IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェンの特許一覧

特表2024-535084熱伝導性接着剤組成物、その製造方法および使用
<>
  • 特表-熱伝導性接着剤組成物、その製造方法および使用 図1a
  • 特表-熱伝導性接着剤組成物、その製造方法および使用 図1b
  • 特表-熱伝導性接着剤組成物、その製造方法および使用 図2
  • 特表-熱伝導性接着剤組成物、その製造方法および使用 図3
  • 特表-熱伝導性接着剤組成物、その製造方法および使用 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-26
(54)【発明の名称】熱伝導性接着剤組成物、その製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20240918BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240918BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/04
C09J11/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518483
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 CN2021120104
(87)【国際公開番号】W WO2023044701
(87)【国際公開日】2023-03-30
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,チーリー
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,チェンユー
(72)【発明者】
【氏名】ユィ,ユエンユエン
(72)【発明者】
【氏名】ティ,ヤン
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040GA07
4J040GA11
4J040HA066
4J040HB22
4J040HC01
4J040HC16
4J040HC24
4J040JA13
4J040JB02
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA42
4J040LA08
4J040NA19
(57)【要約】
熱伝導性接着剤組成物の総重量に基づいて、a)0.5~30重量%、好ましくは2~20重量%のエポキシ樹脂、b)0.5~30重量%、好ましくは2~20重量%の無水物、c)0.1~5重量%、好ましくは0.5~3.5重量%の触媒、およびd)50~98重量%、好ましくは60~95重量%の金属フィラーを含み、前記触媒がシェルがコアを包み込んでいるコアシェル構造を有し、前記触媒のコアがアミン系化合物を含み、前記触媒のシェルが、エポキシ樹脂、アミン系化合物、およびポリイソシアネートのうちの少なくとも2つを反応させることによって調製される、熱伝導性組成物が提供される。該熱伝導性接着剤組成物の製造方法および使用も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性接着剤組成物の総重量に基づいて、
a)0.5~30重量%、好ましくは2~20重量%のエポキシ樹脂、
b)0.5~30重量%、好ましくは2~20重量%の無水物、
c)0.1~5重量%、好ましくは0.5~3.5重量%の触媒、および
d)50~98重量%、好ましくは60~95重量%の金属フィラー、
を含む熱伝導性接着剤組成物であって、
前記触媒はシェルがコアを包み込んでいるコアシェル構造を有し、前記触媒のコアは、アミン系化合物を含み、前記触媒のシェルは、エポキシ樹脂、アミン系化合物、およびポリイソシアネートのうちの少なくとも2つを反応させることによって調製される、熱伝導性接着剤組成物。
【請求項2】
前記触媒のシェル中のエポキシ樹脂が、成分a)中の前記エポキシ樹脂と同一または異なる、好ましくは同一であり、
成分a)中のエポキシ樹脂および前記触媒のシェル中のエポキシ樹脂が、ポリフェノールのポリグリシジルエーテル、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル、芳香族ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル、それらの誘導体、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から独立して選択され、好ましくはポリフェノールのポリグリシジルエーテルおよびそれらの水素化誘導体から選択され;さらに好ましくは、ビフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェノールS型エポキシ樹脂、水素化ビフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビフェノールF型エポキシ樹脂、水素化ビフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の熱伝導性接着剤組成物。
【請求項3】
成分b)中の無水物が、単官能、二官能および多官能無水物から選択され、好ましくは、ナジック酸無水物(NA)、メチルナジック酸無水物(MNA)、無水フタル酸(PA)、テトラヒドロフタル酸無水物(THPA)、メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA)、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物(クロレンド酸無水物)(Chlorentic Anhydrides)、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物(HHPA)、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(MHHPA)、5-ノルボネン-2,3-ジカルボン酸無水物などのノルボルネン系無水物、アジピン酸無水物、無水トリメリット酸、ピロメリト酸二無水物、無水マレイン酸(MA)、無水コハク酸(SA)、ノネニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物(DDSA)、ポリアゼライン酸ポリ無水物、ポリセバシン酸ポリ無水物、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1または2に記載の熱伝導性接着剤組成物。
【請求項4】
成分a)のエポキシ樹脂中のエポキシ基と成分b)の無水物中の無水物基とのモル比が0.2~3、好ましくは0.7~1.3である、請求項1~3のいずれかに記載の熱伝導性接着剤組成物。
【請求項5】
前記触媒のシェル中のアミン系化合物が、前記触媒のコア中のアミン系化合物と同一または異なる、好ましくは同一であり、
前記触媒のコア中のアミン系化合物および前記触媒のシェル中のアミン系化合物が、独立して、第一級アミン、第二級アミン、イミダゾールおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され;好ましくは、イミダゾールおよびその誘導体から選択される、請求項1~4のいずれかに記載の熱伝導性接着剤組成物。
【請求項6】
前記金属フィラーが、銀、銅、金、パラジウム、白金、アルミニウム、ビスマス、スズ、それらの合金、およびこれらの金属および合金の1つまたは複数でコーティングされたガラスからなる群から選択される、請求項1~5のいずれかに記載の熱伝導性接着剤組成物。
【請求項7】
前記ポリイソシアネートが、ジイソシアネート、トリイソシアネート、またはそれらの任意の組み合わせであり、前記ポリイソシアネートが、好ましくは脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂肪族トリイソシアネート、脂環式トリイソシアネート、芳香族トリイソシアネート、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、およびそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1~6のいずれかに記載の熱伝導性接着剤組成物。
【請求項8】
任意選択で成分a)~d)とは異なる添加剤、好ましくは、接着促進剤、硬化促進剤、カップリング剤、溶剤、着色剤、可塑剤、レオロジー添加剤、およびそれらの任意の組み合わせから選択される添加剤をさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の熱伝導性接着剤組成物。
【請求項9】
全成分を一緒に混合することによる、請求項1~8のいずれかに記載の熱伝導性接着剤組成物の製造方法。
【請求項10】
電子デバイス、好ましくは半導体およびダイオードにおける、より好ましくはダイアタッチ用の、請求項1~8のいずれかに記載の熱伝導性接着剤組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性接着剤組成物、その製造方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、半導体などの電子部品は、ますます高密度、高集積で設計されている。そのため、放熱は電子アセンブリにとって重要かつ困難な問題である。電子素子を接合するために用いられる従来の接着剤については、高い熱伝導性を実現するために導電性フィラー(例えば銀)を多く配合する必要がある。しかし、高価な導電性フィラーを多量に使用すると、接着剤の製造コストが増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
少量の導電性フィラーで高い熱伝導性を実現できる熱伝導性接着剤組成物の継続的需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明者らは、熱伝導性接着剤組成物の総重量に基づいて、
a)0.5~30重量%、好ましくは2~20重量%のエポキシ樹脂、
b)0.5~30重量%、好ましくは2~20重量%の無水物、
c)0.1~5重量%、好ましくは0.5~3.5重量%の触媒、および
d)50~98重量%、好ましくは60~95重量%の金属フィラー、
を含む熱伝導性接着剤組成物であって、
前記触媒はシェルがコアを包み込んでいるコアシェル構造を有し、前記触媒のコアがアミン系化合物を含み、前記触媒のシェルが、エポキシ樹脂、アミン系化合物、およびポリイソシアネートのうちの少なくとも2つを反応させることによって調製される、熱伝導性接着剤組成物を提供する。
【0005】
本発明はまた、全成分を一緒に混合することによって本発明の熱伝導性接着剤組成物を調製する方法を提供する。
【0006】
本発明はさらに、電子デバイス、好ましくは半導体およびダイオードにおける、より好ましくはダイアタッチ向けの、本発明の熱伝導性接着剤組成物の使用を提供する。
【0007】
本発明者らは、特定の成分を特定の内容で組み合わせることにより、熱伝導性接着剤組成物中の樹脂が凝集し、硬化時に金属フィラーをより密度の高い状態にさせるため、本発明の熱伝導性接着剤組成物は、少量の導電性フィラーで優れた熱伝導性を実現することを見出した。さらに、本発明の硬化した接着剤組成物は、応力緩和を促進する良好な靭性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付の図面は、本発明の実施形態を示し、本発明の原理および機構を描写と共に説明するが、本発明を限定的に解釈すべきではない。
【0009】
図1a図1aは、本発明の実施例の硬化した熱伝導性接着剤組成物のSEM画像である。
図1b図1bは、原寸に比例していない、図1aのSEM画像を模式的に示す図である。
図2図2は、図1aに対応する未硬化の熱伝導性接着剤組成物の光学顕微鏡画像である。
図3図3は、図1aに対応する硬化した熱伝導性接着剤組成物の光学顕微鏡画像である。
図4図4は、比較例の硬化した熱伝導性接着剤組成物の光学顕微鏡像である。
【0010】
さて、添付の図面に示されている本発明の態様を詳細に参照する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、用語「熱伝導性接着剤組成物」および「接着剤組成物」は互いに交換可能である。
【0012】
本発明は、熱伝導性接着剤組成物の総重量に基づいて、
a)0.5~30重量%、好ましくは2~20重量%のエポキシ樹脂、
b)0.5~30重量%、好ましくは2~20重量%の無水物、
c)0.1~5重量%、好ましくは0.5~3.5重量%の触媒、および
d)50~98重量%、好ましくは60~95重量%の金属フィラー、
を含む熱伝導性接着剤組成物であって、
前記触媒が、コアをシェルが包み込んでいるコアシェル構造を有し、前記触媒のコアがアミン系化合物を含み、前記触媒のシェルが、エポキシ樹脂、アミン系化合物、およびポリイソシアネートのうちの少なくとも2つを反応させることによって調製される、熱伝導性接着剤組成物を提供する。
【0013】
本発明者らは、特定の成分を特定の内容で組み合わせることにより、本発明の熱伝導性接着剤組成物が少量の導電性フィラーで優れた熱伝導性を達成することを見出した。さらに、本発明の硬化した接着剤組成物は、応力緩和を促進する良好な靭性を示す。
【0014】
<成分a)エポキシ樹脂>
本開示によれば、熱伝導性接着剤組成物は、熱伝導性接着剤組成物の総重量に基づいて、0.5~30重量%、好ましくは2~20重量%、より好ましくは2~15重量%の成分a)エポキシ樹脂を含む。
【0015】
エポキシ樹脂は、反応性エポキシ基の存在に起因して硬化性である。硬化時、エポキシ樹脂は成分b)の無水物と反応して三次元ネットワークを有する架橋熱硬化性プラスチックを形成し、接着剤組成物に優れた接着性と耐熱性を付与する。
【0016】
成分a)エポキシ樹脂の含有量が上記範囲内に収まると、熱伝導性接着剤組成物は、樹脂凝集性、熱伝導性および電気伝導性の間で優れたバランスを実現する。
【0017】
本開示のいくつかの例では、エポキシ樹脂1分子当たり、エポキシ基は1個より多い、好ましくは約2個以上である。
【0018】
エポキシ樹脂の種類は特に限定されず、接着剤組成物に一般的に使用される任意のエポキシ樹脂を本開示に使用することができる。いくつかの例において、エポキシ樹脂は、ポリフェノールのポリグリシジルエーテル、脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル、芳香族ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル、それらの誘導体、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、エポキシ樹脂は、ポリフェノールのポリグリシジルエーテルおよびそれらの水素化誘導体から選択される。より好ましくは、エポキシ樹脂は、ビフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェノールS型エポキシ樹脂、水素化ビフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビフェノールF型エポキシ樹脂、水素化ビフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0019】
市販のエポキシ樹脂の例としては、jER828US、エピコート828ELおよびエピコート1004(いずれも日本エポキシ樹脂製造株式会社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂;エピコート806およびエピコート4004(いずれも日本エポキシ樹脂製造株式会社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂;エピクロンEXA1514(大日本インキ化学工業株式会社製)などのビスフェノールS型エポキシ樹脂;エピクロンN-770(大日本インキ化学工業株式会社製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂;エピクロンN-670-EXP-S(大日本インキ化学工業株式会社製)などのオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂;エピクロンHP7200(大日本インキ化学工業株式会社製)およびXD-1000-L(日本化薬株式会社製)などのジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂;NC-3000P(日本化薬株式会社製)などのビフェニルノボラック型エポキシ樹脂;およびESN-165S(東都化成株式会社製)などのナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
<成分b)無水物>
本開示によれば、熱伝導性接着剤組成物は、熱伝導性接着剤組成物の総重量に基づいて、0.5~30重量%、好ましくは2~20重量%、より好ましくは2~15重量%の成分b)無水物を含む。
【0021】
成分b)は硬化剤として機能し、成分a)エポキシ樹脂と反応して三次元ネットワークを有する架橋熱硬化プラスチックを形成し、接着剤組成物に優れた接着性と耐熱性を付与する。
【0022】
成分b)無水物の含有量が上記範囲に収まると、熱伝導性接着剤組成物は樹脂凝集性、熱伝導性、導電性の間で優れたバランスを実現する。
【0023】
本発明者らは驚くべきことに、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤(例えば、グアニジン系硬化剤)などの他の種類のエポキシ樹脂用硬化剤と比較すると、無水物系硬化剤が全接着剤組成物に著しく高い熱伝導性を付与することを見出した。
【0024】
無水物の種類は特に限定されず、接着剤組成物に一般的に使用される任意の無水物を本開示において使用することができる。いくつかの例では、無水物は、単官能性、二官能性および多官能性無水物からなる群から選択される。無水物は脂肪族無水物、脂環式無水物、芳香族無水物、またはそれらの任意の組み合わせであってよい。無水物は、好ましくは、ナジック酸無水物(NA)、メチルナジック酸無水物(MNA)、無水フタル酸(PA)、テトラヒドロフタル酸無水物(THPA)、メチルテトラヒドロフタル酸無水物(MTHPA)、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物(クロレンド酸無水物)(Chlorentic Anhydride)、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物(HHPA)、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(MHHPA)、5-ノルボネン-2,3-ジカルボン酸無水物などのノルボネン系無水物、アジピン酸無水物、無水トリメリット酸、ピロメリット酸二無水物、無水マレイン酸(MA)、無水コハク酸(SA)、ノネニルコハク酸無水物、ドデシルコハク酸無水物(DDSA)、ポリアゼライン酸ポリ無水物、ポリセバシン酸ポリ無水物、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0025】
市販の無水物の例としては、ニュージャージー州ニューアークのAnhydrides and Chemicals Inc.から入手可能なHHPA、MTHPA、DDSA;BASFから入手可能なMHHPA;およびAldrichから入手可能なMAとMNAが挙げられる。
【0026】
いくつかの例では、成分a)エポキシ樹脂中のエポキシ基と成分b)無水物中の無水物基とのモル比は0.2~3、好ましくは0.7~1.3である。このモル比により、成分a)エポキシ樹脂と成分b)無水物との十分な架橋反応を確実なものにする。
【0027】
<成分c)触媒>
本開示によれば、熱伝導性接着剤組成物は、熱伝導性接着剤組成物の総重量に基づいて、0.1~5重量%、好ましくは0.5~3.5重量%の成分c)触媒を含む。
【0028】
成分c)触媒(以下、「コアシェル触媒」とも称される)は、シェルがコアを包み込んでいるコアシェル構造を有し、潜在性触媒として機能する。コアシェル触媒は、-40℃程度の温度で貯蔵中安定である。80℃以上の温度に加熱すると、コアシェル触媒のシェルが割れてコア内の活性アミン系化合物が露出し、触媒が活性化され、a)エポキシ樹脂とb)無水物の架橋反応を開始する。
【0029】
触媒のコアはアミン系化合物を含み、触媒のシェルはエポキシ樹脂、アミン系化合物、ポリイソシアネートのうちの少なくとも2つを反応させることによって調製される。
【0030】
いくつかの例において、触媒のコアは、100質量部の触媒のコアに基づいて、0.001~3質量部、好ましくは0.01~2.5質量部、より好ましくは0.02~2質量部、さらに好ましくは0.03~1.5質量部のアミン系化合物を含み得る。アミン系化合物の含有量が上記範囲内に収まると、シェル形成反応において緻密なシェルを制御可能な方法で形成することができ、コアシェル触媒の高い貯蔵安定性と耐溶剤性を確保することができる。
【0031】
アミン系化合物に加えて、触媒のコアは、任意選択でアミン付加物を含んでいてもよい。アミン付加物は、アミン系化合物とエポキシ樹脂とを反応させることによって調製することができる。いくつかの例において、アミン付加物の分子量分布は、1より大きく7以下であり、好ましくは1.01~6.5、より好ましくは1.2~5、さらに好ましくは1.5~4である。アミン付加物の分子量分布が上記範囲に収まると、熱伝導性接着剤組成物は、高い硬化性、高い貯蔵安定性、および優れた接着強度を有する。
【0032】
いくつかの例では、アミン付加物は、例えば、エポキシ樹脂とアミン系化合物とを、溶媒(必要に応じて)の存在下、50~250℃の温度で0.1~10時間反応させることによって得ることができる。アミン系化合物中の活性水素基とエポキシ樹脂中のエポキシ基とのモル比は、所望の分子量分布を有するアミン付加物を経済的に得るために、好ましくは0.5~10:1、より好ましくは0.8~5:1、さらに好ましくは0.95~4:1である。
【0033】
触媒のコア中のアミン系化合物は、触媒のシェル中のアミン系化合物と同一または異なり、好ましくは同一である。
【0034】
触媒のコア中のアミン付加物の調製に使用されるアミン系化合物は、触媒のコア中のアミン系化合物および/または触媒のシェルの調製に使用されるアミン系化合物と同一であっても異なっていてもよく、好ましくは同一である。
【0035】
触媒のコア中のアミン系化合物、アミン付加物を調製するためのアミン系化合物(存在する場合)、および触媒のシェル中のアミン系化合物は、独立して、第一級アミン、第二級アミン、イミダゾールおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され;好ましくは、イミダゾールおよびその誘導体から選択される。
【0036】
アミン系化合物の種類は特に限定されず、接着剤組成物に一般的に使用されているものを本開示に使用することができる。
【0037】
いくつかの例では、第一級アミンは、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、アニリン、トルイジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0038】
いくつかの例では、第二級アミンは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピペリドン、ジフェニルアミン、フェニルメチルアミン、フェニルエチルアミン、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0039】
いくつかの例において、イミダゾールおよびその誘導体は、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-アミノエチル-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、および1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0040】
いくつかの例では、イミダゾリンおよびその誘導体は、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-フェニルイミダゾリン、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリン、2,4-ジメチルイミダゾリン、2-エチルイミダゾリン、2-エチル-4-メチルイミダゾリン、2-ベンジルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン、2-(o-トリル)-イミダゾリン、テトラメチレン-ビスイミダゾリン、1,3-トリメチル-1,4-テトラメチレン-ビスイミダゾリン、1,3,3-トリメチル-1,4-テトラメチレン-ビスイミダゾリン、1,3-トリメチル-1,4-テトラメチレン-ビス-4-メチルイミダゾリン、1-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル-2-フェニルイミダゾリン、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリン、1,2-フェニレン-ビス-イミダゾリン、1,3-フェニレン-ビス-イミダゾリン、1,4-フェニレン-ビスイミダゾリン、1,4-フェニレン-ビス-4-メチルイミダゾリン、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0041】
触媒のコア中のアミン付加物を調製するために使用されるエポキシ樹脂は、成分a)中のエポキシ樹脂および/または触媒のシェルを調製するために使用されるエポキシ樹脂と同一であっても異なっていてもよく、好ましくは同一である。
【0042】
触媒のシェル中のエポキシ樹脂は、成分a)中のエポキシ樹脂、および/またはコア中のアミン付加物を調製するために使用されるエポキシ樹脂と同一または異なる、好ましくは同一である。
【0043】
成分a)中のエポキシ樹脂の定義、種類および好ましい種類は、触媒のシェル中のエポキシ樹脂、および/またはコア中のアミン付加物を調製するために使用されるエポキシ樹脂に適用される。
【0044】
ポリイソシアネートの種類は特に限定されず、接着剤組成物に一般的に使用されるものを本開示に使用することができる。
【0045】
いくつかの例において、ポリイソシアネートは、ジイソシアネート、トリイソシアネート、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの例において、ポリイソシアネートは、好ましくは脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂肪族トリイソシアネート、脂環式トリイソシアネート、芳香族トリイソシアネート、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0046】
いくつかの例において、脂肪族ジイソシアネートは、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、およびトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0047】
いくつかの例において、脂環式ジイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,4-イソシアナトシクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)-シクロヘキサン、1,3-ビス(2-イソシアナトプロピル-2-イル)-シクロヘキサン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0048】
いくつかの例において、芳香族ジイソシアネートは、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0049】
いくつかの例では、脂肪族トリイソシアネートは、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトメチルヘキサン、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸-2-イソシアナトエチルエステル、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸-1-メチル-2-イソシアナトエチルエステル、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0050】
いくつかの例では、触媒のシェルは、エポキシ樹脂、アミン系化合物、ポリイソシアネート、および任意選択でアミン付加物のうちの少なくとも2つを反応させることによって調製される。触媒のシェル中のアミン付加物は、触媒のコア中のアミン付加物と同一でも異なっていてもよく、好ましくは同一である。触媒のコア中のアミン付加物について上述した定義および好ましい技術的特徴は、触媒のシェル中のアミン付加物にも適用することができる。
【0051】
いくつかの例では、コアのシェルに対する体積比は約100:1~約100:50、好ましくは約100:1~約100:20である。コアのシェルに対する体積比がこれらの範囲内に収まると、接着剤組成物は良好な貯蔵安定性、良好な硬化性、および良好な分散性を有する。
【0052】
触媒のシェル中のエポキシ樹脂、アミン系化合物、ポリイソシアネートおよびアミン付加物(存在する場合)の比率は特に限定されない。好ましくは、シェル中のポリイソシアネートは、コア1kg当たり約1~200meq、好ましくは10~100meqの濃度を有する。ポリイソシアネートの濃度が上記の範囲内に収まると、コア-シェル触媒は機械的せん断力に対して良好な耐性を有し、また接着剤組成物全体に良好な硬化性を付与する。
【0053】
コアシェル触媒は、0.5μm~10μm、好ましくは1μm~5μmのD50粒径を有し得る。本明細書では、コアシェル触媒の「D50粒径」とは、レーザー回折式粒径分析器を用いた測定により得られる体積基準の粒度分布曲線におけるメジアン径を表す。
【0054】
いくつかの例では、コアシェル触媒は、シェルの原料を分散媒に溶解する前、後、または溶解と同時にコアの原料を溶解し、次にシェルをコアに堆積させるまたはコアに塗布するように溶解条件を調整することによって形成される。
【0055】
市販のコアシェル触媒の例としては、旭化成株式会社から入手可能なHXA 4982HPおよびHXA 3088FなどのHXAシリーズ触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
<成分d)金属フィラー>
本開示によれば、熱伝導性接着剤組成物は、熱伝導性接着剤組成物の総重量に基づいて、50~98重量%、好ましくは60~95重量%の金属フィラーを含む。
【0057】
成分d)は、接着剤組成物全体に熱伝導性と電気伝導性を付与する。
【0058】
金属フィラーの含有量がこれらの範囲内に収まると、良好な熱伝導性と良好な電気伝導性を実現できる。
【0059】
いくつかの例では、金属フィラーは、銀、銅、金、パラジウム、白金、アルミニウム、ビスマス、スズ、それらの合金、およびこれらの金属および合金の1つまたは複数でコーティングされたガラスからなる群から選択される。好ましくは、金属フィラーは銀である。
【0060】
金属フィラーの形状は特に限定されず、球形、粒形、円盤状の形状、円柱形、立方形、直方体、フレーク状の形状、針状の形状、繊維形状、および樹枝状形状などの種々の形状を有し得るが、フレーク状の形状が好ましい。
【0061】
いくつかの例では、金属フィラーは、高い熱伝導性と高い電気伝導性を有する銀フレークである。
【0062】
いくつかの例では、導電性フィラーは、0.5~20μm、好ましくは0.8~10μm、より好ましくは1~5μmのD50粒径を有する銀フレークであってもよい。銀フレークのD50粒径がこれらの範囲内に収まると、銀フレークは、熱伝導性接着剤組成物に良好な熱伝導性および電気伝導性を付与する。本明細書では、銀フレークの「D50粒径」とは、レーザー回折式粒径分析器を用いた測定により得られる体積基準の粒度分布曲線におけるメジアン径を表す。
【0063】
市販の金属フィラーの例としては、Metalor Technologies社から入手可能なSA0201が挙げられるが、これに限定されない。
【0064】
<熱伝導性接着剤組成物>
本発明は、集中的な研究により熱伝導性接着剤組成物の総重量に基づいて、
a)0.5~30重量%、好ましくは2~20重量%のエポキシ樹脂、
b)0.5~30重量%、好ましくは2~20重量%の無水物、
c)0.1~5重量%、好ましくは0.5~3.5重量%の触媒、および
d)50~98重量%、好ましくは60~95重量%の金属フィラー、
を含む熱伝導性接着剤組成物であって、
前記触媒が、シェルがコアを包み込んでいるコアシェル構造を有し、前記触媒のコアがアミン系化合物を含み、前記触媒のシェルが、エポキシ樹脂、アミン系化合物、およびポリイソシアネートのうちの少なくとも2つを反応させることによって調製される、熱伝導性組成物を提供する。
【0065】
任意選択で、熱伝導性接着剤組成物は、成分a)~d)とは異なる添加剤をさらに含み、該添加剤は、好ましくは、接着促進剤、硬化促進剤、カップリング剤、溶媒、着色剤、可塑剤、レオロジー添加剤、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0066】
熱伝導性接着剤組成物の効果に悪影響を及ぼさない限り、任意選択の添加剤が存在する場合、その種類および含有量に特に制限はない。
【0067】
いくつかの例では、溶媒はDow社から入手可能なBCA(ブチルカルビトールアセテート)であってもよい。
【0068】
いくつかの例では、接着促進剤は、Momentive Performance Materials社から入手可能なA-186またはA-174であってもよい。
【0069】
<熱伝導性接着剤組成物の製造方法>
熱伝導性接着剤組成物は、乳鉢、プロペラ攪拌機、混錬機、ローラーアセンブリ、ポットミルなどの一般的な混合手段を用いて全成分を一緒に混合することによって調製することができる。各成分の投入順序や混合条件は、熱伝導性接着剤組成物の効果に悪影響を及ぼさない限り特に限定されない。
【0070】
いくつかの例では、熱伝導性接着剤組成物は、ブルックフィールドRVT粘度計とCP51スピンドルを用いて25℃、毎分5回転(RPM)で測定した、2,000mpa・s~100,000mpa・s、好ましくは5,000mpa・s~30,000mpa・sのブルックフィールド粘度を有し得る。
【0071】
<熱伝導性接着剤組成物の使用>
本開示の熱伝導性接着剤組成物は、電子デバイス、好ましくは半導体およびダイオードにおいて、より好ましくはダイアタッチ向けに使用することができる。
【0072】
熱伝導性接着剤組成物を一方の被着体または両方の被着体の表面の少なくとも一部に塗布し、2つの被着体を互いに接合し、その接合された2つの被着体を80℃以上の熱にさらして硬化させることができる。
【0073】
例えば、本開示の接着剤組成物は、ステンシル印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、または分注などの任意の所望の方法によって基材上に印刷または塗布され得る。本開示の接着剤組成物は、細線ステンシル印刷によって基材上に接着剤のパターンを塗布する特定の場合に採用できる。
【0074】
従って、本開示の接着剤組成物を使用して、半導体デバイス、チップ部品、ダイオード、個別部品またはそれらの組み合わせなどの電子部品を回路基板の電極に接合し、それによって回路基板の表面に電子回路を形成することができる。
【実施例
【0075】
本開示を、以下の実施例によってより具体的に説明する。本開示は、以下の説明によって決して限定されないことに留意されたい。
【0076】
(原料)
エポキシ樹脂
XD-1000:少なくとも2個のグリシジルオキシ基含有芳香族基が2価の環内炭化水素基で互いに結合したエポキシ樹脂、日本から入手可能。
Epalloy(登録商標)5200:シクロ脂肪族グリシジルエステル、CVC Specialties社から入手可能。
JER(登録商標)828US:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル株式会社から入手可能。
【0077】
無水物
DDSA:ドデセニルコハク酸無水物、Milliken Chemicals社から入手可能。
DICY:グアニジン粉末、A & C Catalysts社から入手可能。
MEH-8000H:フェノール樹脂、株式会社明和プラスチック工業から入手可能。
Jeffamine D 2000:ポリオキシプロピレンジアミン、Huntsman社から入手可能。
【0078】
触媒
HXA 4982HP:コアシェル触媒、潜在性触媒、D50粒径が1μm~10μm未満、旭化成株式会社から入手可能。
HXA 3088F:コアシェル触媒、潜在性触媒、D50粒子径が1μm~10μm未満、潜在性硬化剤、旭化成株式会社から入手可能。
EMI-24CN:エチルメチルイミダゾール、PCI Synthesis社から入手可能。
Fujicure FXR1081:変性脂肪族ポリアミン、T&K Toka社から入手可能。
PN-H:エポキシ樹脂アミン付加物、味の素ファインテクノ株式会社から入手可能。
2MAOK:イミダゾール触媒、Air Products社から入手可能。
【0079】
金属フィラー
SA0201:銀フレーク、Metalor Technologies社から入手可能。
【0080】
溶媒
BCA:ブチルカルビトールアセテート、Dow社から入手可能。
【0081】
接着促進剤
A-186:接着促進剤、Momentive Performance Materials社から入手可能。
A-174:接着促進剤、Momentive Performance Materials社から入手可能。
【0082】
混合機
500g以上の試料サイズについては、混合機はロスミキサーであってよい。ロスミキサーは、試料のバッチサイズに応じて、1L~20Lのミキサーサイズを有し得る。
【0083】
500g未満の試料サイズについては、混合機はスピードミキサーであってよい。
【0084】
調製方法
以下の実施例では、組成物は以下の工程で調製した:
【0085】
成分a)と溶媒BCAを秤量し、ロスミキサーで毎分30~60回転(RPM)で1時間、80℃で混合し、室温まで冷却した。
【0086】
成分b)と成分d)を秤量し、ロスミキサーに導入し、室温で、30~60RPMで15分間混合した(またはスピードミキサーで、2000RPMで2分間混合した)。
【0087】
次に、成分c)と接着促進剤を秤量し、ロスミキサーに導入し、室温で、30~60RPMで30分間(またはスピードミキサーで1000RPMで2分間)混合した。
【0088】
その後、混合物をロスミキサーで15分間脱気した(またはスピードミキサーで2分間脱気した)。
【0089】
熱伝導性
上記で得られた組成物の試料を、幅3cm、深さ(厚さ)0.5~2mmのテフロン型に配置した。試料をオーブン中で硬化させた。次いで、組成物の温度を25℃~175℃まで30分で上昇させ、175℃で60分間保持して組成物を硬化させ、それによって熱拡散性ペレットを形成した。上記ペレットの熱伝導率を、ASTM E 1461に規定された試験方法に従ってレーザーフラッシュで測定した。
【0090】
特に断りのない限り、表1および表2の原材料は重量部で表した。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
上記の表1および表2から、実施例1、18、24、29および30において、本開示の接着剤組成物は、少量の導電性フィラーで優れた熱伝導性を実現したことがわかる。
【0094】
比較例21では、触媒を使用しなかった。比較例2、10、19、20、36および37では、触媒を使用したが、コアシェル触媒ではなかった。比較例31、32および35では、アミン以外の硬化剤を使用した。熱伝導率が望ましくないほど低かった、または測定不能ですらあった。
【0095】
図1aは、本発明の実施例1の硬化した熱伝導性接着剤組成物のSEM画像である。図1bは、図1aのSEM画像を模式的に示す。図2は、図1aに対応する未硬化の熱伝導性接着剤組成物の光学顕微鏡画像である。図3は、図1aに対応する硬化した熱伝導性接着剤組成物の光学顕微鏡画像である。
【0096】
図1aおよび図1bでは、基材200と基材300が熱伝導性接着剤組成物100で接合されている。未硬化の接着剤組成物100(図2に示す)において、金属フィラーと接着剤組成物の残りの部分(「樹脂」と略される)は均一に分散している。金属リッチな領域も樹脂リッチな領域も存在しない。用語「金属リッチな領域」とは、金属が凝集している領域を意味し、この領域の金属の含有量は、この領域を囲む領域の金属の含有量より高い。用語「樹脂リッチな領域」とは、樹脂が凝集している領域を意味し、この領域における樹脂の含有量は、この領域を囲む領域における樹脂の含有量より高い。
【0097】
本発明者らは、驚くべきことに、硬化時に、図1a、図1bおよび図3に示すように、本開示の接着剤組成物中で樹脂12が凝集し、金属フィラー11をより密度の高い状態にさせることを見出した。その結果、金属フィラーはより多くの領域で互いに重なり、硬化した接着剤組成物の熱伝導率が著しく向上する。さらに、樹脂の凝集により、硬化した接着剤組成物に良好な靭性が付与され、その応力緩和が向上する。
【0098】
図4は、比較例2の硬化した熱伝導性接着剤組成物の光学顕微鏡画像である。図4において、金属フィラーと樹脂は均一に分散している。金属リッチな領域も樹脂リッチな領域もない。
図1a
図1b
図2
図3
図4
【国際調査報告】