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特表2024-535083エンコーダリング、用量記録システム、およびそれらを有する薬物送達デバイス
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  • 特表-エンコーダリング、用量記録システム、およびそれらを有する薬物送達デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】エンコーダリング、用量記録システム、およびそれらを有する薬物送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
A61M5/315 550R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518331
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2022076282
(87)【国際公開番号】W WO2023046787
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】21315185.5
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ポール・リチャード・ドレイパー
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ポール・モリス
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・ケア・スティール
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE14
4C066FF05
4C066LL21
4C066QQ48
4C066QQ82
(57)【要約】
本発明は、薬物送達デバイス(1)の用量記録システムのためのエンコーダリング(110)に関する。エンコーダリング(110)は、実質的に円形の構成を有し、近位端面および遠位端面を含む、支持リング(111)と、支持リング(111)を介して互いに堅く連結された一連のフラグセグメント(112)とを含み、各フラグセグメント(112)は、曲面で延びる実質的に矩形の外面を有する。フラグセグメント(112)のうちの少なくとも1つは、保持クリップ(114)および/または位置決めピン(113)を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイスの用量記録システムのためのエンコーダリングであって:
実質的に円形の構成を有し、近位端面および遠位端面を含む、支持リング(111)と、
該支持リング(111)を介して互いに堅く連結された一連のフラグセグメント(112)であって、各フラグセグメント(112)は、曲面で延びる実質的に矩形の外面を有する、フラグセグメントと、
を含み、
該フラグセグメント(112)のうちの少なくとも1つは、保持クリップ(114)および/または位置決めピン(113)を含む、前記エンコーダリング。
【請求項2】
2つの隣接しないフラグセグメント(112)は、各々、それぞれのフラグセグメント(112)の遠位端から半径方向内向きに突出する保持クリップ(114)を含む、請求項1に記載のエンコーダリング。
【請求項3】
4つのフラグセグメント(112)は、各々、それぞれのフラグセグメント(112)の遠位端から遠位に突出する位置決めピン(113)を含む、請求項1または2のいずれか1項に記載のエンコーダリング。
【請求項4】
フラグセグメント(112)は、円周にわたって等間隔に配置されており、各フラグセグメント(112)は、円周の30°にわたって延びている、請求項1~3のいずれか1項に記載のエンコーダリング。
【請求項5】
各フラグセグメント(112)の少なくとも実質的に矩形の外面は、IR光を反射する、特にNIR光を反射する表面を有し、かつ/または酸化チタンを含む白色ポリマー材料から作られている、請求項1~4のいずれか1項に記載のエンコーダリング。
【請求項6】
フラグセグメント(112)は、エンコーダリング(110)の中心軸に垂直な断面においてダブテール形状を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のエンコーダリング。
【請求項7】
薬物送達デバイスのための用量記録システムであって:
用量設定および/または用量投薬動作中に回転可能であり、一連のフラグ領域(121)を含む、投薬スリーブ(120)と、
少なくとも1つの光センサ(130)と、
該少なくとも1つの光センサ(130)の動作を制御し、該少なくとも1つの光センサ(130)からの信号を処理および/または記憶するように構成されたプロセッサ(140)と、
請求項1~6のいずれか1項に記載のエンコーダリング(110)と、
を含み、
該エンコーダリング(110)は、該エンコーダリング(110)のフラグセグメント(112)が投薬スリーブ(120)のフラグ領域(121)の間に円周方向に挿入されるように、少なくとも1つの保持クリップ(114)および/または少なくとも1つの位置決めピン(113)を用いて投薬スリーブ(120)に堅く固定されている、前記用量記録システム。
【請求項8】
2つの光センサ(130)は、nが整数であるn×30°+15°だけ、円周方向にオフセットして設けられている、請求項4または7に記載の用量記録システム。
【請求項9】
投薬スリーブ(120)は、少なくとも1つの保持クリップ(114)および/または少なくとも1つの位置決めピン(113)を受ける凹部(122;123)を含む、請求項7または8のいずれか1項に記載の用量記録システム。
【請求項10】
フラグ領域(121)は、円周にわたって等間隔に配置されており、各フラグ領域(121)は、円周の30°にわたって延びている、請求項7~9のいずれか1項に記載の用量記録システム。
【請求項11】
少なくともフラグ領域(121)は、IR光を吸収する、特にNIR光を吸収する表面仕上げを有し、かつ/またはカーボンブラックを含むポリマー材料から作られている、請求項7~10のいずれか1項に記載の用量記録システム。
【請求項12】
投薬スリーブ(120)は、エンコーダリング(110)のフラグセグメント(112)を受ける、フラグ領域(121)に隣接するダブテール形状の凹部を含む、請求項7~11のいずれか1項に記載の用量記録システム。
【請求項13】
液体薬物の可変用量を設定および投薬するための薬物送達デバイスであって、
液体薬物を収容するカートリッジと、
薬物送達デバイスによって送達予定の用量を選択する用量ダイヤル設定動作および前記設定された用量を送達する用量送達動作を実行するように構成されている用量設定および駆動機構とを含み、
該用量設定および駆動機構は、請求項7~12のいずれか1項に記載の用量記録システムを含む、前記薬物送達デバイス。
【請求項14】
用量記録システムは、薬物送達デバイスの近位端に位置するボタンアセンブリに一体化されている、請求項13に記載の薬物送達デバイス。
【請求項15】
カートリッジは、解放可能に取り付けられたカートリッジホルダに受け入れられる、請求項13または14に記載の薬物送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、薬物送達デバイスにおいてまたは薬物送達デバイスとともに使用される用量記録システムのための、エンコーダリングに関する。本発明はさらに、好ましくはエンコーダリングおよび/または用量記録システムを含む、薬物送達デバイスに関する。より詳細には、本発明は、好適に構成されたペン注射器で、そのペン注射器から送達される用量を記録する目的で、取り外し不能内蔵モジュールまたは再使用可能なクリップオンモジュールとして具現化することができる、電子用量記録システムの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
ペン型薬物送達デバイスには、正規の医療訓練を受けていない人が定期的に注射を行うという用途がある。これは、糖尿病患者の間でますます一般的になっている可能性があり、そのような患者は、自己治療によって自身の疾患の効果的な管理を行うことができる。実際には、そのような薬物送達デバイスにより、ユーザは、薬剤の複数のユーザ可変の用量を個々に選択して投薬することができる。
【0003】
基本的に、2つのタイプの薬物送達デバイス:すなわち、再設定可能な(すなわち、再使用可能)デバイスおよび再設定不能な(すなわち、使い捨て)デバイスがある。たとえば、使い捨てペン送達デバイスは、自己完結型デバイスとして供給される。そのような自己完結型デバイスには、取り外し可能な充填済みカートリッジがない。逆に、デバイス自体を破壊しない限り、充填済みカートリッジをこれらのデバイスから取り外して交換することはできない。したがって、そのような使い捨てデバイスは、再設定可能な用量設定機構を有する必要がない。本発明は、使い捨てデバイスにも再使用可能デバイスにも適用可能である。
【0004】
そのようなデバイスの場合、ダイヤル設定されてペンから送達される用量を記録する機能は、多種多様なデバイスユーザにとって、記憶の補助として、または用量履歴の詳細なログ記録をサポートするために、有用でありうる。したがって、電子機器を使用する薬物送達デバイスは、製薬業界においてだけでなく、ユーザまたは患者にとって、ますます一般的になりつつある。たとえば、特許文献1から、電子データ収集デバイスを含む薬物送達デバイスが知られている。このデータ収集デバイスは、用量設定および用量投薬の間に回転可能な数字スリーブを含む。数字スリーブは、その近位端にキャスタレーションを含む。データ収集デバイスに光センサが配置され、センサに対するキャスタレーションの回転を検出することができるようになっている。光センサを有する薬物送達デバイスのための同様のエンコーダシステムは、特許文献2および特許文献3から知られている。このエンコーダシステムは、合わせてエンコーダリングを形成する反射領域および非反射(吸収)領域に分割された特別に適合された領域を有する、回転可能なダイヤルスリーブを含む。異なる反射領域を有するダイヤルスリーブでは、形状の高い精度を維持しながら製造することが困難になる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2016/131713A1
【特許文献2】WO2019/101962A1
【特許文献3】米国特許出願第2020/360614A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、製造および組立てを簡略化する、薬物送達デバイスのための信頼性の高い用量記録システムに関する改善を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、たとえば、独立請求項に定義された主題によって解決される。有利な実施形態および改良形態は、従属請求項に従う。しかしながら、本開示は、添付の特許請求の範囲で定義された主題に制限されないことが留意されるべきである。むしろ、本開示は、以下の説明から明らかになるように、独立請求項で定義されているものに加えて、またはその代わりに、改良形態を含むことができる。
【0008】
本開示の1つの態様は、薬物送達デバイスの用量記録システムのためのエンコーダリングに関する。エンコーダリングは、中心軸を有する実質的に円形の構成を有し、近位端面および遠位端面を含む、支持リングと、支持リングを介して互いに堅く連結された一連のフラグセグメントとを含むことができる。各フラグセグメントは、曲面で延びる実質的に矩形の外面を有することができる。好ましくは、すべてのフラグセグメントが延びている曲面は、一方向に湾曲した面、たとえば、支持リングの中心軸と同軸に配置されている垂直な環状の円筒表面を画成する面である。言い換えれば、フラグセグメントは、各々、円筒状表面の一部であり、その結果、エンコーダリングの半径方向外側に位置するセンサに常に垂直に反射することができる。たとえば、フラグセグメントは、支持リングの近位端面と実質的に面一であり、支持リングの遠位端面を越えて遠位に延びることができる。好ましくは、フラグセグメントのうちの少なくとも1つは、用量記録システムおよび/または薬物送達デバイス内でエンコーダリングを固定および位置合わせするための保持クリップおよび/または位置決めピンを含む。
【0009】
一例では、エンコーダリングの1つまたはそれ以上の、たとえば2つの隣接しないフラグセグメントは、各々、それぞれのフラグセグメントの遠位端から半径方向内向きに突出する保持クリップを含む。好ましくは、互いに反対側に位置する2つのフラグセグメントは、各々、1つの保持クリップを含む。フラグセグメントは、用量記録システムおよび/または薬物送達デバイスに設けられた対応する凹部内の保持クリップのスナップ係合を可能にするように弾性変形可能でありうる。1つまたはそれ以上、たとえば4つのフラグセグメントが、各々、それぞれのフラグセグメントの遠位端から遠位に突出する位置決めピンを含む場合、エンコーダリングの位置合わせおよび固定をさらに改善することができる。この向きにより、エンコーダリングを取り付けるときに、用量記録システムおよび/または薬物送達デバイスに対してエンコーダリングを所望の向きにすることが容易になる。
【0010】
したがって、本開示によるエンコーダリングは、保持クリップを含む少なくとも1つのフラグセグメントと、位置決めピンを含む少なくとも1つのフラグセグメントとを含むことができる。これには、薬物送達デバイスの用量記録システムの堅牢性が向上し、それにより、用量記録精度が向上し、薬物送達デバイスの落下試験における損傷の危険性が低下し、デバイスの使用中の意図しない分解の危険性が低下する、という利点がある。
【0011】
エンコーダリングの保持クリップは、薬物送達デバイスの構成部材、たとえば投薬スリーブなどにエンコーダリングを軸方向に保持または固定する機能を有する。加えて、エンコーダリングは、保持クリップによって半径方向に適所に保持される。したがって、保持クリップは、投薬スリーブなどにエンコーダリングを固定する2つの機能を有することができる。エンコーダリングの位置決めピンが、薬物送達デバイスの構成部材、たとえば投薬スリーブなどにエンコーダリングを半径方向に保持または固定する機能を有する。
【0012】
フラグセグメントの目的は、エンコーダリングの回転位置の、たとえば光センサを用いる検出を可能にすることである。したがって、フラグセグメントの数とフラグセグメント間の空間は、エンコーダリングの1回転あたりに検出可能な用量増分の数に影響を与える。たとえば、フラグセグメントは、円周にわたって等間隔に配置することができ、各フラグセグメントは、円周の30°にわたって延びることができる。
【0013】
回転符号化に光センサが使用される場合、各フラグセグメントの少なくとも実質的に矩形の外面、すなわち円筒状表面の一部は、IR光を反射する、特にNIR光を反射する表面仕上げを有することができ、かつ/または酸化チタンを含む白色ポリマー材料から作ることができる。フラグセグメント間の空間が空隙であるか、または反射率の低い材料で作られている場合、光センサは、エンコーダリングの回転を検出することができる。
【0014】
エンコーダリングを回転可能な構成部材に最小の遊びで取り付ける場合、回転符号化の精度を向上させることができる。位置決めピンに加えて、またはその代わりに、フラグセグメントは、エンコーダリングの中心軸、すなわち支持リングの中心を画成する軸に対して垂直な断面においてダブテール形状を有することができる。
【0015】
本開示のさらなる態様によれば、薬物送達デバイスのための用量記録システムは、投薬スリーブと、少なくとも1つの光センサと、プロセッサと、エンコーダリングとを含むことができる。たとえば、投薬スリーブは、用量設定および/または用量投薬動作の間、回転可能とすることができ、一連のフラグ領域を含むことができる。プロセッサは、少なくとも1つの光センサの動作を制御し、少なくとも1つの光センサからの信号を処理および/または記憶するように構成することができる。好ましくは、エンコーダリングは、エンコーダリングのフラグセグメントが投薬スリーブのフラグ領域の間に円周方向に挿入されるように、少なくとも1つの保持クリップおよび/または少なくとも1つの位置決めピンを用いて投薬スリーブに堅く固定されている。
【0016】
少なくとも1つの光センサは、エンコーダリングおよび投薬スリーブの半径方向外側に位置することができる。代替的な配置では、フラグセグメントとフラグ領域とは、半径方向内向きに面していてもよく、少なくとも1つの光センサは、エンコーダリングおよび投薬スリーブの半径方向内側に位置していてもよい。
【0017】
2つ以上のセンサが使用される場合、たとえば、2つの光センサを使用する場合、光センサは、互いに対して角度的にオフセットして配置することができ、それによりエンコーダリングの相対回転中に、4状態グレイコードパターンを生成することができる。たとえば、2つの光センサが、nが整数であるn×30°+15°(すなわち、エンコーダリングセグメントの半分)円周方向にオフセットして設けられている場合、WO2014033195に記載されているようなペンのような薬物送達デバイスは、1回の完全な相対回転につき24IU(1IUにつき15°増分)を排出するが、12個のエンコーダセグメント、すなわち、6つのフラグセグメントおよび6つのフラグ領域のみを使用して、用量設定および/または用量投薬を、1国際単位(1IU)の分解能で検出することができる。グレイコード符号化は、曖昧さおよび競合状態を避けるために、エンコーダの1IU(たとえば15°)回転ごとに2つのセンサ信号のうち一方のみが変化することを意味する。
【0018】
用量記録システムにおいて、投薬スリーブは、少なくとも1つの保持クリップおよび/または少なくとも1つの位置決めピンを受ける凹部を含むことができる。さらに、一例では、フラグ領域は、円周にわたって等間隔に配置することができ、各フラグ領域は、円周の30°にわたって延びることができる。
【0019】
投薬スリーブの少なくともフラグ領域は、IR光を吸収する、特にNIR光を吸収する表面仕上げを有することができ、かつ/またはカーボンブラックを含むポリマー材料から作られている。回転符号化の目的のために、反射率は、この例とは逆であって、たとえば、投薬スリーブのフラグ領域の反射率が高く、エンコーダリングのフラグセグメントの反射率の方が低くてもよい。加えて、またはその代わりに、投薬スリーブのフラグ領域をセンサからより離れた位置に配置してもよく、それにより、反射される光の量が低減する。
【0020】
用量記録システムにおいて、投薬スリーブは、エンコーダリングのフラグセグメントを受ける、フラグ領域に隣接するダブテール形状の凹部を含むことができる。これにより、エンコーダリングを投薬スリーブに対して正確な回転向きで固定することができる。
【0021】
用量記録システムは、薬物送達デバイスとともに使用される、薬物送達デバイスから送達される用量を記録するのに好適な電子システムでありうる。電子システムは、電源、たとえばコイン電池型の電池のような電池と、データを記憶するメモリと、電子システムの動作を制御するように構成され、電源およびメモリに連結されたプロセッサとを含むことができる。加えて、電子システムは、少なくとも2つの光センサユニット、たとえば、対応する第1の光センサとともに第1の光源と、対応する第2の光センサとともに第2の光源とを含むことができ、これらは、プロセッサと通信する。光センサは、薬物送達デバイスのエンコーダの動き、特に投薬スリーブのフラグ領域とともにエンコーダリングのフラグセグメントの動きを検出するのに好適でありうる。ここで、動きは、ダイヤル設定され(すなわち選択され)かつ/または薬物送達デバイスから送達される用量を示す。光センサユニットを実装するのに好適ないくつかの異なる方法がある。たとえば、光センサユニットは、電磁放射エミッタ、たとえばIR-LED、たとえばNIR-LEDにおけるようなLEDと、放射線検出器とを含む、放射線検出器を含むことができる。
【0022】
1つの例では、エンコーダと光センサユニットとは直交配置になっており、すなわち、それらは、位相が1/4波長ずれており、これは、両方の光源が同時に光を放出した場合、投薬される単位ごとに、センサのうちの一方のみが状態を変化させることを意味する。たとえば、これは、2つの光センサを、nが整数であるn×30°+15°円周方向にオフセットして設けることによって、実現される。エンコーダとセンサユニットとが互いに対して移動すると、以前は光を受け取っていた光センサのうちの一方が、今度は放出された光を受けなくなり、またはその逆になる。これは、エンコーダが選択的に光を反射することによって実現することができる。たとえば、フラグセグメントは光を反射することができ、フラグ領域は光を吸収することができる。代替形態として、エンコーダは、選択的に光を遮断してもよい。他の例では、エンコーダと光センサユニットとは、逆位相配置であってもよい。さらに他の代替形態では、エンコーダと光センサユニットとは逆位相配置になっておらず、両方の光源が同時に光を放出した場合、エンコーダの相対的な位置に応じて、いずれの光センサも光を検出しないか、1つのみ、またはすべての光センサが光を検出するようになっている。
【0023】
電子用量記録システムは、注射デバイスのための再使用可能なクリップオンモジュールとして構成することができる。代替形態として、電子システムは、注射デバイスに一体化された(組み込まれた)ユニットまたはモジュールであってもよい。電子システムおよび(電子)モジュールという用語は、以下では両方の代替形態について同義に使用する。用量を記録する機能は、記憶の補助として、または用量履歴の詳細なログ記録をサポートするために、多種多様なデバイスユーザにとって有用でありうる。電子システム、たとえば電子モジュールは、携帯電話などに接続可能であり、用量履歴を定期的にシステムからダウンロードすることができるように構成することができることが想定される。
【0024】
電子用量記録システムは、別のデバイスと通信するための通信ユニットをさらに含むことができる。好ましくは、電子用量記録システムは、相対的に低いエネルギー消費量を有する第1の状態から、相対的に高いエネルギー消費量を有する第2の状態に切り替えられ、それによって、通信ユニットが別のデバイスとの前記通信、たとえば、同期またはペアリング動作を確立するように誘導するように構成されている。電子制御ユニットは、電子用量記録システムの別のユニットに対して、このユニットがスイッチオンされるかまたは動作可能になるように、コマンド、たとえば信号を発行することができる。このユニットは、別のデバイスと通信するための通信ユニット、たとえば、Wi-FiまたはBluetoothなどの無線ネットワークを介して別のデバイスと通信する無線通信インターフェース、またはさらにはユニバーサルシリーズバス(USB)、ミニUSB、もしくはマイクロUSBコネクタを受けるソケットなどの有線通信リンク用のインターフェースであってもよい。好ましくは、電子用量記録システムは、通信ユニットとしてRF、WiFi、および/またはBluetoothユニットを含む。通信ユニットは、用量記録システムまたは薬物送達デバイスと、他の電子デバイス、たとえば携帯電話、パーソナルコンピュータ、ラップトップなどの外部との間の通信インターフェースとして提供することができる。たとえば、用量データを、通信ユニットによって外部デバイスに送信することができる。用量データは、外部デバイスにおいて確立された用量ログまたは用量履歴に使用することができる。
【0025】
本開示のさらに他の態様によれば、電子用量記録システムは、光源が起動されない(電源から電力が提供されない)スリープ状態をさらに有する。電子用量記録システムは、電子システムの動きを検出するのに好適な少なくとも1つの運動センサをさらに含むことができる。この例では、プロセッサは、少なくとも1つの運動センサによって動きが検出されない場合にはスリープ状態を維持し、少なくとも1つの運動センサによって動きが検出された場合には第1の低消費電力状態または少なくとも1つのさらなる状態に切り替わるように構成することができる。概して、スリープ状態またはモードは、モジュールのすべての機能が最小限のまたは実質的にゼロの消費電力であるが、電子システム(または薬物送達デバイス)がスリープモードから解除された場合にシステムの起動を必要としないモードでありうる。
【0026】
たとえば、電子用量記録システムがその低電力モードにある間、このような運動センサを使用して、モジュールが静止しているか否かを検出することができる。動きが検出されない場合、モジュールは収納またはアイドル状態であると想定され、ユーザインタラクションは発生せず、光センサはポーリングされず、電子システムまたはモジュールはウェークアップしない。動きが検出された場合、ユーザがモジュールとインタラクトしている可能性があると想定され、電子システムまたはモジュールは部分的にウェークアップして、上述した低周波数ポーリングモードまたは中周波数ポーリングモードになる。これにより、モジュールが静止しているときに引き出される電力の量が減少し、電池寿命が長くなる。
【0027】
電子用量記録システムが、薬物送達デバイスに解放可能に取り付けられる再使用可能なモジュールである場合、電子用量記録システムまたはモジュールは、中心軸を有する外側キャップと、キャップ内に少なくとも部分的に保持されるシャーシと、メモリおよびプロセッサを含むPCBユニットとを含むことができる。たとえば、PCBおよび電源は、キャップおよびシャーシ内に保持することができる。さらに、光源および光センサは、中心軸を中心とする円形領域に配置することができ、第1の光源および第1の光センサは、第2の光源および第2の光センサから角度的にオフセットしている。
【0028】
本開示のさらに他の態様によれば、液体薬物の可変用量を設定および投薬するための薬物送達デバイスは、液体薬物を収容するカートリッジと、薬物送達デバイスによって送達予定の用量を選択する用量ダイヤル設定動作、および設定された用量を送達する用量送達動作を実行するように構成されている用量設定および駆動機構とを含むことができ、用量設定および駆動機構は、用量記録システムおよび/またはエンコーダリングを含む。たとえば、用量記録システムを、薬物送達デバイスの近位端に位置するボタンアセンブリに一体化し、たとえば恒久的に一体化することができる。薬物送達デバイスは、空のカートリッジの交換を可能にする再使用可能なデバイスであってもよい。たとえば、カートリッジは、解放可能に取り付けられたカートリッジホルダに受け入れることができる。
【0029】
1つの実施形態では、薬物送達デバイスは、ダイヤルスリーブ、たとえば数字スリーブ、またはそれに軸方向にかつ/または回転不能にロックされた部材を含み、この部材は、少なくとも用量設定動作において、たとえば螺旋経路に沿って、用量設定および駆動機構の投薬スリーブとしてのハウジングに対して回転可能である。加えて、用量および/または注射ボタン、またはそれに軸方向にかつ/または回転不能にロックされた部材は、少なくとも用量送達動作において、ダイヤルスリーブに対して軸方向に変位可能であり、ハウジングに回転不能に拘束することができる。本開示の1つの態様によれば、エンコーダリングは、薬物送達デバイスの組立て中に投薬スリーブに固定される。エンコーダリングは、投薬スリーブ上に恒久的にまたは解放可能にクリップ留めすることができる。
【0030】
本開示は、たとえばユーザが注射ボタンに力を加えることによって、手動で駆動されるデバイス、ばねなどによって駆動されるデバイス、およびこれらの2つの概念を組み合わせたデバイス、すなわち、依然としてユーザが注射力をかける必要がある、ばね式のデバイスに適用可能である。ばねタイプのデバイスは、予荷重がかけられているばねと、用量選択中にユーザが負荷をかけるばねとを含む。いくつかのエネルギー貯蔵デバイスは、ばねの予荷重と、たとえば用量設定中に、ユーザが提供する追加のエネルギーとの組合せを使用する。
【0031】
本開示はさらに、上述したような電子システムを備え、薬剤を収容するカートリッジを含む薬物送達デバイスに関する。
【0032】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0033】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含みうる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0034】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0035】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0036】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかでありうる。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0037】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0038】
インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0039】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C(エフペグレナチド)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド(Pegapamodtide))、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(Bamadutide)(SAR425899)、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0040】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))、またはアルポート症候群の治療のためのRG012である。
【0041】
DPP4阻害剤の例は、リナグリプチン、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0042】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0043】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0044】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0045】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0046】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0047】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0048】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0049】
当業者であれば、本明細書に記載するAPI、製剤、装置、方法、システム、および実施形態のさまざまな構成要素の変更(追加および/または除去)を、こうした変更およびそのありとあらゆる均等物を包含する本発明の完全な範囲および趣旨から逸脱することなく行うことができることを理解するであろう。
【0050】
薬物送達デバイス例は、ISO11608-1:2014(E)の第5.2章の表1に記載されているような針ベースの注射システムを含むことができる。ISO11608-1:2014(E)に記載されているように、針ベースの注射システムは、複数用量の容器システムおよび(部分または完全排出を伴う)単一用量の容器システムに広く区別することができる。容器は、交換可能な容器または一体化された交換不能の容器でありうる。
【0051】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、複数用量の容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注射デバイスを含むことができる。こうしたシステムでは、各容器が複数の用量を保持し、用量のサイズは、固定であっても可変(ユーザによって事前設定される)であってもよい。別の複数用量の容器システムは、一体化された交換不能の容器を有する針ベースの注射デバイスを含むことができる。こうしたシステムでは、各容器が複数の用量を保持し、用量のサイズは、固定であっても可変(ユーザによって事前設定される)であってもよい。
【0052】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、単一用量の容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注射デバイスを含むことができる。こうしたシステムに対する1つの例では、各容器が単一の用量を保持し、それによって送達可能な体積全体が排出される(完全排出)。さらなる例では、各容器が単一の用量を保持し、それによって送達可能な体積の一部が排出される(部分排出)。同様にISO11608-1:2014(E)に記載されているように、単一用量の容器システムは、一体化された交換不能の容器を有する針ベースの注射デバイスを含むことができる。こうしたシステムに対する1つの例では、各容器が単一の用量を保持し、それによって送達可能な体積全体が排出される(完全排出)。さらなる例では、各容器が単一の用量を保持し、それによって送達可能な体積の一部が排出される(部分排出)。
【0053】
本明細書で使用する「軸方向」、「半径方向」、または「円周方向」という用語は、デバイス、カートリッジ、ハウジング、またはカートリッジホルダの主な長手方向軸に、たとえば、カートリッジ、カートリッジホルダ、または薬物送達デバイスの近位端および遠位端を通って延びる軸に関して使用することができる。
【0054】
ここで、本開示の非限定的で例示的な実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】薬物送達デバイスの一実施形態を示す図である。
図2】組立て前の用量記録システムの第1の実施形態のエンコーダリングおよび投薬スリーブを示す図である。
図3】組立て後の図2のエンコーダリングおよび投薬スリーブを示す図である。
図4図2のエンコーダリングおよび投薬スリーブを示す断面図である。
図5図2のエンコーダリングおよび投薬スリーブを示すさらなる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図において、同一の要素、同一に作用する要素、または同じ種類の要素には、同一の参照番号を与えている場合がある。
【0057】
以下では、いくつかの実施形態について、インスリン注射デバイスに関して説明する。しかしながら、本開示は、このような用途に限定されるものではなく、他の薬剤を排出するように構成された注射デバイス、または全体として薬物送達デバイス、好ましくはペン型デバイスおよび/または注射デバイスで、等しく良好に展開することができる。
【0058】
実施形態は、注射デバイスによって送達される用量に関するデータを記録および/または追跡する注射デバイス、特に可変用量注射デバイスに関連して提供される。これらのデータは、選択された用量のサイズ、および/または実際に送達された用量のサイズ、投与の日時、投与の持続時間などを含むことができる。本明細書に記載する構成は、検知素子の配置、および(たとえば、小型電池を容易にするため、かつ/または効率的な電力使用を有効にするための)電力管理技法を含む。
【0059】
本明細書におけるいくつかの実施形態は、WO2014033195に記載されているような注射デバイスに関して示しており、そこでは、注射ボタンおよびグリップ(用量設定部材または用量設定具)が組み合わされている。注射ボタンは、薬物送達デバイスの用量送達動作を開始および/または実行するためのユーザインターフェース部材を提供することができる。グリップまたはつまみは、用量設定動作を開始および/または実行するためのユーザインターフェース部材を提供することができる。両方のデバイスが、ダイヤル延長型であり、すなわち用量設定中にこれらのデバイスの長さが増大する。用量設定および用量排出動作モード中のダイヤル延長部およびボタンの同じ運動学的挙動を有する他の注射デバイスは、たとえば、Eli Lillyによって市販されているKwikpen(登録商標)デバイス、およびNovo Nordiskによって市販されているNovopen(登録商標)4デバイスとして知られている。したがって、これらのデバイスへの一般原理の適用は明瞭であり、これ以上の説明は省略する。しかしながら、本開示の一般原理は、その運動学的挙動に限定されるものではない。WO2004078239に記載されているような、別個の注射ボタンおよびグリップ構成要素/用量設定部材がある注射デバイスへの適用のための特定の他の実施形態も考えることができる。したがって、2つの別個のユーザインターフェース部材があってもよく、1つは用量設定動作のため、1つは用量送達動作のためのものである。
【0060】
本明細書において、「遠位」は、薬物送達デバイスもしくはその構成要素の投薬端の方を向きもしくは指すように配置されもしくは配置予定であり、かつ/または近位端から離れる方を指し、離れる方を向くように配置予定であり、もしくは離れる方を向いている方向、端部、または表面を指定するために使用する。他方、「近位」は、薬物送達デバイスまたはその構成要素の投薬端および/または遠位端から離れる方を向きまたは離れる方を指すように配置されまたは配置予定である方向、端部、または表面を指定するために使用する。遠位端は、投薬端に最も近く、かつ/または近位端から最も離れた端部とすることができ、近位端は、投薬端から最も離れた端部とすることができる。近位面は、遠位端から離れる方および/または近位端の方を向くことができる。遠位面は、遠位端の方および/または近位端から離れる方を向くことができる。投薬端は、たとえば、ニードルユニットがデバイスに取り付けられまたは取り付け予定である針の端部とすることができる。
【0061】
図1は、薬剤送達デバイスまたは薬物送達デバイスの分解図である。この例では、薬剤送達デバイスは、注射デバイス1、たとえば、WO2014033195に記載されているような注射ペンなどのペン型注射器である。
【0062】
図1の注射デバイス1は、ハウジング10を含む注射ペンであり、容器14、たとえばインスリン容器、またはそのような容器のためのレセプタクルを収容する。容器は、薬物を収容することができる。針15は、容器またはレセプタクルに取り付けることができる。容器をカートリッジとすることができ、レセプタクルをカートリッジホルダとすることができる。針は、内側ニードルキャップ16と、外側ニードルキャップ17または別のキャップ18のいずれかとによって保護される。注射デバイス1から排出予定のインスリン用量は、投与量つまみ12を回すことによって設定し、プログラムし、または「ダイヤルインする(dialled in)」ことができ、次いで、目下プログラムまたは設定されている用量が、投与量窓13を介して、たとえば単位の倍数で表示される。窓に表示される印は、数字スリーブまたはダイヤルスリーブに提供することができる。たとえば、注射デバイス1が、ヒトインスリンを投与するように構成されている場合、投与量は、いわゆる国際単位(IU)で表示することができ、1IUは、約45.5マイクログラムの純結晶インスリン(1/22mg)の生物学的等価量である。注射デバイスでは、アナログインスリンまたは他の薬剤を送達するために、他の単位を採用してもよい。選択された用量は、図1の投与量窓13に示されているものとは異なる形でも、等しく良好に表示することができることが留意されるべきである。
【0063】
投与量窓13は、ハウジング10内のアパーチャの形態とすることができ、それにより、ユーザは、目下設定されている用量の視覚標示を提供するために、投与量つまみ12が回されたときに動くように構成されているダイヤルスリーブ(たとえば、図2および図3の投薬スリーブ120)の制限された部分を見ることができる。投与量つまみ12は、用量を設定するとき、ハウジング10に対して螺旋経路上を回転する。この例では、投与量つまみ12は、データ収集デバイスの取り付けを容易にするための1つまたはそれ以上の構造を含む。
【0064】
注射デバイス1は、投与量つまみ12を回すことで機械クリック音を引き起こして、音響フィードバックをユーザに提供するように構成することができる。この実施形態では、投与量つまみまたは用量ボタン12は、注射ボタンとしても作用する。針15が患者の皮膚部分に刺されて、次いで投与量つまみ12および/または注射ボタン11が軸方向に押されたとき、表示窓13に表示されているインスリン用量が注射デバイス1から排出される。投与量つまみ12が押されてからある一定の時間にわたって、注射デバイス1の針15が皮膚部分に残っているとき、この用量が患者の体内に注射される。インスリン用量の排出もまた、機械クリック音を引き起こすことができ、この音は、用量のダイヤル設定中に投与量つまみ12を回転させるときに生じる音とは異なりうる。
【0065】
この実施形態では、インスリン用量の送達中、投与量つまみ12は、回転することなく、軸方向運動でその初期位置に戻され、一方、ダイヤルスリーブは、その初期位置へ戻るように回転して、たとえばゼロ単位の用量を表示する。上述したように、本開示は、インスリンに制限されるものではなく、薬物容器14内のすべての薬物、特に液体薬物または薬物調合物を包含するべきである。
【0066】
注射デバイス1は、インスリン容器14が空になるか、または注射デバイス1内の薬剤の有効期限(たとえば、最初の使用から28日後)に達するまでに、数回の注射プロセスに使用することができる。再使用可能デバイスの場合、インスリン容器を交換することが可能である。
【0067】
さらに、注射デバイス1を最初に使用する前に、インスリン容器14および針15から空気を除去するために、たとえばインスリンの2単位を選択し、針15を上に向けた状態で注射デバイス1を保持しながら投与量つまみ12を押すことによって、いわゆる「プライムショット」を実行することが必要である場合がある。提示を簡単にするために、以下では、選択された量は注射された量に実質的に対応し、そのため、たとえば、注射デバイス1から選択された薬剤の量は、ユーザが受け取った用量に等しいものと想定する。
【0068】
上記で説明したように、投与量つまみ12は、注射ボタンとしても機能し、そのため、用量のダイヤル設定/設定および用量の投薬/送達に同じ構成要素が使用される。
【0069】
以下では、本発明による電子用量記録システム100について、図2図5に関して説明する。例示的な実施形態では、電子用量記録システム100は、注射デバイス1に、具体的にはボタン11および投与量つまみ12に解放可能に取り付けることができる、再使用可能なモジュールを構成することができる。注射デバイス1の中心長手方向軸は、電子モジュール100の中心軸と同一である。モジュール100の一般的な動作原理、その設計、および注射デバイス1との相互作用は、参照する未公開のEP20315451.3およびPCT/EP2020/085728に開示されているものと同様である。
【0070】
用量記録システムは、投薬スリーブ120に取り付けることができるエンコーダリング110と、少なくとも1つの光センサ130、たとえば2つの光センサ130と、PCBユニット140の一部でありうるプロセッサとを含む。
【0071】
図示するエンコーダリング110は、近位端面および遠位端面を有する実質的に円形の支持リング111と、一連のフラグセグメント112、たとえば図2に示すような6つのフラグセグメント112とから構成されている。フラグセグメント112は、少なくとも外面において、実質的に矩形の外形または形状を有する円筒表面の一部として形成され、図示する実施形態におけるように円筒面のように曲面で延びている。フラグセグメント112は、支持リング111を介して互いに堅く連結されている。図示する例では、各フラグセグメント112の近位端は、実質的に、支持リング111の近位端面によって画成された面内にあり、一方、フラグセグメント112は、支持リング111の遠位端面を越えて遠位に突出している。各フラグセグメント112は、断面でダブテール形状を有することができる。
【0072】
図示する例では、4つのフラグセグメント112が、それぞれのフラグセグメント112の遠位端面から遠位に延びる位置決めピン113を含む。位置決めピン113の数および向きは、図示する例から外れていてもよい。さらに、例示的な実施形態は、2つの反対側に位置するフラグセグメント112上に保持クリップ114を含む。保持クリップは、それぞれのフラグセグメント112の遠位端の近くに半径方向内向きに延びる突出部として形成されている。
【0073】
エンコーダリング110は、射出成形によって形成された一体構成部材でありうる。たとえば、ゲートポイントが、フラグ構造に相互作用しないより広い領域に位置する、エンコーダリング110の上部にありうる。加えて、IDを提供するためのキャビティを、エンコーダリング110の上部においてゲートポイントの場所の反対側に配置することができる。
【0074】
エンコーダリング110は、組み立てられるとき、薬物送達デバイスの他の構成要素、たとえばシャーシに、半径方向のクリアランスを提供しなければならない。フラグセグメントの壁厚が大きすぎるか、または外径が大きすぎる/楕円形であるか、内径が小さい/楕円形である場合、投薬中にそのようなシャーシとエンコーダリング110との間に摩擦が生じる可能性がある。この摩擦は、通常、ねじれ抵抗が投薬力の増大を引き起こすため、望ましくない。最悪の場合、投薬中にデバイスが機能停止する。さらに、フラグセグメントの壁厚が大きすぎるか、内径が小さすぎる/楕円形である場合、シャーシとエンコーダリング110との間に干渉がもたらされる可能性があり、それにより、モジュールが完全に近位の位置に戻ることになる。その結果、スイッチ接点が閉じなくなる可能性があり、マイクロコントローラがスリープ状態になる可能性があり、スイッチ移行が起こらず、再びウェークアップしない可能性がある。
【0075】
投薬スリーブ120は、その近位端に一連のフラグ領域121を有する管状要素である。図示する実施形態では、6つのフラグ領域121が設けられ、それらの間に、図3に示すように投薬スリーブに取り付けられたときにエンコーダリング110のフラグセグメント112を受ける凹部がある。さらに、投薬スリーブ120は、それぞれの位置決めピン113を受ける、遠位に延びる凹部122と、エンコーダリング110のそれぞれの保持クリップ114を受ける、半径方向に延びる凹部123とを含む。
【0076】
たとえば、投薬スリーブ120は、フラグ領域121を有する部分と別個の数字スリーブ(図示せず)とを含む多構成部材であってもよい。組み立てられると、これらの構成部材間に相対的な動きの余地はない。成形および組立ての両方を有効にするために、部材を別個の構成要素として作ってもよい。また、数字スリーブは、数字スリーブ上に設けられた黒色の用量数字にコントラストを与えるために白色である可能性があるが、フラグ領域を含む部分の色は、センサからの光に反射しない、たとえば灰色/黒色であるか、美観に適するか、またはおそらくは薬物のタイプを区別するように、選択することができる。
【0077】
エンコーダリング110または少なくともそのフラグセグメント112と投薬スリーブ120または少なくともそのフラグ領域121とは、フラグセグメント112の反射率がフラグ領域121の反射率と異なるように、異なる材料から作られ、かつ/または異なる表面仕上げが与えられている。たとえば、フラグセグメント112は、IR光に対して高い反射率を有することができるが、フラグ領域121はIR光に対して著しく低い反射率を有し、かつ/またはIR光を吸収する。この異なる反射率は、光センサ130によって検出することができる。
【0078】
エンコーダフラグセグメント112は投薬スリーブ120(ダイヤルスリーブ)にクリップ留めされて、エンコーダリング構成要素110の強固な固定を確実にする。エンコーダリング110と投薬スリーブ120とのそれぞれのフラグ壁の間の接触は、光(フォト)センサ130の正確な用量増分検出を可能にするために、明確なコントラストの遷移(たとえば、黒色および白色)を確実にしなければならない。保持クリップ114は、エンコーダリング110の投薬スリーブ120への正確な固定を確実にする。エンコーダリング110が投薬スリーブ120から外れた場合、またはピンがない場合、フラグは半径方向外向きにたわんで、さらなる構成要素、たとえばシャーシとのクリアランスが狭くなり、投薬中の摩擦がもたらされ、最悪の場合、機構が詰まって動かなくなる可能性がある。一方、投与中にエンコーダリング110と投薬スリーブ120との間に回転遊びがあることにより、光センサ130へのエンコーダフラグの遷移が1つ少なくなくなるかまたは1つ余分になる可能性があり、単位用量記録のエラーにつながる。位置決めピン113は、投薬スリーブ120に取り付けられたときに、エンコーダリング縁部の(回転方向および半径方向の両方に)正確な位置を確実にする。
【0079】
エンコーダリング110のフラグ構造112の表面仕上げは、IR光を反射する。表面仕上げが不十分な場合、センサ130がカウント単位を見落とす可能性がある。完全に取り付けられたエンコーダリング110(図3)は、投薬スリーブ120と組み合わせて、センサ130によって検出されるコントラスト表面として作用する、黒色および白色の表面(フラグセグメント112およびフラグ領域121)を提供する。
【0080】
用量記録機能を提供するために、薬物送達デバイスのダイヤルスリーブ(投薬スリーブ)は、その遠位端にクリップオンエンコーダリング構成要素110を保持するように変更することができる。投薬スリーブ120は濃い灰色の材料で成形することができるが、エンコーダリング110は、白色の不透明な材料から製造することができる。それにより、遠位投薬スリーブ端部の円周に、明暗の角度付きの表面セグメントの規則的なパターンが作成される。図示する例では、各角度付きセグメントは30°にわたる(合計で6つの明るいセグメントおよび6つの暗いセグメント)。一例では、セグメント121は、フラグ112よりも小さい直径に位置し、したがって、反射される光をさらに減少させるためにセンサからさらに離れている。
【0081】
用量記録は、投薬スリーブ120、すなわちそのエンコーダリング部分と、注射中に発生する静止モジュールとの間の相対回転を検出することによって実現される。この目的のために、モジュールに一体化された電子機器は、エンコーダリング110の周りに放射状に配置された2つのフォトリフレクタユニット(すなわち光センサ130)を組み込んでいる。センサ130を使用して、明暗のエンコーダリングの表面(フラグセグメント112およびフラグ領域121)が検出および識別される。センサ130は、n×30°+15°の角度オフセットで(すなわち、1つのエンコーダリングセグメントの半分、位相がずれて)配置されている。これにより、相対回転中に4状態グレイコードパターンが生成され、6つのフラグ領域121を有する6つのエンコーダフラグセグメント112のみを使用して、1IU分解能で注射を検出することができ、一方で、たとえば、WO2014033195に記載されているようなペンは、1回の完全な相対回転につき24IU(1IUにつき15°増分)を排出する。
【0082】
一例では、フォトリフレクタは、NIR帯(約900nm波長)で動作するLED発光体と、対応するフォトトランジスタとを組み込んで、エンコーダリング表面からの反射光を検出する。光エンコーダのフラグセグメント112は、高いIR反射率を有するが、フラグ領域121の暗いセグメントは、吸収率が高く、低い反射率を示す。
【0083】
注射の前に、電子機器およびセンサシステムは、たとえば、モジュールに組み込まれた軸方向電気スイッチによって起動することができ、この軸方向電気スイッチは、ペン本体および/または投薬スリーブ120に向かってモジュールが軸方向に移動したとき、かつ注射中に相対回転が開始する前に、閉じる。注射中、センサ130は、電子機器に組み込まれたマイクロコントローラユニット(MCU)からのパルスによって駆動される。光検出器130はアナログ信号を発生させ、それは、MCUによってサンプリングされ、MCU内で評価される。光センサ130が十分に高い周波数(たとえば4kHz)でサンプリングされる場合、注射速度をMCU内で決定して、高速注射を検出してフラグを立てることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 デバイス
10 ハウジング
11 注射ボタン
12 投与量つまみ
13 投与量ウィンドウ
14 容器/容器レセプタクル
15 針
16 内側針キャップ
17 外側針キャップ
18 キャップ
100 電子用量記録システム
110 エンコーダリング
111 支持リング
112 フラグセグメント
113 位置決めピン
114 保持クリップ
120 投薬スリーブ
121 フラグ領域
122 凹部
123 凹部
130 光センサ
140 PCBユニット(プロセッサ)
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】