(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】3D印刷プロセスでの使用のためのポリマー材料
(51)【国際特許分類】
B29C 64/314 20170101AFI20240920BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240920BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240920BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20240920BHJP
【FI】
B29C64/314
B33Y70/00
B33Y80/00
B29C64/118
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516791
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2022078534
(87)【国際公開番号】W WO2023062140
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ヒューブシャー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック フエッピ
(72)【発明者】
【氏名】ロイ ツロッツ
(72)【発明者】
【氏名】ビルフリート カール
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA04
4F213AB08
4F213AB11
4F213AB16
4F213AB18
4F213AB25
4F213AC01
4F213AC02
4F213AH11
4F213AR06
4F213AR12
4F213AR15
4F213AR20
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL15
4F213WL22
4F213WL25
4F213WL27
4F213WL96
(57)【要約】
付加製造による3D物品の製造でのポリマー材料の使用であって、ポリマー材料は、a)少なくとも0.930kg/m3のEN ISO 1183-1:2019標準に従って測定される23℃での密度、及び少なくとも50重量%のEN ISO 11357-3:2018標準に従って測定される結晶化度を有する、少なくとも1種のポリエチレンPEと、b)少なくとも1種の固体充填材Fと、c)任意選択的に少なくとも1種の核形成剤Nとを含み、少なくとも1種の固体充填材Fは、3~60、好ましくは4~50の体積ベースの平均アスペクト比(長さ/直径)を有する繊維状充填材である、使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造プロセスによる3D物品の製造のためのポリマー材料の使用であって、前記ポリマー材料は、
a)少なくとも0.930kg/m3のEN ISO 1183-1:2019標準に従って測定される23℃での密度、及び少なくとも50重量%のEN ISO 11357-3:2018標準に従って測定される結晶化度を有する、少なくとも1種のポリエチレンPEと、
b)少なくとも1種の固体充填材Fと、
c)任意選択的に少なくとも1種の核形成剤Nと
を含み、
前記少なくとも1種の固体充填材Fは、3~60、好ましくは4~50の体積ベースの平均アスペクト比(長さ/直径)を有する繊維状充填材である、
使用。
【請求項2】
前記付加製造プロセスは、溶融フィラメント製造プロセス又は溶融粒子製造プロセスである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記少なくとも1種のポリエチレンPEは、少なくとも1g/10分、好ましくは少なくとも2.5g/10分のISO 1133-1:2011標準に従って測定されるメルトフローインデックス(190℃/2.16kg)を有する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記少なくとも1種のポリエチレンPEは、少なくとも450MPa、好ましくは少なくとも550MPaのISO 178:2019標準に従って測定される23℃での曲げ弾性率、及び/又は、100℃以上、好ましくは105℃以上の2℃/分の加熱速度を用いてISO 11357-3:2018標準に従って示差走査熱量測定法(DSC)によって決定される溶融温度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記少なくとも1種のポリエチレンPEは、前記ポリマー材料の総重量の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%を構成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記少なくとも1種の固体充填材Fは、50μm以下の、好ましくは35μm以下の体積ベースの平均粒径D
50及び/又は少なくとも5μm、好ましくは少なくとも10μmの体積ベースの平均粒子長L
50を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記少なくとも1種の固体充填材Fは、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、及び針状ウォラストナイトからなる群から、好ましくはガラス繊維及び針状ウォラストナイトからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記少なくとも1種の固体充填材Fは、前記ポリマー材料の総重量の、5~35重量%、好ましくは10~25重量%を構成する、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記少なくとも1種の核形成剤Nは、ナノスケール炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、二酸化ケイ素、膨張黒鉛、モンモリロナイト粘土、タルク、多層カーボンナノチューブ、バーミキュライト、ナノコンポジットミネラル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、カルシウム塩、アントラセン、フタル酸水素カリウム、安息香酸及びそれの誘導体、並びに安息香酸ナトリウム及びそれの誘導体からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記少なくとも1種の核形成剤Nは、前記ポリマー材料の総重量の0.1~10重量%、好ましくは1.5~5重量%を構成する、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
3D物品の製造方法であって、以下の工程:
i)前記3D物品のデジタルモデルを提供する工程、
ii)前記デジタルモデルに基づいて、請求項1~10のいずれか一項に定義されるポリマー材料を、3Dプリンターを用いて印刷して前記3D物品を形成する工程
を含む、方法。
【請求項12】
前記3Dプリンターは、溶融フィラメント製造又は溶融粒子製造プリンターである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に定義されるポリマー材料を使用する付加製造プロセスによって得られる3D物品。
【請求項14】
前記付加製造プロセスは、溶融フィラメント製造又は溶融粒子製造プロセスである、請求項13に記載の3D物品。
【請求項15】
前記物品は、パイプ又はパイプ継ぎ手である、請求項13又は14に記載の3D物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造技術による3次元物品の製造に好適であるポリマー材料に関する。特に、本発明は、材料押出ベースの3D印刷プロセスでのポリエチレンベースのポリマーブレンドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ISO 52900-2015標準によれば、用語「付加製造」は、材料の連続層を使用して3次元(3D)物体を創り出す技術を指す。付加製造プロセスでは、3D物品を創り出すために、製造されるべき3D物体のデジタルモデルに基づいてコンピューター制御の下で、材料は、堆積され、適用され、又は固化される。3D物品のデジタルモデルは、例えば、CADソフトウェア又は3D物体スキャナーを用いることによって創り出すことができる。
【0003】
付加製造プロセスは、「生成的製造方法」又は「3D印刷」などの用語を用いることにも言及される。用語「3D印刷」は、元々、1990年代中にマサチューセッツ工科大学(MIT)によって創り出されたインクジェット印刷ベースのAMプロセスのために用いられた。未加工物体からの材料を成形する/キャスティングするか又は取り去る/機械加工するかのどちらかによる物体創出に基づいている、従来の技術と比較して、付加製造技術は、製造のための基本的に異なるアプローチに従う。特に、製造コストを増やすこと、広範囲の製品に対してオーダーメイド解決策を提供することなしに、各物体の設計を変更することが可能である。
【0004】
一般に、付加製造プロセスでは、3D物品は、化学及び/又は物理プロセス(例えば溶融、重合、焼結、硬化又はハードニング)に供される定形のない材料(例えば、液体、粉末、顆粒、ペースト等)及び/又は形状中立材料(例えば、バンド、ワイヤ、フィラメント)を使用して製造される。付加製造技術の主なカテゴリーには、VAT光重合、材料押出、材料ジェッティング、バインダージェッティング、粉体層融合、指向性エネルギー堆積、及びシート積層技術が含まれる。材料押出に基づく広く用いられる付加製造技術には、溶融フィラメント製造(FFF)及び溶融粒子製造(FPF)が含まれる。
【0005】
溶融堆積モデリング(FDM)としても知られる、溶融フィラメント製造(FFF)プロセスでは、3D物品は、フィラメントの形態のポリマー材料を使用して3D物品のデジタルモデルに基づいて製造される。FFFプロセスでは、ポリマーフィラメントは、移動するプリンター押出ヘッドへ供給され、そのガラス転移温度又は溶融温度を越えて加熱され、次いで、連続的に一連の層として、プリンター押出ヘッドの加熱されたノズルを通って堆積させられる。堆積の後に、ポリマー材料の層は、固化し、既に堆積した層と融合する。溶融顆粒製造(FGF)としても知られる、溶融粒子製造(FPF)は、ポリマー材料が、フィラメントの代わりに、顆粒又はペレットなどの、粒子の形態で提供されるという点でのみFFFプロセスとは異なる。
【0006】
溶融フィラメント製造及び溶融粒子製造プロセスのための一般的に使用される熱可塑性材料には、特にアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカーボネート(PC)、及びポリアミドが含まれる。例えば、公開特許出願欧州特許出願公開第3 476 898 A1号明細書は、少なくとも25重量%の非晶質ポリアミドと、少なくとも5重量%の結晶性又は半結晶性の熱可塑性ポリマーと、任意選択的に少なくとも1重量%の充填材とを含む3D印刷での使用のための熱可塑性ポリマー組成物を開示している。
【0007】
高密度ポリエチレン(HDPE)は、その高い強度及び低コストのために多くの商業的応用において一般的に使用される材料である。しかしながら、3D印刷用の、とりわけ材料押出3D印刷での材料としてのHDPEの使用は、冷却時のポリマー材料の固有の収縮及びビルディングプレートへの低い接着性のために有名にも困難であることが知られている。その結果として、HDPEは、一般に、3D印刷用の好ましい材料ではない。しかしながら、携帯用水、廃水、スラリー、化学品、危険有害廃棄物、又は圧縮ガスを運ぶために使用されるパイプなどの、いくつかの工業用途では、少なくとも10MPaのISO/TR 9080による最小所要強度(MRS)が必要とされる。これらの用途では、PE100などの、特に高い強度を持ったポリエチレンのみが使用することができる。PE100の高い密度及び結晶化度は、主に、冷却時の材料の高い収縮のために、3D印刷での使用を極めて困難にする。
【0008】
高強度ポリエチレンを3D印刷に使用する上での課題は、プロセスパラメータの注意深い制御によって及び他のポリマーとポリエチレン材料とのブレンディングによって少なくともある程度軽減することができる。別の公開特許出願国際公開第2020/028013 A1号パンフレットは、高密度ポリエチレン(HDPE)及び第2のポリマーを含む熱可塑性ブレンドを用いることを含む溶融フィラメント製造(FFF)方法であって、高密度ポリエチレンの量対第2の熱可塑性ポリマーの量の重量比が1.5:1~20:1の範囲にある方法を開示している。しかしながら、HDPEと、低密度ポリエチレン(LDPE)などの、第2のポリマーとの混合は、3D印刷物品の機械的特性に強く影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、特に、溶融フィラメント製造(FFF)又は溶融粒子製造(FPF)技術で動作する3Dプリンター用の、3D印刷材料としての使用に好適である、高強度ポリエチレンベース材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
材料押出ベースの3D印刷技術、特に溶融フィラメント製造(FFF)又は溶融粒子製造(FPF)プロセスを用いる3次元物品の提供での使用に好適である、高強度ポリエチレンベース材料を提供することが本発明の目的である。
【0011】
意外にも、この目的は請求項1に記載の特徴によって達成できることが見いだされた。
【0012】
とりわけ、請求項1において定義されるようなポリマー材料が、材料押出ベースの3D印刷技術を用いて、複雑な形状の特注3D物品であって、3D物品が少なくとも10MPaのISO/TR 9080による最小強度(MRS)を有する物品の高速の且つ費用効率が高い製造を可能にすることが見いだされた。
【0013】
本発明のポリマー材料の利点の1つは、3D印刷用途向けの基本的ポリエチレンベース材料の適性を、ポリマー材料の他の特性、特に材料の強度に悪影響を及ぼすことなく改善できることである。更に、基本的ポリエチレン材料に添加される追加の構成成分は、ポリマー材料の総費用を有意に増やさない。
【0014】
本発明の更なる主題は、更なる独立請求項に定義される。好ましい実施形態は、本説明及び従属請求項の全体にわたって概説される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の主題は、付加製造プロセスによる3D物品の製造のためのポリマー材料の使用であって、本ポリマー材料は、
a)少なくとも0.930kg/m3のEN ISO 1183-1:2019標準に従って測定される23℃での密度、及び少なくとも50重量%のEN ISO 11357-3:2018標準に従って測定される結晶化度を有する、少なくとも1種のポリエチレンPEと、
b)少なくとも1種の固体充填材Fと、
c)任意選択的に少なくとも1種の核形成剤Nと
を含み、
少なくとも1種の固体充填材Fは、3~60、好ましくは4~50の体積ベースの平均アスペクト比(長さ/直径)を有する繊維状充填材である、
使用である。
【0016】
略語「3D」は、用語「3次元」の代わりに本開示の全体にわたって用いられる。
【0017】
用語「ポリマー」は、同じか又は異なるタイプのモノマーのポリ反応(重合、重付加、重縮合)によって生み出される化学的に一様な高分子であって、高分子は、それらの重合度、分子量、及び鎖長に関して異なる高分子の集団を指す。この用語はまた、ポリ反応から生じる高分子の前記集団の誘導体、すなわち、所定の高分子における官能基の、例えば、付加又は置換などの反応によって得られる、及び化学的に一様であり得る又は化学的に非一様であり得る化合物を包含する。
【0018】
用語「分子量」は、分子の又は「部分」とも言われる、分子の一部のモル質量(g/mol)を指す。用語「平均分子量」は、分子又は部分のオリゴマー又はポリマー混合物の数平均分子量(Mn)を又は重量平均分子量(Mw)を指す。分子量は、標準としてポリスチレン、カラムとして100オングストローム、1000オングストローム及び10000オングストロームのポロシティのスチレン-ジビニルベンゼンゲル並びに、分子に依存して、35℃で、溶媒としてテトラヒドロフラン、又は160℃で、溶媒として1,2,4-トリクロロベンゼンを使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定され得る。
【0019】
用語「軟化点」は、化合物がゴム様状態に軟化する温度、又は化合物内の結晶部分が溶融する温度を指す。軟化点は、好ましくは、DIN EN 1238:2011規格に従って行われる環球測定によって測定される。
【0020】
用語「溶融温度」又は「融点」は、材料が固体から液体状態への転移を受ける温度を指す。溶融温度(Tm)は、好ましくは、2℃/分の加熱速度を用いてISO 11357-3標準に従って示差走査熱量測定法(DSC)によって決定される。測定は、Mettler Toledo DSC 3+デバイスを使って行うことができ、Tm値は、DSCソフトウェアの助けを借りて、測定されたDSC曲線から決定することができる。測定されたDSC曲線が幾つかのピーク温度を示す場合、サーモグラムにおけるより低い温度側から来る第1のピーク温度が、溶融温度(Tm)と見なされる。
【0021】
用語「ガラス転移温度」(Tg)は、それより上の温度で、ポリマー成分が柔らかく及び曲げやすくなり、それより下でそれは硬く及びガラス状になる温度を指す。ガラス転移温度(Tg)は、好ましくは、1Hzの印加周波数及び0.1%の歪みレベルを用いる測定された損失弾性率(G”)曲線のピークとして動的機械分析(DMA)によって決定される。
【0022】
組成物中の「少なくとも1種の成分Xの量又は含有量」、例えば「少なくとも1種の熱可塑性ポリマーTPの量」は、組成物中に含有される全ての熱可塑性ポリマーTPの個々の量の合計を指す。更に、組成物が20重量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーTPを含む場合、組成物中に含有される全ての熱可塑性ポリマーTPの量の合計は20重量%に等しい。
【0023】
用語「標準室温」は、23℃の温度を示す。
【0024】
付加製造プロセスで使用するためのポリマー材料は、少なくとも0.930kg/m3、好ましくは少なくとも0.935kg/m3、より好ましくは少なくとも0.940kg/m3、更にいっそう好ましくは少なくとも0.950kg/m3のEN ISO 1183-1:2019標準に従って測定される23℃での密度及び少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%のEN ISO 11357-3:2018標準に従って測定される結晶化度を有する少なくとも1種のポリエチレンを含む。
【0025】
ポリエチレンPEの結晶化度は、式(I):
【数1】
(式中、
Dは、%単位でのポリエチレンPEの結晶化度であり、
ΔH
fは、EN ISO 11357-3:2018標準に従って測定されるJ/g単位でのポリエチレンPEの融解エンタルピーであり、
ΔH
f,100は、J/g単位での100%の結晶化度を有するポリエチレンの融解エンタルピー、すなわち、293J/gである)
に従って決定することができる。
【0026】
1つ以上の実施形態によれば、付加製造プロセスは、溶融フィラメント製造又は溶融粒子製造プロセスである。
【0027】
溶融フィラメント製造(FFF)プロセスでは、ポリマーフィラメントは、移動するプリンター押出ヘッドへ供給され、そのガラス転移温度(Tg)又は溶融温度(Tm)を越えて加熱され、次いで、連続的に一連の層として、プリンター押出ヘッドの加熱されたノズルを通って堆積させられる。堆積の後に、ポリマー材料の層は、固化し、既に堆積した層と融合する。プリンター押出ヘッドは、3D物品のデジタルモデルから計算される制御データに基づいて、印刷される形状を画定するためにコンピューター制御下に移動させられる。
【0028】
溶融顆粒製造(FGF)としても知られる、溶融粒子製造(FPF)は、ポリマー材料が、フィラメントの代わりに、顆粒又はペレットなどの、粒子の形態で提供されるという点でのみFFFプロセスとは異なる。
【0029】
少なくとも1種のポリエチレンPEとして使用するための好適な化合物には、エチレンホモポリマー及びエチレンコポリマーが含まれる。
【0030】
好ましくは、少なくとも1種のポリエチレンPEは、少なくとも1g/10分、より好ましくは少なくとも2.5g/10分、更にいっそう好ましくは少なくとも3.5g/10のISO 1133-1:2011標準に従って測定されるメルトフローインデックス(190℃/2.16kg)を有する。1つ以上の実施形態によれば、少なくとも1種のポリエチレンPEは、1~50g/10分、好ましくは2~25g/10分、より好ましくは3~15g/10分のISO 1133-1:2011標準に従って測定されるメルトフローインデックス(190℃/2.16kg)を有する。
【0031】
好ましくは、少なくとも1種のポリエチレンPEは、少なくとも450MPa、より好ましくは少なくとも550MPa、更にいっそう好ましくは少なくとも650MPaのISO 178:2019標準に従って測定される23℃での曲げ弾性率及び/又は105℃以上、より好ましくは110℃以上、更にいっそう好ましくは115℃以上の2℃/分の加熱速度を用いてISO 11357-3:2018標準に従って示差走査熱量測定法(DSC)によって決定される溶融温度を有する。
【0032】
1つ以上の実施形態によれば、少なくとも1種のポリエチレンPEは、400~1500MPa、好ましくは500~1350MPa、より好ましくは600~1250MPaのISO 178:2019標準に従って測定される23℃での曲げ弾性率を有する。
【0033】
好ましくは、少なくとも1種のポリエチレンPEは、ポリマー材料の総重量の、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも65重量%、更にいっそう好ましくは少なくとも75重量%を占める。一般に、表現「成分Xは、組成物の総重量のY重量%を占める」は、成分Xの量が組成物の総重量のY重量%を構成する、すなわち、組成物は、Y重量%の成分Xを含むことを意味すると理解される。1つ以上の実施形態によれば、少なくとも1種のポリエチレンPEは、ポリマー材料の総重量の、55~97.5重量%、好ましくは65~97.5重量%、より好ましくは75~96.5重量%を占める。
【0034】
1つ以上の実施形態によれば、少なくとも1種のポリエチレンPEは、ポリマー材料のポリマー基礎原料の、少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、更にいっそう好ましくは少なくとも92.5重量%、更により好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも97.5重量%を占める。ポリマー材料の「ポリマー基礎原料」は、少なくとも1種のポリエチレンPEを含めて、ポリマー組成物の全てのポリマー化合物を包含すると理解される。
【0035】
ポリマー材料は、更に、3~60、好ましくは4~50、より好ましくは4~35、更にいっそう好ましくは5~25の体積ベースの平均アスペクト比を有する繊維状充填材である、少なくとも固体充填材Fを含む。
【0036】
用語「繊維状充填材」は、本開示では、繊維を並びに、ウィスカーとしても知られる、針状充填材を指し、それらは、典型的には、100μm未満の繊維長を有する。
【0037】
用語粒子の「アスペクト比」は、本開示では、粒子の長さ(L)を直径(D)で割ることによって得られる値を指す。「粒子の長さ」は、本開示では、フェレー(Feret)径の測定されたセットからの最大フェレー径(XFe,最大)、すなわち、最長フェレー径を指す。用語「フェレー径」は、ある固定方向に平行の、及び測定方向に垂直の、粒子の反対側上の2つの接線間の距離を指す。「粒子の直径」は、本開示では、フェレー径の測定されたセットからの最小フェレー径(XFe,最小)、すなわち、最短フェレー径を指す。それ故に、アスペクト比は、XFe,最大とXFe,最小との比として計算することができる。
【0038】
粒子のアスペクト比は、ISO 13322-2:2006標準に従って行われる動的画像解析法を用いることによるなどの、任意の好適な測定技術を用いて粒子の長さ及び直径を測定し、上記のような粒子の測定された寸法からアスペクト比を計算することによって決定することができる。粒子の寸法は、好ましくは空気圧分散法を用いることによって、粒子が空気中に分散される、乾燥分散法で好ましくは測定される。測定は、Camsizer XTデバイス(Retsch Technology GmbHの商標)などの、任意のタイプの動的画像解析装置を用いて行うことができる。
【0039】
用語「体積ベースの平均アスペクト比」は、本開示では、体積で全ての粒子の50%が平均アスペクト比の値よりも小さいアスペクト比を有するそれ未満のアスペクト比を指す。
【0040】
1つ以上の実施形態によれば、少なくとも1種の固体充填材Fは、50μm以下、好ましくは35μm以下、より好ましくは25μm以下の体積ベースの平均粒径D50及び/又は少なくとも5μm、好ましくは少なくとも10μm、より好ましくは少なくとも15μm、更にいっそう好ましくは少なくとも20μmの体積ベースの平均粒子長L50を有する。
【0041】
用語「体積ベースの平均直径D50」は、本開示では、体積で全ての粒子の50%が平均直径D50の値よりも小さい直径を有するそれ未満の直径を指す。同様に、用語「体積ベースの平均長さL50」は、本開示では、体積で全ての粒子の50%が平均長さL50の値よりも小さい長さを有するそれ未満の長さを指す。
【0042】
1つ以上の実施形態によれば、少なくとも1種の固体充填材Fは、1~100μm、好ましくは2.5~50μm、より好ましくは2.5~35μm、更にいっそう好ましくは2.5~30μm、更により好ましくは2.5~25μmの体積ベースの平均粒径D50及び/又は10~1000μm、好ましくは15~500μm、より好ましくは20~350μm、更にいっそう好ましくは25~250μm、更により好ましくは30~200μmの体積ベースの平均粒子長L50を有する。
【0043】
少なくとも1種の固体充填材Fは、好ましくは、無機充填材である。
【0044】
少なくとも1種の固体充填材Fとして使用するための好適な無機充填材には、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、スチール繊維、針状ウォラストナイト及びオキシ硫酸マグネシウムウィスカーが含まれる。
【0045】
好ましくは、少なくとも1種の固体充填材Fは、20℃の温度で、0.1g/100g水未満、より好ましくは0.05g/100g水未満、更にいっそう好ましくは0.01g/100g水未満の水溶解度を有する。水への化合物の溶解度は、より多くの化合物の添加が溶液の濃度を増加させない、すなわち、過剰量の物質が沈澱し始める、飽和濃度として測定することができる。水への化合物の水溶解度に関する測定は、OECD試験ガイドライン 105(1995年7月27日に採択された)に定義されているような標準「振盪フラスコ」法を用いて行うことができる。
【0046】
1つ以上の実施形態によれば、少なくとも1種の固体充填材Fは、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、及び針状ウォラストナイトからなる群から、好ましくはガラス繊維及び針状ウォラストナイトからなる群から選択される。
【0047】
好ましくは、少なくとも1種の固体充填材Fは、ポリマー材料の総重量の、少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1.0重量%、より好ましくは少なくとも1.5重量%、更にいっそう好ましくは少なくとも2.5重量%を占める。
【0048】
1つ以上の実施形態によれば、少なくとも1種の固体充填材Fは、ポリマー材料の総重量の、5~35重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは10~25重量%、更にいっそう好ましくは10~20重量%を占める。
【0049】
1つ以上の実施形態によれば、ポリマー材料は、更に、少なくとも1種の核形成剤Nを含む。
【0050】
少なくとも1種の核形成剤Nとして使用するための好適な化合物には、例えば、ナノスケール炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、二酸化ケイ素、膨張黒鉛、多層カーボンナノチューブ、モンモリロナイト粘土、バーミキュライト、ナノコンポジットミネラル、及びタルクなどの、ナノスケール無機充填材が含まれる。用語「ナノスケール」は、本開示では、1μm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは250nm以下の平均粒径d50を有する固体充填材を指す。
【0051】
用語「粒径」は、本開示では、粒子の面積相当球径(area-equivalent spherical diameter)(X面積)を指す。用語「平均粒径d50」は、本開示では、体積で全ての粒子の50%がd50値よりも小さいそれ未満の粒径を指す。粒度分布は、ASTM C136/C136M-2014規格(「Standard Test Method for Sieve Analysis of Fine and Coarse Aggregates(規格 微細な及び粗い凝集体のふるい分析の試験方法))に記載されているような方法に従ってふるい分析によって決定することができる。
【0052】
少なくとも1種の核形成剤Nとして我々にとって更なる好適な化合物には、サイザル繊維、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、カルシウム塩、アントラセン、フタル酸水素カリウム、安息香酸及びそれの誘導体、並びに安息香酸ナトリウム及びそれの誘導体などの、有機添加剤が含まれる。
【0053】
1つ以上の実施形態によれば、少なくとも1種の核形成剤Nは、ナノスケール炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、二酸化ケイ素、膨張黒鉛、モンモリロナイト粘土、タルク、多層カーボンナノチューブ、バーミキュライト、ナノコンポジットミネラル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、カルシウム塩、アントラセン、フタル酸水素カリウム、安息香酸及びそれの誘導体、並びに安息香酸ナトリウム及びそれの誘導体からなる群から選択される。
【0054】
好適な核形成剤は、例えば、MillikenからUltraGuard(登録商標)Solutionの商品名で、市販されている。
【0055】
1つ以上の実施形態によれば、少なくとも1種の核形成剤Nは、ポリマー材料の総重量の、0.1~10重量%、好ましくは0.5~7.5重量%、より好ましくは1.5~5重量%、更にいっそう好ましくは2.5~5重量%を占める。
【0056】
1つ以上の実施形態によれば、ポリマー材料は、更に、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、酸化鉄、混合金属鉄酸化物、アルミニウム粉末、及び黒鉛からなる群から好ましくは選択される、少なくとも1種の着色顔料CPを含む。
【0057】
本発明に使用される化合物のいくつかは、特定の機能のために有用であるとして特徴付けられるが、これらの化合物の使用は、それらの典型的な機能に限定されないことが理解されるべきである。例えば、少なくとも1種の着色顔料CPはまた、ポリマー材料のポリマー成分用の核形成剤としても機能することができる。
【0058】
好ましくは、少なくとも1種の着色顔料CPは、1000nm以下、より好ましくは750μm以下、更にいっそう好ましくは500nm以下の平均粒径d50を有する。
【0059】
1つ以上の実施形態によれば、少なくとも1種の着色顔料CPは、50~1000nm、好ましくは75~750nm、より好ましくは100~650nm、更にいっそう好ましくは125~500μm、更により好ましくは150~350μm、最も好ましくは200~300nmの範囲の中央粒径を有する。
【0060】
ポリマー材料は、更に、1種以上のUV安定剤、好ましくは少なくとも1種のヒンダードアミン光安定剤(HALS)を含み得る。これらのタイプの化合物は、典型的には、光誘起ポリマー分解を防ぐためにポリマーブレンドに添加される。そのようなUV安定剤はとりわけ、3D物品が屋外用途に使用される場合に必要とされる。
【0061】
好適なヒンダードアミン光安定剤(HALS)には、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)-セバケート;ビス-5(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル)-セバケート;n-ブチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルマロン酸ビス(1,2,2,6,6,-ペンタメチルピペリジル)エステル;1-ヒドロキシエチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシ-ピペリジンとコハク酸との縮合生成物;N,N’-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)-ヘキサメチレンジアミンと4-tert-オクチルアミノ-2,6-ジクロロ-1,3,5-s-トリアジンとの縮合生成物;トリス-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)-ニトリロトリアセテート;テトラキス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラ炭酸(arbonic acid);及び1,1’(1,2-エタンジイル)-ビス-(3,3,5,5-テトラメチルピぺラジノン)が含まれる。
【0062】
好適なヒンダードアミン光安定剤は、例えば、Tinuvin(登録商標)371、Tinuvin(登録商標)622、及びTinuvin(登録商標)770などの、Tinuvin(登録商標)の商品名で(Ciba Specialty Chemicalsから);Chimassorb(登録商標)119、Chimassorb(登録商標)944、Chimassorb(登録商標)2020などの、Chimassorb(登録商標)の商品名で(Ciba Specialty Chemicalsから);並びにCyasorb(登録商標)UV 3346、Cyasorb(登録商標)UV 3529、Cyasorb(登録商標)UV 4801、及びCyasorb(登録商標)UV 4802などの、Cyasorb(登録商標)の商品名で(Cytec Industriesから);並びにHostavin N30などの、Hostavin(登録商標)の商品名で(Clariantから)市販されている。
【0063】
ポリマー材料は、熱安定剤、UV吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、染料、艶消剤、帯電防止剤、耐衝撃性改良剤、殺生物剤、並びに潤滑剤、スリップ剤、粘着防止剤、及びネスト解消助剤(denest aid)などの加工助剤などの、様々な更なる添加剤を含み得る。これらのタイプの更なる添加剤の総量は、ポリマー材料の総重量を基準として、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更にいっそう好ましくは5重量%以下である。
【0064】
本発明の別の主題は、3D物品の製造方法であって、以下の工程:
i)3D物品のデジタルモデルを提供する工程、
ii)デジタルモデルに基づいて、上で記載されたような本発明のポリマー材料を、3Dプリンターを用いて印刷して3D物品を形成する工程
を含む方法である。
【0065】
3Dプリンターは、好ましくは、溶融フィラメント製造又は溶融粒子製造プリンターである。
【0066】
「デジタルモデル」は、物体の形状を正確に再現する、現実世界の物体の、例えばパイプ継ぎ手部品のデジタル表現を指す。典型的には、デジタルモデルは、コンピューター可読データ記憶装置、とりわけデータファイルに記憶される。データファイルフォーマットは、例えば、コンピューター支援デザイン(CAD)ファイルフォーマット又はGコード(RS-274とも呼ばれる)ファイルフォーマットであることができる。
【0067】
1つ以上の実施形態によれば、工程ii)は、
ii1)ポリマー材料を3Dプリンターへ供給する工程、
ii2)ポリマー材料を加熱して溶融したポリマー材料を提供する工程、
ii3)3D物品のデジタルモデルに従った選択されたパターンでの3Dプリンターのプリンター押出ヘッドを使用することによって溶融したポリマー材料を堆積させて3D物品を形成する工程
を含む。
【0068】
本方法の工程ii2)において、ポリマー材料は、好ましくは、溶融したポリマー材料を得るために、少なくとも1種のポリエチレンPEの融点よりも上である、温度に加熱される。ポリマー材料が、異なる融点を有する多数の異なるポリエチレンを含む場合、ポリマー材料は、好ましくは、最も高い融点を有するポリエチレンの融点よりも上である、温度に加熱される。
【0069】
本方法の工程ii3)におけるプリンター押出ヘッドの移動は、3D物品のデジタルモデルに基づいて計算される制御データに従って制御される。3D物品のデジタルモデルは、好ましくは、先ず、物品の3D形状を碁盤目状にするために及びそれをデジタル層に薄切りにするためにSTLファイルに変換される。STLファイルは、特注機ソフトウェアを用いて3Dプリンターに移される。コンピューター支援製造(CAM)ソフトウェアパッケージなどの、制御システムが、STLファイルに基づいた制御データを生み出すために用いられる。制御システムは、3Dプリンターに一部であることができるし、又はそれは、別個のデータ処理装置、例えばコンピューターシステムの一部であることができる。
【0070】
3D物品のデジタルモデルは、好ましくは、3D物品の3Dスキャニングによって得られる。3Dスキャニングは、現実世界の物体、例えばパイプ継ぎ手を分析してその形状に関するデータを集めるプロセスである。次いで、集められたデータは、物体のデジタルモデルを構築するために使用することができる。それによって、制御システムは、集められたデータからデジタルモデルを生み出すために用いることができる。制御システムは、3Dスキャナーの一部であることができるし、又はそれは、別個のデータ処理装置、例えばコンピューターシステムの一部であることができる。しかしながら、手で3D物品の長さ及び角度の全てを測定し、モデル化ソフトウェアを用いて手動でデジタルモデルを生み出すことによってデジタルモデルを得ることも可能である。それにもかかわらず、これは、3Dスキャニングよりも時間がかかり、且つエラーを起こしやすい。
【0071】
3Dスキャニングのために用いることができる、市場で入手可能な多くの異なる3Dスキャナーがある。3D物体のスキャニングは、ハンドヘルド及び/又は携帯用3Dスキャナーで行われる。ハンドヘルド及び/又は携帯用3Dスキャナーは、複雑な据え付けを必要としないし、製造される3D物品の迅速な及び容易なスキャニングを可能にする。
【0072】
好ましくは、3Dスキャナーは、長さで、1cm~20m、とりわけ20cm~10mの物体を捕らえるために設計されている。
【0073】
とりわけ、3Dスキャナーは、非接触3Dスキャナーである。そのような種のスキャナーは、ある種の放射線、例えば光、超音波又はx線を発し、物体を精査するためにそのスキャンされる物体による反射又は物体の通過を検出する。
【0074】
例えば、3Dスキャナーは、会社Thor3d,Varshavskoe Sh.33,Moscow,Russiaによるタイプ「calibry 3d scanner」のスキャナーである。
【0075】
本発明の更なる主題は、本発明のポリマー材料を使用する付加製造プロセスによって得られる3D物品である。
【0076】
付加製造プロセスは、好ましくは、溶融フィラメント製造又は溶融粒子製造プロセスである。
【0077】
1つ以上の実施形態によれば、物品は、パイプ又はパイプ継ぎ手である。
【実施例】
【0078】
表1に示される原材料を本実施例において使用した。
【0079】
【0080】
ペレットの製造
溶融粒子製造(FPF)プロセス用のペレットは、以下の手順に従って調製した。
【0081】
ポリマー組成物の原材料の一部を、タンブラーミキサーにおいてプレミックスし、次いで、重量測定投与秤りによってZSK実験室二軸押出機(L/D 44)に供給した。原材料の別の部分を実験室押出機へ重量測定投与トロリーによって直接供給した。原材料を混合し、分散させ、均質化し、穴あき押出機ノズルの穴経由で排出した。押し出されたストランドを、水浴を使用して冷却し、好適な寸法のペレットへカットした。次いで、ペレットをオーブン中で乾燥させて残留水分を除去した。
【0082】
ポリマー組成物の3D印刷特性
3D印刷用に上記の通り調製されたポリマー組成物の適性を、溶融粒子製造プロセスでの供給材料として本ペレットを使用することによって試験した。
【0083】
200mm×200mmの寸法を有する4つの外壁からなる中空立方体形を有する3D物品を、Yizumi SpaceA 3Dプリンターを使って被検ポリマー材料から製造した。各3D印刷物品は、222層からなった。
【0084】
下の表2に示されるようなプロセスパラメータを用いて3D印刷を行った。
【0085】
【0086】
3D印刷用の供給材料としての使用への各被検ポリマー組成物の適性を、「整経の度合い」及び引張強度の観点から3D印刷物品の特性に基づいて推定した。
【0087】
被検ポリマー組成物の構成成分及び3D印刷物品の特性を表3に示す。
【0088】
整経の度合い
整経の度合いは、3D印刷物品(中空立方体)の垂直壁の曲率半径(R)で表されると考えた。曲率半径(R)は、以下の式を用いて各3D印刷物品について決定した。
【数2】
(ここで、下の図に示されるように、hは、セグメントの高さであり、rは、5cmの値を有する割線のコード長である。
【数3】
【0089】
引張強度
3D印刷物品の引張強度は、下の図に示されるように水平(x、縦)方向及び垂直(z、中間層)方向に3D印刷物品の壁からカットされた亜鈴型サンプルを使用してEN 527-1B/5/100標準に従って測定した。表3に示された引張強度についての値は、同じ3D印刷物品からカットされたサンプルを使って行われた3つの測定の平均として得られたものである。
【数4】
【0090】
【国際調査報告】