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特表2024-535280静電チャックならびに関連する方法および構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】静電チャックならびに関連する方法および構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240920BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516998
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 US2022043526
(87)【国際公開番号】W WO2023043835
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】63/244,975
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルフリード, カルロ
(72)【発明者】
【氏名】リプチンスキー, ヤクブ
(72)【発明者】
【氏名】ポパ, フロレンティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ヤルディズリ, ムラット
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131CA03
5F131CA06
5F131EA03
5F131EA04
5F131EB22
5F131EB54
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB82
(57)【要約】
ワークピースを加工する工程の間にワークピースを支持するのに有用である静電チャック、および、付加製造技術によって作製される静電チャックベース構成部品について、記載されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電チャックベースであって、
上側ベース表面と、
下側ベース表面と、
前記上側ベース表面と前記下側ベース表面との間の内部分と、
前記内部分内の流路と
を備え、前記流路は、
前記チャックベースの表面における入口と、
前記チャックベースの表面における出口と、
前記入口と前記出口との間の長さと、
前記長さに沿った断面であって、
前記長さに沿った様々な断面積、
前記長さに沿った様々な断面形状、または
前記長さに沿った前記上側表面からの様々な距離を含む、前記長さに沿った断面とを含む、静電チャックベース。
【請求項2】
前記流路は、前記長さに沿った前記上側表面からの様々な距離を含む、請求項1に記載の静電チャックベース。
【請求項3】
前記流路は、前記長さに沿った様々な断面積を含む、請求項1または2に記載の静電チャックベース。
【請求項4】
前記流路は、前記長さに沿った様々な断面形状を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の静電チャックベース。
【請求項5】
前記入口は前記下側表面を通過し、
より小さい断面積を有する前記長さの一部分は、より大きい断面積を有する前記長さの一部分と比較すると、前記上側表面により近い、請求項1から4のいずれか一項に記載の静電チャックベース。
【請求項6】
前記上側ベース表面と前記下側ベース表面との間の1つの場所において通る2つの連結されていない交差する流路部分をさらに含む、請求項1に記載の静電チャックベース。
【請求項7】
テーパ状の断面積を示す流路部分をさらに含む、請求項1に記載の静電チャックベース。
【請求項8】
前記流路は、
前記ベースの外周部における縁部に隣接する縁部分と、
前記縁部分と前記ベースの中心との間にある内部分とを含み、
前記縁部分は、前記内部分と比較すると前記上側表面により近い、請求項1に記載の静電チャックベース。
【請求項9】
前記流路は、単一の流路から分かれて2つの流路部分を形成する一部分を含む、請求項1に記載の静電チャックベース。
【請求項10】
前記入口は、前記入口から2つの方向に延在する流路に連結し、
前記出口は、前記出口から2つの方向に延在する流路に連結する、請求項1に記載の静電チャックベース。
【請求項11】
前記流路は、第1の流路部分と、第2の流路部分と、前記第1の流路部分を前記第2の流路部分に連結し、かつ流体が前記第1の流路部分から前記第2の流路部分に流入することを可能にする連結流路と、を備える、請求項1に記載の静電チャックベース。
【請求項12】
前記上側ベース表面から前記下側ベース表面まで延在する多層複合材をさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の静電チャックベース。
【請求項13】
前記複合材は金属の継ぎ目を含んでいない、請求項12に記載の静電チャックベース。
【請求項14】
前記多層複合材はアルミニウム合金を含む、請求項13に記載の静電チャックベース。
【請求項15】
前記アルミニウム合金はAlSiMgである、請求項14に記載の静電チャックベース。
【請求項16】
前記多層複合材はチタン合金を含む、請求項13に記載の静電チャックベース。
【請求項17】
前記チタン合金はTiAlVである、請求項16に記載の静電チャックベース。
【請求項18】
付加製造によって請求項1から17のいずれか一項に記載の静電チャックベースを製作する方法であって、
表面上に第1の供給原料層を形成することであって、前記供給原料層は無機粒子を含む、第1の供給原料層を形成することと、
前記第1の供給原料層から固化した供給原料を形成することと、
前記第1の供給原料層上に第2の供給原料層を形成することであって、前記第2の供給原料層は無機粒子を含む、第2の供給原料層を形成することと、
第2の供給原料層から第2の固化した供給原料を形成することと、を含み、
前記固化した供給原料層および前記第2の供給原料層は多層複合静電チャックベースの一部である、方法。
【請求項19】
レーザを使用して無機粒子を溶融することによって前記固化した供給原料を形成することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
付加製造によって請求項1から17のいずれか一項に記載の静電チャックベースを形成する方法であって、
付加製造によって底面を含む下側ベース部分を形成することと、
付加製造によって前記下側ベース部分上に流路を含む中間ベース部分を形成することと、
付加製造によって前記中間ベース部分上に前記上側表面を含む上側ベース部分を形成することと、を含む、方法。
【請求項21】
微細層厚を有する微細層を形成することを含む付加製造工程によって前記下側ベース部分を形成することと、
複数の粗層を形成することを含む付加製造工程によって前記中間ベース部分を形成することであって、それぞれの粗層は前記微細層厚を上回る粗層厚を有する、前記中間ベース部分を形成することと、
微細層厚を有する微細層を形成することを含む付加製造工程によって前記上側ベース部分を形成することと、をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワークピースを処理する工程の間にワークピースを支持するのに有用である静電チャックのベース構成部品の分野に関する。このベース構成部品(「ベース」)は、支持されるワークピースを冷却するときに有効性が改善された流路を含むように作製される。
【背景技術】
【0002】
電子チャック(略して単に「チャック」とも称される)は、半導体およびマイクロ電子デバイス処理に使用される。チャックは、ワークピースの表面上でのプロセスを行うために半導体ウエハまたはマイクロ電子デバイス基板などのワークピースを適所で保持する。静電チャックは、ワークピースとチャックとの間に静電引力を引き起こすことによって、チャックの上側表面においてワークピースを支持しかつ固定する。ワークピースおよびチャックにおいて異極性の電荷を誘起するためにチャックの中に含まれている電極に電圧が加えられて、ワークピースとチャックとの間に静電引力が引き起こされる。
【0003】
チャックは、チャックが実行できるようにするまたは性能を改善する様々な構造、デバイス、および設計を含む。典型的な静電チャックアセンブリは、ワークピースを支持する平坦な上側表面と、チャックおよび支持されたワークピースの静電荷を制御するための電極、導電性コーティング、および接地連結部などの電気部品と、チャック、支持されたワークピース、またはこの両方の温度を制御するための1つまたは複数の冷却システムと、チャックに対するワークピースの位置を支持または変更するために適応される測定プローブ、センサ、および可動ピンを含み得る様々な他の構成部品と、チャックをツールインターフェースに連結するための冷却および電気連結部と、を含む複数部品構造である。
【0004】
静電チャックの典型的な特徴は、チャックの本体に形成された内部流路または通路のパターンから作られる冷却システムを含んでいるベースである。流路は、冷却流体(例えば、気体、水、または別の液体)の流れをチャックの内部を通して通過させることでチャックから熱を除去し、かつチャックおよびチャックによって支持されたワークピースの温度を制御するために使用される。ワークピースを加工することは、チャックの温度の上昇を生じさせる可能性がある。冷却流体がチャックを通過することによって、チャックから熱が除去され、ワークピースの温度が制御される。ベース内の流路の配置および分布は、ベースおよび支持された基板からの熱除去の場所および均一性に影響を及ぼすことになる。
【0005】
望ましくは、ベースは、可能な限り大きい程度まで、ベースの面積に対する均一の冷却効果を与えるように設計され得る。しかしながら、ベース構造を形成するために以前に使用された材料(例えば、硬質金属およびセラミック材料)、および現在のベース材料からベースを形成するために使用可能である現在の技術によって、冷却流路の設計が限定されている。
【0006】
静電チャックアセンブリのベースは、寸法、平坦性、表面粗さ、冷却流路、および開口などの非常に正確な特徴を有する構造を形成するために加工可能である、高硬度、高強度の固体材料から作られなければならない。静電チャックのベースを製造するために使用される現在の材料は、アルミニウム、および、機械加工技術によって精密ベース構造へと形成可能である他の金属またはセラミックを含む。アルミナ以外に、これらの材料は、高精密機械加工技術を使用して製造するには困難でありかつ高価である高硬度の特性を示し得る。
【0007】
現在の方法により、内部冷却流路を含んでいるベースを形成するために、別々の部分(例えば、上側部品および下側部品)に機械加工することによって2つの対向部品が形成され、2つの別々に形成された部品は、典型的には、真空ろう付け工程または電子ビーム溶接工程によって互いに接合される。
【0008】
真空ろう付けは、航空宇宙産業で使用される特殊なプロセスであり、高価で、かつ容易に利用できない可能性がある。真空ろう付けは、炉を使用して2つの表面の間に配置された「充填材料」を溶融することによって2つの対向する表面の間に接合部を形成することと、溶融した充填材料を固化させて接合部または真空ろう付け継ぎ手を形成できるようにすることとを伴う。充填材料は、接合される2つの部品の溶融温度よりも低い温度で溶融する材料であってよい。「充填」材料によって形成される継ぎ手は、典型的には、最終的な真空ろう付けベース構造において確認できる。全体として、それぞれが複雑な機械加工工程による2つの別々の部品の形成と、その後の真空ろう付け工程との組み合わせにより、高い材料コストおよび加工コストならびに潜在的に非常に長い製造リードタイムが生じる。
【0009】
代替的なプロセスは、形成済みの管を冷却流路として使用後、その管上に材料を鋳造してベースを形成する。
【0010】
ベースを作製するコストおよび困難さにより、静電チャックベースとして使用するための異なったより望ましい材料の使用が増大する可能性がある。望ましい材料には、セラミック、およびチタン合金などの様々な金属合金などの高硬度材料が含まれ得る。これらの材料は、極度に硬質であるため、それらをベースで使用するのが望ましいが、それらはまた、機械加工によって加工するのが非常に困難である。他の所望の材料には、チャックアセンブリのセラミック層のものと類似している熱膨張係数など、比較的低い熱膨張係数を有する材料を含み得る。
【発明の概要】
【0011】
1つの態様では、本開示は静電チャックベースに関する。ベースは、上側ベース表面と、下側ベース表面と、上側ベース表面と下側ベース表面との間の内部分と、内部分内の流路と、を含む。流路は、チャックベースの表面における入口と、チャックベースの表面における出口と、入口と出口との間の長さと、構成される長さに沿った断面とを含む。断面は、長さに沿った様々な断面積、長さに沿った様々な断面形状、または長さに沿った上側表面、下側表面、またはこの両方からの様々な距離のうちの1つを含む。
【0012】
別の態様では、本開示は、付加製造法によって説明されるように静電チャックベースを製作する方法に関する。方法は、表面上に第1の供給原料層を形成することであって、供給原料層は無機粒子を含む、第1の供給原料層を形成することと、第1の供給原料層から固化した供給原料を形成することと、第1の供給原料層上に第2の供給原料層を形成することであって、第2の供給原料層は無機粒子を含む、第2の供給原料層を形成することと、第2の供給原料層から第2の固化した供給原料を形成することと、を含み、固化した供給原料層は多層複合静電チャックベースの一部である。
【0013】
別の態様では、本開示は、付加製造法によって、説明されるような静電チャックベースを形成する方法に関する。方法は、付加製造によって底面を含む下側ベース部分を形成することと、付加製造によって下側ベース部分上に流路を含む中間ベース部分を形成することと、付加製造によって中間ベース部分上に上側表面を含む上側ベース部分を形成することと、を含む。
【0014】
本開示の一部を形成し、本明細書に説明される材料および方法が実践可能である実施形態を例示する図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】説明されるような静電チャックアセンブリの側面図である。
図2A】説明されるようなベースの上面図である。
図2B】説明されるようなベースの側面切欠図である。
図2C】説明されるようなベースの側面切欠図である。
図3A】説明されるようなベースの側面切欠図である。
図3B】説明されるようなベースの側面切欠図である。
図4】説明されるようなベースの上面切欠図である。
図5】説明されるベースの透視切欠図である。
図6】説明されるようなベースの上面切欠図である。
図7】説明されるようなベースの上面切欠図である。
図8】説明されるような例示の方法のステップを示す図である。
図9】説明されるような例示の方法のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面は、概略的で例示的なものであり、必ずしも一定尺度ではない。
【0017】
下記の説明は、静電チャックにおいて有用であるベース構造に関する。ベースは、ベースの内部全体を通して分布させた流路のパターンを含み、このパターンは、使用中に流体を流路を通して流動させることによってベースの温度を制御するために使用可能である。
【0018】
ベースは、上側ベース表面と、下側ベース表面と、上側表面と下側表面との間の内部分とを含む。上側表面および下側表面は、「x方向」および「y方向」で画定される領域に広がるとみなされる。上側表面と下側表面との間の距離は、「z方向」におけるベースの厚さと称される。
【0019】
ベースは、ベースの内部を通した長さに沿って延在する流路を含む。ベースは、ベースの表面における流路への入口と、ベースの表面における流路の出口と、入口と出口との間の流路の長さと、長さに沿った全ての場所における断面形状および面積とを含む。用語「流路」は、単一の流路、あるいは流路の部分または区分を指す。用語「流路」は、複数の流路、またはベースの実質的な領域に広がる単一の流路の異なる部分もしくは区分を指すために使用されてよい。いくつかの例では、入口と出口との間の流路の長さは、単一の流路と称されてもよい。
【0020】
従来のベース構造によると、ベースは、ベース内部を通って延在する流路を含み、この流路を通って、静電チャックの構成部品としてベースを使用中に流体は流れることができる。流体は、気体または液体のどちらかの任意の流体であってよく、いかなる目的に対しても流路を通して流動させてよい。1つの目的として、ベース、静電チャック、およびチャックによって支持されるワークピースの温度を制御することがある。典型的には、流路を通って流れる流体は、水などの冷却流体であり、この理由で、流路は「冷却流路」と称されることがあり得る。冷却流路は、流路から冷却流体を除去するためにおよび流路を乾燥させるために効果的であるパージガスなどの異なるタイプの流体の流れに有用である可能性がある。
【0021】
従来のベース設計では、ベースにおける流路(「冷却流路」と称されることがある)は、均一の断面形状および均一の断面積を含めて、流路の長さに沿った全ての場所における均一の断面形態を有するように設計されている。また、従来のベース構造によると、冷却流路は、(ベースの厚さに沿った「z方向」における)ベース内の均一の位置、例えば深さに位置しており、すなわち、従来の流路は、(入口と出口との間の)流路の全長に沿った距離である上側表面からの距離に位置し、かつ、(入口と出口との間の)流路の全長に沿った距離である下側表面からの距離に位置する。
【0022】
そのような従来のベース構造と比較して、本明細書のベース構造の冷却流路は、ベース厚さの範囲内の断面プロファイルおよび位置決めなどの不均一な物理的特徴を有し、これによって、ベースの冷却効率、ベースの冷却均一性、またはこの両方が改善される。
【0023】
冷却流路が機能する効率または均一性を改善するために、流路は、流路の長さに沿って変化する物理的特徴を含むようにベースの内部の中に形成可能である。流路は、長さに沿った様々な(不均一な)断面積、長さに沿った様々な(不均一な)断面形状、または長さに沿ったベースの内部の中の様々な(不均一な)位置、つまり、上側表面または下側表面からの様々な距離のうちの1つまたはこれらの組み合わせを示し得る。例示のベース構造では、冷却流路は、ベースアセンブリによって支持され得る特定のワークピース、および特定のワークピースの不均一な特徴に対する熱伝達の効率および均一性の改善に向けて設計された流路のパターンとして形成され得る。この特徴は、「共形冷却」と称されることがあり、使用中に静電チャックアセンブリによって支持されることになるワークピース(例えば、半導体またはマイクロ電子デバイスまたはウエハ)の特定の熱除去要件に適合するように、特定の設計でベース内の流路のパターンをベースにおいて設計および形成することを可能にする。
【0024】
ベース内部の中の流路開口部のサイズ、形状、または位置の特徴を変更することは、ベース面積にわたる温度の改善された制御を可能にし得る。チャックによって支持された基板を冷却するために使用している間に、様々な要因によって、チャック上側表面における不均一な熱伝達、またはチャック上側表面の局所領域における不均一な温度がもたらされる可能性がある。例として、熱伝達効果は、チャックの非縁部分と比較して、チャックの縁部において、例えばチャック外周部において異なっている。熱エネルギーを縁部において横方向にチャックから逃すことができることで、縁部に沿ったチャックの表面における温度の低下が生じる。縁効果を補正するために、すなわち、縁部近くのチャックの上側表面における温度の低下を防止するために、縁部近くの冷却流路(すなわち、縁部に近い流路の一部分)は、縁部ではない場所における冷却流路と比較して、チャックの上側表面により近い位置に位置し得る(すなわち、低減した深さにあってよい)。
【0025】
別個の効果として、冷却流路は、入口で開始し、チャック内部の中の冷却流路の全長に沿って延在し、冷却流体が出口でチャックから出ると終了する、囲まれた「冷却ループ」を画定する。冷却流体は、入口で発生する最低温度を有する冷却ループに入る。流体が流路を通過すると、流体は熱エネルギーを持つようになり、流体の温度は上昇し、冷却ループの初期部分はより低い冷却流体温度を有するより冷たい部分である。出口により近い流路の後期部分(より温かい部分)では、流体の温度は上昇し、流体はチャックからの熱を除去するために低減した容量を有する。チャック表面におけるより高い温度は、出口により近い冷却ループのより温かい部分で発生することになるが、これは、冷却流体がより高い温度を有するからである。
【0026】
チャック表面におけるこのタイプの温度上昇、およびチャック表面における不均一な温度を防止するために、冷却流路は、冷却ループの初期(より冷たい)部分と比較して、流路の長さの後の(より温かい)部分におけるチャックの上側表面により近い位置においてz方向に位置し得る。流路および冷却流体を上側表面により近くなるように配置することによって、冷却流体はより高い温度を有する冷却ループのより温かい部分における表面から流体までの熱伝達の改善が可能になる。
【0027】
概説すると、チャックの上側表面からの冷却流路の距離(すなわち、z方向における流路の位置、または「深さ」)は、冷却流体とチャック表面のある場所との間の所望の熱伝達に影響を及ぼすように選択され得る。この距離または深さは、上側表面に垂直な方向に、ベースの上側表面と、上側表面に最も近い流路のある場所との間で測定され得る。概説すると、冷却流体とベース表面との間の熱伝達量を増大させるために、流路は、(低減した深さでz方向に)上側ベース表面に比較的近くなるように位置決め可能である。冷却流体とベース表面の局所領域との間の熱伝達量を低減するために、流路は(より大きくした深さでz方向に)上側ベース表面から比較的遠くなるように位置決め可能である。流路の長さに沿った流路の深さは、流路の長さに沿った任意の割合で段階的にまたは非段階的に変化し得る。
【0028】
冷却流体とチャック表面との間の熱伝達の割合または量に影響を及ぼす異なるやり方として、冷却流体の断面積は、より大きくなった冷却流体の体積をより大きくなった熱除去量を必要とするチャック表面の場所に配置するように適応されてよい。概説すると、冷却流体とチャック表面の局所領域との間の熱伝達量を増大させるために、冷却流路の断面積を増大させてよい。冷却流体とチャック表面の局所領域との間の熱伝達量を低減するために、冷却流路の断面積を低減させてよい。流路の断面積の変化は、段階的にテーパ状になった直径の増大など段階的な変化としてもたらされ得る、または同じ直径を有する流路の2つの部分の間に位置する直径が小さくなったオリフィスなど、比較的急な変化の形であってよい。
【0029】
使用中のベースの上側表面の温度不均一性を改善する異なる例では、ベースの冷却流路システムは、主流路(「主要流路」)、および2つの他の流路部分を連結し、かつ2つの流路部分の間で冷却流体が流れることができるようにする側方流路(「副」流路、「供給」流路、「連結」流路)を含み得る。副流路は、主流路に対してより小さい断面積を有し、かつ1つの主流路を次の主流路に連結する流路の比較的短い長さを提供するとして特徴付けられ得る。例として、ベース内の流路システムの異なる部分は、より高い温度(より温かい部分)およびより低い温度(より冷たい部分)の冷却流体を含むようになる。
【0030】
流路システムの異なる部分における温度の不均一性を改善するために、流路のより冷たい部分からの冷却流体の流れの一部分を、流路のより冷たい部分から方向転換させて、より温かい部分における冷却流体の流れの一部分に追加してよい。方向転換した流れは、主流路の断面積を有するより冷たい部分である主流路から、より温かい部分であり、また主流路の断面積を有する異なる主流路に流れ得る。方向転換した流れは、より冷たい部分から、2つの部分を連結する側方流路を通してより温かい部分を通過してよく、この場合、側方流路は(それぞれがより大きい断面積を有する)2つの主流路に対して低減した断面積を有する。側方流路の低減した断面積は、より冷たい流路部分からより温かい流路部分への流動量(流量)を提供するような大きさに合わせられることになり、これによって、より温かい部分における冷却流体の流れの温度の所望の低減がもたらされることになる。
【0031】
さらに別の異なる設計特徴として、冷却流路の一部分は、冷却流路の異なる部分を通り越して、またはこの部分の下を通過してよく、この2つの流路は、ベースの厚さの範囲内の(z方向における)異なる深さに、および、ベース表面のある領域に対して同じxの場所およびyの場所に位置している。いくつかの設計によって、1つの流路を異なる流路に交差させることは、冷却ループのより冷たい区分およびより温かい区分の分布を改善する流路のパターンを生じさせるのに有用である可能性がある。
【0032】
例えば、いくつかの流路設計は、ベースを左半分および右半分に分割し、それぞれの半分において閉ループ流路を含み、この2つの流路は、単一の入口で開始して単一の出口で終了する。このタイプの2つの流路システムでは、それぞれの流路はベースのほぼ二分の一を冷却するのに役立ち、十字形の流路部分によって、ベースの両側(2つの半分)の冷却流体は、冷却流体がベースの非縁部分にある流路部分を通って流れる前に、ベースの縁部にある流路部分を通って流れることが可能になる。以下の図7の説明を参照されたい。
【0033】
説明されるような静電チャックは、静電チャックアセンブリを形成するために合わせて層状に組み立てられた、複数の別々に作製されたまたは個々に作製された部品(構成部品)を含むマルチピース(または「複数構成部品」)構造である。アセンブリは、静電チャックアセンブリに特有であり、かつ、静電引力がチャックの上側表面(「ワークピース接触面」と称される)でワークピースを適所に保持して、加工中にチャックがワークピース(例えば、半導体基板、マイクロ電子デバイス、半導体ウエハ、この前駆体)を支持することを可能にする、様々な構造および特徴を含む。静電チャックで使用されるワークピースの例として、半導体ウエハ、フラットスクリーンディスプレイ、太陽電池、レチクル、およびフォトマスクなどが含まれる。ワークピースは、円形の直径100ミリメートルのウエハ、直径200ミリメートルのウエハ、直径300ミリメートルのウエハ、または直径450ミリメートルのウエハ以上の面積を有し得る。
【0034】
チャックは、加工中にワークピースを支持するように適応された上部の「ワークピース接触面」を含む。上側表面は、典型的には、ワークピース接触面および多層チャックの両方の外周部を画定する円形縁部を有する円形表面積を有する。本明細書で使用される際、「ワークピース接触面」という用語は、使用中にワークピースに接触し、かつセラミック材料から作られ、典型的には上側表面にエンボスを備え、上側表面の少なくとも一部分を覆い得る任意選択の導電性コーティングを備えた上側表面を有する「主要な場」を含む静電チャックの上部露出面を指す。ワークピースは、セラミック材料の上側表面より上に、エンボスの上側表面と接触して、ワークピース接触面で保持され、静電チャックの使用中に静電チャックに対して保持される、または「クランプ」される。例示の静電チャックアセンブリは、ACおよびDCのクーロン型のチャックおよびジョンセン-ラーベック型のチャックで使用され得る。
【0035】
チャックアセンブリ(または略して「チャック」)はまた、チャックが機能するために必要とされるまたは任意選択であるいくつかの他の層、デバイス、構造、および特徴を含む。これらは、加工中にワークピースを適所に保持するためにチャックとワークピースとの間に静電引力を生成する電極層、接地層および関連の電気連結部などの接地デバイス、加工工程中に圧力、温度、または電気的特性を測定するための測定デバイス、温度制御機能の一部としてのガス流導管(冷却流路)、ワークピース接触面とワークピースとの間のガス流および圧力制御のための裏面ガス流機能、および、導電性表面コーティングなどを含み得る。
【0036】
典型的なチャックアセンブリの1つの層は、アセンブリの上部におけるセラミック層(別名、誘電体層)である。セラミック層は、アセンブリの最上層であってよく、セラミック層の上側表面上に配置され得る、導電性コーティングまたはエンボスなど以外のチャックの上側表面を含み得る。上側表面における導電性コーティングは、チャックアセンブリにも含まれる接地層または接地ピンなどを通して電気接地に連結されてよい。セラミック層は、とりわけ、アルミナ、窒化アルミニウム、石英、SiO(ガラス)などの有用なセラミック材料から作られてよい。セラミック層は、単一の(一体的な)材料層から作られてよい、あるいは必要に応じて、2つ以上の異なる材料、例えば、異なる材料の複数の層から作られてよい。セラミック層(セラミック材料の1つまたは複数の層を有する)の総厚は、任意の有効厚さ、例えば1~10ミリメートル、例えば1~5ミリメートルの範囲の厚さであってよい。
【0037】
セラミック層は、とりわけ説明されるように、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、金属基複合材などの金属から作られ得る本明細書に説明されるようなベース層(略して「ベース」)によって、下で支持される。
【0038】
典型的には、セラミック層とベースとの間には、接合層(例えば、ポリマー接着剤)、電極、接地層、電極および他の層が電気的に機能することを可能にする絶縁層、または追加の回路のうちの1つまたは複数がある。
【0039】
有用なチャックアセンブリの一例を図1に示す。チャックアセンブリ10は、ベース12と、セラミック層(アセンブリ)14と、ベース12をセラミック層14に接合する接合層16とを含む。セラミック層14は、電極(具体的に示さず)などの従属部品を含む。セラミック層14の上側表面には、エンボス18のパターンがある。示されるように、ウエハ20はエンボスによって支持される。ウエハ20の下側表面とセラミック層14の上部との間には空間22が存在する。空間22は、セラミック層14の上側表面に位置するエンボス18により生じ、このエンボスは、セラミック層18の上側表面より上のわずかな距離でウエハ20を支持する。使用中、冷却ガスの流れは、ウエハ20とセラミック層14との間の空間22を通過して、ウエハ20の温度を制御する(例えば、下げる)ことができる。ベース12は、具体的に示されていない冷却流路を含んでいる。
【0040】
本明細書のチャックアセンブリは、冷却流路を含むベース構造を含む。説明されるようなベース構造は、z方向におけるベース内部の不均一な位置、不均一な断面積、または不均一な断面形状などの不均一な特徴を有する冷却流路を含む。これらの特徴は、ベース、チャック、および支持されたワークピースの冷却効率および冷却(温度)均一性を、これらの特徴をベースの一部としてどのように生じさせるかにかかわらず、すなわち、プロセスのどのタイプを使用してこれらの特徴およびベース構造全体を生じさせるかにかかわらず、改善するのに効果的であり得る。それ故に、本明細書の開示は、冷却効率および冷却均一性の改善をもたらすように、説明した不均一な特徴を有する冷却流路を含むようにベースを作製するいずれの特定の方法も必要としない。
【0041】
依然、様々な形状、断面、および深さ、任意選択の十字形、および任意選択の連結流路の組み合わせを有する流路システムなど、かなりの複雑さを有する冷却流路の不均一な特徴を生じさせるために、付加製造法はとりわけ効果的であり得る。それ故に、この説明のベース構造が付加製造法によって作製される必要がないとしても、本明細書は、主に、付加製造法に言及する用語を使用することになる。
【0042】
付加製造技術によって形成された冷却流路は、現在知られている機械加工技術を使用して形成される流路と比較するとより正確であり得、(機械加工によって形成できない)代替的な断面形状で形成され得、より複雑な(蛇行した三次元の)パターンに形成され得、ベース内部の中に三次元で容易に形成され得、高流路密度でまたは相互連結された流路によりベースにおいて容易に形成され得る。冷却流路の断面形状の例としては、円形、三角形、六角形、ドーム形状(一端では湾曲、他端では平坦)、および涙滴形状の形状が挙げられる。
【0043】
好ましい付加製造法によると、内部冷却流路を含むベース構造全体は、付加製造技術を使用して生じさせることができる。冷却流路システムは、ベース内部のある領域に広がる閉ループ流路を形成する任意選択で相互連結した開放された空間(例えば、「空いた」場所)を、連結されるパターンまたはシステムとして付加製造法によってベース構造において形成可能である。流路は、流路の各所にベースの材料がないことによって画定され、ベース内の流路の構造を形成または画定するために他の構造は必要ではない。流路は、ベース層の内部全体に及び、例えば、付加製造法によって、ベースの形成中にベース構造内に形成される空間以外の構造または表面を必要としない。
【0044】
流路は、表面で必要な他の材料はなく、ベースの材料の表面によって画定される。特に、冷却流路は、ベース構造から別々に形成され、かつベース構造と組み合わせられたまたはベース構造内に配置された別々の管、配管、または導管など、ベースの構造以外の付加的な構造を含んでいないまたは必要としない。使用中、冷却流体は、ベースの材料から作られた側壁と接触している冷却流路を通って流れ、該流路の内面を形成または画定するための他の材料は存在しない。
【0045】
冷却流路は、ベースの内部分を通って冷却流体(例えば、水または別の冷却液体)を循環させて、ベース、チャック、および支持されたワークピースから熱を除去し、かつベース、チャック、およびワークピースの温度を制御するように機能する。流路は、ベースの内部に形成され、垂直に(例えば、上から、「上面視」において)見てベース表面の領域に対してx方向およびy方向に、および任意選択で、ベースの厚さに沿って垂直方向(z方向)に、二次元で延在する。冷却流路は、冷却流体がベースに入ることを可能にするベースにおける少なくとも1つの入口と、流体がベースから出ることを可能にする少なくとも1つの出口とを含む。入口と出口との間は、流路または流路システムの閉ループである。
【0046】
図2Aおよび図2Bは、説明されるような流路を含む本明細書のベース100の単一の一般的な例を示す。ベース100は、外周部110と、上側表面102と、下側表面104と(それぞれがx方向およびy方向の両方に延在する領域を有する)、対向する2つの表面の間の(z方向の)厚さとを含む。冷却流路106(図2Bでは円形断面を有するように示されている)は、ベースの内部分に蛇行パターンとして存在する。
【0047】
図2Aには、流路106の異なる部分がまた、異なる断面形状、異なる断面積、またはベース100の厚さ方向(z方向)の範囲内の異なる深さの場所を有し得ることが示されていない。図2Bは、流路106の異なる部分が厚さ方向における異なる場所に位置していることを示している。
【0048】
図2Cは、三角形(i)、六角形(ii)、ドーム形状(一端では湾曲し、対向端では平坦である)(iii)、および涙滴形状(iv)である断面を含む冷却流路の断面形状の例を示す。
【0049】
これらまたは他の断面形状では、冷却流路の他の不均一な特徴をベース設計に組み込むこともできる。例えば、冷却流路は、ベースの底面と比較してベースの上面に向かってより大きな体積を有するように形成され得、流路は、流路のより大きい部分が上面に向かうように、または流路の異なる部分がベースの上側表面およびベースの下側表面から異なる距離で位置するように成形され得る。流路は、ベースの厚さに沿った異なる位置に位置している部分を有してよい。代替的にはまたはさらに、冷却流路の断面プロファイルは、ベース内の場所に基づいて変化し得、流路の断面は、(断面積の)サイズが小さくなり得る、またはベース中心の近くのベースのある部分において異なるように成形され得、上側ベース表面における、より均一な熱伝達および温度制御の改善を可能にするように縁部においてより大きくなり得るまたは異なって成形され得る(またはこの逆もまた同様)。他の設計例では、2つの流路または流路部分(主流路)は、主流路よりも小さい断面積を有するより小さい「側方流路」によって連結されて、流路の1つの部分から流路の異なる部分への冷却流体の流れを可能にし得る。
【0050】
ここで、図3Aおよび図3Bを参照すると、本明細書に説明されるようなベースの2つの対向する側断面図が示されている。図2A図2B、および図2Cの特徴に応じた特徴が数字で示されているが、構造の詳細は異なっている場合がある。図3Aおよび図3Bでは、流路106の場所を示すために、ベース100の左側および右側の断面が示されている。ベース100は、外周部110と、上側表面102と、下側表面104と(それぞれがx方向およびy方向の両方に延在する領域を有する)、対向する2つの表面の間の(z方向の)厚さとを含む。冷却流路106は、固体ベース材料108の内部の中で延在する。
【0051】
この例では、流路106は、流路または流路システムの全長に沿った類似の断面形状(円形)および断面サイズで作られている。しかしながら、ベース100の異なる部分は、上側表面102からの異なる距離(深さ)に位置する流路106を含む。部分110は、流路106のより冷たい部分とみなされ、より温かい部分112から上流にあり、比較的低い温度で流体を搬送する。冷却流体は、入口で流路106に流入し、最初により冷たい部分110を通って流れ、次により温かい部分112を通って流れる。部分112であるより温かい部分は、より冷たい部分110において上流に含まれている流体と比較してわずかに加熱されることになる冷却流体を含んでいる。流体がより温かい部分112を通過すると冷却流体の温度が上昇するように調節するために、より温かい部分112の流路106は、より冷たい部分110の流路106と比較すると上側表面102のより近くに位置決めされる。
【0052】
同様に、縁部分114は、外周部110におけるベース100の露出面により、より冷たい部分110またはより温かい部分112のどちらかと比較して大気からのより大きい熱量を吸収する。縁部分114に追加されるこの増加した熱量によって、縁部分114、および、縁部分114においてまたはこの近くで流路106を通過する冷却流体の温度が増大する。縁部分114を通って流れる水の冷却容量の損失を調節するために、流路106はまた、縁部分114において、例えば、より冷たい部分110の流路106と比較して、上側表面102のより近くに位置している可能性がある。
【0053】
図4は、本明細書に説明されるようなベースの上部断面図である。図2A図2B、および図2Cの特徴に応じた特徴が数字で示されているが、構造の詳細は異なっている場合がある。図4において、ベース100の断面が示されており、詳細には、流路106がx方向およびy方向において固体ベース材料108を通して延在することが示されている。3つの流路106が示されており、このそれぞれは、円形であり、かつ流路106の長さに沿って基本的に均一である断面サイズ(面積)である断面形状を有する。
【0054】
ベース100の表面(図示せず)を通過する流路106は、入口118に連結される。ベース106の使用中、冷却流体は入口118から流路106に入り、第1の流れF1および第2の流れF2のような2つの方向に流れる。入口118の近くに、流路106は、縮小した直径部分またはオリフィス120を含み、これは、冷却流体が入口118から流路106に入ると流れF1およびF2の相対量に影響を及ぼす。オリフィス120は、圧縮オリフィスであり、これによって、オリフィス120の場所における流路106を通る流量の低減が可能になる。その結果、オリフィス120の収縮効果により、流れF2の流量(時間当たりの流体量)が大きくなり、流れF1の流量は低くなる。
【0055】
図5は、本明細書に説明されるようなベースの断面透視図である。図2A図2B、および図2Cの特徴に応じた特徴が数字で示されているが、構造の詳細は異なっている場合がある。図5において、ベース100の断面が示されており、詳細には、主流路106(a、b)および(長さおよび断面積が)より小さい側方流路122がx方向およびy方向において固体ベース材料108を通して延在することが示されている。
【0056】
図5の流路システムは、側方流路(「連結」流路)122によって連結される主流路(「主要」流路)106(a、b)を含む。側方流路122は、主流路106に対してより小さい断面積を有し、また、2つの主流路の流れを連結するために2つの主流路の間に延在する比較的短い長さを有する。この例では、主流路106aは、流路106bを通って流れている冷却流体よりも低い温度を有する冷却流体の流れを含んでいる。主流路106aは、主流路106bと比較して入口により近い上流、すなわち、流路106bから「上流」にある。
【0057】
ベース100内の温度均一性を改善するために、流路106aにおけるより冷たい流体の流れは、流路106aのより冷たい部分から、2つのより温かい流路106bのそれぞれに方向転換される。方向転換した流体は、より冷たい流路106aから、側方流路122のそれぞれを通してより温かい流路106bに流れる(流れ方向を示す矢印を参照)。それぞれの側方流路122は、それぞれの断面積がより大きい主流路106aおよび106bに対して断面積が低減している。側方流路122の断面積の減少によって、より冷たい流路部分106aからより温かい流路部分106bへの流出量(流量)が、より温かい流路部分106bにおける冷却流体の温度が所望通りに低下するようにもたらされる。
【0058】
図6は、本明細書に説明されるようなベースの上部断面図である。図2A図2B、および図2Cの特徴に応じた特徴が数字で示されているが、構造の詳細は異なっている。図6において、ベース100の断面が示されており、詳細には、流路106aおよび106bがそれぞれ、x方向およびy方向において固体ベース材料108を通して閉ループとして延在することが示されている。冷却流体は、入口130においてベース100に入り、この流れは、流れ矢印によって示されるように2つの方向に分かれる。
【0059】
流路106aは、ベース100の表面積のほぼ半分を覆う、入口130と出口132との間の閉ループを含む。流路106bは、ベース100の表面積のほぼ半分を覆う、入口130と出口132との間の閉ループを含む。第1の流れ方向(示されるように左)において、冷却流体は、ベース100の(示されるような)底部半分の領域に対して比較的大きい断面積を有する流路106aを通って流れる。流路106aの端部では、流路は直径が小さくなったテーパ形136になる。テーパ形を通過後、流体は出口132から流路106aを出る。
【0060】
入口130からの第2の流れ方向(示されるように右)において、冷却流体は、流路106bおよびテーパ形134に流入して、ベース100の(示されるような)上部半分の流路106bの一部分へと流れる。流路106bは流路106aと比較すると比較的小さい断面積を有する。このように直径が小さくなった流路106bの端部には出口132がある。
【0061】
本明細書によると、図6の例示のベース100と合致するように、ベースの流路の異なる特徴は全て、個々の効果を有するが、2つ以上の特徴の組み合わせを合わせて使用して、ベースの異なる領域における所望の温度制御を実現し得る。具体的な例において、深さ、断面積、および断面形状の異なる組み合わせを有する流路は、ワークピースを支持するためにチャックを使用中に発生し得る静電チャックの局所的な温度変動を制御するようにベース内に設計されてよい。図6のベース100に関して、流路106aおよび流路106bは、異なる断面積を有し、具体的に図示されていないが、ベース100のz方向において異なる断面の深さにあってもよい。一般的に、ベースの流路は、異なる深さの場所、および異なる断面積または形状の組み合わせを表す流路の部分を含んでよい。これらの特徴の組み合わせを含む流路設計の有用な効果は、使用中のベースの効果的な熱除去および温度均一性であり得る。
【0062】
図7は、説明されるようなベースの上部断面透視図である。図2A図2B、および図2Cの特徴に応じた特徴が数字で示されているが、構造の詳細は異なっている。
【0063】
図7において、ベース100の断面が示されており、流路106がx方向およびy方向において固体ベース材料108を通して閉ループとして延在することが示されている。流路106aは、入口130と出口132との間に、ベース100の表面積のほぼ半分(示されるように左下半分)を覆う閉ループを含む。流路106bは、入口130と出口132との間に、ベース100の表面積のほぼ半分(右上半分)を覆う閉ループを含む。
【0064】
冷却流体は、入口130において流路106に入り、この流れは、流れの矢印によって示されるように2つの方向に分かれる。第1の流れ方向(示されるように左上)において、冷却流路106aは、直接ベース100の外側領域へと延在し、外周部110におけるベース縁部の近くを通る。第2の流れ方向(示されるように右)において、冷却流路106は、直接ベース100の対向する異なる外側領域に延在し、外周部110におけるベース100の縁部の近くを通る。入口130において最初に流路106aおよび106bに入るとベース100のこれらの縁部分まで延在することによって、冷却流体は、ベース100の縁部領域において流路106aおよび106bの縁部分を通過するときに元の(最低)温度にある。2つの流路のそれぞれは、ベース100の異なる半分(流路106bでは右上、流路106aでは左下)全体を通して延在する。ベース100の各半分における閉ループを通過後、それぞれの流れは、出口132を通過することによって流路106aおよび106bから出る。
【0065】
交点134において、流路106aは、連結されていない交点134において流路106より下を(z方向に)通る。交点134において、2つの流路はベース100の厚さの範囲内の異なるz方向の深さにあるため、2つの流路はベース100の同じxの場所およびyの場所に位置しているが、2つの流路内の流れは連結していない。有利には、連結されていない交点134によって、入口130における2つの異なる流れ(右への流れおよび左への流れ)はそれぞれ、最初にベース100の縁部分に進むことができる。
【0066】
以下の説明は、付加製造法によって、説明されるような冷却流路を有する、静電チャックアセンブリの構成部品として有用であり得る固体の実質的に非多孔質の三次元ベース構造を作製するための方法に関する。これらには、一般に「3D印刷」技術と称される方法が含まれる。
【0067】
様々な種類の付加製造技術が知られている。付加製造法は、一般的に、供給原料の層から取り出された固化した供給原料複合材の複数の層を連続的に形成する一連の個々の層形成工程を含む。それぞれの工程が構造の単一層を形成する、一連の付加製造工程を使用して、固化した供給原料の複数の層が、本明細書では多層複合材(または「複合材」)と称される構造に連続的に形成される。
【0068】
本明細書で使用される際、「複合材」(または「多層複合材」)という用語は、固化した供給原料の一連の複数の個々の、個々に形成された層を連続的に形成することによって、付加製造によって形成された構造を指す。複合材は、(上面を有する)上部分、(底面を有する)底部分、および(例えば、冷却流路を含んでいる)内部分のそれぞれを含み、3つの部分の全てが、付加製造法の層形成工程によってのみで(例えば、2つの別々に製作された部品を共に接合するために真空ろう付け工程または任意の他のタイプの接合工程を使用せずに)共に形成されかつ保持される、静電チャックのベース(「ベース」)の形態を取り、本明細書では「連続的な」ベースまたはベースの「連続的な層」と称される場合がある。
【0069】
この文脈における「連続的な」という用語は、ベースまたは層構造が複数の連続的に形成された層から単一部品の複合構造として形成されることを意味する。「連続的な」という用語は、2つの個々の部品を別々に形成後、例えば、真空ろう付け技術または異なるタイプの接合技術によって、2つの別々に形成された部品を互いに接合することによって作製される構造を指すものではない。連続的なベース構造は、接合工程から生じる継ぎ目または境界、特に、ベースの材料とは異なる組成を有する接合材料または充填材料から作られた継ぎ目または境界を含まない。
【0070】
付加製造技術の1つの具体例は、一般に「選択的レーザ溶融」と称される技術である。選択的レーザ溶融(SLM)は、直接金属レーザ溶融(DMLM)またはレーザ粉末床溶融結合(LPBF)としても知られており、高出力密度レーザを使用して供給原料材料の固体粒子を溶融する三次元印刷方法であり、これによって、粒子の溶融した(液体)材料を流動させて溶融材料の連続的な層を形成することができ、さらにまた、連続的な層を冷却および固化させて固化した供給原料を形成することができる。ある特定の例示の方法によると、供給原料の粒子を完全に溶融して液体を形成する(すなわち、液化する)ことができ、この液体材料を流動させて実質的に連続的な実質的に非多孔質(例えば、80、85、または90%を上回る多孔度)の膜を形成後、これを冷却し、多層複合材の固化した供給原料層として硬化させることができる。
【0071】
選択的レーザ溶融法は、選択的レーザ焼結(「SLS」)として知られる別の付加製造技術と同様の特徴を含む。選択的レーザ焼結は、レーザエネルギーを使用して、供給原料材料の粒子が焼結されるようにする、すなわち、粒子が溶融されることなく融解されるようにする。これによって、加熱された粒子の材料によって形成される構造は、粒子間に空間を有することになり、これは構造が多孔質であるということを意味する。対照的に、選択的レーザ溶融を使用して、粒子が完全に溶融されて固体の(実質的に非多孔質の)三次元構造が形成されるようにすることができる。
【0072】
付加製造技術は、金属材料(合金を含む)および金属基複合材料を含む広範囲の材料から作られたベース構造を形成するのに有用であり得る。選択的レーザ溶融技術を含む付加製造技術により、ベースを形成するために使用可能である可能性のある金属、合金、および金属基複合材の範囲には有利には、機械加工技術などの先行の技術によって有用なベース構造に容易に形成されない材料が含まれ得る。付加製造技術で利用可能な材料の範囲には、アルミニウム合金、チタン合金、および様々な金属基複合材料など、レーザエネルギーによって溶融可能である金属および金属合金が含まれ、これらの一部は機械加工によって容易に加工されない。例示の材料は、これらの材料が正確な寸法および複雑な冷却流路を含む静電チャックのベースの正確な構造を形成するために機械加工技術によって加工することが困難であり得るような高硬度を示す場合がある。付加製造技術を使用することで、このような材料を加工して、複雑で囲まれた(「埋め込まれた」)冷却流路を含むベース構造を、標準的な機械加工技術を使用することによって同様に形成することが困難であろう材料からであっても形成することができる。
【0073】
ベースを作製するために使用される材料は、静電チャックアセンブリのベースを作製するのに有用な任意の材料、例えば、様々な金属(合金を含む)および金属基複合材を含む無機材料であってよい。「金属」という用語は、本明細書では、金属技術、化学技術、および付加製造技術の範囲の「金属」という用語の意味と合致し、任意の金属もしくは半金属の化学元素またはこれらの元素の2つ以上の合金を指すように使用される。
【0074】
「金属基複合材」(「MMC」)という用語は、少なくとも2つの成分または2つの相を含むように作られた複合材料を指し、一方の相は、金属または金属合金であり、別の相は、金属基中に分散される、繊維、粒子、またはウィスカなどの、異なる金属または別の非金属材料である。非金属材料は、炭素ベース、無機、セラミックなどであってよい。いくつかの例示の金属基複合材料は、アルミナ粒子を有するアルミニウム合金、炭素を有するアルミニウム合金、ケイ素を有するアルミニウム合金、炭化ケイ素(SiC)を含むアルミニウム合金、TiBを有するチタン合金、ケイ素を有するチタン合金、炭化ケイ素(SiC)を有するチタン合金の組み合わせから作られる。
【0075】
本明細書の方法に従って有用であり得る金属および金属合金には、静電チャックアセンブリ用のベース構造を作製するために従来使用されてきた金属および金属合金、さらに、使用されていなかった他の材料が含まれる。有用なまたは好ましい材料には、鉄合金(例えば、ステンレス鋼および他のタイプの鋼)、チタンおよびチタン合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金、ならびに様々な金属基複合材料などの金属が含まれる。
【0076】
本方法によると、ベースは、先行の方法(例えば、機械加工方法)からベースを作製するために使用され得るものよりも多くの種類の材料から作製され得る。より多くの種類の材料が利用可能であることで、ベースの材料は、静電チャックアセンブリのベースにおいてとりわけ有用であるまたは望ましい、および、隣接するセラミック層などのアセンブリの他の構成部品に使用される材料を考慮した、物理的特性をもたらすように選択される場合がある。
【0077】
熱膨張係数(「CTE」)は、金属、金属基複合材、およびセラミック材料の既知の物理的特性である。本明細書のベース層の材料は、一般的に、静電チャックのベースアセンブリの構成部品を形成するために以前より使用されてきた様々な金属およびセラミック材料の熱膨張係数と同程度の熱膨張係数を有し得る。説明されるようなベースアセンブリのベースまたはセラミック層として有用であり得るいくつかの例示の材料およびそれらのおおよそのCTE値は、以下のように、アルミナ(8.1×10-6m/(m K))、アルミニウム(21~24×10-6m/(m K))、アルミニウム合金(AlSi7Mg)(21~22×10-6m/(m K))、窒化アルミニウム(5.3×10-6m/(m K))、ステンレス鋼440C(10.2×10-6m/(m K))、ステンレス鋼17-4PH(10.8×10-6m/(m K))、鋼M2(ツール)(11×10-6m/(m K))、チタン(8.6×10-6m/(m K))、チタン合金Ti-6Al-4v(TC4)(8.7~9.1×10-6m/(m K))である。
【0078】
例示として、説明されるようなベースを作製するために使用される金属または金属基複合材料の有用なまたは好ましい熱膨張係数は、4×10-6m/(m K)~30×10-6m/(m K)、例えば、5×10-6m/(m K)~25×10-6m/(m K)の範囲内にあり得る。
【0079】
ある特定の好ましいベース構造および静電チャックアセンブリでは、ベースの材料は、好ましくは、アセンブリの隣接する層の熱膨張係数に一致またはこれと同様の熱膨張係数を有するものであってよい。多くの場合、静電チャックアセンブリの一部として、ベース層は、ベース層およびセラミック層が同様の温度条件を受け、一方の熱膨張が他方によって影響を受ける(例えば、制限される)ように、アセンブリのセラミック層の近くに、これに隣接して、またはその他の場合はこれに十分近づけて配置される。そのような場合、アセンブリのベース層とセラミック層との有用な組み合わせは、ほぼ等しい熱膨張係数を有する材料から作られ得る。静電チャックアセンブリの好ましいベースは、同じチャックアセンブリの一部であるセラミック層の熱膨張係数と同程度の熱膨張係数を有し得る。ベースの熱膨張係数は、セラミック層の熱膨張係数(m/(m-ケルビン度))の25、20、15、10、または5%以内であってよい。説明されるような付加製造技術の層ごとの手法によって、静電チャックベースに含まれるときに非常に効果的な構造である、複雑で正確な入り組んだ形状を形成可能にすることができる。機械加工技術と比較して、説明されるような付加製造技術は、非常に複雑であり、ベースの表面積の大部分を覆い、ベース構造の全体積に対してベース構造の大きな体積を占有し、または、使用中に静電チャックによって支持される特定の特徴を有する特定のワークピースの冷却を可能にする特別に設計された(特化された)パターンで構造化される冷却流路のパターンを生じさせる際により効率的であり得る。
【0080】
付加製造技術によって形成された流路は、異なるまたは多様な形状(断面)、パターン(ベースアセンブリの表面に対する)、およびサイズ(例えば、流路の幅または直径)を有してよく、流路を通る流体を滑らかで効率的に流すことを可能にする表面特徴を有してよい。例えば、機械加工工程では、典型的には(断面が)正方形の流路を生じさせるが、付加製造技術は、(断面が)円形の流路を生じさせるのに有用となり得るため、正方形の断面を有する流路を通ると乱流になるのと比較して、この流路を通ると流れを改善(層流)することが可能になり得る。別の例として、流路は、非対称断面を示すように形成され得、これによって、ベースの表面を通る熱伝達効率が改善された流路の設計が可能になり得る。
【0081】
付加製造法によって、静電チャックの完全で(または実質的に完全で)機能的なベース層が、単一の製造プロセス(単一の付加製造「工程」)を使用して作製可能であり、これによって、単位当たりの時間量が低減された高製造効率(高製造スループット)がもたらされる。実質的に全ての必要とされる構造(底部分、内部分、および上部分を含む)を備えたベース層は、単一の一連の付加製造工程によって作製され得る。例えば、ベース構造を形成するための「1工程」付加製造プロセスと称され得るものは、説明されるような多層複合材として、単一の連続的な層として(底部分、内部分、および上部分を含む)ベースの多くの、ほとんどの、または全ての必要とされる構造を形成することができる。1工程付加製造プロセスは、複数の別々の部品を別々の工程によって個々に形成後、その複数の別々に形成された部品を共に接合して機能的なベース構造を形成するさらに追加の工程を行う必要性を回避する。
【0082】
さらにまた、付加製造技術を使用して、非常に正確な平坦度および低い表面粗さを含む高精度の寸法を有するベースを形成することができる。
【0083】
例示の方法によると、ベースは、高い平坦度、例えば、「超平坦な」表面を示すように作製可能であり、平坦度がアセンブリの金属基複合材層の上側表面で測定されることで、ベースの高い平坦度は、静電チャックアセンブリの平坦度を改善することができる。
【0084】
平坦度は、静電チャック、またはチャックのベース構成部品の典型的な特性であり、三次元測定機を使用するなどによって既知の技術によって測定可能である。一般に、平坦度は、測定された表面の山(最高測定点)と谷(最低測定点)との間の(z方向の)高さの差として測定かつ報告され、距離の単位、例えば、ミクロンで示される。機械加工工程のみによって作製された直径300ミリメートルのベースは、30ミクロンと低い平坦度を示すように形成されてよい。本明細書に説明されるような同等のベース(直径300ミリメートル)の表面では、付加製造工程によってベースを形成後、機械加工工程によってベース表面をさらに加工することによって、機械加工によってのみ形成されたベースと比較してベースの平坦度が改善可能である。付加製造後のベース表面の平坦度は、45または50ミクロンを下回っている場合があり、例えば、40ミクロンと低い場合がある。表面は、さらにより低い平坦度、例えば30ミクロン未満、例えば20ミクロン未満、または約15ミクロンと低い平坦度をもたらすように、機械加工工程によってさらに加工されてよい。
【0085】
静電チャックアセンブリのある特定の高度な用途(例えば、Cryo、低角度注入)では、有用なチャックアセンブリは、アセンブリの上側表面(例えば、セラミック層の上部)で測定される超高平坦度を示すべきである。チャックアセンブリのある特定の用途のための好ましい平坦度値は、300ミリメートルのチャックの場合、上部セラミック表面で測定されると10ミクロンを下回る場合がある。広範囲の動作温度にわたってこの超高平坦度特性を維持することも重要である。ある温度範囲にわたるチャックアセンブリの平坦度は、チャックアセンブリの異なる層(セラミック層およびベース層)の熱膨張係数値を厳密に適合させることによって、また、熱を抽出するためのアセンブリからの放熱(ベースを通した流体流による熱除去)の改善によって、さらにまた、層間の接合部におけるこれらの層の表面の平坦度の改善によって、改善可能である。チタン、チタン合金、および金属基複合材などのチャックアセンブリのベースを形成するために使用される材料によって、CTE適合の改善、およびこれらの材料よりも剛性が低いアルミニウムなどのチャックベースを形成するために一般に使用されている以前の材料と比較して平坦度の改善がもたらされ得る。
【0086】
さらに、付加製造法を使用して、比較的低い粗さを示すようにベースを作製することができる。粗さは、静電チャックのベースの典型的な特性であり、例えば、3Dレーザ顕微鏡または触針式粗面計を使用することによって、表面の粗さプロファイルの算術平均(「Ra」と示される)によって表されるものを含めて、既知の分析技術によって測定可能である。Raは、表面の測定された微視的な山および谷の粗さ平均として計算される。説明されるような付加製造法によって作製された後、機械加工工程を行って、付加製造法によって作製された表面の粗さが低減された、ベースの例示の表面は、1ミクロン未満、例えば0.5ミクロン未満、または約0.1ミクロンと低い表面粗さ(Ra)を有することができる。粗さ(Ra)は、ISO 4287-1:1984またはASTM F 1048などの様々な標準法のうちの1つによって判定可能である。
【0087】
ベースを形成する精度が改善されたことによって、ベースに取り付けられたセラミック層を含む多層チャックアセンブリを形成する精度がより高く改善されることが、セラミック層の上部で測定される平坦度が改善されることを含めて可能となる。300ミリメートルの直径を有する機械加工法によって作製された典型的なベースをセラミック層と組み合わせて、上側セラミック表面で測定された30ミクロンと低い平坦度を示すアセンブリを形成してよい。例示の実施形態では、本明細書のベース層を同等のセラミック層と組み合わせて、上側セラミック表面で測定された30ミクロンを下回る平坦度、例えば25ミクロン未満、例えば20ミクロン未満、または約15または10ミクロンと低い平坦度を示す300ミリメートルの直径を有するアセンブリを形成することができる。ベースアセンブリの金属基複合材層のこの低い平坦度を実現するために、ベース層は付加製造によって形成されてよく、(金属基複合材層に接触することになる)ベースアセンブリの表面を機械加工して、付加製造工程によって生じた表面の平坦度を改善することができる。
【0088】
本明細書の方法は、付加製造技術を使用して、複合材の複数の層を連続的に形成することによってベース構造(例えば、連続的なベース層、またはベース層の一部分)を形成する。複合材は、それぞれ個々に任意の有用な厚さを有し得る複数の層から、および、溶融して流動させ、ベース構造の実質的に非多孔質の材料として有用である密度の高い無機(例えば、金属または金属基複合材)の固体を形成することができる1つまたは複数の材料から、形成される。
【0089】
一般的に、ベースは、ある厚さの2つの対向する平坦な円形の表面を含む平坦な円盤などの、平坦で薄い典型的には円形の構造(上および底方向から見て)の形態を有するとみなされ得る。2つの対向する表面は、ベース層の上部および底部として動作する。ベースの内部分は、2つの対向する表面の間に存在する。内部分は、曲がりくねり、うねり、ねじれ、遠回りの、または蛇行する経路で内部分を通って延在する囲まれた流路(冷却流路)システムを含むことができる。
【0090】
流路は、ベースの動作中にベースの温度を制御するために使用可能である流体の流れ(例えば、水または別の液体または気体の冷却流体)を収容することができる。厚さの間およびベースの2つの対向する表面の間に(上部から底部に、および厚さ全体にわたって)延在する垂直孔(「開口」)、または上面および底面のうちの1つまたは両方における流路または溝などの他の構造もまた、ベースの表面に形成されてもよい。
【0091】
チャックアセンブリの機能的なベース層は、少なくとも3つの異なる部分、すなわち、底面を含む下側部分と、底面の反対側の上側表面を含む上側部分と、上側部分と下側部分との間に配設され、かつ冷却流路を含んでいる場合がある中間(「内部」)部分とを含むとみなされ得る。好ましくは、説明されるような好ましい方法によると、3つ全ての部分およびそれらの全ての層は、付加製造法によって製造可能であり、それによって、単一の(好ましくは途切れない)一連の層形成工程が使用され、任意選択で、好ましくは、全ての層形成工程が単一の付加製造装置上で実行されて、機能的なベース層の全ての層を、接合工程(例えば、真空ろう付け)によって形成され得る継ぎ目または境界など、いずれの継ぎ目または内部境界も含まない無機材料の連続的な継ぎ目のない層として形成する。「途切れない」とは、一連の付加製造工程におけるそれぞれの層形成工程が、層形成工程のいずれか2つの間にいずれの異なるタイプの工程(例えば、任意のタイプの非層形成工程)を行うことなく、および、充填材料、ろう材、または接着材などを使用してベース層の2つの部品を共に接合する接合工程(付加製造工程とは異なる)を行うことなく、順に実行されることを意味する。
【0092】
そのような方法は、本明細書に記載される方法の一例として、付加製造によって底面を含むベースの下側部分を形成することと、付加製造によって下側部分上に冷却流路を含むベースの中間部分を形成することと、付加製造によって中間部分上に上側表面を含むベースの上側部分を形成することとを含んでよい。
【0093】
複合材のそれぞれの層は、所望の材料から所望の厚さで所望されるように形成されて、所望の特性を有する多層複合材の形態でベース構造を生じさせ得る。例示的な付加製造法によって、それぞれの層は、一般的に粉末の形態である粒子の集合体(「供給原料」と称される)から作製される。供給原料は、高エネルギーレーザによって溶融されて液化かつ流動して溶融材料の連続的な層を形成後、冷却し固化して多層複合材の層を形成することができる、1つまたは様々な異なる無機材料で構成された小さな粒子を含んでいる。
【0094】
本明細書による有用な粒子は、説明されるような有用な多層複合材を形成するように加工可能である任意の粒子であってよい。粒子は、高エネルギーレーザからのエネルギーを使用して溶融されることで多層複合材の層を形成することができる無機粒子を含む、これらで構成される、または基本的にこれらで構成される粉末の形態の供給原料に含まれてよい。
【0095】
有用な粒子の例には、説明されるように、レーザエネルギーによって溶融または液化されて、ベース構造の層を形成することができる無機粒子が含まれる。そのような粒子の例には、金属(合金を含む)および金属基複合材でできている無機粒子が含まれる。いくつかの有用な例には、一般的に、アルミニウム、チタン、およびそれらの合金などの金属および金属合金、ならびに金属基複合材が含まれる。有用なアルミニウム合金の1つの具体例は、AlSiMgである。有用なチタン合金の1つの具体例は、TiAlVである。
【0096】
供給原料の有用な粒子は、ミクロンのスケールの(例えば、500ミクロン未満、100ミクロン未満、50ミクロン未満、10ミクロン未満、または5ミクロン未満の平均サイズを有する)小さいまたは比較的小さい粒子を含む、効果的である任意のサイズ(例えば、平均粒子径)またはサイズ範囲であり得る。
【0097】
粒子は、説明されるような加工の有効性を実現するように選択されて、供給原料に含まれ、供給原料層に形成され、溶融され流動して連続的な層を形成することが可能であり、連続的な層が冷却して固化した供給原料を多層複合材の層として形成することができる。粒子のサイズ、形状、および化学的組成は、これらの目的に効果的である任意のものであり得る。
【0098】
粒子は、本明細書の付加製造プロセスにおいて使用可能である供給原料複合材の形態のものであり得る。例によると、付加製造プロセスにおいて有用な供給原料は、溶融して多層複合材の連続的な実質的に非多孔質の層を形成することが可能である粒子を含んでいてよい。供給原料材料は、いずれの他の材料も含んでいる必要はないが、必要に応じて任意選択で少量の他の材料を含んでいてよい。例示の供給原料複合材は、供給原料複合材の総重量に基づいて、重量で少なくとも80、90、または95、98、または99%の無機粒子を含んでいてよい。必要に応じて、フローエイド、界面活性剤、潤滑剤、またはレベリング剤などのうちの1つまたは複数の他の原料が少量で存在していてよい。
【0099】
多層複合材のそれぞれの層は、任意の有用な厚さを有するように形成されてよい。多層複合材の層の厚さは、供給原料層の粒子を溶融して、連続的に溶融された後に固化された複合材の層を形成することによって層が形成された後に、複合材の層が測定されたものになる。複合材の層の例示の厚さは、30ミクロン~100ミクロン、200ミクロン、またはそれ以上、例えば、30~50、60、70、80ミクロン~90、100、150、200、300、400、または500ミクロンまでの範囲にあってよい。例示の複合材構造では、複合材の全ての層が同じ厚さまたは実質的に同じ厚さを有してよい。他の例示の複合材構造では、層が全て同じ厚さを有し得るのではなく、複合材の異なる層がそれぞれ異なる厚さを有し得る。
【0100】
本明細書のある特定の例示の方法およびベース構造によると、ベースは、ベースの異なる部分で異なる厚さを有するように複合材の層を形成することによって、付加製造工程によって作製されてよい。これらの方法および構造の例は、例えばベースの上部分および底部分において、より薄い厚さを有する1つまたは複数の層(「微細層」と称される)を形成することと、例えば上部分と底部分との間のベースの内側部分において、より厚い厚さを有する層(「粗層」)を形成することとを含む。
【0101】
(例えば、ベース層の形態の)多層複合材の一部としての1つまたは複数の微細層の位置は、粗層に対して、任意の有用な位置であってよい。複合材の粗層および微細層の様々な場所、ならびに微細層に対する粗層の様々な形成順序が効果的であり得る。しかしながら、説明されるようにベース構造および関連する方法の特定の実施形態によると、1つまたは複数の微細層は好ましくは、ベースの1つまたは複数の表面に存在してよく、粗層は同じベースの内部分に存在してよい。微細層が粗層と比較してより望ましい物理的特性を示し得るため(下記参照)、微細層は1つまたは複数の表面に位置していることが望ましい場合がある。より高い品質がそれほど重要ではないベースの内部分の層は、製造効率を高めるために粗層から作製されてよい(以下を参照)。
【0102】
異なる厚さを有するベースの層を形成することによって、加工効率に関する、またベース(またはベースの一部分)の物理的特性に関する利点が生じ得る。1つまたは複数の厚さを大きくした「粗」層を形成することによって、ベースの生産速度および効率を高める有益な効果が得られることになる。より厚い粗層は、より薄い(微細)層と比較して品質が低下する場合があるが(以下を参照)、比較的厚い厚さの層を形成することによって、ベースの生産速度が増大する(必要な時間が短縮される)ことになり、より厚い(粗)層の厚さが増大すると、特定の厚さを有するベースを生じさせるために、形成されなければならない層の総数および必要な層形成工程数が削減されることになる。粗層の厚さは、付加製造法によって形成される層の典型的な範囲内にある厚さ、例えば、70、80、90、または100ミクロンから500ミクロンまでの範囲の厚さであってよい。粗層の厚さが大きくなると、所定の総厚の完成した多層複合材を形成するのに必要とされる工程数および時間が削減されることになる。
【0103】
付加製造技術によって形成される層の厚さは、層形成工程で同一の供給原料および同一のレーザを使用するとき、層の物理的特性(品質)に影響を及ぼす場合がある。例えば、より薄い層は、同一の供給原料および同一のレーザを使用して形成されたより厚い層と比較すると、より少ない内部の開放された空間、すなわち「細孔」を含んでいるように形成され得る。層における細孔の存在は、層の見かけ密度に関して測定および表現され得る。一般に、同じレーザおよび同じレーザ出力を供給原料層に同じ時間加える付加製造プロセスを使用するとき、より厚い(粗)層の見かけ密度は、より薄い厚さだが同じ供給原料から作製された同様の(例えば、微細)層の見かけ密度よりも低くなる。
【0104】
見かけ密度は、100%固体の非多孔質(多孔度0)の形態の層を形成するために使用された材料の実際の(または理論的な)密度に対する複合材の層の測定された密度を指す。複合材の層は、供給原料の粒子を溶融し、溶融した粒子を流動させ、液化した粒子の材料から連続的な層(例えば、「膜」)を形成することを可能にする工程によって形成されるため、典型的には、連続的な固体材料になる。しかしながら、典型的には、形成される連続的な固体材料は、100%固体ではなく、層形成プロセス中に除去されない少量の空所または細孔を含んでいる。細孔は、とりわけベースが真空下でのプロセスで使用される場合、冷却流体(水)が、冷却流路からベースの多孔質材料を通ってベースの外部に漏れてしまう可能性があることによって、ベースの性能低下を引き起こす可能性がある。
【0105】
多くの場合、層または複合材における細孔は、複合材の表面または内部分において、拡大の有無にかかわらず光学的に視認され得る。代替的には、これらの空所は、複合材の層または複合材の一部分の密度(見かけ密度)の低下として検出可能である。空所なく(細孔が0%の100%固体の無機材料で)形成された層は、層を作製するために使用された細孔のない無機材料の密度に等しい密度を有することになる。細孔を含む無機材料の塊は、無機材料の密度よりもわずかに低い密度(見かけ密度)を有することになる。
【0106】
層の密度(層における細孔容積を含むときは見かけ密度)は、層の質量を層の体積(細孔容積を含む)で除算したものが尺度となり、細孔容積がゼロの層を形成するために使用される材料の実際の(理論的)密度値で除算し、実際の密度のパーセンテージとして報告される。説明されるような層または複合材の一部分(またはベース層)の見かけ密度値は、典型的には、比較的高く、例えば、層を形成するために使用される材料の実際の密度の80、90、92、96、98、または99%を上回る場合がある。
【0107】
無機粒子から複合材の層を形成するとき、高出力レーザからのエネルギーを使用して、供給原料層として形成された無機粒子を溶融する。溶融した粒子は流動して、複合材の層として固化する連続的な層(例えば、「膜」)を形成する。理想的には(理論的には)、レーザエネルギーは、層を作製するために使用される供給原料複合材の全ての粒子を完全に溶融することになり、液化した粒子材料の流れは、空隙のない液体層を形成し、その液体層が固化して空隙のない固体を形成する。しかしながら、実際には、このようにし形成された層は、一般に、欠陥、空隙、または部分的に溶融されていない粒子を含む場合があり、これらの欠陥の量は、厚さが大きくなるように形成された層ほど多くなる(同一の供給原料について、同一のレーザを使用し、供給原料層のある領域にレーザを等しい時間当てる)。
【0108】
複合材の粗層を形成する工程は、より大きい厚さを有する供給原料層を形成することと、供給原料の粒子を溶融することとを含むことになる。(より多くの粒子を有する)粗層用に、(より少ない粒子を有する)微細層の粒子を溶融するために使用され得るのと等しい量のレーザ出力と、供給原料のある領域にレーザを等しい時間当てることとを使用すると、(より多くの粒子を有する)より厚い供給原料層の粒子数を溶融するために利用可能なレーザ出力量は、粒子ごとにより少なくなる。(粗い供給原料層では粒子数が多くなる)供給原料層の粒子ごとに受けるレーザエネルギーが低いことで、微細層と比較して粗層はより高い割合の欠陥を有する可能性がある。
【0109】
欠陥の量が多くなることは、見かけ密度が低くなることと相関し得る。粗層の見かけ密度は、典型的には、同一の供給原料、同一のレーザ、および供給原料層のある領域へのレーザの同一の露光時間を使用するとき、微細層の見かけ密度よりも低くなる。例示の方法およびベース構造では、ベースの任意の層の見かけ密度は、好ましくは、少なくとも98または99%であってよい。より詳細には、ベースの粗層の見かけ密度は、好ましくは、少なくとも99.0%、例えば、少なくとも99.2または99.4%であってよい。ベースの微細層の見かけ密度は、好ましくは、同じベースの粗層の見かけ密度より大きい場合があり、少なくとも99.4%、例えば、少なくとも99.6%であり得る。
【0110】
層厚が低減した1つまたは複数の「微細」層を形成することは、ベース構造の物理的品質を改善するために有用であり得る。付加製造法によって作られた複合材のより微細な層は、より高い密度、および層に形成された細孔などの比較的低い欠陥の量などの有用なまたは好ましい物理的特性を示すことが分かっている。
【0111】
他方では、厚さが薄くなった複数の微細層を付加製造プロセス中に形成することは、多層複合材の生産速度を低下させることになり、すなわち、特定の厚さを有する多層複合材を生産するために必要とされる工程数および時間が増大するが、これは、より多くの微細な(より薄い)層を形成しなければならないからであり、これは、所与の厚さの多層複合材を作るためにより多くの付加製造工程が必要とされることを意味する。
【0112】
微細層の厚さは、付加製造法によって形成された層の厚さの典型的な範囲内にあり、特に、30ミクロン~100ミクロン、例えば30~50、60、70、80、または90ミクロンの範囲の厚さなどの範囲の下端の厚さであり得る。
【0113】
説明されるようなベースは、一連の個々の層形成工程を使用して高密度の金属または金属基複合材の多層複合材構造を形成する付加製造法によって作製可能である。1つの例として、選択的レーザ溶融(SLM)と称される技術は、多層複合材を層ごとに形成するために使用可能である付加製造技術の1つのバージョンである。選択的レーザ溶融は、高出力レーザエネルギーを使用して、供給原料層の金属または金属基複合材粒子を選択的に溶融させ、流動させ、および、実質的に連続的な固化した供給原料層を形成させる。
【0114】
より具体的には、多層複合材は、より大きな三次元構造(複合材)の多くの薄い断面(本明細書では「層」の「固化した供給原料」)を生じさせる連続した工程によって作られ得る。供給原料の層が形成され、その層には金属または金属基複合材の多くの粒子が含まれる。レーザエネルギーは、供給原料の層の一部分にわたって供給原料層に選択的に印加される。レーザエネルギーを受ける供給原料層の一部分は、多層複合材ベースのある層の流路がない部分となる一部分であり、レーザエネルギーを受けない供給原料層の部分は、多層複合材ベースにおける流路となる。
【0115】
レーザエネルギーは、レーザエネルギーにさらされる供給原料の一部分における粒子を溶融する。溶融された粒子は液化し、溶融された粒子の材料の連続的な層に流入後、冷却して、固化した供給原料の層として固化する。固化した供給原料の初期層が形成された後、固化した供給原料を含んでいる完成した層の上面上に供給原料の追加の薄い層を堆積させる。このプロセスが繰り返されて、固化した供給原料の複数の層を形成し、それぞれの層は以前の層の上部に形成され、かつ以前の層の上面に付着する。それぞれの完成した層上に1つずつ次々に複数の層を堆積させて、固化した供給原料のそれぞれの層の複合材である多層複合材を形成する。この複数の層は、同じ組成および厚さのものであってよい、または異なる組成および異なる層厚のものであってよい。
【0116】
説明されるような多層複合材を作製するのに有用な選択的レーザ溶融付加製造技術の一例(200)が図7に示されている。このプロセスは、市販の選択的レーザ溶融付加製造設備および供給原料を形成する粒子を使用して実行可能である。供給原料202は、無機粒子の集合体を含んでいる粉末である。図7に示される例示のステップによると、選択的レーザ溶融付加製造装置に含まれている粉末供給原料(202)は、装置のビルドプレート上に均一な層として形成される(204、206)。次のステップ(208)において、電磁放射線源(例えば、高出力レーザ)は、粒子を溶融させることになる波長およびエネルギーの放射によりこの供給原料の第1の層の一部分に選択的に照射する。溶融した粒子は、連続的な膜に流入し、次いで冷却により固化する。供給原料の層は、微細層または粗層であってよく、任意の有用な厚さを有してよい。溶融した粒子の固化した材料は、照射部分で固化した供給原料を形成する。固化した供給原料に形成されていない供給原料層の部分は、元の液体供給原料として残る。
【0117】
ビルドプレートが下に移動し(210)、粉末供給原料の第2の層(微細層または粗層のいずれか)が、第1の供給原料層上および第1の供給原料層の固化した供給原料上に第2の均一な層として形成される(212)。次いで、電磁放射線源が、第2の層の一部分を選択的に照射し(214)、この部分の粒子を溶融させる。溶融した部分は次いで、冷却して、第2の層の一部分に固化した供給原料を形成する。固化した供給原料に形成されていない第2の層の部分は、元の粉末供給原料として残る。ステップ212、214、および216が繰り返されて(218)、元の液体供給原料(202)に取り囲まれた完成した多層の固化した供給原料複合材を形成する。
【0118】
多層の固化した供給原料複合材は、それぞれの形成された層の固化した供給原料を含んでいる主要部分であり、供給原料の溶融した粒子の材料から作られた複数の連続的な層から構成される。元の供給原料(202)を除去し、かつ多層複合材から分離可能である(218)。
【0119】
図9を参照すると、市販の選択的レーザ溶融付加製造装置(230)を使用し、かつ本明細書による粉末供給原料(232)を使用して、例示のプロセスが実行可能である。本方法の例示のステップによると、供給原料(232)は、装置(230)のビルドプレート(238)上に均一な供給原料層(234)として形成される。レーザ(236)により、電磁放射(233)が第1の層(234)の一部分に印加され、これによって、供給原料の粒子は溶融して連続的な層に流れ、次いで連続的な層が冷却されて第1の固化した供給原料(240)をその部分に形成することができる。固化した供給原料(240)に形成されていない供給原料層の部分(234)は、元の供給原料(232)として残る。ビルドプレート(238)は下に移動し(214)、第2のまたは次の供給原料層(242)が第1の層(234)および第1の固化した供給原料(240)の上に形成される。次いで、レーザ(236)により、電磁放射(233)が第2の層(242)の一部分に選択的に印加されることで、供給原料の粒子は溶融し流動して連続的な層を形成し、この層を冷却して第2の層から固化した供給原料を形成することができる。固化した供給原料に形成されていない第2の層の部分は、元の粉末供給原料として残る。このシーケンスは、繰り返されて(250)、元の供給原料(232)に取り囲まれた完成した多層の固化した供給原料複合材(252)を形成する。多層の固化した供給原料複合材(252)は、それぞれの形成された層の固化した供給原料を含んでいる主要部分であり、供給原料の溶融した粒子の材料から構成される。元の供給原料(232)を除去し、かつ多層複合材(252)から分離可能である。
【0120】
第1の態様では、本開示は、静電チャックベースであって、上側ベース表面と、下側ベース表面と、上側ベース表面と下側ベース表面との間の内部分と、内部分内の流路とを備え、該流路は、チャックベースの表面における入口と、チャックベースの表面における出口と、入口と出口との間の長さと、長さに沿った様々な断面積、長さに沿った様々な断面形状、または長さに沿った上側表面からの様々な距離を含む、長さに沿った断面とを含む、静電チャックベースを提供する。
【0121】
流路は、長さに沿った上側表面からの様々な距離を含む、第1の態様による第2の態様。
【0122】
流路は、長さに沿った様々な断面積を含む、第1または第2の態様による第3の態様。
【0123】
流路は、長さに沿った様々な断面形状を含む、第1の態様または第2の態様による第4の態様。
【0124】
入口は下側表面を通過し、より小さい断面積を有する長さの一部分は、より大きい断面積を有する長さの一部分と比較すると、上側表面により近い、先行する態様のうちのいずれかによる第5の態様。
【0125】
上側ベース表面と下側ベース表面との間の1つの場所において通る2つの連結されていない交差する流路部分をさらに含む、第1の態様による第6の態様。
【0126】
テーパ状の断面積を示す流路部分をさらに含む、第1の態様による第7の態様。
【0127】
流路は、ベースの外周部における縁部に隣接する縁部分と、縁部分とベースの中心との間にある内部分とを含み、縁部分は、内部分と比較すると上側表面により近い、第1の態様による第8の態様。
【0128】
流路は、単一の流路から分かれて2つの流路部分を形成する一部分を含む、第1の態様による第9の態様。
【0129】
入口は入口から2つの方向に延在する流路に連結し、出口は出口から2つの方向に延在する流路に連結する、第1の態様による第10の態様。
【0130】
流路は、第1の流路部分と、第2の流路部分と、第1の流路部分を第2の流路部分に連結し、かつ流体が第1の流路部分から第2の流路部分に流入することを可能にする連結流路と、を備える、第1の態様による第11の態様。
【0131】
上側ベース表面から下側ベース表面まで延在する多層複合材をさらに備える、先行する態様のうちのいずれかによる第12の態様。
【0132】
複合材は金属の継ぎ目を含んでいない、第12の態様による第13の態様。
【0133】
多層複合材はアルミニウム合金を含む、第13の態様による第14の態様。
【0134】
アルミニウム合金はAlSiMgである、第14の態様による第15の態様。
【0135】
多層複合材はチタン合金を含む、第13の態様による第16の態様。
【0136】
チタン合金はTiAlVである、第16の態様による第17の態様。
【0137】
第18の態様は、付加製造によって先行する態様のうちのいずれかの静電チャックベースを製作する方法であって、表面上に第1の供給原料層を形成することであって、供給原料層は無機粒子を含む、第1の供給原料層を形成することと、第1の供給原料層から固化した供給原料を形成することと、第1の供給原料層上に第2の供給原料層を形成することであって、第2の供給原料層は無機粒子を含む、第2の供給原料層を形成することと、第2の供給原料層から第2の固化した供給原料を形成することと、を含み、固化した供給原料層および第2の供給原料層は多層複合静電チャックベースの一部である、方法を開示する。
【0138】
レーザを使用して無機粒子を溶融することによって固化した供給原料を形成することをさらに含む、第18の態様による第19の態様。
【0139】
第20の態様は、付加製造によって第1の態様から第17の態様のうちのいずれかの静電チャックベースを形成する方法であって、付加製造によって底面を含む下側ベース部分を形成することと、付加製造によって下側ベース部分上に流路を含む中間ベース部分を形成することと、付加製造によって中間ベース部分上に上側表面を含む上側ベース部分を形成することと、を含む、方法を開示する。
【0140】
微細層厚を有する微細層を形成することを含む付加製造工程によって下側ベース部分を形成することと、複数の粗層を形成することを含む付加製造工程によって中間ベース部分を形成することであって、それぞれの粗層は微細層厚を上回る粗層厚を有する、中間ベース部分を形成することと、微細層厚を有する微細層を形成することを含む付加製造工程によって上側ベース部分を形成することと、をさらに含む、第20の態様による第21の態様。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電チャックベースであって、
上側ベース表面と、
下側ベース表面と、
前記上側ベース表面と前記下側ベース表面との間の内部分と、
前記内部分内の流路と
を備え、前記流路は、
前記チャックベースの表面における入口と、
前記チャックベースの表面における出口と、
前記入口と前記出口との間の長さと、
前記長さに沿った断面であって、
前記長さに沿った様々な断面積、
前記長さに沿った様々な断面形状、または
前記長さに沿った前記上側表面からの様々な距離を含む、前記長さに沿った断面とを含む、静電チャックベース。
【請求項2】
前記上側ベース表面と前記下側ベース表面との間の1つの場所において通る2つの連結されていない交差する流路部分をさらに含む、請求項1に記載の静電チャックベース。
【請求項3】
テーパ状の断面積を示す流路部分をさらに含む、請求項1に記載の静電チャックベース。
【請求項4】
前記上側ベース表面から前記下側ベース表面まで延在し、かつ金属の継ぎ目を含んでいない多層複合材をさらに備える、請求項1に記載の静電チャックベース。
【請求項5】
付加製造によって請求項1に記載の静電チャックベースを製作する方法であって、
表面上に第1の供給原料層を形成することであって、前記供給原料層は無機粒子を含む、第1の供給原料層を形成することと、
前記第1の供給原料層から固化した供給原料を形成することと、
前記第1の供給原料層上に第2の供給原料層を形成することであって、前記第2の供給原料層は無機粒子を含む、第2の供給原料層を形成することと、
第2の供給原料層から第2の固化した供給原料を形成することと、を含み、
前記固化した供給原料層および前記第2の供給原料層は多層複合静電チャックベースの一部である、方法。
【国際調査報告】