(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】封止フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 50/844 20230101AFI20240918BHJP
H10K 50/84 20230101ALI20240918BHJP
H10K 50/842 20230101ALI20240918BHJP
H10K 59/95 20230101ALI20240918BHJP
H10K 30/88 20230101ALI20240918BHJP
H10K 39/10 20230101ALI20240918BHJP
H10K 71/40 20230101ALI20240918BHJP
【FI】
H10K50/844
H10K50/84 846
H10K50/842 423
H10K59/95
H10K30/88
H10K39/10
H10K71/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515112
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 KR2022019400
(87)【国際公開番号】W WO2023101482
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0170471
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】クァン・フィ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ボム・ドゥ・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ファン・リュ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ソル・リュ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・グ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ヨン・ユン
【テーマコード(参考)】
3K107
5F251
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC23
3K107EE44
3K107EE45
3K107EE49
3K107EE50
3K107EE53
3K107FF03
3K107FF14
3K107FF16
3K107FF17
3K107GG28
3K107GG37
5F251BA18
5F251JA04
(57)【要約】
本出願は、封止フィルムの製造方法及びそれを用いた有機電子装置の製造方法に関し、外部から有機電子装置に流入する水分または酸素を遮断できる構造の形成が可能であり、有機電子装置の長期信頼性を確保できる封止フィルムの製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止樹脂及び水分吸着剤を単一段階で混合して無溶剤タイプの封止組成物を製造する段階、及び
前記封止組成物を90℃以上の温度で押出して封止層を製造する段階を含む、封止フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記封止組成物を製造する段階は、50℃以上の温度及び5bar以上の圧力で行われる、請求項1に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記押出して封止層を製造する段階は、5bar以上の圧力で行われる、請求項1に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記押出段階は、二軸押出機を用いて行われる、請求項1に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記二軸押出機のスクリュー回転速度は、100~400rpmの範囲内である、請求項4に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記封止層は、単一層または2以上の封止層を含む多層構造である、請求項1に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記封止層は、下記一般式1で測定したゲル含量が60%以上である、請求項1に記載の封止フィルムの製造方法:
[一般式1]
ゲル含量(%)=A/B×100
前記一般式1において、Bは前記封止層サンプルの質量であり、Aは前記サンプルを60℃でトルエンに24時間浸漬後、200メッシュの網でろ過させ、前記網を通過していない前記封止層の不溶解分の乾燥質量を示す。
【請求項8】
封止樹脂は、オレフィン系樹脂を含む、請求項1に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項9】
封止樹脂は、封止材内で10重量%以上含まれる、請求項1に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項10】
水分吸着剤は、化学反応性吸着剤である、請求項1に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項11】
水分吸着剤は、封止樹脂100重量部に対して90重量部以上で含まれる、請求項1に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項12】
封止組成物は、粘着付与剤をさらに含む、請求項1に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記粘着付与剤は、封止樹脂100重量部に対して15~200重量部の範囲内で含まれる、請求項12に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項14】
封止組成物は、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含む、請求項1に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項15】
活性エネルギー線重合性化合物は、封止樹脂100重量部に対して0.5~10重量部の範囲内で含まれる、請求項14に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項16】
封止組成物は、ラジカル開始剤をさらに含む、請求項1に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記封止組成物は、170℃及び50s
-1せん断速度で測定した粘度が1,000~2,000Pa・s範囲内である、請求項1に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項18】
前記封止層は有機電子素子と直接的に接触する、請求項1に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項19】
前記封止層上にメタル層をさらに含む段階を含む、請求項1に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項20】
基板、前記基板上に形成された有機電子素子、及び有機電子素子を封止する請求項1に記載の製造方法によって製造した封止フィルムを含む有機電子素子。
【請求項21】
上部に有機電子素子が形成された基板に請求項1に記載の封止フィルムが前記有機電子素子をカバーするように適用する段階を含む有機電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、封止フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電子装置(OED;organic electronic device)とは、正孔及び電子を用いて電荷の交流を発生する有機材料層を含む装置を意味し、その例としては、光起電力装置(photovoltaic device)、整流器(rectifier)、トランスミッタ(transmitter)及び有機発光ダイオード(OLED;organic light emitting diode)などが挙げられる。
【0003】
前記有機電子装置のうち有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)は、従来の光源に比べて、電力消費量が少なく、応答速度が速く、表示装置または照明の薄型化に有利である。また、OLEDは空間活用性に優れており、各種携帯用機器、モニター、ノートパソコン及びTVなどの様々な分野で適用されることが期待されている。
【0004】
OLEDの商用化及び用途の拡大において、最も主な問題点は耐久性の問題である。OLEDに含まれる有機材料及び金属電極などは、水分などの外部的要因により非常に容易に酸化される。したがって、水分遮断性が極大化された封止フィルムが求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願は、外部から有機電子装置に流入する水分または酸素を遮断できる構造の形成が可能であり、有機電子装置の長期信頼性を確保できる封止フィルムの製造方法を提供する。
【0006】
本出願の技術的課題は以上で言及した技術的課題に制限されず、言及されていないさらに他の技術的課題は以下の記載から当業者が明確に理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な実施例を有することができるので、特定の実施例を図面に例示し、詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解されなければならない。
【0008】
層、領域、または基板などの要素が他の構成要素「上(on)」に存在すると言及される場合、これは直接的に他の要素上に存在するか、またはそれらの間に中間要素が存在することもあることが理解できるだろう。
【0009】
本出願で使用される用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたもので、本発明を限定することを意図していない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味を持たない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、またはそれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品、またはそれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0010】
特に定義のない限り、技術的または科学的用語を含めて、ここで使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般に理解されるのと同じ意味を有している。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上の持つ意味と一致する意味を持つものと解釈されなければならず、本出願で明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味として解釈されない。
【0011】
本出願は、封止フィルムの製造方法に関する。前記封止フィルムは、例えば、OLEDなどの有機電子装置の封止またはカプセル化することに適用されてもよい。
【0012】
本明細書において、用語の「有機電子装置」とは、互いに対向する一対の電極間に正孔及び電子を用いて電荷の交流を発生する有機材料層を含む構造を有する物品または装置を意味し、その例としては、光起電力装置、整流器、トランスミッタ及び有機発光ダイオード(OLED)などが挙げられるが、これに制限されるものではない。本出願の一例において、有機電子装置はOLEDであってもよい。
【0013】
本出願の具体例において、封止フィルムの製造方法は、封止樹脂及び水分吸着剤を単一段階で混合して無溶剤タイプの封止組成物を製造する段階を含んでもよい。
【0014】
ここで、無溶剤タイプとは、溶剤を実質的に含まないか、または溶剤を全封止組成物内で0.1wt%以下または0.01wt%以下で含む場合を意味する。すなわち、前記封止組成物は固形分を99wt%以上または100wt%で含むもので、本出願は、別途の溶剤がなくても固形分99wt%以上または100wt%の原料のみで製膜可能な封止フィルムを提供する。
【0015】
また、封止樹脂及び水分吸着剤を単一段階で混合するということは、封止樹脂と水分吸着剤が同時に投入されるか、またはもう1つが投与された直後、または少なくとも5分や3分以内または100秒以内に連続的に投入されて配合されることを意味する。すなわち、溶剤などを用いて水分吸着剤を溶解させて別途の混合物を製造し、前記水分吸着剤が溶解した混合物を樹脂または樹脂が溶解した溶液と別途に混合して密封止材組成物を製造する工程とは区別される。
【0016】
OLED用封止フィルムの主な核心課題の一つは、水分遮断性を極大化して長期信頼性を確保することである。水分遮断性を確保するために、封止フィルムは、封止フィルムに浸透した水分ないし湿気を除去できる水分吸着剤を必ず含まなければならない。特に、水分遮断性を極大化するために、水分吸着剤は組成物内で十分に分散されなければならない。ここで、分散とは、粒子が集まって塊を作るなど凝集しておらず、均一に分散されている状態を意味するもので、よく分散されれば、粒子の一つ一つが離れている状態であってもよい。
【0017】
従来、封止組成物を製造するためには封止樹脂を溶剤に溶解して溶剤タイプの樹脂溶液を製造し、分散剤を用いて水分吸着剤を溶剤に分散させた混合物を前記樹脂溶液に投入することにより、樹脂と水分吸着剤を配合したコーティング液を形成する方式を採用し、コーティング液を形成するのに2段階以上の工程が要求された。すなわち、水分吸着剤の分散性を高めるために、有機酸などの別途の分散剤を用いなければならなかったが、前記コーティング液の高粘性特性により別途の分散剤を用いても水分吸着剤の分散性を向上させるのに限界があった。さらに、溶剤を用いて混合物を形成する場合、その後、溶剤乾燥工程を行っても溶剤がフィルムの内部に残ることになり、一部の揮発しない溶剤により有機電子素子に損傷を与える問題が発生した。したがって、本出願は、封止樹脂と水分吸着剤を単一段階で混合して無溶剤タイプの封止組成物を用いながらも、後述するように押出を通じて封止層を製造することにより、水分吸着剤の分散性が極大化しながらも、長期信頼性を効果的に確保可能な有機電子素子を提供しうる。
【0018】
一例において、前記封止組成物を製造する段階は、高温条件下で行われてもよく、一例として、50℃以上の温度及び5bar以上の圧力で行われてもよい。前記温度は、樹脂の融点より高くてもよいが、一例として、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、110℃以上、120℃以上、125℃以上、130℃以上、135℃以上、140℃以上、145℃以上、または150℃以上であってもよく、温度の上限は、封止組成物内に投入された成分が熱分解しない温度に適切に調節してもよいが、一例として、200℃以下または180℃以下であってもよい。また、前記圧力は、7bar以上、10bar以上、13bar以上、15bar以上、17bar以上、または20bar以上であってもよく、圧力の上限は、目的に応じて適切に調節してもよいが、一例として、30bar以下であってもよい。これに制限されるものではないが、一例として、封止組成物を製造する段階は、ニーダー(kneader)またはバンベリー(banbury)などの混練機に投入されて混練されるものであってもよく、前記50℃以上の温度及び5bar以上の圧力は、混練機内の温度または圧力であってもよい。本出願は、前記のように、特定温度以上で封止組成物製造段階を行うことにより、封止組成物内の成分が溶融混練されて水分吸着剤の分散性がさらに向上し、組成物内の成分間の相溶性に優れており、押出工程に対する作業性も優れている。
【0019】
一具体例において、本出願による封止フィルムの製造方法は、前記で製造された封止組成物を押出機に移送してコンパウンディングし、90℃以上の温度で押出して封止層を製造する段階を含んでもよい。
【0020】
前記封止層を製造する段階における押出温度は、押出機の内部温度または成形温度を意味する。ここで、押出機の内部温度とは、混練機から押出機に移送された封止組成物が押出機内のスクリューにより吐出部方向に移動しながら、ブレンディングされる区間での温度を意味する。また、成形温度とは、押出機の吐出部に装着された成形部の温度を指すもので、一例として、Tダイの温度を意味する。成形温度は、成形部によってフィルム状に吐出及び成形される区間における温度を意味する。
【0021】
すなわち、本発明による封止組成物は、1次でニーダーで混練して水分吸着剤を均一に分散させて押出機に移送し、押出機内に装着されたスクリューにより2次で混練し、水分吸着剤の分散度をさらに向上することができる。
【0022】
これに制限されるものではないが、一例として、押出機は一軸押出機または二軸押出機であってもよいが、優れた生産性と均一性を有する二軸押出機が好ましい。また、二軸押出機内のスクリューの種類や回転方向などは、投入される成分によって適切に選択してもよい。
【0023】
一例において、押出して封止層を製造する温度は、100℃以上、110℃以上、120℃以上、125℃以上、130℃以上、135℃以上、140℃以上、145℃以上、150℃以上、155℃以上、160℃以上、165℃以上、170℃以上、175℃以上、または180℃以上であってもよく、温度の上限は、封止組成物内に投入された成分が熱分解しない温度に適切に調節してもよいが、一例として、200℃以下または180℃以下であってもよい。一例として、押出機の内部温度は140℃以上であってもよく、成形温度は150℃以上であってもよい。また、一例として、押出機の内部温度と成形温度との差は、50℃または30℃以内であってもよい。本出願は、押出機の内部温度が前記範囲を満たすことにより、封止組成物内に水分吸着剤が均一に分散されてもよく、成形温度が前記範囲に制御されることにより、フィルムの特性を改善できる。
【0024】
また、一例において、押出して封止層を製造する段階は、5bar以上の高圧で行うことにより、封止組成物の粘度を後述する範囲に制御することができ、これにより水分吸着剤の分散性をさらに向上させることができる。これに制限されるものではないが、一例として、前記押出段階における圧力は、6bar以上、7bar以上、10bar以上、11bar以上、12bar以上、13bar以上、14bar以上、15bar以上、16bar以上、17bar以上、18bar以上または20bar以上であってもよく、圧力の上限は、前記目的に応じて適切に調節してもよいが、一例として、30bar以下であってもよい。
【0025】
一例において、押出機内のスクリューの回転速度は、100~400rpm、150~350rpm、170~320rpm、200~300rmp、または230~270rpmの範囲内であってもよい。本出願は、押出機のスクリューの回転に伴う強力なせん断力を用いて、無溶剤タイプでも封止組成物内に水分吸着剤を均一に分散させることができる。
【0026】
一具体例において、本出願による製造方法は、押出された封止層に対して電子線またはUV照射を行う硬化段階をさらに含んでもよい。電子線またはUV照射は、公知の方法で行われてもよい。
【0027】
一例において、前記製造方法によって製造された封止層は単一層であるが、封止層内の厚さ(深さ)方向による水分吸着剤の分布に対するガウスカーブフィッティング(Gaussian curve fitting)において、水分吸着剤の厚さ方向に対する位置分布(σ値)が2以下であってもよい。
【0028】
一例として、水分吸着剤の厚さ分布に対するガウスカーブフィッティング(Gaussian curve fitting)において、水分吸着剤の厚さ方向に対する位置分布(σ値)が1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、0.15以下、または0.1以下であってもよく、下限値は大きく制限されないが、0.001以上であってもよい。
【0029】
ここで、ガウスカーブフィッティングは、封止層の厚さに対する関数を示したもので、下記式1の通りである。
【0030】
【0031】
式1において、A及びbは、水分吸着剤の絶対量関連定数であり、
【数2】
は、水分吸着剤の厚さ方向に対する平均位置であり、σは、水分吸着剤の厚さ方向に対する位置分布である。
【0032】
水分吸着剤の厚さ分布に対するガウスカーブフィッティングにおけるσ値が前記のように特定の範囲を満たすことにより、厚さ方向で封止フィルムの中央部に該当する領域に水分吸着剤が高含量で含まれてもよく、これによって水分吸着性に優れながらも、これとともに粘着特性も改善できる。
【0033】
すなわち、前記封止層は、厚さ方向によって水分吸着剤の濃度が異なる第1の領域、第2の領域及び第3の領域を含んでもよく、封止層は単一層で複数の層を有する積層構造ではないが、水分吸着剤の濃度に応じて単一層を任意に領域で区別してもよい。一例として、単一層の封止層を形成する第1の領域、第2の領域、及び第3の領域は、水分吸着剤の含量が異なってもよい。このとき、水分吸着剤の含量による領域区別に関連して、各領域の界面における水分吸着剤の含量は連続的に変化しうるので、各領域における界面が必ずしも明確に区分される必要はない。
【0034】
一例において、第2の領域は、第1の領域及び第3の領域に対して水分吸着剤を高含量で含んでもよい。すなわち、第2の領域は、第1の領域及び第2の領域よりも水分吸着剤の含量がより多い領域であってもよい。このとき、第1の領域と第2の領域は、水分吸着剤の含量が第2の領域より低含量であれば十分であり、第1の領域と第2の領域の水分吸着剤の含量は、同じでも異なっていてもよい。
【0035】
図1は、単一層の封止層を水分吸着剤の含量によって領域を区別して示したもので、
図1を参照すると、水分吸着剤が高含量領域である第2の領域22は、水分吸着剤の低濃度領域である第1の領域21と第3の領域との間23に介在されてもよい。すなわち、水分吸着剤が低含量領域である第1の領域21と第3の領域23は、それぞれ封止層11の最上部または最下部をなして上面または下面に位置し、封止層の上部または下部に接する他の構成要素と直接的に接することができる。
【0036】
すなわち、本発明によれば、封止層に含まれる水分吸着剤は、粒子状で封止層内に均一に分布していない状態で存在してもよい。ここで、分布は、粒子が空間を満たす方式に関し、分散とは区別される概念である。均一に分布した状態とは、封止層または封止フィルムのいずれの部分にも同一または実質的に同じ密度で水分吸着剤が存在し、粒子同士ができるだけ遠く離れていて空間内に均一に満たされた状態を意味する。
【0037】
一方、有機電子素子に接する封止層に水分吸着剤が均一に分布した状態で過量に含まれると、最上部及び/又は最下部をなす封止層の上面及び下面にも水分吸着剤が過量に存在するようになり、この場合、封止層の接着性能が非常に低下し、有機電子素子の耐久性及び信頼性が低下するという問題が発生することがある。
【0038】
したがって、従来は、封止フィルムとして少なくとも2つの封止層を含む多層構造を用いた。すなわち、OLED封止材は、優れた水分遮断性を確保するためには、水分遮断性を有する層を必須構成として含まなければならず、前記水分遮断性を有する層は、上部及び/又は下部構成要素との優れた接着特性を必要とする。水分遮断性を有する層と接着性を有する層などを別々に作製した後、それぞれの層を互いに付着して一体に合体する方法を考慮した。しかし、前記方法によれば、要求される機能を確保するために多数の層を作製する必要があるので、価格の上昇、工程の複雑化、及び薄型化効率の低下などの問題を引き起こしうる。例えば、多層構造の封止フィルムが有機電子素子上に適用される場合、有機電子素子に向かう第1の封止層には水分吸着剤を含まないか、または含んでも少量で含み、有機電子素子に向かう面と反対面に位置する第2の封止層に水分吸着剤を多量に含むように設計することにより、有機電子素子に接する第1の封止層から接着性を確保し、第2の封止層から水分バリア性を確保した。
【0039】
しかし、本出願による封止層は、封止層の厚さ(深さ)方向に中央部に水分吸着剤を高濃度で含有し、封止層の両表面には水分吸着剤が低濃度で含有し、水分吸着剤が特定分布状態を示すことにより、本出願は、単一層の封止層を含め、別途の粘着体層や接着体層がなくても適正水準以上の接着性を示しながらも、これとともに優れたバリア性を有する封止フィルムを提供しうる。したがって、本出願は、単一層のみで水分遮断性及び粘着性を優れた性能で発揮できる封止フィルムを提供しうる。
【0040】
また、一例において、本出願の封止層は単一層であってもよいが、これに限定されず、少なくとも2つの封止層を含む多層構造であってもよい。前記2つ以上の封止層を含む場合、前記封止層は、前記有機電子素子の封止時に素子に向かう第1の封止層及び前記第1の封止層の前記素子に向かう面とは反対面に位置する第2の封止層を含んでもよい。一具体例において、封止フィルムは少なくとも2つの封止層を含み、前記封止層は封止時に有機電子素子に向かう第1の封止層及び前記有機電子素子に向かわない第2の封止層を含んでもよい。また、2つ以上の層が封止層を構成する場合、前記封止層の各層の組成は同一でも異なっていてもよい。一例において、前記封止層は、封止樹脂及び/又は水分吸着剤を含んでもよく、前記封止層は、粘着剤層または接着剤層であってもよい。一例として、封止フィルムが有機電子素子上に適用される場合、有機電子素子に向かう封止層である第1の封止層は、水分吸着剤を含まないか、または含んでも全体の水分吸着剤重量基準で5重量%以下の少量で含んでもよく、後述するような多量の水分吸着剤は、第2の封止層に含まれてもよい。
【0041】
一例において、封止層のメタル粘着力が4,000gf/in以上、4,200gf/in以上、4,400gf/in以上、4,600gf/in以上、4,800gf/in以上、5,000gf/in以上、5,100gf/in以上、5,200gf/in以上、5,300gf/in以上、5,400gf/in以上、または5,500gf/in以上であってもよい。すなわち、本出願による封止フィルムが前記のように厚み方向による水分吸着剤の含量が異なり、封止層の上面又は下面には水分吸着剤が低含量領域である第1の領域または第3の領域が位置することにより、本出願の封止層は、優れたメタル粘着力を有してもよい。前記メタル粘着力は、後述するように、封止層上に追加できるメタル層に対する粘着力で、85±5℃温度及び85±10%恒温恒湿室で30分間放置した封止フィルムを引張機(TA,Texture Analyser)に固定し、Tension Modeで25℃温度及び5mm/minの引張速度で測定したものであってもよい。
【0042】
一例において、前記から製造された封止層は、下記一般式1で測定したゲル含量が60%以上であってもよい。
【0043】
[一般式1]ゲル含量(%)=A/B×100
【0044】
前記一般式1において、Bは前記封止層サンプルの質量であり、Aは前記サンプルを60℃でトルエンに24時間浸漬後、200メッシュの網でろ過させ、前記網を通過していない前記封止層の不溶解分の乾燥質量を示す。本明細書において、単位メッシュは、ASTM基準の単位であってもよい。前記封止層サンプルの質量Bは1gとして測定してもよい。前記ゲル含量は、例えば、63%以上、65%以上、67%以上、70%以上、72%以上、75%以上または78%以上であってもよく、上限は、例えば、99%以下、95%以下、93%以下、89%以下、86%以下、84%以下、82%以下または80%以下であってもよい。本出願は、ゲル含量を調節することにより、水分遮断性及びストレス吸収性だけでなく、硬化物性に優れた封止フィルムを提供しうる。
【0045】
また、本出願による封止層は、酸価(Acid value)が1以下であってもよい。前記酸価は、例えば、0.9以下、0.8以下または0.7以下であってもよく、下限は特に限定されないが、0.1以上であってもよい。従来から問題となっていた水分遮断性及び有機電子素子のダークスポットの発生と輝点の発生とは異なり、最近では、有機電子素子から発生する白い点がパネル不良の主な原因となっている。本出願は、前記白い点が発生するメカニズムが封止組成物内に存在する有機酸によるものであることを確認し、封止層そのものの酸価とともに封止層マトリックスの架橋度を前記ゲル含量に調節することにより、白い点の発生を効果的に抑制できた。具体例において、前記有機酸はイオンの形で有機電子素子に到達し、前記素子上に形成され得るクラックからしきい値電圧をシフトさせることにより、白い点を発生させた。このような技術的問題は、前記有機電子素子の全面を封止する封止層の酸価とゲル含量を調節することによって防止しうる。
【0046】
さらに、本出願による封止層は、可視光線領域に対して優れた光透過率を有してもよい。一例において、本出願の封止用組成物は、硬化後のJIS K7105規格による80%以上の光透過率を示すことができる。例えば、前記封止用組成物は、可視光線領域に対して85%以上、90%以上、92%以上または93%以上の光透過率を有してもよい。本出願の封止層は、優れた光透過率とともに低いヘイズを示すことができる。一例において、前記封止組成物は、硬化後のJIS K7105の規格によって測定されたヘイズが5%以下、4%以下、3%以下または1%以下であってもよい。前記光学特性は、UV-Vis Spectrometerを用いて550nmで測定したものであってもよい。
【0047】
また、一例において、前記有機電子素子封止層の硬化後、色度測定器を用いてASTM D1003規格で測定した黄色度(△YI,yellow index)値が1以下であってもよく、その下限は大きく制限されるものではないが、-2以上であってもよい。
【0048】
一例において、前記封止層は、Purge & Trap sampler(JAI JTD-505III-GC/MSD system(Agilent 7890B/5977A)測定機器を用いて、100℃で60分間パージトラップ(Purge and Trap)を行った後、ガスクロマトグラフィー質量分析法を用いて総アウトガス量を測定したとき、測定されたアウトガス量は400ppm未満であってもよく、詳しくは、300ppm以下、200ppm以下、100ppm以下、90ppm以下、80ppm以下、70ppm以下、50ppm以下、30ppm以下、20ppm以下または10ppm以下であってもよい。すなわち、本発明による封止層は、後述する組成を含むことにより、封止層から発生するアウトガス量が少ないため、前記封止層が適用される有機電子素子は、優れた信頼性を有することができる。
【0049】
一具体例において、前記封止層は、厚さが30μm以上500μm以下であってもよい。本出願の封止層は、厚さが30μm以上、33μm以上、35μm以上、40μm以上、43μm以上、45μm以上、47μm以上、50μm以上、52μm以上、55μm以上、57μm以上、または60μm以上であってもよく、上限は特に限定されないが、500μm以下、400μm以下、300μm以下、250μm以下、または200μm以下であってもよい。本出願は、封止層の厚さを従来に比べて厚くしながらも、ゲル含量を目的とする水準で具現し、水分遮断性を極大化することができ、また、高温など過酷な環境でパネル反りが発生する場合、ストレスを吸収して信頼性の高い有機電子装置を提供しうる。従来は封止フィルムを一定厚さ以上にコーティングした後、UVを照射して形成したが、UVがフィルムの内部まで浸透できず、硬化物性が著しく低下するという問題があり、また、溶剤がフィルムの内部に残ることになり、一部が揮発しない溶剤及び未硬化物質が有機電子素子に損傷を与えるという問題があった。特に、本出願の封止組成物は、有機電子素子の全面を封止して有機電子素子の一面と直接接触できるが、前記封止組成物として別途の分散剤を含まずに、後述する組成の無溶剤タイプを用いることにより、有機電子素子の信頼性をさらに向上させることができ、さらに、一定厚さ以上でも向上した硬化率を示すことにより、水分遮断性及びストレス吸収だけでなく、優れた硬化物性を具現できる。
【0050】
一具体例において、本出願によって製造された封止フィルム1は、
図2に示すように、封止層11及び基材層12を含んでもよい。前記封止フィルムは、基板上に形成された有機電子素子の全面を密封してもよい。
【0051】
一例において、本出願の封止組成物は封止樹脂を含んでもよい。前記封止樹脂は、架橋可能な樹脂または硬化性樹脂であってもよく、具体例において、オレフィン系樹脂を含んでもよい。
【0052】
一例において、前記封止樹脂は、ガラス転移温度が0℃未満、-10℃未満または-30℃未満、-50℃未満または-60℃未満であってもよい。下限は特に制限されず、-150℃以上であってもよい。前記においてガラス転移温度とは、硬化後のガラス転移温度であってもよい。
【0053】
本出願の一具体例において、前記封止樹脂はオレフィン系樹脂であってもよい。一例において、オレフィン系樹脂はブチレンモノマーの単独重合体、ブチレンモノマーと重合可能な他のモノマーを共重合した共重合体、ブチレンモノマーを用いた反応性オリゴマーまたはこれらの混合物であってもよい。前記ブチレンモノマーは、例えば、1-ブテン、2-ブテンまたはイソブチレンを含んでもよい。一例において、前記オレフィン系樹脂は、イソブチレンモノマーを重合単位で含んでもよい。
【0054】
前記ブチレンモノマーまたは誘導体と重合可能な他のモノマーとしては、例えば、イソプレン、スチレン、ブタジエンなどを含んでもよい。前記共重合体を使用することにより、工程性及び架橋度などの物性を維持することができ、有機電子装置に適用する際に粘着剤そのものの耐熱性を確保しうる。
【0055】
また、ブチレンモノマーを用いた反応性オリゴマーは、反応性官能基を有するブチレンポリマーを含んでもよい。前記オリゴマーは、重量平均分子量500~5000g/molの範囲を有してもよい。また、前記ブチレンポリマーは、反応性官能基を有する他のポリマーと結合されていてもよい。前記他のポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートであってもよいが、これに限定されるものではない。前記反応性官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基または窒素含有基であってもよい。また、前記反応性オリゴマーと前記他のポリマーは、多官能性架橋剤により架橋されていてもよく、前記多官能性架橋剤は、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤及び金属キレート架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0056】
一例において、本出願の封止樹脂は、ジエンと1つの炭素-炭素二重結合を含むオレフィン系化合物のコポリマーを含んでもよい。ここで、オレフィン系化合物は、ブチレンなどを含んでもよく、ジエンは前記オレフィン系化合物と重合可能なモノマーであってもよく、例えば、イソプレンまたはブタジエンなどを含んでもよい。例えば、1つの炭素-炭素二重結合を含むオレフィン系化合物及びジエンのコポリマーは、ブチルゴムであってもよい。
【0057】
封止層において前記樹脂またはエラストマー成分は、粘着剤組成物がフィルム状に成形可能な程度の重量平均分子量(Mw:Weight Average Molecular Weight)を有してもよい。例えば、前記樹脂またはエラストマーは、約10万~200万g/mol、12万~150万g/mol、15万~100万g/mol、20万~70万g/mol、23万~60万g/mol、25万~50万g/molまたは30万~47万g/mol程度の重量平均分子量を有してもよい。本明細書において用語の重量平均分子量とは、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定した標準ポリスチレンに対する換算数値を意味し、特に規定しない限り、単位は、g/molである。ただし、前記で言及した重量平均分子量を前記樹脂またはエラストマー成分が必ずしも有する必要はない。例えば、樹脂またはエラストマー成分の分子量がフィルムを形成するほどのレベルに満たない場合には、別途のバインダー樹脂が粘着剤組成物に配合されてもよい。
【0058】
一例において、前記封止樹脂は、封止層内で10重量%以上、13重量%以上、15重量%以上、17重量%以上、20重量%以上、21重量%以上、22重量%以上、23重量%以上または24重量%以上含まれてもよく、その上限は、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下または30重量%以下であってもよい。前記封止樹脂は、水分遮断性は良いが、耐熱耐久性に劣るという短所があるため、本出願は前記封止樹脂の含量を調節することにより、樹脂そのものが有する水分遮断性能を十分に具現しつつも、高温高湿での耐熱耐久性を維持するようにできる。
【0059】
一例において、封止フィルムは水分吸着剤を含んでもよい。本明細書において用語の「水分吸着剤(moisture absorbent)」とは、例えば、後述する封止フィルムに浸透した水分ないしは湿気との化学的反応を通じて前記を除去できる化学反応性吸着剤を意味する。
【0060】
一例において、前記水分吸着剤は表面に有機酸が存在しなくてもよい。一般的に水分吸着剤は組成物内によく分散されるように分散剤で表面処理してもよく、この場合、水分吸着剤の表面に有機酸が存在する。このような有機酸は、素子と直接接触する封止層内で素子に向かって浸透するため、OLEDパネルの白い点不良を発生させうる。本出願は、水分吸着剤が分散剤を含まないか、または有機酸を含まないことにより、封止組成物全体の信頼性を向上させ、OLEDパネルの不良を防止する。
【0061】
前記において使用可能な水分吸着剤としては、例えば、金属酸化物、硫酸塩または有機金属酸化物などが挙げられる。具体的には、前記硫酸塩の例としては、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウムまたは硫酸ニッケルなどが挙げられ、前記有機金属酸化物の例としては、アルミニウムオキサイドオクチレートなどが挙げられる。前記において金属酸化物の具体例としては、五酸化リン(P2O5)、酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム(CaO)または酸化マグネシウム(MgO)などが挙げられ、金属塩の例としては、硫酸リチウム(Li2SO4)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、硫酸カルシウム(CaSO4)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)、硫酸ガリウム(Ga2(SO4)3)、硫酸チタン(Ti(SO4)2)または硫酸ニッケル(NiSO4)などの硫酸塩、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化ストロンチウム(SrCl2)、塩化イットリウム(YCl3)、塩化銅(CuCl2)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化タンタル(TaF5)、フッ化ニオブ(NbF5)、臭化リチウム(LiBr)、臭化カルシウム(CaBr2)、臭化セリウム(CeBr3)、臭化セレン(SeBr4)、臭化バナジウム(VBr3)、臭化マグネシウム(MgBr2)、ヨウ化バリウム(BaI2)またはヨウ化マグネシウム(MgI2)などの金属ハロゲン化物、または過塩素酸バリウム(Ba(ClO4)2)または過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO4)2)などの金属塩素酸塩などが挙げられるが、これに制限されるものではない。封止層に含まれてもよい水分吸着剤としては、上述した構成のうち1種を使用してもよく、2種以上を使用してもよい。一例において、水分吸着剤として2種以上を使用する場合、焼成ドロマイト(calcined dolomite)などが使用されてもよい。
【0062】
このような水分吸着剤は、用途に応じて適切なサイズに制御されてもよい。一例において、水分吸着剤の平均粒径は、100~15000nm、500nm~10000nm、800nm~8000nm、1μm~7μm、2μm~5μmまたは2.5μm~4.5μmに制御されてもよい。前記範囲のサイズを有する水分吸着剤は、水分との反応速度が速すぎず保管が容易で、封止しようとする素子に損傷を与えない。本明細書において、粒径は、特に規定しない限り、平均粒径を意味し、D50粒度分析器で公知の方法で測定したものであってもよい。
【0063】
水分吸着剤の含量は、特に制限されず、所望の遮断特性を考慮して適切に選ばれてもよい。前記水分吸着剤は、封止樹脂100重量部に対して90重量部以上で含まれてもよく、一例として93~800重量部、95~770重量部、97~750重量部、100~730重量部、103~700重量部、105~670重量部、110~650重量部、113~630重量部、115~600重量部、117~570重量部、120~530重量部、123~500重量部、125~480重量部、127~460重量部、130~440重量部、133~420重量部、135~400重量部、137~380重量部、140~360重量部、143~340重量部、145~320重量部、150~300重量部、153~290重量部、155~280重量部、158~270重量部、または160~260重量部の範囲内で含まれてもよい。すなわち、本出願による封止フィルムは、水分吸着剤を従来より多量に含みながらも、封止層内の他の組成と優れた相溶性を示すことができ、これとともに水分吸着剤に対する別途の分散剤がなくても優れた分散性を示し、優れた水分遮断効果を具現しうる。
【0064】
一例において、封止フィルムは粘着付与剤をさらに含んでもよい。前記粘着付与剤は、例えば、軟化点が70℃以上の化合物であってもよく、具体例において、75℃以上、78℃以上、83℃以上、85℃以上、90℃以上または95℃以上であってもよく、その上限は特に制限されないが、150℃以下、145℃以下、140℃以下、135℃以下、130℃以下または125℃以下であってもよい。前記粘着付与剤は、分子構造内に環状構造を有する化合物であってもよく、前記環状構造は、炭素数が5~15の範囲内であってもよい。前記炭素数は、例えば、6~14、7~13または8~12の範囲内であってもよい。前記環状構造は、一環式化合物であってもよいが、これに限定されず、二環式または三環式化合物であってもよい。前記粘着付与剤は、さらにオレフィン系ポリマーであってもよく、前記ポリマーはホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。また、本出願の粘着付与剤は、水素添加化合物であってもよい。前記水素添加化合物は、部分的にまたは完全に水素化された化合物であってもよい。このような粘着付与剤は、封止フィルム内で他の成分と相溶性が良く、水分遮断性に優れており、外部応力緩和特性を有してもよい。粘着付与剤の具体例としては、水素化されたテルペン系樹脂、水素化されたエステル系樹脂または水素化されたジシクロペンタジエン系樹脂などが挙げられる。前記粘着付与剤の重量平均分子量は、約200~5,000g/mol、300~4,000g/mol、400~3,000g/molまたは500~2,000g/molの範囲内であってもよい。前記粘着付与剤の含量は必要に応じて適切に調節されてもよい。例えば、粘着付与剤の含量は、封止樹脂100重量部に対して15重量部~200重量部、20~190重量部、25重量部~180重量部、または30重量部~150重量部の割合で含まれてもよい。本出願は、前記特定の粘着付与剤を使用することにより、水分遮断性に優れながらも、外部応力緩和特性を有する封止フィルムを提供しうる。
【0065】
本出願の封止フィルムは、封止層が輝点防止剤を含んでもよい。前記輝点防止剤は、密度汎関数理論(Density Functical Teory)によって計算された、アウトガスに対する吸着エネルギーが0eV以下であってもよい。前記吸着エネルギーの下限値は特に限定されないが、-20eVであってもよい。前記アウトガスの種類は特に制限されるものではないが、酸素、H原子、H2分子及び/又はNH3を含んでもよい。本出願は、封止フィルムが前記輝点防止剤を含むことにより、有機電子装置から発生するアウトガスによる輝点を防止しうる。
【0066】
本出願の具体例において、輝点防止剤と輝点原因原子または分子との間の吸着エネルギーを密度汎関数理論(density functional theory)基盤の電子構造計算を通じて計算しうる。前記計算は、当業界の公知の方法で行われてもよい。例えば、本出願は、結晶型構造を有する輝点防止剤の最密充填面が表面に現れる2次元slab構造を作った後、構造最適化を行い、この真空状態の表面上に輝点原因分子が吸着された構造に対する構造最適化を行った後、これら2つのシステムの総エネルギー(total energy)差に輝点原因分子の総エネルギーを引いた値を吸着エネルギーと定義した。それぞれのシステムに対する総エネルギー計算のために電子と電子の相互作用を模写するexchange-correlationで、GGA(generalized gradient approximation)系列の関数であるrevised-PBE関数を使用し、電子kinetic energyのcutoffは500eVを使用し、逆格子空間(reciprocal space)の原点に該当するgamma pointのみを含めて計算した。各システムの原子構造を最適化するためにconjugate gradient法を使用し、原子間の力が0.01eV/Å以下になるまで繰り返し計算を行った。一連の計算は、商用コードであるVASPを通じて行った。
【0067】
輝点防止剤の素材は、前記封止フィルムが有機電子装置に適用され、有機電子装置のパネルで輝点を防止する効果を有する物質であれば、その素材は制限されるものではない。例えば、輝点防止剤は、有機電子素子の電極上に蒸着される酸化ケイ素、窒化ケイ素または酸窒化ケイ素の無機蒸着層から発生するアウトガスであり、例えば、酸素、H2ガス、アンモニア(NH3)ガス、H+、NH2+、NHR2またはNH2Rで例示される物質を吸着できる物質であってもよい。前記において、Rは有機基であってもよく、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0068】
一例において、輝点防止剤の素材は、前記吸着エネルギー値を満たす限り制限されず、金属または非金属であってもよい。前記輝点防止剤は、例えば、Li、Ni、Ti、Rb、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Zn、In、Pt、Pd、Fe、Cr、Siまたはその配合物を含んでもよく、前記素材の酸化物または窒化物を含んでもよく、前記素材の合金を含んでもよい。一例において、輝点防止剤は、ニッケル粒子、酸化ニッケル粒子、窒化チタン、鉄-チタンのチタン系合金粒子、鉄-マンガンのマンガン系合金粒子、マグネシウム-ニッケルのマグネシウム系合金粒子、希土類系合金粒子、カーボンナノチューブ、グラファイト、アルミノホスフェート分子体粒子またはメソシリカ粒子を含んでもよい。前記輝点防止剤は、封止樹脂100重量部に対して3~150重量部、6~143重量部、8~131重量部、9~123重量部、10~116重量部、10重量部~95重量部、10重量部~50重量部、または10重量部~35重量部で含まれてもよい。本出願は、前記含量範囲において、フィルムの接着力及び耐久性を向上させながら、有機電子装置の輝点防止を具現しうる。また、前記輝点防止剤の粒径は、10nm~30μm、50nm~21μm、105nm~18μm、110nm~12μm、120nm~9μm、140nm~4μm、150nm~2μm、180nm~900nm、230nm~700nmまたは270nm~400nmの範囲内であってもよい。前記粒径はD50粒度分析によるものであってもよい。本出願は、前記輝点防止剤を含むことにより、有機電子装置内で発生する水素を効率的に吸着しながらも、封止フィルムの水分遮断性及び耐久信頼性を具現しうる。
【0069】
また、一例において、本出願の封止層は、封止樹脂と相溶性が高く、前記封止樹脂とともに特定の架橋構造を形成できる活性エネルギー線重合性化合物を含んでもよい。
【0070】
例えば、本出願の封止層は、封止樹脂とともに活性エネルギー線の照射によって重合できる多官能性の活性エネルギー線重合性化合物を含んでもよい。前記活性エネルギー線重合性化合物は、例えば、活性エネルギー線の照射による重合反応に参加できる官能基、例えば、アクリロイル基またはメタクリロイル基などのエチレン性不飽和二重結合を含む官能基、エポキシ基またはオキセタン基などの官能基を2つ以上含む化合物を意味する。
【0071】
多官能性の活性エネルギー線重合性化合物としては、例えば、多官能アクリレート(MFA;Multifunctional acrylate)を使用してもよい。
【0072】
また、前記活性エネルギー線重合性化合物は、封止樹脂100重量部に対して、0.5重量部~10重量部、0.7重量部~9重量部、1重量部~8重量部、1.3重量部~7重量部または1.5重量部~6重量部で含まれてもよい。本出願は、前記範囲内で、高温高湿など過酷な条件下でも耐久信頼性に優れた封止フィルムを提供する。
【0073】
前記活性エネルギー線の照射により重合できる多官能性の活性エネルギー線重合性化合物は、制限なく使用されてもよい。例えば、前記化合物は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(HDDA)、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオール(dodecanediol)ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(dicyclopentanyl)ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)ジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタン(adamantane)ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA)またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0074】
多官能性の活性エネルギー線重合性化合物としては、例えば、分子量が100以上1,000g/mol未満であり、官能基を2つ以上含む化合物を使用してもよい。前記多官能性の活性エネルギー線重合性化合物に含まれる環状構造は、炭素環式構造または複素環式構造、または単環式または多環式構造のいずれでもよい。
【0075】
本出願の具体例において、封止層はラジカル開始剤をさらに含んでもよい。ラジカル開始剤は光開始剤または熱開始剤であってもよい。光開始剤の具体的な種類は、硬化速度及び黄変の可能性などを考慮して適切に選ばれてもよい。例えば、ベンゾイン系、ヒドロキシケトン系、アミノケトン系またはホスフィンオキシド系光開始剤などを使用してもよく、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン(thioxanthone)、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパンノン]及び2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシドなどを使用してもよい。
【0076】
ラジカル開始剤は、活性エネルギー線重合性化合物100重量部に対して0.2重量部~20重量部、0.5~18重量部、1~15重量部、または2重量部~13重量部の割合で含まれてもよい。これにより、活性エネルギー線重合性化合物の反応を効果的に誘導し、さらに硬化後の残存成分により封止層組成物の物性が悪化することを防止しうる。
【0077】
封止層には上述の構成に加えて、用途及び後述する封止フィルムの製造工程によって様々な添加剤を含んでもよい。例えば、封止層は、硬化性物質、架橋剤またはフィラーなどを所望の物性に応じて適正範囲の含量で含んでもよい。
【0078】
一例において、前記封止組成物は、170℃及び50s-1せん断速度で測定した粘度が1,000~2,000Pa・s範囲内であってもよく、一例として、粘度の下限は1,100Pa・s以上、1,200Pa・s以上、1,300Pa・s以上、1,400Pa・s以上または1,500Pa・s以上であってもよい。これに制限されるものではないが、粘度はARES(Advanced Rheometric Expansion System)で測定した値であってもよい。このように前記封止組成物は高粘度の液状であるにもかかわらず、本出願は、前述したように押出工程を通じて水分吸着剤が封止組成物内に均一な分散性を示すことができる。
【0079】
本出願の具体例において、本出願による封止フィルムの製造方法は、前記封止層上に形成されたメタル層をさらに含む段階を含んでもよい。すなわち、封止フィルムは、封止層とメタル層が合紙された構造であってもよい。本出願のメタル層は、20W/m・K以上、50W/m・K以上、60W/m・K以上、70W/m・K以上、80W/m・K以上、90W/m・K以上、100W/m・K以上、110W/m・K以上、120W/m・K以上、130W/m・K以上、140W/m・K以上、150W/m・K以上、200W/m・K以上または210W/m・K以上の熱伝導度を有してもよい。前記熱伝導度の上限は特に限定されず、800W/m・K以下であってもよい。このように高い熱伝導度を有することにより、メタル層接合工程時に接合界面で発生した熱をより早く放出させることができる。また、高い熱伝導度は、有機電子装置の動作中に蓄積される熱を迅速に外部に放出させ、これによって有機電子装置そのものの温度をより低く保つことができ、クラック及び欠陥の発生は減少する。前記熱伝導度は、15~30℃の温度範囲のいずれかの温度で測定したものであってもよい。
【0080】
本明細書において用語の「熱伝導度」とは、物質が伝導によって熱を伝達できる能力を示す程度であり、単位は、W/m・Kで表すことができる。前記単位は、同じ温度と距離で物質が熱伝達する程度を示したもので、距離の単位(メートル)と温度の単位(ケルビン)に対する熱の単位(ワット)を意味する。
【0081】
本出願の具体例において、前記封止フィルムのメタル層は透明であってもよく、不透明であってもよい。前記メタル層の厚さは、3μm~200μm、10μm~100μm、20μm~90μm、30μm~80μm、または40μm~75μmの範囲内であってもよい。本出願は、前記メタル層の厚さを制御することにより、放熱効果が十分に具現されて薄膜の封止フィルムを提供しうる。前記メタル層は、薄膜のメタルフォイル(Metal foil)または高分子基材層にメタルが蒸着されていてもよい。前記メタル層は、前述した熱伝導度を満たし、金属を含む素材であれば、特に制限されるものではない。メタル層は、金属、酸化金属、窒化金属、炭化金属、オキシ窒化金属、オキシホウ化金属、及びそれらの配合物のいずれかを含んでもよい。例えば、メタル層は、1つの金属に1つ以上の金属元素または非金属元素が添加された合金を含んでもよく、例えば、ステンレス鋼(SUS)を含んでもよい。また、一例において、メタル層は、鉄、クロム、銅、アルミニウムニッケル、酸化鉄、酸化クロム、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化スズインジウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ及びそれらの配合物を含んでもよい。メタル層は、電解、圧延、加熱蒸発、電子ビーム蒸発、スパッタリング、反応性スパッタリング、化学気相蒸着、プラズマ化学気相蒸着または電子サイクロトロン共鳴源プラズマ化学気相蒸着手段によって蒸着されてもよい。本出願の一実施例において、メタル層は反応性スパッタリングによって蒸着されてもよい。
【0082】
封止フィルムは、基材フィルムまたは離型フィルム(以下、「第1のフィルム」と称することがある。)をさらに含み、前記封止層が前記基材または離型フィルム上に形成されている構造を有してもよい。前記構造は、前記メタル層上に形成された基材フィルム、保護フィルムまたは離型フィルム(以下、「第2のフィルム」と称することがある。)をさらに含んでもよい。
【0083】
本出願で使用できる前記第1のフィルムの具体的な種類は、特に限定されるものではない。本出願では、前記第1のフィルムとして、例えば、この分野の一般的な高分子フィルムを使用してもよい。本出願では、例えば、前記基材または離型フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-ビニルアセテートフィルム、エチレン-プロピレン共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸エチル共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸メチル共重合体フィルムまたはポリイミドフィルムなどを使用してもよい。また、本出願の前記基材フィルムまたは離型フィルムの片面または両面には、適切な離型処理が行われていてもよい。基材フィルムの離型処理に使用される離型剤の例としては、アルキド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和エステル系、ポリオレフィン系又はワックス系などを使用してもよく、このうち、耐熱性の側面でアルキド系、シリコーン系またはフッ素系離型剤を使用することが好ましいが、これに制限されるものではない。
【0084】
本出願において前記のような基材フィルムまたは離型フィルム(第1のフィルム)の厚さは特に限定されず、適用される用途に応じて適切に選ばれてもよい。例えば、本出願において前記第1のフィルムの厚さは、10μm~500μm、好ましくは、20μm~200μm程度であってもよい。前記厚さが10μm未満であれば、製造過程で基材フィルムの変形が容易に発生するおそれがあり、500μmを超えると、経済性が低下する。
【0085】
本出願は、さらに有機電子装置に関する。
【0086】
有機電子装置は、
図2に示すように、基板31、前記基板31上に形成された有機電子素子32、及び前記有機電子素子32を封止する前述した製造方法によって製造した封止フィルムを含んでもよい。前記封止フィルムは、封止層33を含んでもよく、さらにメタル層34を含んでもよい。この場合、封止層33及びメタル層34が一体に含まれる封止フィルムが前記有機電子素子32を封止しうる。封止フィルムがメタル層を含む場合、有機電子装置は基板31、有機電子素子32、封止層33、及びメタル層34を順次含んでもよい。
【0087】
一例において、前記封止フィルムは、基板上に形成された有機電子素子の全面、例えば、上部及び側面の両方を封止していてもよい。前記封止フィルムは、粘着剤組成物または接着剤組成物を架橋または硬化した状態で含有する封止層を含んでもよい。また、前記封止層が基板上に形成された有機電子素子の全面に接触するように密封して有機電子装置が形成されていてもよい。
【0088】
本出願の具体例において、有機電子素子は、一対の電極、少なくとも発光層を含む有機層及びパッシベーション膜を含んでもよい。具体的に、前記有機電子素子は第1の電極層、前記第1の電極層上に形成されて少なくとも発光層を含む有機層及び前記有機層上に形成される第2の電極層を含み、前記第2の電極層上に電極及び有機層を含むパッシベーション膜を含んでもよい。前記第1の電極層は透明電極層または反射電極層であってもよく、第2の電極層も透明電極層または反射電極層であってもよい。より具体的には、前記有機電子素子は基板上に形成された透明電極層、前記透明電極層上に形成されて少なくとも発光層を含む有機層及び前記有機層上に形成される反射電極層を含んでもよい。
【0089】
前記有機電子素子は、例えば、有機発光素子であってもよい。
【0090】
前記パッシベーション膜は、無機膜と有機膜を含んでもよい。一具体例において、前記無機膜は、Al、Zr、Ti、Hf、Ta、In、Sn、Zn及びSiからなる群から選ばれる少なくとも1つの金属酸化物または窒化物であってもよい。前記無機膜の厚さは、0.01μm~50μm、0.1μm~20μm、または1μm~10μmであってもよい。一例において、本出願の無機膜は、ドーパントを含まない無機物であってもよく、またはドーパントを含む無機物であってもよい。ドーピングできる前記ドーパントは、Ga、Si、Ge、Al、Sn、Ge、B、In、Tl、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co及びNiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素又は前記元素の酸化物であってもよいが、これに限定されるものではない。前記有機膜は発光層を含まないという点で、前述した少なくとも発光層を含む有機層とは区別され、エポキシ化合物を含む有機蒸着層であってもよい。
【0091】
前記無機膜または有機膜は、化学気相蒸着(CVD,chemical vapor deposition)によって形成されてもよい。例えば、前記無機膜は、シリコンナイトライド(SiNx)を使用してもよい。一例において、前記無機膜として使用されるシリコンナイトライド(SiNx)を0.01μm~50μmの厚さで蒸着してもよい。一例において、前記有機膜の厚さは、2μm~20μm、2.5μm~15μm、2.8μm~9μmの範囲内であってもよい。
【0092】
本出願は、さらに有機電子装置の製造方法を提供する。前記製造方法は、前記上部に有機電子素子が形成された基板に前記製造方法から得られた封止フィルムが前記有機電子素子をカバーするように適用する段階を含んでもよい。また、前記製造方法は、前記封止フィルムを硬化する段階を含んでもよい。前記封止フィルムの硬化段階は、封止層の硬化を意味し、前記封止フィルムが有機電子素子をカバーする前または後に行われてもよい。
【0093】
本明細書において用語の「硬化」とは、加熱またはUV照射工程などを経て本発明の粘着剤組成物が架橋構造を形成して粘着剤の形態で製造することを意味する。また、接着剤組成物が接着剤として固化及び付着されることを意味する。
【0094】
具体的には、基板として使用されるガラスまたは高分子フィルム上に真空蒸着またはスパッタリングなどの方法で電極を形成し、前記電極上に例えば、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層などから構成される発光性有機材料の層を形成した後、その上部に電極層をさらに形成して有機電子素子を形成してもよい。次に、前記工程を経た基板の有機電子素子の全面を、前記封止フィルムの封止層が覆うように位置させる。
【発明の効果】
【0095】
本出願は、外部から有機電子装置に流入する水分または酸素を遮断できる構造の形成が可能であり、有機電子装置の長期信頼性を確保できる封止フィルムの製造方法を提供する。
【0096】
しかし、本発明の効果は以上で言及した効果に制限されず、言及されていないさらに他の効果は、以下の記載から当業者が明確に理解できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【
図1】
図1は、本出願の一例による封止層を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本出願の一例による封止フィルムを示す断面図である。
【
図3】
図3は、本出願の一例による有機電子装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0098】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を通じて本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲が下記の実施例によって制限されるものではない。
【0099】
実施例1
ブチルゴム樹脂(Mw:410,000g/mol、ガラス転移温度:-65℃)100重量部、粘着付与樹脂(SU525、軟化点:125℃、コーロン)100重量部、多官能アクリレート(トリサイクロデカンジメタノールジアクリレート、味元)3重量部、光開始剤(Irgacure 651、Ciba)1重量部及びCaO 200重量部を150℃及び20barに設定された加圧ニーダー(Kneader)に投入した後、約30分間混練し、170℃及び50s-1せん断速度で1500Pa・s粘度の封止組成物を製造した。
【0100】
前記封止組成物を温度180℃、スクリュー回転速度250rpmに設定された二軸押出機(SM Platek社のTEK30)に移送してコンパウンディングし、前記二軸押出機に装着されたTダイを用いて160℃温度、及び20bar圧力で押出し、50μm厚さのフィルム状の封止層を製造した。前記封止層に1.5J/cm2紫外線を照射して封止フィルムを製造した。
【0101】
実施例2
Tダイの温度を170℃に設定したことを除いては、実施例1と同様の方法で封止層を製造した。
【0102】
実施例3
Tダイの温度を180℃に設定したことを除いては、実施例1と同様の方法で封止層を製造した。
【0103】
比較例1
ブチルゴム樹脂(Mw:410,000g/mol)100重量部、粘着付与樹脂(SU525、Melting point:125℃、コーロン)100重量部、多官能アクリレート(トリサイクロデカンジメタノールジアクリレート、味元)3重量部、光開始剤(Irgacure 651、Ciba)1重量部及びCaO 200重量部をトルエン600重量部に配合し、分散剤(Oleic Acid)をCaO 100重量部に対して0.5重量部さらに投入して十分に混合し、固形分40wt%の溶液を製造した。
【0104】
前記溶液を離型PETにコーティングし、120℃のオーブンで乾燥した後、1.5J/m2紫外線を照射して封止フィルムを製造した。
【0105】
比較例2
二軸押出機の温度を120℃に設定したことを除いては、実施例1と同様の方法で封止層を製造した。
【0106】
比較例3
Tダイの温度を120℃に設定したことを除いては、実施例1と同様の方法で封止層を製造した。
【0107】
比較例4
Tダイの圧力を10barに設定したことを除いては、実施例1と同様の方法で封止層を製造した。
【0108】
比較例5
水分吸着剤の含量を80重量部で含むことを除いては、実施例1と同様の方法で封止層を製造した。
【0109】
実験例1-ゲル含量の測定
実施例及び比較例の封止フィルムを50mm×50mmのサイズで試片を製造し、それぞれの封止フィルムの試片に対して、0.3~0.4gの封止フィルム(初期重量:A)を採取し、封止フィルムを60℃でトルエン70gに3時間浸漬した。その後、200メッシュ金網(金網の重量:M)でゲル部分をろ過した後、125℃オーブンで1時間乾燥した。ゲルと金網を合わせた重量(G)を測定した後、網を通過しない封止フィルムの不溶解分の乾燥質量(B=G-M)を下記一般式1によってゲル含量(単位:%)を計算した。
【0110】
[一般式1]ゲル含量(単位:%)=(B/A)×100
【0111】
前記一般式1において、Aは、封止フィルムの試片の初期質量を表し、Bは、封止フィルムの試片を60℃でトルエン70gに3時間浸漬後、200メッシュ(pore size200μm)の網でろ過し、前記網を通過しない封止フィルムの不溶解分の乾燥質量を表す。
【0112】
実験例2-膨潤指数の測定
実施例または比較例による封止フィルムの一定量をそれぞれボトル(bottle)に入れ、トルエンを満たし、24時間保存してsol-gel状態の溶液を得た。その後、200メッシュ(pore size 200μm)を用いてsol-gel溶液から分離した直後、gel試料の重量(X)を測定した。得られたgel試料を80℃のオーブンで12時間乾燥し、乾燥した直後のgel試料の重量(Y)を測定した。前記値を用いて下記一般式2によって膨潤指数を計算した。
【0113】
[一般式2]膨潤指数=sol-gel溶液から分離した直後のgel試料の重量(X)/乾燥された直後のgel試料の重量(Y)
【0114】
実験例3-貯蔵弾性率の測定
実施例または比較例による封止フィルムをそれぞれ600μmの厚さでラミネートして試片を得、前記試片でARES(Advanced Rheometric Expansion System,TA社ARES-G2)のTemp Sweepモードで平行板(parallel plate)を用いて測定した。具体的には、30~100℃の温度範囲で前記試片に0.1%変形率(strain)で15.0rad/sの変形を加えた後に測定した貯蔵弾性率のうち、50℃の温度での値を示した。
【0115】
実験例4-透湿距離の測定
実施例及び比較例の封止フィルム30mm×60mmをそれぞれ85℃温度及び85%相対湿度の恒温恒湿チャンバーで895時間放置した後、水分が浸透した距離を顕微鏡で測定した。
【0116】
実験例5-メタル粘着力
200mm×220mmサイズのCu面に実施例及び比較例による封止フィルムをそれぞれ75℃条件で熱ラミネートし、25mmに切断した後、Cu面に2Kgローラー(Roller)を用いてさらにラミネートし、試片を準備した。前記試片を85℃の温度及び85%恒温恒湿チャンバーで30分間放置した後、引張機に固定させて下記の測定条件でメタル粘着力を測定した。
【0117】
<測定条件>
測定機器:Texture Analyser
モード:Tension Mode
測定温度:25℃
引張速度:5mm/min
【0118】
下記表1は、実施例及び比較例で製造した封止フィルムについて、前記実験例による結果をまとめたものである。
【0119】
【符号の説明】
【0120】
1:封止フィルム
11:封止層
12:基材層
3:有機電子装置
31:基板
32:有機電子素子
33:封止層
34:メタル層
【国際調査報告】