(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20240918BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240918BHJP
C08K 5/5313 20060101ALI20240918BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20240918BHJP
C08K 5/3477 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K3/013
C08K5/5313
C08K5/521
C08K5/3477
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506280
(86)(22)【出願日】2023-07-18
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 KR2023010245
(87)【国際公開番号】W WO2024043533
(87)【国際公開日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】10-2022-0106540
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0090997
(32)【優先日】2023-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒョン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】コ、コン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ソン-モ
(72)【発明者】
【氏名】コン、ソンホ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CF06X
4J002CF07W
4J002DE086
4J002DE146
4J002DJ016
4J002DL006
4J002EU188
4J002EW049
4J002EW137
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD030
4J002FD060
4J002FD070
4J002FD137
4J002FD138
4J002FD139
4J002FD170
4J002GM00
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、ポリエステル樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関し、本発明に係るポリエステル樹脂組成物は、使用する原料の変化により、従来のハロゲン系難燃剤含有ポリエステル素材を代替できる程度に機械的物性、電気的特性、流動性及び難燃性などの物性バランスを満たし、優れた製品信頼性、耐熱特性及び外観品質を提供する効果がある。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、及びリン酸エステルを含むポリエステル樹脂組成物であって、
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(Intrinsic viscosity)が前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度よりも小さく;
前記メラミンシアヌレートは、前記ポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して3.8重量%以上で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記メラミンシアヌレートは、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%に対して3.8重量%以上含まれ;
前記リン酸エステルは、前記ポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して1.6~6.9重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記リン酸エステルは、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%に対して1.6~6.9重量%の範囲内で含まれ;
前記無機フィラーは、SiO
2、CaO及びAl
2O
3を含み、SiO
2の含量がCaOとAl
2O
3との合計量よりも大きいこと;を特徴とする、ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、固有粘度(η)が、それぞれ0.7~0.9dl/gである、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、前記ポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して24.8~41.7重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%に対して24.8~41.7重量%の範囲内で含まれる、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、融点(Melting point)が243~256℃である、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は再生ポリエチレンテレフタレート樹脂である、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
前記再生ポリエチレンテレフタレート樹脂は、ミネラルウォーターボトルを加工した樹脂である、請求項5に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、前記ポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して10~25重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%に対して10~25重量%の範囲内で含まれる、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
前記無機フィラーは、SiO
250~55重量%、Al
2O
315~21重量%、及びCaO13~19重量%を含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項9】
前記無機フィラーは、前記ポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して20~40重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記無機フィラーは、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%に対して20~40重量%の範囲内で含まれる、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項10】
前記ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩は、前記ポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して8.6~11.9重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%に対して8.6~11.9重量%の範囲内で含まれる、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項11】
前記メラミンシアヌレートは、前記ポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して3.8~5.2重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記メラミンシアヌレートは、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%に対して3.8~5.2重量%の範囲内で含まれる、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項12】
前記ポリエステル樹脂組成物は、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記滴下防止剤、前記耐熱安定剤、前記ポリエチレン系滑剤及び前記加水分解抑制剤は、それぞれ、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%に対して0.1~10重量%の範囲内で含まれる、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項13】
前記ポリエステル樹脂組成物は、ISO 75に準拠して、1.82MPa下で測定した高荷重熱変形温度が190℃以上であり、4.0mmの試験片を、ISO 178に準拠して、SPAN64を使用して2mm/minの速度で測定した曲げ強度が180MPa以上であると同時に、曲げ弾性率が8000MPa以上である、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項14】
ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、及びリン酸エステルを含んで混練及び押出するステップを含み、
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(Intrinsic viscosity)が前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度よりも小さく;
前記メラミンシアヌレートは、前記ポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して3.8重量%以上で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記メラミンシアヌレートは、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%に対して3.8重量%以上含まれ;
前記リン酸エステルは、前記ポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して1.6~6.9重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記リン酸エステルは、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%に対して1.6~6.9重量%の範囲内で含まれ;
前記無機フィラーは、SiO
2、CaO及びAl
2O
3を含み、SiO
2の含量がCaOとAl
2O
3との合計量よりも大きく;
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は再生樹脂である、ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物を含む、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2022年08月25日付の韓国特許出願第10-2022-0106540号及びこれに基づいて2023年07月13日付で再出願された韓国特許出願第10-2023-0090997号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリエステル樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関し、より詳細には、使用する原料の変化により、ハロゲン含有ポリエステル素材を代替できる程度に機械的物性、電気的特性、流動性及び難燃性などの物性バランスを満たし、優れた製品信頼性、耐熱特性及び外観品質を提供することができるポリエステル樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、コンピュータ冷却ファンをはじめとする冷却用途に使用される素材としては、軽量化及び製造原価の節減のために、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)をガラス繊維で強化させた複合素材が主に使用されている。
【0004】
特に、コンピュータ冷却ファンの素材の開発において難燃性は重要な要素となり、具体例として、前述した複合素材を冷却ファンの素材として適用するためには、非ハロゲン難燃剤を含めた複合素材としての開発が必要である。
【0005】
ポリブチレンテレフタレート樹脂複合素材に使用される非ハロゲン難燃剤は、主に金属塩リン系難燃剤が使用されている。但し、金属塩リン系難燃剤を単独で使用する場合には、ハロゲン素材と同等以上の機械的剛性及び難燃性を実現し難いため、ハロゲン難燃剤を代替する技術の開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本登録 特許第5808253号公報(登録日:2015.09.18)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、原価が節減されるだけでなく、ハロゲンフリーのポリエステル素材として、優れた機械的強度と電気的特性、流動性、及び難燃性との優れた物性バランスを実現したポリエステル樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明の目的は、前記のポリエステル樹脂組成物を用いた成形品を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、I)ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、及びリン酸エステルを含むポリエステル樹脂組成物であって、
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(Intrinsic viscosity)が前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度よりも小さく;
前記メラミンシアヌレートは、前記ポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して3.8重量%以上で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記メラミンシアヌレートは、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%中に3.8重量%以上含まれ;
前記リン酸エステルは、前記ポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して1.6~6.9重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記リン酸エステルは、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%中に1.6~6.9重量%の範囲内で含まれ;
前記無機フィラーは、SiO2、CaO及びAl2O3を含み、SiO2の含量がCaOとAl2O3との合計量よりも大きいこと;を特徴とするポリエステル樹脂組成物を提供する。
【0011】
II)前記I)において、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、固有粘度(η)が、それぞれ0.7~0.9dl/gであってもよい。
【0012】
III)前記I)又はII)において、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、前記ポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して24.8~41.7重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%中に24.8~41.7重量%の範囲内で含まれてもよい。
【0013】
IV)前記I)~III)において、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、融点(Melting point)が243~256℃であってもよい。
【0014】
V)前記I)~IV)において、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は再生ポリエチレンテレフタレート樹脂であってもよい。
【0015】
VI)前記I)~V)において、前記再生ポリエチレンテレフタレート樹脂は、ミネラルウォーターボトルを加工した樹脂であってもよい。
【0016】
VII)前記I)~VI)において、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、前記ポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して10~25重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%中に10~25重量%の範囲内で含まれてもよい。
【0017】
VIII)前記I)~VII)において、前記無機フィラーは、SiO250~55重量%、Al2O315~21重量%、及びCaO13~19重量%を含むものであってもよい。
【0018】
IX)前記I)~VIII)において、前記無機フィラーは、前記ポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して20~40重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記無機フィラーは、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%中に20~40重量%の範囲内で含まれてもよい。
【0019】
X)前記I)~IX)において、前記ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩は、前記ポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して8.6~11.9重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%中に8.6~11.9重量%の範囲内で含まれてもよい。
【0020】
XI)前記I)~X)において、前記メラミンシアヌレートは、前記ポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して3.8~5.2重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記メラミンシアヌレートは、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%中に3.8~5.2重量%の範囲内で含まれてもよい。
【0021】
XII)前記I)~XI)において、前記ポリエステル樹脂組成物は、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、これらは、それぞれ、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%中に0.1~10重量%の範囲内で含まれてもよい。
【0022】
XIII)前記I)~前記XII)において、前記ポリエステル樹脂組成物は、ISO 75に準拠して、1.82MPa下で測定した高荷重熱変形温度が190℃以上であり、4.0mmの試験片を、ISO 178に準拠して、SPAN64を使用して2mm/minの速度で測定した曲げ強度が180MPa以上であると同時に、曲げ弾性率が8000MPa以上であってもよい。
【0023】
XIV)本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、及びリン酸エステルを含んで混練及び押出するステップを含み、
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(Intrinsic viscosity)が前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度よりも小さく;
前記メラミンシアヌレートは、前記ポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して3.8重量%以上で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記メラミンシアヌレートは、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%中に3.8重量%以上含まれ;
前記リン酸エステルは、前記ポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して1.6~6.9重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記リン酸エステルは、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%中に1.6~6.9重量%の範囲内で含まれ;
前記無機フィラーは、SiO2、CaO及びAl2O3を含み、SiO2の含量がCaOとAl2O3との合計量よりも大きく;
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は再生樹脂であること;を特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0024】
XV)本発明は、前述したポリエステル樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品を含む。
【0025】
XVI)前記XV)において、前記成形品は冷却部品であってもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るポリエステル樹脂組成物は、従来のハロゲン難燃ポリエステル素材またはそれ以上に機械的物性、電気的特性及び難燃性の物性バランスが提供され、流動指数が改善されて加工性に優れ、製品信頼性及び外観品質が改善された成形品を提供することができる。
【0027】
すなわち、本発明に係るポリエステル樹脂組成物で製造された成形品は、引張強度、曲げ強度の機械的物性と難燃性との優れた物性バランスを実現する効果がある。
【0028】
さらに、本発明に係る成形品は、冷却部品にさらに適し得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】ミネラルウォーターボトルから、実施例で使用するポリエチレンテレフタレート樹脂を加工する過程を示す工程フローチャートである。
【
図2】前記
図1の工程によって収得されたポリエチレンテレフタレート樹脂を撮影した写真であって、右側の図に該当する。左側の図は、DMT工法で作られたバージン(virgin)PET樹脂を撮影したものであり、前記DMT工法は、当業界に公知されたジメチルテレフタレート(DMT)とエチレングリコール(EG)のエステル交換反応を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に対する理解を助けるために、本発明をより詳細に説明する。
【0031】
本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語や単語は、通常の又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者が発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという点を勘案して、本発明の技術的思想に符合する意味及び概念で解釈されなければならない。
【0032】
本記載において、「含んでなる」の意味は、別途の定義がない限り、「含んで重合製造された」、「含んで重合された」、または「由来の単位として含む」として定義され得る。
【0033】
他に特定されない限り、本記載で使用された成分、反応条件、ポリマー組成物及び配合物の量を表現する全ての数字、値及び/又は表現は、このような数字が本質的に他のものの中でこのような値を得るのに発生する測定の様々な不確実性が反映された近似値であるので、全ての場合に“約”という用語により修飾されるものと理解されなければならない。また、本記載において数値範囲が開示される場合、このような範囲は連続的であり、他に指摘されない限り、このような範囲の最小値から最大値が含まれた前記最大値までの全ての値を含む。さらに、このような範囲が整数を指す場合、他に特定されない限り、最小値から最大値が含まれた前記最大値までを含む全ての整数が含まれる。
【0034】
本記載において、範囲が変数に対して記載される場合、前記変数は、前記範囲の記載された終了点を含む、記載された範囲内の全ての値を含むものと理解される。例えば、“5~10”の範囲は、5、6、7、8、9及び10の値だけでなく、6~10、7~10、6~9、7~9などの任意の下位範囲を含み、5.5~8.5、及び6.5~9などのような記載された範囲の範疇に妥当な整数の間の任意の値も含むものと理解される。また、10~30%の範囲は、10%、11%、12%、13%などの値と30%までを含む全ての整数だけでなく、10.5%、15.5%、25.5%などのように記載された範囲の範疇内の妥当な整数の間の任意の値も含むものと理解される。
【0035】
本記載で使用する用語「加水分解安定化剤」は、他に特定しない限り、衝撃安定特性及び結晶化速度の調節能を改善させるように投入される物質を指す。
【0036】
本記載で使用する用語「流動指数」は、他に特定しない限り、ISO 1133に準拠して260℃下で5kgの荷重で測定した溶融流れ指数(Melt Flow Index)であり得る。
【0037】
本記載において、重合体中の単位、単位体、ブロックなどの重量%は、由来する単量体の重量%を意味することができる。
【0038】
また、本記載において、重合体中の単位、単位体、ブロックなどの重量%は、本発明の属する技術分野で通常用いられる測定方法により測定することができ、他の方法としては、全ての単量体が重合されることを前提として、投入された単量体の含量を、製造された重合体中の単位などの含量として定義することができる。
【0039】
本発明者らは、冷却部品の素材として非ハロゲン系ポリエステル素材を使用するところ、前記素材の剛性と難燃性を提供するように、ポリブチレンテレフタレートを含む複合素材を製造するにおいて、ミネラルウォーターボトルを加工したポリエステル樹脂を含むと同時に、非ハロゲン系難燃剤を構成する種類と含量を調節する場合、機械的物性、電気的特性及び難燃性の優れた物性バランスを実現しながら、高剛性を達成できることを確認し、本発明を完成するようになった。
【0040】
ポリエステル樹脂組成物
本発明の一具現例に係るポリエステル樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、及びリン酸エステルを含む。
【0041】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂は、結晶性素材であって、これを含むポリエステル樹脂組成物に成形性を付与し、これを使用して製造した成形品に難燃性を付与する。
【0042】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、再生樹脂であってもよく、具体例として、ミネラルウォーターボトルを加工した樹脂を使用することができる。
【0043】
ポリブチレンテレフタレート樹脂
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、結晶性樹脂であって、外部から流入する化学薬品の浸透を防止しながらも、結晶化された構造であって、射出成形時に、これを含むポリエステル樹脂組成物の流れ性を向上させ、外観品質を優れるようにする。
【0044】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)は、下記化学式1で表される繰り返し単位を有することができる。
【0045】
【0046】
前記化学式1において、nは、50~200の範囲の平均重合度である。
【0047】
本発明の一実施例において、前記ポリエステル樹脂組成物の衝撃強度を高めるために、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂をポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリアミドなどのような衝撃改善化合物と共重合した共重合体、または前記ポリブチレンテレフタレート樹脂を前記衝撃改善化合物と混合した変性ポリブチレンテレフタレート樹脂が使用されてもよい。
【0048】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、重量平均分子量が、一例として10,000~80,000g/mol、20,000g/mol~100,000g/mol、30,000g/mol~90,000g/mol、40,000g/mol~80,000g/mol、または50,000g/mol~70,000g/molであってもよい。上述した範囲内で、機械的物性を向上させることができる。
【0049】
前記重量平均分子量は、具体的に、1mlのガラス瓶にテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)と化合物を入れ、化合物の濃度が1wt%であるサンプル試料を準備し、標準試料(ポリスチレン)とサンプル試料をフィルター(ポアサイズが0.45μm)を通して濾過させた後、GPCインジェクタ(injector)に注入し、サンプル試料の溶離(elution)時間を標準試料のキャリブレーション(calibration)曲線と比較して、化合物の分子量及び分子量分布を得ることができる。このとき、測定機器としてインフィニティ(Infinity)II 1260(Agilient社)を用いることができ、流速は1.00mL/min、カラム温度は40.0℃に設定することができる。
【0050】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の含量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート及びリン酸エステルを含むポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して、20重量%以上、20~41重量%、24~42重量%、好ましくは24.8~41.7重量%であるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%中に、20重量%以上、20~41重量%、24~42重量%、好ましくは24.8~41.7重量%の範囲内で含まれるものであってもよい。前記含量範囲未満の場合、射出成形時に固化速度が遅くなり、サイクルタイムが長くなる問題が発生することがあり、前記含量範囲を超える場合は、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂の使用量が減少して、環境配慮のコンセプトが薄れ、難燃性が低下する問題が発生することがある。
【0051】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法は、本発明の属する技術分野で通常行われる重合方法であれば、特に制限されず、本発明に係るポリブチレンテレフタレート樹脂の定義に符合する場合、商業的に購入して使用しても構わない。
【0052】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(η)は0.7~0.9dl/g、または0.75~0.85dl/gであってもよい。前記範囲を外れて固有粘度が低すぎると、物性補強効果が低下するため、非ハロゲン難燃性の改善効果が僅かであるという欠点があり、固有粘度が高すぎると、成形性が低下して部品の外観に問題が発生することがあるという欠点がある。
【0053】
本記載において、前記固有粘度は、特に断りがない限り、測定しようとする試料を0.05g/mlの濃度でメチレンクロライド溶媒に完全に溶解させた後、フィルターを使用して濾過させた濾液を、ウベローデ(Ubbelohde)粘度計を用いて20℃で測定した値である。
【0054】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、固有粘度(Intrinsic viscosity)が、後述するポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度と同一または小さくてもよく、好ましくは小さくてもよい。この場合、物性補強効果及び外観品質の改善効果を提供することができる。
【0055】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂は、特に限定されず、当業界に公知されている方法を通じて製造して使用してもよく、または市販の物質を使用してもよい。
【0056】
ポリエチレンテレフタレート樹脂
本記載において、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET」ともいう)は、再生樹脂を使用することが環境配慮の面で好ましい。
【0057】
前記再生樹脂は、市販のミネラルウォーターボトルまたはその廃棄物を加工したポリエチレンテレフタレート樹脂を単独で使用することができる。
【0058】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は0.7~0.9dl/g、または0.7~0.8dl/gであってもよい。前記範囲を外れて固有粘度が低すぎると、物性補強効果が低下するという欠点があり、固有粘度が高すぎると、成形性が低下して部品の外観に問題が発生することがあるという欠点がある。
【0059】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、下記化学式2で表される繰り返し単位を基本構造として有することができる。
【0060】
【0061】
前記化学式において、n’は、40~160の範囲の平均重合度である。
【0062】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、特に限定されず、当業界に公知されている方法を通じて製造して使用することができる。前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、融点(Melting point)が243℃以上、具体例として243~256℃であってもよく、この場合、ポリエステル樹脂組成物の溶融流れ指数を改善させることができるので、成形性を向上させるのに好ましい。
【0063】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、結晶化温度(Tm)が243℃以上であってもよく、具体例として243~258℃であってもよく、この場合、ポリエステル樹脂組成物の溶融流れ指数を改善させることができるので、成形性を向上させるのに好ましい。
【0064】
本記載において、融点及び結晶化温度は、当該分野で公知された方法を用いて測定することができ、一例として、熱示差走査熱量計(DSC)を用いて熱吸収ピークからそれぞれ測定することができる。
【0065】
本発明の一実施例において、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、一例として、後述する
図1の工程フローチャートに従ってミネラルウォーターボトルをフレーク処理して収得したチップであってもよい。
【0066】
前記ミネラルウォーターボトルは、これに限定するものではないが、ポリエチレンテレフタレートを含む樹脂であって、テレフタル酸とエチレングリコールを縮合重合して製造したポリエチレンテレフタレートであってもよい。
【0067】
前記ミネラルウォーターボトルは、廃ミネラルウォーターボトルを使用するのが、環境配慮の面で好ましい。
【0068】
下記の
図1は、後述する実施例において廃ミネラルウォーターボトルからポリエチレンテレフタレートチップを作製する過程を概略的に示す工程フローチャートである。
【0069】
下記の
図1によれば、廃ミネラルウォーターボトルを有色と無色透明に分類する選別工程を行う。前記選別は、目視で行うことができる。
【0070】
次に、切断機を用いて粉砕する。粉砕サイズは、これに限定するものではないが、200kg前後を使用してクリーニング処理した後、3~5mmの微粒に粉砕することが、後述する洗浄、乾燥及びフレーク工程を行うのに好ましい。前記範囲内で、PET粉砕物の表面積を高めることで、後続の乾燥工程での乾燥効率を高めると共に、増粘剤との均一な反応が行われ得る。
【0071】
次のステップとして、1次粉砕物を追加でクリーニング処理した後、乾燥及びフレーク処理する。
【0072】
前記乾燥は、前記粉砕物から水分を除去し、その後に増粘剤を配合して1次乾燥(予備乾燥)した後、2次乾燥するもので、その後、除湿処理することができる。
【0073】
このとき、1次乾燥は、PET粉砕物の含水率が1000ppm程度になるように120~140℃の条件下で乾燥しながら、増粘剤を配合して均一に反応するようにする。
【0074】
前記1次乾燥は、一例として、選別されたPET粉砕物と増粘剤を摩擦乾燥機に投入し、乾燥機の温度140℃、撹拌機の速度50rpmの条件で120~140℃の加熱空気を持続的に通過させながら2時間程度滞留させ、含水率1000ppmになるように乾燥することからなる。
【0075】
前記増粘剤は、前述した1次乾燥温度140℃及び後述する2次乾燥温度(165℃付近)で溶融せずに増粘反応が起こる化合物であれば、いずれの化合物でも使用することができ、具体例として、カルボジイミド系増粘剤を使用することができる。
【0076】
前記カルボジイミド系増粘剤は、公知の化合物として、例えば、カルボジイミド、ポリカルボジイミドなどがあり、当該増粘剤は、目的とする製品に適した固有粘度に応じて配合比を適切に調節して投入するもので、PETの総重量を基準として、一例として0.25~0.75重量%で投入することができる。
【0077】
前記除湿処理は、前記反応混合物においてPETの加水分解を防止するために、PET反応混合物の含水率が50ppm未満になるように乾燥及び除湿してPET乾燥物を得る工程である。
【0078】
本記載において、ppmは、別途の定義がない限り、重量基準である。
【0079】
前記除湿処理は、乾燥ホッパーにPET反応混合物を投入し、乾燥機の温度165℃、露点-60~-40℃、及び滞留時間5時間程度の条件で、除湿機から湿気が除去された高温の熱風をホッパーに注入しながら、PET反応混合物の含水率が50ppm未満になるように乾燥及び除湿することが知られている。
【0080】
前記フレーク処理は、光学フレーク選別機を用いて、5mm前後のサイズを選別する工程であって、選別結果物は、200~270℃の温度範囲で押出成形される。
【0081】
具体的には、前記押出は、50ppm未満の含水率に乾燥及び除湿されたPET乾燥フレークに増粘剤を追加で投入し、溶融温度で溶融押出した後、溶融押出物から異物を物理的に除去して、PET溶融物を得る工程である。
【0082】
このとき、追加で投入する増粘剤は、前述した増粘剤と比較して溶融温度が低いので、乾燥機の温度である140℃及び後述する工程での乾燥機の温度である165℃付近で溶融されるため、使用することができない。
【0083】
参考に、追加で投入する増粘剤を前述した増粘剤と共に投入する場合、乾燥機内で溶融されてしまい、1次乾燥工程と除湿処理を運転できなくなるので、PET反応混合物が溶融される押出工程に別途に投入されなければならない。
【0084】
追加で投入する増粘剤は、主に、オキサゾリン系増粘剤として公知された化合物を使用することができ、例えば、オキサゾリン、1,3-フェニレンビスオキサゾリンなどがあり、PET溶融物の総重量を基準として、一例として0.1~0.75重量%で配合することができる。
【0085】
また、前記1次乾燥工程に使用される増粘剤と、前記押出工程に使用される増粘剤との配合比を調節することで、目的とする製品を製造するのに適した固有粘度を提供することができる。
【0086】
前記押出工程は、一例として、押出機に、50ppm未満の含水率に乾燥及び除湿されたPET乾燥物と、追加で投入する増粘剤を投入し、溶融温度275~280℃、最大溶融圧力110barの条件で溶融押出する。
【0087】
収得された溶融押出物は、真空度10mbarで20ミクロンのSUSフィルターを通過させて異物を除去して、高純度のPET溶融物を得た後、冷却カッティングして一定の形状のPET製品に成形される。
【0088】
前記成形は、一例として、高純度のPET溶融物を、ダイプレートの温度320℃、ブレードの回転数3200rpmの条件下で循環する90℃の水中で、直径2.8mmの球状のPET(以下、「PETチップ」ともいう)にカッティングして行うことができる。
【0089】
前記PETチップ製造工程は、成形工程で残った残熱を用いてPETチップの表面を結晶化することによって、目的とする固有粘度を提供するように、140℃以上の残熱を保持できる温度条件の制御が必要である。
【0090】
前記PETチップ製造工程は、PETチップが、振動コンベヤが設置されたインライン(in line)結晶化機を15分程度滞留しながら通過する過程でPETチップの表面を結晶化することで、表面結晶化なしに乾燥させる場合に凝集する問題を解消することができる。
【0091】
収得されたリサイクルPETチップは、必要に応じて、タルク、カップリング剤、ガラス繊維などとコンパウンド処理してリサイクル樹脂を製造する。
【0092】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート及びリン酸エステルを含むポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して、10重量%以上、10~40重量%、10~30重量%、または10~25重量%で含まれるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%中に、10重量%以上、10~40重量%、10~30重量%、または10~25重量%の範囲内で含まれるものであってもよい。前記含量範囲未満の場合、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂の使用量が減少して、環境配慮のコンセプトが薄れ、前記含量範囲を超える場合は、物性補強効果及び成形性が低下して、部品の外観に問題が発生することがあるという欠点がある。
【0093】
無機フィラー
本記載に含まれる無機フィラーは、SiO2、CaO及びAl2O3を含み、SiO2の含量がCaOとAl2O3との合計量よりも大きい物質であってもよく、好ましくは、SiO2の含量がCaOとAl2O3との合計量よりも大きいガラス繊維を使用することができる。
【0094】
本発明の一具現例に係るガラス繊維は、本記載のポリエステル樹脂組成物を使用して製造された成形品の剛性を補強して機械的物性を改善する種類を使用することができる。
【0095】
本発明の一具現例に係る前記無機フィラーは、一例として、シリカを50~55重量%で含むことができ、具体例としては、シリカ50~55重量%、アルミナ15~28重量%及び酸化カルシウム13~26重量%を含むガラス繊維、好ましくは、シリカ50~55重量%、アルミナ15~21重量%及び酸化カルシウム13~19重量%を含むガラス繊維であってもよい。前記範囲で含まれるガラス繊維を使用する場合、加工性、比重、機械的特性の物性バランスに優れたポリエステル樹脂組成物を確保することができ、これから高耐熱、高剛性及び高靱性の成形品を提供することができる。
【0096】
本発明において、強化剤中のシリカの含量は、XRF(X-Ray Fluorescence spectrometry:X線蛍光分析)を用いて測定または確認することができる。
【0097】
本記載のガラス繊維は、円形断面またはフラットな断面のガラス繊維であってもよく、前述した範囲及び断面を有する場合、高剛性、軽量化及び外観品質が確保され得る。
【0098】
前記ガラス繊維は、一例として、直径(D)に対する長さ(L)の比(L/D)で示す縦横比が、一例として1:1~1:4、具体例として1:1~1:3、さらに具体的に1:1である場合、本発明のポリエステル樹脂組成物において高強度、高靱性と共に、伸び率及び表面外観の品質改善を提供することができ、具体例として1:3~1:4、さらに具体的に1:4である場合、高強度、高靱性と共に、平坦度、変形及び配向の面で有利な製品を提供することができる。
【0099】
本記載において、直径及び長さは、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて測定することができ、具体的には、走査電子顕微鏡を用いて無機充填剤20個を選択し、直径を測定できるアイコンバー(bar)を用いて、それぞれの直径及び長さを測った後、算術平均を出して平均直径及び平均長さとして算出する。
【0100】
前記平均直径は、一例として10~13μm、具体例として10~11μmであってもよく、前記平均長さは、一例として2.5~6mm、具体例として3~4mmであってもよい。上述した範囲を満たす場合、加工性を改善して、本発明のポリエステル樹脂組成物を成形して製造された成形品の引張強度を改善するという効果がある。
【0101】
前記ガラス繊維の断面は、円形、長方形、楕円形、亜鈴、菱形などの形状を有することができる。
【0102】
本発明の一実施例において、前記ガラス繊維は、他の無機質繊維と共に使用されてもよく、前記無機質繊維は、炭素繊維、玄武岩繊維、ケナフ又は大麻をはじめとする天然繊維から選択される1種以上である。
【0103】
本発明の一実施例において、前記ガラス繊維は、繊維の製造時または後処理工程時にサイジング剤で処理され得、このようなサイジング剤としては、潤滑剤、カップリング剤、界面活性剤などがある。
【0104】
前記潤滑剤は、主に、ガラス繊維の製造時に良好なストランドを形成するために使用され、前記カップリング剤は、ガラス繊維とベース樹脂との間の良好な接着を可能にするものであって、ベース樹脂及びガラス繊維の種類を考慮して適宜選択する場合、前記ポリエステル樹脂組成物に優れた物性を付与することができる。
【0105】
前記カップリング剤の使用方法としては、ガラス繊維に直接処理する方法、有機マトリックスに添加する方法などがあり、カップリング剤の性能を十分に発揮するためには、その含量を適宜選択しなければならない。
【0106】
前記カップリング剤の例としては、アミン系、アクリル系、シラン系などが挙げられ、このうちシラン系を使用することが好ましい。
【0107】
具体例として、前記シラン系は、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどであってもよい。
【0108】
本記載の無機フィラーの含量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート及びリン酸エステルを含むポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して、10~38重量%、15~38重量%、15~35重量%、20~40重量%、または25~35重量%であるかか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記無機フィラーは、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%中に、10~38重量%、15~38重量%、15~35重量%、20~40重量%、または25~35重量%の範囲内で含まれるものであってもよい。上述した範囲未満であると、これを含むポリエステル樹脂組成物を使用して製造された成形品にクラックが発生する欠点があり、上述した範囲を超えると、これを含むポリエステル樹脂組成物を使用して製造された成形品の寸法が合わないか、または外観品質が低下する欠点がある。
【0109】
ポリエステル樹脂組成物
本発明の一具現例に係るポリエステル樹脂組成物は、ハロゲン難燃素材と同等又は類似の難燃性及び機械的物性の向上などを提供するための非ハロゲン難燃素材として、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステルをはじめとする適切な添加剤をさらに含むことができる。
【0110】
ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩
具体的には、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩は、非ハロゲン系難燃剤として含まれることで、前記ポリエステル樹脂組成物を押出・射出加工する中に要求される難燃効果を提供するだけでなく、前記ポリエステル樹脂組成物の長時間保管時にも難燃効果を十分に提供することができる。
【0111】
前記ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩は、高分子の表面にチャー(char)を形成して組成物の難燃性を向上させることができる。
【0112】
前記ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩の含量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート及びリン酸エステルを含むポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して、9重量%以上、9~15重量%、9~12重量%、または8.6~11.9重量%であるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%中に、9重量%以上、9~15重量%、9~12重量%、または8.6~11.9重量%の範囲内で含まれるものであってもよい。上述した範囲を満たす場合、高分子の表面にチャーを形成して組成物の難燃性を向上させることができる。
【0113】
本発明の一実施例において、前記ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩は、市販の製品が使用されてもよい。
【0114】
メラミンシアヌレート
前記メラミンシアヌレートは、不活性気体を発生させて難燃性を向上させることができる。
【0115】
前記メラミンシアヌレートの含量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート及びリン酸エステルを含むポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して、3.8重量%以上、3.8~10重量%、3.8~5.8重量%、または3.8~5.2重量%であるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記メラミンシアヌレートは、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%中に、3.8重量%以上、3.8~10重量%、3.8~5.8重量%、または3.8~5.2重量%の範囲内で含まれるものであってもよい。上述した範囲を満たす場合、不活性気体を十分に発生させて組成物の難燃性を向上させることができる。
【0116】
本発明の一実施例において、前記メラミンシアヌレートは、市販の製品が使用されてもよい。
【0117】
リン酸エステル
具体的には、リン酸エステルは、非ハロゲン系難燃剤として含まれ、不活性気体を発生させて難燃性を向上させることができる。
【0118】
前記リン酸エステルの含量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート及びリン酸エステルを含むポリエステル樹脂組成物の合計100重量%に対して、1.6重量%以上、1.6~6.9重量%、2~6.9重量%、または2~6.5重量%であるか;または、前記ポリエステル樹脂組成物が滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、前記リン酸エステルは、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%中に、1.6重量%以上、1.6~6.9重量%、2~6.9重量%、または2~6.5重量%の範囲内で含まれるものであってもよい。上述した範囲を満たす場合、不活性気体を十分に発生させて組成物の難燃性を向上させることができる。
【0119】
本発明の一実施例において、前記リン酸エステルは、市販の製品が使用されてもよい。
【0120】
添加剤
本発明の一実施例によれば、滴下防止剤(anti-dripping)、低粘度のポリエチレン系滑剤、加水分解抑制剤、フェノール性酸化防止剤、及びホスファイト酸化防止剤から選択された4種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0121】
本発明の一実施例において、前記ポリエステル樹脂組成物は、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を含み、これらは、それぞれ、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル、滴下防止剤、耐熱安定剤、ポリエチレン系滑剤及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%中に、これらの合計量0.1~10重量%、0.1~7重量%、または0.1~5重量%で含まれてもよい。前記範囲内で、樹脂組成物の物性に影響を与えないと共に、添加剤本来の特性が発現されるという効果がある。
【0122】
前記滴下防止剤(anti-dripping)は、これを含むポリエステル樹脂組成物に滴下防止効果を提供できるものであれば、特に制限されない。具体例として、テトラフルオロエチレン樹脂を使用する場合、滴下防止効果を通じて難燃品質を改善することができるので好ましい。
【0123】
本発明の一実施例において、前記滴下防止剤は、市販の製品が使用されてもよい。
【0124】
前記滴下防止剤は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート及び滴下防止剤を合わせた合計100重量%中に、0.01~5重量%、0.1~3重量%、0.1~2重量%、0.1~1重量%、または0.1~0.5重量%の範囲内で含まれてもよい。前記範囲を外れて、前記滴下防止剤の含量が多すぎると、これを含むポリエステル樹脂組成物を使用して製造された成形品に成形性低下の問題が発生し、品質を阻害するという欠点があり、前記範囲未満では、滴下防止効果を十分に発揮することができない。
【0125】
前記滑剤は、オレフィン系ワックスであってもよく、前記ポリエステル樹脂組成物に優れた離型性及び射出性を維持できるようにする役割を提供する。
【0126】
前記滑剤は、これを含むポリエステル樹脂組成物から成形品を製造するために使用される射出スクリューの取り出しの容易性及び流れ性を確保できるものであれば、特に制限されない。
【0127】
前記滑剤は、本発明で使用することができ、前記特性を確保できるものであれば、特に制限されないが、好ましくはオレフィン系ワックスを含み、より好ましくはポリエチレン系ワックスを含むことができる。
【0128】
本発明の一実施例において、前記ポリエチレン系ワックスは、市販の製品が使用されてもよい。
【0129】
前記滑剤は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート及び滑剤を合わせた合計100重量%中に、0.01~5重量%、0.1~3重量%、0.1~2重量%、0.1~1重量%、または0.1~0.5重量%の範囲内で含まれてもよい。上述した範囲を満たす場合、優れた離型性及び射出性を十分に提供することができる。
【0130】
本発明の一実施例において、前記加水分解抑制剤は、本発明のポリエステル樹脂組成物に悪影響を及ぼさない限り、公知された種類を多様に使用することができ、市販の物質の中では、代表的に化学式NaH2PO4の第一リン酸ナトリウムのような無機ホスフェート化合物を使用することができる。
【0131】
前記加水分解抑制剤は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート及び加水分解抑制剤を合わせた合計100重量%中に、0.01~5重量%、0.1~3重量%、0.1~2重量%、0.1~1重量%、または0.1~0.5重量%の範囲内で含まれてもよい。上述した範囲を満たす場合、優れた耐加水分解安定性を十分に提供することができる。
【0132】
前記フェノール性酸化防止剤及びホスファイト酸化防止剤は、熱安定効果を補強することができ、ポリエステル樹脂組成物又は成形品の高温による変性を防止できるものであれば、特に制限されない。
【0133】
前記熱安定剤は、前記特性を確保できる限り、特に制限されないが、上述したようにフェノール性酸化防止剤を使用することによって、前記ポリエステル樹脂組成物に含まれる高分子の熱安定性をさらに向上させることができる。具体的には、前記フェノール性酸化防止剤は、前記ポリエステル樹脂組成物の成形時に、ラジカルを除去して高分子を保護することができる。
【0134】
本発明では、結晶化温度(Tm)が110~130℃であるヒンダードフェノール系安定剤を含むことができる。具体例として、テトラキス[エチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、またはこれらの混合を含むことができる。
【0135】
前記熱安定剤は、前記特性を確保できる限り、特に制限されないが、ホスファイト酸化防止剤(High phenolic antioxidant)としては、一例として、溶融温度(Tm)が180~240℃であるホスファイト系安定剤を含むことができ、具体例として、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、またはこれらの混合を含むことができる。
【0136】
本発明の一実施例において、前記ホスファイト酸化防止剤は、市販の製品が使用されてもよい。
【0137】
前記熱安定剤は、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート及び熱安定剤を合わせた合計100重量%中に、0.01~5重量%、0.01~3重量%、0.01~2重量%、0.01~1重量%、または0.05~0.5重量%の範囲内で含まれてもよい。前記熱安定剤の含量が多すぎると、これを含むポリエステル樹脂組成物を使用して製造された成形品の表面にムラなどの外観の問題が発生し、外観品質を阻害するという欠点がある。
【0138】
前記ポリエステル樹脂組成物は、好ましくは、コンピュータまたはノートパソコンの冷却ファンなどの冷却部品のためのポリエステル樹脂組成物であってもよい。
【0139】
ポリエステル樹脂組成物の製造方法
以下では、本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法に関して説明する。本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法を説明するにおいて、上述したポリエステル樹脂組成物の内容を全て含む。
【0140】
本記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法は、一例として、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、及びリン酸エステルを押出機に投入し、溶融混練及び押出するステップを含む。
【0141】
前記溶融混練ステップは、一例として、上述したその他の添加剤を含むことができる。
【0142】
前記溶融混練及び押出するステップは、一例として、一軸押出機、二軸押出機及びバンバリーミキサからなる群から選択された1種以上を用いて行われてもよく、好ましくは二軸押出機であり、これを用いて組成物を均一に混合した後、押出して、押出物の形態のポリエステル樹脂組成物を収得することができ、この場合、機械的物性の低下及び熱的特性の低下がなく、めっき密着力及び外観品質に優れたポリエステル樹脂組成物を提供するという効果がある。
【0143】
本発明に係るポリエステル樹脂組成物は、当業界で公知された方法により製造することができる。例えば、前記ポリエステル樹脂組成物は、各構成成分とその他の添加剤の混合物を押出機内で溶融押出する方法により押出物の形態で製造され得、前記押出物は、射出及び押出成形品に利用され得る。
【0144】
本発明の一実施例において、前記押出物は、250~280℃、または260~270℃の温度で押出され、このとき、温度は、シリンダーに設定された温度を意味する。
【0145】
射出時の金型の温度は、40~120℃の範囲を有することが好ましい。前記金型の温度が40℃以下になる場合、外観特性が低下することがあり、120℃以上になる場合、押出物が金型にくっついてしまい、離型性が低下し、冷却速度が増加することがある。前記金型の温度は、具体的に60~88℃、70~80℃、または72~78℃であってもよい。前記範囲を満たす場合、射出成形品を射出成形する中に前記ポリエステル樹脂組成物が溶融された溶融物が注入される金型の温度を調節しても、成形品の全ての地点による射出偏差を最小化し、射出特性を向上させると同時に、耐熱特性を改善することができる。
【0146】
前記射出工程は、一例として、ホッパーの温度、またはノズルの温度が260~280℃にそれぞれ設定された射出機を用いて行うことができる。
【0147】
本発明の一実施例によれば、前記射出成形品が射出成形される過程において、前記ポリエステル樹脂組成物が溶融された溶融物の射出速度は30~100mm/sであってもよい。具体的には、前記射出成形品が射出成形される間、前記ポリエステル樹脂組成物が溶融された溶融物の射出速度は35~95mm/s、50~80mm/s、または60~70mm/sであってもよい。前記範囲を満たす場合、射出成形品が射出成形される中に前記ポリエステル樹脂組成物が溶融された溶融物が注入される金型の温度を調節しても、成形品の全ての地点で射出偏差を最小化し、射出特性を向上させると同時に、耐加水分解性を改善することができる。
【0148】
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法は、一例として、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ガラス繊維及びその他の添加剤を含んで混練及び押出するステップを含み、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂が再生樹脂であることを特徴とし、この場合、剛性、加工性及び比重の物性バランスを実現することができる。
【0149】
前記ミネラルウォーターボトルを加工した樹脂は、固有粘度が0.5~0.9dl/gのポリエステル樹脂を原料とするミネラルウォーターボトルの押出物を加工した製品であり得る。
【0150】
本発明の一実施例によれば、前記ミネラルウォーターボトルを加工した樹脂を含んで溶融混練し、押出するステップを含むことができる。
【0151】
具体例として、固有粘度が0.5~0.9dl/gのミネラルウォーターボトルの押出物を成形して、固有粘度が0.7~0.8dl/gのポリエチレンテレフタレート樹脂を収得するステップと、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂10~37.5重量%、ポリブチレンテレフタレート樹脂26.7~54重量%、及び無機フィラー10~43重量%を溶融混練し、押出するステップとを含むことができる。
【0152】
このとき、成形の方式は、当技術分野で使用する様々な方式を用いることができ、成形の形態は、一例として、使用の利便性などを考慮して、チップの形態に成形することができる。
【0153】
さらに、本発明のポリエステル樹脂組成物を含む成形品に関して説明する。本発明のポリエステル樹脂組成物を含む成形品を説明するにおいて、上述したポリエステル樹脂組成物及びその製造方法の内容を全て含む。
【0154】
成形品
本発明のポリエステル樹脂組成物は、成分間の十分な補完を通じて、成形性、機械的物性、高荷重熱変形温度、及び非ハロゲン難燃性を必要とする成形品に有用に使用することができる。
【0155】
前記成形品は、一例として、高い耐熱性及び射出特性が要求される冷却部品であってもよい。
【0156】
前記成形品は、他の例として、コンピュータ冷却ファンであってもよい。
【0157】
前記成形品の製造方法は、当業界で通常用いる方法により製造することができる。一例として、本発明に係るポリエステル樹脂組成物の溶融混練物、押出物またはこれから成形されたシート(板材)を原料として、射出成形法(インジェクションモールディング)、射出圧縮成形法、押出成形法(シートキャスティング)、プレス成形法、圧空成形法、熱曲げ成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法、または回転成形法などの成形法を適用することができる。
【0158】
本記載のポリエステル樹脂組成物は、一例として、260℃に設定された二軸押出機(φ40、L/D:42、SM Platek装備)を用いて、250rpm下で、主投入口に、ポリブチレンテレフタレート樹脂、リサイクルポリエステル樹脂、無機フィラー、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンシアヌレート、リン酸エステル及び添加剤を、供給速度(Flow ratio、F/R)35kg/hで投入し、補助(side)投入口に、無機フィラーを供給速度15kg/hで投入し、溶融混練及び押出して押出物を製造することができる。
【0159】
前記押出物を射出成形機に投入して成形品を製造することができる。
【0160】
本記載のポリエステル樹脂組成物の物性を確認するために、前記押出物を射出成形機(ENGEL社、80トン)を用いて、射出温度260℃、金型温度80℃、射出速度30mm/secで射出し、ISO規格の試験片を製造することができる。
【0161】
本記載のポリエステル樹脂組成物は、一例として、ISO 1133に準拠して測定した流動指数が15g/10min以上、または15~30g/10minであると同時に、ISO 1183に準拠して測定した比重が1.5g/cm3以上、1.55g/cm3以上、または1.55~1.60g/cm3であってもよい。この場合、優れた加工性を提供することができる。
【0162】
本記載において、流動指数は、265℃の条件及び2.16kgの荷重で測定することができ、比重は、23℃の条件で測定することができる。
【0163】
また、本記載のポリエステル樹脂組成物は、一例として、ISO 75に準拠して測定した高荷重熱変形温度が190℃以上、200℃以上、200~210℃、または202~205℃であってもよい。この場合、優れた熱変形温度を提供することができる。
【0164】
本記載において、高荷重熱変形温度は、ISO 75に準拠して、1.82MPaの高荷重下で測定することができる。
【0165】
また、本記載のポリエステル樹脂組成物は、4.0mmの試験片を、一例として、ISO 178に準拠して測定した曲げ強度が180MPa以上、182MPa以上、または182~200MPaであると同時に、曲げ弾性率が8000MPa以上、9000MPa、9000~11000MPa、または9450~11000MPaであってもよい。この場合、優れた反り性及び加工性を提供することができる。
【0166】
本記載において、曲げ強度及び曲げ弾性率は、ISO 178に準拠して、SPAN64を使用して2mm/minの速度で測定することができる。
【0167】
また、本記載のポリエステル樹脂組成物は、4.0mmの試験片を、一例として、ISO 527-1に準拠して測定した引張強度が115MPa以上、116MPa以上、または117~135MPaであると同時に、ISO 527-2に準拠して測定した引張伸び率が1.5%以上、2.0%以上、または2.4~3%であってもよい。この場合、優れた高靱性を提供することができる。
【0168】
本記載において、引張強度及び引張伸び率は、試験片を23℃で5mm/minの速度で測定することができる。
【0169】
また、本記載のポリエステル樹脂組成物は、一例として、ISO 179/1eAに準拠して測定したシャルピー衝撃強度が6.5kJ/cm2以上、6.8kJ/cm2以上、または6.9~7.9kJ/cm2であってもよい。この場合、優れた高衝撃抵抗性を提供することができる。
【0170】
本記載において、シャルピー衝撃強度は、ノッチ付き試験片を23℃で測定することができる。
【0171】
また、本記載のポリエステル樹脂組成物は、厚さ0.8Tの試験片を、一例として、UB 94 Vテストに準拠して測定した難燃度がV-0以上であってもよい。この場合、優れた高難燃性を提供することができる。
【0172】
前記成形品は、具体的に冷却部品であり得、特に、熱的特性と難燃性が共に要求されるコンピュータ冷却ファンであってもよいが、特定の製品に限定されない。
【0173】
本発明の一具現例に係るポリエステル樹脂組成物から製造された成形品は、使用される素材が従来の素材から変更されてハロゲンフリー組成を使用しながらも、高分子の表面にチャー(char)及び不活性気体を形成して難燃性が改善され、機械的物性、熱的特性、流動性及び難燃性などの物性バランスを満たし、製品信頼性及び外観品質が向上するという利点がある。
【0174】
本発明のポリエステル樹脂組成物、その製造方法及び成形品を説明するにおいて、明示的に記載していない他の条件や装備などは、当業界において通常行われる範囲内で適宜選択することができ、特に制限されないことを明示する。
【0175】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定するものではない。
【0176】
[実施例]
実施例に使用される各構成成分の仕様は、次の通りである。ここで、%は、重量%を意味する。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂:固有粘度(IV)0.8dl/g
(B)再生ポリエチレンテレフタレート:ミネラルウォーターボトルが下記の
図1の工程フローチャートに従って加工され、固有粘度(IV)が0.7dl/gであるホモ(Homo)タイプの白色チップ(下記の
図2の右側の図を参照)
(C)無機フィラー
(C-1)直径が10μmであり、長さが3mmであるガラス繊維(シリカ含量44重量%、アルミナ14重量%、酸化カルシウム36重量%)
(C-2)直径が10μmであり、長さが3mmであるガラス繊維(シリカ含量52重量%、アルミナ18重量%、酸化カルシウム16重量%)
(D)難燃剤
(D-1)ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩
(D-2)メラミンシアヌレート
(D-3)リン酸エステル:テトラキス(2,6-ジメチルフェニル)1,3-フェニレンビスホスフェート
(D-4)臭素化芳香族カーボネートオリゴマー
(D-5)三酸化アンチモン難燃助剤
<添加剤>
(E)滴下防止剤:テフロン(Teflon)
(F)耐熱安定剤:フェノール性酸化防止剤とホスファイト酸化防止剤が1:1で混合された添加剤
(G)ポリエチレン系滑剤:LDPE wax
(H)加水分解抑制剤(エステル交換反応抑制剤):化学式NaH
2PO
4の第一リン酸ナトリウム
【0177】
実施例1~4、及び比較例1~7
下記の表1に記載されたポリエステル樹脂組成物の原材料を混合した後、押出を通じて、均一な分散度のポリエステル樹脂組成物を押出物の形態で製造した後、前記押出物に熱を加えて金型枠に注入した後、冷却させて部品を生産する射出工程を通じて、試験片を作製した。
【0178】
具体的には、前記各構成成分を下記の表1に示した含量で添加し、L/D=42、Φ=40mmの二軸押出機を用いて、250~280℃の温度区間で溶融混練して、押出物の状態の樹脂組成物を製造した。
【0179】
製造された押出物を、100℃で4時間以上乾燥させた後、80トン射出機(Engel社、Victory80)を用いて射出温度260~280℃、金型温度80℃下で30mm/sの射出速度で射出して、機械的物性評価用試験片を作製した。
【0180】
作製された厚さ3.2mm、幅12.7mm、及び標線区間(伸び率測定)115mmの試験片に対して、下記のような方法で物性を測定し、下記の表2に示した。
【0181】
【0182】
実験例1:成形品試験片の物性の評価
前記実施例1~4、及び比較例1~7で製造された成形品試験片の物性を評価した。評価方式は、次の通りである。
-比重:ISO 1183に準拠して測定(23℃)
-流動性(Melt Flow Rate):ISO 1133に準拠して測定(265℃、2.16kg)
-引張強度及び伸び率:ISO 527-1、2に準拠して測定(5mm/min、23℃)
-曲げ強度及び曲げ弾性率:ISO 178に準拠して測定(4.0mm、SPAN64、速度2mm/min、23℃)
-シャルピー衝撃強度(IZOD):ISO 179/1eAに準拠して測定(Notched、23℃)
-熱変形温度:ISO 75に準拠して測定(高荷重1.82MPa)
-難燃性:UL94 Vテストに準拠して測定(V-0、0.8T)
【0183】
前記評価基準で測定した結果は、下記表2の通りである。
【0184】
【0185】
前記表1及び表2に示したように、本発明に係る実施例1~4のポリエステル樹脂組成物は、衝撃強度、曲げ弾性率及び高荷重熱変形温度がいずれも高いので、これを使用して製造された成形品が、衝撃強度、引張強度及び曲げ強度などの機械的物性を基本的に満たしながらも、非ハロゲン難燃性、高荷重熱変形温度に優れ、射出時にガス発生の程度が低減されて、優れた製品信頼性と外観品質を共に提供することが確認できた。
【0186】
一方、シリカの含量が本発明に係る組成を外れた無機フィラーを使用する比較例3は、実施例1~4と比較したとき、引張強度及び曲げ強度が悪化するだけでなく、流動指数も不良であることを確認した。
【0187】
また、シリカの含量が本発明に係る組成を外れた無機フィラーを使用すると同時に、ポリエチレンテレフタレート樹脂及び加水分解抑制剤をそれぞれ使用しない比較例1及び比較例2は、実施例1~4と比較したとき、それぞれ、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率及び衝撃強度などの機械的物性が不良であり、流動指数も不良であることを確認した。特に、比較例1及び比較例2のうち、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩の含量が過量使用された比較例1の場合は、流動指数も著しく悪化し、加工性が低下したことを確認した。
【0188】
また、前記比較例1よりも使用量をさらに増やして、ポリブチレンテレフタレート樹脂が適切な配合を外れて過量使用された比較例2は、実施例1~4と比較したとき、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率及び衝撃強度などの機械的物性が不良であると同時に、ハロゲン難燃のレベルに達しない難燃度を示すことを確認した。
【0189】
また、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩の含量及びメラミンシアヌレートの含量がそれぞれ、本発明に係る範囲に達しない比較例4は、実施例1~4と比較したとき、難燃度が悪化したことが確認できた。
【0190】
また、非ハロゲン系難燃剤を構成する種類としてリン酸エステルを使用していない比較例5、及びリン酸エステルを本発明に係る含量よりも少量使用した比較例6は、実施例1~4と比較したとき、難燃度が悪化したことが分かる。
【0191】
一方、前述したリン酸エステルの含量が、本発明に係る含量範囲を外れて過量使用され、ポリブチレンテレフタレート樹脂が少量使用された比較例7は、実施例1~4と比較したとき、引張伸び率、曲げ強度、及び衝撃強度などの機械的物性が不良であった。
【0192】
すなわち、本発明の一具現例に係るポリエステル樹脂組成物は、冷却部品の素材として非ハロゲン系素材を使用することで、難燃性及び剛性、そして熱的特性を同時に提供することを特徴とし、前記組成物から製造された成形品は、使用される素材が従来の素材から変更されてハロゲンフリー組成を使用しながらも、高分子の表面にチャー(char)及び不活性気体を形成して難燃性を改善し、機械的物性、電気的特性、流動性及び難燃性などの物性バランスを満たし、製品信頼性及び外観品質が向上するという利点がある。
【国際調査報告】