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特表2024-534800X線照射された物体を結像する(image)結像光学機構
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  • 特表-X線照射された物体を結像する(image)結像光学機構 図1
  • 特表-X線照射された物体を結像する(image)結像光学機構 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】X線照射された物体を結像する(image)結像光学機構
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20240918BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240918BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20240918BHJP
   G03B 42/02 20210101ALI20240918BHJP
【FI】
G01N23/04
G03B15/00 T
H01L21/66 R
G03B42/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510226
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 EP2022070678
(87)【国際公開番号】W WO2023020782
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】17/402,819
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/402,822
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】102021210175.5
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021210174.7
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】515063079
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エックス-レイ・マイクロスコピー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS X-RAY MICROSCOPY, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】ルオフ ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】アトキンソン モラ フアン
(72)【発明者】
【氏名】ケース トーマス アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】フェルトマン ハイコ
(72)【発明者】
【氏名】グラフ フォム ハーゲン クリストフ ヒルマー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリッチ トーマス マシュー
(72)【発明者】
【氏名】クランペルト ゲルハルト
【テーマコード(参考)】
2G001
4M106
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001HA13
2G001KA03
2G001LA11
2G001SA02
4M106AA01
4M106AA14
4M106DH05
4M106DH25
4M106DH34
4M106DJ15
4M106DJ20
(57)【要約】
結像光学機構が、X線照射された物体を結像する(image)機能を果たす。結像光学系が、視野面における変換視野を検出面における検出視野に結像する(image)機能を果たす。変換視野にシンチレータ材料の層が配置される。結像光学系の瞳面に絞りが配置される。結像光学系は光軸を有する。光軸を基準にした偏心距離に絞りの絞り開口の中心が配置される。このような結像光学機構は、変換視野に入射するX線の傾斜にかかわらず、物体の高品位結像を保証する。結像光学機構は、検出アレイと物体架台とをさらに含む検出アセンブリの一部である。このような検出アセンブリは、X線源をさらに含む検出システムの一部である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線照射された物体を結像する(image)ための結像光学機構であって、
- 結像光路を介して視野面における変換視野を検出面における検出視野に結像する(image)結像光学系と、
- 前記変換視野に配置されたシンチレータ材料の層と、
- 前記結像光学系の瞳面に配置された絞りと、を含み、
- 前記結像光学系が光軸を有し、
- 前記絞りの絞り開口の中心が前記光軸を基準にして偏心距離に配置されている、結像光学機構。
【請求項2】
前記偏心距離が前記絞り開口の幅の少なくとも10%である、請求項1に記載の結像光学機構。
【請求項3】
前記絞りが、前記瞳面において前記絞りを平行移動させるための駆動部に取り付けられている、請求項1または2に記載の結像光学機構。
【請求項4】
前記絞り開口によって画定される前記結像光学系の物体側開口数が0.4より大きい、請求項1~3のいずれか1項に記載の結像光学機構。
【請求項5】
前記結像光学機構が主光線特性を調整するための手段をさらに含み、前記手段が可動光学素子または前記絞りを軸方向に移動させる手段のいずれかを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の結像光学機構。
【請求項6】
前記絞りが環状瞳絞りである、請求項1~5のいずれか1項に記載の結像光学機構。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の結像光学機構を含む検出アセンブリであって、
- 前記結像光学系の前記検出視野に配置された検出アレイと、
- 前記結像光学系を介して結像される(imaged)物体を保持するための物体架台と、をさらに含む、検出アセンブリ。
【請求項8】
請求項7に記載の検出アセンブリを含み、X線源をさらに含む、検出システム。
【請求項9】
前記X線源を基準にした前記物体架台の相対的横方向変位のための横変位駆動部を有する、請求項8に記載の検出システム。
【請求項10】
- 前記物体架台を基準にした前記X線源の横方向変位と、
- 前記結像光学系の前記光軸を基準にした前記絞り開口の前記中心の前記偏心距離とが、
前記変換視野に入射するX線が前記結像光路内の結像光の主結像光線に対して平行に進むようにバランスがとれる、請求項9に記載の検出システム。
【請求項11】
前記変換視野に入射する前記X線と前記結像光学系の前記光軸との間の角度が0度から80度の間である、請求項8~10のいずれか1項に記載の検出システム。
【請求項12】
前記瞳面において絞りを平行移動させるための偏心駆動部および/または軸方向駆動部と、前記偏心駆動部および/または前記軸方向駆動部および前記横変位駆動部と信号接続する制御デバイスとをさらに含む、請求項9に記載の検出システム。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか1項に記載の検出システムを使用するX線検査方法であって、前記絞りの前記絞り開口の前記偏心距離が、前記結像光学系の前記変換視野へのX線の斜めまたは傾斜入射の角度に合わせて適応化される、X線検査方法。
【請求項14】
前記絞りが、前記絞りを前記瞳面において平行移動させるための偏心駆動部および/または軸方向駆動部に取り付けられている、請求項2に記載の結像光学機構。
【請求項15】
前記絞り開口によって画定される前記結像光学系の物体側開口数が0.4より大きい、請求項2に記載の結像光学機構。
【請求項16】
前記偏心距離が前記絞り開口の幅の少なくとも10%である、請求項7に記載の検出アセンブリ。
【請求項17】
前記絞りが、前記絞りを軸方向または横方向のうちの少なくとも一方に平行移動させるための駆動部に取り付けられている、請求項7または16に記載の検出アセンブリ。
【請求項18】
前記偏心駆動部の動作と前記横変位駆動部の動作との間の依存関係に関するデータを格納するルックアップテーブルを含み、
前記制御デバイスが前記偏心駆動部と前記横変位駆動部とを制御するために前記ルックアップテーブルに格納された前記データを使用するように構成されている、請求項12に記載の検出システム。
【請求項19】
前記変換視野に入射するX線が前記結像光路内の結像光の主結像光線に対して平行に進むように、前記物体架台を基準にした前記X線源の横方向変位と前記結像光学系の前記光軸を基準にした前記絞り開口の前記中心の前記偏心距離とのバランスをとることを含む、請求項13に記載のX線検査方法。
【請求項20】
前記偏心駆動部および/または前記軸方向駆動部の動作と前記横変位駆動部の動作との間の依存関係に関するデータを格納するルックアップテーブルからデータを読み出すことと、
前記物体架台を基準にした前記X線源の前記横方向変位と前記結像光学系の前記光軸を基準にした前記絞り開口の前記中心の前記偏心距離とのバランスをとるために、前記ルックアップテーブルからの前記データを使用することとを含む、請求項13または19に記載のX線検査方法。
【請求項21】
前記変換視野に入射する前記X線と前記結像光学系の前記光軸との間の角度が0度から80度の間である、請求項13、19または20に記載のX線検査方法。
【請求項22】
横変位駆動部を使用して前記X線源を基準にした前記物体架台の相対的横方向変位を行うことを含む、請求項13または19~21のいずれか1項に記載のX線検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許出願第17/402819号、第17/402822号、独国特許出願第102021210175.5号および独国特許出願第102021210174.7号の優先権を主張し、参照によりその内容が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、X線照射された物体を結像する(image)ための結像光学機構に関する。また、本発明は、そのような結像光学機構を含む検出アセンブリおよびそのような検出アセンブリを含む検出システムに関する。また、本発明は、そのような検出システムを使用するX線検査方法に関する。
【背景技術】
【0003】
X線照射された物体を結像する(image)ための結像光学機構が、米国特許第7,057,187B1号、第7,130,375B1号、および第9,129,715B2号から知られている。また、独国特許出願公開第102018209570号から、3次元像を生成する方法およびデバイスが知られている。米国特許出願公開第2021/0012499号は、X線を使用してデバイスにおける欠陥を検出するための方法およびシステムを開示している。S. Gondrom et.al., NDT.net - July 1999, Vol.4, No.7の記事では、機能原理および産業上の利用を含むデジタル計算断層撮影およびトモシンセシスが開示されている。独国特許第4228082C1号は、光学絞りを開示している。米国特許出願公開第2016/0088205号は、多重フーリエタイコグラフィ結像システムおよび方法を開示している。米国特許出願公開第2018/0164690号は、EUV投影リソグラフィのための結像光学ユニットを開示している。米国特許出願公開第2017/0131528号は、リソグラフィマスクを検査するための計測システム用の結像光学ユニットを開示している。米国特許出願公開第2012/0154823号は、位置検出装置、露光装置および製造方法を開示している。
【発明の概要】
【0004】
一般的態様では、本発明は、斜めまたは傾斜して変換視野に入射するX線にかかわらず、物体の高品位結像を可能にする結像光学機構を構築する。
【0005】
上記の態様は、X線照射された物体を結像する(image)ように構成された結像光学機構であって、結像光路を介して視野面における変換視野を検出面における検出視野に結像する(image)ための結像光学系と、変換視野に配置されたシンチレータ材料の層と、結像光学系の瞳面に配置された絞りとを含む、結像光学機構によって実現される。結像光学系は光軸を有し、絞りの絞り開口の中心が光軸を基準にして偏心距離に配置されている。
【0006】
結像光学機構の結像光学系の光軸を基準にして偏心距離に配置された絞りが、そのような偏心距離を結像光学系の変換視野へのX線の斜めまたは傾斜した入射の角度に適応化させることを可能にすることが、本発明人らにより認められた。絞り開口のそれぞれの偏心によって、シンチレータ材料の層の異なる位置からの起点の結像スポットの平均スポットサイズを有利に小さく維持することができる。これは、シンチレータ材料の層に斜めに入射する光線の場合であっても、変換視野から検出視野への良好な結像をもたらす。
【0007】
結像光学機構の絞りの絞り開口は、結像光学系の瞳を画定する。
【0008】
具体的には、20μm未満、10μm未満、および具体的には1μm未満の物体構造体を結像する(image)ことが可能である。そのような構造体の例は、マイクロチップと基板導体経路との間のCu-Cuハイブリッドボンディング構造体である。具体的には、シングルダイ間またはホールウエハと基板ウエハとの直接ボンディングを検査することができる。
【0009】
具体的には、異なる方向から撮像された、いくつかの2D像を組み合わせることによって、被検物体サンプルの3Dトモグラフィ再構成が可能である。
【0010】
絞り開口の幅の少なくとも10%である偏心距離が、そのような結像光学機構を含む検出システムおよび検出アセンブリの典型的なスペース要件に良好に適応化することが実証された。偏心距離は、絞り開口幅の10%より大きくすることができ、絞り開口幅の15%、20%、25%、30%、35%、40%またはさらにより大きな割合となることが可能である。偏心距離は、物体のX線照射の入射角の連続関数とすることができる。所与の結像光学機構について、そのようなX線入射角の測定後、偏心距離値をたとえば結像光学系内で調整されるルックアップテーブルに格納することができる。
【0011】
絞りの絞り開口は、円形開口とすることができる。この場合、絞り開口の幅はその直径でもある。非円形絞り開口の場合、幅は、絞りの配置面における絞り開口のすべての可能な方向にわたって測定された平均幅として計算することができる。
【0012】
絞りは、瞳絞りを平行移動させるための駆動部に取り付けることができる。瞳絞り駆動部は、瞳絞りを瞳面において少なくとも1つの絞り偏心方向に沿って横方向に平行移動させる偏心駆動部とすることができる。偏心駆動部は、偏心距離の適応化を可能にする。偏心駆動部は、結像光学機構の、または結像光学機構を使用する検出アセンブリまたは検出システムの、制御デバイスに信号接続することができる。その場合、制御デバイスは、絞りを平行移動させるように偏心駆動部の動作を制御することができる。このような制御は、制御デバイスに供給される別のパラメータに応じて行うことができる。そのような他のパラメータは、結像光学機構、検出アセンブリまたは検出システムのそれぞれの動作条件の結果、または測定の結果とすることができる。これに代えて、またはこれに加えて、瞳絞り駆動部は、瞳絞りを瞳面に対して垂直に平行移動させる軸方向駆動部とすることができる。そのような軸方向駆動部は、結像光学機構のテレセントリシティパラメータを調整するためのテレセントリシティ調整駆動部の機能を果たすことができる。
【0013】
絞り開口によって画定される結像光学系の物体側NAは、0.4より大きくすることができる。この物体側NAは、十分な解像度での物体の結像を可能にする。そのような物体側NAは、0.45、0.5、0.55、0.6、1.0、1.2とすることができ、またはさらに大きくすることができる。通例、そのような絞り開口によって画定される物体側NAは1.8未満である。シンチレータ材料が1.0より大きい屈折率を有することができるため、物体側開口数は1.0より大きくすることができる。
【0014】
結像光学機構は、主光線特性を調整するための手段をさらに含むことができ、そのような手段は可動光学素子または絞りを軸方向に移動させる手段を含む。
【0015】
絞りは、環状瞳絞りとすることができる。
【0016】
別の一般的態様では、検出アセンブリが、X線照射された物体を結像する(image)ように構成された結像光学機構を含み、結像光学機構は、結像光路を介して視野面における変換視野を検出面における検出視野に結像する(image)ための結像光学系と、変換視野に配置されたシンチレータ材料の層と、結像光学系の瞳面に配置された絞りとを含む。結像光学系は光軸を有し、絞りの絞り開口の中心が光軸を基準にして偏心距離に配置されている。検出アセンブリは、結像光学系の検出視野に配置された検出アレイと、結像光学系を介して結像される(imaged)物体を保持するための物体架台とをさらに含む。
【0017】
上述の検出アセンブリの利点は、結像光学機構に関して上述した利点と一致する。検出アセンブリの検出アレイ、結像光学系および物体架台は、固定した位置関係で取り付け可能である。
【0018】
別の一般的態様では、検出システムが、X線照射された物体を結像する(image)ように構成された結像光学機構を含む検出アセンブリを含む。結像光学機構は、結像光路を介して視野面における変換視野を検出面における検出視野に結像する(image)ための結像光学系と、変換視野に配置されたシンチレータ材料の層と、結像光学系の瞳面に配置された絞りとを含む。結像光学系は光軸を有し、絞りの絞り開口の中心が光軸を基準にして偏心距離に配置されている。検出アセンブリは、結像光学系の検出視野に配置された検出アレイと、結像光学系を介して結像される(imaged)物体を保持するための物体架台とをさらに含む。検出システムはX線源をさらに含む。
【0019】
上述の検出システムの利点は、結像光学機構に関して、および検出アセンブリに関して上述した利点と一致する。
【0020】
使用されるX線のX線エネルギーは、5keVと160keVとの間、好ましくは15keVと90keVとの間の範囲とすることができる。
【0021】
検出システムは、X線源を基準にした物体架台の相対的横方向変位のための横変位駆動部を含むことができる。横変位駆動部は、高品位での物体の自動結像測定を可能にする。このような横変位駆動部を使用して使用可能な結像方法が、独国特許出願公開第102018209570号で開示されており、その内容全体が参照により組み込まれる。
【0022】
X線源を基準にした物体架台のこのような横方向変位時、結像光学系の光軸の方向が変化しないままとすることができ、すなわち傾斜しないことが可能である。具体的には、物体架台の横方向変位時、物体と結像光学機構は固定した空間的関係を維持することができる。
【0023】
一方の光学架台を基準にしたX線源の横方向変位と他方の絞り開口偏心とのバランスをとることで、変換視野面の法線を基準にして斜めであるかまたは傾斜しているX線経路を介して変換視野面に垂直なシンチレータ材料の厚さ全体にわたって結像光が生じるにもかかわらず、検出視野に対する変換視野の結像の小さい平均有効スポットサイズによる高品位な結像を可能にする。上述のバランスに関与する絞り開口の偏心は、結像光学系の光軸を基準にした絞り開口の中心の偏心距離の調整を含むことができる。結像光学系内の結像光の主結像光線は、シンチレータ材料層から発する光束の中心光線と定義することができる。あるいは、そのような主結像光線は、主結像光エネルギーの方向を持つ光線と定義することができる。
【0024】
変換視野に入射するX線と結像光学系の光軸との間の角度は、0度から80度の間とすることができる。上記の角度は、良好な結像結果、具体的には、独国特許出願公開第102018209570号による方法を使用した場合に良好な3次元結像結果をもたらすことが判明した。そのような角度は10度から30度の間とすることができ、20度の範囲内とすることができる。
【0025】
検出システムは、偏心駆動部および横変位駆動部と信号接続する制御デバイスを含むことができる。制御デバイスは、横変位駆動部によってもたらされる横方向変位に応じた偏心駆動部の制御を可能にする。これは、物体の3次元像を生成する自動測定プロセスを可能にする。一方の偏心駆動部の動作と他方の横変位駆動部の動作との間の依存関係に関するデータを、ルックアップテーブルから収集することができる。そのようなルックアップテーブルは、検出システムの準備キャリブレーション段階で作成することができる。
【0026】
別の一般的態様では、X線検査方法が、X線照射された物体を結像する(image)ように構成された結像光学機構を含む検出アセンブリを含む検出システムを使用する。結像光学機構は、結像光路を介して視野面における変換視野を検出面における検出視野に結像する(image)ための結像光学系と、変換視野に配置されたシンチレータ材料の層と、結像光学系の瞳面に配置された絞りとを含む。結像光学系は光軸を有し、絞りの絞り開口の中心が光軸を基準にして偏心距離に配置されている。検出アセンブリは、結像光学系の検出視野に配置された検出アレイと、結像光学系を介して結像される(imaged)物体を保持するための物体架台とをさらに含む。検出システムはX線源をさらに含む。絞りの絞り開口の偏心距離は、結像光学系の変換視野に対するX線の斜めまたは傾斜した入射の角度に適応化される。上記のX線検査方法の利点は、検出システムに関して上述した利点と一致する。
【0027】
検出システムは、物体を結像する(image)ために使用されるX線を透過させる遮蔽絞りアパーチャを有する遮蔽絞りを含むことができ、遮蔽絞りはX線源と物体架台との間のX線の光路内の配置面に配置され、遮蔽絞りは、遮蔽絞り変位駆動部を介して、配置面において少なくとも1つの絞り変位方向に沿って移動可能である。遮蔽絞りと検出アレイは、異なる物体結像投影を実現するために、被検物体に対して相対的に同期して移動させることができる。
【0028】
遮蔽絞りと検出アレイと物体との同期移動は、所望の物体結像投影になるように、物体に照射するX線の使用光路が常に、結像される(imaged)所望の物体領域において物体に当たるように保証する。
【0029】
以下で述べるさらなる態様とともに追加の一般的態様として示される上述の態様に代えて、またはそれらに加えて実現可能な別の一般的態様によると、本発明は、物体のX線照射を最適化し、具体的には高解像度物体結像を実現することができる。
【0030】
上記の態様は、X線を発生するためのX線源と、X線照射される物体面において物体を結像する(image)ための結像光学機構とを含む検出システムであって、結像光学機構が視野面における変換視野を検出面における検出視野に結像する(image)ための結像光学系を含む、検出システムによって実現される。検出システムは、結像光学系の検出視野に配置された検出アレイと、結像光学系を介して結像される(imaged)物体を保持するための物体架台とを含み、物体架台は、物体変位駆動部を介して物体面において少なくとも1つの物体横変位方向に沿って光源に対して相対的に移動可能である。検出システムは、物体を結像する(image)ために使用されるX線を透過させる遮蔽絞りアパーチャを有する遮蔽絞りを含み、遮蔽絞りは、X線源と物体架台との間のX線の光路における配置面に配置され、遮蔽絞りは遮蔽絞り変位駆動部を介して配置面において少なくとも1つの絞り変位方向に沿って移動可能である。検出システムは、遮蔽絞り変位駆動部と物体変位駆動部の移動を同期させるために、遮蔽絞り変位駆動部および物体変位駆動部と信号接続された駆動部制御ユニットを有する、制御デバイスを含む。
【0031】
可動遮蔽絞りは、物体の結像光学機構によって結像される(imaged)領域のみがX線照射されるように保護することを可能にする。非検査光学領域、すなわち結像光学機構によって実際には結像され(imaged)ない物体の領域が、それにより無用なX線露光から保護される。いくつかの実装形態では、遮蔽絞り変位駆動部と物体変位駆動部との同期移動が、物体に照射するためのX線の使用光路が常に(または検出システムの動作期間の実質的に大部分の期間中に)、結像される(imaged)所望の物体領域において物体に当たるように保証する。
【0032】
具体的には、20μm未満、10μm未満、具体的には1μm未満の物体構造体を結像する(image)ことが可能である。そのような構造体の例は、マイクロチップと基板導体経路との間のCu-Cuハイブリッドボンディング構造体である。具体的には、シングルダイ間またはホールウエハと基板ウエハとの直接ボンディングを検査することができる。
【0033】
具体的には、異なる方向から撮像された、いくつかの2D像を組み合わせることによって、被検物体サンプルの3Dトモグラフィ再構成が可能である。
【0034】
使用されるX線のX線エネルギーは、5keVと160keVとの間、好ましくは15keVと90keVとの間の範囲とすることができる。
【0035】
いくつかの実装形態では、物体架台は少なくとも1つの直線変位方向に沿って移動可能である。遮蔽絞りは、少なくとも1つの直線変位方向に沿って移動可能である。上記の物体架台/遮蔽絞りの可動性は、高解像度物体像を得るのに特に有利であることが判明した。物体架台は2つの横変位方向に沿って移動可能とすることができる。そのような2つの変位方向は、物体面にわたることができる。遮蔽絞りは、2つの横変位方向に沿って移動可能とすることができる。そのような2つの変位方向は遮蔽絞り配置面にわたることができる。
【0036】
いくつかの実装形態では、物体架台および/または遮蔽絞りは少なくとも1つの円形方向に沿って移動可能である。上記の利点は、上述の少なくとも1つの円形方向における移動可能変形態様にも当てはまる。
【0037】
いくつかの実装形態では、可変サイズの遮蔽絞りアパーチャを有する遮蔽絞りが、結像される(imaged)物体領域に当たるように使用X線経路によって満たされるべき視野の要件への遮蔽絞りサイズの適応化を可能にする。そのようなサイズの可変性は、虹彩絞りによって実現可能である。可変サイズの遮蔽絞りアパーチャを有する遮蔽絞りは、アパーチャ変化駆動部を備えることができる。そのようなアパーチャ変化駆動部も制御デバイスの駆動部制御ユニットと信号接続可能である。アパーチャ変化駆動部を介して制御されるアパーチャサイズは、遮蔽絞り変位駆動部および/または物体変位駆動部の位置に依存し得る。
【0038】
遮蔽絞りはいくつかの遮蔽ブレードを含むことができる。上記の遮蔽絞りの一実施形態は、比較的単純な構造を有することができる。遮蔽ブレードは、可変遮蔽絞りアパーチャサイズを可能にするように互いに対して相対的に移動可能とすることができる。これらのいくつかの遮蔽ブレードは、少なくとも1対または数対の遮蔽ブレードとして構成可能である。2対の遮蔽ブレードが使用される場合は、たとえば正方形または矩形の遮蔽絞りアパーチャとなることを可能にするために、これらを互いに対して90度の向きとすることができる。
【0039】
いくつかの実装形態では、遮蔽絞りアパーチャは、フィルタを備えることができる。上記のフィルタは、望ましくない波長および/または屑をフィルタ除去することを可能にする。
【0040】
いくつかの実装形態では、検出システムは、異なる遮蔽絞り間の交換のために遮蔽絞り交換架台を含むことができる。上記の遮蔽絞り交換架台は、異なる遮蔽絞り間の交換を容易にすることができる。これは、摩耗した遮蔽絞りを交換するため、または遮蔽絞りアパーチャサイズを適応化するために使用することができる。
【0041】
いくつかの実装形態では、検出システムは、変換視野に配置されたシンチレータ材料の層を含むことができる。上記のシンチレータ材料の層は、変換視野から検出視野への良好な結像を可能にする。
【0042】
いくつかの実装形態では、検出システムは、結像光学系の瞳面に配置された瞳絞りを含むことができる。上記の瞳絞りは、具体的には結像光学系の開口数を検出システムの結像要件に適応化させることを可能にする。
【0043】
これは、具体的には、瞳面において瞳絞りを平行移動させるために瞳絞り偏心駆動部を介して移動可能な瞳絞りの場合に当てはまる。具体的には、結像光学機構の結像光学系の光軸を基準にして偏心距離に配置された絞りが、そのような偏心距離を結像光学系の変換視野へのX線の斜めまたは傾斜した入射の角度に適応化させることを可能にすることが、本発明人らにより認められた。絞り開口のそれぞれの偏心によって、シンチレータ材料の層の異なる位置からの起点の結像スポットの平均スポットサイズを有利に小さく維持することができる。これは、シンチレータ材料の層に斜めに入射する光線の場合であっても、変換視野から検出視野への良好な結像をもたらす。
【0044】
いくつかの実装形態では、駆動部制御ユニットが瞳絞り偏心駆動部と信号接続することができる。上記の駆動部制御ユニットは、遮蔽絞り変位駆動部と横変位駆動部と瞳絞り変位駆動部の移動の同期を可能にする。これは、物体の3次元像を生成する自動測定プロセスを可能にする。遮蔽絞り変位駆動部と横変位駆動部と瞳絞り変位駆動部の動作間の依存関係に関するデータを、ルックアップテーブルから収集することができる。そのようなルックアップテーブルは、検出システムの準備キャリブレーション段階で作成することができる。
【0045】
いくつかの実装形態では、X線源は開放透過型線源または液体金属ジェット源とすることができる。上記のX線源は、検出システムに適することが実証されている。
【0046】
物体架台は、リング架台型のものとすることができる。そのような物体架台は、使用光路と物体との間に追加の架台材料を有していなくてもよい。これにより望ましくないX線吸収が回避される。
【0047】
いくつかの実装形態では、物体架台は、少なくとも1つの有機トレイを含むことができるか、またはアルミニウムおよび/またはガラストレイ、具体的には、発生したX線のスペクトルの低エネルギー部分をフィルタリングするためのドーパントを含むトレイを含むことができる。上記の物体架台は、X線吸収を最小限にし、および/またはX線スペクトルの低い望ましくないエネルギー部分をフィルタリングすることができる。
【0048】
別の一般的態様では、物体のX線検査のための検出システムを使用してX線検査方法が行われ、検出システムは、X線を発生するためのX線源と、X線照射された物体面において物体を結像する(image)ための結像光学機構とを含み、結像光学機構は視野面における変換視野を検出面における検出視野に結像する(image)ための結像光学系を含む。検出システムは、結像光学系の検出視野に配置された検出アレイと、結像光学系を介して結像される(imaged)物体を保持するための物体架台とを含み、物体架台は、物体変位駆動部を介して物体面において少なくとも1つの物体横変位方向に沿って光源に対して相対的に移動可能である。検出システムは、物体を結像する(image)ために使用されるX線を透過させる遮蔽絞りアパーチャを有する遮蔽絞りを含み、遮蔽絞りは、X線源と物体架台との間のX線の光路において配置面に配置され、遮蔽絞りは、遮蔽絞り変位駆動部を介して配置面において少なくとも1つの絞り変位方向に沿って移動可能である。検出システムは、遮蔽絞り変位駆動部と物体変位駆動部の移動を同期させるために遮蔽絞り変位駆動部および物体変位駆動部と信号接続された駆動部制御ユニットを有する制御デバイスを含む。遮蔽絞りと検出アレイは、異なる物体結像投影を実現するために、同期して被検物体に対して相対的に移動される。上記のX線検査方法の利点は、検出システムに関して上述した利点と一致する。遮蔽絞りと検出アレイと物体との同期移動は、所望の物体結像投影を生じさせるために、物体に照射するX線の使用光路が常に(または検出システムの動作期間の実質的に大部分の期間中に)、結像される(imaged)所望の物体領域において物体に当たるように保証することができる。
【0049】
このような追加の一般的態様は、以下の項目を使用してさらに説明することができる。
【0050】
1.(項目1)物体のX線検査のための検出システムであって、
- X線を発生するためのX線源と、
- X線照射された物体面における物体を結像する(image)ための結像光学機構であって、視野面における変換視野を検出面における検出視野に結像する(image)ための結像光学系を含む結像光学機構と、
- 結像光学系の検出視野に配置された検出アレイと、
- 結像光学系を介して結像される(imaged)物体を保持するための物体架台であって、物体変位駆動部を介して物体面において少なくとも1つの物体横変位方向に沿って光源に対して相対的に移動可能な物体架台と、
- 物体を結像する(image)ために使用されるX線を透過させる遮蔽絞りアパーチャを有する遮蔽絞りであって、X線源と物体架台との間のX線の光路における配置面に配置され、遮蔽絞り変位駆動部を介して配置面において少なくとも1つの絞り変位方向に沿って移動可能な遮蔽絞りと、
- 遮蔽絞り変位駆動部と物体変位駆動部の移動を同期させるために、遮蔽物絞り変位駆動部と物体変位駆動部とに信号接続された駆動部制御ユニットを有する制御デバイスと、
を含む、検出システム。
【0051】
2.(項目2)物体架台が少なくとも1つの直線変位方向に沿って移動可能な、項目1の検出システム。
【0052】
3.(項目3)遮蔽絞りが少なくとも1つの直線変位方向に沿って移動可能な、項目1の検出システム。
【0053】
4.(項目4)物体架台および/または遮蔽絞りが少なくとも1つの円形方向に沿って移動可能な、項目1の検出システム。
【0054】
5.(項目5)遮蔽絞りが、遮蔽絞りアパーチャがサイズ可変であるように構成されている、項目1の検出システム。
【0055】
6.(項目6)遮蔽絞りがいくつかの遮蔽ブレードを含む、項目1の検出システム。
【0056】
7.(項目7)遮蔽絞りアパーチャがフィルタを備える、項目1の検出システム。
【0057】
8.(項目8)異なる遮蔽絞り間で交換するための遮蔽絞り交換架台を含む、項目1の検出システム。
【0058】
9.(項目9)変換視野に配置されたシンチレータ材料の層を含む、項目1の検出システム。
【0059】
10.(項目10)結像光学系の瞳面に配置された瞳絞りを含む、項目1の検出システム。
【0060】
11.(項目11)瞳絞りが、瞳面において瞳絞りを平行移動させるための瞳絞り偏心駆動部を介して移動可能な、項目10の検出システム。
【0061】
12.(項目12)駆動部制御ユニットが瞳絞り偏心駆動部と信号接続する、項目11の検出システム。
【0062】
13.(項目13)X線源が開放透過型線源または液体金属ジェット源である、項目1の検出システム。
【0063】
14.(項目14)物体架台が少なくとも1つの有機トレイを含むか、またはアルミニウムおよび/またはガラストレイを含み、トレイが具体的には発生したX線のスペクトルの低エネルギー部分をフィルタリングするためのドーパントを含む、項目1の検出システム。
【0064】
15.(項目15)項目1の検出システムを使用するX線検査方法であって、異なる物体結像投影を実現するために遮蔽絞りと検出アレイが被検物体に対して相対的に同期して移動される、X線検査方法。
【0065】
16.(項目16)物体架台を少なくとも1つの直線変位方向に沿って移動させることを含む、項目15のX線検査方法。
【0066】
17.(項目17)遮蔽絞りを少なくとも1つの直線変位方向に沿って移動させることを含む、項目15のX線検査方法。
【0067】
18.(項目18)物体架台および/または遮蔽絞りを少なくとも1つの円形方向に沿って移動させることを含む、項目15のX線検査方法。
【0068】
19.(項目19)遮蔽絞り変位駆動部の動作と物体変位駆動部の動作との間の依存関係に関するデータを格納するルックアップテーブルからデータを読み出すことと、
遮蔽絞り変位駆動部と物体変位駆動部の移動を同期させるためにルックアップテーブルからのデータを使用することとを含む、項目15のX線検査方法。
【0069】
20.(項目20)遮蔽絞り変位駆動部の動作と物体変位駆動部の動作との間の依存関係に関するデータを格納するルックアップテーブルを含み、
制御デバイスが、遮蔽絞り変位駆動部と物体変位駆動部の移動を同期させるためにルックアップテーブルに格納されているデータを使用するように構成されている、項目1の検出システム。
【0070】
この追加の一般的態様の構成要素および機能は、上記の一般的態様のものと組み合わせることができる。
【0071】
以下、本発明の例示の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】検出システムのX線源に対して相対的な物体架台を含む検出アセンブリの第1の位置に示されている顕微鏡対物レンズとして実現された、X線照射された物体を結像する(image)ための結像光学機構を有する検出アセンブリを含む検出システムであって、X線源の発生源領域と物体架台との間に遮蔽絞りをさらに含む検出システムの、一部が概略図であり一部が透視図である側面図である。
図1A】遮蔽絞りの面xyの図を示す、図1の挿入図である。
図2図1と類似した図において、図1と比較して横方向に変位している、X線源に対して相対的な物体架台を含む検出アセンブリのさらなる位置における検出システムを示す図である。
図3】子午断面および概略断面において、物体から到来し、結像光学機構の結像物体によって結像される(imaged)変換視野に入射する傾斜X線に沿ってシンチレータ層の異なる点から生じる結像ビーム路のハイライトされた光線を有する、結像光学機構を示す図である。
図4】軸方向に変位可能な瞳絞りと変換視野を検出視野に結像する(image)結像光学系とを含む、結像光学機構のさらなる実施形態を示す図である。
図5図4と類似した図において、瞳絞りが環状アパーチャ絞りとして実現されている結像光学機構を示す図である。
図6図5と類似した図において、瞳絞りがさらに偏心され、すなわち結像光学機構の光軸から横方向に変位している、結像光学機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
検出システム1が、X線3が照射された物体2を調査または検査する機能を果たす。検出システム1は、具体的には、パッケージングの品質、すなわち、具体的にはマイクロ構造体および/またはナノ構造体を有するチップ上の電子コンポーネントの機械的および電気的ボンディングの品質を調査する機能を果たす。そのような電子コンポーネントは、層状の3次元(3D)構造体に配置されることが多い。図1では、いくつかの層4i(i=1...3、5、7、10またはそれ以上)が示されている。
【0074】
詳細な説明を容易にするために、以下ではデカルトx-y-z座標系を使用する。図1において、x方向が右を指し、y方向が描画面に対して垂直であり、観察者から離れる方向を指し、z方向が上方を指す。
【0075】
層4iはz方向に積層されている。
【0076】
X線3は、光源とも呼ばれるX線源6の発生源領域5から放射される。X線3は、物体2が内部に配置されている放射コーン内で放射される。このような放射コーンの典型的なコーン角は、90度から175度の間の範囲であり、170度とすることができる。発生源領域5のスポットサイズは、光源6の種類に応じて1μmと100μmとの間の範囲とすることができる。光源6の連続出力は、1Wと200Wとの間の範囲とすることができ、この場合も光源の種類に応じて20Wまたは50Wとすることができる。
【0077】
X線源6は、開放透過型線源または液体金属ジェット源とすることができる。開放透過型X線源の一例は、独国X-RAY WorX GmbHから提供されている製品ライン「TCHE+」からの発生源である。液体金属ジェット源の一例は、Excillum ABによって提供されている発生源「金属ジェットD2+70kV」である。
【0078】
物体2は、物体面8を画定する物体架台7によって保持される。物体2は、物体視野8a内のx-y次元を基準にして配置される。物体架台7は、最大300mm以上の直径を有する物体2を載せることができる。
【0079】
物体架台7は、使用光路8eと物体2との間に追加の取り付け材料を備えないようにリング架台として実現可能である。あるいは、物体架台7は、薄い有機トレイまたは複数のそのようなトレイを含むことができる。そのような有機トレイは、使用X線3の吸収を最小限にする機能を果たす。あるいは、X線3のスペクトルの低い望ましくないエネルギー部分をフィルタリングするために、適切なドーパントを有するアルミニウムおよび/またはガラストレイを物体架台7の一部として使用することができる。
【0080】
10keVまたは15keVを下回るX線エネルギーが、それぞれの物体架台側フィルタを介してフィルタリングされる。物体架台7のそれぞれの実施形態における有機トレイ/アルミニウムおよび/またはガラストレイの典型的な厚さは、1mmと5mmとの間の範囲とすることができる。
【0081】
ガラストレイは、具体的には低エネルギーX線のフィルタリングを最適化するために、Pb、B、As、Bi、Cd、Co、Uなどの適切な量のドーパント材料を含有することができる。
【0082】
発生源領域5と物体架台7との間の配置面8cに遮蔽絞り8bが配置されている。遮蔽絞り8bは、X線3の全体的光路8d内に配置され、光源6の放射コーンによって画定された全光路8d内の使用可能な光路8eを選択する機能を果たす。具体的には、遮蔽絞り8bは、物体2の非検査領域をX線露光から保護する。遮蔽絞り8bは、遮蔽絞りアパーチャとも呼ばれる絞り開口8fを有する。遮蔽絞りアパーチャ8fを通って、使用可能光路8eが、物体2に当たるさらなる下方ビーム経路内を伝播する。
【0083】
遮蔽絞りアパーチャ8fは、物体2を結像する(image)ために使用されるX線3を透過させる。このような遮蔽絞りアパーチャ8fは、円形とすることができるか、正方形アパーチャとすることができるか、または矩形とすることができる。遮蔽絞りアパーチャ8fのその他の境界輪郭、たとえば六角形輪郭も可能である。
【0084】
遮蔽絞り8bは、遮蔽絞り変位駆動部8gを介して配置面8c内で少なくとも1つの絞り変位方向x/yに沿って移動可能である。
【0085】
遮蔽絞り変位駆動部8gを介して行われる遮蔽絞り8bのそのような移動は、少なくとも1つの直線変位方向、たとえばx/yに沿った直線変位とすることができる。あるいは、遮蔽絞り変位駆動部8gの実施形態によっては、遮蔽絞り8bの可動性は、配置面8cにわたる2つの変位方向に沿って、たとえばxとyとすることができる。遮蔽絞り変位駆動部8gの別の実施形態または追加の実施形態では、遮蔽絞り8bは少なくとも1つの曲線状方向に沿って移動可能とすることができ、具体的には少なくとも1つの円形方向に沿って移動可能とすることができる。
【0086】
遮蔽絞り8bは、遮蔽絞りアパーチャ8fがサイズ可変であるように構成することができる。具体的には、遮蔽絞り8bは、可変サイズの絞り開口8fを有する虹彩絞りとして構成可能である。そのような絞り開口サイズ/形状変化は、それぞれの遮蔽絞りアパーチャ駆動部(図示せず)によって生じさせることができる。
【0087】
遮蔽絞り8bの面xyの図を示す挿入図1Aに示すように、遮蔽絞り8bの一実施形態では、これは、組み合わさって遮蔽絞りアパーチャ8fを画定するいくつかの遮蔽ブレード8ba、8bb、8bcおよび8bdを含むことができる。
【0088】
図1Aに示す実施形態では、ブレード8ba~8bdは、対向する場所からの遮蔽絞りアパーチャ8fの範囲を画定する2対のブレード8ba、8bbおよび8bc、8bdとして配置される。図1Aの方向から見ると、ブレード8bc、8bdがブレード8ba、8bbの下に配置されている。これらのブレード対8ba、8bbと8bc、8bdとの間のz距離はきわめて小さく、1μmと100μmとの間の範囲とすることができる。
【0089】
図1において破線で示すように、遮蔽絞りアパーチャ8fはフィルタ8hを備えることができる。このようなフィルタは、発生源から到来するX線スペクトルの低エネルギー部分をフィルタ除去する機能を有する。
【0090】
検出システム1は、図1では概略的に示されている遮蔽絞り交換架台8iを含むことができる。このような遮蔽絞り交換架台8iは、異なる視野絞り8b間で交換、具体的には異なる遮蔽絞りアパーチャ8fを有する遮蔽絞り8b間で交換、および/または定格使用時間後に遮蔽絞り8bを交換するための機能を有する。
【0091】
遮蔽絞り8bの材料は、高吸収性材料、たとえば鉛、タングステン合金とすることができる。遮蔽ステップ8bのz厚さは、100μmと1mmとの間の範囲である。
【0092】
物体2は、顕微鏡対物レンズとして実現された結像光学系10を含む結像光学機構9を介して結像される(imaged)。結像光学機構9は、物体架台7と、検出ハウジング13内に保持された検出アレイ12も含む、検出アセンブリ11の一部である。検出アレイ12はCCDアレイまたはCMOSアレイとすることができる。検出アレイ12は、フラットパネル検出器として構成可能である。検出アレイ12は、毎秒10フレーム(fps)による最小像読み出し時間を有することができる。このような像読み出し時間は、より高いfps値、具体的には、10fps超、25fps超、および50fps超を達成するように、より短くすることができる。通例、像読み出し時間は5msより長い。
【0093】
検出アセンブリ11は、広い視野(FOV)を有する。FOVは、使用した顕微鏡対物レンズの倍率に強く依存し、0.4×対物レンズの場合の70mm~40×対物レンズの場合の0.7mmの範囲にわたり得る。当然ながら、FOVは検出アレイ12のサイズにも依存する。
【0094】
結像光学機構9は、具体的には異なる倍率スケール間の切り換えのために結像光学系10が交換可能なように構成することができる。
【0095】
それぞれの結像測定時、検出アレイ12、結像光学系10および物体架台7が互いに対して固定した空間的関係で配置される。この構成要素グループ7、10および12は、以下で詳述するように、X線源6に対して相対的に移動される。結像/調整を目的として、検出アレイ12、結像光学系10および物体架台7を、具体的には互いに対してz方向に調整することができる。
【0096】
結像光学系10と物体2との間の典型的な距離dは、1mmの範囲である。
【0097】
物体面8、すなわち物体架台8の配置面と、遮蔽絞り8bの配置面8cとの間の典型的な最小距離は1mmである。X線源6の発生源領域5と遮蔽絞り8bとの間の典型的な最小距離は1mmの範囲である。
【0098】
その結果の発生源領域5と物体2との間の小さい距離により、使用光路8eの最大スループットが得られる。また、物体2と結像光学系10との間のこのような最小距離の結果として物体結像の最大解像度が得られる。
【0099】
以下、結像光学機構9のさらなる詳細について図3を参照しながら説明する。
【0100】
結像光学機構9の結像光学系10は、視野面15における変換視野14を検出面または像面16aにおける検出視野16に結像する(image)機能を果たす。このような結像は、倍率1を有するかまたは1より大きい、たとえば2、3、4、5、8、10、15、20、25、50、100またはさらに大きい倍率を有する、結像光学系10のそれぞれの実施形態により行うことができる。
【0101】
典型的な倍率値は4~40の範囲とすることができる。
【0102】
検出アセンブリ11の検出器アレイ12が、結像光学系10の検出視野16に配置されている。検出アレイ12は、z方向に沿って結像光学系10の像面16aの位置を基準にして移動可能とすることができる。
【0103】
変換視野14にシンチレータ材料の層17が配置されている。
【0104】
通例、X線源6からのX線3は、放射線陰影投射によりシンチレータ材料層17上に投影像を生じさせる。このような実施形態では、使用可能光路8e内でX線3の方向に影響を与えるX線光学系は存在しない。
【0105】
このようなシンチレータ層17の厚さは、結像光学系10によって結像される(imaged)変換視野14量のz方向範囲に対応する。典型的なシンチレータ層17のZ方向範囲、すなわちそのような層17の典型的な厚さは、1μm~500μm、具体的には5μmと50μmとの間の範囲である。シンチレータ材料層17は、層17に入射するX線3から、近UV範囲、可視範囲、または近赤外線領域内とすることができる結像光を生じさせる。
【0106】
それぞれの実施形態に応じて、物体面8における物体視野8aを変換視野14に結像する(image)ためのさらなるX線光学系が存在することができる。
【0107】
結像光学系10は、基準軸とも呼ばれる光軸18を有する。レンズおよび/またはミラーとすることができる結像光学系10の光学構成要素は、このような基準軸を基準にして少なくともある程度の対称性を示し、具体的にはそのような基準軸を基準にして回転対称性を示すことができる。結像光学系10の概略図では、これらの光学構成要素のうちの2つ18a、18bがきわめて概略的に示されている。
【0108】
図3において、変換視野14と検出視野16との間の結像光路が、シンチレータ層17からの3つの異なる起点22、23、24から生じる例示の光線19、20、21によって示されている。光線19、20、21の例として、2つの周辺光線と主光線19c、20c、21cが示されている。結像光学系10内の結像光路の主光線または主結像光線19c、20c、21cは、シンチレータ層17のそれぞれの起点22、23、24から発する光束の中心光線と定義される。あるいは、そのような主結像光線19c、20c、21cは、主結像光エネルギーの方向を持つ光線と定義することができる。
【0109】
起点22は、入射X線3からシンチレータ層17への例示のX線25の入射点に位置する。起点23は、X線25の視野面15との交差点、具体的にはシンチレータ層17のz方向範囲の中央に位置する。起点24は、シンチレータ層17からのX線25の出射点に位置する。
【0110】
図3に示すビーム路において、X線25は光軸18に対して角度Aで変換視野14に入射する。このような角度は、0度から80度の間の範囲とすることができる。その結果、通例、異なる起点22~24は異なるx座標と、当然ながら異なるz座標も有する。
【0111】
結像光学系10は、結像光学系10の瞳面27に配置された瞳絞り26をさらに含む。瞳絞り26は、シンチレータ層17の異なる起点から生じるそれぞれの光束の周辺光線の方向を画定する。主光線19c、20c、21cは共線的に進む。
【0112】
瞳絞り26の絞り開口28の中心Cは、光軸18を基準にして偏心距離DDに配置される。
【0113】
絞り開口28は結像光学系10の瞳を画定する。瞳絞り26の絞り開口28によって画定される、結像光学系10の使用可能な物体側開口数(NA)、すなわち使用可能物体側NAは、0.4より大きい。図示の実施形態では、結像光学系10の使用可能物体側NAは、0.6になり得る。使用可能な物体側開口数は0.5とすることができる。
【0114】
偏心距離DDは、典型的な幅W、具体的には絞り開口28の直径の少なくとも10%である。このような比率DD/Wは、10%と50%との間の範囲、具体的には25%と35%との間の範囲とすることができる。
【0115】
瞳絞り26は駆動部29に取り付けられる。そのような駆動部29は、偏心駆動部として実現される。そのような偏心駆動部29は、瞳絞り26を瞳面27において平行移動させる機能を果たす。そのような平行移動は、x軸およびy軸またはx-y面の任意の方向に沿って行うことができる。偏心駆動部29は、検出システム1の制御デバイス30の制御ユニット30aに信号接続(図示せず)している(図1参照)。
【0116】
検出アセンブリ11は横変位駆動部31を含む。そのような横変位駆動部31は、X線源6を基準にして物体架台7のx方向および/またはy方向の相対的な横変位のための機能を果たす。図1および図2に示す実施形態では、横変位駆動部31はX線源6に接続されている。別の基本構成では、X線源6は、固定したままであり、物体2を保持する物体架台7と遮蔽絞り8bとを含む検出アセンブリ11のみが移動する。したがって、それぞれの実施形態に応じて、このような横変位駆動部は、上記に代えてまたは上記に加えて、具体的には物体架台7を保持するフレームに接続することができる。そのようなフレームは、結像光学機構9も保持することができ、具体的には検出アセンブリ11全体を保持することができる。
【0117】
制御デバイス30の制御ユニット30aはさらに、横変位駆動部31に信号接続(図示せず)されている。また、制御デバイス30の制御ユニット30aは、遮蔽絞り変位駆動部8gに信号接続(図示せず)されている。
【0118】
図2に、横変位駆動部31の作用を示す。図1と比較すると、X線源6は検出アセンブリ11に対して相対的に正のx方向に変位されている。上述のように、このようなx変位は、検出アセンブリ11全体を変位させる横変位駆動部(図示せず)によって、および/または、X線源6を変位させる横変位駆動部31によって生じさせることができる。物体架台7を横方向に変位させるその作用のため、横変位駆動部31は物体変位駆動部とも呼ばれる。この結果、図3に関して上述した角度Aに従ってX線25による物体2の斜めの照射が生じる。それに対して、図1によるX線源6の初期構成では、そのようなX線25がz方向に沿って進み、すなわち物体面8上に垂直に当たる。横変位駆動部31の作用によって、物体架台7は、物体面8において少なくとも1つの物体変位方向x/yに沿って光源6に対して相対的に移動可能である。横変位駆動部31を介した物体架台7のこのような可動性は、少なくとも1つの直線変位方向xおよび/またはyに沿うことができる。別の実施形態または追加の実施形態では、物体架台7は、光源6に対して相対的に少なくとも1つの円形方向に沿って、物体架台7に作用する横変位駆動部31またはそれぞれの横変位駆動部を介して移動可能とすることができる。図1においてそのような円形方向が概略的に矢印Cで表されている。代替または追加として、2次元における任意の経路に沿った移動が可能である。そのような任意の経路は3D経路に沿って進むこともできる。
【0119】
図2に概略的に示すように、検出アセンブリ11に対して相対的なX線源6の横方向移動によると、X線3の使用光路8eが検出システム1によって結像される(imaged)物体の部分に当たるように保証するために、遮蔽絞り変位駆動部8gを介して遮蔽絞り8bも横方向に変位させられる。このように行うことで、遮蔽絞り変位駆動部8gと横変位駆動部31とさらに瞳絞り変位駆動部29の移動が、制御デバイス30の制御ユニット30aによって同期される。
【0120】
変換視野14に入射するX線25が主光線19c、20c、21cと平行に進むように、一方の物体架台7および検出アセンブリ11のさらなる構成要素を基準にしたX線源6の横方向変位L(図2参照)と、他方の結像光学系10の光軸18を基準にした絞り開口28の中心Cの偏心距離DDとのバランスがとれる。
【0121】
制御ユニット30は、横変位駆動部31によって生じるX線源6の横方向変位に応じて、瞳絞り26の偏心駆動部29と遮蔽絞り変位駆動部8gとを制御する機能を果たす。このような対応する駆動は、(1)変位駆動部29、(2)遮蔽絞り変位駆動部8g、および(3)横変位駆動部31の三重になり、その結果、(1)遮蔽絞りアパーチャ8fの中心を通るX線25方向のバランスおよび(2)主光線19c~21c方向に平行なX線25方向のバランスがとれ、制御デバイス30のルックアップテーブルに格納することができる。
【0122】
検出システム1は以下のように動作させられる。
【0123】
図1による初期構成では、典型的なx線帯域のものとすることができ、10keVと160keVとの間とのエネルギーを有することができるX線が、変換視野14において物体像を生じさせ、シンチレータ層17によって、検出アレイ12による検出が可能な波長範囲、具体的には近UV範囲、可視範囲または近赤外線領域に変換される。このような変換結像光線、たとえば結像光線19~21は、次に結像光学系10を介して検出アレイ12上に結像され(imaged)、それによって検出視野16において変換視野14の像を生じさせ、それによって検出アレイ12上で物体2の像を生じさせる。
【0124】
独国特許出願公開第102018209570号に記載されている方法を使用して、上述のようにX線源6の横方向変位を介して異なる物体結像投影が使用される。このようにすることによって、物体2から変換視野14への変換誤差を最小にするために、結像光学系10の入射点すなわちシンチレータ層17と物体2の最も近い層41との間の極小距離が保証される。最小距離d(図1参照)は1mmの範囲とすることができる。この最小距離dのため、X線源6を検出アセンブリ11を基準にして横方向に変位させるときに、結像光学系10をX線25による斜め照射に適応化させるためにz軸を基準にした光軸18の傾斜が生じ得ない。この結果として上述の角度Aとなる。偏心瞳絞り26の使用により、検出視野16において生じる像は、それぞれ斜めの経路に沿ってシンチレータ層17に生じる結像光線19~21の起点(図3の起点22~24参照)を生じさせるそのような斜めに入射するX線25によって損なわれないように保証する。偏心距離DDと横方向変位Lとのバランスをとった結果として、図3の起点22~24のスポット像により例示されているように平均有効スポットサイズ19s、20s、21sが小さくなる。その結果としての右側視界における図3に示すように有効スポットサイズ32は小さい。このようなスポットサイズは、それぞれのエアリー円盤の中心からの第1のエアリー乗根の距離として計算することができる。具体的には、x次元において、絞り26の偏心絞り開口28のため、有効スポットサイズ32は共軸絞りによる非補正スポットサイズの1、2~3分の1、具体的には1.5分の1と2.5分の1との間、具体的には約2分の1の範囲である。
【0125】
たとえば、絞り26の絞り開口28によって画定された物体側開口数0.4を使用し、さらに400nmの結像光線19~21の波長を使用して、1μmの範囲(FWHMまたは半値全幅)のx方向とy方向の有効スポットサイズを得ることができる。ここでは、光軸18に対するX線25の45°の角度Aを使用した。
【0126】
また、遮蔽絞り8bの使用は、使用光路8eを介して物体2に照射するために必要なX線3だけが配置面8cを通過するように保証する。これにより、物体2と検出アセンブリ11の構成要素とにかかる無用なX線負荷を回避する。
【0127】
偏心瞳絞り26の狭窄なしに使用可能となり得る結合光学系10の公称物体側開口数(NA)は、絞り開口28によって画定される物体側開口数よりも大きい。たとえば、使用可能な物体側開口数が0.6となる絞り開口28の幅Wの場合、さらに、20度になる角度Aの場合、結像光学系10のそのような公称物体側開口数は、(サイン20度=0.34)0.6+0.34、すなわち0.94である。
【0128】
液浸結像光学系10を使用してより大きい公称物体側開口数も可能である。そのようなさらなる結像光学系の例および参照は、米国特許第7,057,187号に示されており、その内容全体が参照により組み込まれる。たとえば、結像光学系10の公称物体側開口数は最大1.9とすることができる。
【0129】
米国特許第7,057,187号はさらに、シンチレータ層17に使用することができるシンチレータ材料の例を示している。好ましい材料は、屈折率1.95を有するCsIである。1.50と2.20との間の屈折率を有するその他のシンチレータ材料も使用可能である。
【0130】
シンチレータ層17の考えられるシンチレータ材料は、NaI:Tl、CsI:Tl、CsI:Na、CsI、BaF2、CeF3、BGO、PWO:Y、LSO/LYSO、またはCsPbBr3およびCsPbI3などのペロブスカイトである。
【0131】
図4に、上述の結像光学機構9の代替として使用することができる結像光学機構35のさらなる例を示す。具体的に図1図3に関して上述したものと一致する構成要素および機能は、同じ参照番号で示し、再度詳細には説明しない。
【0132】
図4の実施形態では、瞳絞り26の駆動部29が、絞りを瞳面27に対して垂直に平行移動させるための軸方向駆動部として実現される。
【0133】
サンプル2、たとえば異なる密度の領域または構造体2aを含む半導体サンプルにX線放射3が照射される。X線放射3はX線源6から発する。X線源6は実X線源6であるか、または仮想X線源6、たとえば中間焦点として構成可能である。X線源6から、X線3の共心光束が伝播し、サンプル2を照射している。X線3は、一部が偏向されず、シンチレータ層17に当たらずに、サンプル2に吸収されるかまたはサンプル2を横断する。シンチレータ層17は、X線3をたとえば可視光に変換する。多くのx線光子を可視光に変換するために、シンチレータ17は、約1μm~500μmの最小厚さを有する。このようなシンチレータ層17の厚さは、図4のレンズによって概略的に示されている結像光学系10の開口数に依存する。シンチレータ層17の厚さは、数レイリー単位である必要がある。典型的には、シンチレータ層17の厚さは10μmと200μmとの間で選択される。
【0134】
図1図3の実施形態を参照しながら上記で示した説明に加えて、シンチレータ17の有限の厚さにより、十分な数のX線3が可視光に変換されるように維持される。また、シンチレータ17内の励起領域は、厚いシンチレータ17内部のX線軌道に沿って細長く、したがって、横方向位置に応じてシンチレータ17内部で異なる向きまたは傾斜角度を有する。励起領域からの光の光子が結像光学系10によって検出アレイ12の検出視野16上に結像される(imaged)。結像光学系10は、シンチレータ17の拡大像を検出アレイ12上に形成するように構成されている。
【0135】
本発明の一実施形態によると、結像光学系10のテレセントリシティ特性は、X線源6から発するX線3の投影方向に従って設定される。結像光学系10のテレセントリシティ特性は、X線源6の像35aが結像光学系10によって形成される場合は、その像35aが、テレセントリシティ絞りとして機能する瞳絞り26の中心に形成されるように調整される。テレセントリシティ特性とは、ここではシンチレータ17における主光線19c、20c、21cの方向を一般に表すが、この方向は数学的な意味ではテレセントリックではない場合がある。主光線19c、20c、21cの光束は共心とすることができる。
【0136】
図4の実施形態によると、結像光学系10のテレセントリシティ特性は、主光線19c、20c、21cが仮想起点または主光線19c、20c、21cの交差点としてx線源6による共心光束を形成するように調整される。主光線19c、20c、21cは、アパーチャ8fの、すなわち絞り開口28の中心位置においてアパーチャ絞り26と交差する光線である。
【0137】
X線3の投影方向に従って配置された主光線19c、20c、21cのこの構成により、X線3の投影方向に沿った励起領域の像が高解像度で得られる。結像光学系10によって結像された(imaged)結像ビーム束10a、10bが図4に例示されている。
【0138】
X線3の投影方向に従った主光線19c、20c、21cの配置は、主光線19c、20c、21cの共心光束のために特に設計された結像光学系10の実施形態によって実現可能である。一例では、結像光学系10は、たとえば、視野面15、すなわちシンチレータ材料の層17の配置面の近傍において主光線19c、20c、21cのテレセントリシティ特性を変更するように構成されたズーム系などの可動光学素子によって主光線特性を調整するための手段を含む。図4の例では、可動瞳絞り26によって主光線19c、20c、21cのテレセントリシティ特性の変形が得られる。図4の例では、可動瞳絞り26は、軸方向駆動部29を介して光軸18に沿って移動可能であり、それによって主光線特性がX線源6の軸方向距離に応じて変更される。この例では駆動部29は瞳絞り26を平行移動させるための軸方向駆動部である。
【0139】
図4で、瞳26は瞳面27を基準にして軸方向に変位した単心絞り位置に示されている。瞳絞り26がこのような単心絞り位置から(すなわち面36から瞳面27に)平行移動されると、瞳絞り26のテレセントリック絞り位置が得られる。
【0140】
結像光学系10による光学結像の解像度は、図1図4による瞳絞り26の代わりに環状瞳絞り37を使用することによってさらに向上させることができる。このような一例を図5に示す。具体的に図1図4を参照しながら上述したものと一致する構成要素および機能は、同じ参照番号で示し、再度詳細には説明しない。
【0141】
環状瞳絞り37の使用は、結像ビーム束10a、10bを環状ビーム束に限定し、環状ビーム束は、視野のより深い深度、したがってより高い横方向解像度でシンチレータ17の細長い励起領域による結像を可能にする。環状瞳絞り37は、図5に示すように、駆動部29によって駆動される軸方向駆動可能絞りとして実現される。
【0142】
それぞれの絞り8b、26、37は交換可能に実現することができ、光学結像光学系10は、たとえば円形および環状絞りを含むいくつかの交換可能な可動絞りを備えて構成することができる。
【0143】
別の例では、可動絞りは光軸から横方向に変位可能であり、それによって主光線特性が結像光学系10の光軸を基準にしたX線源の軸方向距離に応じて変更される。一例を図6に示す。具体的に図1図5を参照しながら上述したものと一致する構成要素および機能は、同じ参照番号で示し、再度詳述はしない。
【0144】
結像光学機構35の図6の実施形態では、瞳絞り37が駆動部29によって光軸18を基準にして偏心された位置に駆動され、さらに瞳面27を基準にして軸方向に変位させられる。図6の実施形態では、駆動部29は偏心駆動ユニットと、さらに軸方向駆動ユニットを含む。
【0145】
このような偏心駆動部の機能に関して、具体的には図1図3の実施形態に関して上記で示した説明を参照する。
【0146】
図4および図5の実施形態では、結像光学系10は単一のレンズによって簡略化されて示されている。結像光学系10はいくつかのレンズ素子またはレンズ素子のいくつかのグループを含むことができ、または、光学構成要素、たとえば顕微鏡レンズおよびチューブレンズのいくつかのサブシステムを含むことができることが理解されよう。結像光学系10は、結像光学系10の倍率を変える機能を果たすズーム系を含むことができる。
【0147】
結像光学系10は、検出器アレイ12またはシンチレータ層17の近傍に配置された、少なくとも視野レンズ40をさらに含むことができる。図6の例では、視野レンズ40は検出アレイ12の近傍に配置されている。視野レンズ40により、像センサーを基準にした入射角を小さくすることができる。一例では、視野レンズ40はそれぞれの偏心駆動部41を介して横方向に変位可能なように構成される。これにより、(結像光学系10の光軸18を基準にした)軸外X線源位置による主光線特性を補償することができる。
【0148】
本明細書には多くの実装形態の詳細が含まれるが、これらは本発明の範囲または特許請求可能なものに対する限定とも解釈されるべきではなく、むしろ本発明の特定の実施形態に固有の特徴の説明と解釈されるべきである。別々の実施形態の文脈で本明細書に記載されている特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施形態の文脈で記載されている様々な特徴は、複数の実施形態において別々に、または任意の適切なサブコンビネーションで実施することもできる。上述の実施形態における様々なシステム構成要素の分離は、そのような分離がすべての実施形態において必要であるものと解釈されるべきではない。また、上記では特徴は特定の組合せで作用するものとして説明され、最初にそのようなものとして特許請求されている場合があるが、特許請求される組合せのうちの1つ以上の特徴が、場合によってはその組合せから除外可能であり、特許請求される組合せはサブコンビネーションまたはサブコンビネーションの変形を対象とし得る。
【0149】
以上、本発明の特定の実施形態について説明した。他の実施形態も以下の特許請求の範囲に含まれる。さらに、特許請求の範囲に記載されている動作は異なる順序で行うことができ、その場合でも望ましい結果が得られる。
図1
図1A
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-04-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線照射された物体を結像する(image)ための結像光学機構であって、
- 結像光路を介して視野面における変換視野を検出面における検出視野に結像する(image)結像光学系と、
- 前記変換視野に配置されたシンチレータ材料の層と、
- 前記結像光学系の瞳面に配置された絞りと、を含み、
- 前記結像光学系が光軸を有し、
- 前記絞りの絞り開口の中心が前記光軸を基準にして偏心距離に配置されている、結像光学機構。
【請求項2】
前記偏心距離が前記絞り開口の幅の少なくとも10%である、請求項1に記載の結像光学機構。
【請求項3】
前記絞りが、前記瞳面において前記絞りを平行移動させるための駆動部に取り付けられている、請求項1または2に記載の結像光学機構。
【請求項4】
前記絞り開口によって画定される前記結像光学系の物体側開口数が0.4より大きい、請求項1または2に記載の結像光学機構。
【請求項5】
前記結像光学機構が主光線特性を調整するための手段をさらに含み、前記手段が可動光学素子または前記絞りを軸方向に移動させる手段のいずれかを含む、請求項1または2に記載の結像光学機構。
【請求項6】
前記絞りが環状瞳絞りである、請求項1または2に記載の結像光学機構。
【請求項7】
請求項1または2に記載の結像光学機構を含む検出アセンブリであって、
- 前記結像光学系の前記検出視野に配置された検出アレイと、
- 前記結像光学系を介して結像される(imaged)物体を保持するための物体架台と、をさらに含む、検出アセンブリ。
【請求項8】
請求項7に記載の検出アセンブリを含み、X線源をさらに含む、検出システム。
【請求項9】
前記X線源を基準にした前記物体架台の相対的横方向変位のための横変位駆動部を有する、請求項8に記載の検出システム。
【請求項10】
- 前記物体架台を基準にした前記X線源の横方向変位と、
- 前記結像光学系の前記光軸を基準にした前記絞り開口の前記中心の前記偏心距離とが、
前記変換視野に入射するX線が前記結像光路内の結像光の主結像光線に対して平行に進むようにバランスがとれる、請求項9に記載の検出システム。
【請求項11】
前記変換視野に入射する前記X線と前記結像光学系の前記光軸との間の角度が0度から80度の間である、請求項8に記載の検出システム。
【請求項12】
前記瞳面において絞りを平行移動させるための偏心駆動部および/または軸方向駆動部と、前記偏心駆動部および/または前記軸方向駆動部および前記横変位駆動部と信号接続する制御デバイスとをさらに含む、請求項9に記載の検出システム。
【請求項13】
請求項8に記載の検出システムを使用するX線検査方法であって、前記絞りの前記絞り開口の前記偏心距離が、前記結像光学系の前記変換視野へのX線の斜めまたは傾斜入射の角度に合わせて適応化される、X線検査方法。
【請求項14】
前記絞りが、前記絞りを前記瞳面において平行移動させるための偏心駆動部および/または軸方向駆動部に取り付けられている、請求項2に記載の結像光学機構。
【請求項15】
前記絞り開口によって画定される前記結像光学系の物体側開口数が0.4より大きい、請求項2に記載の結像光学機構。
【請求項16】
前記偏心距離が前記絞り開口の幅の少なくとも10%である、請求項7に記載の検出アセンブリ。
【請求項17】
前記絞りが、前記絞りを軸方向または横方向のうちの少なくとも一方に平行移動させるための駆動部に取り付けられている、請求項7に記載の検出アセンブリ。
【請求項18】
前記偏心駆動部の動作と前記横変位駆動部の動作との間の依存関係に関するデータを格納するルックアップテーブルを含み、
前記制御デバイスが前記偏心駆動部と前記横変位駆動部とを制御するために前記ルックアップテーブルに格納された前記データを使用するように構成されている、請求項12に記載の検出システム。
【請求項19】
前記変換視野に入射するX線が前記結像光路内の結像光の主結像光線に対して平行に進むように、前記物体架台を基準にした前記X線源の横方向変位と前記結像光学系の前記光軸を基準にした前記絞り開口の前記中心の前記偏心距離とのバランスをとることを含む、請求項13に記載のX線検査方法。
【請求項20】
前記偏心駆動部および/または前記軸方向駆動部の動作と前記横変位駆動部の動作との間の依存関係に関するデータを格納するルックアップテーブルからデータを読み出すことと、
前記物体架台を基準にした前記X線源の前記横方向変位と前記結像光学系の前記光軸を基準にした前記絞り開口の前記中心の前記偏心距離とのバランスをとるために、前記ルックアップテーブルからの前記データを使用することとを含む、請求項13に記載のX線検査方法。
【請求項21】
前記変換視野に入射する前記X線と前記結像光学系の前記光軸との間の角度が0度から80度の間である、請求項13に記載のX線検査方法。
【請求項22】
横変位駆動部を使用して前記X線源を基準にした前記物体架台の相対的横方向変位を行うことを含む、請求項13に記載のX線検査方法。
【国際調査報告】