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特表2024-535080電子システム、ユーザインターフェース部材、薬物送達デバイス、及び薬物送達デバイスが流体に曝露されているか又は曝露されたかどうかを検出するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】電子システム、ユーザインターフェース部材、薬物送達デバイス、及び薬物送達デバイスが流体に曝露されているか又は曝露されたかどうかを検出するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
A61M5/31 520
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518314
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2022076296
(87)【国際公開番号】W WO2023046801
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】21315184.8
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ポール・リチャード・ドレイパー
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ポール・モリス
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・ケア・スティール
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066EE06
4C066EE14
4C066FF05
4C066HH02
4C066HH12
4C066QQ52
4C066QQ77
4C066QQ78
4C066QQ82
(57)【要約】
電子システム、ユーザインターフェース部材、薬物送達デバイス、及び薬物送達デバイスが流体に曝露されているか又は曝露されたかどうかを検出するための方法。少なくとも一実施形態では、電子システムは、測定(21)ユニットで得られた測定結果を基準と比較し、比較の結果に基づいて流体への薬物送達デバイスの曝露を判定するように構成される。測定結果は、薬物送達デバイスに関する情報を提供するのに適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(100)用の電子システムであって、
測定ユニット(21)で得られた測定結果であって、前記薬物送達デバイス(100)に関する情報を提供するのに適している前記測定結果を基準と比較し、
前記比較の結果に基づいて流体への前記薬物送達デバイス(100)の曝露を判定する
ように構成される、薬物送達デバイス(100)用の電子システム。
【請求項2】
前記比較の前記結果に基づいて流体への前記薬物送達デバイス(100)の電気要素の曝露を判定するように構成される、請求項1に記載の電子システム。
【請求項3】
前記電子システムは、前記測定ユニット(21)の前記動作電圧の変化に対する前記基準を調整するように構成され、及び/又は
前記電子システムは、先行する期間中に得られた前記測定ユニット(21)の以前の測定結果に基づいて前記基準を調整するように構成される、請求項1又は2に記載の電子システム。
【請求項4】
前記測定結果を前記基準と比較することは、
前記測定結果の振幅を前記基準の振幅と比較することと、
前記測定結果のダイナミックレンジを前記基準のダイナミックレンジと比較することと、
前記測定結果の曲線形状を前記基準の曲線形状と比較すること
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の電子システム。
【請求項5】
前記薬物送達デバイス(100)は、いくつかの薬物送達プロセスを順次実施するように構成され、
前記電子システムは、最後のn回の薬物送達プロセスに関連付けられた前記測定ユニット(21)の測定結果に基づいて前記基準を調整するように構成され、n≧1である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電子システム。
【請求項6】
前記測定結果は、前記薬物送達デバイス(100)の使用中に得られた測定結果であり、及び/又は
前記測定結果は、前記薬物送達デバイス(100)が使用されない期間中に得られた測定結果である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の電子システム。
【請求項7】
前記測定ユニット(21)は、薬物送達プロセス中に送達用量の量を測定するためのセンサである、請求項1~6のいずれか一項に記載の電子システム。
【請求項8】
前記測定ユニット(21)は、光学センサである、請求項1~7のいずれか一項に記載の電子システム。
【請求項9】
前記電子システムは、前記測定ユニット(21)が測定結果を得る測定期間中に、前記測定ユニットで得られた測定結果を前記基準と比較するように構成され、前記電子システムは、前記測定期間の初期段階での1つ以上の測定結果が前記基準と比較されないように構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の電子システム。
【請求項10】
前記電子システムは、流体への前記薬物送達デバイス(100)の曝露が確認された場合にユーザに通信するために出力信号を生成するように構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載の電子システム。
【請求項11】
前記測定結果を受信し、前記測定結果を前記基準と比較し、前記比較の前記結果に基づいて流体への前記薬物送達デバイス(100)の曝露を判定するためのプロセッサ(27)を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の電子システム。
【請求項12】
前記測定結果を得るための前記測定ユニット(21)と、
流体への前記薬物送達デバイス(100)の曝露が確認された場合にユーザに通信するための通信ユニット(25)と
を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の電子システム。
【請求項13】
前記電子システムは、前記測定ユニット(21)の前記測定結果と更なる測定ユニット(21)の測定結果とに基づいて流体への前記薬物送達デバイス(100)の曝露を判定するように構成される、請求項1~12のいずれか一項に記載の電子システム。
【請求項14】
薬物送達デバイス(100)用のユーザインターフェース部材(2)であって、
請求項1~13のいずれか一項に記載の電子システムを含み、
前記ユーザインターフェース部材(2)は、用量ダイヤル設定及び/又は薬物送達プロセスを実施するための前記ユーザインターフェース部材を操作するためにユーザによってタッチされるように構成される、
ユーザインターフェース部材(2)。
【請求項15】
薬物送達デバイス(100)であって、
請求項1~13のいずれか一項に記載の電子システム又は請求項14に記載のユーザインターフェース部材(2)と、
薬物容器を保持するための容器ホルダ(10)と
を含む、薬物送達デバイス(100)。
【請求項16】
薬物が充填された薬物容器(14)を含む、請求項15に記載の薬物送達デバイス(100)。
【請求項17】
流体への薬物送達デバイス(100)の曝露を検出するための方法であって、
測定ユニット(21)は、前記薬物送達デバイス(100)内に配置され、前記方法は、
前記測定ユニット(21)で得られた測定結果を受信することと、
前記測定結果を基準と比較することと、
前記比較の結果に基づいて流体への前記薬物送達デバイス(100)の曝露を判定することと
を含む、
方法。
【請求項18】
前記測定ユニット(21)で得られた前記測定結果は、前記薬物送達デバイス(100)に関する情報を提供するのに適している、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、
前記比較の前記結果に基づいて流体への前記薬物送達デバイス(100)の電気要素の曝露を判定することを含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、請求項1~13のいずれか一項に記載の電子システムによって実施される、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
薬物送達デバイス(100)用の電子システムであって、前記電子システムは、
前記測定ユニット(21)で得られた測定結果であって、前記薬物送達デバイス(100)に関する情報を提供するのに適している前記測定結果を基準と比較し、
前記比較の結果に基づいて流体への前記薬物送達デバイス(100)の電気要素の曝露を判定する
ように構成される、電子システム。
【請求項22】
前記測定ユニット(21)は、放射を放出し、前記薬物送達デバイス(100)の可動部材によって反射された前記放射の一部を検出するように構成された光学センサ(21)である、請求項1~13又は21のいずれか一項に記載の電子システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
薬物送達デバイス用の電子システムが提供される。更に、薬物送達デバイス用のユーザインターフェース部材、薬物送達デバイス、及び薬物送達デバイスが流体に曝露されているか又は曝露されたかどうかを検出するための方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
注射を投与することは、ユーザ及び医療従事者にとって精神的にも肉体的にも多くのリスク及び課題を呈するプロセスである。薬物送達デバイスは、自己注射を患者にとってより容易にすることを目的とし得る。電子機器を使用する薬物送達デバイスは、製薬業界においても、ユーザ又は患者にもますます人気が高まっている。薬物送達デバイスが正しく動作することを保証するために、電子構成要素の安定した動作が望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
達成すべき1つの目的は、薬物送達デバイス用の改良された電子システムを提供することである。好ましくは、電子システムは、流体への薬物送達デバイスの電気要素の曝露を検出することを可能にし得る。達成すべき更なる目的は、改良されたユーザインターフェース部材、改良されたアセンブリ、及び改良された薬物送達デバイス、並びに薬物送達デバイスが流体に曝露されているか又は曝露されたかどうかを検出するための改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これらの目的は、中でもとりわけ、独立請求項の主題によって達成される。有利な実施形態及び更なる発展形態は、従属請求項の主題であり、以下の説明及び図面にも提示される。
【0005】
まず、薬物送達デバイス用の電子システムが指定される。
【0006】
少なくとも一実施形態によれば、電子システムは、測定ユニットで得られた測定結果を基準と比較するように構成される。測定ユニットは、電子システムの一部であり得る。詳細には、電子システムは、測定ユニットで得られた測定結果の基準からの偏差を決定するように構成され得る。各測定値は、測定ユニットの測定値又は読取値にそれぞれ関連付けられ得る。測定値は、測定ユニットのアナログ信号又は測定ユニットのデジタル化信号の形式であり得る。例えば、アナログ測定値は、アナログデジタル変換器(ADC)を利用してデジタル信号に変換される。基準は、それぞれ基準値、基準値の分布、又は基準値の曲線であり得る。
【0007】
ここでは及び以下では、測定結果を基準と比較することは、詳細には、例えば、測定値と基準値との差を決定することによって、及び/又は測定値が基準値を上回っているか、基準値を下回っているかを判定することによって、それぞれの測定値と基準値とを比較することを意味する場合がある。
【0008】
少なくとも1つの実施形態によれば、測定結果を基準と比較することは、測定結果の振幅を基準の振幅と比較することを含む。
【0009】
少なくとも1つの実施形態によれば、測定結果を基準と比較することは、測定結果のダイナミックレンジを基準のダイナミックレンジと比較することを含む。
【0010】
少なくとも一実施形態によれば、測定結果を基準と比較することは、測定結果の曲線形状を基準の曲線形状と比較することを含む。この比較は、測定結果の曲線と基準の曲線との間のカイ乗値を決定することを含み得る。
【0011】
測定ユニットは、センサであり得るか、又はセンサを含み得る。測定ユニットは、特に、電気又は電子信号の形式で測定結果を提供し及び/又は動作させるのに電力を必要とする、電気又は電子測定ユニットであり得る。
【0012】
少なくとも一実施形態によれば、測定結果は、薬物送達デバイスに関する情報を提供するのに適している。換言すれば、薬物送達デバイスに関する情報は、測定結果から抽出可能である。情報は、例えば、薬物送達デバイスの状態に関する情報、又は薬物送達デバイスによって若しくは薬物送達デバイスを用いて実施される動作プロセスに関する情報であり得る。デバイスの状態に関する情報は、薬物送達デバイス若しくはその要素が流体に曝露されているか又は曝露されたかどうかの情報と異なる情報であり得る。それにもかかわらず、本開示では、薬物送達デバイス又はその要素が流体に曝露されているか又は曝露されたかを確認するために測定結果が評価され得る。
【0013】
例えば、測定ユニットは、薬物送達デバイスの動作プロセスをそれぞれ測定又は検出するように構成される。動作プロセスは、薬物送達デバイスの薬物送達プロセス又は用量設定プロセス又は起動プロセスであり得る。測定結果又は測定値はそれぞれ、動作プロセスを示し得る。例えば、測定ユニットは、測定ユニットに対する薬物送達デバイスの要素の移動を検出するように構成され、測定結果は、かかる移動を示し得る。
【0014】
少なくとも一実施形態によれば、電子システムは、比較の結果に基づいて流体への薬物送達デバイス又は電子システムの曝露を判定するように構成される。詳細には、このことは、薬物送達デバイス、例えば薬物送達デバイスの内部、又は内部の一部、特に薬物送達デバイスの電気要素が流体に曝露されているか又は曝露されたかどうかを電子システムが判定できることを意味する。かかる曝露が起こっているかどうかの判定は、比較の結果に基づいて行われる。流体は、ガス状流体又は液体流体、例えば水又は水分であり得る。
【0015】
例えば、測定結果の振幅及び/又はダイナミックレンジ及び/又は曲線形状が、基準の振幅及び/又はダイナミックレンジ及び/又は曲線形状から例えば所定の閾値以上逸脱した場合、薬物送達デバイスが流体に曝露されている又は曝露されたと判定され得る。さもなければ、薬物送達デバイスがまだ流体に曝露されていないと判定され得る
【0016】
例えば、測定値、又は測定値の最大、最小若しくは平均測定値が、基準値、又は最大、最小若しくは平均基準値を例えば所定の閾値だけ上回る又は下回る場合、薬物送達デバイスが流体に曝露されている又は曝露されたと判定される。さもなければ、薬物送達デバイスがまだ流体に曝露されていないと判定され得る。
【0017】
少なくとも一実施形態では、薬物送達デバイス用の電子システムは、測定ユニットで得られた測定結果を基準と比較し、比較の結果に基づいて流体への薬物送達デバイスの曝露を判定するように構成される。測定結果は、薬物送達デバイスに関する情報を提供するのに適している。
【0018】
本発明は、数ある中でも、水分又は水又は他の流体が薬物送達デバイスに、例えばダイヤル設定及び/又は用量の吐出を検出する薬物送達デバイスのシステムにいくつかの影響を及ぼし得るという認識に基づいている。例えば、薬物送達デバイスが光学エンコーダシステムを利用する場合、光学センサの形態の測定ユニットからの読取値又は測定結果は、多くの要因に起因する水分、水又は他の流体の存在によって影響を受けることがある。
【0019】
水滴は、光学センサからの光の通過、及び/又は光学センサへの光の通過を妨げ、意図した光路の屈折又は拡大を引き起こし得る。光学センサ付近の水滴は、光学センサの能動エミッタ側に電力を供給し、又は光学センサの受光部側の電圧/電流を検出する、電気線路に接触し、個々の線路間の抵抗、静電容量、又はインダクタンスの変化をもたらし得る。このような光学光路の乱れ、又は光学センサに至る電気線路に接触する水分は、センサ読取値を監視することによって検出され得る。実際に、本発明者らは、センサ読取値又は測定結果が水の存在によって影響を受ける可能性があることを開発構築段階の間に収集された経験的データが示すことを観察した。水によって、センサの読取値又は測定結果が、通常は標準動作中に達しない飽和レベルに向かって増加し得る。それゆえ、期待値(基準)からのセンサの読取値の偏差は、センサの機能に影響を及ぼす水分が存在する又は存在したと判定するために使用することができる。
【0020】
本明細書で指定する電気システムを用いて、流体が薬物送達デバイスの使用又は堅牢性に何らかの悪影響を及ぼす前に流体の存在を検出することが可能である場合がある。このような場合、ユーザに、流体の存在への注意を喚起する、例えば、デバイス性能が損なわれる可能性があることを知らせることができる。
【0021】
少なくとも一実施形態によれば、測定ユニットは、薬物送達デバイス内に配置されるように構成されるか、又は薬物送達デバイス内に配置される。詳細には、測定ユニットは、薬物送達デバイスの内部又は薬物送達デバイスの部材の内部に配置されるように構成される。
【0022】
少なくとも一実施形態によれば、基準と比較するために使用される測定結果は、測定期間中に得られた測定結果である。測定期間は、例えば数秒の、所定の期間であり得る。例えば、測定期間は、少なくとも0.1秒、少なくとも0.5秒、少なくとも1秒、又は少なくとも10秒である。追加的又は代替的に、測定期間は、最大50秒、最大20秒、又は最大15秒であり得る。測定期間中に、測定ユニットは、複数回の測定結果、例えば、少なくとも10回の測定結果又は少なくとも100回又は少なくとも1000回の測定結果及び/又は最大10000回の測定結果を得ることがある。測定結果は、例えば、少なくとも100Hz、少なくとも1,000Hz、及び/又は最大5,000Hzの周波数で、測定期間中に周期的に得られ得る。例えば、周波数は、500Hz~4000Hzである。測定期間以外には、測定ユニットは測定を行わない。例えば、測定ユニットの電源がオフにされ得る。
【0023】
測定結果を基準と比較する場合、1つの測定期間の測定結果のみが考慮され得る。例えば、測定期間の測定結果の少なくとも一部又は全ての最大測定値、或いは測定期間の測定結果の少なくとも一部又は全ての平均測定値が基準と比較され得る。
【0024】
少なくとも一実施形態によれば、電子システムは、測定結果と基準との比較を繰り返し、例えば周期的に繰り返し、比較の結果に基づいて、流体への薬物送達デバイスの曝露を繰り返し判定するように構成される。例えば、電子システムは、ある測定期間が終了した後であって、次の測定期間が開始する前に、この測定期間の測定結果を基準と比較するように構成される。
【0025】
少なくとも一実施形態によれば、測定結果は、周期的に繰り返される測定期間の測定結果である。例えば、測定期間は、例えば薬物送達デバイスが使用されるか否かにかかわらず、少なくとも毎分、少なくとも毎時間、又は少なくとも毎日繰り返される。
【0026】
少なくとも一実施形態によれば、電子システムは、測定ユニットの動作電圧の変化に対する基準を調整するように構成される。例えば、電圧降下の形で動作電圧の変化は、薬物送達デバイスの経年劣化時に現れるか、又は使用に起因する消耗効果から生じる。電子システムは、この電圧降下に対する基準を調整するように構成され得る。
【0027】
測定ユニットは、バッテリなどの、電源によって電力が供給され得る。かかる電源は、電源によって提供される電圧(動作電圧)の低下という形で経年劣化又は消耗効果を示し得る。そして、動作電圧の低下は、測定ユニットの測定結果に影響を及ぼす。例えば、測定ユニットの最大読取値は、電圧の低下に伴って減少する。このような電圧の低下は、基準を調整することによって、例えば、基準を時間に依存させることによって考慮に入れられる。例えば、基準は、時間の増加に伴って減少するように設定される。基準の調整は、例えば、デバイスの最初の使用後の異なる時点に対する異なる基準を手動で設定することによって、事前に決定され得る。この設定は、薬物送達デバイスの製造中及び/又は電子システムのプログラミング中に行われ得る。
【0028】
少なくとも一実施形態によれば、電子システムは、電圧データに基づいて基準を調整するように構成され、電圧データは、測定ユニットの動作電圧を示す。この場合、電子システムは、詳細には、基準を動的に、すなわち電圧データに基づいて調整するように構成される。
【0029】
少なくとも一実施形態によれば、電子システムは、先行する期間中に得られた測定ユニットの以前の測定結果に基づいて基準を調整するように構成される。この場合、電子システムは、詳細には、以前の測定結果に基づいて基準を動的に調整するように構成される。
【0030】
例えば、基準は、測定ユニットの以前の測定結果の傾向に従うように調整される。例えば、以前の測定結果、例えば振幅又は最大測定値が、先行する期間中に時間の経過に伴って増加又は減少している場合、基準も増加又は減少させる。基準は、以前の測定結果又は以前の測定結果の平均値になるように選択され得る。
【0031】
少なくとも一実施形態によれば、基準は一定の基準である。この場合、基準は時間の経過に伴って変化しない。例えば、基準は、薬物送達デバイスの開発中に収集された経験的データに基づいて決定される。
【0032】
少なくとも一実施形態によれば、薬物送達デバイスは、いくつかの薬物送達プロセスを順次実施するように構成される。例えば、かかる各薬物送達プロセス中に、ダイヤル設定された用量がユーザに送達される。薬物送達デバイスは、少なくとも10回、少なくとも100回、又は少なくとも1000回の薬物送達プロセスを実施するように構成され得る。非常に多くの薬物送達プロセスを実施するために、薬物を貯蔵する薬物容器を変更する必要がある場合がある。
【0033】
少なくとも一実施形態によれば、電子システムは、最後のn回の薬物送達プロセスに関連付けられた測定ユニットの測定結果に基づいて基準を調整するように構成され、nは1以上である。例えば、nは、少なくとも5又は少なくとも10である。追加的又は代替的に、nは、最大50又は最大20である。
【0034】
薬物送達プロセスに関連付けられた測定結果は、特に、薬物送達プロセス中又は薬物送達プロセスの直前若しくは直後に、例えば、薬物送達プロセスの開始又は終了の前及び/又は後に、それぞれ最大1分間の時間窓内で得られた測定結果である。
【0035】
例えば、様々な薬物送達プロセスに関連付けられた最大又は平均測定値は、薬物送達プロセス毎に決定され、その後、基準値は、最後のn個の最大又は平均測定値に基づいて調整される。例えば、基準値は、最後のn個の最大又は平均測定値の平均値に設定される。
【0036】
少なくとも一実施形態によれば、測定結果は、薬物送達デバイスの使用中、詳細には薬物送達プロセス中、すなわち薬物が実際に送達される期間中に得られた測定結果である。例えば、測定期間は、薬物送達プロセスの期間である。
【0037】
少なくとも一実施形態によれば、測定結果は、薬物送達デバイスが使用されない期間中に、例えば後続の2つの薬物送達プロセス間の期間中に得られた測定結果である。詳細には、測定結果は、薬物送達プロセスの直前又は直後に得られ得る。そして、測定期間は、後続の2つの薬物送達プロセス間の期間であり得る。
【0038】
少なくとも一実施形態によれば、測定期間の開始時の測定結果は、基準との比較に使用されない(例えば、無視又は破棄される)。例えば、測定期間の少なくとも最初の5回、少なくとも最初の10回、又は少なくとも最初の15回の測定結果は使用されない。代替的又は追加的に、電子システムは、測定期間の初期段階での1つ以上の測定結果が基準と比較されないように構成され得る。すなわち、これらの測定結果は、比較演算では無視され得る。初期段階は、得られた最初の2回の測定結果、例えば、5回以上又は10回以上又は15回以上の測定結果を含み、及び/又は2msを超える継続時間を有し得る。初期段階が終了した後に取得された、例えば16回目の測定又は17回目の測定からの測定結果のみが、比較のために考慮され得る。
【0039】
測定期間の開始時における、例えば送達プロセスの開始時における測定ユニットの動作電圧は、例えば最初の測定中に低下し得る。この低下によって、関連する測定値の急速な減少がもたらされる。最初の測定後に、電圧は、残りの測定期間にわたって一定の動作電圧に安定し得る。したがって、初期の測定結果が考慮される場合、これらの測定結果によってシステム内への流体の流入が誤って示唆され得るので、比較のために初期の測定結果を無視することが有利である。
【0040】
少なくとも一実施形態によれば、測定ユニットは、例えば電子システム又は薬物送達デバイスの、センサである。センサは、薬物送達プロセス中に送達用量の量を測定するように構成され得る。センサは、特に、センサと更なる要素、例えば薬物送達デバイスの可動部材との相対運動、特に相対回転を検出するように構成され得る。
【0041】
換言すれば、測定結果は、用量設定プロセス中に設定された用量の量に関する情報を提供するのに適している場合があり、又は用量送達プロセス中の送達用量の量を示す。
【0042】
少なくとも一実施形態によれば、測定ユニットは、光学センサである。光学センサは、放射を放出し、薬物送達デバイスの可動部材によって反射された放射の一部を検出するように構成され得る。光学センサは、LED、例えば赤外線LEDと、LEDによって放出された放射の、例えば可動要素から反射された、反射部分を検出するように構成されたセンサ要素とを含み得る。可動部材は、光学センサによって放出される放射に対して反射率の異なる交互の領域を含み得る。すなわち、可動部材はエンコーダ構造を含み得る。可動部材は、エンコーダ部材又はエンコーダ構成要素であり得る。反射率の異なる領域は、色の異なる領域、例えば黒色及び白色領域であり得る。
【0043】
少なくとも一実施形態によれば、電子システムは、流体への薬物送達デバイスの曝露が確認された場合にユーザに通信するために出力信号を生成するように構成される。出力信号は、特に、流体への薬物送達デバイスの曝露が確認された場合にのみ生成される。
【0044】
少なくとも一実施形態によれば、電子システムは、少なくとも1つのプロセッサを含むか、又はプロセッサである。詳細には、プロセッサは、測定ユニットの測定結果を受信するように及び/又は測定結果を基準と比較するように及び/又は比較の結果に基づいて流体への薬物送達デバイスの曝露が生じているか又は生じたかどうかを判定するように構成され得る。プロセッサはまた、出力信号を生成するように構成され得る。
【0045】
少なくとも一実施形態によれば、電子システムは、測定結果を得るための測定ユニットを更に含む。
【0046】
少なくとも一実施形態によれば、電子システムは、通信ユニットを含む。通信ユニットは、流体への薬物送達デバイスの曝露が確認された場合にユーザに通信するように構成され得る。例えば、流体への薬物送達デバイスの曝露が確認されたときの出力信号に基づいて通信ユニットを動作させる。
【0047】
通信ユニットは、光、例えば白色光を放射するように構成されたLEDであり得る。薬物送達デバイスは、LEDによって放射された光が薬物送達デバイスを使用するユーザにとって視認可能となるように構成され得る。
【0048】
追加的又は代替的に、薬物送達デバイスは、確認された流体への曝露を通信するために音響信号を提供するように構成された音響音声発生器、例えばラウドスピーカの形態の通信ユニットを含み得る。
【0049】
起こり得る流体への曝露をユーザに通信することによって、薬物送達デバイスが誤った結果を提供する可能性があること又は薬物送達デバイスをもはや使用すべきではないことがユーザに示され得る。
【0050】
少なくとも一実施形態によれば、電子システムは、回路基板、例えばフレキシブルリジッドPCB(PCB:プリント回路基板)などのPCBを含む。測定ユニット及び/又はプロセッサ及び/又は通信ユニットは、回路基板上に配置され得、及び/又は回路基板に電気的に接続され得る。
【0051】
電子システムは、プロセッサ及び/又は測定ユニット及び/又は通信ユニットに電力を供給するためのバッテリを更に含み得る。また、電子システムは、例えば、測定ユニットを利用して取得された情報を、スマートフォン又はコンピュータのような、外部デバイスに通信するための無線通信ユニット、例えばBluetoothユニットを含み得る。例えば、測定ユニットを利用して測定された送達用量は、外部デバイスに通信される。
【0052】
電子システムはまた、例えば、測定ユニットからのアナログ信号をデジタル信号に変換するための、アナログデジタル変換器を含み得る。電子システムは、例えば測定ユニットの電力供給を有効及び/又は無効にするための、電気機械スイッチを含み得る。
【0053】
少なくとも一実施形態によれば、電子システムは、測定ユニットの測定結果及び更なる測定ユニットの測定結果に基づいて流体への薬物送達デバイスの曝露を判定するように構成される。詳細には、薬物送達デバイス及び/又は電子システムは、更なる測定ユニットを含み得る。測定ユニットに関連して開示された全ての特徴は、更なる測定ユニットに関しても開示され、その逆も同様である。詳細には、更なる測定ユニットは、詳細には送達プロセス中に送達用量の量を測定するための、光学センサのような、センサであり得る。測定ユニット及び更なる測定ユニットのセンサは、可動部材によって提供されるエンコーダ構造に対して位相がずれていることがある(更に上記を参照)。センサ及びエンコーダ構造は、センサ出力(すなわち電気信号)が、センサとエンコーダ構造との相対運動(例えば相対回転)中に、組合せで、マルチビットのグレイコード、例えば2ビットのグレイコードを提供するのに適するように調整され得る。センサ出力の組合せは、可動部材とセンサとの間の多くの異なる相対位置に対して固有であり得る。2ビットのグレイコードは、例えば、4つの相対位置を一意的に特徴付ける。
【0054】
例えば、電子システムは、各測定ユニットの測定結果が流体への曝露を示す場合にのみ流体への薬物送達デバイスの曝露を確認するように構成される。例えば、両方の測定ユニットの測定結果とそれぞれの基準との比較が流体への曝露を個別に示す場合にのみ、流体への薬物送達デバイスの曝露が確認される。流体への薬物送達デバイスの曝露を更なる測定ユニットが示しているかどうかの判定は、例えば更なる測定ユニットの測定値が基準値を上回る場合に、測定ユニットに対する方法と同じ方法で行われ得る。
【0055】
次に、ユーザインターフェース部材が指定される。ユーザインターフェース部材は、薬物送達デバイスの容器ホルダに永久的に接続された若しくは接続可能な又は薬物送達デバイスの容器ホルダに取り外し可能に接続可能なノブ又はボタンであり得る。
【0056】
少なくとも一実施形態によれば、ユーザインターフェース部材は、上記で指定したような電子システムを含む。それゆえ、電子システムに関連して開示された全ての特徴は、ユーザインターフェース部材に関しても開示される。
【0057】
電子システムは、ユーザインターフェース部材の内部に配置され得る。例えば、電子システムは、ユーザインターフェース部材のハウジング要素によって周方向に取り囲まれ得る。電子システムは、電子システムが流体から保護されるように、ユーザインターフェース部材の内側に配置され得る。
【0058】
少なくとも一実施形態によれば、ユーザインターフェース部材は、用量ダイヤル設定及び/又は薬物送達プロセスを実施するためのユーザインターフェース部材を操作するためにユーザによってタッチされるように構成される。したがって、ユーザインターフェース部材は、容器ホルダに接続されたとき及びユーザによって操作されたときに用量ダイヤル設定及び/又は薬物送達プロセスを実施するように構成され得る。
【0059】
例えば、ユーザインターフェース部材は、構成要素の外面を形成する側面であって、ユーザによって掴まれるように構成された側面を含む。側面は、径方向外方においてユーザインターフェース部材の境界を定め得る。詳細には、側面は、ユーザインターフェース部材又は薬物送達デバイスの長手方向軸線に対して平行又は鋭角に延在し得る。
【0060】
側面は、長手方向軸線の周りでユーザインターフェース部材を、例えば容器ホルダに対して、回転させるために、ユーザによって2本の指を使って掴まれるように構成され得る。追加的又は代替的に、ユーザインターフェース部材は、近位方向に面する近位面を含み得る。近位面は、長手方向軸線及び/又は側面に対して垂直又は斜めに延在し得る。近位面は、詳細にはユーザインターフェース部材を遠位方向に押すために、ユーザによって例えば指を1本だけを使ってタッチされるように構成され得る。
【0061】
少なくとも一実施形態によれば、側面は、把持特徴部、例えば溝を含み得る。溝は、長手方向軸線に対して平行又は鋭角に延び得る。把持特徴部は、ユーザがユーザインターフェース部材を掴むのを容易にし得る。
【0062】
少なくとも一実施形態によれば、ユーザインターフェース部材は、測定ユニットを含む。例えば、測定ユニットは、ユーザインターフェース部材の内部に配置される。
【0063】
次に、アセンブリが指定される。アセンブリは、薬物送達デバイス用のアセンブリであり得る。アセンブリは、薬物送達デバイスに取り付け可能であり得る。代替的に、アセンブリは、薬物送達デバイスの一部又は薬物送達デバイスであり得る。
【0064】
アセンブリは、電子システムに関連して上記で説明したような、可動部材及び測定ユニットを含み得る。代替的又は追加的に、アセンブリは、上で説明したような電子システムを含み得る。
【0065】
一実施形態では、アセンブリは、光学センサと、エンコーダ構造、例えばグレイコード式エンコーダリングとを備えた電子システムを含み得る。電子システム、例えばその光学センサは、エンコーダ構造の動きを検出及び/又は定量化するように構成され得る。エンコーダ構造の動きは、薬物送達デバイスでダイヤル設定された用量及び/又は薬物送達デバイスから排出された用量を示し、例えば、ダイヤル設定された用量又は排出された用量のサイズを示し得る。一実施形態では、アセンブリの電子システムは、光学センサとエンコーダ構造、例えばグレイコード式エンコーダリングとの間に存在する流体液滴の光学特性、例えば反射及び/又は屈折特性の検出を通じてアセンブリ又は薬物送達デバイス内への流体の流入を検出するように構成され得る。流体が存在する場合、その流体は、前記センサの出力信号の変化、例えば、流体への曝露のない状況と比較して、高い又は低い出力信号をもたらす。換言すれば、光学センサは、センサに到達する放射の量又は一部を検出することによってセンサとエンコーダ構造との間の光路内の流体の存在を検出するように構成され得る。一実施形態では、放射は、光学センサ又はその構成要素、例えばLEDによって放出され得る。この放射の一部は、エンコーダ構造によって反射される前に、光路内の流体によって屈折され得る。代替的又は追加的に、反射部分は、センサに到達する前に光路内の流体によって再び屈折され得る。センサは、放射の到達した部分を検出するように構成され得る。基準との比較により、アセンブリ、例えば、その電子システムは、光路内の流体の存在を判定し得る。換言すれば、アセンブリ、例えば、その電子システムは、比較の結果に基づいて流体への要素、例えば薬物送達デバイスの電気要素の曝露を判定し得る。
【0066】
アセンブリは詳細には、上記で指定した電子システムを含み得る。それゆえ、電子システムに関連して開示された全ての特徴は、アセンブリに関しても開示され、その逆も同様である。
【0067】
次に、薬物送達デバイスが指定される。薬物送達デバイスは、注射デバイス及び/又はペン型デバイス、例えばダイヤル延長ペンであり得る。薬物送達デバイスは、ユーザに送達される薬物の用量を可変に設定できる可変用量デバイスとすることができる。例えば、薬物送達デバイスは、再利用可能なデバイスである。
【0068】
少なくとも一実施形態によれば、薬物送達デバイスは、上記で指定したような電子システム又はユーザインターフェース部材を含む。それゆえ、電子システムに関して及び/又はユーザインターフェース部材に関して開示された全ての特徴は、薬物送達デバイスに関しても開示される。
【0069】
電子システムは、特に、薬物送達デバイスの内部に配置され得る。電子システムは、薬物送達デバイス内に流体が到達することから保護されるように配置され得る。同様に、測定ユニットは、薬物送達デバイスの内部に配置され得、流体から保護され得る。
【0070】
少なくとも一実施形態によれば、薬物送達デバイスは、薬物容器を保持するための容器ホルダを含む。容器ホルダは、薬物送達デバイスのハウジングであり得るか、又はハウジングに接続された若しくはハウジングに接続可能な別個の要素であり得る。容器ホルダは、薬物送達デバイスのハウジングに対して軸方向及び/又は回転方向に固定された状態で薬物容器を保持するように構成され得る。詳細には、容器ホルダは、薬物送達プロセス中に薬物容器が軸方向及び/又は回転方向に動かないように薬物容器を保持し得る。
【0071】
少なくとも一実施形態によれば、薬物容器には薬物が充填される。
【0072】
本明細書で指定する薬物送達デバイス及び/又はユーザインターフェース部材は、細長いものであり得、及び/又は長手方向軸線、例えば主延在軸線を含み得る。追加的又は代替的に、薬物送達デバイス及び/又はユーザインターフェース部材は、長手方向軸線に関して回転対称性を有し得る。本明細書では、長手方向軸線に平行な方向を軸方向と呼ぶ。一例として、薬物送達デバイス及び/又はユーザインターフェース部材は円筒形状であり得る。
【0073】
更に、薬物送達デバイスは、人体の皮膚領域に面するように又は人体の皮膚領域に押し付けられるように設けられ得る、端部、例えば長手方向端部を含み得る。本明細書では、この端部を遠位端と呼ぶ。薬物又は薬剤は、遠位端を介して供給され得る。本明細書では、反対側の端部を近位端と呼ぶ。使用中、近位端は、皮膚領域から離れている。本明細書では、近位端から遠位端に向かう軸方向を遠位方向と呼ぶ。本明細書では、遠位端から近位端に向かう軸方向を近位方向と呼ぶ。本明細書では、薬物送達デバイスの部材又は要素又は特徴の遠位端は、最も遠位側に位置する部材/要素/特徴の端部であると理解される。よって、本明細書では、部材又は要素又は特徴の近位端は、最も近位側に位置する要素/部材/特徴の端部であると理解される。
【0074】
換言すれば、本明細書では、「遠位側に」は、薬物送達デバイス若しくはその構成要素の吐出端の方を向く若しくは指すように配置されており又は配置されることになり、及び/又は近位端から離れる方を指し、近位端から離れる方を向くように配置されることになり、若しくは近位端から離れる方を向く、方向、端部、又は表面を指定するために使用される。他方で、本明細書では、「近位側に」は、薬物送達デバイス又はその構成要素の吐出端及び/又は遠位端から離れる方を向く又は指すように配置されている又は配置されることになる、方向、端部、又は表面を指定するために使用される。遠位端は、吐出端に最も近く及び/又は近位端から最も遠い端部であり得、近位端は、吐出端から最も遠い端部であり得る。近位面は、遠位端から離れる方を向き及び/又は近位端の方を向き得、遠位面は、遠位端の方を向き及び/又は近位端から離れる方を向き得る。吐出端は、例えば針ユニットがデバイスに取り付けられている又は取り付けられることになる針端であり得る。
【0075】
本明細書では、長手方向軸線に垂直で且つ/又は長手方向軸線と交差する方向を径方向と呼ぶ。径方向内方は、長手方向軸線の方を指す径方向である。径方向外方は、長手方向軸線から離れる方を指す径方向である。本明細書では、「角度方向」、「方位方向」、又は「回転方向」という用語は、同義語として使用される。そのような方向は、長手方向軸線に垂直で且つ径方向に垂直な方向である。
【0076】
薬物送達デバイスを動作させる方法は、以下の通りであり得る。容器ホルダに接続されたノブであって、電子システムを含むノブの形態のユーザインターフェース部材は、例えばユーザインターフェース部材の側面が、ユーザによって掴まれ、回転させられ、それにより、ユーザに注射される用量をダイヤル設定する。ノブは、薬物容器ホルダに対して螺旋経路上で回転させられ、それにより、例えば近位方向に移動し得る。所望の用量をダイヤル設定した後、ノブが軸方向に、例えば遠位方向に押され得、薬物の用量が注射される。この目的のために、ユーザは、ノブの近位面を押圧し得る。遠位方向へのノブの移動中に、ノブ自体は回転しないが、薬物送達デバイスの可動要素は回転し得る。これにより、ダイヤル設定された用量が、患者内に吐出され、例えば注射され得る。ノブ内のセンサは、可動要素の回転を測定し得る。センサの測定結果は、電子システムのプロセッサに送信され得る。プロセッサは、測定結果に基づいて送達用量を決定し得る。この情報は、例えば無線通信ユニットを利用して、外部デバイスに送信され得る。プロセッサはまた、測定結果を基準と比較し得、その後、この比較の結果に基づいて、薬物送達デバイスの内部、詳細にはセンサ又は少なくとも1つの他の電気要素が流体に曝露されているか又は曝露されたかどうかを判定し得る。
【0077】
次に、薬物送達デバイスが流体に曝露されているか又は曝露されたかどうかを検出するための方法が指定される。本方法は、詳細には、上記で指定した、電子システム、アセンブリ、又は薬物送達デバイスを用いて実施され得る。それゆえ、電子システム、アセンブリ、又は薬物送達デバイスに関連して開示された全ての特徴は、本方法に関しても開示され、その逆も同様である。
【0078】
少なくとも一実施形態によれば、測定ユニットは、薬物送達デバイス内に配置される。
【0079】
少なくとも一実施形態によれば、方法は、測定ユニットで得られた測定結果を受信するステップを含む。測定結果は、薬物送達デバイスに関する情報を提供するのに適している場合がある。換言すれば、測定結果は、用量設定プロセス中に設定された用量の量に関する情報を提供するのに適している場合があり、又は用量送達プロセス中の送達用量の量を示す。
【0080】
少なくとも一実施形態によれば、方法は、測定結果を基準と比較するステップを含む。
【0081】
少なくとも一実施形態によれば、方法は、比較の結果に基づいて流体への薬物送達デバイス又はその電気要素の曝露を判定するステップを含む。
【0082】
更に、コンピュータプログラム及びコンピュータ可読媒体が指定される。コンピュータプログラムは、プログラムがコンピュータによって実行されると、薬物送達デバイスが流体に曝露されているか又は曝露されたかどうかを検出するための方法をコンピュータに実行させる命令を含む。コンピュータ可読媒体には、コンピュータプログラムが記憶される。
【0083】
以下では、本明細書に記載する電子システム、ユーザインターフェース部材、薬物送達デバイス、及び方法について、例示的な実施形態に基づいて図面を参照してより詳細に説明する。個々の図において、同じ参照符号は同じ要素を示す。しかしながら、含まれるサイズ比は必ずしも原寸に比例したものではなく、個々の要素は、より良い理解のために誇張したサイズで示されることがある。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1】薬物送達デバイスの例示的な実施形態を分解図で示す。
図2】薬物送達デバイスの例示的な実施形態の近位部分を異なる図で示す。
図3】薬物送達デバイスの例示的な実施形態の近位部分を異なる図で示す。
図4】薬物送達デバイスの例示的な実施形態からの測定結果を示す。
図5】薬物送達デバイスの例示的な実施形態からの測定結果を示す。
図6】薬物送達デバイスの例示的な実施形態からの測定結果を示す。
図7】薬物送達デバイスの例示的な実施形態からの測定結果を示す。
図8】薬物送達デバイスの例示的な実施形態からの測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0085】
例示的な実施形態
以下では、例示的な実施形態について、インスリン注射デバイスを参照して説明する。しかしながら、本開示は、そのような用途に限定されるものではなく、他の薬剤を吐出するように構成された注射デバイスと共に、或いは概して薬物送達デバイス、好ましくはペン型デバイス及び/又は注射デバイスと共に、等しく良好に配置され得る。
【0086】
この文献における特定の例示的な実施形態は、例えば、国際公開第2014/033195A1号パンフレット又は国際公開第2014/033197A1号パンフレットに開示されているデバイスと同様の、注射ボタン及び用量設定(ダイヤル設定)部材を同時に実現するノブの形態のユーザインターフェース部材を含む注射デバイスの形態の薬物送達デバイスに関して説明されている。したがって、ノブは、薬物送達デバイスの用量送達動作を開始及び/又は実施するために使用され得、また、用量設定動作を開始及び/又は実施するためにも使用され得る。デバイスは、ダイヤル延長型であり得、すなわち、用量設定中にこれらのデバイスの長さが増大する。用量設定及び用量排出動作モード中にダイヤル延長の同じ運動学的挙動を有する他の注射デバイスも、例えば、Eli Lillyによって市販されているKwikpen(登録商標)又はSavvio(登録商標)デバイス、及びNovo Nordiskによって市販されているFlexPen(登録商標)、FlexTouch(登録商標)又はNovopen(登録商標)デバイスとして知られている。したがって、これらのデバイスへの一般原理の適用は、容易であると考えられ、更なる説明は省略する。しかしながら、本開示の一般原理は、その運動学的挙動に限定されるものではない。
【0087】
特定の他の実施形態は、別個の注射ボタン及びグリップ構成要素/用量設定部材が存在する注射デバイス、例えば国際公開第2004/078239A1号パンフレットに開示されているデバイスへの適用のために考案され得る。したがって、本開示はまた、2つの別個のユーザインターフェース部材、例えば、用量設定動作のための1つと、用量送達動作のための1つとを備えたシステムに関する。デバイスの用量設定構成と用量送達構成とを切り替えるために、用量送達のためのユーザインターフェース部材を、用量設定のためのユーザインターフェース部材に対して移動させ得る。
【0088】
1つのユーザインターフェース部材が設けられる場合、ユーザインターフェース部材をハウジングに対して遠位方向に移動させ得る。それぞれの動きの途中に、デバイスの用量設定機構及び駆動機構の2つの要素間のクラッチが、例えば係合状態から解放状態へその状態を変化させ、又はその逆も同様である。例えば2つの要素上の複数組の噛合する歯によって形成されたクラッチが係合されると、2つの要素が互いに回転不能にロックされ得、クラッチが係合解除又は解放されると、これらの要素のうちの一方が2つの要素のうちの他方に対して回転することが許容され得る。要素の1つは、用量設定及び駆動機構のプランジャロッドに係合する駆動要素又は駆動スリーブであり得る。駆動スリーブは、用量設定中にハウジングに対して回転するように設計され得、用量送達中にハウジングに対して回転不能にロックされ得る。駆動スリーブとプランジャロッドとの係合は、螺合であり得る。したがって、駆動スリーブは用量送達中に回転できないため、ハウジングに対する駆動スリーブの軸方向移動によってプランジャロッドが回転する。この回転は、プランジャロッドとハウジングとの螺合によって、送達動作中にプランジャロッドの軸方向変位に変換され得る。
【0089】
図1は、薬物送達デバイス100の例示的な実施形態の分解図である。この例示的な実施形態では、薬物送達デバイス100は、注射デバイス、例えばペン型注射器である。
【0090】
図1の注射デバイス100は、薬物容器14、例えばインスリン容器、又はそのような容器14用の容器ホルダを保持するハウジング10を含む注射ペンである。容器14は、薬物、例えばインスリンを収容し得る。容器14は、カートリッジ、又はカートリッジを収容し得る若しくはカートリッジを受け入れるように構成され得るカートリッジ用の受け部であり得る。針15は、容器14又は受け部に固定することができる。容器14はカートリッジであり得、受け部はカートリッジホルダであり得る。針15は、内側針キャップ16と、外側針キャップ17又は別のキャップ18のいずれかとによって保護される。注射デバイス100から吐出されるべきインスリン用量は、ノブ2の形態のユーザインターフェース部材2を回すことによって設定、プログラム、又は「ダイヤル設定」することができ、次いで、現在プログラムされている又設定されている用量は、用量窓13を介して例えば複数の単位で表示される。単位は、用量設定機構によって決定され得、用量設定機構は、1用量増分を画定し得る1単位設定増分の整数倍でのみ、ハウジング10に対するノブ2の相対回転を許容し得る。これは、例えば、適切なラチェットシステムによって達成され得る。窓13内に表示される指標は、番号スリーブ又はダイヤルスリーブ70上に提供され得る。例えば、注射デバイス100がヒトインスリンを投与するように構成される場合、用量は、いわゆる国際単位(IU)で表示され、1IUは、約45.5マイクログラム(1/22mg)の純粋な結晶性インスリンの生物学的等量である。他のユニットも、類似体インスリン又は他の薬剤を送達するための注射デバイスに用いられ得る。選択された用量が、図1の用量窓13に示すものと異なるように等しく良好に表示され得ることに留意すべきである。
【0091】
用量窓13は、現在プログラムされている用量の視覚表示を提供するために、ノブ2が回されたときに移動するように構成されたダイヤルスリーブ70の限られた部分をユーザが視認することを可能にする、ハウジング10における開口の形態であり得る。ノブ2は、プログラミング中に回されると、ハウジング10に対して螺旋経路を回転させられる。
【0092】
この例示的な実施形態では、ノブ2は、データ収集デバイス又は電子システムの把持及び/又は取り付けを容易にするための、形成物の形態の1つ以上の特徴71a、71b、71cを含む。
【0093】
注射デバイス100は、ノブ2を回すことによって機械的なクリック音が生じてユーザに音響フィードバックが提供されるように構成され得る。この実施形態では、ノブ2は、注射ボタンとしても機能する。針15を患者の皮膚部分に刺し、次いで、ノブ2を軸方向に押すと、表示窓13内に表示されたインスリン用量が注射デバイス100から吐出される。ノブ2が押し戻された後に、注射デバイス100の針15が皮膚部分内に一定時間留まると、用量が患者の体内に注射される。インスリン用量の吐出によっても機械的なクリック音が生じ得るが、このクリック音は、用量のダイヤル設定中にノブ2を回転させたときに発生する音とは異なる。
【0094】
この例示的な実施形態では、インスリン用量の送達中に、ノブ2は、回転せずに軸方向移動でノブ2の初期位置に戻され、その一方で、ダイヤルスリーブ70又は番号スリーブ70は、例えばゼロ単位の用量を表示するために、その初期位置に戻るように回転させられる。既に述べたように、本開示は、インスリンに限定されるものではなく、薬物容器14内の全ての薬物、特に液体薬物又は薬物製剤を包含するべきである。
【0095】
注射デバイス100は、インスリン容器14が空になるか又は注射デバイス100内の薬剤の有効期限(例えば、最初の使用から28日後)に達するまで、いくつかの注射プロセスに使用され得る。
【0096】
更に、注射デバイス100を初めて使用する前に、例えば2単位のインスリンを選択し、針15を備えた注射デバイス100を上向きに保持しながらノブ2を押圧することによって、インスリン容器14及び針15から流体が正確に流れることを確実にするために、いわゆる「プライムショット」を行うことが必要であり得る。簡潔に提示するために、以下では、吐出される量が注射される用量と実質的に一致する、例えば注射デバイス100から吐出される薬剤の量がユーザの受ける用量に等しいと仮定する。
【0097】
上で説明したように、ノブ2はまた、同じ構成要素が用量のダイヤル設定/設定及び用量の吐出/送達のために使用されるように、注射ボタンとしても機能する。この場合もまた、好ましくは限られた方法でのみ互いに対して移動可能である、異なる2つのユーザインターフェース部材を備えた構成も可能であることに留意されたい。しかしながら、以下の考察では、用量設定及び用量送達機能を提供する単一のユーザインターフェース部材に焦点を当てる。換言すれば、用量設定動作のためにユーザによってタッチされる部材の設定面と、用量送達動作のためにユーザによってタッチされる用量送達面とが、移動不能に接続される。代替的に、それらは、異なるユーザインターフェース部材が使用される場合、互いに対して移動可能であり得る。それぞれの動作中に、ユーザインターフェース部材は、好ましくはデバイスの本体又はハウジングに対して移動する。用量設定中に、ユーザインターフェース部材は、ハウジングに対して近位側に移動し及び/又はハウジングに対して回転する。用量送達中に、ユーザインターフェース部材は、好ましくはハウジング又は本体に対して回転せずに、軸方向に、例えば遠位側に移動する。
【0098】
図1はまた、部材又は要素又は特徴の位置を指定するために本明細書で使用される座標系も示す。遠位方向D及び近位方向Pは、長手方向軸線Lに対して平行に延在する。長手方向軸線Lは、デバイス100の主延在軸線である。径方向Rは、長手方向軸線Lに垂直な方向であって、長手方向軸線Lと交差する方向である。方位方向Cは、角度方向又は回転方向とも称され、径方向R及び長手方向軸線Lに対して垂直な方向である。図の明瞭性を高めるために、以下の図の全てに異なる方向及び軸線が示されているわけではない。
【0099】
図2は、図1の薬物送達デバイス100の近位部分を断面図で示す。図3は、同じ近位部分を示すが、異なる断面図で示す。分かるように、ノブ2の形態のユーザインターフェース部材2は、ハウジング10に接続される。ノブ2は、ハウジング10に永久的に又は取り外し可能に接続され得る。
【0100】
薬物送達デバイス100はまた、プランジャロッド11aと、駆動スリーブ11bと、ダイヤルスリーブ11cとを含む。これらの要素は、用量ダイヤル及び用量注射のために動作可能に結合される。用量注射中に、ダイヤルスリーブ11cは、例えば、番号スリーブ70と一緒に回転する。この回転は、用量注射中に回転しないノブ2の内部にある光学センサ21の形態の測定ユニット21によって検出される。例えば、ダイヤルスリーブ11c及び/又は番号スリーブ70は、放射、例えば光学センサ21によって放出される放射に対して反射率が異なる黒色と白色の交互の領域を含み得る。それらの領域は、エンコーダ構造を形成し得る。エンコーダ構造としてダイヤル又は番号スリーブに凹凸が交互に位置する表面形状を有することも可能である。詳細には、光学センサ21は流体に対する感度が高く、及び/又はセンサ21の測定結果は、流体の存在によって影響を受ける場合がある。光学センサ21は、スナップ接続部26によって永久的に接続されたグリップ要素20及び近位カバー要素27の形態のハウジング要素20、27によって取り囲まれるが、流体が光学センサ21に到達することが依然として起こり得る。この場合、光学センサ21の測定結果はもはや信頼できないことがある。測定結果を信頼できるか否かを知ることは役に立つ。
【0101】
この例示的な実施形態では、ユーザインターフェース部材2は、プロセッサ28を有する電子システムを含む。電子システムは、光学センサ21の測定結果を基準と比較し、この比較の結果に基づいて、ユーザインターフェース部材2の内部、詳細には光学センサ21が、水又は水分のような流体に曝露されているか又は曝露されたかどうかを判定するように構成される。電子システムはまた、光学センサ21の動作電圧の変化に対する基準を調整し及び/又は先行する期間中に得られた光学センサ21の以前の測定結果に基づいて基準を調整するように構成され得る。例えば、電子システムは、最後の5回又は最後の10回の薬物送達プロセスに関連付けられた光学センサ21の測定結果に基づいて基準を調整するように構成され、n≧1である。これらのステップは全て、プロセッサ28によって実施され得る。
【0102】
光学センサ21はまた、電子システムの一部であり得る。光学センサ21及びプロセッサ28は、共通の回路基板22に、例えば回路基板22の同じ側又は異なる側、例えば反対側に実装される。光学センサ21の測定結果は、回路基板22を介してプロセッサ28に送信され得る。光学センサは、(移動する、例えば回転するエンコーダ構成要素として機能し得る)ダイヤルスリーブ又は番号スリーブからセンサ上に反射された放射を検出し得る。したがって、センサは、便宜上、放射感知要素、例えばオプトエレクトロニクス検出器チップを含む。放射、例えば赤外線放射は、放射源、例えばセンサの放射源によって生成され、エンコーダ構成要素に向けて放射され得る。放射は、エンコーダ構成要素によってセンサに向けて反射させ、その放射感知要素を励起して信号を発生させることができる。エンコーダ構成要素によって提供されるエンコーダ構造、例えば交互に位置する凹凸又は黒色及び白色領域などの反射の異なる交互の領域を有する表面形状に起因して、センサに到達する放射の量(強度)が変化し、この放射の量は、センサから取得された信号を用いて検出可能である。これによって、システムは、エンコーダ構成要素がセンサ21に対してどれだけ回転したかを定量化することができる。エンコーダ構成要素は、用量送達(用量注射)中にのみセンサに対して回転し得る。したがって、相対回転の量によって、用量送達動作中に送達された薬物の用量を算出することができる。
【0103】
ノブ2は、光学センサ21に加えて、電気機械スイッチ23と、バッテリ24と、LED25とを含む。回路基板22は、センサ21の測定値を受信するために及び/又はセンサ21に電力を供給するために、光学センサ21に電気的に接続され得る。バッテリ24は、センサ21、LED25、プロセッサ28、及び/又は、通信ユニット(図示せず)のような、回路基板22上の更なる電気又は電子要素に電力を供給するために使用され得る。機械スイッチ23は、ノブ2を駆動スリーブ11bに対して軸方向に、例えば遠位側に移動させると、駆動スリーブ11bによって動作させられ得る。機械スイッチ23を動作させることによって、センサ21及び/又はLED25及び/又はプロセッサ28の電源がオンにされ得る。
【0104】
LED25は、薬物送達デバイス100の動作又は動作状態をユーザに知らせるように構成され得る。この目的のために、ノブ2の近位面を形成するカバー要素27は、LED25の光がノブ2から出ることができる透明領域を含み得る。透明領域は、例えば、ノブ2の側面とノブ2の近位面との間に形成される。
【0105】
プロセッサ28は、流体への薬物送達デバイス100の曝露を確認した場合に出力信号を生成するように構成され得る。この出力信号は、流体への薬物送達デバイス100の曝露をユーザに通信する目的でLED25を動作させるために使用することができる。代替的又は追加的に、エラーコードが生成されることがあり、このエラーコードは、システムのメモリに記憶され及び/又は別のデバイスに送信され得る。
【0106】
図2及び図3のノブ2又は概して電子システムは、2つの光学センサ21を含み得る。これらの光学センサ21の1つのみが図2に示されており、他の光学センサ21も、例えば他の要素の背後に隠されている。センサ21は、便宜上、回転エンコーダ構成要素、例えばダイヤルスリーブ又は番号スリーブ上のエンコーダ構造に対して位相がずれている。しかしながら、センサを1つのみ使用するシステムも可能である。センサ及びエンコーダ構造は、組み合わされたセンサ出力が、例えば、エンコーダ構造とセンサとの4つの固有の相対位置を特徴付ける2ビットのグレイコードを提供するように、調整され得る。
【0107】
図4は、センサ21の通常動作中の、すなわち、流体がノブ2の内部に流入していない及びセンサ21の機能を変化させていないときの、光学センサ21の測定結果を示す。左側のy軸は、アナログ信号からデジタル信号への変換後の測定値を任意の単位で表す(ADCは電子システムの一部でもあり得、回路基板22に実装され得る)。X軸は、時間をミリ秒単位で表す。曲線C1は、第1の光学センサ21の測定結果を示し、曲線C2は、第2の光学センサ21の測定結果を示す。曲線C3は、バッテリ24によって提供される、センサ21における動作電圧を示し、動作電圧の基準として右側にy軸を有し、ここで、単位は例えばボルトである。
【0108】
図4は、1つの薬物送達プロセスの測定結果を示す。曲線C1、C2の各々は、ダイヤルスリーブ及び/又は番号スリーブ上の白色及び黒色領域(並びに/又は凸部及び凹部)に関連付けられた山及び谷を有する。例えば、山は、エンコーダ構成要素(ダイヤルスリーブ及び/又は番号スリーブ)上における、反射率が高い(白色)領域に関連付けられ、谷は、反射率が低い(黒色)領域に関連付けられる。反射率の高い(白色)領域について、センサ21の測定値は3000を超える。反射率の低い(黒色)領域について、測定値は約0である。
【0109】
(それぞれの)センサでの読取値又は測定結果は、サンプリング周波数又はレートで、例えばプロセッサ28の制御下で取得され又は得られ得る。すなわち、測定結果は異なる時点で得られ得る。センサは、好ましくは少なくともエンコーダ構成要素の動きが、例えば用量送達動作中に、監視されるべきである場合に、500Hz、1000Hz、2000Hz、3000Hz、4000Hz(更に以下も参照)以上のサンプリング周波数又はレートで動作させられ得る。
【0110】
図4では、時間が減少するにつれて動作電圧が降下することも視認できる。この電圧降下によって、結果として、時間の経過に伴って測定値も減少する。これは、山の高さの差によって既に観察することができる。
【0111】
図4では、初期には動作電圧が例えばX軸において0~約25の不規則性を有し得ることも視認できる。この不規則性は、例えばスイッチ23をトリガすることによって薬物送達プロセス又は動作の開始付近でセンサを作動させることによるものであり得る。
【0112】
図5は、390回の薬物送達プロセスについての2つのセンサ21のそれぞれの最大測定値を示す。x軸は、第1の光学センサ21の最大測定値を表し、y軸は、第2の光学センサ21の最大測定値を表す。分かるように、第1の光学センサ21の最大測定値は全て3600未満であり、第2の光学センサ21の最大測定値は全て3450未満である。これらの値は、上述した基準値(破線)として使用することができる。
【0113】
図6は、センサ21が水のような流体に曝露されている時間の関数として薬物送達プロセス中の光学センサ21の測定結果を示す。分かるように、また山と山との間で、すなわちセンサ21が黒色領域に面する場合に、測定結果はもはや0ではなく、これは流体への曝露の結果である。更に、第1のセンサの測定値(曲線C1)は、図4における第1のセンサの測定値よりもかなり高くなる。
【0114】
図6では、水平な破線は、例えば、それを超えるセンサ読取値(測定値)が異常であり、システム内への液体の流入を示唆するので、流体への曝露が生じたか否かを判定するために使用され得る基準値を示す。第1のセンサ21の測定値は、図6においてのみこれらの基準値を上回っているが、図4ではこれらの基準値をはるかに下回っている。測定値を基準値と比較することによって、例えば、送達プロセス(測定期間)中の測定値又は少なくとも最大測定値が基準値を超えていると判定することによって、センサが流体に曝露されたと判定され得る。
【0115】
システムの動作中、例えば、進行中の薬物送達動作中に、それぞれのセンサ出力又は測定結果が山又は谷の領域内にあるべきか又はそれぞれの曲線の立上がり若しくは立下がりエッジ若しくは側面にあるべきかを判定できない可能性がある。この場合、より高い基準値、すなわち、センサ出力又は測定結果が山の領域内にあるべきであることを示す基準値(図示の場合、これらは、図6の左側から見て1番目の破線と3番目の破線で示す値である)のみを使用することができる。したがって、他の値(2番目の破線と4番目の破線で示す値を参照)は、この場合には基準値として適していない可能性がある。
【0116】
図6では、基準値(水平な破線)が時間の増加に伴って減少していることも視認できる。これは、曲線C3で視認できるように、経時的に現れる電圧降下を考慮に入れている。
【0117】
図5と同様に、図7は、2つのセンサ21の最大測定値を示している。しかしながら、今回は、両方のセンサ21が流体に曝露されている。いくつかの最大測定値が基準値3600及び3450をそれぞれ上回っていることが分かる。これらの最大測定値を有する測定結果は、センサ21が流体に曝露されていることを示し得る。また、いくつかの測定結果では、両方のセンサ21がそれぞれの基準値を上回る最大測定値をもたらすことも視認できる。実際に流体への曝露が生じたことをより確信するために、かかる測定結果のみを曝露の指標として使用することができる。
【0118】
図8は、薬物送達プロセス中の光学センサのうちの1つ、例えば第1の光学センサ21の測定結果を示す(曲線C1を参照)。曲線C3は、第1のセンサ21に印加された動作電圧を示す。薬物送達プロセスの開始時に、電圧が例えば比較的急速に低下し(図8に示す領域であり得る送達プロセスの開始時の図4における不規則性も参照)それに伴ってセンサ21の測定値も減少することが分かる。暫くすると、電圧が安定し、センサ21の測定値も安定する。それゆえ、流体への曝露が生じたかどうかを判定するために、測定期間(又は送達プロセス)の開始時の最初の測定値を省略することができる。例えば、初期個数の測定値(サンプル)又は用量送達プロセス又は動作の開始から所定の初期時間間隔で取得された測定値は、無視される場合があり/又は基準値と比較されない場合がある。例えば、数Nの測定値又はそれ以上は無視され得、例えば、Nは、以下:5、10、15、16、17、18、19、20のうちの1つに等しい。代替的又は追加的に、Nは、30、25、20、19、18、17、16以下であり得る。例えば、初期の所定の時間間隔は、1ms、2ms、3ms、4ms以上であり得る。代替的又は追加的に、初期の所定の時間間隔は、10ms、9ms、8ms、7ms、6ms、5ms、4ms以下であり得る。用量送達動作又はプロセス中の測定値は、以下の1つの値:1000Hz、1500Hz、2000Hz、2500Hz、3000Hz、3500Hz、4000Hz以上の(好ましくは一定の)周波数又はサンプリングレートで得られ得る。例えば、レートが4000Hzである場合、最初の16個の値(又は用量送達プロセスの開始後の最初の4msの測定結果)は無視することができ、その後の測定値のみが基準との比較のために使用され得る。用量送達プロセスの開始は、例えばスイッチ信号を生成するために、スイッチ23がトリガされることによって特徴付けることができる。スイッチ信号は、ユーザがノブ2を押圧して予め設定された用量を送達することを示し得る。スイッチ信号に応答して、センサ21は、オンにされ得る、又はより遅い応答速度からより高い応答速度に切り替えられ得る。
【0119】
用量送達プロセス中に、センサの最大測定値が決定され及び/又は保存され得る。プロセス中又はプロセス後に、決定され及び/又は保存された値は、基準値、例えば3450と比較され得る。最大測定値がより高い場合、システム内への流体の流入を示すエラーコードが生成される可能性があり、及び/又はエラーが、LED又は別のデバイスを介してユーザに通知される可能性がある。
【0120】
測定値のダイナミックレンジ及び/又は測定値によって決定された曲線の形状も、システムへの流体の流入又はシステムの流体曝露を判定するための基準として使用できることに留意されたい。
【0121】
「薬物」又は「薬剤」という用語は、本明細書では同義語として使用され、1つ以上の医薬品有効成分又は薬学的に許容されるその塩若しくは溶媒和物と、場合により、薬学的に許容される担体とを含む医薬製剤を示す。医薬品有効成分(「API」)とは、最も広範な意味では、ヒト又は動物に生物学的影響を及ぼす化学構造である。薬理学では、薬物又は薬剤が、疾患の処置、治療、予防、又は診断に使用され、又はそれとは別に、身体的又は精神的健康を向上させるために使用される。薬物又は薬剤は、限られた継続期間にわたって、又は慢性疾患では定期的に使用され得る。
【0122】
以下に説明するように、薬物又は薬剤は、1つ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPI又はその組合せを含むことができる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、及びタンパク質(例えば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、及び酵素)、炭水化物及び多糖、並びに核酸、二本鎖又は一本鎖DNA(ネイキッド及びcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNA及びRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、及びオリゴヌクレオチドが挙げられ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、又はリポソームなどの分子送達システムに取り込まれ得る。1つ以上の薬物の混合物も企図される。
【0123】
薬物又は薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合された一次パッケージ又は「薬物容器」内に収容され得る。薬物容器は、例えば、1つ以上の薬物の貯蔵(例えば、短期又は長期貯蔵)に適したチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、又は他の固体若しくは可撓性容器であり得る。例えば、ある場合には、チャンバは、薬物を少なくとも1日(例えば、1日~少なくとも30日)貯蔵するように設計され得る。ある場合には、チャンバは、薬物を約1ヶ月~約2年間貯蔵するように設計され得る。貯蔵は、室温(例えば、約20℃)又は冷蔵温度(例えば、約-4℃~約4℃)で行われ得る。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(例えば、APIと希釈剤、又は2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に貯蔵するように構成されたデュアルチャンバカートリッジであり得るか、又はそれを含み得る。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体若しくは動物体への投薬前及び/又は投薬中に2つ以上の成分間の混合を可能にするように構成され得る。例えば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(例えば、2つのチャンバ間の導管を介して)且つ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合を可能にするように構成され得る。代替的に又は加えて、2つのチャンバは、人体又は動物体への成分の投薬時に混合を可能にするように構成され得る。
【0124】
本明細書に記載する薬物送達デバイスに含まれる薬物又は薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療及び/又は予防のために使用することができる。障害の例としては、例えば、糖尿病又は糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症又は肺血栓塞栓症などの血栓塞栓障害が挙げられる。障害の更なる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症及び/又は関節リウマチである。API及び薬物の例は、Rote Liste 2014、例えば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)又は86(オンコロジー薬剤)、及びMerck Index,15th editionなどのハンドブックに記載されているものである。
【0125】
1型若しくは2型糖尿病又は1型若しくは2型糖尿病に伴う合併症の治療及び/又は予防のためのAPIの例としては、インスリン、例えば、ヒトインスリン、又はヒトインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体若しくはGLP-1受容体アゴニスト、又はその類似体若しくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、又はそれらの薬学的に許容可能な塩若しくは溶媒和物、又はそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「類似体」及び「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失及び/又は交換により並びに/或いは少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造、例えばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加及び/又は交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基又は他の天然に存在する残基又は純合成アミノ酸残基のいずれかであり得る。インスリン類似体は、「インスリン」受容体リガンドとも称される。特に、「誘導体」という用語は、1つ以上の有機置換基(例えば、脂肪酸)がアミノ酸の1つ以上に結合した、天然に存在するペプチドの構造、例えばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つ以上のアミノ酸が、欠失され、及び/又は非コード可能アミノ酸を含む他のアミノ酸によって置き換えられていることがあり、又は、非コード可能アミノ酸を含むアミノ酸が、天然に存在するペプチドに付加されていることがある。
【0126】
インスリン類似体の例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリシン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val又はAlaに置き換えられ、B29位においてLysがProに置き換えられ得るヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0127】
インスリン誘導体の例は、例えば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン及びB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0128】
GLP-1、GLP-1類似体及びGLP-1受容体アゴニストの例は、例えば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標))、エキセナチド(エキセンディン-4、Byetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C(エフペグレナチド)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド(Pegapamodtide))、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(Bamadutide)(SAR425899)、エキセナチド-XTEN及びグルカゴン-Xtenである。
【0129】
オリゴヌクレオチドの例は、例えば、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤又はアルポート症候群の治療のためのRG012である。
【0130】
DPP4阻害剤の例は、リナグリプチン、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サクサグリプチン、ベルベリンである。
【0131】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモン若しくは視床下部ホルモン又はレギュラトリー活性ペプチド及びそれらのアンタゴニスト、例えば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、及びゴセレリンが挙げられる。
【0132】
多糖の例としては、例えば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン若しくは超低分子量ヘパリン若しくはそれらの誘導体、若しくは硫酸化多糖、例えばポリ硫酸化形の上述した多糖、及び/又はそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、Hylan G-F 20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0133】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子又はその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)及びF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化若しくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(例えばマウス)抗体、又は一本鎖抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体への結合能が低減されているか、又は結合能がない。例えば、抗体は、Fc受容体への結合を支援しないアイソタイプ若しくはサブタイプ、抗体フラグメント又は突然変異体であり得、例えば抗体は、突然変異又は欠失したFc受容体結合領域を有する。抗体という用語は、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)及び/又はクロスオーバー結合領域配向(CODV)を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質に基づく抗原結合分子も含む。
【0134】
「フラグメント」又は「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(例えば、抗体重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含み得るが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的又は多重特異的な抗体フラグメント、例えば、二重特異的、三重特異的、四重特異的及び多重特異的抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価又は多価抗体フラグメント、例えば、2価、3価、4価及び多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディ又はビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、及びVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0135】
「相補性決定領域」又は「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖及び軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でなく、且つ抗原結合を可能にするようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖及び軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与する可能性があり、又はCDR内の1つ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼす可能性がある。
【0136】
例示的な抗体は、抗PCSK-9 mAb(例えば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(例えば、サリルマブ)、及び抗IL-4 mAb(例えば、デュピルマブ)である。
【0137】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物又は薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、例えば、酸付加塩及び塩基性塩である。
【0138】
本発明の完全な範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書に記載のAPI、配合物、装置、方法、システム、及び実施形態の様々な構成要素の修正(追加及び/又は削除)が行われてもよく、本発明が、そのような修正形態及びそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されるであろう。
【0139】
例示的な薬物送達デバイスは、ISO11608-1:2014(E)の第5.2章の表1に記載されている針ベースの注射システムを含み得る。ISO11608-1:2014(E)に記載されているように、針ベースの注射システムは、複数回用量の容器システム及び単回用量(部分又は全量排出)の容器システムに広く区別され得る。容器は、交換可能な容器又は交換不可能な一体型容器であり得る。
【0140】
ISO11608-1:2014(E)に更に記載されているように、複数回用量の容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注射デバイスを含み得る。このようなシステムでは、各容器は複数回用量を保持し、そのサイズは固定又は可変であり(ユーザによって事前設定され)得る。別の複数回用量の容器システムは、交換不能な一体型容器を有する針ベースの注射デバイスを含み得る。このようなシステムでは、各容器は複数回用量を保持し、そのサイズは固定又は可変であり(ユーザによって事前設定され)得る。
【0141】
ISO11608-1:2014(E)に更に記載されているように、単回用量の容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注射デバイスを含み得る。このようなシステムの一例では、各容器は単回用量を保持し、そうすることによって、送達可能な体積全体が排出される(全量排出)。更なる例では、各容器は単回用量を保持し、そうすることによって、送達可能な体積の一部が排出される(部分排出)。やはりISO11608-1:2014(E)に記載されているように、単回用量の容器システムは、交換不能な一体型容器を有する針ベースの注射デバイスを含み得る。このようなシステムの一例では、各容器は単回用量を保持し、そうすることによって、送達可能な体積全体が排出される(全量排出)。更なる例では、各容器は単回用量を保持し、そうすることによって、送達可能な体積の一部が排出される(部分排出)。
【0142】
本明細書に記載する本発明は、例示的な実施形態に関連する説明によって限定されるものではない。むしろ、本発明は、たとえ前記特徴又は前記組合せ自体が特許請求の範囲又は例示的な実施形態に明示的に記載されていないとしても、任意の新規な特徴及び特徴の任意の組合せを含み、特に、特許請求の範囲における特徴の任意の組合せを含む。
【符号の説明】
【0143】
10 薬物容器ホルダ/ハウジング
11a プランジャロッド
11b 駆動スリーブ
11c ダイヤルスリーブ
13 用量窓
14 薬物容器
15 針
16 内側針キャップ
17 外側針キャップ
18 キャップ
20 グリップ要素
21 測定ユニット/光学センサ
22 回路基板
23 電気機械スイッチ
24 バッテリ
25 LED
26 スナップ接続部
27 カバー要素
28 プロセッサ
70 ダイヤルスリーブ
71a…71c 形成物
100 薬物送達デバイス
D 遠位方向
P 近位方向
L 長手方向軸線
R 径方向
C 方位方向/回転方向/角度方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】