR手術を受ける予定があり、医学的に安定しており、選択的TKR手術のスクリーニングの一環として局所標準治療の一環として実施される臨床実験室試験に基づき抗凝固剤予防の適切な候補であるならば、適任であった。主な除外基準は、エノキサパリンに対する禁忌(例えば、クレアチニンクリアランス<30mL/分)、重度の肝機能障害または事前静脈血栓塞栓症の病歴、アスピリン以外の慢性抗血栓療法の必要性(100mg/日以下)、または静脈造影を受けることができないことであった。
【0113】
無作為化および研究治療
適応デザインを用い、用量-応答評価のための患者のリクルートを最適化した。用量レジメンの数、さらなる一日1回の投与レジメンを実施するためのオプション、および無作為化割合は、定期的なレビューおよび中間解析の結果に基づいた。最初に、適任な患者を、1:1:1:1:1:1:2の割合で、7つの並行して治療した群(各々、4つの群は一日に2回のミルベキシアンのレジメン(25mg、50mg,100mg、または200mg)、2つの群は一日に1回のミルベキシアンのレジメン(25mgまたは200mg)、およびエノキサパリンの群)の1つに無作為に割り当てた(図1)。中央集中型双方向ウェブベースの応答システムを用いて術後に無作為化を行い、研究センターの地理的領域で層別化した。
【0114】
手術してから12時間ないし24時間後にミルベキシアンまたはマッチするプラセボの経口投与を開始した。エノキサパリンを40mgの用量で一日に1回皮下投与し、手術前の夕方に、または手術した12ないし24時間後のいずれかに開始した。ミルベキシアンまたはエノキサパリンでの治療は、手術した後の10ないし14日間にわたって行われた。
【0115】
研究の評価項目
有効性の主要評価項目は、複合的な無症候性深部静脈血栓症(手術した10ないし14日後に行われる必須の片側静脈造影によって検出される)、確認される症候性静脈血栓塞栓症(足の症候性深部静脈血栓症または非致死的肺塞栓症)または死亡として定義される、静脈血栓塞栓症であった。片側膝関節形成術を受ける患者において、手術した足に対してのみ行う片側静脈造影で、深部静脈血栓形成の90%以上を検出し、患者のリスクを軽減する(Bullerら、Factor XI antisense oligonucleotide for prevention of venous thrombosis. N Engl J Med 2015;372:232-40;Fujiら、A dose-ranging study evaluating the oral factor Xa inhibitor edoxaban for the prevention of thromboembolism in patients undergoing total knee arthroplasty. J Thromb Haemost 2010;8:2458-68)。
【0116】
主たる有効性の副次評価項目は、(a)近位深部静脈血栓症(症候性または無症候性)、(b)遠位深部静脈血栓症(症候性または無症候性)、(c)非致死的肺塞栓症、および(d)死亡であった。調査される有効性の評価項目は静脈造影での静脈血栓症の程度であり、それは所定のカテゴリーを用いて判定委員会によって評価された。
【0117】
安全性の主要評価項目は、複合的な大出血、臨床的に関連する非大出血、および最小出血として定義される、任意の出血であった。安全性の副次評価項目は、(a)大出血、(b)臨床的に関連する非大出血、(c)複合的な大出血および臨床的に関連する非大出血として定義される、臨床的に関連する出血、および(d)最小出血であった。出血は、それがあからさまであり、2g/dL以上のヘモグロビンの減少と関連付けられるか、出血の24ないし48時間以内に時間的結合で2単位以上の血液を注入する必要がある場合に;あるいは重要な領域または器官で起こるか、死亡に起因した場合に、大出血であると分類された。手術部位での出血は、それが処置の介入を要した場合、血行動態の不安定性を引き起こした場合;あるいは動員または創傷治癒を遅延させ、長期に及ぶ入院または深部創傷感染をもたらす関節血症を引き起こす場合にのみ、大出血として定義された。診察または介入を必要とするか、または臨床的結果を有するが、大出血の基準を満たさないあからさまな出血は、臨床的に関連する非大出血として分類される。大出血または臨床的に関連する非大出血の基準を満たさない出血は、最小出血として分類された(Schulmanら、Definition of major bleeding in clinical investigations of antihemostatic medicinal products in surgical patients. J Thromb Haemost 2010;8:202-4)。
【0118】
監視および追跡
術前の30日以内の無作為化の際に、術後の1日目、4日目、7日目および10ないし14日目に、および6週間(±10日)後に患者を評価した。静脈血栓塞栓症または出血を示唆する徴候を報告するように患者を指導した。
【0119】
検査室測定
活性化部分トロンボプラスチン時間およびプロトロンビン時間を、各々、アクチンFSおよびイノビンを用いて中央検査室にて測定した(Siemens Healthcare, Tarrytown, NY)。活性化部分トロンボプラスチン時間とプロトロンビン時間との割合は、術後の値を術前に測定したそれらの値で割ることで算定した。有効性の主要評価項目によって、ミルベキシアンが1日に2回の投与に適しており、半減期が約11時間であるため、一日2回のミルベキシアンのレジメンに焦点が当てられた。
【0120】
統計的解析
有効性の証明は、統計的に有意な用量-応答であるか、またはミルベキシアンを組み合わせたBID群にとって、一次エンドポイント事象の発生率がネットワークメタ解析から95%信頼区間(95%CI、片側アルファ5%)で統計的に30%より低いかのいずれかで定義される。ネットワークメタ解析のデータから、全VTEのプラセボでの発生率は50%(95%CI、40、60)であると推定された。研究を目的とした場合には、より保守的な発生率の30%(ネットワークメタ解析におけるエノキサパリンの95%上限)が選択された。
【0121】
有効性に関する一次解析は、少なくとも1回の用量の研究用医薬品を服用しており、所定の時間枠の範囲内にて評価可能な静脈造影、文書化された症候性静脈血栓塞栓性事象、または致死的事象を有する、すべての患者を含む、修飾治療企図集団にて行われた。ミルベキシアンを組み合わせた一日に2回の用量の群での静脈血栓塞栓症の発生率を、2項検定を用いて30%と比較した。一日に2回のミルベキシアンのレジメンでの用量-応答の傾向についての証拠を、所定のモデルを用いてMCP-Modフレームワークで評価した(Pinheiroら、Model-based dose finding under model uncertainty using general parametric models. Statistics in Medicine 2014;33:1646-61)。主たる有効性の副次評価項目を解析するのに、エノキサパリンに対するミルベキシアンの各群のリスク割合、およびその対応する信頼区間を、研究領域を層別因子として利用するCochran-Mantel-Haenszel方法を用いて算定した。
【0122】
安全性の評価項目の解析は、少なくとも1回の研究用医薬品を服用した、すべての無作為に割り付けられた患者を含む、安全性集団で行われた;解析のための時間には治療の期間に加えて2日間が含まれる。各出血の評価項目では、各ミルベキシアン群での発生率をエノキサパリン群における発生率と、有効性の副次評価項目を評価するのに用いたのと同じ方法を用いて比較した。Kaplan-Meier方法を用い、ミルベキシアンまたはエノキサパリンを用いていずれかの最初の出血が起こるまでの時間を評価した。
【0123】
結果
参加者
合計で1242人の対象を無作為に割り付け、その全員をITT解析セットに入れた。1242人の対象のうち1219人の対象(98.1%)が少なくとも1回の用量の研究用薬物を服用しており、それで安全性解析セットに含めた。さらには、1048人(84.4%)の対象をmITT-CEC(14日目)解析セットに含めた。ITT解析セットにおいて、1230人(99.0%)の対象が該研究を終え、12人(1.0%)の対象が該研究を早期に中止した(11人[0.9%]は対象が撤回したためであり、1人[0.1%]は死亡したことによる)。安全性解析セットでは、1162人(95.3%)の対象が研究の治療を終え、57人(4.7%)の対象が研究の治療を早期に中止した(35人[2.9%]は有害事象によるためで、16人[1.3%]は対象がさらなる研究の治療を拒絶したためで、1人[0.1%]は死亡したためであって、5人[0.4%]は他の理由によるものである)。表1に示されるように、ITT解析セットでは、366人(29.5%)の対象は男性であり、1081人(87.5%)の対象は白人であった。年齢の平均(SD)は68.0歳(8.02歳)であり、年齢の中央値は68.0歳であった。人口学的特性およびベースライン特性は群間で均衡が取れていた。ベースライン特性は図1および表1に示される。
【表14】
【表15】
(i). 平均年齢はミルベキシアンの組み合わせとエノキサパリンとの間で同等であった((68.1に対して67.8歳)。
(ii). 対象の約2/3が65歳であり、ミルベキシアンの組み合わせにて67.6%であり、エノキサパリンで65.4%であった。
(iii). 対象の大部分は女性であり、ミルベキシアンの組み合わせでは71%で、エノキサパリンでは69.1%であった。
(iv). 平均BMIはミルベキシアンの組み合わせ(31.2kg/m2)とエノキサパリン(30.7kg/m2)との間で同等であった。
(v). 対象の大部分はBMIが30kg/m2であり、ミルベキシアンで54.4%であり、エノキサパリンで49.5%であった。ミルベキシアン 25mg BIDおよび100mg BIDはBMIが30kg/m2で、62.0%および60.8とわずかに高かった。
(vi). 活性化部分トロンボプラスチン時間の正常範囲は22ないし29秒である。
【0124】
有効性-全静脈血栓塞栓性事象(VTE)の防止
評価可能な静脈造影を、研究用医薬品を投与された1219人の患者のうち1047人(86%)で得た(図1)。この研究により、ミルベキシアンが効果的な抗血栓性剤であることが概念的に証明される。例えば、Tingら、Phase II clinical development of new drugs. pp. iv-v, 5-10 New York:Springer;2017を参照のこと。ミルベキシアンは、一日に2回と、一日に1回の両方のレジメンで用量依存的な様式にて、選択的人工膝関節置換術後の静脈血栓塞栓症の発生率を有意に減少させた。今回のデータは、術後のミルベキシアンが静脈血栓塞栓症に対して効果的な血栓予防作用を提供することを示す。
【0125】
有効性の評価項目を表2にて提供する。一日に2回のミルベキシアンの群では、有効性の主要評価項目が、25mg、50mg、100mg、または200mgのミルベキシアン(一日のミルベキシアンの全投与量が、50mg、100mg、200mg、および400mgである)を投与した中で、各々、129人の患者のうち27人(21.0%)で、124人の患者のうち14人(11.3%)で、134人の患者のうち12人(9.0%)で、131人の患者のうち10人(7.6%)で生じ(表2);その知見は統計学的に有意な用量応答(P=0.0004(片側))と一致した。有効性の主要評価項目は、ミルベキシアンを一日に2回投与した518人の患者のうち63人(12.2%)で生じ;発生率は所定のベンチマークの30%よりも有意に低かった(P<0.0001(片側))。このように、有効性を証明する基準は共に満たされた。
【0126】
一日に1回のミルベキシアンのレジメンでは、有効性の主要評価項目についての用量-応答は統計的に有意(P=0.0003(片側))であった(表2)。
【0127】
研究の主な目的は、全VTEを防止する際のミルベキシアンの有効性を測定することであった。全VTEは、近位および/または遠位深部静脈血栓症((DVT);静脈造影評価によって確認される無症候性、または客観的に確認される症候性)、非致死的肺塞栓症(PE)、あるいは10~14日間の治療期間の間の何らかの死亡として定義された。有効性の証明は、用量-応答が統計学的に有意であること、またはBIDのミルベキシアンを組み合わせた群の主要エンドポイント事象の発生率が統計学的に30%よりも低いことのいずれかとして定義された。研究では、プールしたミルベキシアンのBID用量のレジメンについて、所定の標的とする30%(全VTEの統計学的に有意な減少を伴う(p<0.0001(片側))と比較して、全VTEのこの主な目的と合致した。
【0128】
試験にて無作為に割り付けられた1242人の対象のうち、1048人(48%)はVTEの発症を評価するのに実施される評価可能な静脈造影を受けた。これらの1048人の対象の、例えば「解析セット」では、ミルベキシアン(ミルベキシアンをすべての用量/用量のレジメンで組み合わせた)を投与された796人の対象のうち108人(13.%)で、ミルベキシアンをBIDの用量レジメンで投与された518人の対象のうち63人(12.2%)で、およびエノキサパリンを投与された252人の対象のうち54人(21.4%)で全VTEが報告された(ミルベキシアンの組み合わせ vs.エノキサパリンでは相対的リスク割合が0.64(95% CI 0.48-0.85)であって;ミルベキシアン BID vs.エノキサパリンでは相対的リスク割合が0.57(95% CI 0.41-0.79)であった)。
表2:一次有効性事象およびメジャーVTEの構成要素-ミルベキシアンとエノキサパリン(Enox)との間で比較するための相対的リスクおよび信頼区間
14日目にCECがmITTを判定した。
【表16】
凡例:RR=相対的リスク割合;CI=発生率の95%信頼区間;RRの算定には、層別化因子として地域でのCochran-Mantel-Haenszel方法を用いた;VTE=静脈血栓塞栓症;DVT=深部静脈血栓症
【0129】
図2および表2にて示されるように、全VTEについては、統計学的に有意な用量応答が、4種のミルベキシアンのBIDレジメン(p=0.0004(片側))および3種の一日に1回の投与レジメン(p=0.0003(片側))にわたって見られた。エノキサパリンに対して50mg、100mgおよび200mgのBIDならびに200mgのQDの投与レジメンで、VTEの統計学的に有意な減少が生じたのに対して、25mg BIDならびに25mgおよび50mgの一日に1回の投与ではエノキサパリンと同じように行動した。特筆すべきは、一日の用量の範囲が8倍に及ぶミルベキシアンの投与群は一つとして、エノキサパリンよりも効果的でないことを示すものがなかったことである。メジャーVTEの事象は頻繁ではなく、エノキサパリン群で4人の対象(1.6%)、25mgのBIDのミルベキシアン群で1人の対象(0.8%)、50mgのBIDのミルベキシアン群で1人の対象(0.8%)、100mgのBIDのミルベキシアン群で2人の対象(1.5%)、および50mgの一日に1回のミルベキシアン群で2人の対象(1.6%)が発症した。メジャーVTEの事象(例えば、近位DVT、PEおよび死亡)はほとんどないため、全VTE事象の大部分はマイナー、例えば、遠位DVTであった。以下の表3を参照のこと。
表3:14日目を通して臨床事象委員会ごとの事象型による全VTE事象
【表17】
【0130】
全体として、用量データから、ミルベキシアンの一日総用量(TDD)が100mgでは、エノキサパリンと比較した場合に、全VTE事象を有意に減少させ、ミルベキシアンのTDDが200mgでは、エノキサパリンと比べた場合に、全VTEを>50%で有意に減少させることが分かった。ミルベキシアンは、最低完了投与群(一日に1回の25mg、一日に1回の50mg、および25mg BID)でエノキサパリンと比較した場合に、同等のVTE発生率を示した。
【0131】
ミルベキシアンは、100mgのTDDで、エノキサパリンと比較した場合に、全VTE事象の数を有意に減少させるだけでなく、DVTの対象において、全VTE事象の数に最も大きく寄与する因子である、DVTの重篤度を有意に減少させた。独立した盲検の判定員によって評価される静脈造影を用いてDVTの対象を同定し、DVTの重篤度の評点を割り当てた。各静脈造影を評価するには、11個のセグメントを血栓の存在および程度について評価した。各セグメントを評価する場合、静脈のセグメントにある血栓の存在に応じて、存在するならば、その血栓の程度に応じて重篤度の評点を割り当てた。重篤度の評点は、0~3の評点で、以下のように割り当てた:0=血栓なし;1=静脈セグメントの長さの1/3未満;2=1/3以上で2/3未満;および3=2/3より大きい。図3に示されるように、TDDが100mgのミルベキシアンで処理した対象にて最も重度の評点である3のセグメントの発生率(50mgBID、100mgBID、200mgBIDおよび200mgの一日に1回のミルベキシアンの投与群で、対象にて、各々、0、1.52、2.73および0%の発生率)は、エノキサパリンで治療した対象の評点(5.42%発生率)の半分以下であった。その上、意外にも、50mgのBIDのミルベキシアンまたは200mgの一日に1回のミルベキシアンのいずれかで治療した対象で、重篤度の評点が3のDVTの発生率は0%であった。全体として、DVTの対象を静脈造影に付した重篤度の平均評点は、エノキサパリンで治療した評点と比べて100mgのTDDでミルベキシアンで治療した対象において1.17~1.81低下した。図4を参照のこと。
【0132】
安全性-出血の発生
研究の鍵となる二次目的は、治療期間中に任意の出血事象が発生した場合にミルベキシアンの用量-応答の傾向を評価することであった。任意の出血は、複合的な外科的セッティングのために修飾された国際血栓止血学会(the International Society on Thrombosis and Haemostasis)(ISTH)の基準による大出血、臨床事象委員会(CEC)によって評価される臨床的に関連する非大出血事象、または最小出血事象として定義された。静脈血栓塞栓症の発生率は、100mgの用量のミルベキシアンを毎日用いた場合に、エノキサパリンでの発生率よりも有意に低かった。任意の出血の発生率は、ミルベキシアンおよびエノキサパリンの両方で4.1%であったが、複合的な大出血と臨床的に関連する非大出血との発生率は低く、ミルベキシアンの一日の総用量を25mgから400mgとする16倍の範囲でも用量応答の証拠は見つからなかった。かくして、術後のミルベキシアンは静脈血栓塞栓症を防止するのに効果的であり、臨床的に関連する出血が低リスクであるのと関連付けられる。
【0133】
出血の評価項目を表4に示す。安全性の主要評価項目である何らかの出血は、ミルベキシアンを投与された923人の患者のうち38人(4.1%)で起こり、エノキサパリンを投与された296人の患者のうち12人(4.1%)で生じた。大部分の出血は最低のカテゴリーに属するものであり、手術部位に及ぶものであった。ミルベキシアンでは大出血はなく、エノキサパリンでは1人であった。ミルベキシアンおよびエノキサパリンを用いての臨床的に関連する非大出血の発生率は、各々、0.8%および1.4%であった。
【0134】
8倍のミルベキシアンの用量範囲に及ぶ、およびエノキサパリンについての任意の出血の発生率は低く、50人の対象で生じたに過ぎなかった。比較対照のエノキサパリンの場合、出血の全体の発生率は、内部で実施されたネットワーク・メタ解析(7.22%の推定値に対して4.1%の観察値);TKRの後のVTEを防止するのにセッティングした種々の抗凝固剤に関して公開された結果のネットワーク・メタ解析(Weitzら、Milvexian for Prevention of Venous Thromboembolism. NEJM. 2021;プロトコル)に基づいて予想される発生率の半分よりも低くかった。表4を参照のこと。
表4:ネットワーク・メタ解析を用いて治療による全VTE、任意の出血、および大出血+CRNM出血について予想される事象発生率
【表18】
*任意の出血は、複合的な外科的セッティングにおけるISTH大出血、臨床的に関連する非大出血(CRNM)事象、または最小出血事象である。
【0135】
ミルベキシアンでは、任意の出血は、一日に1回の25mgに無作為に割り付けられた対象で0%から、一日に1回の200mgのレジメンで6.1%までの範囲にあった。25mgの一日に1回またはBIDの投与では、出血はほとんど認められなかった(一日に1回、BIDで、各々、0%、1.4%)。任意の出血の発生率は、ミルベキシアンの用量が高くなるに従って4.7%(50mgまたは100mg BID)から6.1%(200mg QD)に増加した。しかしながら、一日総用量を投与することで評価した場合、用量応答はなかった。図5および表5を参照のこと。
表5:ミルベキシアン群とエノキサパリン群の間で治療上の主要安全性エンドポイントおよび構成要素の大出血+CRNMおよび最小出血事象(CEC判定)を比較するための相対的リスクおよび信頼区間
【表19】
凡例:RR=相対的リスク割合;CI=発生率の95%信頼区間;RRの算定には、層別化因子として地域でのCochran-Mantel-Haenszel方法を用いた
注:治療上期間とは、研究薬の投与を開始してから最終の投与日まで+2日間と定義した。
ソース出力:TSFMOD02C
【0136】
8倍のミルベキシアンの用量範囲に及ぶ、およびエノキサパリンについてのISTH大出血+CRNM出血の発生率は、この大きさと期間の研究で予想されるよりも低く、合計で12人の対象でしか発生しなかったが、ミルベキシアンの出血プロファイルのより臨床的に関連してかつ客観的な評価が得られた。大出血+CRNM出血はエノキサパリンで治療した対象の5人(1.7%)で報告されており、VTEセッティングにおける過去の発生率3.55%の約半分であった。致命的な出血がなく、エノキサパリンを服用している間に硬膜下血腫を呈した対象にて大出血事象が1件だけあった。大出血+CRNM出血がミルベキシアンで治療した7人の対象(0.8%)で報告され、それらはミルベキシアンを25、50、100、200mgのBIDで、50および200mgのQDで用いる場合で、各々、0、1.4%、0.7%、0.7%、1.3%および0.7%、例えば、0.7%~1.4%の発生率の範囲でもたらされた。ミルベキシアンでは、致命的な出血事象または大出血事象はなく、いずれの明確な出血責任とも関連付けられなかった。何らかの出血の発生は、3種の出血分類(大出血、CRNM、最小出血)にてエノキサパリンとミルベキシアン(組み合わせ)との間で比較可能であった(表6)。CECはミルベキシアン群で一人も大出血を認定しなかった(エノキサパリンでは1人)。CRNM出血の発生はエノキサパリンでは高かったが、両方の群で数値的には低かった。出血の大部分は皮膚関連であり、ミルベキシアン群では線維溶解活性の高い領域(例えば、口腔、鼻、および尿路等)にて出血が増加する傾向はなかった。エノキサパリンよりもミルベキシアン(すべての組み合わせ)で数的により多くの最小出血事象が報告された。高い発生率はその大部分が手術部位の回りで報告される皮膚出血部位によるものであった。
表6. ミルベキシアン群とエノキサパリン群の間で主要安全性エンドポイントおよび構成要素(CEC判定)を比較するための発生率および相対的リスク;安全性解析セット/治療
【表20】
【0137】
全体として、ミルベキシアン群で出血発生率の用量応答はなく;用量を増やしても出血リスクの増加は観察されず、ミルベキシアンでの出血発生率は低く、試験したすべての用量で横ばいであった。このことは、直接作用型経口抗凝固剤(DOAC)(例えば、アピキサバン、リバロキサバン等)を含め、暴露が増加するにつれて出血率が高くなるところの、承認されているすべての抗凝固剤とは対照的である。
【0138】
ミルベキシアン治療は、活性化部分トロンボプラスチン時間の割合を用量依存的な様式にて増加させたが、その一方でエノキサパリンでは明らかな作用はなかった。出血に関して用量依存的増加の証拠はミルベキシアンで認められなかった(図6)。ミルベキシアンまたはエノキサパリンはいずれもプロトロンビン時間の割合を増加させなかった。活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)割合の中央値、ならびに種々の用量のミルベキシアンおよびエノキサパリンでの任意の出血および臨床的に関連する出血(大出血および臨床的に関連する非大出血として定義される)の率を図6に示す。活性化部分トロンボプラスチン時間割合のプロットにおいて、中央線は中央値を示し;枠の上端と下端は、各々、四分位範囲の上限と下限を示し;枠の上部と下部の縦線は、各々、範囲の上限と下限を示す。四角は何らかの出血の発生率を示し、一方で丸は臨床的に関連する出血の発生率、複合的な大出血と臨床的に関連する非大出血との発生率を示す。aPTTは活性化部分トロンボプラスチン時間を示す。
【0139】
実施例2
ミルベキシアンは、ウサギでの電気誘導性頸動脈血栓(ECAT)のウサギ実験で、血栓形成を予防し、かつ治療すると評価された。ウサギでのECAT実験は、アピキサバンに基づくVTE予防における臨床結果に対して較正された。この実験では、血栓重量の50%減をもたらす濃度を標的とすることが、アピキサバンの臨床用量の定常状態トラフ濃度と相互に関連付けられた。
【0140】
Wongらによって、Nonpeptide factor Xa inhibitors:II. Antithrombotic evaluation in a rabbit model of electrically induced carotid artery thrombosis. J Pharmacol Exp Ther. 2000;295:212-8に記載される、ウサギでのECAT実験を、この研究において血栓誘導後の頸動脈血流に対するビヒクルおよびミルベキシアンの作用を評価するのに用いた。
【0141】
雄のニュージーランド白ウサギをケタミン(50mg/kg+50mg/kg/h筋肉内)およびキシラジン(10mg/kg+10mg/kg/h筋肉内)で麻酔処理に付した。外部ステンレス鋼双極電極を用い、3分間にわたって4mAで対照となる頸動脈を電気的に刺激することで血栓形成を誘発した。頸動脈血流を電磁フロープローブを用いて90分間にわたって連続して測定し、血栓形成誘発の閉塞をモニター観察した。頸動脈血流の積分値を流量-時間曲線下面積で測定した(Wongら参照のこと)。加えて、動脈損傷から由来の血栓を取り除き、秤量紙上で2回ブロットして残りの流体を取り出して秤量した。
【0142】
化合物をIV注入で投与して最小の実験変動の安定した血漿中レベルを達成した。次に反対側の頸動脈に、上記した方法と同じ方法を用いて、血栓形成を電気的に誘発した。予防ECAT実験において、血管を損傷させる30分前に、ミルベキシアンまたはそのビヒクルをボーラス注射によって投与し、持続IV注入で補充した。治療ECAT実験(Wong PCら、BMS-593214、an active site-directed factor VIIa inhibitor:enzyme kinetics, antithrombotic and antihaemostatic studies. Thromb Haemost. 2010;104:261-9を参照のこと)において、血管を損傷させた15分後に上記されるようにミルベキシアンおよびビヒクルを投与した。IV注入は両方の実験で実験期間中続けられた。ミルベキシアンの血漿サンプル中の濃度は、特異的および高感度液体クロマトグラフィー/質量分光法(LC/MS/MS)によって測定された。
【0143】
予防研究において、ミルベキシアン群は、ビヒクル(10% N,N-ジメチルアセトアミド:25% PEG300:65% 5%デキストロース)およびミルベキシアン(mg/kg+mg/kg/h)を0.063+0.04、0.25+0.17、および1+0.67(一群に付きn=6)で構成された。治療研究において、ミルベキシアン群は、ビヒクル(10% N,N-ジメチルアセトアミド:25% PEG300:65% 5%デキストロース;n=6)およびミルベキシアン(mg/kg+mg/kg/h)を0.25+0.17、および1+0.67(一群に付きn=6)で構成された。
【0144】
予防ECAT研究において、注入を開始してから30分および120分経過した後のミルベキシアンの血漿中濃度を測定した。次に各動物での注入を開始してから30分および120分経過した後のミルベキシアンの血漿中濃度の平均値を、濃度-応答曲線を解析し、抗血栓EC50(50%の最大応答を付与する濃度)を決定するのに用いた。積分した血流、血栓重量、aPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)、TT(トロンビン時間)およびPT(プロトロンビン時間)も測定した。治療ECAT研究において、研究の終了時に、ミルベキシアンの血漿中濃度だけを測定した。
【0145】
図7は、予防ECATウサギ実験において血栓誘発後の頸動脈血流に対するビヒクルおよびミルベキシアンの作用を示す。電流刺激の後、血栓形成が誘発され、血流はゼロにまで減少し、動脈はビヒクル処理の動物にて約40~45分で閉塞した。ミルベキシアンは頸動脈の開存期間において用量依存的増加と関連付けられた。図8は予防ECATウサギ実験にてビヒクルおよびミルベキシアンの積分に付した血流に対する作用を示す。ビヒクル処理に供した動物の血栓誘発後の積分に付した血流は平均して11±2%であった。血栓の形成を遮断することで、ミルベキシアンは積分に付した血流にて用量依存的な増加と関連付けられた。最高用量では、積分に付した血流は対照レベルの76±5%であった。
【0146】
ミルベキシアンは、血栓の重量での用量依存的減少と関連付けられた。最高用量では、血栓の重量は、対照のレベルの70±2%まで減少した。図9は予防ECAT実験におけるミルベキシアンの用量応答曲線を示す。ミルベキシアンは、55nMの20%最大有効濃度(EC20)(95%信頼区間[CI]=23-128)、375nMのEC50(95%CI=250-561)および0.7のヒル(Hill)勾配(95%CI=0.4-1)で濃度依存的抗血栓作用と関連付けられた。
【0147】
図10は、ミルベキシアンのaPTT、TT、およびPTについてのエクスビボ作用を示す。ミルベキシアンは、最高の2用量でaPTTを有意に高め、FXIa阻害の作用機序と一致して、TTおよびPTを有意に変化させなかった。図11は、ウサギECATにおけるミルベキシアンの抗血栓作用と、そのエクスビボでのaPTT活性との間で良好な相関関係(r=0.83)を示す。図11はまた、この実験にて血栓重量を50%減少させるにはaPTTを1.6倍長くする必要のあることを示す。
【0148】
図12は治療ECATにおけるビヒクルおよびミルベキシアンの抗血栓作用を示す。血栓形成を開始した後、血流は徐々に減少し、異なる群間で15分後には同じレベルとなった。15分後にミルベキシアンを投与すると、損傷した動脈の開存性は用量依存的な様式にて改善され、90分後の頸動脈血流は、ビヒクルおよびミルベキシアンで、各々、0.25+0.17および1+0.67mg/kg±mg/kg/hで処理した群にて平均して1±0.3、39±10、および66±2%*であった(*P<0.05vsビヒクル;n=6/群、図12)。また、0.25+0.17および1+0.67mg/kg+mg/kg/hの用量で各々、25±7、および61±6%の有意な用量-依存的な血栓重量の減少をもたらした(*P<0.05;n=6/用量)。ミルベキシアンの治療ECATにおけるEC50は1.06μM(95%CI=0.76-1.47)であり、これは予防ECATにて得られるEC50よりも約2.8倍高かった(図9)。
【0149】
ウサギでのECAT実験において、ミルベキシアンは、出血時間を有意に増加させることなく、血栓重量の減少(図9)および血流の維持の両方を用量-依存的に引き起こした。ウサギECAT実験にて最大有効濃度の半分に相当する血漿中濃度(EC50)は235ng/mL(375nM)であった。ウサギFXIaに対するヒトFXIaの効力の違い(ミルベキシアンはウサギFXIaよりも強力である)、およびウサギに対するヒトとの血漿タンパク質の結合の違い(タンパク質結合はウサギ血漿よりもヒト血漿中で低い)を修正することは、トラフ標的濃度として34.5ng/mL(55nM)のヒト標的が得られる。
【0150】
実施例3
Wongらによって記載されるウサギECAT実験は、ウサギECAT研究において使用された(Wangら、J. Pharmacol. Exp. Ther. 295:212-8, 2002)。ECAT実験は、ビヒクル、FXI-ASO2、またはFXI-ASO1を最終投与から3ないし4日後に行われた。FXI-ASO1はGTAACATGTGCCCTTTCCTTの公称ヌクレオチド配列を有し、ウサギFXI mRNA内の配列に対して相補的である。FXI-ASO2(コントロールASO)はCCTTCCCTGAAGGTTCCTCCの公称ヌクレオチド配列を有し、ウサギmRNAにおいて知られている相補配列はない。オリゴヌクレオチドは、バックボーンにてホスホロチオエートで、そして中央にデオキシギャップのあるウイングでは2’-O-メトキシエチルで化学的に修飾された(いわゆる、5-10-5デザイン)。シトシン塩基は5-メチルシトシンとして表現された。
【0151】
FXI-ASO1およびFXI-ASO2の別個のサンプルを各用量について化学天分で秤量した。投与される用量がFXI-ASOの真の量を表すように、ASO含量を重量%として考慮した。投与する直前に、ASOをセイラインに溶かして4、10または30mg/mLの濃度とし、0.5mL/kgの容量で2、5または15mg/kgの用量を皮下投与可能とした。投与は週に2回、およそ3日と半日の間隔で、合計で4週間にわたって(8回の投与)行われた。
【0152】
雄のニュージランド白ウサギをケタミン(50mg/kg+50mg/kg/h筋肉内)およびキシラジン(10mg/kg+10mg/kg/h筋肉内)で麻酔処理に付した。外部ステンレス鋼双極電極を用いて4mAで3分間にわたって頸動脈を電気的に刺激することで血栓形成を誘発した。頸動脈血流を電気刺激を開始する30分前から刺激した後の90分間にわたって電磁フロープローブを用いて連続して測定し、血栓形成誘発の閉塞をモニター観察した。頸動脈血流の積分値を、電気刺激前のコントロール期間のパーセンテージとして、流量-時間曲線下面積で測定した。加えて、動脈損傷から由来の血栓を取り除き、秤量紙上でブロットに2回供して残りの流体を取り出して秤量した。
【0153】
電流刺激の後、血栓形成が誘発され、血流はゼロにまで減少し、動脈はビヒクル処理の動物にて約40~45分で閉塞した。FXI-ASO1は頸動脈の開存期間の用量依存的増加を引き起こした。
【0154】
電気刺激前の期間と比べて、血栓形成誘発後の血流の積分値は、平均して、ビヒクル処理の動物で12±3%、FXI-ASO1処理の動物で23±8%であった。血栓の形成を遮断することで、FXI-ASO1処理は血流の積分値の用量依存的増加を引き起こした。2mg/kgの用量で、血流の積分値は創傷前のレベルの64±8%であった。より高い用量で、血流の積分値は90%より上に維持された。
【0155】
FXI-ASO2では血栓の重量は減少しなかった。FXI-ASO1は血栓の重量の用量-依存的減少を引き起こした。最高用量で、血栓の重量はビヒクルと比べて82%減少した。図13はFXIのASO誘発性阻害によるウサギECAT実験にて観察されるFXIレベルの、および血栓重量の用量-依存的減少を示す。
【0156】
ウサギにてFXIの循環を減らすことは、ECAT実験における動脈血栓形成の予防にて強力な抗血栓効能を示した。ウサギECAT実験においてaPTTの1.3倍の長期化が観察され、80%の血栓重量の減少が達成された。凝固アッセイで測定された第XI因子凝固活性は、質量分析で測定された血漿中FXI濃度と十分に相関していた。ウサギECAT実験にて、FXI:Cを正常値の30%未満に低下させると、血流の積分値がほぼ完全に維持され、血栓の重量が80%以上減少した。
【0157】
健康な対象から得られるデータに基づき、集団PKモデリングは、VTE予防研究においてアピキサバンおよびASOに基づくトラフ濃度の標的を達成する可能性のある用量は、100ないし200mgを1日に1回と、25ないし50mgをBIDとの間にある。50mgを1日に1回投与することで、健康なボランティアにてaPTTを約24時間にわたって1.5倍長期化させ、血栓形成のウサギECAT実験にて抗血栓効能に必要とされる濃度(EC50)より上の血漿中濃度が持続期間にわたって得られた。アピキサバンおよびFXI阻害剤のFXI-ASO1の両方のウサギECAT実験において標的とする濃度の範囲を示すデータは、ミルベキシアンが患者において同等以上の効能を提供する可能性を支持する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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【国際調査報告】