(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサの制御
(51)【国際特許分類】
G01J 1/42 20060101AFI20240912BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20240912BHJP
G01J 1/44 20060101ALI20240912BHJP
G01D 5/347 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G01J1/42 N
A61M5/315 550R
G01J1/44 A
G01D5/347 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518317
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2022076291
(87)【国際公開番号】W WO2023046796
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ジェイソン・ドレイク
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・アントニー・スミス
【テーマコード(参考)】
2F103
2G065
4C066
【Fターム(参考)】
2F103BA37
2F103CA01
2F103CA03
2F103DA01
2F103EA02
2F103EA14
2F103EB06
2F103EB12
2F103EB32
2G065AA12
2G065AB02
2G065AB22
2G065AB28
2G065BA07
2G065BC01
2G065BC08
2G065BC21
2G065BC22
2G065BC28
2G065DA10
2G065DA15
2G065DA20
4C066BB01
4C066CC01
4C066EE06
4C066FF05
4C066HH02
4C066HH13
4C066NN04
4C066QQ48
4C066QQ52
4C066QQ73
4C066QQ79
4C066QQ80
4C066QQ82
4C066QQ92
(57)【要約】
薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサ(800)を制御する方法が開示され、センサ(800)は発光器(802)と、受光器としてのフォトトランジスタ(804)とを含み、方法は、発光器(802)のための第一の駆動信号とフォトトランジスタ(804)のための第二の駆動信号とを生成することを含み、第一の駆動信号が発光器(802)をオフに切り換えるために生成された場合、第二の駆動信号はフォトトランジスタ(804)にバイアスをかけるために生成され、第一の駆動信号が発光器(802)をオンに切り換えるために生成された場合、第二の駆動信号はフォトトランジスタ(804)の出力信号を取得するために生成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達装置(1)の又は薬物送達付属装置のセンサ(800)を制御する方法であって、前記センサ(800)は、発光器(802)と、受光器としてのフォトトランジスタ(804)とを含み、前記方法が、
- 前記発光器(802)のための第一の駆動信号と前記フォトトランジスタ(804)のための第二の駆動信号とを生成すること
を含み、
- 前記第一の駆動信号が前記発光器(802)をオフに切り換えるために生成された場合、前記第二の駆動信号が、前記フォトトランジスタ(804)にバイアスをかけるために生成され、
- 前記第一の駆動信号が前記発光器(802)をオンに切り換えるために生成された場合、前記第二の駆動信号が、前記フォトトランジスタ(804)の出力信号を取得するために生成される、
方法。
【請求項2】
前記第二の駆動信号が、デフォルトでは、前記フォトトランジスタ(804)にバイアスをかけるために生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発光器(802)をオンに切り換えるために前記第一の駆動信号を生成することが、既定のパルス時間の電流パルスを生成することを含み、前記電流パルスが、前記フォトトランジスタ(804)の前記出力信号が既定の値、特にアナログ-デジタル変換器のフルスケールの約66%に到達し得るように選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記フォトトランジスタ(804)の出力信号を取得するための前記第二の駆動信号が、前記発光器(802)をオンに切り換えるための前記第一の駆動信号の生成とほとんど同時に、又は前記発光器(802)をオンに切り換えるための前記第一の駆動信号の生成後の既定の遅延時間で、又は前記発光器(802)をオンに切り換えるための前記第一の駆動信号の生成前の既定の遅延時間で生成される、請求項1、2、又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記フォトトランジスタ(804)の出力信号を取得するために前記第二の駆動信号を生成することが、信号取得入力を前記フォトトランジスタ(804)の出力に接続して、既定の取得時間、特に前記既定のパルス時間よりも長い時間にわたり前記フォトトランジスタ(804)の前記出力信号を受信するためのスイッチング信号を生成することを含む、請求項1、2、3、又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記第二の駆動信号が、前記フォトトランジスタ(804)の出力を既定の電圧電位、特に0ボルトまで引き下げることによって、前記フォトトランジスタ(804)にバイアスをかけるために生成される、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記フォトトランジスタ(804)の前記出力信号をサンプリングによって取得することと、前記出力信号をデジタル信号に変換することとを含む、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサ(800)を制御する装置であって、前記センサ(800)が発光器(802)と、受光器としてのフォトトランジスタ(804)とを含み、前記装置が請求項1~7の何れか1項に記載の方法を実行するように構成される、装置。
【請求項9】
前記発光器(802)のための第一の駆動信号と、前記フォトトランジスタ(804)のための第二の駆動信号とを生成するように構成されたコントローラ(900)であって、前記フォトトランジスタ(804)の出力信号を受信するために前記フォトトランジスタ(804)の出力(801)に接続される入力(901)を含むコントローラ(900)、特にマイクロコントローラを含み、前記入力(901)が、既定の電圧電位、特に0ボルトと、前記コントローラに含まれるアナログ-デジタル変換器の入力(906)との間で、コントローラの内部で切り換え可能である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記アナログ-デジタル変換器の前記入力(906)が、前記フォトトランジスタ(804)からの電荷を受けるための入力キャパシタンスであって、既定の立ち上がり時間よりも低い、前記アナログ-デジタル変換器の入力電圧の立ち上がり時間を得るように選択された入力キャパシタンスを有する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
薬物送達装置(1)又は薬物送達付属装置のためのセンサ(1000)であって、
- 第一の周波数範囲内の光を放出するように構成された発光器(802)と、第二の周波数範囲内の受け取った光を検出するように構成されたフォトトランジスタ(804)とを含み、前記第二の周波数範囲は前記第一の周波数範囲を含む、少なくとも1つのセンサユニット(800)と、
- 前記少なくとも1つのセンサユニット(800)を制御するように構成された、請求項8、9、又は10に記載の装置(900)と
を含むセンサ(1000)。
【請求項12】
前記発光器(802)により前記第一の周波数内で放出された前記光が、第一のピーク波長及び第一の半値全幅を有し、前記フォトトランジスタの光検出スペクトルが、第二のピーク波長及び第二の半値全幅を有し、前記第一のピーク波長と前記第一の半値全幅とが、前記放出された光のスペクトルが前記フォトトランジスタ光検出スペクトルに含まれ、前記発光器(802)から放出され、前記フォトトランジスタ(804)により受け取られた光が前記装置(900)によりさらに処理されるために十分な前記フォトトランジスタ(804)の前記出力信号の信号レベルを生成するように選択される、請求項11に記載のセンサ(1000)。
【請求項13】
前記第一のピーク波長が約936nmであり、前記第一の半値全幅が約59nmであり、前記第二のピーク波長が約872nmであり、前記第二の半値全幅が276nmである、請求項12に記載のセンサ(1000)。
【請求項14】
前記フォトトランジスタ(804)が約47kオームの負荷に接続される、請求項11、12、又は13に記載のセンサ(1000)。
【請求項15】
薬物送達装置(1)又は薬物送達付属装置、特に注射ペンであって、
- 薬物容器(14)を保持するための本体(10)と、
- 送達されるべき薬物投与量を選択するための、選択及び/又は送達される薬物投与量を検出するための光学エンコーダシステム(500)を含む投与量選択機構と、
- 薬物投与量選択及び/又は送達時に前記光学エンコーダシステム(500)の一部の移動を、前記フォトトランジスタによる前記光学エンコーダの前記移動部からの放出光の反射の検出に基づいて検出するように配置された、請求項11~14のいずれか1項に記載のセンサ(1000)と
を含む薬物送達装置(1)又は薬物送達付属装置、特に注射ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2016131713A1号パンフレットは、注入装置に取り付けるためのデータ収集装置及びそこからの薬剤投与量情報を収集することに関する。データ収集装置は、注入装置に取り付けるように構成された嵌合機構と、薬剤の送達中に、注入装置の可動投与量プログラミングコンポーネントの、データ収集装置に関する移動を検出するように構成されたセンサ機構と、前記検出された移動に基づいて、注入装置により投与される薬剤投与量を特定するように構成されたプロセッサ機構と、を含み得る。センサ機構は、特に発光ダイオード(LED)等の光源を含む光センサ、例えば光学式エンコーダユニットと、光変換器等の光検出器と、を含み得る。プロセッサ機構は、光学式エンコーダによりパルスが出力されてから経過した時間をモニタし、前記時間が所定の閾値を超えた場合に前記薬剤投与量を特定するように構成され得る。
【0003】
国際公開第2019101962A1号パンフレットは、薬剤注入装置に関する。注入装置は、既定の角度周期性を有するロータリエンコーダシステムを含む可動投与量プログラミングコンポーネントと、センサ機構であって、薬剤の投与中、センサ機構に関する可動投与量プログラミングコンポーネントの移動を検出するように構成され、第一の周波数でのストローブサンプリングモードで動作するように構成された第一の光センサと、第二の光センサであって、第二の光センサに関するロータリエンコーダシステムの移動を検出するように構成され、第一の周波数よりも低い第二の周波数でのストローブサンプリングモードで動作するように構成された第二の光センサを含むセンサ機構と、前記検出された移動に基づいて、注入装置により投与される薬剤投与量を特定するように構成されたプロセッサ機構と、を含む。例えば赤外線(IR)反射センサであり、LEDからIR光を放出し、エンコーダシステムのIR反射領域から反射されたIR光を検出する光センサを含むセンサ機構を制御するために、コントローラが提供され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサを制御する方法及び装置を説明する。
【0005】
1つの態様において、本開示は、薬物送達装置の又は薬物送達付属装置のセンサを制御する方法を提供し、センサは、発光器と、受光器としてのフォトトランジスタとを含み、方法は、発光器のための第一の駆動信号とフォトトランジスタのための第二の駆動信号とを生成することを含み、第一の駆動信号が発光器をオフに切り換えるために生成された場合、第二の駆動信号は、フォトトランジスタにバイアスをかけるために生成され、第一の駆動信号が発光器をオンに切り換えるために生成された場合、第二の駆動信号は、フォトトランジスタの出力信号を取得するために生成される。フォトトランジスタにバイアスをかけ、IR LEDを適切に駆動することにより、センサの応答時間を製造者の仕様と比較して大幅に改善できる。方法は、受光器としてフォトトランジスタを有する薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサの何れの応用にも適用することができる。薬物送達装置は、例えば、注射ペン又はオートインジェクタであり得る。方法は、薬物投与量選択及び排出を検出するために光学エンコーダシステムを利用する薬物注射ペン、例えば国際公開第2014033195号パンフレットに記載の注射ペンにおいて使用されるセンサに、特に、光学エンコーダシステムによる投与量測定の正確さを向上するために使用するのに特に適している。「光」という用語は、本明細書で使用されるかぎり、人間の目で認識可能な可視光の他に赤外(IR)光及び紫外(UV)光を含む電磁スペクトルの部分内の電磁放射を含むと理解されたい。
【0006】
実施形態において、第二の駆動信号は、デフォルトではフォトトランジスタにバイアスをかけるために生成され得る。それゆえ、フォトトランジスタは、薬物送達装置の測定電子部品に電源投入すると直ちにあるモードで動作し得て、その場合、フォトトランジスタの所望の応答速度で測定値を直ちに得ることができる。それゆえ、所望の測定の正確さが、薬物送達又は薬物送達付属装置の電源投入後、ほぼ直ちに得られ得る。
【0007】
実施形態において、発光器をオンに切り換えるために第一の駆動信号を生成することは、既定のパルス時間の電流パルスを生成することを含み、電流パルスは、フォトトランジスタの出力信号が既定の値、特にアナログ-デジタル変換器のフルスケールの約66%に到達し得るように選択される。これによって、発光器により光を放出するための最小電力を使用しながら、飽和から十分に遠く、公差のためのあき高があり、高いダイナミックレンジの、フォトトランジスタの出力信号の良好な信号レベルを得ることができる。
【0008】
別の実施形態において、フォトトランジスタの出力信号を取得するための第二の駆動信号は、発光器をオンに切り換えるための第一の駆動信号の生成とほとんど同時に、又は発光器をオンに切り換えるための第一の駆動信号の前の既定の時間に、又は発光器をオンに切り換えるための第一の駆動信号の生成後、既定の遅延時間で生成され得る。第一及び第二の駆動信号の同時生成、すなわちほとんど同時の生成が通常であり得るが、第一の駆動信号の生成後に遅延させた第二の駆動信号の生成も、特に受け取った光パルスに対するフォトトランジスタの応答が遅延されてよい場合には採用することができる。
【0009】
また別の実施形態において、フォトトランジスタの出力信号を取得するために第二の駆動信号を生成することは、信号取得入力をフォトトランジスタの出力に接続して、既定の取得時間、特に既定のパルス時間よりも長い時間にわたりフォトトランジスタの出力信号を受信するためのスイッチング信号を生成することを含み得る。スイッチング信号は、例えば、スイッチ、例えばトランジスタを制御して、フォトトランジスタと信号取得回路構成、例えばサンプルホールド回路にバイアスをかけるための電圧電位の切り換えを行い得る。
【0010】
実施形態において、第二の駆動信号は、フォトトランジスタの出力を既定の電圧電位、特に0ボルトまで引き下げることによって、フォトトランジスタにバイアスをかけるために生成され得る。それゆえ、特定の電圧源は提供されなくてよく、アース接続で十分である。
【0011】
実施形態において、方法は、フォトトランジスタの出力信号をサンプリングによって取得することと、出力信号をデジタル信号に変換することとを含み得る。デジタル信号は、論理回路、特にプロセッサによってデジタル的に直接処理され得る。
【0012】
別の態様において、本開示は、薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサを制御する装置を提供し、センサは、発光器と、受光器としてのフォトトランジスタとを含み、装置は、本願で開示される方法を実行するように構成される。装置は、例えば電子回路構成、例えばASIC(特定用途回路)、(F)PGA((フィールド)プログラマブルゲートアレイ)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)又は、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、不動小数点ユニット(FPU)、センサコントローラ、若しくはモーションコントローラを含むがこれらに限定されないプロセッサによって実装され得る。
【0013】
実施形態において、装置は、コントローラ、特にマイクロコントローラを含み得て、これは発光器のための第一の駆動信号とフォトトランジスタのための第二の駆動信号を生成するように構成され、フォトトランジスタの出力に接続された、フォトトランジスタの出力信号を受信するための入力を含み、入力は、既定の電圧電位、特に0ボルトと、コントローラに含まれるアナログ-デジタル変換器の入力との間で、コントローラ内部で切り換えることができる。コントローラは、プロセッサに加えて、別の専用回路構成、例えばフォトトランジスタにバイアスをかけるための電圧及び電流源、発光器のための制御信号を生成するための制御回路構成、及びフォトトランジスタの出力信号を取得するための回路構成を含み得、これは本願で開示される方法を実行するための専用ファームウェアによりプログラムできる。
【0014】
別の実施形態において、アナログ-デジタル変換器の入力は、フォトトランジスタからの電荷を受けるための入力キャパシタンスであって、既定の立ち上がり時間よりも低い、アナログ-デジタル変換器の入力電圧の立ち上がり時間を得るように選択された入力キャパシタンスを含み得る。
【0015】
また別の態様において、本開示は、薬物送達装置又は薬物送達付属装置のためのセンサを提供し、センサは、第一の周波数範囲内の光を放出するように構成された発光器と、第二の周波数範囲内の受け取った光を検出するように構成されたフォトトランジスタとを含み、第二の周波数範囲は第一の周波数範囲を含む、少なくとも1つのセンサユニットと、本願で開示され、少なくとも1つのセンサユニットを制御するように構成された装置と、を含む。
【0016】
実施形態において、発光器により第一の周波数内で放出された光は、第一のピーク波長及び第一の半値全幅を有し、フォトトランジスタの光検出スペクトルは、第二のピーク波長及び第二の半値全幅を有し、第一のピーク波長と第一の半値全幅とは、放出された光のスペクトルがフォトトランジスタの光検出スペクトルに含まれ、発光器から放出され、フォトトランジスタにより受け取られた光が装置によりさらに処理されるために十分なフォトトランジスタの出力信号の信号レベルを生成するように選択される。それゆえ、フォトトランジスタは、発光器により放出された光を確実に検出できるようにするのに適切である。特に、フォトトランジスタは、ある発光器駆動電流及びターゲット反射率にとって合理的な信号レベルを提供する根拠を有し得る。
【0017】
別の実施形態において、第一のピーク波長は約936nmであり、第一の半値全幅は約59nmであり、第二のピーク波長は約872nmであり、第二の半値全幅は276nmである。このような第一のピーク波長を有する発光器は、第二のピーク波長を有する連結されたフォトトランジスタに関して非常に速い応答時間を有し得る。
【0018】
別の実施形態において、フォトトランジスタは約47kオーム(キロオーム)の負荷に接続され得る。適当な回路構成を使用することにより、このような負荷でのフォトトランジスタの出力信号の有効立ち上がり時間を短縮できることがわかった。フォトトランジスタ回路構成の特定の実施形態では、有効立ち上がり時間は47kオームの負荷で約3.0μsまで短縮され得、また、立ち下がり時間は、負荷抵抗が100オーム未満まで能動的に下げられ得る場合、はるかに短くなり得る。
【0019】
また別の態様において、本開示は、薬物送達装置又は薬物送達付属装置、特に注射ペンであって、薬物容器を保持するための本体と、送達されるべき薬物投与量を選択するための、選択及び/又は送達される薬物投与量を検出するための光学エンコーダシステムを含む投与量選択機構と、本願で開示され、薬物投与量選択及び/又は送達時に光学エンコーダシステムの一部の移動を、フォトトランジスタによる光学エンコーダの移動部からの放出光の反射の検出に基づいて検出するように配置されたセンサとを含む、薬物送達装置又は薬物送達付属装置、特に注射ペンを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】第一の種類のエンコーダシステムの側面図である。
【
図3】
図2に示されるエンコーダシステムの平面図である。
【
図4】装置コントローラの実施形態の概略ブロック図を示す。
【
図5】製造者の試験定義による反射型フォトセンサのデータシートと負荷抵抗に応じた応答時間を示す。
【
図6】反射型フォトセンサを制御する装置の実施形態の回路図を示す。
【
図7】
図6の装置の信号の簡略化した機能波形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本開示の実施形態を、注入装置、特にペン型の注入装置に関して説明する。しかしながら、本開示はこのような用途に限定されず、その他の種類の薬物送達装置でも、特にペン以外の形状のものでも等しく利用され得る。全ての絶対値は本明細書において例として示されているにすぎず、限定的と解釈されるべきではない。
【0022】
注入ボタンとグリップが組み合わせられた注射ペンの例が、国際公開第2014033195号パンフレットに記載されている。別々の注入ボタン及びダイアルグリップコンポーネントがある注入装置の他の例は、国際公開第2004078239号パンフレットに記載されている。
【0023】
以下の記述の中で、「遠位」、「遠位方向に」、及び「遠位端」という用語は、注射ペンの、針が設けられる端を指す。「近位」、「近位方向に」、及び「近位端」は、注入装置の、注入ボタン又は投与量ノブが設けられる反対の端を指す。
【0024】
図1は、国際公開第2014033195号パンフレットに記載されているような注射ペン1の分解図である。
図1の注射ペン1は、プレフィルド型使い捨て注射ペンであり、ハウジング10を含み、インスリン容器14が収容されており、そこに針15を取り付けることができる。針は、内側針キャップ16と、外側針キャップ17又は他のキャップ18の何れかにより保護される。注射ペン1から排出されるべきインスリン投与量は、投与量ノブ12を回すことによってプログラム、又は「ダイアル操作」でき、すると、その時現在プログラムされている投与量が投与量窓13を介して、例えば倍数単位で表示される。例えば、注射ペン1がヒトインスリンを投与するように構成されている場合、投与量はいわゆる国際単位(IU)で表示され得て、1IUは高純度結晶インスリン約45.5マイクログラム(1/22mg)の生物学的等価量である。インスリン類似体又はその他の薬剤を送達するための注入装置においては、他の単位が使用され得る。選択された投与量は、
図1の投与量窓13に示されているものとは異なる方法でも同等に表示され得る点に留意すべきである。
【0025】
投与量窓13はハウジング10の開口の形態であり得、それによってユーザは、投与量ノブ12が回されると動き、現在プログラムされている投与量の視覚的表示を提供するように構成されたダイアルスリーブ70の限定部分を見ることができる。投与量ノブ12は、プログラミング中に回されるとハウジング10に関してらせん経路で回転する。この例において、データ収集装置(薬物送達又は注入付属装置)を取り付けやすくするために、投与量ノブ12は1つ又は複数の形成部71a、71b、71cを含む。
【0026】
注射ペン1は、投与量ノブ12を回すことによって機械的なクリック音を発生し、ユーザに音声フィードバックが提供されるように構成され得る。ダイアルスリーブ70は、インスリン容器14内のピストンと機械的に相互作用する。この実施形態において、投与量ノブ12は注入ボタンとしても機能する。針15が患者の皮膚部分に打ち込まれて投与量ノブ12が軸方向に押されると、表示窓13に表示されたインスリン投与量が注射ペン1から排出される。投与量ノブ12が押されてから注射ペン1の針15が皮膚部分に特定時間とどまると、投与量のうちの高いパーセンテージが実際に患者の体内に注入される。インスリン投与量の排出によっても機械的クリック音が発生し得るが、これは投与量のダイアル操作中に投与量ノブ12を回転させたときに発生する音とは異なる。
【0027】
この実施形態において、インスリン投与量の送達中に、投与量ノブ12は軸方向に移動して回転せずにその当初の位置に戻り、他方でダイアルスリーブ70は回転してその当初位置に戻り、例えばゼロ単位の投与量を表示する。
【0028】
注射ペン1は、インスリン容器14が空になるか、注射ペン1内の薬剤の消費期限(例えば、最初の使用から28日後)に到達するまで、複数回の注射プロセスに使用され得る。
【0029】
さらに、注射ペン1を初めて使用する前にインスリン容器14及び針15から空気を抜くために、例えば針15付きの注射ペン1を上向きにして持ち、インスリン2単位を選択し、投与量ノブ12を押すことによって、いわゆる「プライムショット」を実行する必要があり得る。説明を簡単にするために、以下において、排出量は注入される投与量に実質的に対応し、それによって、例えば注射ペン1から排出される薬剤の量は使用者が受ける投与量と等しいと仮定される。しかしながら、排出量と注入量との差(例えば、損失)は考慮する必要があり得る。
【0030】
前述のように、投与量ノブ12はまた、注入ボタンとしても機能し、それによって同じコンポーネントがダイアル操作及び吐出のために使用される。1つ又は複数の光センサを含むセンサ機構215(
図2及び
図3)が注入ボタン又は投与量ノブ12の中に取り付けられ得て、これはダイアルスリーブ70の、注入ボタン12に関する相対的回転位置を検知するように構成される。この相対回転は、吐出される投与量の大きさと同等として、投与歴情報を生成し、保存又は表示するために使用できる。センサ機構215は、第一の(光)センサ215aと第二の(光)センサ215bを含み得る。センサ機構215はまた、薬物送達又は注入付属装置にも装着され得て、これは異なる注入装置1に使用できるようになされ、センサ機構215により取得されるデータを収集するように構成され得る。
【0031】
センサ機構215の光センサ215a、215bは、それぞれ
図2及び
図3に示されるシステム500等のエンコーダシステムと共に使用され得る。回転エンコーダシステムは、前述の装置1と共に使用されるように構成される。
図2及び
図3に示されるように、第一のセンサ215a及び第二のセンサ215bは、ダイアルスリーブ70の近位端における特に適合された領域を標的とするように構成される。この実施形態では、第一のセンサ215a及び第二のセンサ215bはIR反射センサである。したがって、ダイアルスリーブ70の特に適合された近位領域は、反射エリア70aと非反射(すなわち吸収)エリア70bとに分けられる。ダイアルスリーブ70の、反射エリア70aと非反射(すなわち吸収)エリア70bを含む部分は、エンコーダリングと呼ばれ得る。
【0032】
生産コストを最小限に抑えるために、これらのエリア70a、70bを射出成形ポリマから形成することが好都合であり得る。ポリマ材料の場合、吸収率と反射率は、例えば吸収率についてはカーボンブラック、反射率については酸化チタン等の添加物を用いて制御することができる。吸収領域は成形ポリマ材料であり、反射領域は金属で製作される(追加的な金属コンポーネントか、又はポリマダイアルスリーブ70のセグメントの選択的金属化)代替的な実装も可能である。
【0033】
検出範囲内の変化を使用すること、又は反射板を有し、反射板/ギャップを持たないことも可能である。反射率及び/又は吸収率の段階的変化も使用することができる。
【0034】
第二の検出器は、回転の方向を検出するために、第一の検出器のフラッグの幅の半分だけ回転方向にオフセットされ得る。
【0035】
留意すべき点として、
図2及び
図3に示される、センサ機構215の光センサ215a、215bが同じハウジング内に配置される実施形態は、発光器と受光器を空間的に近接して隣り合わせにすることが可能となる実装であり、これは幾つかの実施例において、特に飛行時間が短いため、有利であり得る。一般に、これは発光器と受光器が反射エリア70aに関しても相互に近接して配置されているときに有利であり得る。しかしながら、さらに留意すべき点として、発光器と受器具はまた、異なるハウジング又はハウジングの別の部分にも配置されても、又はこれらは相互に空間的に分離されてもよく、それも本開示の主旨から逸脱しない。例えば、これらは相互に接続される異なる回路基板及びマイクロコントローラの一部とすることもできる。
【0036】
2つのセンサを有することにより、後述の電力管理方法が容易となる。第一のセンサ215aは、特定の薬物又は投薬レジームに当てはまる投与歴要件に必要な分解能、例えば1IUに相応の周期で、交互の反射領域70a及び非反射領域70bの連続を標的とするように配置される。第二のセンサ215bは、第一のセンサ215aと比較してより低い周期で、交互の反射領域70a及び非反射領域70bの連続を標的とするように配置される。エンコーダシステム500は、第一のセンサ215aのみと機能して、吐出される投与量を測定することができると理解すべきである。第二のセンサ215bにより、後述の電力管理方法が容易となる。
【0037】
図2及び
図3では、2セットのエンコード領域70a、70bが、一方が外側、他方が内側の同心円状に示されている。しかしながら、2つのエンコード領域70a、70bの何れの適当な配置も可能である。領域70a、70bはキャスタレート領域として示されているが、その他の形状と構成も可能であることを念頭に置くべきである。
【0038】
装置1又は装置1に取り付けられる付属装置はまた、
図4に概略的に示されるように、コントローラ700も含み得る。コントローラ700は、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の1つ又は複数のプロセッサを含むプロセッサ機構23を、プロセッサ機構23により実行されるソフトウェアを記憶できるプログラムメモリ24及びメインメモリ25を含むメモリユニット24、25と共に含む。コントローラ700は、センサ機構215を制御するために提供され、そのように構成される。出力27が提供され、これはWi-Fi(商標)若しくはBluetooth(登録商標)の無線ネットワークを介して他の機器と通信するための無線通信インタフェース、又はユニバーサルシリアルバス(USB)、ミニUSB、若しくはマイクロUSBコネクタを受けるためのソケット等の有線通信リンクのためのインタフェースであり得る。例えば、データは装置1に取り付けられたデータ収集装置に出力され得る。電源スイッチ28も、バッテリ29と共に提供される。電源スイッチ28は、常に電力が存在する、すなわち電源がオフに切り換えられることのない実施形態においてシステム状態をトグルするためのシステム状態スイッチの機能を含み得る。
【0039】
装置1に組み込む必要のあるバッテリ29の大きさを小さくすることができるように、エンコーダシステムの500の電力使用を小さくすることが可能であれば有利である。この実施形態で使用されるセンサ215a、215bには、動作するために特定の量の電力が必要となる。この実施形態は、センサ215a、215bが制御された周期で間欠的にオンオフを切り替えることができるように(すなわち、ストローブサンプリングモードで)配置される。本来的に、エイリアシングが発生する前に、サンプリングされたエンコーダシステムにより計数可能な最大回転速度には限界がある。エイリアシングとは、サンプリングレートが、検知された領域がセンサを通過するレートより低い現象であり、これは、領域の変化が見落とされたときにカウントミスが生じることを意味する。第一の周波数215aと比較して低い周波数の第二のセンサ215bは、それにもエイリアシングが発生する前に、より高い回転速度に耐えることができる。第二のセンサ215bは吐出される投与量を第一のセンサ215aと同じ分解能まで分解できないが、第二のセンサ215bの出力はより高い速度でも信頼できる状態のままである。したがって、両方のセンサ215a、215bが組み合わせて使用されて、第一の閾値回転(吐出)速度まで、送達される投与量を正確に特定することができる。センサ215a、215bはすると、第二の(より高い)閾値投与速度まで、送達される大体の投与量を特定するために使用できる。第二の閾値速度より高い速度では、センサ215a、215bは送達される投与量を正確に、又は概算で特定することができず、したがって、第二の閾値は、注射ペン1では物理的に不可能な速度より高く設定される。
【0040】
第一の速度閾値は、第一のセンサ215aのサンプリングレートと、所期の薬物又は投与レジームにより必要とされる分解能(例えば、1IU当たり1回の遷移)に固定されるエンコーダ領域遷移の周期によって特定される。第二の速度閾値は、第二のセンサ215bのサンプリングレートと、エンコーダ領域遷移の周期によって特定される。第一の閾値は、吐出速度の最大範囲が、吐出される投与量の正確な報告のために、システムによりカバーできるように設定される。
【0041】
図3に示される例示的実施形態は、送達される投与量の1IUあたり1回の遷移の領域遷移を標的とする第一のセンサ215aと、送達される投与量の6IUあたり1回の遷移の領域遷移を標的とする第二のセンサ215bを有する。その他の選択肢も可能であり、これには2IUあたり1回の遷移、4IUあたり1回の遷移、8IUあたり1回の遷移、IU単位あたり12回の遷移が含まれる。これらの選択肢は各々、
図3に示されるエンコーダシステム500に1回転あたり24の別々の領域70a、70bがあるため、可能である。一般に、1回転当たりの別々の領域70a、70bの数がn単位であった場合、m単位あたり1回の領域遷移における選択肢があり、mは、1より大きくnより小さい、nの何れかの整数因数である。
【0042】
両方のセンサ215a、215bのサンプリング周波数が低速であるほど、必要な電力消費量は小さく、したがってバッテリ29の必要な大きさも小さくなる。したがって、設計によりサンプリング周波数をできるだけ小さくすることが最適である。
【0043】
図5は、センサ機構215のセンサ215a、215bを実装するために使用可能な光センサパッケージ800の例と、この光センサの入力及び出力信号の典型的な経路のほか、負荷抵抗に応じたそのスイッチング時間を示す。センサパッケージは、反射型フォトセンサである。これは2つの素子、すなわちIR LED(発光器)802とIR感応フォトトランジスタ(受光器)804を含む。2つの素子は、発光器802からの光が、ターゲット(例えば、
図2及び3に示されるエンコーダシステムの、適切に方向付けられ、ある程度の反射率を有する反射領域70a)に入射すると、受光器804に向けられる。受け取られた反射光は、受光器(フォトトランジスタ)804の中で電荷に変換され、光の量を表す信号として出力される。ターゲットがある程度事前にわかっているため、検出された光からターゲットの特性を推測することが可能である。
【0044】
センサパッケージ内の発光器802はIR LEDであり、これは約936nmのピーク波長と5.2%(59nm)の半値全幅(FWHM)を有し得る。これは、連結された受光器804に関して非常に速い応答時間を有し得る。発光器802よりはるかに広い、872nmを中心として、FWHMが31.6%(276nm)のスペクトル応答により、受光器804はIR LEDからのを確実に検出するのに適切であり得る。これは、ある発光器駆動電流及びターゲット反射率に対する合理的な信号レベルを提供するためのフォトトランジスタによる根拠を有する。立ち上がり及び立ち下がり時間を有する典型的な入力及び出力信号応答が、センサパッケージの回路図の下に示されている。
【0045】
フォトトランジスタの応答時間はほとんど2つのメカニズムによって占められ、これは電荷キャリアによる空乏領域(高速)及びキャリア拡散(低速)の通過であり、それゆえ、応答時間は2つの成分を有し得る。これらを合わせた応答時間は、通常はこのようなセンサパッケージの製造者によって提示されるように、低速メカニズムにより占められる。さらに、立ち上がり時間(10%~90%)の定義は、図をより長い応答時間に向かって偏らせる傾向があり得る。このようなセンサパッケージの典型的なデータシートは、10kオームの負荷RLでの典型的な35μsの立ち上がり時間(tr)と40μsの立ち下がり時間(tf)を引用し得る。パッケージの出力側で適当な回路構成を使用することにより、有効立ち上がり時間は47kオームの負荷RLで約3.0μsまで短縮できることがわかった。立ち下がり時間もまた、負荷抵抗が出力側の適当な回路構成によって100オーム未満に能動的に下げられると短縮できる。
【0046】
センサパッケージの例示的な特性が
図5の右の図に示され、これは、フォトトランジスタの出力の2ボルトの電圧VCE、100μAの出力電流、約25℃の動作温度Taでの負荷抵抗RL(kオーム)に応じたスイッチング時間t(μs)を示す。
【0047】
ここで、
図6を参照しながら基本的なセンサ動作を説明するが、同図は反射型フォトセンサを制御するための装置1000の実施形態の回路図を示している。装置1000は、センサパッケージ800と、センサパッケージ800のための駆動信号を生成し(発光器802を駆動するための出力「IR LED駆動」とフォトトランジスタ804を駆動するための出力「バイアス」)、センサパッケージ800の「フォトトランジスタ出力」で出力信号を処理するように構成されたコントローラ900を含む。
【0048】
センサパッケージ800の回路構成は、コントローラ900の「IR LED駆動」出力と発光器、IR LED802の入力との間に、特にIR LED802を通る電流を限定するために33オームの抵抗、及びアース電位とフォトトランジスタ804のエミッタとの間に47kオームの負荷抵抗を有する。フォトトランジスタ804のコレクタは、コントローラ900の「バイアス」出力に接続される。
【0049】
コントローラ900は内部スイッチ902を含み、これはコントローラ900の入力901をコントローラ内蔵アナログ-デジタル変換器(ADC)の入力906又はコントローラ内蔵デジタルドライブ908の何れかに接続するために提供される。入力901は、入力又は出力として構成可能なコントローラ900の多目的ピンであり得る。スイッチ902はスイッチ機能904により制御され、これは例えばコントローラ900のファームウェア機能又はコントローラ900の専用論理回路により実装され得る。コントローラ900は、例えば
図4のプロセッサ機構23に含まれ得る。
【0050】
装置1000は、
図1の注入装置1に組み込まれるPCB(プリント回路基板)、特にフレキシブルPCBによって実装され得て、その上にシングルチップとしてのセンサパッケージ800と、コントローラ700がはんだ付けされる。また、その他の実装、例えばコントローラ700及び他の幾つかの電子機器のみを含むPCBと、コントローラピンを別のセンサパッケージ800の各々のピンに接続する配線も可能であり、これらは例えば注入装置1の投与量メカニズムに組み込まれ得る。また別の考え得る実施形態は、薬物注入付属装置を含み得て、これはコントローラ900を含み得るが、センサパッケージ800は注入装置に収容される。コネクタは、付属装置が薬物注入装置に取り付けられたときに、センサパッケージ800のそれぞれのコネクタとコントローラ900とを電気接続するために提供され得る。さらにまた別の考え得る実装は、コントローラ900がセンサパッケージ800と共に単独の装置に統合される単独装置のソリューション、例えばSoC(システムオンチップ)が含まれ得る。
【0051】
次に、装置900の動作と実装の幾つかの態様を、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
【0052】
基本的なサンプル機能:装置900を作動させると、コントローラ900は駆動信号としてバイアスを生成し、それがそれぞれの接続を介してフォトトランジスタ804のコレクタに印加される。フォトトランジスタ804のバイアス信号によってコレクタは適当なバイアス電圧となる(
図7の信号「SEN_T_BIAS」)。これは、コントローラ900の最初のアクションの1つであり得る。コントローラ900のスイッチ制御機能904はさらに、ピン901を、スイッチ902を介してそれをデジタル出力908に接続することによって出力として構成する(
図7の信号「ピン機能」)。ほとんど常に、ピン901は、特に0V又はアースに指定されるシステム参照電位の出力として構成される。これはかなりの時間にわたりフルバイアス電圧をフォトトランジスタ804に印加して、最初のサンプルの前にセンサパッケージ800を安定させる。サンプルを取る際、コントローラ900は、スイッチ902を制御してピン901をデジタルドライブ908から切断し、それをADC入力906に接続することによって、一時的にピン901を出力又はデジタルドライブからADC入力906に変換する(
図7の信号「ピン機能」)。コントローラはまた、IR LED駆動信号、例えば駆動パルスを生成することによってセンサのIR LED802を駆動する(2つのセンサ、例えば
図2及び3のセンサ215a、215bのうちの1つの目のための信号「SEN_A_DRV」及び
図7の2つのセンサの2つ目のための信号「SEN_B_DRV」)。IR LED802は、光を放出し、バイアスされたフォトトランジスタ804はターゲット806からの放出光の反射を受け取り、それゆえサンプルの読み取り値を得る(2つのセンサ、例えば
図2及び3のセンサ215a、215bのうちの1つの目のための信号「SEN_A_OP」及び
図7の2つのセンサの2つ目のための信号「SEN_B_OP」)。読み取りが完了したらすぐに、入力はスイッチ制御機能904によって再び出力に変換され、これはピン901をADC入力806から切断し、これをデジタルドライブ908に接続する(
図7の信号「ピン機能」)。バイアスは常に印加されるため、サンプル間の期間は、次の読み取りの前にフォトトランジスタ804のコンディショニングを行うために使用される。フォトトランジスタ804内の残留電荷があれば、これはバイアスにより提供される電解の下でできるだけ早く掃き捨てられる。バイアスは、それ以上サンプルが得られなくなるまで保持され、その後、これはフォトトランジスタ出力801と同じ電圧に設定され、それによってフォトトランジスタ804を短絡させる。典型的に、この表明において、バイアス及びフォトトランジスタ出力801はどちらも0Vに接続されることになるが、これは何れの好都合な電圧とすることもできる。
【0053】
フォトトランジスタのバイアス:バイアスは、出力信号の生成源を提供するためとともに、フォトトランジスタ804の応答速度を速めるために印加される。注入装置を作動させるとすぐに、バイアスがオンに切り換えられ得て、それ以上投与が行われなくなるまでオンのままである。フルバイアス電圧は、読み取り値を得るときを除き、常にフォトトランジスタ804内に生じ得る。それゆえ、ほとんど常に、フォトトランジスタ804は次の読み取りに備えてリセットされている。実施形態において、高バイアス電圧は不要であり得、製造者は2.0Vでテストする。出力信号の振幅は、バイアス電圧にわずかに依存するにすぎないため、単純な低電圧供給だけあればよい。したがって、バイアス電圧はコントローラピンのうちの1つから直接生成できる。
【0054】
センサIR LEDドライブ:コントローラ900は、IR LED802を持続時間の短い、典型的には数マイクロ秒であるが、必ずしもそうでなくてもよい長さの、比較的高い電流パルスで駆動し得る。また、これは連続的にも、又は適当なタイミングの波形の何れの形態でも駆動され得る。パルスで動作する場合、駆動パルスは、ピン901がADC入力906に接続されるのと、すなわちフォトトランジスタ804の出力信号をサンプリングするためにセットアップされるのと同時に、又はその後まもなく、又はその前に印加され得る。
【0055】
センサIR LEDの駆動持続時間:IR LED802を駆動する持続時間は、実施形態ごとに経験的に選択され得る。IR LED駆動信号のパルス幅は信号の最大振幅を設定する。典型的に、コントローラ900により制御される2つのセンサ又は2つのセンサパッケージ800は、同じ駆動パラメータを有し得るが、誘導されるタイミングスキューがエンコーダの機能に不利な影響を与えないかぎり、これは必須ではない。駆動持続時間は、代表的な電子部品と参照ターゲットを観察することにより、最大信号は、フォトトランジスタ804の出力信号のアナログサンプルをデジタルサンプルに変換するために提供されるADCのフルスケールの約66%(任意に選択される)となるように設定され得る。この設定で、最小の電力を使用しながら、飽和から十分に離れ、公差のためのあき高があり、高いダイナミックレンジの良好な信号レベルが得られるかを評価できる。
【0056】
読み取り期間:これは、コントローラ900がその間に、そのピン901をデジタルドライブ、例えば0Vから、ADC入力906となるように、ピン901がデジタルドライブ、例えば0Vに再び設定されるまで切り換えていた時間間隔として定義される。読み取り期間は通常、センサIR LED駆動信号と同期するが、同時でなくてもよい。
【0057】
センサ読み取り値:読み取り期間の開始時、又はその付近で、コントローラ900はピン901でのデジタルドライブをリリースし、入力901をADC入力906に設定して、センサにより生じた電圧、すなわちセンサパッケージ800のフォトトランジスタ出力801における出力を読み取る。入力901はすると、その固有の構造により高容量型となり得る。フォトトランジスタ804からの電荷は、ADC入力906の入力キャパシタンスに蓄積されて、電圧を上昇させ得る。フォトトランジスタ804からの電荷の数はそれが遮断する光の量に比例するため、ADC入力906での電圧はその光の積分に比例する。所定時間後に、ADC入力906の読み取りがコントロら900によって行われ、その後、ピン901は再びデジタルドライブ908に接続され、例えば0Vに駆動される。本質的に、ピン901は、スイッチドキャパシタ積分器のように操作され得て、これは、47kオームの抵抗が十分に高く、この実施形態のタイムスケール内でほとんど影響がないからである。
【0058】
ADC構成:フォトトランジスタ804からの出力は、1ビット又は複数ビットの深さでADCを介してデジタル化され得る。実施形態において、容量型ADCの入力906はその機能の一部を形成し得るが、異なる構造を有する他の種類のADCも、適当な外部回路構成が含められれば使用できる。例えば、ある実装は、比較器(1ビット)により提供できる、又はバッファ付きサンプルホールド回路を従来のフラッシュADC(複数ビット)に使用できる、等々である。
【0059】
電力節減:低容量の電源による動作から、エンコーダにより使用されるエネルギを最小化しなければならなくなる。大幅なエネルギ制限を実現するために、エンコーダは、IR LED駆動信号に、ADCの読み取りに十分なだけの信号を生成し得る短パルスを使用することにより、必要な場合のみ測定を行い得る。読み取りと読み取りの間に、コントローラ900は低電力モードに移行することが可能であり得、エンコーダは熱により誘導された電流と周囲光の漏出からのもののみを引き込み得る。
【0060】
不利なセンサ特性の軽減:
a.スイッチドキャパシタ積分器は、信号が期待される期間のみサンプリングし得るため、信号源以外からのあらゆる影響を軽減し得る。
b.残りの時間はセンサ内で最大バイアス電圧が保持され得て、それによってフォトトランジスタ804内の蓄積又は遅延電荷が掃き出される。
【0061】
複数のセンサ:例えば
図2及び
図3に示されるエンコーダ構造は直交型であるため、2つのセンサ215a及び215bが近い時点で、好ましくは同時にサンプリングされ得ることが重要であり得る。スキューレベルが高いと不正確さにつながりかねない。
【0062】
本開示の薬物送達装置又は薬物送達付属装置のセンサの制御は、フォトトランジスタの通常の低速応答を克服し得る。実施形態によれば、フォトトランジスタ動作時間のほぼ全てにわたりバイアスがかけられ、その出力はマイクロコントローラの出力によって低く引き下げられ得る。この出力はすると、ちょうど発光ダイオード(LED)がパルス駆動されるとADC入力に変換され得る。これは、フォトトランジスタからの非常に高速な応答を生じさせ、それがその後、デジタル化され得る。すると、ADCはピンから切断され得て、ピンは再びに出力となり、次のLEDパルスに備えてフォトトランジスタの出力を引き下げ得る。
【0063】
本願で開示されるように、実施形態は、注入装置においてダイアル操作され及び/又は送達される投与量の記録に関し得、特定の実施形態は、国際公開第2014033195号パンフレットに記載されている注射ペンでの応用に関し得る。さらに、本願で開示されるように、実施形態は注入装置のエンコーダシステムと共に、又はその中で利用され得て、これらの実施形態はエンコーダシステムの動作を改善し得る。
【0064】
本願で開示されているように、エンコーダシステムは位置又は位置変化を検出するために直接又は間接に使用される1つ又は複数のセンサを含み得る。本願で開示される実施形態によれば、回転位置エンコーダが利用され得る。本願で開示される実施形態は、エンコーダシステムの分をさらに大幅に複雑にする幾つかの新規な特徴を有する。説明を簡単にするために、前述の詳細な説明は単に、エンコーダシステムの構成要素であり得、IR反射型フォトセンサであり得る単一センサのコンポーネントと機能を説明している。しかしながら、IRスペクトル、又は電磁(EM)スペクトルの何れかの部分をカバーするその他の種類の発光素子及びその他の種類の検出器を適当な組合せで使用して、同様に機能する反射型フォトセンサを形成することができる。
【0065】
「薬物」又は「薬剤」という用語は本明細書中では同義として使用され、1つ又は複数の活性薬剤成分又は薬学的に許容される塩若しくはその溶媒和化合物と、任意選択的に薬学的に許容されるキャリアを含む医薬製剤を表す。活性薬剤成分(API(active pharmaceutical ingredient))は、最も広い意味において、人又は動物に対する生物学的効果を有する化学構造である。薬理学において、薬物又は薬剤は病気の治療、治癒、予防、若しくは診断で使用されるか、又はそれ以外に身体的若しくは精神的健康を向上させるために使用される。薬物又は薬剤は、限定的期間にわたり、又は慢性疾患のためには定期的に使用され得る。
【0066】
後述のように、薬物又は薬剤は、1つ又は複数の病気の治療のために、少なくとも1つのAPI、又はその組合せを様々な種類の調合で含むことができる。APIの例としては、分子量500Da以下の小分子、ポリペプチド、ペプチド、たんぱく質(例えば、ホルモン、増殖因子、抗体、抗体フラグメント、及び酵素)、炭水化物と多糖類、及び酸、二本鎖又は一本鎖DNA(ネイキッド及びcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNA及びRNA等のアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、及びオリゴヌクレオチドが含まれ得る。核酸は、ベクトル、プラスミド、又はリポソーム等の分子送達系に組み込まれ得る。1つ又は複数の薬物の混合物も想定される。
【0067】
薬物又は薬剤は、薬物送達装置と共に使用するようになされた一次包装又は「薬物容器」に収容され得る。薬物容器は、例えばカートリッジ、シリンジ、リザーバ、又はその他の、1つ又は複数の薬物の適当な保存(例えば、短期又は長期保存)のための適当なチャンバを提供するように構成された固形若しくは柔軟な容器であり得る。例えば、幾つかの例において、チャンバは薬物を少なくとも1日(例えば、1~少なくとも30日間)保存するように設計され得る。幾つかの例において、チャンバは薬物を約1カ月~約2年間保存するように設計され得る。保管は、室温(例えば、約20℃)又は低温(例えば、約-4℃~約4℃)で行われ得る。幾つかの例において、薬物容器は投与される薬剤調合物の2つ以上の成分(例えば、APIと希釈剤、又は2種類の薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保管するように構成される2室式カートリッジであり得るか、それを含み得る。このような例において、2室式カートリッジの2つのチャンバは、人又は動物の体内に吐出する前及び/又は吐出中に2つ以上の成分を混合できるように構成され得る。例えば、2つのチャンバは、これらが相互に流体連通して(例えば、2つのチャンバ間の導管による)、吐出前にユーザが希望に応じて2つの成分を混合できるように構成され得る。代替的に、又はそれに加えて、2つのチャンバは、成分が人又は動物の体内に吐出されている間に混合できるように構成され得る。
【0068】
本明細書に記載の薬物送達装置に収容された薬物又は薬剤は、様々な種類の医学的障害の治療及び/又は予防に使用できる。障害の例としては、例えば真正糖尿病又は、糖尿病性網膜症などの真正糖尿病の合併症、深部静脈又は肺血栓等の血栓閉塞症が含まれる。障害のまた別の例は、急性冠動脈症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、花粉症、アテローム性動脈硬化、及び/又は関節リウマチである。API及び薬物の例は、Rote Liste 2014等のハンドブック、例えば、これらに限定されないが、メイングループ12(抗糖尿病薬)又は86(腫瘍薬)、及びメルクインデックス第15版に記載されているものである。
【0069】
1型若しくは2型真正糖尿病又は1型若しくは2型真正糖尿病の合併症の治療及び/又は予防のためのAPIの例には、インスリン、例えばヒトインスリン、又はインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体若しくはGLP-1受容体作動薬、又はその類似体若しくは誘導体、ジペブチジルペプチターゼ-4(DPP4)阻害薬、又は薬学的に許容される塩若しくはその溶媒和化合物、又はそれらのあらゆる混合物が含まれる。本明細書で使用されるかぎり、「類似体」及び「誘導体」という用語は、形式的に天然に存在するペプチドの構造、例えばヒトインスリンのそれから、天然に存在するペプチド内にある少なくとも1つのアミノ酸残基を削除及び/若しくは置換することによって、並びに/又は少なくとも1つのアミノ酸残基を追加することによって導出できる分子構造を有するポリペプチドを指す。追加及び/又は置換されるアミノ酸残基は、コード化可能なアミノ酸残基又はその他の天然に存在する残基か、又は純粋な合成アミノ酸残基の何れでもあり得る。インスリン類似体は、「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、形式的に天然に存在するペプチドの構造、例えばヒトインスリンのそれから導出可能な、1つ又は複数の有機置換基(例えば、脂肪酸)がアミノ酸のうちの1つ以上と結合する分子構造を有するポリペプチドを指す。任意選択により、天然に存在するペプチドの中にある1つ又は複数のアミノ酸が削除され、及び/若しくはコード化不能なアミノ酸を含むその他のアミノ酸に置換されていてもよく、又はコード化不能のものを含むアミノ酸が天然に存在するペプチドに追加されていている。
【0070】
インスリン類似体の例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン)、Lys(B3)、Glu(B29)、ヒトインスリン(インスリンリスプロ)、Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト)、位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、又はAlaに置換され、位置B29のLysがProに置換され得るヒトインスリン、Ala(B26)ヒトインスリン、Des(B28-B30)ヒトインスリン、Des(B27)ヒトインスリン、及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0071】
インスリン誘導体の例は例えば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標))、B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-ミリストイルヒトインスリン、B29-N-パルミトイルヒトインスリン、B28-N-ミリストイル-LysB28ProB29ヒトインスリン、B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン、B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン、B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン、B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルカミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))、B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、及びB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0072】
GLP-1、GLP-1類似体、及びGLP-1受容体作動薬の例は、例えば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標))、エキセナチド(Exendin-4、Byetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺により生成される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セモグラチド、タスポグラチド、アルビグラチド(Syncria(登録商標))、デュラグラチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングルナチド/HM-11260C(Efpeglenatide)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、゜CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(Pegapamodtide)、BHM-034である。MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマデュチド(SAR425899)、エキセナチド-XTEN、及びグルカゴン-Xten。
【0073】
オリゴヌクレオチドの例は例えば、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬、又はアルポート症候群の治療のためのRG012である。
【0074】
DPP4阻害薬の例は、リナグリプチン、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0075】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、及びゴセレリン等の、脳下垂体ホルモン若しくは視床下部ホルモン又は調節性活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストが含まれる。
【0076】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン若しくは超低分子量ヘパリン、又はそれらの誘導体、又は硫酸化多糖類、例えば上述の多糖類のポリ硫酸化形態、及び/又は、薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の一例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0077】
「抗体」という用語は、本明細書で使用されるかぎり、免疫グロブリン分子又はその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例には、抗原を結合する能力を保持するF(ab)及びF(ab’)2フラグメントが含まれる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型又はヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(例えばネズミ)、又は一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態において、抗体はエフェクタ機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態において、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低い、又はそれを持たない。例えば、抗体は、アイソタイプ若しくはサブタイプ、抗体フラグメント又は変異体とすることができ、これはFc受容体との結合を支持せず、例えば、突然変異した、又は欠失したFc受容体結合領域を有する。抗体という用語はまた、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)及び/又は交差結合領域の配向性を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗体結合分子も含む。
【0078】
「フラグメント」又は「抗体フラグメント」という用語は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(例えば、抗体重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントとしては、例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、単一特異性、又は二重特異性、三重特異性、四重特異性及び多重特異性抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)等の多重特異性抗体フラグメント、一価、又は二価、三価、四価及び多価抗体等の多価抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディ又はバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、及びVHH含有抗体が含まれる。抗原結合抗体フラグメントのその他の例は当業界で知られている。
【0079】
「相補性決定領域」すなわち「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖及び軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖及び軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的に、当業界で知られているように、抗原結合に直接関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接関与することができ、又はCDR内の1つ又は複数のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与え得る。
【0080】
抗体の例は、アンチPCSK-9mAb(例えば、アリロクマブ)、アンチIL-6mAb(例えば、サリルマブ)、及びアンチIL-4mAb(例えば、デュピルマブ)である。
【0081】
本明細書に記載のあらゆるAPIの薬学的に許容される塩もまた、薬物送達装置における薬物又は薬剤において使用されることが想定される。薬学的に許容される塩は、例えば酸付加塩及び塩基性塩である
【0082】
当業者であれば、本発明の完全な範囲と主旨から逸脱することなく、本明細書に記載のAPI、製剤、装置、方法、システム、及び実施形態の様々な構成要素に修正(追加及び/又は削除)を加えることができ、本発明はそのような修正及びそのあらゆる均等物を包含することがわかるであろう。
【0083】
例示的な薬物送達装置は、ISO11608-1:2014(E)5.2項の表1に記載されている針ベースの注射システムを含み得る。ISO11608-1:2014(E)に記載されているように、針ベースの注射システムは広く、複数回投与容器システムと単回投与(部分又は全量排出)容器システムに分類され得る。容器は、交換可能容器でも、一体化された交換不能容器でもよい。
【0084】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、複数回投与容器システムは、交換式容器を備える針ベースの注入装置を含み得る。このようなシステムでは、各容器は複数回分の投与量を保持し、その大きさは固定でも可変(ユーザにより事前設定される)でもよい。他の複数回投与容器システムは、一体化された交換不能容器を備える針ベースの注入装置を含み得る。このようなシステムでは、各容器は複数回分の投与量を保持し、その大きさは固定でも可変(ユーザにより事前設定される)でもよい。
【0085】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、単回投与容器システムは交換式容器を備える針ベースの注入装置を含み得る。このようなシステムの一例において、各容器は1回分の投与量を保持し、送達可能量の全量が排出される(全量排出)。別の例では、各容器は1回分の投与量を保持し、送達可能量の一部が排出される(部分排出)。同じくISO11608-1:2014(E)に記載されているように、単回投与容器システムは、一体化された交換不能容器を備える針ベースの注入装置を含み得る。このようなシステムの一例では、各容器は1回分の投与量を保持し、送達可能量の全量が排出される(全量排出)。別の例では、各容器は1回分の投与量を保持し、送達可能量の一部が排出される(部分排出)。
【国際調査報告】