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特表2024-535267多結晶炭化ケイ素支持基板を製造するためのプロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】多結晶炭化ケイ素支持基板を製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/36 20060101AFI20240920BHJP
   C30B 33/06 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C30B33/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516866
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 FR2022051682
(87)【国際公開番号】W WO2023047035
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】2109961
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ビアード, ヒューゴ
(72)【発明者】
【氏名】ラグランジュ, メラニー
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AA07
4G077AB10
4G077BE08
4G077DB05
4G077DB07
4G077DB09
4G077DB16
4G077EB01
4G077ED06
4G077EE06
4G077EF01
4G077FF06
4G077FG12
4G077FJ03
4G077GA01
4G077GA10
4G077HA06
4G077HA12
4G077TA04
4G077TK01
4G077TK11
(57)【要約】
本発明は、多結晶炭化ケイ素支持基板を製造するためのプロセスであって、a)初期多結晶炭化ケイ素基板を、黒鉛又は炭化ケイ素のシード上に成長させるステップ、b)補剛炭素膜を初期基板の前面上に形成するステップであり、初期基板が、前面の平面において、補剛膜の形成の直前に、第1の平均炭化ケイ素粒子サイズを有する、ステップ、c)シードを除去して、初期基板の後面を自由にするステップであり、初期基板が、後面の平面において、シードの除去の直後に、第1の平均サイズよりも小さい第2の平均炭化ケイ素粒子サイズを有する、ステップ、d)初期基板が、後面の平面において、±30%以内までの第1の平均粒子サイズに等しい第3の平均粒子サイズを有する厚さまで初期基板の後面を薄化するステップであり、薄化された初期基板が、支持基板を形成する、ステップを含む、プロセスに関係する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶炭化ケイ素支持基板(10)を製造するためのプロセスであって、
a)初期多結晶炭化ケイ素基板(1)を、黒鉛又は炭化ケイ素のシード(2)上に成長させるステップであって、ステップa)の結末では、前記初期基板(1)が、自由前面(1a)と、前記シード(2)と接触している後面(1b)とを有する、ステップ、
b)補剛炭素膜(3)を前記初期基板(1)の前記前面(1a)上に形成するステップであって、前記初期基板(1)が、前記初期基板の前記前面(1a)の平面において、及び、前記補剛膜(3)の前記形成の直前に、第1の平均炭化ケイ素粒子サイズを有する、ステップ、
c)前記シード(2)を除去して、前記初期基板(1)の前記後面(1b)を自由にするステップであって、前記初期基板が、前記初期基板の前記後面(1b)の平面において、及び、前記シード(2)の除去の直後に、前記第1の平均サイズよりも小さい第2の平均炭化ケイ素粒子サイズを有する、ステップ、
d)前記初期基板(1)が、前記初期基板の薄化された後面(1b’)の平面において、±30%以内までの前記第1の平均粒子サイズに等しい第3の平均粒子サイズを有する厚さまで前記初期基板(1)の前記後面(1b)を薄化するステップであって、前記薄化された初期基板(1)が、前記支持基板(10)を形成する、ステップ
を含む、製造するためのプロセス。
【請求項2】
前記補剛膜(3)が、100nm~数ミリメートルの間、例えば10mmの厚さを有する、請求項1に記載の製造プロセス。
【請求項3】
前記補剛膜(3)が、100nm~10μmの間の厚さを有する、請求項2に記載の製造プロセス。
【請求項4】
前記補剛炭素膜(3)が、ダイヤモンド状又はガラス状炭素状結晶学的構造を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項5】
ステップb)が、前記初期基板(1)の前記前面において粘性層として、3次元において、予め形成された炭素-炭素結合を有する高分子樹脂を塗布し、500℃~2000℃の間の温度においてアニールして、前記補剛炭素膜(3)を形成することにより実行される、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項6】
前記高分子樹脂が、コールタール、フェノールホルムアルデヒド、ポリフルフリルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、及び/又はポリスチレンに基づく、請求項5に記載の製造プロセス。
【請求項7】
ステップb)が、プラズマ堆積、イオン衝撃堆積、又は蒸着堆積により実行される、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項8】
ステップa)とステップb)との間に、前記初期基板(1)の前記前面(1a)及び/若しくは周辺部を研削して、前記面(1a)の表面粗さを低減する、並びに/又は、前記基板(1)の厚さのばらつきを低減する、並びに/又は、前記初期基板の周辺部を一様化するステップa’)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項9】
ステップa’)が、機械的又は機械化学的薄化を含む、請求項8に記載の製造プロセス。
【請求項10】
ステップd)の後に、前記補剛膜を除去するステップe)を、及び/又は、
ステップd)の後に、若しくはステップe)の後に、1500℃以上の温度における熱処置のステップ
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造プロセス。
【請求項11】
複合構造(100)を製造するためのプロセスであって、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセスを伴い、単結晶炭化ケイ素の薄層(20)を、前記支持基板(10)の第1の面(10a)又は第2の面(10b)へと、直接的に又は中間層を介して転写して、前記複合構造(100)を形成するステップf)も含む、製造するためのプロセス。
【請求項12】
前記中間層が、前記支持基板(10)の前記第1の面(10a)において保たれている前記補剛炭素膜(3)により形成される、請求項11に記載の製造プロセス。
【請求項13】
前記薄層(20)の前記転写が、前記支持基板(10)の前記第1の面及び前記第2の面(10a、10b)のうちの一方において実行され、追加的な炭素膜(5)が、前記転写よりも前に前記支持基板(10)の他方の自由面(10b、10a)において配置構成されている、請求項11に記載の製造プロセス。
【請求項14】
前記追加的な膜(5)が、優先的には、前記複合構造(100)が、前記複合構造の製造のために、又は、前記構造(100)上及び/若しくは内の構成要素の製造のために要される、1400℃よりも上の温度における任意の熱処置を経た後に除去される、請求項13に記載の製造プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロエレクトロニクスの構成要素のための半導体材料の分野に関係する。本発明は、多結晶炭化ケイ素支持基板を製造するためのプロセスであって、前記支持基板において配置構成された単結晶炭化ケイ素の薄層を含む複合構造の生出に特に適する、プロセスに特に関係する。
【背景技術】
【0002】
SiCは、とりわけ電気車両などの、エレクトロニクスにおける新興の分野の必要性を満たすための革新的な電力デバイスを製造するために、ますます広く使用されている。詳細には、単結晶炭化ケイ素に基づく電力デバイス及び統合電力供給システムは、それらの従来のシリコン同等物よりもはるかに高い電力密度を扱うことができ、より小さいサイズの活性領域によって、そのようにすることができる。
【0003】
さりながら、マイクロエレクトロニクス産業に向けたものである高品質単結晶SiC基板(c-SiC)は、高価であり、大きいサイズにおいて供給するのが困難であり続けている。例えば多結晶SiC(p-SiC)から作製された、より低いコストの支持基板において、(高品質c-SiC基板から得られた)単結晶SiCの薄層を典型的には含む複合構造を作り上げるための、層転写解決策を拠り所とすることが、そうして有利である。1つのよく知られている薄層転写解決策は、軽イオンを注入し、結合界面において直接結合により接合することに基づく、スマートカット(Smart Cut)(登録商標)プロセスである。
【0004】
米国特許出願公開第2019153616号は、c-SiC薄層が転写され得るp-SiC支持基板を製造するためのプロセスを提供する。支持基板は、およそ10μmの平均サイズの粒子を含み、0.43%以下の、支持基板の厚さに対する支持基板の前面と後面との間の粒子サイズのある程度のばらつきを有し、後者の特徴は、支持基板における残留応力、及びそうして、支持基板の湾曲を制限することを可能にする。
【0005】
製造するプロセスは、第1の炭素ベース基板を伴い、第1の炭素ベース基板において、p-SiCの厚層(典型的には2mm)が、化学気相堆積により生出される。近似的に350μmの厚さの第2のp-SiCベース基板が、第1の炭素ベース基板を除去し、厚層の両方の面を機械的に薄化することにより、p-SiCの厚層から取り出される。第2のベース基板は、0.43%以下の、第2のベース基板の厚さに対する2のベース基板の前面と後面との間の粒子サイズのある程度のばらつきを有する。新しいp-SiC層(典型的には、およそ400μmの)が、第2のベース基板において、化学気相堆積により次いで形成され、例えばレーザ照射により、第2のベース基板から分離されて、この新しいp-SiC層は、複合構造における使用に向けたものであるp-SiC支持基板を形成する。第2のベース基板は、次いで再使用され得る。
【0006】
実際上は、第2のベース基板を形成することに本質があるステップは、複雑であることが判明しかねないものであり、その理由は、第1の炭素ベース基板の除去は、一般的には、厚p-SiC層において非常に大きい湾曲を誘発し、そのことは、前記厚層が破損することを引き起こし、又は、第2のベース基板の厚さを達成するために要される薄化ステップを、少なくとも複雑にし、若しくは妨げ得るからというものである。加えて、この薄化は、(およそ1.5mmの)非常に大幅なものであり、p-SiC材料並びに堆積及び薄化ステップの見地においてコスト高のものである。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、上記で言及された問題に対処する製造するプロセスを提案する。本発明は、経済的で単純化される、多結晶SiC支持基板を製造するためのプロセスに関係する。前記支持基板は、前記p-SiC支持基板において配置構成された薄c-SiC層を含む複合構造の製造に、さらには特に適する。
【0008】
本発明は、多結晶炭化ケイ素支持基板を製造するためのプロセスであって、
a)初期多結晶炭化ケイ素基板を、黒鉛又は炭化ケイ素のシード上に成長させるステップであり、ステップa)の結末では、初期基板が、自由前面と、シードと接触している後面とを有する、ステップ、
b)補剛炭素膜(stiffening carbon film)を初期基板の前面上に形成するステップであり、初期基板が、初期基板の前面の平面において、及び、補剛膜の形成の直前に、第1の平均炭化ケイ素粒子サイズを有する、ステップ、
c)シードを除去して、初期基板の後面を自由にするステップであり、初期基板が、初期基板の後面の平面において、及び、シードの除去の直後に、第1の平均サイズよりも小さい第2の平均炭化ケイ素粒子サイズを有する、ステップ、
d)初期基板が、初期基板の薄化された後面の平面において、±30%以内までの第1の平均粒子サイズに等しい第3の平均粒子サイズを有する厚さまで初期基板の後面を薄化するステップであり、薄化された初期基板が、支持基板を形成する、ステップ
を含む、プロセスに関係する。
【0009】
単独で、又は、任意の技術的に実現可能な組み合わせにおいて用いられる、本発明の他の有利及び非制限的な特徴によれば、
補剛膜が、100nm~数ミリメートルの間、例えば10mmの厚さを有し、
補剛膜が、100nm~10μmの間の厚さを有し、
補剛炭素膜が、ダイヤモンド状又はガラス状炭素状結晶学的構造を有し、
ステップb)が、初期基板の前面において粘性層として、3次元において、予め形成された(preformed)炭素-炭素結合を有する高分子樹脂を塗布し、500℃~2000℃の間の温度においてアニールして、補剛炭素膜を形成することにより実行され、
高分子樹脂が、コールタール、フェノールホルムアルデヒド、ポリフルフリルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、及び/又はポリスチレンに基づき、
ステップb)が、プラズマ堆積、イオン衝撃堆積、又は蒸着堆積により実行され、
製造するプロセスが、ステップa)とステップb)との間に、初期基板の前面及び/若しくは周辺部を研削して、前記面の表面粗さ、及び/若しくは、前記基板の厚さのばらつきを低減する、並びに/又は、初期基板の周辺部を一様化するステップa’)を含み、
ステップa’)が、機械的又は機械化学的薄化を含み、
製造するプロセスが、
ステップd)の後に、補剛膜を除去するステップe)を、及び/又は、
ステップd)の後に、若しくはステップe)の後に、1500℃以上の温度における熱処置のステップ
を含む。
【0010】
本発明は、複合構造を製造するためのプロセスであって、上記のプロセスを伴い、単結晶炭化ケイ素の薄層を、支持基板の第1又は第2の面へと、直接的に又は中間層を介して転写して、複合構造を形成するステップf)も含む、プロセスにさらには関係する。
【0011】
単独で、又は、任意の技術的に実現可能な組み合わせにおいて用いられる、本発明の他の有利及び非制限的な特徴によれば、
中間層が、支持基板の第1の面において保たれている補剛炭素膜により形成され、
薄層の転写が、支持基板の第1の面及び第2の面のうちの一方において実行され、追加的な炭素膜が、転写よりも前に支持基板の他方の自由面において配置構成されており、
追加的な膜が、優先的には、複合構造が、複合構造の製造のために、又は、前記構造上及び/若しくは内の構成要素の製造のために要される、1400℃よりも上の温度における任意の熱処置を経た後に除去される。
【0012】
本発明の他の特徴及び利点が、添付された図を参照して与えられる、本発明の、後に続く詳細な説明から明らかになることになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1a】本発明による製造するプロセスのステップを示す図である。
図1b】本発明による製造するプロセスのステップを示す図である。
図1c】本発明による製造するプロセスのステップを示す図である。
図1d】本発明による製造するプロセスのステップを示す図である。
図1e】本発明による製造するプロセスのステップを示す図である。
図1f】本発明による製造するプロセスのステップを示す図である。
図2a】本発明による製造するプロセスの他のステップを示す図である。
図2b】本発明による製造するプロセスの他のステップを示す図である。
図2c】本発明による製造するプロセスの他のステップを示す図である。
図2d】本発明による製造するプロセスの他のステップを示す図である。
図3a】本発明による製造するプロセスのステップの変形例を示す図である。
図3b】本発明による製造するプロセスのステップの変形例を示す図である。
図3c】本発明による製造するプロセスのステップの変形例を示す図である。
図3d】本発明による製造するプロセスのステップの変形例を示す図である。
図3e】本発明による製造するプロセスのステップの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図における同じ参照符が、同じタイプの要素のために使用されることがある。図は、明瞭性のために、一定の縮尺ではない、概略的な表現である。特に、z軸線に沿った層の厚さは、x及びy軸線に沿った横方向寸法に関して、一定の縮尺ではなく、互いに関しての層の相対厚さは、図において必ずしも重視されていない。
【0015】
本発明は、多結晶炭化ケイ素(p-SiC)支持基板10を製造するためのプロセスに関係する。
【0016】
プロセスは、初期多結晶炭化ケイ素基板1を、黒鉛又は低品質単結晶若しくは多結晶炭化ケイ素のシード2上に成長させるステップa)を最初に含む(図1a)。シード2は、優先的には、ウエハの形式におけるものであり、ウエハの直径は、実質的には、支持基板10について目標とされる直径、例えば100mm、150mm、200mmであり、又は300mmでさえある。
【0017】
初期p-SiC基板1の成長は、典型的には1100℃~1500℃の間の温度において、知られている化学気相堆積(CVD)技法により実行される。前駆体は、優先的には、1に近い、又は1よりも大であるC/Si比率を伴う、メチルシラン、ジメチルジクロロシラン、又はジクロロシラン及びi-ブタンから選定されてもよい。
【0018】
任意選択で、ドーピング化学種(実例として窒素又はリン)が、最終的な製品の、特に、目標とされる複合構造の仕様に対して、初期基板1(初期基板1から、支持基板10が得られることになる)の抵抗率を調整するように、CVD堆積中に導入されてもよい。通常目標とされるドーピングレベルは、1E18/cmよりも大であり、又は1E20/cmよりも大でさえある。
【0019】
ステップa)の結末では、初期基板1は、自由前面1aと、シード2と接触している後面1bとを有する。初期基板1の厚さは、1mm未満、優先的には550μm未満である。複合構造の生出に向けたものである支持基板10について通常所望される厚さ範囲は、100μm~500μmであるということが留意されるべきである。
【0020】
初期基板1は、CVD堆積条件に依存して、4H、6H、及び/又は3Cタイプ炭化ケイ素粒子を含んでもよい。
【0021】
初期基板1の後面1bにおける粒子の平均サイズは、相対的に小さく、典型的には1μm以下であり、又は100nm以下でさえあり、前記粒子は、黒鉛シード2におけるCVD堆積の開始(核形成段階)において生出されたp-SiC材料に対応する。
【0022】
粒界により境を定められる粒子のサイズは、基板の考察される面の平面における、前記粒子の最も大きい寸法に対応するということが想起されるべきである。平均粒子サイズは、前記平面における個々の粒子のサイズの平均と定義される。粒子サイズ又は粒界距離は、従来の走査電子顕微鏡法(SEM)により得られる、又は、電子後方散乱回折(EBSD)を伴う、画像を基にして測定され得る。X線結晶学を使用することが、さらには想像されることがある。考察中の面がマイクロメートルのサイズ(典型的には数ミクロン~数十ミクロン)の粒子を主に含むとき、典型的には50nm未満の、非常に小さい粒子が、優先的には、測定不確かさを制限するように、測定から除外される。
【0023】
CVD堆積が進行するにつれて、p-SiC粒子は、サイズにおいて増大し、ついにはそれらのp-SiC粒子は、堆積条件に依存して数マイクロメートル~数十マイクロメートルの間でばらつくことがある堆積物厚さについて、相対的に安定した平均サイズに達する。
【0024】
そうして、初期基板1を成長させるために堆積させられたp-SiCの厚さに依存して、前記基板1の前面における平均粒子サイズは、1~10μmの間で典型的にはばらつくことがある。
【0025】
本明細書において下記で、初期基板1の前面1aにおけるp-SiC粒子の平均サイズは、第1の平均サイズと呼称されることになり、初期基板1の後面1bにおけるp-SiC粒子の平均サイズは、第2の平均サイズと呼称されることになる。
【0026】
第1の平均p-SiC粒子サイズ(前面側1a)は、第2の平均粒子サイズ(後面側1b)よりも大であり、後者は、核形成段階に対応する。
【0027】
製造するプロセスは、補剛炭素膜3を初期基板1の前面1a上に形成するステップb)を次いで含む(図1b)。補剛膜3は、100nm~数ミリメートル、例えば10mmの範囲に及ぶ厚さを有する。優先的には、補剛膜の厚さは、100nm~10μmの間である。
【0028】
補剛炭素膜3は、すなわちsp炭素-炭素原子結合を含む、ダイヤモンドタイプ結晶学的構造、又は、sp炭素-炭素原子結合を含む、ガラス状炭素タイプ構造を有することが有利である。
【0029】
補剛膜3は、とりわけプラズマ堆積、イオン衝撃堆積、又は蒸着堆積などの、様々な従来の堆積技法によって形成されてもよい。
【0030】
代わりに、ステップb)は、初期基板1の前面1aにおいて粘性層として、3次元において、予め形成された炭素-炭素結合を含む高分子樹脂を塗布することにより実行されてもよい。この塗布は、遠心分離により実行されてもよい。次に、アニーリングが、樹脂の化学分解(熱分解)により、補剛炭素膜3を形成するために、窒素のもとで、500℃~2000℃の間、典型的には600℃~1100℃の間の温度において付与される。選定される温度傾斜は、典型的には、およそ10℃/minであり、アニーリング時間は、およそ1時間である。温度上昇は、有効温度が樹脂/炭素ガラス転移温度よりも下のままであるように制御される。
【0031】
高分子樹脂は、コールタール、フェノールホルムアルデヒド、ポリフルフリルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、及び/又はポリスチレン、その他から形成されてもよい。
【0032】
例として、マイクロエレクトロニクスの分野においてフォトリソグラフィステップのために通常使用される、市販製品AZ-4330、AZ-P4620(登録商標)(1-メトキシ-2-プロパノールアセタート、ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル、2-メトキシ-1-プロパノールアセタート、クレゾールノボラック樹脂に基づく)、OCG-825(3-エトキシプロピオン酸エチルに基づく)、SU-8 2000(シクロペンタノン、トリアリールスルホニウム/ヘキサフルオロアンチモン酸塩、炭酸プロピレン、エポキシ樹脂に基づく)などの、知られている感光性樹脂が使用されてもよい。
【0033】
様々な分野(航空学、海事、自動車、建設、その他)において様々な表面をコーティング及び保護するために提案される、エポキシ樹脂、実例としてエポキシノボラックエポン(Epoxy Novolac EPON)製品(登録商標)が、本発明によるプロセスのステップb)において、さらには使用されてもよい。
【0034】
樹脂を使用するとき、粘性樹脂層がアニーリング中に経ることになる収縮を考慮に入れることが、補剛膜3の、目標とされる厚さを得るのに十分な、粘性樹脂層の初期厚さを規定するために重要である。厚さ収縮は、典型的には70%~95%の間であり得る。炭素比率、すなわち、(補剛膜3に対応する)熱分解の後の高分子樹脂層の質量と、塗布された高分子樹脂層の初期質量との間の比率は、少なくとも5%、優先的には50%よりも大でなければならない。
【0035】
任意選択で、製造するプロセスは、ステップa)とステップb)との間に、初期基板1の前面1a及び/又は周辺部1cを研削して、前記面1aの表面粗さを低減する、及び/又は、前記基板1の厚さのばらつきを低減する、及び/又は、周辺部1cを一様化するステップa’)を含んでもよい。
【0036】
ステップa’)は、材料のおよそ数ミクロン~数十ミクロンの除去を伴う、機械的又は機械化学的薄化(研磨)を含んでもよい。
【0037】
本発明による製造するプロセスは、シード2を除去して、初期基板1の後面1bを自由にするステップc)を次いで含む(図1c)。
【0038】
シード2が黒鉛から作製されているとき、除去は、400℃よりも上の、優先的には550℃よりも上の温度において、酸素を豊富に含む大気(例えば空気)中で熱処置を付与することにより、黒鉛を燃焼することにより実行され得る。
【0039】
シード2を機械的に引き離すことを、シード2が黒鉛から作製されているか、それとも炭化ケイ素から作製されているかを問わず、例えば、シード2と初期基板1との間の界面における、又はその界面の近くでの、機械的応力の局限された付与により行うことが、さらには可能である。
【0040】
何らかの残留物が、シード2の除去の後に初期基板1の後面1bにおいて残っているならば、それらの残留物は、(それらの残留物が黒鉛から作製されているときは)燃焼し尽され、又は、(それらの残留物が黒鉛又はSiCから作製されているときは)研磨若しくはエッチングにより機械的若しくは化学的に除去され得る。
【0041】
この除去は、150mmの直径について最高で500μmであることがある、初期基板1の強い湾曲を典型的には生む。この湾曲は、第2の面1b(核形成粒子、小さい平均サイズ)と第1の面1aとの間の粒子サイズにおける差と関連付けられた応力に主に起因する。
【0042】
本発明の文脈において、補剛炭素膜3は、初期基板1を、初期基板1の前面1aにより、機械的に保持することによる、シード2の除去中の湾曲における増大を顕著に制限することを可能にする。補剛炭素膜3を付けられた初期基板1の湾曲は、150mmの基板直径について200μmを上回らず、さらに言えば、湾曲は、100μmよりも下に維持されさえする。これらの湾曲範囲において、初期基板1は、破損の、又は機器故障の何らのおそれもなく、標準的なライン及び機器において何らの問題もなく処理され得るものであり、これらの問題は、300μm(直径150mm)よりも大の湾曲について主に逢着される。
【0043】
最後に、製造するプロセスは、初期基板1の後面1bを薄化するステップd)を含む。薄化された初期基板1は、支持基板10を形成する(図1d)。
【0044】
ステップd)における薄化は、後面1bの機械的研削、機械的研磨、及び/又は機械化学的研磨により実行される。材料除去は、ステップd)の開始における初期基板1の厚さに依存して、及び当然ながら、支持基板10について目標とされる厚さに依存して、典型的には数十ミクロン~200μmの間である。
【0045】
薄化は、初期基板1が、初期基板1の薄化された後面1b’の平面において、±30%以内までの第1の平均粒子サイズに等しい第3の平均粒子サイズを有する厚さまで実行される。換言すれば、第1の平均サイズが例えば5μmであるならば、第3の平均サイズは、4μm~6μmの間であることを予期される。
【0046】
前面1aの平面における、又は、後面1bの平面における粒子サイズは、二重の母集団をなして分布しており、各ピークは、実質的にガウスの分布にしたがうということが生起することがある。第1の選択肢によれば、平均粒子サイズは、両方の母集団を含む総体的な平均をとることにより算出され、第1及び第3の平均サイズは、30%よりも多く異なるべきではない。第2の選択肢によれば、第1の2つの平均サイズ(前面側1aにおける二重の母集団に対応する)、及び、第3の2つの平均サイズ(後面側1bにおける二重の母集団に対応する)が考慮に入れられ、それらは、それぞれ、30%よりも多く互いと異なってはならない。
【0047】
ステップd)における薄化の後に、初期基板1の薄化された後面1b’は、前面1aの平均粒子サイズと30%未満だけ異なる平均p-SiC粒子サイズを有する。薄化された初期基板1(支持基板10を形成する)における残留応力は、それゆえ、小さい湾曲に適合し、製造するラインにおいて少なくとも管理しやすい。
【0048】
製造するプロセスは、例えばドライ又はウェット化学エッチングにより、補剛膜3を除去するステップe)を次いで含んでもよい(図1e)。この除去の後に、支持基板10は、支持基板10の容積部における低減された残留応力に起因して、(150mmの直径について)200μm未満の、又は100μm未満でさえある湾曲を有する。
【0049】
この局面において、支持基板10は、ステップd)の後の初期基板1の前面1a、薄化された後面1b’、及び縁部1cにそれぞれ対応する、第1の面10a、第2の面10b、及び縁部10cを有する。
【0050】
例として、350μm厚さ、及び、直径において150mmの支持基板を形成するために、500μmの初期基板1が、シード2において生出されることがあり、初期基板1は、約4μmの、初期基板1の前面1aにおける第1の平均p-SiC粒子サイズを有する。初期基板1の厚さ均一性を補正するためのステップが、例えば50μmの除去によって実行されてもよい。4μm補剛炭素膜3が、この前面1a上に形成される。黒鉛シード2の除去の後に、初期基板1の後面1bにおける第2の平均粒子サイズは、100nm未満であるが、初期基板1の湾曲は、補剛膜3の存在に起因して、150μmよりも下に維持される。初期基板1の後面1bにおける100μmの除去が実行され、およそ3μmの、薄化された後面1b’におけるp-SiCの第3の平均粒子サイズは、第1の平均粒子サイズの30%以内までの相等性の条件を満足させる。そうして、補剛膜3の除去の後に、支持基板10の湾曲は、200μm未満であり、複合構造100を製造するための後続のステップに適合する。
【0051】
任意選択で、ステップe)の後に、表面処置が支持基板10の第1の面10aに付与されることが、特に、この面10aがプロセスの後続のステップf)において複合構造100の薄層20を受けることを意図されるならば行われることがある。この表面処置は、第1の面10aの表面粗さに依存して、機械的研削、機械化学的研磨、又は、他の化学的洗浄作業を含んでもよい。
【0052】
支持基板10の第2の面10bが、薄層20を受けることを意図され、ステップd)が、十分に低いレベルの粗さ(20μm×20μmスキャンにおいて原子間力顕微鏡法により測定される、典型的には<1nm RMS)を達成しなかったならば、追加的な表面処置が、第2の面10bにさらには付与されることがある。
【0053】
複合構造100の後面を形成することを意図される支持基板10の面は、例えばおよそ10nm RMSの、より高い表面粗さを有することがある。
【0054】
製造するプロセスは、ステップd)の後に、又はステップe)の後に、支持基板10の多結晶構造を安定化するように、1500℃以上の、典型的には1500℃~1900℃の間の温度における熱処置も含んでもよい。さらに言えば、これらの温度範囲は、とりわけ複合構造の製造のために、プロセスにおいて後程付与される見込みが大きい。
【0055】
本発明による製造するプロセスのおかげで、マイクロエレクトロニクスの応用物のための複合構造の仕様に適合する機械的特性を有する支持基板10が、従来技術のプロセスにおいて実行されるように、p-SiCの非常に小さい有用な一部分を選択するために、80%よりも多く除去される、非常に厚い初期p-SiC基板を堆積させることの必要性なしに、単純な方式において得られることがある。本発明による製造するプロセスにおいて、形成される初期基板1の厚さは、1mm以下であり、初期基板1の前面1a、及び/又は、初期基板1の後面1bにおける材料除去は、初期厚さの70%未満であり、又は50%未満でさえあり、そのことは、材料及び技術的ステップにおける節減をもたらす。
【0056】
複合構造100の発現の文脈において、本発明による製造するプロセスは、分子接着結合に基づいて、単結晶炭化ケイ素から作製された加工層(working layer)20を支持基板10へと転写するステップf)により継続させられてもよい(図1f)。
【0057】
ここでは詳細に説明されないことになる、層転写を実行するための、従来技術において知られている様々な選択肢が存する。
【0058】
好まれる様式によれば、プロセスのステップf)は、スマートカット(登録商標)プロセスの原理による軽化学種の注入を伴う。
【0059】
第1の段階f1)において、単結晶炭化ケイ素ドナー基板21が用意され、ドナー基板21から、加工層20が得られることになる(図2a)。ドナー基板1は、優先的には、100mm、150mm、200mmの、又は300mmでさえある直径(支持基板10の直径と同一の、又は非常に類似している)を伴う、及び、典型的には300μm~800μmの間の厚さを伴うウエハの形式におけるものである。ドナー基板は、前面21aと、後面21bとを有する。前面1aについて選定される表面粗さは、有利には、20μm×20μmスキャンにおいて原子間力顕微鏡法(AFM)により測定される、1nm RMS未満であり、又は0.5nm RMS未満でさえある。ドナー基板21は、複合構造100の加工層20上及び/又は内に発現されることになる構成要素の要件に依存して、ポリタイプ4H又は6Hのものであってもよく、n又はp型ドーピングを有してもよい。
【0060】
第2の段階f2)は、ドナー基板21の前面21aとともに、転写されることになる加工層20の境を定める、埋め込まれた脆弱平面(buried fragile plane)22を形成するための、ドナー基板21への軽化学種の導入に対応する(図2b)。
【0061】
軽化学種は、優先的には水素、ヘリウム、又は、これらの2つの化学種の共注入であり、加工層20の、目標とされる厚さと合致する、所与の深さまでドナー基板21へと注入される。これらの軽化学種は、所与の深さの辺りに、ドナー基板21の自由表面21aに平行な、すなわち、図において平面(x,y)に平行な薄層として分布している微小空洞を形成することになる。この薄層は、簡潔さのために、埋め込まれた脆弱平面22と呼称される。
【0062】
軽化学種の注入のエネルギーは、所与の深さに達するように選定される。例えば、水素イオンは、およそ100nm~1500nmの厚さを伴う加工層20の境を定めるために、10keV~250keVの間のエネルギーにおいて、及び、516/cm~117/cmの間の線量において注入されることになる。保護層が、イオン注入ステップよりも前に、ドナー基板21の前面21aへと堆積させられ得るということが留意されるべきである。この保護層は、例えば酸化ケイ素又は窒化ケイ素などの材料から組成されてもよい。保護層は、次の段階よりも前に除去される。
【0063】
任意選択で、中間層4が、軽化学種の導入の第2の段階f2)の前又は後に、ドナー基板21の前面21a上に形成され得る(図3b、3c、3d、3e)。この中間層4は、半導体材料、例えばシリコン若しくは炭化ケイ素から、又は、タングステン、チタン、その他などの金属材料から作製されてもよい。中間層4の厚さは、典型的には数ナノメートル~数十ナノメートルの間に、有利には制限される。
【0064】
中間層4が段階f2)の前に形成されるとき、軽化学種の注入エネルギー(及び潜在的には線量)は、この追加的な層の横断について調整されることになる。中間層4が段階f2)の後に形成されるとき、バブリングサーマルバジェット(bubbling thermal budget)よりも低いサーマルバジェットを付与することにより、この層を形成するように注意がなされることになり、前記バブリングサーマルバジェットは、埋め込まれた脆弱平面22における微小空洞の過度の成長及び加圧に起因する、ドナー基板21の表面におけるブリスタの出現に対応する。
【0065】
転写ステップf)は、ドナー基板21を、ドナー基板21の前面側21aにおいて、支持基板10と、支持基板10の第1の面側10a、又は、支持基板10の第2の面側10bにおいて、分子接着結合により、結合界面30に沿って取り合わせる第3の段階f3)を次いで含む(図2c)。
【0066】
任意選択で、中間層4’が、取り合わせ段階f3)よりも前に、支持基板10の、取り合わせられることになる面において、さらには堆積させられてもよく(図3d、3e)、中間層4’は、ドナー基板21について言及された中間層4と同じ性質のものである、又は、中間層4と異なる性質のものであるように選定されてもよい。中間層4、4’は、取り合わせられることになる2つの基板21、10のうちの一方又は他方においてのみ、任意選択で堆積させられてもよい。
【0067】
中間層(複数可)の目的は、本質的には、2つの直接的に取り合わせられたSiC表面の事例においてよりも低い温度における共有結合の形成に起因して、(とりわけ1100℃よりも下の温度範囲において)結合エネルギーを高めることであり、この(これらの)中間層(複数可)の別の利点は、結合界面30の垂直電気伝導を改善することであることがある。
【0068】
考えられる変形例によれば、中間層は、支持基板10の第1の面10aにおいて保たれている補剛炭素膜3により形成されてもよい(図3a、3c)。この事例において、本発明による製造するプロセスのステップe)は実行されず、取り合わせられることになる支持基板10の面は、膜3を付けられた、支持基板10の第1の面10aである。最終的な複合構造100において、補剛膜3を通る垂直電気伝導を助長するために、ダイヤモンドタイプ結晶学的構造を伴う炭素膜が優遇されることになる。
【0069】
任意選択で、追加的な炭素膜5が、なおも取り合わせ段階f3)よりも前に、取り合わせられることになる面の反対の、支持基板10の面において配置されている(図3e)。追加的な炭素膜5の特性は、例えば、本説明において先に、補剛膜3について提案された特性から選定されてもよい。
【0070】
この追加的な膜5の存在は、それぞれ、ドナー基板21の、及び支持基板10の、取り合わせられることになる面における中間層4、4’との組み合わせにおいて、図3eにおいて例示されているものの、この追加的な膜5は、言及された可能な構成、とりわけ、図3a~3cにおいて例示される構成のいずれにおいても実現されることがある。
【0071】
追加的な膜5は、後程の時間において、優先的には、複合構造100が、複合構造100の製造のために、又は、前記構造100上及び/若しくは内の構成要素の製造のために要される、1400℃よりも上の温度における任意の熱処置を経た後に除去されてもよい。
【0072】
取り合わせ段階f3)の説明に戻ると、及び、本質上よく知られているように、直接分子接着結合は、結合が、取り合わせられた表面同士の間で原子レベルにおいて確立されるので、接着材料を要さない。いくつものタイプの分子接着結合が実在し、それらのタイプは、とりわけ、それらのタイプの、温度、圧力、若しくは大気条件、又は、表面を接触している様態に至らせるよりも前の処置において異なる。取り合わせられることになる表面の事前のプラズマ活性化を伴う、又は伴わない、室温における結合、原子拡散結合(atomic diffusion bonding)(ADB)、表面活性化結合(surface activated bonding)(SAB)、その他について言及することができる。
【0073】
取り合わせ段階f3)は、取り合わせられることになる面21a、10aを接触している様態に至らせるよりも前に、化学的洗浄(例えば、RCA洗浄)の、及び、表面活性化(例えば、酸素又は窒素プラズマの手段による)の従来のシーケンス、又は、結合界面30の品質(低い欠陥密度、高い接着エネルギー)を高める公算が大きい、他の表面準備(スクラビングなど)を含んでもよい。
【0074】
最後に、第4の段階f4)が、支持基板への加工層20の転写につながる、埋め込まれた脆弱平面22に沿った分離を伴う(図2d)。
【0075】
埋め込まれた脆弱平面22に沿った分離は、800℃~1200℃の間の温度における熱処置を付与することにより通常実行される。そのような熱処置は、空洞及び微小亀裂が、埋め込まれた脆弱平面22において発現することを引き起こし、それらの空洞及び微小亀裂が、気体状の形式において存在する軽化学種により加圧されることを引き起こし、ついには、割断が、前記脆弱平面22に沿って伝搬する。代わりに、又は連帯的に、機械的応力が、分離につながる割断を伝搬させる、又は、その割断を機械的に伝搬させることを支援するように、結合された取り合わせ部に、及び特に、埋め込まれた脆弱平面22に付与され得る。この分離の結末では、一方では、支持基板10と、単結晶SiCから作製された、転写された加工層20とを含む半導体構造100、及び、他方では、ドナー基板の残部21’が得られる。加工層20のドーピングのレベル及びタイプは、ドナー基板21の特質の選定により規定され、又は、半導体層をドープするための知られている技法によって後で調整され得る。
【0076】
加工層20の自由表面20aは、分離の後は通常粗く、例えば、自由表面20aは、5nm~100nm RMS(AFM、20μm×20μmスキャン)の間の粗さを有する。洗浄及び/又は平滑化段階が、良好な表面仕上げ(典型的には、20μm×20μm AFMスキャンにおける、数オングストロームRMS未満の粗さ)を回復するように付与され得る。特に、これらの段階は、加工層20の自由表面の機械化学的平滑化処置を含んでもよい。50nm~300nmの間の除去は、前記層20の表面仕上げを効果的に回復することを可能にする。前記段階は、少なくとも、1300℃~1800℃の間の温度における熱処置も含んでもよい。そのような熱処置は、残留軽化学種を加工層20から取り除くために、及び、加工層20の結晶格子の再配置構成を助長するために付与される。熱処置は、結合界面30を強化することをさらには可能にする。熱処置は、薄層20における炭化ケイ素のエピタキシも含む、又は、そのエピタキシに対応することがある。
【0077】
最後に、転写ステップf)は、新しい複合構造100のためのドナー基板21としての再使用のために、ドナー基板の残部21’を修整するステップを含んでもよいということが留意されるべきである。複合構造100に付与されるものと類似している、機械的及び/又は化学的処置が、残っている基板21’の前面21’aに付与されてもよい。
【0078】
得られた複合構造100は、加工層20の品質を改善するために、又は、前記層20上及び/若しくは内の構成要素を製造するために付与されることがある、非常に高い温度の熱処置に関して、きわめて堅牢である。
【0079】
本発明による複合構造100は、1つ(又は複数)の高電圧のマイクロエレクトロニクスの構成要素(複数可)、実例としてショットキーダイオード、MOSFETトランジスタ、その他の生出に特に適する。より一般的には、複合構造100は、優れた垂直電気伝導、良好な熱伝導性を可能とする、及び、高品質c-SiC加工層をもたらす、電力マイクロエレクトロニクスの応用物に適する。
【0080】
言うまでもなく、本発明は、説明された実施形態及び例に制限されず、実現変形例が、特許請求の範囲により定義されるような本発明の範囲から逸脱することなく、それらの実施形態及び例に応用されてもよい。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
【国際調査報告】