(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】薬物送達デバイスの構成要素及び薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
A61M5/315 550G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518320
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 EP2022076300
(87)【国際公開番号】W WO2023046805
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ポール・リチャード・ドレイパー
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ポール・モリス
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・ケア・スティール
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE06
4C066FF05
4C066HH30
(57)【要約】
薬物送達デバイスの構成要素及び薬物送達デバイス。本発明は、薬物送達デバイスの装置(2)に接続されるように構成され、且つ機能要素(21、...、25)を含む、薬物送達デバイス(100)の構成要素(2)に関する。少なくとも構成要素が装置に接続されるとき、遷移領域(3)は、薬物送達デバイスの要素の接面間に形成され、これらの要素の少なくとも1つは、構成要素の要素である。遷移領域は、構成要素の外部から構成要素の内部に到達し、且つ機能要素を保護するために、流体が構成要素の外部から内部に遷移領域を介して到達するリスクが低減されるように設計される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(100)の装置(1)に接続されるように構成される、前記薬物送達デバイス(100)の構成要素(2)であって、
- 少なくとも1つの機能要素(21、...、25)
を含み、
- 少なくとも前記構成要素(2)が前記装置(1)に接続されるとき、遷移領域(3)は、前記薬物送達デバイス(100)の要素の接面間に形成され、前記要素の少なくとも1つは、前記構成要素(2)の要素であり、
- 前記遷移領域(3)は、前記構成要素(2)の外部から前記構成要素(2)の内部に到達し、及び
- 前記遷移領域(3)は、前記機能要素(21、...、25)を保護するために、流体が前記構成要素(2)の前記外部から前記内部に前記遷移領域(3)を介して到達するリスクが低減されるように設計される、構成要素(2)。
【請求項2】
- 前記遷移領域(3)は、流体経路遷移領域であり、前記流体経路遷移領域では、前記接面は、流体が移動することができる流体経路(3a)が前記表面間に延在するように互いに離間され、及び
- 前記遷移領域(3)は、前記遷移領域(3)の内部において、前記流体経路(3a)が、異なる軸方向に延在する2つのセクションを含むように設計される、請求項1に記載の構成要素(2)。
【請求項3】
- 前記遷移領域(3)の内部において、前記流体経路(3a)は、少なくとも1つのコイルを含み、且つ/又は蛇行経路である、請求項2に記載の構成要素(2)。
【請求項4】
- 前記薬物送達デバイス(100)の使用中、前記装置(1)の少なくとも1つの要素に対して軸方向に移動されるように構成され、及び
- 前記遷移領域(3)の内部の前記流体経路(3a)の長さは、前記構成要素(2)の移動中に変化する、請求項2又は3に記載の構成要素(2)。
【請求項5】
- 前記遷移領域(3)は、前記構成要素(2)及び前記装置(1)の両方の要素間に形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の構成要素(2)。
【請求項6】
- 前記遷移領域(3)は、前記構成要素(2)の要素の先端セクションと、前記装置(1)の要素の基端セクションとの間に形成され、及び
- 前記構成要素(2)が前記装置(1)に接続されるとき、前記先端セクション及び前記基端セクションは、軸方向に重なり、且つ径方向に互いにオフセットされる、請求項5に記載の構成要素(2)。
【請求項7】
- 前記遷移領域(3)は、流体が前記遷移領域(3)を通過することができないように、前記接面が互いに密に嵌合される狭い遷移領域である、請求項1~6のいずれか一項に記載の構成要素(2)。
【請求項8】
- 前記遷移領域(3)は、前記構成要素(2)の要素間に形成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の構成要素(2)。
【請求項9】
- 前記機能要素(21、...、25)は、前記遷移領域(3)から軸方向及び/又は径方向にオフセットされる、請求項1~8のいずれか一項に記載の構成要素(2)。
【請求項10】
- 少なくとも前記構成要素(2)が前記装置(1)に接続されるとき、2つの遷移領域(3)は、形成され、
- 少なくとも1つの遷移領域(3)は、流体経路遷移領域であり、及び少なくとも1つの遷移領域(3)は、狭い遷移領域であり、及び
- 前記機能要素(21、...、25)は、前記流体経路遷移領域と前記狭い遷移領域との間に軸方向に配置される、請求項2又は7に記載の構成要素(2)。
【請求項11】
- 前記遷移領域(3)の近傍における前記構成要素(2)の表面は、疎水性材料で形成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の構成要素(2)。
【請求項12】
- 前記機能要素(21、...、25)は、前記構成要素(2)の電子機能と関連し、及び
- 前記機能要素(21、...、25)は、光学センサ(11)、又は電気機械スイッチ(12)、又は回路基板(13)、又は電池(14)、又はLED(15)である、請求項1~11のいずれか一項に記載の構成要素(2)。
【請求項13】
- ユーザインタフェース部材であって、前記装置(1)に接続されるとき、前記ユーザインタフェース部材を操作するために使用者によってタッチされるように構成されたユーザインタフェース部材である、請求項1~12のいずれか一項に記載の構成要素(2)。
【請求項14】
薬物送達デバイス(100)であって、
- 請求項1~13のいずれか一項に記載の構成要素(2)、
- 薬物容器を保持するための容器ホルダ(10)を有する装置
を含む薬物送達デバイス(100)。
【請求項15】
- 前記構成要素(2)は、用量調整及び/又は用量送達プロセスを実施するために使用者によって操作されるように構成されたユーザインタフェース部材であり、
- 前記構成要素(2)は、前記使用者によって操作されるとき、前記容器ホルダ(10)に対して回転及び/又は軸方向に移動されるように構成される、請求項14に記載の薬物送達デバイス(100)。
【請求項16】
前記遷移領域(3)は、前記構成要素(2)の外面から前記構成要素(2)の内面に到達する、請求項1~13のいずれか一項に記載の構成要素(2)。
【請求項17】
前記内面は、前記構成要素(2)の前記内部に隣接する、請求項16に記載の構成要素(2)。
【請求項18】
前記遷移領域(3)は、流体経路遷移領域であり、前記流体経路遷移領域では、前記接面は、流体が移動することができる流体経路(3a)が前記表面間に延在するように互いに離間される、請求項1~13、16又は17のいずれか一項に記載の構成要素(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
薬物送達デバイスの構成要素が提供される。更に、薬物送達デバイスが提供される。
【背景技術】
【0002】
注射の投与は、精神的及び身体的の両方で使用者及び医療従事者に幾つかのリスク及び課題を呈するプロセスである。薬物送達デバイスは、患者にとって自己注射をより容易にすることを目的とし得る。電子回路を使用した薬物送達デバイスは、製薬業において及び使用者又は患者にとって一層普及しつつある。薬物送達デバイスが正しく動作することを保証するために、電子構成要素の安定した動作が望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
達成される1つの目的は、薬物送達デバイスの改良された構成要素を提供することである。好ましくは、構成要素は、薬物送達デバイスの安定した動作を可能にし得る。達成される更なる目的は、改良された薬物送達デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これらの目的は、とりわけ、独立請求項の主題によって達成される。有利な実施形態及び更なる発展形態は、従属請求項の主題であり、以下の説明及び図にも提示される。
【0005】
まず、構成要素が明示される。構成要素は、使用者によって薬物送達デバイスを操作及び/又は作動させる、ボタン及び/又はつまみのようなユーザインタフェース部材であり得る。構成要素は、使用者によって操作されない薬物送達デバイスのモジュールであり得る。
【0006】
少なくとも1つの実施形態によれば、構成要素は、薬物送達デバイスの装置に接続されるように構成される。例えば、構成要素は、装置に永久的に接続されるか又は装置に解放可能に接続されるように構成される。例えば、構成要素は、装置の基端部に配置されるように構成される。構成要素は、装置に接続されるとき、薬物送達デバイスの基端部を形成し得る。
【0007】
装置は、薬物が充填された薬物容器を保持する薬物容器ホルダを含み得る。装置は、薬物を送達するための駆動機構及び/又は薬物用量を調整するための用量設定機構を含み得る。機構は、プランジャロッド、駆動スリーブ及び/又はダイヤルスリーブのような駆動要素を含み得る。プランジャロッド、駆動スリーブ及び/若しくはダイヤルスリーブを軸方向に移動させ、薬物を送達するために回転して移動させる、且つ/又は薬物の用量を調整するために、駆動要素は、例えば、動作可能に結合される。
【0008】
構成要素は、例えば、構成要素が駆動機構及び/又は用量調整若しくは設定機構に動作可能に結合されるように装置に接続可能であり得る。装置に結合されるとき、構成要素は、装置の少なくとも1つの要素、例えば薬物容器ホルダに対して例えば回転可能に移動可能及び/又は軸方向に移動可能であり得る。
【0009】
少なくとも1つの実施形態によれば、構成要素は、少なくとも1つの機能要素を含む。機能要素は、特に、構成要素の電気又は電子機能及び/又は構成要素の機械的機能と関連し得る。機能要素は、構成要素の内部に配置され得る。例えば、少なくとも装置に接続されるとき、機能要素は、構成要素及び/又は装置の1つ又は複数のハウジング要素の背後に隠れ得る。したがって、例えば、機能要素は、薬物送達デバイスの外部から自由にアクセス可能及び/又は可視でないことがある。
【0010】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも構成要素が装置に接続されるとき、遷移領域は、薬物送達デバイスの要素の接面間に形成される。これらの要素の少なくとも1つは、構成要素の要素、例えば構成要素のハウジング要素であり得る。
【0011】
遷移領域は、2つ以上の要素間、例えば薬物送達デバイスの3つ以上の要素間に形成され得る。これらの要素の全ては、構成要素自体が遷移領域を含むか又は遷移領域を画定する要素の1つ若しくは複数が装置の要素であり得るように、構成要素の要素であり得る。遷移領域がその間に形成される要素は、それぞれ一体形成され得、且つ/又はプラスチックで形成され得る。特に、要素は、別個の要素であり、即ち1つの共通個片に形成されない。
【0012】
遷移領域は、互いに面する表面間に形成される。表面は、少なくとも部分的に、互いに平行に延在し得る。表面は、間隙が要素間に形成されるように互いに離間され得る。代替的に、表面は、要素間に境界面が形成されるように互いに接触し得る。
【0013】
少なくとも1つの実施形態によれば、遷移領域は、構成要素の外部から構成要素の内部、特に構成要素の外面から構成要素の内面に到達し、内面は、内部に隣接する。特に、間隙及び/又は境界面は、外部から内部に到達し得る。例えば、遷移領域は、構成要素の外部からアクセス可能及び/又は可視である。構成要素の内部は、特に周方向に構成要素の少なくとも1つのハウジング要素によって囲まれる。これは、内部が外向き径方向に構成要素の少なくとも1つのハウジング要素によって区切られ得ることを意味する。
【0014】
これに関して、「構成要素の内部」は、構成要素のハウジング要素外の空間又はエリアであり得る。「構成要素の外部」は、薬物送達デバイスのハウジング内部の空間又はエリアであり得る。代わりに又は加えて、「構成要素の外部」は、薬物送達デバイスのハウジング内部の空間又はエリアであり得る。
【0015】
これに関して、「構成要素の外面」は、表面法線が構成要素の別の表面を通らない構成要素の表面であり得る。
【0016】
少なくとも1つの実施形態によれば、遷移領域は、機能要素を保護するために、流体が構成要素の外部から内部に遷移領域を介して到達するリスクが低減されるように設計される。流体は、液体形態又は気体形態であり得る。流体は、水又は薬物送達デバイスの薬物であり得る。
【0017】
構成要素の外部から内部に測定される遷移領域の長さは、少なくとも1mm、少なくとも1.5mm又は少なくとも2mmであり得る。
【0018】
例えば、構成要素において又は少なくとも構成要素が装置に接続されるとき、2つ以上の遷移領域があり得る。1つの遷移領域と関連して開示される全ての特徴は、他の遷移領域に対しても開示される。
【0019】
少なくとも1つの実施形態では、薬物送達デバイスの構成要素は、薬物送達デバイスの装置に接続されるように構成され、且つ機能要素を含む。少なくとも構成要素が装置に接続されるとき、遷移領域は、薬物送達デバイスの要素の接面間に形成され、これらの要素の少なくとも1つは、構成要素の要素である。遷移領域は、構成要素の外部から構成要素の内部に到達し、且つ機能要素を保護するために、流体が構成要素の外部から内部に遷移領域を介して到達するリスクが低減されるように設計される。
【0020】
機能要素、特に構成要素の電気又は電子機能と関連する要素に到達した流体は、要素の機能に影響を及ぼし得る。装置に接続されるように構成された構成要素の場合、特にこの構成要素が少なくとも1つの要素に対して移動可能であるように配置される場合、装置は、構成要素の1つ又は複数の要素と、構成要素の外部から内部に到達する装置の1つ又は複数の要素との間に遷移領域を生成する。しかしながら、そのような遷移領域は、流体が潜在的に構成要素の外部から内部に入る恐れのある領域である。
【0021】
更に、遷移領域は、構成要素間に形成され得る。例えば、構成要素の製造中、機能要素に物理的に接続すること、例えばその機能をプログラム、較正、構成及び/又はチェックすることが必要であり得る。そのような機能要素は、製造の終わりに追加される構成要素のカバー要素の背後に配置され得る。しかしながら、次いで、遷移領域がこのカバー要素と構成要素の更なるハウジング要素との間に形成され、ここでも遷移領域を通して流体が潜在的に構成要素の内部に入る恐れがある。
【0022】
構成要素の機能要素の破損は、とりわけ、流体が外部から内部に遷移領域を介して到達するリスクが低減されるように遷移領域を要素間に設計することによって低下し得る。このリスクを低減する様々な方法が可能であり、以下で更に説明する。
【0023】
本明細書で明示される構成要素及び/又は薬物送達デバイスは、長尺状であり得、且つ/又は長手方向軸、例えば延長長軸を有し得る。代わりに又は加えて、構成要素及び/又は薬物送達デバイスは、長手方向軸に対して回転対称を有し得る。本明細書では、長手方向軸と平行する方向は、軸方向と呼ばれる。例として、薬物送達デバイス及び/又は構成要素は、円筒形であり得る。
【0024】
更に、薬物送達デバイスは、端部、例えば長手方向端部を含み得、この端部は、人体の皮膚領域に面するか又は押し当てられるように提供され得る。この端部は、本明細書では先端部と呼ばれる。薬物又は薬品は、先端部を介して供給され得る。逆端部は、本明細書では基端部と呼ばれる。基端部は、使用中に皮膚領域から離れている。基端部から先端部を指す軸方向は、本明細書では先端方向と呼ばれる。先端部から基端部を指す軸方向は、本明細書では基端方向と呼ばれる。薬物送達デバイスの部材、要素又は特徴、例えば構成要素の先端部は、本明細書では、最も遠くに配置される部材/要素/特徴の端部であると理解される。したがって、部材、要素又は特徴の基端部は、本明細書では、最も近くに配置される要素/部材/特徴の端部であると理解される。
【0025】
換言すれば、先端は、本明細書では、薬物送達デバイス又はその構成要素の分注端部に面するか又は分注端部を指し、且つ/又は離れるように指すように配置された又は配置される方向、端部又は表面を明示するために使用される。他方では、基端は、本明細書では、薬物送達デバイス若しくはその構成要素の分注端部から及び/又は先端部から離れて面するか若しくは離れて指すように配置された又は配置される方向、端部又は表面を明示するために使用される。先端部は、分注端部に最も近く且つ/又は基端部から最も遠い端部であり得、基端部は、分注端部から最も遠い端部であり得る。基端面は、先端部から離れて且つ/又は基端部に向かって面し得、先端面は、先端部に向かって且つ/又は基端部から離れて面し得る。分注端部は、例えば、ニードルユニットが本デバイスに取り付けられているか又は取り付けられるニードル端部であり得る。
【0026】
長手方向軸に直交及び/又は長手方向軸を横断する方向は、本明細書では径方向と呼ばれる。内向き径方向は、長手方向軸を指す径方向である。外向き径方向は、長手方向軸から離れて指す径方向である。「角度方向」、「方位方向」又は「回転方向」という用語は、本明細書では同義で使用される。そのような方向は、長手方向軸に直交するとともに、径方向に直交する方向である。
【0027】
少なくとも1つの実施形態によれば、遷移領域は、流体経路が表面間に延在するように接面が互いに離間される流体経路遷移領域である。流体は、この流体経路に沿って移動することができる。流体経路は、特に、構成要素の外部から構成要素の内部に例えば機能要素まで到達し得る。
【0028】
特に、遷移領域は、遷移領域を画定する要素間に間隙又は空間を含む。間隙は、構成要素の外部から構成要素の内部まで妨げられることなく延在し得る。流体経路は、この間隙内に延在し得る。例えば、要素の接面間で測定される間隙の最小高さ又は幅は、少なくとも0.05mm、0.1mm又は0.2mmである。代わりに又は加えて、間隙の最大高さ又は幅は、最大で1.5mm、1mm、0.5mm、0.4mm又は0.3mmである。
【0029】
少なくとも1つの実施形態によれば、遷移領域は、遷移領域内部において、流体経路が、異なる軸方向に延在する2つのセクションを含むように設計される。これは、外部から内部に流体経路に沿って遷移領域内部を流れる流体、例えば水又はデバイス内の薬物が、ある軸方向から逆の軸方向に流れる方向を変える必要があることを意味する。例えば、遷移領域内部の流体経路を外部から内部に流れる場合、基端方向に延在するセクションは、先端方向に延在するセクションの後に続く。異なる軸方向に延在するセクションは、少なくとも部分的に、互いに平行に延在し得る。流体経路の2つのセクションは、径方向に互いにオフセットされ得る。例えば、基端方向に延在するセクションは、先端方向に延在するセクションから径方向内向きにオフセットされ得る。
【0030】
例えば、2つのセクションは、軸方向に沿って少なくとも2mm又は少なくとも5mmの長さをそれぞれ有する。加えて又は代わりに、軸方向に沿ったセクションの長さは、最大で1cm又は最大で5mmであり得る。
【0031】
少なくとも1つの実施形態によれば、流体経路の長さは、少なくとも1mm、少なくとも2mm、少なくとも7mm、少なくとも8mm、少なくとも9mm又は少なくとも10mmである。代わりに又は加えて、流体経路は、最大で20mm、最大で18mm、最大で15mm、最大で13mm、最大で5mm又は最大で3mmの長さを有し得る。流体経路の長さは、構成要素が薬物送達デバイスのハウジング又は本体に対して初期位置にあるとき、例えば用量設定動作が開始される前及び/又は用量送達動作が完了した後の位置で測定することができる。用量設定中、長さが低減され得る。
【0032】
少なくとも1つの実施形態によれば、遷移領域の内部において、流体経路は、少なくとも1つのコイル又は蛇行部をそれぞれ含み、且つ/又は蛇行経路である。例えば、遷移領域の内部において、流体経路は、例えば、異なる軸方向に延在する2つのセクション間に少なくとも1つの湾曲セクションを含む。遷移領域内部の流体経路は、2つ以上のコイル又は蛇行部を含み得る。したがって、流体経路は、遷移領域内部の迷路型経路として形成され得る。
【0033】
間隙又は空間が2つの要素の接面間に形成されるように遷移領域を形成することは、例えば、遷移領域を画定する要素間の相対移動が望まれる場合に有利であり得る。流体が潜在的に構成要素の内部に到達することができる流体経路が、異なる軸方向に延在する少なくとも2つのセクション有するように遷移領域を設計すること及び/又は遷移領域内部に少なくとも1つのコイルを有することにより、実際に流体が流体経路に沿って全距離を移動する確率が下がる。
【0034】
少なくとも1つの実施形態によれば、構成要素は、薬物送達デバイスの使用中、装置の少なくとも1つの要素に対して軸方向及び/又は回転方向に移動されるように構成される。したがって、構成要素が装置に接続されるとき、構成要素は、装置の少なくとも1つの要素に対して依然として移動可能である。例えば、用量調整及び/又は薬物送達プロセスは、そのような移動と関連する。
【0035】
少なくとも1つの実施形態によれば、遷移領域内部の流体経路の長さは、構成要素の移動中、例えば少なくとも5%又は少なくとも10%変化する。特に、遷移領域は、構成要素の少なくとも1つの要素と、装置の少なくとも1つの要素との間に形成され、構成要素の要素は、装置の要素に対して移動可能である。したがって、遷移領域がその間に形成される要素の表面は、構成要素の移動中に互いに対して移動される。
【0036】
例えば、構成要素の移動中、ある軸方向に延在する遷移領域内部の流体経路の1つのセクションは、長さを変更し、例えば長さを2倍又は半分にする。異なる軸方向に延在する遷移領域内部のセクションの長さは、移動中に一定のままであり得るか、又は同様に長さを変更、例えば2倍若しくは半分にし得る。
【0037】
少なくとも1つの実施形態によれば、遷移領域は、構成要素及び装置の両方の要素間に形成される。流体経路遷移領域の形態の遷移領域は、構成要素が装置に接続されるとき、装置の要素及び構成要素の要素が互いに対して移動可能である場合、装置の要素と構成要素の要素との間に形成され得る。
【0038】
遷移領域又はその一部を画定する構成要素の少なくとも1つの要素及び装置の少なくとも1つの要素は、ハウジング要素、即ち例えば外向き径方向及び/又は軸方向に構成要素又は装置得をそれぞれ区切る要素であり得る。例えば、装置の要素は、ハウジング要素である。構成要素の要素は、グリップ要素であり得る。特に、遷移領域の少なくとも一部がその間に形成される装置の要素及び構成要素の要素は、使用者がタッチ可能な薬物送達デバイスの外面をそれぞれ形成し得る。
【0039】
少なくとも1つの実施形態によれば、遷移領域は、構成要素の要素の先端セクションと、装置の要素の基端セクションとの間に形成される。先端セクションは、要素の残りの部分から先端方向に延在し得、且つ/又は要素の先端部を画定し得る。したがって、基端セクションは、要素の残りの部分から基端方向に延在し得、且つ/又は要素の基端部を画定し得る。
【0040】
少なくとも1つの実施形態によれば、構成要素が装置に接続されるとき、構成要素の要素の先端セクション及び装置の要素の基端セクションは、軸方向に重なり、且つ/又は互いに径方向にオフセットされる。先端セクション及び基端セクションは、角度方向にも重なり得る。構成要素の要素の先端セクションは、例えば、装置の要素の基端セクションと内向き径方向にオフセットされ得る。
【0041】
機能要素は、要素の先端セクションから基端方向にオフセットされ得る。
【0042】
少なくとも1つの実施形態によれば、遷移領域は、少なくとも3つの要素間に形成される。遷移領域の第1のセクションは、第1の要素と第2の要素との間に形成され得、遷移領域の第2のセクションは、第2の要素と第3の要素との間に形成され得る。例えば、第2の要素は、径方向に第1の要素と第3の要素との間に配置される。第2の要素は、第1及び/又は第3の要素と軸方句及び/又は回転方向に重なり得る。例として、装置は、第1及び第3の要素を含み、構成要素は、第2の要素を含む。第2の要素は、先端セクションを含む要素であり得る。第1の要素は、基端セクションを含む要素であり得る。第1及び第2の要素は、ハウジング要素であり得る。逆の軸方向に延在する2つのセクションを有する流体経路がある流体経路遷移領域は、3つの要素間に延在し得る。
【0043】
少なくとも1つの実施形態によれば、遷移領域は、流体が遷移領域を通過することができないように、接面が互いに密に嵌合される狭い遷移領域である。例えば、遷移領域では、表面は、互いに接触し(即ち距離がゼロであり)、及び/又は表面間の距離は、遷移領域を狭くするために最大で0.5mm、最大で0.1mm又は最大で0.05mmである。そのような狭い遷移領域は、互いに面する表面を提供する要素間の締まり嵌めによって達成され得る。好ましくは、例えば、締まり嵌めによって一緒に嵌装された表面を有する2つの要素間に圧力が生成される。したがって、遷移領域は、より大きい間隙に開くことなく一定の流体圧力に耐えることができる。加えて又は代わりに、封止材料が遷移領域内部に配置されて、それを狭くし得る。
【0044】
そのような狭い遷移領域を用いると、流体がこの遷移領域を介して外部から内部に到達することを阻止することができる。
【0045】
少なくとも1つの実施形態によれば、狭い遷移領域は、少なくとも1mm、少なくとも1.5mm又は少なくとも2mmの、構成要素の外部と内部との間で測定される長さを有する。例えば、狭い遷移領域は、全長、長さの少なくとも20%又は少なくとも50%にわたって狭い。
【0046】
狭い遷移領域は、狭い部分領域及び狭くない部分領域を含み得る。狭くない部分領域では、接面間の間隙は、狭い部分領域における間隙よりも大きいサイズであり得、特に流体を狭くない部分領域に配置することができるような大きさであり得る。狭い部分領域は、狭くない部分領域よりも外部の近くに配置され得、例えば外部に隣接し得る。
【0047】
少なくとも1つの実施形態によれば、遷移領域を画定する2つの要素間のスナップ接続が遷移領域に形成される。例えば、スナップ接続は、遷移領域の端部、例えば構成要素の内部により近い端部に形成される。スナップ接続は、例えば、2つの要素が互いに対して移動可能でないように2つの要素を互いに対して機械的に固定し得る。スナップ接続は、一方の要素の突起部が別の要素の凹部に係合することによって形成され得る。
【0048】
少なくとも1つの実施形態によれば、遷移領域は、構成要素の要素間に形成される。例えば、構成要素のこれらの要素は、互いに対して移動可能ではない。特に、この場合、狭い遷移領域の形態の遷移領域を実現することができる。遷移領域又はその少なくとも一部を画定する構成要素の要素は、ハウジング要素であり得る。例えば、これらの要素の1つは、構成要素の側面を形成するグリップ要素であり得、要素の1つは、構成要素の基端面を形成するカバー要素であり得る。
【0049】
少なくとも1つの実施形態によれば、機能要素は、遷移領域、例えば全ての遷移領域から軸方向及び/又は径方向にオフセットされる。機能要素が遷移領域から軸方向にオフセットされる場合、軸方向に機能要素と遷移領域との間に重なりがなくてよい。同様に、機能要素が遷移領域から径方向にオフセットされる場合、径方向に機能要素と遷移領域との間に重なりがなくてよい。同様に、機能要素が遷移領域から軸方向及び径方向にオフセットされる場合、軸方向及び径方向に機能要素と遷移領域との間に重なりがなくてよい。これに関して、「重なりがない」は、機能要素の一部又は部分が各方向に遷移領域の一部又は部分と重ならないことを意味する。
【0050】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも構成要素が装置に接続される場合、少なくとも2つの遷移領域が形成される。例えば、1つの遷移領域は、装置及び構成要素の両方の要素によって形成される。更なる遷移領域は、構成要素の要素間に形成され得る。
【0051】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの遷移領域は、先に明示された流体経路遷移領域であり、及び少なくとも1つの遷移領域は、先に明示された狭い遷移領域である。例えば、流体経路遷移領域は、狭い遷移領域から遠くに配置される。狭い遷移領域は、構成要素の基端部に形成され得る。流体経路遷移領域は、構成要素の先端部に形成され得る。
【0052】
少なくとも1つの実施形態によれば、機能要素は、流体経路遷移領域と狭い遷移領域との間に軸方向に配置される。例えば、機能要素は、流体経路遷移領域とも狭い遷移領域とも軸方向に重ならない。
【0053】
少なくとも1つの実施形態によれば、遷移領域の近傍における構成要素の表面は、疎水性材料で形成される。例えば、遷移領域を画定する、即ち遷移領域に隣接する構成要素の表面は、疎水性材料で形成される。構成要素は、この表面を形成する疎水性材料の皮膜を含み得る。
【0054】
疎水性表面を遷移領域又はその近傍に使用することにより、遷移領域を介して流体が内部に到達するリスクを下げることもできる。「近傍において」は、例えば、疎水性表面が遷移領域から最大で1mm又は最大で0.5mmの距離にあることを意味する。疎水性表面は、構成要素及び/又は装置の外面にあり得る。
【0055】
少なくとも1つの実施形態によれば、機能要素は、構成要素の電気又は電子機能と関連する。特に、構成要素は、1つ又は複数の電気又は電子要素を含み得、且つ電気又は電子機能を有し得る。少なくとも1つの機能要素は、電気要素であり得る。例えば、構成要素は、薬物送達デバイスの使用中に送達された薬物用量を測定するように構成され得る。構成要素は、例えば、Bluetooth接続を介して測定用量をスマートフォン又はコンピュータのような外部デバイスに通信するように更に構成され得る。このために、構成要素は、無線通信インタフェース、即ちBluetoothインタフェースを含み得る。加えて又は代わりに、構成要素は、薬物送達デバイスの状態を使用者に可聴的及び/又は可視的に伝えるために、1つ又は複数のLEDのような電気又は電子使用者通信要素を含み得る。
【0056】
少なくとも1つの実施形態によれば、機能要素は、センサ、例えば光学センサ、又は電気機械スイッチ、又は回路基板、又は電池、又はLEDである。構成要素は、上記の機能要素の1つ、複数又は全てを含み得る。光学センサは、LED、例えば赤外線LEDと、LEDが放出した光の反射部分を検出するように構成されたセンサ要素とを含み得る。センサは、センサと、更なる要素、例えば装置の要素との間の相対移動、特に相対回転を検出するように構成され得る。例えば、センサは、グレイコードを読み取るセンサである。
【0057】
少なくとも1つの実施形態によれば、構成要素は、ユーザインタフェース部材であり、ユーザインタフェース部材は、ユーザインタフェース部材が装置に接続されるとき、ユーザインタフェース部材を操作するために使用者によってタッチされるように構成される。特に、構成要素は、装置に永久的に接続若しくは接続可能又は解放可能に装置に接続可能なつまみ又はボタンであり得る。ユーザインタフェース部材は、装置に接続されるとき及び使用者によって操作されるとき、用量調整及び/又は薬物送達を実行するように構成され得る。
【0058】
例えば、ユーザインタフェース部材は、構成要素の外面を形成し、且つ使用者によって握られるように構成された側面を含む。側面は、外向き径方向にユーザインタフェース部材を区切り得る。特に、側面は、長手方向軸に対して平行に又は鋭角をなして延在し得る。
【0059】
側面は、長手方向軸の周りでの、例えば装置のハウジング要素に対するユーザインタフェース部材の回転を実行するために、2本の指を使用して使用者によって掴まれるように構成され得る。加えて又は代わりに、ユーザインタフェース部材は、基端方向に面する基端面を含み得る。基端面は、長手方向軸及び/又は側面に対して垂直又は斜めに延在し得る。基端面は、特にユーザインタフェース部材を先端方向に押すために、例えば1本のみの指を使用して使用者によってタッチされるように構成され得る。
【0060】
少なくとも1つの実施形態によれば、側面は、グリップ特徴、例えば溝を含み得る。溝は、長手方向軸に平行又は鋭角をなして延在し得る。グリップ特徴は、使用者によるユーザインタフェース部材の掴みを簡易化し得る。
【0061】
次に、薬物送達デバイスが明示される。薬物送達デバイスは、注射デバイス及び/又はペン型デバイス、例えばダイヤル伸長ペンであり得る。薬物送達デバイスは、使用者に送達される薬物用量を可変設定することができる可変用量デバイスであり得る。例えば、薬物送達デバイスは、再使用可能なデバイスである。薬物送達デバイスは、幾つかの薬物送達プロセスを順次実行するように構成され得る。例えば、そのような各薬物送達プロセス中、調整又は設定された用量が使用者に送達される。
【0062】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、先に明示されたような構成要素を含む。したがって、構成要素について開示された全ての特徴は、薬物送達デバイスについても開示され、逆も同様である。
【0063】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、薬物容器を保持するための容器ホルダを有する装置を含む。容器ホルダは、装置のハウジング要素であり得るか、又はハウジング要素に接続されるか若しくは接続可能であり得る。容器ホルダは、装置のハウジング要素に対して軸方向及び/又は回転方向に固定された薬物容器を保持するように構成され得る。特に、容器ホルダは、薬物送達プロセス中に薬物容器が軸方向及び/又は回転方向に移動しないように薬物容器を保持し得る。
【0064】
少なくとも1つの実施形態によれば、構成要素は、用量調整及び/又は用量送達プロセスを実施するために使用者によって操作されるように構成されたユーザインタフェース部材である。
【0065】
少なくとも1つの実施形態によれば、構成要素は、使用者によって操作されるとき、容器ホルダに対して回転及び/又は軸方向に移動されるように構成される。
【0066】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、薬物が充填された薬物容器を含む。薬物容器は、先端部に予め取り付けられたニードルを有するシリンジであり得る。代替的に、ニードルは、薬物容器、例えばその先端部に取り付け可能であり得る。
【0067】
薬物送達デバイスを操作する方法は、以下の通りであり得る:ユーザインタフェース部材、例えばつまみの形態であり、装置に接続された構成要素は、例えば、側面において使用者によって掴まれて回転され、それにより使用者に注射される用量を調整又は設定する。ユーザインタフェース部材は、ハウジング及び/又は薬物容器(ホルダ)に対して螺旋経路で回転され得、それにより例えば基端方向に移動する。所望の用量を調整した後、ユーザインタフェース部材は、軸方向、例えば先端方向に押され得、薬物の用量が注射される。このために、使用者は、ユーザインタフェース部材の基端面を押し得る。先端方向におけるユーザインタフェース部材の移動中、ユーザインタフェース部材は、回転しなくてよく、装置の可動要素、例えばデバイスの用量設定及び/又は駆動機構の要素が回転し得る。それにより、調整された用量が放出され得、例えば患者に注射され得る。ユーザインタフェース部材におけるセンサは、稼働要素の回転を測定し得る。センサの測定信号は、次いで、測定信号から送達用量を特定し得る、ユーザインタフェース部材の電気要素、例えばプロセッサに送信され得る。この情報は、次いで、例えば、無線通信モジュールを用いて更なるデバイスに通信され得る。
【0068】
本方法と併せて開示される特徴は、構成要素及び本デバイスにも該当し、逆も同様である。
【0069】
以下では、本明細書に記載の構成要素及び薬物送達デバイスについて、例示的な実施形態に基づいて図面を参照してより詳細に説明する。同じ参照符号は、個々の図で同じ要素を示す。しかしながら、関わるサイズ比は、必ずしも一定ではなく、個々の要素は、むしろ、よりよい理解のためにサイズが誇張された状態で示されていることがある。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】薬物送達デバイスの例示的な実施形態を分解組立図で示す。
【
図2】薬物送達デバイスの例示的な実施形態の基端セクションを異なる図で示す。
【
図3】薬物送達デバイスの例示的な実施形態の基端セクションを異なる図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下では、例示的な実施形態についてインスリン注射デバイスを参照して説明する。しかしながら、本開示は、そのような用途に限定されず、他の薬品を放出するように構成された注射デバイス又は薬物送達デバイス全般、好ましくはペン型デバイス及び/又は注射デバイスにも同様に良好に展開することができる。
【0072】
更に、以下では、構成要素が、用量設定及び/又は用量注射のために使用者によって操作されるように構成されたユーザインタフェース部材である例示的な実施形態について説明する。しかしながら、本開示は、ユーザインタフェース部材の形態の構成要素に限定されない。むしろ、構成要素は、例えば、調整された用量を測定するために薬物送達デバイスの装置に接続されるか又は接続可能であるが、使用者によって操作又は移動されることが想定されないモジュールであり得る。
【0073】
本明細書における特定の例示的な実施形態は、例えば、国際公開第2014/033195A1号パンフレット又は国際公開第2014/033197A1号パンフレット(これらの文献の開示内容は、特に電子機能及び用量設定及び/又は駆動機構の動作に関わる限り、本明細書に明示的に援用される)に開示されるデバイスと同様に、ユーザインタフェース部材の形態の構成要素が、注射ボタン及び用量設定(調整)部材を同時に実現するつまみである注射デバイスの形態の薬物送達デバイスに関して示される。したがって、薬物送達デバイスの用量送達動作を開始及び/又は実行するためにつまみが使用され得、つまみは、用量設定動作の開始及び/又は実行にも使用され得る。デバイスは、ダイヤル伸長型であり得、即ち用量設定中に長さが増大する。用量設定及び用量放出動作モード中、ダイヤル伸長の同じ運動学的挙動を用いる他の注射デバイスは、例えば、Eli Lilly製のKwikpen(登録商標)又はSavvio(登録商標)デバイス及びNovo Nordisk製のFlexPen(登録商標)、FlexTouch(登録商標)又はNovopen(登録商標)デバイスとして既知である。したがって、これらのデバイスへの一般原理の適用は、明らかに明快であり、これ以上の説明を省略する。しかしながら、本開示の一般原理は、その運動学的挙動に限定されない。
【0074】
特定の他の実施形態は、別個の注射ボタン及びグリップ構成要素/用量設定部材が存在する注射デバイス、即ち国際公開第2004/078239A1号パンフレットに開示されるデバイスに適用されることが想定され得る。したがって、本開示は、例えば、一方が用量設定動作用であり、もう一方が用量送達動作用である2つの別個のユーザインタフェース部材を有するシステムにも関する。デバイスの用量設定構成と用量送達構成とを切り替えるために、用量送達のためのユーザインタフェース部材は、用量設定のためのユーザインタフェース部材に対して移動し得る。
【0075】
1つのユーザインタフェース部材が提供される場合、ユーザインタフェース部材は、ハウジング要素に対して先端方向に移動し得る。各移動の過程において、デバイスの用量設定機構及び駆動機構の2つの要素間のクラッチは、例えば、係合から解放に又はその逆に状態を変える。例えば、2つの要素への噛み合い歯のセットによって形成されるクラッチが係合されるとき、2つの要素は、互い対して回転方向にロックされ得、クラッチが係合解除又は解放されるとき、要素の一方は、2つの要素の他方に対して回転可能であり得る。要素の一方は、用量設定及び駆動機構のプランジャロッドに係合する駆動要素又は駆動スリーブであり得る。駆動スリーブは、用量設定中、ハウジング要素に対して回転するように設計され得、用量送達中、ハウジング要素に対して回転方向にロックされ得る。駆動スリーブとプランジャロッドとの間の係合は、螺合であり得る。したがって、用量送達中、駆動スリーブは回転することができないため、ハウジング要素に対する駆動スリーブの軸方向移動はプランジャロッドを回転させることになる。この回転は、送達動作中、プランジャロッドとハウジング要素との間の螺合により、プランジャロッドの軸方向変位に変換され得る。
【0076】
図1は、薬物送達デバイス100の例示的な実施形態の分解組立図である。この例示的な実施形態では、薬物送達デバイス100は、注射デバイス、例えばペン型注射器である。
【0077】
図1の注射デバイス100は、薬物容器14、例えばインスリン容器又はそのような容器14の容器ホルダを保持するハウジング容器10を含む注射ペンである。容器14は薬物、例えばインスリンを含み得る。容器14は、カートリッジ若しくはカートリッジを含み得るカートリッジ用レセプタクルであり得又はカートリッジを受けるように構成され得る。ニードル15は、容器14又はレセプタクルに固定することができる。容器14は、カートリッジであり得、レセプタクルは、カートリッジホルダであり得る。ニードル15は、内部ニードルキャップ16及び外部ニードルキャップ17又は別のキャップ18のいずれかによって保護される。注射デバイス100から放出されるインスリン用量は、つまみ2の形態のユーザインタフェース部材2を回すことによって設定、プログラム又は「調整」され得、現在プログラム又は設定された用量は、次いで、例えば単位の倍数で用量窓13を介して表示される。単位は、1用量増分を規定し得る1単位設定増分の整数倍でのみハウジング10に対してつまみ2を相対的に回転させることができるようにし得る用量設定機構によって決定され得る。これは、例えば、適切なラチェット系によって達成され得る。窓に表示される印は、数字スリーブ又はダイヤルスリーブ70に提供され得る。例えば、注射デバイス100が人間のインスリンを投与するように構成される場合、用量は、いわゆる国際単位(IU)で表示され得、1つのIUは、約45.5マイクログラムの純粋な結晶性インスリン生物学的均等物(1/22mg)である。インスリン類似体又は他の薬品を送達するために、注射デバイスで他の単位が採用され得る。選択される用量は、同様に、
図1における用量窓13に示されるものと異なるように表示され得ることに留意されたい。
【0078】
用量窓13は、ハウジング要素10における開口部の形態であり得、つまみ2がまわされたときに移動して、現在プログラムされている用量の視覚的表示を提供するように構成されたダイヤルスリーブ70の限られた部分を使用者が見られるようにする。つまみ2は、プログラミング中に回されると、ハウジング要素10に対して螺旋経路上で回転する。
【0079】
この例示的な実施形態では、つまみ2は、データ収集デバイス又は電子システムのグリップ及び/又は取り付けを促進するフォーメーションの形態で1つ又は複数の特徴71a、71b、71cを含む。
【0080】
注射デバイス100は、つまみ2を回すことにより、機械的クリック音が生じて使用者に音響フィードバックを提供するように構成され得る。この実施形態では、つまみ2は、注射ボタンとしても作用する。ニードル15が患者の皮膚部に刺され、つまみ2が軸方向に押されると、表示窓13に表示されるインスリン用量が注射デバイス100から放出される。つまみ2が狙った所まで押された後、注射デバイス100のニードル15が皮膚部に特定の時間にわたり留まる場合、用量が患者の体に注射される。インスリン用量の放出も機械的クリック音を生じさせ得るが、この機械的クリック音は、用量の調整中、つまみ2を回転させるときに生成される音と異なる。
【0081】
この例示的な実施形態では、インスリン用量の送達中、つまみ2は、ダイヤルスリーブ70又は数字スリーブ70が初期位置に回転して戻る間、回転なしで軸方向移動において初期位置に戻り、例えばゼロ単位の容量を表示する。既に記したように、本開示は、インスリンに限定されず、薬物容器14内の全ての薬物、特に液体の薬物又は製剤を包含すべきである。
【0082】
注射デバイス100は、インスリン容器14が空になるか又は注射デバイス100内の薬品の期限日(例えば、初回使用から28日後)に達するまで、幾つかの注射プロセスに使用され得る。
【0083】
更に、注射デバイス100を最初に使用する前に、例えば2単位のインスリンを選択し、ニードル15が上を向いた状態で注射デバイス100を保持しながらつまみ2を押すことにより、いわゆる「プライムショット」を実行して、流体がインスリン容器14及びニードル15から正しく流れることを保証する必要があり得る。説明を簡潔にするために、以下では、放出量が実質的に注射用量に対応し、したがって、例えば、注射デバイス100から放出された薬品の量は、使用者が受け取る用量に等しいと仮定する。
【0084】
先に説明したように、つまみ2は、同じ構成要素が用量の調整/設定及び用量の分注/送達に使用されるような注射ボタンとしても機能する。ここでも、好ましくは限られた様式でのみ互いに対して可動である2つの異なるユーザインタフェース部材を有する構成も可能であることに留意する。しかしながら、以下の考察は、用量設定及び用量送達機能を提供する単一のユーザインタフェース部材に焦点を当てる。換言すれば、用量設定動作のために使用者がタッチする部材の設定表面及び用量送達動作のために使用者がタッチする用量送達表面は、固定して接続される。代替的に、異なるユーザインタフェース部材が使用される場合、それらは、互いに対して移動可能であり得る。各動作中、ユーザインタフェース部材は好ましくは、デバイスの本体又はハウジングに対して移動する。用量設定中、ユーザインタフェース部材は、ハウジングに対して近くに移動し、且つ/又はそれに対して回転する。用量送達中、ユーザインタフェース部材は、好ましくは、ハウジング又は本体に対して回転せずに軸方向、例えば遠くに移動する。
【0085】
図1は、部材、要素又は特徴の位置を明示するために本明細書で使用される座標系も示す。先端方向D及び基端方向Pは、長手方向軸Lに対して平行に延在する。長手方向軸Lは、デバイス100の延長長軸である。径方向Rは、長手方向軸Lと直交し、長手方向軸Lを横断する方向である。方位方向Cは、角度方向又は回転方向とも呼ばれ、径方向R及び長手方向軸Lに直交する方向である。図の明確性を上げるために、以下の図のいずれでも異なる方向及び軸は、示されない。
【0086】
図2は、
図1の薬物送達デバイス100の基端セクションを断面図で示す。
図3は、同じ基端セクションを示すが、異なる断面図で示す。見てわかるように、つまみ2の形態の構成要素2は、装置1に接続され、装置1は、上記のハウジング要素10を含む。つまみ2は、装置1に永久的又は解放可能に接続され得る。
【0087】
装置1は、ハウジング要素10の他に、プランジャロッド11a、駆動スリーブ11b及びダイヤルスリーブ11cを含む。これらの要素は、用量調整及び用量注射のために動作可能に結合される。用量注射中、ダイヤルスリーブ11cは、例えば、数字スリーブ70と一緒に回転する。この回転は、用量注射中に回転しないつまみ2の内部の光学センサ21によって検出される。
【0088】
つまみ2は、光学センサ21の他に、更なる機能要素、即ち回路基板22、電気機械スイッチ23、電池24、1つ若しくは複数のLED25及び/又はプロセッサ28をその内部に含む。回路基板22は、光学センサ21に電気的に接続されて、センサ21の測定信号を受信し、且つ/又はセンサ21に電力を提供し得、回路基板22は、プロセッサに導電接続され得る。電池24は、センサ21、LED25及び/又は回路基板22上の更なる電気若しくは電子要素、例えばプロセッサ28に給電するために使用され得る。機械的スイッチ23は、つまみ2が駆動スリーブ11bに対して軸方向、例えば先端方向に移動したとき、駆動スリーブ11bによって操作され得る。機械的スイッチ23を操作すると、センサ21及び/又はLED25に給電することができる。LED25は、薬物送達デバイス100の動作状態を使用者に伝達するように構成され得る。このために、つまみ2の基端面を形成するカバー要素27は、透明領域を含み得、それを通してLED25の光がつまみ2から出ることができる。透明領域は、例えば、つまみ2の側面とつまみ2の基端面との間に形成される。
【0089】
つまみ2の内部の機能要素21~25は、特にこれらの要素が電気又は電子機能と関連するため、つまみ2の外部から内部への流体の移動によってダメージを受け得るか又は少なくとも影響を受け得る。実際に、
図2及び
図3に示されるつまみ2では、流体は潜在的に内部に到達し得、薬物送達デバイス100の別個の要素の接面間に形成される遷移領域3を介して機能要素21~25に到達し得る。そのような1つの遷移領域3は、装置1の要素と、つまみ2のグリップ要素20の形態のハウジング要素20との間に形成される。より正確には、遷移領域3は、先端方向Dに突出するグリップ要素20の先端セクションと、基端方向Pに突出する装置1のハウジング要素10の基端セクションとの間及びグリップ要素20の先端セクションと、ダイヤルスリーブ11cの基端セクションとの間に形成される。したがって、グリップ要素20の先端セクションは、径方向にハウジング要素10とダイヤルスリーブ11cとの間に配置される。要素10、20、11c間の遷移領域3は、間隙を含む。流体経路3aは、この間隙を通して延在し得る。したがって、流体、例えば水又は薬物は、つまみ2の外部から内部に到達し得、例えばセンサ21に到達し得る。流体経路3aは、
図2及び
図3では破線で示されている。間隙の典型的な幅又は高さは0.25mmであり得る。
【0090】
図2及び
図3から見てわかるように、遷移領域3内部の流体経路3aは、逆の軸方向に延在する2つのセクションを含む。外部から内部に到達した流体は、最初に流体経路3aの第1のセクションに沿って先端方向Dに移動する必要があり、次いで流体経路3aのコイル又は湾曲セクションをそれぞれ通る必要があり、次いで約10mmの長さを有し得る流体経路3aの第2のセクションに沿って基端方向Pに移動する必要がある。換言すれば、遷移領域3の設計は、蛇行流体経路3aが作成されるようなものである。これは、流体、例えば液体が実際に外部から機能要素21~25のいずれかの内部に到達するリスクを下げる。
【0091】
この時点で、例えば用量を設定するために、つまみ2が装置1のハウジング要素10に対して軸方向、好ましくは回転方向に移動可能であることに留意されたい。良好な可動性を可能にするために、十分に大きい間隙を有する、ハウジング要素10とつまみ2との間の遷移領域3が好ましい。しかしながら、これにより、流体経路3a及び流体の潜在的な流入が生じる。それにも関わらず、遷移領域3の特殊な設計は、以下説明するように、流体が構成要素2の内部に到達するリスクを下げる。つまみが例えば用量設定のためにハウジング要素10から離れて基端方向に移動すると、例えば逆方向に延在する流体経路のセクションを隔てるつまみ2のスカート部(流体経路3aのコイル又は湾曲セクションを画定し得る)とハウジング要素10との重なりにより、流体経路の長さが低減する。用量が設定されている場合、流体経路は、用量が設定されていない場合よりも約3mm短くてよく、なぜなら、つまみは、ハウジング要素から軸方向に離れて移動しているためである。しかしながら、つまみ2の用量なし設定又はゼロ用量位置は、つまみの標準位置であり、したがってより長い流体経路を所与として、つまみの用量なし又はゼロ用量位置における関連領域内への流体の移動からデバイスがよりよく保護されることが有利である。
図4は、用量設定動作のためにつまみがハウジング要素10に対して基端方向に移動した場合、つまみ2の用量設定位置における流体経路3aを示す。
【0092】
例えば、デバイスの外部からスイッチ23まで(経路3d、例えば約13mm)又はプロセッサ28若しくはプロセッサ28が配置されるつまみ内の区画まで(経路3e、例えば約12mm)の更なる流体経路が、
図5に示される強調表示されている。プロセッサ28は、センサ21と同じ回路基板又は別個の回路基板に配置され得る。経路3dに沿って移動する流体は、スイッチの誤作動、例えば短絡を生じさせ得る。経路3eに沿って移動する流体は、プロセッサ又は区画内の他の要素若しくは構成要素の機能を損ない得る。
【0093】
つまみ2がハウジング要素10に対して軸方向に移動すると、遷移領域3がその間に形成される要素20、10、11cの表面も互いに対して軸方向にシフトする。それにより、流体経路3aの軸方向延在セクションの長さも変わる。特に、基端方向Pに延在し、より径方向内向きに存在する流体経路3aのセクションの長さは変わる。
【0094】
図2及び
図3では、更なる遷移領域3は、つまみ2の基端部、即ちカバー要素27とつまみ2のグリップ要素20との間に形成される。これらの2つの要素20、27は互いに対して移動可能ではない。したがって、2つの要素20、27間の遷移領域3は、例えば、0.05mm未満の互いに面する2つの要素20、27の表面間の最小又は最大距離で狭く形成することができる。このようにして、流体がこの遷移領域3を介して外部から内部に入ることを完全に回避し得る。この遷移領域の長さは、例えば、約2mmであり得る。
【0095】
図2及び
図3では、つまみ2の基端部における狭い遷移領域3は、例えば、1つ又は複数の狭い部分領域3bと、例えば2つの要素20、27間の距離/間隙がより大きい、狭い部分領域3b間に軸方向に配置された狭くない部分領域3cとを含むことがわかり得る。要素20、27間のスナップ接続26が、つまみ2の内部のより近くで狭い部分領域3bに隣接する。スナップ接続26は、要素20、27を互いに締まり嵌めによって機械的に接続又は固定する。
【0096】
図2及び
図3から見てわかるように、幾つかの機能要素、特に光学センサ21及び電気機械スイッチ23は、軸方向において、流体経路3aを形成する遷移領域3と、つまみ2の基端部における狭い遷移領域3との間に配置される。特に、機能要素は、流体が機能要素に到達する確率が更に下がるように遷移領域3から軸方向に離間される。
【0097】
図2及び
図3の例示的な実施形態では、この遷移領域3を介した流体が流入するリスクを更に下げるために、遷移領域3を画定する要素の表面及び/又は遷移領域3の近傍の表面は、更に又は代替的に疎水性材料によって形成され得る。疎水性材料は、フルオロポリマーベースの材料及び/又はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を含むか又はPTFEからなる材料であり得る。疎水性材料は、Electrolube TCTF、3M Novec 1700又はAcota Certonal FC-742という名称で取引されている材料であり得るか又はそれを含み得る。
【0098】
「薬物」又「薬品」という用語は、本明細書では同義で使用され、1つ又は複数の有効活性成分又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物、及び任意選択的に製薬上許容される担体を含む製剤を記述する。有効活性成分(「API」)は、最も広義には、人間又は動物に対して生物学的効果がある化学構造である。薬理学では、薬物又は薬品は、疾患の治療、回復、予防若しくは診断に使用されるか、又は身体的若しくは精神的健全性を他の方法で強化するために使用される。薬物又は薬品は、限られた持続時間にわたって使用され得るか、又は慢性疾患では定期的に使用され得る。
【0099】
後述するように、薬物又は薬品は、1つ又は複数の疾患の治療のために、少なくとも1つのAPI又はその組合せを種々のタイプの製剤設計で含み得る。APIの例には、分子量500Da以下の小分子;ポリペプチド、ペプチド及びタンパク質(例えば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体断片及び酵素);炭水化物及び多糖類;並びに核酸、2本鎖又は1本鎖DNA(裸のDNA及びcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNA及びRNA等のアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子及びオリゴヌクレオチドがあり得る。核酸は、ベクター、プラスミド又はリポソーム等の分子送達系に組み込まれ得る。1つ又は複数の薬物の混合物も企図される。
【0100】
薬物又は薬品は、薬物送達デバイスと併用されるように適合された一次包装又は「薬物容器」に含まれ得る。薬物容器は、例えば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ又は1つ若しくは複数の薬物の格納(例えば、短期若しくは長期格納)に適したチャンバを提供するように構成された他の固体若しくは可撓性の器であり得る。例えば、幾つかの場合、チャンバは、薬物を少なくとも1日(例えば、1日~少なくとも30日)格納するように設計され得る。幾つかの場合、チャンバは、薬物を約1ヶ月~約2年にわたって格納するように設計され得る。格納は、室温(例えば、約20℃)又は冷蔵温度(例えば、約-4℃~約4℃)で行われ得る。幾つかの場合、薬物容器は、別個に投与される製剤の2つ以上の成分(例えば、API及び希釈剤又は2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ格納するように構成された二重チャンバカートリッジであり得るか又はそれを含み得る。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、人間又は動物の体に分注する前及び/又は分注中に2つ以上の成分の混合を可能にするように構成され得る。例えば、2つのチャンバは、互いに流通し(例えば、2つのチャンバ間の導管により)、分注前に使用者が望むときに2つの成分の混合を可能にするように構成され得る。代わりに又は加えて、2つのチャンバは、成分が人間又は動物の体に分注されているとき、混合を可能にするように構成され得る。
【0101】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物又は薬品は、多くの異なるタイプの医的障害の治療及び/又は予防に使用することができる。障害の例には、例えば、糖尿病又は糖尿病性網膜症等の糖尿病と関連する合併症、深部静脈又肺血栓塞栓症等の血栓塞栓症がある。障害の更なる例は、急性冠動脈症候群(ACS)、扁桃炎、心筋梗塞、癌、黄斑変性症、炎症、花粉症、アテローム性動脈硬化症及び/又は関節リウマチである。API及び薬物の例は、Rote Liste 2014等のハンドブック、限定ではなく、例として、主群12(抗糖尿病薬)又は86(腫瘍薬)及びMerck Index第15版に記載されるものである。
【0102】
I型及びII型糖尿病又はI型若しくはII型糖尿病と関連する合併症の治療及び/又は予防のためのAPIの例には、インスリン、例えばヒトインスリン若しくはヒトインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体若しくはGLP-1受容体作動薬若しくはその類似体若しくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害薬若しくはその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物又はそれらの任意の組合せがある。本明細書で使用される場合、「類似体」及び「誘導体」という用語は、天然のペプチドの構造、例えばヒトのインスリンの構造から、天然のペプチド中に見出される少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失させ、且つ/若しくは交換することにより、及び/又は少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することにより、形式上得ることができる分子構造を有するポリペプチドを指す。付加及び/又は交換されるアミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基、他の天然の残基又は完全に合成によるアミノ酸残基のいずれかであり得る。インスリン類似体は、「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、1つ又は複数の有機置換基(例えば、脂肪酸)がアミノ酸の1つ又は複数に結合している、天然のペプチドの構造、例えばヒトインスリンの構造から形式上得ることができる分子構造を有するポリペプチドを指す。任意選択的に、天然のペプチド中に見出される1つ又は複数のアミノ酸は、欠失及び/又はコード不可能なアミノ酸を含む他のアミノ酸によって置換されていてもよいか、又はコード不可能なアミノ酸を含むアミノ酸が天然のペプチドに付加されていてもよい。
【0103】
インスリン類似体の例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルジン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリシン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val又はAlaで置換され、位置B29においてLysがProで置換され得るヒトインスリン、;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0104】
インスリン誘導体の例は、例えば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン及びB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0105】
GLP-1、GLP-1類似体及びGLP-1受容体作動薬の例は、例えば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、Byetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド)、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(SAR425899)、エキセナチド-XTEN及びグルカゴン-Xtenがある。
【0106】
オリゴヌクレオチドの例としては、例えば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))又はアルポート症候群の治療のためのRG012がある。
【0107】
DPP4阻害剤の例としては、リナグリプチン、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0108】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン及びゴセレリン等の脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は調節性活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストがある。
【0109】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、超低分子量ヘパリン若しくはそれらの誘導体又は上記の多糖類の硫酸化形態、例えばポリ硫酸化形態及び/又は製薬上許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの製薬上許容される塩の例には、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例には、ハイランG-F20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0110】
「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、免疫グロブリン分子又はその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例には、抗原を結合する能力を保持するF(ab)及びF(ab’)2断片がある。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型又はヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(例えば、ネズミ)又は一本鎖抗体であり得る。幾つかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有し、補体を固定することができる。幾つかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低いか又は結合することができない。例えば、抗体は、アイソタイプ若しくはサブタイプ、抗体断片又は変異体であり得、これは、Fc受容体との結合を支持せず、例えば突然変異又は欠失したFc受容体結合領域を有する。抗体という用語は、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)及び/又は交差結合領域の配向性を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗体結合分子も含む。
【0111】
「断片」又は「抗体断片」という用語は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(例えば、抗体重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体断片は、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語は、そのような切断された断片に限定されない。本発明に有用である抗体断片は、例えば、Fab断片、F(ab’)2断片、scFv(一本鎖Fv)断片、直鎖抗体、単一特異性抗体断片又は二重特異性、三重特異性、四重特異性及び多重特異性抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの多重特異性抗体断片、一価抗体断片又は二価、三価、四価及び多価抗体等の多価抗体断片、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディ又はバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体及びVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体断片の更なる例が当技術分野で既知である。
【0112】
「相補性決定領域」又は「CDR」という用語は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖及び軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖及び軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は典型的には、当技術分野で既知のように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基は、抗原結合に直接的に関与することができ又はCDR内の1つ又は複数のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0113】
抗体の例には、抗PCSK-9mAb(例えば、アリロクマブ)、抗IL-6mAb(例えば、サリルマブ)及び抗IL-4mAb(例えば、デュピルマブ)がある。
【0114】
本明細書に記載の任意のAPIの製薬上許容される塩も、薬物送達デバイスにおける薬物又は薬剤の使用に企図される。製薬上許容される塩は、例えば、酸付加塩及び塩基性塩である。
【0115】
API、製剤、デバイス、方法、システムの種々の構成要素及び本明細書に記載の実施形態の修正形態(追加形態及び/又は除去形態)が、このような修正形態及びあらゆるその均等物を包含する本発明の全範囲及び趣旨から逸脱せずになされ得ることを当業者であれば理解するであろう。
【0116】
薬物送達デバイスの一例には、ISO11608-1:2014(E)のセクション5.2の表1に記載されているニードルベースの注射システムがあり得る。ISO11608-1:2014(E)に記載のように、ニードルベースの注射システムは、複数回用量容器システムと単回用量(部分的又は完全な排出を伴う)容器システムに大きく分けられる。容器は、交換可能な容器又は一体化された交換不可能な容器であり得る。
【0117】
ISO11608-1:2014(E)に更に記載されているように、複数回用量容器システムは、交換可能な容器を有するニードルベースの注射デバイスを含み得る。そのようなシステムでは、各容器は、複数回分の用量を保持し、そのサイズは、固定又は可変(使用者によって事前設定される)であり得る。別の複数回用量容器システムは、一体化された交換不可能な容器を有する針ベースの注射デバイスを伴い得る。そのようなシステムでは、各容器は複数回分の用量を保持し、そのサイズは固定又は可変(使用者によって事前設定される)であり得る。
【0118】
ISO11608-1:2014(E)に更に記載されているように、単回用量容器システムは、交換可能な容器を有するニードルベースの注射デバイスを含み得る。そのようなシステムに関する一例では、各容器は単一用量を保持し、送達可能な体積全体が排出される(完全排出)。更なる例では、各容器は単一用量を保持し、送達可能な体積の一部が排出される(部分排出)。更にISO11608-1:2014(E)に記載のように、単回用量容器システムは、一体化された交換不可能な容器を有するニードルベースの注射デバイスを含み得る。そのようなシステムに関する一例では、各容器は単一用量を保持し、送達可能な体積全体が排出される(完全排出)。更なる例において、各容器は、単一用量を保持し、送達可能な体積の一部が排出される(部分排出)。
【0119】
本明細書に記載の本発明は、例示的な実施形態と併せた説明によって限定されない。むしろ、本発明は、任意の新しい特徴及び特に特許請求の範囲内の特徴の任意の組合せを含む特徴の任意の組合せを、上記の特徴又は上記の組合せ自体が特許請求の範囲又は例示的な実施形態に明確に記載されていない場合でも包含する。
【符号の説明】
【0120】
1 装置
2 構成要素/ユーザインタフェース部材/ボタン/つまみ
3 遷移領域
3a 流体経路
3b 狭い部分領域
3c 狭くない部分領域
3d 流体経路
3e 流体経路
10 薬物容器ホルダ/ハウジング要素
11a プランジャロッド
11b 駆動スリーブ
11c ダイヤルスリーブ
13 用量窓
14 薬物容器
15 ニードル
16 内部ニードルキャップ
17 外部ニードルキャップ
18 キャップ
20 グリップ要素
21 光学センサ
22 回路基板
23 電気機械スイッチ
24 電池
25 LED
26 スナップ接続
27 カバー要素
28 プロセッサ
70 ダイヤルスリーブ
71a...71c フォーメーション
100 薬物送達デバイス
D 先端方向
P 基端方向
L 長手方向軸
R 径方向
C 方位方向/回転方向/角度方向
【国際調査報告】