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特表2024-534817重合体組成物、その製造方法、それを含むディップ成形用ラテックス組成物、および成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】重合体組成物、その製造方法、それを含むディップ成形用ラテックス組成物、および成形品
(51)【国際特許分類】
   C08F 236/12 20060101AFI20240918BHJP
   C08L 13/02 20060101ALI20240918BHJP
   C08L 9/04 20060101ALI20240918BHJP
   B29C 41/14 20060101ALI20240918BHJP
   C08F 236/20 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C08F236/12
C08L13/02
C08L9/04
B29C41/14
C08F236/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510528
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 KR2022013808
(87)【国際公開番号】W WO2023043234
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0125033
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヨン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン-ウ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、チョン-ス
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソン-ヨル
【テーマコード(参考)】
4F205
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4F205AA46
4F205AC05
4F205AG06
4F205AH70
4F205GA08
4F205GB01
4F205GF01
4F205GN29
4J002AC072
4J002AC101
4J002GB01
4J002GC00
4J002HA07
4J100AJ02R
4J100AM02Q
4J100AS02P
4J100CA05
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA25
4J100EA07
4J100FA04
4J100FA20
4J100HA31
4J100HB20
4J100JA51
4J100JA60
(57)【要約】
本発明は、ディップ成形用ラテックス組成物のラテックス安定剤として適用可能な重合体組成物、その製造方法、それを含むラテックス安定性が改善されたディップ成形用ラテックス組成物、およびそれから成形され、着用感および引張特性が改善された成形品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒に分散した重合体を含み、
前記重合体は、共役ジエン系単量体単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体単位、およびエチレン性不飽和酸単量体単位を含み、
前記重合体は、重量平均分子量が5,000g/mol以上50,000g/mol以下であり、ガラス転移温度が-34℃以上33℃以下である、重合体組成物。
【請求項2】
前記溶媒は、水系溶媒である、請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項3】
前記重合体は、前記共役ジエン系単量体単位40重量%以上75重量%以下、前記エチレン性不飽和ニトリル系単量体単位10重量%以上50重量%以下、および前記エチレン性不飽和酸単量体単位10重量%以上50重量%以下を含む、請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項4】
前記重合体は、重量平均分子量が7,000g/mol以上46,000g/mol以下である、請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項5】
前記重合体は、ガラス転移温度が-28℃以上24℃以下である、請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項6】
前記重合体組成物は、25℃のpHが7.0以上10.0以下である、請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項7】
溶媒中で、共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル系単量体、およびエチレン性不飽和酸単量体を乳化重合し、重合体を含む重合体ラテックスを製造するステップ(S10)を含み、
前記(S10)ステップで重合した重合体は、重量平均分子量が5,000g/mol以上50,000g/mol以下であり、ガラス転移温度が-34℃以上33℃以下である、重合体組成物の製造方法。
【請求項8】
前記(S10)ステップの乳化重合は、全単量体の量100重量部に対して分子量調節剤を0.8重量部以上8.0重量部以下の量で投入して行う、請求項7に記載の重合体組成物の製造方法。
【請求項9】
前記(S10)ステップで製造された重合体ラテックスにpH調節剤を投入するステップ(S20)と、
前記(S20)ステップでpHが調節された重合体ラテックスをエマルジョン相で得るステップ(S30)と、を含む、請求項7に記載の重合体組成物の製造方法。
【請求項10】
カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス、および請求項1~6のいずれか一項に記載の重合体組成物を含み、
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含み、
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、共役ジエン系単量体単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体単位、およびエチレン性不飽和酸単量体単位を含む、ディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項11】
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの固形分基準100重量部に対して前記重合体組成物を固形分基準で1重量部以上15重量部以下含む、請求項10に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項12】
請求項10に記載のディップ成形用ラテックス組成物由来層を含む成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2021年9月17日付けの韓国特許出願第10-2021-0125033号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、ディップ成形用ラテックス組成物のラテックス安定剤として適用可能な重合体組成物、その製造方法、それを含むラテックス安定性が改善されたディップ成形用ラテックス組成物、およびそれから成形され、着用感および引張特性が改善された成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、産業用、医療用、および食品用手袋や、風船、コンドームなどの伸縮性を必要とする製品の原料として天然ゴムが主に用いられてきた。しかし、近年、天然ゴムが一部のユーザに深刻なタンパク質アレルギーを引き起こす副作用が起こるため、天然ゴムに代わってニトリル系ゴムに代替されている。ニトリル系ゴムは、高い耐薬品性を有しており、特に有機溶剤を扱うユーザが使用する作業用手袋や、医療用および食品用手袋に多く用いられている。
【0004】
また、近年、天然ゴムの不安定な需給により、多くの手袋製造会社が天然ゴム手袋の生産ラインをニトリル系ゴム手袋の生産ラインに切り替えており、安全性に対する認識が高まるにつれ、ニトリル系ゴムから製造された使い捨て手袋の使用が継続的に増加している傾向にある。
【0005】
このようなニトリル系ゴム手袋は、一般的にディップ成形用ラテックスからディップ成形により製造されている。この際、ディップ成形用ラテックスの安定性が低い場合、凝固物が発生し、発生した凝固物は最終的に製造されたディップ成形品の不良率を増加させ、生産性低下の原因となり、深刻な場合にはディップ成形自体が不可能になるという問題がある。
【0006】
特に、冬季のように温度が零下レベルに低下する場合、このようなディップ成形用ラテックスの安定性が急激に低下し、このため、貯蔵中のディップ成形用ラテックスに凝固物および沈殿物の発生が増加する。したがって、ディップ成形用ラテックスの貯蔵安定性はもちろん、低温安定性を向上させるための方策が求められている。
【0007】
一方、ディップ成形用ラテックスから製造されたディップ成形品であるニトリル系ゴム手袋は、天然ゴムから製造された手袋に比べて柔らかさ(softness)に劣るという欠点がある。これは、手袋着用時の着用感低下の原因となり、特に手術用手袋として利用する場合、天然ゴム手袋を十分に代替できていない状況である。したがって、手袋の柔らかさを向上させるための方策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】KR10-2014-0053859A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上記の発明の背景となる技術で述べた問題を解決するために、ディップ成形用ラテックス組成物の貯蔵安定性および低温安定性を向上させることはもちろん、それから成形された成形品の柔らかさを向上させて着用感を改善することである。
【0010】
すなわち、本発明は、上記の従来技術の問題を解決するためになされたものであり、ディップ成形用ラテックス組成物の貯蔵安定性および低温安定性を向上させるために、ディップ成形用ラテックス組成物のラテックス安定剤として適用可能な重合体組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、前記重合体組成物を含むことで、ラテックス安定性、特に貯蔵安定性および低温安定性が向上したディップ成形用ラテックス組成物を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、前記ディップ成形用ラテックス組成物から成形され、柔らかさが改善され、着用感に優れ、引張特性に優れた成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明は、重合体組成物、重合体組成物の製造方法、ディップ成形用ラテックス組成物、および成形品を提供する。
(1)本発明は、溶媒に分散した重合体を含み、前記重合体は、共役ジエン系単量体単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体単位、およびエチレン性不飽和酸単量体単位を含み、前記重合体は、重量平均分子量が5,000g/mol以上50,000g/mol以下であり、ガラス転移温度が-34℃以上33℃以下である、重合体組成物を提供する。
【0014】
(2)本発明において、前記溶媒は、水系溶媒である、前記(1)に記載の重合体組成物を提供する。
【0015】
(3)本発明において、前記重合体は、共役ジエン系単量体単位40重量%以上75重量%以下、エチレン性不飽和ニトリル系単量体単位10重量%以上50重量%以下、およびエチレン性不飽和酸単量体単位10重量%以上50重量%以下を含む、前記(1)または(2)に記載の重合体組成物を提供する。
【0016】
(4)本発明において、前記重合体は、重量平均分子量が7,000g/mol以上46,000g/mol以下である、前記(1)~(3)のいずれか一項に記載の重合体組成物を提供する。
【0017】
(5)本発明において、前記重合体は、ガラス転移温度が-28℃以上24℃以下である、前記(1)~(4)のいずれか一項に記載の重合体組成物を提供する。
【0018】
(6)本発明において、前記重合体組成物は、25℃のpHが7.0以上10.0以下である、前記(1)~(5)のいずれか一項に記載の重合体組成物を提供する。
【0019】
(7)本発明は、溶媒中で、共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル系単量体、およびエチレン性不飽和酸単量体を乳化重合し、重合体を含む重合体ラテックスを製造するステップ(S10)を含み、前記(S10)ステップで重合した重合体は、重量平均分子量が5,000g/mol以上50,000g/mol以下であり、ガラス転移温度が-34℃以上33℃以下である、重合体組成物の製造方法を提供する。
【0020】
(8)本発明において、前記(S10)ステップの乳化重合は、全単量体の量100重量部に対して分子量調節剤を0.8重量部以上8.0重量部以下の量で投入して行う、前記(7)に記載の重合体組成物の製造方法を提供する。
【0021】
(9)本発明は、前記(S10)ステップで製造された重合体ラテックスにpH調節剤を投入するステップ(S20)と、前記(S20)ステップでpHが調節された重合体ラテックスをエマルジョン相で得るステップ(S30)と、を含む、前記(7)または(8)に記載の重合体組成物の製造方法を提供する。
【0022】
(10)本発明は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス、および前記(1)~(6)のいずれか一項に記載の重合体組成物を含み、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含み、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、共役ジエン系単量体単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体単位、およびエチレン性不飽和酸単量体単位を含む、ディップ成形用ラテックス組成物を提供する。
【0023】
(11)本発明は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの固形分基準100重量部に対して前記重合体組成物を固形分基準で1重量部以上15重量部以下含む、前記(10)に記載のディップ成形用ラテックス組成物を提供する。
【0024】
(12)本発明は、前記(10)または(11)に記載のディップ成形用ラテックス組成物由来層を含む成形品を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る重合体組成物は、ディップ成形用ラテックス組成物のラテックス安定剤として適用可能であり、それを含むディップ成形用ラテックス組成物のラテックス安定性、特に貯蔵安定性および低温安定性を向上させることができる。
また、本発明に係る成形品は、前記ディップ成形用ラテックス組成物から成形され、柔らかさが改善され、着用感に優れ、引張特性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をより詳細に説明する。
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0027】
本発明で用いられる「単量体単位」という用語は、単量体に起因する成分、構造、またはその物質自体を指すものであってもよく、具体的な例として、重合体の重合時、投入される単量体が重合反応に参加して重合体中で形成する繰り返し単位を意味し得る。
【0028】
本発明で用いられる「重合体」という用語は、1種の単量体から重合して形成された単独重合体(homopolymer)、および2種の単量体から共重合して形成された共重合体(copolymer)の両方を含む意味であってもよい。
【0029】
本発明で用いられる「ラテックス」および「エマルジョン」という用語は、重合により重合した重合体または共重合体が水に分散した形態で存在することを意味し、具体的な例として、乳化重合により重合したゴム状の重合体またはゴム状の共重合体の微粒子がコロイド状態で水に分散した形態で存在することを意味し得、本発明では「ラテックス」および「エマルジョン」が互いに混用して用いられもよい。
【0030】
本発明で用いられる「組成物」という用語は、当該組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物だけでなく、当該組成物を含む材料の混合物を含む。
【0031】
本発明で用いられる「由来層」という用語は、重合体または共重合体から形成された層を指すものであってもよく、具体的な例として、ディップ成形品の製造時、重合体または共重合体がディップ成形型上で付着、固定、および/または重合し、重合体または共重合体から形成された層を意味し得る。
【0032】
本発明は、ディップ成形用ラテックス組成物のラテックス安定剤として適用可能な重合体組成物を提供する。
本発明の一実施形態によると、前記重合体組成物は、アルカリ溶解性重合体組成物であってもよく、具体的な例として、アルカリ溶解性エマルジョン重合体、すなわちアルカリ溶解性樹脂(ASR;alkali soluble resin)であってもよい。したがって、前記重合体組成物は、ラテックス状態で存在することができる。
【0033】
本発明の一実施形態によると、前記重合体組成物は、溶媒に分散した重合体を含み、前記重合体は、共役ジエン系単量体単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体単位、およびエチレン性不飽和酸単量体単位を含み、前記重合体は、重量平均分子量が5,000g/mol以上50,000g/mol以下であり、ガラス転移温度が-34℃以上33℃以下であってもよい。
【0034】
本発明の一実施形態によると、前記重合体組成物は、ラテックス状態で存在してもよく、これにより、重合体が溶媒に分散した形態で存在してもよい。前記重合体組成物は、後述するように、乳化重合により製造されてもよく、これにより、前記溶媒は、乳化重合時に使用可能な水系溶媒であってもよい。具体的な例として、前記水系溶媒は、水であってもよく、前記水は、イオン交換水または蒸留水であってもよい。
【0035】
本発明の一実施形態によると、前記重合体は、共役ジエン系単量体単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体単位、およびエチレン性不飽和酸単量体単位を含んでもよい。周知のアルカリ溶解性樹脂は、一般的にアクリレート系単量体を主単量体として含む。しかし、このようなアクリレート系単量体を含むアルカリ溶解性樹脂は、ディップ成形用ラテックス組成物に含まれたカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス中のカルボン酸変性ニトリル系共重合体との相溶性が低いため、ディップ成形用ラテックス組成物のラテックス安定剤として適用するには適さない。このような問題を解決するために、本発明の重合体は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体と同一の単量体または同一系の単量体に由来する単量体単位を含むことを特徴とする。これにより、ディップ成形用ラテックス組成物のラテックス安定剤として用いるのに好適であることはもちろん、成形品の着用感と引張特性などの機械的物性を同時に向上させることができる。
【0036】
本発明の一実施形態によると、前記共役ジエン系単量体単位を形成するための共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、およびイソプレンからなる群から選択された1種以上であってもよく、具体的な例として、1,3-ブタジエンまたはイソプレンであってもよく、より具体的な例として、1,3-ブタジエンであってもよい。
【0037】
本発明の一実施形態によると、前記エチレン性不飽和ニトリル系単量体単位を形成するエチレン性不飽和ニトリル系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロニトリル、およびα-シアノエチルアクリロニトリルからなる群から選択された1種以上であってもよく、具体的な例として、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルであってもよく、より具体的な例として、アクリロニトリルであってもよい。
【0038】
本発明の一実施形態によると、前記エチレン性不飽和酸単量体単位を形成するエチレン性不飽和酸単量体は、カルボキシル基、スルホン酸基、酸無水物基のような酸性基を含有するエチレン性不飽和単量体であってもよく、具体的な例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、およびフマル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸単量体;無水マレイン酸および無水シトラコン酸などのポリカルボン酸無水物;スチレンスルホン酸のようなエチレン性不飽和スルホン酸単量体;およびフマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、およびマレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和ポリカルボン酸部分エステル(partial ester)単量体からなる群から選択された1種以上であってもよく、より具体的な例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、およびフマル酸からなる群から選択された1種以上であってもよく、より具体的な例として、メタクリル酸であってもよい。前記エチレン性不飽和酸単量体は、重合時、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩などの塩の形態で用いられてもよい。
【0039】
本発明の一実施形態によると、前記重合体は、共役ジエン系単量体単位40重量%以上75重量%以下、エチレン性不飽和ニトリル系単量体単位10重量%以上50重量%以下、およびエチレン性不飽和酸単量体単位10重量%以上50重量%以下を含んでもよい。この範囲内で、本発明が目的とするガラス転移温度を満たし、着用感と引張特性とのバランスを維持することができる。
【0040】
本発明の一実施形態によると、前記重合体は、共役ジエン系単量体単位を40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、または60重量%以上含んでもよく、また、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、または60重量%以下含んでもよい。この範囲内で、ガラス転移温度を調節するとともに、重合体組成物を含むディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品の引張特性などの機械的物性を向上させることができる。
【0041】
本発明の一実施形態によると、前記重合体は、エチレン性不飽和ニトリル系単量体単位を10重量%以上、11重量%以上、12重量%以上、13重量%以上、14重量%以上、15重量%以上、16重量%以上、17重量%以上、18重量%以上、19重量%以上、または20重量%以上含んでもよく、また、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、24重量%以下、23重量%以下、22重量%以下、21重量%以下、または20重量%以下含んでもよい。この範囲内で、ガラス転移温度を調節するとともに、重合体組成物を含むディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品の着用感と引張特性などの機械的物性を同時に向上させることができる。
【0042】
本発明の一実施形態によると、前記重合体は、エチレン性不飽和酸単量体単位を10重量%以上、11重量%以上、12重量%以上、13重量%以上、14重量%以上、15重量%以上、16重量%以上、17重量%以上、18重量%以上、19重量%以上、または20重量%以上含んでもよく、また、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、24重量%以下、23重量%以下、22重量%以下、21重量%以下、または20重量%以下含んでもよい。この範囲内で、ガラス転移温度を調節するとともに、重合体組成物を含むディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品の着用感と引張特性などの機械的物性を同時に向上させることができる。
【0043】
本発明の一実施形態によると、前記重合体は、重量平均分子量が5,000g/mol以上50,000g/mol以下であってもよい。具体的な例として、前記重合体は、重量平均分子量が5,000g/mol以上、5,500g/mol以上、6,000g/mol以上、6,500g/mol以上、7,000g/mol以上、7,500g/mol以上、8,000g/mol以上、8,500g/mol以上、9,000g/mol以上、9,500g/mol以上、10,000g/mol以上、10,500g/mol以上、11,000g/mol以上、11,500g/mol以上、または12,000g/mol以上であってもよく、また、50,000g/mol以下、49,000g/mol以下、48,000g/mol以下、47,000g/mol以下、46,000g/mol以下、45,000g/mol以下、40,000g/mol以下、35,000g/mol以下、30,000g/mol以下、25,000g/mol以下、20,000g/mol以下、15,000g/mol以下、14,000g/mol以下、13,000g/mol以下、または12,000g/mol以下であってもよい。ここで、重合体の重量平均分子量が上述した範囲よりも低い場合には、ディップ成形用ラテックス組成物中で前記重合体とカルボン酸変性ニトリル系共重合体との絡み合い(entanglement)が低くなり、ディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品の引張特性などの機械的物性が低下するという問題がある。また、重合体の重量平均分子量が上述した範囲よりも高い場合には、重合体組成物の製造時、粘度上昇によりラテックス安定性が低下し、実質的に重合を完了し難いため、重合体組成物の製造が不可能になるという問題がある。
【0044】
本発明の一実施形態によると、前記重合体は、ガラス転移温度が-34℃以上33℃以下であってもよい。具体的な例として、前記重合体は、ガラス転移温度が-34℃以上、-33℃以上、-32℃以上、-30℃以上、-29℃以上、-28℃以上、-27℃以上、-26℃以上、-25℃以上、-20℃以上、-15℃以上、-14℃以上、-13℃以上、または-12℃以上であってもよく、また、33℃以下、32℃以下、31℃以下、30℃以下、29℃以下、28℃以下、27℃以下、26℃以下、25℃以下、24℃以下、23℃以下、22℃以下、21℃以下、20℃以下、15℃以下、10℃以下、5℃以下、0℃以下、-5℃以下、-10℃以下、-11℃以下、または-12℃以下であってもよい。ここで、重合体のガラス転移温度が上述した範囲よりも低い場合には、ディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品の引張強度が低下するという問題があり、重合体のガラス転移温度が上述した範囲よりも高い場合には、ディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品が硬くなり、着用感が低下するという問題がある。したがって、重合体のガラス転移温度を上述した範囲内に調節することで、ディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品の着用感と引張特性などの機械的物性を同時に向上させることができる。この際、前記ガラス転移温度は、重合体の各単量体単位の含量、特に共役ジエン系単量体単位の含量から調節することができ、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を用いて測定することができる。
【0045】
本発明の一実施形態によると、前記重合体組成物は、25℃のpHが7.0以上10.0以下であってもよい。具体的な例として、前記重合体組成物は、25℃のpHが7.0以上、7.1以上、7.2以上、7.3以上、7.4以上、7.5以上、7.6以上、7.7以上、7.8以上、7.9以上、または8.0以上であってもよく、また、10.0以下、9.9以下、9.8以下、9.7以下、9.6以下、9.5以下、9.4以下、9.3以下、9.2以下、9.1以下、または9.0以下であってもよい。この範囲内で、ディップ成形用ラテックス組成物のラテックス安定性、特に貯蔵安定性および低温安定性をさらに向上させることができる。
【0046】
本発明は、前記重合体組成物を製造するための重合体組成物の製造方法を提供する。
本発明の一実施形態によると、前記重合体組成物の製造方法は、溶媒中で、共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル系単量体、およびエチレン性不飽和酸単量体を乳化重合し、重合体を含む重合体ラテックスを製造するステップ(S10)を含み、前記(S10)ステップで重合した重合体は、重量平均分子量が5,000g/mol以上50,000g/mol以下であり、ガラス転移温度が-34℃以上33℃以下であってもよい。
【0047】
本発明の一実施形態によると、前記溶媒、共役ジエン系単量体、エチレン性不飽和ニトリル系単量体、およびエチレン性不飽和酸単量体は上述したとおりである。
【0048】
本発明の一実施形態によると、前記(S10)ステップは、重合体組成物をラテックス状態に製造するためのステップであり、乳化重合により行われてもよい。この際、前記(S10)ステップの乳化重合は、乳化剤および分子量調節剤の存在下で行われてもよい。
【0049】
本発明の一実施形態によると、前記(S10)ステップの乳化重合は、乳化剤の存在下で行われてもよく、前記乳化剤は、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および両性界面活性剤からなる群から選択された1種以上であってもよく、具体的な例として、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、およびアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群から選択された1種以上のアニオン性界面活性剤であってもよい。
【0050】
本発明の一実施形態によると、前記(S10)ステップの乳化重合は、全単量体の含量100重量部に対して乳化剤を1.0重量部以上5.0重量部以下の含量で投入して行ってもよく、具体的な例として、乳化剤を1.0重量部以上、1.5重量部以上、2.0重量部以上、または2.5重量部以上の含量で投入して行ってもよく、また、5.0重量部以下、4.5重量部以下、4.0重量部以下、3.5重量部以下、3.0重量部以下、または2.5重量部以下の含量で投入して行ってもよい。この範囲内で、重合安定性にさらに優れることができる。
【0051】
本発明の一実施形態によると、前記(S10)ステップの乳化重合は、分子量調節剤の存在下で行われてもよく、前記分子量調節剤は、α-メチルスチレンダイマー;t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、およびオクチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、および臭化メチレンなどのハロゲン化炭化水素;およびテトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、およびジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどの硫黄含有化合物からなる群から選択された1種以上であってもよく、具体的な例として、t-ドデシルメルカプタンであってもよい。
【0052】
本発明の一実施形態によると、前記(S10)ステップの乳化重合は、全単量体の量100重量部に対して分子量調節剤を0.8重量部以上8.0重量部以下の量で投入して行ってもよく、具体的な例として、0.8重量部以上、0.9重量部以上、1.0重量部以上、1.5重量部以上、2.0重量部以上、2.5重量部以上、3.0重量部以上、または3.5重量部以上の含量で投入して行ってもよく、また、8.0重量部以下、7.5重量部以下、7.0重量部以下、6.5重量部以下、6.0重量部以下、5.5重量部以下、5.0重量部以下、4.5重量部以下、4.0重量部以下、または3.5重量部以下の量で投入して行ってもよい。この範囲内で、重合体の分子量を適切に調節し、粘度上昇により安定性が低下するのを防止するとともに、前記重合体とカルボン酸変性ニトリル系共重合体との絡み合い(entanglement)を向上させ、ディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品の引張特性などの機械的物性をさらに向上させることができる。
【0053】
本発明の一実施形態によると、前記(S10)ステップの乳化重合は、重合開始剤を投入することで重合が開始されてもよく、前記重合開始剤は、ラジカル開始剤であってもよく、具体的な例として、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、および過酸化水素などの無機過酸化物;t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p-メンタンヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノールパーオキサイド、およびt-ブチルパーオキシイソブチレートなどの有機過酸化物;およびアゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、およびアゾビスイソ酪酸メチルなどの窒素化合物からなる群から選択された1種以上であってもよく、具体的な例として、無機過酸化物であってもよく、より具体的な例として、過硫酸塩であってもよい。
【0054】
本発明の一実施形態によると、前記(S10)ステップの乳化重合は、全単量体の含量100重量部に対して重合開始剤を0.01重量部以上2.0重量部以下の含量で投入して行ってもよく、具体的な例として、0.01重量部以上、0.05重量部以上、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.4重量部以上、0.5重量部以上、0.6重量部以上、0.7重量部以上、0.8重量部以上、0.9重量部以上、または1.0重量部以上の含量で投入して行ってもよく、また、2.0重量部以下、1.9重量部以下、1.8重量部以下、1.7重量部以下、1.6重量部以下、1.5重量部以下、1.4重量部以下、1.3重量部以下、1.2重量部以下、1.1重量部以下、1.0重量部以下の含量で投入して行ってもよい。この範囲内で、重合速度を適したレベルに維持することができる。
【0055】
本発明の一実施形態によると、前記(S10)ステップの乳化重合時、重合転化率は、一定時間間隔で反応中の組成物から一定量の試料を採取し、試料中の固形分含量を測定した後、下記数式1により計算することができる。
【0056】
[数式1]
重合転化率(%)=[(Ms-Mo)/(Mp-M’o)]×100
【0057】
前記数式1中、Msは、乾燥された共重合体の重量であり、Moは、乳化剤と重合開始剤の重量の合計であり、Mpは、100%重合した共重合体の重量であり、M’oは、乳化剤と重合開始剤の重量の合計である。
【0058】
本発明の一実施形態によると、前記重合体組成物の製造方法は、前記(S10)ステップで製造された重合体ラテックスにpH調節剤を投入するステップ(S20)と、前記(S20)ステップでpHが調節された重合体ラテックスをエマルジョン状で得るステップ(S30)と、を含んでもよい。
【0059】
本発明の一実施形態によると、前記(S20)ステップは、前記(S10)ステップで製造された重合体ラテックスのpHを調節するためのステップであり、前記(S20)ステップにより、前記(S30)ステップから得られる前記重合体組成物の25℃のpHを7.0以上10.0以下に調節することができる。この際、前記pH調節剤は、塩基性化合物であってもよく、具体的な例として、水酸化アルカリ塩および/またはアンモニア水溶液であってもよく、より具体的な例として、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムであってもよい。
【0060】
本発明の一実施形態によると、前記(S30)ステップは、重合体ラテックスをエマルジョン状で得るステップであり、必要に応じて、未反応単量体および残留成分を除去するための脱臭ステップを含んで行われてもよい。前記(S30)ステップから得られた重合体組成物は、アルカリ溶解性重合体組成物であってもよく、具体的な例として、アルカリ溶解性エマルジョン重合体、すなわちアルカリ溶解性樹脂(ASR;alkali soluble resin)であってもよい。これにより、前記重合体組成物は、ラテックス状態で存在することができる。
【0061】
本発明は、ディップ成形により成形品を製造するためのディップ成形用ラテックス組成物を提供する。
本発明の一実施形態によると、前記ディップ成形用ラテックス組成物は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスおよび前記重合体組成物を含み、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含み、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、共役ジエン系単量体単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体単位、およびエチレン性不飽和酸単量体単位を含んでもよい。
【0062】
本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、カルボン酸変性ニトリル系共重合体が溶媒に分散したラテックス状態で存在してもよく、前記溶媒は、水系溶媒であってもよい。具体的な例として、前記水系溶媒は、水であってもよく、前記水は、イオン交換水または蒸留水であってもよい。
【0063】
本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、上述したように、重合体と同一の単量体または同一系の単量体に由来する単量体単位を含んでもよく、具体的な例として、共役ジエン系単量体単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体単位、およびエチレン性不飽和酸単量体単位を含んでもよい。
【0064】
本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の前記共役ジエン系単量体単位を形成するための共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、およびイソプレンからなる群から選択された1種以上であってもよく、具体的な例として、1,3-ブタジエンまたはイソプレンであってもよく、より具体的な例として、1,3-ブタジエンであってもよい。この際、前記重合体の共役ジエン系単量体単位を形成する共役ジエン系単量体と、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の共役ジエン系単量体単位を形成する共役ジエン系単量体とは、互いに同一または異なってもよい。
【0065】
本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を35重量%~80重量%、40重量%~75重量%、または45重量%~70重量%含んでもよい。この範囲内で、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含むディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品が柔軟であり、着用感に優れるとともに、耐油性および引張強度に優れるという効果がある。
【0066】
本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の前記エチレン性不飽和ニトリル系単量体単位を形成するエチレン性不飽和ニトリル系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロニトリル、およびα-シアノエチルアクリロニトリルからなる群から選択された1種以上であってもよく、具体的な例として、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルであってもよく、より具体的な例として、アクリロニトリルであってもよい。この際、前記重合体のエチレン性不飽和ニトリル系単量体単位を形成するエチレン性不飽和ニトリル系単量体と、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体のエチレン性不飽和ニトリル系単量体単位を形成するエチレン性不飽和ニトリル系単量体とは、互いに同一または異なってもよい。
【0067】
本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、前記エチレン性不飽和ニトリル系単量体単位を20重量%~50重量%、20重量%~45重量%、または25重量%~40重量%含んでもよい。この範囲内で、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を含むディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品が柔軟であり、着用感に優れるとともに、耐油性および引張強度に優れるという効果がある。
【0068】
本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体の前記エチレン性不飽和酸単量体単位を形成するエチレン性不飽和酸単量体は、カルボキシル基、スルホン酸基、酸無水物基のような酸性基を含有するエチレン性不飽和単量体であってもよく、具体的な例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、およびフマル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸単量体;無水マレイン酸および無水シトラコン酸などのポリカルボン酸無水物;スチレンスルホン酸のようなエチレン性不飽和スルホン酸単量体;およびフマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、およびマレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和ポリカルボン酸部分エステル(partial ester)単量体からなる群から選択された1種以上であってもよく、より具体的な例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、およびフマル酸からなる群から選択された1種以上であってもよく、より具体的な例として、メタクリル酸であってもよい。前記エチレン性不飽和酸単量体は、重合時、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩などの塩の形態で用いられてもよい。この際、前記重合体のエチレン性不飽和酸単量体単位を形成するエチレン性不飽和酸単量体と、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体のエチレン性不飽和酸単量体単位を形成するエチレン性不飽和酸単量体とは、互いに同一または異なってもよい。
【0069】
本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体は、前記エチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位を0.1重量%~10重量%、0.5重量%~9重量%、または1重量%~8重量%含んでもよい。この範囲内で、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス組成物を含むディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品が柔軟であり、着用感に優れるとともに、引張強度に優れるという効果がある。
【0070】
本発明の一実施形態によると、前記ディップ成形用ラテックス組成物は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを用いてディップ成形を行うためのものであり、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスのpHを調節し、ディップ成形時に架橋を誘導するための架橋剤組成物を含んでもよい。この際、本発明に係る前記ディップ成形用ラテックス組成物は、前記重合体組成物をともに含むことで、ディップ成形用ラテックス組成物のラテックス安定性、特に貯蔵安定性および低温安定性を向上させることができる。
【0071】
本発明の一実施形態によると、前記ディップ成形用ラテックス組成物は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの固形分基準100重量部に対して前記重合体組成物を固形分基準で1重量部以上15重量部以下含んでもよい。具体的な例として、前記重合体組成物は、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの固形分基準100重量部に対して固形分基準で1重量部以上、2重量部以上、3重量部以上、4重量部以上、または5重量部以上の含量で含まれてもよく、また、15重量部以下、14重量部以下、13重量部以下、12重量部以下、11重量部以下、10重量部以下、9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、6重量部以下、または5重量部以下の含量で含まれてもよい。この範囲内で、ディップ成形用ラテックス組成物から成形された成形品の着用感と引張特性などの機械的物性を同時にさらに向上させることができる。
【0072】
本発明の一実施形態によると、前記架橋剤組成物は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体に対して、架橋反応により架橋剤由来の架橋部を形成するためのものであってもよい。
【0073】
本発明の一実施形態によると、前記架橋剤組成物は、加硫剤および加硫促進剤を含んでもよく、より具体的な例として、加硫剤、加硫促進剤、および酸化亜鉛を含んでもよい。
【0074】
本発明の一実施形態によると、前記加硫剤は、前記ディップ成形用ラテックス組成物を加硫させるためのものであり、硫黄であってもよく、具体的な例として、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、および不溶性硫黄などの硫黄であってもよい。前記加硫剤の含量は、ディップ成形用ラテックス組成物中のカルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含量100重量部(固形分基準)を基準として0.1重量部~10重量部、または1重量部~5重量部であってもよい。この範囲内で、加硫による架橋能力に優れるという効果がある。
【0075】
本発明の一実施形態によると、前記加硫促進剤は、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT、2-mercaptobenzothiazole)、2,2-ジチオビスベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド(MBTS、2,2-dithiobisbenzothiazole-2-sulfenamide)、N-シクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド(CBS、N-cyclohexylbenzothiasole-2-sulfenamide)、2-モルホリノチオベンゾチアゾール(MBS、2-morpholinothiobenzothiazole)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM、tetramethylthiuram monosulfide)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD、tetramethylthiuram disulfide)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC、zinc diethyldithiocarbamate)、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC、zinc di-n-butyldithiocarbamate)、ジフェニルグアニジン(DPG、diphenylguanidine)、およびジ-o-トリルグアニジン(di-o-tolylguanidine)からなる群から選択された1種以上であってもよい。前記加硫促進剤の含量は、ディップ成形用ラテックス組成物中のカルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含量100重量部(固形分基準)を基準として0.1重量部~10重量部、または0.5重量部~5重量部であってもよい。この範囲内で、加硫による架橋能力に優れるという効果がある。
【0076】
本発明の一実施形態によると、前記酸化亜鉛は、前記ディップ成形用ラテックス組成物中のカルボン酸変性ニトリル系共重合体のカルボキシ基などとイオン結合を行い、カルボン酸変性ニトリル系共重合体中、またはカルボン酸変性ニトリル系共重合体間のイオン結合により架橋部を形成するための架橋剤であってもよい。前記酸化亜鉛の含量は、ディップ成形用ラテックス組成物中のカルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含量100重量部(固形分基準)を基準として0.1重量部~5重量部、または0.5重量部~4重量部であってもよい。この範囲内で、架橋能力に優れ、ラテックス安定性に優れ、製造された成形品の引張強度および柔軟性に優れるという効果がある。
【0077】
本発明の一実施形態によると、前記ディップ成形用ラテックス組成物は、固形分含量(濃度)が5重量%~40重量%、8重量%~35重量%、または10重量%~33重量%であってもよい。この範囲内で、ラテックス輸送効率に優れ、ラテックスの粘度上昇を防止し、貯蔵安定性に優れるという効果がある。
【0078】
本発明の一実施形態によると、前記ディップ成形用ラテックス組成物は、25℃のpHが9~12、9~11、または9.5~10.5であってもよい。この範囲内で、ディップ成形品の製造時に加工性および生産性に優れるという効果がある。前記ディップ成形用ラテックス組成物のpHは、上述したpH調節剤の投入により調節されてもよい。
【0079】
本発明の一実施形態によると、前記ディップ成形用ラテックス組成物は、必要に応じて、二酸化チタンなどの顔料、シリカなどの充填剤、増粘剤、pH調節剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0080】
本発明は、成形品を提供する。
本発明の一実施形態によると、前記成形品は、ディップ成形用ラテックス組成物由来層を含んでもよい。前記成形品は、前記ディップ成形用ラテックス組成物をディップ成形して製造されたディップ成形品であってもよく、ディップ成形によりディップ成形用ラテックス組成物から形成されたディップ成形用ラテックス組成物由来層を含む成形品であってもよい。前記成形品を成形するための成形品の製造方法は、前記ディップ成形用ラテックス組成物を直接浸漬法、アノード(anode)凝着浸漬法、ティーグ(Teague)凝着浸漬法などにより浸漬させるステップを含んでもよく、具体的な例として、アノード凝着浸漬法により行わてもよく、この場合、均一な厚さのディップ成形品を得ることができるという利点がある。
【0081】
本発明の一実施形態によると、前記成形品の製造方法は、ディップ成形型に凝固剤を付着させるステップ(S100)と、前記凝固剤が付着したディップ成形型をディップ成形用ラテックス組成物に浸漬し、ディップ成形用ラテックス組成物由来層、すなわちディップ成形層を形成させるステップ(S200)と、前記ディップ成形層を加熱し、前記ディップ成形用ラテックス組成物を架橋させるステップ(S300)と、を含んでもよい。
【0082】
本発明の一実施形態によると、前記(S100)ステップは、ディップ成形型に凝固剤を形成させるために、ディップ成形型を凝固剤溶液に浸漬してディップ成形型の表面に凝固剤を付着させるステップであり、前記凝固剤溶液は、凝固剤を水、アルコール、またはこれらの混合物に溶解させた溶液であり、凝固剤溶液中の凝固剤の含量は、凝固剤溶液の全含量に対して5重量%~75重量%、5重量%~50重量%、または10重量%~40重量%であってもよい。前記凝固剤は、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、および塩化アルミニウムなどの金属ハライド;硝酸バリウム、硝酸カルシウム、および硝酸亜鉛などの硝酸塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、および酢酸亜鉛などの酢酸塩;および硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、および硫酸アルミニウムなどの硫酸塩からなる群から選択された1種以上であってもよく、具体的な例として、塩化カルシウムまたは硝酸カルシウムであってもよい。また、本発明の一実施形態によると、前記(S100)ステップは、ディップ成形型に凝固剤を付着させるために、ディップ成形型を凝固剤溶液に5秒以上浸漬して取り出した後、50℃~150℃で乾燥させるステップをさらに含んでもよい。
【0083】
本発明の一実施形態によると、前記(S200)ステップは、ディップ成形層を形成させるために、凝固剤を付着させたディップ成形型を本発明に係るディップ成形用ラテックス組成物に浸漬して取り出し、ディップ成形型にディップ成形層を形成させるステップであってもよい。また、本発明の一実施形態によると、前記(S200)ステップは、ディップ成形型にディップ成形層を形成させるために、前記浸漬時に浸漬を5秒以上行ってもよい。
【0084】
本発明の一実施形態によると、前記(S300)ステップは、ディップ成形品を得るために、ディップ成形型に形成されたディップ成形層を加熱して液体成分を蒸発させ、前記ディップ成形用ラテックス組成物を架橋させて硬化を行うステップであってもよい。この際、本発明に係るディップ成形用ラテックス組成物を用いる場合、ディップ成形用ラテックス組成物中に含まれた架橋剤組成物の加硫および/またはイオン結合による架橋が行われてもよい。また、本発明の一実施形態によると、前記加熱は、70℃~150℃で1分~10分間一次加熱した後、100℃~180℃で5分~30分間二次加熱して行われてもよい。この際、前記一次加熱後、二次加熱を行う前に、水または温水に10秒~10分間浸漬して浸出(leaching)する工程をさらに含んでもよい。
【0085】
本発明の一実施形態によると、前記成形品は、手術用手袋、検査用手袋、産業用手袋、および家庭用手袋などの手袋、コンドーム、カテーテル、または健康管理用品であってもよい。
【0086】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例について詳しく説明する。ただし、本発明は、種々の異なる形態で実現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0087】
実施例および比較例
実施例1
<重合体組成物の製造>
温度計、冷却器、窒素ガスの引込口、単量体、乳化剤、および重合開始剤を連続的に投入可能な引込口が設けられた10Lの高圧反応器を用いた。前記10Lの高圧反応器を窒素で置換した後、アクリロニトリル、1,3-ブタジエン、およびメタクリル酸の全含量100重量部を基準として、アクリロニトリル20重量部、1,3-ブタジエン60重量部、およびメタクリル酸20重量部からなる単量体混合物100重量部、乳化剤としてナトリウムドデシルベンゼンスルホネート2.5重量部、分子量調節剤としてt-ドデシルメルカプタン3.5重量部、およびイオン交換水250重量部を投入し、反応器の内部温度を40℃まで昇温させた。昇温完了後、重合開始剤として過硫酸カリウム1.0重量部を投入して重合を開始し、重合転化率が95%の時点でナトリウムジメチルジチオカルバメート1.0重量部を投入して重合を停止させ、重合体を含む重合体ラテックスを製造した。次に、前記重合体ラテックスに水酸化カリウムを添加して25℃のpHを8.5に調節し、脱臭工程を行って未反応単量体を除去し、重合体組成物を得た。
【0088】
<ディップ成形用ラテックス組成物の製造>
カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス(LG化学社、NL105)100重量部(固形分基準)に、上記で得られた重合体組成物5重量部(固形分基準)、3重量%濃度の水酸化カリウム水溶液2重量部、加硫剤(Akron dispersions社、BOSTEX 378)1.5重量部、加硫促進剤(Akron dispersions社、BOSTEX 497B)0.7重量部、酸化亜鉛(Akron dispersions、BOSTEX 422)1.5重量部、二酸化チタン(Akron dispersions社、BOSTEX 497D)1.0重量部、および再蒸留水を投入し、固形分含量が25重量%であり、25℃のpHが10であるディップ成形用ラテックス組成物を製造した。
【0089】
<ディップ成形品の製造>
18重量%の硝酸カルシウム、81.9重量%の水、0.1重量%の湿潤剤(Huntsman Corporation、Australia製、製品名Teric 320)を混合して凝固剤溶液を製造した。凝固剤溶液に手形状のセラミックモールドを10秒間浸漬して取り出した後、80℃で4分間乾燥して凝固剤を手形状のモールドに塗布した。
【0090】
次に、凝固剤が塗布された手形状のモールドを上記で得られたディップ成形用ラテックス組成物に10秒間浸漬して取り出した後、80℃で2分間乾燥し、水に30秒間浸漬して浸出した。再びモールドを110℃で20分間架橋させた後、架橋されたディップ成形層を手形状のモールドから剥がし、手袋状のディップ成形品を得た。
【0091】
実施例2
前記実施例1において、重合体組成物の製造時、アクリロニトリルを20重量部の代わりに15重量部、1,3-ブタジエンを60重量部の代わりに70重量部、メタクリル酸を20重量部の代わりに15重量部投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った重合体組成物を得、それを用いてディップ成形用ラテックス組成物およびディップ成形品を得た。
【0092】
実施例3
前記実施例1において、重合体組成物の製造時、アクリロニトリルを20重量部の代わりに35重量部、1,3-ブタジエンを60重量部の代わりに40重量部、メタクリル酸を20重量部の代わりに25重量部投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った重合体組成物を得、それを用いてディップ成形用ラテックス組成物およびディップ成形品を得た。
【0093】
実施例4
前記実施例1において、重合体組成物の製造時、t-ドデシルメルカプタンを3.5重量部の代わりに6.0重量部投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った重合体組成物を得、それを用いてディップ成形用ラテックス組成物およびディップ成形品を得た。
【0094】
実施例5
前記実施例1において、重合体組成物の製造時、t-ドデシルメルカプタンを3.5重量部の代わりに1.0重量部投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った重合体組成物を得、それを用いてディップ成形用ラテックス組成物およびディップ成形品を得た。
【0095】
実施例6
前記実施例1において、ディップ成形用ラテックス組成物の製造時、重合体組成物を5重量部(固形分基準)の代わりに10重量部投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行ってディップ成形品を得た。
【0096】
実施例7
前記実施例1において、ディップ成形用ラテックス組成物の製造時、重合体組成物を5重量部(固形分基準)の代わりに20重量部投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行ってディップ成形品を得た。
【0097】
実施例8
前記実施例1において、重合体組成物の製造時、分子量調節剤としてt-ドデシルメルカプタンを3.5重量部の代わりに7.5重量部投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った重合体組成物を得、それを用いてディップ成形用ラテックス組成物およびディップ成形品を得た。
【0098】
実施例9
前記実施例1において、重合体組成物の製造時、分子量調節剤としてt-ドデシルメルカプタンを3.5重量部の代わりに0.85重量部投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った重合体組成物を得、それを用いてディップ成形用ラテックス組成物およびディップ成形品を得た。
【0099】
実施例10
前記実施例1において、重合体組成物の製造時、アクリロニトリルを20重量部の代わりに13重量部、1,3-ブタジエンを60重量部の代わりに74重量部、メタクリル酸を20重量部の代わりに13重量部投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った重合体組成物を得、それを用いてディップ成形用ラテックス組成物およびディップ成形品を得た。
【0100】
実施例11
前記実施例1において、重合体組成物の製造時、アクリロニトリルを20重量部の代わりに33重量部、1,3-ブタジエンを60重量部の代わりに37重量部、メタクリル酸を20重量部の代わりに30重量部投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った重合体組成物を得、それを用いてディップ成形用ラテックス組成物およびディップ成形品を得た。
【0101】
比較例1
前記実施例1において、重合体組成物の製造時、アクリロニトリルを20重量部の代わりに35重量部、1,3-ブタジエンを60重量部の代わりに35重量部、メタクリル酸を20重量部の代わりに30重量部投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った重合体組成物を得、それを用いてディップ成形用ラテックス組成物およびディップ成形品を得た。
【0102】
比較例2
前記実施例1において、重合体組成物の製造時、アクリロニトリルを20重量部の代わりに10重量部、1,3-ブタジエンを60重量部の代わりに80重量部、メタクリル酸を20重量部の代わりに10重量部投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った重合体組成物を得、それを用いてディップ成形用ラテックス組成物およびディップ成形品を得た。
【0103】
比較例3
前記実施例1において、重合体組成物の製造時、t-ドデシルメルカプタンを3.5重量部の代わりに0.5重量部投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行ったが、重合時に粘度上昇によりラテックス安定性が低下し、重合体組成物を製造することができなかった。
【0104】
比較例4
前記実施例1において、重合体組成物の製造時、t-ドデシルメルカプタンを3.5重量部の代わりに10.0重量部投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った重合体組成物を得、それを用いてディップ成形用ラテックス組成物およびディップ成形品を得た。
【0105】
比較例5
前記実施例1において、ディップ成形用ラテックス組成物の製造時、重合体組成物を投入していないことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行ってディップ成形品を得た。
【0106】
実験例
実験例1
前記実施例1~11および比較例1~4で製造された重合体組成物に対し、重合体のガラス転移温度および重量平均分子量を以下のような方法で測定し、重合体組成物の製造時に投入された各単量体の組成、分子量調節剤の投入量、およびディップ成形用ラテックス組成物の製造時に投入された重合体組成物の投入量とともに下記表1~3に示した。
【0107】
*ガラス転移温度(Tg、℃):前記実施例1~11および比較例1~4で製造された重合体組成物を130℃のオーブンで1時間乾燥し、フィルム状の試料を準備した。準備した約1mgの試料に対し、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry)であるTA Instrument社製のDSC 2920を用いて、-70℃から70℃まで20℃/minの昇温速度で昇温しつつガラス転移温度を測定した。
【0108】
*重量平均分子量(Mw、g/mol):前記実施例1~11および比較例1~4で製造された重合体組成物を恒温恒湿室(25℃、相対湿度50%)で24時間乾燥して得られたフィルムをテトラヒドロフラン(THF)に溶解した後、テトラヒドロフランに溶解したゾル部分のみを得、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、gel permeation chromatography、Waters 2414 Refractive Index Detector with external column heater;Waters 1515 Isocractic pump、Waters 717 plus Autosampler)を用いて、下記の条件で重量平均分子量を測定した。
【0109】
-カラム:Agilent社製のPL gel Mixed-B
-溶媒:THF
-流速:1mL/min
-試料濃度:1mg/mL
-注入量:10μL
-カラム温度:40℃
-検出器:Waters 2414 Refractive Index Detector with external column heater
-Standard:ポリスチレン
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
前記表1~3に示すように、本発明に係る実施例1~11の重合体組成物の重合体は、本発明で限定する重量平均分子量およびガラス転移温度を示すことを確認することができた。
【0114】
これに対し、比較例1の重合体組成物の重合体は、ガラス転移温度が本発明で限定する範囲よりも高く、比較例2の重合体組成物の重合体は、ガラス転移温度が本発明で限定する範囲よりも低いことを確認することができた。
【0115】
比較例3の場合、本発明で限定する範囲よりも高い重量平均分子量を有する重合体を含む重合体組成物を製造しようとしたが、重合時に粘度上昇によりラテックス安定性が低下し、重合体組成物を製造できないことを確認することができた。
また、比較例4の重合体組成物の重合体は、重量平均分子量が本発明で限定する範囲よりも低いことを確認することができた。
【0116】
実験例2
前記実施例1~11および比較例1~5で製造されたディップ成形用ラテックス組成物の低温安定性と、ディップ成形品の引張強度、伸び率、およびモジュラスを以下のような方法で測定し、下記表4~6に示した。
【0117】
*低温安定性(ppm):カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス(LG化学社、NL105)100重量部(固形分基準)に前記実施例1~11および比較例1~5で製造された重合体組成物2重量部(固形分基準)を投入し、常温で2時間混合した。それを-5℃で24時間保管した後、生成された凝固物の含量の測定した。この際、測定された凝固物の含量が低いほど、低温安定性に優れることを意味する。
【0118】
*引張強度(MPa):各実施例および比較例で得られたたディップ成形品を用いて、ASTM D-412に準じてダンベル形状の試験片を作製した。その試験片を用い、ASTM D638に準じて、UTM(Universal Testing Machine)機器(Instron社製、モデル名:4466)を用いて、500mm/minのクロスヘッド速度で引っ張った後、試験片が切断される箇所を測定し、下記数式2により引張強度を計算した後、MPa単位で換算(1MPa=0.10197kgf/mm2)した。この際、計算された引張強度が高いほど、引張特性に優れることを意味する。
【0119】
[数式2]
引張強度(kgf/mm2)=ロード(load)値(kgf)/(厚さ(mm)×幅(mm))
【0120】
*伸び率(%):前記引張強度を測定するために製造された試験片を用い、ASTM D638に準じて、UTM(Universal Testing Machine)機器(Instron社製、モデル名:4466)を用いて、500mm/minのクロスヘッド速度で引っ張った後、試験片が切断される箇所を測定し、下記数式3により伸び率を計算した。この際、計算された伸び率が高いほど、引張特性に優れることを意味する。
【0121】
[数式3]
伸び率(%)=(伸び後の試験片の長さ/伸び前の試験片の長さ)×100
【0122】
*500%モジュラス(MPa):前記引張強度を測定するために製造された試験片を用い、ASTM D638に準じで、UTM(Universal Testing Machine)機器(Instron社製、モデル名:4466)を用いて、500mm/minのクロスヘッド速度で引っ張った後、試験片の引張前の長さに対して5倍に伸びたときの引張強度である500%モジュラスを測定した。この際、測定された500%モジュラスが低いほど、軟らかく、着用感に優れることを意味する。
【0123】
【表4】
【0124】
【表5】
【0125】
【表6】
【0126】
前記表3および4に示すように、本発明の実施例1~11の重合体組成物を含むディップ成形用ラテックス組成物は、重合体組成物を含まない比較例5のディップ成形用ラテックス組成物に比べて低温安定性に優れることを確認することができた。
【0127】
また、本発明の実施例1~11のディップ成形用ラテックス組成物から成形されたディップ成形品は、比較例5のディップ成形用ラテックス組成物から成形されたディップ成形品に対して、引張強度、伸び率、および500%モジュラスがいずれも同等以上のレベルを示すことを確認することができた。
【0128】
特に、本発明の実施例1~5および実施例8のディップ成形用ラテックス組成物およびそれから成形されたディップ成形品は、ディップ成形用ラテックス組成物が重合体組成物を適した含量で含むことで、低温安定性に優れるとともに、ディップ成形品の引張特性が著しく改善されることを確認することができた。
【0129】
これに対し、重合体のガラス転移温度が本発明で限定する範囲よりも高い重合体組成物を含む比較例1のディップ成形用ラテックス組成物から成形されたディップ成形品は、引張特性に劣り、着用感が比較例5よりも低下することを確認することができた。
【0130】
また、重合体のガラス転移温度が本発明で限定する範囲よりも低い重合体組成物を含む比較例2のディップ成形用ラテックス組成物から成形されたディップ成形品は、引張強度が著しく低下することを確認することができた。
【0131】
また、重合体の重量平均分子量が本発明で限定する範囲よりも低い重合体組成物を含む比較例4のディップ成形用ラテックス組成物から成形されたディップ成形品は、引張特性および着用感の両方とも低下することを確認することができた。
【0132】
このような結果から、本発明に係る重合体組成物は、ディップ成形用ラテックス組成物のラテックス安定剤として適用可能であり、それを含むディップ成形用ラテックス組成物のラテックス安定性、特に貯蔵安定性および低温安定性の向上が可能であることを確認することができ、また、それから成形された成形品は、柔らかさが改善され、着用感に優れ、引張特性に優れることを確認することができた。
【国際調査報告】