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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】医療用デリバリ装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20240920BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61J1/20 314C
A61M5/315 500
A61M5/315 550L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519250
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-03
(86)【国際出願番号】 EP2022077139
(87)【国際公開番号】W WO2023052519
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】21199690.5
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヘイトン, ポール グレアム
(72)【発明者】
【氏名】リドリー, ジョナサン ポール
(72)【発明者】
【氏名】トゥーチャー, マーク ディグビー
(72)【発明者】
【氏名】フィシュライン, クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4C047
4C066
【Fターム(参考)】
4C047AA05
4C047AA27
4C047BB01
4C047BB11
4C047CC04
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD07
4C066EE06
4C066FF05
4C066GG19
4C066HH18
4C066QQ22
(57)【要約】
医療用デリバリ装置(1)が、中空内部(215)と第1のねじ配置(212)とを有するバレルアセンブリ(2)、第2のねじ配置(312)と、長手軸を有しており、バレルアセンブリ(2)の中空内部(215)へと延びているプランジャロッド要素(32)とを有するロッドアセンブリ(3)、および、バレルアセンブリ(2)の中空内部(215)に形成され、ロッドアセンブリ(3)のプランジャロッド要素(32)によって限定される可変の容積を有する用量チャンバ(94)、を備える。バレルアセンブリ(2)およびロッドアセンブリ(3)は、お互いに対して回転可能である。バレルアセンブリ(2)およびロッドアセンブリ(3)のお互いに対する回転によって、ロッドアセンブリ(3)がロッドアセンブリ(3)のプランジャロッドアセンブリ(3)の長手軸に沿って移動することで、用量チャンバ(94)の容積の変更が生じるように、ロッドアセンブリ(3)の第1のねじ配置(212)とバレルアセンブリ(2)の第2のねじ配置(312)とが係合している。装置(1)は、バレルアセンブリ(2)およびロッドアセンブリに連結された回転抑止形成物(42)をさらに備える。回転抑止形成物(42)は、バレルアセンブリ(2)およびロッドアセンブリ(3)のお互いに対する回転に影響を及ぼす追加の回転抵抗を定める。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空内部(215)と第1のねじ配置(212)とを有するバレルアセンブリ(2)、
第2のねじ配置(312)と、長手軸を有しており、前記バレルアセンブリ(2)の前記中空内部(215)へと延びているプランジャロッド要素(32)とを有するロッドアセンブリ(3)、および
前記バレルアセンブリ(2)の前記中空内部(215)に形成され、前記ロッドアセンブリ(3)の前記プランジャロッド要素(32)によって限定される可変の容積を有する用量チャンバ(94)
を備える、医療用デリバリ装置(1)であって、
前記バレルアセンブリ(2)および前記ロッドアセンブリ(3)は、お互いに対して回転可能であり、
前記バレルアセンブリ(2)および前記ロッドアセンブリ(3)のお互いに対する回転によって、前記ロッドアセンブリ(3)が前記ロッドアセンブリ(3)の前記プランジャロッド要素(32)の前記長手軸に沿って移動することで、前記用量チャンバ(94)の前記容積の変更が生じるように、前記バレルアセンブリ(2)の前記第1のねじ配置(212)と前記ロッドアセンブリ(3)の前記第2のねじ配置(312)とが係合しており、
前記バレルアセンブリ(2)および前記ロッドアセンブリ(3)の少なくとも一方に連結された回転抑止形成物(42)を備えることを特徴とし、
前記回転抑止形成物(42)は、前記バレルアセンブリ(2)および前記ロッドアセンブリ(3)のお互いに対する回転に影響を及ぼす追加の回転抵抗を定める、医療用デリバリ装置(1)。
【請求項2】
前記バレルアセンブリ(2)および前記ロッドアセンブリ(3)は、前記バレルアセンブリ(2)および前記ロッドアセンブリ(3)のお互いに対する回転に影響を及ぼす固有の回転抵抗を定め、前記バレルアセンブリ(2)および前記ロッドアセンブリ(3)をお互いに対して回転させるためには、前記固有の回転抵抗と前記追加の回転抵抗との和である総回転抵抗が超過される必要がある、請求項1に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項3】
前記総回転抵抗は、前記ロッドアセンブリ(3)に作用する抵抗力を定め、前記用量チャンバ(94)の前記容積を増加させるために前記バレルアセンブリ(2)および前記ロッドアセンブリ(3)をお互いに対して回転させることによって前記ロッドアセンブリ(3)の前記プランジャロッド要素(32)を直線的に移動させるとき、前記ロッドアセンブリ(3)に作用する引張力を定める負圧が前記用量チャンバ(94)内に生じ、前記回転抑止形成物(42)は、前記抵抗力が前記引張力よりも大きくなるように構成される、請求項2に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項4】
前記回転抑止形成物(42)は、前記用量チャンバ(94)の前記容積の変更が停止されるとき、前記ロッドアセンブリ(3)と前記バレルアセンブリ(2)との間の相対運動が防止されるように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項5】
前記回転抑止形成物(42)は、前記バレルアセンブリ(2)および前記ロッドアセンブリ(3)のお互いに対する回転時に摩擦を増加させるように構成された突出部を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項6】
前記回転抑止形成物(42)は、前記突出部を備えたベアリング部材(4)を備える、請求項5に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項7】
前記ベアリング部材(4)は、スリーブ状であり、前記突出部は、前記ベアリング部材(4)の軸端部を形成する、請求項6に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項8】
前記突出部は、前記バレルアセンブリ(2)に当接し、前記バレルアセンブリ(2)および前記突出部は、お互いに対して回転可能である、請求項5~7のいずれか一項に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項9】
前記回転抑止形成物(42)は、前記バレルアセンブリ(2)および前記ロッドアセンブリ(3)のお互いに対する回転時に前記突出部と相互作用するように構成された対応する突出部を備える、請求項5~8のいずれか一項に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項10】
前記バレルアセンブリ(2)は、前記対応する突出部を備える、請求項9に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項11】
前記バレルアセンブリ(2)は、前記バレルアセンブリ(2)を前記ロッドアセンブリ(3)に対して回転させるために前記医療用デリバリ装置(1)の外部からアクセス可能なダイヤル部材(22)を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項12】
前記バレルアセンブリ(2)は、前記中空内部(215)を有するチャンバ本体要素(21)を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項13】
前記ダイヤル部材(22)と前記チャンバ本体要素(21)とは、前記医療用デリバリ装置(1)が前記バレルアセンブリ(2)および前記ロッドアセンブリ(3)をお互いに対して回転させるように配置されるときに、トルクに耐える様相で接続される、請求項11および12に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項14】
前記バレルアセンブリ(2)の前記第1のねじ配置(212)および前記ロッドアセンブリ(3)の前記第2のねじ配置(312)のうちの第1の一方は、ねじ山(212)を有し、前記バレルアセンブリ(2)の前記第1のねじ配置(212)および前記ロッドアセンブリ(3)の前記第2のねじ配置(312)のうちの第2の一方は、前記ねじ山(212)と係合するように構成された係合要素(312)を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項15】
前記回転抑止形成物(42)は、係合摩擦増加部材を有し、前記係合要素(312)は、前記係合摩擦増加部材を備える、請求項14に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項16】
前記バレルアセンブリ(2)および前記ロッドアセンブリ(3)を収容するハウジング部品(5)を備え、前記回転抑止形成物(42)は、前記ハウジング部品(5)と前記バレルアセンブリ(2)および前記ロッドアセンブリ(3)の少なくとも一方との間の摩擦を増加させるように配置されたハウジング摩擦増加部材を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項17】
前記ハウジング部品(5)、前記ロッドアセンブリ(3)、または前記バレルアセンブリ(2)は、前記ハウジング摩擦増加部材を備える、請求項16に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項18】
前記ロッドアセンブリ(3)の前記プランジャロッド要素(32)は、前記バレルアセンブリ(2)の前記中空内部(215)に配置されたストッパ部材(322)を備える、請求項1~17のいずれか一項に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項19】
前記回転抑止形成物(42)は、前記バレルアセンブリ(2)および前記ロッドアセンブリ(3)を前記追加の回転抵抗に逆らってお互いに対して手動で回転可能なように前記追加の回転抵抗を定めるように構成される、請求項1~18のいずれか一項に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項20】
前記バレルアセンブリ(2)、前記ロッドアセンブリ(3)、および前記回転抑止形成物(42)は、前記バレルアセンブリ(2)および前記ロッドアセンブリ(3)を前記総回転抵抗に逆らってお互いに対して手動で回転可能なように前記総回転抵抗を定めるように構成される、請求項2~18のいずれか一項に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項21】
前記回転抑止形成物(42)は、前記バレルアセンブリ(2)および前記ロッドアセンブリ(3)のお互いに対する回転の間に前記追加の回転抵抗をもたらすように構成される、請求項1~20のいずれか一項に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項22】
デリバリ針(251)と、バイアル(6)のカバーを穿刺するように構成されたバイアルスパイク(24)とを備え、投与状態において、前記バイアルスパイク(24)および前記デリバリ針(251)を通って前記バレルアセンブリ(2)の前記中空内部(215)へと流体の通路が確立される、請求項1~21のいずれか一項に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【請求項23】
前記投与状態において、前記デリバリ針(251)は前記バイアルスパイク(24)内へと延びる、請求項22に記載の医療用デリバリ装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の冒頭部分に記載の医療用デリバリ装置に関する。中空内部と第1のねじ配置とを有するバレルアセンブリ、第2のねじ配置と、長手軸を有しており、バレルアセンブリの中空内部へと延びているプランジャロッド要素とを有するロッドアセンブリ、および、バレルアセンブリの内部に形成され、ロッドアセンブリのプランジャロッドによって限定される可変の容積を有する用量チャンバ、を備える、そのような医療用デリバリ装置であって、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリは、互いに対して回転可能であり、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリの互いに対する回転によって、ロッドアセンブリがロッドアセンブリのプランジャロッドアセンブリの長手軸に沿って移動することで、用量チャンバの容積の変更が生じるように、ロッドアセンブリの第1のねじ配置とバレルアセンブリの第2のねじ配置とが係合しており、個々の量の薬剤物質を計り取り、次いで、個々に計り取られた量を例えば注射によって患者に投与するために使用することができる。とくには、そのような医療用デリバリ装置は、医師の専門技術を必要としない患者自身による操作を可能にする。
【背景技術】
【0002】
容器からの液体または他の流体の送出が、多くの医療用途において必要とされ、複数の異なるやり方で実行されている。とくには、液体の比較的正確な提供が不可欠である場合、特定の装置が一般的に使用される。例えば、液体医薬物質は、隔壁またはゴム栓ならびにその周りにクランプされるキャップ、あるいは別の同様の封止カバーによって閉じられたガラス製またはプラスチック製バイアルにて提供されることが多い。従来、バイアルから医薬物質を送出するために、シリンジが使用されている。これにより、シリンジの針が隔壁またはカバーを貫通し、医薬物質が、その針を通ってシリンジ内に引き込まれる。ひとたびシリンジに移されると、医薬物質は、適切な方法で送出される。例えば、医薬物質を、例えば皮下または筋肉内に注射することができ、あるいは経口にて適用したり、例えば患者の眼または鼻に液滴として提供したりすることができる。
【0003】
シリンジによるバイアルまたは容器からの液体の送出は、通常は、比較的困難である。典型的には、医師または看護師などの教育を受けた者が関与する必要がある。とくには、10マイクロリットル~約1ミリリットルの範囲のような比較的少量が関係する場合など、送出される液体の量が比較的正確でなければならない場合に、患者は、シリンジまたは同様の装置を使用するとき、自身で送出を確実に行うことが典型的には不可能であり、すなわち自己投与がユーザにとって困難であり得る。しかしながら、液体または薬剤の自己投与は、患者の苦労および治療のコストを大幅に削減することができるため、多くの治療用途において有益である。
【0004】
この状況を改善するために、比較的正確な量の液体をより簡便に送出することを可能にする装置が使用される。例えば、薬剤を、患者自身による投与が可能な予め充てんされたシリンジにて提供することが知られている。しかしながら、このような予め充てんされたシリンジは、多くの場合、複数の理由で好ましくない。例えば、予め充てんされたシリンジの製造は、製造に関してバイアルと比較して比較的複雑かつ高価である。また、さまざまな用途および患者に適した複数の考えられる用量を有するシリンジを提供しなければならないため、製造がさらに面倒になる。送出装置の他の例は、糖尿病の治療にしばしば使用される注射ペンである。
【0005】
別の送出装置、すなわち、円筒形のシリンジバレルを有しており、プランジャロッドがシリンジバレル内へと一方側から延びている自動薬剤デリバリ装置が、米国特許第6,607,508号明細書に記載されている。シリンジバレルの他方側は、針アセンブリをねじ込むことができるねじ山を備える。プランジャロッドは、バイアルを保持することができるバイアル座を有する。プランジャロッドは、プランジャロッドの全体にわたって長手方向に延びる通路をさらに備える。ピンが、プランジャロッドから半径方向に延びており、プランジャロッドのうちのピンを有する部分を取り囲む用量バレルのスロットと相互に係合する。用量リングによって用量バレルを回転させることにより、プランジャロッドが移動し、プランジャロッドとシリンジバレルのねじ側との間に容積が形成される。この動きによって、薬剤がバイアルから通路を通って容積内に移される。用量バレルの反対方向への回転は、液体を通路を通って押し戻すことが不可能であることを保証するラチェット機構によって阻止される。装置は、シリンジバレルのねじ山にねじ込まれた針を通って容積から薬剤を送出するためのばね駆動式自動針注射機構をさらに有する。薬剤の送出中に、プランジャロッドはばね力によって反対方向に自動的に回転し、容積が減少する。これにより、薬剤は針を通して押し出される。
【0006】
とくには液体の薬剤物質を正確に計量し、計量後に投与するために、使用の単純さおよび効率を改善する別の医療用デリバリ装置が、国際公開第2017/102742号に示されている。この医療用デリバリ装置は、ステムと同軸に延在してステムを取り囲む中空な本体部分を有するロッド要素を備える。本体部分は、アーム部分を有し、各々のアーム部は、一端において本体部分の残りの部分に固定されている。各々のアーム部分は、ステムに向かって本質的に半径方向に突出するピンを備える。ステムの軸方向前端に、ゴム製ストッパが取り付けられている。さらに、装置は、中空なチャンバシリンダを有する用量部材を備える。チャンバシリンダの外面は、ねじ山を備え、本体部分のピンは、ねじ山に係合する。チャンバシリンダの内部は、ステムおよびロッド要素のゴム製ストッパを受け入れる。チャンバシリンダは、その前端において、雄型連結構造および雄型連結構造から突出するデリバリ針へと移行する。さらに、医療用デリバリ装置は、内部にバイアル座が形成されたダイヤルユニットを備える。座はスパイクを備える。ダイヤルユニットは、用量部材に解放可能に接続される。装置の使用時に、スパイクがバイアルのカバーを穿刺してバイアルの内部にアクセスするように、バイアルがバイアル座に配置される。スパイクは、デリバリ針を介してチャンバシリンダの内部に連通している。バイアルから医療用デリバリ装置へと液体を計り取るために、ダイヤルユニットを、ロッド要素のピンがチャンバシリンダのねじ山に沿って移動するように、チャンバシリンダと一緒に回転させる。これにより、ステムおよびゴム製ストッパが後方に移動し、チャンバシリンダ内に用量チャンバが生成される。より具体的には、ゴム製ストッパが後方に移動することで、用量チャンバ内に負圧が確立され、液体がバイアルからスパイクおよび針を介して用量チャンバへと引き込まれる。
【0007】
そのような既知の医療用デリバリ装置は、便利な取り扱いに関して状況を改善しているが、比較的高水準の精度での計量を可能にしない場合がある。とくには、比較的少量の液体薬剤物質を正確に計量する必要がある場合や、用量を比較的高い精度で提供する必要がある場合に、既知の医療用デリバリ装置は、典型的には適切でない。計量の精度の欠如は、計量の終わり、すなわち回転の停止時に、用量チャンバ内の負圧によってステムが用量チャンバ内にわずかに引き込まれるという事実によって引き起こされることが多い。結果として、用量チャンバから少量の液体が送り出され、あるいは示される用量がわずかにずれる可能性がある。
【0008】
したがって、改善された正確な計量を可能にする医療用デリバリ装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
発明の開示
本発明によれば、この必要性は、独立請求項1の特徴によって定義されるとおりの医療用デリバリ装置によって解決される。好ましい実施形態が、従属請求項の主題である。
【0010】
とくには、本発明は、バレルアセンブリと、ロッドアセンブリと、用量チャンバとを備える医療用デリバリ装置である。バレルアセンブリは、中空内部と、第1のねじ配置とを有する。ロッドアセンブリは、第2のねじ配置と、長手軸を有しており、バレルアセンブリの中空内部へと延びているプランジャロッド要素とを含む。用量チャンバは、ロッドアセンブリのプランジャロッド要素によって限定される可変の容積にてバレルアセンブリの内部に形成される。
【0011】
本発明に関連して使用されるとき、「アセンブリ」という用語は、単一片からなる要素、または複数の構成要素からなる構造に関する。アセンブリは、少なくとも適用段階において一定の機能または目的を有するユニットを確立し得る。中空内部は、バレルアセンブリの任意の適切な構成要素に具現化可能である。
【0012】
バレルアセンブリおよびロッドアセンブリは、とくにはプランジャロッド要素の長手軸を中心にして、互いに対して回転可能である。医療用デリバリ装置のさまざまな構成要素に関連して、「互いに対して回転可能」という用語は、あらゆる回転運動に関する。例えば、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリを、ロッドアセンブリを動かさずにバレルアセンブリを回転させること、バレルアセンブリを動かさずにロッドアセンブリを回転させること、あるいはバレルアセンブリおよびロッドアセンブリの両方を回転させることによって、互いに対して回転可能である。
【0013】
バレルアセンブリおよびロッドアセンブリの互いに対する回転によって、ロッドアセンブリがロッドアセンブリのプランジャロッド要素の長手軸に沿って移動することで、用量チャンバの容積の変更が生じるように、バレルアセンブリの第1のねじ配置とロッドアセンブリの第2のねじ配置とが係合する。より具体的には、回転により、第1および第2のねじ配置が互いに沿って移動してもよく、これにより、バレルアセンブリとロッドアセンブリとの直線的な相対運動を引き起こしてもよい。したがって、ねじ配置によって、回転運動を長手軸に沿った明確かつ正確な直線運動に変換することができる。そのような直線運動は、用量チャンバの容積を正確に変化させることにより、液体の薬剤物質などの液体を用量チャンバに正確に計り取るために適切であることができる。
【0014】
本明細書において使用されるとき、「薬剤」という用語は、一般に医薬品有効成分(API)とも呼ばれる治療に関して有効な作用物質、ならびに複数のそのような治療に関して有効な作用物質の組み合わせに関する。この用語は、例えば造影剤(例えば、MRI造影剤)、トレーサ(例えば、PETトレーサ)、およびホルモンなど、患者に液体の形態で投与される必要がある診断用または撮像用の作用物質も包含する。
【0015】
本明細書において使用されるとき、「薬剤物質」という用語は、患者への投与に適した形態に作られ、あるいは再構成された上記定義の薬剤に関する。例えば、薬剤物質は、薬剤に加えて、賦形剤および/または他の補助成分をさらに含んでもよい。本発明の文脈におけるとくに好ましい薬剤物質は、薬剤溶液であり、とくには経口投与、注射、または点滴のための溶液である。
【0016】
本明細書において使用されるとき、「薬剤製品」という用語は、薬剤物質または複数の薬剤物質を含む完成した最終製品に関する。とくには、薬剤製品は、薬剤物質を適切な用量および/または投与のための適切な形態にて有しているすぐに使用することができる製品であってよい。例えば、薬剤製品は、予め充てんされたシリンジなどの投与装置を含んでよい。
【0017】
医療用デリバリ装置は、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリの少なくとも一方に連結された回転抑止形成物をさらに備える。これに関連して、「連結された」という用語は、直接的または間接的な連結または接続に関する。回転抑止形成物は、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリの互いに対する回転に影響を及ぼす追加の回転抵抗を定める。
【0018】
追加の回転抵抗を提供することによって、計量の回転を停止させた後のバレルアセンブリおよびロッドアセンブリの互いに対する逆運動の防止を達成することができる。より具体的には、用量チャンバの内部の負圧によるロッドアセンブリの引き戻しを防止することができる。したがって、改善された正確な計量を達成することができる。さらに、計量の量の表示精度を高めることができる。
【0019】
これにより、追加の回転は、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリの互いに対する手動回転を阻止または防止することを意図するものではなく、手動回転を依然として可能にしつつ回転の抵抗を増加させることを意図している。
【0020】
したがって、好ましくは、回転抑止形成物は、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリを追加の回転抵抗に逆らって互いに対して手動で回転可能なように追加の回転抵抗を定めるように構成される。このように、手動での計量を妨げることなく、回転抑止形成物は、用量チャンバ内に負圧を引き起こす可能性がある意図せぬ回転を防止することができる。
【0021】
換言すると、回転抑止形成物は、好ましくは、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリの互いに対する回転の間、すなわち手動での計量の間に、追加の回転抵抗をもたらすように構成される。したがって、回転抑止形成物は、手動での計量を妨げるのではなく、計量の際の回転の抵抗を増加させる。
【0022】
好ましくは、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリは、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリの互いに対する回転に影響を及ぼす固有の回転抵抗を定め、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリを互いに対して回転させるためには、固有の回転抵抗と追加の回転抵抗との和である総回転抵抗が超過される必要がある。
【0023】
バレルアセンブリおよびロッドアセンブリに関連する「固有の」という用語は、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリ、ならびにバレルアセンブリおよび/またはロッドアセンブリと相互作用する医療用デリバリ装置の他の構成要素の本質的な性質または構成に属する特徴に関する。とくに、固有の回転抵抗は、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリの回転に対して作用するすべての影響によって構成されてよく、これらの影響は、医療用デリバリ装置の所与の構造によってもたらされる。そのような影響は、第1および第2のねじ配置の間に作用する摩擦、医療用デリバリ装置内のロッドアセンブリの直線運動に作用する摩擦、などを含み得る。
【0024】
総回転抵抗は、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリの互いに対する手動回転を阻止または防止するような大きさではないが、意図せぬ回転を防止するために充分な抵抗をもたらすような大きさである。したがって、好ましくは、バレルアセンブリ、ロッドアセンブリ、および回転抑止形成物は、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリを総回転抵抗に逆らって互いに対して手動で回転可能なように総回転抵抗を定めるように構成される。
【0025】
これにより、好ましくは、総回転抵抗は、例えば用量チャンバの容積を減少させるように中空内部においてプランジャロッド要素を直線的に移動させるときにロッドアセンブリに作用する抵抗力を定め、用量チャンバの容積を増加させるためにロッドアセンブリおよびバレルアセンブリを互いに対して回転させることによってロッドアセンブリのプランジャロッド要素を直線的に移動させるとき、ロッドアセンブリに作用して逆回転を引き起こす可能性がある引張力を定める負圧が用量チャンバ内に生じ、回転抑止形成物は、抵抗力が引張力よりも大きくなるように構成される。このように、回転抑止形成物によって引張力の補償を達成することができる。とくには、医療用デリバリ装置の固有の構造に起因する引張力を、回転抑止形成物によって補償することができる。このようにして、計量の精度に対する引張力の悪影響を低減、または排除することさえ可能である。
【0026】
回転抑止形成物は、好ましくは、用量チャンバの容積の変更が停止されたとき、ロッドアセンブリとバレルアセンブリとの間の相対運動が防止されるように構成される。このように、計量後に、意図せぬ回転または移動を防止することができる。これにより、ロッドアセンブリおよびバレルアセンブリの互いに対する回転が、手動による回転または操作ならびに用量チャンバ内の負圧などの他の影響においてのみ生じることを保証することができる。
【0027】
回転抑止形成物は、多種多様な変種にて具現化されてよい。例えば、回転抵抗を増加させるためのクランプ構造あるいは電気的または磁気的な手段を備えてもよい。記載された回転抑止形成物を具現化するためのさまざまな変種、実施形態、および技術を、回転抵抗の精巧かつ正確な増加がもたらされるように組み合わせてもよい。
【0028】
回転抑止形成物の好ましい実施形態においては、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリが互いに対して回転する際に摩擦を増加させるように構成された突出部が設けられる。突出部は、鋭利な形状または丸みを帯びた形状の歯として、尖った部分として、または任意の他の適切な形態で具現化可能である。抵抗の増加に加えて、そのような突出部は、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリの互いに対する回転を表す触覚フィードバックを提供することもできる。このように、計量、より具体的には回転量をユーザに知覚させることができる。
【0029】
これにより、回転抑止形成物は、好ましくは、突出部を備えたベアリング部材を備える。そのようなベアリング部材は、回転抑止形成物またはその1つの構成要素の効率的な実装であり得る。とくには、ベアリング部材を、トルクに耐える様相でロッドアセンブリまたはバレルアセンブリのいずれかに効率的に連結させることができる。ベアリング部材は、好ましくは、スリーブ状であり、突出部が、スリーブの軸方向端部を形成する。このように、ベアリング部材をロッドアセンブリおよびバレルアセンブリの一方に効率的に連結させることができ、突出部をロッドアセンブリおよびバレルアセンブリの他方に当接させることができる。このように、相対回転時のロッドアセンブリとバレルアセンブリとの間の摩擦の増加を、効率的に達成することができる。
【0030】
突出部は、好ましくは、バレルアセンブリに当接し、バレルアセンブリおよび突出部は、好ましくは、互いに対して回転可能である。このように、とくにはバレルアセンブリを回転させる実施形態において、効率的な実装を達成することができる。これにより、ベアリング部材が設けられたとき、バレルアセンブリは、ベアリング部材に対して回転可能である。
【0031】
回転抑止形成物は、好ましくは、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリの互いに対する回転時に突出部と相互作用するように構成された対応する突出部を備える。このように、相対回転時の抵抗をさらに増加させることができ、触覚認識をさらに向上させることができる。これにより、バレルアセンブリは、好ましくは対応する突出部を備える。
【0032】
好ましくは、バレルアセンブリは、バレルアセンブリをロッドアセンブリに対して回転させるために医療用デリバリ装置の外側からアクセス可能なダイヤル部材を備える。ダイヤル部材を、中空内部がダイヤル部材の一部であるように、中空内部と一体に具現化することができる。好都合には、単一の構成要素または部品である。このようなダイヤル部材は、簡便な計量操作を可能にする。
【0033】
好ましくは、バレルアセンブリは、中空内部を有するチャンバ本体要素を備える。チャンバ本体は、中空内部が配置された円筒部分を有してもよい。これをダイヤル部材と一体に具現化することができる。しかしながら、好ましくは、ダイヤル部材とチャンバ本体とは、医療用デリバリ装置がバレルアセンブリおよびロッドアセンブリを互いに対して回転させるように配置されるときに、トルクに耐える様相で接続され、あるいは連結される。
【0034】
好ましくは、バレルアセンブリの第1のねじ配置およびロッドアセンブリの第2のねじ配置のうちの第1の一方は、ねじ山を有し、バレルアセンブリの第1のねじ配置およびロッドアセンブリの第2のねじ配置のうちの第2の一方は、ねじ山と係合するように構成された係合要素を有する。係合要素は、ねじ山との係合に適する任意の要素であってよい。例えば、係合要素は、ねじ山へと延びるピンまたは同様の突出部であってよい。好都合には、回転運動のプランジャロッド要素の直線運動への均一かつしっかりとした変換を達成するために、少なくとも2つの係合要素が設けられる。ねじ山は、比較的大きい摩擦を有する材料など、回転抑止形成物の摩擦増加構造を備えることができる。例えば、ねじ山は、ゴム箔を摩擦増加構造として備えることができる。
【0035】
しかしながら、回転抑止形成物の好ましい実施形態においては、係合摩擦増加部材が設けられ、係合要素が係合摩擦増加部材を備える。係合摩擦増加部材は、係合要素とねじ山との間の摩擦の増加を、両者が互いに沿って移動するときに生じさせる幾何学的形状であってよい。例えば、そのような形状は、実質的な粗さまたは歯であってよい。これに代え、あるいは加えて、摩擦増加部材は、係合要素を構成する材料よりも実質的に大きい摩擦を有する材料片であってもよい。例えば、係合摩擦増加部材は、係合要素に接続されたゴム片または同様の材料片であってよい。
【0036】
好ましくは、医療用デリバリ装置は、バレルアセンブリおよびロッドアセンブリを収容するハウジング部品を備え、回転抑止形成物は、ハウジング部品とバレルアセンブリおよびロッドアセンブリの少なくとも一方との間の摩擦を増加させるように配置されたハウジング摩擦増加部材を有する。係合摩擦増加部材と同様に、ハウジング摩擦増加部材も、実質的な粗さまたは歯などの幾何学的形状、あるいはゴム片または同様の材料片などのハウジング部品を構成する材料よりも実質的に大きい摩擦を有する材料片であってよい。
【0037】
これにより、ハウジング部品、ロッドアセンブリ、またはバレルアセンブリは、好ましくはハウジング摩擦増加部材を備える。これにより、効率的な実装が可能になる。
【0038】
好ましくは、ロッドアセンブリのプランジャロッド要素は、バレルアセンブリの中空内部に配置されたストッパ部材を備える。そのようなストッパ部材は、用量チャンバを密封するために設けられる。これは、典型的には、ゴムなどの比較的柔らかい弾性材料で作られ、中空内部に配置されたときにわずかに圧縮されるように寸法付けられる。このように、密封用量チャンバを設けることができる。ストッパ部材とバレルアセンブリとの間の摩擦は、通常は、比較的大きい。
【0039】
好ましくは、医療用装置は、デリバリ針と、バイアルのカバーを穿刺するように構成されたバイアルスパイクとを備え、計量状態において、バイアルスパイクおよびデリバリ針を通ってバレルアセンブリの中空内部へと流体の通路が確立される。これにより、計量状態において、デリバリ針は、好ましくは、バイアルスパイク内へと延びる。
【0040】
これに関連して、「デリバリ針」という用語は、患者へと薬剤物質を届けるように意図され、そのように設けられた針に関する。したがって、デリバリ針は、薬剤物質の投与を意図した針である。
【0041】
流体の通路のこのような配置は、効率的な計量および医療用デリバリ装置のコンパクトな設計を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明による医療用デリバリ装置を、以下で、例示的な実施形態によって、添付の図面を参照して、さらに詳細に説明する。
図1】本発明による医療用デリバリ装置の一実施形態の分解された個々の構成要素の斜視図を示している。
図2図1の医療用デリバリ装置のバレルアセンブリのチャンバ本体の斜視図を示している。
図3図2のチャンバ本体の側面図を示している。
図4図2のチャンバ本体の断面図を示している。
図5図1の医療用デリバリ装置のロッドアセンブリの斜視図を示している。
図6】一緒にしたときの図2のチャンバ本体および図5のロッドアセンブリの斜視図を示している。
図7】組み立てられた状態の図2のチャンバ本体および図5のロッドアセンブリの斜視図を示している。
図8図1の医療用デリバリ装置のベアリング部材の側面図を示している。
図9図6の線A-Aに沿ったベアリング部材の断面図を示している。
図10図1の医療用デリバリ装置の断面斜視図を示している。
図11】計り取りの前の図1の医療用デリバリ装置の側面断面図を示している。
図12】計り取り後の注射の準備ができた状態の図1の医療用デリバリ装置の側面断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0043】
実施形態の説明
以下の説明において、特定の用語は、便宜上使用され、本発明を限定することを意図していない。「右(right)」、「左(left)」、「上(up)」、「下(down)」、「下方(under)」、および「上方(above)」という用語は、図における方向を指す。用語の使用は、明示的に言及された用語、ならびにそれらの派生語および同様の意味を有する用語を含む。また、「下(beneath)」、「下方(below)」、「下側(lower)」、「上方(above)」、「上側(upper)」、「近位(proximal)」、「遠位(distal)」、などの空間的に相対的な用語が、図に示された或る要素または特徴の別の要素または特徴に対する関係を説明するために使用されることがある。これらの空間的に相対的な用語は、図に示された位置および向きに加えて、使用中または動作中の装置のさまざまな位置および向きも包含するように意図される。例えば、図中の装置が逆さまにされる場合、他の要素または特徴の「下」または「下方」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」または「上方」になると考えられる。したがって、「下方」という例示的な用語は、上方および下方の両方の位置および向きを包含することができる。装置は、他の向き(90度回転または他の向き)にされてもよく、本明細書において使用される空間的に相対的な記述子は、それに応じて解釈されてよい。同様に、種々の軸に沿った動き、および種々の軸を中心とする動きの説明は、種々の特別な装置の位置および向きを含む。
【0044】
さまざまな態様および例示的な実施形態の図および説明における繰り返しを回避するために、多くの特徴が多くの態様および実施形態に共通であることを理解されたい。或る態様が説明または図から省略されていても、それは、その態様がその態様を組み込んだ実施形態から欠落していることを意味するものではない。むしろ、その態様は、分かりやすくする目的および冗長な説明を回避する目的で、省略されているかもしれない。この文脈において、以下が本明細書の残りの部分に適用される:図面を分かりやすくするために、或る図が、明細書の直接の関連部分においては説明されていない参照符号を含む場合、明細書の先行または後続の部分が参照される。さらに、明確にするために、図面において或る部分のすべての特徴には参照符号が付されていない場合、同じ部分を示す他の図面が参照される。2つ以上の図における同様の番号は、同じ要素または類似の要素を表している。
【0045】
図1が、本発明による医療用デリバリ装置1の一実施形態の分解された構成要素を示している。医療用デリバリ装置1は、バレルアセンブリ2と、ロッドアセンブリ3と、ベアリング部材4と、ハウジング部品5と、カラー7と、結合アダプタ8と、アクチベータリング91と、ばね92と、用量ウインドウ部材93とからなる。バレルアセンブリ2は、チャンバ本体21と、ダイヤル部材22と、ダイヤルロック23と、バイアルスパイク24と、針装置25とを有し、針装置25は、デリバリ針としての針251と、針シール252とを有する。ロッドアセンブリ3は、プランジャスリーブ31およびプランジャロッド要素32を備え、プランジャロッド要素32は、長手軸を定めるステム部材321と、ゴム製ストッパ322とを有する。
【0046】
ハウジング部品5は、どちらも本質的に円筒形であって中空内部を有しているシャトル51および安全スリーブ52を有する。シャトル51は、安全スリーブ52の内部に嵌まり込むように寸法付けられる。安全スリーブ52は、比較的堅固であり、その外面にいかなる可動部分も含まない。さらに、後端または近位端の付近にフィンガーフランジを備えている。シャトル51は、組み立てられて使用されるときに医療用デリバリ装置1の他の構成要素と相互作用する構造および部分を備えている。したがって、シャトル51を、他の構成要素との機能的相互作用を提供するがゆえに、ハウジング部分5の機能的構成要素と呼ぶことができる。
【0047】
カラー7も、本質的に円筒形であり、中空内部を有する。医療用デリバリ装置1が組み立てられた状態にあるとき、カラー7は、ハウジング部品5によって収容された構成要素以外の医療用デリバリシステム1の構成要素を収容する。ダイヤル部材22は、バイアルへの直接のインターフェースを提供し、あるいはバイアルを受け入れてもよい結合している適用された8へのインターフェースを提供する。
【0048】
結合アダプタ8は、バイアルを受け入れ、かつ医療用デリバリ装置1の他の構成要素に解放可能に接続可能であるように具現化される。これは、液体の薬剤物質を計り取るときに複数のバイアルの連結または使用を可能にする随意による構成要素である。したがって、医療用デリバリ装置1を、ただ1つのバイアルの内容物を計量する場合には結合アダプタ8を備えずに使用することができ、複数のバイアルの内容物を計量する場合には結合アダプタ(複数でもよい)を備えて使用することができる。
【0049】
アクチベータリング91は、結合アダプタ8が適切に配置されたときに医療用デリバリ装置1を作動させるように具現化される。とくには、医療用デリバリ装置1を、バイアルまたは結合アダプタ8を受け入れていないときには計量を実行することができないように具現化される。バイアルまたは結合アダプタ8を適切に設定した後にのみ、医療用デリバリ装置は、計量が可能になるようにアクチベータリング91を介して有効化される。
【0050】
ウインドウ部材93は、板状であり、開口部を有する。これは、開口部が適切なマーキングに隣接するように、計量中に医療用デリバリ装置1に沿って移動するように設けられている。このように、適切なマーキングを開口部を通して視認することができ、ユーザが現在の計量の量を確認することができる。
【0051】
図2に、バレルアセンブリ2のチャンバ本体21が示されている。チャンバ本体21は、第1のねじ配置としてのねじ山212が設けられた円筒部分211を有する。さらに、円筒部分211の外面が、計量された量を示すマーキングまたは数字を備えている。より具体的には、医療用デリバリ装置1が組み立てられた状態にあるとき、ウインドウ部材93の開口部は、医療用デリバリ装置1内に計り取られた現在の量を表す数字またはマーキングを視認できるように、計量時に円筒部分211の数字またはマーキングに沿って移動する。
【0052】
チャンバ本体21は、円筒部分211の前端または遠位端から延びるスパウト部分213をさらに有する。スパウト部分213は、針装置25の針251が部分的に導入される開口部を有する。より具体的には、針251は、スパウト部分213の開口部から遠位方向に延出するように、スパウト部分213に接合される。
【0053】
チャンバ本体21の側面図を示す図3に見られるように、ねじ山212は、円筒部分211の周囲をらせん状に延びる溝として具現化される。これにより、ねじ山212は、円筒部分211の後端または近位端の付近から始まり、円筒部分211の長さの約半分まで延びる。
【0054】
図4が、バレルアセンブリ2のチャンバ本体21の断面を示している。チャンバ本体21は、中空内部215を有し、左側の端部または近位端において完全に開口している。したがって、中空内部215は、チャンバ本体21の左側の端部または近位端から自由にアクセス可能である。反対側である右側の端部または遠位端において、中空内部215は、スパウト部分213によって閉じられている。したがって、円筒部分211の遠位端において、スパウト部分213を通じ、あるいは介して、中空内部215にアクセス可能である。
【0055】
図5に、ロッドアセンブリ3が組み立てられた状態で示されている。とくには、プランジャスリーブ31が、プランジャロッド要素32のステム部材321がプランジャスリーブ31を通って延びるように、プランジャロッド要素32を受け入れる。これにより、ゴム製ストッパ322が、プランジャスリーブ31から延出する。後端または近位端において、ステム部材321は、プランジャスリーブ31の後端または近位端に当接する親指受け部分に移行している。さらに、ステム部材321と親指受け部分との間において、ロッド要素32は、半径方向または外側へと延びる突出部を有し、これらの突出部は、プランジャスリーブ31の円筒部分313の対応する開口部を通って延びる。このように、プランジャスリーブ31とロッド要素32とが互いに係止される。
【0056】
プランジャスリーブ31は、2つの対向する弾性アーム311をさらに有する。一方の軸方向端部において、アーム311は、円筒部分313に移行する。反対側の軸方向端部において、各々のアーム311にピン312が配置されている。ピン312は、プランジャロッド要素32のステム部材321に向かって軸方向に延在する。これにより、ピン312は第2のねじ配置を形成する。
【0057】
図6が、チャンバ本体21がロッドアセンブリ3にどのように取り付けられるのかを示している。チャンバ本体21が、ゴム製ストッパ322がチャンバ本体21の開いた後端または近位端を通って中空内部215へと導入されるように、ロッド要素32上へと軸方向に移動させられる。チャンバ本体21がプランジャスリーブ31のピン312に到達するとき、弾性アーム311ゆえに、ピン312を外側へと押すことができ、したがってピン312をチャンバ本体21のねじ山212に嵌め込むことができる。
【0058】
図7に、最終的に組み立てられたときのロッドアセンブリ3およびチャンバ本体21が示されている。これにより、チャンバ本体21およびロッドアセンブリ3の互いに対する回転によってロッドアセンブリ3がチャンバ本体21に対して軸方向に移動するように、ピン312とねじ山212とが係合することを見て取ることができる。
【0059】
図8が、ベアリング部材4の側面図を示している。ベアリング部材4は、スリーブ状の本体部分41を有し、4つの軸方向バー42が、本体部分41から横方向または半径方向に延びている。より具体的には、本体部分41の円周の90°ごとに、バー42のうちの1つが延びている。本体41は、その下端において突出部分へと移行し、突出部分は、下方において突出部としての複数の歯42にて終わる。図9の断面図から見て取ることができるとおり、本体部分41は中空であり、上方向に完全に開口している。さらに、突出部分は、全体としてのベアリング部材4が軸方向の通路を有するように、中央開口部を有する。
【0060】
図10に、完全に組み立てられた医療用デリバリ装置1が示されている。これにより、プランジャロッド要素32のステム部材321の上端または遠位端が、ゴム製ストッパ322の対応する雌型嵌合構造と係合する雄型嵌合構造を備えることを、見て取ることができる。このように、ゴム製ストッパ322は、ステム部材に固定に取り付けられる。
【0061】
チャンバ本体21とロッドアセンブリ3との組み合わせが、ハウジング部品5のシャトル51に収容される。ベアリング部材4は、ハウジング部品5の内部に、安全スリーブ52の軸方向端部とチャンバ本体21との間に位置するように配置される。これにより、バー42は、ベアリング部材4がハウジング部品5に対してトルクに耐えるように、安全スリーブ52の対応する溝に配置される。ベアリング部材4の歯42は、チャンバ本体21の円筒部分411の上端側または遠位端側に当接する。
【0062】
バイアルスパイク24は、針251がバイアルスパイク24内へと延びるように、トルクに耐える様相で本体チャンバ21のスパウト部分213に取り付けられる。バイアルスパイク24の周りにダイヤルロック23が取り付けられ、ダイヤルロック23は、ダイヤル部材22に取り付けられる。より具体的には、ダイヤルロック23は、トルクに耐える様相でバイアルスパイク24に連結し、所定のトルクまでトルクに耐えるようにダイヤル部材22に連結する。加えられたトルクが所定のトルクを超える場合、ダイヤルロック23は、ダイヤル部材22に対して回転可能である。このように、ダイヤルロック23は、過負荷保護を提供する。
【0063】
ダイヤルロック23は、バイアル座を形成し、バイアルスパイク24がバイアル座へと上方に延びる。ダイヤルロック23のバイアル座に、結合アダプタ8が配置される。結合アダプタ8は、別のスパイク82を有する別のバイアル座81を有する。結合アダプタ8のスパイク82は、バイアルスパイク24に流体を漏らさぬように接続され、バイアルスパイク24は、針シール252を介して針251に流体を漏らさぬように接続される。アクチベータリング91は、結合アダプタ8のバイアル座81内に延びる2つの脚部を有する。
【0064】
カラー7の内側に、バイアルスパイク24、ダイヤルロック23、およびダイヤル部材22のバイアル座が配置される。結合アダプタ8のバイアル座81およびスパイク82は、アクチベータリング91と共に、ダイヤル部材22内に配置される。ダイヤル部材22およびカラー7は、そこに配置された構成要素と共に、ハウジング部品5をそこに配置された構成要素と一緒に引き抜くことができるユニットを形成する。
【0065】
図11は、計量の状態にある医療用デリバリ装置1を示している。とくには、バイアル6は、バイアルスパイク24がバイアル6のカバーを穿刺してバイアル6の内部へと延びるように、逆さまにしてダイヤル部材22のバイアル座へと押し込まれる。これにより、バイアル6の内部からバイアルスパイク24および針251を通ってチャンバ本体21の内部215へと、流体の通路が確立される。図11に示される状況において、結合アダプタ8は使用されていない。
【0066】
計量のために、ダイヤル部材22が、医療用デリバリ装置1の長手軸を中心にしてユーザまたはオペレータによって手動で回転させられる。これにより、バイアルスパイク24がダイヤル部材22と一緒に回転し、チャンバ本体21を長手軸を中心にして回転させる。対照的に、ロッドアセンブリ3は回転しない。ロッドアセンブリ3に対するチャンバ本体21のこのような回転運動により、プランジャスリーブ31のピン312が、チャンバ本体21のねじ山212に沿って移動し、したがってステム部材321がチャンバ本体21に対して長手軸に沿って移動する。
【0067】
バレルアセンブリ2およびロッドアセンブリ3は、相対回転に影響を及ぼす固有の回転抵抗を定める。とくには、固有の回転抵抗は、ねじ山212に沿って移動するピン312の摩擦、プランジャスリーブ31に接触するバレル本体の摩擦、ダイヤルロック23に接触するバイアルスパイク24の摩擦、カラー7に接触するダイヤル部材22の摩擦、およびチャンバ本体21に接触するゴム製ストッパ322の摩擦によって引き起こされる抵抗を含む。ベアリング部材4は、とくには歯42がチャンバ本体21の円筒部分211の遠位端に当接することによって生じる追加の回転抵抗をもたらす。計量のために、固有の回転抵抗と追加の回転抵抗との合計である総回転抵抗が超過される必要がある。これにより、総回転抵抗は、ロッドアセンブリ3に作用する抵抗力を定め、用量チャンバ94の容積を増加させるためにロッドアセンブリ3のプランジャロッド要素32を直線的に移動させるとき、ロッドアセンブリ3に作用する引張力を定める負圧が用量チャンバ94内に生じ、回転抑止形成物42は、抵抗力が引張力よりも大きくなるように構成される。とくには、ベアリング部材4およびその歯42は、計量の停止中または停止後に用量チャンバ94の容積を変化させるときに、ロッドアセンブリ3とバレルアセンブリ2との間の相対運動が防止されるように構成される。
【0068】
図12に、デリバリ状態における計量後の医療用デリバリ装置1が示されている。これにより、ステム部材321がチャンバ本体21に対して長手軸に沿って移動することによって、用量チャンバ94がチャンバ本体21の中空内部215に生成されている。さらに、用量チャンバ94は、計量時にバイアル6から取り出された液体の薬剤物質で満たされている。とくには、用量チャンバ94の容積、したがって計量された液体の薬剤物質の量は、図11に関連して説明した回転によって定められる。
【0069】
図12に示されるデリバリ状態において、ダイヤル部材22およびカラー7は、そこに配置された構成要素と共に、ハウジング部品5およびそこに配置された構成要素から引き抜かれる。これにより、針251は、標的を穿刺できるように自由にされ、あるいは露出される。送出のために、プランジャロッド要素32は、ゴム製ストッパ322が計量チャンバ94の容積をゼロに減少させることによって液体の薬剤物質を医療用デリバリ装置1から針251を通って送り出すように、軸方向に押される。
【0070】
本発明の態様および実施形態を説明する本明細書および添付の図面を、保護される発明を定義する特許請求の範囲を限定するものと解釈すべきではない。換言すると、本発明を図面および以上の説明において詳細に例示および説明してきたが、そのような例示および説明は、限定ではなく、例示または典型であると考えられるべきである。本明細書および特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな機械的、組成的、構造的、電気的、および動作的な変更が行われ得る。いくつかの場合に、本発明を不明瞭にしてしまわないように、周知の回路、構造、および技術は、詳細には示されていない。したがって、以下の特許請求の範囲の範囲および趣旨の範囲内で、当業者であれば変更および修正を行い得ることが理解されよう。とくには、本発明は、上記および下記の異なる実施形態からの特徴の任意の組み合わせを有するさらなる実施形態を包含する。
【0071】
さらに、本開示は、以上の説明または以下の説明において説明されていないかもしれないが、個別に図中に示されたすべてのさらなる特徴を包含する。また、図面および明細書に記載された実施形態の個々の代替形態およびそれらの特徴の個々の代替形態が、本発明の主題または開示された主題から放棄される可能性がある。本開示は、特許請求の範囲または例示的な実施形態において定義された特徴からなる主題、ならびに当該特徴を備える主題を含む。
【0072】
さらに、特許請求の範囲において、「・・・を備える(comprising)」という語は、他の要素または工程を除外せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外しない。単一のユニットまたは工程が、特許請求の範囲に記載のいくつかの特徴の機能を果たしてもよい。たとえ特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されていても、これらの手段の組み合わせを好都合に使用することができないという意味ではない。属性または値に関連する「本質的に」、「約」、「およそ」、などの用語は、とくには、まさにその属性または正確にその値も定めている。所与の数値または範囲の文脈における「約」という用語は、例えば、所与の値または範囲の20%以内、10%以内、5%以内、または2%以内である値または範囲を指す。連結され、あるいは接続されると記載された構成要素は、電気的または機械的に直接連結されても、1つ以上の中間の構成要素を介して間接的に連結されてもよい。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】