(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】DUVリソグラフィシステム
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240918BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
G03F7/20 502
G03F7/20 521
G02B3/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516843
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2022070283
(87)【国際公開番号】W WO2023041224
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】102021210243.3
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230514
【氏名又は名称】泉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ジクス
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA05
2H197BA09
2H197BA15
2H197BA21
2H197CA06
2H197CA08
2H197CC03
2H197CC12
2H197CC16
2H197HA03
(57)【要約】
本発明は、DUVリソグラフィ装置であって、DUV波長域の少なくとも1つの動作波長のDUV放射線を生成する光源と、フォトマスクと、DUV放射線(8)を透過し、フォトマスクから離間しており、且つ吸収性コーティング(32)を施された光学素子(44)とを備えたDUVリソグラフィ装置に関する。吸収性コーティング(32)は、吸収性コーティング(32)を施された表面領域(26、26a)を0.1%未満で且つ好ましくは0.01%を超える表面積割合(F)で覆う吸収性微細構造(34)を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DUVリソグラフィ装置(1)であって、
DUV波長域の少なくとも1つの動作波長(λ
B)のDUV放射線(8)を生成する光源(6)と、
フォトマスク(10)と、
前記DUV放射線(8)を透過し、前記フォトマスク(10)から離間しており、且つ吸収性コーティング(32)を施された光学素子(16、44)と
を備えたDUVリソグラフィ装置(1)において、
前記吸収性コーティング(32)は、該吸収性コーティング(32)を施された表面領域(26、26a)を0.1%未満で且つ好ましくは0.01%を超える表面積割合(F)で覆う吸収性微細構造(34)を有することを特徴とするDUVリソグラフィ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のDUVリソグラフィ装置において、前記吸収性コーティング(32)を施された前記表面領域は、前記DUV放射線(8)を照射される前記透過光学素子(16)の表面領域(26a)を含むか又は形成するDUVリソグラフィ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のDUVリソグラフィ装置において、前記微細構造(34)は、20μm未満、好ましくは10μm未満の平均構造幅(b)を有するDUVリソグラフィ装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のDUVリソグラフィ装置において、前記吸収性コーティング(32)は、金属コーティングとして構成されるDUVリソグラフィ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のDUVリソグラフィ装置において、前記吸収性コーティング(32)は、Cr、Al、Au、及びAgを含む群から選択される少なくとも1つの材料を含むDUVリソグラフィ装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のDUVリソグラフィ装置において、前記吸収性コーティング(32)は、50nm~200nmの厚さ(d)を有するDUVリソグラフィ装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のDUVリソグラフィ装置において、前記少なくとも1つの動作波長(λ
B)の前記DUV放射線(8)に対する反射防止コーティング(35a)が、前記吸収性コーティング(32)に施されるDUVリソグラフィ装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のDUVリソグラフィ装置において、前記微細構造(34)の前記表面積割合(F)は、特に前記吸収性コーティング(32)を施された前記表面領域(26a)における前記DUV放射線(8)の強度分布(I(x))に応じて場所により変わるDUVリソグラフィ装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のDUVリソグラフィ装置において、前記透過光学素子(16)は、瞳面(22)又はその近傍に配置されるDUVリソグラフィ装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のDUVリソグラフィ装置において、
前記吸収性コーティング(32)を施された前記表面領域(26a)における前記微細構造(34)の前記表面積割合(F)の場所による変化がそれぞれ異なる複数の透過光学素子(16’)を有するマガジン(38)と、
前記透過光学素子(16’)の1つを前記マガジン(38)から光学装置(1)のビーム経路(30)に輸送する輸送デバイス(40)と、
DUVリソグラフィ装置(1)の照明設定(S1、S2、…)に好ましくは応じて前記輸送デバイス(40)を制御する制御デバイス(42)と
をさらに備えたDUVリソグラフィ装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のDUVリソグラフィ装置において、前記透過光学素子は、結像光学素子、特にレンズ素子(16)であるDUVリソグラフィ装置。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載のDUVリソグラフィ装置において、前記透過光学素子は、好ましくは波面収差を補正する板状の補正素子(44)であるDUVリソグラフィ装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のDUVリソグラフィ装置において、前記吸収性コーティング(32)を施された前記透過光学素子(44)の前記表面領域(26)に加熱放射線(50)を放射する少なくとも1つの加熱光源(48)を有する加熱デバイス(46)をさらに備えたDUVリソグラフィ装置。
【請求項14】
請求項13に記載のDUVリソグラフィ装置において、前記加熱光源(48)は、400nm~1550nmの波長域の少なくとも1つの加熱波長(λ
H)で前記表面領域(26)に加熱放射線(50)を放射するよう構成されるDUVリソグラフィ装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のDUVリソグラフィ装置において、前記加熱デバイス(46)は、場所により可変の強度分布(I
H(x))で前記透過光学素子(44)の前記表面領域(26)に前記加熱放射線(50)を放射するよう構成されるDUVリソグラフィ装置。
【請求項16】
請求項13~15のいずれか1項に記載のDUVリソグラフィ装置において、前記加熱デバイス(46)は、前記加熱光源(48)の前記加熱放射線(50)を前記吸収性コーティング(32)の異なる位置(P)に位置合わせするスキャナデバイス(52)、及び/又は前記吸収性コーティング(32)の異なる位置(P)を照射する加熱光源(48)の格子配置(54)を有するDUVリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年9月16日の独国特許出願第10 2021 210 243.3号の優先権を主張し、その全開示内容を参照により本願の内容に援用する。
【0002】
本発明は、DUV波長域の少なくとも1つの動作波長のDUV放射線を生成する光源と、DUV放射線を透過し且つ吸収性コーティングを施された光学素子とを備えた、DUVリソグラフィ用の光学装置、特にDUVリソグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
本願の意味の範囲内で、DUV波長域は、150nm~370nmの電磁放射線の波長域と理解される。DUV波長域は、特にマイクロリソグラフィに重要である。したがって、DUV波長域の放射線は、例えば投影露光装置及びウェハ又はマスク検査装置で用いられる。こうした装置では、例えばレンズ素子又は平面板の形態の透過光学素子と、例えばミラー等の形態の反射光学素子との両方が用いられ、これらはDUVリソグラフィ装置の投影系又は照明系に例えば組み込まれる。DUVリソグラフィ装置では、光源は、概して単一の動作波長を有するDUV放射線を生成するよう設計される。ウェハ又はマスク検査装置では、光源は、複数の動作波長又は1つの動作波長スペクトルの広帯域放射線を生成するよう設計され得る。
【0004】
特許文献1は、投影系の光学素子の温度分布を設定するようにそれぞれ働く第1及び第2温度制御部を有する温度設定デバイスを備えた、リソグラフィ装置を記載している。第1及び/又は第2温度制御部を用いて、露光動作中又は露光動作外の投影系の収差の変化が低減される。2つの温度制御部は、円弧状に構成されてレンズ素子の外縁領域に沿って延びる電熱線の形態の加熱素子を有することができる。加熱素子は、光学素子から離間して配置されてもよく、又は光学素子と接触してもよい。
【0005】
特許文献2は、投影光を生成する1次照明系と、投影レンズと、補正光を生成する2次照明系を有する光学補正系とを備えた、マイクロリソグラフィ投影露光装置を記載している。補正系は、局所的に異なる光路長を生成することで局所的な波面操作を行うために、補正光を用いて加熱材料を含む補正素子の部分領域を加熱するよう構成され得る。補正素子の加熱材料は、補正素子又は補正素子の基板のコーティングであり得る。補正光及び投影光の両方が通過する全てのレンズ素子が、補正素子に含有される加熱材料よりも補正光に対する吸収係数が低いレンズ素子材料から製造される。レンズ素子(単数又は複数)の材料は、投影光の波長(動作波長)及び投影光の波長とは異なる補正光の波長の両方に対して非常に低い吸収係数を有するべきである一方で、補正素子の加熱材料は、投影光の波長に対しては低い吸収係数を有するが補正光の波長に対しては高い吸収係数を有するべきである。
【0006】
さらに上述したように、特許文献2に記載の補正素子を用いる場合、加熱材料は、補正光の波長に対して高い吸収係数を有していなければならない。本体が合成石英ガラス(SiO2)から形成される補正素子の場合、本体は、約2.6μm以上のオーダの波長のみで十分な吸収がある。193nm、248nm、又は365nmのDUV波長域の動作波長で反射防止コーティングに用いられる多くの誘電体コーティング材料、例えばMgF2、LaF3、Al2O3、HfO2、及びTiO2も、約3μm~約10μmを超える波長でしか放射線を吸収しない。
【0007】
特許文献2は、光学素子に光源からの放射線が非回転対称に当たる光学装置を記載している。光学素子は、光源からの放射線の入射の強度分布と少なくとも略相補的に非回転対称であるように吸収が分布する吸収性コーティングを有する。吸収性コーティングに吸収されたエネルギーは、光学素子の追加加熱をもたらすことが意図され、これはより回転対称性のよい温度分布につながる。一例では、追加加熱は、投影光の吸収により実現され、投影光の僅かな割合がコーティングに吸収される。さらに別の例では、光源は投影光源及び補償光源を有し、補償光源からの放射線は吸収性コーティングへ指向される。コーティングの吸収係数は、既知の光源の、例えばレーザダイオードの発光波長に適合させることができる。追加加熱の程度は、補償光源の放射パワーにより設定することができる。
【0008】
特許文献2において、投影光の吸収中及び補償光源からの放射線の吸収中の両方で、投影光ビームが通過する光学素子の中央領域が吸収性コーティングで覆われないか、又はその外縁のみが吸収性コーティングで覆われる。したがって、投影ビームが入射する表面領域における光学素子の温度分布を高い精度又は空間分解能で事前規定又は設定することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0409276号明細書
【特許文献2】米国特許第8,773,638号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、透過光学素子の温度分布を高精度に事前規定又は設定することができる前述のタイプの光学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、吸収性コーティングが、吸収性コーティングを施された表面領域を0.1%未満且つ好ましくは0.01%を超える表面積割合で覆う吸収性微細構造を有する、前述の光学装置により達成される。
【0012】
本発明は、透過光学素子に構造化吸収性コーティングを施すことを提案する。構造化吸収性コーティングは、吸収性コーティングを施された表面領域全体の僅かな表面積割合のみを覆う吸収性微細構造からなる。0.1%未満の表面積割合は、吸収性コーティングで覆われた表面領域のうち微細構造が集中する特定の部分領域ではなく、表面領域の微細構造は、吸収性コーティングを施された表面領域全体に分布している。吸収性コーティングで覆われた表面積割合が小さいことにより、DUV放射線が吸収性コーティングにより減衰されすぎることなく、DUV放射線を照射される表面領域内に吸収性コーティングを施すこともできる。
【0013】
微細構造は、通常は島状に局所的に区切られて構成され、2つの隣接する微細構造間の各距離は概して5mm以下である。微細構造は、吸収性コーティングを施された表面領域に特に格子状に、すなわち相互に等距離に分布させることができる。これにより、吸収性コーティングへの加熱放射線の放射時の温度分布の設定が容易になる(下記参照)。しかしながら、表面領域における微細構造の均一な分布は必ずしも必要ではない。吸収性微細構造は、DUV波長域の、特に動作波長の放射線及び/又は約1550nm未満の波長の加熱放射線を吸収する(下記参照)。
【0014】
構造化吸収性コーティングは、吸収材料を含むか又は吸収材料からなるコーティングを最初に広い面積にわたって表面領域に施すことにより、表面領域に形成することができる。吸収性コーティングの構造化は、概してリソグラフィ法を用いて行われる構造化保護レジストの塗布後に、ウェットケミカルエッチング法又は反応性ガス雰囲気でのドライエッチングにより行うことができる。代替として、吸収性微細構造を形成するために、吸収性コーティングの材料をレーザアブレーションにより局所的に除去することができる。この場合、レーザビームは、広い面積にわたって施された吸収性コーティング上のビームスポットに集束させることができ、当該ビームスポットの寸法は微細構造の所望の構造サイズに対応する。この場合、レーザビームは、表面領域にわたって導かれ、吸収性微細構造の形成が意図される位置で例えば規則的に中断しながら表面領域を走査する。
【0015】
吸収性コーティングを施された透過光学素子は、結像に寄与する光学素子、例えばレンズ素子であり得る。しかしながら、透過光学素子は、波面収差の補正以外の光学的機能を果たさない例えば平面板の形態の補正素子とすることもできる。
【0016】
一実施形態において、吸収性コーティングを施された表面領域は、DUV放射線を照射される透過光学素子の表面領域を含むか又は形成する。前述のように、吸収性コーティングが当該コーティングを施された表面領域の0.1%未満の表面積割合のみを覆うことで、DUV放射線を照射される表面領域に(も)吸収性コーティングを施すことが可能となる。
【0017】
吸収性コーティングを被照射表面領域にのみ施すことが可能である。しかしながら、吸収性コーティングが、被照射表面領域を包含し、さらに被照射表面領域に隣接する透過光学素子の非照射表面領域まで延びることで、被照射表面領域の縁における温度分布を適合させる又は設定することも可能である。原理上、吸収性コーティングを被照射表面領域の部分領域にのみ施すことも可能である。しかしながら、この場合、被照射表面領域における温度分布は、吸収性コーティングが被照射表面領域全体に施される場合よりも精密に設定することができない。
【0018】
さらに別の実施形態において、微細構造は、20μm未満、好ましくは10μm未満の平均構造幅を有する。平均構造幅は、吸収性コーティングの全微細構造の構造幅の算術平均として定義される。各微細構造の構造幅は、表面領域上の微細構造の最大範囲、すなわち微細構造の外周に沿った2つの(任意の)点を相互接続する最長直線を意味すると理解される。微細構造の構造幅は、吸収性コーティングの構造化中に事前規定又は設定することができる。全微細構造が均一な構造幅を有することが可能だが、微細構造の構造幅が場所により変わることも可能である。光学装置の結像特性が微細構造の悪影響を受けないようにするために、微細構造が、特に動作波長よりも小さい比較的小さな構造幅を有すれば有利である。結像特性へのこのような悪影響は、例えば、マスク上の構造をウェハに結像するよう働くDUVリソグラフィ装置の投影光学ユニットに透過光学素子が配置される場合に起こり得る。
【0019】
さらに別の実施形態において、吸収性コーティングは金属コーティングとして構成される。表面積割合が比較的小さいか又は吸収性微細構造での表面領域の被覆率が小さいので、十分な加熱パワーを発生させるために、DUV波長域での吸収性コーティングの吸収が大きいこと、したがって吸収係数が高いことが有利又は必要である。金属材料は、概して、DUV波長域の、したがって光学装置の動作波長の範囲の放射線に対して吸収が大きい。金属材料はさらに、概して、約1550nm未満の波長域の放射線も吸収し、したがってDUV波長域外の加熱波長で、例えば約370nm又は400nm~約1550nmの波長域の加熱波長で吸収性コーティングに放射される加熱放射線を吸収するのにも適している。
【0020】
一発展形態において、吸収性コーティングは、Cr、Al、Au、及びAgを含む群から選択される少なくとも1つの材料を含む。これらの金属は、DUV波長域の放射線に対して高い吸収係数を有する。しかしながら、言うまでもなく、吸収性コーティングは、特にDUV波長域の放射線に対して吸収係数が高ければ他の金属材料を含むこともできる。原理上、吸収性コーティングは、吸収が十分であり構造化に適していれば非金属材料を含むことも可能である。吸収性コーティングは、概して単一の(例えば金属)層のみを含むが、場合によっては2つ以上の(例えば金属)層を含むこともできる。
【0021】
さらに別の実施形態において、吸収性コーティング(又は吸収性微細構造)は、50nm~200nmの厚さを有する。0.1%未満の小さな表面積割合にもかかわらず吸収性コーティングに最大加熱パワーを導入するために、吸収性コーティング、より正確には吸収性微細構造は、光学的に密であるべきであり、すなわち動作波長又は加熱波長の放射線を事実上透過しない(下記参照)。光学的に密なコーティングの作製に必要な厚さは、動作波長又は加熱波長と、コーティングの吸収材料、通常は金属材料の吸収係数とに応じて変わる。ここで用いられる波長及び吸収材料の場合、吸収性コーティング又は微細構造の厚さは上記で指定されたオーダとすべきである。
【0022】
さらに別の実施形態において、動作波長のDUV放射線に対する反射防止コーティングが吸収性コーティングに施される。反射防止コーティングは、吸収性コーティングで覆われた表面領域と、透過光学素子の表面のさらなる領域とを含むことができる。反射防止コーティングは、概して透過光学素子の第1入射側表面及び第2出射側表面の両方に施される。これに対して、吸収性コーティングは、通常は透過光学素子の入射側表面のみに施され、透過光学素子の出射側表面には施されない。しかしながら、原理上、吸収性コーティングを透過光学素子の出射側表面に施すこと又は吸収性コーティングを入射側表面及び出射側表面の両方に施すことも可能である。
【0023】
さらに別の実施形態において、微細構造の表面積割合は、吸収性コーティングを施された表面領域におけるDUV放射線の強度分布に特に応じて場所により変わる。この実施形態において、DUV放射線に対する吸収性コーティングの吸収は、表面領域に入射するDUV放射線の局所強度又は強度分布に応じて通常は事前規定される。このように、所与の又は既知の強度分布では、加熱放射源をこの目的で必要とすることなく、透過光学素子における所定の静的な温度分布、したがって所定の静的な波面又は波面補正を事前規定することが可能である。
【0024】
吸収性微細構造の表面積割合は、例えばDUV波長域の局所強度が低い表面領域の部分領域では、DUV放射線の局所強度が高い表面領域の部分領域よりも大きくなるよう選択することができる。このように、吸収性コーティングでのDUV放射線の追加吸収により、透過光学素子内でできる限り均一な温度分布、したがって透過光学素子の通過時にできる限り一定の波面を事前規定することが可能となる。しかしながら、例えば光学装置の他の光学素子により生じた波面又は結像収差を補償するために、吸収性微細構造の表面積割合が場所により変わることにより、平面状の又は一定の波面から逸脱する所望の波面を目標通りに事前規定することも可能である。吸収性微細構造の表面積割合は、表面領域で場所により変わる微細構造の構造幅により、且つ/又は表面領域で場所により変わる隣接する微細構造間の距離により変えることができる。
【0025】
さらに別の実施形態において、透過光学素子は、瞳面に又はその近傍に配置される。瞳面(又はその近傍)に配置することは、特に微細構造の局所的吸収又は表面積割合が入射DUV放射線の強度分布に応じて変わる前述の場合に有利である。この場合、微細構造の局所的な表面積割合は、光学装置の照明系の照明設定に適合させることができるか、又は瞳面に配置された光学素子上でDUV放射線の特定の強度分布を発生させる照明設定に最適化することができる。本願の意味の範囲内で、「瞳面の近傍」という表現は、結像させた像点が透過光学素子の光学的に透明な表面又は被照射表面領域の50%以上の表面積割合を照明するような瞳面からの距離に、透過光学素子が配置されるようなものと理解される。
【0026】
一発展形態において、光学装置はさらに、吸収性コーティングを施された表面領域における微細構造の表面積割合の場所による変化がそれぞれ異なる複数の透過光学素子を有するマガジンと、透過光学素子の1つをマガジンから光学装置のビーム経路及びその逆に輸送する輸送デバイスと、DUVリソグラフィ装置の照明設定に好ましくは応じて輸送デバイスを制御する制御デバイスとを備える。
【0027】
この発展形態では、前述の吸収性微細構造を有する吸収性コーティングをそれぞれ有する透過光学素子は、マガジンに格納される。透過光学素子は、吸収性微細構造の表面積割合の場所による変化がそれぞれ異なる。制御デバイスは、光学装置の後続の動作に特に適した透過光学素子の1つを選択し、それをビーム経路に導入するか又はそれを別のあまり適していない透過光学素子と交換する働きをする。
【0028】
この場合、吸収性微細構造の表面積割合の場所による変化は、特にDUVリソグラフィ装置の照明系の複数の異なる照明設定の1つに適合又は最適化させることができる。この場合、制御デバイスは、選択された照明設定に応じて、この照明設定に最適化された透過光学素子の1つを選択することができる。照明系の照明設定は、例えば二重極照明、四重極照明、リングフィールド照明等とすることができる。制御デバイスは、プロセッサ及びメモリを有する適当なプログラマブルデバイス(ハードウェア及び/又はソフトウェア)の形態で構成することができる。
【0029】
さらに別の実施形態において、光学装置は、吸収性コーティングを施された透過光学素子の表面領域に加熱放射線を放射する少なくとも1つの加熱光源を有する加熱デバイスを備える。前述したように、吸収性コーティングを用いて、透過光学素子の材料及び反射防止コーティングが吸収しないか又は僅かにしか吸収しない加熱波長でも透過光学素子の放射加熱を実現することができる。この場合、加熱放射線の吸収は、加熱波長(単数又は複数)を吸収する構造化吸収性コーティングで行われる。
【0030】
さらに別の実施形態において、加熱光源は、400nm~1550nmの波長域の少なくとも1つの加熱波長で表面領域に加熱放射線を放射するよう構成される。前述したように、吸収性コーティングでの加熱放射線の吸収により、例えば、上記で指定された波長域において電気通信用途で標準として用いられるような高出力ダイオードの形態で、加熱光源を用いることが可能である。
【0031】
さらに別の実施形態において、加熱デバイスは、加熱光源の加熱放射線を吸収性コーティングの異なる位置に位置合わせするスキャナデバイス、及び/又は吸収性コーティングの異なる位置を照射する加熱光源の格子配置を有する。加熱放射線が位置合わせされる異なる位置は、特に吸収性微細構造の位置であり得る。スキャナデバイスを用いて、例えば吸収性コーティングで覆われた表面領域全体を走査することが可能であり、吸収性コーティングで覆われた表面領域で所望の強度分布を発生させるために、加熱光源の、例えばレーザのパワー又は強度は場所により変えられる。この場合、場合によっては、吸収性微細構造間に位置する表面領域上の位置で、加熱光源のパワーを事実上略ゼロに減らすことができる。例えば(レーザ)ダイオードの形態の複数の加熱光源がアレイ状に配置される場合、各加熱光源は、少なくとも1つの吸収性微細構造が位置する表面領域上の位置に通常は割り当てられる。特にこの実施形態において、表面領域における吸収性微細構造も同様に格子状に配置されれば有利である。さらに、この場合、全ての吸収性微細構造が同じ構造幅を有していれば、すなわち表面積割合が場所により変わらなければ概して有利である。
【0032】
構造化吸収性コーティングを用いた透過光学素子の局所的な放射加熱のための前述の概念は、例えば前掲の特許文献1に記載のように、例えば電熱線の形態の加熱素子を用いて温度分布、例えば抵抗加熱を事前規定又は設定することを可能にする他の概念と組み合わせることもできる。
【0033】
本発明のさらに他の特徴及び利点は、本発明に必須の詳細を示す図面の図を参照した本発明の以下の例示的な実施例の説明から、また特許請求の範囲から明らかになる。個々の特徴のそれぞれを、単独で又は本発明の一変形形態において複数の任意の組み合わせで実施することができる。
【0034】
例示的な実施形態を概略図に示し、以下の説明で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2a】構造幅が場所により変わる複数の吸収性微細構造を有する吸収性コーティングを有する透過光学素子の概略図を示す。
【
図2b】強度が場所により変わる加熱放射線が吸収性微細構造に放射される、
図2aに類似の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の図面の説明において、同じ又は同じ機能を有するコンポーネントには同一の参照符号を用いる。
【0037】
図1は、ビーム整形・照明系2及び投影系4を備えたDUVリソグラフィ装置1の概略図を示す。ビーム整形・照明系2及び投影系4は、真空ハウジング内に配置され且つ/又は対応する駆動デバイスを有する機械室により囲まれることができる。
【0038】
DUVリソグラフィ装置1は、DUV光源6を備える。例えば、DUV波長域の、例えば193nmの動作波長λBのDUV放射線8を発するArFエキシマレーザを、DUV光源6として設けることができる。代替として、DUV波長域の異なる動作波長λB、例えば248nm又は365nmのDUV放射線8を発するDUV光源6を用いることができる。
【0039】
図1に示すビーム整形・照明系2は、DUV放射線8をフォトマスク10へ導く。フォトマスク10は、透過光学素子として構成され、系2、4の外部に配置することができる。フォトマスク10は、投影系4により縮小形態でウェハ12等に結像される構造を含む。
【0040】
投影系4は、フォトマスク10をウェハ12に結像するための複数のレンズ素子16及び/又はミラー18を含む。この場合、投影系4の個々のレンズ素子16及び/又はミラー18を、投影系4の光軸14に対して対称に配置することができる。DUVリソグラフィ装置1のレンズ素子及びミラーの数は、図示の数に制限されないことに留意されたい。より多くの又はより少ないレンズ素子及び/又はミラーを設けることもできる。さらに、ミラーは、概してビーム整形のために前面が湾曲している。
【0041】
レンズ素子16とウェハ12との間の空隙は、屈折率が1よりも大きい液体媒体20で置き換えることができる。液体媒体は、例えば高純度水であり得る。このような構成は、液浸リソグラフィとも称し、ウェハ12へのフォトマスク10の結像中の分解能が向上する。
【0042】
投影系4の瞳面22に配置される投影系4の透過レンズ素子16の1つを、
図2aに詳細に示す。レンズ素子16は、図示の例ではDUV放射線8に対して透明である合成石英ガラス(SiO
2)からなる本体24を含む。本体24は、その両面に、DUV放射線8が通過する第1入射側表面26及び第2出射側表面28を有する。DUV放射線8のビーム経路30、より正確には当該ビーム経路の外縁を、
図2aに破線で示す。
図2aで識別できるように、DUV放射線8は、レンズ素子16の第1表面26全体を覆わない表面領域26aでレンズ素子16の第1表面26に放射され、すなわち第1表面26の外側部分領域にはDUV放射線8が当たらない。
【0043】
図2aで同様に識別できるように、構造化吸収性コーティング32が、DUV放射線8を被照射表面領域26aに施される。
図2aに示す例では、構造化吸収性コーティング32は、
図2aに黒塗り矩形で示す複数の吸収性微細構造34からなる。吸収性微細構造34は、吸収性コーティング32を施された表面領域26aを完全に覆うのではなく、被照射表面領域26aの総面積Aの0.01%~0.1%である表面積割合Fでのみ上記表面領域を覆う。構造化吸収性コーティング32の表面積割合Fが小さいので、DUV放射線8の僅かな割合のみが吸収性微細構造34により吸収され、光学素子16の透過率が吸収性コーティング34の結果として僅かにしか低下しないことが確実となる。
【0044】
図2aに示す例では、構造化吸収性コーティング32、より正確には吸収性微細構造34は、動作波長λ
BのDUV放射線8に対して光学的に密であり、すなわちDUV放射線8を事実上透過しない。これを達成するために、吸収性微細構造34又は吸収性コーティング32は、通常は50nm~200nm程度であるべき十分な厚さdを有する必要がある。さらに、吸収性微細構造34は、DUV放射線8に対して最大限の吸収係数を有する材料を含むべきである。
【0045】
図2aに示す例では、吸収性コーティング32は金属コーティングとして構成され、すなわち吸収性微細構造34は金属材料からなる。金属材料は概して約150nm~約370nmのDUV波長域で高い吸収係数を有するので、これは有利である。図示の例では、吸収性微細構造34を構成する金属はCrだが、高い吸収係数を有する異なる金属、例えばAl、Au、又はAgでもあり得る。
図2aに同様に示すように、DUV放射線8に対する反射防止コーティング35aが、第1表面26の吸収性コーティング32の広範囲に施される。DUV放射線8に対する反射防止コーティング35bも同様に、第2表面28に施される。反射防止コーティング35a、35bは、DUV放射線8に対する吸収が比較的小さい、フッ化物又は酸化物材料から構成され、例えばMgF
2、LaF
3、Al
2O
3、HfO
2、又はTiO
2から構成される。
【0046】
吸収性微細構造34は、金属から構成された、ここに記載の例ではクロムから構成された吸収性コーティングを最初に表面領域26aの広範囲に堆積させることにより形成される。従来のコーティング法がこの堆積に用いられる。図示の例では、吸収性コーティング32の構造化のために、構造化保護レジストが金属コーティングに塗布され、当該レジストは、保護レジストで覆われていない領域で金属コーティングを除去する後続のエッチング法のためのエッチングマスクとして働くので、吸収性微細構造34のみが表面領域26aに残る。エッチング法は、ウェットケミカルエッチング法とすることができるが、反応ガス雰囲気でのドライエッチングも可能である。代替として、吸収性微細構造34は、広範囲に施された金属コーティング又は層上にレーザアブレーションにより作製することもできる。
【0047】
ウェハ12へのフォトマスク10の構造の結像の品質に悪影響を及ぼさないようにするために、吸収性微細構造34は、構造幅bが大きすぎてはならない。
図2bに示す例では、吸収性微細構造34の構造幅bは、場所により変わるが、全ての微細構造34で平均した構造幅bは、20μm未満、より正確には10μm未満である。
図2aでは、吸収性微細構造34は正確に均一な分布で配置されておらず、すなわち隣接する吸収性微細構造34の中心間の距離Dは一定ではなく場所により変わる。したがって、
図2aに示す例では、吸収性微細構造32の表面積割合Fは、場所により、すなわち被照射表面領域26a上の位置Pに応じて変わる。
【0048】
被照射表面領域26aに沿った吸収性微細構造34の表面積割合Fの変化は、X方向の被照射表面領域26aに沿ったDUV放射線8の強度分布I(x)の変化に応じて変わる。言うまでもなく、DUV放射線8の強度分布はY方向でも変わるが、これは
図2aのレンズ素子16の断面図では識別できない。
図2aに示す例では、表面領域26aに入射したDUV放射線8の場所により可変のパワー密度又は強度分布I(x)を、異なる幅の矢印で表し、矢印の幅が広いほど高いパワー密度又は局所強度I(x)に対応し、矢印が狭いほど低いパワー密度又は局所強度I(x)に対応する。
【0049】
図2aで識別できるように、DUV放射線8の局所強度I(x)が低い低強度照射位置Pにおける吸収性微細構造34の表面積割合Fは、DUV放射線8の局所強度I(x)が高い位置Pよりも大きい。DUV放射線8の強度I(x)が高い位置Pほど本体24の加熱が大きくなることは、この場合、DUV放射線8の強度I(x)が低い位置Pほど吸収性微細構造34の表面積割合Fが大きいことでより多くのDUV放射線8がコーティング32に吸収されることにより補償される。本体24において均一な温度分布、したがって均一な屈折率をこのようにして発生させることができる。DUV放射線8がレンズ素子16を通過すると、
図2aに一点鎖線で示す平面波面36を、このようにして生成又は取得することができる。言うまでもなく、基本的に任意の幾何学的形状の波面36を、レンズ素子16上の吸収性微細構造34の表面積割合Fの場所による変化を適切に適合させることにより生成することができる。
【0050】
言うまでもなく、所望の波面36は、入射DUV放射線8の特定の強度分布I(x)に対してのみ生成される。例えばビーム整形・照明系2の照明設定の変化により強度分布I(x)が変わる場合、所望の幾何学的形状から逸脱した幾何学的形状の波面36が生成される。
【0051】
この場合にも、レンズ素子16の本体の所望の温度分布、したがって目標波面36を生成するために、
図1に示すDUVリソグラフィ装置1は、吸収性コーティング32を施された表面領域26aにおける微細構造34の表面積割合Fの場所による変化がそれぞれ異なる複数の透過光学素子16’を格納するマガジン38を備える。この場合、各透過光学素子16’、より正確には表面積割合Fの変化は、ビーム整形・照明系2の複数の照明設定S1、S2、…のそれぞれに最適化される。ビーム経路30に配置されたレンズ素子16をマガジン38に格納されたレンズ素子16’の1つと交換するために、DUVリソグラフィ装置は、例えばレバーアーム等であり得る輸送デバイス40を備える。輸送デバイス40の制御のために、DUVリソグラフィ装置1は制御デバイス42を備える。制御デバイス42は、ビーム整形・照明系2の照明設定S1、S2、…の変更の場合に、ビーム経路30に配置されたレンズ素子16を、マガジン38に格納された表面積割合Fの場所による変化が各照明設定S1、S2、…に最適化されたレンズ素子16’の1つに交換するよう構成される。
【0052】
図2aで説明したレンズ素子16の場合、本体24の所望の温度分布、したがって所望の波面36は、吸収性微細構造34の表面積割合Fの場所による変化により生成される。
図2bに示す透過光学素子44は、第1に板状の光学素子(平行平面板)である点で
図2aに示す光学素子16とは異なる。さらに、
図2bに示す板状の光学素子44の場合の吸収性微細構造34は、相互に等距離Dで格子状に配置され、同一の構造幅bを有する。したがって、
図2bに示す光学素子44の場合、吸収性微細構造34の表面積割合Fは、場所により変わるのではなく一定である。
【0053】
図2bに示す例において光学素子44の本体24に所望の温度分布を発生させるために、光学素子44の放射加熱用の加熱デバイス46が用いられる(
図1参照)。
図1に示す例では、加熱デバイス46は、加熱波長λ
Hの加熱放射線50を生成する、例えば高出力レーザダイオードの形態のレーザを含む加熱光源48を有する。加熱デバイス46は、投影系4のビーム経路30に結合された加熱放射線50を偏向させる1つ又は複数のスキャナミラーを備えたスキャナデバイス52も含む。加熱放射線50は、投影系4のビーム経路30における第1光学素子である板状の光学素子44に当たる。スキャナデバイス52を用いて、板状の光学素子44上の加熱放射線50の位置Pを変更することが可能である。加熱光源48のパワーは調整可能なので、板状の光学素子44の第1表面26で加熱放射線50の場所に応じた強度分布I
H(x)を発生させることが可能である。
図2bに示す例では、加熱放射線50を照射され吸収性コーティング32を施された表面領域は、板状の光学素子44の第1表面26全体であり、DUV放射線8を照射される表面領域26aを包含する。制御デバイス42は、板状の光学素子26の表面25における、ビーム整形・照明系2の各照明設定S1、S2、…に適合させた場所に応じた強度分布I
H(x)を事前規定するために、加熱光源48を制御する働きをすることができる。
【0054】
図1に示す加熱光源48の代替として又は追加として、加熱デバイス46は、
図2bに示すように、例えばレーザダイオードの形態の加熱光源48の格子配置54を有することができる。各加熱光源48により生成された加熱放射線50のパワーは、
図2bに異なる幅の矢印で示すように個別に設定することができる。
図2bに示す例では、各加熱光源48は、吸収性微細構造34のそれぞれと位置合わせされる。しかしながら、言うまでもなく、概して各加熱光源48は複数の吸収性微細構造34と位置合わせされる。加熱光源49のパワーの個別設定により、第1表面26における加熱放射線50の場所に応じた強度分布I
H(x)を生成又は設定することも可能である。
【0055】
加熱放射線50の強度分布I
H(x)に能動的に影響を及ぼすことができることにより、板状の光学素子44の本体24の所望の温度分布を発生させることができ、当該分布により所望の幾何学的形状の波面36が生成される。このように、
図2bに示す光学素子44を用いて、DUVリソグラフィ装置1の投影系4の波面36の能動的な設定又は補正を行うことができる。この場合、特に投影系4の他の光学素子16、18で生じる波面収差を補償することができる。
【0056】
図1に示す加熱光源48及び
図2bの格子配置52の加熱光源48の両方が、400nm~1550nmの波長域の加熱波長λ
Hで板状の光学素子44に加熱放射線50を放射するよう構成される。吸収性コーティング32は指定の波長域の放射線も吸収するので、これが可能である。したがって、電気通信用途に一般的であるような従来の高出力ダイオードを加熱光源(単数又は複数)48として用いることができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DUVリソグラフィ用の光学装置、特にDUVリソグラフィ装置(1)であって、
DUV波長域の少なくとも1つの動作波長(λ
B)のDUV放射線(8)を生成する光源(6)と、
吸収性コーティング(32)を施された、前記DUV放射線(8)を透過する光学素子(16、44)と
を備えた光学装置(1)において、
前記吸収性コーティング(32)は、該吸収性コーティング(32)を施された表面領域(26、26a)を0.1%未満で且つ好ましくは0.01%を超える表面積割合(F)で覆う吸収性微細構造(34)を有
し、且つ
光学装置は、前記吸収性コーティング(32)を施された前記透過光学素子(44)の前記表面領域(26)に加熱放射線(50)を放射する少なくとも1つの加熱光源(48)を有する加熱デバイス(46)をさらに備えることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の
光学装置において、前記吸収性コーティング(32)を施された前記表面領域は、前記DUV放射線(8)を照射される前記透過光学素子(16)の表面領域(26a)を含むか又は形成する
光学装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の
光学装置において、前記微細構造(34)は、20μm未満、好ましくは10μm未満の平均構造幅(b)を有する
光学装置。
【請求項4】
請求項1
又は2のいずれか1項に記載の
光学装置において、前記吸収性コーティング(32)は、金属コーティングとして構成される
光学装置。
【請求項5】
請求項4に記載の
光学装置において、前記吸収性コーティング(32)は、Cr、Al、Au、及びAgを含む群から選択される少なくとも1つの材料を含む
光学装置。
【請求項6】
請求項1
又は2に記載の
光学装置において、前記吸収性コーティング(32)は、50nm~200nmの厚さ(d)を有する
光学装置。
【請求項7】
請求項1
又は2に記載の
光学装置において、前記少なくとも1つの動作波長(λ
B)の前記DUV放射線(8)に対する反射防止コーティング(35a)が、前記吸収性コーティング(32)に施される
光学装置。
【請求項8】
請求項
1に記載の
光学装置において、前記微細構造(34)の前記表面積割合(F)は、特に前記吸収性コーティング(32)を施された前記表面領域(26a)における前記DUV放射線(8)の強度分布(I(x))に応じて場所により変わる
光学装置。
【請求項9】
請求項
1に記載の
光学装置において、前記透過光学素子(16)は、瞳面(22)又はその近傍に配置される
光学装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の
光学装置において、
前記吸収性コーティング(32)を施された前記表面領域(26a)における前記微細構造(34)の前記表面積割合(F)の場所による変化がそれぞれ異なる複数の透過光学素子(16’)を有するマガジン(38)と、
前記透過光学素子(16’)の1つを前記マガジン(38)から光学装置(1)のビーム経路(30)に輸送する輸送デバイス(40)と、
光学装置(1)の照明設定(S1、S2、…)に好ましくは応じて前記輸送デバイス(40)を制御する制御デバイス(42)と
をさらに備えた
光学装置。
【請求項11】
請求項1
又は2に記載の
光学装置において、前記透過光学素子は、結像光学素子、特にレンズ素子(16)である
光学装置。
【請求項12】
請求項1
又は2に記載の
光学装置において、前記透過光学素子は、好ましくは波面収差を補正する板状の補正素子(44)である
光学装置。
【請求項13】
請求項
1又は2に記載の
光学装置において、前記加熱光源(48)は、400nm~1550nmの波長域の少なくとも1つの加熱波長(λ
H)で前記表面領域(26)に加熱放射線(50)を放射するよう構成される
光学装置。
【請求項14】
請求項
1又は2に記載の
光学装置において、前記加熱デバイス(46)は、場所により可変の強度分布(I
H(x))で前記透過光学素子(44)の前記表面領域(26)に前記加熱放射線(50)を放射するよう構成される
光学装置。
【請求項15】
請求項
1又は2に記載の
光学装置において、前記加熱デバイス(46)は、前記加熱光源(48)の前記加熱放射線(50)を前記吸収性コーティング(32)の異なる位置(P)に位置合わせするスキャナデバイス(52)、及び/又は前記吸収性コーティング(32)の異なる位置(P)を照射する加熱光源(48)の格子配置(5)を有する
光学装置。
【国際調査報告】