特表 2024-534649 透明樹脂組成物および成形品

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公表特許公報(A)

(11)【公表番号】

(43)【公表日】2024-09-20

(54)【発明の名称】透明樹脂組成物および成形品

(51)【国際特許分類】

   C08L 33/06 20060101AFI20240912BHJP

   C08L 51/04 20060101ALI20240912BHJP

   C08K 5/3475 20060101ALI20240912BHJP

   C08K 5/07 20060101ALI20240912BHJP

【ＦＩ】

C08L33/06 ZAB

C08L51/04

C08K5/3475

C08K5/07

【審査請求】有

【予備審査請求】未請求

(21)【出願番号】P 2024519098

(86)(22)【出願日】2022-09-29

(85)【翻訳文提出日】2024-03-27

(86)【国際出願番号】 KR2022014683

(87)【国際公開番号】W WO2023055140

(87)【国際公開日】2023-04-06

(31)【優先権主張番号】10-2021-0130840

(32)【優先日】2021-10-01

(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR

(81)【指定国・地域】

(71)【出願人】

【識別番号】500239823

【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド

(74)【代理人】

【識別番号】100110364

【弁理士】

【氏名又は名称】実広 信哉

(74)【代理人】

【識別番号】100122161

【弁理士】

【氏名又は名称】渡部 崇

(72)【発明者】

【氏名】ヒェ・ジョン・オク

(72)【発明者】

【氏名】ソク・グ・ジャン

(72)【発明者】

【氏名】ヒョン・ソプ・シム

(72)【発明者】

【氏名】キ・ヨン・ナム

【テーマコード（参考）】

4J002

【Ｆターム（参考）】

4J002BG06W

4J002BN16X

4J002EE036

4J002EJ066

4J002EU176

4J002FD056

4J002GP00

(57)【要約】

本発明は、化学的にリサイクルされた単量体単位を含む透明マトリックス樹脂を含んでおり、炭素発生低減効果により環境に優しく、かつ、機械的物性および耐候性に優れた透明樹脂組成物およびそれから成形された成形品に関する。

【特許請求の範囲】

【請求項1】

ゴム質重合体を含む透明グラフト共重合体、透明マトリックス樹脂、および紫外線吸収剤を含み、
前記透明マトリックス樹脂は、化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位を含み、
前記紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤からなる群から選択された１種以上を含む、透明樹脂組成物。

【請求項2】

前記透明グラフト共重合体は、共役ジエン系ゴム質重合体、アルキル（メタ）アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位、およびビニルシアン系単量体単位を含む、請求項１に記載の透明樹脂組成物。

【請求項3】

前記透明グラフト共重合体の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、５重量部以上６０重量部以下である、請求項１に記載の透明樹脂組成物。

【請求項4】

前記透明マトリックス樹脂の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、４０重量部以上９５重量部以下である、請求項１に記載の透明樹脂組成物。

【請求項5】

前記透明マトリックス樹脂は、第１透明マトリックス樹脂および第２透明マトリックス樹脂を含み、
前記第２透明マトリックス樹脂は、化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位を含む、請求項１に記載の透明樹脂組成物。

【請求項6】

前記第１透明マトリックス樹脂は、アルキル（メタ）アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位、およびビニルシアン系単量体単位を含む、請求項５に記載の透明樹脂組成物。

【請求項7】

前記第２透明マトリックス樹脂は、化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位、およびビニルシアン系単量体単位を含む、請求項５に記載の透明樹脂組成物。

【請求項8】

前記第１透明マトリックス樹脂の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、１０重量部以上７０重量部以下であり、
前記第２透明マトリックス樹脂の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、１０重量部以上８０重量部以下である、請求項５に記載の透明樹脂組成物。

【請求項9】

前記化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位を形成する化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体は、廃人造大理石から化学的にリサイクルされたものである、請求項１に記載の透明樹脂組成物。

【請求項10】

前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤は、２－ヒドロキシ－４－（オクチルオキシ）ベンゾフェノンおよび２，２’－ジヒドロキシ－４－メトキシベンゾフェノンからなる群から選択された１種以上である、請求項１に記載の透明樹脂組成物。

【請求項11】

前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、２－（２－ヒドロキシ－５－ｔｅｒｔ－オクチルフェニル）ベンゾトリアゾールである、請求項１に記載の透明樹脂組成物。

【請求項12】

前記紫外線吸収剤の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、０．０１重量部以上１．００重量部以下である、請求項１に記載の透明樹脂組成物。

【請求項13】

請求項１～１２のいずれか一項に記載の透明樹脂組成物から成形された成形品。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、２０２１年１０月１日付けの韓国特許出願第１０－２０２１－０１３０８４０号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。

【0002】

本発明は、化学的にリサイクルされた単量体単位を含むマトリックス樹脂を含んでおり、炭素発生低減効果により環境に優しく、かつ、機械的物性および耐候性に優れた透明樹脂組成物およびそれから成形された成形品に関する。

【背景技術】

【0003】

世界的にエコに関する政策および規制が強化されている。中でも、炭素排出量を減少させるために廃プラスチックをリサイクルする方策が浮上しており、そのうちＰＣＲ材料（Ｐｏｓｔ Ｃｏｎｓｕｍｅｒ Ｒｅｃｙｃｌｅｄ ｍａｔｅｒｉａｌ）に関する研究および開発が行われている。

【0004】

ＰＣＲ材料とは、単にコスト削減を目的とした低価格用の再生材料ではなく、消費者が使用を完了した後、廃棄された製品をリサイクルすることで環境に寄与できる材料を意味する。ＰＣＲ材料としてリサイクルする方法は、大きなカテゴリーで機械的リサイクル方法と化学的リサイクル方法に分けられる。

【0005】

機械的リサイクル方法は、プラスチック廃棄物を破砕および洗浄してリサイクルする方法であり、異物および金属などを選別する能力が重要である。機械的リサイクル方法は、リサイクルのための機械的分解過程で熱エネルギーの消費が少ないため、炭素低減効果が大きいという利点があるが、リサイクル時に異物および金属などを選別しても実質的に完全に除去することが難しいため、バージン（ｖｉｒｇｉｎ）材料に比べて品質が低下し、品質の均一性も担保し難いという問題がある。特に、透明性が求められる製品に適用するための透明樹脂の場合、リサイクル時に異物および金属などが混入すると、透明性が低下するという問題が生じ得る。

【0006】

化学的リサイクル方法は、プラスチックの分子構造自体を分解させ、純粋な原料の状態に戻す化学的方法を用いてリサイクルする方法であり、近年、技術開発速度が加速化している。化学的リサイクル方法は、純粋な原料の状態にリサイクルするため、リサイクル時に機械的リサイクル方法に比べてバージン（ｖｉｒｇｉｎ）材料と同等レベルの品質を実現できるという利点がある。

【0007】

一方、透明樹脂が屋外で使用されるか、または屋内で使用されても外部光線にさらされ続ける場合、耐候性が十分に確保されないと、透明性が低下するという問題が生じる。したがって、透明樹脂における耐候性の確保は重要である。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0008】

【特許文献1】ＫＲ１０－２０１２－００８８０９０Ａ

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0009】

本発明が解決しようとする課題は、上記の発明の背景となる技術で述べた問題を解決するために、透明樹脂としてＰＣＲ材料を用いることで、環境に優しく、かつ、バージン材料と同等レベルの機械的物性を確保し、耐候性を改善することである。

【0010】

すなわち、本発明は、化学的にリサイクルされた単量体単位を含むマトリックス樹脂を含んでおり、炭素発生低減効果により環境に優しく、かつ、機械的物性および耐候性に優れた透明樹脂組成物およびそれから成形された成形品を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0011】

上記の課題を解決するために、本発明は、透明樹脂組成物および成形品を提供する。
（１）本発明は、ゴム質重合体を含む透明グラフト共重合体、透明マトリックス樹脂、および紫外線吸収剤を含み、前記透明マトリックス樹脂は、化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位を含み、前記紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤からなる群から選択された１種以上を含む、透明樹脂組成物を提供する。

【0012】

（２）本発明において、前記透明グラフト共重合体は、共役ジエン系ゴム質重合体、アルキル（メタ）アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位、およびビニルシアン系単量体単位を含む、前記（１）に記載の透明樹脂組成物を提供する。

【0013】

（３）本発明において、前記透明グラフト共重合体の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、５重量部以上６０重量部以下である、前記（１）または（２）に記載の透明樹脂組成物を提供する。

【0014】

（４）本発明において、前記透明マトリックス樹脂の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、４０重量部以上９５重量部以下である、前記（１）～（３）のいずれか一項に記載の透明樹脂組成物を提供する。

【0015】

（５）本発明において、前記透明マトリックス樹脂は、第１透明マトリックス樹脂および第２透明マトリックス樹脂を含み、前記第２透明マトリックス樹脂は、化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位を含む、前記（１）～（４）のいずれか一項に記載の透明樹脂組成物を提供する。

【0016】

（６）本発明において、前記第１透明マトリックス樹脂は、アルキル（メタ）アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位、およびビニルシアン系単量体単位を含む、前記（５）に記載の透明樹脂組成物を提供する。

【0017】

（７）本発明において、前記第２透明マトリックス樹脂は、化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位、およびビニルシアン系単量体単位を含む、前記（５）または（６）に記載の透明樹脂組成物を提供する。

【0018】

（８）本発明において、前記第１透明マトリックス樹脂の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、１０重量部以上７０重量部以下であり、前記第２透明マトリックス樹脂の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、１０重量部以上８０重量部以下である、前記（５）～（７）のいずれか一項に記載の透明樹脂組成物を提供する。

【0019】

（９）本発明において、前記化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位を形成する化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体は、廃人造大理石から化学的にリサイクルされたものである、前記（１）～（８）のいずれか一項に記載の透明樹脂組成物を提供する。

【0020】

（１０）本発明において、前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤は、２－ヒドロキシ－４－（オクチルオキシ）ベンゾフェノンおよび２，２’－ジヒドロキシ－４－メトキシベンゾフェノンからなる群から選択された１種以上である、前記（１）～（９）のいずれか一項に記載の透明樹脂組成物を提供する。

【0021】

（１１）本発明において、前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、２－（２－ヒドロキシ－５－ｔｅｒｔ－オクチルフェニル）ベンゾトリアゾールである、前記（１）～（１０）のいずれか一項に記載の透明樹脂組成物を提供する。

【0022】

（１２）本発明において、前記紫外線吸収剤の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、０．０１重量部以上１．００重量部以下である、前記（１）～（１１）のいずれか一項に記載の透明樹脂組成物を提供する。

【0023】

（１３）本発明は、前記（１）～（１２）のいずれか一項に記載の透明樹脂組成物から成形された成形品を提供する。

【発明の効果】

【0024】

本発明に係る透明樹脂組成物は、化学的にリサイクルされた単量体単位を含むマトリックス樹脂を含んでおり、炭素発生低減効果により環境に優しく、かつ、機械的物性および耐候性に優れる。

【発明を実施するための形態】

【0025】

以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をより詳細に説明する。
本発明の説明および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。

【0026】

本発明で用いられる「単量体単位」という用語は、単量体に起因する成分、構造、またはその物質自体を指すものであってもよく、具体的な例として、重合体の重合時、投入される単量体が重合反応に参加して重合体中で形成する繰り返し単位を意味し得る。

【0027】

本発明で用いられる「組成物」という用語は、当該組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物だけでなく、当該組成物を含む材料の混合物を含む。

【0028】

本発明は、ＰＣＲ材料を含む透明樹脂組成物を提供する。本発明において、前記ＰＣＲ材料とは、化学的にリサイクルされた単量体を用いた化学的リサイクル方法によるＰＣＲ材料を意味する。

【0029】

本発明の一実施形態によると、前記透明樹脂組成物は、ゴム質重合体を含む透明グラフト共重合体、透明マトリックス樹脂、および紫外線吸収剤を含み、前記透明マトリックス樹脂は、化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位を含み、前記紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤からなる群から選択された１種以上を含んでもよい。

【0030】

本発明の一実施形態によると、前記透明樹脂組成物は、ＰＣＲ材料として透明マトリックス樹脂を含むことを特徴とする。このようにＰＣＲ材料として透明マトリックス樹脂を含む場合、バージン材料である透明マトリックス樹脂のみを用いる場合に比べて、温室効果ガスである二酸化炭素発生量を低減させることができ、それによる炭素発生低減効果により環境に優しいという利点がある。

【0031】

本発明に記載される共役ジエン系ゴム質重合体は、共役ジエン系単量体単位を含むゴム質重合体であってもよく、具体的な例として、前記共役ジエン系単量体単位を形成する共役ジエン系単量体は、１，３－ブタジエン、２，３－ジメチル－１，３－ブタジエン、ピペリレン、３－ブチル－１，３－オクタジエン、イソプレン、および２－フェニル－１，３－ブタジエンからなる群から選択された１種以上であってもよく、より具体的な例として、１，３－ブタジエンであってもよい。

【0032】

本発明に記載されるアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位を形成するためのアルキル（メタ）アクリレート系単量体は、炭素数１～１８のアルキル（メタ）アクリレート、炭素数１～１２のアルキル（メタ）アクリレート、または炭素数１～６のアルキル（メタ）アクリレートであってもよい。ここで、（メタ）アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し得る。前記炭素数１～１８のアルキル（メタ）アクリレート系単量体は、メチル（メタ）アクリレートであってもよく、具体的な例として、メチルメタクリレートであってもよい。また、前記アルキル（メタ）アクリレート系単量体は、バージン単量体であってもよく、化学的にリサイクルされた単量体であってもよいが、化学的にリサイクルされた単量体として特に言及していない限り、バージン単量体を意味し得る。

【0033】

本発明に記載される芳香族ビニル系単量体単位を形成するための芳香族ビニル系単量体は、スチレン、α－メチルスチレン、３－メチルスチレン、４－メチルスチレン、４－プロピルスチレン、１－ビニルナフタレン、４－シクロヘキシルスチレン、４－（ｐ－メチルフェニル）スチレン、および１－ビニル－５－ヘキシルナフタレンからなる群から選択された１種以上であってもよく、具体的な例として、スチレンであってもよい。

【0034】

本発明に記載されるビニルシアン系単量体単位を形成するためのビニルシアン系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル、およびα－クロロアクリロニトリルからなる群から選択された１種以上であってもよく、具体的な例として、アクリロニトリルであってもよい。

【0035】

本発明の一実施形態によると、前記透明グラフト共重合体は、共役ジエン系ゴム質重合体、アルキル（メタ）アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位、およびビニルシアン系単量体単位を含んでもよい。具体的な例として、前記透明グラフト共重合体は、共役ジエン系ゴム質重合体にアルキル（メタ）アクリレート系単量体、芳香族ビニル系単量体、およびビニルシアン系単量体がグラフト重合したものであってもよく、コア－シェル形態を有してもよい。この際、コアは、前記共役ジエン系ゴム質重合体を含み、シェルは、アルキル（メタ）アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位、およびビニルシアン系単量体単位を含んでもよい。

【0036】

本発明の一実施形態によると、前記透明グラフト共重合体の共役ジエン系ゴム質重合体は、前記透明グラフト共重合体に対して、３０重量％以上、３５重量％以上、４０重量％以上、または４５重量％以上の含量で含まれてもよく、また、７０重量％以下、６５重量％以下、６０重量％以下、または５５重量％以下の含量で含まれもよい。この範囲内で、透明樹脂組成物の機械的物性に優れるという効果がある。

【0037】

本発明の一実施形態によると、前記透明グラフト共重合体のアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位は、前記透明グラフト共重合体に対して、１０重量％以上、１５重量％以上、２０重量％以上、２５重量％以上、または３０重量％以上の含量で含まれてもよく、また、５０重量％以下、４５重量％以下、４０重量％以下、または３５重量％以下の含量で含まれてもよい。この範囲内で、透明マトリックス樹脂に対する相溶性に優れ、透明性および機械的物性に優れるという効果がある。

【0038】

本発明の一実施形態によると、前記透明グラフト共重合体のアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位は、バージンアルキル（メタ）アクリレート系単量体および／または化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体から形成されてもよく、化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体から形成された単量体単位を含む場合にエコ性をさらに向上させることができる。

【0039】

本発明の一実施形態によると、前記透明グラフト共重合体の芳香族ビニル系単量体単位は、前記透明グラフト共重合体に対して、１重量％以上、３重量％以上、５重量％以上、または１０重量％以上の含量で含まれてもよく、また、３０重量％以下、２５重量％以下、２０重量％以下、または１５重量％以下の含量で含まれてもよい。この範囲内で、透明マトリックス樹脂に対する相溶性に優れ、透明性および機械的物性に優れるという効果がある。

【0040】

本発明の一実施形態によると、前記透明グラフト共重合体のビニルシアン系単量体単位は、透明グラフト共重合体に対して、１重量％以上、２重量％以上、３重量％以上、４重量％以上、または５重量％以上の含量で含まれてもよく、また、２０重量％以下、１５重量％以下、１０重量％以下、または８重量％以下の含量で含まれてもよい。この範囲内で、透明マトリックス樹脂に対する相溶性に優れ、透明性および機械的物性に優れるという効果がある。

【0041】

本発明の一実施形態によると、前記透明グラフト共重合体の屈折率は、１．５００以上、１．５０５以上、１．５１０以上、または１．５１５以上であってもよく、また、１．５３０以下、１．５２５以下、１．５２０以下、または１．５１８以下であってもよい。この際、前記屈折率は、アッベ屈折計を用いて測定することができる。

【0042】

本発明の一実施形態によると、前記透明樹脂組成物において、透明グラフト共重合体の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、５重量部以上６０重量部以下であってもよい。具体的な例として、前記透明グラフト共重合体の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、５重量部以上、１０重量部以上、１５重量部以上、２０重量部以上、または２５重量部以上であってもよく、また、６０重量部以下、５５重量部以下、５０重量部以下、４５重量部以下、４０重量部以下、または３５重量部以下であってもよい。この範囲内で、グラフト共重合体に含まれたゴム質重合体の含量に応じて、透明樹脂組成物の色、加工性、および機械的物性を調節することができる。

【0043】

本発明の一実施形態によると、前記透明マトリックス樹脂は、化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位を含んでもよく、具体的な例として、化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位、およびビニルシアン系単量体単位を含んでもよい。

【0044】

本発明の一実施形態によると、前記透明マトリックス樹脂の化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位は、前記透明マトリックス樹脂に対して、５０重量％以上、５５重量％以上、６０重量％以上、６５重量％以上、または５８重量％以上の含量で含まれてもよく、また、８０重量％以下、７５重量％以下、７０重量％以下、または６９重量％以下の含量で含まれてもよい。この範囲内で、透明グラフト共重合体との相溶性に優れ、透明性および機械的物性に優れるという効果がある。

【0045】

本発明の一実施形態によると、前記透明マトリックス樹脂の芳香族ビニル系単量体単位は、前記透明マトリックス樹脂に対して、５重量％以上、１０重量％以上、１５重量％以上、または２０重量％以上の含量で含まれてもよく、また、４０重量％以下、３５重量％以下、３０重量％以下、または２５重量％以下の含量で含まれてもよい。この範囲内で、透明グラフト共重合体との相溶性に優れ、透明性および機械的物性に優れるという効果がある。

【0046】

本発明の一実施形態によると、前記透明マトリックス樹脂のビニルシアン系単量体単位は、透明マトリックス樹脂に対して、１重量％以上、２重量％以上、３重量％以上、４重量％以上、または５重量％以上の含量で含まれてもよく、また、２０重量％以下、１５重量％以下、１０重量％以下、または８重量％以下の含量で含まれてもよい。この範囲内で、透明グラフト共重合体との相溶性に優れ、透明性および機械的物性に優れるという効果がある。

【0047】

本発明の一実施形態によると、前記透明マトリックス樹脂の屈折率は、１．５００以上、１．５０５以上、１．５１０以上、または１．５１５以上であってもよく、また、１．５３０以下、１．５２５以下、１．５２０以下、または１．５１８以下であってもよい。この際、前記屈折率は、アッベ屈折計を用いて測定することができる。

【0048】

本発明の一実施形態によると、前記透明樹脂組成物において、前記透明マトリックス樹脂の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、４０重量部以上９５重量部以下であってもよい。具体的な例として、前記透明マトリックス樹脂の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、４０重量部以上、４５重量部以上、５０重量部以上、５５重量部以上、６０重量部以上、または６５重量部以上であってもよく、また、９５重量部以下、９０重量部以下、８５重量部以下、８０重量部以下、または７５重量部以下であってもよい。この範囲内で、グラフト共重合体に含まれたゴム質重合体の含量に応じて、透明樹脂組成物の色、加工性、および機械的物性を調節することができる。

【0049】

本発明の一実施形態によると、前記透明マトリックス樹脂は、第１透明マトリックス樹脂および第２透明マトリックス樹脂を含み、前記第２透明マトリックス樹脂は、化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位を含んでもよい。具体的な例として、前記第１透明マトリックス樹脂は、アルキル（メタ）アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位、およびビニルシアン系単量体単位を含んでもよく、前記第２透明マトリックス樹脂は、化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位、芳香族ビニル系単量体単位、およびビニルシアン系単量体単位を含んでもよい。この場合、バージンアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位を含む第１マトリックス樹脂により透明樹脂組成物の透明性および機械的物性をさらに向上させるとともに、化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位を含む第２マトリックス樹脂により環境に優しいという利点を同時に確保することができる。

【0050】

本発明の一実施形態によると、前記透明樹脂組成物において、前記透明マトリックス樹脂が第１透明マトリックス樹脂および第２透明マトリックス樹脂を含む場合、前記第１透明マトリックス樹脂の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、１０重量部以上７０重量部以下であってもよく、前記第２透明マトリックス樹脂の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、１０重量部以上８０重量部以下であってもよい。具体的な例として、前記第１透明マトリックス樹脂の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、１０重量部以上、２０重量部以上、２５重量部以上、または３０重量部以上であってもよく、また、７０重量部以下、６０重量部以下、５０重量部以下、または４０重量部以下であってもよい。また、前記第２透明マトリックス樹脂の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、１０重量部以上、２０重量部以上、２５重量部以上、または３０重量部以上であってもよく、また、８０重量部以下、７５重量部以下、７０重量部以下、６０重量部以下、５０重量部以下、または４０重量部以下であってもよい。この場合、バージンアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位を含む第１マトリックス樹脂により透明樹脂組成物の透明性および機械的物性をさらに向上させるとともに、化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位を含む第２マトリックス樹脂により環境に優しいという利点を同時に確保することができる。

【0051】

本発明の一実施形態によると、前記化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位を形成する化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体は、廃人造大理石から化学的にリサイクルされたものであってもよい。具体的な例として、前記化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体は、廃人造大理石を破砕し、破砕された廃人造大理石粉末または顆粒の熱分解により、アルキル（メタ）アクリレート系単量体であるアルキル（メタ）アクリレート化合物と水酸化アルミニウムを分離することで得ることができる。より具体的な例として、前記廃人造大理石に対して熱分解を行った熱分解物から高温で水酸化アルミニウム、水、およびその他の不純物を除去してアルキル（メタ）アクリレート化合物を得ることができる。上記で得られたアルキル（メタ）アクリレート化合物は、純度を向上させるために蒸留塔を介した蒸留過程を経てもよい。このように、化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体の純度は９５％以上であってもよい。

【0052】

本発明の一実施形態によると、前記化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体は、純度を向上させても、バージン単量体に比べて一部の不純物を含み、このような不純物は、透明樹脂組成物の耐候性を低下させる原因となる。したがって、化学的にリサイクルされたアルキル（メタ）アクリレート系単量体単位を含む透明マトリックス樹脂を含む透明樹脂組成物は、バージン単量体のみを用いて製造された透明樹脂組成物に比べて耐候性が低下するため、それを改善するためには、本発明のように紫外線吸収剤を含む必要がある。しかし、本発明に係る透明マトリックス樹脂を含む透明樹脂組成物に対して、全ての紫外線吸収剤が同一レベルの耐候性の改善を示すわけではないため、本発明に係る透明マトリックス樹脂に特に適した紫外線吸収剤を含むことが重要である。通常、樹脂に適用するための紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ホルムアミジン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤（ＨＡＬＳ）などの有機系紫外線吸収剤と、ニッケル系、セリウム系などの無機系紫外線吸収剤が挙げられる。ところが、無機系紫外線吸収剤の場合、透明樹脂組成物の透明性を低下させる原因となるため、透明樹脂組成物に適用するには適さない。したがって、無機系紫外線吸収剤を排除し、有機系紫外線吸収剤のみを考慮した場合、極性の低い透明グラフト共重合体および透明マトリックス樹脂との相溶性、着色性、および透明性を考慮すると、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、およびヒンダードアミン系紫外線吸収剤が好ましいが、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤（ＨＡＬＳ）の場合、紫外線をスクリーン効果で遮断する機能がないため、透明樹脂組成物では耐候性の改善が十分ではない。これにより、本発明の透明樹脂組成物は、紫外線吸収剤としてベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤からなる群から選択された１種以上の紫外線吸収剤を含むことを特徴とする。

【0053】

本発明の一実施形態によると、前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤は、商業的に入手可能なベンゾフェノン系紫外線吸収剤であれば限定なく使用可能であるが、本発明に係る透明マトリックス樹脂との相溶性を考慮すると、具体的な例として、２－ヒドロキシ－４－（オクチルオキシ）ベンゾフェノンおよび２，２’－ジヒドロキシ－４－メトキシベンゾフェノンからなる群から選択された１種以上であってもよい。

【0054】

本発明の一実施形態によると、前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、商業的に入手可能なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であれば限定なく使用可能であるが、本発明に係る透明マトリックス樹脂との相溶性を考慮すると、具体的な例として、２－（２－ヒドロキシ－５－ｔｅｒｔ－オクチルフェニル）ベンゾトリアゾールであってもよい。

【0055】

本発明の一実施形態によると、前記透明樹脂組成物において、前記紫外線吸収剤の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、０．０１重量部以上１．００重量部以下であってもよい。具体的な例として、前記紫外線吸収剤の含量は、前記透明グラフト共重合体と前記透明マトリックス樹脂の含量の合計１００重量部に対して、０．０１重量部以上、０．０５重量部以上、０．１０重量部以上、０．２０重量部以上、０．３０重量部以上、０．４０重量部以上、または０．５０重量部以上であってもよく、また、１．００重量部以下、０．９０重量部以下、０．８０重量部以下、０．７０重量部以下、０．６０重量部以下、または０．５０重量部以下であってもよい。この範囲内で、透明樹脂組成物の透明性および機械的物性の低下を防止するとともに、耐候性をさらに向上させることができる。

【0056】

本発明は、前記透明樹脂組成物から成形された成形品を提供する。
本発明の一実施形態によると、前記成形品は、前記透明樹脂組成物を用いて押出および／または射出された成形品であってもよく、外部光線にさらされる可能性があるにもかからわず、透明性が求められる製品に好適である。

【実施例】

【0057】

以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例について詳しく説明する。ただし、本発明は、種々の異なる形態で実現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されるものではない。

【0058】

製造例
製造例１：グラフト共重合体の製造
イオン交換水１００重量部、メチルメタクリレート３２重量部、スチレン１１重量部、アクリロニトリル７重量部、クメンヒドロパーオキサイド０．０４重量部、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート１重量部、ｔ－ドデシルメルカプタン０．３重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート０．０４８重量部、エチレンジアミンテトラ酢酸０．０１２重量部、および硫酸第一鉄０．００１重量部を含む混合溶液を製造した。

【0059】

窒素置換された反応器にブタジエンゴムラテックス（平均粒径：３００ｎｍ、屈折率：１．５１６、ゲル含量：７０重量％）５０重量部（固形分基準）を投入した後、前記混合溶液を７５℃で一定の速度で５時間連続投入しつつ重合を行った。連続投入の終了後、前記反応器の内部温度を８０℃に昇温した後、１時間熟成させて重合を終了し、グラフト共重合体を含むグラフト共重合体ラテックスを得た。この際、最終的な重合転化率は９９％であった。

【0060】

上記で製造されたグラフト共重合体ラテックスを塩化カルシウム水溶液で凝集させ、熟成、洗浄、脱水、および乾燥してグラフト共重合体粉体を得た。この際、製造されたグラフト共重合体粉体の屈折率は１．５１６であった。

【0061】

製造例２：第１マトリックス樹脂の製造
メチルメタクリレート６９重量部、スチレン２４重量部、アクリロニトリル７重量部、トルエン３０重量部、ｔ－ドデシルメルカプタン０．１５重量部を含む混合溶液を製造した。

【0062】

窒素置換された反応器に混合溶液を滞留時間が３時間になるように一定の速度で連続投入し、反応器の温度を１４８℃に維持した。反応器から排出された重合溶液は、予備加熱槽で加熱し、揮発槽で未反応単量体を揮発させた。次に、重合体移送ポンプ押出機を用いて２１０℃で押出し、ペレット状の第１マトリックス樹脂を得た。この際、製造された第１マトリックス樹脂ペレットの屈折率は１．５１６であった。

【0063】

製造例３：第２マトリックス樹脂の製造
前記製造例２において、メチルメタクリレートを、廃人造大理石から化学的リサイクルにより得られたメチルメタクリレートに同量で置き換えて用いたことを除いては、前記製造例２と同様の方法で行ってペレット状の第２マトリックス樹脂を得た。この際、製造された第２マトリックス樹脂ペレットの屈折率は１．５１６であった。

【0064】

実施例および比較例
下記の各成分を表１～３に記載された含量で、滑剤０．５重量部および酸化防止剤０．２５重量部とともに配合し、２１０℃のシリンダー温度で２軸押出混練機で押出し、ペレット状の透明樹脂組成物を製造した。

【0065】

この際、各成分の含量は、グラフト共重合体とマトリックス樹脂の合計１００重量部を基準とした含量である。
（１）グラフト共重合体：製造例１で製造されたグラフト共重合体
（２）第１マトリックス樹脂：製造例２で製造された第１マトリックス樹脂
（３）第２マトリックス樹脂：製造例３で製造された第２マトリックス樹脂

【0066】

（４）紫外線吸収剤１：２－ヒドロキシ－４－（オクチルオキシ）ベンゾフェノン（２－ｈｙｄｒｏｘｙ－４－（ｏｃｔｙｌｏｘｙ）ｂｅｎｚｏｐｈｅｎｏｎｅ）（（株）ＧＬＯＢＡＬ ＰＬＡＮＮＩＮＧ社、ＢＰＨ、ＣＡＳ Ｎｏ．１８４３－０５－６）

【0067】

（５）紫外線吸収剤２：２，２’－ジヒドロキシ－４－メトキシベンゾフェノン（２，２’－ｄｉｈｙｄｒｏｘｙ－４－ｍｅｔｈｏｘｙｂｅｎｚｏｐｈｅｎｏｎｅ）（シグマアルドリッチ社、ＣＡＳ Ｎｏ．１３１－５３－３）

【0068】

（６）紫外線吸収剤３：２－（２－ヒドロキシ－５－ｔｅｒｔ－オクチルフェニル）ベンゾトリアゾール（２－（２－ｈｙｄｒｏｘｙ－５－ｔｅｒｔ－ｏｃｔｙｌｐｈｅｎｙｌ）ｂｅｎｚｏｔｒｉａｚｏｌｅ）（（株）ＧＬＯＢＡＬ ＰＬＡＮＮＩＮＧ社、ＵＶ－３２９、ＣＡＳ Ｎｏ．３１４７－７５－９）

【0069】

（７）紫外線吸収剤４：ビス（２，２，６，６－テトラメチル－４－ピペリジニル）デカンジオエート（Ｂｉｓ（２，２，６，６－ｔｅｔｒａｍｅｔｈｙｌ－４－ｐｉｐｅｒｉｄｉｎｙｌ）ｄｅｃａｎｅｄｉｏａｔｅ）（（株）ＧＬＯＢＡＬ ＰＬＡＮＮＩＮＧ社、ＵＶ－７７０、ＣＡＳ Ｎｏ．５２８２９－０７－９）

【0070】

【表1】

【0071】

【表2】

【0072】

【表3】

【0073】

実験例
実験例１
前記実施例１～１３および比較例１～４で製造されたペレットと、それを射出機を用いて射出温度２１０℃で射出して製造した試験片を用いて、以下のような方法で透明性、溶融指数、衝撃強度、引張特性、曲げ特性、および耐候性を測定し、下記表４～６に示した。

【0074】

＊透明性：上記で製造された試験片を２５℃および相対湿度５０±５％の条件で１２時間保管した後、ＡＳＴＭ Ｄ１００３に準じて、ＳＵＧＡ社製のＨＺ－Ｖ３を用いて、面積８０ｍｍ×４０ｍｍ、厚さ３．０ｍｍの試験片に対する全光線透過率（Ｔｔ、％）およびヘイズ（Ｈａｚｅ、％）を測定した。

【0075】

＊色座標：上記で製造された試験片を２５℃および相対湿度５０±５％の条件で１２時間保管した後、Ｈｕｎｔｅｒ ｌａｂ社製のＵｌｔｒａｓｃａｎ ＰＲＯを用いて、面積４０ｍｍ×８０ｍｍ、厚さ３．０ｍｍの試験片に対するＣＩＥ ＬＡＢ色空間の色座標（Ｌ、ａ、およびｂ）を測定した。

【0076】

＊衝撃強度（Ｊ／ｍ）：上記で製造された試験片を２５℃および相対湿度５０±５％の条件で１２時間保管した後、ＡＳＴＭ Ｄ２５６に準じて、ＴＩＮＩＵＳ－ＯＬＳＥＮ社製のＩＴ５０４／１０４を用いて、１／４"および１／８"厚さのノッチが形成された試験片に対する常温（２５℃）でのノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。

【0077】

＊溶融指数（ｇ／１０ｍｉｎ）：前記実施例１～１３および比較例１～４で製造されたペレットを用いて、ＡＳＴＭ Ｄ１２３８に準じて、２２０℃の温度で１０ｋｇの荷重での溶融指数を測定した。

【0078】

＊引張特性：上記で製造された試験片を２５℃および相対湿度５０±５％の条件で１２時間保管した後、ＡＳＴＭ Ｄ６３８に準じて、Ｚｗｉｃｋ／ｒｏｅｌｌ社製の万能材料試験機を用いて、５０ｍｍ／ｍｉｎのクロスヘッド速度で、面積１３ｍｍ×１１５ｍｍ、厚さ３ｍｍの試験片に対する引張強度（ＭＰａ）および伸び率（％）を測定した。

【0079】

＊曲げ特性：上記で製造された試験片を２５℃および相対湿度５０±５％の条件で１２時間保管した後、ＡＳＴＭ Ｄ７９０に準じて、Ｚｗｉｃｈ／ｒｏｅｌｌ社製の万能材料試験機を用いて、面積２５ｍｍ×８０ｍｍ、厚さ３．２ｍｍの試験片に対する曲げ強度（ＭＰａ）および曲げモジュラス（ＭＰａ）を測定した。

【0080】

＊耐候性（△Ｅ）：上記で製造された試験片を２５℃および相対湿度５０±５％の条件で１２時間保管した後、ＡＭＥＴＥＫ社製のＵＶ－Ａを用いて、光量０．７７Ｗ／ｍ^２の紫外線に１５０時間暴露し、面積４０ｍｍ×８０ｍｍ、厚さ３．２ｍｍの試験片に対する耐候性を測定した。この際、耐候性は、下記数式１により計算された。

【0081】

［数式１］
△Ｅ＝｛（Ｌ－Ｌ’）^２＋（ａ－ａ’）^２＋（ｂ－ｂ’）^２｝^１／２
前記数式１中、Ｌ、ａ、およびｂは、紫外線暴露前の試験片のＣＩＥ ＬＡＢ色空間の色座標であり、Ｌ’、ａ’、およびｂ’は、紫外線暴露後の試験片のＣＩＥ ＬＡＢ色空間の色座標である。

【0082】

【表4】

【0083】

【表5】

【0084】

【表6】

【0085】

前記表４～６に示すように、実施例１～７で製造された透明樹脂組成物は、化学的にリサイクルされた単量体を含む第２マトリックス樹脂を含むにもかかわらず、バージン単量体のみを用いて製造され、紫外線吸収剤を含まない比較例１の透明樹脂組成物に比べて、同等レベルの透明性および加工性を示すとともに、機械的物性はもちろん、耐候性にも優れることを確認することができた。

【0086】

特に、紫外線吸収剤としてベンゾフェノン系紫外線吸収剤を含んで製造された実施例１～実施例５および実施例７の透明樹脂組成物は、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含んで製造された実施例６の透明樹脂組成物と比較して、透明性にさらに優れることを確認することができた。

【0087】

また、実施例７の透明樹脂組成物は、マトリックス樹脂としてバージン単量体のみを用いて製造された第１マトリックス樹脂を含まず、化学的にリサイクルされた単量体を含む第２マトリックス樹脂のみを含むにもかかわらず、第１マトリックス樹脂を含み、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を同一の含量で含む実施例２の透明樹脂組成物と比較して、同等レベルの透明性、加工性、機械的物性、および耐候性を示すことを確認することができた。

【0088】

また、実施例２に対して透明樹脂組成物中のグラフト共重合体の含量を変更した実施例８～１３から、グラフト共重合体に含まれたゴム質重合体の含量に応じて、ｂ値、加工性、および機械的物性が変化することを確認することができるが、グラフト共重合体に含まれたゴム質重合体の含量によるものであって、化学的にリサイクルされた単量体を含む第２マトリックス樹脂による透明性と、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤による耐候性の改善効果は、同等レベルに維持されることを確認することができた。

【0089】

これに対し、比較例１の透明樹脂組成物に対して、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤をさらに含む比較例２の透明樹脂組成物は、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を含んでおり、耐候性がやや改善されたが、実施例１～１３の透明樹脂組成物ほど耐候性を十分に改善できないことを確認することができた。

【0090】

また、実施例１～６のように化学的にリサイクルされた単量体を含む第２マトリックス樹脂を同一の含量で含むが、紫外線吸収剤を含まない比較例３の透明樹脂組成物は、比較例１の透明樹脂組成物に比べて耐候性が著しく低下することを確認することができた。

【0091】

また、実施例１～６のように化学的にリサイクルされた単量体を含む第２マトリックス樹脂を含み、紫外線吸収剤としてＨＡＬＳ（ｈｉｎｄｅｒｅｄ ａｍｉｎｅ ｌｉｇｈｔ ｓｔａｂｉｌｉｚｅｒ）系紫外線吸収剤を含む比較例４の透明樹脂組成物は、比較例３の透明樹脂組成物に比べて耐候性がやや改善されたが、比較例１の透明樹脂組成物に比べて依然として耐候性が低下することを確認することができた。

【0092】

このような結果は、化学的にリサイクルされた単量体を含む第２マトリックス樹脂を含む透明樹脂組成物が、比較例３の透明樹脂組成物のように紫外線吸収剤を含まない場合、耐候性が急激に低下し、それを解決するために紫外線吸収剤を含んでも、本発明とは異なり、適した紫外線吸収剤を含まなければ、耐候性を十分に改善できないことを示す。

【0093】

一方、上記の実験とは別に、実施例１～６により透明樹脂組成物を製造する際に由来する温室効果ガスである二酸化炭素発生量（単位：ｋｇＣＯ_２／ｋｇ）からカーボンフットプリント（ｃａｒｂｏｎ ｆｏｏｔｐｒｉｎｔ）を計算した結果、比較例１により透明樹脂組成物を製造する際に由来する二酸化炭素発生量（単位：ｋｇＣＯ_２／ｋｇ）に対して少なくとも７重量％以上二酸化炭素発生量が低減されたことを確認することができた。

【0094】

このような結果から、本発明に係る透明樹脂組成物は、化学的にリサイクルされた単量体単位を含むマトリックス樹脂を含んでおり、炭素発生低減効果により環境に優しく、かつ、機械的物性および耐候性に優れることを確認することができた。

【国際調査報告】