(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-20
(54)【発明の名称】薬物送達装置又は薬物送達付属装置上のデータストレージ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
A61M5/315 550J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518322
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2022076298
(87)【国際公開番号】W WO2023046803
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・アントニー・スミス
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE06
4C066FF05
(57)【要約】
データストレージを実装するために薬物送達装置又は薬物送達付属装置内に適用するように構成された電子システムが開示され、電子システムは少なくとも、データを処理するために提供されるプロセッサと、データを記憶するために提供される不揮発性メモリと、揮発性メモリを有する電子コンポーネントと、を含み、電子コンポーネントは、継続的に電力の供給を受けて、揮発性メモリ内に記憶されたデータを保持するように構成され、プロセッサは、処理されたデータの少なくとも一部を電子コンポーネントの揮発性メモリに記憶するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データストレージを実装するために薬物送達装置(1)又は薬物送達付属装置内に適用するように構成された電子システムであって、少なくとも、
- データを処理するために提供されるプロセッサ(23)と、
- データを記憶するために提供される不揮発性メモリ(230)と、
- 揮発性メモリ(320)を有する電子コンポーネントと
を含み、
- 前記電子コンポーネントは、前記揮発性メモリ内に記憶されたデータを保持するために継続的に電力の供給を受けるように構成され、
- 前記プロセッサは、前記処理されたデータの少なくとも一部を前記電子コンポーネントの前記揮発性メモリに記憶する
ように構成される電子システム。
【請求項2】
前記揮発性メモリを備える前記電子コンポーネントが、前記プロセッサによってアクセス可能な揮発性メモリを持つリアルタイムクロック(32)であり、前記プロセッサが、前記揮発性メモリにアクセスして、前記処理されたデータの少なくとも一部を前記揮発性メモリに記憶するように構成される、請求項1に記載の電子システム。
【請求項3】
前記プロセッサが、前記揮発性メモリ内に暗号データ、特に1つ又は複数の暗号キーを記憶するように構成される、請求項1又は2に記載の電子システム。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記薬物送達装置の使用に関するデータ、特に前記薬物送達装置で送達される投与量に関するデータを前記不揮発性メモリに記憶するように構成される、請求項1、2、又は3に記載の電子システム。
【請求項5】
前記不揮発性メモリが、前記薬物送達装置の使用に関するデータ、特に前記薬物送達装置により送達される投与量に関する、前記薬物送達装置の寿命中に生成されるデータ全体を記憶するために十分とされる記憶サイズを含む、請求項4に記載の電子システム。
【請求項6】
データ伝送のために提供される通信インタフェース(27)をさらに含み、前記プロセッサが、通信関連データを、特に外部コンピューティングデバイスへのデータ伝送を確立するために必要なデータを前記揮発性メモリに記憶するように構成される、請求項1~5の何れか1項に記載の電子システム。
【請求項7】
前記プロセッサが、データの完全性を確保するために、前記揮発性メモリ内に記憶された又は記憶される前記データの少なくとも1つのチェック及び/又は修正サイクルを実行するように構成される、請求項1~6の何れか1項に記載の電子システム。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記データを前記揮発性メモリに記憶する前及び関連するチェックサム又はハッシュ値を前記記憶されたデータと共に記憶する前、並びに前記データとそれに関連するチェックサム又はハッシュ値とを前記揮発性メモリから読み取った後に、前記データに対してチェックサム又はハッシュ値チェックをチェックサイクルとして実行するように構成される、請求項7に記載の電子システム。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記揮発性メモリからデータを繰り返し読み取るために複数の読み取り動作をチェックサイクルとして実行し、一時エラーを検出するために前記繰り返し読み取られたデータを比較するように構成される、請求項7又は8に記載の電子システム。
【請求項10】
前記プロセッサが、前記データが前記揮発性メモリに記憶された直後に前記揮発性メモリからのデータの読み取り動作をチェックサイクルとして実行し、前記データが正確に記憶されたことを確実にするために前記読み取られたデータを書き込まれたデータと比較するように構成される、請求項7、8、又は9に記載の電子システム。
【請求項11】
前記プロセッサが、前回のデータ記憶動作中に記憶された前記データのエラーがチェックサイクル中に検出された場合、前回のデータ記憶動作の繰り返しを修正サイクルとして実行するように構成される、請求項7、8、9、又は10に記載の電子システム。
【請求項12】
一次バッテリ(29)又は電池、特にボタン電池を電源として含み、前記バッテリ又は電池が、前記電子システムのさらなるコンポーネントと共にプリント回路基板上に実装され、前記薬物送達装置の寿命にわたり、前記寿命中に前記不揮発性メモリの消去動作が行われないときに電力を提供する大きさにされる、請求項1~11の何れか1項に記載の電子システム。
【請求項13】
薬物送達装置(1)又は薬物送達付属装置にデータを記憶する方法であって、
- 第一の種類のデータと第二の種類のデータとを区別するために、特に請求項1~12の何れか1項に記載の前記電子システムのプロセッサ(3)によりデータを処理すること(S10)と、
- 前記第一の種類のデータを不揮発性メモリに記憶し(S12)、前記第二の種類のデータを、前記揮発性メモリ内に記憶されたデータを保持するために継続的に電力が供給されるように構成された電子コンポーネントの揮発性メモリに記憶すること(S16)と、
を含む方法。
【請求項14】
第一の種類のデータと第二の種類のデータとを区別するためにプロセッサによりデータを前記処理することが、
- 処理される前記データの中のデータセットが、前記薬物送達装置の使用に関するデータ、特に前記薬物送達装置により送達される投与量に関するデータを前記データセットが含む場合に前記第一の種類のデータに属すると特定することと、
- 処理される前記データの中のデータセットが、通信に関するデータ、特に外部コンピューティングデバイスへのデータ伝送を確立するために必要なデータ及び/又は暗号データ、特に1つ又は複数の暗号キーを前記データセットが含む場合に前記第二の種類のデータに属すると特定することと
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
データ完全性を確保するために前記揮発性メモリに記憶された又は記憶される前記データの少なくとも1つのチェック及び/又は修正サイクルを実行すること(S14、S18)、特に、前記データを前記揮発性メモリに記憶する前、その関連するチェックサム又はハッシュ値を前記記憶されたデータと共に記憶する前、及び前記データとそれに関連するチェックサム又はハッシュ値とを前記揮発性メモリから読み取った後の、チェックサイクルとしての、前記データに対するチェックサム又はハッシュ値チェックと、一時エラーを検出するために前記揮発性メモリからデータを繰り返し読み取るため及び前記繰り返し読み取られたデータを比較するための、チェックサイクルとしての複数回の読み取り動作と、前記データが前記揮発性メモリに記憶された直後の前記揮発性メモリからの、チェックサイクルとしてのデータ読み取り動作と、前記データが正確に記憶されたことを確認するために、前記読み取られたデータを前記書き込まれたデータと比較することと、チェックサイクル中に前回のデータ記憶動作中に記憶された前記データのエラーがチェックサイクル中に検出された場合に、修正サイクルとして前記前回のデータ記憶動作を繰り返すこととのうちの1つ又は複数を実行することをさらに含む、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物送達装置又は薬物送達付属装置の電子ユニットを動作させることに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の送達、特に注入による定期的な治療を必要とする様々な疾病が存在する。このような注入は注入装置を用いて行うことができ、これらは医療従事者又は患者本人の何れによっても使用される。
【0003】
特に患者自身が使用する注入装置等の薬物送達装置又はこのような薬物送達装置のための付属装置は、使用に関するデータを測定し、記憶するための電子システムを備え得る。使用に関するデータはまた、無線リンク又はワイヤ接続を介してスマートフォン、タブレット、若しくはラップトップコンピュータ、又はクラウドへと伝送され得る。本明細書では、薬物送達装置の使用に関するデータを測定し、記憶するための電子システムを含む薬物送達装置又は付属装置を説明する。
【0004】
米国特許出願公開第2019/0134305A1号明細書では、患者への薬剤送達に関するフローセンサから捕捉されたデータをペアリングされた外部機器に提供するために外部機器とペアリングできる薬剤送達装置、例えば注射ペン又はウェアラブルポンプが開示されている。この送達装置は、送達装置にそれと一体的に、又は例えばペンニードルアダプタ又はその他のペンアタッチメント等の着脱式アタッチメントを介して提供される電子システムを含む。電子システムは一般に、処理デバイス、メモリデバイス、薬剤等の流体の送達又はその他の送達関連情報を検出するためのセンサ、発光ダイオード(LED)等のインディケータ、及び通信インタフェースを含む。
【0005】
欧州特許出願公開第3476417A1号明細書は、薬物、薬剤、又は活性成分を含む液体を送達、投与、注入、点滴、及び/又は吐出するための薬物送達システムに関する。医療用モニタシステムは、経皮又は筋肉注射のための液体薬物を含むカートリッジ又はシリンジ等の容器又は貯蔵部を保持する容器ホルダを備える使い捨て注入装置を含む。このシステムはまた、注入装置から釈放可能であり、又は逆にそこに取り付けられるようになされた電子モジュール又は補助装置も含む。電子モジュールは、注入の状況をモニタするため、又は投薬イベントの進行を追跡するための注入状態検知手段のほか、機械可読タグから薬物情報を読み取るための、検知手段とは異なるタグリーダを含む。電子モジュールは、タグから読み取られた薬物情報を評価するための評価ユニットのほか、信号生成ユニットを含む。この場合、別の評価情報が電子モジュールにおいてローカルで入手可能でなければならず、これらはローカルクロック及び/又は、治療計画若しくは薬物バッチ情報のコピーをブラックリスト又はホワイトリストの形態で記憶するメモリユニットを示唆し得る。後者は明らかに、あらかじめメモリユニットにプリロードされていなければならない。メモリユニットはまた、注入装置の過去の投薬イベントに関する情報も記憶し得る。
【0006】
国際公開第2016/110592A1号パンフレットは、薬物注入装置のための無線データ通信モジュールに関する。この無線データ通信モジュールは、複数のスタック式のコンポーネント支持領域を含む折り畳み式フレキシブルキャリア部材と、折り畳み式フレキシブルキャリア部材の第一のコンポーネント支持領域に第一の電気接続端子集合を介して電気的に接続された、LCD又はOLEDディスプレイ等のディスプレイを含む。ディスプレイは、外向きの読み取り可能なディスプレイと、それと反対の下向きの光反射板を含む。無線データ通信モジュールはさらに、折り畳み式フレキシブルキャリア部材の、第一のコンポーネント支持領域の下にある第二のコンポーネント支持領域に取り付けられたNFCアンテナを含む。無線データ通信モジュールの電子回路アセンブリは、少なくともプロセッサと不揮発性メモリを含み、電子回路アセンブリは、折り畳み式フレキシブルキャリア部材の、第二の支持領域の下にある第三のコンポーネント支持領域に取り付けられる。不揮発性メモリは、無線モジュールが組み込まれた場合に薬剤注入装置を使用した患者の薬物投与の自動収集データログ又はデータ記録を含み得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示では、薬物送達装置又は薬物送達付属装置上のデータストレージのための解決策を説明する。
【0008】
1つの態様において、本開示は、データストレージを実装するために薬物送達装置又は薬物送達付属装置内に適用するように構成された電子システムを提供し、電子システムは少なくとも、データを処理するために提供されるプロセッサと、データを記憶するために提供される不揮発性メモリと、揮発性メモリを有する電子コンポーネントと、を含み、電子コンポーネントは、揮発性メモリ内に記憶されたデータを保持するために継続的に電力の供給を受けるように構成され、プロセッサは、処理されたデータの少なくとも一部を電子コンポーネントの揮発性メモリに記憶するように構成される。全ての処理データを不揮発性メモリ、例えばフラッシュメモリに記憶する代わりに、処理データの一部は、継続的に電力の供給を受け、したがって不揮発性メモリのように動作する、電子コンポーネントの揮発性メモリに記憶される。したがって、それが満杯になり、その中にそれ以上処理データを記憶できない場合、又はデータを変更する等、データを上書きしなければならない場合に、その不揮発性メモリの消去を回避することができる。フラッシュメモリは、通常、不揮発性メモリとして使用されるが、フラッシュメモリは消去のためにかなりの量の電気エネルギーを必要とするため、本願で開示される電子システムは不揮発性メモリの消去を回避することができるため、電気エネルギーを節約する役割を果たし得、これは、使い捨て注射ペンで通常利用されるバッテリ又は電池等の一次バッテリ又は電池(使い捨ての交換不能なバッテリ又は電池)を備える薬物送達装置及び薬物送達付属措置にとっての利点であり得る。
【0009】
「メモリ」及び「ストレージ」という用語は、本明細書においては同義で使用され、電荷、電圧レベル、磁界、電気抵抗、又はその他の電磁特性により表されるデータ、特に上述の物理特性の変動により表されるバイナリデジタルデータを記憶するための同じ包括的な技術的手段を指す。
【0010】
「不揮発性メモリ」という用語は、電力がなくても保持される上述の電磁特性により表される、データを記憶するための技術的手段を指す。不揮発性メモリの例は、フラッシュメモリ、リードオンリメモリ(ROM)、強誘電ランダムアクセスメモリ(RAM)、及びハードディスクドライブ等の磁気コンピュータ記憶装置である。しかしながら、本願に関して、不揮発性メモリとは特に、マイクロコントローラ等の電子コンポーネントに組み込まれた、又はソリッドステートドライブ(SSD)で使用されるフラッシュメモリを意味する。
【0011】
「揮発性メモリ」という用語は、電力が供給されている間のみ電磁特性により表されるデータを記憶するための技術的手段を指す。揮発性メモリの電力供給がオフになると、揮発性メモリは通常、その中に記憶されたデータを失う。揮発性メモリの例は、スタティック及びダイナミックランダムアクセスメモリSRAM及びDRAMである。しかしながら、本明細書で使用される揮発性メモリはまた、ロジック回路内のレジスタ等、電子コンポーネントの、少量のデータのみを記憶するために提供される内蔵メモリも含み得る。
【0012】
実施形態において、揮発性メモリを備える電子コンポーネントは、プロセッサによってアクセス可能な揮発性メモリを持つリアルタイムクロックであり得、プロセッサは、揮発性メモリにアクセスして、処理データの少なくとも一部を揮発性メモリに記憶するように構成される。リアルタイムクロックは通常、各種データを記憶するための内蔵揮発性メモリを有し、これはまた、通常、発振器を駆動し、駆動された発振器により発生する振動をカウントするために常に電源供給される。揮発性メモリにおいてデータを記憶し、消去し、書き込み、またその記憶されたデータを保持するための電気エネルギー需要は、通常、フラッシュメモリ等の不揮発性であるが消去可能且つ書き込み可能なメモリよりもはるかに低い。揮発性メモリは、スタティック又はダイナミックランダムアクセスメモリとして実装することができ、その容量は処理データの一部を記憶するのに十分な大きさであり得る。
【0013】
実施形態において、プロセッサは、揮発性メモリ内に暗号データ、特に1つ又は複数の暗号キーを記憶するように構成され得る。暗号データは、薬物送達装置又は薬物送達付属装置の寿命中に変化し得、それゆえ、不揮発性メモリの書き込み及び消去等、より多くの電気エネルギーを必要とする動作を回避するために、揮発性メモリ内に記憶されるのに適し得る。
【0014】
別の実施形態では、プロセッサは、薬物送達装置の使用に関するデータ、特に薬物送達装置で送達される投与量に関するデータを不揮発性メモリに記憶するように構成され得る。送達される投与量に関する情報を含むデータ等の使用関連データは、通常、薬物送達装置の寿命中に変化しない。それゆえ、この種のデータは理想的には、不揮発性メモリに記憶されるのに適しており、なぜなら、それが典型的に変化せず、したがって、そうするために必要な追加の電気エネルギーを必要としないからである。
【0015】
実施形態において、不揮発性メモリは、薬物送達装置の使用に関するデータ、特に薬物送達装置により送達される投与量に関する、薬物送達装置の寿命中に生成されるデータ全体を記憶するために十分とされる記憶サイズを含み得る。例えば、薬物送達装置のカートリッジに貯蔵される薬物の量及び通常の1回送達あたり投与量に応じて、どのストレージサイズが薬物送達装置の寿命にわたり使用関連データ全体を記憶するのに十分であるかを特定することができる。
【0016】
また別の実施形態において、電子システムは、データ伝送のために提供される通信インタフェースをさらに含み得、プロセッサは、通信関連データを、特に外部コンピューティングデバイスへのデータ伝送を確立するために必要なデータを揮発性メモリに記憶するように構成される。このような通信関連データは、薬物送達装置又は薬物送達付属装置の寿命中に変化し得、それゆえ、不揮発性メモリの書き込みと消去等、より多くの電気エネルギーを必要とする動作を回避するために揮発性メモリに記憶するのに適し得る。通信インタフェースは、無線及び/又は有線通信インタフェースであり得、通信関連データは例えば、外部コンピューティングデバイスとの伝送を確立し、そのセキュリティを保護するためのデータを含み得る。特に、通信インタフェースは、Bluetooth(登録商標)又はWi-Fi(商標)インタフェースを含み得、通信関連データは、Bluetooth(登録商標)ペアリング情報又はWi-Fi(商標)接続のサービスセット識別子(SSID)を含み得る。
【0017】
さらに別の実施形態において、プロセッサは、データの完全性を確保するために、揮発性メモリ内に記憶された又は記憶されるデータについて少なくとも1つのチェック及び/又は修正サイクルを実行するように構成され得る。これによって、データがプロセッサから電子コンポーネントの揮発性メモリに伝送されるときのデータ破壊のリスクを、回避されないとしても確実に検出できるようになり得る。特に、プロセッサと揮発性メモリとの接続が干渉を受けやすい、例えばI2Cバス等のシリアルインタフェースで実施形態では、読み取り及び又は書き込みイベント中にそのような接続においてデータ破壊が生じる可能性がある。それゆえ、チェックサイクルはデータ破壊の検出に役立ち得る。
【0018】
特定の実施形態において、プロセッサは、データを揮発性メモリに記憶する前及び関連するチェックサム又はハッシュ値を記憶されたデータと共に記憶する前、及びデータとそれに関連するチェックサム又はハッシュ値を揮発性メモリから読み取った後に、データに対してチェックサム又はハッシュ値チェック、例えば巡回冗長検査(CRC)をチェックサイクルとして実行するように構成され得る。これは、破壊されたデータを素早く検出するための効率的な方策であり、したがって、揮発性メモリに記憶されたデータの真実性の信頼度が高まる。
【0019】
別の特定の実施形態において、プロセッサは、揮発性メモリからデータを繰り返し読み取るために複数の読み取り動作をチェックサイクルとして実行し、一時エラーを検出するために繰り返し読み取られたデータを比較するように構成され得る。揮発性メモリからの、1回の読み取り動作より多くの時間を必要とする複数の読み取り動作、特に複数回の連続する読み取り動作により、1回の読み取り動作では本来は不可能であった一時エラーの検出及び修正が確実に行われ得る。
【0020】
また別の特定の実施形態において、プロセッサは、データが揮発性メモリに記憶された直後に揮発性メモリからのデータの読み取り動作をチェックサイクルとして実行し、データが正確に記憶されたことを確実にするために読み取られたデータを書き込まれたデータと比較するように構成され得る。これは、揮発性メモリ内のデータ記憶の完全性を増大させ、データ破壊の原因となるエラーがデータ保存中に発生しないことを確実にするための、また別の方策である。
【0021】
さらに別の特定の実施形態において、プロセッサは、前回のデータ記憶動作中に記憶されたデータのエラーがチェックサイクル中に検出された場合、その前回のデータ記憶動作の繰り返しを修正サイクルとして実行するように構成され得る。このようにして、データ記憶の信頼性が改善され得る。
【0022】
揮発性メモリへのデータ記憶の信頼性又は完全性及びデータの完全性を向上させるための上述の方策は、各々が1つの方策として実装され得るか、又は一緒に実装され、記憶されたデータのエラー検出の確率が改善され得ることに留意されたい。
【0023】
実施形態において、プロセッサはマイクロコントローラによって実装され得、不揮発性メモリはマイクロコントローラのフラッシュメモリである。マイクロコントローラは、ファームウェアにより、その内蔵フラッシュメモリに記憶すべきデータと、外部ストレージ内、特に電子コンポーネントの揮発性メモリ内に記憶すべきデータとを区別し、処理データのこの区別に応じて記憶動作を実行するように構成され得る。
【0024】
別の実施形態において、電子システムは、一次バッテリ又は電池、特にボタン電池を電源として含み得、バッテリは、電子システムのさらなるコンポーネントと共にプリント回路基板(PCB)上に実装される。バッテリ又は電池は、薬物送達装置の寿命にわたり、その寿命中に不揮発性メモリの消去動作が行われないときに電力を提供する大きさにされる。典型的に、使い捨て注射ペンは交換可能バッテリ又は電池を持たないので、一次バッテリ又は電池は例えばPCBにはんだ付けされ得、したがって交換不能である。バッテリ内に貯蔵される電気エネルギーは、特に、本明細書中で開示されるように電子コンポーネントの揮発性メモリ内に消去可能且つ書き換え可能なデータが記憶されているときに起こり得る消去動作がその寿命中に実行されないことを考慮した上で、薬物送達装置の予想寿命について十分な大きさにされている。これによって、より小容量のバッテリ又は電池、例えば、寿命中に消去動作が求められる場合に必要なものより少ないエネルギーを貯蔵するバッテリ又は電池を使用することが可能となる。より小容量のバッテリ又は電池は、必要なスペースが少なくてよく、これは薬物送達装置又は薬物送達付属装置のハウジングを設計する際に有利であり得る。
【0025】
他の態様において、本開示は、薬物送達装置又は薬物送達付属装置にデータを記憶する方法を提供し、この方法は、第一の種類のデータと第二の種類のデータとを区別するために、特に先行する請求項の何れかに記載の電子システムのプロセッサによりデータを処理することと、第一の種類のデータを不揮発性メモリに記憶し、第二の種類のデータを、揮発性メモリ内に記憶されたデータを保持するために継続的に電力が供給されるように構成された電子コンポーネントの揮発性メモリに記憶することと、を含む。方法は特に、薬物送達装置の使用、特に投与量送達の測定を実行し、測定データを記憶し、薬物送達装置及び/又は薬物送達付属装置の外部コンピューティングデバイス、例えばスマートフォン、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、サーバコンピュータ、又はクラウドコンピュータとの接続機能を提供するために提供されるファームウェアの一部として実装され得る。
【0026】
この方法の実施形態において、第一の種類のデータと第二の種類のデータとを区別するためにプロセッサによりデータを処理することは、処理されるデータの中のデータセットが、薬物送達装置の使用に関するデータ、特に薬物送達装置により送達される投与量に関するデータをそのデータセットが含む場合に第一の種類のデータに属すると特定することと、処理されるデータの中のデータセットが、通信に関するデータ、特に外部コンピューティングデバイスへのデータ伝送を確立するために必要なデータ及び/又は暗号データ、特に1つ又は複数の暗号キーをそのデータセットが含む場合に第二の種類のデータに属すると特定することとを含み得る。第一の種類のデータと第二の種類のデータとのこの区別は、前述のファームウェアの機能として実装され得る。
【0027】
実施形態において、方法は、データ完全性を確保するために揮発性メモリ内に記憶された又は記憶されるデータの少なくとも1つのチェック及び/又は修正サイクルを実行すること、特に、以下:データを揮発性メモリに記憶する前、関連するチェックサム又はハッシュ値を記憶されたデータと共に記憶する前、及びデータとそれに関連するチェックサム又はハッシュ値とを揮発性メモリから読み取った後の、チェックサイクルとしての、データに対するチェックサム又はハッシュ値チェックと、一時エラーを検出するために揮発性メモリからデータを繰り返し読み取るため及び繰り返し読み取られたデータを比較するための、チェックサイクルとしての複数回の読み取り動作と、データが揮発性メモリに記憶された直後の揮発性メモリからの、チェックサイクルとしてのデータ読み取り動作と、データが正確に記憶されたことを確認するために、読み取られたデータを前のデータと比較することと、前回のデータ記憶動作中に記憶されたデータのエラーがチェックサイクル中に検出された場合に、修正サイクルとして前回のデータ記憶動作を繰り返すこととのうちの1つ又は複数を実行することをさらに含み得る。この方法の前述の機能により、データの信頼性及び/又は完全性が確保され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】
図1の注入装置において使用される電子システムの実施形態の概略ブロック図を示す。
【
図3】
図1の注入装置上にデータを記憶する方法の実施形態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本開示の実施形態を、注入装置、特にペン型の注入装置に関して説明する。しかしながら、本開示はこのような用途に限定されず、その他の種類の薬物送達装置でも、特にペン以外の形状のものでも等しく利用され得る。全ての絶対値は本明細書においては例として示されており、限定的と理解されるべきではない。
【0030】
注入装置のある例は、例えば国際公開第2014033195A1号パンフレットに記載されているような、注入ボタンとダイアルグリップの組合せを備える注射ペンである。他の例は、例えば国際公開第2004078239号パンフレットに記載されているような、別々の注入ボタンとダイアルグリップコンポーネントを備える注入装置である。
【0031】
以下の記述の中で、「遠位」、「遠位方向に」、及び「遠位端」という用語は、注射ペンの、針が設けられる端を指す。「近位」、「近位方向に」、及び「近位端」は、注入装置の、注入ボタン又は投与量ノブが設けられる反対の端を指す。
【0032】
図1は、国際公開第2014033195号パンフレットに記載されているような注射ペン1の分解図である。
図1の注射ペンは、プレフィルド型使い捨て注射ペンであり、これはハウジング10を含み、インスリン容器14が収容されており、そこに針15を取り付けることができる。針は、内側針キャップ16と、外側針キャップ17又は他のキャップ18の何れかにより保護される。注射ペン1から排出されるべきインスリン投与量は、投与量ノブ12を回すことによってプログラム、又は「ダイアル操作」でき、すると、その時現在プログラムされている投与量が投与量窓13を介して、例えば倍数単位で表示される。例えば、注射ペン1がヒトインスリンを投与するように構成されている場合、投与量はいわゆる国際単位(IU)で表示され得て、1 IUは高純度結晶インスリン約45.5マイクログラム(1/22mg)の生物学的等価量である。インスリン類似体又はその他の薬剤を送達するための注入装置においては、他の単位が使用され得る。選択された投与量は、
図1の投与量窓13に示されているものとは異なる方法でも同等に表示され得る点に留意すべきである。
【0033】
投与量窓13はハウジング10の開口の形態であり得、それによってユーザは、投与量ノブ12が回されると動き、現在プログラムされている投与量の視覚的表示を提供するように構成されたダイアルスリーブ70の限定部分を見ることができる。投与量ノブ12は、プログラミング中に回されるとハウジング10に関してらせん経路で回転する。この例において、投与量ノブ12は1つ又は複数の形成部71a、71b、71cを含み、データ収集装置(薬物送達又は注入付属装置)を取り付けやすい。
【0034】
注射ペン1は、投与量ノブ12を回すことによって機械的なクリック音を発生して、ユーザに音声フィードバックが提供されるように構成され得る。ダイアルスリーブ70は、インスリン容器14内のピストンと機械的に相互作用する。この実施形態において、投与量ノブ12は注入ボタンとしても機能する。針15が患者の皮膚部分に打ち込まれて投与量ノブ12が軸方向に押されると、表示窓13に表示されたインスリン投与量が注射ペン1から排出される。投与量ノブ12が押されてから注射ペン1の針15が皮膚部分に特定時間とどまると、投与量のうちの高いパーセンテージが実際に患者の体内に注入される。インスリン投与量の排出によっても機械的クリック音が発生し得るが、これは投与量のダイアル操作中に投与量ノブ12を回転させると発生する音とは異なる。
【0035】
この実施形態において、インスリン投与量の送達中に、投与量ノブ12は軸方向に移動して回転せずにその当初の位置に戻り、他方でダイアルスリーブ70は回転してその当初位置に戻り、例えばゼロ単位の投与量を表示する。
【0036】
注射ペン1は、インスリン容器14が空になるか、注射ペン1内の薬剤の消費期限(例えば、最初の使用から28日後)に到達するまで、複数回の注射プロセスに使用され得る。
【0037】
さらに、注射ペン1を初めて使用する前に、インスリン容器14及び針15から空気を抜くために、例えば針15付きの注射ペン1を上向きにして持ち、インスリン2単位を選択し、投与量ノブ12を押すことによって、いわゆる「プライムショット」を実行する必要があり得る。説明を簡単にするために、以下において、排出量は注入される投与量に実質的に対応し、それによって、例えば注射ペン1から排出される薬剤の量は使用者が受ける投与量と等しいと仮定される。しかしながら、排出量と注入量との差(例えば、損失)は考慮する必要があり得る。
【0038】
前述のように、投与量ノブ12はまた、注入ボタンとしても機能し、それによって同じコンポーネントがダイアル操作及び吐出のために使用される。1つ又は複数の光センサを含むセンサ機構215(
図2)が注入ボタン又は投与量ノブ12の中に取り付けられ得て、これはダイアルスリーブ70の、注入ボタン12に関する相対的回転位置を検知するように構成される。この相対回転は、吐出又は送達される投与量の大きさと同等として、投与歴情報を生成し、保存又は表示するために使用できる。センサ機構215は、第一の(光)センサ215aと第二の(光)センサ215bを含み得る。センサ機構215はまた、薬物送達又は注入付属装置にも装着され得て、これは異なる注入装置1に使用できるようになされ、センサ機構215により取得されるデータを収集するように構成され得る。センサ機構215の例は、国際公開第2019101962A1号パンフレットに詳細に記載されている。2つの光センサ215a、215bを備えるセンサ機構215により検知されたダイアルスリーブ70の相対回転は、後述のように、注入装置1により投与される薬剤投与量を特定するために処理され得る。
【0039】
センサ信号処理は、
図2において概略的に示されているように、センサユニット700により実行される。センサユニット700は、注入装置1の中、特に投与量ノブ12の中に、又は装置1に取り付けるための付属装置の中に組み込まれ得る。センサユニット700は、2つのセンサ215a、215bを含むセンサ機構215と、センサ機構215を制御するための装置を含み得る。制御装置は、1つ又は複数のプロセッサ、例えばマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又はその他等の1つ又は複数のプロセッサ、プログラム24及びメインメモリ25を含むメモリユニット24、25、他の機器とWi-Fi(商標)又はBluetooth(登録商標)を介して通信するための無線通信インタフェース、及び/又はユニバーサルシリアルバス(USB)ソケット等の有線通信リンクのためのインタフェースであり得る通信ユニット又は出力27、表示ユニット30、例えば液晶ディスプレイ(LCD)、1つ又は複数のLED、及び/又は電子ぺーパーディスプレイ、例えば1つ又は複数ボタン及び/又はタッチ入力装置等のユーザインタフェース(UI)31、電源スイッチ28、一次バッテリ又は電池29及び日付と時間の追跡を続けるためのリアルタイムクロック(RTC)32を含み得る。RTC32は、別の電子コンポーネントとして実装され得て、時間及び/又は日付の値を記憶するために提供される内蔵メモリ320を含み得る。一次バッテリ又は電池29は使い捨ての再充電不能なボタン電池であり得、例えばフラッシュメモリの消去動作等、所定の電力需要を超過する動作がセンサユニット700により実行されないことを条件として、注入装置1の寿命にわたり電力を提供するような大きさの電気エネルギーを記憶する容量を有する。
【0040】
センサユニット700は異なる種類のメモリを含み得て、すなわち、プログラムメモリ24は特に、センサユニット700の電子システムのファームウェアを永続的に記憶するためのROM又はプログラマブルROM(PROM)であり得、メインメモリ25は特に、注入装置1の動作中に頻繁に変化し、永続的に記憶する必要がなく、注入装置1の使用中のみ、すなわち薬剤値投与量が選択され、送達されるときにのみ必要となるファームウェアのプログラムパラメータ又はファームウェアの機能を記憶できるDRAM又はSRAMであり得る。メインメモリ25は特に、電源がオフにされ、電源がオフにされるとその内容を失い得る。センサユニット700はまた、注入装置1が使用されず、動作していないとき、エネルギーを節約するためにメインメモリ25の電源をオフにするように構成され得る。プログラムメモリ24及び/又はメインメモリ25は、外付けコンポーネントとして実装され得て、すなわち、これらは別々のコンポーネントであり、装置の内部メモリでなくてもよいが、これらはまた、プロセッサ機構23の内蔵メモリであるメモリ230のような内蔵メモリとしても実装され得る。内蔵メモリ230は、永続又は不揮発性であるが書き込み可能なメモリ、特にフラッシュメモリとして実装されて、プロセッサ機構23により処理されて、注入装置1の寿命にわたり記憶されるように提供されるデータを記憶するために提供され得る。典型的に、注入装置1により送達される投与薬剤又は薬物投与量は、例えばプロセッサ機構23がセンサ機構215から受け取った測定値から送達薬物投与量を導き出した直後に、不揮発性内蔵メモリ230に記憶される。プロセッサ機構23のその他のコンポーネントと共に、例えば単一チップ、特にフラッシュメモリが組み込まれたマイクロコントローラに統合されることによって、例えば配線の問題又はEMC(電磁環境両立性)の問題によるデータ損失又は破壊のリスクが低減し得る。不揮発性内蔵メモリ230の大きさは、注入装置1の使用に関する、注入装置1の寿命中に生成されるデータが、実行するのに高い電気エネルギーを必要とする消去動作を必要とせずに、メモリ230内に全て記憶されるように選択され得る。他の内蔵メモリの種類は、センサユニット700のコンポーネントの中に提供され得て、これは例えばRTC32の内蔵メモリ320である。この種のメモリは通常、コンポーネントの通常の動作のため、又はそれぞれのコンポーネントに電気エネルギーが供給されているかぎりパラメータを記憶するために必要なそれぞれのコンポーネントのパラメータを記憶するために提供される。RTC32の内蔵メモリ320は揮発性メモリ、例えば内蔵DRAM若しくはSRAM又はレジスタバンクであり、RTC32の電源がオフにされると記憶されたテータを失う。
【0041】
コンポーネント23、24、25、27、28、29、30、31、32は、コンポーネント間の配線を含むPCBにはんだ付けされ得る。一次バッテリ又は電池29もまたPCBにはんだ付けされ得る。センサ機構215もPCBに取り付けられ得るか、プロセッサ機構23とワイヤ接続され得る。センサユニット700の実装は、それを組み込むべき薬物送達装置又は薬物送達付属装置に依存する。例えば、コンポーネント23、24、25、27、28、29、30、31、32を備えるPCBは、注入装置1の遠位端に組み込まれ得て、センサ215a、215bは、その移動が検出されるべき可動部品の付近に配置され、配線を介してPCBに接続され得る。コンポーネント23、24、25、27の少なくとも幾つかは、SoC(システムオンチップ)又はマイクロコントローラによっても含まれ得る。
【0042】
電源スイッチ28は、プロセッサ機構23の電源供給を制御し、すなわち、電源スイッチ28が閉じられるとプロセッサ機構23はアクティベートされて、それがバッテリ29から電流を引き込む。電源スイッチ28は、プロセッサ機構23をバッテリ又は電池29から電気的に分離し得て、それによって機構23は電源スイッチ28が作動されないかぎり電源供給されず、又は電源スイッチ28は、それが作動されるとプロセッサ機構23を「ウェイクアッアップ」し得えて、「ウェイクアップ」とは、プロセッサ機構23が、電力消費量が最小のある種のスリーブ状態から通常の電力消費量の通常動作状態へと復帰させられることを意味する。
【0043】
電源スイッチ28の状態とは関係なく、RTC32はバッテリ又は電池29から継続的に電源供給され、すなわち、バッテリ又は電池29から電気エネルギーが継続的に供給されるが、その電力消費量はプロセッサ機構23と比べて比較的低い。これは例えば、バッテリ他又は電池29からPCB上のRTC32まで固定の、すなわち中断不能な電源配線を提供することによって実現できる。RTC32の電気エネルギーの継続的な供給は主として、時間を追跡し、その内蔵揮発性メモリ320内に記憶されたデータ、特に投与量データを、注入装置1のユーザによって1回のみ、すなわち装置1の初回使用時又はもっと早く、それが工場で製造されるときに設定されるべき時間と日付に関連付けるのに必要なクロックデータを保持するためにリアルタイムクロックを動作させるという目的を達成する。内蔵メモリ320は、クロックデータを記憶するのに必要なものより大きい容量を有し得るか、又は記憶されたクロックデータが、ある程度のメモリスペースを他の目的のために利用できるようにするために削減され得る。内蔵メモリ320は、RTC32の外部から、特にプロセッサ機構23によってアクセス可能であり、それはメモリ320からデータを読み取り、そこにデータを書き込むことができる。
【0044】
プログラムメモリ25に記憶されるファームウェアは、プロセッサ機構23を、センサ機構215を制御して、装置12を用いて送達される薬物投与量の排出を検出することができ、センサ215a、215bの各々が検出された送達薬物投与量に対応するセンサ信号を出力するように構成し得る。プロセッサ機構23は、センサ215a、215bの各々のセンサ信号を受信して各センサ信号の読み取り値を得、これらが処理されて送達投与量が計算される。読み取り値は、例えばセンサ215a、215bのアナログ電圧信号の1つ又は複数の電圧サンプルを含み得る。読み取り値はまた、特定の期間にわたるセンサ215a、215bのアナログ電圧信号の積分も含み得る。電圧信号の代わりに、電流、電荷、又はセンサにより生成されるその他の出力信号が読み取り値を得るために使用され得て、これは例えばセンサ信号の周波数、周波数シフトである。読み取り値は、注入装置1の動作中に装置1により吐出される単位数を測定するための各センサ215a、215bにより得られ得る。吐出単位数を測定することは、各センサ信号のビークを計数することと、計数されたピークから送達投与量を導き出すことを含み得る。
【0045】
測定された吐出単位数から導き出された投与量は、プロセッサ機構23によって、投与量及び特に別のデータ、例えば投与量送達の時間と日付を用いたデータセットを準備することにより処理され得る。データセットは、送達される投与量に関するさらに別の情報、例えば薬物の種類又は固有の電荷数を含む薬物識別子を含み得る。これらのデータセットは、注入装置1の寿命中に変化されるべきではなく、それゆえ安全に記憶される。これらのデータセットは、それを、注入装置1の寿命中に変化し得るデータを含む第二のデータと区別するための第一のデータとみなされ得る。ファームウェアは、プロセッサ機構23を、第一のデータを不揮発性メモリ、特にプロセッサ機構23の内蔵フラッシュメモリ230又は、センサユニット700に含まれる(提供されている場合)、他の不揮発性であるが書き込み可能なメモリに記憶するように構成する。
【0046】
前述のように、データは第一のデータであるか第二のデータであるかで区別され、第二のデータは特に、変化する、又は変化可能なデータを含み得る。第二のデータは特に、例えばセンサユニット700からセンサユニット700に接続された外部コンピューティングデバイスへの暗号データの伝送のために使用され得る暗号キー及び/又は、外部コンピューティングデバイスへのデータ伝送を確立するのに必要なデータ等の通信関連データを含み得る。通信関連データは例えば、Bluetooth(登録商標)ペアリングデータ及び/又はWi-Fi(商標)接続データ、例えばSSID及び/又は共有暗号キーを含み得る。第二のデータはまた、例えばクラウドサービス、特にクラウド処理サービス等の外部コンピューティングデバイスにアクセスするためのクレデンシャルも含み得る。
【0047】
ファームウェアは、プロセッサ機構23を、第二のデータをRTC32の内蔵メモリ320及び/又は、揮発性内蔵メモリを含むが、それらの内蔵揮発性メモリ内に記憶されたデータを保持するために継続的に電力が供給されるその他のコンポーネントの内蔵メモリに記憶するように構成する。例えば、注入装置1が、ユーザによって、使用関連データを受信するためにBluetooth(登録商標)又はWi-Fi(商標)直接接続を介してコンピューティングデバイスに連結された場合、ユーザは、UI31を介してセンサユニット700をぺアリングモードに設定し得、センサユニット700とコンピューティングデバイスとの間に初回通信接続が確立され得る。選択されたモードは例えば、表示ユニット30上でユーザに対して表示できる。すると、ユーザはコンピューティングデバイスをペアリングモードに切り替え得て、それは注入装置1等とペアリングできる状態の、それに近接している装置に問い合わせることができる。ペアリングの過程で、ペアリングに関するデータは両方の装置間で交換され、次に通信が確立されるべきときに新たなペアリングを必要とせずに利用可能となるようにそれらの内蔵メモリに記憶される。これらのペアリング関連データは、プロセッサ機構23によってRTC32の内蔵メモリ320の中に記憶され得、それによって、これらのデータが例えば他のコンピューティングデバイスとの新たなペアリングによって変化した場合に、より多くの電力を消費する例えば内蔵フラッシュメモリ230の消去動作が必要になることが回避される。
【0048】
第二のデータが正確に記憶され、完全性が保たれ、第二のデータが不正に記憶されていないことを確実にするために、幾つかの方策が実行され得る。これらの方策は、第二のデータをプロセッサ機構23の外部のコンポーネント、特にRTC32の内蔵メモリ320に記憶することによって、例えば配線の問題又はEMCの問題によってデータが失われ、破壊されるリスクが増大するような実施形態において特に有利であり得る。
【0049】
1つの方策によれば、プロセッサ機構23はファームウェアによって、RTC32の揮発性メモリ320内に記憶する前及び/又は後に1つ又は複数のチェック及び/又は修正サイクルを実行するように構成され得る。これには、チェックサム若しくはハッシュ値チェック、例えば第二のデータ上のCRCが含まれ得て、これはデータをメモリ320に記憶し、関連するチェックサム又はハッシュ値を記憶されたデータと共に記憶する前、及び/又はメモリ320からデータ及びそれに関連するチェックサム又はハッシュ値を読み取った後に行われ得る。CRC又はハッシュ値チェック等のチェックサムチェックにより、エラーが発生したことが特定され得ることが確実となり得る。チェック又はハッシュ値は、メモリ320に記憶する前に第二のデータのブロックに追加され得て、メモリ320からブロックを読み取った後に、チェック又はハッシュ値は、読み取られたデータがエラーを含むか否かをチェックするために使用され得る。
【0050】
他の方策によれば、プロセッサ機構23はファームウェアによって、チェックサイクルとして、RTC32の揮発性メモリ320からの第二のデータの複数回の読み取り動作を実行するように構成され得る。読み取られたデータがメモリ320から受信者に伝送されるときに伝送エラーを検出するために読み取り動作が繰り返し実行され得る。その後、繰り返しの読み取り動作が実行され得て、例えばメモリ320からのBluetooth(登録商標)ペアリングデータの読み取りは5回実行され得て、その後、5つの読み取られたペアリングデータセットがその後相互に比較されて、読み取られたペアリングデータセット間の不一致が検出される。不一致が検出されると、また別の複数回の読み取り動作シーケンスが行われ得る。この方策は、読み取りデータ間の不一致が発生しなくなるまで繰り返され得る。
【0051】
別の方策によれば、第二のデータの読み取り動作は、第二のデータがRTC32の揮発性メモリ320に記憶された直後にチェックサイクルとして実行され得る。例えば、書き込み及び読み取りコマンドのシーケンスはプロセッサ機構23によって実行され得て、これは第二のデータをメモリ320に書き込み、書き込みプロセスの終了直後に記憶されたデータを読み取り、その後これらをプロセッサ機構23の内蔵レジスタ内で依然として利用可能な第二のデータと比較できる。このようにして、記憶された第二のデータの正確さを素早く確認することができる。
【0052】
上述の方策はまた、組み合わせることによって、エラーが発生したかを検出する確率を高めることもできる。前回のデータ記憶動作は、チェックサイクル中に前回のデータ記憶動作中に記憶されたデータのエラーが検出された場合に、修正サイクルとして繰り返すことができる。この修正サイクルによって、データ完全性を確保することができる。
【0053】
注入装置のファームウェアの記憶ルーチンの例示的なフローチャートが
図3に示されている。このルーチンはファームウェア内の手順として実行され得て、これは、プロセッサが例えば処理済みデータの記憶を要求した場合に呼び出される。ルーチンはすると、第一のステップS10で、記憶すべきデータを第一の種類のデータ又は第二の種類のデータに区別し得て、例えば送達される薬物投与量に関するデータは第一の種類のデータに分類され、Bluetooth(登録商標)ペアリングデータ等の通信面に関するデータは第二の種類のデータとして分類されることになる。データの種類のこの区別は、ルーチンによって、データがどのメモリに記憶されるべきかの決定を左右するために使用される。データが第一の種類のデータに分類されると、ルーチンはステップS12に進み、データを不揮発性メモリ、例えば
図2のセンサユニット700のプロセッサ機構23のフラッシュメモリ230に記憶する。しかしながら、データが第二の種類のデータに分類された場合、ルーチンはステップS14に進み、そこでデータについての第一のチェック、例えばCRCを実行し得て、その後、チェックされたデータをステップS16で揮発性メモリ、例えばRTC32のメモリ320に記憶する。データを記憶した後、ルーチンはステップS18で、記憶されたデータについての第二のチェックを実行し得て、例えば記憶されたデータを1回又は複数回読み取り、読み取られたデータを比較して、記憶手順全体の中で発生する可能性のある不一致又は一時エラーを検出し得る。するとこの発生したエラーはステップS18で、例えば対応する信号を生成することによって示すことができ、これによってユーザ向けの警告が例えば表示ユニット30上に表示されるようにし得る。信号はまた、例えばステップS14~S18のシーケンスを、エラーが発生しなくなるまで繰り返すことによる修正サイクル(
図3では図示せず)をトリガし、データの完全性を確保し得る。修正サイクルはまた、ユーザが、例えばUI31を介してそれに対応するユーザ入力を行うことによってマニュアルで開始することも可能である。
【0054】
「薬物」又は「薬剤」という用語は本明細書中では同義として使用され、1つ又は複数の活性薬剤成分又は薬学的に許容される塩若しくはその溶媒和化合物と、任意選択的に薬学的に許容されるキャリアを含む医薬製剤を表す。活性薬剤成分(API(active pharmaceutical ingredient))は、最も広い意味において、人又は動物に対する生物学的効果を有する化学構造である。薬理学において、薬物又は薬剤は病気の治療、治癒、予防、若しくは診断で使用されるか、又はそれ以外に身体的若しくは精神的健康を向上させるために使用される。薬物又は薬剤は、限定的期間にわたり、又は慢性疾患のためには定期的に使用され得る。
【0055】
後述のように、薬物又は薬剤は、1つ又は複数の病気の治療のために、少なくとも1つのAPI、又はその組合せを様々な種類の調合で含むことができる。APIの例としては、分子量500Da以下の小分子、ポリペプチド、ペプチド、たんぱく質(例えば、ホルモン、増殖因子、抗体、抗体フラグメント、及び酵素)、炭水化物と多糖類、及び酸、二本鎖又は一本鎖DNA(ネイキッド及びcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNA及びRNA等のアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、及びオリゴヌクレオチドが含まれ得る。核酸は、ベクトル、プラスミド、又はリポソーム等の分子送達系に組み込まれ得る。1つ又は複数の薬物の混合物も想定される。
【0056】
薬物又は薬剤は、薬物送達装置と共に使用するようになされた一次包装又は「薬物容器」に収容され得る。薬物容器は、例えばカートリッジ、シリンジ、リザーバ、又はその他の、1つ又は複数の薬物の適当な保存(例えば、短期又は長期保存)のための適当なチャンバを提供するように構成された固形若しくは柔軟な容器であり得る。例えば、幾つかの例において、チャンバは薬物を少なくとも1日(例えば、1~少なくとも30日間)保存するように設計され得る。幾つかの例において、チャンバは薬物を約1カ月~約2年間保存するように設計され得る。保管は、室温(例えば、約20℃)又は低温(例えば、約-4℃~約4℃)で行われ得る。幾つかの例において、薬物容器は投与される薬剤調合物の2つ以上の成分(例えば、APIと希釈剤、又は2種類の薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保管するように構成される2室式カートリッジであり得るか、それを含み得る。このような例において、2室式カートリッジの2つのチャンバは、人又は動物の体内に吐出する前及び/又は吐出中に2つ以上の成分を混合できるように構成され得る。例えば、2つのチャンバは、これらが相互に流体連通して(例えば、2つのチャンバ間の導管による)、吐出前にユーザが希望に応じて2つの成分を混合できるように構成され得る。代替的に、又はそれに加えて、2つのチャンバは、成分が人又は動物の体内に吐出されている間に混合できるように構成され得る。
【0057】
本明細書に記載の薬物送達装置に収容された薬物又は薬剤は、様々な種類の医学的障害の治療及び/又は予防に使用できる。障害の例としては、例えば真正糖尿病又は、糖尿病性網膜症などの真正糖尿病の合併症、深部静脈又は肺血栓等の血栓閉塞症が含まれる。障害のまた別の例は、急性冠動脈症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、花粉症、アテローム性動脈硬化、及び/又は関節リウマチである。API及び薬物の例は、Rote Liste 2014等のハンドブック、例えば、これらに限定されないが、メイングループ12(抗糖尿病薬)又は86(腫瘍薬)、及びメルクインデックス第15版に記載されているものである。
【0058】
1型若しくは2型真正糖尿病又は1型若しくは2型真正糖尿病の合併症の治療及び/又は予防のためのAPIの例には、インスリン、例えばヒトインスリン、又はインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体若しくはGLP-1受容体作動薬、又はその類似体若しくは誘導体、ジペブチジルペプチターゼ-4(DPP4)阻害薬、又は薬学的に許容される塩若しくはその溶媒和化合物、又はそれらのあらゆる混合物が含まれる。本明細書で使用されるかぎり、「類似体」及び「誘導体」という用語は、形式的に天然に存在するペプチドの構造、例えばヒトインスリンのそれから、天然に存在するペプチド内にある少なくとも1つのアミノ酸残基を削除及び/若しくは置換することによって、並びに/又は少なくとも1つのアミノ酸残基を追加することによって導出できる分子構造を有するポリペプチドを指す。追加及び/又は置換されるアミノ酸残基は、コード化可能なアミノ酸残基又はその他の天然に存在する残基か、又は純粋な合成アミノ酸残基の何れでもあり得る。インスリン類似体は、「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、形式的に天然に存在するペプチドの構造、例えばヒトインスリンのそれから導出可能な、1つ又は複数の有機置換基(例えば、脂肪酸)がアミノ酸のうちの1つ以上と結合する分子構造を有するポリペプチドを指す。任意選択により、天然に存在するペプチドの中にある1つ又は複数のアミノ酸が削除され、及び/若しくはコード化不能なアミノ酸を含むその他のアミノ酸に置換されていてもよく、又はコード化不能のものを含むアミノ酸が天然に存在するペプチドに追加されていている。
【0059】
インスリン類似体の例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン)、Lys(B3)、Glu(B29)、ヒトインスリン(インスリンリスプロ)、Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト)、位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、又はAlaに置換され、位置B29のLysがProに置換され得るヒトインスリン、Ala(B26)ヒトインスリン、Des(B28-B30)ヒトインスリン、Des(B27)ヒトインスリン、及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0060】
インスリン誘導体の例は例えば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標))、B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-ミリストイルヒトインスリン、B29-N-パルミトイルヒトインスリン、B28-N-ミリストイル-LysB28ProB29ヒトインスリン、B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン、B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン、B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン、B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルカミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))、B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、及びB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0061】
GLP-1、GLP-1類似体、及びGLP-1受容体作動薬の例は、例えば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標))、エキセナチド(Exendin-4、Byetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺により生成される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セモグラチド、タスポグラチド、アルビグラチド(Syncria(登録商標))、デュラグラチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングルナチド/HM-11260C(Efpeglenatide)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(Pegapamodtide)、BHM-034である。MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマデュチド(SAR425899)、エキセナチド-XTEN、及びグルカゴン-Xten。
【0062】
オリゴヌクレオチドの例は例えば、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬、又はアルポート症候群の治療のためのRG012である。
【0063】
DPP4阻害薬の例は、リナグリプチン、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0064】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、及びゴセレリン等の、脳下垂体ホルモン若しくは視床下部ホルモン又は調節性活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストが含まれる。
【0065】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン若しくは超低分子量ヘパリン、又はそれらの誘導体、又は硫酸化多糖類、例えば上述の多糖類のポリ硫酸化形態、及び/又は、薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の一例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0066】
「抗体」という用語は、本明細書で使用されるかぎり、免疫グロブリン分子又はその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例には、抗原を結合する能力を保持するF(ab)及びF(ab’)2フラグメントが含まれる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型又はヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(例えばネズミ)、又は一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態において、抗体はエフェクタ機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態において、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低い、又はそれを持たない。例えば、抗体は、アイソタイプ若しくはサブタイプ、抗体フラグメント又は変異体とすることができ、これはFc受容体との結合を支持せず、例えば、突然変異した、又は欠失したFc受容体結合領域を有する。抗体という用語はまた、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)及び/又は交差結合領域の配向性を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗体結合分子も含む。
【0067】
「フラグメント」又は「抗体フラグメント」という用語は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(例えば、抗体重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントとしては、例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、単一特異性、又は二重特異性、三重特異性、四重特異性及び多重特異性抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)等の多重特異性抗体フラグメント、一価、又は二価、三価、四価及び多価抗体等の多価抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディ又はバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、及びVHH含有抗体が含まれる。抗原結合抗体フラグメントのその他の例は当業界で知られている。
【0068】
「相補性決定領域」すなわち「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖及び軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖及び軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的に、当業界で知られているように、抗原結合に直接関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接関与することができ、又はCDR内の1つ又は複数のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与え得る。
【0069】
抗体の例は、アンチPCSK-9mAb(例えば、アリロクマブ)、アンチIL-6mAb(例えば、サリルマブ)、及びアンチIL-4mAb(例えば、デュピルマブ)である。
【0070】
本明細書に記載のあらゆるAPIの薬学的に許容される塩もまた、薬物送達装置における薬物又は薬剤において使用されることが想定される。薬学的に許容される塩は、例えば酸付加塩及び塩基性塩である
【0071】
当業者であれば、本発明の完全な範囲と主旨から逸脱することなく、本明細書に記載のAPI、製剤、装置、方法、システム、及び実施形態の様々な構成要素に修正(追加及び/又は削除)を加えることができ、本発明はそのような修正及びそのあらゆる均等物を包含することがわかるであろう。
【0072】
例示的な薬物送達装置は、ISO11608-1:2014(E)5.2項の表1に記載されている針ベースの注射システムを含み得る。ISO11608-1:2014(E)に記載されているように、針ベースの注射システムは広く、複数回投与容器システムと単回投与(部分又は全量排出)容器システムに分類され得る。容器は、交換可能容器でも、一体化された交換不能容器でもよい。
【0073】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、複数回投与容器システムは、交換式容器を備える針ベースの注入装置を含み得る。このようなシステムでは、各容器は複数回分の投与量を保持し、その大きさは固定でも可変(ユーザにより事前設定される)でもよい。他の複数回投与容器システムは、一体化された交換不能容器を備える針ベースの注入装置を含み得る。このようなシステムでは、各容器は複数回分の投与量を保持し、その大きさは固定でも可変(ユーザにより事前設定される)でもよい。
【0074】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、単回投与容器システムは交換式容器を備える針ベースの注入装置を含み得る。このようなシステムの一例において、各容器は1回分の投与量を保持し、送達可能量の全量が排出される(全量排出)。別の例では、各容器は1回分の投与量を保持し、送達可能量の一部が排出される(部分排出)。同じくISO11608-1:2014(E)に記載されているように、単回投与容器システムは、一体化された交換不能容器を備える針ベースの注入装置を含み得る。このようなシステムの一例では、各容器は1回分の投与量を保持し、送達可能量の全量が排出される(全量排出)。別の例では、各容器は1回分の投与量を保持し、送達可能量の一部が排出される(部分排出)。
【国際調査報告】