(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】貯蔵および送達容器ならびに関連方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/22 20060101AFI20240920BHJP
B01D 71/70 20060101ALI20240920BHJP
B01D 71/16 20060101ALI20240920BHJP
B01D 71/36 20060101ALI20240920BHJP
B01D 71/32 20060101ALI20240920BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20240920BHJP
B01D 71/06 20060101ALI20240920BHJP
B01D 71/64 20060101ALI20240920BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20240920BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20240920BHJP
B01D 71/52 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D71/70 500
B01D71/16
B01D71/36
B01D71/32
B01D71/02 500
B01D71/06
B01D71/64
B01D71/68
B01D71/26
B01D71/52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516993
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 US2022043680
(87)【国際公開番号】W WO2023043936
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】スターム, エド エー.
(72)【発明者】
【氏名】デプレ, ジョー アール.
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006JA52Z
4D006JA63Z
4D006JA67Z
4D006KB12
4D006KE11R
4D006MA01
4D006MA03
4D006MB04
4D006MC01
4D006MC02
4D006MC03
4D006MC05
4D006MC07
4D006MC18
4D006MC22
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4D006MC30
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4D006MC62
4D006MC65
4D006PA02
4D006PB20
4D006PB63
4D006PB65
4D006PB66
4D006PB68
4D006PB70
4D006PC01
(57)【要約】
ガス混合物を、ガスのうちの1つの、膜を通る優先的な流れを可能にする膜と接触させて、混合物から1つの構成ガスを分離することによって、少なくとも2つのガスを含有するガス混合物を処理するための方法、システム、および装置が記載される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬ガスと希釈ガスとを含む、貯蔵容器内に含有された貯蔵ガス混合物を処理する方法であって、
貯蔵ガス混合物を、試薬ガスに対する希釈剤ガスの、分離膜を通る優先的な流れを可能にする分離膜と接触させることと、
貯蔵ガス混合物の希釈ガスの一部を分離膜を通して流して、貯蔵ガス混合物と比較して試薬ガスの濃度が増加した濃縮試薬ガスを生成することと
を含む、方法。
【請求項2】
分離膜が、透過物側および保持物側を有しており、方法が、
貯蔵ガス混合物を、保持物側圧力で保持物側と接触させることと、
保持物側圧力より低い透過物側圧力を透過物側に適用して、希釈ガスを前記膜を通して流し、濃縮ガス混合物を保持物側に生成することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
貯蔵ガス混合物が、40%未満の試薬ガスを含み、
濃縮ガス混合物が、少なくとも60%の試薬ガスを含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
濃縮ガス混合物が少なくとも85%の試薬ガスを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
試薬ガスが水素化物であり、希釈ガスが水素である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
試薬ガスが、CH
4、NH
3、H
2O、SiH
4、PH
3、H
2S、GeH
4、Ge
2H
6、AsH
3、H
2S、H
2Se、H
2Te、C
2H
2、P
2H
4、SbH
3およびB
2H
6から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
希釈ガスが、窒素、水素、キセノンおよびヘリウムから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
分離膜が、ポリジメチルシロキサン、アセテートセルロース、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロ化スルホカチオナイト)、ナノ粒子シリカ、ゼオライト、金属有機構造体、ナノポーラスカーボン、またはポロブスカイト(porovskite)、貴金属、ポリイミド、ポリスルホン、セルロースアセテート、ポリアラミド、ポリエチレンまたはポリフェニレンオキシドを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
貯蔵ガス混合物が貯蔵容器内に含有され、方法が、
貯蔵容器から分離膜を通して希釈ガスを除去して、貯蔵容器内に濃縮試薬ガスを生成すること
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
貯蔵ガス混合物が、第1の体積を有する第1の貯蔵容器内に含有され、方法が、
貯蔵ガス混合物の一部を第1の貯蔵容器から除去し、前記一部を第1の貯蔵容器よりも小さい体積を有する第2の貯蔵容器に添加することと、
第2の貯蔵容器から分離膜を通して希釈ガスを除去して、第2の貯蔵容器内に濃縮試薬ガスを生成することと
を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
貯蔵ガス混合物が、貯蔵容器内に含有され、方法が、
貯蔵ガス混合物の流れを、貯蔵容器から、濃縮器であって、
透過物側および保持物側を有する分離膜と、
保持物側の流路と、
透過物側の透過物空間と、
を備える濃縮器へ送達することを含み、
方法が、
貯蔵ガス混合物を流路を通して流すこと、
透過物空間内の圧力を流路内の圧力よりも低い圧力まで減圧して、希釈ガスを膜を通過させて透過物空間に流入させて、流路内に濃縮試薬ガスを生成すること
を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
濃縮試薬ガスが、少なくとも90%の試薬ガスを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
濃縮ガス混合物を半導体製造ツールに送達することを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
化学蒸着、原子層堆積、およびエピタキシャル成長から選択される方法における使用のための濃縮ガス混合物を、半導体製造ツールに送達することを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
試薬ガスを送達するためのシステムであって、
貯蔵容器内部と貯蔵容器内部に接続された開口部とを備える、貯蔵容器、
より大きな動力学的直径を有するガスに対する、より小さな動力学的直径を有するガスの、分離膜を通る優先的な流れを可能にする、貯蔵容器内部に接続された分離膜
を備える、システム。
【請求項16】
バルブと、
ガスが容器内部から分離膜を通り、バルブを通って容器外部に流れるのを可能にする流通路と
を備える貯蔵容器を備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
流通路に接続された圧力調整器を備え、分離膜が、流通路内で圧力調整器とバルブとの間に配置される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
試薬ガスを貯蔵し、試薬ガスをプロセスツールに送達するように適合されたバラストシリンダである、第1の体積を有する貯蔵容器、
第1の体積よりも大きい第2の体積を有する第2の貯蔵容器、
貯蔵容器を第2の貯蔵容器に接続して、第2の貯蔵容器から貯蔵容器の内部へのガスの流れを可能にするガス流導管
を備える、請求項15から17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
透過物側と保持物側とを有する、分離膜、
流路入口と、流路出口と、保持物側と接触する流路空間とを含む保持物側の流路、および
貯蔵容器内部と流路入口とを接続するガス流導管
を備える濃縮器を備える、請求項15から18のいずれかに記載のシステム。
【請求項20】
分離膜が、ポリジメチルシロキサン、アセテートセルロース、ポリテトラフルオロエチレンまたはパーフルオロ化スルホカチオナイト、ナノ粒子シリカ、ゼオライト、金属有機構造体、ナノポーラスカーボン、またはポロブスカイト、貴金属、ポリイミド、ポリスルホン、セルロースアセテート、ポリアラミド、ポリエチレン、またはポリフェニレンオキシドを含む、請求項15から19のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ガス混合物を、ガスのうちの1つの、膜を通る優先的な流れを可能にする膜と接触させることによって、少なくとも2つのガスを含有するガス混合物を処理するための方法、システム、および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス状原料(「試薬ガス」と呼ばれることもある)は、製薬産業、エレクトロニクス産業(例えば、マイクロ電子デバイスおよび半導体デバイスの準備において)、および石油化学産業を含む様々な産業および産業用途で必要とされている。
【0003】
試薬ガスの産業用途のいくつかの例には、とりわけ、イオン注入、エピタキシャル成長、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、メタライゼーション、物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積、プラズマ堆積、フォトリソグラフィー、洗浄、およびドーピングなどの半導体材料またはマイクロ電子デバイスを処理するためのものが含まれる。これらのプロセスは、とりわけ、半導体、マイクロ電子、光起電力、ならびにフラットパネルディスプレイデバイスおよび製品を製造するために使用され得る。
【0004】
半導体およびマイクロ電子デバイスの製造に使用される試薬ガスの例には、とりわけ、シラン(SiH4)、ゲルマン(GeH4)、アンモニア(NH3)、ホスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)、ジボラン(B2H6)、スチビン(SbH3)、硫化水素(H2S)、セレン化水素(H2Se)、テルル化水素(H2Te)、ハロゲン化物(塩素、臭素、ヨウ素、およびフッ素)化合物が含まれる。
【0005】
試薬ガスの多くは、高度な注意および多くの安全上の注意を払って貯蔵、輸送、取り扱い、および使用される。多くの水素化物は、高度に反応性で可燃性であり、潜在的に空気中で自発的に可燃性であるか、または爆燃を受ける。自然発火または爆燃のリスクを低減するために、反応性の高い多くの試薬ガスが貯蔵され、「安定剤」ガス(別名「希釈剤」または「希釈ガス」)と共に実質的に希釈された形態で輸送される。試薬ガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム、または水素などの「安定化」ガスと共に、しばしば加圧下で貯蔵容器内に含有され、高反応性試薬ガスの濃度を希釈して発火または爆燃のリスクを低減する。
【0006】
水素化物などの高反応性試薬ガスを含む試薬ガスを貯蔵および輸送するための典型的なシステムは、不活性「安定化」ガスで希釈された試薬ガスを含有する高圧ガスシリンダを含む。安定化ガスの存在は、爆燃、爆発、分解、または、取扱者、輸送者、もしくは倉庫貯蔵設備などに脅威をもたらす可能性がある他の不安定様式の可能性を低減する。例えば、水素は反応性水素化物の安定化ガスであり得る。
【発明の概要】
【0007】
試薬ガスを安定化ガスとの混合物の一部として貯蔵および取り扱うためのシステムは、効果的であり、効率的であり、許容可能に安全であることが示されているが、試薬ガスと共に送達される安定化ガスの存在は、送達される試薬ガスの有用性および価値を低下させる。
【0008】
貯蔵された試薬ガスは、意図的に不純であり、実質的に希釈されている。1つの重大な欠点として、貯蔵された希釈ガスは濃度が低下し、これにより、特定のタイプの処理、例えばイオン注入、化学蒸着、原子層堆積などの堆積プロセスに対する試薬ガスの有用性のレベルが低下する可能性がある。大量の安定化ガスの存在は、希釈された原料ガスの有用性および価値を低下させる。所望の安全目的を提供するために、希釈ガスは、典型的には、貯蔵ガス混合物中に少なくとも50%の量で存在する。しかし、多くの堆積技術(化学蒸着、原子層堆積)およびイオン注入などのいくつかのプロセスは、とりわけ、50%より高い濃度を有する試薬ガスを使用することによって、より高い効率またはより良好な製品品質で実行することができる。様々な高度な堆積技術、例えば、高アスペクト比の開口部を有する表面上に材料が堆積されることを必要とする3D NANDメモリデバイスを形成するために使用される堆積工程のために、50%を超える濃度(例えば、少なくとも60、70、80、または90%)を有する試薬ガスは、より良好に堆積された層、例えば、三次元の高アスペクト比の表面上により均一でより均等に堆積された堆積層を生成することができる。
【0009】
さらに、希釈される貯蔵ガスは、貯蔵容器から送達されるときに不均一性を被る可能性がある。理由としては、貯蔵中の貯蔵ガス混合物の潜在的な不安定性;貯蔵容器にガスを添加したときおよび混合物を送達したときの貯蔵ガス混合物中の未知の不純物レベル;ならびに貯蔵ガスの知られていない貯蔵期間が挙げられる。貯蔵期間中、貯蔵ガス混合物の化学物質含有量は、劣化などによって変化し得る。ガス混合物のユーザは、変化の程度を認識しないが、その変化は、貯蔵試薬ガスの性能に大きく影響し得る。特定のタイプの堆積プロセスでは、ガス混合物中の試薬ガスの濃度が予想よりも低いと、堆積プロセスの収率に大きく影響する可能性がある。問題は複雑であり、収率が低下した理由はすぐには明らかにならず、その結果、機械の停止時間が発生し、非常にコストがかかる可能性がある。
【0010】
半導体およびマイクロ電子デバイスを製造するプロセスは、インプラント濃度、フィルム層厚さ、または別の製品特徴であってもよい、処理された製品の製品特徴の非常に正確な制御をもたらすために、原料の化学的構成の可能な最高レベルの制御を必要とする。そのような製品特徴は、半導体ウェハまたはマイクロチップもしくは他のマイクロ電子デバイスなどのウェハ構成要素の電気的特性などの製品の機能を制御または影響する。製品を生産するために使用される原材料の濃度の最小の変動でさえ、必要な原材料の均一性をもたらすために追加のプロセス制御手段を必要とする可能性があり、あるいは品質の低下または組立速度の低下をもたらす可能性がある。原料として使用される試薬ガスの均一性を改善することにより、製造工程のプロセス制御を改善し、品質を改善し、または処理された製品の品質の一貫性を改善することが可能であり得る。
【0011】
一態様では、本発明は、貯蔵容器内に含有された貯蔵ガス混合物を処理する方法に関する。貯蔵ガス混合物は、試薬ガスおよび希釈ガスを含む。この方法は、貯蔵ガス混合物を、試薬ガスに対する希釈ガスの、分離膜を通る優先的な流れを可能にする分離膜と接触させることと;貯蔵ガス混合物の希釈ガスの一部を分離膜を通して流して、貯蔵ガス混合物と比較して試薬ガスの濃度が増加した濃縮試薬ガスを生成することとを含む。
【0012】
別の態様では、本発明は、試薬ガスを送達するためのシステムに関する。このシステムは、貯蔵容器内部と、貯蔵容器内部に接続された開口部とを備える、貯蔵容器、および、より大きな動力学的直径を有するガスに対する、より小さな動力学的直径を有するガスの、分離膜を通る優先的な流れを可能にする、貯蔵容器内部に接続された分離膜を備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ガス分子のパーミアンスを、分子の動力学的直径として測定されるサイズに関連付けるグラフを示す。
【
図3B】説明される方法で使用される例示的な貯蔵容器構成要素を示す。
【
図3C】説明される方法で使用される例示的な貯蔵容器構成要素を示す。
【
図3D】説明される容器の有用な流れ制御構成要素の一例を示す。
【
図4】説明される貯蔵および送達方法の工程の一例を示す。
【
図5】説明される貯蔵および送達方法の工程の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
すべての図は概略的なものであり、必ずしも縮尺通りではなく、例示的なものであり、本明細書を限定するものと見なされるべきではない。
【0015】
以下では、混合物中の1つのガスを混合物から分離する目的で、すなわち、混合物中の1つのガスを、同様にガス混合物中にある1つまたは複数の異なるガスから分離するために、ガス混合物を処理するための方法、システム、および装置について説明する。
【0016】
ガス混合物は、少なくとも2つの異なるガスを含有し、プロセスは、ガス混合物の成分ガスをガスの混合物から分離するのに有効な膜とガス混合物を接触させることを含む。膜は、ガス混合物と接触したときに、混合物中の1つのタイプのガス分子が膜を通って流れることをより容易にし、ガス混合物の異なるガス分子が膜を通って流れることをより容易にしないタイプのものである。膜は、ガス混合物に同様に含有される異なるガスと比較して、ガス混合物のガスのうちの1つの、膜を通る優先的または選択的な流れを可能にする。
【0017】
2または複数のガスの混合物に含有される1つのタイプのガスの、膜を通る優先的な流れ(または「選択的な流れ」)を可能にする特性を有する膜が知られている。例示的な膜は、異なるガス状分子が異なる速度で通過し得るか、または全く通過しない合成透過性膜(例えば、フィルムまたはバリア)である。膜は、多孔質、ナノポーラス状、高分子であってもよく、異なるタイプのガス分子は、ガス分子のサイズ、拡散性、または溶解度に応じて異なる速度で膜を通過してもよい。
【0018】
分離を実施するのに有用な膜(本明細書では「分離膜」と呼ばれることもある)は、任意の有効な機構によってガス混合物のガス分子を分離するように機能することができる。本明細書は、分離膜が、異なるタイプのガス分子の、膜を通る優先的な(すなわち、選択的な)流れを可能にするかまたは引き起こす方法によって限定されない。
【0019】
1つの可能な分離機構は、異なるサイズのガス分子が特定のサイズまたは最大サイズの分離膜の開口部を物理的に通過する差に基づいてもよい。特定のタイプのガス分子が分離膜を通過する程度は、分離膜の開口部のサイズに対するガス分子の有効サイズに依存し得る。ガス分子の有効サイズは、ガス分子の「動力学的直径」として特徴付けることができる。有用な分離膜は、特定の最大サイズ(例えば、動力学的直径)のガス分子が分離膜の開口部を容易に通過することを可能にし得るが、比較的より大きな動力学的直径を有するガス分子は、分離膜を通過することが実質的にまたは完全に防止される。そのような膜は、より大きな動力学的直径を有するガス分子と比較して、より小さな動力学的直径を有するガス分子の、膜を通る「優先的な流れ」または「選択的な流れ」を示すと言われる。
【0020】
図1は、例示的な分離膜を通る異なるサイズ(動力学的直径に基づく)のガス分子のパーミアンス値の例を示す。パーミアンスは、所与の流体(気体または液体)による所与の分離膜の所与の厚さを通る伝達率である。化合物(例えば、ガス種)のパーミアンスは、分離膜のタイプに依存し、特定の条件セットでの対にされたガスおよび膜の特性である。
図1のグラフは、厚さ3.8ミクロンの無機シリカライト-2ゼオライト膜を通る観測されたパーミアンスのデータを示す。データは、一般に、より小さい動力学的直径を有する分子が、より大きい動力学的直径を有する分子と比較して、膜をより容易に通過する、すなわち、より高いパーミアンスを有することを示す。異なる分子のパーミアンスまたは「透過速度」は、ガス分子の動力学的直径に依存するが、場合によっては拡散性、ガス溶解度、膜の厚さ、および温度(場合によってはある程度までガス圧による)を含み得る因子にも依存する。このデータは、9:1または13:1という高い選択ガス対間の選択比を示唆している。(Chemistry Letters 2015,44,1592-1594)。
【0021】
「選択性」または「選択比」は、ガス混合物中の第2のガスのパーミアンスに対するガス混合物中の1つのガスのパーミアンスの比を指す。説明される方法の例では、ガス混合物中の希釈ガス(または安定化ガス)である第1のガスの、試薬ガスである第2のガスに対する選択比は、少なくとも3、5、10、または15であり得、これは、第1の(安定化または希釈剤)ガスのパーミアンスが、第2の(試薬)ガスのパーミアンスの少なくとも3、5、10、または15倍であり得ることを意味する。
【0022】
分離膜の様々な例が以前に説明されており、不純物を非常に低濃度で含有するガスから不純物を除去するための特定の分離膜の使用が説明されている。例えば、Vorotyntsev,Vladimir M.,et al.,Germane high purification by membrane gas separation,Desalination 200(2006)232-233;Vorotyntsev,V.M.,et al.,High purification of substances by a gas separation method,Desalination 240(2009)301-305を参照されたい。Vorotyntsevの論文は、高純度ガス流(例えば、純度99%超)から微量レベルの夾雑物を除去するための膜分離に焦点を当てているが、これらの論文に記載されている膜は、不純物の典型的な量よりも高い濃度の2つのガス、例えば両方ともガス混合物の少なくとも5、10、20、または30%の濃度で存在する2つのガスを含有するガス混合物からガスを分離するために、本明細書の方法において有用であり得る。これらのタイプのガス混合物については、同じまたは類似のタイプの膜が分離方法において使用され得るが、場合により、膜を通る安定化ガスのパーミアンスを増加させるため、または試薬ガスに対する安定化ガスまたは希釈ガスのより速い速度(より高いパーミアンス)を可能にするために膜の選択性を増加させるために、1つまたは複数の調整されたプロセス特徴を有する。調整され得るプロセスの特徴には、とりわけ、膜の厚さ、ガス温度、ガス流量が含まれる。
【0023】
分離膜は、任意の有用な材料から作製されてもよく、従来、薄い多孔質シートもしくはフィルム構造、または中空管の形態である。多くの分離膜は高分子であり、ポリジメチルシロキサン、アセテートセルロース、ポリテトラフルオロエチレンまたはパーフルオロ化スルホカチオナイト(perfluorinate sulfocationite)などの高分子から形成される。他の例は、セラミック材料から形成されてもよく、または結晶性ゼオライト、または金属有機構造体、ナノ粒子シリカ、ナノポーラスカーボン膜、ペロブスカイト、貴金属、ポリイミド、ポリスルホン、セルロースアセテート、ポリアラミド、ポリエチレン、ポリフェニレンオキシドなどから形成されたフィルムの形態であってもよい。分離膜は市販もされている。市販の膜の例としては、とりわけ、Air Products’(PRISM Membranes)によって販売されているもの、Fuji Chemicals(FUJIFILM)によって販売されているもの、ならびにIGS,Praxair,Air Liquide,Parker Gas Separation,Ube,NATCO,Kvaernerによって販売されている他のものが挙げられる。
【0024】
説明されるプロセスのガス混合物は、任意の2つのガスの混合物であり得、ガスのうちの1つは、サイズ(例えば、動力学的直径)、化学的性質、またはガスの分子が第1の通過速度で分離膜を通過することを可能にする他の物理的もしくは化学的特性を有し、一方、ガス混合物中の第2のガスは、ガスが分離膜を全く通過することを可能にしない、または第2のガスが第1の通過速度よりも遅い通過速度で膜を通過することを可能にする特性を有する。
【0025】
有用な分離膜は、ガス混合物からガスを少なくとも部分的に分離するのに有効なものである。膜は、特定のタイプまたはサイズを有するガス混合物のすべてのガス分子が膜を通過することを可能にする必要はなく、異なるサイズまたはタイプのガス混合物中のすべてのガス分子が膜を完全に通過することを防止する必要はない。膜が、ガス混合物の異なるガスと比較して、膜を通るガス混合物の1つのガスのより容易な通過(より高いパーミアンス)を可能にする場合、膜は分離膜として有効であり得る。説明される特に有用または好ましい方法では、ガス混合物の1つのタイプのガス分子(例えば、希釈ガスまたは安定化ガス)は、ガス混合物の第2のガス分子(例えば、試薬ガス)が膜を通過する速度の少なくとも3、5、10、15、25、30、50、または100倍の速度(パーミアンス)で膜を通過してもよく、この速度はガス混合物中の2つの個々のガスの濃度とは無関係である。例えば、これは、膜の反対側が減圧状態で、膜と接触するガス混合物中に2つの異なるタイプのガス分子が等しい濃度で存在する場合、第1の分子は、第2のガス分子が膜を通過する速度の少なくとも3、5、10、15、25、30 50、または100倍である膜を通過する速度(パーミアンス)を有することを意味する。
【0026】
図2は、2つ(またはそれを超える)タイプの構成ガスを含有するガス混合物から1つのタイプのガス(「構成ガス」)を分離する、すなわち少なくとも部分的に分離するために分離膜を使用する方法を概略的に示す。
図2に示すように、ガス混合物(供給物)20は、2つの異なるサイズのガス分子として示される少なくとも2つの異なるタイプのガスを含有する。第1のタイプのガスは、供給物(ガス混合物)20のより大きな球によって表される比較的より大きなガス分子で作られる。第2のタイプのガスは、ガス混合物20のより小さな球によって表される比較的より小さなガス分子で作られる。より大きな分子の第1のガスは、試薬ガスなどの高価値ガスであってもよい。より小さい分子の第2のガスは、第1のガスとは異なるガスであってもよく、例えば希釈ガスであってもよい。
【0027】
ガス混合物20は、ガス貯蔵またはガス流システムの供給物側空間8に含有され、ガス混合物20は、分離膜30の「供給物側」(または「内側」または「保持物側」)表面10と接触する。
図2では、ガス混合物20は、供給物側空間8のより高いガス圧(左)からより低いガス圧(右)によって駆動される方向など、矢印の方向(左から右)の流れを示すように示されている。分離膜30の供給物側表面10を通過する(それに沿ってまたはそれを超える)ガス混合物20のこの流れは任意選択であり、必須ではない。代替の方法およびシステム(例えば、
図3Bおよび
図3Cを参照)では、ガス混合物20は、分離膜30の供給物側10と静的に接触してもよい。
【0028】
さらに
図2を参照すると、供給物側表面10の反対側の膜30の第2の側には、透過物側表面12および透過物側空間14がある。使用時に、透過物空間14内のガス圧は、供給物空間8内のガス圧に対して低下する。ガス混合物の第2のガスは、より大きな第1のガスと比較して、第2のガスが膜30をより容易に通過することを可能にするタイプまたはサイズ(例えば、動力学的直径)である。透過物空間14に存在する減圧により、第2のガスの分子の少なくとも一部は、供給物側空間8から透過物空間14に膜30を通過して、非常に高濃度の第2のガス、例えば少なくとも80、90、95、99、または99.5%の第2のガスを含有するガス状透過物16を形成する。供給物空間8内では、第2のガスの分子の少なくとも一部が供給物20から除去され、保持物(18)が、残っている第1のガスの分子および場合によっては一部残っている第2のガスの分子から形成される。保持物(18)は、元の供給物20に対して第2のガスの濃度が低下しており、元の供給物20に対して第1のガスの濃度が高くなっている。
【0029】
ガス混合物中の異なるガスのタイプは、説明される分離膜によって効果的に分離され得る任意の2つの異なるタイプのガスであり得る。特定の具体的な用途例では、ガス混合物は、ガス混合物を含有、出荷、貯蔵、取り扱い、または分配するために使用され得る単一の貯蔵容器内に混合物(「貯蔵ガス混合物」)として一緒に貯蔵された2つの異なるガスの組み合わせであり得る。ガスの1つは、産業に有用な「高価値」ガス(例えば、本明細書では「試薬ガス」)であり得る。第2のガスは、例えば、安全上の理由から高価値ガスを希釈するために、高価値ガスと共に貯蔵容器内に含有されるガスとすることができる。貯蔵ガス混合物の2つの異なるガスのそれぞれは、原料試薬ガスの不純物と考えられるガスの量よりも多い量で混合物中に存在することができ、例えば、各ガスは、体積で0.01、0.5、または1%より多い量で存在することができる。
【0030】
広範囲のガス状原料が、多くの異なる産業および産業用途において試薬ガスとして使用され得る。いくつかの例には、医薬品を製造するプロセス、石油化学産業で使用されるプロセス、および半導体材料またはマイクロ電子デバイスを製造するプロセスが含まれる。半導体材料またはマイクロ電子デバイスを製造するためのプロセスの例には、とりわけ、イオン注入、エピタキシャル成長、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、メタライゼーション、物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積、プラズマ堆積、フォトリソグラフィー、洗浄、およびドーピングが含まれ、これらの使用は、とりわけ、マイクロチップ、光起電力、ならびにフラットパネルディスプレイデバイスおよび製品を含む半導体およびマイクロ電子デバイスを製造するための方法に含まれる。
【0031】
本明細書に従って有用な試薬ガスの例には、高反応性無機水素化物、ハロゲン化物、ハロゲン化物化合物、および本明細書に記載の希釈ガス(または「安定剤ガス」)として機能する異なるガスと組み合わせて希釈状態で望ましく貯蔵され得る他のガスが含まれる。試薬ガスの具体例には、半導体材料、マイクロ電子デバイスなどの処理に有用であることが知られている様々な異なるタイプの一般的なガスおよび特定のガスが含まれる、これらには、とりわけ、メタン(CH4)、アセチレン(C2H2)、アンモニア(NH3)、水(H2O)、シラン(SiH4)、ゲルマン(GeH4)、ジホスフェン(P2H4)ホスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)、ジボラン(B2H6)、スチビン(SbH3)、硫化水素(H2S)、セレン化水素(H2Se)、テルル化水素(H2Te)、ジゲルマン(Ge2H6)、ジアセチレン(C4H2)、ハロゲン化物(塩素、臭素、ヨウ素、およびフッ素)化合物が含まれる。
【0032】
貯蔵ガス混合物の第2のガスは、試薬ガスと組み合わせて貯蔵ガス混合物に含まれるガスであってもよく、試薬ガスを希釈し、試薬ガスの発火、爆発、自己爆燃などのリスクを低減し、あるいは他の方法で安全性を改善することを目的とする。試薬ガスの貯蔵、輸送、および取り扱い中の安全性を改善する希釈ガスと組み合わせて試薬ガスを含む貯蔵ガス混合物では、第2のガスは、「希釈剤」ガスまたは「安定化」ガスと呼ぶことができる。
【0033】
希釈ガスとしては、窒素(N2)、アルゴン、キセノン、およびヘリウムなどの不活性ガスが挙げられる。または水素化物ガスの安定化を助ける水素(H2)であり得る。この用途のために、特に有用な希釈ガスは、同じガス混合物中の試薬ガスの動力学的直径よりも小さい動力学的直径を有し、希釈ガスと試薬ガスの動力学的直径の差が、試薬ガスの通過速度(例えば、パーミアンス)よりも速い速度で希釈ガスが分離膜を通過することを可能にするのに十分に大きいガスであり得、例えば、希釈ガスの通過速度は、混合物中の試薬ガスの通過速度の少なくとも3、5、10、15、25、30、50、または100倍であり得る。
【0034】
貯蔵ガス混合物は、2または複数の異なるガス(異なるガス分子)を含有してもよく、そのうちの少なくとも1つは試薬ガスであり、そのうちの少なくとも1つは希釈ガスである。例示的な貯蔵ガス混合物は、1つの試薬ガスおよび2つの異なる希釈ガスを含有してもよく、希釈ガス種の両方は、試薬ガスよりも分離膜を通るパーミアンスが著しく大きい。あるいは、貯蔵ガス混合物は、試薬ガスの混合物をプロセスに送達する前に試薬ガスの混合物から除去することができる安定剤または希釈ガスと共に貯蔵された、混合物として送達することができる2つの異なるタイプ(種)の試薬ガスを含有してもよい。両方の試薬ガスは、希釈ガス種よりも分離膜を通るパーミアンスが著しく低い。
【0035】
有用な貯蔵ガス混合物の代替例は、2つのみの(2つを超えない)異なるタイプのガスを含有してもよく、不純物と考えられるものを含む極めて少量(0.1または0.01%未満)で存在するガス状化合物を含まない。
【0036】
そのような例示的な貯蔵ガス混合物は、2つのみの異なるガス、例えば、説明される試薬ガスおよび希釈ガスの組み合わせからなり得るか、または本質的になり得る。一方のガスが試薬ガスであり、他方のガスが希釈ガスである2つの異なるガスから本質的になる貯蔵ガス混合物は、1つの単一のタイプの試薬ガス(2つの異なる試薬ガスの組み合わせではない)および1つの単一のタイプの希釈ガス(2つの異なる希釈ガスの組み合わせではない)、ならびに試薬ガスおよび希釈ガス以外のわずかな量以下の任意の他のガス、例えば5、3、2、1、0.5、0.1、0.01%以下の試薬ガスおよび希釈ガスとは異なる任意のガスまたは不純物を含有することができる。
【0037】
説明される分離プロセスによって処理されるガス混合物中の第1および第2のガスの量は、任意の有用な量であり得る。特定の例示的なシステムおよび方法では、第1のガスの量および第2のガスの量の両方は、ガス混合物中の不純物と考えられるガスの量よりも高くすることができ、これは、貯蔵ガス混合物が、貯蔵ガス混合物のガスの総量に基づいて少なくとも0.5または1%の第1のガスおよび第2のガスの両方を含有し得ることを意味する。
【0038】
いくつかの例示的なガス混合物では、ガス混合物は、ガスが特定の分離膜を通過することを実質的に防止するサイズまたは化学的性質の少なくとも10、20、30、または50%の第1のガスを含有し、また、第2のガスが同じ分離膜をより容易に通過することを可能にするサイズまたは化学的性質の少なくとも50、70、80、または90%の第2のガスも含有する。
【0039】
より具体的な例によれば、説明される希釈ガスと組み合わせて、説明される試薬ガスを含む貯蔵ガス混合物では、貯蔵ガス混合物中の試薬ガスの量は、貯蔵ガス混合物の5~90%、例えば5~50%または10~30、40、50、60または70%の範囲であり得る。貯蔵ガス混合物は、ガス体積基準で10~95%の希釈ガス、例えば50~95%の希釈ガス、または30、40、50、60、もしくは70%から90%までの貯蔵ガス混合物を含有し得る。
【0040】
本明細書の方法によれば、ガス混合物は貯蔵容器に貯蔵され、容器から除去される前または後に、ガス混合物は分離膜と接触して、ガス混合物の一部を分離膜に通過させ、または通過するのを可能にし、ガス混合物からガスのその一部を分離する。
【0041】
特定の例示的な貯蔵システムおよび分配方法によれば、貯蔵ガス混合物は貯蔵容器内に含有され、貯蔵ガス混合物の異なる部分は、異なる分配工程において貯蔵ガス混合物から特定の構成ガスを除去するために複数の除去工程または分配工程を使用して、貯蔵ガス混合物の別個の部分として容器内部から分配される。容器内部のガス混合物は分離膜と接触し、1つの除去工程(「分離」工程)において、ガス混合物の一部(透過物と呼ばれる)は、分離膜を通過することによって容器内部から除去される。ガス混合物の残りの部分(保持物と呼ばれる)は容器内に残り、分離膜を通過することなく容器から送達することができる。膜は、容器に組み込まれ(内蔵され)てもよく、または流れ制御導管を介して容器に外部接続されてもよい。
【0042】
他の例示的なシステムでは、容器は、分離膜を含むフローシステムを含むか、またはそれに接続することができ、貯蔵ガス混合物は、貯蔵ガス混合物が容器から分配されるときに、貯蔵ガス混合物を分離膜に接触させるフローパスに沿って流すことができる。分配された貯蔵ガス混合物の流れが分離膜を通過して接触すると、貯蔵ガス混合物の一部(透過物と呼ばれる)は分離膜を通過し、分離膜と接触するガス混合物から除去される。ガス混合物の残りの部分(保持物と呼ばれる)は、分離膜を通過せずに分離膜を流れ、減少した量の透過物を含有する。
【0043】
貯蔵ガス混合物は、任意のタイプの貯蔵容器内に含有されることができる。試薬ガスを含有する貯蔵ガス混合物用の一般的な貯蔵容器は公知であり、市販されており、大気圧、超大気圧、または準大気圧でガス混合物を含有するように設計され得る。
【0044】
容器は、貯蔵ガスを貯蔵のために吸着することができる吸着材料を含有してもよく、または容器は、吸着材料が空であってもよく、すなわち、吸着材料を含有しなくてもよい。有用なタイプの吸着剤の例には、炭素系吸着剤、金属有機構造体(MOF)、ゼオライト、多孔質有機ポリマー(POP)、および他の吸着剤、ならびにこれらの吸着剤の2つまたは複数の組み合わせが含まれる。吸着剤のタイプは、試薬ガスおよび安定化ガスなどの第2のガスを含有するガス混合物を貯蔵するのに有用な任意の吸着剤であり得る。特定の具体的なシステム例では、吸着剤は、安定化ガス(例えば、水素または別の不活性ガス)に対して試薬ガス(例えば、ゲルマン、GeH4または別の水素化物)を優先的に吸着するタイプのものであってもよい。吸着剤は、試薬ガスを吸着する親和性は高いが、安定化ガスを吸着する親和性は低い。安定化ガスは、容器内に含有される場合、容器のヘッドスペース内のガスとして、実質的にまたはほぼ完全に吸着されないままである。
【0045】
容器は、容器をガス混合物で充填することを可能にし、分離膜を使用して成分ガスをガス混合物から分離する方法で容器からガス混合物のガスを除去することを可能にするために、流れ制御チャネル、圧力制御、流れ制御または計量デバイス、および容器の密閉された内部に接続されたバルブの有用な組み合わせを含有することができる。
【0046】
特定の例示的なシステムおよび方法によれば、分離膜は、例えば、容器の内部または容器のヘッドにおいて、バルブまたはバルブアセンブリの一部として、貯蔵容器に組み込まれる。容器は、ガス混合物の一部が分離膜を通過し、容器内部およびガス混合物の残りの部分から分離されることを可能にするために、容器内部から分離膜を通過し、容器外部に至るフローパスを含む。フローパスは、「ブリードバルブ」を作動させることによって開閉することができる容器の「ブリードポート」を通過する「ブリードパス」と呼ぶことができる。分離膜を通過するガスの部分は「透過物」と呼ばれ、容器内に残るガスの部分は「保持物」と呼ばれる。
【0047】
例示的な貯蔵容器は、分離膜を含むブリードポートを含有し得る。例示的な容器はまた、分離膜に関連しない1つまたは2つのバルブを含有することができ、それぞれ、ガスが分離膜を通過することを必要としない容器内部と容器外部との間のフローパスを画定する。容器が1つのみのそのようなバルブを含有する場合、バルブは、容器内部にガスを加えることと、容器内部からガスを除去することとの両方に使用され得る。容器が2つのそのようなバルブを含有する場合、バルブの1つを使用して容器内部にガスを加えることができ、第2のバルブを使用して内部からガスを除去することができる。第2のバルブは、圧力調整器と関連付けられてもよく、第2のバルブを通る容器内部と容器外部との間のガスの流れは、圧力調整器によって調整され得る。
【0048】
例示的な貯蔵容器は、底部、底部から垂直に延びる側壁、および開口部を含む上部を含む構造によって画定される内部体積を含む容器構造を含むことができる。開口部は、容器内部へのアクセスを提供し、1つまたは複数のバルブの典型的な位置である。側壁は一般に円筒形である。容器は、超大気圧、準大気圧、または大気圧下にあるガスを含有するように適合させることができる。
【0049】
図3Aは、貯蔵ガス混合物を、希釈ガスが膜を優先的に通過することを可能にする分離膜と接触させることによって、試薬ガスである第1のガスおよび希釈剤である第2のガスを含有する貯蔵ガス混合物を含有し、貯蔵し、送達するのに有用であり得る容器の一例を示す。第1および第2のガスは、「試薬ガス」および「希釈剤」ガスと呼ばれ例示されるが、任意の異なるタイプのガスであってもよい。
【0050】
貯蔵容器100は、側壁112(円筒形であってもよい)、底部114、上部開口部(ネック)116、および少なくとも2つのバルブ120および122によって画定される容器コンテナ110を含む。第3のバルブ124が示されているが、任意選択である。
【0051】
容器内部130は、試薬ガスおよび希釈ガスを含有する貯蔵ガス混合物132を含有する。容器内部130は、吸着剤(任意選択であり、図示せず)を含有しても含有しなくてもよい。図示のように、容器は吸着剤を含有せず、加圧された内部を生成する量の貯蔵ガス混合物を含有し、例えば、内部130は、少なくとも14、25、50、100、または200ポンド/平方インチ(絶対)の内部圧力を有し得る。
【0052】
貯蔵ガス混合物は、試薬ガスおよび希釈ガスを含む構成ガスを含有する。貯蔵ガス混合物は、加圧コンテナ100内の貯蔵ガス混合物の許容可能に安全な取り扱い、貯蔵、および輸送を可能にする量の希釈ガスを含有し、例えば、ガス混合物は、少なくとも20、30、50、60、または70%の希釈ガスを含有する。貯蔵ガス混合物は、貯蔵容器100内でのガス混合物の許容可能に安全な取り扱い、貯蔵、および輸送を可能にする量の試薬ガスを含有し、例えば、ガス混合物は、80、70、50、40、または30%未満の試薬ガスを含有する。
【0053】
貯蔵容器100は、バルブ120も含むフローパスに分離膜140を含む。膜140は、容器内部130および貯蔵ガス混合物132と接触する供給物側140a(「保持物側」とも呼ばれる)を含む。膜140の反対側、透過物側140bは、バルブ120および容器外部に通じている。
【0054】
使用時に、貯蔵容器100を使用して、貯蔵ガス混合物132の試薬ガスから希釈ガスを分離し、内部130内に濃縮試薬ガス(「保持物」)を生成することができる。バルブ120を開き、他のバルブを閉じると、膜140を横切って圧力勾配が適用され、内部130および供給物側140aでのより高い圧力に対して、透過物側140bに減圧が加えられ得る。バルブ120が開いており、膜140を横切る圧力差があると、ガス混合物132からの希釈ガスは、分離膜140を通過して内部130から除去され、ガス混合物132から分離され得る。ある量の希釈ガスが除去されると、濃縮試薬ガスが形成され、内部130に残る。濃縮試薬ガスを形成した後、濃縮試薬ガスは、異なるバルブ、例えばバルブ122または124を介して下流プロセスに送達することができる。
【0055】
この方法により、所望の量の希釈ガスを内部130から除去し、ガス混合物132から分離することができる。ガス混合物132から除去される希釈ガスの有用な量は、試薬ガスの有用なまたは所望の濃度を有する内部130に残っている濃縮試薬ガスを生成する量であり得る。濃縮試薬ガス中の試薬ガスの所望の濃度は、濃縮試薬ガスが使用される特定のプロセス、例えば、堆積(化学蒸着、原子層堆積)、イオン注入などに依存し得る。様々な高度な堆積技術、例えば、3D NANDメモリデバイスを形成するための堆積工程のために、堆積プロセスにおけるガス状原料として有用な試薬ガスの濃度は、堆積ツールに供給されるように、比較的高い、例えば、少なくとも50、70、90、または95%の試薬ガスであり得る。
【0056】
さらに
図3Aを参照すると、所望の量の希釈ガスが内部130から除去され、元の貯蔵ガス混合物132から分離された後、残っている濃縮試薬ガスは、貯蔵容器100から、ガス状原料として試薬ガスを使用するプロセスに送達することができる。濃縮試薬ガスは、任意選択的に調整された圧力または流れ(図示せず)で、バルブ122を介して、容器100から濃縮試薬ガスを使用するプロセスに送達されてもよい。
【0057】
2つのバルブ120および122のみを含む例示的な容器では、バルブ122は、容器から濃縮試薬ガスを分配するため、および元のガス混合物(そこから希釈ガスの除去によって濃縮試薬ガスが形成される)を内部130に配置するための両方に使用され得る。別の例では、バルブ124は、容器から(例えば、圧力調整器を介して)濃縮試薬ガスを分配するためにのみ使用されてもよく、別のバルブ122は、元のガス混合物(そこから希釈ガスの除去によって濃縮試薬ガスが形成される)を内部130に配置するために使用される。
【0058】
ここで
図3Bおよび
図3Cを参照すると、本明細書において説明される貯蔵容器の一部として含まれ、説明される分離膜を含む「ブリードポート」の例が示されている。図示のブリードポートは、希釈ガス(または別のガス)を、希釈ガスと第2のガス(試薬ガスであり得る)とを含有するガス混合物から分離するために分離膜を使用することを可能にする。
【0059】
一例として、本明細書を限定するものではないが、
図3Bおよび
図3Cに示すブリードポートは、
図1に示す方法で貯蔵容器に組み込まれ得る。ブリードポートは、バルブ120を含み
図3Aの容器100の内部130にアクセスする流路の一部として、
図3Aの容器100に含まれてもよい。内部130に含有されるガス混合物132は、分離膜140の供給物側表面140aに接する。膜140の透過物側140bに減圧が適用されると、貯蔵ガス混合物132の希釈ガスは分離膜140を通過することができるが、試薬ガス(「反応性SG」または反応性特殊ガス)は実質的な速度で膜140を通過することができない。
【0060】
使用時に、バルブ120を選択的に開閉または他の方法で作動させて透過物側表面140bに減圧を適用し、分離膜140を通して希釈ガスを引き込むことができる。
図3Bにおいて、バルブ(「真空作動スイッチ」)は、膜140を通る流れを防止するために閉じられている。
図3Cにおいて、バルブが開かれ、真空(すなわち、内部130の圧力に対する減圧)が透過物側表面140bに適用され、ガス混合物132の希釈ガスは膜140を通過して内部130から除去され、内部130内に濃縮ガス混合物(保持物)が残る。残っている濃縮ガス混合物は、希釈ガスがブリードポートを通って除去される前に内部130内に含有されていた元のガス混合物132中の試薬ガスの元の濃度と比較して、より高い濃度の試薬ガスを含有する。
【0061】
一般に、説明される方法および貯蔵システムは、安定化された試薬ガス、例えば、取り扱い、輸送、および貯蔵中に希釈ガスによって安定化された高反応性ガス種を含む貯蔵ガス混合物を含有する貯蔵容器(「パッケージ」と呼ばれることもある)を含むことができる。貯蔵ガス混合物のユーザが所望するように、希釈ガスは、分離膜(例えば、ブリードポートにおける、または他の方法で容器に取り付けられたもの)を使用して貯蔵ガス混合物から分離され、高純度、高濃度の試薬ガス(例えば、反応性特殊ガス)を提供することができる。濃縮試薬ガスは、試薬ガスがより高濃度の原料として提供されるためにプロセス制御および効率が改善され得る処理工程で使用するために、製造プロセス、例えば顧客のツールに送達することができる。
【0062】
図3Dを参照すると、例示的な貯蔵容器(図示せず)(例えば、
図3Aの100)の上部開口部またはネック116は、A)高圧「充填」ポート122、B)より低い(または調整された)圧力「送達」ポート124、およびC)真空による希釈剤または安定化ガス種の選択的抽出のための「ブリード」ポート120を含むマルチポートバルブアセンブリ150を含んでもよい。容器は、試薬ガスおよび希釈ガスを含有することができる。ユーザは、容器を製造設備、例えば半導体処理ツール、例えばイオン注入ツールまたは堆積物にも接続することができる。容器が設置され、ツールに接続された後、貯蔵試薬ガスをツールに送達する前に、希釈ガスを容器から除去して、容器内の試薬ガスの濃度を増加させ、濃縮された(例えば、非常に純粋または実質的に純粋な)試薬ガスを形成することができる。濃縮試薬ガスをツールに送達することができる。
【0063】
図3Dは、バルブアセンブリ150の上面図を示す。ブリードポートであるポート120は、チェックバルブ(または真空作動オリフィス)と、希釈ガスの流れを可能にするが分子サイズおよび膜透過速度の区別に基づく物理的分離を介して膜を通る試薬ガスの流れを実質的に防止する分離膜とを使用する。水素またはヘリウムなどの希釈ガスは、膜の透過物側に真空が適用されると分離膜を容易に通過することができるが、ゲルマン、シラン、ジボラン、ジゲルマン、ジアセチレン、スチベンなどのより大きな分子サイズを有する試薬ガスは、膜を通過する速度が最小またはわずかである。
【0064】
例示的なバルブアセンブリ150は、「ブリード」、「充填」、および「送達」の3つのロック位置と視覚的に示された位置との間で移動することができるハンドルを含む。容器が製造ツール上に完全かつ安全に設置されると、バルブアセンブリをブリードで設定することによって、貯蔵ガス混合物の希釈剤「安定化」ガスを貯蔵されたガス混合物から分離して、希釈ガスが分離膜を通ってブリードポート120から流出することを可能にすることができる。希釈ガスの多くの部分またはほとんどの部分を優先的に除去すると、実質的に増加した濃度の純粋な試薬ガス(別名「反応性特殊ガス」)が容器内部に残り、これを高濃度および高純度で「送達」ポートを通してプロセスツールに送達することができる。
【0065】
容器が顧客のツールに取り付けられ、希釈ガスが「ブリード」ポートに適用された真空を介してシリンダから分離膜を通して安全に抜き出されるまで、容器は、最大限の安全性のためのすべての輸送および貯蔵要件を満たす状態にあり得る。
【0066】
本明細書に記載の方法、貯蔵システム、および装置は、ガス混合物に含有される1つの構成ガスをガス混合物の異なる構成ガスおよびガス混合物自体から除去または分離するために、任意のタイプのガス混合物を処理するのに有用であり得る。本方法、システム、および装置は、試薬ガス、特に高反応性試薬ガスなどの高価値ガスから希釈ガスを分離して、より濃縮された試薬ガスを形成するのに特に有用であり得る。
【0067】
有利には、以前のガス貯蔵システムおよび送達方法と比較して、試薬ガスは、試薬ガスのより安全な貯蔵、輸送、および取り扱いを可能にするためにガス混合物に含まれる希釈ガスと組み合わせて貯蔵容器内に含有、貯蔵、および輸送することができるが、試薬ガスが使用のために送達される前に希釈ガスの少なくとも一部を試薬ガスから分離することができる。貯蔵ガス混合物がユーザによって受け取られたときに、貯蔵ガス混合物は、大量の希釈ガスを含有している。ユーザは、2つのガスを分離し(例えば、貯蔵ガス混合物から希釈ガスの一部を除去し)、貯蔵ガス混合物中の試薬ガスの濃度よりも高い濃度で試薬ガスを使用してもよい。説明される方法は、ユーザが貯蔵ガス混合物から希釈ガスを除去し、試薬ガスを伴う特定のタイプのプロセスにとってより有用かつ効果的なより高い濃度まで試薬ガスの濃度を増加させることを可能にする。ユーザは、試薬ガスから希釈ガスを分離して試薬ガスの濃度を増加させ、貯蔵ガス混合物と比較してより高い濃度の原料ガス(「濃縮ガス混合物」または「濃縮試薬ガス」と呼ばれる)を生成することができる。
【0068】
説明される貯蔵システムおよび方法は、濃縮ガス混合物を生成するために貯蔵ガス混合物から希釈ガスを除去するいくつかの異なる方法を可能にする。有用な方法の一例を
図4に概略的に示す。
図4は、貯蔵容器100(例えば、
図3Aに示される)の空の状態(i)を示す。任意の順序で、第1のガス(例えば、試薬ガス)と第2のガスの両方が容器内部に添加される。(ii)および(iii)を参照のこと。反応性試薬ガスである第1のガス、および希釈ガスである第2のガスの場合、貯蔵ガス混合物中のこれら2つのガスの量は、貯蔵、輸送、および取り扱い中の追加の安全性および安定性のために所望の通りであり得る。第1のガスおよび第2のガスの貯蔵ガス混合物132を含有する段階(iii)の容器は、両方のガスが容器内に含有されている間に、安全に輸送され、貯蔵され、取り扱われ、ユーザに送達され、処理ツールに接続され得る。
【0069】
しかしながら、ユーザは、混合物が容器100に貯蔵および輸送されたときの貯蔵ガス混合物132中の試薬ガスの濃度よりも高い濃度の試薬ガスを使用したい場合がある。ユーザは、ある量の希釈ガスを容器100のブリードポートを通して貯蔵ガス混合物から分離させることによって、ある量の希釈ガスを貯蔵ガス混合物132から除去し得る(ivを参照)。(
図4は概略図であるため、形態(iv)の容器100は、全体(減少した)量の希釈ガスが容器100の底部に示されている状態で、減少した量の希釈ガスを含有するものとして示されている。実際のガスを含有する実際の容器では、両方のガスは容器100の内部に均一に分散される。
図5の(iv)および(v)についても同様である。)
【0070】
貯蔵ガス混合物132から希釈ガスの一部または実質的にすべてを除去することによって、濃縮試薬ガス(134)が生成され、容器100の内部に残る。濃縮試薬ガス134は、製造プロセスで使用するために容器100から分配することができる。この方法により、希釈剤は、容器100内に濃縮試薬ガス134を生成するために、単一の工程で貯蔵ガス混合物から除去される。(やはり、
図5は概略図であるので、形態(v)の容器100は、容器100の底部にガスを示し、上部を空として示すことによって、減少した量の濃縮試薬ガス134を含有するものとして示されている。実際のガスを含有する実際の容器では、両方のガスは容器100の内部に均一に分散される。)
【0071】
単一の例として、ゲルマンなどの高反応性で高価値の原料試薬ガスは、水素などの希釈剤または安定化ガスによって50~85%の範囲で希釈され得る。すなわち、貯蔵ガスは、50~85%の希釈剤または安定化ガスおよび15~50%のゲルマン(体積基準)を含有し得る。顧客によって受け取られたとき、適用は、75~85%(体積基準)またはそれを超えるゲルマン濃度を必要とする場合があり、希釈剤水素の多くは、貯蔵ガス混合物中のゲルマン濃度を15~50%の範囲から75~85%の濃度まで増加させるために除去されなければならない。試薬ガスの一部は、分離膜を通して除去され、失われることも予想され得る。試薬ガスに対する希釈剤または安定化ガスの好ましい除去効率(選択性)は、望ましくは、高価値の原料試薬ガスの収率を最大にすることができる。
【0072】
代替の方法によって、貯蔵ガス混合物132は、複数の送達工程を使用して複数の部分において容器100から除去することができ、異なる除去された部分のそれぞれを濃縮試薬ガスに形成することができる。容器100から除去されたガス混合物の各部分から、希釈ガスを除去することができ、より小さな体積の濃縮試薬ガス134が形成される。
【0073】
図5を参照すると、高体積の容器100(説明されるもの)は、大きな体積の貯蔵ガス混合物132を含有し、ガスキャビネット150内に含有されるか、あるいはプロセスツール内にあってもよく、そのいずれかがクリーンルーム内にある。容器100内に含有されたガス混合物132の全体積の一部は、より体積の小さい容器100a(バラスト容器と呼ばれることもある)に移送され、これはプロセスツール(160)に関連付けられ得るか、そこに配置され得るか、またはそこに接続され得る。この工程は、プロセスツール160が計画されたメンテナンス(PM)を受けている間に実行されてもよい。ガス混合物132の一部が容器100a内に含有された状態で、ある量の貯蔵ガス混合物132の希釈ガスを、容器100aのブリードポートを通して容器100aから除去することができる(ivおよび工程2を参照)。濃縮試薬ガス(134)が生成され、容器100aの内部に残る。濃縮試薬ガス134は、製造プロセスを実行するためのプロセスツールへ、使用のために送達することができる。
【0074】
工程2の間、ガス混合物132の試薬ガスの一部はまた、分離膜を通して除去されて失われると予想され得、有用な量の希釈ガスが容器100a内に残り得る。バラスト容器100a内に残ることが可能な希釈剤または安定化ガスの量は、予想される貯蔵期間にわたって濃縮試薬ガス134を貯蔵するために所望される量であり得る。バラスト容器100a内の濃縮試薬ガス134の長期間(例えば、数週間または数ヶ月)の使用の間、より大量の希釈剤または安定化ガス、例えば少なくとも5、10、または20%が残存し得る。より短い使用期間では、希釈剤または安定化ガスの量は、より少なくてもよく、例えば、10または5%未満であってもよい。
【0075】
容器100a内の濃縮試薬ガス134の体積が枯渇すると、貯蔵試薬ガス132の第2の部分を容器100から容器100aに移送することができる。希釈ガスは、容器100aのブリード部分を通して、貯蔵試薬ガスの第2の部分から除去されてもよい。この方法により、単一の工程で容器100からすべての希釈ガスが除去される場合に容器100に貯蔵されるより大きな体積の濃縮試薬ガス132と比較して、より小さな部分の濃縮試薬ガスが容器100aに貯蔵される。
【0076】
このシステムでは、より大きなガス原料シリンダ100は希釈されたままであり、安全性を改善し、シリンダ100に含有される試薬ガスの潜在的な分解速度を制限する。バラストシリンダ100aは、濃縮試薬ガス134の分解の場合に適切なレベルの圧力を含有するように設計されている。バラストシリンダ100aは、使用中に圧力、温度、および流量を監視して、バラストシリンダ100aに含有される濃縮試薬ガス134の量を監視する。
【0077】
さらに別の方法およびシステムによれば、分離膜を使用して、貯蔵ガス混合物が、ガス混合物を分離膜に接触させる流れ制御機構を通って流れる間に、貯蔵ガス混合物からガスを分離してもよい。一例として、
図6を参照すると、試薬ガスおよび希釈剤を含有する貯蔵ガス混合物132は、貯蔵容器(図示せず)から、任意選択的に調整器またはチェックバルブ(図示せず)を通って、濃縮器200の入口(202)へ流れる。濃縮器200は、供給物入口202、チャンバ204、出口206、および管または導管の形態の分離膜208(チャンバ204内)を含む。濃縮器はまた、パーミアンス速度(複数可)の制御を改善するために膜を比較的一定の温度に維持するための温度制御機能(図示せず)を含み得る。供給物入口202は、膜208の内部の供給物側空間212に通じ、それは入口202、分離膜208の内側、および出口206によって画定される。チャンバ204は、チャンバ空間(透過物空間)210内に膜208を含有する。
【0078】
使用時に、供給物ガス、すなわち貯蔵ガス混合物132は、入口202を通って供給物側空間212に、(任意選択的に、調整器、チェックバルブ、ニードルバルブ、または制限された流れオリフィス(図示せず)を通って)流れる。透過物空間210に真空を適用して、供給物側空間212に対して透過物空間210で減圧を生成する。貯蔵ガス混合物は、供給物側空間212に流入して流れる。供給物側空間212を流れる間、貯蔵ガス混合物132の一部、例えば希釈ガスは、分離膜212を通過し、透過物空間210に入り、バルブ216を介して透過物空間210から除去することができる。貯蔵ガス混合物の残りの部分は、より低い濃度の希釈ガスおよびより高い濃度の試薬ガスを含有する濃縮試薬ガスである。この濃縮試薬ガスは、保持物214として出口206から流出し、半導体処理ツールなどの製造装置に送達することができる。
図6のシステムの潜在的な利点は、貯蔵ガス混合物132を容器から連続的に除去することである。容器内に残っている貯蔵ガス混合物は、使用時点にin situで濃縮されるまで完全に希釈され、完全に安定化される。ガス混合物の希釈形態は、濃縮試薬ガスと比較してより安定であり、より安全に貯蔵される。希釈された貯蔵ガス混合物は、経時的に分解が減少する可能性があり、貯蔵試薬ガスの供給は、数ヶ月の期間にわたって使用され得る。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬ガスと希釈ガスとを含む、貯蔵容器内に含有された貯蔵ガス混合物を処理する方法であって、
貯蔵ガス混合物を、試薬ガスに対する希
釈ガスの、分離膜を通る優先的な流れを可能にする分離膜と接触させることと、
貯蔵ガス混合物の希釈ガスの一部を分離膜を通して流して、貯蔵ガス混合物と比較して試薬ガスの濃度が増加した濃縮試薬ガスを生成することと
を含む、方法。
【請求項2】
分離膜が、透過物側および保持物側を有しており、方法が、
貯蔵ガス混合物を、保持物側圧力で保持物側と接触させることと、
保持物側圧力より低い透過物側圧力を透過物側に適用して、希釈ガスを前記膜を通して流し、濃縮ガス混合物を保持物側に生成することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
貯蔵ガス混合物が、40%未満の試薬ガスを含み、
濃縮ガス混合物が、少なくとも60%の試薬ガスを含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
試薬ガスが水素化物であり、希
釈ガスが水素である、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
試薬ガスが、CH
4、NH
3、H
2O、SiH
4、PH
3、H
2S、GeH
4、Ge
2H
6、AsH
3、H
2S、H
2Se、H
2Te、C
2H
2、P
2H
4、SbH
3およびB
2H
6から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
希
釈ガスが、窒素、水素、キセノンおよびヘリウムから選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
貯蔵ガス混合物が、第1の体積を有する第1の貯蔵容器内に含有され、方法が、
貯蔵ガス混合物の一部を第1の貯蔵容器から除去し、前記一部を第1の貯蔵容器よりも小さい体積を有する第2の貯蔵容器に添加することと、
第2の貯蔵容器から分離膜を通して希釈ガスを除去して、第2の貯蔵容器内に濃縮試薬ガスを生成することと
を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
試薬ガスを送達するためのシステムであって、
貯蔵容器内部と貯蔵容器内部に接続された開口部とを備える、貯蔵容器、
より大きな動力学的直径を有するガスに対する、より小さな動力学的直径を有するガスの、分離膜を通る優先的な流れを可能にする、貯蔵容器内部に接続された分離膜
を備える、システム。
【請求項9】
バルブと、
ガスが容器内部から分離膜を通り、バルブを通って容器外部に流れるのを可能にする流通路と
を備える貯蔵容器を備える、請求項
8に記載のシステム。
【請求項10】
試薬ガスを貯蔵し、試薬ガスをプロセスツールに送達するように適合されたバラストシリンダである、第1の体積を有する貯蔵容器、
第1の体積よりも大きい第2の体積を有する第2の貯蔵容器、
貯蔵容器を第2の貯蔵容器に接続して、第2の貯蔵容器から貯蔵容器の内部へのガスの流れを可能にするガス流導管
を備える、請求項
8に記載のシステム。
【国際調査報告】